低周波電磁界に関するコーナー（１）　

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北欧などの疫学研究報告の紹介：　
こうした研究が基になって、低周波磁界が発がん性2Bといった評価になりつつあります。

　国際癌研究機構IARCの判定の詳細は、こちらへ。

１．送電線と小児ガンに関するカロリンスカ研究所の研究
２．送電線と小児ガンに関するデンマークの症例対照研究
３．送電線と小児ガンに関するフィンランドの研究
４．送電線と大人の癌に関するカロリンスカ研究所の研究
５．乳がんと磁界の研究
６. 電磁波と癌の松井論文1995年
７．英国の小児癌と磁界の研究
８．英国の小児癌と磁界の研究―その２　
９．英国の小児がﾝと電界暴露
１０．英国の職業的な磁界曝露と脳腫瘍の研究　BBCニュース
１１．電磁波と癌の鏡森論文1996年
１２．Savitz 1995の論文から
１２A．Savitzらの大人の癌の疫学研究1995年
１３．電気暖房ベッドなどからの電磁界と胎児の死産への影響
１４．電気毛布の磁界と小児癌の研究
１４Ａ．電気毛布使用と乳がんリスク　2000年の研究

１５. デンバーの小児癌
１６．Gurneyの低周波磁界と子供の脳腫瘍の研究　
１７．ノルウェーの電気鉄道による癌の増加　1994年　
１８．デンマークの電力従事者の磁界暴露と発ガンリスク　
１９．家電製品の使用と大人の白血病のリスク　
２０．フランス電力会社従業員の電界暴露と発ガンの研究　
２１．Keifetsの1997年の職業的な電界暴露と白血病との疫学研究　
２２．イギリスのＮＲＰＢ発行　Doll報告の概要　2001年
２３．低周波磁界と癌の研究（Galloni　2001年）　　
２４．スイス鉄道従事者の磁界暴露と白血病　　
２５．デンマーク電力従事者の電磁界暴露と心臓機能への影響
２６．英国の電力会社従業員の磁界暴露と白血病のリスク　2001年
２７．英国電力従事者の磁界と脳腫瘍のリスク　2001年
２７A．英国 Harringtonらの電力事業従業員と脳の癌の1997年研究

２８．低周波磁界と小児ガンのプール解析　
２９．電気学会1998年の報告から　
２９Ａ．アメリカRAPID最終報告書
２９Ｂ．フランス国立食品品環境労働衛生安全庁（ANSES）が低周波電磁界の健康影響報告2019年

３０．カナダの職業的な磁界暴露と脳腫瘍　
３１. デンマークの電力会社従業員の磁界暴露と多発性硬化症のリスク
３２．細胞に100μT磁界暴露しても影響なし　
３３．電力会社での磁界暴露は問題がなく、電界暴露が問題とする研究成果　
３４．アメリカのリネットの小児がンと磁界の疫学研究　

３５．Stevensらの1996年メラトニン仮説の論文
３５Ａ．石堂ら2001年細胞でのメラトニン研究
３５B．Grahamら2001年メラトニン仮説の研究　
３５Ｃ．Bakosらの2002年メラトニン仮説の研究
３５Ｄ．Davisらの2006年メラトニン仮説の研究
３５Ｅ．Seifpanahi-Shabanらの2016年メラトニン仮説の研究

３６．職業的な電磁界暴露と自殺　
３７．オランダの送電線とガンの疫学研究　1993年　
３８．Finland大人のガン低周波磁界の関係1996年　
３９．Ahlbomの磁界と小児がンのプール分析　
４０．磁界と大人の白血病のリスク　
４１．磁界暴露と子供の脳腫瘍リスク　
４２．磁界暴露と妊娠異常　
４３．磁界への曝露が多いと流産のリスクが増す、という疫学研究　
４４．保育器内の磁界暴露と小児白血病　
４４Ａ．職業的な曝露と乳がんのＧｏｏｄｍａｎの2002年研究

４５．低周波磁界が脳腫湯の発症を遅らせるという疫学研究
４６．16.7Hz磁界と小児白血病
４７　スウェーデン電力事業従事者のコホート研究結果
４８　スウェーデン電力事業従事者の生殖への影響―1998年
４９. 電力周波数電磁界暴露と神経疾患の台湾での疫学研究
５０．英国の電力線と小児癌に研究　2000年
５１．英国の高圧送電線と小児ガンの新しい疫学調査報告
５２．電磁波暴露と自殺の関係を示すシロとクロの報告
５３．電磁界と肺がん
５４．ノルウェー2004年磁界と乳がんの疫学研究
５５．カナダの小児癌と磁界の1999年の研究
５６．アメリカの小児癌に関するＰｅａｒｓｏｎらの2000年疫学研究
５７．アメリカ　McCurdyらの2001年研究にみる女性の磁界曝露実態　
５８、日本衛生学会英文誌2000年Wang・Kagamimoriらの職業的曝露と成人白血病メタ解析
５９．2011年オーストラリアの低周波電磁界への両親の曝露と小児癌の研究

６０．2013年大久保らの日本衛生学会での発表
６０A．日本の低周波磁界と小児脳腫瘍の疫学研究2010年

６１．ノルウェーで、母親が仕事中に1ミリガウス以上の電磁波を浴びると胎児への影響があるとする2002年Ｂｌａａｓａａｓらの研究
６２．2003年磁界と乳がん陰性結果
６３．電力の消費量と小児白血病の関係
６４．子供の白血病の原因　2018年イギリスの研究
６５．Ｄｅ Roosらの職業曝露と神経芽細胞腫の研究2001年
６６．1997年 Tynesらのノルウェー　送電線と小児がんの疫学研究
６７．1999年 Mcbrideらのカナダ磁界と小児がんの疫学
６８．2001年ICNIRPの専門家グル―プの疫学に関するレビュー
６９．2006年アメリカのFoliartら、磁界曝露と小児がん研究
７０．1996年Cooganらの職業的な磁界曝露と乳がんの研究
７１．英国送電線と肺がん研究2000年
７２．Sobelらの磁界とアルツハイマーの疫学研究1995年
７３．Amoonら2022年プール分析

*動物実験の結果　

B１．磁界と乳がん　エストロゲンの要素も加味した動物実験　
B２．1998年坂部らの低周波磁界とラットの精子への影響
Ｂ３．畑中らのネズミ撃退器からの磁界などによる精子への影響
Ｂ４．2007年Torres-Duranらの低周波電磁界とラットの血清

＊送電線からの磁界の電子機器への影響

C１．自宅の前の送電線がテレビジョン受信機に影響した例

＊職業的な曝露に関する警告

D１．　電気溶接

＊法的な規制などの情報

E１．アメリカにおける送電線からの電磁界に関する法的な規制
E２．アメリカに規制する法律がない　ことを立証するアメリカの新聞記事
E３．高圧送電線下の公園を設置させない奈良県大淀町開発指導要領


＊疫学の評価

F1．疫学研究におけるヒルの判定基準

１．送電線と小児ガンに関するカロリンスカ研究所の研究報告の内容

　作成：　９７ー１ー１７　
巷では　送電線と小児ガンに関する最近の知見を例に取りあげて送電線から漏洩する電磁波は危険であるといっている。　“スウェーデンのカロリスカ研究所の疫学調査の結果、小児白血病が、２ｍＧで２.７倍、３ｍＧで３.８倍と“。　この報告書の実態は？

私はカロリンスカ研究所に問い合わせて論文を送って貰いました。
合計６点の論文が届きました。　専門用語が沢山あって理解出来たとは思えませんが、私が理解し得た範囲で内容を少し紹介したいと思います。

結論として、“この研究だけでは電磁波の影響を結論づけることは不可能“ではないでしょうか！
（注；、、、、　）は私のコメントであって、原著にはない部分。

　原題； magnetic fields and cancer in children residing near Swedish high-voltage power lines.
　研究者 Maria Feychting and Anders Ahlbom
American Journal of Epidemiology 誌　１９９３年１０月号に発表　

　内容：
　Ｓｗｅｄｅｎの２２０・４００ｋＶの送電線の３００ｍ以内にすむ子供を対象。
電力会社から送電線の地図を貰い、それに基づいて登記所に登録によって対象となる住民をピックアップ。　研究対象者は約１３万人。

　Ｓｗｅｄｅｎで行なれているガン登録から　対象者１３万人の中にガンになった人をピックアップ。　
１９６０年から１９８５年にかけてのガン登録の中から　リストされた小児のガンは全てのガンで、わずか１４２例。　これを症例とした。

　２５年間で１４２例ということは　１０万人あたり毎年４人程度の子供が何らかのガンになっていた。
１４２例の内訳は、白血病：３９（全ガンの２７％）、脳のガン（Central　nervous system　tumor）：３３、リンパ腫：１９、その他：５１　であった。

（注：白血病だけが磁界の影響を受けて、ＲＲが２倍―３倍となっているとしても、１４２が送電線の磁界に関係する全てのガン患者数であるとしても、問題となる白血病は１０万人あたり年間で約１名となる。　過去の症例が電磁波によるものとすれば、年間１名の子供が磁界の影響でガンになっている、磁界を対策しても年間１０万人あたり、０・５人ないし０・６人の子供を救うことにしかならない。）

　比較する為に年齢・性等を考えて、症例の４倍の対照（コントロール）として選別。

　電力会社の過去の記録から、ガンに発病した頃の送電線の電流値等から磁界を推定（磁界の推定値）した。　また約３分の２の家の磁界は実際にスポット測定を実施（スポット測定）した。　住む住居が一戸建てかアパートかも調査した。

結果　原文の表４　戸建の家とアパートの磁界の強さの分布　
　磁界の推定値とスポット測定の完全ではないが相関はとれている。
　アパートの場合は１戸建に比べてやや相関が悪い。

結果　原文の表５　ガンと磁界の推定値の関係

　　その１　区切りを２ミリガウスとした時 RRの括弧内は９５％信頼区間

ガン	0.9mG以下		1-1.9mG	2 mG以上
	n	RR	RR	RR
全ガン	117	1	1.5 (0.7-2.9)	1.1 (0.5-2.1)
白血病	27	1	2.1 (0.6-6.1)	2.7 (1.0-6.3)
脳	29	1	1.0 (0.2-3.8)	0.7 (0.1-2.7)
リンパ腫	16	1	0.9 (0.0-5.2)	1.3 (0.2-5.1)
対照	475		33	46

　　（注：対照の欄の数字はＲＲではなく、どういう磁界下に居住しているかの分布を示す数字です。）

　　その２　区切りを３ミリガウスとした時　　　 RRの括弧内は９５％信頼区間
　

ガン	0.9mG以下		1-2.9mG	3 mG以上
	n	RR	RR	RR
全ガン	117	1	1.2　(0.6-2.3)	1.3　(0.6-2.7)
白血病	27	1	1.5　(0.4-4.2)	3.8　(1.4-9.3)
脳	29	1	0.7　(0.1-2.6)	1.0　(0.2-3.9)
リンパ腫	16	1	1.3　(0.2-5.0)	0.9　(0.0-5.4)
対照	475		47	32

この結果から　２ミリガウスで区切った時に２ミリガウス以上の磁界を受けている家に住む子供は白血病になっている割合が対照に比べて２.７倍高い。　また、３ミリガウスで区切った時も、同じように３.８倍高い、というもの。

　 この研究は症例対照研究と呼ばれる疫学調査の手法です。
　ＲＲの計算方法等は割愛します。　厳密にはＲＲはオッヅ比です。

以上の数字だけ見れば、２ミリガウスや３ミリガウスより強い磁界を浴びていると小児白血病の危険が高い、ということになります。

しかし、
結果　原文の表６の一部　白血病に関する磁界と居住条件には

磁界強度		0.9mG以下		1-1.9mG		2 mG以上
	住居区分	n	RR	n	RR	n	RR
症例	一戸建て	10	1	4	4.5 （1.1-15.2)	5	5.6 (1.6-17.8)
	アパート	17	1	0	0.0　(0.0-4.2)	2	1.1　(0.2-4.6)
対照	一戸建て	224		20			20
	アパート	251		13			26

というおもしろい結果が含まれています。　
１個建ても家に住んでいる子供は、確かに磁界を受けて白血病になる危険性があるが、アパートに住む子供は　磁界を受けても白血病になる危険性はない、というもの。　

（注；　SWEDENでは送電線の近くにアパートは建てないので、症例の発生が少ないのかと、考えられるが、対照の１戸建とアパートの数字を見れば　同じような割合で送電線のより近い、磁界の大きい場所にもアパートがたっていると言えます。　アパートの方が、磁界等の環境は１戸建より悪いと想像できます、　このアパートの住民に関して　ＲＲが低いということは、まだまだ、この疫学調査は問題を抱えていると言えます。　これに関しては　この文献を紹介していたＢＥＭＳ（アメリカの専門学術団体Bio ElectroMagnetic Society)のＮｅｗｓｌｅｔｔｅｒでも疑問ある点として、紹介されていました。）　

これらは　まだ何かの交絡因子が混じっていると考えることが出来ます。

さらに　
結果　原文の表９　の一部 実際の各家の実測値であるスポット測定値で解析すると

磁界強度	0.9mG以下	1-2.9mG	3 mG以上
癌	RR	RR	RR
白血病	1	0.2　(0.0-0.9)	0.6　(0.2-1.8)

となって　磁界の影響はないことになってしまいます。

研究者は、こうしたことから、　磁界は何か白血病の因子になっているようだが、どういう磁界の影響があるのか、　まだ良く判らない、症例数が少なく、　正確な解析が出来ない、　と結んでいます。

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２．送電線と小児ガンに関するデンマークの症例対照研究報告の内容

　作成：　９７ー２ー２３　　　　
スウェーデンのカロリスカ研究所の疫学調査の原著に引き続きデンマークの研究結果の実態を紹介する。　

結論として、“この研究はＳｗｅｄｅｎと同じ症例対照研究であるが、対象範囲をデンマーク全土とした為に症例数等は多い。
この報告では結論として“送電線からの電磁波による小児ガンの割合は低い“　という結論になっている。“

原題； Residence near high voltage facilities and risk of cancer in Children.
　　　研究者 J. H. Olsen at al: BMJ誌　１９９３年１０月号に発表

内容：

　デンマーク全土で１９６８ー１９８６年にかけて１５才以下で白血病、脳腫瘍、リンパ種と診断された症例（ケース）１７０７人が対象。これと比較する為に対照として４７８８名を選択。
　５０ー４００ｋＶ送電線の地図（現存、過去のもの、地下送電線、配電所を含む）から各家庭までの距離と送電線の電流等から各家庭の送電線による磁界を計算。　送電線以外からの磁界は無視。
　１ミリガウスとなる送電線や配電所との距離の２倍のところにある住居を“送電線の見える距離での暴露”と想定。　それ以上離れた住居を“磁界暴露なし”とした。

　こうした分類で　
　症例１７０７人は、　暴露なし　１６７７人
　　　　　　　　　送電線が見える距離での暴露　16人
　　　　　　　　　１ミリガウスを越える暴露を受けた１４人　と分類。
全デンマークでは過去１８年で小児ガンになった１７０７人の中で、送電線に近くにすんでいた人は合計３０人で１・８％にすぎない。

結果：　原著の表４　　括弧内は９５％信頼区間

ガン	磁界	症例の数	オッズ比
３癌計	１ｍＧ以下	４	１・３　（０・４-４・１）
	１ー３・９ｍＧ	４	０・７　（０・２-２・０）
	４ｍＧ以上	６	３・６　（１・６-１９）
白血病	１ｍＧ以下	４	１・０　（０・３-３・３）
	１ー３・９ｍＧ	１	０・３　（０・０-２・０）
	４ｍＧ以上	３	６・０　（１・８-４４）
脳腫瘍	１ｍＧ以下	３	１・０　（０・３-３・７）
	１ー３・９ｍＧ	１	０・４　（０・１-２・８）
	４ｍＧ以上	２	６・０　（０・７-４４）
リンパﾟ腫	１ｍＧ以下	３	５・０　（１・０-２５）
	１ー３・９ｍＧ	２	５・０　（０・７-３６）
	４ｍＧ以上	１	５・０　（０・３-８２）

（このデータで統計的に意味の有るのは太字にした３個所のデータのみ）

暴露時間との累積でも解析した、結果は有意なものはなかった。　
送電線との距離で解析しても　結果は有為なものはなかった。

デンマークの電力諸費量の推移と癌の発生の推移
１９４５年から最近までの電力消費は３０倍以上にのびている。
それに対して　全癌、白血病の症例の推移は殆ど増加していない。

以上の事から　送電線からの磁界は小児癌に関連している可能性は存在する。
しかし、病因学的にみて　送電線からの影響度は低い。

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３．送電線と小児ガンに関するフィンランドの研究報告の内容

　　作成：　９７ー２ー１１　
スウェーデンのカロリスカ研究所の疫学調査の原著に引き続き、フィンランドの研究結果の実態を紹介する。

結論として、“この研究はノルデック研究の中では唯一コホート研究であり、Ｓｗｅｄｅｎとデンマークの症例対照研究より精度は高いとおもわれる研究手法である。
この報告では結論として　電磁波は問題ないという結論になっている。“

　原題； Risk of cancer in Finland children living close to power line “
　研究者 Pia K. Verkasalo et al: BMJ誌　１９９３年１０月号に発表

　内容：
　Ｆｉｎｌａｎｄの１１０ー４００ｋＶの送電線の５００ｍ以内にすむ子供を対象。
電力会社から送電線の地図と、住民登録とがん登録を調査。
後ろ向きのコホート研究で、特定の癌に罹患（診断）された数（観察数）と期待値とから、Ｏ／Ｅ比を求めた。
研究対象規模は男女児合計１３・５万人で、９７・８万人・年。

結果と結論：１９７０ー１９８９年に１９才以下で癌と診断されたケースは１４０。
　期待値は１４５で、Ｏ／Ｅ比は０・９７。
　白血病・リンパ腫瘍、全癌では、　有意な値はなく、送電線からの程度の電磁波は問題がない。
（これより強い磁場で　も問題ないとはこの研究結果からは言えない。）

　但し　２ｍＧ以上の暴露を受けている男児の脳腫瘍だけは、Ｏ／Ｅ比が４・２（95％信頼区間は１・４ー９・９）で有意に高いが　これは偶然(chance finding)であろうと結論。

結果　原文の表２　ガンと磁界のＯ／Ｅ比　　括弧内は９５％信頼区間

ガン	磁界	男児	女児	男女計
脳腫瘍	0.1-1.9mG	0.99 (0.62-1.5)	0.69 (0.36-1.2)	0.85 (0.59-1.2)
	2mG以上	4.2 (1.4 -9.9)	0.0 (0-3.8)	2.3 (0.75-5.4)
白血病	0.1-1.9mG	0.77 (0.43-1.3)	1.0 (0.59-1.6)	0.89 (0.61-1.3)
	2mG以上	0.99 (0.02-5.5)	2.2 (0.26-7.0)	1.6 (0.32-4.5)
リンパ腫	0.1-1.9mG	0.48 (0.16-1.1)	1.62 (0.78-3.0)	0.91 (0.51-1.5)
	2mG以上	0 (0-6.8)	0 (0-11.0)	0 (0-4.2)
その他の癌	0.1-1.9mG	0.89 (0.55-1.4)	1.3 (0.84-1.8)	1.1 (0.79-1.4)
	2mG以上	1.7 (0.21-6.2)	0.80 (0.02-4.5)	1.2 (0.26-3.6)
全ガン	0.1-1.9mG	0.83 (0.64-1.1)	1.07 (0.83-1.4)	0.94 (0.79-1.1)
	2mG以上	2.0 (0.88-4.0)	0.86 (0.18-2.5)	1.5 (0.74-2.7)

各家庭における磁界強度の推定値との関係は上に示した。
累積暴露との関係も報告されている、　傾向は全く同じ。

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４．送電線と大人の癌に関するカロリンスカ研究所の研究報告の内容

　　修正： ９９ー３ー１４　
小児癌の研究成果に続いて　大人の癌の報告書の内容を報告します。

結論として、“この研究だけでは電磁波の影響を結論づけることは不可能“ではないでしょうか。
（注；、、、、　）は私のコメントであって原著にはない部分。

原題； magnetic fields、 Leukemia、 and Central Nervous System tumors in Swedish adults residing near high-voltage power　lines.
研究者 Maria Feychting and Anders Ahlbom
掲載誌：Epidemiology 誌　１９９４年９月号に発表

内容：
　Ｓｗｅｄｅｎの２２０・４００ｋＶの送電線の３００ｍ以内にすむ１６才以上の大人を対象。
電力会社から送電線の地図を貰い、それに基づいて登記所に登録によって対象となる住民をピックアップ。
　研究対象者は約３８万人。男女はほぼ同じ。

　Ｓｗｅｄｅｎで行われているガン登録から　対象者３８万人の中にガンになった人をピックアップ。
　対象の送電線の区域に最低１年すんでいた人を対象。
１９６０年から１９８５年にかけてのガン登録の中から、リストアップされた脳腫瘍と白血病の症例は、合計５４８例。　これを症例とした。　いわゆる症例対照研究である。

２５年間で５４８例ということは、１０万人あたり毎年５人程度の脳腫瘍と白血病症例が出ている。
　比較する為に年齢・性等を考えて　症例の２倍の対照（コントロール）として選別。

　電力会社の過去の記録から、ガンに発病した頃の送電線の電流値等から磁界を推定（磁界の推定値）した。　また約３分の２の家の磁界は実際にスポット測定を実施（スポット測定）した。
　各家庭の電磁波は各家庭の主電源をきって、家庭内の電気機器から影響を除去する形で行なった。　
あくまでも家庭内の磁界の主な発生源を近くの送電線にあると限定した。
これらの磁界値から　死亡迄の過去１５年間の累積暴露量を推定した。
症例対照共に平均１６年間　その送電線の近くに住んでいた。

結果　原文の表３　症例数

	白血病	脳腫瘍
全症例	３２５	２２３
性別　男	１９９	１３８
女	１２６	８５
死亡時の年齢
１６ー３９	３８	５３
４０ー５９	８０	８０
６０以上	２０７	９０

　（男女で症例数に大きな差異がある、約１・５倍。　しかし、日本の場合も白血病の死亡率が１０万人あたり男５人、女３人程度と男女間に差があるので、この程度は自然と判断。）

結果　原文の表４　送電線からの計算磁界値と癌のリスク

磁界強度		0.9mG以下	1-1.9mG		2mG以上
癌		n	N	RR	n	RR
白血病	all	278	20	0.9 (0.5-1.5)	26	1.0 (0.7-1.7)
	AML	58	5	1.0 (0.4-2.5)	9	1.7 (0.8-3.5)
	CML	45	2	1.4 (0.5-3.3)	7	1.7 (0.7-3.8)
	CLL	116	8	0.8 (0.4-1.7)	7	0.7 (0.3-1.4)
脳腫瘍	all	192	18	1.1 (0.7-2.0)	12	0.7 (0.4-1.3)
	AstocytomaI-2	60	3	0.6 (0.1-1.8)	2	0.4 (0.1-1.3)
	同上 3-4	132	15	1.4 (0.8-2.5)	10	0.8 (0.4-1.7)

この結果では１ｍＧ以下の場所に住む人に比べて、ＲＲは１を越えている癌の種類があるが、９５％信頼区間のボトムの数字が１を越えているデータはないので、癌と計算値の磁界強度とは関係は立証されていない。

この研究は症例対照研究と呼ばれる疫学調査の手法です。　ＲＲの計算方法等は割愛します。　厳密にはＲＲはオッヅ比です。

結果　原文の表５　過去１５年間の磁界の累積値との関係

磁界暴露		9mG･年以下	10-19mG･年	20mG･年以上	30mG･年以上
癌		n	RR	RR	RR
白血病	all	279	1.0 (0.6-1.8)	1.5 (1.0-2.4)	1.5 (0.9-2.6)
	AML	58	1.5 (0.5-3.7)	2.3 (1.0-4.6)	1.9 (0.6-4.7)
	CML	48	0.7 (0.1-2.6)	2.1 (0.9-4.7)	2.7 (1.0-6.4)
	CLL	114	1.1 (0.4-2.3)	1.3 (0.6-2.6)	1.2 (0.4-2.6)
脳腫瘍	all	200	1.1 (0.6-2.1)	0.7 (0.3-1.3)	0.7 (0.3-1.5)
	AstocytomaI-2	61	0.9 (0.2-2.5)	0.4 (0.0-1.3)	0.4 (0.0-1.9)
	同上 3-4	139	1.3 (0.6-2.5)	0.8 (0.4-1.7)	0.8 (0.3-1.9)

長い間にどの程度の磁界の量を浴びていたかの推定値と癌症例の間には、太字の個所が疫学として意味のあるリスクということになります。
（この暴露量が例えば３０ｍＧ・年とあるが、　個々の症例が送電線の近くに住むようになってから１０年経過して白血病で死亡、３ｍＧを１０年間浴びてきたので３ｍＧｘ１０年＝３０ｍＧ・年、となる。）

単純に考えれば、長い間の磁界の蓄積量で白血病になるリスクが２倍ないし３倍ということになります。　
３ｍＧでは危険はないが、３ｍＧを１０年浴び続けると白血病になる危険が２ー３倍になると。

結果　原文の表７　実際の測定磁界との関係
　　表は割愛　意味のある数字は出ていません。
　ＲＲも最大で１．４　９５％信頼区間でボトム値が１を越えるデータはない．
　
　研究者は　こうしたことから　磁界は何か白血病の因子になっているようだが、どういう磁界の影響があるのか、まだ良く判らない、症例数が少なく　正確な解析が出来ない、と結んでいます。

ここからは私の考察．
　累積暴露量が白血病の要因だとして、これは研究者に質問をしないと判らないが家庭にいる時間をこの研究では検証しているのであろうか？　

　症例が退職後に１０年以上送電線の近くに住んでいた人だけなら、男性の女性もほぼ等しく、年間を通じて磁界に暴露されていると考えることができます。
しかし、死亡時の年齢の表を見ると半分ないし３分の１は６０才以下です。

当然、男の大半は１日の半分以上を家庭外、すなわち送電線から離れた磁界暴露のない　（職場等での磁界暴露はあるとしても、　この研究では家庭内の機器からの磁界暴露すら除外して考えているので）　ところですごしている。　
Ｓｗｅｄｅｎでの女性の社会進出がどの程度か判らないが、少なくとも家庭にいる女性の方が磁界暴露の累積が大きくなって、この研究の結果のような危険度が２倍ないし３倍になれば　相対的な女性の白血病患者が増加しても良いはずである。

　一般的な男女の白血病のりかん比が男１００、女６６の割合ならば、磁界暴露によって女の６６は２倍の１３２となっていなければならない。ＳＷＥＤＥＮの癌登録で得られた過去２５年間の白血病の症例の割合は、男が女の１．５倍多いという一般の割合と同じである。　

この点に疑問を感じています。　
　すなわち、送電線由来の磁界が白血病を増加しているというのがこの研究の結論であるならば、症例の数における男女比において女が多い方に変化があってしかるべきである。　
しかし、現実には女性の方が少ない。　これはこの研究の結論と現実が一致していない、論理の矛盾を内在している　ということになる。

ということは、この研究だけでは送電線の磁界が大人の白血病の原因になっていると決め付けるわけにはいかない、何か交絡因子が含まれているということができます。

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５．乳がんと磁界の研究

読み終わった論文の概要です。

論文：スウェーデンの高圧送電線近傍に住む大人の乳がんと磁界の関係
Magnetic Fields and Breast Cancer in Swedish Adults Residing near High-Voltage Power Lines

研究者：Maria Feychting et al:　　　原著は研究者から直接入手した。
掲載誌：Epidemiology　July　1998　

概要：　（　）内は小生のコメント　
＊高圧送電線からの磁界が近傍に住む人の乳がんを増発しているかを検討した。　
＊スウェーデン全土の200kVもしくは400kV高圧送電線から300ｍ以内に住む人を対象　
＊1960年から1985年にかけて乳がんと診断された症例と、対照群を設定した症例対照研究。

＊女性乳がんの症例数は、がん登録から、699であった。

（単純年平均症例数は44人、スウェーデンの女性の人口を500万人と仮定すれば、1年間に10万人当たり約1名の乳がん発生率となる。）　

＊暴露している磁界強度は、送電線からの磁界として、計算値を用いた。　

（送電線からの磁界のみを研究の対象とし、24時間家にいて、送電線からの磁界のみに暴露していると想定している。　勤務などで自宅外に出ることや、その時の磁界暴露や、家庭内の他の磁界暴露は無視するか、症例および対照群共に同じであると仮定している。　送電線からの暴露磁界が症例・対照群ともにDominantな暴露源であるとは、検証されていない。）　

＊乳がんと診断される前に、少なくとも１年以上は送電線近傍に住んでいたことを確認。
＊計算値で得た磁界強度は、一戸建ての家に関しては、実測値とよく相関が取れていた。
　しかし、アパートに住む人の場合は、実測値の方が計算値より実測値の方が高く、よい相関は得られなかった。
（注　下記コメント参照）

＊女性乳がんの症例数　
　1960-1974年　244　　
　1975-1985年　544　　　乳がんが増加している。　

＊乳がんと磁界強度の関係　　年齢区分なし 磁界の単位はマイクロテスラ

磁界　0.1以下	磁界0.1-0.19		磁界0.2 以上
	症例数	RR	症例数	RR
基準	57	1.2 (CI 0.8-1.8)	54	1.0 (CI 0.7-1.5)

（CIの下限値が１以下で、磁界は乳がんを増発させてはいない。）

＊乳がんと累積磁界暴露の関係　年齢区分なし 累積磁界暴露の単位はマイクロテスラ・年

累積磁界暴露　0.5以下	磁界0.5-2.9		磁界3.0 以上
	症例数	RR	症例数	RR
基準	101	1.1 (CI 0.8-1.5)	25	1.6 (CI 0.8-1.7)

（CIの下限値が１以下で、磁界は乳がんを増発させてはいない。）

＊エストロゲンレセプタの状況で判別した時の、乳がんと磁界の関係　磁界の単位はマイクロテスラ

　　　　

	磁界　0.1以下	磁界0.1以上
		症例数	RR
判定情報を得た全例対象	基準	20	1.0 　(CI 0.5-2.2)
判定結果　プラス	基準	17	1.6 　(CI 0.6-4.1)
診断時50歳以下	基準	6	7.4 　(CI 1.0-178.1)
診断時50歳以上	基準	11	0.3 　(CI 0.3-2.6)
判定結果　マイナス	基準	3	0.2 　(CI 0.0-1.7)

このことからエストロゲンレセプタがプラスの人で、50歳以下の場合は、磁界が乳がんの促進因子になっている可能性がある。

（CIの下限が1を超えているので有意ではあるが、上限値と下限値の幅が大きすぎて、これでは信頼のおける疫学結果とは言いがたい。　この原著論文は研究者から直接入手したものであり、研究者からの手紙には、この研究は非常の小さい症例数に基づく研究である、と記されている。）

以上がこの研究の概要である。

注：小生のコメント
「送電線からの磁界の理論計算値と実測値の相関が、一戸建てではよく取れているが、アパートに住む場合は理論値より実測値が高かった」という記述は大きな意味をもつ。　

同じ研究者は、送電線由来の磁界と小児がんの研究「磁界は小児がんの促進因子である」を発表している。　その論文では「但し、その関係は一戸建てに住む人には適用できるが、アパートに住む場合には磁界は小児がんの促進因子とは断定できなかった」とある。

アパートに住む方がより強い磁界暴露を受けているのであれば、小児がんはアパートに住む場合により強く促進されてしかるべきである。

そうなっていないことは、これらの疫学研究の結果だけで、磁界とがんの関係を結論付けることが出来ないということになる。
疫学研究の限界であるのかも知れない。　

興味のある方は原著論文を読んでください。

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６. 電磁波と癌の松井論文1995年

読み終わった論文の紹介です。

研究者: 松井健一ら
タイトル： 電磁場曝露と悪性腫瘍の危険性
雑誌： 医学のあゆみ 1995年

疫学を中心とした概説、　面白い点が２点有ります。

＊0.2マイクロテスラといった弱い低周波磁界による小児癌の増発の危険性が疫学で示唆されると同時に、 非常に強い磁界で悪性腫瘍やAIDSを治療する方法が発表されており、 マウスを磁界にさらすと、神経芽腫や乳がんの細胞の増殖が抑制されたという報告がある。

＊筆者の松井らが行った小児悪性腫瘍と送電線電磁界に関する症例対照研究では、白血病は症例が対照よりも大きな曝露を受けていた。相対危険度は１以上であった。
一方、固形腫瘍では症例よりも対照が大きな曝露を受けており、相対危険度が１以下であった。

これら２つの相対危険度はいずれも統計的に有意ではなかった。
　白血病　　相対危険度　2.12　（ＣＩ：　0.59-7.65）
　固形腫瘍　相対危険度　0.49　（ＣＩ：　0-4.92）

興味のある方は原著を読んでください。

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７． 英国の小児癌と磁界の研究

権威のあるLancetの掲載論文です.

論文：Exposure to Power-frequency magnetic fields and the risk of children cancer
研究者：UK Childhood Cancer Study Investigators
掲載誌：THE LANCET Vol. 354 December 4、 1999 P1925-1931

概要：
英国の小児癌の研究の一環として送電線などに由来する磁界の影響を調査。
北アイルランドを除く全英国を対象.

１９９１年から１９９６年の症例を収集し、症例対照研究を行った。
１４歳未満の白血病と脳腫瘍等を調査。
自宅での磁界曝露だけではなく、学校での磁界曝露も調査。　学校での磁界曝露の割合は９%程度を占めるのみであった。

白血病の症例数は９９５、脳腫瘍の症例数は３５９と大きい.　
磁界（平均値）曝露と発癌リスクの関係は見つからなかった。　

磁界0.1μT以下の曝露を基準として　オッズ比は　
白血病　　0.2から0.4μTの磁界曝露で　オッズ比　0.84　
　　　　0.4μT以上の磁界曝露で　オッズ比　1.40　（　CI　0.23　-　8.40、症例数3と小さい）　
（1.4倍であるが、９５％信頼区間の下限値が0.23と1以下なので、統計的に有意とは言えない.　1.4倍は信頼されない数字となる.）　

脳腫瘍　0.2から0.4μTの磁界曝露で　オッズ比は0.75　
　　　　0.4μT以上の磁界曝露では　症例はない　オッズ比　ゼロ。　

詳しくは原著を読んでください.

