1.安全と危険
電磁波は危険」、「電磁波は安全」といった時の、「安全」と「危険」について。
*そばとアレルギー
*ツナ(マグロ)・ハンバーガーも危険?
*何がリスクか? アメリカ 1996年報告
*何がリスクか? 日本2000年調査
*電気スタンドの選択
*ガス調理器か電磁調理器か?
*電磁波は見えないから危険−1?
*電磁波は見えないから危険−2 ?
*自然にあるものは安全で、人工物は安全が100%確認されるまでは危険とみなすべき?
*水や人も電磁波を発信している。
*10−6の死亡リスクの例
*宇宙に充満する電磁波
*自然界に存在する電磁波コーラス
*自然界に存在する微小な交流磁界223Hz
*電磁波曝露が生まれる子供の性差に影響するという噂
2.電磁波の定義・用語の解説
「電磁波」は「電磁界」といったり、「電波」と表現されたり、電磁波は「電界(電場)」と「磁界(磁場)」に区別されたり、「電離放射線」と「非電離放射線」の二つに分類されたりします。
言葉(用語)からして、複雑です。こうしたことも解説します。
3.各種略語・専門用語集
「できるだけ平易な解説を」と、本講座では考えていますが、どうしても避けられない面があります。
これらの用語を解説します。
*その他の用語解説:リスクという言葉を考える
4.疫学の基礎
電磁波の健康影響を語る時、必ず出てくる疫学を解説します。 疫学の用語集もあります。
5.動物実験の結果の評価
6.誰が評価すべきか?
7.海外論文を読む時の注意
8.電磁波の熱効果:電磁界曝露基準の考え方
9.提案:「電磁波問題の問題点 もっと科学的に物事を考えよう!」
10.発がん性の評価ランク
11.パルス変調とデジタル変調の違い
電磁波の健康影響を論議する時に、論議の的になるのが「安全性が科学的に確認されていないので、現状の電磁波は危険である」という主張と、「危険性が科学的に検証されていないので、現時点では問題ない、安全である」という主張とがぶつかり合うことである。
2分法
危険である = |
安全性の立証はない |
危険性の立証はない |
= 安全である |
↓↓↓
3分法
100%危険である |
リスクと利便で判断 |
|
リスクと利便で判断 |
||
100%安全である |
|
↓↓↓
4分法
@100%危険である:この数値以上は危険性がある、この数値以上は安全ではない、 |
A健康に悪影響を及ぼすおそれが指摘されているが、それらは少数意見であったり、 |
B少なくともこの数値以下であれば健康に悪影響を与えることはないという知見が確立している部分、多くの学者や組織が確立した知見として認める数字に基づく。 日本工業規格の「人への危害または損傷の危険性が、許容可能な水準に抑えられている状態」 規定作成の組織の決定を信用するかしないか、も含めて、リスクと利便さで判断する。 |
C100%安全であることが確立している(絶対安全)。 |
これからの危険と安全の考え方 (2008年5月作成:2011年12月一部追記)
「100%安全ではない=危険である」、「100%危険はない=安全である」という論理では、残念ながら電磁波の健康影響の結論を出すことはできない。
「明らかに法的な規制を行う必要があるような危険性」は色々とこの世の中に存在する。
しかし、電磁波ではなくとも、100%の安全が保証されたものはあるのだろうか?
現在の生活が、電気に依存していることを勘案すれば、安全性が100%保証されていないので、電磁波は危険である、といって、電磁波を根源から絶つべきとし、われわれは電気が発明されていなかった江戸時代の生活に戻ることができるであろうか? 「電磁波の健康影響・基礎講座」では、すべての電磁波から、ヒトは逃げることができないと、説明を行っている。
これからは、上表の3分法、そして4分法で考えるべきと、私は考えます。
われわれは、電気文明の利便さと、それに伴うリスクを十分に考慮すべきであろう。
その為には、電気文明に伴う電磁波の健康影響に関して、冷静に、公正な立場で、幅広い、科学に基づいた情報、最新の研究状況などを知るべきである。
電磁波の健康影響は、工学の知識、医学に関する知識、動物に関する知識、などなどが関連する学際的な分野であり、理解するのも容易ではない。
市民が簡単に、十分な理解を行うことは至難である。
本講座はそうした役にたつ事ができれば幸いと考えている。
この項目は一部補足、修正があります。 以下に追記します。 2009−3−4
追記: 2009−3−4
今まで、「安全」という用語の厳格な定義をあまり考えたことはなかった。
ネットにある辞書「大辞林 第二版」では「危害または損傷・損害を受けるおそれのないこと。危険がなく安心なさま。」とある。
安全に関して最も身近なテーマは「食の安全」であろう。
食品安全基本法の条文を読んでみたが、なんと「安全」に関する定義は書かれていない。
Wikipediaの記述を利用すると、以下のような解説がある。
食の安全基本法の項 :安全と安心の関係
食の「安全」という表現とともに、食の「安心」という言葉も用いられている。
「安全」と「安心」の違いが学術的に明確に定義されているわけではないが、およそ以下のように言える。
安全:具体的な危険が物理的に排除されている状態
安心:心配・不安がない主体的・主観的な心の状態
2003年3月2日 東京で開催された「電波の安全性に関する説明会」があった。
講演2 「安心できる電波利用のための生体影響研究」北海道大学大学院 情報科学研究科 教授 野島 俊雄 の中で、「安心と安全」に関して、「ISO/IECでは「受容できないリスクがないことを安全と定義」」という紹介があった。
質疑応答の時間に、「このISOなどの規定を教えて欲しい」という質問を出したら、「詳しくは覚えていない、レジメに書いてある電子情報通信学会の論文誌を読んでくれ」と言われた。
そこで、以下の文献を入手した。
電子情報通信学会誌Vol. 88. NO. 5, 2005年に掲載された論文「総論 安全と技術と社会
」、著者は向殿政男氏である。
この中から、関連する部分を抜き出す。
・ここで改めて,安全とは何か,すなわち安全の定義について振り返ってみることにする.
・危険は一つひとつ指摘できるに対して、安全はどんな危険も存在しないという否定形で表される。
安全を具体的に指定できないために、大変難しい概念になっている。
・「安全・安心懇談会」の報告書(2004年)には、「安全とは、人とその共同体への損傷、並びに人、組織、公共の所有物に損害がないと客観的に判断されることである(ここでいう所有物には無形のものも含む)」と述べられている。社会の安全を強く意識した定義になっている。
・一方,製品や機械等の人工物に対する安全について、日本工業規格JISでは、「人への危害または損傷の危険性が、許容可能な水準に抑えられている状態」、また、国際安全規格を作るためのガイドラインであるISO/IECガイド51では、「受容できないリスクがないこと(受け入れることのできないリスクからの開放)」と定義されている。
・ここで重要な概念として,リスクと許容可能という二つの用語が出てきている。
JISの「人への危害または損傷の危険性」とは「リスク」のことである。
・リスク(risk)とは、一般には潜在的な危険性の度合いと考えられているが、国際規格では「危害の発生する確率及び危害のひどさの組合せ」と厳密に定義されている。
ここで更に危害という言葉が出てくる。この危害、リスク、許容可能が、現代の安全の定義のキー概念になっている。
危害とは,前述のガイド51によれば、「人の受ける身体的傷害もしくは健康障害、または、財産もしくは環境の受ける害」となっている。
危害の範囲をどこまで考えるかは、安全という用語を使う立場で異なってくるのは当然である。
労働の現場を対象とする機械安全では、「人の受ける身体的傷害もしくは健康障害」を危害と考えるが、社会の安全を考えた場合、人だけでなく,安全・安心懇談会の定義にあるように、共同体そのものや、組織や共同体の財産まで含むのは当然である。
もし、人類や地球の安全を考えるならば、環境を入れないわけにはいかないだろう。
この危害の発生する確率(どのくらいの頻度で発生するのか)とそのひどさ(どのくらいの程度のひどさなのか)との組合せがリスクであり、リスクには大きさの概念が入っている。
そのリスクの大きさを考えて,それから受ける利便性や安全のコスト等を考慮して、受け入れてもよいと思われるまでリスクが低ければく許容可能なリスクならば)、これを安全といおうというのが安全の定義なのである。
・すなわち,考えられるすべての危険源(潜在的に存在する危険なところ)に対して、前もって,安全対策が施されていて、許容可能なリスクにまで下げられているとき、安全であるということである。
・なお、許容可能なリスクは、国際規格では「その時代の社会の価値観に基づく所与の状況下で、受け入れられるリスク」と定義されている。
もちろん、どのくらいのリスクならば許容可能なのかは、対象により、条件により、人により、時代により異なるが、大事なことは、安全といっても、リスクは常に残っているということである(これを残留リスクと呼ぶ)。絶対安全は存在しないということを宣言している。
・これまで事故がなかったからただ単に安全であるというのではなく、前もって、すべての危険源に対してリスクが評価され、必要ならば対策が施されて、許容可能なリスクしか残っていないようになっているとき、初めて安全であるという。
そのとき、受ける利益、そのためにかけるコスト等を考慮して、残っているリスクについて受け入れることを合意し、覚悟し、納得した上で、利用し、生活していることを認識しなければならない。
・ただし、神ならぬ人間の身、見落としや予想できなかった危険源が潜んでいる可能性がある。
この意味からは、事故から学び常に見直していかなければならないということも、安全の概念と定義に含めるべきであると考えている。
このことから、「電磁波は安全か?」という質問をしたり、それに答えたりする場合は、事前に「安全」定義を確認する必要がある。
「全くリスク・危険がないことを安全(絶対安全)」と主張する場合と、上記のような立場で「受容できないリスクがないこと=許容できる範囲でのリスクの存在があることを認めた上での安全(機能安全)」と主張するのかでは、全く議論がかみ合わないことになる。
追記: 2009−7−19にトップページに追記した情報を2011−12−25にこのページにも転記
産経新聞 2008年12月23日掲載 正論「安全神話の崩れ去った跡に 東京大学教授 坂村健」の記事の一部の引用です。
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従来は、安全といえば「絶対な」安全性ということだった。
これは、設計製造に間違いがなく、劣化もしていない製品は安全つまり大前提としての「100%の安全」があり、それが何らかの原因で損なわれて「危険」になるという考え方である。
「絶対安全」は存在せず
これに対して世界の工業漂準を定めるISO(国際標準化機構)は、インドでの猛毒ガス流出事故など前世紀末に発した何度かの大事故を教訓に、安全基準の大転換を図った。
1999年のISOガイド51の改定で、「絶対的な安全は存在しない」と明記したのだ。
そこで「絶対安全」亡き後の安全の概念として掲げられたのが「機能安全」である。
「機能安全」とは、一言でいえば、システムに100%の安全を求めない、求められないという考え万である。
安全も速「度」や精「度」と同じような安全「度」で語るべきスペックの一つだということになる。
実は絶対安全が存存しないことは、すべての技術者が昔から心の中では実感していた。
しかし、それは社会のコンセンサスにはなっていなかった。
つまりは本音と建前である。
この建前を明確に捨てることが、社会をより安全に近づけるために重要というのが、技術分野における安全哲学の大転換だったのだ。
絶対安全を捨てることが安全を生むというのは一見矛盾する。
しかし、たとえば原子力発電所や飛行機など極度に安全を求められるシステムを考えてみよう。
絶対安全が前提なら、すべての部品について安全性を訊ねても、「100%安全です。」という答えしかない。
とすれば、その部品を使って作るシステムも「100%安全」という答えしか出てこない。
どこが要注意かといった情報は、絶対安全という建前と反する、あってはならないものとして、システム構築の流れの中で消される。
その結果事故は起こりやすくなり、また事故が起きたときの対処もうまくいかなくなる。
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<関心のある方は、当該の新聞記事全文を読んでください。>
我々が普段食しているそば、信州そば、深大寺そば・・・・・私もそばは好きです。
でも、この「そば」にアレルギーをもつ人がいるようです。 またそばは日本だけではなく、世界中で食されているようです。
このそばにアレルギーを持って困っている方のサイトを見つけました。
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そばアレルギーに関するホームページを公開しておりますので、ご案内申し上げます。
そば好きの方にも有用な情報もあるかと思います。
むしろそば好きの皆様にこのようなアレルギーがあることを広く知っていただきたいと願っております。
http://member.nifty.ne.jp/takumi_k/allergy.htm <リンク切れ>
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「安全と危険」の論議で言えば、こうしたアレルギーを持つ人がいるから、「そばは危険な食物である」と断定してよいか、疑問になります。 電磁波の危険性の論議においても、同様のことは、言えることです。
医療21 No.71【2002年12月4日】(2年目)
http://biokagaku.com/iryo21/ にあった内容を、一部引用して紹介します。
興味のある方は、全文を入手して読んでください。
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●ツナ(マグロ)・ハンバーガーの危険性
魚を食べることは健康に良いという。しかし米国のメリーランド州ロックビル市にある厚生省の研究者達は、「レストランの比較的新しいメニューであるツナ・ハンバーガー(tuna
burgers)が米国ノースカロライナ州のヒスタミン中毒症の増加に関連している」と報告している。
ヒスタミン中毒は魚を食べて細菌から放出されたヒスタミンによって2時間以内におこる病気で、少なくとも次の2つ以上の症状が現れる。
これまでノースカロライナ州では、平均して毎年2件のヒスタミン中毒の症例が報告されていた。
しかしながら、1998年7月から1999年2月までの間に、合計22件のヒスタミン中毒のケースが報告された。
そのために研究者達は報告された症例を調べ、また、特にこれらのヒスタミン中毒に関連した食べ残された魚を実験室でよく調べた。
その結果, 中毒患者22人中、18人がツナ・ハンバーガーを食べ、2人がツナを含んでいるサラダを食べ、そして2人がフィレ(fillets)を食べたことが判明した。
Reference;
Karen Becker et al., Histamine Poisoning Associated With Eating
Tuna Burgers, Vol. 285, No.10, pp1327-30.(引用元の文献名が元ネタで、漏れてます)
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こうした中毒の危険性があるからといって、ツナ(マグロ)は食わないことにしたりすることができるのでしょうか?
