VDU, VDT : パソコン等の表示装置
1.VDTと異常妊娠の1984年古い情報
2. パソコンと妊娠への影響 アメリカ1996年
3.1997年イタリアの「VDTと妊娠異常の研究」論文の概要
4.1997年アメリカの研究;パソコンからの電磁波による妊娠への影響
5.フィンランドの産業衛生誌に掲載されたVDTと妊娠の研究 1993年
6.Showの2001年の研究 電磁界と生殖の総説
6A.パソコン普及開始時期の妊娠異常に関する元ネタの探求
6B.1996年のVDTホットライン相談に見る電磁波関係
6C.2001年の中国での研究
6D.1992年オーストラリアの疫学研究から
6E.コンピュータの使用と精液への影響 Sunらによる2005年研究
7.ICNIRPのVDTに関する見解 1988年
8.ILOのVDT見解「VDTからの電磁波ガイドライン」
1994年の概要
9.世界保健機構WHOの見解 Fact Sheet 201の内容
9A.スウェーデン労働安全保健委員会 1998年発行のVDT作業基準
9B.IEEE-COMARのVDTに関する1997年の声明
10.目の疲れの研究
11.電磁波と目の青木論文
12.日本国内向けパソコン出荷概数の推移
13.何でも電磁波のせいにする風潮
13A.風説?パソコン電磁波で女児出産増加
14.VDTからの電磁界ガイドライン
15.「今後の労働衛生研究」にみるVDTからの電磁波
16.「オフィィスにおけるストレス対策」より
17.厚生労働省の新VDT作業指針
17A.会津若松市の条例にみるVDT労働と電磁波対応
18.VDT用OAフィルタの効能、反射防止機能の確認
19. パソコン用モニタからの電磁波を疑った例
20.過去のアメリカのFDA報告に見るVDTからのX線漏洩
20A.POMROYの1984年VDTからのX線測定
20B.Murrayら 1981年 VDTからの電磁波測定結果
21.VDTの電磁波で癌 提訴して敗訴した例
22.福岡産業保健推進センタのWEBにあったVDTからの電磁波実測に関する内容。
22A.2004年教育環境における調査報告書から
23.VDT作業に関する斉藤進論文から
24.サンフランシスコ市のVDT条例に関する調査結果
25.サンフランシスコ市のVDT条例に関連する雑誌「特選街」の記事の誤り
26.同様な誤りがある三共化成、エルマーシュのWEB
27.VDTからの電界低減による皮膚症状の低減−1
28.VDTからの電界低減による皮膚症状の低減−2
29.VDTからの電界低減による皮膚症状の低減−3
30.VDT作業と皮膚障害 1997年の研究
31.ドン・セラーズ「コンピュータと安全につきあうための25章」の紹介
31A.「コンピュータユーザのための健康サバイバルガイド」を読んで
32.液晶モニタからの電磁波に関するBEMSJのアンケート調査の結果
32A.液晶モニタは「電磁波は少ない」と誤った事例
32B.液晶だから健康に良いとして誤った選択を行った事例
33.2007年発行の宮尾本に見るVDTからの電磁波
34.VDTの使用と白内障に関する1994年の研究
35.産業医科大学の2005年VDTに関する研究
36.VDT使用と眼精疲労の1990年研究
37.臨床環境1992年樋口らのVDTと目の影響の研究
お薦めサイト:
電子情報技術産業協会(JEITA)のEMF・表示装置委員会のWEB
VDTからの電磁波の健康影響に関し、VDTの低周波電磁界のガイドラインの内容、低周波磁界暴露状況調査結果、電磁波防護用品の効果など発表しています。
http://home.jeita.or.jp/eps/emf_vdt_index.html <古いページがまだ生き残っています。>
以下のURLに移行しました。
http://homepage3.nifty.com/EMF/ <閉鎖された>
http://home.jeita.or.jp/emf/index.html に移行しています。
以下のように、眼を酷使すれば、疾病としての「眼精疲労」になります。
この問題と電磁波の問題は別問題です。
1998年9月29日付けの東京新聞夕刊の記事、同じ内容は朝日新聞にも掲載された模様です。
パソコンで眼精疲労 派遣社員に初の労災
重い「眼精疲労」になったのはパソコンを使った作業が原因として兵庫県宝塚市の派遣社員の女性(32)が起こした労災申請について大阪・天満労働基準監督署が7月、労災と認定していたことが29日、分かった。
パソコン作業が急速にオフィスに普及したのに伴い、頚腕(けいわん)障害が労災認定された例はあるが、労働省は「眼精疲労については認定されたケースは聞いたことがない」としている。
この女性は、慣れないソフトを使用することを会社側から求められ、何とか仕事をこなそうとパソコン画面を凝視する作業を続けていた結果、激しい目の痛みと吐き気をもよおし、目があけられなくなったため、約一週間仕事を休んだそうです。
眼科での検診結果は「眼精疲労」。
そこで、彼女は、「原因は仕事のパソコン以外に考えられない」として、労災認定を申請。
大阪・天満労働基準監督署は業務との因果関係を認め、5日分計約3万円の療養・休業補償給付を支給しました。
Micro Wave News社が1984年に発行した「Video Display terminals: 1983 Health and Safety Update」を入手しました。
あまり面白い記事はありませんが、以下の2点は特記すべきと思います。
*VDT(パソコン用モニタ)作業と妊娠異常
1980年頃に特定の集団(クラスタ)で異常妊娠が報告された。
これに関して、アメリカのFDA(アメリカの政府機関、医薬品や放射線等を管轄)は「これらのクラスタは偶然に発生したと思われ、機器から輻射される低レベルの放射線(Radiation)が原因とは思われない」と結論を出した。
これはFDAから2月22日に発行されたRadiological Health Bulletinに掲載された。
*また、同じような内容で
4月のHarvard Medical School Health Letterに、NIOH(産業衛生関係の研究機関)の研究結果 「これらのクラスタは統計的に偶発的な結果であろう、VDTからの曝露ではない」という報告がなされている。
と報告されています。
1983年に段階で、こうした報告があったことは特記すべきことです。
でも、その後20年近く経過しても、この時の異常妊娠の話がVDT作業者に不安、電磁波に関連した不安という形で生き残っています。
アメリカの疫学の報告です。
American Journal of Epidemiologyという雑誌に掲載されたAbstracts of
the 26th annual meeting, June 1995 にあった2件の予稿の部分を、その発表者からコピーを入手しています。
1)B. Grajewski et al:
Work with Display Terminals and Risk of Low Birthweight and Preterm Birth.
VDT,パソコン作業が低体重の子供を産んだり、早産になったりする可能性を研究した。
電話交換手でVDTを使う人とそうではない人を比較、
VDTの電磁波も測定。 2430人にインタビューして調査した。
低体重の子供の生まれるリスクは オッズ比で 0.90倍 であり、問題はなかった。
早産のリスクは、オッズ比 0.70倍 で問題はなかった。
従って、VD作業とその電磁波は低体重と早産のリスクにはならないと結論。
2)L.
Pastore et al:
A Case-Control study of Stillbirth in Relation in Residential and Occupational
Exposure
カリフォルニアでの疫学調査。
死産と生まれて直ぐ死ぬケースを対象とした。 住環境、職場、ライフスタイルなどの何が影響しているかを調査。
結果:
自宅でのラッカーやニスなどの塗料の影響 オッズ比で2.8倍
職業的な殺虫剤への曝露(取り扱い?)の影響 オッズ比で5.5倍と高い
職業的なVDT使用は オッズ比で0.5倍と問題はなかった。
という概要の概要です。
作成: 2001ー11ー15
論文: Exposure to Video Display Terminals and Risk of
Spontaneous Abortion
VDT使用と自然流産のリスク
研究者: P. Grasso et al。
掲載雑誌: American Journal of Industrial Medicine. 1997
概要
*1970年代にクラスタとしてVDT使用者の間に妊娠異常が発生した。 電磁波の健康への影響が研究されている。
VDT作業と妊娠の関係をイタリアで、症例対照研究で行った。
*症例はミラノ地区の病院で、異常出産を行ったケース508例、対照は正常な出産であった1148例、これらを研究対象とした。
*対象に対して、妊娠初期にどの程度VDTを使用したか等のアンケート調査を行った。
結果は
アルコール摂取、コーヒーの摂取、たばこを吸うことは、流産のリスクを高めている。
オッズ比は、アルコールに対して 1.6 ( CI 1.3-3.0) 、
コーヒーに対しては 1.8 ( CI 1.4-2.3)
たばこに対しては
1.6 ( CI 1.2-2.2) であった。
VDTの使用に対しては オッズ比は1.0 (CI 0.8-1.2)であり、 問題はなかった。
*VDTの使用時間で検討してもした。
週10時間未満の使用と11時間から20時間の使用者でのオッズ比は0.9
週20時間以上のVDT使用者のオッズ比は1.0 ( CI
0.7-1.4) であった。 問題はなかった。
*アメリカ・カナダ等での研究ではVDT使用は妊娠異常のリスク要因ではないとなっている。
今回のイタリアの研究は、そうした研究と同じであった。
4.1997年アメリカの研究;パソコンからの電磁波による妊娠への影響
原著; Work with Video Display Terminals and risk of
Reproduced Birth weight and Pre-term Birth.
研究者:B. Grajewski et al.
掲載雑誌: American Journal of Industrial Medicine 32:681-688 1997.
内容:
アメリカの電話交換手の女性を対象にして、CRTを使用した機器を使用する女性(機器はIBM製とCCI製の2モデル)とLED等の非CRTを採用した機器を使用する女性の間に出産時に低体重で生まれる子供の割合と、予定より早く生まれる出産の割合を比較した。
2430名の女性交換手を対象として、713の妊娠を研究対象とした。
結果は、CRTを使用した女生と非CRTの機器を扱った女性の間に有意差はなかった。
CCIの機器はIBM製の機器より電磁波は多かった。 しかしこれらの機器を扱う女性の間には有意差はなかった。
これらからVDT作業を行なう女性に、こうした妊娠異常はないことが確認された。 また、CRTからの低周波電磁界(ELF、VLFと呼ばれるもので最近ではMPRー2に合致等として、電磁波の漏洩を押さえた物が販売されている)は 妊娠異常の原因にはなっていないことが判った。
この研究の途中で、研究対象者にアンケートの形で、異常妊娠の経験の有無を聞いたら、CRT機器使用の群で2・3%(7名)が、非CRT群では1・0%(4名)は経験有りと答えた。 しかし、診断書等で確認した所、本当に妊娠異常の人は、11名中の3名に過ぎなかった。
(筆者注: 3名がそれぞれどちらの群に所属しているかの記載はこの論文では定かではない、このことは単純にアンケート調査で調べると、CRT機器、VDT作業者の群は非CRT群に対して2・3倍も異常妊娠が多いと言うことになるが、厳密に調査すると問題はないことが判る、という様に、アンケート調査はあくまでも初期の予備調査に過ぎない、アンケート調査だけで結論つけることは出来ない、ことが判る。
過去のVDT作業に関する妊娠異常の調査はアンケート調査で終わっているものが多い。)
ということで、パソコン、VDT作業に関連する妊娠異常の問題に参考になる情報であると思います。 興味のある方は、詳細を、原著で読んでください。
5.フィンランドの産業衛生誌に掲載されたVDTと妊娠の研究
WORK HEALTH SAFETYというFINLAND FIOHが発行しているニュースレター1993 EDITIONに紹介されている研究です。
研究者: M. LINDBOHM ET AL;
論文名:VDUS AND MISCARRIAGE
概要が2ページにわたって紹介されている。 VDU(VDT) WORKは妊娠異常の因にはならない。 しかし垂直磁界が900nT (=9ミリガウス)以上の漏洩磁界のVDU使用者に3・4倍の危険度があった。 同時に、コンピュータのしばしば発生する誤動作と妊娠異常は関連している。 仕事に関連するストレスも要因として考えられる。
興味のある方は原著論文を読んでください。
タイトル:Adverse Human Reproductive Outcomes and
Electric-magnetic Fields: A Brief Summary of the Epidemiologic Literature
研究者:G. M. Shaw
掲載誌:BEMS S5-S18 2001
結論の部分のみに仮訳をつけた。 作成:2005−4−23
CONCLUSIONS 結論
In genera1, the avai1ab1e 1iterature in this area of EMF research is re1ative1y
scant, except for VDT exposures, and is heterogeneous with
respect to studied outcomes and studied exposures.
一般的に、VDT曝露に関する研究を除けば、電磁界と生殖に関する文献は少ない、そして研究対象とした生殖と曝露はそれぞれ異質のものである。
A portion of this 1iterature has been variably interpreted by a recent Expert
review group [EMF Science Review Group, 1998b].
これらの文献は最近、専門グループによって有益に解釈された。
Among that review group, some reviewers interpreted the data as potentia11y causal of adverse Reproductive outcomes, others interpreted the data to be
sufficient1y conc1usive to suggest no association, and sti1l others found the
data inconc1usive but worthy Of additiona1 investigation in some specific
areas.
こうしたレビューグループの中で、ある評価担当は異常妊娠の原因となる可能性を示すデータであると解釈し、ある評価担当は関連性がないことを明確に示すデータであると解釈し、ある評価担当者はまだ結論は出せないとし、特定の分野で追加の研究が必要と、解釈している。
Some Other reviewers of this 1iterature have conc1uded that, due to the 1ack of
evidence for a bio1ogic mechanism, future research in this area,“・・・wou1d not be productive at this time”「Robert,1996a].
さらに、ある評価担当は、生物的な影響に関する機序に関する確証が不足しているので、これ以上の疫学調査を行なっても実りある成果は期待できない・・・と結論付けている。
<<BEMSJコメント:評価の一致が見られていない、ということである。>>
My assessment of this 1iterature as a who1e is simi1ar to what Siemiatycki, 1993 aptly pointed
out:
私の見解は以下に述べるように、1993年にSiemiatyckiが適切に指摘していることと全体的には同じである。
“The evidence concerning reproductive effects is
inconclusive and inconsistent.
「生殖への影響に関する研究結果は確定的ではなく、また不一致である。
Because of the pub1ic's concerns and because of the possib1e 1ink between
carcinogenicity and teratogenicity, it would be justifiable to pursue studies
in this area. . . .
一般の関心、発がん性と催奇性との関連の可能性があるので、この方面の研究推進の価値はある。
As the impetus for such studies would come from the analogy between carcinogenicity and teratogenicity, rather than from
evidence about reproductive effects of EMFs, many of the arguments used to prioritize cancer studies that would
prevail here as well.
研究の勢いは、電磁界が生殖に影響を与えるという確証に基づくというよりは、発がん性と催奇性との類推から来るものである。多くの論争は多くがガンに関する研究を行なっているように、優先されている。
Outcomes should be studied in relation to domestic wire code, measured EMFs,
electrically related occupations, and appliance use."
生殖への影響の研究は、家庭内の配電線、実測した電磁界強度、職業的な電力の使用、機器の使用などに関連すべきである。」と。
A more specific summary interpretation of the available data is consistent with
the following:
現在の可能な文献に対するレビューから以下のような首尾一貫した解釈ができる。
*VDT use does not appear to substantially elevate the risk of spontaneous
abortions.