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８．英国の小児癌と磁界の研究―その２　

　7項で紹介した同じ研究が、別の学術雑誌にも報告されています。
アブストラクトのみ入手。　仮訳をつけた。　作成：　2003-4-7

掲載誌：British Journal of Cancer、 December 2000、 Volume 83、 Number 11、 Pages 1573-1580
論文名：Childhood cancer and residential proximity to power lines
　　　　　送電線近傍の住環境下における磁界暴露と小児がン　
研究者：U.K. Childhood Cancer Study Investigators
Writing Committee J Skinner East Anglia region; MP Maslanyj; TJ Mee and SG Allen National Radiological Protection Board; J Simpson Leukemia Research Fund Data Management Processing Group; E Roman South Midlands region; NE Day East Anglia region　

Abstract　概要
In the United Kingdom Childhood Cancer Study、 a population-based case-control study covering the whole of England、 Scotland and Wales、 measured power-frequency magnetic fields were not found to be associated with risk for any malignancy.
英国小児がン研究の一環として行った研究で、全イングランド、スコットランド、ウエールズをカバーした症例対照研究を行った。実測した磁界強度は悪性腫瘍のリスク増加を見出さなかった。　

To examine further the risk associated with residential proximity to electricity supply equipment、 distances to high-voltage lines、 underground cables、 substations and distribution circuits were collected for 3380 cases and 3390 controls.
3380の症例と3390の対照に関して、さらに、電力送電設備への近住、高圧送電線・地中送電線・変電・配電設備との距離を調査した。　

Magnetic field exposure from this equipment was calculated using distance、 load and other circuit information.
暴露している磁界強度はこれらの電力設備からの距離、負荷電流その他の情報に基づいて、計算を行った。

There was no evidence that either proximity to electrical installations or the magnetic field levels they produce in the UK is associated with increased risk of childhood leukemia or any other cancer.
電力設備との近住やそれらからの磁界暴露による小児白血病とその他のがんのリスクの増加は見られなかった。

Odds ratios of 0.73 (95% CI = 0.42-1.26) for acute lymphoblastic leukemia、 0.75 (95% CI = 0.45-1.25) for all leukemias、 1.08 (95% CI = 0.56-2.09) for central nervous system cancers and 0.92 (95% CI = 0.64-1.34) for all malignancies were obtained for residence within 50 m of an overhead line.
架空高圧送電線から50m以内に住む住民に関して、各がんのリスクの増加（オッズ比と信頼区間は、急性リンパ性白血病0.73(0.42-1.26)、全ての白血病0.75(0.45-1.25)、脳腫瘍1.08(0.56-2.09)、全ての悪性腫瘍0.92(0.64-1.34)であった。

When individuals with a calculated magnetic field exposure 0.2μT were compared to those in a reference category of exposure <0.1μT、 odds ratios of 0.51 (95% CI = 0.11-2.33) for acute lymphoblastic leukemia、 0.41 (95% CI = 0.09-1.87) for total leukemia、 0.48 (95% CI =0.06-3.76) for central nervous system cancers and 0.62 (95% CI = 0.24-1.61) for all malignancies were obtained.
磁界の計算値で解析を行った、0.1μT以下の暴露に比較して、0.2μT以上の暴露では、各がんのリスクの増加（オッズ比と信頼区間）は、急性リンパ性喀血病0.51(0.11-2.32）、全白血病0.41(0.09-1.87)、脳腫瘍0.48(0.08-3.76)、全悪性腫瘍0.62(0.24-1.61)であった。　

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９．英国の小児癌と電界暴露　

英国における送電線由来の電磁波を小児がンの関係の疫学研究で、電界暴露に着目した研究
アブストラクトのみ入手。　仮訳をつけた。　　作成：　２００３−４−９

掲載誌：British Journal of Cancer、 18 November 2002、 Volume 87、 Number 11、 Pages 1257-1266
論文名：Exposure to power frequency electric fields and the risk of childhood cancer in the UK
英国における電力周波数の電界暴露と小児がンリスクとの関係
研究者」J Skinner、 T J Mee、 R P Blackwell、 M P Maslanyj、 J Simpson、 S G Allen、 N E Day、　a and United Kingdom Childhood Cancer Study Investigators writing committee

Abstract
The United Kingdom Childhood Cancer Study、 a population-based case-control study covering the whole of Great Britain、 incorporated a pilot study measuring electric fields.
全グレートブリテンをカバーした症例対照研究が英国の小児がン研究として行われ、電界暴露に関しても調査を行った。

Measurements were made in the homes of 473 children who were diagnosed with a malignant neoplasm between 1992 and 1996 and who were aged 0-14 at diagnosis、 together with 453 controls matched on age、 sex and geographical location.
1992年から1996年の間に悪性腫瘍と診断された小児473名と、年齢・性別・地域をマッチさせた対照453名の家庭における暴露状況を測定した。

Exposure assessments comprised resultant spot measurements in the child's bedroom and the family living-room.
測定は子供の寝室と家族の居間におけるスポット測定を含んでいる。

Temporal stability of bedroom fields was investigated through continuous logging of the 48-h vertical component at the child's bedside supported by repeat spot measurements.
暴露の時間変動を把握するために、スポット測定を繰り返しながら、子供の寝室で48時間連続測定を行った。

The principal exposure metric used was the mean of the pillow and bed center measurements.
基本的な暴露指標としては、ベッドの中心と枕のところでの測定値の平均値を使用した。

For the 273 cases and 276 controls with fully validated measures、 comparing those with a measured electric field exposure 20 V m-1 to those in a reference category of exposure <10 V m-1、 odds ratios of 1.31 (95% confidence interval 0.68-2.54) for acute lymphoblastic leukemia、 1.32 (95% confidence interval 0.73-2.39) for total leukemia、 2.12 (95% confidence interval 0.78-5.78) for central nervous system cancers and 1.26 (95% confidence interval 0.77-2.07) for all malignancies were obtained.
273の症例と276の対照に関しては完璧なデータが得られた。電界１０V/m以下の暴露に対して２０V/m以上の電界暴露を比較したときのオッズ比は、 リンパ性白血病 1.31 (l 0.68-2.54)、 全白血病 1.32 (0.73-2.39)、脳腫瘍 2.12 (0.78-5.78)、全がん 1.26 (0.77-2.07)　であった。

When considering the 426 cases and 419 controls with no invalid measures、 the corresponding odds ratios were 0.86 (95% confidence interval 0.49-1.51) for acute lymphoblastic leukemia、 0.93 (95% confidence interval 0.56-1.54) for total leukemia、 1.43 (95% confidence interval 0.68-3.02) for central nervous system cancers and 0.90 (95% confidence interval 0.59-1.35) for all malignancies.
無効な測定のない４１９の症例と419の対照を対象としてオッズ比を計算すれば、リンパ性白血病　0.86 (0.49-1.51)、全白血病 0.93 (0.56-1.54)、脳腫瘍 1.43 (0.68-3.02)、全がん 0.90 (0.59-1.35) であった。

With exposure modeled as a continuous variable、 odds ratios for an increase in the principal metric of 10Vm-1 were close to unity for all disease categories、 never differing significantly from one.
これらの結果から、電界への暴露で10V/mあたりのリスクはほぼ1であり、リスクの増加はない。

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１０．英国の職業的な磁界曝露と脳腫瘍の研究

http://news.bbc.co.uk/hi/english/health/newsid_1535000/1535316.stm　にあった内容です。　
（Tuesday, 11 September, 2001, 01:23 GMT 02:23 UK）

イギリスの電力会社の従業員を対象にした研究で、コホート研究とあるが、前向きのコホートとは明記されていない。
24年間　84000名の従業員を対象とした研究。

結果は、脳腫瘍のリスクは一般にリスクに比べて大きくなかった、
従業員はより大きな磁界を暴露しており、一般の公衆が変電設備・送電設備から受ける磁界より大きい。　
そうしたより大きい磁界暴露下でも脳腫瘍は増加していないので、一般公衆は安心できる　と　なっている。　

この研究はOccupational and Environmental Medicine journal に掲載された。
従業員がどの程度の磁界に暴露していたのかは、この記事では明確になっていない。　
原著を読む必要があります。
研究者名や論文名がこの記事では触れられていませんので、掲載雑誌名だけでは原著を見つけることは困難かもしれません。＜追記：もしかして、この2001年のBBCニュースは、26項と27項の研究のことと推定＞

低周波磁界に関して、最近のIARCの発表は、磁界は小児白血病の推進因子かも知れない、その可能性がある。しかし、大人のガンやその他のガンに関しては問題ないようだが、まだ結論は出せない、といった内容でした。　

この研究は、磁界は大人のガンを増発しないという論証になるのかも知れません。　

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１１．電磁波と癌の鏡森論文1996年　

医学誌としては権威のあるとされるＬａｎｃｅｔに掲載された日本の疫学の例です。

研究者： Shigeru Sokejima、 Sadanobu Kagamimori、 Toshiki Tatsumura　
論文： Electric power consumption and leukemia death rate in Japan　
掲載誌： THE LANCET Vol.348 o September 21、 1996 P21-822　

鏡森・そうけ島らの研究で、送電線由来の磁界が小児がんなどの危険因子であることを確かめる為に、形態疫学というのでしょうか？　ある事象と発ガンの相対的な関係を調査しています。　

送電線由来の磁界が危険因子であるならば、電力消費量が多い場所では、大きい送電線電流が流れ、電流によって大きな磁界が発生し、そこでは癌が多くなっているのではないかと仮定した。　

全国都道府県毎のがんの死亡率と各県の人口当たりの電力消費量との関係を調べた。　
結果は、電力消費が多い県では癌の死亡率が下がる　という結果であった。　
これは、磁界が癌の危険要因であることを否定する結果となっている。　

興味のある方は原著を読んでください。　

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１２． Savitz 1995の論文から

D. A. Savitz 1995の論文です。
論文名：Exposure assessment strategies in epidemiological studies of health effects of electric and magnetic fields　
掲載誌：　The Science of the Total Environment. 168(1995)　

この論文を読んで以下の2点が気になりました。
１）VDTからの電磁波の問題　
かつてクラスタと呼ばれる特定集団においてVDT作業を行っていた妊婦に異常が発生した。1980年代の研究では、VDT作業と妊娠異常に関連があるという報告があった。　最近の報告の多くではそうした問題はないとなっている。

VDT作業では目の疲れや人間工学的な要素や仕事に関連するストレスの影響も考えられる。VDTから漏洩する低周波電磁界との問題を切り分けることが困難である。
1992年のある報告ではVDTからの低周波電磁界の実測を行った研究によれば、リスクとなっている。　

２．ワイヤ・コードは昔から疫学の手法として使用されてきている。　
　このワイヤ・コードは過去の長期間にわたる暴露の指標としては適している。

　　以上　　詳細は原著を読んでください。

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１２A．Savitzらの大人の癌の疫学研究1995年

掲載誌: Am J Epidemiol 1995; 141 (2): 123-134
タイトル：Magnetic field exposure in relation to leukemia and brain cancer mortality among electric utility workers.
電力従業員における白血病と脳腫瘍死亡率と磁界ばく露
研究者: Savitz DA, Loomis DP

目的：
大規模な研究で統計精度を上げ、過去の曝露を推定し、電力従業員の磁界曝露と白血病及び脳腫瘍との関連の有無を明らかにすること。

方法：
1950年から1986年までの期間に少なくとも6カ月以上勤務した138,905名の男性すべての職歴を収集し、さらに生死の追跡と死亡者の死亡診断書を入手した。
99％以上の生死が明らかにされた。
1986年までに20,773名が死亡していた。

時間加重平均磁界のみを測定するAMEXを2,842名の無作為に抽出された作業者が携帯し、28種の職業カテゴリーでの全日作業を無作為に選んだ日に測定した。
この情報は職歴と結びつけられた職業における累積磁界曝露量が推定された。
交絡因子の評価には2人の産業衛生士が現場を回り管理者と古参従業員からの聞き取りにより、各職業カテゴリーの交絡因子への曝露を推定した。
社会経済的地位、人種、年齢、年代（10年毎）、勤務年数、非電離放射の補正を行った。

結果：
(1)米国全体の男性集団の死亡率と比べて、このコホートは全ガン及び特定ガンについても低い期待死亡率であり、「健康な作業者の影響＜注：働いていることは逆説的に健康であることになり、一般の人に比べると死亡率などが低く見えること。単純に数字をみれば、電力会社に勤務すると一般の人より５％、１４％健康でガンになりにくいということになってしまう。一般的に疫学研究の場合は、研究意図と正反対の数値が出た場合は、無視することになる。＞」を示した(SMRは脳腫瘍で0.95、白血病で0.86)。

(2)コホート内部での脳腫瘍リスクは最低の曝露群と比較して、中間の曝露群のRRは1.5であり最も高い曝露群ではRRは2.3(CI:1.15-4.56)といった相関を示した。＜注：CIの下限値が1を超えており、統計的にも有意なリスクの増加があることを示している。＞

さらに曝露の時期が2年前から10年前までの区分で特に高いリスクを示した（表4）。
これに対し全白血病或いはそのサブタイプのリスク増加と磁界曝露との相関は見られなかった。
職業カテゴリーでは電気技師で勤務年数により白血病リスクの増加傾向が見られた。

Full textは1997年にSavitzより入手済みでした。
このfull Textより、表4を以下に転記します。
表を見ると、RRが1.12とか1.25として、統計的に有意にわずかな増加が見られる。
研究者も記述しているが、「この研究では、他の研究結果と相反して、白血病のリスクはなく、脳腫瘍のリスクを見出している。

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１３．電気暖房ベッドなどからの電磁界と胎児の死産への影響

アブストラクトのみ入手しました。　まだ原著の全文は入手していません。
電気暖房ベッドなどからの電磁界が妊娠・出産に影響するという疫学調査結果です。　

掲載；American Journal of Epidemiology、 Vol 129、 Issue 1 220-224、 1989 　
論文：Fetal loss associated with two seasonal sources of electromagnetic field exposure
季節的に使用する電磁界暴露に関係した胎児の死産　

研究者：N Wertheimer and E Leeper 　
Department of Preventive Medicine、 University of Colorado Health Sciences Center、 Denver 80262 　

概要；　
We have studied two sources of electromagnetic fields where exposure is highly seasonal (ceiling cable electric heat and electrically heated beds).　

季節によって使用される電気暖房、電気ベッドと、天上ケーブル電気暖房（具体的にはどのようなもの？）の二つからの電磁界暴露に関して研究を行った。　

Because many potential confounders could not be addressed、 we can make no valid statement about overall differences in abortion rates between those exposed and those not exposed to these seasonal sources.　

対象とした電磁界以外の交絡因子の排除ができていないので、これらの機器からの電磁界に暴露するかしないかによる異常率の差異に関して、確定的なことはいえない。　

However、 by analyzing seasonal trends、 we have minimized the problem of unaddressed confounders because we did not look at a difference between the user and nonuser groups、 but rather at a difference within the user group during months of higher exposure compared with months of lower exposure. 　

しかし、交絡因子の影響をできるだけ少なくし、電気ベッドの使用の頻度などとの関係を解析した。　

Thus、 each user group provides its own control. The function of the nonuser control group is simply to assure that any seasonal trend found in the user group is not just a general seasonal variation in reported fetal loss that can be found equally well in the nonuser population.　

気ベッドなどの使用者における胎児死産の割合は、非使用者群では一般の割合と同じ程度であったが、使用者群では一般の割合と異なっていた。

Using this technique、 we found that each user group reported fetal loss disproportionately(不均衡な) often during the season when electromagnetic field exposure was increasing. 　

電磁界暴露が増加する季節（電気ベッドなどを使用する季節では）では、不均衡な胎児の死産を見出した。

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１４．電気毛布の磁界と小児癌の研究

電気毛布の電磁波と小児脳腫瘍の関係の症例対照研究結果　　
研究者：Susan Preston-Martin et al;　
論文名：Brain Tumor Risk in Children in Relation to Use of Electric Blankets and Water Bed　 Heators　
掲載雑誌：American Journal of Epidemiology. Vol. 143 No.11 1996

概要　
1984-1991年間に19歳以下で脳腫瘍と診断された症例540とマッチさせた対照801を研究対象とした症例対照研究である。

母親が子供の妊娠時に電気毛布を使用した場合の脳腫瘍のリスクは　OR=0.90 （CI:0.6-1.2）　
母親が子供の妊娠時に電気温水ベッドを使用した場合の脳腫瘍のリスクは　OR=0.90 （CI:0.6-1.3）　

電気毛布を妊娠期間の何時使用したか等についても調査したが結果には変化は無かった。

子供が電気毛布を使用していた場合の脳腫瘍のリスクは　OR=1.0 （CI:0.6-1.7）　
子供が電気温水別途を使用していた場合の脳腫瘍のリスクは　OR=1.2 （CI:0.7-2.0）　

（相対危険度ORが1.2倍となっているが、CIの下限が0.7と1以下であるので、結果は有意とはいえない。）　

子供の性別、年齢、人種などで調査を行ったが、結果は変わらなかった。　
このことから、結論としては電気毛布や電気温水ベッドから漏洩する50Hz/60Hzの低周波磁界が小児の脳腫瘍を増加させるとはいえない。　

これらの電気毛布から漏洩する低周波磁界（4ミリガウスから２２ミリガウス）は、送電線由来の住環境下に存在する低周波磁界（１ないし２ミリガウス程度）より強い磁界である。　
（　）内の磁界は他の文献からの数字であり、この研究では直接機器からの磁界は測定していない。　

特定の地域のデータに絞って見た時の特異点、　
ロスアンジェルス地区で、母親が妊娠中に電気温水ベッドを使用していた時に、子供が脳腫瘍になるリスク　OR=2.1　（CI: 1.0-4.4）で有意に高い。しかし他のシアトルとサンフランシスコ地区のデータを合算して計算してみると、OR=0.7 (CI: 0.4-1.0)であった。

以下は私のコメント：　
子供が電気毛布などからの低周波磁界が脳の癌（脳腫瘍）を増発するかに関して、胎児の時に母親が暴露していた時と、生まれてから子供が電気毛布等を使用した時の2つの条件で検討している。　特定の地域のデータを見た時には特異点があるが、全体としては、低周波磁界の影響は見られない　という結論となっている。
特定の地域の全住民を対象とした研究なので、症例の選択などにバイアスはない。　

興味のある方は原著を読んで下さい。

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１４Ａ．電気毛布使用と乳がんリスク　2000年の研究

掲載誌：American Journal of Epidemiology 2000;152:41-49.
タイトル：Electric blanket use and breast cancer in the Nurses' Health Study.
電気毛布の使用と看護婦の乳がんリスク
研究者：Laden F、 et al.

概要
電気毛布から発生する電磁界によって、乳がんリスクが高まる可能性が言われているが、米国の看護婦を対象にした大規模な調査では、はっきりしたリスクの上昇はなかった。
ハーバード大学のグループによるこの研究は、米国疫学雑誌2000年７月１日号に報告された。

・電気毛布、電磁界の発生源
電磁界への曝露と、乳がんを関係づける仮説が、提唱されている。
そのメカニズムとして、電磁界への曝露→メラトニン（松果体ホルモン）の分泌抑制→エストロゲンレベルの上昇→乳がんリスクの上昇という経路などが想定されている。

電磁界の発生源としては、屋外の送電線や屋内の電化製品などがある。
電気毛布によって生ずる電磁界は、睡眠中の長時間にわたり、直接身体をさらすことになるので、発生源として重要だ。
そこで研究グループでは、電気毛布の使用歴と乳がんとの関係に注目して、調査を行った。

1976年に開始された、米国の女性看護婦を対象とする大規模な追跡調査の一環として、87、000名に対する質問票調査を1992年に行い、研究開始（1976年）以前の時期からの電気毛布の使用歴についてたずねた。

二通りの解析をおこなった。
ひとつは、1992年に調べた（過去の）電気毛布の使用歴と、その後1996年までに新たに発生した954例の乳がんとの関係を、「前向き」に分析した。
もうひとつは、おなじ1992年に調べた電気毛布の使用歴と、それ以前の1976年から92年までにすでに発生していた2,426例の乳がんとの関係を、「後ろ向き」に分析した。

・はっきりしたリスク上昇なし
電気毛布を定期的に使った経験があるのは、対象者の42%だった。年に6ヶ月間、月に1週間以上、毎日6時間程度というのが、平均的な使用状況だった。

「前向き」分析の結果、定期的な使用歴がない者と比べた場合の乳がんリスクは、定期的な使用歴がある女性では8%高く、1976年以前に使用していた女性では11%高かったが、統計的に意味のある結果ではなかった。

また、電気毛布の使用期間が長くなるほどリスクが上昇するような傾向もみられなかった。
「後ろ向き」分析の結果も、ほぼ同じだった。
また、乳がん症例を閉経の前後やエストロゲンレセプタの有無で分けても、同様の結果だった。

・小さなリスクの可能性までは否定しえず
こうした結果から研究者らは、電気毛布による乳がんリスクのわずかな上昇を否定することはできないものの、全体としては、両者の関連を支持する結果ではなかったと結論している。

研究者らによれば、電気毛布と乳がんについて、これまで後ろ向きの症例対照研究が三つ報告されており、リスクの上昇傾向を認めたものが２つ（どちらも統計的に意味のある結果ではない）と、リスクの上昇を認めなかったものが１つだった。

今回の研究は、この問題について、初めての前向きコホート研究のようだ。
今回の結果は、「電気毛布による乳がんリスクの上昇はなかった」と、ひとまず理解していいだろう。

ただし、10%ていどのわずかなリスクの上昇まで否定しきれないのは、研究者も留保しているとおりである。
こうした小さなリスクの上昇を検出するためには、今回以上に大規模な追跡調査や、複数のデータをまとめ合わせた評価が必要になる。
すぐにこうした結果が出そろうとは思えないが、今後の進展が待たれるところだ。

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１５. デンバーの小児癌

アメリカの小児癌に関する疫学研究の紹介です。

BEMS2000総会で発表した論文の概要。
論文名：Combined Exposure to High Levels of Air Pollution and Electromagnetic Fields May Increase Leukemia and Other Cancer Risk in Children.
研究者：H. Wachtel、 R. L. Pearson.

概要：
コロラド州デンバーの小児癌と送電線由来の磁界との関係はWertheimerによって1979年に発表された。Savitzによっても検証が行われた。 今回Savitzのデータを基に解析した。

送電線の種類や距離などから定めるワイヤ・コードと、近くを通る車の交通量とが重なり合って小児癌を増発させている。

１日の車の交通量が２万台を超えるか超えないかで分類した。 送電線の影響はワイヤ・コードで「強い」か「弱い」か、２分した。

結果
車の交通量が２万台を超えず、かつ、送電線の影響が「弱い」時に比べて
車の交通量が２万台を超え、かつ、送電線の影響が「強い」時は
　小児癌は　オッズ比は4.77 (CIで 2.25-10.09)であった。
この数字はCIの下限が1を超えており、統計的にはそれなりに有意な結果である。

車が多くても送電線の影響が「弱い」時も、
送電線の影響が「強い」時でも、車が少ない時は、小児癌の危険度は増加しない。

このことから、
研究者は、車の排気ガスから出るベンゼンなどの発がん物質が小児癌を起こし、送電線からの磁界はその癌を促進しているのではないかと、考えている。

これは非常に面白い研究です。　興味のある方は原著を読んでください。

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１６．Gurneyの低周波磁界と子供の脳腫瘍の研究　

アブストラクトのみの入手です。　作成：　２００３−１−１５　　仮訳をつけた。

掲載誌：　American Journal of Epidemiology、 Vol 143、 Issue 2 120-128、 1996 　

論文名：Childhood brain tumor occurrence in relation to residential power line configurations、 electric heating sources、 and electric appliance use　
住環境における送電線、電熱ベッドなど、家庭電器製品の使用と子供の脳腫瘍の関係　

研究者：JG Gurney、 BA Mueller、 S Davis、 SM Schwartz、 RG Stevens and KJ Kopecky 　
Fred Hutchinson Cancer Research Center、 Division of Public Health Sciences、 Seattle、 WA、 USA. 　

概要の概要：　
To assess the relation between childhood brain tumor occurrence and exposure to potential sources of residential magnetic fields、 a population-based case-control study of incident brain tumors was conducted in the Seattle、 Washington、 area at the Fred Hutchinson Cancer Research Center from 1989 to 1994 among children younger than age 20 years who were diagnosed from 1984 to 1990. 　
アメリカのシアトルとワシントンで行った研究、住環境下における磁界暴露が20歳以下の子供の脳腫瘍を増加させるかを研究。　１９８４−１９９０年に脳腫瘍と診断された症例を用いた症例対照研究した。　

The specific aims were to evaluate whether proximity to high-current residential power lines、 as defined by the Wertheimer-Leeper code、 or use of electric appliances or electric heating sources by the mother while pregnant or by the child before diagnosis were associated with increased risks of brain tumor occurrence.
電線コードとの関係、電気機器の使用、電熱ベッドなどの使用との関係を研究。　

The mothers of 133 cases and 270 controls (recruited by random digit dialing) participated.
133人の症例と270人の対照を研究対象とした。　

Risk of brain tumor occurrence did not increase with increasing exposure、 as indicated by the five-level Wertheimer-Leeper code. 
磁界暴露強度、電線コードと脳腫瘍増加のリスクはなかった。　

When exposure was dichotomized as high versus low、 the odds ratio was 0.9 (95% confidence interval 0.5- 1.5) and did not vary significantly by sex、 age、 or histology. 　
暴露強度の大小で見ると、オッズ比は0.9（ＣＩ　０．５−１．５）であり、性や年齢などで見ても異常な関係は見出せなかった。　

No elevations in risk were found forever versus never-use of electric blankets、 water beds、 or electric heating sources. 　
電気毛布、電熱（水）ベッド、電熱源の使用、不使用でも差異はなかった。　

Odds ratios were slightly elevated for nine appliances and were at or below 1.0 for eight others. 　
9つの電気機器との関係では、オッズ比のわずかな上昇は見られた。
8つの機器ではオッズ比は１程度かそれ以下であった。

These data do not support the hypothesis that exposure to magnetic fields from high-current power lines、 electric heating sources、 or electric appliances is associated with the subsequent occurrence of brain tumors in children. 　
この研究結果は、住環境下における送電線、電熱機器の使用、家庭電器製品からの磁界が子供の脳腫瘍を増加させるという仮説を指示しない。　

以上　　　　興味のある方は、原著論文を読んでください。

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１７．ノルウェーの電気鉄道による癌の増加　1994年　　

アブストラクトのみＷＥＢから入手　　仮訳をつけました。　　　　　作成：　２００３−１−１５　

掲載誌：　American Journal of Epidemiology、 Vol 139、 Issue 7 645-653、 1994
論文：　Article:Leukemia and brain tumors in Norwegian railway workers、 a nested case- control study　　
ノルウェーの鉄道従業員を対象とした白血病・脳腫瘍の症例対照研究　

研究者：　T Tynes、 H Jynge and AI Vistnes 　
Cancer Registry of Norway、 Institute of Epidemiological Cancer Research、 Oslo. 　

概要：　
In an attempt to assess whether exposure to electromagnetic fields on Norwegian railways induces brain tumors or leukemia、 the authors conducted a nested case-control study of railway workers based on incident cases from the Cancer Registry of Norway in a cohort of 13、030 male Norwegian railway workers who had worked on either electric or non-electric railways.

ノルウェー鉄道従業員が電磁界暴露によって脳腫瘍や白血病のリスクがあるか、ノルウェーの癌登録を利用して、鉄道会社で電気鉄道と非電気鉄道（ジーゼル機関車や蒸気機関車の運転に従事すること？）の従事者合計13030名の男性を対象として、症例対照研究を行った。　

The cohort comprised railway line、 outdoor station、 and electricity workers. 　
The case series comprised 39 men with brain tumors and 52 men with leukemia (follow-up、 1958-1990). Each case was matched on age with four or five controls selected from the same cohort. 　

このコホートは鉄道線路、屋外の作業場、電線作業者などから構成されている。　
1958年から1990年の間で30名が脳腫瘍に、52名が白血病になっている。症例1に対して、４から5名の対照を選択した。

The exposure of each study subject to electric and magnetic fields was evaluated from cumulative exposure measures based on present measurements and historical data.　

電磁界の暴露評価は、最近の測定と過去の履歴から、累積の電磁界暴露量で行った。

Limited information on potential confounders such as creosote、 solvents、 and herbicides was also collected; information on whether the subject had smoked was obtained by interviews with the subjects or work colleagues. 　

クレオソートや溶剤の使用などの交絡因子に関する情報も収集した。
対象者の喫煙に関しても情報を収集した。　

The case-control analysis showed that men employed on electric railways、 compared with non-electric ones、 had an odds ratio for leukemia of 0.70 (adjusted for smoking) and an odds ratio for brain tumor of 0.87. 　

非電気鉄道への従事に比較して、電気鉄道部門での従事によるリスクは、白血病に関してはオッズ比が0.7、脳腫瘍に関しては０．８７であった。　

No significant trend was shown for exposure to either magnetic or electric fields. These results do not support an association between exposure to 16 2/3- Hertz electric or magnetic fields and the risk for leukemia or brain tumors.

電気鉄道で使用している16.67Ｈｚの電磁界による白血病と脳腫瘍のリスク増加は見られなかった。　

以上　興味のある方は、原著の全文を入手して読んでください。

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１８．デンマークの電力従事者の磁界暴露と発ガンリスク　

アブストラクトを入手しました。　仮訳をつけました。　　作成：　２００３−１−１６　

掲載雑誌：American Journal of Epidemiology、 Vol 147、 Issue 6 548-555、 1998
論文：Risk of cancer among Danish utility workers--a nationwide cohort study　
デンマーク全土を対象としたデンマークの電力事業従事者の発ガンリスクに関するコホート研究　

研究者：C Johansen and JH Olsen
Danish Cancer Society、 Division for Cancer Epidemiology、 Copenhagen. 　

概要　
The authors report the incidence of cancer in a large cohort of employees identified from all 99 Danish utility companies. 　
デンマークにある９９の全ての電力会社を対象として、発ガンリスクに関して大規模なコホート研究を行った。　

Personal data and information on employment and exposure to magnetic fields and asbestos were obtained from manual files at the companies、 the Danish Supplementary Pension Fund、 and the public payroll administration.
個人情報、磁界暴露、アスベストへの暴露などの情報を入手した。　

A total of 32、006 individuals with more than 3 months of employment were linked with the files of the Danish Cancer Registry. 　
３ヶ月以上電力会社に勤務したことのある32000名を、デンマークの癌登録に結び付けた。　

The period of follow-up for cancer occurrence among the employees was from April 1968 through December 1993 in the study conducted from 1994 to 1997.　
1968年4月から1993年12月までの期間に癌になった人を対象にした。

Overall、 3、008 cancers were observed、 with 2、825 expected、 yielding a small but significantly increased risk of 1.06 (95% confidence interval 1.03-1.10) among the utility workers in comparison with the general population.
結果、一般平均と比べると、期待値2825件に対して、癌として観察された件数は3008件で少ないが、有意な発ガン率の増加があった。

No excess was observed for all leukemias or for cancers of the brain or breast among men or women.
白血病や、脳腫瘍、乳房の癌に対しては、リスクの増加はなかった。

There was no association of electromagnetic field exposure with risk of these cancers、 even when the level and length of exposure to magnetic fields were taken into account.
磁界の強度や暴露していた期間などを考慮しても、磁界暴露と発ガンリスクの増加は関係なかった、

Increased risks for cancers of the lung and pleural cavity (胸膜の空洞？　気管支のこと？)　were seen mainly for workers whose jobs involved exposure to asbestos.
アスベストへの暴露に伴う肺がんなどの増加は観察された。

The results from this study do not support the hypothesis of an association between occupational exposures to magnetic fields in the electric utility industry and the risk for cancer.
この研究の結果は、電力会社の従業員が磁界に暴露することによって発ガンリスクが増加するという仮説を支持しない。

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１９．家電製品の使用と大人の白血病のリスク　

アブストラクトのみ入手　作成：２００３−１−１６　仮訳をつけました。　

掲載誌：American Journal of Epidemiology、 Vol 140、 Issue 6 510-517、 1994 　

論文名：Adult leukemia risk and personal appliance use: a preliminary study 　
家電製品と大人の白血病のリスクに関する予備調査　

研究者：RH Lovely、 RL Buschbom、 AL Slavich、 LE Anderson、 NH Hansen and　BW Wilson
Pacific Northwest Laboratory、 Richland、 WA 　

概要　
The hypothesis that use of personal electric appliances may be associated with increased risk of acute nonlymphocytic leukemia in adults was tested using interview data from a previously completed case- control study of 114 cases and 133 controls conducted between 1981 and 1984.

家電製品の使用が白血病を増加するという仮説を、1981−1984年に、114名の症例と133名の対照群を対象におこなった過去のインタビュー調査データを使用して、検討した。

Cases were obtained from a population-based cancer registry in western Washington state、 and controls were obtained from the same area by random digit dialing. 　

症例は西部ワシントン州における癌登録から、対照はランダムダイヤル電話で得た。

Of 32 electrical home appliances for which data on use were available for adult acute nonlymphocytic leukemia cases and controls、 three motor-driven personal appliances (electric razors、 hair dryers、 and massage units) were selected a priori because their use represents exposure to higher peak magnetic fields than that from most other home appliances.

32の家電製品の使用状況のデータを得た。モータで動く3つの家電製品（電気かみそり、ヘアドライヤー、マッサージ器）は他の機器より強いピーク磁界を発生することから、注目して検討した。　

When compared on an "ever used" versus "never used" basis、 use of one or more of these appliances was not associated with increased risk of leukemia in the population studied (odds ratio (OR) = 0.71、 95% confidence interval (CI) 0.41-1.24). 　

これらの機器の使用、不使用と白血病のリスク増加に関して、オッズ比は０．７１であった。　

When the appliances were considered individually、 massage units were more likely to have been used by cases than by controls (OR = 3.00、 95% CI 1.43-6.32)、 while hair dryers were more likely to have been used by controls than cases (OR = 0.38、 95% CI 0.22-0.66). 　

個々の機器に関してみれば、マッサージ器の使用は症例郡に多く、ヘアドライヤーは対照郡で多かった。　

There was a nonsignificant tendency for electric razor use to differentiate the cases from controls (OR = 1.33、 95% CI 0.80-2.23). 　

電気かみそりの使用に関しては、特異な傾向はなかった。　

When reported daily time of use was stratified、 there was no overall increased risk with increased time of use except for electric razors (p < 0.05). 　

日々の使用頻度で考えると、電気かみそりの使用を除けば、使用頻度の増加によるリスクの増加は見られなかった。　

In addition to the analysis of appliance use data from the case-control study、 the authors obtained several models of these motor-driven personal appliances and characterized the magnetic fields they produce. 　

症例対照郡からのデータ以外に、機器の磁界漏洩などのデータを入手した。　

Magnetic field flux density、 or the B-field、 and spectral measurements showed that partial body exposure from such appliances may exceed 0.5 mTesla (root mean squared) at rates-of-change exceeding 10 Tesla/sec.　

こうしたデータによれば、人体が部分的に暴露する磁界の強さは0.5mT（5ガウス）を超え、時間変動値は１０テスラ／秒を超える。　

These epidemiologic data must be interpreted cautiously because the number of cases is limited and because of proxy reporting of appliance use for deceased cases. 　

研究対象とした症例数が限定されているので、この易学研究の結果は、注意して、取り扱う必要がある。　

Nevertheless、 the authors believe these data indicate that peak magnetic field exposure from personal appliances warrants further investigation as a possible risk factor for acute nonlymphocytic leukemia in adults. 　

家電製品からのピーク磁界漏洩は、今後の役尾学調査において、検討されるべきである。　

以上にあるように、予備調査の段階であるが、家電製品からの磁界による大人の白血病の増加のリスクは見られなかったという報告です。　

興味のある方は原著の全文を入手して、読んでください。

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２０．フランス電力会社従業員の電界暴露と発ガンの研究　　

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた　　　作成：　２００３−１−１９　

掲載紙：American Journal of Epidemiology、 Vol 144、 Issue 12 1107-1121、 1996 　

論文名：Exposure to 50-Hz electric field and incidence of leukemia、 brain tumors、 and other cancers among French electric utility workers 　
フランスの電力従事者を対象とした50Hz電界暴露と癌の研究　

研究者：P Guenel、 J Nicolau、 E Imbernon、 A Chevalier and M Goldberg 　
Institut National de la Sante et de la Recherche Medicale-Unite 88、 Hopital National de Saint-Maurice、 France.