電磁波の健康影響も重要ですが、こうした食生活のリスクもより重要ではないでしょうか?
面白い記事を紹介します。 RISK IN PERSPECTIVE, AUGUST 1996, というパンフレットで、HARVARD CENTER FOR RISK ANALYSIS が発行しているものです。
色々な生活環境における健康に影響すると思われる因子を挙げて、電話アンケートで各人が、各因子をどの程度危険と感じているかを調査した結果です。
結果は
男女共に60%以上の人が危険と感じている因子は、喫煙と 周囲に撒き散らす煙草の煙の2因子。
男女共に40%以上の人が危険と感じている因子は、オゾン、残留農薬、空中に飛散している塵芥、環境変化に伴う気温の上昇、建物の中のラドン(放射性)の5因子。
男女共に30%を越えて危険と感じている因子は、 環境中の電磁波、医療用のX線の2因子。
参考用に、男女共に危険と感じないもの(5%以下)は リラックスする為の音楽。
殆ど全ての因子で、男に対して女は10%程度より危険と感じている。
この研究によれば、電磁波以外にもっともっと緊急的に解決しなければ、ならない危険因子が多いと言えます。
こうしたこともアメリカでは研究されています。 こうした研究は色々な規格を策定する時に、規格が一般の人の不安を解消するか否かの検討の時に、利用されるようです。
この記事は1996年のものなので、5年を経過した現在は、変化しており、今調査を行えば、電磁波に関しては携帯電話の電磁波などが因子として上げられているかも知れません。
日本能率協会のマーケティング・データ・バンクでは、2000年11月に「健康ニーズ基本調査2000」の概要を報告しています。
これによれば、何に健康不安を感じているかがしめされています。 トップはO157で85%の人が不安に感じています。
以下同様に、添付のグラフから数値を読み取っていくと
2位 食中毒などを起こす細菌 68%
3位 食品に含まれる農薬などの化学物質 67%
4位 食品に含まれる食品添加物など 67%
5位 遺伝子組み換え食品 62%
6位 ダイオキシンの害 61%
以下 食品の衛生管理、住まいの中のごみやダニ、水道水の安全性、10位 環境ホルモンの害、
そして タバコの煙の害、食器や食品の容器に含まれる化学物質、紫外線の害、大気の安全性、放射能汚染、寄生虫など、輸入食品などが 30%以上で続きます。
18位 住まいの内装材から出る化学物質(シックハウス症候群)29%
そして
19位 電気製品からでる電磁波 28% となっています。
この研究は1998年にも同様な調査を行なっており、家電製品からでる電磁波は1998年には35%であったので、この調査では「電磁波は沈静化」していると特記されています。
電磁波の健康への影響を気にすることは必要ですが、その他の健康影響はもっともっと気にする必要がありそうです。
照明器具の選択に関して、「蛍光灯スタンドは電磁波が出て危険な」ので、「電磁波の少ない白熱電球の電気スタンドを使用する方が良い」という一部の声がある。
確かに白熱電球からは低周波の磁界の漏洩はほとんどない、そして蛍光灯の場合は、点灯回路に使用されているコイルの部分から低周波磁界の漏洩がある。
それでは、白熱電球は安全か? 低周波磁界の漏洩はないにしても、白熱電球は非常に温度が高くなり、下手に電球や電球の傘の部分に触ると火傷をしたり、電球スタンドが倒れたりすれば、そこに燃えやすいものがあれば火事になる恐れもある。
家電製品PLセンターの2002年3月号のインフォーメーション(事故報告書)に、この問題に最適な事例が紹介されていた。
**** *********** 引用 ************* ***********
家電製品PLセンター インフォーメーション 2002年3月度 から
http://www.aeha.or.jp/plmenu.htm
[事故相談]: 白熱灯スタンド型照明器具で指に火傷をした。
相談内容: 昨年11月に購入した白熱灯スタンド型照明器具(外国製)を枕元で使用していた。1ヶ月前の夜11時ごろ、左手が触れて薬指に2.5×0.5p大の火傷をした。治療費と薬代などを要求したい。
調査結果: 調査対応中
メーカーから同型のスタンドと取扱説明書を取り寄せ確認を行った。スタンドは40Wの白熱球を使用、高さ約40pで右図のタイプだった。取扱説明書の注意表示としては「シェード(カサ)や電球は高温になるので手を触れないでください。火傷の原因となるので完全に冷えてから…」と数箇所に記載されていた。
************ ************* ***********
蛍光灯スタンドからの低周波磁界漏洩に関しては、正確な実測データなどは手元にないので、判断はしにくいが、電磁波を気にして、蛍光灯スタンドから白熱電球に変えると、今度は上記のように火傷の危険性が発生する。
家電製品PLセンターの2002年5 月号のインフォーメーション(事故報告書)に、その後の経過が報告されており、白熱電球の温度は、白熱電球に特有な高温140℃になっていたと。 この様な高温部に触れれば火傷をおうことになる。
したがって、電気スタンドの選択は、ランプからの光に対する好みの問題もあるが、危険因子として「電磁波」だけを考えて選択するのは賢いとはいえない。
電磁波とは無関係な産経新聞の記事で、ガスは着衣に着火する恐れがあるという東京消防庁の実験結果です。この着衣着火で一昨年に全国で149名が死亡しているそうです。
プロパンガスや都市ガスなどのガス業界は電磁調理器の電磁波の危険性を旗印にして、ガス器具への巻き返しを図ろうとしています。
電磁調理器からの電磁波漏洩が大丈夫とはいえないにしても、 (この電磁調理器の電磁波の漏洩量は、ICNIRPの参考レベルなどに比べると、基準値を超える恐れがあるなど、それなりの漏洩です、詳しくはこちらへ)
従って、ガスの安全性と、電磁調理器の安全性を、きちんと考える必要があります。
こうした利便と危険性を 如何に考えるか? そのための資料として、新聞から切り抜きました。
作成: 2003−1−11
産経新聞 2003−1−8の記事から 一部を引用。 詳しくはこの新聞記事を読んでください。
*********** 引用 ************* ***********
ガステーブル燃焼実験 東京消防庁
炎見えなくても着火 綿素材衣服危険 発火条件300度超す
炎が見えなくても鍋の周りは危険。 料理中にガステーブルなどの火が衣服に燃え移る「着衣着火」の防止を目的に、束京消防庁消防科学研究所がガステーブルを使った燃焼実験を全国で初めて行ったところ、 鍋の周囲に火が見えないにもかかわらず、高温のために綿素材の衣服で、近づくと着火する危険性があることが七日、分かった。
実験は「着衣着火」防止を目的に昨年、数回にわたって実施。
その結果、いずれのガステーブルも、鍋の側面下から上に約三センチの高さで綿素材が発火する条件を満たす300度を超えることが分かった。
「着衣着火」が原因の火災は増加傾向で一昨年は、全国で148人が死亡している。
********** 引用 終わり ************** *************
よく「電磁波は目に見えないから、危険である」という論法を耳にします。 確かに目に見えないので、危険性の感知や対処が困難なことから、そのように言うことも出来ます。
しかし、では、目に見えないものは危険なものでしょうか?
すべての目に見えないものは危険であり、避けるべきと、断定してよいでしょうか?
目に見えなくて、身の回りに充満しているもので、ヒトの生命維持になくてはならないものがあります。 「空気」です。
空気は目に見えないから、危険である という人はいないと思います。
空気には場合によってはインフルエンザいのウイルスがあったり、何か体に悪い物質が含まれていたりするかも知れませんが。
電磁波のリスクを考える時に、冷静に考えて見ましょう。
よく「電磁波は目に見えないから、危険である」という論法を耳にします。
確かに目に見えないので、危険性の感知や対処が困難なことから、そのように言うことも出来ます。
これは今に始まったことではなく、昔からあるようです。
http://www10.plala.or.jp/misamatsuda/media-rumor.html#03 のWEBにあった情報です。
この論文の書かれた年月は明記されていない。1997年頃かも知れない。
******** ********** ************* ******
普及初期におけるメディアの噂・携帯電話と電話を事例として・
松 田 美 佐
もちろん、一方では電波(電磁波)という目に見えないものによって気づかぬ間に体が蝕まれるのではないかという想像も見られる。
日本でラジオ放送が正式に開始されたのは1925(T14)年3月22日のことであるが、同年の東京朝日新聞の記事には電波に対する畏怖や危惧の気持ちがさまざまな形で現れている。
(山本ら,1984:110-112)例えば、
「世界中の無線放送はどんなにかおびただしい数か知れないが、それらから放送する強弱いろいろな電波が、吾々の前後左右上下から、ほとんど絶えず通りぬけているのかと思えば、あんまりいい気持ちはしない。神経衰弱めいた頭になるのも、そんな所為じゃないかなどと、妙な愚痴さへ出てくる (T14.8.22)」
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作成: 2006−9−27
「自然にあるものは安全で、人工物は安全が100%確認されるまでは危険とみなすべき」という論調がある。
さて、この論は正しいのか?
必ずしも正しいとはいえない。
最近のアスベストと中皮腫瘍の問題を見てみる、
アスベストは「天然の贈り物」「奇跡の鉱物」といわれたが、自然にモノにもリスクが存在することをまざまざと見せ付けている。
記;2011-8-25
以下に示すように、水からも微弱ながら電磁波が発信され、ヒトの体からも電磁波が発信されている。
こうしたことから、「どんな微弱でも電磁波でもその安全性が書確認されるまでは、危険で避けるべき」という論法が成り立たないことが判る。
毎日新聞2010年8月24日に記事の一部です。
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JAXA:水の惑星、マイクロ波で監視 新衛星GCOM−W、来春打ち上げ
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は23日、地球規模での土壌中の水の分布や海水の温度変化、降水量などを調べる水循環変動観測衛星「GCOM−W」の概要を発表した。
(略)
水はマイクロ波という微弱な電磁波を出しており、衛星に搭載されたマイクロ波の計測装置で、水の分布を宇宙から観測できる。
蒸気や液体、氷など、水の状態によってマイクロ波の周波数が変わるため、水がどんな状態で分布しているかも把握できる。
積雪や海氷の厚さも観測できる。2日間で地球上のほぼすべての場所の観測が可能だ。
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生活の周囲にある自らもマイクロ波は発信されている、ということに驚く。
以下は「RFワールド No.12」に記載された「小型マイクロ波/ミリ波放射計の動作原理と観測例 田中聖隆」からの一部抜粋です。
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マイクロ波/ ミリ波放射計は,観測対象物からの微弱な電磁波(マイクロ波帯またはミリ波帯)の放射エネルギーを受信する高感度の受信機です.
写真1 に示すように,あらゆる物体は電磁波を放射しており,放射される電磁波はいろいろな周波数の電磁波が放射されています.
〈写真1〉あらゆる物体は電磁波を放射している。
トマトからも,人の手からも微弱な電磁波が放射されている.放射される電磁波には,いろいろな周波数が含まれている.
