電磁波の健康影響に関する基礎講座 「電磁波の生体影響に関する知見の紹介」

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目次
1.現象としての量反応関係のおさらい. 
2.影響度の区別
3.疫学の効果と限界に関するおさらい。
4.電磁波の範囲
5.電磁波の特徴
6.電磁波の生体影響の概説
7.直流磁界・電界
8.生活空間に存在する電磁波とリスク
9.電磁波の生体影響の纏め
10.日本が出来る国際貢献の提案
11.VDT、パソコンからの電磁波
12.電磁波過敏症
13.電磁波防護グッズ

補遺:電線のスズメは感電しない?スズメなどは電界や磁界を感知している?

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電磁波の生体影響に関する知見の紹介
作成:Ver.3: 19986
  
1。現象としての量反応関係のおさらい

 物理現象等は以下のような3つの「量とその反応」の関係に区別される。 電磁波の生体影響に限らず、色々な反応には、作用する量とそれによる反応の間に関係式が成立つ。

 

 

 (1)は何らかの作用を加えれば、それに応じて反応を起こす。  一般的な反応の例 
(2)はある一定の作用までは反応しない、Threshold(閾値)を持つ。
   自己保持機能をもつ生体等の外的要因に対する反応等。

 (3)はあるレベルまでとそれ以上では反応の方向が正反対になる反応。
     医薬品は適量では薬、超過すると毒になる等の例。

電磁波に関していえば、作用―反応の曲線が、上記3タイプのいずれに属するかさえも、まだはっきりとは判っていない。

 色々な研究が継続されているが、作用―反応の曲線や、Thresholdを求めようとする研究は概して少ない。 どの程度の量の電磁波を浴びても大丈夫かという研究成果が少ないので、困った事態である。 また、別の見方をすればどの程度まで安全かの議論の前に、有用か有害かの道すら定まっていない。 すなわち、一方では電磁波の健康影響を示唆する研究(電磁波は有害)、一方では電磁波の医療応用の研究(電磁波は有用)が同時進行している。

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2。影響度の区別


 1)生体影響; 正常な範囲で変化したり、反応したりする。
 2)健康影響: 正常な範囲を逸脱する変化や反応。
 3)健康障害: 病的になったり、多数の人に障害をもたらしたりするような社会的な影響。

 電磁波の影響を話題にする時は、こうした3段階の区別をきちんとつけることが肝要となる。 1)から3)迄は連続的に考えるべきで、研究の知見の得られた段階でその都度レベルの分類・区分けは異なってくる。 絶対的な分類法ではないが、「危険」「安全」等の審査時は重要な概念となる。

 世の中のマスコミの論調の中には、1)の生体影響という範囲の研究成果をもって、3)のような危険性が証明されたと断定」するという、大きなミスをおかしているものもある。

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3。疫学の効果と限界に関するおさらい。


 電磁波の健康影響に関連する多くの研究は疫学である。 それも簡単なアンケート調査や症例対照研究が大半で、研究精度が高いとされる前向きのコホート研究は少ない。

 症例対照研究は簡易であるが、色々な交絡因子(誤差の原因となるその他の要因)が入り込み易く、研究の精度は低い。 どの程度危険かを示す指標として「オッズ比」が用いられる。 基本的にオッズ比が5以上ないとその研究は有意ではない。

 単なる偶然の結果としてオッズ比が2程度になることはあるからである。 2程度のオッズ比が検出されたと言って送電線からの磁界と小児癌との問題を大騒ぎするケースもある。 オッズ比と相対危険度とを混同しているケースもある。

 前向きのコホート研究は、スタートから5年や10年にわたって規模の大きい集団を追跡していくので、費用的にも大変であるが、精度は症例対照研究に比べて良好である。

 こうした疫学の効能を否定しないが、きちんとした研究を行わないと世の中をミスリードする危険性がある。 疫学は適切に評価すべきであって、誤っても過大に評価してはならない。
 臨床医学をやっている医者に言わせると、「疫学は医学ではない、」と全く信頼性がないと見る論点もある。

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4。電磁波の範囲


 単純に「電磁波」(全く同じで電磁場という)と言っても範囲はものすごく広い。 一言では言い切れない。

周波数や波長で考えると
 1)γ線等の放射線
 2)X線 レントゲン写真のX線も電磁波である。
 3)紫外線―波長の短いもの 
 4)紫外線―波長の長いもの
 5)可視光線  太陽からの光や普段目で見ている光も電磁波である。

 6)赤外線  赤外線ストーブの赤外線、遠赤外線肌着等赤外線も電磁波である。
 7)ミリ波 という電波も電磁波である。
 8)マイクロ波等の電波  携帯電話の電波も、TV放送の電波も、ラジオ放送の電波も、全て電磁波である。
 9)低周波電磁界  モーターを回転させている磁界も電磁波である。
10)直流磁界・電界 静電気が働いている場所も電磁波(日本語の波の概念ではちょっとおかしく感じるので、この場合は電磁「場」(電磁界)といった方が好ましい。 馬蹄形磁石で鉄の粉を引き付けている場所も磁場である。
  
に大きく分類することが可能。   

 波長・周波数によって電磁波の物理的な性質も異なるので、当然生体への影響も異なる。 電磁波の生体影響を考える時は周波数の差異等「電磁波」のどの領域を議論しているのかをきちんと区別することが肝要である。

 1)から3)迄は電離放射線と呼ばれている、大きなエネルギーを持っており、生体の細胞・分子等に直接的に作用し、DNAの損傷迄起こす力があるので「危険」である。 これらの電離放射線に関しては、古くから国際的な環境基準・暴露基準等が定められている。

 4)から10)までは、非電離放射線と呼ばれ、分子等から電子をもぎ取ったりするだけのエネルギーは持っておらず直接的な効果はない。 電離放射線に比べれば非電離放射線の危険度は低い。
 従って、電磁波でもX線は危険であるから、電磁波の中の低周波電磁界も同じように危険であると、推論することは出来ない。 でもそのように誤解している人もいる。

 「電磁波」と言えばこれだけ範囲の広い。 単純に「電磁波」と一言で言えるものではない。 周波数もしくは波長、どの領域の電磁波を話題にするのかを、その都度規定しなければ、正しい議論は出来ない。 

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5。電磁波の特徴


 電磁波(同じ意味で電磁界という言葉も使用するし、電磁場という言葉も使用する)とは、マックスウエルの電磁波方程式によって説明され、波としての性質を持っている。 低い周波数になると「波」というよりは「場(界)」という表現の方が適切に思えるようになるので、低い周波数の時は、特に「低周波電磁界」と言ったり、また「低周波電磁場」という言葉を使用したりすることがある。