概要：　
Recent studies on the association between exposure to 50- to 60-Hz fields and cancer carried out among electric utility workers have focused mainly on the magnetic field component of exposure. 　
最近の電力事業従事者を対象とした50/60Hz電磁界暴露と発ガンリスクの研究は、主に磁界について研究が行なわれている。

The authors have investigated tumor risks specifically associated with electric fields、 as this exposure is distinct(異なる) from magnetic fields. 　
本研究は、磁界暴露と異なる電界と発ガンの研究である。　

The study design is a case-control study nested within a cohort of 170、000 workers employed at Electricite de France-Gaz de France (EDF) between 1978 and 1989.
フランス電力（EDF）に1978年から1989年に勤務した17万人の集団の中で、症例対照研究をおこなった。　

All incident cases of cancer and benign（良性の） tumor of the brain diagnosed in 1978-1989 among workers before the age of retirement were included.　　
1978年から1989年の間で、退職前に癌と診断された、良性の脳腫瘍を含む全ての癌の症例を収集した。　

Four randomly selected controls were individually matched to each case by year of birth.
生年をマッチさせて、対照郡を選択した。　

The exposure to electric fields was assessed from measurements collected in 850 EDF workers for a full work week. 　
電界への暴露の状態は860人の従業員を対象に測定評価を行なった。　

Arithmetic and geometric mean exposures were included in a job-exposure matrix to determine the cumulative exposure of the cases and the controls. 　
対照郡、症例群ともに、累積暴露量（算術平均、幾何平均ともに）でJOBマトリックスを作成した。　

Exposures to potentially carcinogenic chemicals found at the workplace were also evaluated through expert judgment. 　
職場にあるその他の発がん性物質の影響は、専門家によって評価された。　

The analysis by site of tumor did not show any increased risk for leukemia (72 cases). 　
72の症例のあった白血病に関しては、発生部位と電界暴露とは関係がなかった。　

An odds ratio of 3.08 (95% confidence interval 1.08-8.74) was observed for all brain tumors (69 cases) for exposure above the 90th percentile (> or = 387 V/m-year)、 and there was some indication of a dose-response relation、 although the risk did not increase monotonically with exposure. 　
69の症例があった脳腫瘍に関しては、387V/m以上の強い電界に暴露している90パーセンタイルの人の間では、オッズ比が3.08 ( CI: 1.08-6.74)であった。そして、暴露に対して単調に増加と言う訳ではないが、わずかな量―反応作用が観測された。　

No confounding from magnetic fields or from other potentially carcinogenic hazards was apparent. 　
磁界の影響、その他の発がん性物質の影響は見られなかった。　

The observed association was somewhat stronger after allowing a 5-year latency period（潜伏期） before diagnosis (odds ratio = 3.69、 95% confidence interval 1.10-12.43) for exposure above the 90th percentile. 　
癌と診断される前に5年の潜伏期間を想定すると、上記オッズ比3.08という数字はオッズ比3.69に増加する。　

However、 the risk of brain tumor could not be linked to a specific type of tumor. 　
特定の種類の脳腫瘍との関連は見られなかった。　

An unexpected association was also observed for colon（結腸） cancer、 using geometric indexes of exposure、 but no other association was seen for any other type of cancer.
予想しなかったことであるが、幾何的平均値の暴露量と結腸癌の関係が見つかった。
その他の癌との関連はなかった。　

Our study indicates that electric fields may have a specific effect on the risk of brain tumor、 and that this should be taken into account in future analyses on the carcinogenic effects of 50- to 60-Hz fields. 　
この研究で、電界暴露が脳腫瘍に関連していることがわかり、今後の研究では、50Hz、60Hzの電磁界と発ガンの研究には、電界の影響も加味しなければならない。　

以上　　　興味のある方は原著の全文を入手して、読んでください。　　

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２１．Keifetsの1997年の職業的な電界暴露と白血病との疫学研究　

アブストラクトのみの入手。仮訳をつけた。　作成：　２００３−１−１８　

掲載誌：American Journal of Epidemiology、 Vol 146、 Issue 1 87-90、 1997 　
論文名：Leukemia risk and occupational electric field exposure in Los Angeles County、 California　
カルフォルニアにおける職業的な電磁界暴露と白血病のリスク　
研究者：LI Kheifets、 SJ London and JM Peters 　
EMF Health Assessment and Management、 Electric Power Research Institute、 Palo Alto、 CA. USA

概要:
The authors analyzed data on electric fields from a prior study of occupational magnetic field exposure and leukemia risk conducted in Los Angeles County, California、 in 1972-1990.
1972−1990年の過去に行った磁界と白血病の研究データから、 電界に関する解析をおこなった。

Ranking of exposure differed somewhat for magnetic and electric fields.
電磁界への暴露を適当にランク区分をおこなった。

The odds ratios were 1.22 (95% confidence interval (CI) 0.80-1.86) and 1.15 (95% confidence interval 0.78-1.72) for medium and high exposure categories, respectively, and there was no clear evidence of an exposure-response relation (odds ratio for 10 V/m increase = 1.05、 95% CI 0.95-1.16).
高い暴露群と中程度の暴露群の間での、オッズ比は1.22(CI: 0.90-1.86)、電界暴露強度が10V/m増加するにつれてリスクの増加は、オッズ比で1.05（CI: 0.95-1.16）であった。

Although not conclusive、 our analyses provide little support for an association between occupational electric field exposure and leukemia.
結論づける訳にはいかないが、この解析結果は職業的な低周波電界への暴露と白血病増加の関連性を支持しない。　

以上　

この論文は現在ＷＨＯの国際電磁波プロジェクトの纏め役をやっている人の研究論文です。
興味のある方は、この研究の原著　全文を入手して読んでください。

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２２．イギリスのＮＲＰＢ発行　Doll報告の概要　2001年

興味のある方はWEBもしくは原著を購入して読んでください。以下は私の理解できた範囲での概要です。

Documents of NRPB Vol.12 No. 1, 2001
ELF Electromagnetic Fields and the Risk of Cancer　
Report of an Advisory Group on Non-Ionizing Radiation　
Chairman: Sir R. Doll 　

原本はNRPBから30ポンドで購入可能。概要はNRPBのWEBに目次と結論の部分だけが公開されている。
以下はこの公開された概要の概要である。WEBのURLは http://www.nrpb.org.uk　　

＊この報告はELF、低周波の電磁界に限定する報告である。
＊NRPBの最初の1992年に発行したレポートでも行ったが、低周波電磁界の健康影響に関してレビューを行った。
＊ヒトのガンに関して、職業的な曝露、住環境下における曝露との疫学調査、細胞実験、動物実験、ヒトを対象とした実験の結果をまとめた。

＊過去の研究では曝露評価は不十分であったが、最近の研究では、磁界曝露評価が十分に行われるようになってきている。（私のコメント：だから過去の疫学結果は信頼性に欠けるとは言っていないが）　

＊ 細胞実験結果　
No Clear evidence、 No convincing evidenceという表現で、電磁界が影響するということは、まだ明確な証拠、確定した証拠はない。　
100マイクロテスラを超える磁界における影響があるとされる研究は、一般環境における0.01ないし0.2マイクロテスラの磁界に適用することはできない。　

（私のコメント；ここでは100マイクロテスラを超えると影響する可能性があるとなっている。
ICNIRPの規定も一般大衆の曝露限度は100マイクロテスラである。）　

＊動物実験、ヒトを対象とした実験　
全般的に、No convincing evidence（明確な証拠はない）となっている。　

＊住環境における曝露　
相対的に強い磁界、0.4マイクロテスラを超える磁界への曝露で小児白血病が2倍になるというSuggest（提議）がある。
しかし、The evidence、 however、 not Conclusive.（まだ結論ではない）となっている。

英国において、0.4マイクロテスラを超える曝露を受けている小児の割合は多分0.4％程度であろう。

（私のコメント：3月23日に行われた第3回電磁界ワークショップにおいて、カロリンスカ研究所のオルボンは、このDoll報告に言及している。
今までは磁界と小児ガンの関係を全く認めていなかったのが、この報告では、表現を工夫して、少なくとも可能性を示唆するところまで言及しているのは評価できる、と。　

この点だけを拡大解釈すれば、今までと異なり、NRPBは一歩　磁界が小児ガンに関連すると　進んだということもできる。
まだ認めた訳ではないが、一歩前に進んだ　ということができる。）　

＊職業的な曝露　
職業的な曝露は、住環境における曝露より強いと想定される。　
最近の職業曝露とガンの研究は県連が見つからなかった。　

＊全体の結論　
小児白血病のリスクを増発するという疫学調査は、現時点では最終的な結論を出すにはまだ十分ではない。
クラスタの問題、まだ認知されていない別の因子なども含めて更なる研究が必要である。　

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２３．低周波磁界と癌の研究（Galloni　2001年）

Bio　ElectroMagnetics誌　2000年12月号に掲載されていた研究です。
研究者：P. Galloni　et al:
論文名：Effects of 50 Hz Magnetic Field Exposure on Tumor Experiencal models.

50Hz　２ミリテスラ（２０ガウス）の磁界に鼠を曝露。
癌細胞を移植して、その癌の増加などを調査した。

磁界に曝露した鼠、磁界装置で飼育したが磁界の発生は無い擬似曝露、普通の飼育箱で飼育したコントロール間で差異を調査した。
１０グレイという強いＸ線を曝露させた鼠でも調査。
磁界へは1日6時間　週5日間曝露させた。　

結果は　
X線曝露のない実験では、癌の増発はない。
X線を曝露した群はＸ線曝露のない群に比べて明らかに増加。
X線を曝露した実験で、磁界曝露、擬似曝露、コントロール間に差異はなく、磁界はプロモータ作用（発ガンを促進する作用）を持つとはいえない。

となっています。

このことから、疫学では数ミリガウス程度の磁界でも癌を増発することを示唆している研究があるが、この実験は１００００倍も強い磁界に曝露しているにも関わらず、癌の増発は動物実験では確認できなかった、としている。

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２４．スイス鉄道従事者の磁界暴露と白血病　　　

アブストラクトのみ入手。　仮訳をつけた。　　作成：　２００３−１−１８　
掲載誌：　American Journal of Epidemiology Vol. 153、 No. 9 : 825-835 2001
論文名：Leukemia、 Brain Tumors、 and Exposure to Extremely Low Frequency Electromagnetic Fields in Swiss Railway Employees 　スイスの鉄道従事者における低周波電磁界暴露と白血病・脳腫瘍　
研究者：　C. E. Minder and D. H. Pfluger　　
From the Institute for Social and Preventive Medicine、 University of Berne、 Berne、 Switzerland

Railway engineers provide excellent opportunities for studying the relation between exposure to extremely low frequency magnetic fields and leukemia or brain tumors.
白血病と脳腫瘍と低周波磁界暴露の関係について、鉄道従業員を対象に研究をおこなった。　

In a cohort study of Swiss railway personnel with 2.7 x 10⁵ person-years of follow-up (1972–1993)、 the authors compared occupations with high average exposures (line engineers: 25.9 µT) to those with medium and low exposures (station masters: 1 µT).
27万人年の規模で、スイスの鉄道従業員を対象としたコホート研究で、1972年から1993年の間を追跡期間とした。
高いレベルの暴露群（線路工、25.9μT）と中程度と低いレベルの暴露群（駅長職、1μT）を比べた。　

The mortality rate ratio for leukemia was 2.4 (95% confidence interval (CI): 1.0 6.1) among line engineers (reference category: station masters). 
線路工と駅長職を比べると、線路工の白血病での死亡率比は2.4（CI 1.0-6.1）。

The mortality rate ratio for brain tumors was 1.0 (95% CI: 0.2-4.6) among line engineers and 5.1 (95% CI: 1.2- 21.2) among shunting yard engineers (compared with station masters).
同様に、脳腫瘍との関係は死亡率比が1.0（CI 0.2 - 4.6）であったが、
分岐点で働く人と駅長職の死亡率比は、5.1（CI: 1.2 - 21.2）であった。　
（筆者の注：5.1倍のCIの間隔が大きいので、症例数が少ない？）　

Two exposure characteristics were evaluated: cumulative exposure in µT-years and years spent under exposure to magnetic fields of > or = 10µT.　
累積μT・年値と、10μT以上に暴露した年数を対象として、暴露状況も評価した。　

There was a significant increase in leukemia mortality of 0.9% (95% CI: 0.2- 1.7) per µT-year of cumulative exposure to extremely low frequency magnetic fields.
累積値が1μT・年毎に白血病の死亡率は0.9%増加する。（筆者の注：　この数値から、100μT年で余剰リスクは約１となり、死亡率比は2倍となる。1ガウスを1年間浴び続けて余剰リスクが１）　

The increase by years spent under exposure of >10 µT was even stronger: 62% per year (95% CI: 15-129).
10μT以上の磁界に連続して暴露すると、死亡率は1年毎に62%増加する。　

Brain cancer risk did not show a dose-response relation.
脳腫瘍に関しては、量―反応関係は見られなかった。

This study contributes to the evidence for a link between heavy exposure to extremely low frequency magnetic fields and leukemia.

Its strengths include reliable measurements and reliable historical reconstruction of exposures. 
この研究結果は、強い低周波磁界への暴露と白血病の関係を支持する。　
この研究は信頼できる測定と、過去の仕事などの関係に関する履歴に関しては信頼できる情報に基づいている。

筆者の注：　どのようにしてJOB−マトリックスを作成したのか? 原著論文（全文）を読んでみる必要がある。

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２５．デンマーク電力従事者の電磁界暴露と心臓機能への影響　

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた。　　作成；　２００３−１−２０　
掲載誌：　Am J Epidemiol 2002; 156:857-861、 2002　
論文名：Risk of Severe Cardiac Arrhythmia in Male Utility Workers: A Nationwide Danish Cohort Study 　男性電力会社従業員における心臓不整脈のリスク、デンマークの全国規模のコホート研究　
研究者：Christoffer Johansen¹、 Maria Feychting²、 Mogens Møller³、 Per Arnsbo³、 Anders Ahlbom² and Jørgen H. Olsen^1
1 Institute of Cancer Epidemiology、 Danish Cancer Society、 DK-2100 Copenhagen、 Denmark.
² Institute of Environmental Medicine、 Karolinska Institutet、 S-171 77 Stockholm、 Sweden.
³ Danish Pacemaker and ICD Register、 Department of Cardiology、 Odense University Hospital、 5000 Odense C、 Denmark. 　

概要：　
To address concern about the potential cardiovascular effects of occupational exposure to electromagnetic fields in the 50- to 60-Hz frequency band、 the authors launched an epidemiologic study of the incidence of severe cardiac arrhythmia, as indicated by the need for a pacemaker, in a nationwide cohort of Danish utility workers. 　

５０−６０Ｈｚの電磁界に職業的に暴露することによる心臓血管機能への影響があるのではないかという懸念に対して、デンマークの全国規模での電力会社従事者を対象としたコホート集団で、心臓不整脈に関する疫学調査をおこなった。　

The cohort of 24,056 men employed at utility companies between 1900 and 1993 was linked to the nationwide, population-based Danish Pacemaker Register, and the numbers of persons who had undergone pacemaker implantation between 1982 and 2000 were compared with corresponding numbers in the general population.

コホート集団は電力会社に１９８０？年から１９９３年にかけて勤務していた２４０５６名である。
これをデンマークの心臓ペースメーカの登録ＤＢを利用して、１９８２年から２０００年の間に心臓ペースメーカを装着した人の数を調べ、一般公衆の平均値と比較した。

In addition, the data on the utility workers were fitted to a multiplicative Poisson regression model in relation to estimated levels of exposure to 50-Hz electromagnetic fields.
５０Ｈｚ　電磁界への暴露量も推定した。　

Overall, based on 135 men with pacemakers (140 expected)、 there was no increased risk of severe cardiac arrhythmia among the utility employees; the risk estimate was 0.96 (95% confidence interval: 0.81-1.14). 　

電力会社従事者の中でペースメーカの装着者数は１３５名、一般の平均から算出された期待値は１４０名であった。
電磁界暴露によるペースメーカ装着のリスク増大はオッズ比０．９６であった。　

No clear dose-response pattern emerged with increasing levels of exposure to electromagnetic fields or with duration of employment. 　
勤務年数や、電磁界暴露強度との量―反応関係は無かった。　

These results are largely reassuring、 since they do not support the hypothesis of a link between occupational exposure to electromagnetic fields and an excess risk of severe cardiovascular arrhythmia leading to permanent implantation of a pacemaker.　
この結果から、「電磁界への暴露が心臓不整脈の増加からペースメーカを装着しなければならなくなるというリスクがある」という仮説は支持できない。　

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２６.　英国の電力会社従業員の磁界暴露と白血病のリスク　

アブストラクトの入手　仮訳をつけた　作成；２００３−１−２８　

掲載誌：Occup Environ Med 2001; 58:307-314 (May)
論文名：Leukemia mortality in relation to magnetic field exposure: findings from a study of United Kingdom electricity generation and transmission workers, 1973-97
研究者：J M Harrington, L Nichols, T Sorahan, M van Tongeren
Institute of Occupational Health, University of Birmingham, Edgbaston, Birmingham B15 2TT, UK　

OBJECTIVE: To investigate whether risks of leukemia are related to occupational exposure to magnetic fields.　
目的：磁界への職業的な暴露が白血病のリスクに関連するかに関して調査を行う。

METHODS: The mortality experienced by a cohort of 83 997 employees of the former Central Electricity Generating Board of England and Wales was investigated for the period 1973-97.
方法：　イングランドとウエールズのかつてはCEGBと呼ばれた電力会社の従業員83997名を対象に、1973年から1997年にかけて調査を行った。　

All employees were employed for at least 6 months with some employment in the period 1973-82.
対象とした従業員は1973年から1982年の間で、最低6ヶ月は勤務していた人である。　

Computeriｓed work histories were available for 79 972 study subjects for the period 1971-93.

コンピュータに入力されて過去の職務歴が明確な従業員数は79972名であった。　

Detailed calculations were performed by others to enable a novel assessment to be made of exposures to magnetic fields. Two analytical approaches were used、 indirect standardization (n=83 997) and Poisson regression (n=79 972).
磁界暴露評価は他の研究者によって行われた。　二つの解析法で解析を行った。　

RESULTS: Based on serial mortalities for England and Wales, the standardized mortality ratio of 84 for all leukemias (observed 111, expected 132.3) was similar to that of 83 for all causes (observed 14 845, expected 17 918).
結果：白血病に関しては死亡率比８４、期待値132.3に対して、観察値は111であった。
これは全ての死亡原因での比率と同程度であった。
全死亡では死亡率比８３、期待値１７９１８に対して観察値は１４８４５であった。　

No significant positive trends were found for the risks of various types of leukemia (chronic lymphatic leukemia, acute myeloid leukemia, chronic myeloid leukemia, all leukemia) either with lifetime cumulative exposure to magnetic fields or with such exposures received in the most recent 5 years.　
白血病の種類で解析しても、すべてを対象としても、直近の5年間の磁界暴露量で解析しても、全生涯累積暴露値で解析しても、有意なリスクの増加は見られなかった。　

CONCLUSIONS: There are no discernible excess risks of leukemia as a consequence of occupational exposure to magnetic fields in United Kingdom electricity generation and transmission workers.
結論：英国の電力事業に従事する人に職業的に磁界に暴露することによる白血病に対して、識別できる過剰なリスクの増加は見られなかった。　

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２７．英国電力従事者の磁界と脳腫瘍のリスク　　

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた　作成；２００３−２−１６　

掲載誌：Occu Environ Med 2001;58:626-630 ( October )
論文名：Occupational exposure to magnetic fields relative to mortality from brain tumors: updated and revised findings from a study of United Kingdom electricity generation and transmission workers, 1973-97 　
英国電力従業員の職業的な磁界暴露と脳腫瘍での死亡率の関係；1973−97年の研究の見直しから　

研究者；T Sorahan、 L Nichols、 M van Tongeren、 J M Harrington 　
Institute of Occupational Health, University of Birmingham, Edgbaston, Birmingham B15 2TT, UK　

OBJECTIVE：To investigate whether risk of brain tumor is related to occupational exposure to magnetic fields.　
目的：磁界の職業的な暴露が脳腫湯のリスクになっているか否かを確かめる。　

METHODS：The mortality experienced by a cohort of 83 997 employees of the former Central Electricity Generating Board of England and Wales was investigated for the period 1973-97.
方法：イングランドとウエールズの電力事業従事者83997名を対象とし、1973−1997年にかけての死亡率を調査した。

All workers were employed for at least 6 months with some employment in the period 1973-82.
1973−82年の間に最低限度6ヶ月勤務した全ての従事者を対象とした。　

Computerized work histories were available for 79 972 study subjects for the period 1971-93.
1971−93年の間の、79972名の職務歴が、コンピュータデータとして入手できた。　

Detailed calculations had been performed by others to enable a novel assessment to be made of exposures to magnetic fields. 　詳細な計算は、磁界暴露の評価によって行った。

Two analytical approaches were used、 indirect standardization (n=83 997) and Poisson regression (n=79 972).　2種類の解析法を採用した。

RESULTS：Based on serial mortalities for England and Wales、 deaths from brain cancer were close to expectation (observed 158, expected 146.4).
結果：電力事業従事者間の脳腫瘍での死亡率は、一般の割合から計算した期待値に近い値であった。　
（観察値158、　期待値146.4）　

No significant positive trends were shown for risks of brain tumors either with lifetime cumulative exposure to magnetic fields or with such exposures received in the most recent 5 years.　
磁界への暴露の終身累積値でも、直近の5ヵ年の磁界暴露でも、有意な脳腫瘍のリスクの増加は見られなかった。　

CONCLUSIONS：There are no discernible excess risks of brain tumors as a consequence of occupational exposure to magnetic fields in United Kingdom electricity generation and transmission workers.　
結論：英国の電力事業従事者の職業的な磁界暴露による脳腫瘍の、認識できる過剰なリスクの増加はない。　

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２７A．英国 Harringtonらの電力事業従業員と脳の癌の1997年研究

記：２０２１−３−１５

以下の研究がある。

掲載誌: Occup Environ Med 1997; 54 (1): 7-13
タイトル：Occupational exposure to magnetic fields in relation to mortality from brain cancer among electricity generation and transmission workers.
発送電力事業従事者の磁界曝露と脳腫瘍による死亡率との関係
著者: Harrington JM, McBride DI, Sorahan T, Paddle GM, van Tongeren M

Abstract概要：
Objective：To investigate whether the risks of mortality from brain cancer are related to occupational exposure to magnetic fields.
目的；脳の癌による死亡リスクが磁界への職業的曝露に関連しているかどうかを調べる。

Methods：方法
A total of 112 cases of primary brain cancer (1972-91) were identified from a cohort of 84018 male and female employees of the (then) Central Electricity Generating Board and its privatized successor companies.
原発性脳の癌(1972-91年)の合計112件の症例を、(当時の)中央発電委員会とその後の民営化された後継会社に勤めた84018人の男女従業員のコホートから抽出した。

Individual cumulative occupational exposures to magnetic fields were estimated by linking available computerized job history data with magnetic field measurements collected over 675 person-work shifts.
磁場に対する個々の累積職業的曝露量は、利用可能なコンピュータ化された職歴データと675以上の人・シフトで収集された磁場測定値を利用して、推定した。

Estimated exposure histories of the case workers were compared with those of 654 control workers drawn from the cohort (nested case-control study), by means of conditional logistic regression.
症例の従業員の推定曝露履歴は、条件付きロジスティック回帰によって、コホート(コホート内症例対照研究)から引き出された654人の対照群労働者の推定曝露履歴と比較された。

Results：結果
For exposure assessments based on arithmetic means, the risk of mortality from brain cancer for subjects with an estimated cumulative exposure to magnetic fields of 5.4-13.4 uT-y v subjects with lower exposures (0.0-5.3 uT-y) was 1.04 (95% confidence interval (95% CI) 0.60 to 1.80).
算術平均に基づく曝露評価では、低曝露(0.0-5.3 μT-yの磁界)への推定累積曝露を受けた群に対して、中曝露(5.4-13.4μT-y)の群における脳の癌による死亡リスクは1.04(95%信頼区間：0.60‐1.8)であった。

The corresponding relative risk in subjects with higher exposures (> 13.5 uT-y) was 095 (95% CI 0,54 to 1.69).

高暴露(13.5μT-y以上)の群における対応する相対的リスクは0.95(95%CI：0.54‐1.69)であった。

There was no indication of a positive trend for cumulative exposure and risk of mortality from brain cancer either when the analysis used exposure assessments based on geometric means or when the analysis was restricted to exposures received within five years of the case diagnosis (or corresponding period for controls).
分析を幾何学的手段に基づいて曝露評価をした時、また、分析を症例が癌と診断（対照群の場合は、それに対応する時期）される以前に受けた曝露に限定したとしても、脳の癌に関しては累積曝露と死亡リスクに対する肯定的（関連性が陽性）な傾向の兆候はなかった。

Conclusions: 結論
Although the exposure categorization was based solely on recent observations, the study findings do not support the hypothesis that the risk of brain cancer is associated with occupational exposure to magnetic fields.
曝露分類は最近の観察のみに基づいていたが、この研究結果は、脳の癌のリスクが磁界への職業的曝露に関連しているという仮説を支持していない。

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２８．低周波磁界と小児ガンのプール解析　

カロリンスカのＭ．Ｆｅｙｃｈｔｉｎｇ等は、最新の9件の疫学調査をまとめて解析を行った。

結果は、　
１）　０.４マイクロテスラを超える場所に住んでいる子供の小児ガンの危険率は２倍である。
２）　０.４マイクロテスラ（４ミリガウス）以下の磁界に曝露しても、小児ガンの危険性は増加しないことが判った。
３）この０.４マイクロテスラを超える磁界曝露を受け割合は全体の０.８％に過ぎない。　
従って、送電線があっても９９.２％の子供には危険性はない。　

このことから、計算で実際の小児ガンになる人数を推定して見ます。
０・４マイクロテスラ以上の場所に住むと危険度が２倍ということは、通常は１人のガン発生に対して、磁界によって、もう一人がんになる小児が出るということです。

簡略化のために０．４マイクロテスラ以上の所に住む人は１％とすると、１００分の１の確率になります。
小児ガンの発生率をどこかの原典にあたって調査しなければならないのですが、ここでは１０万人に５名という確率を使用します。　
そうすると、０．４マイクロテスラ以上のところに住んで、小児ガンになる確率は、１０００万人に５名の割合となります。

１０歳以下、もしくは１５歳以下の子供が全人口の２０％程度であるとすれば、５０００万人の全人口の中に、送電線の影響でガンになる人数は５名となる。　

スウェーデンのように人口１０００万人程度の国では、全国から全ての高圧送電線を撤去したり、地下埋設にしたりしも、救えるのは年間１名の子供である。

日本のように１憶の人口の場合は、年間に１０名の子供を救うことができる。　
という計算が成り立ちます。　

こうした計算は、カロリンスカの研究者はかつて行っています。　
従って、送電線からの磁界の影響度はゼロではない、しかし、この確率の危険度のために、他の色々なことを際し置いて、優先権を与えなければならないということは難しい。　

アメリカのRAPIDの最終報告では、こうしたことを考えて、法律などで規制したりしなければならないほどの大きな危険度ではない、しかし、危険はあるので、できるだけ送電線からの磁界は小さくするなどの予防措置をとったほうが良い　という結論になっているといえます。　

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２９．電気学会1998年の報告から　

平成１０年　電気学会発行　「電磁界の生体影響に関する現状評価と今後の課題」を読んで気の付いた点をまとめた。
　　　　　　　作成：　　２０００−１−２９　　

この本は、基本的には低周波電磁界を中心にして纏めてある。
P８．この報告書の校正中にアメリカからRAPIDのワーキンググループの報告書が発行された。

Ｐ８．この報告書としては「通常の居住環境における電磁界が人の健康に影響を与えるとは言えない」と結論できる。

Ｐ１４．低周波の電磁界
解析の一例によると、１００ｋＶの三相１回線の送電線の場合、線路と直角の方向に放射される電力は負荷に輸送される電力の僅か２／１０^１１（１０の１１乗分の２）程度に過ぎない。
輸送電力を１００万ＫＷとすれば、放射電力は０．０２Ｗになる。

Ｐ１５．自然界に存在する電磁界　

落雷時の観測によれば、雷電流の時間変化率の最大は３００ｋＡ／マイクロ秒である。
従って、落雷地点の近傍では過渡的に大きな磁界が生じていると考えられる。

Ｐ５８．日米の送電線による磁界の比較
日本における地表面での磁界は前述のとおり最大でも２０マイクロテスラとなる。
一方、アメリカでは、電線地上高は低く設定されている。
この為想定される磁界最大値の目安としては５０マイクロテスラ（５００ミリガウス）が採用されることが多い。　

Ｐ６１．電気鉄道　測定例　
文献（電力中研　１９９２年）では、通勤中の車内での測定例が示されている。　

Ｐ７０．職業環境　実態調査手法の概要　
職場環境における曝露実態が生活全体のどの割合になるかは、重要な問題である。　
英国放射線防護評議会（ＮＲＰＢ）では、電力会社の従業員の仕事内容と磁界曝露量との関係について細分化した資料を示している。（１９９２年の資料）　
職種により多少のばらつきが見られるが、総曝露量の７０％程度が職場、２０％程度が家庭、残り１０％程度が通勤・その他である。

Ｐ７８．各国の防護指針および規制　　欧州諸国　
ドイツ：　１９９７年から連邦排出物規正法の中に電磁界の放射を取り入れ、法的に強制力のある規制を開始した。この規制に用いられる指針は、ＤＩＮ／ＶＤＥ規格やＣＥＮＥＬＥＣによる欧州暫定規格のような電気技術基準ではなく、保健衛生の立場からＩＣＮＩＲＰおよび前身のＩＲＰＡによる指針を採用している。　

Ｐ８０．各国の防護指針および規制　各防護指針の比較　
ＶＤＴからの漏れ電磁界に適用されるスウェーデンのＶＤＴ機器からの朗詠電磁界に関する測定法のガイドラインがある。
健康影響についての根拠があるわけではない。　単に技術的に可能である範囲で不必要な電磁界を低減することを勧告しているに過ぎない。　
我が国でも類似のガイドラインが検討された。これも健康影響を根拠にしたものではない。　

Ｐ９６．電磁界問題の経緯

ニューヨーク州送電線プロジェクトの結果は、殆ど研究で影響は見られないとの結論であったが、Ｓａｖｉｔｚ等が小児白血病とワイヤ・コードとの間の関連性を示唆するＷｅｒｔｈｅｉｍｅｒ等の結果を再現したことから、「磁界と癌の関係については、更に研究が必要である」とする最終報告書がニューヨーク州保健局から公表された。　

Ｐ１０７．疫学研究の方法　
精度の信頼性について単純な指標としては信頼性区間の下限値の上限値に対する比が用いられている。　精度が高いほどこの比は１に近づくが、０・５以上を精度が高い、０．５と０・２５の間を中間、０．２５以下を精度が低いと区分している例がある。

Ｐ１１６．職業曝露と悪性疾病　
職業曝露に加え、住居内曝露を考慮した疫学調査が行われた（１９９７年Ｆｅｉｃｈｔｉｎｇ.）。　この研究では住居内および職業曝露が共に高い場合に、白血病のリスクが有意に大きい。　

Ｐ１２０．磁界曝露とメラトニン・免疫機能　
その後の報告では、低メラトニン分泌グループのみを２０マイクロテスラの磁界に曝露したが磁界の影響は見られなかった。　
このように同じ研究室で行われた実験においても異なる結果が得られている。　

Ｐ１４１．交流磁界　
生体を数百ｋＨｚの高周波磁界内におくと体内に誘導される渦電流によって発熱を伴うことがある。
　直腸温度が１度Ｃ上昇すると実験動物の作業能率などに変化が生じる。　

Ｐ１４４．喫煙の健康リスク　
タバコ煙中の発ガン物質の殆どは、イニシエーション、プロモーション作用を持っていることが、実験的に明らかになり、ラット、マウス、ハムスターやイヌなどを用いた動物実験からも、たばこ煙の発ガン性が明らかになっている。

以下は研究の概要　
P１８０．Mevissen　１９９６年の研究　
５０Hz　１０マイクロテスラの磁界をラットに暴露。　メラトニンは磁界によって抑制された。　
しかし、腫瘍に対しては磁界の影響はなかった。

P１９０．Rogers　１９９５年の研究　
５０Hｚ　５０マイクロテスラの磁界と６ｋV／ｍの電界をヒヒに曝露。　
電源の突入を急速に（８・３ミリ秒過渡変化）行った時、夜間メラトニンは抑制。　電源の突入をゆっくり行った時、夜間メラトニンは変化なし。

P２０１．Alfredsson　１９９６年の研究　電車運転手にリンパ性白血病のリスクが２．３　

P２２２．Saffer　研究中　
がん化は始まったがまだ完全にがん化していないＪＢ６細胞に６０Ｈｚ　０−１ミリテスラの磁界を曝露、影響は見られなかった。

　　詳細は原著を読んでください。

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２９Ａ．アメリカRAPID最終報告書

以下は朝日新聞1999年6月17日からの引用です。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
電磁波とがん「関係薄い」　米で報告書
【ワシンントシ15日　辻篤子】
米国立環境健康科学研究所は15日、電磁波による健康被害について、電磁波が癌などの病気の原因である可能性は低いとする調査報告書を発表した。
送電線の電磁波によって子供の白血病が増えるなどの報告がある一方で、根拠はないとの報告もあり、米議会が同研究に対し、見解を求めていた。

研究は送電線とともに家庭内の配線などからも生じる電磁波を対象に行われた。
報告書によると、統計的な疫学調査では、送電線の電磁波を多く浴がると子供の白血病がわずかに増えるなどの結果が出ているものの、実験室での動物や人間での実験結果や電磁波が与える影響を細胞レベルで調べる研究ではいずれも、因果関係は認められていない。

このため「完全に安全とはいえないが、電磁波ががんなどの病気の原因となる確率はきわめて低い」と結論づけた。
（略）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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29B. フランス国立食品品環境労働衛生安全庁（ANSES）が低周波電磁界の健康影響報告２０１９年

記；２０１９−７−１２

電磁界情報センター　http://www.jeic-emf.jp/whats_new/7599.html　にあった内容

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
フランス国立食品品環境労働衛生安全庁（ANSES）が低周波電磁界の健康影響についての新たな評価報告を発表

2019.6.27掲載

フランス国立食品環境労働衛生安全庁（ANSES）は2019年6月21日、低周波電磁界への曝露に関連した健康影響についての新たな評価報告を発表しました。
この報告でANSESは、入手可能なデータに照らして、低周波電磁界への曝露と小児白血病の長期的なリスクとの間にあるかも知れない関連についての2010年の結論、ならびに超高圧送電線の近くに学校を新設しないという勧告を繰り返しています。
またANSESは、労働者が高いレベルの電磁界に曝露される可能性のある特定の職場における、特に妊婦の曝露のより良い管理の必要性を強調しています。

ANSESは2010年、疫学研究が、小児白血病の発生と0.2μTまたは0.4μTより⾼いレベルの低周波磁界への曝露との関連を示す方向に収束していることを強調しました。
ANSESは、2010年以降に発表された研究では、小児白血病の長期的な影響についての関連が見られる頻度はより低くなっているものの、「限定的な」証拠があることを確認しました。

今回の評価の⼀環としてANSESは、高圧送電線から発せられる高いレベルの低周波磁界に曝露されるフランス国民、特に子どもの割合を定量化する研究を助成しました。
国立保健医学研究所（INSERM）及びカーン大学病院のチームが実施したこの研究では、15歳以下の子ども約4万人（人口集団の0.35%）が自宅で0.4μTを超える磁界に曝露露され、子ども約8千人（0.18%）が0.4μTを超える磁界レベルの学校に通学していることがわかりました。
これらの結果に鑑みて、ANSESは、念のための対策（precaution）として、感受性の高い人々を受け入れる施設（病院、学校等）を超高圧送電線の近傍に新設しないこと、そのような施設の上に送電線を新設しないことも勧告しています。

ANSESはまた、現行の規制は送配電線の近くでの曝露レベルを限度値に適合させることしか規制していないことから、この規制を一般公衆が曝露される電磁界の全ての発生源に拡張することを勧告しています。

国立安全研究所（INRS）及び年金労働衛生保険基金（CARSAT）による共同研究によると、一部の職種、特にある種の産業用機械を用いるような状況では、曝露限度値（50Hzで1000μT）を超える非常に高いレベルの磁界に曝露される潜在的可能性があることがわかりました。

このためANSESは、労働衛生及び過剰曝露の低減についての規制を施行することの重要性を協調しています。
また、低周波電磁界を発する産業用機械の製造者に対し、その使用に関連した曝露を測定し、顧客及び使用者向けの技術文書に明記することを勧告しています。

更に、職場で遭遇する可能性のある高いレベルの曝露では、生物学的影響（酸化ストレス、遺伝毒性作用、細胞生理学への影響）が生じるかも知れないことが、実験研究で示されています。
但しANSESは、疫学研究には一貫性がなく、電磁界への職業的曝露と慢性疾患、特に神経変性疾患及び神経系の腫瘍の発生とのつながりを確立することはできない、としています。
このため、低周波磁界への曝露に関連した病理が生じるかも知れないリスクについて、研究の継続が必要であるとしています。
加えて、曝露限度値の次の再評価では、最新の科学的証拠を考慮にいれることを勧告しています。

ANSESは、妊婦の職場での曝露に留意しています。
実際に、ある種の職業的曝露シナリオでは、胎児の誘導電流密度は一般公衆に対して勧告されている限度値よりも高い可能性があることが示されています。
このためANSESは、低周波電磁界への胎児の曝露を制限するため、女性向けのより良い情報提供と、妊娠の際の職場を管理する規制についての意識向上を勧告しています。

この評価報告の原文（フランス語）、ならびに要旨（英語）は、それぞれ以下のURLで確認することができます。

原文（フランス語）：

https://www.anses.fr/fr/content/effets-sanitaires-li%C3%A9s-%C3%A0-l%E2%80%99exposition-aux-champs-%C3%A9lectromagn%C3%A9tiquesbasses-fr%C3%A9quences (https://www.anses.fr/fr/content/effets-sanitaires-li%C3%A9s-%C3%A0-l%E2%80%99exposition-auxchamps-%C3%A9lectromagn%C3%A9tiques-basses-fr%C3%A9quences)

要旨（英語）：

https://www.anses.fr/en/system/files/AP2013SA0038EN.pdf (https://www.anses.fr/en/system/files/AP2013SA0038EN.pdf)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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３０．カナダの職業的な磁界暴露と脳腫瘍　

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた　作成：２００３−１−２１　
掲載誌：International Journal of Epidemiology 2002;31:210-217　

論文名：Brain cancer and occupational exposure to magnetic fields among men: results from a Canadian population-based case-control study 　
男性の職業的な磁界暴露と脳腫瘍についてのカナダの症例対照研究　

研究者：Paul J Villeneuvea、 David A Agnewc、 Kenneth C Johnsona and Yang Maoa and the Canadian Cancer Registries Epidemiology Research Group　

Abstract 　概要　
Background: The relationship between occupational exposure to magnetic fields and brain cancer in men was investigated using population-based case-control data collected in eight Canadian provinces. Emphasis was placed on examining the variations in risk across different histological types. 　

背景：男性が職業的に磁界に暴露することと脳腫瘍との関係を、カナダの８州で症例対照研究をおこなった。特に、組織学的な解析をおこなった。　

Methods: A list of occupations was compiled for 543 cases and 543 controls that were individually matched by age.

方法：５４３の症例と年齢をマッチさせた５４３の対照郡の職業をリストした。　

Occupations were categorized according to their average magnetic field exposure through blinded expert review (<0.3, 0.3-<0.6、 and 0.6 μT). 　

各職業は盲検的に専門家のチェックによって、平均磁界暴露量（0.3以下、0.3−0.6、0.6μT以上）に分類された。　

In total、 133 cases (14%) and 123 controls (12%) were estimated to have at least one occupation whereby magnetic field exposures exceeded 0.3μT. Odds ratios (OR) were generated using conditional logistic regression、 and were adjusted for suspected occupational risk factors for brain cancer. 　

合計133の症例数（14％）と123の対照郡（12％）は、0.3μT以上の磁界暴露を受けている職業の、少なくともひとつの職業に所属していた。　そして脳腫瘍のリスクをオッズ比で計算した。

Results: A non-significantly increased risk of brain cancer was observed among men who had ever held a job with an average magnetic field exposure >0.6μT relative to those with exposures <0.3μT (OR = 1.33, 95% CI: 0.75-2.36). 　

結果：0.3μT以下の暴露に対して、0.6μT以上の磁界暴露による脳腫瘍のリスクのオッズ比は1.33（CI: 0.75-2.36）で、有意な増加はなかった。　

A more pronounced risk was observed among men diagnosed with glioblastoma multiforme (多形の神経膠質母細胞腫)(OR = 5.36、 95% CI: 1.16-24.78).

明確なリスクは多形の神経膠質母細胞腫にあり、オッズ比は5.36（CI:1.16−24.78）であった。　

Moreover、 a cumulative time weighted index score of magnetic field exposure was significantly related to glioblastoma multiforme (P = 0.02). 　

そして多形の神経膠質母細胞腫に関しては累積の磁界暴露の強さと関連性があった。

In contrast、 magnetic field exposures were not associated with astrocytoma or other brain cancers. 　

一方、星状細胞腫とその他の脳腫瘍に関しては磁界暴露との関連は無かった。　

Conclusions Our findings support the hypothesis that occupational magnetic field exposure increases the risk of glioblastoma multiforme. 　