〈図2〉マイクロ波/ミリ波放射計の用途
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図2のマイクロ波・ミリは放射計の用途の図は、まさにJAXAが打ち上げる観測衛星の目的と一致している。
追記:2012−12−21
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版2013年1月号に以下の記事が掲載されていた。
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EMC ニュース
ヨーロッパの干ばつ監視衛星が地球からの電波妨害に直面
2009年11月に、欧州宇宙機関(ESA)は、世界的な土壌水分レベルを測定する目的で、土壌水分および海洋塩分濃度の観測(SMOS : Soil Moisture and Ocean Salinity)衛星を初めて打ち上げた。
衛星の放射分析器は、水分と海洋塩分濃度の地球全体の地図を作るために陸上と水上からのマイクロ波放射の検出を利用して、50 × 50 キロメートル領域ごとに調べる。
科学者達は集めたデータを使って、より精度の高い干ばつ予測をする予定だった。
しかし、SMOSの放射計は、起動と同時に困難に直面した。
衛星の信号周波数は、電波天文と地球観測専用に割り当てられたLバンドとして知られている周波数帯で保護された範囲内なのだが、レーダー・システムやテレビ・ラジオ放送などの電波によって、観測データが広範囲に渡り妨害され、データ品質が悪化した。
SMOSによって集められた画像は、特に中国、インド、東および南ヨーロッパ、中東の若干の地域、そしてアメリカ合衆国北部ほぼ全ての地域に妨害ホットスポットがあることを示している。
以下 略
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この記事の中のLバンドとは1400MHzから1427MHzの周波数帯域の電波を示す。
従って、宇宙から観測できる量のマイクロ波(1400MHz−1427MHz)が地球上の水から発信されていることが判る。
記;2012−3−21
2012年3月6日に東京・九段下で開催された総務省・関東綜合通信局主催の「電波の安全性に関する説明会」の中の講演「電波の安全性リスクマネージメント 牛山明」に、以下のような事例がありました。
一般的な環境基準値の設定には10−5〜10−6レベルが採用されている。
確率が小さければ、実質的に安全とする という考え方です。
そうして、10−6レベルの死亡リスクとして、以下のものが紹介されています。
1979年のアメリカでの事例で、内容的には少し古くなっています。
記:2013−5−28
朝日新書 2013年発行 二間瀬敏史著「日本人と宇宙」という本の中に、以下の記述がある。一部のみを引用する。
****************
また高エネルギーの粒子が関与する天文現象も、電波で観測できます。
超新星爆発やパルサー(規則的に電波や]線を放つ天体)、銀河の中心核からの電波などです。
それから太陽も、普段から光だけでなく、電波(太陽電波)を放っていますが、これはおもに太陽の大気中の電子が加速されて放射する電波です。
またフレアやその他の活動現象によって、突発的に強い電波が発生する「太陽電波バースト」も存在します。
他にも、フレアを起こしたり、ガスをまき散らしたりする恒星や、低温の惑星(木星など)からも電波が観測されます。
さらには宇宙のあらゆる方向からやって来る電波・宇宙背景放射も存在します。
宇宙はさまざまな電波で満ちあふれていて、光では見えず、電波でだけ見える宇宙の姿があるのです。
********************************
地球上には様々な電磁波(電波)はあるので、いやだ として、地球外に逃れたとしても、宇宙に有る電磁波(電波)からは逃れることができません。
この本は、電磁波の健康影響に関する本ではありませんが、結構面白い、お薦めできる本です。
記:2015−10−13
*ふと見ると以下の記事が目に付いた。
東京新聞 2015年10月12日の記事から一部を引用
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第一次世界大戦の最中、砲弾飛び交う欧州の前線で、敵の交信を傍受しようと無線機に耳を傾ける通信兵らは、不思議な音を聞いたという。
▼弾が飛んでいるようにも、鳥が鳴いているようにも聞こえる甲高い謎の音は、「夜明けのさえずり」と呼ばれるようになった。
その正体が、高度数万キロの宇宙空間で発生する電磁波だと分かったのは、第二次世界大戦後のこと。
謎の音は「宇宙のさえずり」という、何とも詩的な名を与えられた。
▼いったいなぜ、どんな仕組みで、この現象は起きるのか。
それはいまだ解明されぬ謎だが、名古屋大学准教授の三好由純さんらの研究で、このさえずりがオーロラを瞬かせていると分かったそうだ。
以下略
****************************
*宇宙のさえずりとは
宇宙のさえずりとは何か、しらべてみた。
デジタル大辞泉の解説: コーラス‐は【コーラス波】
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自然界に存在する超低周波の電磁波のひとつ。
太陽風の高エネルギー電子と地磁気の磁力線の相互作用(サイクロトロン運動)によって生じ、約1秒の間に1キロヘルツから5キロヘルツ程度まで周波数が上昇する。
無線機を通して聞くと小鳥のさえずりに似た音がする。
第一次大戦中、敵の無線傍受をしている通信兵が夜明けとともにこの音を耳にしたことから、ドーンコーラス(夜明けの合唱)とも呼ばれる。
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以下はWikipediaの記述
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ドーンコーラス(Dawn Chorus)とは、電磁波によって引き起こされる自然現象である。
第一次世界大戦中、通信兵が無線機に耳を澄ませていると、夜明けとその後しばらくの間、鳥のさえずりの様な、あるいは口笛のような、奇妙な音が聞こえてくることがあった。
当時は原因不明であったが、鳥が朝、一斉に鳴き出す様子になぞらえてドーンコーラス(暁の合唱)と呼び、不思議がられてきた。
この電磁波現象の発生機構については、20世紀後半のプラズマ物理学の進展により研究されたが、その周波数変動の詳細なメカニズムは20世紀末まで謎であった。
21世紀に入って複数の人工衛星による高時間分解能のプラズマ波動観測やスーパーコンピュータによる計算機シミュレーションによるコーラス波動の再現により、その周波数変動の謎は徐々に解き明かされてきている。
磁気嵐およびサブストームに伴って地球磁気圏尾部領域から内部磁気圏に注入される高エネルギー電子(1keV-100keV)の温度異方性よって引き起こされる電子サイクロトロン波動不安定性により発生するホイッスラーモード波が、磁気赤道付近で高エネルギー電子とサイクロトロン共鳴して速度位相空間で電子ホールと呼ばれるポテンシャル構造ができて非線形共鳴電流が形成されるため、周波数上昇を伴いながら成長し励起されることが明らかになった。
明け方(dawn)に多く発生するのは、磁気圏尾部の夜側から注入される高エネルギー粒子が東方向にドリフトして朝方の領域へと移動し、数kHzの可聴域でホイッスラーモード波を発生させるからである。
このコーラス波動の発生過程において、大部分の共鳴電子はエネルギーを失い磁力線方向にピッチ角散乱されて極域の大気へと降下しオーロラを発光させる一方、一部の電子は非常に効率よく加速されて、放射線帯を形成する相対論的なエネルギー(MeV)を持つ電子が生成される。
スタンフォード大学の研究所が南極の観測所で受信したドーンコーラスのVLFスペクトログラム
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こうしたことから、自然界に1kHzから5kHzにわたる電磁波が存在していることが判る。
電気文明が作り出したものではない、自然界に存在する電磁波の量はどの程度かに関して、私は興味を感じています。
そうした電磁界に(電磁波)に対しては、人は健康影響を受けないか、受けるとしてもその対処能力を身に着けていると考えることができるからです。
WEBで、面白い情報を見つけました。
名古屋工大では地震予知に関する研究の一環として地殻から放射される電磁波の観測を行っています。
測定周波数は223Hz で低周波の磁界です。
結果の一部が公表されており、 それを見ると
通常は1万分の1ミリガウス程度の交流磁界が観測され、
時々1000分の1ミリガウス程度の交流磁気が観測されているようです。
興味のある方は http://www.eq.ics.nitech.ac.jp/ を覗いてください。
「生まれる子供の男女比に、電磁波が・・・・・・といううわさがよくあります。
以下は、これを打ち消してくれる好例です。
古いログの一部を引用します。
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中京テレビのWEB
恩田千佐子アナの育児日記
http://www.ctv.co.jp/announce/personal/onmama/2002/0121.html <2002年頃のログです、現在はリンク切れ>
第21回: 〜 男の子と女の子の違い 〜 (2002.1.21)
(略)
えー…我が家の子供構成は、"一姫二太郎"です。最初の子供が女の子で、次が男の子!
(これを、女の子1人男の子2人…と思っている方もいるようですが…)
別に狙ったわけでもなく、たまたまなんですが、「上が女で、下が男です。」というと、「よかったね〜。」とか、「産み分けしたの?」といわれます。
ここだけの話、最初の子は"やっぱりママのかわいい恋人、男の子"希望だったのですが、結果女の子で、2人目は"女同士の兄弟のほうがずっと一緒に遊べるし、次も女がいいな〜"と思っていたら、男の子でした。
不思議なものですね…
実は、「テレビ局で働いている男性だと、女の子しか生まれない」という、まことしやか ウワサがあります。
これは、電磁波を浴びているから…らしいですが、実際はぜんぜんそんな事ありません!
男の子のいるお父さんは、たくさんいます。
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「電磁波」といったり、「電磁界」といったりする。 これらの簡単な説明を行う。
詳細は「電磁波の健康影響・基礎講座」を参照。
*電界:
電界とは、厳密な電界の定義とは異なるが、例として、静電気等のある場所で塵芥などが引き付けられるような力が働く場所、そういう目には見えないが、電気の力が働いている場ということが出来る。 電界、磁界はそれぞれ独立して測定が可能で、固有の単位を持っている。
静電気でも、家庭に来ている商用周波数電力の電気でも、上空にたまっている雷の基になる電気でも、電気あれば、電流が流れなくても、そこには電気の働く場としての電界がある。
電界は独立して測定が可能で、固有の単位を持っている。電界の強さ(電界強度)の単位にはV/mが用いられる。
1,000 V/m = 1 kV/m (キロボルト、小文字のk)
0.001 V/m = 1 mV/m (ミリボルト、小文字のm) 0.001 mV/m = 1 μV/m (マイクロボルト、ギリシャ文字のμ)
*電場:
電界と同義語。 工学系では電界という言葉を、物理系では電場という用語が好まれて使用される。
*磁界:
磁界とは、厳密な磁界の定義とは異なるが、例として、磁石がある場所で釘等が引き付けられるような力が働く場所、そうした目には見えないが、磁気(磁石)の力が働いている場ということができる。 電界、磁界はそれぞれ独立して測定が可能で、固有の単位を持っている。
磁界は馬蹄形磁石といった磁石のある場所にも存在するが、電流が流れると、そこには磁界が発生する。 これを発見したのは1820年デンマークのエルステッドである。 どんな微小な電流が流れても、そこには微小な磁界が発生する。
人間の体も電気で動いており、その流れる電流によって磁界が発生している。 これらは脳磁図や心磁図として医療目的で利用されている。
磁界強度HはA/mで示されるが、Tをコイルの巻数として、AT/mで表されることもある。
エルステッドの電流による磁気作用の発明を称えるデンマークの郵便切手
電流が流れている電線とその下に磁気コンパスを描く。
*磁場:
磁界と同義語。 工学系では磁界という言葉を、物理系では磁場という用語が好まれて使用される。
*電磁波:
電磁波とは電界と磁界が相互に密接な関係になっており、 電界が磁界を誘導する、その磁界がまた新たな電界を誘導する、これを繰り返す形で伝播していく波もしくはそうした力が働いている場のこと。
電磁波としては測定が不可能で、電界もしくは磁界としてどちらか一方を、または電界と磁界をともに測定を行う。
電磁波には、X線などの放射線、紫外線、可視光線(目に見える光)、赤外線、マイクロ波などの電波、低周波電磁界などが含まれる。
「電磁波」と言えばこれだけ範囲が広い。 単純に「電磁波」と一言で言えるものではない。 周波数もしくは波長、どの領域の電磁波を話題にするのかを、その都度規定しなければ、正しい議論は出来ない。
*電磁界:
電磁波とほぼ同義。
50Hz、60Hzと言った低周波電磁界になれば、電界と磁界を両方とも個別に、お互いに独立した存在として考えなければならなくなるので、電磁「波」という「波」の感覚からは乖離するので、電磁波よりは電磁界が好ましい用語となる。
低周波電磁界からX線までの全てのパートの電磁波を統合して論議する時は、電磁波よりは電磁界が好ましい表現となる。
*電磁場:
電磁界と同義語。 工学系では電磁界という言葉を、物理系では電磁場という用語が好まれて使用される。
*波長・周波数:
電磁波は繰り返す波として伝播するので、1秒間に繰り返す回数を周波数という。
電磁波は光速(1秒間に30万Km)で伝播する。
ひとつの波の長さは、30万Kmを周波数で割れば得られる。
この波の長さを波長という。従って周波数と波長は相互に換算することができる。
周波数・波長が異なれば、生体への影響は異なる。
1秒間に1回振動を繰り返すことが1サイクルであり、単位はヘルツ(Hz)で表す。
1000Hz=1kHz、 1000kHz=1MHz、 1000MHz=1GHzである。 1000倍になるたびにキロ(k)、メガ(M)、ギガ(G)という単位を用いる。 キロは小文字のk メガとギガは大文字のM, Gを用いる。
*電波:
主に電気通信手段として使用されるマイクロ波などのパートを指す。 日本では電波法で10kHz以上、300GHz以下の周波数帯域をさす。
*直流:
乾電池から供給される電気のように、流れる方向が常に一定である電気の流れ。
*脈流:
電気の流れが常に一定の方向であるが、時間的に変化している場合の電気の流れ。
*交流:
電気の流れる方向が時間的に変化をしている場合の電気の流れ。
ある瞬間はAからBに向かって電気が流れ、次の瞬間はBからAに向かって電気が流れること。
*時間変動:
時間変動磁界というように使用される。
交流と脈流を含んだ言葉で、時間的に電界や磁界の大きさが変化する場合は、「時間変動」という。
*静電気:
摩擦などで発生する電気。電気の方向が一定である。 直流電気ともいう。
*静磁界:
馬蹄形磁石から発生する磁界の強さは時間変動がなく、常に一定である。 変化がない「静的」なということで静磁界(静磁場)という。
直流磁場(直流磁界)とも言う。
*高周波:
交流の中で、比較的周波数の高い部分をさす。
*低周波:
交流の中で、比較的周波数の低い部分をさす。
高周波と低周波の明確な定義はない。 60Hzを主に考えている電力技術者にとっては1kHz以上が高周波である。
携帯電話の電波で900MHzなどを扱っている通信技術者にとっては1MHz以下が低周波である。
*低周波電磁界:
送電線からの磁界などの場合は周波数が50Hz程度と低くなる。
周波数が50Hz では、波長は6,000kmという長い波になる。
これだけ長い波ではひとつの波が6,000km先に到達した時には、エネルギーが少なくなってしまい、電磁波はほとんど消滅してしまう。
これでは、相互に密接に連携した電磁「波」というよりは、電磁界という言葉が好ましくなる。
電界と磁界が独立した場(界)として、両方ともに考えなければならなくなる。
多くの場合、磁界が問題になるのは低周波電磁界においてである。
*電離放射線:
電磁波の中で、X線などの放射線や紫外線の中でも波長の短い紫外線は「電離放射線」と呼ばれる。
可視光線やX線を光子の放射と捉えた場合、それぞれの光子の一つ一つのエネルギーが大きい。
このため、生体の細胞・分子等に直接的、あるいは化学的に不安定な物質を作り生体成分に影響を与える間接作用により、DNAの損傷迄起こす力がある。
しかし、我々の生活環境には放射性物質が存在し、常日頃放射線に暴露しながら暮らしているように、暴露量が少なければ、生体への悪影響は検出困難なレベル以下であるか、人類が誕生して以来、自然界に存在する微量に存在する電離放射線に対して、ヒトは耐性ができていると考えることができる。
これらの電離放射線に関しては、古くから国際的な環境基準・暴露基準等が定められている。
*非電離放射線:
紫外線の中でも波長の長い紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波などの電波、低周波電磁界は「非電離放射線」と呼ばれ、分子等から電子をもぎ取ったりするだけのエネルギーは持っておらず、直接的な効果はない。 電離放射線に比べれば非電離放射線の危険度は低い。
*遠方界と近傍界:
電磁界は電界と磁界が相互に密接な関係にあるものであるが、そのように密接な関係になるのは、電磁界の波源から、ある一定以上離れた場所においてである(アンテナの種類や大きさなどで異なる、例:2波長の距離、3波長の距離、また約6分の1の波長の距離となる)。 これを遠方界という。
遠方界では電界か磁界かいずれかを測定すれば、他の界は換算して得ることができる。
この一定値より近い場所では、電界と磁界はお互いに独立した関係にあるとみなす。
これを近傍界という。 近傍界では電界と磁界をともに測定しなければならない。
*均一電磁界と不均一電磁界
全身を均一な電磁界で曝露した場合と、不均一な電磁界に曝露した場合では影響が異なることはうなずける。 例: ヒトは全身、雨でずぶぬれになれば、風邪を引く恐れがある。 しかし、洗面器の水で手の先を洗っただけでは、風邪を引くことはありえない。
