IH調理器からの接触電流が原因かもしれないという健康障害を訴える裁判が始まっている。
この裁判では、従来の電磁界曝露による健康影響とはかなり異なる側面があるように、BEMSJには見える。
そこで、関連する情報を集めてみることにする。
集まった情報を、羅列にとどまるかもしれないが、紹介していきます。
(このページの最初の公開:2011−1−4 最終更新:2017−4−4)
**裁判に関する情報
1.IH調理器で不整脈 で訴訟2010年
2.IH調理器で不整脈 で訴訟の終結
3.三洋電機のIH調理器製造の終結
**関連するかもしれない情報
以下は関連するかもしれないし、関係ないかもしれないが、参考になりそうな情報として見つけたものを列記します。
1.訴訟のポイントに関するBEMSJの見解
2.製品評価技術基盤機構の2008年(平成20年)報告書
3.太良尾らの2008年の研究 低周波接触電流に起因する心臓電流密度
3A.平尾らの2008年の研究 低周波接触電流による体内電流密度分布の基礎的研究
3B. 大森豊明著「電磁気と生体」1987年日刊工業新聞社発行にあった心臓への分流割合
3C.心臓ペースメーカーが心臓を動かすために流す電流
4.2010年8月に開催された電磁界情報センターのセミナーでの情報
5.スイスのIH調理器に関する報告書の内容
6.野田論文にみるIH調理器からの20kHz接触電流の実測例
7.長尾らの論文にみるIH調理器からの20kHz接触電流の実測例
8.寺川らの論文にみるIH調理器からの20kHz接触電流の実測例
9.寺川らの論文にみるIH調理器からの20kHz曝露磁界と接触電流の実測例
10.医学関係情報にあった感電に関する基礎的な情報
11.感電に関する基礎:MEの安全管理サイトから
11A.感電に関する医学情報 帝京大学救命救急センターのサイトの情報
11B.ある医学書にあったミクロショックの厳しい数値
11C.1990年コロナ社発行「国際電気標準会議 医用電気機器安全通則 第2版」より
11D.医学情報:滋賀医大のサイトにあった電撃傷に関する情報
11E.電気製品のEMCのサイトにあった感電に関する情報
11F.関東学院大学の高橋論文に見る感電
11G.goo ヘルスケアにあった感電に関する情報
11H.名古屋大学の法医学ノートに見る感電
12.電気学会の報告書2003年にみる電磁界曝露と心臓刺激
13.ICNIRP2010ガイドラインで考える
14.太良尾らの2006年の研究 中間周波漏れ磁界による体内誘導電流
15.林らの2007年研究 中間周波磁界による生体誘導電流解析
16.総務省も研究の必要性を考えている中間周波数の接触電流
16A.始まった総務省の中間周波数に関する研究 2010年度の研究結果
17.国際的な感電に関する規定
17A.WHO 1993年の環境保健基準に見る接触電流
17B.ICNIRP1998年ガイドラインに記述されている20kHz帯の接触電流に関する記述
17C.MEの教科書「MEの基礎知識と安全管理」から 医療機器の高い周波数漏洩は10mAまで
17D.Leonowichの2000年論文にみる高周波帯域の接触電流の研究
18.ラジオ放送などの周波数帯域での感電事故
18A.高周波ウェルダーによる感電事故の例
19.表皮効果について
20.IEC62233だけでは不十分
21.鍋から接触電流が流れる原因の推定
22.総務省「電波の安全性に関する説明会」の中の質疑応答から
23.2006年のIrnichの研究にあった接触電流と心臓ペースメーカー
24.Dawsonの2001年の研究からIHの漏洩電流の規定を考える
25.循環器内科のサイトにあった心房細動に関する情報
26.Kavetらのミシン(縫製産業)作業での漏洩電流の調査
27.IH調理器の鍋に触れた場合の接触電流の防護に関する特許
28.他のIH調理器による不整脈の例?