結論：今回の結果は、多形の神経膠質母細胞腫に関しては、職業的な磁界暴露によってリスクが増加するという仮説を支持する。　

以上　　興味のある方は、原著（全文）を入手して読んでください。

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３１．デンマークの電力会社従業員の磁界暴露と多発性硬化症のリスク

アブストラクトのみ入手。　仮訳をつけた　作成：２００３−１−２９　
掲載誌：Neurology 1999;52:1279　

論文名：Multiple sclerosis（多発性硬化症）among utility workers 　
電力事業従事者間の多発性硬化症のリスク　

研究者：Christoffer Johansen、 MD、 Nils Koch-Henriksen、 MD、 Søren Rasmussen、 MSc and Jøorgen H. Olsen、 MD

概要：　
The incidence of MS was assessed in a nationwide cohort study of 31,990 employees of Danish utility companies between 1900 and 1993.　
1900年（?）から1993 年の間の、デンマークの電力事業従事者31,990 名を対象としたコホート研究で、多発性硬化症の発生率を調査した。　

Overall, 32 cases of MS were diagnosed, as compared with 23.7 expected from national incidence rates, to yield a standardized incidence ratio of 1.35 (95% confidence interval 0.92 to 1.91).
期待値23.7件に対して、観察値は32件であり、標準化発生率は1.35（CI：0.92-1.91）であった。

We found no support for the hypothesis of an association between occupational exposure to electromagnetic fields and the risk of MS. 
このことは、職業的な電磁界への暴露と多発性硬化症のリスクに関する仮説を支持しない。　

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

興味のある方は原著（全文）を入手して読んでください。

多発性硬化症：

症状を現す原因となる病巣（‘硬化’つまり、病巣の神経組織が触ってみると硬くなっている）　が大脳や脊髄、まれに末梢神経といわれる人間の神経組織に、一つ以上幾つも、あちこちに散在して出来てきます。
かなり急に歩くとふらつく、目がかすむ、二重に見える、尿が出にくい、などの症状で発病します。
とくに女性は男性にくらべ、この病気にかかっている人がやや多く、日本ではＭＳ患者は人口10万人当たり3.7から多くても5.0人ぐらいであると考えられますが、欧米人の間ではもっと多い病気で、この数字は30.0から90.0ぐらいになります。

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３２．細胞に100μT磁界暴露しても影響なし　　

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた。　作成：　２００３−１−３０　　

掲載紙：Carcinogenesis, Vol. 21, No. 6, 1221-1226, June 2000　
論文名：Effects of 60 Hz extremely low frequency magnetic fields (EMF) on radiation- and chemical-induced mutagenesis in mammalian cells 　
哺乳類細胞を用いた放射線・発がん性化学物質で誘導した60Hz磁界暴露の効果　

研究者：Raheel M. Ansari and Tom K. Hei¹ 　
Center for Radiological Research, College of Physicians and Surgeons of Columbia University, VC 11-218, 630 West 168th Street, New York, NY 10032, USA 　

概要：　
There is considerable uncertainty of the potential biological effects of extremely low frequency magnetic fields (ELF-MF or EMF) because of mixed results in epidemiological and laboratory studies.
疫学や実験室での実感では結果の一致を見ていないことから、不確定で確認すべき課題として、EMF磁界の生体への影響がある。　

In the present study, exponentially growing human–hamster hybrid A_L cells were treated with a 100 µT alternating EMF powered at 60 Hz for either 24 h or 7 days. 　
この研究では、60Hzで100μT（1ガウス） の磁界を24時間もしくは7日間、ヒトとハムスターを掛け合わせた細胞に印加した。

Exposure to EMF was conducted either alone or in combination with graded doses of a physical or chemical carcinogen. 　
磁界だけに暴露した実験と、物理的もしくは化学的な発がん性物質との組み合わせでも実験を行った。　

γ-radiation was chosen as a form of ionizing radiation while N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine (MNNG) was chosen as a form of chemical contaminant　
ガンマー線を物理的な電離放射線源として、MNNGを化学的な発ガン物質として選択した。　

Exposure of A_L cells to EMF alone for a period up to 7 days was non-cytotoxic and non-mutagenic.　
磁界だけの暴露では、24時間でも7日間の暴露でも、細胞毒性や突然変異は見られなかった。　

Concurrent EMF treatment did not increase either the cytotoxicity or induction of CD59– mutants by graded doses of γ-rays or MNNG in A_L cells.　
ガンマー線、MNNGによる発ガンは、磁界暴露によって増加しなかった。　

This study shows conclusively that short-term or long-term exposure to EMF alone neither affects the survival of A_L cells nor increases the mutagenic potency of other environmental carcinogens. 
この研究で、短期と長期での磁界暴露は、磁界だけの暴露でも、また他の発癌物質の効力を増加させたり、細胞の生存率に影響したりすることはないといえる。　

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３３．電力会社での磁界暴露は問題がなく、電界暴露が問題とする研究成果　　

アブストラクトのみ入手。　仮訳をつけた。　作成：　２００３−１−３１　
　トロント大学のMillerは一連の研究で電界との因果関係を報告している。　

掲載誌：Occup Environ Med 2000;　57:249-257 ( April )
論文名：Non-Hodgkin's lymphoma among electric utility workers in Ontario: the evaluation of alternate indices of exposure to 60 Hz electric and magnetic fields 　
オンタリオの電力会社従業員の非ホジキン白血病：６０Hz 電磁界暴露指標の評価　

研究者：Paul J Villeneuve^{a b}、 David A Agnew^{a c}、 Anthony B Miller^a、 Paul N Corey^a 　
｛^a Department of Public Health Sciences、 University of Toronto、 Toronto、 Ontario、 Canada、 ^b Department of Epidemiology and Community Medicine、 Faculty of Medicine、 University of Ottawa、 Ottawa、 Ontario、 Canada、 ^c Ontario Power Generation、 Toronto、 Ontario、 Canada　

OBJECTIVES； To examine associations between non-Hodgkin's lymphoma (NHL) and exposures to 60 Hz magnetic and electric fields in electric　utility workers with a series of indices that capture a variety of aspects of field strength.　
目的：電力会社従業員の６０Hz電磁界暴露と非ホジキン白血病の関係を、いろいろな暴露評価指数を用いて検討する。　

METHODS： The study population consisted of 51 cases of NHL and 203 individually matched controls identified from within a cohort of male electric utility workers in Ontario.

Odds ratios were calculated for several exposure indices with conditional logistic regression models. 　
方法：51名の非ホジキン白血病の症例と、203名の対照群を対象とした。　いろいろな暴露指数を用いてオッズ比を検討した。

Aspects of exposure to electric and magnetic fields that were modeled included: the percentage of time spent above selected threshold field intensities, mean transitions in field strength, SD, and the arithmetic and geometric mean field intensities.　
特定の電磁界強度を閾値として設定してそれ以上の強度に暴露する時間の割合、算術的平均値、幾何学的な平均値などを暴露指数とした。　

RESULTS： For the most part, there was a lack of an association between exposure indices of magnetic fields and the incidence of NHL. 
Subjects in the upper tertile of percentage of time spent above electric field intensities of 10 and 40 V/m had odds ratios of 3.05 (95% confidence interval (95% CI) 1.07 to 8.80) and 3.57 (1.30 to 9.80), respectively、 when compared with those in the lowest tertile.

解析の大多数では、非ホジキン白血病と磁界暴露との関係はなかった。　
しかし、１０V/mと４０V/mを超える電界強度に暴露する時間の割合が高かった人のオッズ非は割合の低かった人に比べた時、それぞれ３．０５（CI:１．３０−９．８０）、３．５７（CI:１．０７−８．８０）であった。　

Moreover, the percentages of time spent above these electric field thresholds were significant predictors of case status over and above the association explained by duration of employment and the arithmetic or geometric mean exposure.　
上記の電界強度の閾値を越える暴露を受けている時間の割合は、症例の暴露状況を示す指標となり、勤務年数や暴露強度の算術平均・幾何学的平均値と密接に関係している。　

CONCLUSIONS： These data suggest that exposures above electric field threshold intensities of 10 and 40 V/m are important predictors of NHL. 　
Consequently. the findings support the hypothesis that electric fields may play a promoting part in the aetiology（病因学） of this cancer. 
結論：暴露する電界強度１０V/mや４０V/mは重要な予測指数となる。
この研究成果はがんの病因学において、電界がプロモータ作用を持つという仮説を支持する。　

Further occupational studies that include assessment of exposure to electric fields and measures of field strength above similar threshold cut off points are needed to confirm these findings.　
今後の職業暴露に関する研究では、今回示したような閾値を用いて、電磁界強度の暴露評価も行い、この研究成果を確かめる必要がある。　

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３４．　アメリカのリネットの小児がンと磁界の疫学研究　

論文名：Residential Exposure to Magnetic Fields and Acute Lymphoblastic Leukemia in Children　子供の急性白血病と住環境における磁界暴露　
研究者：Martha S. Linet、 M.D.、 Elizabeth E. Hatch、 Ph.D.、 Ruth A. Kleinerman、 M.P.H.、 et al:
掲載雑誌：The New England Journal of Medicine　Volume 337:1-8. Number 1. July 3、 1997

ABSTRACT 概要
Background：背景
Previous studies found associations between childhood leukemia and surrogate indicators of exposure to magnetic fields (the power-line classification scheme known as "wire coding")、　but not between childhood leukemia and measurements of 60-Hz residential magnetic fields.
磁界暴露の代用指数としてのワイヤ・コードでは磁界暴露による小児白血病のリスク増加が報告されているが、実測した磁界暴露値との関係は見つかっていない。

Methods：方法　
We enrolled 638 children with acute lymphoblastic leukemia (ALL) who were under 15 years of age and were registered with the Children's Cancer Group and 620 controls in a study of residential exposure to magnetic fields generated by nearby power lines.
住環境下で、送電線によって発生している磁界暴露の研究のために、ガン登録から15歳以下で急性白血病になった６３８の症例と６２０の対照を選択した。

In the subjects' current and former homes、 data collectors blinded to the subjects' health status measured magnetic fields for 24 hours in each child's bedroom and for 30 seconds in three or four other rooms and outside the front door.
磁界の強さを測定する技術者は、測定対象となる家庭が、症例か対照か、現在住んでいる家か、過去に住んでいた家かはわからないように、盲検法で行った。磁界の測定は24時間子供の寝室で、そして30秒間の３−４の他の部屋と玄関の外側でおこなった。

A computer algorithm assigned wire-code categories、 based on the distance and configuration of nearby power lines、 to the subjects' main residences (for 416 case patients and 416 controls) and to those where the family had lived during the mother's pregnancy with the subject (for 230 case patients and 230 controls).
各416の症例と対照に対して、の送電線の構成や送電線と家の距離などからワイヤ・コードのコンピュータ判定で行った。また各230の症例と対照に対しては、母親が妊娠中に住んでいた家を対象にして、研究を行った。　

Results 結果：　
The risk of childhood ALL was not linked to summary time-weighted average residential magnetic-field levels、 categorized according to a priori criteria.
当初の研究課題設定にのっとり行った住環境における時間に重み付けをした平均磁界値と発ガンの関係は見出せなかった。

The odds ratio for ALL was 1.24 (95 percent confidence interval、 0.86 to 1.79) at exposures of 0.200 µT or greater as compared with less than 0.065 µT.

0.065μT以下と比較して0.2μT以上の磁界暴露群では、急性小児白血病増加のオッズ比は１．２４（９５％信頼区間：０．８６−１．７９）であった。　

The risk of ALL was not increased among children whose main residences were in the highest wire-code category (odds ratio as compared with the lowest category、 0.88; 95 percent confidence interval, 0.48 to 1.63).
ワイヤ・コード　での解析でも、高暴露群でのオッズ比は０．８８（９５％信頼区間：０．４８−１．６３）であり、小児急性白血病のリスクの増加はなかった。　

Furthermore, the risk was not significantly associated with either residential magnetic-field levels or the wire codes of the homes mothers resided in when pregnant with the subjects.
さらに、母親が妊娠中に住んでいた住環境における実測の磁界強度と、ワイヤ・コードとも有意な関連性はなかった。　

Conclusions　結論：　
Our results provide little evidence that living in homes characterized by high measured time-weighted average magnetic-field levels or by the highest wire-code category increases the risk of ALL in children. 
この研究から、住環境における時間で重み付けをした平均値を用いた磁界暴露とワイヤ・コードでの判定では、子供の急性白血病のリスクの増加は見られなかった。　

コメント：　
この研究者の結論とは別に、この研究データには、0.4μT以上の高い磁界暴露では、白血病のリスク増加がみられることから、他の疫学研究者は、この研究は磁界が小児白血病のリスクを増加させることを検証した研究報告であると、理解されることがある。　

データの一部を引用：　 実測した磁界強度と白血病のリスク

磁界強度　μT	症例数	対照数	オッズ比
0.065以下	267	285	1.00
0.065-0.099	123	117	1.10(0.81-1.50)
0.10-0.199	151	143	1.10(0.83-1.48)
0.20以上合算	83	70	1.24(0.86-1.79)
内訳0.20-0.299	38	42	0.92(0.57-1.48)
0.30-0.399	22	17	1.39(0.72-2.72)
0.40-0.499	14	5	3.28(1.15-9.39)
0.50以上	9	6	1.41(0.49-4.09)

　この表からわかるように、２mＧ以上でまとめるとリスクの増加はない。
しかし、４ｍＧ以上という細かい数字を見れば、リスクの増加があると見ることができるデータが包含されている。

データを引用　ワートハイマーのワイヤ・コードでの解析結果

ワイヤ・コード	症例数	対照数	オッズ比
UG＋VLCC	175	175	1.00
OLCC	116	114	1.07(0.74-1.54)
OHCC	87	87	0.99(0.67-1.48)
VHCC	24	26	0.88(0.48-1.63)

　この表からわかるように、ワイヤ・コードでの解析では、リスクの増加は見られなかった。

以上　興味のある方は、原著全文を読んでください。

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３５．Stevensらの1996年メラトニン仮説の論文

記：2019-12-20

EMF-Portalにあった情報です。

掲載誌: Environ Health Perspect 1996; 104: 135-140
タイトル：The melatonin hypothesis: electric power and breast cancer.
メラトニン仮説：電力と乳がん
著者: Stevens RG, Davis S

概要：
乳がんは、現代社会の疾病である。社会が工業化すると共に、リスクが増大し、しかも工業化に伴う多種多様な変化のどれがこの疾病を促進しているかは不明である。
現代社会の1つの重要な特徴に電力の広範な使用である。
電力は夜間照明（LAN）や電気や磁界（EMF）を産みだし、これらのどれかまたはどれも、松果体機能およびその主要ホルモンであるメラトニンを変化させる可能性があり、それがおそらく乳がんリスクを増大させている。

10年前に提示されたこの仮説は、現在多くの実験的および疫学的な注目を集めている。
この仮説に付随する状況には、光がメラトニンに及ぶす影響、EMFのメラトニンへの影響、メラトニンが乳がんに及ぼす影響の3つの側面がある。

最大のものは光のメラトニンへの影響である。
ヒトの体内で夜間に上昇する正常なメラトニンは十分な強度の光で抑制される。
実験動物ではメラトニンが乳がんに及ぼす影響の証拠は強いが、ヒトでの証拠はわずかであり、収集が難しい。

一番弱い付随状況は、EMFのメラトニンへの影響である。
6つの研究所が動物での抑制の知見を発表してきたが、一致しておらず、ヒトに関するデータは発表されていない。

仮説に直接影響する証拠は希だが関心を引いている。
2つの研究所から、ラットで化学的に誘発した乳がんで、弱交流磁界による実質的な増加を示すデータを発表された。
疫学的な証拠は非常に限られるが、いくつかの裏付けも得られている。
電力が乳がんに及ぼす影響には深い意味がある可能性があり、この可能性を継続研究する値がある。

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３５Ａ．石堂ら2001年細胞でのメラトニン研究

記：２０１９−１２−２０

掲載誌：Carcinogenesis, Vol. 22, No. 7, 1043-1048, July 2001
論文名：Magnetic fields (MF) of 50 Hz at 1.2 µT as well as 100 µT cause uncoupling of inhibitory pathways of adenylyl cyclase mediated by melatonin 1a receptor in MF-sensitive MCF-7 cells
研究者；Masami Ishido, Hiroshi Nitta and Michinori Kabuto

概要：
Magnetic fields (MF) of 60 Hz at 1.2µT were previously shown to inhibit the antiproliferative）effect of melatonin on MCF-7 cells (Liburdy,R.P., 1993, J. Pimeal Res. 14, 89–97).

60Hz1.2μTの磁界はMCF-7細胞を使った実験で、メラトニンの増殖抑制機能を抑制することが知られている（Liburdyの1993年の研究）。

In addition, three laboratories (Blackman, C.F. and Benane, S.G., et al:) independently reported results consistent with this finding.
加えて、3つの試験所で独立して行われた試験でも同じ結果が得られている。

In this study, we investigated the molecular basis of the biological effects of MF using MCF-7 cells.
この研究ではMCF-7細胞の生体効果の分子的な検討を行った。

Only 1a melatonin receptors were identified by the [125I] melatonin binding assay and RT–PCR analysis.
1aメラトニンレセプタのみを、メラトニン結合分析とRT-PCR分析で、抜き出した。

Moreover, preceding exposures to MF of 100µT for 3, 5 and 7 days blocked the melatonin-induced inhibition of cAMP accumulation in a time-dependent manner, while none of the melatonin receptor functions or GTPase and adenylyl cyclase activities were affected.
さらに、100μＴの磁界暴露に先立って、3、5、7日、間時間依存法で、メラトニンによって誘導されるcAMPの蓄積の抑制をとめた。

Estrogen-evoked cell proliferation was not altered by MF either.
エストロゲンによって引き起こされる細胞増殖は磁界によって影響を受けなかった。

Exposure to 1.2µT MF exerted the same effects on the melatonin-signaling pathway as that to 100µT.
1.2μＴの磁界は、100μＴの磁界と同様に、メラトニンの信号の反応に同じ影響を与えた。

Thus, this is the first study to provide evidence that MF may cause uncoupling of signal transduction from melatonin receptors to adenylyl cyclase.
この研究は、磁界がメラトニンレセプタからadenylyl cyclaseへの信号伝達機能を解き放つことになるかもしれないことを示す証拠を提供する最初の研究である。

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３５B．Grahamらの2001年メラトニン仮説の研究　

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた。　作成；　２００３−３−２０　

掲載誌：Environmental Health Perspectives Volume 109, Number 5, May 2001 　
論文名：Examination of the Melatonin Hypothesis in Women Exposed at Night to EMF or Bright Light 　
　　　　　夜間の電磁界・明るい光への暴露による女性のメラトニン仮説の検証、
研究者；Charles Graham, Mary R. Cook, Mary M. Gerkovich, and Antonio Sastre
　　　　　Midwest Research Institute, Kansas City, Missouri, USA

Abstract　概要
It has been hypothesized that the increased incidence of breast cancer in industrial societies is related to greater exposure to power-frequency electric and magnetic fields (EMF) and/or the presence of high levels of light at night (LAN).
先進工業社会における乳がんの増加は、電力周波数の電磁界への暴露もしくは夜間に明るい光を浴びているためであるという仮説がある。

EMF and LAN are said to reduce circulating levels of the hormone melatonin which, in turn, allows estrogen levels to rise and stimulate the turnover of breast epithelial stem cells and increase the risk for malignant transformation.
電磁界・夜間の光はメラトニンを減少させ、そして、悪性の組織変性を増加させるといわれている。

Three laboratory-based studies, in which a total of 53 healthy young women were exposed at night to EMF or to LAN under controlled exposure conditions, were performed to determine whether such exposures reduce melatonin and are associated with further alterations in estrogen. 　
合計53名の健康な若い女性を対象に、夜間の電磁界暴露と光の暴露によって、メラトニンが減少し、エストロゲンに影響があるか調査した。

All-night exposure to industrial-strength magnetic fields (60 Hz, 28.3 µT) had no effect on the blood levels of melatonin or estradiol.　
夜間の磁界暴露（６０Ｈｚ　28.3μＴ）は　血中のメラトニン、エストラディオールの量に変化はなかった。　

In contrast, nocturnal melatonin levels were profoundly suppressed, and the time of peak concentration was significantly delayed in women exposed to LAN, regardless of whether they were in the follicular or luteal phase of the menstrual cycle.
対象的に、明るい光を浴びた場合は夜間のメラトニンの量は抑制され、ピークとなる時間も大きく遅れた。　　

These changes, however, were not associated with alterations in point-for-point matching measures of estradiol. 　

Women who chronically secrete high or low amounts of melatonin each night (area-under-curve range: 86-1,296 pg/mL) also did not differ in their blood levels of estradiol. 　
慢性的にメラトニン分泌の量が多い人と少ない人で検討したが、血中のエストラディオールの量には差異がなかった。　

Taken together, these results are consistent with a growing body of evidence which generally suggests that environmental EMF exposure has little or no effect on the parameters measured in this report. 　
これらのことから、環境中の電磁界暴露は、影響がないといえる。　

Environ Health Perspect 109:501-507 (2001). [Online 9 May 2001]　

注：全文を読まずにこの概要だけでは、うまく仮訳ができない。
　この研究ではメラトニン仮説は否定されたことになる。

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３５Ｃ．Bakosらの2002年メラトニン仮説の研究

記：２０１９−１２−２０

EMF Portalにあった内容

掲載誌: Bioelectromagnetic 2002; 23 (3): 245-248
タイトル：One week of exposure to 50Hz, vertical magnetic field does not reduce urinary 6-sulphatoxymelatonin excretion of male Wister rats.
50Hzの垂直磁界への1週間の曝露は雄のWistarラットの尿中の6-スルファトキシメラトニン分泌を低減させない.
研究者: Bakos J, Nagy N, Thuroczy G, Szabo LD

この研究は、ラットの夜間尿中の6-スルファトキシメラトニン（6SM）の排出に対する100または50μTの50Hzの垂直磁界への曝露の影響を調べた。
12匹のオスのウィスターラットは、12:12時間の明暗条件下に置かれ、夜間尿は、4週間連続して代謝ケージ内で採取された。
ラット尿中の6SMの濃度を125 Iラジオイムノアッセイにより測定し、クレアチニン濃度に対して標準化した。

尿採取の最初の週の後、6匹のラットは、毎日8時間、100 Tまたは50μTの磁束密度の磁界曝露を1週間受けた。

その結果、尿中のメラトニンの一次代謝産物6SMの排出は、磁場曝露中およびその後において、有意な変化を示さなかった、と報告している。

研究目的：
ラットの6-スルファトキシメラトニンの尿中分泌に対する磁界曝露の影響を調査すること。

詳細情報
・6-スルファトキシメラトニンはメラトニンの主な代謝産物で、排泄された尿で容易に非侵襲的に判定できる。
・本研究では12匹の動物を6匹ずつ2群に分け、それぞれ50Hz 正弦波の磁界、磁束密度：100µT及び50µTに曝露した。
・明暗周期（12時間：12時間、PM6:00-AM6:00消灯）への2週間の馴化後、4週にわたって暗周期の終わりに夜間の尿を採取した。
・動物は2週目にAM8:00-PM4:00に磁界曝露した。

研究の結果；
・尿中のメラトニンの主な代謝産物である、6-スルファトキシメラトニンの分泌は、磁界曝露後に統計的に有意に変化しなかった。

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３５Ｄ．Davisらの2006年メラトニン仮説の研究

記：2019-12-20

EMFポータルのサイトにあった情報です。

掲載誌: Ann Epidemiol 2006; 16 (8): 622-631
タイトル：Effects of 60-Hz magnetic field exposure on nocturnal 6-sulfatoxymelatonin, estrogens, luteinizing hormone, and follicle stimulating hormone in healthy reproductive-age women: results of a crossover trial.
健康な生殖可能年齢の女性における夜間の6-スルファトキシメラトニン、エストロゲン、黄体形成ホルモン、及び卵胞刺激ホルモンに対する60Hz磁界曝露の影響：クロスオーバー試験の結果
研究者：Davis S, Mirick DK, Chen C, Stanczyk FZ

研究目的；
・居住環境磁界曝露は、正常な夜間のメラトニンレベルの上昇を攪乱し得ることと、これが乳がんのリスク上昇につながることが示唆されてきた。
・60Hz磁界曝露が、健康な閉経前の女性（20-45歳；n=132）における6-スルファトキシメラトニンの夜間の尿中レベルの低下、ならびに黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、エストロゲンのレベルの上昇と関連しているかどうかを調べること。

詳細情報：
・参加者の半数を、月経周期の黄体期初期から中期の間の連続する5夜、磁界曝露に割り当てた。翌月、参加者を偽曝露した。残りの半数の被験者については曝露の順序を逆にした。
・影響評価項目；内分泌の変化: 6-スルファトキシメラトニン、エストロゲン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンの夜間の尿中レベル
・曝露条件：60Hz 正弦波交流磁界、曝露量：最低0.5μT　最大1μT

研究の結果
・磁界曝露（住居での環境磁界より強い磁界）は、6-スルファトキシメラトニンのレベル低下と関連していたが、生殖ホルモンのレベルに変化は認められなかった。
・高齢、薬物投与、高い肥満度指数が、夜間の6-スルファトキシメラトニンのレベル低下と関連していた。

・この結果は、磁界曝露が夜間のメラトニンのレベル低下と関連しているという更なる証拠を提示しているが、そのような磁界曝露がエストロゲン、黄体形成ホルモン、または卵胞刺激ホルモンの尿中レベルの上昇を生じるという仮説を支持していない。
ゆえに、仮に磁界がメラトニンの作用を通じて乳がんの発生リスクに寄与しているとしても、本調査のデータは、そのようなリスクは部分的に、対応するエストロゲン、黄体形成ホルモン、及び卵胞刺激ホルモンの尿中レベルの上昇によって生じる、という仮説を支持していない。

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３５Ｅ．Seifpanahi-Shabanらの2016年メラトニン仮説の研究

記：２０１９−１２−２０

EMF Portalにあった内容

掲載誌: Int J Occup Environ Med 2016; 7 (3): 193-194
タイトル：Long-term Exposure to Extremely Low Frequency Electromagnetic Field and Melatonin Production by Blood Cells.
超低周波電磁界への長期曝露と血液細胞でのメラトニン生成
研究者: Seifpanahi-Shabani H, Abbasi M, Salehi I, Yousefpour Z, Zamani A

この報告は、40匹のウィスター雄ラットを曝露群、対照群（各n=20）に分け、曝露群には超低周波電磁界（ELF-EMF：50Hz、100µT）を1日2時間（10:00-12:00 am）、3ヶ月間曝露露し、曝露終了後の血清および全血培養上清中のメラトニンレベルを調べた。

その結果、血清および全血培養上清でのメラトニンレベルに曝露による変化は無かった。
しかし、全血をRPMI培地で培養した場合、血清に比べ培養上清中のメラトニンレベルが、曝露群および対照群の両方において約2.5倍高かったと報告している。
著者は、RPMI中のフィトヘマグルチニン（PHA）刺激により血液細胞でメラトニン合成が生じた可能性があると議論している。

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３６．職業的な電磁界暴露と自殺　

　　　　作成；２００３−３−２２　　

掲載誌：Journal of Occupational and Environmental Medicine　Volume 45 o Number 1 o January 2003　
論文名：An Exploratory Investigation of Suicide and Occupational Exposure　　
　　職業的な暴露と自殺の関係　
研究者：Edwin van Wijngaarden, PhD　

概要　
This exploratory study evaluated the association between suicide and occupational exposure electromagnetic fields, pesticides, and hydrocarbon solvents.
この研究では自殺と職業的な電磁界暴露、殺虫剤、炭化水素の溶剤との関係を調べた。

The study population comprised 11,707 suicide deaths and 132,771 eligible controls identified from United States death certificate files for the years 1991 and 1992.
1991-92年のアメリカの死亡診断書を利用し、11707件の自殺（症例）と132771件の対照を研究対象とした。　

Exposure assignment was based on job title reported on the death certificates.　
暴露は死亡診断書に記載された職業を用いた。職業的に電磁界に暴露すると想定される職業についていた人を症例とした。

Exposure to electromagnetic fields and pesticides was weakly associated with suicide risk, while little evidence for an increased risk was seen for hydrocarbon solvents.
職業的に電磁界に暴露している場合と殺虫剤を使用している職業についていた人は、自殺のリスクが少し上昇している。しかし、炭化水素の溶剤を使用している職業についていた人の自殺のリスク増加はなかった。

The association for electromagnetic field exposure was highest for suicide between the ages 20 and 35 (odds ratio; OR = 1.5), while the highest risk of suicide for pesticide exposure was seen between the ages of 35 and 49 years (OR = 1.5).　
電磁界による自殺のリスクは20-35歳の人で高く、オッズ比は1.5(CI:1.2-1.9)、35-49歳の人では殺虫剤がリスクとして高く、オッズ比1.50(CI:1.3-1.8)であった。　

Further investigation to replicate these findings seems warranted, using higher quality occupational data.　
より精密な職業暴露状況を把握した研究の継続が必要である。　

コメント：　
死亡診断書に記載された職業だけで、電磁界や溶剤、殺虫剤への暴露を推定しており、詳細な職業的な暴露評価が必要で、この研究だけでは結論は出せない。　
原著を見れば、アメリカを地域的に分けただけで、南部に対して西部に住むというだけで自殺のリスクはオッズ比1.4(CI:1.2-1.3)と増加している。　

研究者より論文のコピーを入手。 興味のある方は、原著を入手してください。

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３７．オランダの送電線とガンの疫学研究　1993年　

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた。　作成：　２００３−３−２３　

掲載誌：International Journal of Epidemiology, Vol 22, 9-15, 1993
論文名：Cancer mortality and residence near electricity transmission equipment: a retrospective cohort study
高圧送電線近傍に住むことと癌死亡率の関係の後ろ向きのコホート研究　
研究者：GH Schreiber, GM Swaen, JM Meijers, JJ Slangen and F Sturmans
Department of Epidemiology, University of Limburg, Maastricht, The Netherlands.

概要：　
Several studies in recent years have raised the possibility that exposure to extreme low frequency (ELF) electromagnetic fields may be hazardous to human health, in particular by the promotion or initiation of leukemia and other cancers.
最近の研究によれば、低周波電磁界への暴露が白血病やその他のガンのイニシエータやプロモータとして働き、人の健康に害があるかもしれないということが言われている。

To determine if this exposure creates a long-term hazard to the public, the mortality of a group of people identified as having lived in an urban quarter of Maastricht in which two 150 kilo-Volt (kV) power lines and one transformer substation are located was investigated.
公衆の健康への長期的な障害があるかを調べるために、オランダのマーストリッヒ郊外で、二つの１５０ｋＶ送電線と変電所のある地域に住む人の死亡率を調査した。

Using the Dutch population registry it was possible to identify retrospectively 3549 inhabitants of the quarter who lived there for at least 5 years between 1956 and 1981.
住民登録から、1956-1981年の間に少なくとも5年間住んだ人、3549名を選択した。

Of these 1552 study subjects lived within 100 m of the electricity transmission equipment and were exposed to magnetic field intensity of 1.0-11.0 milli-Gauss.
1552名は、送電設備から１００ｍ以内に住んでいて、１−１０ミリガウスの磁界を浴びていた。

The overall standardized mortality ratio and cancer mortality ratios were either not or only slightly elevated.
磁界暴露による全体の標準化死亡率比とガン死亡率比の影響は、ともに影響しない、か、もしくは若干の増加であった。

The study does not support previously reported associations of exposure to ELF electromagnetic fields with leukemia, brain cancer and breast cancer.

この結果は、これまでの研究で言われている「低周波電磁界が白血病、脳腫瘍や乳がんを増発させる」ということを支持しない。

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３８．Finland大人のガン低周波磁界の関係1996年　

作成；２００３−３−２５　

掲載誌：BMJ 1996;313:1047-1051 (26 October)
論文名：Magnetic fields of high voltage power lines and risk of cancer in Finnish adults: nationwide cohort study
フィンランド全土における高圧送電線からの磁界と大人のガンリスクに関するコホート研究　
研究者：Pia K Verkasalo, researcher, Eero Pukkala, researcher Jaakko Kaprio, senior research fellow, Kauko V Heikkila, systems analyst, Markku Koskenvuo, professor

Abstract 
Objective: To investigate the risk of cancer in association with magnetic fields in Finnish adults living close to high voltage power lines.
目的；フィンランドの高圧送電線の近傍の住む大人が、磁界暴露によるガンリスクを調査する。

Design: Nationwide cohort study.　方式：全国を対象としたコホート研究

Subjects: 383 700 people who lived during 1970-89 within 500 meters of overhead power lines of 110-400 kV in a magnetic field calculated to be >/=0.01 µT. Study subjects were identified by record linkages of nationwide registers.
研究対象：110-400ｋＶ高圧送電線の５００ｍ以内に、1970−1989年に住んでいて、推定磁界暴露量が0.01μＴ以上である387700名で、住民登録から抜き出した。

Main outcome measures: Numbers of observed and expected cases of cancer, standardized incidence ratios, and incidence rate ratios adjusted for sex, age, calendar year, and social class--for example, by continuous cumulative exposure per 1 µT year--with 95% confidence intervals from multiplicative models for all cancers combined and 21 selected types.
主な指標：標準化罹患率、性・年齢などで調整した罹患率比、累積暴露との関係などで、21種のガンに関して解析を行った。

Results: Altogether 8415 cases of cancer were observed (standardized incidence ratio 0.98; 95% confidence interval 0.96 to 1.00) in adults. All incidence rate ratios for both sexes combined were non-significant and between 0.91 and 1.11.
8415件の全がんがあり、一般の罹患率に比較した送電線近傍に住む人の標準化罹患率は0.98である。それぞれのガンでみたときの罹患率比は、男女を合算した場合は、0.91から1.11であり、有意ではない。

Significant excesses were observed in multiple myeloma in men (incidence rate ratio 1.22) and in colon cancer in women (1.16).
有意なリスク増加は、男性における骨髄細胞腫で、罹患率比1.22、女性における肝臓がン（罹患率比1.16）であった。

Conclusions: Typical residential magnetic fields generated by high voltage power lines do not seem to be related to the risk of overall cancer in adults. The previously suggested associations between extremely low frequency magnetic fields and tumors of the nervous system, lymphoma, and leukemia in adults and breast cancer in women were not confirmed.
結論；高圧送電線の近傍に住み磁界に暴露している大人の住民に、リスクの増加は、全般的に見れば、ない。低周波磁界暴露による脳腫瘍、リンパ腫、白血病、女性の乳がんのリスクが増加するという過去の研究を、本研究では確認できなかった。

原著にあるデータの一部
１．累積暴露量の頻度　
Cumulative exposure (µT years)　　　頻度　人・年（割合％）　
0.20以下 　 2 040 700 　(80.2)
0.20-0.39 222 800　　(8.8)　
0.40-0.99 170 200 (6.7)
1.00-1.99 61 700 (2.4)
2.00以上 　 47 800　 (1.9)

２．ガンのリスク　　各欄に、症例数、標準化罹患率比　信頼性区間を示す

磁界暴露 μT・年	全がん	脳腫瘍	白血病
	全症例数n=8415	全症例数n = 301	全症例数n = 203
0.20以下	6393;0.98(0.96-1.01)	238;0.94(0.82-1.06)	156;0.96(0.82-1.13)
0.20−0.39	877;0.98(0.91-1.04)	35;1.10(0.77-1.53)	23;1.06(0.68-1.60)
0.40−0.99	695;0.97(0.90-1.04)	16;0.64(0.37-1.04)	15;0.87(0.49-1.43)
1.00−1.99	230;0.89(0.78-1.01)	5;0.55(0.18-1.28)	5;0.81(0.26-1.88)
2.00以上	220;0.92(0.81-1.05)	7;0.92(0.37-1.89)	4;0.71(0.19-1.81)

筆者の注：
累積磁界暴露で解析しているので、平均磁界暴露量が不明である。
調査対象期間が長いので、同一場所に最低５年住んでいるとすれば、最上位の高暴露群である2μT・年の場合は、0.４μTが平均磁界暴露であると仮定すれば。他の疫学調査と略一致するカットポイントとなる。

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３９．Ahlbomの磁界と小児がンのプール分析

「0.4μＴ以上の低周波磁界で小児がンのリスク2倍」という元になった論文です。

概要に仮訳をつけた。　作成：　２００３−４−４　

掲載誌：British Journal of Cancer. September 2000, Volume 83, Number 5, Pages 692-698
論文名；A pooled analysis of magnetic fields and childhood leukemia
　　　　磁界と小児がンのプール分析　
研究者：A Ahlbom, N Day, M Feychting, E Roman, J Skinner, J Dockerty, M Linet, M McBride, J Michaelis, J H Olsen, T Tynes and P K Verkasalo

Abstract：概要
Previous studies have suggested an association between exposure to 5060 Hz magnetic fields (EMF) and childhood leukemia.
過去の研究では、５０・６０Ｈｚ磁界暴露と小児白血病の関係は提起されていた。

We conducted a pooled analysis based on individual records from nine studies, including the most recent ones.
本研究では、最近の研究を含んで9件の個々に行われてきた研究を、一括してプール解析を行った。

Studies with 24/48-hour magnetic field measurements or calculated magnetic fields were included.
24・４8時間磁界測定を行った研究、磁界暴露を計算で推定した研究などを含んでいる。
We specified which data analyses we planned to do and how to do them before we commenced the work.
研究の着手に先立って、どのデータを、どのように解析するかを検討した。

The use of individual records allowed us to use the same exposure definitions, and the large numbers of subjects enabled more precise estimation of risks at high exposure levels.
磁界暴露評価が同じ状態である個々に行われた研究データを使用して、多くの症例として合算することから、高曝露群において、より厳密な評価を行うことができた。

For the 3203 children with leukemia and 10 338 control children with estimated residential magnetic field exposures levels < 0.4 T, we observed risk estimates near the no effect level, while for the 44 children with leukemia and 62 control children with estimated residential magnetic field exposures 0.4 T the estimated summary relative risk was 2.00 (1.273.13), P value = 0.002).
3203の小児白血病の症例と10338の対照群から、住環境下で推定値0.4μＴ以下の暴露ではリスクの増加はない。推定値0.4μＴ以上の磁界暴露群は、小児白血病の症例が44件あり、対照群は62件であり、相対リスクは2.00（信頼区間：1.27-3.13）となった。

Adjustment for potential confounding variables did not appreciably change the results.