 「電界」と「磁界」(工学系の人間が使用する言葉)、もしくは「電場」と「磁場」(同じ意味であるが物理関係の人が使用する言葉、基の原語は同じ)の2つの性質の異なる波が、相互に関連し合って「電磁波(電磁場)」が構成されている。 磁界が電磁波の全てではない、電界が電磁波の全てではない。 電界と磁界を纏めて電磁波(電磁界)という。

「電気」と「磁気」という言葉も同じような使用されるが、これらは「場」や「波」といった性状のこと以外に、非常に広い意味で使用される。

 

 電界があれば磁界を誘導する、その磁界がまた新たな電界を誘導する、これを繰り返す形で電磁波は進行していく。 (電界と磁界はお互いに直交している。)但し、この関係がきちんと成立するのは電磁波の波源からある程度進行した点から先である。
 3つもしくは5つ程度以上の波の数以上に波が進行した先は電界と磁界は相互に誘導し合って、密接な関係を維持して、波として進行する形となる。 それ以前では電界と磁界は、別個に独立していると考える。(これを近方界という)

 電界、磁界はそれぞれ独立して測定が可能で、固有の単位を持っている。 「ISO」の国際規格、最新の単位でいえば、磁界はテスラ(古い単位でガウスもまだ用いられている)、電界はV/mで表現される。
当然、単位の前に表示される数字が大きければ、それだけ強い電磁波がそこに存在することになる。

 「電界」とは、例として、静電気等のある場所で塵芥などが引き付けられるような力が働く場所、「磁界」とは、例として、磁石がある場所で釘等が引き付けられるような力が働く場所、ということが出来る。 正確な電界・磁界の定義とは異なるが、このように考えると磁界・電界ということ理解しやすいと思う。

 波源から5波長以上離れた地点では、磁界を測定すれば、その磁界の測定値から理論的に電界の大きさを計算することが出来る。 電界を測定すればその場の磁界の大きさを理論的に計算することが出来る。比較的高い周波数の電磁波では、測定などの至便性から電界で考えることが常である。
 しかし、50Hz、60Hzと言った低周波になれば、電界と磁界を両方とも個別に考えなければならなくなる。


 ある波と隣の波の間の距離(長さ)を「波長」(単位は通常の長さの単位を用いる、m等)という。 1秒間に変動する波の数が「周波数」(単位はヘルツHz、1000 000Hz=1MHz)である。
 電磁波の進行速度は光速度に等しいので 
  波長=光の速度/周波数  光の速度:30万km/s  の関係になる。

 携帯電話等に用いられる周波数の高い電磁波では、例:900MHzで33cmの波長となる。 池に石を投げた時に出来るような波で、波と波の間隔が33cmというような形で携帯電話の電磁波は空間を、目に見えない形で伝わっていくとイメージしてください。

 携帯電話のアンテナから1・5m以上離れると、電界と磁界が相互に誘導しあう電磁波となる。
1・5m以内では電界と磁界はそれぞれ独立しており、計算などは簡単ではない。


 携帯電話以外の場合も、波源から5波長以上離れている場合の、その場所における電磁波の強度等は比較的簡単に理論計算や理論通りの処理が可能になる。 電界を遮断する手法を用いれば、その場でのさらなる磁界の誘導はなくなり、電磁波の進行はその場所で停止する。 磁界を遮断する手法を用いても、そこでの新たな電界の誘導はなくなり、電磁波の進行はその場所で停止する。

 商用の交流電力の周波数は50Hz、60Hzである。 こうなれば波長は5,000kmと長大となる。5波長分以上に離れた距離では電界・磁界は減衰しきってしまう。 これでは電磁波として取り扱うことは現実的ではない。

 
そこで、電界と磁界が独立して存在するとして考える範疇に全てが含まれることになる、こうした点から50Hz等は「電磁波」とは言いにくくなる。 「電磁波」の仲間ではあるが、現実的に取り扱う範囲では電磁「波」ではなく、電磁「界」とか電磁「場」という呼称が妥当性を持ってくる。 「低周波電磁界」という呼称がより適切である所以である。

 交流電力からの影響を考える時は、波長が5,000kmと長いので、通常は電界と磁界が独立して存在していると考える。 電界を遮断しても磁界は遮断できない。 電界を測定してもその電界から磁界は理論的に計算出来ない。

 生体影響を考える時は、低周波電磁界では、磁界の影響と電界の影響を個別に、独立して考えなければならない。 こうしたことから低周波電磁界では電界だけではなく、「磁界」にも着目するようになって来る。
マイクロ波等の電波では、電界だけに着目して考えることが出来るので、磁界に言及することは稀である。


 波長や周波数で考えると、電磁波(電磁場)の範囲は0Hzの直流や50Hzから始まってガンマー線等迄で、その範囲は10の20乗以上と桁数で20以上の幅がある。
強度で考えれば  電界では、送電線の100万ボルトから ラジオ受信感度の1マイクロボルト(マイクロボルトは10のマイナス6乗ボルトという小さい値)迄、少なくとも10の12乗以上と、 桁数で12以上の幅を持つ。

 磁界では MRI(医療用診断装置)で使用している2テスラから、脳から発生する磁界のナノテスラ(ナノテスラとは 10のマイナス9乗テスラという小さい値)以下の範囲まで考えると少なくとも10の12乗以上と 桁数で12以上の幅がある。
 周波数の幅と、強度の幅を組み合わせたら、膨大な範囲となる。 これらを無視して、単純に「電磁波の影響」を語る事は出来ない。 ここに電磁波の生体影響の難しさがある。 単純に検証出来ない理由がある。

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人体の物理的な特性から、電磁波に対する応答は電界と磁界では大きく異なる。
電界に対しては;
 周波数によって異なるが、電界は人体の内部にはあまり浸透しない。 皮膚等の外部との境界面に大きく集中する。身体の深部にある臓器や、脳の中でも松果体などへの影響は少ない。 同じ松果体でも鳥類では、頭部の比較的外部に近い所に存在するので外部の影響を受け易いと言える。 従って鳥類で電磁波の曝露で影響を受けたとしても、その結果をヒトにそのまま適用は出来ない。


 当然、電磁波の生体影響を調査する為によく行われている実験方法である、細胞を取り出して、それに電界を印加した時の影響度の研究成果は、そのままでは人体の全身曝露には適用出来ない。

電界の存在する場所に人体があると、電界の分布が人によって乱される。

 人体の外の電界の強さや分布と、人体の内部の電界の強さと分布は大きく異なる。 電界影響はどちらかと言えば、人体の皮膚などの境界面に影響を与える。

 高い周波数の電磁波では、電界が皮膚などの境界面に集中して、磁界もそこに留まる。 体の深部までは到達しにくい。 低周波電磁界では、電界と磁界が独立していると考えるので、低周波電界は皮膚などの境界面に集中していると考える。