VDT作業が自然流産のリスクを増加させるとはいえない。
* VDT use does not appear to substantially elevate the risk for lowered birth weight or preterm delivery, risk elevations for intrauterine growth
retardation have been inconsistently observed.
VDT作業と低体重児出産や早産のリスク増加は実質的に見られない。子宮内の発育不全の増加のリスクに関しては結果の一致しない研究成果がある。
* Too few studies have investigated whether residential EMF exposures elevate
risks for specific congenital anomalies to draw firm conclusions.
最終的な結論を導くための、住環境下における電磁界が生まれつきの異常を増加させるかに関する研究は、ほとんどない。
* Findings from studies investigating whether residential EMF exposures elevate
the risk for lowered birth weight, preterm delivery, spontaneous abortion and
intrauterine growth retardation are equivocal.
住環境下の電磁界によって低体重児出産、早産、流産、子宮内発育不全などに関する研究から得られた結果は、あいまいである。
* Findings from studies investigating whether occupational EMF exposures
elevate the risks for adverse reproductive outcomes are too few (based on
either a single reproductive outcome or single type of exposure) to draw firm
conclusions.
職業的な電磁界曝露による生殖障害に関する研究はほとんどない。
* Studies involving multiple EMF sources of exposure are too few to draw firm
conclusions.
最終的な結論を導くための、複数の電磁界に曝露する研究は、ほとんどない。
* Studies involving direct measures of exposure assessment are too few to draw
firm conclusions.
最終的な結論を導くための、実際の曝露測定を含む研究は、ほとんどない。
* The EMF-melatonin-estrogen hypothesis has not been studied among human
reproductive outcomes/conditions.
電磁界とメラトニン、エストロゲン仮説に関連する人の生殖に関する研究は行なわれていない。
興味のある方は原著論文を読んでください。
公開:2009−5−22 更新:2013−5−2
パソコンが普及し始めた頃にパソコン作業(VDT作業)に関連すると思われる異常妊娠のクラスター(局地的な発生)が報じられた。
日本では、労働省監修「VDTと労働衛生‐資料編」1986年発行などに紹介されている。
これらのクラスタ事例は、まとまった研究論文でも調査報告書に掲載されているのではない。
1981年頃にアメリカの電磁波関連情報誌マイクロウェーブニュース(Micro Wave News)誌に、散発的に掲載された情報を、集めたものである。
正確な情報を得るべく、Micro Wave News誌を読み、これらのクラスタ事例について以下に纏めた。
これを見れば、日本語にある情報を捕捉する情報にもなるが、訂正しなければならない情報源にもなる。
この調査はBEMSJが2000年11月に行ったもので、整理していたら古いメモが出てきたので、今般このWEBに公開することにした。
参照元:日本 労働省監修「VDTと労働衛生- 資料編」1986年発行
Micro Wave News: 1981年11月号を中心にその後のニュースに散見
ブローダー著「死の電流」原書1989年発行に記述された事例を追加
番号 |
引用 |
事業所 |
発生期間 |
発症率 |
事後調査、結果など |
1 |
日本 |
トロントスター社 |
1979/5-80/5 |
7名の妊婦中4名に奇形出産 |
オンタリオ州労働省296台のVDTを点検、10MHz−26MHzのマイクロ波で0.5mW/cm2を検出 |
|
MWN 81/11 |
Toronto Star |
同上 |
7名中4名の異常出産。内2件は家系的な要因と見られ、2件は原因不明 |
検査したマイクロ波は、0.05mW/cm2を超える電力は検出されず。調査は継続中。 |
2 |
日本 |
カナダ航空 |
1972/2-1981/2 |
13名の妊婦中7名流産 |
26台のVDTを点検、電離放射線は検出されず。問題の3台のVDT中2台はカラー |
|
MWN 81/11 |
Air Canada, Dorval Airport |
1979/2-1981/2 |
同上 |
問題はcheck-in
counterでVDTを使用しているパートタイム作業者に異常が発生 |
3 |
日本 |
アトランタ近郊マリエッタの防衛補給機関の請負会社 |
1977/10-1980/10 |
15名の妊婦中、7名流産、3名奇形児出産 |
この後の14名は正常な出産であった。 |
|
MWN 81/11 |
Defence Logistics Agency Regional Contracring Office,
Marietta |
1979/10-1980/10 |
同上、継続して2件の異常出産 |
調査者は原因を発見できず。 |
4 |
日本 |
シアーズローバック社 |
1979/5-1980/10 |
12名の妊婦中7名流産、1名早死産 |
使用VDTは29台、異常出産の2名は専任オペレータ |
|
MWN 81/11 |
Sears Roebuck in Dallas, Computer Center |
同上 |
同上 |
異常妊娠をした8名中2名だけが専任オペレータ。調査者はChance Clusterと考えた。更に調査者は1981年夏に質問表で再調査、問題はなかった。 |
5 |
日本 |
ワシントンDCのビルに働く別々の会社 |
1979春-1980春 |
20名中7名流産 |
|
|
MWN 81/11 |
同上 |
|
同上 |
十分に調査に対する協力が得られず。 |
6 |
日本 |
アメリカンエキスプレス社グレトネック支社 |
1981/6/23-6/29 |
4名流産 |
4名はVDT作業に携わらず、関与していない。 |
|
MWN 81/11 |
Great Neck Building of American Express |
|
6月に4名流産は、4月から7月では6件に上る |
調査したが原因は不明 |
7 |
日本 |
パシフィック・ノースウエストベル社ワシントン州レントン支部 |
18ヶ月 |
3名の妊婦中3名が異常出産、内1名死産 |
組合はワシントン州と会社に疫学調査を要求中。 |
|
MWN 82 Jan./Feb |
Renton, WA, |
|
同上 |
同上 |
8 |
日本 |
トロント市役所法務局職員 |
1980-81 |
19名の妊婦中10名が流産 |
オンタリオ州政府が調査。VDTからの放射線は他のVDTと差は無かった。 |
|
MWN 82/April |
Old City Hall, Toronto |
|
同上 |
|
9 |
日本 |
オタワ市法務局 |
3年間 |
8名の妊婦中7名に異常出産、4名流産、1名早産、2名呼吸器疾患 |
VDTを使用しない1名は正常に出産 |
|
MWN 82/May |
Solicitor-general's office in Ottawa |
|
同上 |
|
10 |
日本 |
バンクーバーのサリーメモリアル病院の経理課職員 |
2年間 |
6名の妊婦中5名異常出産、内2名流産。 追加の情報で7名の妊婦中6名異常出産 |
|
|
MWN 82 July/Aug;82 Oct. |
Surrey Memorial Hospital in Vancouver |
|
同上 |
同じ部屋で、それぞれが机の上でVDT作業。VDTは1978年に導入 |
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11 |
MWN 81/11 |
Gander, Newfoundland, Terra Novel Tel |
1976年VDT導入以降 |
31名の妊婦中4名が異常出産 |
98台VDTを点検、X線は検出できず。 |
12 |
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死の電流 |
アトランタに南ベル・テレフォン・テレグラフ社のデータ処理センタ |
不詳 |
15件のうち6件が流産 |
NIOSHは偶然で特別な理由なしと。 |
|
13 |
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死の電流 |
サンフランシスコのユナイティッド航空の予約センタ |
1979年から 1984年 |
妊娠した48名中24名が流産 |
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14 |
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死の電流 |
ミシガン・ゼネラル・テレフォン社のVDTオペレータ |
1981年12月から1983年3月まで |
オペレータ32人のうち17人の妊娠が流産・異常妊娠・その他の結果 |
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15 |
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死の電流 |
バージニア州の新聞社USA Todayの編集室で働く女性 |
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1989年4月の調査で、1987年以降に妊娠した36名中13名が流産 |
|
全国安全センター(全国労働安全衛生センタ連絡会議)のWEBにあった情報から電磁波関連だけを抜粋します。
http://www.jca.apc.org/joshrc/vdt.html
*********** 一部引用 *************
VDT労働ホットライン
1996年11月15-16日の両日、全国6つの地域安全(労災職業病)センタなどが、「VDT労働ホットライン」を実施した(VDT=ビデオ(ビジュアル)・ディスプレー・ターミナル)。
電磁波関係の相談は6件
今回は電磁波関係の相談も多いのではないかと予想したが、結果的には6件であった。
ほとんどが、すでに関係書籍等によって知識を持っている方からのものだった。
出版関係の大企業の編集作業で職場でのがんによる在職死亡を心配する相談があった(継続相談に応じることをつたえてあるがその後の連絡はなし)ほかは、電磁波による健康被害ではないかといった相談はなかった。
************ ***********
BEMSJ:1996年の段階で、VDTからの電磁波の問題は大きな問題ではなくなっていたと言える。
「人民網日本語版」2001年7月23日にあった内容です。
一部を引用します。
****************************
更新時間:2001年07月23日14:45(北京時間)
http://j.people.ne.jp/2001/07/23/jp20010723_7722.html にあった内容
「パソコンの電磁波、胎児に影響しない」北京大学教授
衛生部が19日開催した「母子保健法実施規則」に関する専門家によるシンポジウムで、北京大学・生育健康研究所の李竹・教授は「10年間に及ぶ追跡調査の結果、パソコンは胎児の発育に影響を与えないことが判明した」と述べた。
同研究所は1991年から全国規模で、胎児から7歳の児童まで2000万人を追跡調査した。
その結果、父親や母親のパソコン使用とその間に生まれた子どもの発育不良には何の因果関係もないことが明らかになった。
李教授は、「10年間の調査の結果、パソコンが放射する電磁波の量はきわめて小さく、妊婦を含む人体にとって安全。
精子、卵子、受精卵、胚胎、胎児のいずれにも何の危険も及ぼさないことが明らかになった。
以下 略
******************* ***************
関心のある方は、元ネタのサイトを参照してください。
記:2015−11−7
以下の研究がありました。
掲載誌;Int J Cancer. 1992 Apr 22; 51(1):20-7.
タイトル:Risk factors for tumors of the brain and meninges:
results from the Adelaide Adult Brain Tumor Study.
脳と髄膜の腫瘍のリスク要因:アデレードでの大人の脳腫瘍に関する研究から
研究者:Ryan P, Lee MW, North B, McMichael AJ.
SEARCH Programme, Unit of Analytic Epidemiology,
International Agency for Research on Cancer, Lyon, France.
概要
A population-based case-control study of incident primary brain tumors in
adults was carried out in Adelaide, Australia in the period 1987 through 1990.
1987年から1990年を研究期間とし、オーストラリアのアデレードで、成人脳腫瘍の罹患への罹患に関する全住民を対象とした症例対照研究が行われた。
It included 110 subjects with newly diagnosed primary glioma, 60 subjects with
meningioma and 417 controls selected from the
Australian Electoral Roll and frequency-matched to cases for age (within 2
years), sex and postal code.
この期間中に新規に神経膠腫と診断された110例、60例の髄膜腫と、選挙人登録から症例の年齢(2歳差以内)と性別、住んでいる場所を郵便番号でマッチさせて選択した417例の対照を、研究対象とした。
Some interesting new associations were found:
幾つかの興味深い新規な関連性を見つけた。
(1) an increased risk of glioma in women who reported working with cathode-ray
tubes (relative risk = 4.1, 95% confidence interval: 1.3-13.2);
1)陰極管を使用している職業についている女性に、神経膠腫のリスクが増加(相対リスク:4.1 信頼区間:1.3-13.2)
2) a decreased risk of glioma in those with a history of allergic diseases
(relative risk = 0.5, 95% confidence interval: 0.3-0.9); and
2)アレルギー疾患の病歴を持つ人は、神経膠腫のリスクが減少(相対リスク:0.5 信頼区間:0.3-0.9)。
(3) an increased risk of meningioma in those exposed to passive smoking from a
spouse, especially amongst females (relative risk = 2.7, 95% confidence
interval: 1.2-6.1).
特に女性で、配偶者が喫煙者である場合の髄膜腫のリスクが増加(相対リスク:2.7 信頼区間:1.2-6.1)。
A pooled analysis of the multi-center group of studies to which the present study
belongs should allow more confident claims concerning risk factors for brain
tumors.
この研究に加えて、他の共同研究とのプール分析は、脳腫瘍のリスクに関して更に確固たる知見にもたらすであろう。
関心がある方は、原著論文を読んでください。
BEMSJは原著は読んでいません。この概要だけです。
記:2020−5−10
電磁波曝露に言及していませんが、以下の研究があります。
掲載誌: Asian J Androl 2005; 7
(3): 263-266
タイトル:Does exposure to computers affect the routine
parameters of semen quality?
コンピュータへのばく露は精液の質の日常的検査パラメータに影響するか?
研究者: Sun YL, Zhou WJ, Wu JQ, Gao ES
この研究は、コンピュータへのばく露が健康な若い男性の精液の質に悪影響を与えるか否かを調べた。
合計178人の被験者を、上海にある2つの産科および小児医療センタで募集した。
その内の91人はコンピュータへのばく露(=使用)歴あり(過去2年間で週20時間以上のばく露)、残りの87人は対照群(コンピュータへのばく露がまったくない、または、ほとんどない:週に10時間以内)とした。
コンピュータへのばく露歴やその他の特性に関する情報を、構造化質問票を用いたインタビューにより取得するとともに、精液サンプルが採取され、その場で分析された。
その結果、ばく露群と対照群の間で、精液パラメータ(精液量、精子濃度、前進運動精子率、精子の生存率、正常型精子の割合)の分布に違いは見られなかった。
禁酒日数、睾丸サイズ、職業、毒性物質へのばく露歴など潜在的な交絡因子を調整した後で、コンピュータへのばく露は精液の質を低下させるリスク因子とは認められなかった、と報告している。
関心のある方は、原著論文を読んでください。
このICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のVDTからの電磁界に関する見解です。
1988年の見解でかなり古くなっていますが、ICNIRPのWEBからダウンロードしました。
興味のある方はICNIRPのWEBを覗いてください。
概要は
*VDTは電磁界の高い放射源にはなっていない。
*人間工学的には注意しなければならない点がある。
*皮膚異常を訴える人がいることから、VDTの静電気帯電は疑わしい。
*現時点ではVDTからの電磁波は問題がないと結論
*ただし、色々な研究が進行中であり、ELF電磁界などに関しては、注目していく必要がある。
というものです。
ILO/ICNIRP文書 1994年発行
「Visual Display
Units: Radiation Protection Guidance 」を読んで気のついた点を列記します。
国際労働機構と国際非電離放射線防護委員会の共同作業でこの文書が作成され、国際労働機構から発行された文書です。
この文書は東京にあるILO東京事務所から購入することが出来ます。 英文版のみで和訳はありません。
作成: 2001-12-3
*白内障と妊娠異常に関してはVDT使用と対照群の間で優位な差異は見つからなかった。
これらの問題が提起された時にX線漏洩や紫外線UVRの漏洩が疑われたが、これらの放射による影響ではなかった。
*ある国ではVDT使用者に皮膚異常が多いと報告されているが、原因や因果関係は明らかではない。
*現在の生医学によれば、VDTからの電磁波漏洩は健康影響がないと結論付けることができる。
*静電気の問題;
1990年にEECのダイレクテブによれば、職場には十分なレベルの湿度が維持されなければならないと規定されている。
ここで言う「十分な」というレベルは「最低30%」の湿度である。この条件であれば、静電気による問題は発生しない。
*静電気とイオン:
1987年のWHO文書で、VDT機器からの空気中のイオンに関してはいかなる健康問題もないと結論付けられている。
(注:VDT機器の周辺ではマイナスイオンが少なく、健康影響があるのではという一部のマイナスイオングッズ関係者の見解は、この文書から言えばおかしいことになる)
*CRTの変わりに液晶モニタを使用すること:
機器の選択にあたって、これらの電磁波は選択の条件としてはならない。
資料「電磁界と公衆衛生」 資料番号201 1998年7月 VDU(表示装置)と人の健康
VDUは、VDTとも呼ばれ、主としてコンピュータの表示装置として使用されています。
表示装置(VDU)が大量生産され、職場に導入しはじめてから30年以上経過しています。
急速なコンピュータの普及により、職場や家庭内でのVDUの使用が飛躍的に増加しました。
西暦2000年までには北アメリカの労働人口の60%がVDUを使用し、また全世界では合計1億5千万台以上のVDUが使用されるといわれています。
VDUとは何か?