交絡因子の影響はなかった。
For North American subjects whose residences were in the highest wire code category, the estimated summary relative risk was 1.24 (0.82-1.87). Thus, we found no evidence in the combined data for the existence of the so-called wire-code paradox.
北米で行われた研究を対象に,ワイヤ・コードで解析を行った。もっとも高曝露とされる群での相対リスクは1.24(信頼区間0.82-1.87)であり,ワイヤ・コードとの相関は見られなかった。

In summary, the 99.2% of children residing in homes with exposure levels < 0.4 T had estimates compatible with no increased risk, while the 0.8% of children with exposures 0.4 T had a relative risk estimate of approximately 2, which is unlikely to be due to random variability.
まとめると、99.2％の子供は住環境下で0.4μＴ以下の磁界暴露であり、リスクの増加はなかった。一方、0.8％の子供は0.4μＴ以上の磁界暴露を受け、リスクが2となり、偶然の結果であるとはいえない結果となった。

The explanation for the elevated risk is unknown, but selection bias may have accounted for some of the increase. 　
何がこのリスクを増加させているのかは定かではない。リスク増加が「選択バイアス」の可能性がある。

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４０．　磁界と大人の白血病のリスク　

　アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた　作成：２００３−４−１０　

掲載誌：American Journal of Epidemiology, Vol 128, Issue 1 10-20,1988
論文名：Acute nonlymphocytic leukemia and residential exposure to power frequency magnetic fields　
住環境下の電力周波数磁界暴露と急性非リンパ性白血病のリスク
研究者：RK Severson, RG Stevens, WT Kaune, DB Thomas, L Heuser, S Davis and LE Sever
Japan-Hawaii Cancer Study, Kuakini Medical Center, Honolulu 96817.

概要：
Recent research has suggested that non-ionizing radiation in the form of power-frequency magnetic fields may play some role in carcinogenesis in general and in acute nonlymphocytic leukemia in particular.
最近の研究によれば非電離放射線は、特に全・急性非リンパ性白血病に関して、ある種の発ガン原性を持っているかもしれないといわれている。

Much of the epidemiologic evidence is preliminary in nature and the methods of previous studies have been criticized.
これまでの多くの疫学研究結果は予備的なものであり、批判されてもいる。

In order to further evaluate this hypothesis, a population-based case-control study of adult acute nonlymphocytic leukemia and residential exposure to power-frequency magnetic fields was carried out in western Washington state.
これらの仮説を検証するために、成人の急性非リンパ性白血病と住環境下における電力周波数磁界暴露との関係を、ワシントン州西部において、調査した。

Analyses were based on 114 cases who were newly diagnosed from 1981 to 1984 and identified from a population-based cancer registry, and 133 controls who were chosen from the study area by random digit dialing.
1981年から1984年にかけて新たにがんと診断された114の症例を全人口を対象としたがん登録から抜き出した。そしてランダムダイヤルで133の対照群を選択した。

Magnetic field exposure was estimated from external electrical wiring configurations within 140 ft (42.7 m) of each subject's residence.
磁界暴露は研究対象者の住居の４２．７ｍ以内にある送電線・配電線の状況から判定した。

In addition, magnetic fields were measured inside the subject's residence at the time of interview.
加えて、研究対象者とのインタビューのときに、家の中で磁界を測定した。

Neither the directly measured magnetic fields nor the surrogate values based on the wiring configurations were associated with acute nonlymphocytic leukemia.
磁界の実測値で解析しても、送電線・配電線から推定した磁界暴露で解析しても、急性リンパ性白血病との関係は見られなかった。

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４１．磁界暴露と子供の脳腫瘍リスク　

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた　　作成：　２００３−４−１１

掲載誌：American Journal of Epidemiology, Vol 143, Issue 2 105-119, 1996
論文名：Los Angeles study of residential magnetic fields and childhood brain tumors
住環境下の磁界暴露と子供の脳腫瘍との関係に関するロスアンジェルス地区の研究
　
研究者：S Preston-Martin, W Navidi, D Thomas, PJ Lee, J Bowman and J Pogoda
Department of Preventive Medicine, University of Southern California School of Medicine, Los Angeles 90033-9987, USA.

概要：
A measurement study of residential magnetic fields and brain tumors in children that was added onto an ongoing case-control interview study in Los Angeles County, California, include 298 children under age 20 years with a primary brain tumor diagnosed from 1984 to 1991 and 298 control children identified by random digit dialing.

現在進行中のロスアンジェルス地区における症例対照研究の一環として、住環境下における磁界の実測値による暴露評価を行い、子供の脳腫瘍のリスクを解析した。1984-1991年の間に20歳以下で脳腫瘍（他の部位のがんからの転移ではない）と診断された298の症例と、ランダムダイヤルで選択した298の対照と研究対象とした。

Magnetic fields were determined for all Los Angeles homes where these 596 children lived from conception to diagnosis (1,131 homes) by mapping and coding the wiring configurations outside the home and by taking a series of exterior spot and profile measurements.

妊娠からがんと診断されるまでに596名の子供が住んでいたロスアンジェルス地区の住宅、合計１,１３１軒を対象に,イヤ・コードの状況把握と、家の周囲でのスポット測定と空間分布の調査で、磁界暴露を評価した。

In addition, for a subset of subjects (35%; 211 homes) 24-hour measurements were taken in the child's room and one other room.
加えて、研究対象の３５％、211名に対しては、子供部屋とその他のもうひとつの部屋での24時間連続磁界測定を行った。

Although measured fields are consistently highest in the highest of the five wire code categories, fields in homes in this category are much lower in Los Angeles than in Denver, where the code originated.
磁界強度は、ワイヤ・コードで最も高いとされるカテゴリーでは、実測値が最も高い数字を示しているが、この強度はデンバー（ワイヤ・コードでの評価を提唱した最初の研究）での値に比べると低かった。

Brain tumor risk appears not to relate to measured fields inside (p for trend for child's room = 0.98) or outside (p for trend for front wall = 0.82) the home.
脳腫瘍のリスクは実測した磁界で解析すると、屋内での磁界との関係では０．９８、屋外での磁界との関係では０．９８であった。

An apparent increase in risk among children living at diagnosis in homes with underground wiring appears to be an artifact introduced by using current controls for historical cases because this apparent excess risk disappeared in an analysis restricted to the later years of the study when cases and controls were accrued concurrently.
ワイヤ・コードで「地中配線」（三浦注：ワイヤ・コードでは最も磁界暴露が低いとされるカテゴリー）で、脳腫瘍のリスク増加が見られたが、これは他の要因による結果であろう。なぜならば、その後の関連した研究ではこのリスクの増加は消え去っているからでる。

Our study does not show an overall association of pediatric（小児の）brain tumors with measured fields, with "very high" wiring configurations, or with any of several other potential sources of exposure, such as use of various electrical appliances, but the prevalence of high fields (> 2mG) and very high fields (> 3mG) in Los Angeles homes was too low to detect a moderate effect of the magnitude reported in other studies.

今回の研究では、実測した磁界強度とも、ワイヤ・コードで「High」というカテゴリーとも、同じく「Very　High」というカテゴリーとも、その他の可能性のある磁界暴露（例、色々な電気機器の使用）などと子供の脳腫瘍の関連は見出せなかった。他の研究で報告されているがんリスクの増加ということを検出するには、ロスアンジェルス地区では２mＧを超えたり、３mＧを超えたりする環境にすんでいる人の割合がかなり低かったといえる。

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４２．磁界暴露と妊娠異常　（16ミリガウスで妊娠異常）

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた　作成；　２００３−４−１８　
この項を大幅に修正・加筆した：２００９−２−４　　

16ミリガウス以上に磁界曝露で妊娠異常という情報がしばしば登場します。
以下はその元になったネタでです。

1）原典　概要を仮訳しました。

掲載誌：PIDEMIOLOGY 2002　13:9-20
論文名：A Population-Based Prospective Cohort Study of Personal Exposure to Magnetic Fields during Pregnancy and the Risk of Miscarriage
妊娠中の磁界への個人暴露と流産に関する前向きのコホート研究

研究者：De-Kun Li; Roxana Odouli; Soora Wi; Teresa Janevic; Ira Golditch; T. Dan Bracken; Russell Senior; Richard Rankin; Richard Iriye

概要：
磁界暴露が流産に関係するかを調査するために、大きな健康保険組織の属する女性を対象に、前向きのコホート研究を行った。
選択バイアスを少なくするために組織に属する全員を対象とするPopulation-Based（地域住民全般を対象とした）なコホート研究である。

サンフランシスコ地区に住み、少なくとも妊娠10週間でpositive Pregnancy test（意味？）の女性にこの研究への参加を呼びかけた。
インタビューによって、流産のリスク要因とその他の交絡因子に関する情報を入手した。
参加者には行動記録とともに、磁界測定器を24時間携帯してもらった。

出産の状況は健康保険組合のデータベースから得られ、医学的な状況のチェックを行い、電話で確認も行った。

磁界と流産の関係を解析した。
最終解析の対象となったのは969件である。
結果として、磁界の平均値で解析した場合は、磁界と流産の関係はなかった。

磁界暴露の最大値で、16ミリガウス以上の暴露を受けている場合は、流産のリスクが大きくなった。
最大磁界16ミリガウス以下に対して16ミリガウス以上の暴露では、流産のリスクは1.8倍（CI:1.2-2.7）であった。
この関係は妊娠初期（10週間以前）の流産では強い関係になり、相対危険度は2.2（CI:1.2-4.0）、以前に流産をしたことのある流産しやすい女性の間では、相対危険度は3.1（CI:1.3-7.7）となった。

24時間測定を行った日の行動が通常の行動を代表していないケースを除去して解析を行うと、磁界暴露と流産の関係はいっそう強くなり、16ミリガウスを超えると相対危険度は2.9（CI:1.6−5.3）、初期の流産では相対危険度は5.7（CI:2.1−15.7）、流産しやすい人との関係では相対危険度は4.0(CI:1.4-11.5)となった。

この研究結果から、ある一定以上の磁界への暴露（可能性としては16ミリガウス以上という数字）、平均値ではなく、瞬間的な最大値への暴露が流産のリスク増加となっているといえる。
この成果はコントロールしていないバイアス要因や測定していない交絡因子によるものであるとはいいがたい。

2）BEMS会員ニュース2002年March/April号に以下の記事があります。

最近の電磁波と妊娠異常の疫学研究に対する英国Dollのコメント
Epidemiology　1月号に発表されたLiらの研究に関して、英国NRPBはコメントを発表した。

この疫学調査は、3400名を対象とした研究。
TWA（時間で重み付けを行った曝露平均値）では、妊娠への影響はみられなかったが、最大磁界曝露を指標とすれば、16ミリガウスより大きい瞬間的な最大曝露を受けた人では、すべての流産に関しては、リスクは1.8倍（CI 1.2-2.7）で有意な影響が見られた　という報告である。

この研究では、参加率が低い。症例では呼びかけに対して51%が研究に応諾し、対照では55%が応諾しているに過ぎず、セレクションバイアスが排除されていない。　
症例では、応諾した人の16.1%は高ワイヤ・コードに住み、協力しなかった人の7.3%は高ワイヤ・コードに住んでいた。
対照では、13.2%と11.7%と大差はなかった。　

この研究は、コホート研究で、TWAと妊娠を研究すべく、磁界の曝露調査などを行った。
TWAでの磁界曝露では、3ミリガウス以上曝露していた場合のリスクは1.2（CI 0.7-2.2）であり、有意な影響は見られなかった。

しかし、この疫学調査研究者は、これでは面白くないとして、当初の計画にはない他の曝露条件との関連性を探り、最大曝露値との関連を見出した。
この手法はコホート研究としては正しい手法とはいえない。

3番目の欠点は、異常妊娠した症例の半分以上が、異常妊娠を起こしてから磁界曝露量を測定しているので、正しいコホート研究ではない、セレクションバイアスが排除されない。

3）BEMSJの見解
最大値を厳格に把握するには、細心の注意が必要です。
ある機器に一時的に近接し、離れた場合に、大きな瞬間的な磁界を浴びていても、その最大値が測定器にきちんと記録されないと、正しい解析はできません。

EMDEXはもともと長期間にわたって曝露磁界の記録を残すことを念頭において作られた測定器で、24時間携帯しても重さをかんじないようにと、軽く作っています。短い時間間隔で大量のデータを記録しようとすれば、測定器は大きくなります。
そこで、数秒に１回程度の測定に限定した機能しか持っていません。
したがって、真に最大値を把握しようとすれば、最初からそのように測定条件を定め、そうした機能をもつ測定器を選択しなければなりません。

多分、Liの研究では、個々の妊婦毎の曝露した瞬間的な真の最大値を把握しきれていないでしょう。

こうしたことから、このLiの研究は、予備的な研究とはいえるが、この研究結果である最大値16ミリガウス以上で妊娠に異常・・・・ということは、参考データでしかないと考えられます。

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４３．磁界への曝露が多いと流産のリスクが増す、という疫学研究　

　作成：　２００３−４−２３　更新：２０２０−７−２４

＊アブストラクトを入手　仮訳をつけた。

掲載誌：EPIDEMIOLOGY 2002;13:21-31
論文名：A Nested Case-Control Study of Residential and Personal Magnetic Field Measures and Miscarriages
住環境および個人の磁界への暴露と流産のリスクに関する症例対照研究

研究者：Geraldine M. Lee; Raymond R. Neutra; Lilia Hristova; Michael Yost; Robert A. Hiatt

From the Environmental Health Investigations Branch California Department of Health Services, Oakland, CA;

概要：
We conducted a nested case-control study (177 cases, 550 controls) to assess the relation between retrospective magnetic field measures and clinical miscarriage among members of the northern California Kaiser Permanente medical care system.
北カリフォルニアのメデカルケアシステムの会員を対象として、後ろ向きの磁界暴露評価と流産の官益を調査した、症例は１７７、対照は550であった。　

We also conducted a prospective sub study of 219 participants of the same parent cohort to determine whether 12-week and 30-week exposure assessments were similar.
さらに、この研究対象集団から、219名の協力者を得て、前向きの研究を行った。12週間と30週間の暴露評価結果でどうなるかを研究した。

We evaluated wire codes, area measures, and three personal meter metrics: (1) the average difference between consecutive levels (a rate-of-change metric), (2) the maximum level, and (3) the time-weighted average.
ワイヤ・コード、地域の暴露レベル、そして個人暴露に関しては変動の割合、最大値、時間に重み付けした平均を評価指標とした。

For wire codes and area measures we found little association.
ワイヤ・コードと地域の暴露レベルでは流産と磁界暴露との関連はなかった。　

For the personal metrics (30 weeks after last menstrual period), we found positive associations.
個人暴露（最後の月経から30週間後の暴露レベル）ではポジティブな関係があった。
Each exposure was divided into quartiles, with the lowest quartile as referent.
暴露強度を4分割し、最も低い暴露群を参照レベルとした。

Starting with the highest quartile, adjusted odds ratios and 95% confidence intervals were 3.1 (95% CI = 1.6-6.0), 2.3 (95% CI = 1.2-4.4), and 1.5 (95% CI = 0.8-3.1) for the rate-of-change metric; 2.3 (95% CI = 1.2-4.4), 1.9 (95% CI = 1.0-3.5), and 1.4 (95% CI = 0.7-2.8) for the maximum value; and 2.3 (95% CI = 1.2-4.4), 1.9 (95% CI = 1.0-3.5), and 1.4 (95% CI = 0.7-2.8)for the time-weighted average.
それぞれのオッズ比は、高い暴露群から低いほうに向かってそれぞれ
曝露の変動の激しさでは3.1 (CI：1.6-6.0)、 2.3 (CI：1.2-4.4)、 1.5 (CI： 0.8-3.1)
最大値では、2.3 (CI：1.2-4.4)、 1.9 (CI：1.0-3.5)、 1.4 (CI：0.7-2.8)
時間で重み付けした平均値では2.3 (CI：1.2-4.4)、 1.9 (CI:1.0-3.5)、 1.4 (CI: 0.7-2.8)であった。　
量―反応関係にある。　

The odds ratio conveyed by being above a 24-hour time-weighted average of 2 milligauss was 1.0 (95% CI = 0.5-2.1).
24時間の時間に重み付けした平均暴露で２ミリガウスを超えていると、オッズ比は1.0（CI:0.5-2.1）であった。

Exposure assessment measurements at 12 weeks were poorly correlated with those taken at 30 weeks.
12週間の磁界暴露評価と、30週間の磁界暴露評価では相関がとれなかった。

Nonetheless, the prospective sub study results regarding miscarriage risk were consistent with the nested study results.
しかしながら、この前向きのサブ研究で得られた流産リスクは、他の研究と同じ結果となっている。

＊EMF Portalのサイトにあった情報　　一部修正加筆して紹介

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
掲載誌: Epidemiology 2002; 13 (1): 21-31
タイトル：A nested case-control study of residential and personal magnetic field measures and miscarriages.
住居と個人磁界計測と流産に関するコホート内症例対照研究
研究者: Lee GM, Neutra RR, Hristova L, Yost M, Hiatt RA

我々はコホート内症例対照研究（177人の症例、550人の対照）を実施し、北カルフォルニアカイザーパーマネント医療ケアシステムからの流産例と回顧的（後ろ向き：過去を思い出して）な磁界尺度との関連性を評価した。

また、12週間曝露と30週間曝露が似ているかどうかを究明するために、同じ親のコホートから219人の参加者に対して前向きのサブ研究も実施した。

ワイヤコード、エリアでの測定値、および３つの個人曝露メータによる測定結果で評価した：(1)連続した階層間の差の平均値（測定変化率）、(2)最大値レベル、および(3)時間加重平均。ワイヤコードおよびエリアでの測定値に対して、関連性は発見できなかった。

個人測定指標（最後の月経日後30週間）に対して、はっきりした肯定的な関連性を発見した。

各曝露は、４分位に分割された。4分位の最低位の曝露を基準（参照）レベルとした。

最高４分位から始めて、調整されたオッズ比と95％信頼区間(CI)は以下の通り、
測定変化率に対して、3.1(95％CI＝1.6-6.0)、2.3（95％CI＝1.2-4.4）、および1.5（95％CI＝0.8-3.1）；
最大値に対して、2.3（95％CI＝1.2-4.4）、1.9（95％CI＝1.0-3.5）、および1.4（95％CI＝0.7-2.8）；
時間加重平均に対して、1.7（95％CI＝0.9-3.3）、1.7（95％CI＝0.9-3.3）、および1.7（95％CI＝0.9-3.3）であった。

2mGの24時間加重平均値を超えることによるオッズ比は、1.0（95％CI＝0.5-2.1）であった。
12週時点での曝露評価測定は、30週時点での測定との相関は小さかった。
にも関わらず、流産の危険に関する前向きのサブ研究の結果は、コホート内症例対照研究の結果と一致した。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＊Ｆｕｌｌ　ｔｅｘｔを読むと
・この研究では、コホート内症例対照研究と、前向きの症例・非症例のサブ研究を行っている。

＊ＢＥＭＳＪのコメント：
・結果は、判りにくいが、以下にある様に、ワイヤコードでの解析は、関連性が見られなかった言える。
ワイヤコードで最も低い曝露状態（Ｂｕｒｒｅｄ）に対して、中位の曝露ではオッズ比1.5、1、3とリスクの増加は見られるが、最高位の曝露（ＶＨＣＣ）ではオッズ比：0であるからである。

・また、以下の表を見ると、時間加重平均の磁界曝露が、4分位に分割されている。
最低位が0.72ｍＧ以下、そして0.72−0.93ｍＧ、0.93ｍＧ−1.28ｍＧ、最高位で1.28ｍＧ以上となっている。
非常に狭い範囲、素人目に言えば、ほとんど同じような曝露レベルを、無理やりに4分割し、磁界曝露強度との関連を計算している。

3つのランクで、オッズ比が1.7とリスクの増加を見ているが、曝露量との量―反応関係が見られないことから、この研究で磁界曝露が流産に関連しているということは難しいと言える。

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４４．保育器内の磁界暴露と小児白血病　

　作成：２００３−４−２０　 更新：２０２０−７−２４

*アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた

掲載誌：EPIDEMIOLOGY 2002;13:45-49
論文名：Childhood Leukemia and Magnetic Fields in Infant Incubators
保育器での磁界への暴露と小児白血病
研究者：Karin C. Söderberg; Estelle Naumburg,; Gert Anger; Sven Cnattingius; Anders Ekbom; Maria Feychting　
From：the 1Institute of Environmental Medicine Sweden.　

概要：　

In studies of magnetic field exposure and childhood leukemia, power lines and other electrical installations close to the childrenｴs homes constitute the most extensively studied source of exposure.
磁界暴露と小児白血病の研究では、近在の高圧送電線や送電設備を磁界暴露源の対象としてきた。

We conducted a study to assess whether exposure to magnetic fields in infant incubators is associated with an increased leukemia risk. 　
今回の研究では幼児の保育器における磁界暴露が小児白血病の増加に関連していないかを調査した。　

We identified all children with leukemia born in Sweden between 1973 and 1989 from the national Cancer Registry and selected at random one control per case, individually matched by sex and time of birth, from the study base.
スウェーデンのがん登録から1973年から1989年に小児がンになった子供を抽出し、性別と年齢をマッチさせた対照群を選択した。

We retrieved information about treatment in infant incubators from medical records.
病院の記録から新生児保育器での保育状況の情報を入手した。

We made measurements of the magnetic fields inside the incubators for each incubator model kept by the hospitals.
病院にあった保育器の内部の磁界分布状況を調査した。

Exposure assessment was based on measurements of the magnetic field level inside the incubator, as well as on the length of treatment.
暴露評価は、保育器内部の磁界強度と、保育期間の長さでおこなった。

For acute lymphoblastic leukemia, the risk estimates were close to unity for all exposure definitions.
急性リンパ性白血病に関しては、全ての暴露評価に対してリスクの増加はなかった。

For acute myeloid leukemia, we found a slightly elevated risk, but with wide confidence intervals and with no indication of dose response.
急性骨髄性白血病に関しては、少しリスクの増加が見られたが、信頼性区間は広く、また量―反応関係は見られなかった。

Overall, our results give little evidence that exposure to magnetic fields inside infant incubators is associated with an increased risk of childhood leukemia.
全般として、新生児保育器における磁界暴露が小児白血病のリスクを増加させるという確証は得られなかった。

＊ＥＭＦ　Ｐｏｒｔａｌにあった情報

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
掲載誌: Epidemiology 2002; 13 (1): 45-49
タイトル：Childhood leukemia and magnetic fields in infant incubators.
小児白血病と保育器中の磁界
研究者: Söderberg KC, Naumburg E, Anger G, Cnattingius S, Ekbom A, Feychting M

磁界曝露と小児白血病についての研究では、子供の居住近くの送電線や電気機器が曝露源として行われている。
保育器の磁界に曝露が小児白血病のリスクの増加と関係するかどうかの研究を行った。

1973-1989年にスウェーデンで生まれた白血病の子供をガン登録所から特定し、症例当たり1名の対照を無作為的に選び、それぞれは性別と誕生時をマッチングさせた。
また、診断書から保育器内の治療に関する情報を取得した。
病院内の保育器の磁界を測定した。

曝露の評価は、保育器内の磁界レベルと治療期間に基づいている。
急性リンパ球白血病の場合、全曝露条件でリスクは1に近かった。
骨髄白血病で、リスクが僅かに高いことがわかったが、信頼区間の幅が大きく、量反応関係もなかった。
総合的にみて、保育器内の磁界曝露は子供の白血病の増加と関係している証拠は少しもなかった。
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４４Ａ．職業的な曝露と乳がんのＧｏｏｄｍａｎの2002年研究

記：２０２０−７−２４

以下の研究がある。

掲載誌：Epidemiology. 13(1):50-58, January 2002.
タイトル：Evaluation of Potential Confounders in Planning a Study of Occupational Magnetic Field Exposure and Female Breast Cancer. 　
職業的な磁界曝露と女性乳がんの研究計画における交絡因子の検討
研究者：Michael Goodman; Michael Kelsh; Kristie Ebi; Jacqueline Iannuzzi; Bryan Langholz

Abstract: 概要
We examined potential confounding factors that, if unaccounted for, could possibly produce a spurious association in a study of breast cancer among women occupationally exposed to magnetic fields.
女性の職業的な磁界曝露と乳がんの研究において、もし原因不明であれば、偽りの関連性をもたらすかもしれない可能性のある交絡因子を検討した。

For each risk factor, we estimated strength of association, prevalence in the general population, and prevalence of the risk factor in the exposed group required to explain completely hypothetical odds ratios between occupational exposure to magnetic fields and breast cancer.
それぞれのリスク要因に対して、関連性の強さ、一般公衆での普及度、乳がんと職業的な磁界曝露のオッズ比完璧に仮説的に説明するために必要なリスク要因の普及度を推定した。

We performed similar analyses for two, three, four, and five confounding factors acting simultaneously.

また、同時に起こる2・3・4・5つの交絡因子に関しても同様な解析を行った。

Factors numerically capable of substantial confounding included obesity continent of birth, family history of breast cancer in a first-degree relative, densities on the mammogram, benign proliferative breast disease, history of cancer in one breast, and consumption of at least two alcoholic drinks per day.
交絡因子は数値で表記される重要な交絡因子であり、次のものを含んでいる、肥満、生誕地、原発性乳がん関するに家族歴、乳房X線撮影像の濃度、良性の増殖性乳がん病、乳がんの履歴、1日当たり少なくとも２杯のアルコールを飲んでいるか。

Nevertheless, only continent of birth, history of cancer, obesity, and consumption of alcohol could potentially be related to occupation.
それにも関わらず、生誕地・ガンの病歴・肥満・アルコールの摂取のみが、職業と関連している。

Uncontrolled confounders, either alone or in combination, could possibly account for odds ratios in the 1.2-1.3 range but were very unlikely to produce an odds ratio of more than 1.5.
個別であろうと組み合わせであろうと制御できない交絡因子はオッズ比を1.2から1.3の範囲で、最悪の場合は1.5に持ち上げる可能性がある。

A spurious negative association between magnetic fields and breast cancer could occur if the exposed group included a large number of immigrants from Asia and Africa.
曝露群にアジアやアフリカからの移民が多くなれば、磁界曝露と乳がんの偽陰性になる可能性がある。

ＢＥＭＳＪ注：この論文は難解である。
一般的な疫学調査において、交絡因子によって、関連性がないにも関わらず、オッズ比が１．２−１．３に、最悪の場合１．５になることをこの論文は意味している。
そうなれば、オッズ比が１．５より小さい程度の関連性を見つけた疫学調査の場合、交絡因子による可能性が否定できない場合は、そのまま結果を鵜呑みにはできない、ということになる。

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４５.低周波磁界が脳腫湯の発症を遅らせるという疫学研究

アブストラクトに対して仮訳をつけた。　作成；　２００３‐７−２０　

従来は磁界暴露が健康に悪い影響をもたらすという疫学調査があったが、この研究は逆で、磁界暴露が脳腫瘍の発生を遅らせる効果があるかもしれない、という報告である。
この報告はマイクロウエーブニュースにも掲載されている。

論文名：Elevated Residential Exposure to Power Frequency Magnetic Field Associated With Greater Average Age at Diagnosis for Patients with Brain Tumors　
住環境下における電力周波数磁界への曝露が脳腫瘍患者の平均診断時年齢を伸ばしている。
研究者：Chung-Yi Li et al: 台湾の研究者
掲載誌；Bio Electromagnetics 24:218-221, 2003.

To explore whether the age at cancer diagnosis was associated with residential exposure to magnetic field, we compared average ages at diagnosis for cases of leukemia, brain tumor, or female breast cancer with elevated exposure (magnetic flux density > 0.2 uT, or residential distance from major power lines < 100 m) to average ages at diagnosis for cancer cases with same diagnoses but with a background exposure (< 0.2 uT or > 100 m from major power lines).

癌と診断された年齢が住環境下における磁界暴露に関係しているか調査を行った。対象は白血病、脳腫瘍、女性乳がんである。0.2μT以上の高曝露もしくは主要な送電線の１００ｍ以内に住んでいる人が癌と診断された年齢の平均値と、0.2μT以下の背景曝露もしくは送電線から１００ｍ以上離れている場合とを比較した。

Comparing with brain tumor cases with background magnetic field exposure (n = 506), brain tumor cases with elevated exposure (n = 71) were 6 years older on average at diagnosis (P = 0.01).

脳腫瘍に関しては、磁界の高曝露（0.2μT以上）の症例は71名、背景曝露（0.2μT以下）群では506名を比較し、高曝露群では6歳年齢が高かった。統計的に有意であった。

The difference was greater for males (45.2 vs. 52.１ years, P = 0.01) than for females (44.3 vs. 48.2 years, P = 0.27).

この差は、男性ではより強い傾向にあり、高曝露；52.1歳、背景暴露：45.2歳で統計的に有意であった。女性では高曝露：48.2歳　背景曝露：44.3歳であった。　

No such phenomena at a significant level were observed for leukemia, female breast cancer, or a random sample of general population. 　
白血病、女性乳がん、無作為抽出した一般住民では、こうした関連は見られなかった。

We noted an association between magnetic field exposure and a greater mean age at diagnosis for brain tumors. 　
脳腫瘍に関しては、磁界暴露と脳腫瘍になる（診断される）時期の平均年齢とに関連があった。

Whether or not these phenomena suggest delayed occurrence of brain tumors following a higher than background residential magnetic field exposure deserves further investigation.
高磁界曝露が背景曝露（0.2μT以下）に比べて脳腫瘍の発生を遅らせる効果があるか否かに関してはさらなる研究が必要である。　

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４６．１６．７Ｈｚ磁界と小児白血病

アブストラクトのみ入手　仮訳をつけた。　作成；２００３−８−８　

掲載誌；British Journal of Cancer: March 2001, Volume 84, Number 5, Pages 697-699

論文名：Childhood acute leukemia and residential 16.7 Hz magnetic fields in Germany
ドイツにおける住環境下の１６．７Ｈｚ磁界暴露と小児急性白血病
研究者：J Schüz, J P Grigat, K Brinkmann and J Michaelis　
Institut für Medizinische Statistik und Dokumentation der Universität Mainz, D-55101 Mainz, Germany

Abstract　概要　
We observed a moderate but statistically non-significant association between magnetic fields (MF) and childhood leukemia.
磁界暴露と小児白血病とのわずかな、しかし統計的には有意ではない関係を見出した。

This is the first such study to cover residential exposure to 16.7 Hz (railway frequency) MF though based on few exposed subjects.
これは、電気鉄道で採用されている１６．７Ｈｚの磁界に関する最初の研究で、住環境下での暴露を受けている多くない(原文はfewであり、a fewではない？？)　人々を対象とした。

Our study does not exclude a small excess risk, but the attributable risk must be very low.
本研究結果は少ない過剰リスクがあることを排除しないが、リスクがあったとしても寄与率は低い。

It is reassuring that neglecting 16.7 Hz MF in childhood cancer studies appears to have little effect on findings.
磁界と小児がんに関する研究に際して、この１６．７Ｈｚ磁界を無視しても、研究に影響を与えないことがわかった。

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４７　スウェーデン電力事業従事者のコホート研究結果

スウェーデンの長期的調査で明らかに
出典：European Commission発行「JANUS」第27号 p.24

ELECTROMAGNETIC FIELDS DO NOT INCREASE THE RISK OF ILL-HEALTH
電磁界には健康への危険はない

Every Seventh worker at electrical power companies has experienced that her or his health has worsened. Noise at work was the main problem.
Linemen suffered very often from backache and knee pain.
There was no correlation between exposure for magnetic fields and health effects. Furthermore, the study showed that the fields did not increase reproductive hazards or the risk of a malformed foetus.
　電力会社の従事者の7人に1人は健康の悪化を経験している。その原因は主に職場での騒音にある。また架線工も腰痛や膝の痛みに苦しむことが多い。
しかし、磁界にさらされることと健康への影響との間には、相関がないことが調査で分かった。また磁界は生殖機能に障害を与えたり、胎児に奇形を起こしたりするリスクもないことが判明した。

A unique research project within the Swedish electrical power industry, has been carried out at the Swedish Institute for Work Life Research in Stockholm.
The researchers have made a prospective study.
A selected group of employees, a so-called cohort, was examined for a long period of time.
スウェーデン電力産業でユニークな研究プロジェクトが、ストックホルムのスウェーデン労働生活研究所によって行われた。研究者は、前向きの研究（ある時点から開始して、追跡調査を行う）を行った。選択された従業員グループがコホートとして、長期に渡り調査された。

About 700 workers at power stations and linemen, recruited by companies during 1981-85, were included in the research project.
A medical investigation was carried out every third year.
At the same intervals the employees' experiences were investigated by a specific questionnaire, in which the workers judged and evaluated their working conditions.
1981年から85年にかけて会社によって雇用された、発電所の従業員や架線工を含む700人の労働者が調査の対象になった。３年置きに健康診断が行われ、それと同時に従業員が経験したことについてのアンケート調査も行われた。

The exposure is different risk Factors such as certain chemical, noise
and electric and magnetic fields was measured by technical expert.
When the project ended in 1995 about 460 workers were still in the study group.
各種のリスク要因、たとえば化学材料、騒音、電磁界などが、技術の専門家によって測定された。プロジェクトは1995年に終わったが、その時には約460人の労働者が調査グループに残っていた。

Early warning　初期の警告
For quite a long time electric and magnetic Fields have been in the focus of the risk debate, not least in the media.
The First findings were reported in the 1970s by Spanish and Russian scientists.
電磁界が健康に危険を及ぼすかどうかの問題は、長い間、特にメディアのみなならず、論議のタネになっていた。最初の研究成果は1970年代にスペインおよびロシアの科学者によって発表された。

Therefore, the Swedish researchers studied whether this exposure could be related to specific symptoms, such as anxiety, depression, dizziness, headaches, irritation, numbness, stomach pains, restlessness, sleeplessness and tiredness.
そのため、スウェーデンの研究者はこうした曝露が特定の症状、たとえば不安、抑鬱症、めまい、頭痛、いらだち、倦怠感、胃痛、不眠症、疲労などと関係があるかどうかを調査した。

The scientists did not find any correlation between electric fields and depression, headaches or sleeplessness, however magnetic fields may increase the risk of anxiety, restlessness and tiredness.
この調査によると、電界と抑鬱症、頭痛、不眠症との間には何の関係もないことがわかった。しかし、磁場は不安、不安定、疲労のリスクを高める可能性があるとされている。

Since it is important to detect early symptoms, the worker's blood and hormones, such as cortisole and prolactine, and biomarkers, such as tissue polypeptid antigen (TPA), were analyzed.