磁界に対しては:
 磁界に対しては、空気も、木材も、人体も、普通の金属も全く同じ性質を持っている。 磁界のある場所に人がいても、磁界分布は全く変化しない。 磁界は人の外でも内部でも同じ強さで分布する。


 言い換えると磁界は人の体をそのまま通り抜ける。 コンクリートでも何でも通り抜けて、シールドしてくれない。よくTVの電磁波関連の番組でコンクリートでも遮蔽出来ない怖い磁界と紹介される。 これはあくまでも一つの例えであって、必ずしも正しくはない。 磁界は空気のようにどこにでも入り込む、

 これに対して電界は光のように、ある程度簡単に遮蔽出来る、

空気も光りも地球上に存在する。 電界と磁界も同様に存在する、少し性格が異なる、と理解してください。
従って、磁界は人体の内部にも、体表面と等しく影響を与える可能性がある。

 電磁波の話の中で、磁界が問題になるのは、どちらかと言えば低周波電磁界の磁界である。 高い周波数になれば、電界だけを考えれば、電磁波として把握することが出来るからである。 しかし、特殊な場合には、高い周波数の電磁波における磁界も問題になることがある。

 こうしたことから、低周波電磁界の生体影響に大きな視点が集まるようになってきたので、低周波電磁界という電磁波の中で、磁界という言葉がマスコミなどで多用されるようになってきた。 磁界はイコール電磁波ではない。磁界は電磁波の中の1分野に過ぎない。

 磁界のある場所に人体があれば、人体に磁界の強さに応じた体内誘導電流が発生する。 人体は電気的に動作しており、人体には電流が流れている。 人体に流れている電流以上に、外からの磁界で電流が流れれば、生体の機能に影響することは、分かりやすい事象である。

 従って、ある一定以上の強い磁界は、生体に影響を及ぼす。 それでは、弱い磁界は? この点が現在の色々な研究のテーマになっている。 危険であるから研究するのではなく、問題がないかを確認する意味で色々と研究が行われている。

 

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6。電磁波の生体影響の概説

 電磁波の生体影響は電磁波の周波数/波長によって大きく異なる。 生体影響を語るときは、必ず、どのような周波数の電磁波の影響を語るかと、必ず限定しなければならない。

1)γ線等の放射線、2)X線、3)紫外線―波長の短いもの という電離放射線
 
1)から3)迄に示した電磁波は、離放射線と呼ばれている。 細胞・DNA等を直接損傷させる力があることから「電離放射線」と呼ばれている。 これらの電離放射線に関しては、国際的にも統一的な暴露基準が設定されている。


         
 

 

 現在の電離放射線に関する暴露基準の根拠を説明します。
電離放射線の生体影響に関しては、動物・細胞実験等で上記の様に量反応関係が立証されている。 図を見れば判りますが、ある一定以上の強さの作用量以上では実験的にも確認がとれて、直線で特性曲線をひくことが出来ます。

 しかし、作用量がゼロもしくはゼロに限りなく近い所での反応は、測定の限界等もあって、十分な検証が行われていません。 そのことを示す為に、上記図では作用量がゼロの近辺には、線をいれないで、空白の領域にしてあります。

 ある程度以上の強い暴露条件では影響度がきちんと検出出来るが、しかし、比較的低い暴露に対しては実験的に影響度がきちんと把握出来ないでいる、というのが現状です。
 
 電離放射線は細胞を損傷する力があるのでDNA等の損傷から遺伝的に影響がでても困るので、「どのように低暴露でも少なくとも影響がでる可能性がある」という遺伝学的な論点から、ある一定以下は影響がないという、その限界点であるThresfold(閾値)は存在せず、「暴露量と影響度は直線の関係にあると、見なすこと。」にしている。
これは現在の放射線防護にかかわる科学的な「定見」である。

 しかし、最近の研究によれば、まだまだ「少数意見」のレベルであって、学会等で広く公認される段階には至っていないが、「放射線ホルミシス」と称して、「低レベルの放射線はかえって健康に良い影響を与えている。」という研究もある。

放射線ホルミシスのひとつ論拠にラジウム温泉がある。 ラジウム温泉等の効能を如何に考えるか? ラジウムは放射性物質であり、放射線(電離放射線)をだす。当然、強い放射線への被曝は死にいたる。 

でも、わずか微妙な量のラジウムが含まれる温泉は、健康に良い効果を得ているという報告もある。湯治客は1日とか限定された曝露であろうが(ラジウムの半減期などを考えると、温泉から帰ってきてもしばらくはラジウムの影響は残るかもしれないが)、温泉地に長く住んでいる人が短命とは言えない、そういう報告もある。

 また、QUARK誌の 1994年12月号に掲載された記事から「ガンは宇宙でなおせ、ガン抑制遺伝子が宇宙空間で4倍に」とある。 これは宇宙では地上より少し強い放射線(宇宙線)があって、ホルミシス効果があらわれている例と思えないか?

 X線や放射線からヒトは逃げられか? 
 宇宙から来る宇宙線や身の回りの岩石などから微弱に放出される放射線からヒトは逃げることは出来ない。 ある研究によれば、ヒトが通常の生活で放射線に暴露している量の半分は、己の体に含まれるカリウム等の放射性同位元素からの被爆である、とという報告もある。 完璧に放射線から人が完全に逃げる為には、己の体を殺さなければならないと言う自己矛盾に陥ることになる。ヒトは完全に放射線暴露から逃げることは出来ない。
 
 X線の有効利用:医療用のX線診断装置等のこともある。 微量でも放射線、電磁波の一種賭してのX線は受けたくない、と言ったらどうなるか?
 放射線の影響で健康影響は生じないであろうが、その前に、体の内部の異常が早期に発見することが出来ずに、適切な近代医療を受けることなしに短命で死んでしまうでしょう。
 
 人体にとって太陽光線に含まれる紫外線はビタミンDを作る為に最低限度は必要である。 しかし、浴びすぎると皮膚炎を起こしたり、皮膚癌を発症したりする。 このようにヒトは、太陽光線に含まれる紫外線から完全に逃げることは出来ない。

4)紫外線―波長の長いもの
 紫外線の波長に応じた暴露基準、環境基準が存在する。ある程度以上浴びると危険である。 通常の生活空間では、そうした危険なレベルの曝露はない。

5)可視光線。
 強すぎる光は目に良くない、強すぎる光の量に関する暴露基準、環境基準は存在する。 ゼロックスの光源等は、使用者が見る可能性があるので、暴露基準などに基づいて光源の明るさを設計しているそうです。 ガス溶接や電気溶接の時に発生する強い光は目に悪いので、保護眼鏡もしくは保護マスクの使用が労働衛生の面から義務づけられている。
 「可視光線は電磁波である、微弱な可視光線でも健康に影響を与える」等と考える人はいないでしょう。