VDUはコンピュータからの情報を表示する為の表示装置で、多くの場合、テレビのような形をしています。
しかしながら、テレビ放送を受信してその番組の映像を表示するというものではありません。
ブラウン管(CRT)を採用したVDUでは、CRT内部の電子銃から発射された高エネルギーの電子ビームを、コンピュータからの信号によって、CRT後部のコイルにより垂直および水平方向に走査し、CRT前面ガラスの内面に塗布された蛍光体に衝突させることで蛍光体から光を出し、目に見える画像とします。
このコイルは偏向ヨーク(垂直コイルおよび水平コイルで形成)と呼ばれています。
これらの画像を作り出す電子回路から、静電界及び静磁界が生じるとともに、低周波及び高周波の電磁界が発生します。
光と電磁界
VDUから光を含むほとんど全てのスペクトラム帯域の電磁界が発生しています。
その光には、紫外線(UV)(可視光に近い波長の長い紫外線)、可視光、赤外線(IR)などが含まれています。
可視光はVDUが本来目的とする画像を形成しています。
赤外線はVDUから熱として放散されます。
CRTからは極めて僅かな量の紫外線が放射されますが、冬場の窓越しに入ってくるよりもはるかに少ない量です。
VDUから放射する電磁界は次の3種類の周波数帯に分けることができます。
水平偏向コイルから15-35キロヘルツの周波数帯の電磁界が主として放射されています。
電源回路、トランス、垂直偏向コイルからは超低周波の50あるいは60ヘルツの電磁界が放射されています。
また、コンピュータから受信する信号やVDU内部の電子回路から微弱な高周波電磁界(ラジオ波:RF)が発生します。
また、CRTの前面ガラス内面に電子が衝突することで発生する電荷の蓄積によって静電気が生じます(一般的にはCRT内部の高電圧が静電誘導によって前面ガラスに発生する:訳注)。
特に室内の空気が乾燥している時に静電気の発生が顕著になります。
さらには、高い周波数の音波や超音波が、主として水平偏向回路などの種々のVDU内部部品から発生し、高い周波数のノイズとしてかろうじて聴き取れることがあります。
非常に低エネルギーのエックス線(軟エックス線)がCRT内部で発生しますが、前面ガラスが十分に厚いので、CRT内部から外に漏れる以前に完全に吸収されます。
健康への関心
職場にVDUが導入された当初、VDUは頭痛、めまい、疲労、白内障、異常妊娠、皮膚発疹といった多くの健康障害を引き起こす原因ではないかと懸念されました。
これを受けて、電磁界(EMF)が何らかの健康影響をもたらすのではないかと多くの科学研究が行われました。
室内空気汚染、職務に伴うストレス、VDU使用時の姿勢や腰掛け方といった人間工学的問題などを含めて,原因となる因子をWHOや他の研究機関が検討しました。
その結果(詳細は以下を参照)、VDU作業に関連した健康影響の決定因子は、VDUからの電磁界の発生そのものではなく、職場環境にあるだろうとの見解を述べています。 以下に科学的な検討結果の概要を示します。
妊娠への悪影響
北米、ヨーロッパ、オーストラリアでいくつかの妊娠異常を呈する集団(クラスタ)が認められ、VDU作業が妊娠に影響を与える可能性があるとの指摘が1970年代末に出されました。
これらの集団(クラスタ)はVDU作業を行い、グループとしては奇形児出産や自然流産を異常な高頻度で経験していると思われる妊婦のグループでした。
これが多くの疫学研究と動物実験を北アメリカとヨーロッパで行わせる契機となりました。
これらの研究ではVDUからの電磁界曝露に起因する生殖過程へのいかなる影響をも見つけられませんでした。
しかしながら、もし生殖に影響を与えるとしたら、恐らくは仕事からもたらされるストレスといった、他の作業環境要因が関連しているのではないかという見解が示されました。
眼への影響
白内障や他の眼の疾病とVDU作業との間には何の関連も認められませんでした。
しかし、VDUの表示画面のグレアや外光の反射が極端に大きい場合には、眼の疲労や頭痛の原因になることが分かっています。
皮膚への影響
発疹やかゆみといった皮膚症状の増加については、特にスカンジナビア諸国で研究されてきました。
しかしながら、これらの症状とVDUからの電磁界放射との関連を見いだすことは出来ませんでした。
こうした症状を持つ人々に対する再現実験(研究室での試験)によって、これらの症状は電磁界暴露とはなんら関係が無いことが分かりました。
ほかの因子
研究者は室内作業環境に関連のある種々の因子についても検討しました。
これには、室内空気の状態、室温、不適切な照明による眼の疲労、人間工学的に不適切な作業配置などが含まれます。
人によっては頭痛やめまい、筋・骨格系の不快を訴える事がありますが、VDU作業環境の適正化と人間工学的対策によって、これらの症状の多くは予防する事ができます。
例えば、機器類の選定や照明、正しい姿勢を保ったり、筋や眼の疲労やストレスの原因となる緊張を少なくする様々な環境づくりがその対策に含まれます。
以上の結論は国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)、国際労働機関(ILO)及びWHOによる検討結果とー致しています。
防護手段
VDUから放射される電磁界による健康影響への不安は、健康影響の防護を目的とする多くの用品を生み出しました。
VDU使用時のための防護エプロン、画面フィルタ、電磁界低減用品などがそうです。
しかし、もともとVDUからの電磁界放射などは各国の基準や国際的基準により許容された暴露限度値よりもはるかに低い値であるため、たとえこれらの用品を用いてさらに電磁界を低減させることができたとしても、実際的な意味はありません。
眼の疲労の原因となる画面のグレアを低減させる画面フィルタを除き、電磁界防護用品の使用をWHOは推奨していません。
国際労働機構(ILO)も同様に電磁界放射の低減を目的とした防護用品の使用を推奨していません。
詳細情報の入手について
WHOの国際電磁界プロジェクトは、電磁界曝露と健康に関するさまざまな知見を載せているWHOファクトシートとリンクしているホームページを持っています。
このホームページは国際電磁界プロジェクトの詳細な情報や出版物の案内、科学的情報や広報資料も提供しています。
WHOの国際電磁界プロジェクトのホームページhttp://www.who.ch/emf/をアクセスして下さい。
以下の参考文献には、VDUに関してより詳細な情報が掲載されています。
・[Visual Display Terminals and
Workers' Health, WHO Offset Publication NO. 99, World Health Organization, Geneva l987.]には、眼の疲労や筋・骨格系障害などの電磁界放射が原因でない障害について特集しています。
・[ Electromagnetic Fields 300 Hz-300 GHz,
WHO Environmental HealthCriteria NO. 137, World
Health Organization, Geneva 1993. ]
VDUから放射される電磁界の物理学と生物学的影響を総合的に再検討しています。
・[ Visual Display Units: Radiation
Protection Guidance, Occupational Safety and Health Series NO. 70,
International Labour Office, Geneva, 1994]にはVDUに関する簡潔な、最近の総説が掲載されています。
・[ Matthew, R. editor: Non-lonizing Radiation: Proceedings of the Third International
Non- lonizing Radiation Workshop, Baden, Austria,
ICNIRP, 1996.]にはVDUからの電磁界放射を含む非電離放射線防護に関する一連の情報が掲載されています。)
さらに詳細な情報をお求めの方はジュネーブのWHOのGlobal and Integrated Environmental Health (電話+41-22-701-xxxx、ファックス+41-22-791-XXXX)、ウェブサイト(http://www.who.ch/)あるいはHealth Communications and Public Relations (電話+41-22-791-2584、ファックス+41-22-791-4858)、電子メール宛先info@who.chへご連絡ください。
全てのWHOからの報道広報文、ファクトシート、その他関連情報は、インターネットのホームページ( http://www.who.ch/)で得られます。
「付記:この翻訳は、日本電子工業振興協会のVDT対策専門委員会の協力を得て厚生労働省国立公衆衛生院生理衛生学部大久保千代次が行いました。
本文中不明な点がありましたら、電子メールohkubo@iph.go.jpへご連絡ください」
************** *************** *************
このFact Sheet 201は厚生労働省国立公衆衛生院(国立保健医療科学院に改組)の大久保千代次氏の了解を得て、全文を転載しました。
スウェーデン労働安全保健委員会 1998年発行のVDT作業基準です。
電磁波に関連する部分を抜き出し、仮訳をつけた。 作成; 2005−9−28
Statute Book of the Swedish National Board of Occupational Safety and Health
AFS 1998:5
WORK WITH DISPLAY SCREEN EQUIPMENT
Emissions
Section 9
Emissions from the display screen and appurtenant equipment, such as noise,
heat, chemical substances and electrical and magnetic fields, may not be
disturbing or cause the operator discomfort or unpleasantness constituting a
risk to his/her safety and health.
表示装置および関連する機器からの輻射として騒音、熱、化学物質、電磁界があるが、それらは、作業者の安全と健康のリスクに関して、不安を与えたり、不愉快にしたりする要因にはならないこと。
解説の項にあった電磁波に関する記述
Most display screens today are built up round cathode ray tubes, which emit
electric and magnetic fields. The possibility of this implying a risk to human
health has been observed for a long time, with special reference to pregnancy
disturbances, to skin disorders and to so-called electrical hypersensitivity.
現在のほとんどのVDTはCRTを採用しており、電磁界を放出する。
人の健康へのリスクの可能性として、妊娠への影響、皮膚障害、いわゆる電磁波過敏症に関して、長い間言われてきた。
Research, however, has failed to establish any connections between display
screen work and pregnancy disturbances.
研究の結果では、VDT作業と妊娠への影響の関連性は見つからなかった。
Where skin disorders are concerned, certain studies do suggest a connection
with display screen work, but no connection has been detectable with the
electric or magnetic fields emitted from display screens.
皮膚障害に関しては、ある研究ではVDT作業との関連性を示唆しているが、VDTから放射される電磁界との関連性は見つかっていない。
If anything, the focus of attention is more on dry and/or warm air and stress
in connection with display screen work as possible causes.
もしかすると、乾燥した空気、暖かい空気、VDT作業に関連するストレスなどが原因の可能性がある。
It is believed likely that the problem of electrical hypersensitivity is due to
a combination of several factors, both occupationally and individually related.
電磁波過敏症の問題は、個人と職業に関連する様々な要素の組み合わせによると信じられる。
It is unclear whether electric or magnetic fields are among these factors;
repeated experiments have failed to establish any such influence. Other factors
suggested as possible contributory factors where "electrical
hypersensitivity"
繰り返して行われた試験ではそれらの影響の確立に失敗したことから、電磁界がそれらの要素の一つであるといえるかは定かではない。
電磁波過敏症に関する他の要因も示唆されている。
関心のある方は、原著全文を読んでください。
記;2012−11−29
http://ewh.ieee.org/soc/embs/comar/vdt.htm にあった内容 2012−11−25のログです。
1997年に出された声明です。
タイトルの部分と結論の部分だけを和訳して以下に紹介します。
関心のある方は、全文を上記サイトにアクセスして、入手してください。
IEEE Committee on Man and Radiation
TECHNICAL INFORMATION STATEMENT ON BIOLOGICAL AND
HEALTH EFFECTS OF ELECTRIC AND MAGNETIC FIELDS FROM VIDEO DISPLAY TERMINALS
Copyright: © 1997 Institute of Electrical and Electronics Engineers.
人への電磁界曝露に関するIEEE委員会
表示装置から輻射される電磁界の生体と健康への影響の関する技術情報に関する声明 1997年
CONCLUSIONS 結論
Cathode ray tube devices, including VDTs and television receivers, utilize
electromagnetic energy over a broad spectrum.
VDTやテレビジョン受信機に用いられているCRTは幅広い帯域の電磁界を利用している。
For VDTs, the measured electric and magnetic fields in the ELF, VLF, and LF
frequency ranges are well within existing exposure guidelines.
VDTに関していえば、ELF,
VLF,LF帯域の電磁界の測定結果は現行の曝露ガイドラインに十分に適合している。
The consensus drawn from several epidemiological studies is that workplace use
of VDTs is not a risk factor for either miscarriage or birth defects, the
topics raised to prominence by early observations and research.
初期の観察と研究でトピックスとして突出して提起されたが、流産と出産異常のいずれに関しても、VDTの職場での使用はリスク要因ではないことが、幾多の疫学研究から得られるコンセンサスである。
Based on animal studies and epidemiological study, no other disease or syndrome
has been conclusively associated with VDT use.
動物実験と疫学研究に基づいて、その他の疾病と症状はVDTの使用に関係していないことが確定している。
These facts lead to recommendations for education of users on the ergonomic and
electromagnetic aspects of VDT use but mitigate against the need for programs
to reduce or monitor exposures or to have health surveillance programs for any
specific disease or adverse outcome.
これらの事実からVDTの使用における人間工学と電磁波に関するVDTユーザの教育は推奨される。
そして、これらの事実から、VDTの電磁界曝露を監視したり、電磁界を低減したりするための方策の推進は、行う必要がなくなると、ということに導かれる。
The scientific literature is, however, incomplete in important ways.
科学的な論拠は、しかし、完璧であるとは言えない。
The duration of exposures in many studies has been brief compared to either
human working years, life span, or latency periods for diseases such as cancer.
VDT使用者の作業年数、年齢階級、癌などへの発症までの潜伏期間などで、多くの研究における曝露期間は簡単に比較されている。
Exposure assessment for users of CRTs has been weak or absent in most
epidemiological studies.
CRTを用いたVDT使用者の曝露評価は、ほとんどの疫学研究では、不十分、もしくは欠如している。
The inconsistency of laboratory studies in a number of relevant areas needs
resolution; this requires additional research.
関連する研究領域における実験室での研究結果の不一致は、解決する必要があり、よって継続した研究が必要である。
Although, at present, there is good evidence showing that miscarriages and
birth defects are not associated with VDT use, there has been little health
research on other possible adverse outcomes.