This antigen may be very useful in the detection of early tumors.
症状を早期に発見することが重要であるため、労働者の血液およびホルモン（コルチゾールやプロラクチン＊など）、生物指標（組織のポリペプチド抗原＝TPAなど）が分析された。この抗原は腫瘍を早期に発見する上で有効である。

The researchers did notice that electrical fields might increase the body's production of cortisole and TPA.
However, the results have to be interpreted very cautiously. Furthermore,
the researchers did not find any correlation between exposure to the fields and reproductive hazards.
調査では、電界が体内のコルチゾールやTPAの生産を増やす可能性を指摘していた。こうした結果は慎重に解釈する必要がある。さらに電磁界曝露と生殖機能の障害との関連は見出せなかった。

Noise a problem　騒音が問題に
The linemen had hard, heavy work tasks and they were exposed to wind and bad weather conditions. After nine years in this occupation every seventh employee suffered from back pain.
Furthermore, every eighth worker fell symptoms in the knees, the neck or the shoulders.
架線工の仕事は重労働で、風や悪天候の中でも作業しなければならない。この業務に９年にわたって従事した場合、労働者の7人に１人は腰痛に苦しめられる。さらに8人に1人は膝、首、肩などに症状が見受けられた。

In general, the most frequently reported symptoms of the whole study group were bock pain, headaches, stomach problems and shoulder pain.
全体として、調査対象グループで最も多い症状は腰痛、頭痛、胃病、肩痛などであった。

The employees themselves pointed out that noise was the main problem in their work environment. In an everyday context, the noise levels exceeded the Swedish threshold value.
労働者自身が労働条件の中で最も問題なのは騒音だと指摘していた。毎日の作業の中で騒音レベルはスウェーデンの閾値を超えていた。

The most frequent sources were compressors, drilling machines, excavators, power saws and snow scooters. To reduce the noise level the researcher suggested an action programme.
騒音の原因はコンプレッサ、穿孔機、掘削機、電動鋸、雪上車などであった。騒音レベルを引き下げるためには、そのための対策プログラムが必要であると研究者は指摘している。

In general, the health and well-being of the employees was quite good during the project. Workers in the power industry did not suffer from diseases or injuries more than other occupational groups.
Furthermore, we did not find any symptoms which could be explained by the e electric and magnetic fields' concluded Siv Torqvist a researcher on the project.
「この調査プロジェクトの期間中における労働者の健康、福祉は非常に良好だった。電力産業の労働者は他の職種の労働者より病気や災害が多いというような不安はもっていなかった。さらに電磁界に起因する症状は見出せなかった」と、プロジェクトの研究員のシブ・トルンキストは語っている。

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４８　スウェーデン電力事業従事者の生殖への影響―１９９８年

概要を入手　仮訳をつけた。　作成：２００３−１１−２３　

研究者：Siv Tornqvist, RN
論文名：Paternal Work in the Power Industry: Effects on Children at Delivery
　　　　父親が電力従事者場合：生まれる子供への影響　
掲載雑誌：JOEM(Journal of Occupational and Environmental Medicine) 40:2 (February 1998), pp 111-117　

Although reports on reproductive disturbances among occupational groups of electrical workers have been discussed, few studies have focused explicitly on the children of workers employed in the power industry.
職業的な電気関係従事者の中に存在する生殖障害に関する報告がある。中には電力事業従事者の子供に特に焦点を当てた研究がある。（原文はFewであるが、A fewの間違い？）

Birth outcome and cancer in the offspring(子供) of fathers who were exposed to electric and magnetic fields at time of sperm（精子）production were studied in two cohorts.
精子が作られる時に電磁界に曝露した父親の子供の癌と出生に関する二つのコホート研究がある。

In Study I, male occupation in the power industry was identified in censuses. Study 2 is a prospective cohort study of newly employed power industry workers.
研究１では国勢調査を利用した男性電力従事者を対象とし、研究2では電力事業に新規に採用された人を対象とした前向きのコホート研究である。　

Birth data were obtained by record linkage between censuses and several available　health registers in Sweden.
出生データはスウェーデンの国勢調査と幾多の利用可能な健康登録を結びつけて、得られた。

Multiple births, birth weight, sex survival, congenital malformations, and cancer have been analyzed with relation to the father's exposure to electric and magnetic fields one year before the child was born.
双子の誕生、生まれた時の体重、性別、先天的な異常、癌を、子供が生まれる1年前の父親の電磁界曝露との関係で、解析した、

There were six cancer cases among infants(1歳未満の幼児) in the exposed group (2.4 expected) and six in the unexposed group (3.2 expected) in Study 1.
研究１では、曝露群では期待値2.4に対して1歳未満の幼児の癌が6例、非曝露群では期待値3.2に対して6例の癌が観察された。　

Jointly, the 12 cancer cases found among the infants were more than expected (P = 0.02). However, this total excess may be random.
あわせて12例の1歳未満の幼児の癌は期待値を上回る数字であるが、これは偶然と言える。

No cancer cases were observed in the prospective study.
研究2の前向きコホート研究では、癌の症例は観察されなかった。

For chromosomal abnormalities, such as Down's syndrome, one case was observed among infants of exposed fathers and three cases, among unexposed fathers in Study 1.
ダウン症候群のような染色体異常に関しては、研究１で、曝露群では1例、非曝露群では3例が観察された。

In Study 2, no cases were observed.
研究２では、そうした症例は観察されなかった。

There was a slightly higher proportion of malformation diagnoses among infants of exposed fathers than among infants of unexposed fathers in Study 2, but this could be random (odds ratio = 1.59; 95% Confidence interval 0.43-1.48).
研究2では、非曝露群に対して曝露群での異常の割合が少し高かったが、これは偶然と言える。オッズ比は1.59　95%信頼区間は0.43−1.49であった。　

No clear-cut effects on infants fathered by men who were exposed to electric and magnetic fields around the time of sperm production could be seen in these two studies.
これらの二つの研究から、電磁界に曝露した父親の子供への明確な影響は見られなかった。

Correspondence: 　Siv Tornqvist, RN
National Institute for Working Life S-17184 Solna, Sweden

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49. 電力周波数電磁界暴露と神経疾患の台湾での疫学研究

概要を入手　仮訳をつけた。　作成：　２００３−１１−２５　

論文名：Risk of Cognitive（認知）Impairment（機能などを害する） in Relation to Elevated Exposure to Electromagnetic Fields　電磁界曝露による認知障害のリスク
掲載誌：JOEM（Journal of occupational and Environmental Medicine）44:1 pp 66-72 JANUARY 2002
研究者：Chung-Yi, Li, PhD, Fung-Chang Sung, PhD, Shwu Chong Wu,PhD

概要
Occupational exposure to power-frequency electromagnetic fields (PF-EMF) has been suspected of being associated with adverse neurological outcomes.
職業的な電力周波数電磁界暴露が神経機能に悪影響を及ぼしている可能性がある。

We performed a case-control study to assess the relationship between exposure to PF-EMF and the risk of cognitive impairment, an indication of certain adverse neurological diseases such as Alzheimer's disease and dementia（痴呆）.
電力周波数電磁界暴露と神経障害のリスクの関係を調査するために症例対照研究を行った。認知障害の悪影響の指標としてアルツハイマー病と痴呆を取り上げた。

Among 2198 elderly individuals aged 65 years or older, 290 persons with score-based cognitive impairment were compared with 580 sex-matched controls to assess the risk of cognitive impairment in relation to PF-EMF exposure.
６５歳以上の年齢の２１９８名の個人を対象に、認知障害と判定された２９０名と、５８０名の対照を電力周波数電磁界暴露との関係を比較した。

Participants who were former electrical workers or living within 100 meters of high-voltage transmission lines were considered to have higher exposure.
調査の対象者は電磁界に高曝露と考えられる元電力事業従事者か、高圧送電線から１００ｍ以内に住む人である。

Compared with background exposure, the risk was equal or close to unity for participants with higher exposure from a previous occupation (odds ratio [OR], 1.3; 95% confidence interval [CI], 0.7 to 2.3), higher residential exposure (OR, 0.9; 95% CI, 0.3 to 2.6), or higher exposure in both occupation and residential environments (OR, 1.0; 95% CI, 0.2 to 4.6).
背景曝露と比べて、リスクは平均的な値と同じかそれに近い値であった。過去の職業的な高曝露ではオッズ比は1.3（95%％信頼区間は0.7-2.3）、住環境での高曝露ではオッズ比は0.9、　住環境と過去の職業的な曝露でのオッズ比は1.0であった。

Our findings provide little support for the link between PF-EMF and cognitive impairment. Nevertheless, the study results do not preclude the possible association between PF-EMF and any specific neurodegenerative (神経消耗性疾患) disease previously investigated.
この研究結果は、電力周波数電磁界と認知障害の関係を支持しない。
しかし、過去に行われた他の電磁界と神経消耗性疾患の関係を示唆する研究を否定するものでもない。

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５０．英国の電力線と小児癌に研究　2000年　

タイトル；Childhood cancer and residential proximity to power lines

電力線への近接住環境と小児がん
研究者：Skinner J., Maslanyj M.P., Mee T.J., Allen S.G., Simpson J., Roman E. and Day N.E.
掲載誌；British Journal of Cancer 2000 83:11 (1573-1580)

概要：

全イングランド・スコットランド・ウェールズを対象とした人口ベースの小児がんの英国研究において、電力周波数の磁界の測定値と悪性腫瘍のリスクには関連が見つからなかった。

住環境として近接する電力供給設備、高圧送電線との距離、地下埋設ケーブル、変電所、配電回路とリスクの関連性の更なる研究の為に、3380の症例と3390の対照群を集めた。

磁界強度は距離、負荷電流、その他の回路情報から計算で求めた。

電力設備に近接、英国内で発生している磁界レベルは小児白血病もしくはその他の癌を増発するというリスクの確証は得られなかった。

架空送電線から５０ｍ以内に住んでいる場合の全悪性腫瘍に対して、急性リンパ性白血病ＡＬＬのオッズ比は0.73（ＣＩ：０．４２−１．２６）、全白血病のオッズ比は１．０８（ＣＩ：０．５２−２．０９）、中枢神経系の腫瘍（脳腫瘍など）のオッズ比は０．９２（ＣＩ：０．６４−１．３４）であった。

0.1μＴ以下の曝露群に比較して0.2μＴ以上の磁界曝露群のオッズ比は、急性リンパ性白血病は０．５１（ＣＩ：０．１１−２．３３）、全白血病は０．４１（ＣＩ：０．０９−１．８７）、中枢神経系の癌は０．４８（０．０６−３．７６）、全悪性腫瘍は０．６２（ＣＩ：０．２４−１．６１）であった。

　興味のある方は、原著全文を入手して読んでください。

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５１．英国の高圧送電線と小児ガンの新しい疫学調査報告　2005年

この研究は生まれた時の住所と送電線との距離との関連を調査した結果で、磁界の実測や評価は行っていない。　　　　作成：　２００５−７−３　

エキサイトのWEBのニュースのページに、2005年6月3日のニュースとして掲載されていました。
http://www.excite.co.jp/News/world/20050603155659/JAPAN-178653-1_story.html

＊＊＊＊＊＊＊＊　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
高圧線、小児白血病の発症に影響も＝英研究　[ 06月03日 15時56分 ]
［ロンドン　３日　ロイター］　高圧線の近くに住む子供の白血病発症率が通常より高い可能性があることが、３日に発表された英研究報告で明らかになった。
報告は、高圧線から２００メートル以内の距離にある家で生まれた子供は、白血病の発症率が通常より高いと指摘。
ただ、高圧線が発症率を高める原因であることを証明できたわけではないとしている。

（以下　略）

＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　　＊＊＊＊＊＊＊＊
＜このニースは日本では、他ではほとんど報道されていない模様。＞

この報道は英国の様々な新聞・マスコミに掲載された模様で、YahooのUKサイトで「power line leukemia」で検索を行なえば、上記のロイター電以外に多数の記事がヒットする。

この研究が掲載されたBritish Medical Journal、 2005の概要を以下に示す。仮訳です。

掲載誌：　BMJ　2005;　330:　1290　(4　June)
論文名：Childhood cancer in relation to distance from high voltage power lines in England and Wales: a case-control study
イングランドとウエールズにおける高圧送電線からの距離と小児ガンの関係：症例対照研究

研究者：Gerald Draper, honorary senior research fellow, Tim Vincent, research officer, Mary E Kroll, statistician, John Swanson, scientific adviser

目的：イングランドとウエールズにおける子供の白血病とその他のガンの罹患と生まれた時の高圧送電線との距離に関連性があるかを調査する。

方法：症例対象研究。

研究対象：9700例の白血病を含む29081例の小児ガン記録。イングランドとウエールズで1962年から1995年の間に生まれた0-14歳の子供。対照は同じ住民区に生誕登録され、個々の症例と性別をマッチされたほぼ同じ日に生まれた子供。特別な参加要請などは不要であった。

主な指標：存在する高圧送電線で、生まれた時の自宅の住所と最も近い高圧送電線との距離。

結果：高圧送電線から600m以上離れて生まれた場合と、200m以内の距離で生まれた場合の白血病の相対危険率は1.69（CI：1.13−2.53）、200−600mの距離で生まれた場合は1.23（CI:1.02−1.49）。
送電線との距離との関係に有意なリスクがある。他のガンでは送電線との関連はなかった。

結論：
小児白血病と生まれた場所と高圧送電線への近接には関連性がある、そしてこれまでの研究で予期された以上の遠い距離でもリスクの増加が見られた。
イングランドとウエールズでは4%の子供が送電線から600mｍ以内のところで生まれている。
この関連性が白血病の原因であると仮定すれば、見込みは統計的に不確実性を持つが、イングランドとウエールズの小児白血病の1%は送電線が関与していることになる。この疫学結果を説明する生物学的な機序はまだない。もしかして、この関係は偶然の結果かも知れないし、交絡因子が関与しているかも知れない。　

追記：2011-2-15
ＷＨＯの低周波電磁界に関するＥＨＣでは、以下にＤｒａｐｅｒの研究が紹介されている。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

Draper等（2005）が実施した調査では、1962年から1995年までの間にイングランド、スコットランド、またはウエールズでがんの診断を受けた0歳から14歳までの子供33,000人を、様々ながん登録簿から特定した。
各症例に対し、性別、生年月日（6ヵ月以内）、出生登録地区がマッチする対照を1つ選択した。
最終データセットに出生地の住所がわかっている白血病症例対照が9,700組含まれていたため、送電線に関するマッピングが可能であった。

出生地の郵便番号を利用して275kVまたは400kVの送電線から1kmの範囲内に住む調査対象者と、数例ではあるが132kVの送電線から1kmの範囲内に住む調査対象者を特定した。
出生年に存在していた全ての送電線までの最短距離を基に曝露を計算した。
可能な場合には以前の送電線の配置を再現した。

白血病については距離に依存する過剰リスクが観察された（送電線までの距離が600mを超える場合と比較すると、500〜599mの範囲ではRR=1.36、0〜49mの範囲ではRR=1.67であった）。
困窮指標に合わせて調整を行っても結果に変化はなかった。

［この調査規模の大きさから、この論文におけるリスク推定値はしっかりしたもののはずである。
更に、以前の調査では症例と対照の参加率の違いによる選択バイアスが問題となる場合があったが、この調査では対象者との接触が必要とされないため、この選択バイアスは避けられた。
ゆえに、この著者等や他の研究者等も指摘していることであるが、今回の調査結果が、選択した対照集団に依存することや、これほど遠くの電力線について過剰リスクが観察されたことは意外である。
これに加え、距離は磁界曝露の予測因子としては極めて不十分なものであることが知られていることから、磁界計算値が出揃った際には、この調査結果は、更に多くの情報を提供することになるであろう。］
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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５２．電磁波暴露と自殺の関係を示すシロとクロの報告

クロ：問題があるとした研究の例

掲載誌：Occup Environ Med 2000;57:258-263
タイトル：Exposure to electromagnetic fields and suicide among electric utility workers: a nested case-control study
電磁界暴露と電力事業従事者の自殺：症例対照研究
　
研究者：Edwin van Wijngaarden a, David A Savitz a, Robert C Kleckner a, Jianwen Cai b, Dana Loomis a
a: Department of Epidemiology, School of Public Health, The University of North Carolina, Chapel Hill, NC, USA、
b: Department of Biostatistics

目的：この症例対照研究は、男性電力事業従事者138,905名を対象とし、ELF電磁界への暴露と自殺による死亡率の調査を行なったものである。

方法：自殺による死亡例536件と適格な対照群を症例・対象として抽出した。暴露は、最も一般的で磁界暴露を増加させる仕事と、測定に基づく累積暴露要素から区分を行った。

結果：磁界暴露要素と暴露する仕事に関連して、自殺による死亡率は増加した。増加したオッズ比は、1年間の雇用で、電気工では2.18（CI:1.25-3.80）、電線工では1.59（CI:1.18-2.14）、一方、送配電所勤務者では減少し、オッズ比は0.67（CI:0.33-1.40）であった。

磁界暴露の量反応に関しては、過去の暴露年数に関連が見られ、最も高曝露群では死亡率比は1.70（CI:1.00-2.90）であった。最も高い関連性は、50歳以下の男性で、オッズ比は2.12-3.62の範囲であった。

結論：このデータは、職業的な電磁界暴露と自殺の増加が関連しているという確証であり、更なる研究が必要である。メラトニンと意気消沈に関係する機序が考えられ、継続した実験研究や疫学評価がそれらの方向を示してくれるであろう。

シロ：問題はないとした研究の例

掲載誌；Occupational and Environmental Medicine 2002;59:199-200
論文名：Suicide mortality among electricians in the Swedish construction industry
　スウェーデンの建設業界における電気工の間の自殺による死亡率調査
研究者：B Jarvholm and A Stenberg
Department of Public Health and Clinical Medicine, Occupational Medicine, Umea University, Umea Sweden

概要

目的：
スウェーデンの建設業界で働く電気工の中の、自殺のリスクを調査した。建設業界の電気工と電磁界に暴露する電気工に、自殺のリスク増加があるとするいくつかの研究がある。

方法：
コホート研究を行なった。1971-1992年の間に健康診断を受けた建設業界で働く人々のコンピュータデータから、電気工を抽出した。このデータから、33719名の男性電気工と、対象群として72653名の男性の木材工を抽出した。スウェーデンの死亡登録にリンクし、1997年末に死因を調査した。自殺による死亡率は、性別・年齢・期間を調節して、一般人口における値と比較した。

結果：
一般の人口に比較して、自殺による死亡のリスクは、対照群での死亡率比はSMR0.81（CI：0.72-0.91）で、電気工の死亡率比はSMR0.58（CI：0.47-0.71）と低かった。

結論：
他の研究に対比して、建設業界における電気工の自殺のリスクは増加していなかった。

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５３．電磁界と肺がん

肺がんとの関連の研究です。

掲載誌：American Journal of Epidemiology, Vol 140, Issue 9 805-820, 1994
タイトル；Association between exposure to pulsed electromagnetic fields and cancer in electric utility workers in Quebec, Canada, and France 　　カナダ・ケベック州とフランスの電力事業従事者におけるパルス性電磁界暴露とガンの関係
研究者：B Armstrong, G Theriault, P Guenel, J Deadman, M Goldberg and P Heroux
Department of Occupational Health, Faculty of Medicine, McGill University, Montreal, Canada.

概要
カナダのケベック州（1970-1988年）とフランス（1978-1989年）の電力事業従事者（2679名のガンの症例を含む）を対象とした症例対照研究で、パルス性電磁界とガンの関係を報告する。　
曝露計を着用して1000人・週の実測データを基にしたJOB-Matrixを用いて、暴露評価を行った。
暴露はフランスに比べてケベックで大きかった。

パルス性電磁界とこれまで電磁波との関連性が疑われてきたガン（白血病、脳腫瘍、造血系のガン、黒色腫）との関係は見つからなかった。
しかしながら、パルス性電磁界と累積暴露と肺がんの明らかな関係があり、最も高い曝露群（84件の症例）では、オッズ比は3.11（CI:1.60-6.04）に上った。
この関係はケベックに限定されており、量反応関係もあり、最も高い曝露群（症例数：32）では、オッズ比は6.67（CI:2.28-16.57）である。
この関係は事実であり、喫煙や他の職業的な暴露では説明できない。

しかし、様々な要素の因果関係を示す確証の強さに限界がある。測定器で何を本当に測定しているのか、これらを説明する過去の確証はない、一般の人に比べて電力事業従事者に肺がんのリスクが増加はないなど。

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54．ノルウェー2004年磁界と乳がんの疫学研究

作成：２００８−１−２０
概要を仮訳した。

掲載誌：American Journal of Epidemiology Vol. 159, No. 9 2004
タイトル：Residential and Occupational Exposures to 50Hz Magnetic Fields and Breast Cancer in Women: A Population - based Study　
　住環境および職業的な５０Ｈｚ磁界への曝露と女性の乳がん
研究者；Jolanta Kliukiene ら
　Norway, Institute of Population-based Cancer Research, 0510, Norway

概要：
住環境と職業的な磁界曝露が女性の乳がんのリスクを増加させるかを調査するために、症例対照研究を行った。
1980年から1996年の間に乳がんと診断された症例を、1980年、1986−1996年の間にノルウェーの高圧送電線の近傍に住む女性のコホートから抽出した。
（Ｂｅｍｓｊ注：この研究では選択バイアスはない）

それぞれの症例に生年、市町村、コホート集団に入った年をマッチさせて、無作為に2名の対照を選択した。
住環境における磁界曝露値は診断前の送電線から発生する磁界として計算した。
職業的な曝露はジョブ・マトリックスで得た。
（Ｂｅｍｓｊ注：個々の症例・対照群ともに実測は行っていない。）

磁界に曝露群では非曝露群に比べて、住環境での曝露ではオッズ比が1.58（CI:1.30-1.92）であった。
エストロゲン指標は症例の44%でしか得られなかったが、エスとロゲンレセプタ＋と−で分けて解析を行うと、非曝露群に対して曝露群ではオッズ比はそれぞれ1.33（CI:0.93-1.90）、1.40（CI:0.78-2.50）であった。

最も大きい職業的な曝露群では、非曝露群に対して、オッズ比は1.13（CI:0.91-1.40）であった。
この結果は、女性の乳がんと磁界曝露が関係していることを示している。

関心のある方は、この研究の原著全文を入手して読んでください。

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55．カナダの小児癌と磁界の1999年の研究　

作成：1999年06月12日　　　WEB公開：２００９−１０−２２

まだ原著論文迄は入手していないのですが、以下の報道がなされています。
この研究では、スウェーデンのカロリンスカの研究とは正反対に送電線からの電磁波は小児白血病を起こさないという結果です。

　この研究の優れた点は、小児の一人一人に電磁波の測定器を持たせ実際の電磁波の曝露量を測定していることです。　これによって自宅の近くに有る送電線からの磁界、その他の家の中の配電線からの磁界、家の中の電気製品からの磁界、外出したり学校での磁界の曝露量等全てを知って、その上で磁界と白血病の関係を検討しています。

　ここまで調査すれば、立派な研究でしょう。

＊＊＊＊＊＊＋＋＋
電磁界と小児白血病発症の関連は認められない

　カナダ、British Columbia Cancer Agencyの研究者グループが「（送電線などから生じる）低周波の電磁界と小児白血病の発症との関連は認められない」とする研究結果を新たにまとめ、その内容が5月1日発行のAmerican Journal of Epidemiology誌にも掲載されることが明らかになりました。

　今回の研究のユニークな部分は、動物実験や細胞レベルの研究結果ではなく、被験者となった子供達をとりまく電磁界を実際にモニタし、小児白血病の発生確率を調べたこと、およびその研究調査が10年の長きにわたって続けられたことです。　

特に小児白血病と診断された399名の0歳から14歳までの子供達の背中にひとつひとつリュックサック方式の電磁界計測装置を一定時間取り付け、ケーススタディが行われたのは世界でも例がないと言われています。

　この研究では、計測装置によるモニタの他、これまでに子供達がどのくらいの強さの電磁界に曝されていたかについても評価するため、住居屋内外の電線などから生じる電磁界の強度についても調査が行われています。

研究チームリーダのMary McBride博士の言葉を借りれば「我々の研究結果はこれまでの（電磁界と小児白血病の因果関係ありとした）研究に対する有力な反証となろう。
我々の研究調査方法はこれまでのものに比べ、より多数の事例について直接的に電磁界レベルの測定を行っているからだ。」ということになります。

追記：2020−5−12
この研究の原著を読んで、概要をまとめました。
６７．1999年 Mcbrideらのカナダ磁界と小児がんの疫学　　へ。

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５６．アメリカの小児癌に関するＰｅａｒｓｏｎらの2000年疫学研究

作成：　２０００−１０−２６　　ＷＥＢ公開：２００９−１１−９

ＢＥＭＳ２０００総会で発表した論文の概要です。論文はＰｅaｒｓｏｎ氏から入手しました。

論文名：Combined Exposure to High Levels of Air Pollution and Electromagnetic Fields May Increase Leukemia and Other Cancer Risk in Children.
研究者：H. Wachtel, R. L. Pearson.

概要：
コロラド州デンバーの小児癌と送電線由来の磁界との関係はWertheimerによって１９７９年に発表された。
Savitzによっても検証が行われた。
今回Savitzのデータを基に解析した。

送電線の種類や距離などから定めるワイヤ・コードと、近くを通る車の交通量とが重なり合って小児癌を増発させている。

１日の車の交通量が２万台を超えるか超えないかで分類した。
送電線の影響はワイヤ・コードで「強い」か「弱い」か、２分した。

結果
車の交通量が２万台を超えず、かつ、送電線の影響が「弱い」時に比べて車の交通量が２万台を超え、かつ、送電線の影響が「強い」時は、小児癌は　オッズ比は４．７７（ＣＩで２．２５−１０．０９）であった。
この数字はＣＩの下限が１を超えており、統計的にはそれなりに有意な結果である。

車が多くても送電線の影響が「弱い」時も、送電線の影響が「強い」時でも、車が少ない時は、小児癌の危険度は増加しない。

このことから、
研究者は、車の排気ガスから出るベンゼンなどの発がん物質が小児癌を起こし、送電線からの磁界はその癌を促進しているのではないかと、考えている。

ＢＥＭＳＪコメント：これは非常に面白い研究です。

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５７．アメリカ　McCurdyらの2001年研究にみる女性の磁界曝露実態　

記：２０１０−７−２３　

以下の研究がある。
タイトル：Exposure to extremely low frequency magnetic fields among working women and homemakers　働く女性と主婦の低周波磁界暴露の実態
掲載誌： Annals of Occupational Hygiene, November 2001, vol. 45, no. 8, pp. 643-650(8)
研究者：McCurdy A.L.ら

概要
273名の女性が個人曝露計で、時間加重平均の磁界曝露量を調査した。
電子機器や機械に近づいた頻度なども調査した。
幾何学的平均は、働く女性では0.138μＴ（最小0.0022、最大3.636μＴ）

製造や工業設備で働く女性は曝露が大きく、平均0.265μＴ（最小　0.054　最大３．436）であった。
その中で、看護婦や健康関係従事者は平均0.134μＴ（最小0.032　最大0.285）、教師と学校関係者は平均0．099μＴ（最小0.035　最大0.673）で低い曝露量であった。

教師、看護婦、主婦でこれまでの疫学で乳がんのリスクがあるとされてきたが、今回の調査では低周波磁界曝露は大きくなかった。
したがって、低周波磁界への曝露が乳がんのリスクとなると見られたことには、疑問となる。

関心のある方は、上記の論文の全文を入手して読んでください。

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58、日本衛生学会英文誌2000年　Wang・Kagamimoriらの成人白血病メタ解析

記；２０１０−１１−２７　追記：２０２０−５−６

以下の研究がある。
論文の冒頭にある概要の部分の仮訳
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
掲載誌：Environmental Health and Preventive Medicine 5, 43-46, April, 2000
タイトル：A Meta-analysis of Epidemiological Studies on the Relationship between Occupational Electromagnetic Field Exposure and　the Risk of Adult Leukemia
成人白血病と職業的な電磁波曝露の関係に関する疫学研究のメタ解析
研究者：Hongbing WANG, Shigeru SOKEJIMA, Sadanobu KAGAMIMORI et al:

概要
Since the first paper by Milham et al. suggested that occupational exposure to an electromagnetic field (EMF) could increase the risk of adult leukemia, many epidemiological studies on this problem have been published.
職業的な電磁波への曝露が成人白血病を増加させるというMilhamらの最初の報告以来、この件に「関する幾多の研究が発表されてきた。

In this report the method of meta-analysis was used to summarize the results from these papers quantitatively.
本論では、これらの論文を定量的に取りまとめることによってメタ解析を行った。

The combined relative risk of all leukemia (RR=I.11), as well as acute lymphocytic leukemia (RR=l.38), acute myeloid leukemia (RR=I.07) and chronic lymphocytic leukemia (RR=l.14) increased but not significantly.
総括的な相対リスクは、全白血病でRRは1.11、急性リンパ性白血病でRRは1.38、急性骨髄性白血病でRRは1.07、慢性リンパ性白血病でRRは1.14と増加はしているが、統計的に有意ではなかった。

So far, it is difficult to make a consistent conclusion about the relationship of the occupational exposure to EMF and adult leukemia.
従って、職業的な電磁波曝露と成人白血病の関連について首尾一貫した結論を得ることは難しいい。

Further carefully designed case-control and cohort studies using the more valid means of exposure assessment are required.
曝露評価の更なる有効な手法を用いた、さらに注意深く条件設定された症例対照研究やコホート研究が必要である。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

産業衛生学会の和文誌に紹介されたこの論文の概要
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
掲載誌：Environmental Health and Preventive Medicine　Vol. 5 (2000) , No. 1 p.43
タイトル：A Meta-analysis of Epidemiological Studies on the Relationship between Occupational Electromagnetic Field Exposure and the Risk of Adult Leukemia
研究者：WANG Hongbingら,

概要；
ミルハムらの電磁界の職業的な曝露が成人の白血病のリスクを増加させているという最初の研究以来、多くの疫学研究結果が報告されてきている。
この研究では、メタ解析法を用いて、それらの定量的な研究を総括する。

結果は、総括した場合　全白血病では相対リスク1.11（95%信頼区間：0.98-1.24）、
急性リンパ腫では相対リスク1.38（95%信頼区間：0.56-1.18）、
急性骨髄腫では相対リスク1.07（95%信頼区間：0.96-1.18）、
慢性リンパ腫では相対リスク1.14（95%信頼区間：0.71-1.57）、
慢性骨髄腫では相対リスク0.93（95%信頼区間：0.79-1.08）であった。
リスクの増加は見られたが統計的に有意ではなかった。

電磁界の職業的な曝露と成人白血病の関係について確定的な結論を出すことは困難である。
更なる精度の高い研究が必要である。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

BEMSJ注；論文では触れていないが、対象とした電磁波は低周波電磁界とみられる。

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５９．2011年オーストラリアの低周波電磁界への両親の曝露と小児癌の研究

記：２０１１−１０−２８

以下の研究が2011年10月末に発表されました。
まだこの種の研究は継続されていることが判る。

BJC Reid 2011 ELFと小児がん概要
掲載誌：British Journal of Cancer (2011) 105, 1409–1413.
タイトル：Risk of childhood acute lymphoblastic leukemia following parental occupational exposure to extremely low frequency electromagnetic fields
研究者：A Reid at al:

概要
BACKGROUND: Earlier studies have reported moderate increases in the risk of acute lymphoblastic leukemia (ALL) among children whose mothers have been occupationally exposed to extremely low frequency (ELF) electromagnetic fields. Other studies examining parental occupational exposure to ELF and ALL have reported mixed results.
背景：初期の研究で、低周波電磁界に職業的に曝露した母親が生んだ子供に急性リンパ性白血病のリスクの中度の増加することが報告されている。
両親の職業的な曝露に関する他の研究では、低周波電磁界と急性リンパ性白血病との関係は錯綜している。

METHODS: In an Australian case–control study of ALL in children aged o15 years, parents were asked about tasks they undertook in each job. Exposure variables were created for any occupational exposure before the birth of the child, in jobs 2 years before birth, in jobs 1 year before birth and up to 1 year after birth.
方法：15歳以下の小児の急性リンパ性白血病に関するオーストラリアの症例対照研究のなかで、両親にそれぞれの職業で行った仕事に関して質問を行った。
子供の生まれる2年前の職業的な曝露、子供が生まれる1年前の職業的な曝露、子供が生まれてから1年後の職業的な曝露を、曝露変数として定めた。

RESULTS: In all, 379 case and 854 control mothers and 328 case and 748 control fathers completed an occupational history. Exposure to ELF in all time periods was similar in case and control mothers. There was no difference in exposure between case and control fathers. There was no association between maternal (odds ratio (OR=0.96; 95% CI=0.74–1.25) or paternal (OR=0.78; 95%CI=0.56–1.09) exposure to ELF any time before the birth and risk of childhood ALL
.結果：全数で、379例の症例と854名の対照群の母親、328例の症例と748名の父親の、職業的の履歴を調査した。
母親に関しては、症例と対照は低周波電磁界に関する曝露は同じであった。
父親の場合も症例と対照に差異はなかった。
母親と父親の曝露との関連性はなく、小児急性リンパ性白血病のリスクと生誕の前後の全ての低周波電磁界への曝露とのオッズ比は母親に関しては0.96（CI:0.74−1.25）、父親に関して0.78（CI:0.56-1.09）であった。

CONCLUSION: We did not find an increased risk of ALL in offspring of parents with occupational exposure to ELF.
結論：職業的な低周波電磁界への両親の曝露による小児急性リンパ性白血病のリスクの増加は見られなかった。

関心のある方は、上記の論文の原著全文を読んでください。

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60．2013年大久保らの日本衛生学会での発表

記；２０１３−４−１７

以下の発表がありました。
発表学会： 第83回 日本衛生学会学術総会 (2013/3/24〜26) ポスター発表
タイトル：日本における居住環境中の超低周波磁界曝露による小児白血病発症数の推定
研究者：大久保千代次・山口直人

【目的】WHOは2007年の環境保健クライテリア238で、超低周波（ELF）磁界曝露と小児白血病に関連する証拠から因果関係を否定。
仮に因果関係があった場合でも、全世界的には、ELF磁界曝露が公衆衛生的なインパクトは限定的であるとしている。
そこで、仮に両者に因果関係があった場合の、我が国での磁界曝露が原因とする患者数の推定を行った。

【結果】
仮に因果関係があった場合の寄与リスクの推定
�@ Kabutoらの報告では、対照群の0.4μT以上の居住環境にいる小児の割合は0.8％。
�A Ahlbomらの示すオッズ比は2.0。
�B 地域がん登録全国推計によるがん罹患データの10年間の小児白血病推定罹患数は平均490名より
�C磁界曝露が原因とする小児白血病患者数は、毎年3.9名と計算された。

【結語】
仮に商用周波磁界曝露と小児白血病発症に因果関係があった場合、年間約４人の発症が増えると推定された。
商用周波磁界曝露は公衆衛生的にはインパクトの小さなリスクであり、行政上実質的には安全とみなすことができる環境基準（生涯リスクが10^-5）以下の大きさであった。

BEMSJ注：日本の全人口を約1億人とし、年間に4名の小児白血病患者が磁界によって増加すると推定された。
寿命を単純に100才とすれば、1億の人が全て100歳まで生きたとして、白血病の発生は400名となる。
1億人が全て100歳までの寿命として白血病になるのは400人であるので、10万人に0.4人というリスクの大きさになる。
すなわち10⁻⁵（10万人に1人のリスク）より小さいということができる。
水道の水を生涯飲みつづけたとして、水道の中に含まれるヒ素による癌の発生は10⁻⁵（10万人に1人）である。

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６０A．日本の低周波磁界と小児脳腫瘍の疫学研究2010年

記；２０２０−１０−２６

以下はEMF Portalのサイトにあった情報

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
掲載誌: J Epidemiol 2010; 20 (1): 54-61
タイトル：Power-frequency magnetic fields and childhood brain tumors: a case-control study in Japan.
電力周波磁界と小児脳腫瘍：日本における症例対照研究
研究者: Saito T, Nitta H, Kubo O, Yamamoto S, Kabuto M et al;

人口ベースの症例対照研究において、商用周波数磁界（MF）への曝露について、新規に小児脳腫瘍と診断された症例55を、症例と年齢・性別・居住地域をマッチさせた無作為選出の対照99と比較した。

最も低い曝露カテゴリー（0.1µT以下）との比較でみたオッズ比は、0.2−0.4µTの曝露カテゴリーで1.58（95%信頼区間: 0.25-9.83）であったが、これは曝露症例2と曝露対照4に基づくものであった。
最も高い曝露カテゴリー（0.4µT以上）では（曝露症例3と曝露対照1に基づいて）オッズ比は10.9（95%信頼区間:1.05-113）と推定された。

この研究のサンプルサイズは非常に小さいため、結果を不安定にしている。
この課題に関する先行研究と比較すると、仮にリスクがあるとしても観察されたリスクは真のリスクの全くの過剰評価である可能性がある。
この研究は、著者自身も認めているとおり、メタ分析の場面でのみ検討されるべきである。

結論(研究者による)
寝室の磁界レベルが0.4µTを超える子どもで、脳腫瘍のリスクが有意に高かった（OR　10.9、CI：1.05-113）。
寝室の磁界レベルが0.2-0.4µTの子どもについて、統計的に有意ではないリスク上昇が認められた（OR 1.58、CI：0.25-9.83）。
研究者らは、0.4µTを超える磁界への曝露と小児脳腫瘍のリスクとの正の関連が認められた、と結論付けた。
この関連は、交絡因子または選択バイアスだけでは説明できなかった。

研究の限界(研究者による)
この知見は少ない数に基づいている。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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６１．ノルウェーで、母親が仕事中に1ミリガウス以上の電磁波を浴びると胎児への影響があるとする2002年Ｂｌａａｓａａｓらの研究

作成：２００８−１−３　ＷＥＢへの公開：２０１４−２−１５

植田武智著「IH調理器を買う前に必ず読む本」の中に引用されている文献の内容の確認
以下の文献がP37で「ノルウェーで、母親が仕事中に1ミリガウス以上の電磁波を浴びると胎児への影響がある」という趣旨で、引用されている。

以下はそのノルウェーの研究の内容である。

タイトル；Risk of birth defects by parental occupational exposure to 50 Hz electromagnetic Fields: a population based study
　　両親の職業曝露（50Hz磁界）と出産異常のリスク
研究者；K O Blaasaas, T Tynes, A lrgens, R T Lie
掲載誌；Occup Environ Med: 2002: Vol. 59: p92-97

概要：
Objectives: To study the risk of birth defects by Parental occupational exposure to 50 Hz electromagnetic fields.
目的；両親の50Hz磁界への職業的な曝露と出産のリスクの関係を調査。

Methods:
The Medical Birth Registry of Norway was linked with census data on Parental occupation.
An expert panel constructed a Job exposure matrix of Parental occupational exposure to 50 Hz magnetic fields.
方法：

ノルウェーの医学生誕登録と国勢調査における両親の職業と関係付けた。
専門家グループが両親の職場での50Hz磁界曝露量を推し量るJob-Matrixを作成した。

Exposure to magnetic fields was estimated by combining branch and occupation into one of three exposure levels: < 4 hours, 4 - 24 hours, and > 24 hours /week above approximately 0.1uT.
職種と職場の情報から電磁界曝露を、次の3つのカテゴリーに分類した。
1ミリガウス以上の曝露が1週間で4時間以内、4−24時間、24時間以上　の3群である。

Risks of 24 categories of birth defects were compared across exposure levels.
Out of all 1.6 million births in Norway in the Period 1967 - 95, 836 475 and 1 290 298 births had information on maternal and Paternal exposure, respectively.
出産異常の24のカテゴリーと磁界曝露レベルを比較した。
1967年から1995年の間の160万誕生登録の中から、867475の母親の曝露情報、1290298の父親の曝露情報が得られた。