6)赤外線
 ほんのりと体を温めてくれるのが赤外線です。 全ての物体から、その物体の温度に比例した赤外線を放出している。「人体も体温に応じた赤外線を放出」している。 ヒトから放射される赤外線を検出することで、色々な防犯システム等が実用化されている。

 赤外線に体しても、強すぎる量に対しては暴露基準、環境基準が存在する。 微弱なレベルの赤外線も危険か? もしそうであるならば、自分の体温に比例して放射する赤外線から逃げる為に、ヒトは己を殺さなければならないという自己矛盾に陥る。 ヒトは赤外線から完全に逃げることは出来ない。

7)ミリ波 8)マイクロ波等の電波 と言った「電波」の範囲
 直接細胞等を損傷する力はないが、電波を浴びると体内でその電波を吸収して熱が発生する。 現在の「知見」としては、「これらの電波の領域の電磁波の生体影響はこの発熱作用」を基に暴露基準を定めている。
 体温を1度上昇させることが出来る電磁波の強さでもって最大暴露量としている。(ちょっと運動しただけでも、ヒトの体温は上昇する!)。

 従って、ある程度以上の強い電磁波でなければ体温を上昇させる力はない、周波数によってどの程度温度が上昇するかが微妙に異なる。
 通常の生活空間ではこの基準を越える電磁波を暴露することは殆どない、TV等の送信塔の保守作業をする人、レーダー電波を直接浴びた人(日本の自衛隊の事故でこうしたケースがある。)程度と思われる。

微弱な電波でも生体影響? について考える。 
 どんな微弱な電波(電磁波)でも健康影響があらわれるか? 
*電磁波が嫌で地球から脱出、どこかの星に移住したとする。電磁波(電波の領域) から逃れられるか? 答えは“NO“である。 

 宇宙の誕生はビッグバンである。 その理論の裏付けの一つとなっているのが、「ビッグバンで発生した電磁波が宇宙に存在すると仮定してそれを検出した研究」がある。 この研究でノーベル賞をもらっている。 極めて微弱であるが、「宇宙には4,080MHzのマイクロ波電磁波が存在」している。 ヒトは地球を脱出しても、電波から完全に逃げることは出来ない。

 携帯電話の送受話器からの送信電力が小さく、体温を上昇させるだけの力はない、しかし、
1)頭が丸い形状をしていることからどこかに熱の集中が起こっては困る、
  ということと、
2)「波源から近い」ので理論計算がしにくいこと等
 から、十分な検討が必要である。 

 「十分な検討が必要」なのであって、現状の携帯電話の送受話器からの送信電波が危険であるという訳ではない。 問題がなさそうであるが、無い事を証明する為に、色々と研究が行われている。
 医学診断装置CTスキャン等で得た脳の正確な断面図を利用して、電磁波に暴露した時に影響を大型コンピュータで精密に計算して、影響度を検討することなどが行われている。

 「携帯電話の通話時の生体影響」というのは、電磁波の生体影響を考える時は、一つの個別の条件における研究テーマ、特殊なケースでの研究として考える必要がある。 前述の様に使用環境がちょっと特殊であるからである。

 同じ携帯電話でも「携帯電話の中継塔からの電波の影響」は、他のTV放送塔等と同じ基準、同じ考え方で、対処することが出来る。 
 同じような携帯電話の電磁波の生体影響に関しては、送受話器の電磁波の問題と送信塔・中継塔の電磁波の問題は、完全に別個の問題である。 混同して考えてはならない。 ややもすれば混同している。
  

<<<<< 閑話休題 >>>>>>

 

携帯電話の送信電力を0・5Wとする。 一般的に1kWの電力は1時間で960kcalの熱が出る。0・5Wが全て熱に変換したと仮定する。 1時間連続して使用した時に生じる熱量は0・48kcalとなる。 この熱量は1リットルの水を1時間かけて0・48度上昇させるだけである。 しかし、10ccの水に熱を集中させると1時間かけて48度も上昇させることが出来る。

 この意味では、携帯電話による熱の集中の可能性は慎重に、より厳密に検証しなければならない。 今迄の研究の成果を見ていると、さほど電力の集中はないようである。      

       
発熱作用の有効利用:
 マイクロ波などのジアテルミーが医療用に多用されている。 癌の治療にも用いられている。 医療効果が認められている、善玉作用がある。これらは、ある程度の強さの電磁波(電波)を患者に曝露させ、電磁波で体内に熱を発生させている。

熱以外の作用は?
 熱作用以外の作用はないのか?と言って現在も色々研究中である。 温度上昇が発生しない程度の低レベルの電波を暴露した時に、神経系に作用しないか?DNAの損傷が発生しないか? 癌にならないか等の研究が進行中である。 結論はまだ得られていない。 問題がありそうだという論文と、そうした問題は見つからなかったという正反対の論文が、共に存在する。

 熱作用から定めた暴露基準値の2倍程度の電波を使用した細胞への暴露実験でDNAの損傷が増加するという報告もある(1996年BEMS論文誌に掲載)。 その研究は手法が問題で、別の手法では実験を行ったらDNAの損傷は再現しなかった、という話もある(1997年電気学会の講演会での話)。
 このように研究の成果が刊行されたからといっても、その報告内容が確定する訳ではない。 再現実験が電磁波の生体影響の研究にとっては大きな課題である。

 アメリカのR・アディの研究で、「携帯電話の電波を鼠に暴露、脳腫瘍の発生頻度を調査したが、頻度の増加はなかった」という報告(1996年)がある。 (最終報告書は研究者から貰えることになっていたが、ついに届かなかった。)
 英国の疫学調査で、ある場所のTV等の送信塔の近くに住む人に脳腫瘍などが多かったと言う報告がある。 しかし同類の複数の他の場所で同じように疫学調査を行ったら、問題点は検出されなかった、という報告がある。これなどは疫学調査の限界かも知れません。 たまたま偶然に特定の場所で異常が検出されてもそれが偶然か、何か因果関係があるかの判断と立証は概して難しい。

 現時点では「非熱作用はない」とは言えない、まだ「あると立証」もされていない。
ソフトレーザーの場合でも非熱効果の報告はあるそうです。

9)低周波電磁界
 電磁波の生体影響を考える時、現在迄に確定した見識としては、熱作用と刺激・感電作用がある。 これ以外に非熱作用として、癌の促進等の可能性が研究されているが、それれは、まだ確定した見識とはなっていない。だからといって無視する訳ではない。

 熱作用:低い周波数になると生体に熱を発生させる為には、ものすごく強い電磁界を印加しなければならなくなる。 通常そうした強い電磁界はありえない。 そこで低周波電磁界では熱作用は考慮しない。考えなくても良いことにする。