現時点において、他のある異常出産に関する健康影響の研究はないが、流産と出産異常はVDTが関係していないという良好な確証は有る。
研究者: 坪田 一男
論文名: VDT症候群とドライアイ
掲載雑誌名: 日本医事新報 1993年
読書や事務作業に比べてVDT作業(視角作業を伴う作業形態)ではVDT作業のほうが目が疲れやすい。なぜだろうか?
従来までは、屈折調節やVDTより放出される電磁波の影響などが考えられていた。
はっきりとした理由が明らかではなかった。
ここに一つ、非常にシンプルだが大きな違いが判明した。
*事務作業などは目は下向きになっているので、
目の大きさは表面積で1cm2、
涙の蒸発量は 6x10−7(10のマイナス7乗)グラム/秒
*これに対して、VDT作業では、画面が机の上にあるので正面を向くことになる。
目の大きさは表面積で2.4cm2 と約2.5倍、
涙の蒸発量は 15x10−7(10のマイナス7乗)グラム/秒 となり、2.5倍に増加
これで目は涙がすくなくなり、ドライアイとなりやすい。
*もし、画面に位置が不適切で、視線が上向きになれば、目の大きさは表面積で3.8cm2 となり、
涙の蒸発量は 25x10−7(10のマイナス7乗)グラム/秒 となる。
ドライアイは防止しなければならない ということです。詳細は上記文献を読んでください。
電磁波の健康影響に関する啓蒙書の中には、目の疲れが電磁波によると書かれたものもあるかも知れませんが、目の疲れは、この様に電磁波の影響ではないようです。
電磁波と目への影響に関する論文です。
電磁波は電磁波でもX線などの電離放射線といわれるものは白内障などを引き起こすとなっています。
このことから、「電磁波の中でも非電離放射線であるマイクロ波や低周波電磁界も白内障の要因である」と書いてある誤りとたまに見かけます。
詳細はこの論文の原本を読んでください。
タイトル:電磁波環境と安全論争について:プライマリケアと計測制御技術
研究者:青木繁
掲載雑誌:綜合臨牀1998年11月号
概要:
電磁波は,高エネルギーの電離放射線(X線やγ線)から可視光線,マイクロ波,テレビやラジオの電波から超低周波まですべてを含んだものを示し,その範囲は大変幅広く,物理的特性や人体に与える影響も様々である.
放射線には,粒子放射線と電離放射線がある.電離放射線には,X線やγ線が含まれる.
非電離放射線に紫外線、可視光線,赤外線,マイクロ波,ラジオ波,長波などがある.
テレビ画面のブラウン管内の電子ビームから発生するものにX線があるが,
現在の多くのCRTから発生するものは非常に微量である.
眼球および視機能に与える影響では,電離放射線による白内障,赤外線や紫外線による角膜障害などが行政的指導として行われている.
紫外線(波長:100〜315nm)は,皮膚細胞を傷つけ皮膚癌の原因とされ,眼では角膜に影響を及ぼし角膜炎をきたす.
近紫外域(波長:315〜400nm)は水晶体,可視域(波長:400〜780nm)は網膜,
近赤外域(波長:780〜1,400nm)は網膜およびその近傍,
赤外域(波長:1.4〜1,000μm)は角膜にそれぞれ吸収され組織に影響を与える。
赤外線は物体の温度に応じて放射され,温度が高いほど放射エネルギーは大きく波長は短くなる.
以下の図は、JEITA(旧JEITA)日本電子技術産業協会が取りまとめた国内向けパソコン出荷台数の過去からの推移データであり、協会の出荷統計データから筆者が纏めてグラフにした。
1978年から21年間にわたって、全く同一条件で出荷データが取りまとめられているという保証はなく、調査の対象となる会社の数が途中で変化している可能性もある。 厳密なデータではないが、少なくとも市場への普及の度合いなどの参考データとしては、有効と考える。
この表から、パソコン(VDT作業)に関連して、異常妊娠や電磁波の影響の可能性が提起されたのは、1979年から1980年頃である。 データの取り始めた1978年は日本でもパソコンブームが始まった。
普及が始まり、1978年の年間出荷台数1万台から10倍、10万台の規模に拡大したのは、1980年である。 その後の伸長は急速で、最近では年間2000万台超という出荷台数である。1980年に比べると、200倍の増加している。
もし、VDT作業に関連する妊娠異常などの問題があるとすれば、1980年頃の200倍にも膨れ上がったパソコンの普及によって、大きな社会問題にまだ発展していなければならない。 しかし、そうした社会問題とはなっていない。
これらのことから、冷静に考えると、WHOの見解(Fact Sheet 201)にも見るように、「1980年頃の「VDT作業に関連する異常妊娠などの問題は、ある数ヶ所で、偶然に起こったことであり、全国規模ではそうしたことはありえない。 その後の研究では問題はなかった。」と言える。
出典: JEITAの国内パソコン出荷統計
追記:2009−7−2
国内のパソコン出荷統計の最新のデータが、以下の本に紹介されていました。
引用:宮尾克 著「現代のコンピュータ労働と健康」 かもがわ出版 2008年発行
2006年までの出荷統計の図を紹介します。
関心のある方は、この宮尾本を読んでください。
2006年までのパソコンの国内出荷台数の推移
13.何でも電磁波のせいにする風潮
Gooの掲示板にあった内容です。何でも電磁波のせいにする風潮は困ったものです。
******** 一部 引用 ***************** ***************
質問:パソコンのまえに座ると パソコンをし始めると決まって、トイレ(大)に行きたくなります。
特に朝 初めて始めた時が多いです。 昨日なんかいきなり来て、走ってトイレに行きました。
それってなにか電磁波とか関係あったりするのですか?
いいことなんですかね〜?
*********************** **********************
古い週刊誌の記事であるが、サンデー毎日 1996年11/3号に「パソコン職場「女児出産ラッシュ」の真相」という記事が掲載されていた。
「総合家電メーカ開発部門で,ここ 3年間に職場の男性が授かった子供 20人のうち,14人が女の子であった。
パソコンから出ている電磁波のせいじゃないか。そして「実に70% が女の子」と強調している。
これに関して、群馬大学の疫学・統計の研究者青木氏のWEBには以下の反論が掲載されている。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/Hanasi/StatTalk/omosiro-banasi/joji-shussan.html
「男児:女児の出生比率を面倒くさいから0.5として,二項分布の確率を求めると,女児の比率が70%以上になるような事象は5.8%の確率で生じる。」と。
確率的には偶然の結果として、存在しえる事実ということになる。
14. VDTからの電磁界ガイドライン
高圧送電線由来の磁界と、同類の周波数の磁界をVDTは漏洩していることから、一部の労働組合や作業者は、不安を感じていた。
この不安感から、最初に行動を開始したのはスウェーデンの労働組合であり、スウェーデン政府に方策実施を要求した。
その結果、基準値として採用できる様な科学的論拠がないので、ALARA(As Low As Reasonable available :合理的に可能な限りできるだけ低くする)アプローチが選択されてMPRガイドラインの発効に結びついた。
1986年、案の制定の為に市販VDTの測定を行い、その中央値をもって基準値とした。
TCOは厳しければ厳しいほうがよいという論点から、MPR2より厳しい規制を提案している。
欧州のECMAはMPR2に調和する形で欧州共通規格を策定しようとした。
MPR2の規制値が科学的な論拠を持っていないので、以下の表の数値は規定のドラフトにはあったが、最終的には規制値は削除され、測定法の規格として発行した。
アメリカのIEEEという規格制定団体もECMAと同じ道をたどった。
MPR2に規制値も同準として、追従したのは日本のJEIDA(電子工業振興協会: 現在はJEITAと改組)のみである。
以下の表にあるようにJEITAのガイドラインは、磁界はMPR2に同じである、電界は日本の配電は接地アースがない2芯の配線のために、電界の輻射が大きくなるので、電界の基準値はMPR2に比べて甘くなっている。(MPR2に規定は電源は接地アース付きを前提として規定されている。 従ってMPR2に適合する機器であっても、接地アースを解除すれば、電界の輻射は大きくなる。)
国内に市販されている多くのVDTは、JEITAの電磁界ガイドラインに適合している。
(VDTからの電磁界を気にする方は、VDTの製造会社に自分の使用しているモデルがJEITAの電磁界ガイドラインに適合していることを確認してみてください。)
表1に関連する規定の概要を示す。
|
表1: VDTからの電磁界放射に関する規定の概要 |
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スウェーデン |
欧州 |
日本 |
スウェーデン |
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MPR 2 |
ECMA/TC20/92/88 |
JEIDA-G-15: JEIDA-G-11 |
TCO'99 |
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|
(1990) |
Final
Draft 2nd
Edition |
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磁界 |
Band 1 |
250nT 正面と周囲 50cm |
← |
← |
200nT: 正面30cm 200nT: 周囲50m |
(5Hz-2kHz) |
|||||
Band 2 |
25nT 正面と周囲 50cm |
← |
← |
← |
|
(2kHz-400kHz) |
|||||
電界 |
Band 1 |
25V/m 正面50cm |
ClassI:50V/m ClassU:250V/m 正面 50cm |
← |
10V/m: 正面30cm 10V/m: 周囲 50cm |
(5Hz-2kHz) |
|||||
Band 2 |
2.5V/m 正面と周囲 50cm |
10V/m
正面と周囲 50cm |
← |
1V/m: 正面30cm 1V/m: 周囲 50cm |
|
(2kHz-400kHz) |
|||||
静電気 |
+/-500V |
n/a |
+/-500V |
+/-500V |
以下のシンポジウムを聞きに行ってきました。 概要を紹介します。
第1回労働衛生重点研究推進協議会シンポジウム
「21世紀の労働衛生研究戦略」の実施と展望 」 2001年11月14日 東京・田町で開催。
概要:
1。「21世紀の労働衛生戦略」の解説 中災防 櫻井
(旧)労働省は過去3年間に本省主管で、産業医学総合研究所が事務局となって21世紀の労働衛生に関する研究のコンセプトの作成を行ってきた。
2000年12月に最終報告書がでた。 色々と研究すべき課題をリスとアップし、関係者の意見を聞いて纏めた。
最終的には研究すべき項目として3つの領域で、合計18テーマに絞りこんだ。
VDT作業に関連する諸問題は「人間工学的因子と生体負担」という大きな括りの中に包含された。
電磁波の健康影響に関しては、最初に課題として提起はされたが、最終的に18テーマに絞りこんだ段階で、落とされた。(ということは、労働衛生の観点からは、電磁波の健康影響は優先順位の高い研究テーマではない と判断されたことになる。)
2。 この18テーマの研究の推進の為に、今回のシンポジウムが開催された。
推進協議会が作られ、本年度からは、更生労働省の委託を受けて、産業医学総合研究所が運営にあたる。
以下は3領域18テーマの中から、代表的な分野として関係者が講演を行った。
(会場はスライド等の為に、暗くなり、ほとんどメモを取ることができなかった。)
3。産業ストレス 岡山大学 川上
*ILOは産業ストレスを現在もっとも重要な健康阻害要因の一つとして考えている。
*産業ストレスによって、従来の健康影響に加えて、癌や免疫機能への影響も研究すべき。
4。産業現場における人間工学応用の可能性 労働科学研究所 酒井
*VDTの健康リスクに関しては、従来とは異なり、移動しながら使用する、 携帯端末の使用、ネットワーク環境での使用という新たな局面での研究が必要。
5。情報技術と労働衛生 日本IBM 浜口
*パソコン等のIT機器から発する電磁波影響に関する不要な健康不安感の払拭にも努力すべきである。
IBMの社内でも、8割がそうした機器からの電磁波漏洩は健康に悪いと感じている。 (他のIBMの人にこのことを確認した。
どうやら正確な論拠があって、8割という数字を出したのではなく、感覚的に数値を提示したものと推定された。)
1980年頃に発生したVDT作業に関する悪影響の情報が、今だに情報として 刷り込まれている。
従業員に「大丈夫」と保証するのも産業医の役割である。
6。化学物質曝露による健康影響の評価 北海道大学 岸
*生殖毒性に関する研究が必要。特に女性に関しては、妊娠が確認された後は母性として 保護されるが、妊娠したことが確認されない妊娠初期にあっては、保護もされないので、そうした曝露を受けていることが問題となる。
7。産業保健マネジメントシステムの構築と課題 エクソンモービル 森
*2001年にILOによってガイドライン化された。
かなり包括的なもので、これを中小企業にあてはめることは簡単ではない。
8。中小企業・自営業における労働衛生の研究 産業医学研究所 平田
*個別に、業種別にマニュアル等を作らないと中小企業には適用できない。
9。総合討論
*18テーマに絞った、研究に関するコンセンサスが得られたとはいえ、 総花的な提言である。これを今後は目に見える形にしていく必要がある。
*従来の労働省にはほとんど研究費がなかった。 厚生労働省となり、厚生省の科研究費は 厚生労働科研費と名前を変えた。 労働衛生の研究にも、数億円の予算をつけたい(検討中)。
産業衛生学雑誌2002年9月号に掲載された論文にあった内容です。
研究者:林 剛司
論文名: 産業・経済変革期の職場のストレス対策の進め方
各論4.事業所や職場に応じたストレス対策のポイント オフィスのストレス対策
この論文の中に、以下のような興味のある記述があります。
「VDT作業
VDT作業は、法令上の有害な業務ではないが、適切な労働衛生管理が行われないと、表1に示すような症状が生じることが知られている。
これはVDT作業というストレス要因によって発現するストレス反応である。
表1:VDT作業の健康影響
1:視機能に関する症状 目の疲れ、目の乾燥感 など
2:筋・骨格系に関する症状 頭痛、肩こりと痛み など
3:精神症状 不安感、抑うつ感 のめり込み など
こうした論文をでは、電磁波による影響云々には言及されていない。
2002年4月に、厚生労働省からVDT作業に関する指針が発行された。これは1985年に発行された指針を現代風に改版したものです。
このサイトの観点、電磁波の観点からこの新VDTガイドラインを見てみると、旧版のVDT作業指針と同様であるが、電磁波に関しては全く触れられていない。
すなわち、作業指針として何か電磁波のことを規制したり、作業管理を行ったりする必要性を全く認めていません。
当然ながら、電磁波防護エプロンの必要性にも言及されていないし、画面フィルター(OAフィルター)に関しては、管面の光の反射防止のために、効果のあるフィルタを選択すべし という記述はあっても、電磁波防護フィルタの必要性に関しては、全く言及されていません。
これらは、上記15。「オフィィスにおけるストレス対策」より と同じ趣旨であるといえます。
興味のある方は、厚生労働省や関連する組織でこれらの新VDT作業指針を公開していますので、参照してください。
例; JILのWEBにあった内容
JILは日本労働研究機構で、厚生労働省所管の特殊法人です。
http://www.jil.go.jp/kisya/kijun/20020405_02_ki/20020405_02_ki.html#top
タイトル:新しい「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の策定について
発 表:平成14年4月5日(金)
担 当:厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課
また、以下のような小冊子が刊行されています。 興味のある方は入手して読んでください。 16ページの小冊子です。
「厚生労働省ガイドラインに対応 快適にすすめるVDT作業」
発行:中央労働災害防止協会 平成14年6月
ISBN4−8059−0831−9 C3060 Y140E
会津若松市の1987年の規定を以下に示す。
労働省のVDT指針に規定することに加えて、電磁波対応が規定されていた。
○VDT労働安全衛生管理基準
昭和六十二年二月十六日 会津若松市訓令第一号
(趣旨) 第一条 (略)
(VDT労働安全衛生管理基準)
第二条 VDT労働安全衛生管理基準は、VDT作業のための労働衛生上の指針(昭和六十年十二月二十日基発第七百五号各都道府県労働基準局長宛労働省労働基準局長通知。以下「指針」という)に基づくものとする。
2 指針に定めるもののほか、VDT労働安全衛生管理基準に次の事項を加えるものとする。
一 作業者の必要に応じ、補助照明を設置すること。
二 VDT機器から発生する電磁波の防止対策に努めること。
三 入力操作の確認のためのVDT機器の音量は、周囲に不快感を与えないものとし、音量が調節できるものであること。
(市長の責務) 第三条 (略)
この規定は2003年に改訂され、電磁波への対応に関する記述はなくなった。
○VDT労働安全衛生管理基準 平成15年4月30日 会津若松市訓令第3号
VDT労働安全衛生管理基準(昭和62年会津若松市訓令第1号)の全部を改正する。
(趣旨) 第1条 (略)
(VDT労働安全衛生管理基準)
第2条 VDT労働安全衛生管理基準は、VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン(平成14年4月5日基発第0405001号都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)に基づくものとする。
(市長の責務) 第3条 (略)
作成:2000年10月
手元に最近日本電子工業振興協会が発行した「産業用情報機器・制御機器設置環境基準」という文書があります。
この中に、モニタの画面に天上灯などの反射防ぐ・・・・・という記述があります。
「フィルタをCRT画面に取付けてグレア防止がされる場合があるが、グレア防止としてメッシュ方式(網目のフィルター)以外は反射が大きくなり、逆効果になりかねないので注意が必要である。」 という記述があります。
目をやさしくするために使用しているOAフィルタですが、その反射防止のフィルタが、逆に反射を増やしている可能性があります。
フィルタがないときに画面に映りこむ自分の顔や周囲の窓などの反射の量が、フィルタを取り付けたときに、明確に減っていることを確認する必要があります。
皆さんの使用中の画面で、OAフィルタが使用されているならば、一度、本当に反射が減っているか確認してみる必要があります。
Yahoo!掲示板 にあった論議です。 一部を引用します。
******* 引用 ************
ホーム>コンピュータとインターネット>ハードウェア>パーソナルコンピュータ>デスクトップ > モニタの電磁波で顔面ピクピク!!