Analyses were based on tests for trend and were adjusted for parental educational level, place of birth, maternal age, and year of birth.
解析は両親の教育レベル、生誕の場所、母親の年齢、生まれた年を調整して行った。

Results:
The total risk of birth defects was not associated with parental exposure.
結果；

全体のリスクと両親の職業的な磁界曝露との関係はなかった。

Maternal exposure was associated with increased risks of spina bifida (P = 0.04) and clubfoot (P = 0.04).
母親の職業的な曝露は二分脊椎症と内反足のリスクと関連していた。

A negative association was found for isolated cleft palate (P = 0.01).
口蓋裂に関しては陰性の関連があった（通常より異常が少なくなっている）。

Paternal exposure was associated with increased risks of anencephaly (P= 0.01) and a category of other defects, (P = 0.02).
父親の職業的な曝露に関しては、無脳症とその他のカテゴリーでリスクに関連していた。

Conclusion:
The present study gives an indication of an association between selected disorders of the central nervous system and parental exposure to 50 Hz magnetic fields.
結論；今回の研究では、両親の職業的な磁界曝露が中枢神経系の特定の疾患との関連を示している。

Given the crude exposure assessment, lack of comparable studies, and the high number of outcomes considered, the results should be interpreted with caution.
この結果は注意深く解釈しなければならない。

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６２．2003年磁界と乳がん陰性結果

生き生き健康　日経NET　にあった内容　
http://health.nikkei.co.jp/hsn/hl.cfm?i=20030708hk000hk

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
乳癌と電磁場との関連性を否定

多くの活動家や科学者らが抱いてきた疑念に反し、電磁場への曝露が乳癌の原因とはならないことが、総合的な研究から明らかになった。

250万ドルを費やした10年間に及ぶ「ロングアイランド乳癌研究」プロジェクトの研究者らによると、送電線や家庭用配線および器具による電磁場と乳癌の間には何の関連性も認められなかった、と米ロングアイランド（ニューヨーク）の新聞ニュースデイは伝えている。
乳癌女性576人の家庭内の電磁場は、乳癌でない女性585人のものと変わらなかった。

最初に関連性を示唆した癌専門医で米コネチカット大学健康センターの疫学者Richard G. Stevens氏は、この結果に同意し、「家庭内で通常見られる電磁場レベルでは、乳癌リスクは増大しないという有力なエビデンスである」とニュースデイに語っている。
Stevens氏らは、電磁場への曝露が脳でのメラトニン産生を抑制し、その結果、これまで乳癌と関連づけられてきたエストロゲンの産生量が増加すると推定していた。
しかし、今回の研究により一連の問題が収まった、と米国立癌研究所（ＮＣＩ）のスポークスマンは話している。

[2003年6月25日
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

この研究を以下に示す。

掲載誌：Am. J. Epidemiol. (2003) 158 (1): 47-58.
タイトル：Electromagnetic Fields and Breast Cancer on Long Island: A Case-Control Study
研究者：E. R. Schoenfeld, E. S. O’Leary, K. Henderson, et al:

Abstract　　概要

The EMF and Breast Cancer on Long Island Study (EBCLIS) was a case-control study designed to evaluate the possible association between exposure to electromagnetic fields (EMFs) and breast cancer.
電磁波と乳がんに関するロングアイランド研究は、乳癌が電磁界曝露に関係するかもしれないことに関して調査研究することを目的とした症例対照研究です。

Eligible women were participants in the population-based Long Island Breast Cancer Study Project, were under 75 years of age at enrollment, were residentially stable, and were identified between August 1, 1996, and June 20, 1997.
全住民を対象としたロングアイランドの乳癌研究プロジェクトの中から的確な女性が研究対象となった。

Of those eligible, 576 cases and 585 controls participated in EBCLIS (87% and 83%, respectively). In-home data collection included various spot and 24-hour EMF measurements, ground-current magnetic field measurements, wire mapping of overhead power lines servicing the home, and an interview.
この研究母集団の中から576名の症例と585名の対照群が参加した、参加率は其々87%と83%である。家庭内で、24時間の電磁界のスポット測定、対地電流による磁界測定、家屋の屋外の架空電線の配線状況、インタビューを含んだデータを収集した。

Odds ratios and 95% confidence intervals were based on multivariate logistic regression analyses. All odds ratios were close to 1 and non-significant. For the highest quartile of 24-hour EMF measurements, the odds ratio was 0.97 (95% confidence interval (CI): 0.69, 1.37) in the bedroom and 1.09 (95% CI: 0.78, 1.51) in the most lived-in room.
95%信頼区間も計算した。オッズ比は１に近く、有意ではなかった。24時間電磁界曝露量を区分した時、最も高い曝露群ではオッズ比は寝室での曝露では0.97（95%信頼区間は0.69-1.37）、最も多く居る部屋での曝露ではオッズ比は1.09（95%信頼区間0.78‐1.51）であった。

For the highest exposure category of ground-current measurements, the odds ratio was 1.13 (95% CI: 0.88, 1.44) in the bedroom and 1.08 (95% CI: 0.85, 1.38) in the most lived-in room.
最も高い対地電流による磁界への曝露では、寝室での曝露でオッズ比は1.13（95%信頼区間0.88-1.44）、最も長く居る部屋での曝露ではオッズ比1.08（95%信頼区間0.80-1.38）であった。

These and other EBCLIS results agree with other recent reports of no association between breast cancer and residential EMF exposures.
この研究及び他のロングアイランド乳癌研究プロジェクトの研究結果は、住環境下における電磁界曝露と乳がんの間には関連がないと言いう他の研究結果と一致している。

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63．電力の消費量と小児白血病の関係

記：２０１７−１２−２４

「電力消費が増えればそれに伴う磁界暴露も増える。日本や他の国ではここ20年来小児白血病は増加していない。しかし消費電力は着実に増加している。電磁界が本当に影響あるのか？　影響はないのではないか？」という説がある。

＊以下の九州電力のサイトにあった情報は、「影響は「ない」とする説である。

以上は九州電力のＷＥＢにあった内容で、２００３−３−６のログ
２０１７−１２−２３のチェックでは、内容が大幅に更新され、上記の情報は削除されている。

＊日本の研究に類似のものがある。鏡森・そうけ島らの研究である。

研究者： Shigeru Sokejima, Sadanobu Kagamimori, Toshiki Tatsumura
論文： Electric power consumption and leukemias death rate in Japan
掲載雑誌： THE LANCET Vol.348 o September 21, 1996 P21-822

鏡森・そうけ島らの研究で、送電線由来の磁界が小児がんなどの危険因子であることを確かめる為に、形態疫学というのでしょうか？ ある事象と発ガンの相対的な関係を調査しています。
送電線由来の磁界が危険因子であるならば、電力消費量が多い場所では、大きい送電線電流が流れ、電流によって大きな磁界が発生し、そこでは癌が多くなっているのではないかと仮定した。
全国都道府県毎のがんの死亡率と各県の人口当たりの電力消費量との関係を調べた。
結果は、電力消費が多い県では癌の死亡率が下がる という結果であった。
これは、磁界が癌の危険要因であることを否定する結果となっている。

＊２００３年３月４日東京で開催された生体電磁界シンポジウムでは関連する論議があった。

＊Q（大久保 多気）：電力消費が増えればそれに伴う磁界暴露も増える。
日本ではここ20年来小児白血病は増加していない。
しかし消費電力は着実に増加している。
電磁界が本当に影響あるのか。

＊恒松：日本では小児白血病の地域登録が完全でないので、増えているかどうか不明

＊山口：仮に相対危険度を2として、白血病全体への磁界の寄与率を計算してみると1%程度である。
したがって、この程度の寄与率であれば、電力消費の増加との因果関係を追いかけても多分つかまらないであろう。

本日の結論：
ということから、電力消費の増加と白血病の関係に関しては磁界がリスク増加の因子になっていないのではないかという傍証にはなるかもしれないが、確証にはなりそうもない。

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64．子供の白血病の原因　2018年イギリスの研究

記：２０１９−８−１

Gigazineのサイトにあった情報です。
https://gigazine.net/news/20180522-cause-of-childhood-leukaemia/
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
何が子どもの白血病を引き起こすのか︖を過去30年の様々な研究から分析した研究者が発表
2018年05月22日 21時30分

子供の急性リンパ性白血病は裕福な社会で増加しており、その原因について電磁波や化学物質との関連が疑われていました。
そんな中、過去30年に行われた遺伝子学・細胞生物学・免疫学・疫学などの多数の研究結果から、幼少期の白血病は「遺伝子変異」と「生まれて間もない頃に経験する感染症」に原因があるとする研究が発表されました。

Leading UK scientist reveals likely cause of childhood leukemia - The Institute of Cancer Research, London
https://www.icr.ac.uk/news-archive/leading-uk-scientist-reveals-likely-cause-of-childhood-leukaemia

A causal mechanism for childhood acute lymphoblastic leukemia | Nature Reviews　Cancer
https://www.nature.com/articles/s41568-018-0015-6

Missing microbes CAUSE childhood cancer - BBC News
http://www.bbc.com/news/health-44199844

ロンドンのがん研究機関に所属するMel Greaves教授は自身や世界中の各分野の研究者が行った過去30年の研究から、急性リンパ性白血病の原因として、電磁波や化学物質との関連を否定しました。

急性リンパ性白血病は裕福な社会において増加しており、2018年時点でも年1％の割合で増加中です。
Greaves教授は、白血病には「母親の胎内に存在する時に生じる遺伝子変異」と「幼児期に病原菌に接しないこと」が関係し、この2つの要素が組み合わされることで幼少期の免疫不全や白血病が引き起こされること示しました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「電磁波や化学物質との関連を否定」という表現の元ネタを調べてみました。

Leading UK scientist reveals likely cause of childhood leukemia - The Institute of Cancer Research, London
https://www.icr.ac.uk/news-archive/leading-uk-scientist-reveals-likely-cause-of-childhood-leukaemia
にあった原文では
Professor Greaves challenged previous reports of possible environmental causes, such as ionizing radiation, electricity cables, electromagnetic waves or man-made chemicals – arguing that none are supported by robust evidence as major causes.
Greaves教授は電離放射線、電気回線、電磁波や人工的な化学物質などの可能性のある環境因子に関する様々な報告を調査したが、小児がんの主な原因であると確定できる証拠であると言えるものはなかったと語った。
とあります。

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６５．Ｄｅ Roosらの職業曝露と神経芽細胞腫の研究2001年

記：２０２０−５−４

以下の研究がある。

掲載誌：EPIDEMIOLOGY 2001;12:508-517
論文名：Parental Occupational Exposures to Electromagnetic Fields and Radiation and the Incidence of Neuroblastoma in Offspring
親の職業的な電磁界暴露と子供の神経芽細胞腫の罹患率
研究者：Anneclaire J. De Roos, Kay Teschke, et al;

概要：
We examined parental occupational exposures to electromagnetic fields and radiation and the incidence of neuroblastoma in offspring.
親の職業的な電磁波暴露と子供の神経芽細胞腫の罹患率を調査した。

Cases were 538 children diagnosed with neuroblastoma between 1992 and 1994 in the United States or Canada.
症例は1992年から1994年の間にアメリカとカナダで神経芽細胞腫と診断された538例である。

Age-matched controls were selected by random-digit dialing.
年齢を調和させた対照群をランダム電話ダイヤルで選択した。

Occupational exposures to electrical equipment and radiation sources were classified by an industrial hygienist, and average exposures to extremely low frequency magnetic fields were estimated using a job exposure matrix.
職業的な曝露は産業衛生の専門家が区分した、平均低周波磁界への曝露値はＪｏｂマトリックスによって推定を行った。

Maternal exposure to a broad grouping of sources that produce radiofrequency radiation was associated with an increased incidence of neuroblastoma (odds ratio = 2.8; 95% confidence interval = 0.9-8.7).
母親が無線周波数電波のよるさまざまな発信源から電磁界に曝露している場合、子供の神経芽細胞腫のリスクは増加し、オッズ比は2.8　95％信頼性区間は0.9-8.7であった。

Paternal exposure to battery-powered forklifts was positively associated with neuroblastoma (odds ratio = 1.6; 95% confidence interval = 0.8-3.2), as were some types of equipment that emit radiofrequency radiation (odds ratios 2.0); however, the broad groupings of sources that produce ELF fields, radiofrequency radiation, or ionizing radiation were not associated with neuroblastoma.
父親が電池駆動のフォークリフトを使用している場合、子供の神経芽細胞腫と関連があり、オッズ比は1.6（信頼性区間：0.8-3.2）、同様に、無線周波数を発信しているある種の機器の使用ではオッズ比は2.0であった。しかし、さまざまなＥＬＦ電磁界・無線周波数・電離放射線を放射する放射源との関係はなかった。

Paternal average extremely low frequency magnetic field exposure >0.4 microTesla was weakly associated with neuroblastoma (odds ratio = 1.6; 95% confidence interval = 0.9-2.8), whereas maternal exposure was not.
父親が平均0.4μテスラ以上の低周波磁界に曝露している場合は、神経芽細胞腫との弱い関連があったが、母親の場合は関連がなかった。{

Overall, there was scant supportive evidence of strong associations between parental exposures in electromagnetic spectrum and neuroblastoma in offspring.
纏めると、親の電磁界暴露と子供の神経芽細胞腫が強い関連性があるということに対して、弱いながら支持している。

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６６．1997年 Tynesらのノルウェー　送電線と小児がんの疫学研究

２０２０−５−１１

以下の研究がある。
EMF Portalのサイトにあった情報を一部加工した。

掲載誌: Am J Epidemiol 1997; 145 (3): 219-226
タイトル：Electromagnetic Fields and cancer in children residing near Norwegian high-voltage power lines.
ノルウェーの高圧電力線の近くに住む子供の電磁界とがん
研究者: Tynes T, Haldorsen T

この研究は、「高圧電力線が発生する電磁界への曝露が0-14歳の小児におけるがんの発生率を増加させる」という仮説を検証するために、集団ベース症例対照研究を行った。
調査集団は、1960年、1970年、1980年、1985年、1987年、または1989年の少なくとも1年間、高圧電力線が横断する国勢調査地区に住んでいた小児で構成された。＜国勢調査に記入された住所などを基に解析を行うために、5年毎のデータしか解析の対象にできず、よって症例数が僅少に終わった。＞

症例は1965年から1989年に診断され、出生年、性別、および行政地区を対照と一致させた。
電界および磁界への曝露レベルは、電力線の特性および距離を考慮したコンピュータプログラムによって計算した。
その結果、１）時間加重平均した磁界曝露と全がん、脳腫瘍、リンパ腫、または白血病との間に関連性は見られなかった、２）その他の部位のがんでは、今回分類した曝露尺度の全てではないが、いくつかの曝露尺度における２つの最高曝露カテゴリーで、オッズ比の上昇が見られた、と報告している。

目的：高圧電力線から発生する電界及び磁界への曝露が子どものがんのリスクを上昇させるという仮説を検証するため、ノルウェーでコホート内症例対照研究を実施した。

詳細情報：
・がん症例を同定するため、高圧電力線の近くの区に住むすべての子どもを、ノルウェーのがん登録とリンクした。曝露は、電力線の特徴と距離に基づいて計算した。
＜ノルウェーはガン登録が完備しているので、こうした研究ができる。日本はガン登録が十分ではないので、こうした研究は不可能。＞

曝露評価としては、住所から最も近い送電線までの距離に基づき、タワーの高さ、位相の間隔、位相の順序、線の過去の負荷を含む計算で行った。

・1960、1970、1980、1985、1987または1989年の少なくとも1年間、選択された区に住む168、450人の子どもを対象とし、症例：500人、対照：2004人の参加を得た。

結論
・0.2μT超の磁界への時間加重平均曝露は、僅か10人のがん症例についてしか計算できなかった。
磁界への時間加重平均または累積曝露と、全ての側を組合わせた小児がん、脳腫瘍、リンパ腫及び白血病との関連は認められなかった。

他の部位でのがんについては、最も高い曝露カテゴリーの⼀部においてリスク上昇が観察された。

この知見は、磁界への曝露と小児がんとの関連をほとんど支持しておらず、また、小児白血病と磁界との関連を全く支持していない。

・参加者数が少ないため、確たる結論は導けない。

BEMSJ注：
6年間分の国勢調査を対象として、小児がんは累計で500人、この中で0.2μＴ以上の曝露でガンになったかもしれない子供は10名、癌患者の２％が送電線由来のガンが疑われる、ということになる。年平均で2名以下。これだけ僅少であれば、簡単に疫学調査で結論は出せない。

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６７．1999年 Mcbrideらのカナダ磁界と小児がんの疫学

記：2020-5-12

掲載誌: Am J Epidemiol 1999; 149 (9): 831-842
タイトル：Power-frequency electric and magnetic fields and risk of childhood leukemia in Canada.
カナダにおける電力周波数電界及び磁界と小児白血病のリスク
研究者: McBride ML, Gallagher RP, Theriault G, et al;

目的：電力周波数の電磁界曝露に関連した小児白血病の危険度を評価すること。

方法：
研究対象：カナダ・ブリティッシュコロンビア州ほか4州に住む年齢0〜14歳の小児。症例小児399名、対照小児399名。
曝露評価：48時間個人電磁界測定、受胎から診断／基準日までの被験者の住居のワイヤ・コード化及び磁界測定、寝室の24時間磁界測定。

結果：
OR=調整後オッズ比：個人磁界値は白血病あるいは急性リンパ球性白血病の危険度とは関係がなかった。
全白血病（OR=0.95(95％CI 0.72-1.26)、傾向のp値=0.73［表4］）、急性リンパ球性白血病（OR=0.93(95％CI 0.70-1.25)、傾向のp値=0.64［表6］）。

被験者の診断／基準日の2年前または生涯の推定磁界曝露量［表4］、個人電界曝露量［表7］と小児白血病の危険度との明らかな関連性はなかった。
診断／基準日の2年前の被験者の住居の中で極めて高位置に電線の配置があると、急性リンパ球性白血病の危険度の統計的に有意でない上昇が認められた。［表6］。地下配線と比較してOR=1.72(95％CI 0.54-5.45)。

本研究の結果は、電力周波数の電磁界と小児白血病の危険度の関連性をほとんど支持しない。

曝露評価
１）ワイヤ・コード：Wertheimer-Leeperの方法、Kaune-Savitzの方法
２）測定: 子どもの寝室での24時間測定、住居の周囲での測定
３）ドシメータ: 個人の48時間の磁界及び電界測定

表4：個人曝露量で解析した表：全小児白血病
＜BEMSJ注：曝露強度とORとの関係が見えない、曝露強度が高くなるにつれて単調にORが大きくなっていれば磁界曝露との関連性があると言えるのだが、そうなってはいない。＞

表5：Wertheimer-Leeperのワイヤ・コードで解析を行った結果：全小児白血病。
＜BEMSJ注：診断日で判定すると最も高い曝露群で、統計的には有意ではない（CIの下限値が1以下）がORの増加がある。しかし、診断日より2年前の時点で判定すると最も高い曝露群でのOR増加は観察されなくなっている。磁界に暴露して即時にガン発症する訳ではないので、診断日の1年前もしくは2年前から磁界に曝露しなければ、磁界との関連性はあるとは言えなくなる。＞

表6；急性小児白血病に関して、個人曝露量、2種のワイヤ・コードで解析
＜BEMSJ注：ワイヤ・コードの高曝露群ではORの増加があるが、磁界の実測値で同じデータを見直すと、高曝露でもORの増加はない。このことはワイヤ・コードでの解析は、実際の磁界曝露量を反映していないと言える。＞

表7：磁界曝露の代わりに電界曝露での解析：
＜BEMSJ注：電界曝露と白血病のリスクとは無関係となった。＞

結論：
曝露評価の種類にかかわらず、磁界及び電界に関する小児白血病のリスク上昇は認められなかった。診断の2年前の被験者の住居において、「非常に高い」電線配置に関する急性リンパ性白血病の有意でないリスク上昇が認められた。

この知見は、電力周波数の電界及び磁界と小児白血病のリスクとの関連に対する支持をほとんど与えていない。

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６８．2001年ICNIRPの専門家グル―プの疫学に関するレビュー

記：２０２０−５−１７

以下の研究論文がある。
EMF Portalのサイトから

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
掲載誌: Environ Health Perspect 2001; 109: 911-933
タイトル：Review of the epidemiologic literature on EMF and Health.
EMFと健康に関する疫学文献のレビュー
研究者: Ahlbom A, Cardis E, Green A, Linet M, Savitz D, Swerdlow A

この総説は、超低周波数電磁界（EMF）への曝露と健康への影響に関する疫学研究の歴史および結果について解説している。レビューの結論として、
a) この分野の疫学研究の質は向上してきており、近年の小児白血病に関する研究、およびがんと職場曝露に関する研究は、研究規模と方法上の厳密性に関して我々が現実に達成できる限度に近づいている；

b) 曝露評価には、特にEMF疫学では困難であり、
その理由は、
i) 曝露は感知できず、ユビキタスで、複数の発生源があり、時間的および短距離で大きく変動する、
ii) 関連する曝露期間は、実際に計測する日より前のことで、期間や誘導期間が不明である、
iii) 適切な曝露指標が分かっておらず、その基になる生物学的データもない；

c) 実験的証拠がなく、方法論的不確かであることを考え合わせると、EMFとの病因学的関連が確立されたと見なせるような慢性疾患ない；

d) 小児がん、および職業曝露に関連する成人の白血病と脳腫瘍に関しては、質の高いいデータが大量に存在する、としている。

EMF疫学研究で評価された全ての結果の中では、0.4μT以上への出生後曝露に関連した小児白血病が、最も関連の証拠があるものの一つであり、プール分析では相対リスク値が2.0（95％信頼区間：1.27-3.13）となった。
これを、偶然によるものとは考えにくいが、一部、バイアスによるものである可能性がある。
メカニズムが不明で、再現性のある実験の裏付けがない現状では、この疫学結果の解釈は困難である。
ただし、大規模なプール分析では、小児全体の0.8％が、0.4μT以上の曝露を受けていた。
今後の研究は、選択バイアスや曝露の観点など、個別の仮説を検証する研究デザインにする必要がある、と述べている。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

筆者らは、それぞれ疫学研究で多くの論文を発表してきている研究者です。

彼らの総合的な判定として、この論文があることは重要です。
関心のある方は、原著全文を読んでください。

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６９．2006年アメリカのFoliartら、磁界曝露と小児がん研究

記：２０２０−８−１４

＊以下はEMF Portalのサイトにあった情

掲載誌：Br J Cancer 2006; 94 (1): 161-164
タイトル：Magnetic field exposure and long-term survival among children with leukemia.
⽩⾎病の⼦どもの磁界曝露と⻑期的な⽣存率
研究者：Foliart DE, Pollock BH, Mezei G, Iriye R, et al;

磁界（MF）曝露と急性リンパ芽球性⽩⾎病（ALL）での⽣存との関係を調べた。
1996-2001年で51の⼩児がん研究グループセンターで治療を受けた⼩児が対象であり、処置を受けた1672名の⼩児で482名（29%）を参加させ、412名の参加者から24時間の個⼈磁界曝露を⼊⼿した。

合計386名の⼩児がALLで、361名が前駆B細胞ALLで、これらを⽣存率（事象⾃由⽣存と全⽣存率）の解析に含めた、リスクグループと社会経済的状況を調整した後の⼩児の事象⾃由⽣存⽐（HR）は、0.1uT以下と比較して、0.3uT以上で1.9（95%CI: 0.8-4.9）であったが、これは僅か19名中、4名の死亡で得られた結果である。
0.3uT以上で⼩児のリスクは増加しているが、この結果に対しては症例数が⼩さいので制限を受ける。

曝露集団	磁界曝露
集団 1	< 0.1μT
集団 2	0.1-0.19μT
集団 3	0.2-0.29μT
集団 4 ︓	≥ 0.3μT

＊Full Textを読むと

TWAで3μＴを超えている割合は386名中19名で、5.3％を占める。

結果のまとめ

ＢＥＭＳＪのまとめ
確かに0.3μＴ以上の曝露群では、リスクの増加はある。
しかし、これは全体の５％以下の比較的少数の症例者・曝露者におけるリスク増加であり、また、明確な曝露強度との量‐反応関係は見られない。

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７０．1996年Cooganらの職業的な磁界曝露と乳がんの研究

記：２０２０−１０−２９

以下の研究がある。

掲載誌：Epidemiology 1996; 7 (5): 459-464
タイトル：Occupational exposure to 60-hertz magnetic fields and risk of breast cancer in women.
婦人の60Hz磁界への職業曝露と乳がんリスク
研究者:Coogan PF, Clapp RW, Newcomb PA, et al;

概要
We used data from a large population-based case-control study to test the hypothesis that women whose "usual occupation" entailed exposure to higher than background 60 Hz magnetic fields had a higher risk of breast cancer than women without such exposure.
女性の職業上、６０Hz磁界曝露は背景量より大きい場合、そうでない女性に比べて、乳がんへのリスクが高いとする仮説を確かめるために、大規模な人口ベースの症例対照研究のデータを用いた、

Breast cancer cases were identified from four statewide tumor registries, and controls were randomly selected from lists of licensed drivers and Medicare beneficiaries.
乳がんの症例は4つの全国的なガン登録から抽出し、対照群は運転免許者と医療保険受取人のリストから無作為に抽出した。

Information on usual occupation and breast cancer risk factors was obtained by telephone interview.
通常の職業と乳がんリスク要因に関する情報は電話インタビューで得た。

We calculated adjusted odds ratios from logistic regression models for women holding occupations with potential for low, medium, or high magnetic field exposure, compared with background exposure.
対象者の職業的な曝露を背景曝露に比べて低い、中程度、高いとして、ロジステック回帰解析でオッズ比を計算した。

There was a modest increase in risk for women with potential for high exposure [odds ratio (OR) = 1.43; 95% confidence interval (CI) = 0.99-2.09], and no increase for women with potential for medium (OR = 1.09; 95% CI= 0.83-1.42) or low (OR = 1.02; 95% CI = 0.91-1.15) exposure.
曝露が高いとした群では乳がんのリスクの増加（オッズ比1.43　95%CI：0.99‐2.09）が見られ、中程度の曝露群（オッズ比：1.09）と低い曝露群（オッズ比；1.02）ではリスクの増加は見られなかった。

The risk among premenopausal women in the highest exposure category was higher (OR= 1.98; 95% CI = 1.04-3.78) than for postmenopausal women (OR= 1.33; 95% CI= 0.82—2. 17).
閉経期前の女性のリスク（オッズ比：1.98）は閉経後女性のリスク（オッズ比：1.33）より、高い曝露群ではリスクは高かった。

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７１．英国送電線と肺がん研究2000年

記：２０２１−１−１４

１）週刊金曜日 2000.10.13 (335号)にあった記事の一部

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
高圧送電線の風下で肺がん多発：英国
英国・プリストル大学の疫学研究者らが高圧送電線の人体影響について調査し、送電線の風下で肺がんが多発していることがわかったと9月21日、BBC放送がネットで報じた。

調査は同大学のアラン・プリース博士らが行なった。
送電線から４00メートル以内の各種がん発生率をイングランド南部全体で調べたところ、風下では対照群と比べ、肺がんのリスクが29％高かった。

プリース博士は、「イギリス全体では交通事故死に匹敵する重大な結果で、鵞いている。他の地域での調査を考えたい」と述べた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

２）元ネタはBBCのニュース

news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/933678.stmにあった以下のニュースが元ネタと思われる。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
Thursday, 21 September, 2000, 00:37 GMT 01:37 UK
Cancer rise linked to power lines

Dr Preece's own work is yet to be published officially.
But a conference in Germany earlier this year of the Bio electromagnetics Society heard that it suggested an average increase in the cancer risk of 29% over the expected rate.
プリース博士自身が行なった研究の成果は、まだ論文として刊行・公表されていない。
しかし今年の初めにドイツで開催された生物電磁気学会BEMSの会議では、癌発生率が期待値よりも平均して29パーセントも高いことが報告された。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

以下のサイトには、上記BBCニュースが翻訳されて紹介されている。
http://www.asyura2.com/sora/bd10/msg/368.html

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
送電線の風下の住民は発癌リスクが高い
阿修羅♪
投稿者 佐藤雅彦 日時 2000 年 9 月 23 日 17:39:29:

送電線の風下の住民は発癌リスクが高い

●最新のBBCニュースが「送電線は癌の発生につながっている」という興味深いニュースを伝えています。
（略）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

ニュースによれば、ミュンヒンの会議か何かで、話をしたようだが、2000年の時点ではまだ論文に書いていない模様。

３）BEMS総会2001年に口演で発表

掲載誌：Bioelectromagnetics (BEMS) 23rd Annual Scientific Conference; June 10-14, 2001. St Paul, MN, USA.
タイトル：3-3：CANCER AND HIGH VOLTAGE POWERLINES WITH RESPECT TO WIND DIRECTION.
研究者： A. Preece, M.G. Wright*, G.R. Iwi*, E. Dunn*, D.J. Etherington*

BACKGROUND: The past 20 years has seen considerable research into the health effects of exposure to power frequency magnetic fields, where a number of studies, notably those near high voltage power lines　have suggested an association with childhood leukemia  .

These studies have looked at cases of cancer within 50m of power lines (the range of the magnetic field)2 and have considered only distance and not prevailing wind direction; at these distances any wind direction effects are likely to be obscured.

Recent studies have suggested that aerosols produced by very high voltage lines might combine with pollutants and indirectly might be a mechanism for increased cancer rates .　

RESULTS: The ratio of the observed to expected number of cancer registrations up or down wind with the 95% confidence intervals were compared for different cancers (Table 1).

There is a statistically different incidence (raised) downwind compared to upwind for mouth and respiratory cancer, but no differences for combined stomach and colorectal cancer.　

For the "false lines", the only significant result is a lower incidence downwind for stomach and colorectal cancers. As can be seen in Figure 1, there are some small differences in the age distribution of the two populations when down and up wind are compared as a ratio.　

There are similar problems with considering socio-economic status. This and age has implications for smoking behaviour. This study is now being expanded to cover the complete South and West Cancer Intelligence Unit region - population 4.9 million compared to 1 million in Avon. 　

The resulting increase in cancer registrations should reduce the confidence intervals and allow correction factors to be added to account for the different age distributions.

		“False lines" in Avon	Cases	Real lines in Avon County	Cases
All Cancers全癌	Downwind	0.97 (0.94-1.00)	4113	1.05 (1.02-1.08)	4028
	Upwind	1.00 (0.97-1.03)		1.00 (0.97-1.03)
Mouth　口	Downwind	1.04 (0.80-1.28)	58	1.43 (1.15-1.71)	43
C00-C14	Upwind	1.00 (0.73-1.27)		1.00 (0.71-1.29)
Respirator呼吸器	Downwind	1.04 (0.96-1.12)	559	1.11 (1.02-1.20)	530
C30-C37	Upwind	1.00 (0.91-1.09)		1.00 (0.92-1.08)
Digestive消化器	Downwind	0.91 (0.84-0.98)	802	0.98 (0.91-1.05)	762
C15-C26	Upwind	1.00 (0.93-1.07)		1.00 (0.93-1.07)

Table 1: The incidence of cancer upwind or downwind of high voltage powerlines. Observed/expected (95% C.I.) based on an estimate of population (with the statistically significant differences in bold)　

年代別に解析したデータ

概要：送電線からのエアロゾルの影響で発癌リスクの増加がないかガン登録データから患者の住所を送電線からの距離と風上か風下かに分けて研究した。
送電線から500m以内に住む人をReal Lineとし（曝露群）、2�q以上離れた場所に住む人をFalse　Lineとした（疑似曝露群）。
曝露群では風上に住む人に比べて、風下に住む人に僅かな癌のリスク増加が見られる。リスクは全癌：1.05、呼吸器： 1.11、口内：1.43とリスクの増加はあるが、大きくはない。
さらに年代別に見ると、曝露群と疑似曝露群を比較すると、年代によっては曝露群のリスクが大きかったり、疑似曝露群のリスクが大きかったりしている。

従って、BEMSJの目には「疫学調査の限界で、この報告で送電線からのエアロゾルが原因で癌の増加があると結論付けることは困難」と言える。

４）査読付き論文としての刊行

EMF Portalにも、Pubmedにも2000年頃のこの研究は見つからない。
Reserachgateにある彼の論文を見ても、関連した論文はない。

学会での口演発表は行ったが、査読付きの学術論文としては刊行されずに終わっている。

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７２．Sobelらの磁界とアルツハイマーの疫学研究1995年

記：２０３１−３−１４

掲載誌：American Journal of Epidemiology, Volume 142, Issue 5, 1 September 1995, Pages 515–524,
タイトル：Occupations with Exposure to Electromagnetic Fields: A Possible Risk Factor for Alzheimer's Disease
磁界の職業的曝露：アルツハイマー病での可能性のあるリスク因子
研究者：Eugene Sobel, Zoreh Davanipour, Joseph D. Bowman, at al:

Abstract　概要
The authors present analyses of data from three independent clinical series and controls indicating an association between working in occupations with probable medium to high exposure to extremely low frequency (<300 Hz) electromagnetic fields and sporadic Alzheimer's disease.
本研究は、3つの独立した臨床データの解析結果を示し、中程度から高曝露強度の低周波（300Hz以下）電磁界の職業曝露と散発性アルツハイマー病との関係を示す。

Case-control analyses were carried out using data from patients examined at the following locations: the Department of Neurology, University of Helsinki, Helsinki, Finland, 1982–1985; the Koskela Hospital in Helsinki, 1977–1978; and the University of Southern California site of the Alzheimer's Disease Research Center of Los Angeles and Orange Counties, 1984–1993.
3つの症例対照研究を行った、ヘルシンキの大学で1982−1985年、ヘルシンキの病院で1977−1978年、ロスアンジェルスの大学で1984−1993年。

The predominant occupations among medium (2–10mG or >10mG intermittently) to high (>10mG or >100mG intermittently) exposed cases were seamstress, dressmaker, and tailor.
中程度曝露（平均値2−10mGか断続的に10ｍＧ以上）と高曝露（平均10ｍＧ以上か断続的に100ｍＧ以上）群の症例者の主な職業は裁縫婦、婦人服の仕立屋、洋服の仕立屋であった。

The results appear to be independent of education, and the sex-combined odds ratios for the three series are quite homogeneous 2 9, 3.1, and 3.0.
結果は教育レベルとは独立しており、男女混合のオッズ比は3つのカテゴリーでほぼ一定で、2.9、3.1、3.0であった。

The odds ratio for the three series analyzed together is 3.0 (p < 0.001), with a 95% confidence interval of 1.6–5.4.
3つのカテゴリーを統合したオッズ比は3.0（Ｐ値0.001以下）で、95%信頼性区間は1.6‐5.4であった。

The odds ratio for women is 3.8 (p < 0.001), with a 95% confidence interval of 1 7–8.6.
女性のオッズ比は3.8（Ｐ値0.001以下）、95%信頼区間は1.7−8.6であった。

The most obvious, possibly etiologically relevant exposure is that of electromagnetic fields, which may have biologic plausibility because they may adversely influence calcium homeostasis and/or inappropriately activate immune system cells such as microglial cells, initiating events that result in neuronal degeneration.
最も理解しやすく可能性のある原因と関連する曝露は電磁波である。電磁波は生物学的に可能性があり、それはカルシウムの恒常性に異常な影響を与えるかもしれず、また、microglial細胞と言った免疫システムを不適切に活性化するかもしれず、結果として神経を退化させるにつながるからである。

Full textは研究者の一人 Bowmanより入手済み。

BEMSJ注：職業として裁縫婦、婦人服の仕立屋、紳士服（洋服）の仕立屋は電動ミシンを使っており、ミシンからの低周波磁界曝露が主な曝露源であり、アルツハイマー病の原因となっていると想定される、というのがこの研究である。

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７３．Amoonら2022年プール分析

記：２０２３−２−１８

掲載誌: Environ Res 2022; 204 Pt A: 111993
タイトル：Pooled analysis of recent studies of magnetic fields and childhood leukemia
磁界と小児白血病について最近の研究のプール分析
研究者: Amoon AT, Swanson J, Magnani C, Johansen C, Kheifets L

超低周波（ELF）磁界の測定値または計算値と小児白血病との関連を扱った40報以上の疫学研究が、一連のプール分析に統合されているが、最後のプール分析から10年が経過している。

この研究では、2010年のKheifetsらのプール分析以降に発表された居住環境磁界曝露と小児白血病に関連する症例対照研究をPubMedなどの研究データベースから9件抽出し、その中で、子供および小児白血病について個別のデータが有り、人口集団ベースで、住居内での磁界測定値または計算値を提示するものという条件を持つ４件の研究をプール分析の対象とし、個人レベルのデータ（症例24,994人、対照30,769人）を包含した。結果、先行プール分析とは異なり、より強い磁界に曝露された子供における白血病のリスク上昇は認められなかった。

曝露レベルが0.1μT未満と比較して、0.4μT以上でのオッズ比（OR）は1.01であった。
同様に、急性リンパ芽球性白血病のサブセットでは、出生時の住居、磁界計算値を用いた研究、またはジオコード化の精度を無視した場合、関連は認められなかった。

これらの研究では、時間経過とともにリスクが減少し、このことは3報のプール分析との比較でも明白であった。
この3報のプール分析のメタ分析は全体として、0.4μT以上の曝露に対してOR=1.45（95%信頼区間（CI）= 0.95-2.20）を示した。
この研究の結果は、先行プール分析とは一致せず、事実上のリスク低下と、磁界と小児白血病との関連がないことを示しており、これは手法上の問題、無作為の偶然、または影響がないという真の知見によるものかもしれない、と著者らは結論付けている。