 刺激・感電作用:低い周波数になると人体は感電を検知するようになる。 (周波数の高い電磁波−電波では、人体は感じなくなるので、高い周波数の電磁波では感電・刺激作用は考慮しない。 このように電磁波は周波数等が変われば受ける作用も異なる、 これが電磁波の生体影響を難しく、分かりにくくしている原因です。) 過去の経験から、感電を検知するレベルから、最大の感電電流の量が定められている。 理論として、ほぼ確定している。 

 磁界による誘導電流:人体は電気信号で動いている、ある量の電流は体内に自然に存在する。 神経等の生体組織は、電気信号で動いている。どの程度の電流が流れているかは、判っている。 (私の手元にはそこまでのデータはないが。)

 生体が外部に存在する磁界に暴露した時は、体内に磁界による電流が誘導される。 体内に既に存在する電流を乱さない程度に規制して置けば、磁界の影響はないであろう という見解が、確率した見識に基づく一般的な見解である。

 この様に、現在の「知見」を基にして、低周波電磁界の健康影響に関する暴露基準は、前述の刺激作用と誘導電流の観点から、最大の低周波電磁界値を定めている。 (既存の世界保健機構WHO等の勧告文書等)。 例:1ガウスを基準値として推奨、

 これ以外に、まだ見解が確定していない、研究途上で、問題提起している癌や免疫作用への影響の研究成果は、存在する。 しかし、現在では一部のマスコミや騒ぐ人を除いて、「そうした健康影響の研究はまだ確定したものとは言えず、継続して研究が必要である。」というスタンスに立つことが一般的である。 日本以外の諸国でも、このスタンスに立っている。さらに、最近では、予防原則という考え方も出ている。

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研究の歴史:

 第2次大戦後に、対潜水艦通信の為に低い周波数の電磁波を使用した通信を行なう為に、送信基地の建設の動きがあった。 また、交流送電線の送電電圧の上昇に伴って、生体影響の有無の検証の必要性から、最初は電界に注目して研究が行われた。 しかし、思った様な問題点は見つからなかった。

 日本では、例、
「島田信勝ら:500kV送電線によって起きる静電誘導電圧の生体に及ぼす影響の程度について(1) 日本医師会雑誌 Vol 62 NO.101969」の様に、電界に注目した研究を行い、高圧送電線の安全基準を定めた。 (この時点では、日本は非常に真面目に科学的・医学的に、世界に先駆けて高圧送電線の電界の健康影響を研究していた、と言える。) 

 電界では特に問題になるような見識が見つからず、電磁波の生体影響の研究はすたそうになった。
しかし、同じ低周波の電磁界でも、電界ではなく、磁界に着目すべし という論が発生した。

この低周波磁界が注目を浴びるようになったきっかけは、
N. Wertheimer, E. Leeper : Electrical wiring configuration and childhood Cancer. American J. of Epidemiology, Vol.109. No.3. P273-84 1979 送電線と小児白血病の関係を示唆した最初の疫学調査」である。
 
 この報告書の原著を読めば、必ずしも電磁界だけに着目している訳ではないが、送電線からの磁界と小児白血病の関係を、オッズ比が2程度で示唆している。 この研究をきっかけに、低周波電磁波の中で磁界と癌との関係の研究が促進された。 色々と研究が行われた。

 今迄の研究から、低周波磁界は「発癌性はない」となっている。 すなわち、低周波磁界の直接的な作用で、発癌に至ることはないというのが一般的な見識である。
 しかしながら、「プロモータ(他の要因で癌になりかけた細胞を、発病迄に促進する作用)、もしくはコ・プロモータ作用(癌の促進作用を持つ物質の作用を増強する機能)の有無」の検証が継続して行われている段階である。

 こうした点から、100%安全という結論は得られていない。しかし、発癌作用がないことから、100%危険である ということも出来ない。
 私が読んだ文献によれば、電磁界の暴露強度の違いなどを無視すれば、動物実験等で「電磁波は癌のプロモータ作用」を示唆する研究報告もある。低周波磁界に関していえば、生活環境下の磁界より少し強い磁界(1ガウス)でそうした癌のプロモータ作用が報告されている。

 「電磁波によって松果体からのメラトニンが影響を受ける。」と報告している動物実験結果から、「そうなれば免疫作用が劣化して癌が促進される」という仮説を唱える学者もいる。 これはよくメラトニン仮説として、マスコミにも紹介されるが、あくまでも仮説である。まだ立証はされていない。
 
 「細胞をとりだし、その細胞に電磁波を暴露させたら、細胞からのCaイオンの流出が起こった」という報告もある。この現象は、特定の強度、特定の周波数で発生しており、全ての周波数では発生しない。 このことから、研究者は「何らかの共鳴現象・窓現象」と仮説を立てている。 (実験手法のあいまいさに起因する偶然のデータなのか、共鳴現象が本当に存在するのかは、まだ定かではない。)

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以下は、最近の研究を紹介する。よくマスコミに登場する研究である。

送電線からの磁界と癌の疫学研究 ノルデック研究・カロリンスカ研究4件
「これらの報告が送電線からの磁界が健康障害となる根拠」と主張する国内の学者・ジャーナリストがいる。 じっくりとそれぞれの原著を読めば決め手となる証拠にはなっていない。 一つの状況証拠程度である。

Maria Feychting et al; Magnetic fields and cancer in children residing near Swedish high-voltage power lines.
 
カロリンスカ研究所の疫学調査としてマスコミの脚光を浴びている報告。
 症例対照研究で白血病と磁界のRRはあるが,1戸建とアパートで大きく異なる傾向にあり,まだ交絡因子が十分に除去されていないので、この研究成果だけでは結論は得られない。

M. Feychting et al: Magnetic fields, leukemia, and central nervous system tumors in Swedish adults residing near high-voltage power lines. Epidemiology: Sept. 1994 Vol. 5 No. 5
 
カロリンスカの送電線と磁界の大人の癌に関する研究。
 暴露の累積値と白血病は相関がある。 まだまだ交絡因子の排除が不十分、男性の住宅にいる時間をどのように累積したか?疑問が残る。

P. K. Verkasalo et al: Risk of cancer in Finland children living close to power line. BMJ: Oct. 1993
 ノルデック研究の一つ、フィンランドの送電線と小児癌の後ろ向きのコホート研究である。

結論として 送電線の電磁波は問題ない というもの。 一部の数値を見れば危険率は4・2倍というものもあるが、これはChance Finding(偶然の数字)と見なしている。