ヒトにとって不均一でも、ラットにとっては均一磁界かもしれない。
ラットにとっては不均一磁界でもシャーシに取り出した細胞にとっては均一磁界かもしれない。
多くの電磁波曝露基準は「全身均一に電磁波に曝露した場合」を想定している。
不均一な電磁界への曝露の場合は「空間的な分布を測定して、平均と計算する」ことになる。
ここに、細胞に均一磁界を当てた電磁波の影響実験がヒトにそのまま外挿できない理由がある。
ラットに均一に電磁界を当てた実験結果がヒトにそのまま外挿できない理由がある。
*基本波と高調波
色々な波形の電波(電圧でも、電流でも良い)は、その波形を分析すると多数の周波数成分によって構成されていることがわかる。 この解析は数学のフーリエ級数で考えることが出来る。
例えばIH電磁調理器は22kHzという動作周波数で磁界を発生させ、その磁界が鉄などの鍋に誘導させて、鍋を加熱させている。
発生させている磁界には、22kHzより高く、22kHzの整数倍の周波数の磁界も同時に存在している場合が多い。
この基本動作周波数である22kHz成分を「基本波」とよび、22kHzを「基本周波数」という。
2倍の44kHz、 3倍の66kHz、4倍の88kHzをそれぞれ2倍、3倍、4倍の「高調波」と呼ぶ。
図1 パルス的な波形 図2 基本的な正弦波形
フーリエ級数で展開をすれば、図1のようなパルス的な波形は、図2に示す基本的な正弦波の波形の組み合わせであることがわかる。
逆に色々な周波数を組み合わせると任意の波形を作成することができる。
音楽のシンセサイザーと全く同じ原理である。
*周波数スペクトトル:
音楽では周波数が一定な単音だけではなく、色々な周波数の音が同時に、低い音から高い音まで、含まれている。
音楽と同じで、電波(電磁波)も、図2にある一つの周波数だけからなるとは限らない。
複数の周波数の電磁界が同時に存在し、電磁界の波形が図1のようなパルス的な波形であれば、同時に多数の周波数の電磁界が存在することになる。
こうした同時に複数の周波数成分の測定を行なうことを周波数解析といい、それで得られた個々の周波数成分を周波数スペクトラムという。
図3 周波数解析の例 図1のパルス波形はこうした色々な周波数成分から構成されている。
図3にある基本波、3,5,7次高調波の大きさの割合を示す。
基本周波数(10kHz)の大きさ1とした時に、3次高調波(30 kHz)の成分は0.6であり、5次高調波(50 kHz)の成分は0.5、 7次高調波(770 kHz)の成分は0.4であることを示す。
*磁界の単位
磁界は独立して測定が可能で、固有の単位を持っている。 磁界の強さ(磁界強度)の単位はA/mである。
1,000 A/m = 1 kA/m (キロアンペア、小文字のk) 0.001 A/m = 1mA/m (ミリアンペア、小文字のm)
これらの強さは磁束密度で表すことも出来る。 磁束密度の単位はT(テスラ、大文字のT)。
0.001 T = 1mT(ミリテスラ、小文字のm)
0.001mT = 1 μT(マイクロテスラ、ギリシャ文字のμ) 0.001μT = 1 nT (ナノテスラ、小文字のn)
磁界強度から磁束密度は以下の式で換算できる。
磁束密度(テスラ)= 4 π x 10-7 x 磁界の強さ(A/m) 従って、1 A/m = 1.2 μT となる。
*ガウス (G と書く)
磁界の単位。 正確には磁束密度の単位である。 非常に古くから用いられている。
現在ではテスラを用いることになっているので、学術論文や公式的な文書では用いない。
1ガウス=1,000 ミリガウス
ドイツの電磁気学の研究者であるガウスの名前に因む。
*ガウスメータ:
磁界測定器のこと。 ガウスという用語は磁界の単位としては使用できなくなっているが、長い過去の習慣の延長線上で、ガウスメータという言葉もまだ生きている。
*テスラ (T と書く)
現在使用されている磁界の単位。正確には磁束密度の単位である。
ガウスとの換算が可能で、10.000ウス=1 テスラである。
1 テスラ =1,000 ミリテスラ (mT)、 1mT=1,000 マイクロテスラ(μT) 。
従って、 1mT = 10 ガウス 1μT= 10 ミリガウス となる。
アメリカの電気工学者であったテスラに名前に因む。
*電力密度:
電磁界の強度を考える時、電界は電圧(交流100Vなど)、磁界は電流(交流10Aなど)と対比して考えることが出来る。
電圧と電流をかけたものが電力(500Wの消費電力など)である。
空間にある電磁波も、その空間に存在する「電磁波の電力の大きさ」で表現することが出来る。
電磁波の発生源からある一定以上の距離がある場所では、
電力密度 = 電界強度(単位はV/m)の二乗/377 =
磁界強度(単位はA/m)の二乗 x 377 である。
電界強度/磁界強度=377の一定の関係にある。
この377は空間インピーダンスと呼ばれる。
電力密度の単位としては、W/m2 や mW/cm2 が用いられる。
1 W/m2 = 1,000 mW/m2 = 1,000 mW/10,000 cm2 = 0.1 mW/cm2で相互に換算が可能。
例:10 W/m2 = 1 mW/cm2となる
「できるだけ平易な解説を」と、本講座では考えていますが、どうしても避けられない面があります。
英文字の略語集: 随時 更新の予定
*BEMS: Bio Electromagnetics Society の略語
世界で唯一の電磁波の生体影響を論議する専門学術学会。 本部はアメリカ。 日本人研究者も参加。
*ELF: Extremely Low Frequencyの略語
低周波電磁界の中での50Hz 60Hz などの低い周波数を取り扱う。
*EMC: Electro magnetic
Compatibilityの略語
機器からの電磁波の放射や、それらが他の電気通信機器への妨害の低減などを図ること。
それらに関連した技術。
このEMCという用語を用いる時は、生体や健康影響という側面は考慮されないことが多く、どちらかといえば「工学」的な面が強い。
最近では、EMCの中に「生体影響」も含むようになってきている。
*EMF: Electromagnetic Fieldの略語
電磁波、電磁界、電磁場の原語。
*ICNIRP: International commission on Non-Ionizing Radiation Protection の略語
国際非電離放射線防護委員会と訳す。 非政府組織の学術専門家のグループ。
非電離放射線と呼ばれる電磁界のパートにおける人体影響に関する国際的な提案を行っている。
1998年に電磁界暴露に関するガイドラインを提唱し、この提案が現在欧州で受け入れられつつある。
*MPR-2 MPR-U
スウェーデンで提案されたVDT作業に関するガイドラインの名称。
MPRという組織は現在では組織改編によって存在しない、ガイドラインの名称にその名を残している。
1987年に最初のガイドラインを発行。
1990年に改正したガイドラインを発行し、これが俗称でMPR-2と呼ばれている。
VDT作業に関連したガイドラインで、画面の品位などの規定であるが、VDTから放射される静電気、低周波電磁界の規定を含んでいる。
電磁界に関しては世界で始めてであり、類似の規定が他の国にも、国際的にもなかったので、世界に広まった。
このガイドラインで提唱されている電磁界の輻射限度値は、健康影響の防護の観点から「かくあるべき」という論拠が見つからなかったので、技術的に・価格的に、できるだけ低くするという観点から提案されたものである。
スウェーデンの医学会はこのMPR提案は不要であるという声明を発表しており、このガイドラインの必要性は必ずしも科学的・医学的な論拠を持っていない。
しかし、機器からの電磁界放射を野放しにせず、ある一定のレベルに抑ええ込んでいるので、一般にパソコンユーザにとっては、安心感が得られる。
*TCO規定
スウェーデンのTCO Development という民間会社が提唱している規定。
スウェーデンの労働組合総連合であるTCOは、労働衛生の観点から規定を提唱した。
そしてそれを専門に行う会社として独立させた。 かなりユニークな規定を提唱している。
VDTからの電磁界に関しては、MPR−2が提唱した規定値に対して、「厳しければ厳しいほど良い」という論点から、厳しい限度値を提唱している。
*VDT : Visual Display Terminalの略語。
コンピュータ等の表示装置のこと。
コンピュータはその発達の歴史の中では、コンピュータへのデータ入力はパンチカードなどにより、出力データはプリンターの出力をもって、行われていた。
すなわちコンピュータの動作の制御や指示、結果の表示はリアルタイムでは行われていない。
やがて、ブラウン管を用いた表示装置が用いられるようになり、目でコンピュータの動作状況を把握できるようになってきた。
そこで、目で見ることのできる、あえて目で見ることのできる端末装置ということで、Visual Display Terminalという言葉が用いられるようになった。
画面を見ながらコンピュータ作業を行うことが一般化し、VDT作業という新しい仕事が誕生した。
現在ではVDT作業は特殊な仕事ではなく、文房具を扱うかのような一般的なパソコン作業になっている。
*VDU : Visual Display Unitの略語
VDTと同義語。
*VLF: Very Low Frequency の略語
低周波電磁界の中で、10kHz、50kHzといった少し高い周波数を取り扱う。
医学関係の専門用語: 随時 更新の予定
*プロモータ作用
他の要因で癌になりかけた細胞を、発病迄に促進する作用
*コ・プロモータ作用
癌の促進作用を持つ物質の作用を増強する機能
*人とヒト
一般に人体影響、「人への影響・動物への影響」という形で「人」という文字を用いる。
しかし、動物学的に人を見た時は、「ヒト」とかな書きをする。
これは「マウスへの影響があるが、ヒトへの影響はない」といったように時に使用する。
ワープロの変換ミスではありません。 意識して「ヒト」という表現を用いる場合があります。
*MRI:
医療診断装置の一つ、非常に強い静磁界を利用する(1テスラ程度から数テスラの磁界)。
*ハイパーサーミア:
医療治療装置の一種。
電磁界を人体にあてて、人体内部で発生する熱による体内温度上昇を利用して治療を行なう装置。
電子工学・エレクトロニクス・通信関係の専門用語: 随時 更新の予定
*平均値:
時間で変動する電圧などをその平均を取って表した値。
場合によっては時間平均値とか、算術的平均値という言葉を用いる。
図2にある様に、時間1では1、時間2は4、時間3では1に変化する場合、この期間の平均値は2である。 しかし、実効値の場合は、時間1における値1の二乗で1、時間2における値4の二乗で16、時間3における値1の二乗で1、総和は18、期間3で割って平均を取ると 6、6の平方根は2.45となる。
平均値と実効値はこのように値が異なる。
*実効値:
電気工学の世界で広く使用されている言葉。
基本的には、特記なき限り、すべての測定値はこの実効値で示す。
Root Mean Square Value( RMS値)ともいう。
時間で変動する瞬間値をそれぞれ二乗し、総和を求め、その期間の平均値を求めてから、再度平方根を開くというやり方で求められる。
この実効値を用いると直流でも交流でも同じ電力消費値(熱の発生)となる。
平均値の場合は、直流1Aの場合と交流1Aの場合では、熱の発生量が異なってしまう。
実効値を用いれば、同じ発生熱量となる。
*イミュニティ:
電磁波の測定では一般に機器からの輻射量を測定し、出来るだけ機器からの輻射を少なくする。
一方色々な電子機器が外部の電磁界ノイズによって誤動作することがある。
よって外部からのノイズに耐えられるようにも設計を行なう。
この外来ノイズに対する耐性のことをイミュニティという。 適切な日本語の訳語はない。
*TEMセル:
均一な電界分布となる空間を作る必要がある場合がある。
こうした目的で、特に高い周波数の電界を得るための特殊は試験装置の一つがTEMセルである。
*無線局:
基本的には意図的に電波を出して無線通信を行なう場所が無線局である。
携帯電話の様に移動しながら無線通信を行なう場合は移動無線局という。
無線局は意図的な無線通信を業務とする場所には限定されない。
電磁調理器でも、5 kW、10 kWという大型になれば、他の通信に影響を与える恐れがあるので、設置許可が必要になる。
こうなれば、「無線局として免許を取得した業務用電磁調理器」となる。
電磁調理器も小型のものは設置免許が不要なので「無線局としての免許の不要な無線局としての電磁調理器」となる。
*電気設備基準:
日本では、送電線からの電磁界によるヒトの健康影響を防ぐために、1969年頃に電力会社、電気学会、日本医師会の共同研究が行なわれ、電界強度を3 kV/mに制限することが提案された。
この当時はまだ低周波磁界に関する健康影響の不安はなく、電界に関する影響度の研究で終わっている。 この値は現在法的に採用され、電気設備基準の一部になっている。
測定に関連する用語集
*検出器、プローブ、センサ:
電磁界の測定器は電磁界を検出する部分、検出器からの信号を増幅したり信号処理を行なったりする部分、結果をメータや画面に表示する表示部からなる。
電磁界の検出器が大きなウエイトを占めている。
検出器のことをセンサ(sensor
感じる)、プローブ(prove
探り針)ともいる。
*ホールセンサ:
磁気センサの一つ、ホール素子という磁気を感じる素子を用いたもので、静磁界も測定できる。
*アンテナ:
無線では良く使われる、電波の発信器でもあり、同時に受信器(検出器)でもある。
同じものが送信器としても、また検出器としても使用できる。
色々なアンテナのタイプがある。 代表的なものは標準として用いられるダイポールアンテナ(電磁波の半分の波長の長さの金属棒2本からなる)、
テレビジョン受信機用の八木アンテナ、パラボラアンテナ、丸いループ形状をしたループアンテナなどである。 電磁波の測定用には、ダイポールアンテナやループアンテナが用いられる。
*アンテナエレメント:アンテナを構成する金属棒などをアンテナ素子(エレメント)という。
*等方性:
アンテナから発信される電波が、360度全方向に向かって均等に発信されることを等方性という。
受信(検出)の場合は、360度どの方向からの電波も均等に受信(検出)できることを等方性という。
現実にある全てのアンテナは、どのアンテナも全方向に均等に発信は出来ず、ある程度の方向性を持っている(これを指向性という)。
従って、一つの受信アンテナでの測定ではアンテナの向く方向に大きく依存する。
電磁界は、X,Y,Z軸方向(3軸)にそれぞれの強度を持っている、電磁界は3軸の方向成分から合成された「向きを持つ強度」である。
*単軸センサ:
センサとして一つのアンテナだけで測定を行っている場合。ある地点の電磁界強度を正確に把握するためには、短軸センサの測定器の場合は、センサ部の軸方向を3回変えて測定する必要がある。
構成が簡便なので廉価となるが、測定には熟練が必要となる。
*3軸センサ:
一つのセンサの中に、X,Y、 Z軸の電磁界を同時に独立して測定が可能なように、3つのアンテナを具備したセンサ。
この方式であれば、センサを測定する場所に置くだけで、その場の電磁界強度を容易に測定が可能となる。
*感度:
どの程度の微弱な電磁界を測定できるか、その限度を示す数値。
感度がよければより小さい電磁界を測定できる。 1 Vまで測定できるか、0.01 Vまで測定できるかといった数値が感度。
*ダイナミックレンジ:
如何に感度が良くて、微弱な電磁界が測定できたとしても、ちょっと大きい電磁界は測定できないというのでは使用しにくい。
正確に測定できる測定可能な強度の範囲を示す数値。
この数値をダイナミックレンジという、広ければ小さい電磁界から大きい電磁界まで、大きい電磁界と小さい電磁界が同時に存在する時に、それらが正確に測定できる。
*精度:
測定して得られた数字に対してどこまで正確であるかを示す指標。
100 Vまで測定できる測定器で50 Vが測定された時、測定器の精度が2 %であれば、真の値は50 +/- 1 Vとなる。
誤差の大きさ(精度)は+/-
1 Vとなる。
測定値が25
Vであれば真の値は25
+/- 0.5 Vで、誤差の大きさは測定値に対して常に一定の割合である。
*確度:
精度と似ている指標であるが、確度といった場合は、その測定時の最大測定値(フルスケール)の値に対して定められた正確さを示す指標。
フルスケール100
Vに対して確度2
%であれば、測定指示値の如何を問わず、常に+/-2Vの誤差があるという意味。
測定指示値が50
Vであれば、真の値は50
+/-2 Vとなる。
測定値が25Vの場合は真の値は25 +/-2 Vであり、フルスケールに対して測定値が小さくなれば、相対的に測定の精度が低下する。
*表示分解
測定器で得られる指示値がどこまで細かく表示されているかを示す指標。
4桁であれば1356 Vという形で細かく測定が可能、 もしこれが3桁であれば4桁目は四捨五入されてしまい表示値は1360 Vとなり、1 Vの桁が読めなくなる。
表示分解能と精度・確度は独立した関係にある。
表示分解能が細かくても、精度が良いとは限らない。
*空間分解能:
空間に存在する電磁界は、無限に一様ではない。
空間的に大きさが変化している。
特に機器からの近傍では、距離によって大きく電磁界強度が変化する。
こうした空間的に変化している電磁界に対して、センサがどこまで細かく測定できるかを示す指標。
*校正:
測定器は時間の経過などによって、その正確さが狂ってくる。
従って定期的に標準となる測定器と比較して、指示値が正しくなるようにチェックを行なう必要がある。
この業務を校正(較正という言葉が本来の用語)という。
*トレーサビリティ:
校正を行なうに当たり、自家の標準器で校正するだけではなく、国家的な標準器などとも校正が取れるように管理されていること。
国家標準器と自社の標準器を校正し、自社の標準器と個々の測定器とを校正を行なうというシステムが構築されていれば、その会社の校正システムは「国家標準にトレーサビリティが取れている」といえる。
作成:2002−12−20
リスクRiskという英語を「危険」と訳しています。
類似の用語のHazardとriskの違いは何か、ちょっと考えて見ました。
まず、Webster英々英辞典から
Risk: Possibility of loss or injury, a dangerous element
or factor.