モニタの電磁波で顔面ピクピク!! 2003/ 2/21 12:52 投稿者 maxber_box
モニタの電磁波で顔面ピクピクしている人、居ませんか_?
最初、まぶたがピクピクして それから、顔の一部分にも波及して更に、頭皮までピクピク してきて、すると何となく立ちくらみもして 不安を感じている人 居ませんか…
*********** **************
この問いかけに対して色々な意見が掲示板上でなされました。
その結果、以下のように、電磁波ではなく、目の疲れや運動不足が原因らしいと、本人は自覚するに至ったようです。
************ 引用 *********
実は・・・・ 2003/ 3/ 1 11:14 投稿者: maxber_box
やはり、運動不足と目の疲れなのでしょうか。
どうやら、電磁波の影響は限りなく少ないと云う事で、ホッとしています。
*************** ***********
詳細は、Yahooの掲示板を見てください。
基本的には「VDTからのX線漏洩は問題が無い」という報告ばかりであるが、「1981年にFDA報告で0.5mR/hを超えるケース」があった、という記述を見つけた。
このFDAレポートを入手しました。
「An Evaluation of Radiation Emission from Video Display
Terminals HHS Publication FDA 81-8153,
Feb 1981発行」 全71ページ。
その概要を紹介する。
*1980年にFDAはVDTからの放射の実測を行った。
*X線、紫外線、可視光線、電波領域の電界を対象とした。
*X線に関しては、1980年に新たに測定した機器からは問題のあるX線漏洩はなかった。
*X線に関しては、FDAで過去に測定したデータも合わせてこの報告書を作成した。
*過去の測定データの中にX線漏洩が0.5mR/Hを超えるモデルがあった。
この異常なX線漏洩は通常動作条件下ではなく、FDAがテレビジョン受信機を対象として定めたX線テストの条件であるサービスマン調整を最悪にしたり、また特定の 部品の故障までおこなったりした最悪条件でのX線漏洩である。以下の3社のVDTから異常値が測定された。
*池上通信機製 モデル:TM10−2 製造;1976年6月 使用CRT:270JB22
通常条件の高圧:17.7KV, 最悪条件での高圧:30.3kV
最悪事のX線:2.0 mR/h
このモデルはアメリカでの販売が許可されなかった。
*Conrac社製
モデル:5512/12C 製造:75年8月 使用CRT:330DB22
通常条件の高圧:19.8KV, 最悪条件での高圧:29.5kV
最悪事のX線:1.6 mR/h
モデル:5522/12C 製造:75年8月 使用CRT:330DB22
通常条件の高圧:19.2KV, 最悪条件での高圧:30.5kV
最悪事のX線:1.15 mR/h
この2モデルはリコールもしくは改造が行われた。
*Ball Brothers社製
モデル:TU−8C(2) 製造:78年6月 使用CRT:CE64M8P39
通常条件の高圧:13.5KV, 最悪条件での高圧:22.0kV
最悪事のX線:0.72 mR/h
モデル:TU−8C(3) 製造:78年6月 使用CRT:CE64M8P39
通常条件の高圧:15.7KV, 最悪条件での高圧:22.1kV
最悪事のX線:0.96 mR/h
モデル:TU−8C(4) 製造:78年8月 使用CRT:CE64M8P4
通常条件の高圧:11.4KV, 最悪条件での高圧:23.7kV
最悪事のX線:0.66 mR/h
(レポートでは3モデル供とは明記はされていないが)このモデルの最悪状態は完全に壊れるまでの僅か数分間の状態であった。このモデルは現在、生産されていない。
ということです。
以下の研究がある。
掲載誌:Health Phys VOL.46,NO.2 PAGE.413‐417 1984
タイトル:Low‐background radiation measurements on video display terminals.
ビデオ端末表示装置の低バックグラウンド放射線計測
研究者:POMROY C, NOEL L (Radiation Protection Bureau, Ottawa)
概要
ビデオ端末(VDT)は高速電子の制動放射によるX線を放出し、人に傷害を及ぼす可能性があり、既に2、3の人達が周辺の線量を測定した。
しかし、自然には、5×10‐5R/hr程度のバックグラウンドがあり、通常の室内では少量のX線は検出できない。
そこで、低バックグラウンド、高感度の全身計数装置を用いて、市販されている67種類のVDTについて放出放射線を測定した。
その結果、放出している線量率は、3×10-9R/hr以下であることがわかった。
この値は宇宙線等の自然放射線に比較して極めて小さい。
また、年間2000時間、VDTから5cmの位置にいた時の線量当量は0.002mremとなる。
記:2021−3−15
掲載誌:Hum Factors 1981 Aug;23(4):413-20.
タイトル:A radiation and industrial hygiene survey of video
display terminal operations
VDT操作に関する産業衛生と電磁波の調査
研究者:William E. Murray, C. Eugene Moss, Wordie H. Parr,
...
Abstract
Radiation surveys were performed on 136 terminals of some 530 in use at three
different sites.
3つの異なる場所で使用されている約530台の中かから136台のVDT機器からの電磁波を測定した。
Researchers measured both ionizing and nonionizing radiation.
研究者は、電離放射線と非電離放射線の両方を測定した。
In the industrial hygiene survey, samples of workroom air were analyzed to
determine worker exposure to selected airborne chemical contaminants.
産業衛生面では、作業室の空気のサンプルを分析し、選択された空気中の化学汚染物質への作業者の曝露を調査した。
The results of these tests demonstrated that the VDT operators included in this
investigation were not exposed to hazardous levels of radiation or chemical
agents.
これらの調査の結果は、この調査の対象となったVDTオペレータは放射線または化学薬品の危険なレベルにさらされていないことを示している。
Full Textを見る。
・測定結果を以下に示す。
・電離放射線のX線は検出されず。
・紫外線は一部のモデルで検出。
・電界と磁界はNardaの測定器で、10−300MHzの帯域を測定した。VDTにはフライバックトランスがあり、15kHz程度の周波数の高い電圧で動作している。測定器が測定対象外の周波数で動作するフライバックトランスと直接結合し、誤った数値が表示されたことがあったが、10MMHz−300MHzの高周波電界・磁界は観察されなかった、とした。
送電線や携帯電話からの電磁波に関する裁判の話はよく出ますが、VDTに関してはあまり聞いたことがありません。
以下の研究論文の中で、例を見つけました。
VDTからの電磁波で子宮がんに罹患したとして提訴したが、電磁波による罹患で、あることを立証できないので、原告が敗訴した という例です。
1994年の判決です。
作成: 2004−6−17
永野秀雄「電磁波環境訴訟の理論と争点(1)」人間環境論集 第1巻 第1号 2000年 法政大学人間環境学会 発行にあった情報
************ *******
VDT(ビデオ表示端末)から生じる電磁波による人身損害賠償請求訴訟
公刊された判例ではないが、Lexisで公開されている連邦控訴審判決で、コンピュータ画面から生じる電磁波により、ガンに罹患したとして身体的損害賠償を請求したものがあったので、ここに紹介する。
このHays
v. Raytheon Company判決では、原告2名は、共にKLM航空のシカゴ事務所で予約受付の業務を行っていた。
原告は共に子宮がんに罹患し、このうち1名は死亡した。
原告は、この原因はコンピュータ・ターミナルの画面から生じる電磁波が原因であるとして、同モニタの製造者に対して損害賠償請求訴訟を起こしたが、原審は被告による正式事実審理を経ないでなされる判決の申立を認め、この訴えを却下した。
このため、原告が上訴したのが、本控訴審判決である。
連邦第七巡回区控訴裁判所は、Daubert
v. Mer-re11 Dow Phamaceuticals,1nc.判決で確立した専門家証言の許容性に関する判断基準を適用し、原告側の医学博士による専門家証言では、
@コンピュータ画面から生じる電磁波に継続して曝露することより子宮ガンに罹患するという証言は、この医学的関係性を立証する有効な科学的方法があると証言しながらも、その具体的方法については言及しておらず、また、当該証人が具体的にその方法を用いて原告が罹患したことを証明する因果関係の立証についても、なにも言及されていないため、このような専門家証言は認められず、
A当該専門家証言では、どのレベルの電磁波が危険性を持つかについて言及されていないため信憑性がなく、
B具体的に被告会社の製造したコンピュータ画面から生じる電磁波により、これを業務遂行中に曝露したことが有害であるとする証言にも具体的立証がなく、許容性が認められないと判断した。
このため、本裁判所は、原審がこの専門家証言を排除し、原告の主張する製造物責任による損害賠償請求を、被告による正式事実審理を経ないでなされる中立を認めて却下したことを支持した。
*********** *************
この永野論文には、そのほかに送電線からの電磁波に関する裁判の結果などが詳細に報告されています。 興味ある方は、原著全文を入手して読んでください。
http://ww2.tiki.ne.jp/~suishin/kenkyu/H10-1.html <リンク切れ>にあったものの一部引用です。
******************* ***************
調査研究課題名: 福岡県における作業従事者に影響を及ぼす環境因子(電磁場等)の実態調査
主任研究者:馬場 快彦(福岡産業保健推進センタ所長)
1.はじめに
近年、多くの事業場で快適職場の実現が提唱されている。実際には、コンピュータ等の導入が進み、職湯のOA化、FA化に伴って、従来問題視されていなかったVDT作業での低周波電磁界や作業場内での低周波騒音等による不快感の訴えが多く発生している。
法令では、特定の有害業務についてのみ、職場環境の測定・評価を規定している。
しかし、電磁界や低周波騒音については、測定が行われていないため、実態を把握せずに、マスメディアによりその有害性(危険性)が伝えられ、職場の作業者に不安感を与えている。
このため、福岡県内の作業場で、健康障害の発生抑制対策を講じるために作業場の環境実態調査を行い、必要な対策を検討した
調査は、平成10年11月〜平成11年3月に福岡県内(北九州市周辺)の事業場を調査対象とし、本調査研究の主旨を了承された6事業場(単位作業場所数12)で行った。
3.結 果
電磁界測定の結果は、VDT作業による電界強度が0.1〜14.3V/m、磁界強度が0.4〜300mA/mであった。
60Hz(商用電力)による電界強度が0.5〜64.0V/m、磁界強度が9.2〜230mA/mであった。
この結果は、いずれも曝露限界の値と比較して非常に小さな値であった。
(BEMSJの註:300mA/mの磁界強度は換算すると0.36μT=3.6ミリガウスとなる。)
4.まとめ
多くの事業場で非常に強い関心を示された、電磁界強度については、健康障害を直ちに引き起こすほどの強い電磁界が発生している作業場は、確認されなかった。しかし、このような微弱な電磁界の健康影響は研究されていないため、今後の調査が必要であると考えられる。
********** ***********
興味のある方は、上記WEBにアクセスするか、報告書を入手して読んでください。
「教育環境における電磁環境の分析・調査」に関する報告書
平成16年3月
財団法人 コンピュータ教育開発センタ 発行から抜粋
*はじめに
2002年度の「パソコンからの輻射電磁波の分析・調査」に続き、2003年度は実際にパソコンの設置してある教室に於いてどの程度の電磁環境にあるか「教育環境における電磁環境の分析・調査」を行った。
最近は、持ち運びが出来るノートパソコンが教育現場では重宝されており、ノートパソコンから輻射される電磁波の強度を明らかにするとともに、パソコン教室などで多数のパソコンが利用される実際の環境での電磁波特性について調べた。
ノートパソコン自休は周波数によって指向性は異なるものの特定方向に集中するような顕著な傾向はみられなかった。
超低周波磁界強度測定では冷却用ファンの位置で若干目立つところがあるものの特に強い強度の部分はなかった。
また、供試ノートパソコンの下に電波吸収体を敷いたところ周波数帯域によっては放射電界強皮の減少が観察された。
パソコン教室での使用を考えノートパソコンの台数を増加させて放射電界強皮を計測したところ放射電界強度の相加性が観測された。
さらに、実際にパソコン教室の中で人の居る場合と居ない場合の違いについても測定し、放射妨害電磁波が人による散乱・吸収等で減少することを確認した。
以上の測定結果は、人体への影響解明には直接結びつかないが、これまで不明であった教育現場の電磁環境を評価する上で役立つものと考える。
*第4章まとめと今後の課題
4.3 まとめ
PCの基本的雑音特性
・VCCIの基本的雑音特性の測定結果から、調査対象機器はVCCI C1assAの準尖頭値許容値を満足する情報処理装置であった。
・ACアダプタの設置位置として床上及び卓上に設置して周波数特性の測定を実施したが、30MHz〜100MHzの垂直偏波で0.6dB程度の差が現れた。
・供試装置のキーボード上部の商用電源周波数磁界強度の強い点から2cm離れた場所の強度は3.1mGであり、上部に17cm離れた場所(人がモニタを覗き込むようにみたときの眼球付近)の強皮は0.3mGであることが明らかになった。
・ノートPCの台数増加に伴う放射妨害波の相加性及びダイポールアンテナを用いた本数増加に伴う放射電磁波の相加性についての検討を行った結果、発生源の特性により周波数帯域によって増加特性は異なるものの、強度に相加性のあることが明らかになった。
・供試装置の下に電波を吸収する材質で作られた電波吸収休を敷き放射妨害波の電界強度が最人で5.5dB程度減少する結果を得た。
但し、放射電界強度の減少する周波数帯域と増加する周波数帯域がみられた。