J. H. Olsen et al: Residence near high voltage facilities and risk of cancer in children. BMJ: Oct. 1993
 ノルデック研究の一つ、デンマーク全土を対象としているので規模は大きい、しかし、結局、全土の症例から送電線に近い住民を抜き出すと30人程度の症例の規模になっている。 白血病や脳腫瘍では問題なく、リンパ種では1mG以下で5倍の危険、強い磁界では統計的に有意ではなくなっている。3癌の合計で4mG以上の暴露で3・6倍に有意に危険となっている。
  1945年以降のデンマークの癌発生率と電力消費の伸びを比較した時に、癌の増加は見られない事から、磁界と癌の関連性を否定しないが、あっても送電線の磁界からの影響度は低いと結論つけている。

更に最近の研究を紹介します。
*アメリカの国立癌協会の疫学調査報告-1997年
 ノルデックの研究の一桁大きい規模で研究してあるので精度は高い。
 原著を読んでいる最中で詳細不詳です。 研究者の結論だけを読めば、「送電線の磁界は小児癌の因子ではない。」となっている。 内部の数字を、かいま見れば、100%安全とは言えない数字も含まれている。

 「電磁波」の生体影響といえば、場合によってはこの「低周波磁界」の影響をさす。 気の短いマスコミ関係者もいる。 それだけ最近は注目を浴びている。 逆にいえば、この低周波磁界の問題を除けば、その他の電磁波は、それなりに説明がついているとも言える。

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 低周波磁界の有効利用の面も見逃してはならない。

*日本はかなり前から医療目的に交流磁気治療を行ってきている。 磁気治療器から発する磁気は、治療器の先端で800ガウスと結構強い。
*昭和医大の研究で この800ガウスの交流磁気治療器が、細胞レベルの研究であるが癌細胞を殺す効果を見つけている。

ということで、低周波磁界の、悪い影響を示唆する研究を読むことも大事であるが、医療効果の様に、良い意味での低周波磁界の効果が存在することも念頭に置かなければならない。

 数ミリガウスという微弱な送電線からの磁界で小児癌の増加を示唆する研究が有り、同時にそれより十分に強い800ガウスの磁界で、癌細胞を殺す効果がある、等と、ものすごい矛盾を持った研究成果が、同時に存在する。
これでは、我々はどのように判断すべきか、悩むだけである。どちらの研究が正しいのか、まず検証しなければならない。(といっても私には判断できない!)


 地上に存在する自然の低周波電界についても考える。
 雷のエネルギーが地球の大地と電離層の間の空間に共鳴して、シューマン共振周波数(例 8Hz)という低周波の電磁波となって、測定器で検知できる範囲で地上に存在する。
 雷は常に地上のどこかで、常に発生しているので、定常的にこうした低周波電界は地球上の全ての場所で存在する。 このシューマン共振による微弱な低周波電磁界から、ヒトは逃げることはできない。 生まれる前から、その程度の低周波電磁界は浴びてきている。

 低周波磁界の生体影響を纏めて見れば
*非常に強い磁気は健康影響があると推定できる。誰も異議は唱えない。
*800ガウス程度の磁気で治療効果があったり、癌細胞を殺したりする効果が見つかっている。
*2ミリガウス等と言った極めて微弱な送電線からの磁界での小児癌を示唆する疫学調査がある。
となって、どの研究を信用する、信用しないという判断にもよるが、今までに解説した、量と反応関係が全く確率していない。
 低周波磁界に関しては、このようにまだまだ判らない点が多い。

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7.直流磁界・電界 


直流磁気(磁界)の影響:
 
MRIという医療検査装置では強い直流磁気を使用している。 強い直流磁気の作用を利用することから、医療の診断に役立っている。
 
この医療診断にまつわる副作用や、悪影響などの生体影響に関しては、まだこれと言った知見は得られていない。

数万ガウスといった非常に強い磁気では、細胞などの分子構造に影響が出る、出ないといった研究が行われている。 1000ガウス程度で水溶液の特性が変化するとい研究結果もある。 1000ガウス程度で、磁気マグネットとして、作用機序は不詳であるが、肩凝り等に効果が得られている。 地磁気は0・5ガウス程度の強さを持っているので、地上に住む人間は0・5ガウス程度の直流磁場から逃げることは出来ない。 

 MRIの類似の設備を使用して動物実験の世話をしていたある大学の女性助手がこのMRI類似設備の発生する直流磁気47,000ガウス(と、記憶している)に浴びたので、体にポリープ等が出来たとして、日本で始めての電磁波に因る労働災害の申請をした。 この話しは数年前に発生。 それが今年の1月頃にようやく結論がでて、因果関係はない、として労災認定は拒絶されたという情報となって、ニュースクリップに引っ掛かってきました。 本人はまだ納得していない様である。

 ちなみに、現在の医療診断装置MRI等の健康影響から、20,000ガウス(2テスラ)を曝露基準値として、定めているようです。 

直流電界の影響:
直流の電界と言えば、何のことはない、静電気のことである。
 静電気による健康影響に関してはあまり適切な例はない。 しいていえば、VDT作業に関連して、北欧で冬の期間にVDT作業者の中に顔の皮膚異常を訴える人がいて、VDTの静電気が疑われたことがあった。 北欧で寒い冬に加湿なしに暖房を行い、20%を切る低湿度での中で、作業者の衣服の静電気と、VDTの静電気による相乗効果によって周囲のごみが顔等に付着して、作業に関連する心理的なストレスも相まって、皮膚異常をおこした可能性がある。
この問題はその後の研究によれば、マスコミの騒ぎ過ぎという結論になっている。

 乾燥した場所では、体に静電気が溜まる、部屋のノブ等に触れた時に、体に溜まっていた静電気がノブに流れて、そのショックを感ずることがある。 こうした人体に静電気が溜まるので、その大きさは、数KVに及ぶ場合があると聞く。
 静電気は、同じく身のまわりに存在しており、ヒトは逃げる事は出来ない。

 
静電気に関して、火花が飛ぶ事に起因する火災等の問題はある、しかし、それ以外に、生体影響は、あまり耳にしない。

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8。生活空間に存在する電磁波とリスク


 電磁波の健康障害で可能性が示唆されているのは脳腫瘍・白血病である。 何故かこの2つの疾病に限定されている、最近のアメリカでは乳癌やアルツハイマー病との関係も研究されている。 
 乳癌・白血病・脳腫瘍は何れも癌である、この3種の癌だけが何故か電磁波の影響を疫学的に調査すると、可能性のある疾病として有意になってくる。 ヒトが同じように全身が曝露されているにかかわらず、胃癌、肺癌、大腸癌といったその他の癌は、影響が検出されていない。 どうして?