JEIC NEWS 2022年４月　第６３号にはこの研究の解説記事が掲載されている。
関心のある方は、読んでいただくこととし、以下に参考データのみ紹介する。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

＜、過去のプール分析では、0.4μT以上の曝露ではオッズ比の増加が見られたが、この研究では増加は見られない、ということが大きな特徴である。＞

研究者は、結論として、「我々の結果は、先行プール分析で観察されたリスク上昇を示しておらず、また、時間経過に伴い、磁界と小児白血病との関連がない側に影響が低下していることを示している。

これは、手法上の問題、無作為の偶然、または影響がないという真の知見によるものである可能性がある。
この知見の公衆衛生上の意味合いは、当然ながら非常に困難で、これは（本質的にリスク上昇の証拠はないという）最新の証拠が真のリスクの最良推定であるとするか、あるいは、全期間を通じて集約された証拠（僅かなリスク上昇がある）が真のリスクの最良推定であるとするかに依存する。」と述べています。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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＊動物実験

B１．磁界と乳がん　エストロゲンの要素も加味した動物実験　

厚生労働省研究　平成11年度　大久保千代次「超低周波電磁界の癌増殖作用に関する研究」から一部を抜き出した。

図などは割愛。　作成：２００３−７−１５　

B.研究方法　
1．実験動物　
実験には、がん細胞の移植時点で8週齢の雌性BDF1マウス(日本チャールズリバー)を用いた。

2．移櫨するがん紬腕の調製　
本研究では、マウス乳がん由来の細胞株であるMXT3590株を用いた。
本細胞株は呉羽化学工業より入季した。本細胞はEstrogenに対する受容体を有する細胞であることが報告されている。

3．がん細胞の移植　
がん細胞はinViVOでの継代をおこなったものを使用した。
曝露群および対照群のマウスには1mm角の細胞塊を、移植針を用いて移植した。

4．曝露装蟹および動物の管理　
電磁界曝露に当たっては、ホルムヘルツ型3軸コイル曝露装麓(タカノ技研:図１)を用いた。本研究における条件は、周波数50Hz、磁束密度３ｍTで3軸均等磁力によって形成される直線磁界である。曝露は1日18時簡(19:00〜翌13:00)とし、飼育管理上の作薬及び実験は、曝露装鰻の停止時期に行った。

C．研究結栗　
C-1曝露群および対照群の体璽変化　
曝露群、対照群ともに、体重は増加傾肉を示し、それぞれの群間で統計約な有意差は見られなかった。図2に細胞を移植したのち7日目、および28日目のマウスを示す。　
また図3にそれぞれの群の体重の変化を示すが両群間に統計的育意差は見られなかった。また、曝露群、対照群共に、行動異常など特記すべき変化も見られなかった。　

C-2腫瘍容積の変化　
曝露群、対照群ともに、28目間の追跡を行い、7、14、21、28日目に腫瘍の大きさを渕定し、方法の項に記した計算式によって腫瘍の容積を算出した。その結果を、図4に示した。

両群間の間に有意差はみられなかった。
また、図5には曝露群における各個体の腫瘍容積の変化、図6には対照群の各個体の変化を示す。

腫瘍塊の容積の測定は曝露開始28日目にマウスを解剖し、固形腫瘍を摘出して、その重量を潮定した。

D.考察　
本隼度は皮下に腫瘍塊を移植し、固形腫瘍を形成させることでより長期に亘る電磁界の作用を調べた。
今年度の研究においては、エストロゲン受容体陽性のマウス乳がん由来細胞株MXT3590を用いた。　

本研究においては、エストロゲン感受性を有する細胞株を用いたため、増殖においては、血清中のエストロゲン、さらにそれを制御する因子であるメラトニン濃度が重要な増殖刺激になっていることが考えられる。　
本モデルにおいても、メラトニンを直接定量して、検討する必要があると考えられる。
マウスのメラトニンの定量については、感度、特異性共に高い検出システムを用いて検討していく必要があると思われる。　

E.結論　
マウス乳がん細胞を皮下に移植した担がん動物に対して、周波数50Hz磁束密度3mTの直線磁界を28日間にわたり連日18時間曝露し、電磁界のがんの増殖刺激作用に及ぼす影響について調べた。
その結果、上記の条件では電磁界曝露による影響は認められなかった。　

BEMSJのコメント：　
論文：スウェーデンの高圧送電線近傍に住む大人の乳がんと磁界の関係　
Magnetic Fields and Breast Cancer in Swedish Adults Residing near High-Voltage Power Lines

研究者：Maria Feychting et al:　　　
掲載雑誌：Epidemiology　July　1998　の研究で、　
「エストロゲンレセプタがプラスの人で、50歳以下の場合は、磁界が乳がんの促進因子になっている可能性がある」と報告されている。
この研究を受けて、動物実験を行ったものと思われる。疫学での推定は、この動物実験では支持されなかった。

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B２．1998年坂部らの低周波磁界とラットの精子への影響

記：２０２０−７−２６

以下の研究がある、

掲載誌：日衛誌(Jpn.J.Hyg.)、53、420-425(1998)
タイトル：50Hz変動磁場暴露のマウス精子形成への影響について
研究者：古屋博行、相川浩幸、 坂部貢ら

我々は、マウスを50Hz、1.0mTの変動磁場に長期暴露し、精巣のDNA含有量をフローサイトメトリー解析で測定することにより精子形成での異常の有無について調べた。
磁場暴露は餌、水交換のための約10分間を除いた1日24時間で行った。

マウスでは、精祖細胞から成熟した精子細胞が形成されるまで12ステージ/1サイクルを4.5サイクルかかり、約43.8日を要する。
さらに精巣上体の滞在時間7日を加え、精祖細胞から精子形成までの日数を52日とした。
精子形成を4期に分け観察するため、暴露開始から13、26、39、52日目の午前中に両群7匹づつ、炭酸ガス深麻酔により安楽死させ、心採血後に精巣を摘出した

結果
精巣重量は対照群と暴露群との間に有意差は認められなかった。
また、精巣から採取した細胞数も、対照群と暴露群との間に有意差は認められなかった。
その他の変化は、以下のグラフに

考察：
13日間暴露では第1精母細胞以降精子細胞までの間の精細胞傷害による影響が、26日間暴露では精祖細胞傷害による分化への影響が見られ、さらにそれまでの精細胞傷害による、あるいは変動磁場暴露による影響により惹起された、精巣局所内の精細胞、セルトリー細胞、ライディッヒ細胞を中心としたホルモン制御機構の変化13)が、精祖細胞の分化を促進する方向に働いたと考えられる。

39日間暴露では変動磁場暴露による影響よりも性成熟に伴う中枢性のホルモン制御を強く受け、52日間暴露では精祖細胞の分化は充進していたが、精祖細胞自身の増殖が障害されていたと考えられる。
従って今回の変動磁場による長期暴露実験では、精細胞への直接傷害とホルモンの変化の両方のメカニズムを介して、精祖細胞の分化と増殖の両方に影響があったと考えられる。

ＢＥＭＳＪ注；論文が難解で、理解しにくいが、ネズミに１ｍＴの低周波磁界を曝露した場合、精子に影響が見られた、という結果と言える。

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B3．畑中らのネズミ撃退器からの磁界などによる精子への影響

記：２０２０−１０−２８

１）荻野講演レジメにあった畑中論文

『生活の中にひそむ電磁波被曝による身体への影響』
2019.6.22 東京・板橋グリーンホール 荻野晃也（電磁波環境研究所）

この講演レジメの中に以下の記述があった。
『イオンチャンネル・オートファジー・ホルモン・酸化ストレス・アポトーシスに加えてミトコンドリアやDNA損傷などが指摘されてきていて、国別では中国・イラン・韓国・ブラジル・中国などの研究が多いのです。「影響なし報告の多い」日本ですが、珍しく畑中論文（2011、2014）が50Hz被曝での精子影響を報告しています。』

そこで、この畑中論文の詳細を調べてみた。

２）畑中らの2005年研究

掲載誌：千菓大学教育学部研究紀要　第53巻 309-316頁(2005)
タイトル：マウスの生育に伴うネズミ駆除器からの電磁波曝露に対する感受性の変化
研究者：畑中恒夫、田村暁良、浅村恵未

概要：
ネズミ駆除器の電磁波がマウスの生理作用に様々な影響を及ぼすことが知られている。
それらの電磁波に対する感受性がマウスの成長段階により異なるかどうか確かめるため、成体、幼若体及び乳児を市販のネズミ駆除器の電磁波に曝露し、影響を調べた。

その結果、成体では電磁波を感じ装置を避けることが示されたが、長期間の曝露に対しても、曝露期間中、餌及び水の摂取料と体重に変化がなかった。

また、幼若体も順調に成長し、共に電磁波曝露の影響が見られなかった。
しかし、乳児は3分の2が曝露期間中に死亡し、生存した個体も成長が遅れ、授乳期には電磁波曝露は重大な影響を及ぼすことが示された。

本文より
・これらの電磁波による駆除器はネズミの嫌う周波数の電磁波で追い払う働きをするとされている。
また、この装置は本体からでなく、つながっている電線もアンテナとし、そこからも電磁波を出すため室内配線を通じ、広い範囲に作用するとされている。
しかしながら、一部の機種は誇大広告として公正取引委員会から排除勧告が出されている。
市販のネズミ駆除器にはネズミを追い払うほか、電磁波を浴び続けるとネズミは脱水症状となり衰弱するという報が付いている。
ヒトでは小児ガンの増加のように、子供の方が電磁波の影響を受けやすいと考えられている。
そこでこの装置からの電磁波のネズミの生理に及ぼす作用は、ネズミの成長段階を通じて変化するかどうか調べるため、乳児、幼若体、成体の3段階のマウスを使用して電磁波曝露の影響を比較した。

・市販の駆除装置はPAC-lC(Global Instruments Ltd.)を用いた。
これは図1に示すような周期的に変わる電磁波を発生した。
低周波電磁波は50Hzの上に大きさ1/5の357Hzの波が乗った波(A)が2分24秒間持続した後、2倍の大きさの50Hzの波(B)と357Hzの波が乗った波(A)が1.2秒毎に交互に4分48秒間続するものが繰り返し生じている。

・装置に付属していた説明の電磁波の有効範囲は1.5m。

・長時間にわたる電磁波曝露の影響。
装置の説明文では、電磁波を浴び続けると、ネズミの飲水量が減り、やがて摂餌量も減って衰弱するとなっていたので、様々な成長段階のマウスを長期間(25日、あるいは50日）電磁波に曝露し、飲水量、摂餌量、体重の変化を毎日測定した。コントロール群は別の部屋で、同様に飼育し電磁波の影響を避けた。

・結論として、このネズミ駆除装置はネズミを追い払う能力があり、また、授乳期の乳児に影響を及ぽして、ネズミの繁殖を抑える効果があることが示された。

３）畑中らの2009年研究

掲載誌：千菓大学教育学部研究紀要第57巻 335-338頁 (2009)
タイトル：雄マウスの生殖系に及ぼす超低周波電磁波暴露の影響
研究者：畑中恒夫、中野まゆみ

概要
電化生活が発達するにつれ人工的な電磁波にさらされるようになり、それらの悪影響について研究が進んでいる。
電磁波の生殖機能に対する影響についても異なる実験結果が示されている。
そこで我々は、成体雄マウスの生殖系に対するマウス駆除器から発生する超低周波電磁波の影愕を調べた。

成体マウスはマウス駆除器から出る357Hzの電磁波に8週間さらされ、生殖器官の変化が調べられた。
電磁波暴露はマウスの体重変化は引き起こさず、また、精嚢、蝕皮線、精巣の重さにも影響を与えなかった。
しかし、精子数は顕著に減少した。
このことは、超低周波電磁波がマウスの生殖機能に重大な影響を及ぼすことを示している。

本文から
・7匹ずつ2つのケージにわけ、1つは実験群（電磁波暴露群）、もう1つはコントロール群とした。
実験群はケージのすぐ横にラットリペラーPAC- IC (Global Instrument Ltd.）を置き、2ヶ月間その装置から出る電磁波に暴露した。
電磁波の有効距離は1.5mとうたわれているので、コントロール群は実験群からケージを2m以上はなして電磁波の影響がないようにして飼育した

４）畑中らの2011年研究

掲載誌：千葉大学教育学部研究紀要 第59巻 295- 299頁 (2011)
タイトル：超低周波電磁場への曝露時間と雄マウス生殖器官への影響
研究者：畑中恒夫、須藤有希

概要
電化生活が発達するにつれ人を含め動物たちは人工的な電磁波にさらされるようになり、それらの悪影評について研究が進んでいる。
我々は以前、ネズミ駆除器からの超低周波電磁場曝露により、雄マウスの精子数が減少することを報告している。
我々は、ミツバチでの実験に基 づいて、超低周波電磁場が磁気受容器で受容され、感覚ストレスによりマウスの精子数が減少する可能性を考えている。

それを確認するために、麻酔で感覚麻痺をさせて電磁場曝露を計画しているが、適正な麻酔時間を決定するため、電磁波強度、曝露時間、曝露期間と影響の程度の関係を調べる必要がある。
そこで電磁波強度を測ると共に、1日当たり8時間と16時間で、1月間と2月間の間の電磁場曝露の影聾を調べた。
その結果、ナノテスラオーダーの弱い電磁場で効果があり、1日当たりの曝露時間を長くしたほうが、曝露期間を長くするより強い影響が表れ、また8時間より短い曝露時間で、影響が表れることが示された。

本文から
・雄マウスの精子数減少や妊娠雌マウスの胎児への悪影響などの生殖系への影響は、超音波受容によるストレス反応と同様に、電磁波を受容してストレスで生じた可能性がある。
その確認のためには、超音波曝露実験同様に、麻酔下で電磁場曝露を行うことが考えられる。

・マウスは無作為に5匹ずつ6つのケージにわけ、2群はコントロール群で、それぞれ1月および2月飼育した。
残りは超低周波電磁場曝露群でケージのすぐ横にラットリペラーPAC- l C(Global Instrument Ltd.）を置き、1月あるいは2月間その装置から出る電磁波に曝露した。
1日当たりの曝露時間を8時間( 6:00~14:00)と16時間(6:00~22:00)の2種類、曝露期間を1月と2月の2種類を組み合わせた4群とした。
電磁波の有効距離は1.5mとうたわれているので、コントロール群は実験群からケージを2m以上はなして電磁波の影響がないようにして飼育した。

・電磁波強度はDigital Electrostress Analyser ME 3840Bを用いて測定した。
基本50Hzの上に小さな357Hzの波が特有のリズムで重なるので、50Hz感度での強度を測定した。
・357Hzが持続的に加算するときは（定常波）50Hzの波形は小さくなり、357Hzが断続的に発生しているときは（変動波）50Hz波形が大きくなるので、電磁波の強度も2段階に変化する。駆除器から5 cm離れたところケージの駆除器側）で変動波が 出ているとき2､200nT＜BEMSJ注：22ミリガウス、2.2μT＞、30cm離れたところ（ケージの駆除器と反対側）で26nTの強度であった（図4 )。
コードはシールド線を用いたので、配線コード部分から電磁波は検出されなかった。

・測定結果の一例

・本研究から電磁波強度や曝露時間と雄マウス精子数減少値の関係がつかめたので、麻酔可能な曝露時間を操作することで、感覚ストレスの可能性を調査できるようになった。

BEMSJ注：これらの実験に用いたネズミ駆除器の外観を以下に示す。
販売元のサイトをみたが、発信している電磁波の強さや周波数に関しては、解説は見つからなかった。

５）畑中らの2014年研究

掲載誌：千葉大学教育学部研究紀要 第62巻 371-376頁 (2014)
タイトル：超低周波〜中波帯変動磁場のマウス生殖器官への影響
研究者：畑中恒夫 渡部逸平 渡邊亮太

概要
人々の電化生活が発達するにつれて、人を含め動物たちは様々人工的な電磁波にさらされるようになり、それらの電磁波の生体に及ぼす影響についての研究が盛んに行われている。
我々は以前、ネズミ駆除器からの超低周波電磁場曝露により、雄マウスの精子数が減少することを報告している。

これらの効果が現れるには、毎日8時間、1月の曝露時間が必要であり、おそらく長期にわたる感覚ストレスが影響するものと思われる。一方、ラット精巣への短時間の超音波照射により加熱作用が生じ、精子数が減少することが報告されている。
そこで今回感覚ストレス説の確認のため、コイルを用いてマウス精巣に直接変動磁場を与え、周波数及び曝露時間を変え、影響を調べた。

コイルでの磁場曝露の際、不動化のために麻酔を用いた。50Hz超低周波磁場の長時間曝露で、麻酔の副作用による影響に加えて、精子数の減少が見られた。
麻酔下でも変動磁場の影響が見られたことから、感覚ストレス以外の作用機序の関与も考えられた。

ラジオ波領域の変動磁場への短時間の曝露では500kHz、1MHzでは影聾がなかったが、誘導電流が大きい3MHzの磁場で精子の減少が見られ、誘導電流による加熱効果の影響が示唆された。
電磁場、変動磁場による精子減少の作用機序解明には、精子形成過程のどの段階で影響を及ぼすのか、時間経過を考應したさらなる研究が必要である。

本文から
・我々も以前、ネズミ駆除器への曝露時間の影評を見ているが1日8時間、1月連続曝露で雄マウス精子数の減少が見られることを確かめている（畑中・須藤 2011)。
さらに、1日6時間、隔日では2か月曝露しても影響がないことを見ている。

・磁場曝露する際はネンブタール腹腔内投与(50mg/kg)で麻酔をかけ、直径2 cmのコイルの上に精巣がくるようにうつぶせに乗せ、コイルに正弦波を流し磁場を与えた。
なお、鼻づまりを防ぐため、麻酔20分前に硫酸アトロピンを皮下投与した。

・実験 I：超低周波磁場で長時間曝露
マウスは無作為に5匹ずつ3群にわけ、何もしないコントロール群、麻酔をかけコイルに乗せる麻酔群、コイルに電流を流す磁場曝露群として用いた。
ネズミ駆除器の電磁波は1日6時間 隔日では2か月曝露しても影響がなかったので、1日8時間とし、また連日麻酔を続けると衰弱するため、週に2日連続、3日連続を繰り返し、計5日間、5週間で25日間の曝露を行った。
麻酔の持続時間は差があったので、覚睡状態を見ながら、1日、連続して5 ~6回投与した。
磁場は、50Hz　l.7mTの超低周波の正弦波を1日 8時間曝露した。

・データの一部

実験 2：中波帯の磁場の短時間曝露
磁場の方も1日15分、2日連続で30分曝露とした。
軽くネンブタール麻酔したマウスをコイルの上において15分間磁場をかけた。
誘導電流による発熱作用を起こすため、変動磁場の固波数を高くし、1.5mTで、500kHz、1MHz、3MHzを用いた。
コントロール群、麻酔群の他に3種の周波数の違う磁場への曝露群を用意し、各郡10匹を用いた。

・ICNRP（国際非電離放射線防護委員会）のガイドラインは誘導電流による発熱作用に基づいて決められており、周波数が高いほど許容値は少なくなっている。
今同使用した1.7mTは50Hzではガイドラインよりやや高い値＜BEMSJ注：一般公衆の許容値は0.2mTであり、8倍以上の高曝露＞であるが3MHzでははるかに高い値＜BEMSJ注：３MHzに対する一般公衆の許容値は0.027ｍTであり、56倍の高曝露＞である。同じ強度でも周波数が高い3MHzで磁場の影響が現れたのは当然であろう。


６）その後の畑中らの研究
・2020年10月のネット検索では、その後の同様な研究報告は見つからない。
・千葉大教育学部の教員名簿を見ても、見つからないので、もしかして、退職したのかもしれない。

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B４．2007年Torres-Duranらの低周波電磁界とラットの血清

記；2020−10−26

以下はEMF Portalのサイトにあった情報

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
掲載誌: Lipids Health Dis 2007; 6: 31
タイトル：Effects of whole-body exposure to extremely low frequency electromagnetic fields (ELF-EMF) on serum and liver lipid levels, in the rat.
ラットの血清及び肝臓の脂質レベルに対する超低周波電磁界への全身曝露の影響
研究者: Torres-Duran PV, Ferreira-Hermosillo A, Juarez-Oropeza MA, et al;

【背景】超低周波電磁界（ELF-EMF）が、オスのWistarラットにおける血清および肝臓脂質レベルに与える影響が評価された。

【方法】動物が、ELF-EMF（60Hz, 2.4mT）の一回刺激（２時間）あるいは擬似刺激に曝露され、その後、異なる時間において（曝露開始後、24、48、96時間）解剖に供せられた。

【結果】血中脂質は、刺激動物48時間で、チェックされた他のどの時間におけるよりも著しい増加を、高密度リポタンパクに結びついたコレステロール（HDL-C）において見せた。
遊離脂肪酸血清は、24時間後、対照グループと比べ著しい増加を示した。
その他の血清脂質、トリアシルグリセロール及び総コレステロールは、いずれの測定時間においてもグループ間の違いを見せなかった。
肝臓の総脂質において統計的な差異は見られなかったが、総コレステロールは24時間後に、96時間後にもあり、顕緒に上昇していた（p＝0.026）。
ELF EMF刺激は24時間後に、肝臓における過酸化脂質成分を増加させた。

【結論】ELF-EMF への１回曝露は、血清のHDL-C値、肝臓の過酸化脂質成分を増加させ、肝臓の総コレステロールを減少させる。
ELFEMFが脂質代謝に与える効果のメカニズムはまだ解明されていない。
だが、EMFによる酸化窒素シンターゼ刺激に関連があるかもしれない。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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＊送電線からの磁界の電子機器への影響

C１．自宅の前の送電線がテレビジョン受信機に影響した例

天神町コミュニティの情報交換のための掲示板　http://www2c.airnet.ne.jp/zelda/board.htm　にあった例です。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「テレビの映り悪くないですか？
テレビの映りが悪かったそうです。そこはケーブルＴＶなのでアンテナの向きや電波障害で映りが悪くなることもないはずでした。マンションの外を、出窓の外をみると普通より太めの電線が３本ペアで２組すぐ側を通っているのがわかりました。

　そこで、東京電力（株）へ問い合わせてみたら、担当の方が調査に来て、やはり送電線から出ている電磁波（磁界）の影響でテレビ画像にチラツキや色むらが出ていることが判明しました。
　
　その送電線は、３相交流の高圧線が２組　6000V 想定最大電流430Aと400Aだそうです。
そのマンション３階の出窓と、その送電線の距離は４ｍ程度だそうです。
磁界の強さは、送電線に流れる電流により変化するので電力需要が最も大きくなる夏の午後では、出窓付近で４０ミリガウス以上あったそうです。

　そこで、東京電力は、マンションの横を通っている３本の送電線を束ねてケーブル化することになりました。平成１４年９月１９日に改修工事が行われました。その結果マンション出窓付近で２０ミリガウスあった電磁波（磁界）が、２ミリガウス前後まで低減されました。そしてテレビの映りは良くなりました。」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

　という内容です。
詳しくは、上記URLでHPを覗いてください。

　このことから､6000Vの送電線でも、送電線に流れる電流が大きく、送電線に近接していれば、比較的大きい磁界が発生し、テレビジョン受信機の映りが悪くなります。画面がパカパカとチラツキがあったり、もっと程度が悪くなると画面が揺れたり、色が変化したりします。

　こうした送電線からの磁界は、健康影響の前に、テレビジョン受信機の映りに影響を与えます。
テレビジョン受信機の方が、ヒトよりこうした交流磁界の影響を受けやすいということもいえます。

東京電力が行った3本の線のケーブル化はこうした磁界漏洩対策としては正しい方策です。6000Vなので1本のケーブルにまとめることができたのでしょう。　これが100万ボルトの架空送電線の場合は、簡単にはいかないでしょう。

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＊職業的な曝露に関する警告

D１．電気溶接における職業的な電磁界曝露

電気溶接は、職業的に電磁界曝露が大きいとされる。
http://www.nle.co.jp/home/Tech..Frame.htm　にあった情報の一部引用であるが、溶接総合メーカとして世界的なリンカーン・エレクトリック社の場合で、安全情報の中で、電磁界暴露に関する注意事項を明記している。

＊＊＊＊＊＊＊＊　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊
安全情報　　警告　電磁界は危険性があります。
A： 導体を電流が流れると、導体の周りに局所的な電磁界(EMF)が発生します。溶接電流も溶接ケーブルおよび溶接電源の周りにEMFを発生させます
B： EMFは、ペースメーカに支障をきたすことがあるので、ペースメーカを身につけている方は、溶接前に医師と相談して下さい
C： 溶接で発生するEMFに曝されると、現在ではまだ知られていない健康上の問題を引起こす可能性があります。
D： 全ての溶接作業者は、溶接回路から発生するEMFへの暴露を最小限にするために、下記の指示に従って下さい。
・溶接ケーブルとアースケーブルは、一緒に配線して下さい。
・体に溶接ケーブルを巻き付けた状態で溶接することは、絶対にしないで下さい。巻いたケーブルの中では非常に強いEMFが発生します。
・溶接ケーブルとアースケーブルの間に体を置かないで下さい。もし、溶接ケーブルが体の右側にあったら、アースケーブルも右側にあることを確認して下さい。
・アースケーブルは、溶接箇所にできるだけ近い位置に接続して下さい。
・溶接電源の近くで作業しないで下さい。
＊＊＊＊＊＊＊＊　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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＊法的な規制などの情報

E１．アメリカにおける送電線からの電磁界に関する法的な規制

　　　　　　　　　　作成：2006-5-29
産経新聞にあった記事です。2006年3月31日の産経新聞　20面に　以下の記事が掲載されています。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
【西田ひかるのＯｈ、ｍｙ ｇｏｏｄｎｅｓｓ！】最終回　　≪温かい言葉のおかげ…ありがとう≫
例えば、アメリカで先日、こんなニュースが報じられました。
ある小学校で校舎の隣に高圧電線が走っていることに気付いた校長先生が、児童への電磁波障害を心配し、影響する校舎の使用を禁止したというのです。
安全性を確認するためその一帯の電磁波の量が測定され、高圧電線を地下に埋めるか、学校を移動させるか、現在検討中です。
脳の発育が盛んな子供たちが通う学校施設の近くの高圧電線に関しては、アメリカでは法律で厳しい基準が設定されており、電磁波から子供を守ることが最優先されます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　　＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊　　＊＊＊＊＊＊＊＊

この記事で、「例えば・・・・・現在検討中です。」というくだりまではもっともな話だと思う。
しかし、「学校施設の近くの高圧電線に関しては、アメリカでは法律で厳しい基準が設定されており」というのは、本当か？

アメリカの連邦法や州の法律で定められているのか？
もしかして、アメリカでは市町村などの行政レベルでは、こうした自主的な規制として実施されていたり、条例で定めていたりする市町村があるかも知れない。

アメリカは法規制が行われている、日本は法規制もなく、遅れている・・・という単純な図式では電磁波の健康影響に関しては、論ずることができないのではないかと　思う。

そこで、調査を行なってみた。
以下の文献に、アメリカ国内の送電線からの電磁界に関する法的な規制の状況がまとめられておいた。
1996年の文献で最近はどうなっているのか定かではないが、参考になる文献であろう。

“Electrical and Biological Effects of Transmission Lines: A Review”,
Jack M. Lee,
Bonneville Power Administration, Portland, Oregon, December 1996　を入手
その概要を以下に示す。

1）アメリカとしての、連邦法としては　法規制などの規定はない。

2）各州の動向：全て予防原則、慎重なる回避策として
アリゾナ州：新規に送電線を建設する場合、学校などからは離すという予防原則を採用。数値規制なし。
カルフォルニア州：カルフォルニア州教育局の方針、1993年、学校から高圧送電線は距離を取る、例：50万ボルト送電線の場合は350フィート以上、
コロラド州：1992年慎重なる回避策を採用。規制の数値なし
コネチカット州：1992年慎重なる回避策は不要との報告書
デラウエア州：電力会社は1990年に磁界は他の現存の送電線下の磁界値並みにすると規定、送電線路端で電界は2kV/m、磁界は20μT
フロリダ州：送電線路端で電界は2kV/m、磁界は20μT（500kV送電線の場合）
ハワイ州：1994年慎重なる回避策を採用
ミネソタ州：送電線路端で電界は8kV/m、磁界はなし。
モンタナ州：1984年、送電線路端で電界は1kV/m、磁界はなし。
オハイオ州：1992年、新規送電線建設の時は電磁界レベルの情報開示を要求。
オレゴン州：1980年、近接可能な場所での送電線下の電界は9kV/m以下に規制。磁界はなし。
ニュージャージ州：1981年、送電線路端で電界は3kV/m。1993年磁界も規制という案が出たが確定していない。
ニューヨーク州：1978年、送電線路端で電界は1.6kV/m。1990年、磁界は20μT以下に規定。

3）地方公共団体での動き
Ashland Oregon: 1991年慎重なる回避策を採用。規制の数値はない。
Bellevue Washington: 1993年、合理的に可能であれば送電線の地中化促進策を決定。
Brentwood Tennessee: 1991年、120kV以上の高圧送電線下の磁界は4mG以下。既存の送電線は5年以内に対応。
Camas Washington: 新規建設の送電線は慎重なる回避策を講ずること、申請書に4mGを超える区域を示すこと。
Eugene Oregon: 慎重なる回避を考慮する。規制数値はない。
Irving California: 1990年、4mGを超える区域を示すこと、その中に学校などがあってはならない。
Sandy city Utah: 1996年新規送電線は地中化を義務付け。
Wilmette Illinois: 1991年鉄道の路線での磁界を2mGに規制した。

ということで、西田ひかるは何を論拠に「法規制・・・」と言っているのでしょうか？？？

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E２．アメリカに規制する法律がない　ことを立証するアメリカの新聞記事

作成：２００６−９−２８

http://www.azcentral.com/arizonarepublic/local/articles/0926neemfs0926.html　にあったニュース　

(アリゾナの新聞社と推定)　September 27、 2006

＞School district may vote on relocating power lines
＞Carol Sowers
＞Sept. 26、 2006 12:00 AM

過去のいきさつがわからず、この情報だけではなんともいえないが、以下の様な状況　　　（関心のある方は上記ＵＲＬを覗いて下さい）

学校の駐車場などの上空に高圧送電線69kVがあり、子供への電磁波の影響で送電線の位置を変更することで論争が起きている。
６ｍ程度しか距離が離れていない、これを50m程度離すことを電力会社は提案している。1.4百万ドルの保証金を支払うと提案。
父兄は「子供の安全には低すぎる」という意見と、「歓迎、これで校舎の設備などが改善できる」という意見がある。
アメリカの州法、連邦法にも規定がないことがこの論争を複雑化している。（この1行を紹介するためにこの情報をWEBに載せました。）
類似の他の学校の例では、測定した結果、送電線からの磁界はコピー機からの磁界より低いことがわかって、納得した。

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E３．高圧送電線下の公園を設置させない自治体の開発指導要領

記：　２００９−１２−２５

偶然にも、奈良県大淀町の開発指導要綱に以下の文があることを見つけました。

（公園及び緑地）

(2) 公園は、高圧送電線下の土地及び有効利用に供し得ない場所には配置しないこと。

千葉市宅地開発指導要綱指導基準 にも同類の条文がありました。

第４節 公園
（５）公園には高圧線下の土地及び鉄塔敷は含まないこと。
ただし、土地利用計画上やむを得ない場合かつ、以下の条件を満たす場合は高圧送電線下敷であっても公園とすることができる。
ア 鉄塔敷を取り囲んだ形で公園を配置しないこと
イ 高圧線下の地役権の抹消ができない場合、地役権の設定された土地の面積を「要綱」により算定した公園面積から除外すること。
ウ 高圧線により公園が分断されないこと。

こうしたことから、これらの「公園を高圧送電線下に設置しない」は、電磁波（磁界）の影響を考えての規定ではなさそうです。

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＊疫学の評価

F1．疫学研究におけるヒルの判定基準

以下は電磁界情報センター発行「ジェイクくんのなっとく電磁波　解説集」2013年発行からの引用です。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
WHO（世界保健機関）や各国の健康リスク評価専門組織が、ある要因Aがある疾患Bの発症に関連するかどうか評価する場合によく用いられる手法がヒル（ブラッドフォード＝ ヒル：Bradford＝Hill）の判定基準（クライテリア）1）です。
疫学研究で示された関連を因果関係（要因Aが原因で疾患Bが発症する）と推定することの当否を判断するための基準です。

そもそものきっかけは、喫煙と肺がんとの関係を評価した1965年の英国にさかのぼります。
その当時、喫煙する人は肺がんになり易いと経験的に医師は感じていましたが、その当否を明らかにするために、ヒルは喫煙が原因で肺がんが発症すると推定してよいか否か判定する基準を提案しました。
そしてこの判定基準に照らし合わせて、喫煙は肺がんの原因と推定されると判定されました。
現在では、さまざまな疫学研究における関連性の評価に利用されています。

判定基準の各項目について、理解の手助けとして、主に喫煙と肺がんを例にとり解説します。
関連の強固性：要因Ａに曝露された群の疾患Ｂの発症率（罹患率）が、非曝露群に比べてどの程度高いかを判断します。
喫煙者の肺がん罹患率は、非喫煙者に比べて何倍高いかを調べますと、一般的には5倍以上高いことが示されています。
なお罹患率の指標は、コホート研究では相対危険度、症例対照研究ではオッズ比が用いられます。

関連の時間性：要因Ａへの曝露があって、その後疾患Ｂが発生しているかを判断します。
疾患発生の因果関係では当然の基準です。
すなわち、肺がんになる以前の喫煙行為について調査されていますので、要件を満たします。

関連の一貫性：要因Ａと疾患Ｂとの同じ関連が異なった地域、集団、時間でも一貫してえられているかを判断します。
喫煙者の肺がん罹患率が非喫煙者に比べて高い現象が、日本だけでなく欧米やアジアでも、男性でも女性でもあるいは家庭人でも労働者でも、1950年代でも2000年代でも観察されています。

生物学的説得性：要因Ａが疾患Ｂを招くという説得性のある形態学的、機能的な説明ができるかを判断します。
たばこの煙のなかに、肺がんを招く多数の発がん性物質が含まれていることがわかっています。
また、動物実験ではたばこ煙に曝露された動物に呼吸器系のがんが多発すること、細胞実験ではたばこ煙成分を負荷した培養条件で、遺伝毒性や催奇形性が確認されています。

現時点の知識との整合性：発見された要因Ａと疾患Ｂの関連性は現在一般的に認められている疾患史や経過と矛盾しないかを判断します。
喫煙と肺がんとの関連性と、この分野に関連する発がん研究、呼吸器学、疾病統計などの知識との間に整合性があります。

量反応関係：関連の強固性を補強するもので、疾患Ｂの罹患率の大きさが要因Ａの曝露量（期間、強さ、量）によって変化するかを判断します。
喫煙期間や喫煙本数の増加と肺がんの相対危険度には比例関係が認められています。

類似性：要因Ａと疾患Ｂの関連性に、既に認められている因果関係でよく似たものがあるかを判断します。
たばこと肺がんの例ではありませんが、妊娠中にある薬を飲むことが先天奇形の原因であると認められた例があると、そのような例がない場合に比較して、別の似たような薬についても因果関係を推定しやすくなります。

実験的証拠：要因Ａと疾患Ｂの関連について実験でえられた証拠があるかを判断します。
人間集団に対して、曝露によって疾患が発生しやすくなるかを実験することは不可能ですが、少なくとも禁煙すると肺がんの罹患率は徐々に減少します。


本来、ヒルの判断基準は9項目からなっています。
ここに挙げた8項目の他に、「関連の特異性」、すなわちひとつの原因はひとつの影響だけをもたらす、というものがあります。
このような特異的関連が認められれば因果関係と推定しやすいことは確かですが、現実にはひとつの要因はいくつもの影響をもたらし、このような特異性はほとんどありえません。
また関連が特異的でないからといって因果関係でないという理由にはなりえません。
事実、喫煙は肺がんの他、他部位のがん、心疾患など多くの疾患の原因であることが認められています。
したがって、現在では、「特異性」の項目は重要視されていません。

超低周波磁界と小児白血病との関係について、疫学研究が報告する関連を因果関係と推定することの当否を、ヒルの判定基準に照らし合わせてみましょう。
関連の強固性は、有名なアールボムのプール分析2）の結果からは、0.4 マイクロテスラ以上の居住環境にいる子供の小児白血病罹患率が0.1 マイクロテスラ以下の子供に比べて2 倍となっています。
関連の時間性は満たしています。

関連の一貫性は、これまでの数多くの疫学研究は必ずしも一貫性があるとはいえませんが、プール分析した研究結果はある程度の一貫性を示しています。

生物学的説得性は、動物や細胞を使った生物学的研究からは、磁界が小児白血病の原因となる裏付けはえられていません。
現時点の知識との整合性は、細胞生物学の基礎的知識、磁界についての電磁気学的知識などとの整合性はみられません。

量反応関係は、0.4 マイクロテスラ未満の環境で小児白血病罹患率は、増加を示さず、0.4 マイクロテスラ以上でのみ統計学的に有意な増加が認められているのみです。
したがって、量反応関係はみられません。
類似性および実験的証拠は不明です。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

以上のことから、低周波磁界と小児がんの関する疫学結果は、ヒルの判定基準を満たさず、これまでの疫学研究から因果関係ありと判定することはできない、という意味になります。

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