29.心臓の筋肉の電気刺激特性
30.英国のIH調理用鍋などの販売会社のサイトにあった使用上の注意
31.心室細動を引き越す電流閾値の周波数特性 山下らの1975年研究
32.犬でのミクロショック
33.1978年の研究にみる犬でのミクロショック
34.手術中にミクロショックが疑われて事例
35.1957年のウサギの感電死実験の報告から
36.心臓麻痺に関する医学書にあったミクロショック
37.1973年の犬と馬へのマクロショックの実験報告
38.1999年のアメリカの医学雑誌にあったミクロショックに関する論文
39.400KHz高周波電流が誘導し、ミクロショックの事例 1994年アメリカの報告
39A.カテーテル挿入時のミクロショック事例
40.1959年の岩本の心室細動に関する研究から
41.1977年の丹治の論文から
42.Dalzielの1972年論文から
43.電波法による規制
**中間のまとめ
**裁判の終結を受けてBEMSJの提言
日本消費者経済新聞 2010年5月31日号に掲載された内容を纏めた。
(当該の記事の切り抜きは未入手で、引用されている文章からの再引用です。 この記事の切り抜きコピーをどなたか、送ってくれませんか?)
*簡易裁判での結果
「2007年9月大阪簡裁に調停を申し立てたが、2009年1月に調停不成立となった。」 と。
そこで、地裁への提訴に踏み切った、 と。
*地裁への提訴
電磁誘導加熱調理器(IH調理器)を使用し続けた結果、心疾患など身体的被害を負った兵庫県在住の喫茶店を経営する夫婦が、製造者である三洋電機を相手取り、製造物責任法に基づき製造物責任と、安全性に問題がある製品を販売し警告表示を行なわなかった過失による不法行為責任を問い、治療費と慰謝料など計8900万円の損害賠償を求め大阪地裁に5月26日提訴した。
訴状によると、原告夫婦は2004年4月から喫茶店の経営を始め、夫が調理を担当。
夫は1日に数時間IH調理を使い鍋の中身をステンレス製スプーンでかき混ぜるなど調理を続けていた所、2005年2月ごろから気が遠くなる症状を覚え始め、4月26日には失神して顔面を強打。
検査結果、心房細動(不整脈)と診断されペースメーカーを装着することになり、その後も心房細動が続いた。
妻は入院中の夫に代わり調理を担当した所、たびたび不整脈が現れ連日続くほど激しい症状となった。
夫婦はIH調理器により調理器具に発生した電流が身体に流れているのではないかと考えて、IH調理器からガスコンロに取替えた所、妻の不整脈はほぼ沈静化したという。
関心のある方は、当該の新聞記事を読んでください。
*追記 2010−8−7 産経新聞2010年8月6日 に裁判の情報が大きく報道されていました。
その一部を引用します。
********** ***********
「IH調理器の電流で健康被害」と提訴 三洋「欠陥ない」
IH調理器を使い続けて不整脈などの心疾患になったとして、夫婦が三洋電機に約8900万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
2010年08月06日
徳島大が夫婦の依頼を受けてこのIH調理器を使って実験したところ、ステンレス製の調理器具には、周波数2万〜6万ヘルツの電流が流れ、一定の接触条件で人体にも流れることが判明。
20年8月には三洋電機の担当者も実験に同席、電流の存在を確認した。
徳島大の伊坂勝生名誉教授(電気工学)によると、IH調理器に乗せたステンレス製の鍋などに片手で触れるだけでは人体に電流はほとんど流れない。
しかし、プラスチックなどで覆われていない鍋の取っ手を片手で握りながら、もう片方の手がトッププレート縁の金属部分やステンレス製の流し台に触れるなどした場合、手を通って人体に微小電流が流れるという。
*************** *******************
関心のある方は、当該の新聞を読んでください。
追記:2011−3−12
三五館 2010年11月発行 船瀬俊介著「もしも、IH調理器を使っていたなら」の中の、冒頭の4節に、関連する記事がありました。
関心のある方は、この本を読んでください。
・IH 被害 ついに裁判に! 日々の調理で「心臓止まった」
・徳島大学が実証実験 「身体の中を電流が流れている」
・「IHのナベをかき混ぜる」とき、あなたが注意したい4つのダメージ
・メーカ側も想定外の電流被害、もしかしてあなたにも!?