損失や障害の可能性、 危険因子や要素
Hazard: source of danger. 危険となる源、 危険なもの
従って、英語の表現ではこの二つの用語の間には、厳然たる用語の意味の違いが存在する。
一方 英和辞典では
Risk: 危険、冒険、保険用語では危険率、保険金額
Hazard:危険、冒険 となっている。
英語のRisk, Hazardを単純に翻訳すれば、ともに「危険」」となり、英語での差異、大きな差異は消えてしまう。
IARCの発がん性ランク2Aと2Bの判定基準の英文での厳然とした差異と日本語訳した時の差異のあいまいさと同じ状況に、このHazardとRiskもあるように思う。
従って、Hazardは危険と翻訳し Riskは「危険の可能性」もしくは「リスク」と翻訳するのが良いと私は考えました。
目次
$1.本レポートの目的
$2.疫学の概要
$3.疫学の用語集
$4.疫学の基礎 補足1 危険率6倍の例
$5.疫学の基礎 補足2 0157の疫学の例
$6.疫学の基礎 補足3: 疫学が有効だった例;感染症の原因究明
$7.疫学の困難さ
$8.疫学で対象とした曝露の全体を把握しているか?
電磁波の生体影響を論議する時、過去に行われた研究、現在進行中の研究等の多くが疫学研究であることに気づく。
電磁波が生体に影響するか否かを見る時、どうしてもこの疫学研究結果を避けて通ることはできない。
疫学とは如何なるものか、如何なる限度があるのか、等を知る必要がある。
そこで、簡単に疫学の概要を纏めた。
結論としては、疫学調査には限度があり、疫学調査は研究手法の一つであり、疫学調査の結果だけでは、結論を出すことは困難である。
疫学はひとつの学究的な手法としては有効な学問であり、この手法を否定するつもりはないが、疫学だけにこだわっては、全体像を見失う恐れもある。
疫学の基礎知識として、疫学の手法を概説する。
参考文献;相本、武田”平成3年度 電磁波の安全性に関する調査研究・報告書(2)疫学的文献概要”EMC 1993年6月5日号 bU2 P76ー90”
1)疫学的研究とは
疫学の主目的は、疾病と環境因子の間の因果関係を究明することにある。
色々と考えられる数々の要因の中から、それぞれの因子の相関係数の大きさを調べることによって、因果関係の強いものを探しだすことができる。
多数の考えられる因子の中から比較的容易に、原因と考えられる因子を選びだすことができるという長所がある。
ただし、この疫学研究で仮に強い相関関係が得られたからといっても、それだけでは疾病とその因子の因果関係が確定する訳ではない。
偶然性(偶然に起こったことが研究結果を左右しない様に、十分大きな規模で、研究する)、バイアス(研究方法・対象等になんらかの偏りがないか)、交絡因子(研究結果を誤って、大きく左右しかねないような、隠れたその他の要因・因子等)に十分注意をする必要があることは当然である。
2)研究の方法
疫学には、次の2種がある。
@記述疫学
対象とする健康・疾病の実態を対象集団、対照集団等についてありのまま観察もしくは、アンケート調査やインタビューによって調査する。
A分析疫学
仮説を立て、仮説の妥当性を積極的に検証する手法である。
仮説を検証する為の対象群や仮説原因への暴露群を設定する、さらに”仮説原因以外の条件”を対象群・暴露群とも同じになるように整合させた対照群を設定する。 両群を比較検討し、その差異等を統計学的に分析し検証する。
この仮説原因以外の条件を両群でそろえることが疫学の難しい面で、その他の交絡因子が入り込む余地がある。
ある疫学者との懇談の中で、「対象群(暴露群・ケース)と対照群(非暴露群・コントロール)をあまりにも整合を取りすぎると、なぜかリスクを検出出来なくなる時がある」と。
これはもしかして、交絡因子の調整にばかり調査の主眼がおかれ、結果として奨励や対照群の選択にバイアスが入ってしまうことかもしれない。
厳密に条件を設定すると、両群の間に差違が見つかりにくくなると言うことで、疫学の限界を感じる。
いずれにしても、条件設定には非常に厳格な工学の観点から考えればおかしいことである。
分析疫学の方法としては次の3種がある。
@発病率研究・死亡率研究
対象とする集団における発病率・死亡率を他の集団(例、全国平均)と比較する方法を用いる。
A症例対照研究(ケース・コントロール研究)
患者(症例、ケースという)と非患者(対照、コントロールという)とからなる研究対象集団を設定する。
この両群について、仮説要因の暴露の有無を調査する。
そして、患者群の中に含まれる暴露者の割合 A/(A+C)と、非患者群の中に含まれる暴露者の割合 B/(B+D)を比べる。
その他の因子は、両群共に同じと推定して、無視する。
ここに他の因子が交じり込み、正確な研究ができなくなるという疫学の限界がある。
リスクの計算に関して直接的に罹患率(発病率・死亡率)が求められないので、代用としてオッズ比として、算出する。
従って、症例対照研究では、相対危険度は得られなく、オッズ比という「危険度の推定値」が得られる。
|
ケース(症例) (患者) |
コントロール(対照) (非患者) |
|
仮説要因への暴露有 |
A |
B |
A+B |
暴露無 |
C |
D |
C+D |
|
A+C |
B+D |
|
A/(A+C)
______________
C/(A+C)
オッズ比= ________________
B/(B+D)
______________
D/(B+D)
AD
= _______
CB
ケース・コントロール研究の長所はコホート研究よりも時間的、経済的に容易であること、そのためコホート研究の前段階としておこなわれることが多い。
欠点は患者・ケース群は病気になっており、過去に暴露したかしないかの判定に情報の偏り・バイアスと呼ばれる思いが入りやすく(リコールバイアスと呼ぶ)、研究精度が落ちる点である。
この研究はまた、研究対象として得られた患者の総数でもって研究規模・研究精度が決定されてしまうという欠点もある。
Bコホート研究
コホート研究では、仮説としての要因に暴露している人と、曝露していない人からなる研究対象集団(コホート)を設定する。
この集団を比較的長期に渡って追跡し、暴露群と非暴露群とからそれぞれ何人の患者が発生するかを観察する。
非暴露群の中から発生した患者数の割合 C/(C+D)と、暴露群の中から発生した患者数の割合 A/(A+B)の比較から、相対危険度を算出する。 このコホート研究では、直接「罹患率」及びその比較ができるので、正しい意味での相対危険度が算出できる。
A/(A+B)
相対危険度(リスク)= _______________
C/(C+D)
コホート研究には追跡を未来に向かって行なう前向きのコホート研究と、過去に向かって追跡する後向きのコホート研究がある。
バイアスを避けるためには、前向きのコホート研究が当然好ましく、精度のある研究を実施できる。
ただし、未来へ向かって追跡するので、結果が出るまで長い年月と費用がかかる。
また、ある因子に曝露しているか、していないかの違いで2つの群に分けるが、それらの曝露の程度が長期にわたって条件が変わらないという保証はない。
ある短期的な曝露の有無だけで、その後の発病の率を調べるのであれば、前向きのコホート研究は精度良く可能である。
例えば、強い放射線を浴びた人が、浴びない人とどの程度の病気発生率の違いになるか、年数の経過で追跡するという研究では精度の良い結果が得られる。
3)因果関係の確定
疫学調査で強い相関関係が見いだされた時、因果関係を論じる為には、次の点等を考慮する必要がある。
@関連の普遍性;仮説となった要因と結果の関係が、別の集団や他の研究者によっても同様に認められていること。
A関連の密接性;統計学的検定で高度に有意であること。 あるいは、量-反応関係が成立すること。 等
相対危険度やオッズ比の大きさは、要因と結果の関連性の強さを表す。
しかし、この値は、例えば、肺癌と喫煙の疫学調査結果の如くリスクが5から16倍程度と相当高い値でないと、他の交絡因子の影響等を排除できなくなる為もあって、意味が少ないと疫学的には評価されてしまう。
リスクが5以上の場合、相関関係(因果関係)が相当強いと言える。
この点は工学の立場にあり、数字を厳密に、絶対値としてとらえることを常としているものにとっては、疫学研究結果におけるリスクとして得られた数字の解釈の違いに、かなりのとまどいを覚える。
疫学の場合は、得られた相対危険度の数字の大きさだけではなく、その他の条件も加味して、評価が行われる。
通常、リスクが2倍といわれれば、「2倍も危険」と解釈するが、疫学の場合は「相対危険度が2倍」とでても、この2倍という数字は絶対的ではなく、参考値でしかない。
こうしたところが疫学をきちんと解釈しなければならない要注意の点であり、間違いやすい点である。
新聞などの報道で、過度に数字だけが大きく取り上げられ、 世の中をミスりード(誤った方向に導く)する恐れのある点である。
疫学に関連する用語を簡単に説明する。
交絡因子:
究結果を大きく左右しかねないような、隠れたその他の要因・因子等を交絡因子という。
電磁波暴露に着目した研究の場合、電磁波以外の疾病の原因となるかもしれない要因をきちんと制御しておく必要がある、 そうした因子が交絡因子となる。
例えば、VDTからの電磁波に着目した疫学研究の場合、他の機器からの同類の電磁波暴露や暴露電磁波の周波数等のこと、タバコや服用している薬品類、飲用している酒等の諸々の因子が交絡因子となる。
過剰危険割合;
疫学研究で得られた相対危険度は、仮設として設定した因子による危険度の他に、その因子がなくても通常存在する危険度を含んだ数値である。
例えば、得られた相対危険度が10、通常存在する危険度を2とすると、8がその因子による危険度となる。 この8に相当する危険度を過剰危険割合という。
標準化死亡比;
全体の死亡率を1・0とした時、特定の集団の死亡率との比率を標準化死亡比という。
特に年令構成や男女比等を考慮して補正したものをさす。
人年法;
1人を1年間追跡した時が、1”person−year”で、いわゆる”延べ”人数と同じ考え方である。
この数字が大きいと、それだけ規模の大きい研究となる。
ある程度以上の規模がないと、偶然に左右されてしまい、研究にばらつきが出て、「問題を見つけた」といいう研究者と「問題は見つからなかった」という研究者間の論争の原因となる。
リスク:
疫学調査では、リスク(危険度。危険率)という言葉を、疾患の無い人々がある要因に暴露して疾病に罹患する確率の高さ、ということに限定して使用している。
相対危険度か、オッズ比かを見極める必要はある。
相対危険度 RR (Relative Risk) ;
暴露群と非暴露群の罹患率の比を相対危険度という。
相対危険度では、絶対的なリスクの大きさは現せない。
しかし、相対危険度は暴露と罹患の関連性の強さを現す良い指標である。
コホート研究ではこの相対危険度を直接計算できる。
オッズ比;
症例対照研究では直接的に罹患率が求められないので、ケースとコントロ−ルでの暴露の頻度を比較することにより、概念的かつ数学的に相対危険度に類似した値を計算する。
これをオッズ比という。 暴露と疾病の間の相関関係が強ければオッズ比も大きくなる。
多くの研究者はこのオッズ比を、相対危険度の推定値、もしくは、単に相対危険度として報告している。
こうしたことは議論の残る点である。
比較死亡率比(PMR);
母集団の比較死亡率から期待される比較死亡期待値を求め、暴露群で実際に観測された比較死亡率の比をとったもの。
この比をO/E比(Observed/Expected Ratio)と呼ぶ。
Healthier effect;
優良企業等で働いている場合、一般の罹患率・死亡率と比較すると、リスクが低く出てくることが多いこと。
対象と対照;
疫学ではこの類似の2つの言葉をはっきり区別して使用する。