 「消化器系のガンでは食生活が、呼吸器系のガンでは喫煙等が重要なリスク要因であるから、その影響に埋もれて、たとえ電磁波の影響があっても顕著なデータとして現れない。 乳癌・白血病・脳腫瘍についてはそのような重要なリスク要因がないため電磁波の影響がデータとして現れる。」という見方も可能である。
 この疑問は、研究が行われている現在では、まだわからない段階なので、研究者のだれも答えてくれそうもない。今後の研究を待たなければなりません。


 生活空間で私が実測した範囲で強い電磁波があるのは、
<<低周波磁界では 新幹線に乗車した時、200ミリガウス程度に暴露する。 この大きさは、高圧送電線による磁界より大きく、東京大阪を往復するだけでも4ー5時間乗車しており」、短時間として無視出来る様な時間ではない。>>
 新幹線が開通したのは1964年である。 30年以上の期間に日本人は全員乗っている計算になる。 もしこうした低周波磁界が本当に脳腫瘍等を発症に結び付いているのであれば、新幹線を多用する日本人のビジネスマンの大半は脳腫瘍で死んでいても良い!!!事になる。 しかし、 現実には、ほとんどのビジネスマンは生きている。

マイクロ波の電波の領域では 
<<東京タワーから放射するTV等の電磁波が比較的強い。>>
 東京タワーには小学生の見学から始まって、殆どの日本人が利用している。 現行の電磁波暴露基準には十分に適合しているが、それでも東京タワーの近くのビルの3Fの窓際で3V/m、4Fの窓際で測定して4V/mという値でであった。 東京タワーの展望台に昇った時の電界値は? まだチャンスがなく測定していません。 結構強い電波が地上xxx mの展望台には存在すると想像しています。

 この程度の電磁波でも脳腫瘍等の発症を促進するならば、日本人は殆どが脳腫瘍になっていなければならない。 特に修学旅行等で小中学生が東京タワーに登るという事は、成長しつつある子供で、細胞分裂などの盛んな時期に電磁波の害があれば、影響・症状が出やすいから、良い影響の有無の検出集団と考える事が出来る。(これは、送電線の近くに住む子供の白血病が多く、同じ白血病でも大人には問題がない、という研究成果の大人と子供の差違の説明によく用いられる論法です。)


 しかし、日本では特にこうした疾病は増加していない。東京タワーが出来て、何年になるのだろうか?

 微弱でも電磁波は脳腫瘍などを増加させる可能性を示唆するという主張や報告があるが、しかし、現実の身の回りの冷静に眺めてみれば、そうした警告は現実と乖離している。 
 どこに「電磁波は微弱でも危険」という論理や主張のあやまりがあるか???じっくり、皆さんで考えて見るべきです。 私にもまだわかっていません。

 色々と原著等を読んでいると、身の回りの電磁波でも100%安全とはいえない、と考えるに至ります。 何かあるかも知れません。 でも「危険と断定」することには以上に述べた様に、現実との乖離を感じ、賛成出来ません。

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9。電磁波の生体影響の纏め


周波数や波長によって異なる幅広い言葉が「電磁波」であるが、
*非常に強い強度の電磁波は健康影響がある
*ある程度低い強度の電磁波から、人間は逃げることが出来ない
*ある程度の強度の電磁波は、医療用等で有効活用されている
 ということになって、今しばらくは研究の成果を見守らなければならない。

これらの強度と影響の大きさをグラフにしようとしても、最初の項で説をした
>1。現象としての量反応関係のおさらい 
にある作用とその反応の関係すら確定していない、と、言えます。

 現在進行中である世界保健機構WHOのEMF(電磁界プロジェクトの結果は2000年頃には出る予定である。 (注 その後 5年間計画が延長された)。 果たして、我々の望む「何らかの結論」を出すことが出来るか? 「大きな危険性はないが、継続して研究しなければならない。」程度に終わらないか? 興味のある方はインターネットでスイスのWHOのホームページを覗いてみて下さい。 経過が報告されているはずです。

 しかし、「身の回りに存在する電磁波」のレベルに対しては、私の個人の見解として、あくまでも感覚として、
*100%危険であるので、早急に何か対策を講じなければならない、ということはない。
*100%安全ということも、また同時に保証されてはいない。
*リスクはあるが、その程度は低いのではないか

(たばこを吸いながら「電磁波は危険」と論議する人はいるか? いるとすれば・・・・ ・・・・ )。 
と 思う。

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10。日本が出来る国際貢献の提案

(この草稿は、とある医学の研究会での説明資料に作成したので、以下の様な提言も含めてあります。)

 電磁波の生体影響に関する研究は、欧米が主たるものである。 しかし、日本でも電力中研等で研究を行っている。結構まじめに厳密に研究を行っている。

 日本では交流磁気治療が昔から行われている。 子供の治療例もあるだろう、磁気治療を受けた患者がその後20年程度経過した時に、脳腫瘍などの電磁波との関係を示唆されている疾病になっていないかどうかを疫学調査で行ってみれば良い。

 送電線以上に強い交流磁気を浴びて、肩凝りやその他の病気が治癒した人が、その後副作用的に癌になっていなければ、2ミリガウスや4ミリガウス程度の送電線からの磁界によって癌になる可能性はない、と言えるし、場合によっては磁界が「問題がある」ことがはっきりと立証できる。

どなたか研究テーマにとりあげては如何! 

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11。VDT、パソコンからの電磁波


 電磁波の生体影響の話しの中に、最後はこのパソコンの話しがよく出てきます。 そこで、簡単に解説を行います。

 眼精疲労に関連する目の疲れや作業関連のストレスの問題を別にすれば、生体影響に関する電磁波の問題への取り組みと対応は、色々な電気機器の中では、優等生であるといわれている。 出来るだけ低くするというレベルであるが、殆どのパソコンモニターは電磁波の対応を行っている。

 他の電気・電子機器、例えばTV受信機などは、色々な制約でパソコンモニターと同じレベルに電磁波を自己規制することは出来ないでしょう。 (出来る?)パソコンモニターの電磁波を世界で最も厳しく規制しているスウエーデンでもパソコンモニターは規制しても、TV受信機等はまったく規制していない、という一見すれば不思議な現実も存在する。

 

 最近のパソコンモニターの電磁波規制を見ると、スウエーデンだけではなく、欧米、日本でも同様な規制が行われている。
「電気学会・高周波電磁界の生体効果に関する計測技術調査専門委員会・偏
   電磁界の生体効果と計測   1995年 コロナ社
   静電界から低周波電磁界までの生体影響を取りまとめた本。 」
によれば、「将来研究成果がはっきりした段階で明確になるであろうが、現在のパソコンモニターのそうした規制は不要なものであった、と反省するかも知れない。」という意味を込めて紹介されている。

 こうした電気学会のもくろみも含めて、今から10年後にパソコンモニターの電磁波対応を推進した人は、「なんと無駄なことをした、そこまでやらなくても電磁波は安全と判ったのに、」と反省するか、「オオ、やはり多少でも対策を行っておいて良かった、電磁波は規制しなければならない様に危険なものと判ったので。」とほっとするか、どちらであろうか? これは、将来でなければ最終結論を見出せない。