追記:2011−3−13
三五館 2010年11月発行 船瀬俊介著「もしも、IH調理器を使っていたなら」の中に原告の弁護士の方の弁が紹介されている。
弁護士 「危険な欠陥商品」
担当の浦寛幸弁護士は語ります。
「夫妻はIH調理器を使用し続けて健康被害を受けたことから、製造物責任にもとづく損害賠償を求めて裁判を起こしました。
体内に電流を流す医療器具はありますが、厳格な警告表示があり、安全性に十分配慮されています。
しかし、IHには体内に電流が流れることに関する警告表示がなく、安全性に配慮されていません。
そうした製品は危険な欠陥商品といえます。
体内に電流が流れ続けないようするために、少なくとも警告表示は必要でしょう。
かなり意味深長な弁護士の談が紹介されている。
追記;2011−9−9
「産経新聞2010年8月6日 に裁判の情報が大きく報道」されてから1年以上経過しました。
その後のこの裁判の状況は? 新聞にはその後の経過は報道されていません。
ネットで検索しても、その後の経過に関する情報は見つかりません。
追記;2012−9−9
「産経新聞2010年8月6日 に裁判の情報が大きく報道」されてから2年以上経過しました。
その後のこの裁判の状況は? 新聞にはその後の経過は報道されていません。
ネットで検索しても、その後の経過に関する情報は見つかりません。
新聞にも、WEBにもどこにもこの裁判に関するその後の経過、結末に関する情報は見つかりません。
原告、被告の関係者から以下のような情報を入手しました。
この裁判は、原告側が裁判を継続することが困難になったことなどから、裁判は取下げとなり、判決を得ずに終結したといえます。
以下の情報を原告より入手しています。
**************** 引用 *********
上 申 書 平成25年5月 日
1 上申の趣旨
原告省三は、現在、体調が悪化し、心身ともに訴訟継続が不可能な状態にまで陥ってしまったため、やむなく取下げを予定している。
本件訴訟の最大の争点であるいわゆる電磁波や接触電流が長期的に人体に与える健康被害については、専門家においても安全か危険かの判断が困難であって、このような高度な専門的知識を要求される本件事件については、特に、原告省三の心身に対する負担が大きいものであり、上記取下げ理由をご理解頂きたい。
原告省三としては、訴訟における立証責任はともかくとして、本来、企業側が安全な製品を設計製造し、消費者に大量に販売するのであれば、その安全性を科学的・医学的に十分検討すべきであって、仮に、科学的・医学的に安全であることを明確にすることが困難であったとしても、少なくとも、警告表示は必要であると強く感じているところであるが、本件訴訟後、国も、IHコンロの危険性について、調査し始めていると聞き及んでおり、原告省三としては、本件訴訟によって、社会に対する問題提起ができたものと感じており、健康被害に対する賠償という目的は達成できないものの、上記のような社会的意味のある問題提起が出来たことから、一定の成果があったものと考えているところである。
原告省三は、企業側において当該製品の安全性を十分検証の上、製品を販売し、仮に科学的・医学的に安全か危険かが明確にできないとしても、少なくとも警告表示を行うなどして、今後、原告らと同じ被害・同じ悲劇が生じることのないよう、企業側の真摯な対応を強く望むものである。
*********************
また以下の情報も原告より入手しています。
************** 引用 *************
この裁判を終了した、理由は加齢による体力ということもありますが、大きな理由は他にあります。
三洋電機はこの接触電流は安全であるということは証明できていません。
しかし、日本の裁判では、原告が本件の電磁調理器の接触電流によって私の心臓に不整脈が生じるようになったことを証明しなければなりません。
現状では、人体実験か、動物実しかありません。
動物実験は莫大な費用と動物にストレスがかかり不可能、人体実験はさらに莫大な費用で、一般個人でできるようなものではない、ということです。
しかし、これらは発売前にメーカが検証しておくべきである。
経済産業省の製品課長が<予算を組んで調べる>と約束してくれていた。
それが具体的に実行されるのを知って、訴訟を取り下げたということです。
****************************
被告の三洋電機の関係者からの情報です。
以下の情報しか入手できていません。
*************** 引用 *************
下記の裁判ですが、昨年6月に原告より訴訟の取り下げ申し立てがありましたので、裁判は終了しています。
**********************
BEMSJ注:この裁判に関して、原告、被告の双方から、このWEBに公開して欲しい、このWEBに公開してもよい、という情報の提供があれば、BEMSJは順次それらを公開して行きます。