このことから、あらかじめノートPCからの放射妨害波の大きな周波数を知り、その周波数に対応した電波を吸収する材質のもの及び形状のものを選ぶことにより放射妨害波を低減できるのではないかと考える。
教室内での電磁環境特性
・ノートPC26台が動作すると、教室内の前方1,2列日のノートPC前面から放射される放射妨害波と、3,4列目のノートPC背面から放射される放射妨害波が重畳(相加性)し、動作しているノートPC類(26台)の中心付近で電界強度が高くなることが示された。
・教室内右方向に、商用電源周波数磁界強度が比較的強い場所が存在する。
今回の調査では、この場所には建物の配電盤があり、ノートPCを動作させると配電盤周辺の磁界強度が背景雑音測定時に比べ強くなっていることが明らかになった。
また、ノートPCを動作させた場合の磁界強度分布特性から、ノートPCからの商用電源周波数磁界の強度は、配電盤からの磁界強度に比べ小さいことが明らかになった。
・今回の調査では、配電盤から2cmでの商用電源周波数磁界強度は約16.5mGであり、30cmでは約3mGであることが明らかになった。
30cmでの商用電源周波数磁界強度は、ノートPCのキーボード上部から2cm離したときの磁界強度とほぼ等しいことが明らかになった。
ノートPCから発生する磁界強度よりも配電盤周辺から発生する磁界強度の方が強いことから、教室内などにおいての机の配置については配電盤周辺に留意することが望まれる。
・人の存在する教室内の電界強度分布特性と人の存在しない教室内の電界強度分布特性を比較した結果、電界強度分布特性に違いが生じた。
これは、人の存在により放射妨害波が散乱等するためであると考える。
4.4今後の課題
本調査では、ノートPCの基本的雑音特性及び教室内での電磁環境特性についての測定を実施した。
ノートPCの基本的雑音特性においては、ノートPCの台数を増加させることで放射妨害波の相加性について検討を行った。
その結果、発生源の特性により周波数帯域によって増加特性は異なるものの、強度に相加性のあることが明らかになった。
今回の調査で、電波暗室内での測定に用いたノートPCの台数は4台であり、種類は1種類であった。
相加性の特性については、今後ノートPCの台数を更に増やした条件で電界強度の相加性を調査することも重要である。
また、種類の異なるPCを用いて今回と同様の調査を実施することも重要であると考える。
雑音強度低減の検討例としては、今回は電波吸収体を使用したが、電波吸収体と形状及び材質の異なる電波吸収フェライトシートや電波吸収シート等を用いて低減効果についての調査を行うことも必要であると考える。
教室内での電磁環境特性を評価するための方法として、一日間での最大値や時間率また、平均値等雑音の表現方法についての検討を行うことも今後必要と考える。
産業衛生学雑誌 46巻 2004年1月号 に掲載
タイトル:VDT作業の労働衛生・人間工学
研究者:産業医学総合研究所 斉藤進 に以下の内容が含まれています。
*********** **********
VDT作業に係る最近の状況は、旧労働省VDT指針が通達された昭和60年当時とは大きな変貌を遂げている。
前述した労働省調査報告ユ)や、中央労働災害防止協会報告2)によれば、以下の事項が指摘されている。
(1)約98%の事業所の事務管理部門にコンピュータ機器が導入され、約39%の事業所が社内外のコンピュータとオンラインでネットワーク化している。
同部門では、90%を越す労働者がVDT機器を利用しており、職場のIT化は今後とも急激に進展する見込みである。
(2)職場でコンピュータを利用することにより、身体的疲労自覚症状のある労働者は約78%と極めて高率である。
VDT作業者の訴えの多くは、作業空間・照明条件・機器配置等の人問工学的因子に係る内容である。
************ ******************
この論文にあるように、コンピュータ作業に関連する疲労などの訴えは多いが、それらは電磁波の問題ではなく、人間工学的な因子によるとされる ことがわかる。
一時期、VDT作業に関連する影響が話題になり、公的機関によるVDTに関する条例やガイドラインなどが提案されましたが、現実にはそれらの規定が運用されていなかったり、維持管理がされずに放置されたりしているものも見受けられます。
多くのWEBサイトや書物で、それら実行されていないVDT条例を取り上げている場合もあります。
その一例として、サンフランシスコ市が1990年に制定したVDT条例に関する論議があります。
これらの記載が誤りであることを明確にし、適切な情報開示を行なうことを目的として、本調査を行ない、以下にその結果をまとめた。
詳しい報告書全文は EMF専門委員会の頁を参照してください。そこに全文が公開されています。
http://homepage3.nifty.com/EMF/
<リンク切れ>
*誤った情報が記述されている例
過去の電磁界の健康影響に関する著作物とWEBを検索して、実態を調査した。以下はWEBにあった例である。
コンピュータの女性オペレータの問題を直視したサンフランシスコ市は、市条例で「VDT画面から少なくとも1メートル離れて使用」「妊婦は妊娠が判明した時点からVDT作業禁止」を義務づけています。(同時に雇用者側には「電磁波漏洩の少ないコンピュータの導入」を勧告しています。)
*市条例の制定と条例原文
1990年12月末にサンフランシスコ市条例23として制定された。 この法令は全文がWEBに公開されている。
*現在の状況の調査
そこで当委員会は、サンフランシスコ市当局と連絡を取り、現状の正確な情報を入手した。
また、条例を翻訳作業も行った。
・条例23について適用組織、諮問委員会の設立、討議事項などについての条項は、条例の適用をサンフランシスコ市、郡職員にだけに限定するために一度、修正された。
・当条例はどの私企業にも適用されない。
・条例23に関してサンフランシスコ市は現在、どんな活動も特に行っていない。
*サンフランシスコ市条例の内容
条例の原文(英文)を読むと、以下の内容が規定されている。
第1306条 更なる研究課題
(a)VDTからの電磁界放射に対する保護。
諮問委員会はこの条例の施行日から2年以内に、可能性のあるVDT電磁界放射からVDT作業者と他の従業員を保護するために雇主が使用する方法に関して見極めを行い、推奨方法を定めて、監理理事会に報告書を提出しなければならない。
諮問委員会が監理理事会に提出する報告書に盛り込むべき手順は、以下の項目を含むが、それに限定されない。
(1)従業員の作業位置を、端末装置の側面または背面から少なくとも1m以上離して配置する。
(2)上記(a)(1)における方法によって提供されるレベルと同じ電磁界曝露レベルになるための電磁界シールド方法
(3)上記(a)(1)における方法によって提供されるレベルと同等か同等以下の電磁界曝露レベルとなる低電磁界VDT機器の使用
(b)異常妊娠と長期の視覚障害。
監理理事会は(1)VDT使用と異常妊娠 そして、(2)VDTの使用と長期の視覚障害に関して、関係を明確にするために、更なる研究が必要であることを認識している。
更なる研究は、VDT作業者の眼を防護するために、妊娠したVDT作業者の健康と胎児を守るために、また他のVDT作業者を十分に防護するために、法的な規制の必要性を明確にするであろう。
それゆえに、この条例の施行日から2年以内に、諮問委員会は、2年間になされたこのテーマに関する刊行された研究報告を取りまとめ、監理理事会の活動に必要な諮問委員会の推奨を含めて、報告書を作成しなければならない。
この条例の可決日の時点で、VDT使用と異常妊娠との関連に関して結論がないので、監理理事会としては、雇主が希望する妊娠したVDT作業者を非VDT作業に従事するよう作業変更を行うことを、奨励する。
*考察と結論
・このVDT条例に言及しているWEBや書籍の記述が、条例の原文を読むと、明らかに誤っていることが分かる。
これらのWEB・書籍の記述は、1次資料としての条例の原文を読まないで、部分的な情報を基にまとめられた情報(2次資料)から引用されていると思われる。
・「VDT機器から1m離れてのVDT作業」の規定はない。
現実的に1mも離れて画面を見ながらの作業はできない。機器からの電磁界放射が正面より左・右側面や後面で大きい可能性があることから、「左右の側面・後面から1m離れて作業ができる配列方法を諮問委員会に検討させる」という調査項目を指示した条項があるに過ぎない。
諮問委員会がどういう結論と推奨を出すか、この条例を読むだけでは分からない。サンフランシスコ市条例は発効したが、諮問委員会における調査活動ならびにそれに基づく勧告はこれまでには行われていない。
・「妊婦は、妊娠がわかった時点からVDT作業禁止する」は条項にはない。
追加検討項目として「VDTと妊娠について調査行い、2年以内の報告書を提出すること」が規定であり、この報告書が出るまでの間は、条例文では「この条例の可決日の時点で、VDT使用と異常妊娠との関連に関して結論がないので、監理理事会としては、雇主が希望する妊娠したVDT作業者を非VDT作業に従事するよう作業変更を行うことを、奨励する。」となっている。
妊婦は、妊娠がわかった時点に、希望すれば、VDT作業以外の作業に従事できるようにすることを推奨しているのであり、妊婦のVDT作業を禁止しているのではない。
・以上のように、これまでに伝えられてきたVDT条例に関する記述には誤りの部分もある。
かなり古い記事ですが、「特選街」の記事の誤りを指摘します。
得選街96年1月号145頁には電磁波に関して書いてあって、中でも
「VDT電波に対して・・・・・・1990年サンフランシスコ市は条例で VDT画面からは少なくとも1m以上離れること、妊婦はすぐにVDT画面から離れる」ように勧告している、と記述しています。
疑問を感じて、1990年のサンフランシスコ市のVDT条例6/6/90の法律原文を入手しました。
また上記「24. サンフランシスコ市のVDT条例に関する調査結果」の項も参照してください。
この原文によれば、全く特選街のようなことは規定されていません。
1)妊婦には、もし希望すれば、 VDTを使用しない他の仕事を与えなければならない。
2)多数のVDTからの電磁波等の暴露を受けない様に、VDT作業者の近傍には 他のVDT機器の後や側面を配置しない。
少なくとも1・5mは距離をとって配置する方報を検討する
という規定が、関連する規定としてあります。
VDTは1mも離れたら文字がみえなくて仕事にはなりません。
VDTからの暴露を最低にする為に、VDT機器は1・5mの距離を於いて配置せよ、そういう 配置が可能か検討して諮問委員会に答申せよ、というのが本来の条例の主旨のようです。
皆さんも、原資料を入手して 電磁波の影響の話を正しく理解するようにしてください。
このように、日本語で書かれた週刊誌や単行本には 結構 誤りがあります。 こうした誤りが、現在でもどこかのWEBに転載されている可能性があります。
25項に書いたついでに、他の例がないかチェックしてみました。
以下のような、誤った事例がまだWEBサイトに残っていました。 調査:2006年4月4日
*三共化成のWEB 電磁波シールド板やVDTフィルタなどを製造販売している会社
URLは http://www.sankyo.cup.com/culture/EMC.html
電磁波について
パソコン、テレビのモニタから電磁波が
テレビパソコン画面からも電磁波が発生しています。
(略)
コンピュータの女性オペレータの問題を直視したサンフランシスコ市は、市条例で「VDT画面から少なくとも1メートル離れて使用」
「妊婦は妊娠が判明した時点からVDT作業禁止」を義務づけています。
(同時に雇用者側には「電磁波漏洩の少ないコンピュータの導入」を勧告しています)
*エルマーシュのWEB ニット製品や電磁波防護ニット製品の製造販売している会社
URLは http://www.l-marsh.com/ <この会社のサイトは2000年12月以降の更新はない。会社としては存続しているとしても、電磁波防護・・・からは離れているかもしれない。>
電磁波があぶない という頁
欧米では:
ガンや白血病、脳腫瘍の原因にもなるとして、欧米では早くから問題になり、
OA機器を扱うオペレータは画面から1m以上離れて作業するように規制したり、建築物や他の事例についても制限や規制を行い、危険を回避しています。
1m以上離れて作業:
サンフランシスコ市ではオペレータはビデオ・ディスプレイから1m以上離れて作業するように条例で定めている。
これらも、同様に誤った情報をWEBに掲載しています。
掲載誌:Scand J Work
Environ Health. 1995 Oct; 21(5):335-44
タイトル:Skin symptoms after the reduction of electric
fields from visual display units 表示装置からの電界を低減させた後の皮膚障害
研究者;Oftedal G, Vistnes AI, Rygge
K.
Foundation of Scientific and Industrial Research, Norwegian Institute of
Technology (SINTEF), Trondheim, Norway
概要
目的:本研究の目的は、表示装置の静電気と低周波電界を低減させることによって、顔面の皮膚障害が減少するか否かを確かめることである。
方法:
電界は導電性の画面フィルタによって、電界を低減させた。
21名の被験者は通常の業務に従事しながら、研究に参加し、最初の2週間はフィルタを用いず、次の2週間は機能のあるフィルタを用い、次の2週間は機能のないフィルタを用いた(もしくは逆の順序で)
機能のないフィルタとは、機能のあるフィルタと同一であるが、接地線をカットしてものである。
機能のないフィルタは機能のあるフィルタに比べて、静電気は有意ではない程度の減少があった。
低周波電界に関しては、機能のないフィルタに比べて機能のあるフィルタでは、有意に大きく減少していた。
結果:
ほとんどの症状は機能のないフィルタに対して機能のあるフィルタでははっきりしなかった。
差異は小さく、一つの症状だけは、ひりひり、ちくちくした痛み、かゆみは統計的に有意であった。
記録された物理学的・心理社会学的な要因は機能のあるフィルタの使用に伴う症状の減少を説明できなかった。
短期間の試験より、長期間VDTの傍で過ごすことで、症状がより明確になると思われる。
皮膚科の医者によって記録された所見は、二つの異なるフィルタによる差異を明確に示すことはできなかった。
結論:VDT作業に伴う皮膚症状が電界の低減で減少するという仮説を、弱いが支持する結果となっている。
掲載誌:Scand
J Work Environ Health. 1999 Oct; 25(5):415-21
タイトル:Long-term
effects on symptoms by reducing electric fields from visual display units.
VDTの電界を低減することによる症状の長期的な効果
研究者:Oftedal G, Nyvang
A, Moen BE.
SINTEF Unimed, Trondheim, Norway.