症例とは暴露群であったり、患者群であったり、仮説として設定したある要因をもっている研究の対象群である。
これらの症例と比較検討する為に、非暴露群、非患者群、仮説として設定した要因をもっていない対象群を設定する、これらの比較対象となる群を対照という。
リコールバイアス(Recall bias);
病人・患者は自分の病気になった原因をあれこれ考えることが多いのでので、非病人・非患者と比較して、何らかの仮説として設定した要因の想いだしかたに、差が生じることがある(色々なことを良く思い出す)。
こうした差が疫学調査における誤差の原因の一つになっている。
これをリコールバイアスという。
たとえば、喫煙と疾病の関係を調査したとして、毎日10本から20本吸っていた人が病気になった、その人はたばこが原因の可能性があれば、平均18本くらい吸っていたと実績より多く回答するかもしれない。
毎日10本から20本吸っていても、病気にならなかった人は、平均12本程度と、実績より少なく答えるかも知れない。
これだけでたばこの本数と疾病の関係で1・5倍の差違が出てくる。
パブリケーションバイアス:
色々な研究が行われているが、何か問題を見つけた研究は論文にまとめられたり、またマスコミに報道されたりすることが多い。
一方、同じ研究でも特に問題が見つからなかった研究ではどちらかといえば論文に纏めることが少なくなり、マスコミに報道されることも少ない。
このように「問題がある」という研究や論文が「問題はない」という研究や論文より多くなるという傾向にある。 こうした傾向をパブリケーションバイアスという。
「問題がある」という研究が多いからという理由で「ある因子は危険である」と単純に判断することは危険な考え方である。
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日本産業衛生学会の「産業衛生学雑誌」2002年3月号に、久永直見らの「トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンに曝露された労働者に発生する急性肝炎を伴うステーブンス・ジョンソン症候群」という論文が掲載されています。
これは労働職場におけるこれらの化学物質に曝露したと思われる作業員の疾病に関する研究報告です。
労働衛生に興味のある方はこの論文を読んでください。
疫学に関連して、興味のあることが記述されています。
疾病の原因調査のひとつとして「従業員寮は1室10−12名で、同室者に患者がいる場合は、いない場合に比べて、オッズ比(相対危険度)が6で、有意に高かった。
しかし、フィリピンから来た女性以外は罹患しておらず、感染は考えにくい」 という4行の記述です。
相対危険度が6倍となれば、室内での感染が疑われても、もしくは原因であると断定さえてもおかしくはない状況ですが、この研究では、6倍であっても、その他の事象と合致しないとして、この仮説は否定されています。
オッズ比が6倍と高い数字が出ても、それが他の事象などによって説明がつかなければ、それで結論を出すことできない、という例です。
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1996年に堺市で起きた0157食中毒事件では、原因となった食材の判定に、疫学調査が利用された。
食中毒となった患者の共通的な食材から、非加熱で食されたものは牛乳と、南野農園から出荷されたカイワレ大根だけであった。
牛乳は工場集荷時点で殺菌されているので、「カイワレ」がもっとも疑わしい食材とされた。
これによって、全国的にカイワレは売れなくなった。
南野農園への立ち入り検査などの調査では、菌や毒素は検出されず、結局原因は特定できなかった。
南野農園は、カイワレ公表は不当であったとして裁判に訴え、6年後、2002年3月の新聞報道(参考)によれば、南野農園は勝訴したとある。 食中毒の場合は、完全な原因特定は不可能な場合もあり、「もっとも疑わしいもの」として公表することが妥当ではないか、という側面はある。
参考: 産経新聞 2002年3月16日 : 0157訴訟 大阪地裁 「カイワレ」公表は不当 国に賠償命令
産経新聞 2002年4月8日 : カイワレ裁判を追う 0157禍の真犯人は?
この例から、疫学はひとつの研究手法として有益であるが、疫学の結果だけでは真実を語ることはできない、といえる。
労働の科学2003年12月号 労働科学研究所発行に掲載された「中島一敏 SARS事件に学ぶ新興感染症に対する危機管理」の中で紹介されていた事例を抜き出した。
これは疫学が有効に働いた例で、疫学で原因を絞り込み、検査で病原菌を突き止めている。
作成: 2003−12−25
********** ************
近年の日本における新しい感染症の発生
2001年5月,K市の動物園にて,従業員5名が次々と原因不明の呼吸器感染症に罹患した。
医療機関における検査では原因がわからず,プルセラ症疑いと報道されたその到列では,感染拡大防止の目的で施設が一時閉鎖された。
筆者はFETPの一員として疫学調査に加わった。
詳細な調査の結果,5人は,従事した大型哺乳動物のヘラジカの出産介助によって感染したことが突き止められた。
病原体を突き止めるべく,国立感染症研究所を含む複数の研究室で検索した結果,ヘラジカの胎盤,胎仔,羊水がオウム病クラミジアに感染,汚染され,それらに接触したことによるオウム病だったことが判明した。
通常,オウム病は,烏類との接触によって感染する。ヘラジカの出産によって起こったオウム病集団発生は世界初事例であった。
また,1996年の関西地域を中心とした腸管出血性大腸菌0157の集団発生は記憶に新しいところである。前例のない感染症の発生は,決して対岸の出来事ではない。
************ ************
おことわり:
このページは、学術的な正確性よりは、判りやすさに力点をおいてあるので、専門家の方は記述に不満を感じるかも知れません。
HarvardのRisk in Perspectiveというニュースレターの1998年12月号を読みました。
この号では
「農民は一般的に言えば、健康である。 癌になることも少なく、都会に住む人間に比べれば長寿である。
しかし、いくつかの疫学調査によれば、農民にも癌が多いという研究もあるので、研究を行なう。」と ありました。
このことから、電磁波との関係を考えてみました。
都会に住むから電磁波にまみれているとした人と、都会から離れて広い農地で農業を営み電磁波とは殆ど関係がないと覆われる農民を、電磁波への曝露だけを取り出して、発癌のリスクを比較しても意味が無いことになります。
農民は農民で電磁波ではない他の要因で発ガン要因を持っているからです。
それだけに、疫学を行う、意味のある疫学研究というのは研究の立案が難しい ということになります。
坪野先生から発信されている医学情報メールサービスにあったものの一部引用です。
************** **************
Subject: 歩行と激しい運動、循環器疾患の予防効果は同程度。
Global Risk Communications Newsletter 2002/09/06 坪野吉孝
歩行と激しい運動、循環器疾患の予防効果は同程度。
米国の閉経後女性73,743人を約3年間追跡したところ、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患に対する予防効果は、歩行でも激しい運動でも同じくらいだった。
ハーバード大学のグループによるこの研究は、ニューイングランドジャーナルオブメディシン2002年9月5日号に報告された。
■全米から7万人が参加
1994−98年にかけて全米40施設で募集した、50−79歳の閉経後女性73,743人を対象にした。
自己回答の質問票を使って、余暇時の身体活動についてたずねた。
身体活動は、歩行、激しい運動(エアロビクスやテニスなど)、中等度の運動(自転車乗りや軽い水泳など)、軽度の運動(ボーリングやゴルフなど)に分けて質問した。
平均で3.2年(最長で5.9年)の追跡調査を行ったところ、345人が心筋梗塞などの冠動脈疾患にかかり、1,551人が冠動脈疾患、心不全、脳卒中などを合わせた循環器疾患になった。
歩行のレベルや激しい運動のレベルで、対象者を5グループに分け、病気の発生率を比べた。
■予防効果の大きさは同じ
その結果、「歩行のレベル」のグループを「最低のグループ(歩行時間ゼロ)」と比べると、「歩行のレベル」のグループ(時速5kmの早足歩行を毎日40分以上)では、冠動脈疾患のリスクが39%低く、循環器疾患のリスクが32%低かった。
■仕事による身体活動は調べず
この研究の問題点として、余暇時の運動を調べているだけで、仕事を通した身体活動の差を考慮していない点がある。
もしも仮に、余暇時の運動を多くするグループが、仕事による身体活動の量も多ければ、(仕事による身体活動を考慮しないことで)余暇時の運動の効果を過大評価することになる。
反対に、余暇時の運動を多くするグループは、仕事による身体活動の量が少なければ、余暇時の運動の効果を過小評価することになる。
また、余暇時の運動が多くても少なくても、仕事による身体活動の量に差がなければ、過大評価も過小評価も生じない。けれども今回の対象集団が、どれにあてはまるのかは分からない。
出典 : Manson JE, et al. Walking
compared with vigorous exercise for the prevention of cardiovascular events in
women. New England Journal of Medicine 2002; 347: 716-725.
********************
運動している人(歩行程度の運動とそれなりに激しい運動)と健康の疫学調査結果で、歩行程度の運動も効果があるとわかったという報告です。
坪野先生の解説の中にもありますが、
この研究では余暇における運動しか見ていないので、歩行程度の運動も効果があるのであれば、仕事の時間にほとんど椅子に座りっぱなしの仕事なのか、かなり歩いたりして移動の多い仕事なのかを確認する必要がある。と。
場合によっては結果が異なると。
この考え方は電磁波の疫学についてもいえることです。
職場での曝露だけをみたり、自宅での曝露だけを見ていたりすると、電磁波の24時間曝露全体を正しく把握することができず、場合によっては 結果が正しく出てこない可能性があります。
2002年8月24日に新聞報道された「低周波磁界で小児癌2倍」という疫学調査も、24時間の曝露がどうだったのか、自宅以外での磁界への曝露が無視できる程度であったのか? 等が研究者の方から報告されないと、正しく評価することはできません。
例えば自宅で4ミリガウス以上を浴びながら、通学のための電車の中で毎日1ミリガウス程度の磁界しかを浴びていない人がいたり、自宅では1ミリガウス以下の磁界曝露であっても、通学時の電車や学校で10ミリガウスを越える磁界を浴びている人がいたりする可能性があります。
こうした可能性もきちんと把握しなければ、自宅での磁界曝露だけでを把握したのでは「自宅にける磁界と小児癌の因果関係」を正確に判断することはできません。
仮説”東京都稲城市に住む原田という姓をもつ人は、名前に漢数字の一二三四五六七八九十を含む人が多い”
この仮説を疫学的な手法で証明する。
NTTの電話帳から、稲城市の部には(2004年の調査です)
1欄に100名、1頁に3欄 合計58頁で、17400名分の電話番号が登録されている。
ちょうど1欄で一杯になる性として原田という性を選択。
原田性の名前に漢数字を含む人は、99名の原田性の中に16名であった。
即ち原田性では16.16%の人に漢数字が入っていた。
それでは、原田性を含む稲城市の住民の全体平均はどうなっているか?