1:原告のWEBにあった裁判に関する情報の転載 詳細はこちらに 原告のWEBの内容にBEMSJのコメントを追記してあります。
2:原告が使用していた三洋電機製のIH調理器 TIC-C207の取り扱い説明書
原告が裁判に際して証拠として提出した書類(甲第1号証) 詳細はこちら(PDFファイル)に
3:原告が使用していたIH調理器からの漏洩電流(コンタクト電流)に関する徳島大学の報告書:「IH調理器に伴うコンタクト電流に関する実験報告書
平成19年6月」原告からの裁判における証拠「甲第2号証」として提出されたもの 詳細はこちら(PDFファイル)に
4:原告が裁判に提出した証拠書類、甲第3号証:IH調理器の動作原理 のファイルです。 詳細はこちら(PDFファイル)に この資料は純粋に動作を説明しているものです。
5:原告が裁判に提出した証拠書類、甲第4号証−1:2007年4月三洋電気作成、原告宛に送付された「TIC-C207 漏れ電流の測定結果」のファイルです。このファイルにBEMSJのコメントを追記して、このWEBに公開します。 詳細はこちら(PDFファイル)に 。
6:原告が裁判に提出した証拠書類、甲第4号証−2:2007年5月三洋電気作成、原告宛に送付された「TIC-C207
漏れ電流の測定結果送付の件」のファイルです。詳細はこちら(PDFファイル)に 。
7:原告が裁判に提出した証拠書類、甲第4号証−3:2007年7月三洋電気作成、原告宛に送付された「TIC-C207
漏れ電流の測定機器」のファイルです。詳細はこちら(PDFファイル)に 。
8.原告のIH調理器の使用状況
原告が準備した動画からの画面抜粋
以下のサイトの画像にあるように、三洋電機としてのIH調理器製造事業は、2011年3月で生産終了となっていました。
さらに次のことも考慮しなければならない。
通常、IH調理器から漏洩する電磁界の最大は、調理器の電力を最大、フルパワーに設定した時だとされる。
たぶん、この設定には間違いはないと思うが、この動作条件がすべてであるか否かは疑問が残る。
最大電力の時は、20KHzなどの磁界は連続して出力される。当然、外部に漏れる磁界のレベルも大きくなる。
IH調理器のパワーを小さく設定した場合の、IH調理器の動作はどうなっているのか? 不詳である。
たぶん、個々の調理器の設計によって異なると思われる。
もし、パワーを小さく設定した時の動作が、20kHzの磁界の連続出力ではなく、断続出力になり、断続することで平均した場合の電力が小さくなるように設計されているとしよう。 磁界を断続させるということは20KHzの調理コイルに流す電流を断続させることになる。
この電流をゼロにする時に、いわゆるゼロクロス方式を用いているのであれば問題はないが、もしゼロクロス方式を用いていない場合は、大きな電流(磁界)は瞬時にゼロに落ちるので、磁界の時間変動率は非常の大きいものになる。
近傍にいる人に誘導する磁界による誘導電流は、この磁界の時間変動率に比例する。
すなわち、体内に誘導する磁界による誘導電流は、フルパワー時よりも、電力が小さく設定した場合の方が、より大きい可能性がある。
さらに、これも機器内部の電気設計に依存するが、ゼロクロスではない場合、電流が急激にゼロになった時に、反動で大きな電圧ピークが発生する可能性がある。この電圧ピークをある程度以下に抑える設計を行い、機器が壊れないようにしているが、こうした配慮が不十分であれば、瞬間的な大きなピーク電圧が発生し、それによる大きなピーク電界が発生し、結果として、より大きなピーク的な接触電流が流れる恐れがある。
こうしたIH調理器の動作条件も加味して、接触電流や誘導電流の測定・評価を行う必要がある。
追記:2011−10−25
さらに、さらに次のことも考慮しなければならない ことに気が付いた。
漏洩電流(接触電流)は、通常1か所から漏れ出す電流として評価される。
すなわち、IH調理器の外殻の金属部分等に手を触れた場合に手を経由して人体に流れ込む電流として、測定・評価される。
ところで、IH調理器の場合に限定されるのかもしれないが、IH調理器の上に置いた金属製鍋に手を触れた場合にはIH調理コイルとの結合の結果として接触電流が流れる。もし、右手で金属製鍋に触れて、
同時に、
もし、左手をIH調理器の外装にあるどこか金属などで人が触れると漏洩電流が流れる場所に、左手で触れたりすれば
両手から漏洩電流が流れ込み、胴体の部分では合算され、最終的に足から流れ出ることになる。
すなわち、電気安全法の漏洩電流の測定・評価では、1か所からの漏洩電流の測定・評価だけでは不十分で、少なくとも同時に触れることができる2か所からの合算された漏洩電流で、安全性を検証しなければならない、ことになる。
現在の電気安全法の漏洩電流の試験手順に、こうしたことが記載されているのであろうか・・・・・・・?