概要
本研究の目的は、過去の研究(VDTからの電界の低減によって皮膚疾患が減少した)に再現性があるかないかを見ることである。
加えて、VDTからの電界低減によって目の疾患と神経系の疾患が減少するかを見ることである。
方法
この研究では、コントロールされた2重盲検介在研究法を用いた。
電界は伝導性の画面フィルタによって低減させた。
41名がこの研究に参加し、通常の職務の中で、最初の1週間はフィルタなし、次の3ヶ月は機能のないフィルタ、そして次の3ヶ月は機能のあるフィルタを用いた(もしくはこの逆の順序)。
機能のないフィルタは機能のあるフィルタと同一であるが、アース線はプラスチックの絶縁線に置き換えてある。
機能のないフィルタはVDTからの電界を低減させることはない。機能のないフィルタに比べて、機能のあるフィルタでは有意に電界は低くなっている。
結果
ほとんどの症状は、フィルタを使用しない時に比べて、フィルタ使用時は、有訴は統計的に有意に少なかった。
このことは、見た目の効果と心理的な効果で説明が付けられる。
機能のあるフィルタ使用時と機能のないフィルタ使用時の間に、症状の軽重に統計的に優位なないはなかった。
結論:この研究の結果、VDTの電界の低減によって皮膚・目・神経系の症状が減少するという仮説を指示できない、ということが判った。
アブストラクトを入手、仮訳をつけた。
2001年のノルウェーでの研究ということから、少なくともほとんどのVDTは静電気の対策が取られていると思い、それにさらに帯電防止フィルタを取り付けても意味がないと思われる。 よってこの研究は?
掲載誌:Scand
J Work Environ Health. 2001 Apr; 27(2):140-5.
タイトル;Effects of electric field reduction in
visual display units on skin symptoms
皮膚障害に関するVDTからの電界低減による効果
研究者:Skulberg
KR, Skyberg K, Eduard W, Goffeng
LO, Vistnes AI, Levy F, Kjuus
H.
National Institute of Occupational Health,
概要
目的;この研究では、VDTからの静電界を低減する前と後の事務職員の顔面皮膚に関する訴えを調査した。
方法:11の会社で働く4556名の従業員を対象に、皮膚異常を訴える227名から無作為に120名を抽出し、盲検法による介入研究を行なった。
介入研究におけるVDTの静電気を低減するために帯電防止策を講じた。同様なVDTを使用している対照群に対しては行わなかった。
電界、粉塵濃度、健康状況、心理テストは介入研究の前と後に行った。
結果:対照群に比べて、介入群では統計的に有意に、皮膚異常を訴える人は少なかった(ほとんどいなかった)。
介入郡では、58マイクログラム/m3を超える粉塵濃度の事務所では、皮膚疾患指標(0−8までのスケール)で中央値1.5の減少が認められた。
「集団カテゴリー」モデルで解析結果、背景要因を考慮した後も、これらの数値は有意であった。
加えて、直線解析でも、静電気の要因は皮膚異常の訴えの減少に関する予知因子であることが判った。
結論:このフィールド試験では、VDTからの静電気の除電が粉塵濃度の高い事務所における作業者の皮膚異常の訴えを少なくするために有効であるということが判った。
アブストラクトを仮訳した。
VDT作業に関連する皮膚障害の要因は心理的な作業環境にあるとしている。 作成:2006−5−9
掲載誌:J Occup
Environ Med. 1997 Feb; 39(2):108-18
タイトル:Facial skin symptoms in office workers:
A five-year follow-up study
オフィス作業における顔面皮膚疾患:5年の経過観察研究
研究者:Eriksson N, Hoog J, Sandstrom M,
Stenberg B.
Department of Sociology, University of Umea, Sweden
概要:
この研究は、学際的な研究プロジェクトの一環である。
北スウェーデンにおけるオフィス疾病プロジェクトは、1988年末に質問表から始まった。
3233名のVDT作業者の中から、最初の症例・参照グループとして163名が選択された。
データの取得法は、2つの質問表、勤務場所へのアクセス、関心のある組織の人事部門のスタッフを伴うインタビュー、回答者の臨床的なテストなどである。
1988年の症例・参照研究に協力して人は、1994年の初頭に質問表に記入した。
この研究の主目的は、長期にわたって、VDT作業者の皮膚疾患の原因の変化を調査することである。
結果は以下の3点である。
1)VDT作業者の顔面皮膚疾患は一時的な現象であると思われる、より完璧な症状の予防策はネガティブ(無効)である。
2)VDT機器とその他の電子機器を含む事務所環境に改善策を講ずることはポジティブ(有効)であるという仮説は、指示しない。
そして、
3)皮膚疾患を終わらせる最も強い外部リスク指標は、心理的な作業環境にあるように見える。したがって、顔面皮膚疾患の理解のために重要な課題は、組織体制と個人の方針にある。
この研究結果は、個人個人の要素(生まれつきの要素、心理的な要素ともに)は考慮しなければならないことも含んでいる。
関心のあるかたは、原著・全文を入手して読んで下さい。
作成:2007−1−3
1995年の本の翻訳版として富士通から1997年に発行されています。 落合孝則・監修 柳 英夫・訳 です。
この中で、電磁波に関して、以下の記述があります。
************** 引用 **********
前向きに考える。
電磁界の危険に過剰反応することは、危険それ自体よりも有害であるとみる学者もいます。電磁界の危険が心配な方は、以下の「理性ある対応」を参考にしてください。
*************:: **********
表紙をいかに示します。 興味のある方は、この本を購入、もしくは図書館などで見つけて、読んで下さい。
記:2010−2−7
英語原本は1994年に、Joan Stigliani著で発行され、和訳版が矢部文訳で、1997年にオライリー・ジャパンから発行されています。
最後の第5部が「電磁波の隠れた危険性」が書かれています。
電磁波に関して、冒頭のP283で、
「人体は常に電磁波エネルギーに反応しています。
生理学的リズムは、昼と夜、28日の月の周期と、地球磁場の日ごとの微妙な変化に従います。
人間の行動も影響を受けます。」
と、まるで、占い師の言のようなことを、述べています。
地球磁場の日ごとの微妙な変化で、生活リズムが決まっているというのは、明らかな誤りです。
同じ誤りは、ロバート・ベッカーの電磁波の本にもあります。
よって、この本は、古いだけではなく、電磁波の健康影響の観点からも、薦められない本となります。
2000年当時に、「液晶モニタは電磁波は少なく健康に良い」という風説がありました。
液晶モニタの製造・販売会社7社にアンケートを送り、4社から回答を得ることがきた結果です。
2000年7月のまとめ このWEBに公開:2009−4−25
LCDタイプVDTの電磁波に関する表示等の調査結果
2000年6月、LCDタイプVDTを製造・販売している各社のインターネットホームページを検索して、各社のLCDタイプVDTの特徴や仕様の欄で、電磁波と健康影響に関して、どのように記述されているか調査した。
(各社の最新モデルや代表的なモデルで調査。全32社)
結果;
第1群:電磁波の健康問題に関して、何も触れていない会社。 計16社(全体の50%)
飯山電機、メルコ、ナナオ、東特、ソーテック、シリコングラフィック、シャープ、アキア、アイオーデータ、IBM,ADI,ビューソニック等
第2群;低周波電磁波規制を含むTCO規格に適合していると記している会社。 計5社(全体の16%)
ソニー、アップル、三菱電機等
第3群;単純に「電磁波が少ないLCD採用」、「電磁波の影響を受けにくい液晶」という趣旨の内容を記している会社。 計8社(全体の25%)
LG電子、エプソン、コンパック、日立、加賀電子、松下電器産業、ゲートウエィ、伊藤忠テクノ、
第4群:CRTからの電磁波は健康に有害であり、LCDは電磁波が少ないので安全、という趣旨の記述をしている会社。 計3社(全体の9%)
三星電子、ビレス、スインク
2000年当時のビレスのカタログの一部
であった。
この結果からは、「CRTからの電磁波は問題であり、液晶からの電磁波は安全、だからLCDタイプVDTを購入すべし」と提唱している会社が予想以上に少なかった、といえる。
上記アンケート結果で第3と4群に該当する会社の中から選択して、どの程度まで電磁波のことを踏み込んで検証しているのか、調査を行うことにした。
以下の内容のアンケートを7社に対して送信した。
質問の内容は、以下の3点であった。
質問1:貴社の液晶モニタ型式XXXの特徴には「電磁波がない、もしくは少ない」ことがあげられています。
この「電磁波が無い、もしくは少ない」とされた根拠を簡単に教えてください。
質問2:電磁波が少ないという論拠は、CRTでは50Hz等の低周波磁界を漏洩するが、液晶パネルにはそうした磁界の漏洩する源が無いことかも知れません。確かに液晶のパネル部分からの低周波磁界の漏洩は無いでしょう。
それでは、液晶モニタもしくは液晶表示部分に電源を供給している個所、例えばAC−DCアダプタからの低周波磁界の漏洩は、どの程度にまで抑えているのでしょうか?
質問3:電磁波は X線、紫外線、可視光線、赤外線、μ波等の電波、低周波電磁波と大雑把に分けることができます。これらのカテゴリー別に、貴社の液晶モニタは、例えば貴社もしくは他社のCRTモニタに比べて、どのように電磁波が無いのか、少ないのか、できるだけ 数字を入れて、教えてください。
X線: 紫外線: 赤外線: μ波等の電波: 低周波電磁波:
これらに対する回答の概要を以下に示す。回答があったのは4社であった。
質問1に対する回答:
A社:デスクトップ型液晶表示装置から、電磁波が出る要因が全く無い事は有りません。
CRTに比べ構造上無いに等しい電磁波であるとの業界の見解を、WEB上の製品案内では強調しすぎました。
デスクトップ型液晶ディスプレィが発表された当時、問題視されていた「CRTからの電磁波の人体に与える影響」を液晶ディスプレィ普及の追い風としたかったのは事実です。
しかしながら、全く電磁波が出ないと言う事は、事実ではなく、またその電磁波の種類、CRTとの実測値での電磁波の量の比較等が無い以上、今後当該機の製品案内には、一切電磁波に関する記載(多い少ないを含め)はいたしません。
尚、今後の新たな液晶ディスプレィの製品紹介をする際には、電磁波に関する記載は慎重にいたします。
B社:液晶モニタで電磁波の漏洩が小さいのは、測定により実証されている様です。
液晶モニタではCRTにおける偏向ヨークが無いために、低周波の漏洩が小さいと認識しております。
C社;TFTモニタはCRTの電子銃を使用していないために、X線等の電磁波発生は非常に少ないものになります。
その具体的な数値を含め、情報公開を弊社ではいたしておりません。
D社:液晶ディスプレィはCRTに比べて電子ビームを使用していない為「電磁波の少ない」という表現を使用しています。
その他のご質問に関しましては、公開している情報ではございません。
質問2に対する回答:
A社;質問1への回答に包含
B社:ACアダプタに関して特に低周波電磁波の漏洩を防ぐ工夫はなされておりません。
C社;質問1への回答に包含
D社;質問1への回答に包含
質問3に対する回答:
A社;質問1への回答に包含
B社:弊社では測定データの公表を行っていない事から、満足頂けるご回答が出来ません。
C社;質問1への回答に包含
D社;質問1への回答に包含
となっている。
2009−4−26の追跡調査結果:
スインク : 何もWEB検索でヒットせず 市場から消えた?
ビレス : WEB検索で何もヒットしない 市場から消えた?
三星 :サムソンのサイトで液晶モニタの製品紹介をチェック。 電磁波に関しては論及していない。
記;2009−10−22
事例1:1997年の神戸のパソコン販売店でのセールストーク
1997年11月 神戸に出張しました。
帰路に電車に載る前に三宮のセンタ街にあるセイデンの店に立ち寄りました。
日立のパソコンフローラの液晶の部分に「電磁波の少ない液晶ディスプレィだから、お子様も安心」というポップが貼られていました。
ポップの仕上げの状態から 販売店で手作りとして貼ったものとは思えませんでした。
メーカーサイドで作成したものと思われます。
メーカでも誤ったセールストークを行う こともあるのでしょう。
その他の事例があれば、紹介していきます。
事例2:1998年7月 東京・秋葉原のT−ゾーン・アップル館でのセールストーク
秋葉原を歩いて、この店の「液晶ディスプレィの展示コーナー」に、何故液晶が良いのかの説明がありました。
その説明の中に「電磁波が出ないので、女性に優しい」とありました。
1998年11月22日に秋葉原を歩き、同じ展示コーナーに立ち寄りました。
「電磁波が出ないので、女性に優しい」という表記は消えていました。
1999年3月 東京・渋谷のT‐ゾーンには、同じようなPOPがありました。
以下にその写真を示します。
注:このTゾーンは、1998年、1999年当時は、多くのパソコンショップを展開していました。
その後、業績悪化により次々閉店し、2010年11月29日、最後に残った秋葉原の「T・ZONE
DIY ショップ」(1999年10月7日開店)も閉店し、廃業となりました。
記:2014−3−31
パソコンの選択時に、「電磁波による健康影響」で液晶を選択した事例
http://www.panasonic.co.jp/pc/pcpress/97q1/pcp01.html にあった内容で2001年9月のログ
気がついたら(2009−7−10)この頁は開けなくなっていた。
この記事には書かれた日付はない。しかし、URLの中に971q1とあるので、1997年の第1四半期の報告と想定することができる。
古い事例ですが、抜粋して紹介します。
******************
User Report・1
「省電力・省スペース」だけで選んだわけではない。
仕事をしやすい環境づくりに大型液晶が必要だった
アメリカンファミリー生命保険会社様は、「がん保険」を世界で最初に商品化し、 同保険の日本国内シェアでトップを誇っておられます。
従来のオンライン専用端末のリプレースに際して、LC-View 750台、Panacom V22・250台を導入。
「省電力・省スペース」のほかに、意外な導入の決め手がありました。
お得意様:アメリカンファミリー生命保険会社様
納入窓口:松下電器産業株式会社 企業システム営業本部 金融運輸統轄部営業3課 パーソナルコンピュータ事業部 開発営業部営業1課
アメリカンファミリー生命保険会社様は、事業規模の拡大にともない、業務体制の整備と効率化のために2年半前に事務部門が新社屋に移りました。
96年末までに、オンライン端末を一新し、Windowsパソコンを導入し運用を開始されました。
その全てのモニタにLC-Viewを採用され、一部のPCにPanacomV22を採用されています。
使いやすさと見やすさで選んだ PanacomV22とLC-View
LC-Viewは17型CRT相当のサイズで非常に見やすい。社員には好評です。
社員の健康はなにものにも勝ると考える。
だから、液晶ディスプレィを選んだ
液晶ディスプレィは、ディスプレィとしてはたいへん高価です。
スペース効率を犠牲にしても、CRTを入れたほうがコストの削減ができたはずです。
しかしながら、私たちは液晶ディスプレィLC-Viewを選びました。それは、社員の健康にも気を配りたかったからです。
当社の事務部門は女性社員の比率が非常に高いのです。
また、業務時間の大半を、モニタと向かい合って過ごさなくてはならない業務内容です。
長い時間、CRTの画面を見続けると、目にかかる負担が大きいのです。
その点、液晶ディスプレィならば、目にかかる負担を軽減できます。
導入後、社員に聞いてみたところ、液晶は目が疲れにくいという声が多いのです。
また、ご承知のように、電磁波が人体に影響を及ぼすのではという説があります。
とりわけ女性にはよくない影響があるといいます。この説も念頭において、液晶ディスプレィを選択しました。
*****************************
「わかりやすいVDT健康検診」宮尾克ら編 (社)全国労働衛生団体連合会 発行 改訂第3版 2007年8月発行の中に、以下の様な記述があります。
一部を引用して紹介します。
関心のある方は、この本を読んでください。
**************** ***********
Q17: VDTから発生する放射線や電磁場の問題
VDTからは放射線や電磁場(電磁波・電磁界)が出るので危険だというのは本当でしようか?