全てを見るのは至難なので、抜き取りで、P9から3頁毎の中央部の欄を対象とした。
各頁で名前に漢数字の入った人は
P9: 6 P12: 9 P15:11 P18:13
P21:19 P24:17 P27:13 P30: 7 P33:15
P36:17 P39:20 P42: 5 P45:14 P48: 4
P64:18 P67:15
累計では2100名中262名に漢数字が入っていた。
21の小グループに分けた時に、各小グループに含まれる漢数字のある名前の分布は、一様ではなく、かなり大きく変動していることがわかる。
したがって、全体を見た時の平均は 262/2100=12.45%となる。
原田性には全体平均に比べると、相対危険度は16.16/12.45=1.30となる。
このように全く無関係であると信じられる仮説でも、疫学的手法で検討をすれば通常の1より30%も大きい危険率が証明されることができる。
今回は対象を99名、対照を2000名と大きくしてあるので手法としてはかなり正しい方法である。
もし、P9、12、30、42、48を偶然にも対照として選択したとすれば
対照は500名中31名となる。 全体の平均は31/500=6.2%となり、
原田性の相対危険度は 16.16/6.2=2.6となる。
ということは、原田性は全体平均に比べると2.6倍多いという結論を導くことができる。
よって、疫学調査、とくに症例対照研究という手法は、あくまでも多くに因子の中に優位性の順位をつけることを主目的とした研究手法であって、危険率が5を越えないかぎり大きな問題とはならない。
喫煙と肺癌の症例対照研究では相対危険率が15倍という大きな数字が研究でえられ、その後に喫煙の成分分析等の研究によって、喫煙の発癌性が検証されている。
常石敬一ら「日本科学者伝」小学館の中の鈴木梅太郎の部の訳者注に 以下の内容がありました。
これも動物実験の結果を評価する時に、注意しなければならない点であると思います。
「海軍で脚気を研究した高木兼寛は、脚気を激減させた原因をたんぱく質の増加にあると考えた。
これに対して、オランダ領インドネシアでニワトリの雛を白米で飼うと脚気症状のような多発性神経炎を起こし、飼料を玄米にするか、または米ぬかを白米に加えると治ることを実験で確かめたオランダのアイクマンは、白米に毒素があり、米ぬかにそれを中和する成分があると考えた。
しかし、アイクマンの弟子のグリーンスはどんな実験を繰り返しても、白米から毒素は検出できなかった。
鈴木梅太郎は米ぬかの中に脚気に有効な成分あると考え、米ぬかのアルコールエキスから脚気に有効な成分を分離することに成功、1910年の東京化学会でアペリ酸として発表した。」
アイクマンの実験をそのまま受け入れると白米には毒素があるので、食ってはいけない という結論になります。
ある特定の研究の結果だけを鵜呑みにすることは、危険である という例です。
電磁波の生体影響はかなり複雑なので簡単に結論を出すことは、至難のようです。
バルカン症候群の検証に関する情報です。
2月11日の産経新聞にバルカン症候群・劣化ウランの記事がありました。
興味のある方は原典の新聞を読んでください。
その中に、
「この問題は、劣化ウラン弾が兵士や爆撃地域の住民に有害な放射能を残さなかったかどうかを、当事者の軍当局でもなく、バルカン症候群を頭から信じている一部のマスコミでもなく、客観的な中立の立場の科学者に検証させるべきだ。」という意見がありました。
まさにそのとおりだとおもいました。
この手法は電磁波の健康問題にもあてはまるように思います。
マスコミはここでは必ずしも中立であるとは言われていません。
巷に、電力業界に働く人に何か職業に密接する健康問題があるのではないか、電気産業に働く人は、一般の人に比べて何か健康に差があるのではないか、電磁波が何らかの健康への影響を与えているのではないか、という未確定であるがそうした危惧がもたれていることは事実である。
低周波およびマイクロ波帯の電磁波の暴露に伴う健康障害効果はソ連邦からの報告(Asanova and Rakov,1966)が最初で、送電線の周波数、マイクロ波あるいは磁界への長時間暴露は疲労感、頭痛、嘔吐感、性欲減退、心血管系への影響、睡眠障害、不安感、血球濃度と血液化学値の変化等の不定愁訴をきたすというものであった。
ソ連邦からの報告は労働者からの主訴に基づくものが多く、疫学的には批判される点が多い。
海外論文等の査読から得られた多数の事実としては、人が普通の、電波、ラジオ波、マイクロ波に暴露するようなレベルでは、一般的な健康に長期的影響はないことを示唆している。
VDT作業による出生への影響に関しては、最新の厳密に計画された、大規模な疫学調査の結果では、平均的な女性のVDT作業者は出生に好ましくない影響を起こすことはないことが証明されている。(T.M.Schnorr et al,1991)
その後も、多くの国で職業あるいは住環境中での電磁波への暴露と健康障害、特に癌との関連についての疫学研究がなされ、さまざまな結果が報告されている。
比較的共通しているのは、電磁波暴露環境に働く人の白血病・脳腫瘍等のリスクが高いのではないかということである(Milham Jr,1985)。 それらのリスクは1ー3倍程度である。
電気や電子産業従事者と癌の関係が示唆されているが、電磁波ではなく職業による交絡因子である可能性もある。 これらの因果関係・要因は、まだ十分にはわかりきっていない。
また、ガンとの関係が、もしも真のものとしても、そのためによる過剰危険割合は小さなものである。(NRPB
1992)
一般住民への電磁波の影響の可能性として注目されたのは、米国の疫学研究で、高圧送電線近傍に住む子供は白血病のリスクが高いという報告である。
この報告におけるリスクはオッズ比で2、2倍である(Wertheimer,1979)。
追加調査やスウェーデンでの住民調査から、架設交流電線の近くに住む人達から小児ガンが有意に多く発生するのではないかとの報告がなされている。
一方、同じ米国の他の同様な疫学調査では、リスクが発見出来なかったという例もある(Fulton et al、1980)。
高圧送電線の密度は交通密度と相関し、交通密度はまた小児ガンと相関している。
この他にも電磁波と小児ガンという観察結果を説明できる社会―経済的な他の因子が存在する可能性がある。
現時点では住宅環境中の磁場とガンとの関連性はまだ十分な研究がなされておらず、当然、結論がだせないでいる。
これまでにレビューした文献は、電磁波がなんらかの影響を与えていると、問題があるというポジティブな報告と、問題はない、問題は見られなかったというネガティブな報告が交錯している。
問題があるという報告は「無い」という結果より報告・発表・マスコミ報道される機会が多い(これを publication biasと呼ぶ)ので、真の相関があるのか否かを確かめる為には、単に既発行の論文を査読するだけでは不十分で、さらなる研究が必要である。
Publication biasに惑わされない眼力を持つ必要もある。
世界保健機構WHOで発行している環境基準文書等(環境基準文書#69、1987年)では、現状のVDTから放射するレベルの電磁界は人体に影響することはないといっているが、同時にそれを立証するためにも継続した研究をすることを推薦している。
最新のWHOの見解、WHOの国際EMFプロジェクトが1998年に公表したVDTからの電磁波の健康影響に関する見解(Fact Sheet 201)では、VDTからの電磁波は問題ない事になっている。
ただし、現在までに行われた研究の中の、いくつかの細胞や生物を用いた実験結果からは、急性外傷である電気ショックや火傷、過熱を起こす閾値以下のかなり微弱なレベルでの電場や磁場が、ヒトの健康に長期的な影響を及ぼすという可能性があるということを十分認識して、研究を継続しなければならない、といえる。
マイクロ波などの高い周波数の電磁界では、熱効果がその曝露基準策定の根拠になっています。
どのように考えているのか、今読んだ古い文献にありましたので紹介します。
1988年5月 電子情報通信学会の電磁界のバイオエフェクトと安全性研究会資料の中であったものです。
雨宮好文「職場における電磁環境に関する調査研究委員会(中央労働災害防止協会)の報告書要約」 で
「生体全体の効果では体温の上昇が一つの指標となる。
通常ヒトの体温(直腸温)は1日に1度C程度の変動が見られる。
何らかの異常が感じられるのは1度C以上の上昇で、動物実験およびヒトの結果では1.5ないし2度Cの体温上昇を妊娠初期に連続的にまたは反復的に経験すると胎児に奇形を生じたり、流産を誘発したりする。
こうしたことから体温が1度C上昇する電磁界の強さでもって、曝露限度値を決めていると。」 と。
即ち、電磁波を浴びて、そのエネルギーを体が吸収した時に体温が上昇する位の電磁波を浴びると、体に何らかの影響が出る という事のようです。
電磁波が全て熱に代わって、生体に何か影響するということもあるでしょうし、熱が上昇する位に電磁波を浴びると、何か電磁波の直接的な影響がでるのかも知れません。
作成:1996ー12ー17 一部を修して2002年11月に このWEBに掲載
1。はじめに
文藝春秋社のオピンニオンマガジン「諸君」の1996年9月号に“稀代の暴論「電磁波でがんになる」“という大朏博善氏の論に対して、「週刊金曜日」1996年9月27日号に天笠啓祐氏の“今週の反論、電磁波問題、「疑わしきは人々の健康を守る側に立たない「諸君!」”という反論が寄せられている。
こうした誌上での、マスコミ誌上での電磁波問題の論争は本邦初の出来事ではないでしょうか? 大変興味深く拝見し、私もこうした問題に多少は興味があるので、この2名のジャーナリストの論争に関して私なりの考えをまとめました。
この電磁波問題に興味をもって5年以上経過します。当初は日本語で書かれた電磁波の解説書から読みはじめ、それらに引用されている国内外の論文を探して読み、それらの原論文に引用されている論文を読むという手法で、従って電磁波の問題を全般的に調査分析している訳ではとうていありません、徐々に各種論文を読む範囲を広げてきました。
基本的には原論文の解説書ではなく、できるだけ原著・原論文に触れる様に留意してきました。
こうして集めた文献は積んでみると1mを越える量です。専門家ではないのでどこまで理解できたかは定かではありませんが、少なくとも目だけは通してきました。
そして最近はこの電磁波と生体影響に関する世界で唯一の専門学術学会であるBio Electromagnetics Societyにも加入しました。
こうしたどちらかと言えば専門外の人間が、多少の知識をもって電磁波問題を見ると、どうなるかを書いて見たいと思います。
若し私が本を書くとすれば、A、B、Fの論文などを纏めて、電磁波はどちらかと言えば安全、さほど騒ぐことはないという趣旨で纏めることも出来ます。
同時に D、E、Gの論文を纏めて電磁波は極めて危険である、すぐ我々は電気文明を捨てて江戸時代に戻るべき という趣旨で本を書くことも出来ます。
そうです。電磁波問題の問題点は実にこの点にあるのです。公正に、問題のあるという報告となかったという報告をバランス良く消化して、現在の電気文明とのバランスをとりながら、とりあえず我々はいかに生活をしていくべきか、またいかに継続した研究をやって貰うかを政府・学会に要求していくかの方針を見定めなければならないと思います。
天笠氏と大朏氏には素人からの発言で申し訳ないが、2名とも両端にあってバランス感覚を欠いています。
これでは一般の読者が判断できません。
2。天笠氏と大朏氏への論争に関して
両氏の論はそれぞれもっともな点がある。どちらの論が果たして正しいのであろうか?もしくはどちらの論がより正しい方向を向いているのであろうか?どちらの論が将来に正しかったと歴史的に評価されるであろうか?
これらに関してはまだどちらにも軍配をあげることはできそうもない。
読者の立場でどちらの論がより正しい方向を示唆してくれているかを判断しようとすれば、次のことを、二人に聞かなければならない。
1)それぞれの論は、公正で、中立で、より科学的な見方をされていか?
少なくともそのような立場で一般の読者に方向を示唆する為に論を纏めているつもりでしょうか?
「科学的な見方」とは、あくまでの科学「的」であって、現在までわかっている「科学」のレベルで判断する・しないということを要求するものではありません。
10年後に判明するかもしれない科学のレベルを想定しても構わないと思います。
電磁波の生体影響はまだまだ研究の継続が必要です。各論者が己の過去の経験や経緯・心情・感情論でもって、この継続中の研究の話を、脚色したり、己の心情に共鳴する研究論文だけを取捨選択をして、電磁波の問題はかくあるべきと一般読者に 対して論じられても、判断に困るのは読者ではないでしょうか。
2)より最新の情報を得るように務めているか?
日々刻々と新しい論文が山の様に発行されている様です。
3)論文の解説書やレビュー記事だけではなく、出来るだけ原論文を集めて読んでいるか?
そうした原論文を読んで、質問などを実際の研究者に発送するなどを行なって、原著を理解しようと努めていますか?
日本の学者に多い傾向にある海外の論文を読んではその内容の一部もしくは全部を解説的に紹介する日本語での論文を執筆するタイプの学者・専門家だけではなく、(こうした学者によって網羅的に電磁波の生体影響の現状を把握することも大切な作業ですが、)、緻密に実際の研究(動物実験、細胞実験、疫学調査等)を行なっている国内外の研究者に忌憚のない意見を聞いていますか?
少なくともこうしたことがわかれば、読者の立場としては、どちらの論が「現時点ではより良い方向を示唆してくれているか」を判断することが出来るでしょう。
3。電磁波問題の問題点
せっかくの寄稿するチャンスですので、私が理解している範囲での電磁波問題の問題点を挙げて見ます。
1)電磁波の範囲と種類
電磁波と言えば、原爆からの放射線、X線、紫外線、そして我々がものを見てる光、赤外線、電波とよばれる帯域、低周波電磁界として最近とみに論議されている交流電磁界、直流の磁気・電気迄を対象とすれば入ります。
これらは種類が違えばそれぞれの効果も異なるはずです。
「電磁波が危ない!」と言って、「太陽光が危険だ」といってはおかしくなります。
一般読者には難解かもしれないが、マスコミやいろいろと解説を書かれる方はこの差異をきちんと区分けして記述しないと、電磁波問題は混乱します。
将来の研究結果によってどうなるかわかりませんが、放射線やX線は生体の細胞やDNAを直接損傷することが出来ます。 従って現在の定見(一般論)としては、微小でも危険ということになっています。
しかし、「放射線が微小でも危険である」からといって「電波や低周波電磁界がどんなに微小でも危険である」と「断定」することは出来ないはずです。
少なくとも私は そのように断定する論拠を知りません。
論拠がわかる方はおられれば教えて下さい。
直流の大きな磁界強度、例えば50,000ガウスを浴びたので健康障害を起こした、といって話題になっているケースもあります。
その説明に、VDTから漏洩する低周波電磁界のSwedenのガイドラインが2・5ミリガウスであるからと言って、この数字を使用して50000ガウスという直流の磁界を浴びることは50,000ガウス/2・5ミリガウス=2000万倍危険な目にあった、とは論じられないのです、少なくとも現時点では。
ましてや、スェーデンのガイドラインは科学的・医学的・生理学的な論拠をもたず単に出来るだけ低くVDTからの漏洩電磁界を規制することを主眼として定めたものです。
低周波の低周波電磁界の影響と直流の磁界は、影響は異なるはずです。
このように電磁波と言っても周波数というか範囲が広いために、研究に時間がかかっているのではないでしょうか?
2)電磁波の強弱の問題
マイクロ波と呼ばれる帯域は電子レンジでも使用しているように温度上昇をきたします。
発熱させる為にはそれなりの強い電磁波を与えなければなりません。
従って、マイクロ波等では大きな電力は熱を発生させるので、有害であるとなっています。
有害であるがきちんと制御して、利用すれば電子レンジは使用出来るのです。
電子レンジの効果があるから、微小な電波も絶対的に危ないと現時点で断定してよいのでしょうか?
又同時に絶対的に安全であるとも断定出来るのでしょうか?
少なくとも電子レンジを例にして発熱を考えるならば、そこに印加される電力、暴露する電力の要素を十分にからめて論議をする必要があるのではないでしょうか?