 現在では、気にする人は、パソコンモニターの電磁波対策を施したモデルを選択すれば良く、気にしない人は、どのモデルを選択しても良いと、個々の判断に任せる事になる。 こうした個々の判断以外に解はない。

 パソコン作業に電磁波防護エプロンは必要か? 
答えは「不要です。 販売されているエプロン等は実使用状態において、エプロンのメーカーが宣伝しているような電磁波効果は全く発揮出来ません。」と言えます。 詳細の論議は割愛します。

 パソコンに画面フィルターは電磁波防護の為に必要か? 
答えは「エプロンと同じで、画面フィルターは実使用状態において、フィルターのメーカーが宣伝しているような電磁波効果は全く発揮出来ません。 フィルターの場合は反射防止やコントラスト改善などの効果はあります。」となり、電磁波の問題を主眼としての、画面フィルターは不要です。

これも、ここでは詳細の論議を割愛します。

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12。電磁波過敏症


 「電磁波に過敏である」という症例などが報告されています。 デンマークでは過去に2回関連する国際会議を開催しています。 第2回目の会議の予稿集を入手してあります。 まだほんの一部しか読んでいません。 
 蕎麦を食って中毒死した人がいるように(医者から聞いた話しです、本当にそういう例外ケースもあるそうです)、何かの理由で電磁波(どの周波数か等を調べる必要があるが)に過敏な人が小数世界中のどこかにいてもおかしくはない。

 デンマークの国際会議の予稿集等を読んでも、必ずしも電磁波過敏症の再現に成功している訳ではないので、心理的な面も多分にあると思う。 電磁波過敏症として、どの周波数の電磁波に過敏なのか明確にしながら、ケースバイケースで対応を考えるべきでしょう。

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13。電磁波防護グッズ


 電磁波の生体影響の問題が広まる中で、電磁波防護グッズが多数販売されている。 それらの多くは、機器に貼るだけで効果が出ると謳っている。 それらの情報を、入手出来た範囲で総合的に判断すると、

*基本的に電磁波をカットしたりする機能は皆無。

*波動測定器なる欺瞞に満ちたもので測定をして、電磁波の害を無害化できると 謳っている。(波動測定器の欺瞞性に関しては別冊宝島の304号、334号を 参照願います。)
 
従って、「公正な科学の目で見れば、いんちきグッズの限りなく近いもの」である。 「波動測定器」には大きな疑問を持っている。

 仮に、波動測定器に超常的な側面があって、それなりに有効な物であるとしたら、波動測定は、一般の治験と同じ手順で
1)2カ所以上の独立した機関で
2)供試グッズとダミーを準備して、
 2重盲検法で、検査を行うべきである。

 
現在販売されている波動を利用した電磁波防護グッズメーカや販売店に対して、こうした二重盲検法での検証の確認を問合わせているが、「YES」と回答してくれたところは、現在まで1社もない。

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補遺:電線のスズメは感電しない?スズメなどは電界や磁界を感知している

 

1.最初の話題は 「雀等の鳥は電界や磁界を検知しているか?」です。

講談社のブルーバックスの中に、速水敏幸著「電線のスズメはなぜ感電しないー電気&絶縁の初歩の初歩」という1991年に発刊された本があります。
この本は、電気とは、磁気とは、絶縁とは、感電とは何かを初心者に説明する本です。

この本の最後の最後に、
「スズメやハトやムクドリが、配電線や電車線にとまっているのを、よく見かけるが、3万ボルト以上の送電線に止まっているのは、あまり見かけない。
この理由は、高度や止まり木の太さなどの関係もあるだろうが、案外、送電線の磁力線や微小な放電を検知して、いやがっているのかもしれないな。
もっとも、中国の架空送電線は裸線で1万ボルトだが、<けっこうスズメがとまっていますよ>と友人の葉さんが話してくれたがネ。」 
という記述があります。

私がこの本を読んだ理由は、雀等の鳥は電線に留まっているが、どの程度の電圧の送電線もしくは配電線に留まっているのかを知りたかったからです。

電磁波の生体得影響、特に身の回りの商用周波数の配電線・送電線からの電磁界影響を考える時に、人体実験は出来ないので、鳥などの観察から何か電磁界に関する影響度を推察できないかと考えているからです。

すずめが電線に止まっていのは、子供でも知っている。
もし、いかなる送電線・配電線でも、それらが100%危険なものであれば、スズメも、忌避するはずである。
程度の差はあっても、忌避の態度をとるはずである。

ところが、送電線の電圧が高電圧になれば、経験的な観察結果では忌避していることがわかる。
低電圧であれば忌避しない。
これは何を意味するのであろうか?

電圧が高いということは、電磁波(電磁場)の中でも電界(電場)を鳥は感知して、ある程度以上の電界を忌避している。
すなわち鳥にとってもある一定以上の電界は、好ましくない環境条件であるとして忌避行動をとっている。

磁界(磁場)に関してはどうか?
磁界は、高圧送電線であろうが、低圧の配電線であろうとも、発生する磁界の強さは流れている電流によって定まる。
低圧の配電線の方が、場合によっては高圧送電線よりも大きな電流が流れている可能性がある。

すなわち磁界に関して言えば、高圧送電線も低圧の配電線も条件としては、大差がないことになる。

低電圧であれば、雀は電線に留まるということから、高圧送電線や低圧配電線から発生する磁界(磁界の強さは電線からの距離に比例する。
電線に留まると言うことは、地上にいる人間が浴びるよりは、結構強い磁界を雀は浴びていることになる。)は、雀にとっては、危険な環境因子ではないことになる。

というような観点から、どなたか「鳥は電界・磁界を感知したり、忌避の行動をとったりするか? その限度値はいくらか?」等を研究してみては如何でしょうか?

2.電線のカラスが感電死した、というニュース

毎日新聞201775日の記事です。

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高圧線 カラス感電で爆発音騒ぎ 福岡・博多区

5日午前9時5分ごろ、福岡市博多区美野島付近で、住民から「爆発音がする」と110番通報が入り、付近の約5500世帯が停電した。
警察や消防が出動する騒ぎになったが、九州電力の調査で、近くの高圧線でカラス1羽が引っかかって死んでいるのが見つかった。
カラスが接触し、感電したのが原因とみられている。

九電によると、高圧線は付近の民間企業が設置したもの。
停電は10分後に全て復旧した。
高圧線の電圧は6600ボルトあり、九電は「異常な電気の流れが生じた場合、爆発音のような音がすることがある」としている。

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おことわり:
この基礎講座のページは、学術的な正確性よりは、判りやすさに力点をおいてあるので、専門家の方は記述に不満を感じるかも知れません。