A: 放射線というと、電離放射線であるX線などだけでなく、非電離放射線である可視光線、紫外線、静電気、赤外線などがありますが、VDT作業では心配ありません。
くわしくは富永洋志夫著「VDT作業の物理環境」(労働科学研究所刊)やWHOの環境保健基準238号を参照してください。
またWHO のファクトシート201号も参考になる文書です。
(略)
以上のとおり放射線、紫外線・静電気・赤外線、電磁場、電磁波などの各要因とも、とくに健康上の問題を起こさないし、通常の使用法なら特別の対策も必要ありません。
したがって健康を守るためと称する電磁波予防用の画面フィルタを装着したり、鉛入りのエプロンをまとったりする必要はありません。
もちろん、液晶でも同様です。
(略)
******************** **************
オーストラリアで1994年に開催されたVDTからの電磁波に関するシンポジウムの予稿集です。
古い使用ですが、興味のある研究が含まれています。
VDT作業は白内障の原因となっていないという研究で、6年間の追跡調査に基づいています。概要を仮訳しました。
関心のある方は、原典を読んでください。
掲載誌:Radiation
Protection in Australia
The
Journal of the Australian Radiation Protection Society Volume 12 Number 3 (July
1994)
This
was a Special Issue containing the Proceedings of the conference: Visual
Display Terminals, Electromagnetic Fields and Health, Melbourne and Sydney,
February 1994
タイトル:CATARACT AND VDT USE 白内障とVDT使用
研究者:B.L.
概要
VDT使用は眼に障害を与えるのではないかという提起がある。
この不安は、人には有害とされる不可視の電磁界をVDTは放射すること、そして、ザイレがVDTから放射される電磁界が白内障をもたらすという論争中の主張によって煽られている。
こうした不安から、我々はVDT従事者の眼の研究の研究として、6年間の研究を行った。
1日1時間以上VDTを使用する市内の公益企業に勤める642名のVDT作業者を研究対象とした。
彼らは年1回の包括的で標準化された眼の検査を受けた。
対照群として、同じ組織でVDTを使用しない勤務者673名を選択し、同じように眼の検査を行った。
VDT使用者と対照群は性別と年齢を調和させた。
眼科の判定者には、誰がVDT使用者で、誰が不使用者かわからないようした。
驚くことに、研究の開始時において、対照群で水晶体の不透明さが有意に多いことが判った。、
しかし、多くの場合は、水晶体の不透明さは異常とは言えないレベルで、白内障ではなかった。
白内障の判定基準によれば、対照群で11名(1.7%)、VDT使用群で9名(1.3%)が研究の開始時点での白内障患者となった。
6年を経過し、9名がVDT作業者群から、2名が対照群から、白内障となった。この差異は統計的には有意とは言えなかった。
白内障が電磁波と関連しているとすれば、VDT作業者群の1.8%が、VDT非使用者群の1.3%が、研究の開始時点及びその後の観察期間で白内障となっている。この差異は統計的に有意ではない。
このことから、我々の研究では、VDT使用が白内障のリスク要因であるとは言えない、という結論である。
記:2010−2−8 修正;2010−7−17
*以下はEMF-Portalのサイトにあった情報を、一部修正加筆したもの
************************
掲載誌:J UOEH 2005; 27 (1): 25-40
タイトル:A very low level of magnetic field exposure does
not affect a participant's mental fatigue and stress as much as VDT work.
非常に低いレベルの磁界曝露は参加者にVDT作業ほどには精神的疲労およびストレスヘの影響を与えない
研究者:Ishihara I, lkushima M,
Horikawa J, Haraga M, et al;
この研究は、視覚表示端末(VDT)作業中の磁界(MF)への曝露が作業者の精神的疲労に影響するか否か、精神生理学的変化に関連するストレスを誘発するか否かを、ボランティア実験で調べた。
37人の学生がこの実験に参加した。
ブラウン管(CRT)モニタ画面に密着して液晶モニタ(LCD)端末を配置した実験用装置でVDT作業を行わせた。
CRTモニタの電源がオンまたはオフの状態は被験者と立ち合い試験官がともに判らないように、2重盲検法で行われた。
CRTがオンの状態での作業グループはCRT-ONグループ、CRTがオフの状態の作業グループはCRT-OFFグループとした。
気分プロフィール検査および自覚症状アンケートを作業の前後に測定し、また、唾液のクロモグラニンAおよび尿中の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OH-dG)を作業の前後に測定した。
その結果、1)自覚症状アンケートおよび唾液および尿のストレスマーカーのデータによれば、CRT-ONグループでは、CRT-OFFグループと比較して有意な精神的疲労または心理的ストレスは誘発されなかった;
2)一方、参加者の作業後の気分プロフィール検査において、「活気」は大きく低下し、「疲労」および「混乱」は有意に上昇した;
3)また、参加者は作業後の自覚症状アンケートで、質問項目25のうちの14項目において強い不調を回答した;
4)総合すると、この実験では磁界曝露による健康への悪影響は検出されなかったが、VDT作業自体が精神的疲労と精神生理学的状態に影響することが示唆された、と報告している。
研究目的(著者による)
ビデオ表示端末作業中の磁界曝露が作業者の精神的疲労に影響を及ぼす、または心理生理学的変化に関連したストレスを生じるかどうかを調べること。
詳細情報
学生37人(女性36人、男性1人)が参加
曝露
周波数:50–60 Hz
タイプ:磁界
曝露時間:連続90分
曝露源:17インチCRTモニタ
CRTモニタの前に液晶モニタを置き、その前に被験者が座る。
CRTモニタは不透明なスクリーンで見えないようにし、CRTモニタの電源がON/Offは被験者・試験者ともにわからない状態(2重盲検法)とした。
曝露強度:被験者の位置で電界:9.41V/m 磁界:0.06μT
研究の主なアウトカム(著者による)
データは、披験者に対する磁界ばく露の健塵への悪影響を検出しなかったが、ビデオ・ディスプレイ端末作業自体が精疲神労的及び心理生理学的状態に影響を及ぼすことを示唆した。
******************
*この論文の概要は
********************
抄録
本研究は、VDT作業における精神的疲労や気分の変化は電磁場暴露の影響を受けると仮定して、CRT画面装置の稼動による電磁場暴露状況を設定し、実験環境下で実施した.
短縮版POMSと自覚症状調べ、唾液中のクロモグラニンAおよび尿中8-OH-dGを電磁場暴露の指標として用い、これらの変化について、CRT稼動群をCRT-ON群,非稼動群をCRT-OFF群とし、二重盲検法によりグループ間での違いを検証した。.
その結果、CRT-ON群とCRT-OFF群による影響はどの指標においても統計的な有意差を認めなかった。
しかし、VDT作業実施後の短縮版POMSと自覚症状調べ,尿中8-OH-dGの結果において、実施前の値より有意な差を認めた.。
これらの結果は、VDT機器からの電磁波の漏洩は、電磁場暴露基準値の許容範囲内にあり健康影響には問題がなく、むしろVDTによる拘束作業に伴う疲労やストレス,視覚作業に伴う目の疲れなどから受ける変化であることが推察され、過去に指摘されている報告と一致する(WHO, 2001)。
本研究の意義は、CRT-ON・CRT-OFFの実験環境を設定し、電磁場の漏洩による健康影響を否定し、むしろ短時間(1時間半)のVDT作業においても、作業自体に伴う疲労や生物学的変化を明らかにした点にある。
**********************
*Full Textを読むと、以下の図のような実験配置図と、曝露の測定結果が判る。
実験状況、 写真右側に被験者がLCDモニタを使った作業を90分実施。LCDモニタの陰に衝立の内側に衝立に密着させてCRTモニタを設置している。
BEMSJ注:
電界・磁界の測定値を見ると、被験者の位置(距離30pや50p)と思われる位置における磁界・電界の値は、CRTモニタ(磁界の発生源と想定した)からの磁界の影響がほとんどなくなっている。
この研究では、CRTからの磁界の曝露は被験者に影響がなかったと結論付けているが、被験者の位置における磁界測定値を見れても、影響が見られないのは、明らかである。
こうした実験研究を行うのであれば、磁界曝露源としてのCRTモニタからの磁界曝露が明確に影響する位置に設定する等、設定を工夫すべきである。
以下の研究がある、
タイトル:長期のVDT使用が眼精疲労徴候の発生とその特性に及ぼす効果
The effects of long term VDT usage on the nature and
incidence of asthenopic symptoms.
研究者:Yeow P. T.
掲載誌:Appl Ergonomics VOL.21,NO.4 PAGE.285-293 1990
ある組織でVDT作業への転換が行なわれた後、2年間にわたってVDT使用者161名と同等の作業を行なっている非VDT作業者65名の眼精疲労兆候を定期的に検診した。
VDT使用群者と非使用者群の問では、仕事に関連する眼精疲労兆候の型、数、頻度に有意差が認められなかった。
眼精疲労兆候報告頻度には有意な男女差があった。
関心のある方は、原著全文を読んでください。
記:2020−3−01
古い論文です。
掲載誌:臨床環境医学(第1 巻第2号)1992年
タイトル:電磁波の生体におよぼす影響一角膜上皮ー
研究者:樋口裕彦ら
要約
VDT (Visual Display Terminals )作業による、角膜上皮障害とその原因について検討した。
ヒトにおいては、4時間程度のVDT作業で、対象とした8名16眼すべての角膜に上皮障害が発生した。
CRT(Cathode Ray Tube)画面曝露マウスの走査型電子顕微鏡による検討では、2時間程度のCRT画面曝露で角膜上皮の脱落面積が増加しはじめ、5時間で有意の増加となり、12時聞でその脱落面積は最大となり、その後の増加は認められなかった。
透過型電子顕微鏡による検討では、これらの角膜障害は、上皮の最表層にとどまっていたが、基底細胞層にも反応性と思われる配列の乱れが認められた。
これらのVDT作業にともなう角膜上皮障害の原因のーっとして、VDTから発生する電磁波を考えた。
本文を読むと
方法
1).VDT作業によるヒト角膜上皮障害発生の有無
19歳から54歳までの被験者8名(男性3名、女性5名、平均年齢30.1歳)に連続4時間のVDT作業を負荷し、前後で細隙燈顕微鏡により角膜上皮の状態を観察した。
角膜所見は、フルオレスセインを点眼しフォトスリットにて写真に記録した。
BEMSJ注:このヒトによる実験で、画面から何センチ離れた所に目をおいたのでしょうか?
この論文には記載はない。連続4時間の作業は、目が疲れてどうにもならないはずである。
2)CRT画面曝露マウスの角膜フルオレスセイン染色所見
実験動物として6週齢のBALB/C雄性マウス5匹10眼を用い、CRT画面として汎用市販テレビ(19インチ)の画面(画面前方30cmの電場50-lOOV/m、磁場は700‐lOOOnT)を使用した。
マウスを飼育ケースにて飼育し、ケースか3cmの距離をおいて2方向からCRT画面曝露を24時間行い、その後pentobarbital
sodium(25mg/kg)腹腔内注射による全身麻酔下にフルオレスセインを点眼し、Kowa fx50R型眼底カメラで蛍光眼底撮影用フィルタを用いて撮影し、対照群と比較した。
考察:
マウスによる実験で、CRT画面の曝露により、マウス角膜に上皮障害が惹き起こされることが明らかとなった。
24時間CRT画面曝露マウスの角膜は上皮脱洛部に染色性を示すフルオレスセインにより著明に染色された。
また、透過型電子顕微鏡による観察では、CRT画面曝露群で角膜上皮表層細胞の細胞膜破壊像と基底細胞層の配列の乱れが観察された。
対照マウスでは、このような所見は認められず、CRT画面曝露マウスでは、何らかの細胞または細胞膜に対する障害が加わったものと考えられる。
角膜上皮は、ヒト、マウスとも約6〜7日でturn overが繰り返される再生能力の旺盛な組織であり、角膜上皮基底細胞層の配列の乱れは、角膜上皮細胞障害に伴って、角膜上皮再生のturn overが克進した結果生じたものと推定した。
走査型電子顕微鏡による角膜上皮の観察では、対照群においては軽度の上皮細胞の脱落しか認められなかった。
また、白熱電球曝露でも、対照群とほぼ同様の脱落しか認められず、CRTから発生する光の影響はないものと考えられた。
一方、CRT画面曝露マウスで、著明な角膜上皮最表層の脱落が認められた。
この脱落はCRT画面H暴露後12時間までdosedependentに増加し、その後の増加は認められなかった。
曝露時間12時間以降に、角膜上皮の脱落が増加しなかった原因としては、前述したごとく、角膜上皮は再生が旺盛な組織であることから、CRT画面曝露による角膜上皮の脱落と、角膜上皮のturn overが、平衡に達した状態を考えた。
この角膜上皮障害の発生原因について検討を行ってみた。
現在まで、VDT作業による角膜障害の原因として挙げられているものには、瞬目の減少、涙液分泌、の減少、静電気による空気中の粉塵の衝突などがあげられている。
しかし、ほとんど瞬目しないマウスにも角膜上皮障害が発生することを考えると、瞬目の減少でその原因を説明するのは困難である。
また、涙液分泌減少の報告もあるが、角膜上皮障害を引き起こすほどの減少の報告は、今のところ見られない。
また、眼鏡を装用している人にも、角膜上皮障害が発生することを考えると、静電気による空気中の粉塵の衝突で角膜上皮障害のすべてを説明するには無理がある。
近年、CRTから、X線などの電離放射線、紫外線や赤外線、高周波、マイクロ波を含む種々の電磁波が放射されていることが報告されており、われわれの測定でも、とくに超長波ー短波領域に強い電磁波が検出されている。
ここ数年、電磁波が角膜細胞に影響を及ぼすといった報告や、いわゆる電波領域の電磁波が、ラット水品体細胞の細胞膜を障害するという報告も見られることを考え合わせると、これらの電磁波が角膜に障害を及ぼしている可能性が強く示唆される。
今後はこれらの電波領域を中心とした電磁波の曝露実験や遮断実験を行い、検討をかさねていく必要性があると思われた。
BEMSJ注:この論文のタイトルは「電磁波」であるがこの論文を読む限り、電磁波の探求は全くと言えるほどに不十分である。
1992年にこの論文以降に、樋口らは「電磁波の曝露実験や遮断実験を行い、検討をかさねてい」ったのであろうか?
検索したレベルでは、そうした論文は見つからない。
この研究は、「問題提起」に終わってしまったものと言えるかもしれない。