非熱効果という言葉があります。マイクロ波を例にとってみれば、電子レンジの様に発熱するだけの電力はないが、また温度もさほど上昇しないが、それでも何か影響がでないかを確かめようという趣旨の研究が、言い換えるとさほど温度上昇しない程度の電磁波の強さでも何か影響していないか、この点を科学者の目で確かめようとして、疑って研究している時に非熱効果という言葉をしようしている様です。
従って、最初に「非熱効果」があってその状況を研究しているということではなさそうです。
従って、電磁波問題を論議する時に、どの程度の電力もしくは強さか等を明確にして、論議をしないと、生体影響・健康影響の話は進展しません。
特定の強さの電力の時や特定の範囲の周波数でのみ電磁波の影響が現れたという研究などを討議する時は特に注意することが必要です。
3)自然界に存在する電磁界と人工的な電磁界
宇宙の進化論を論ずる時にでてくるビッグバン、ビッグバンから宇宙は始まったとされています。
この理論を裏づけているのが現在も宇宙に存在する微小な電波です。特殊な方法でこの宇宙に存在する、宇宙の自然界の電波を測定したことがビッグバンの理論を立証している確証の一つです。
地球上ではどこかで必ず雷が発生しています。 この雷のエネルギーが地球の大地と電離層の間の空間で、地球があたかもバイオリンやピアノの共鳴箱の様に働き、16Hz等の低周波電磁波となって伝搬しています。
16Hzや60Hzと言った低周波の電磁界が人体に何か影響をしている、それも強さには無関係で弱い電磁界でも長期に浴びれば健康影響を与え得るということになるとすれば、これらは人類が登場する以前から自然界に存在した電磁界と共通ですから、本当に何かあれば人類はこの地球上に誕生しなかったはずです。
自然界に存在する電磁波との関係は、前項に述べたような電磁波の強弱の問題に落ち着くのかも知れません。
4)実験結果の再現性
色々論文を読んで見ると、まず素人の目にも感じる疑問が、同じような実験を行なっていながら、方や電磁波の影響が検出された、他方電磁波の影響が検出されなかったという論文が両存していることです。
私なんかは、どこかが音頭をとってその研究者を集めて徹底的に論議をさせたり、再度共同で実験をさせたりして見ればきちんとした結論がでるのに・・・・・といら立ちを覚えます。
それだけ、電磁波の生体影響という研究は誤差が多いのでしょうか?
何か同時に存在して大きなウエイトを占めているような因子がわかっていないのでしょうか?
きちんと再現された実験というものが少ない様に思います。
これはもしかして、次のような比喩で代表させることが出来るかも知れません。
皆さんも学校の理科の時間に水の電気分解の実験を行なっていますネ。
酸素と水素に分解されて正解。若し水というものが何たるかがはっきりしない時代に水の電気分解を行なったとしましょう。
A博士は雨水を、B博士は温泉の水を、C博士は海水を、D博士はごみや不純物を徹底的に除去してから電気分解を行なった。
それぞれの博士の論文はそれぞれ異なった成分分析を発表して、各人の研究方法は正しい と主張しあっている。
お互いの実験と手法は正しい、但し水とは何かの見識はない。
これではいつまでたっても結論はでない。
電磁波も以外と何年立っても結論がでないかも知れません。
現在の電磁波の生体影響の論文を見るとこのように感じます。
それぞれの実験や結果は、あえてデータを捏造したりしない限り、実験結果としては皆正しいのでしょう。
再現された研究か、方法論等がきちんとして信頼のおける手法で研究を行なっていか等を厳密に、科学的な目で見ないと各論文の結論や抄録を読んだだけでは判断できないのではないでしょうか?
5)疫学とは
送電線からの磁界による小児ガンの問題などは殆ど疫学研究です。
天笠氏も大朏氏もどの程度疫学とは何かを研究されたのでしょうか?
疫学は、私の理解した範囲では、研究すべき時に色々な因子が多い、比喩でいけば、何か事件が起こった、誰が犯人か捜査しなければならない、この時に怪しいとにらんだ人間のリストアップの手法に過ぎません。 最も疑いの濃いものが犯人であるとは限りません。
リストアップされた人間を対象に裏付けをとって初めて犯人と断定する訳です。
疫学は多数の因子があった時にどの因子から研究すべきかを順序づける手法です。危険率という考え方で、平均より大きい値がでた項目から項目毎にテストしていく訳です。
最も高い危険率を疫学で示した因子が犯人である保証はありません。
煙草と肺癌の様にこの疫学調査で10倍とか15倍という数字がでれば、かなり疑いは濃厚になります。
しかし、1倍を少し越えた危険率が検出されたとき、もしくは2倍程度であれば、100%問題ないとは言えないが、更に研究を重ねないと結論は出せない というレベルです。
電磁波と健康問題、ガンとの研究の疫学調査ではこの危険度は1から2とか3というレベルで学者泣かせ、問題ありなしの判断が下し難い所にあります。
疫学を専門にやっている専門家に話を聞いたこともあるので(知人もいるので)、あまり大きなことは言えませんが、疫学をやっていない臨床医学系の医者(こちらの知人もいる)に言わせると疫学なんてものは医学ではない、あてにならない、とまでいう方もおられます。
(疫学をやっている人、臨床医学で日々患者に接している人と、立場によっては見方が変わるのは当然なのかもしれません。疫学をやっていて、疫学の結果が「全て」であるといえば、臨床医学からの全面的な支持は得られないでしょう。それぞれの研究手法には限度もあり、その限度を知った上で、最終的な科学の目で見た総合判断が必要になるのでしょう。)
疫学の中には症例対象研究という手法と前向きのコホート研究の2種類あります。
症例対象研究はがんになって死亡した人、病院に入院した人等と一般の人を比較して、どちらのグループに電磁波を沢山浴びた人が多いか、等を統計的に処理する方法です。
細かいことは割愛しますが誤差が多いと言われています、
しかし簡便な為に良く初歩的な疫学調査はこの症例対象研究の手法がとられているようです。
この症例対象研究に対して前向きのコホート研究と言うのは、ある時点で電磁波を浴びている人と浴びていない人の2群をつくり、5年10年とその2群の中から何人の病人がでてくるかを追跡していく方法です。
時間と手間がかかりますが、確実に2群の間の病人の数等を把握することができるので、精度の良い疫学調査法です。
ここで問題になるのは2群に分けた群の間に、例えば脳腫瘍と白血病に着目するとしてこの2つの病気の電磁波以外の素因というものを等しくして置かなければならないということです。
こうした条件を2群に等しくすることは実際上は無理なので、そうしたことから精度の良いと言われているコホート研究ですら誤差は含まれるのです。
従って、論文を読む時に疫学調査はどのように行なったかを読みこなさないと意味がなくなります、疫学さえ行なえば、その疫学で全てが決まるということではあり得ない様です。
1996年の堺の0157事件、この時はカイワレが疑われました、疫学調査の結果、TVでちらりと聞いたので正確ではありませんが、カイワレを食べた人から0157中毒発生は1%、カイワレを食べなかった人の0157中毒発生は0・1%、カイワレを食べた人は食べない人の10倍中毒にかかっている(10倍危険度が高い)よってカイワレが犯人と疑われました。
報道でも明らかなように、その後。いくら調べてもカイワレからは菌は検出されないで終わっています。
疫学で10倍と言っても、カイワレの様に結論を得ることは出来なかったのです。
本来の疫学の手法を正しく使えば10倍の危険度のカイワレの他に7倍、5倍 2倍の危険度の他の食材も同時にリストアップして、菌の検査等を行なえば、もしかして真犯人が見つかっていたかもしれないのです。
疫学とは、悪く言えばこの程度の手法に過ぎないと理解すべきでしょう。
疫学調査も、動物実験も同時に研究を続けていかないと結論はでないでしょう。
4.最後に
最後に、電磁波の問題はこのように奥が深く、簡単ではありません。そして読めば読むほどに問題があるのかないのかがわからなくなってきます。
私も判断に迷いながらも研究と言うか電磁波関係の論文の読書を継続しています。
最新の生体電磁気学会の論文誌等は有益な情報源と思います。
機会があれば読者の皆さんもちょっと難解な英文の論文に挑戦して見てください。
記;2013−4−3
式部啓ら編「電磁界の健康影響 その安全性を検証する」1999年文光堂発行に以下の情報があった。
発がん性判定
基礎となる「ヒトまたは動物実験についての4段階」は次の通りである:
1.Sufficient
evidence(=十分な証拠がある):発がんの原因物質であることが確定できる。
2.Limited evidence(=限定的な証拠がある):発がんと関連があり,原因だと説明可能。
3.Inadequate evidence(=不適切な証拠がある):研究結果不十分,原因だとはいえない。
4.Lack of carcinogenesis(=発がん性はない):発がん物質ではない(どんな曝露条件でも)。
記;2017−1−4
$1.最初に、パルス、パルス変調とデジタル変調を混同している過ちの例
以下の本に、その誤りの実例がある。
*********************
荻野晃也著 プロブレムQ&A 危ない携帯電話 2002年緑風出版発行
P65 アナログ波形とデジタル波形
「アナログ波形とデジタル波形の相違を一番良く示しているのが、波形の変化率です。
波形の大きさは電流や電圧の大きさに対応しているのですが、その波形を数学で使う微分という方法で調べてみると変化率が良くわかります。
デジタル波形では、波の「立上り」と「立下り」の所で急激な変化を示していることになります。
その変化が問題ではないか……とも考えられているのです。」
と。
*********************
アナログ電話とデジタル電話の影響度では、荻野はデジタル電話の方がより大きい影響があると主張しているが、デジタル変調方式とパルス変調方式の違いをきちんと理解せず、この両者を混同しているのは、明らかな誤りである。
パルスの場合は、平均電力に対してピーク電力が大きい。
また、パルスの波形によっては立上り時と立下り時の時間変化率が大きいので、パルス・パルス変調では慎重に考えなければならないことは確かである。
$2.パルスと連続波、パルス変調
図1に示すように、電磁波の波の形には、様々なものがある。
Sine(正弦波)、Square(矩形波)、Triangle(三角波)、Sawtooth(鋸歯状波)などである。
波の形は、図1に示すものに限らず、様々なものがある。
これらはすべて、連続して電磁波が発生していることを示す。
ただし、プラス・マイナスに交互に転換するので、ある瞬間はゼロになる。
図1
図2に正弦波が連続している場合の形の実際の例を示す。
図2
図3にパルスの波形の例を示す。
急峻にゼロから最大値まで達し、ある時間(パルス幅)だけその最大値を維持し、急峻にゼロに戻り、しばらくはゼロが続き、再び急峻に立ち上がり・・・・を繰り返す。
この場合は、平均値は低いが、瞬間的な最大値は大きいという課題や、急峻に立上がり、また急峻に立下がることによる副次的な影響もあるので、電磁波の健康影響ではかなり慎重な対応が必要となる。
「パルス波形の電磁波を曝露した結果・・・・のことが判明した」という研究を見る時、平均値と最大値はどうか? 立上がりと立下りの時間はどの程度か・・・・を考慮しないと、研究結果の評価はできない。
電磁波の曝露限度値を提言しているICNIRPのガイドラインでは、パルス電磁波への曝露に関して、平均値の何倍の瞬間最大値まで許容するかに関する規定もある。
図3
図4にパルス変調の例を示す。
正弦波がある時間だけ発信され、ある時間は発信されず、これを繰り返している。
アナログ波形である正弦波が、パルス状に断続して発信されている。
この場合も、平均値は低いが、瞬間最大値は大きくなるので、電磁波の曝露に関してはそれなりに慎重な評価が必要である。
図4
図5は、もう一つのパルス変調の例である。
aに示すアナログ信号(例えば音声の信号)を、3種類のパルス変調した場合である。
いずれの場合も、アナログ信号は、パルスの並びに置き換えられている。
パルスの最大値が変化したり、パルスの幅が変化したり、パルスの位置が変化したりしている。
図5
参考までに、アナログの振幅変調(AMラジオの放送電波の形式と同じ)の例を図6に示す。
音声などの情報信号を、搬送波と呼ばれる情報信号より高い周波数の電波で、振幅を変調する。
図6
$3.デジタル変調
デジタル変調には様々な方式がある。
図7は、図6のアナログ振幅変調に類似のもので、振幅変調されたパルス波形の情報信号を、搬送波と呼ばれる高い周波数の電波の振幅を変調する形式である。
ASK(振幅シフトキーイング)と呼ばれ、振幅レベルに情報を与えて伝送する方式で、自動車の有料道路課金のETCなどに採用されているが、携帯電話や無線Lanには採用されていない。
図7
携帯電話、衛星通信などに使用されているデジタル変調方式は、PSK(位相シフトキーイング)と呼ばれ、位相に情報を与えて伝送する方式である。図8に示す。
デジタル情報信号10100をデジタル変調した場合の、搬送波、ASK(振幅シフトキーイング)変調、PSK変調(位相シフトキーイング)、FSK変調(周波数シフトキーイング)の波形を示す。
図8
図9は少し複雑になり、デジタル情報信号10100をBPSK変調した場合と、デジタル情報信号10110100101という同じ時間に2倍のデジタル情報を送る方式としてのQPSK変調の場合を示す。
図9
別の見方で、再度デジタル変調PSK変調を図で示す。
図10にあるようにデータ信号(デジタル情報信号)10101010をPSK変調した場合の波形を示す。
変調された波(電磁波:電波として発信される波形)は、周波数は常に同じで、振幅(電波の大きさ)も同じで、元のデジタル情報信号の様に断続はなく、連続している。
ただし、デジタル情報の切り替えのタイミングで、変調された波形には不連続点が存在する。
図10
$4.本日の結論
携帯電話や無線LANには、0101のデジタル信号が使用されている。
この0101という信号は断続があり、パルスの波形として説明される。
パルスの場合、電磁波の健康影響を考える時に、平均値は低いが瞬間最大値は大きい点に課題が集まる。
携帯電話などでは電波(電磁波)として発信されるときは、0101のデジタル信号が、QSKといったデジタル変調される。
QSKといったデジタル変調波は、前述のように、一定の周波数で、振幅も同じである。
パルス・パルス変調という意味と、携帯電話などで使用しているデジタル変調という意味は大きく異なり、似ているようで全く異なるものである。
荻野らは、「携帯電話は0101のデジタル信号を扱い、デジタル変調された電波が発信」されていることを、「パルス変調された電磁波であるから危険」と誤解というか混同していると思われる。