以下にあるように産経新聞で、報告書の存在が示されている。
********************************
IH調理器、司法判断は 喫茶店夫婦「電流流れ不整脈」提訴 大阪地裁
8月5日15時14分配信
産経新聞
■高まる需要、健康相談も
IH調理器の安全性については、独立行政法人「製品評価技術基盤機構」が平成20年ごろ、体内を流れる電流値について実験。
接触電流に関する国際的なガイドラインよりも電流値は低いとの数値を公表したが、安全か否かとの評価は見送った。
********** **********:
当該資料は、経済産業省主催第14回製品安全点検日セミナー(火二注意セミナー:平成20年5月13日、香川県高松市)で製品評価技術基盤機構NITEが講演しました資料
「最近の製品事故事例と安全な使い方について」の8ページに掲載されている。
参照URL: http://www.meti.go.jp/product_safety/event/080513/080513021.pdf
このサイトにある測定結果を引用する。
******************** ***********
IHコンロ(電磁調理器)とコンタクト電流
【コンタクト電流の測定に使用したIHコンロ】 卓上型1口コンロ:5銘柄 組込型2口コンロ:5銘柄
【コンタクト電流の測定に使用した調理器具】 片手鍋(取っ手:金属製) ポット(金属製)
【コンタクト電流を測定した状態】 (1)調理器具に触れた片手からスリッパを履いた足に流れる電流 (2)調理器具に触れた片手から素足に流れる電流 (3)調理器具に触れた片手から流し台に置いた片手に流れる電流
測定状態 |
測定電流値(mA) |
|
片手鍋. |
ポット |
|
(1)片手→足(スリッパ) |
0.204−0.561 |
0.195−0.565 |
(2)片手→素足 |
0.561−1.559 |
0.716−1.725 |
(3)片手→片手 |
0.470−1.392 |
0.401−1.722 |
ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドラインでは、公衆の曝露の接触電流に関する参考レベルは、4mA(20kHz)である。
***************** ***********************
上記の測定結果では、ICNIRPの接触電流の規定の4割を超える値となっている。
この値が最悪の価かは、詳細が不明でわからない。
しかし、規定値の4割を超える値というのは決して小さい値とは言い切れない。
この製品評価技術基盤機構の測定に関する詳細な報告書はない ようです。
BEMSJ注:想定2倍: 少なくとも、上記の測定値1.7mAの2倍 3.4mAが実際の使用条件では流れる恐れがあるといえる。もし、さらなる最悪条件があって、それによって2割程度の接触電流が増えるとすれば、4mAの規定値を超えることになる。
製品評価技術基盤機構での測定風景
上の写真1は測定風景である、足から大地に向かって流れる電流を電流計で測定している。
機構に問い合わせたら、この電流計の仕様は1MHzまでの周波数が測定可能であった。また周波数分析は行っておらず、上記の最大1.725mA等の電流は、電流計の指示値であった。
電流計の仕様をメーカのカタログで確認をとると、真の実効値を指示する非常に高級な電流計であった。
これらのことから、1.725mAという電流は、ICNIRPの接触電流20KHzで4mAの規定に合致する とは一概に言えないことが判明した。
すなわち、この1.725mAが20kHzに限定した電流であれば、適合していると判断できるが、
この測定では周波数分析を行っていないので、もしかすれば、この1.725mAが50−100Hzの成分と、20KHzの成分の合成値であるので、場合によっては50−100Hzの成分が0・5mAを超えたりしている可能性があり、ICNIRPの規定を超えていることになってしまう。
追記:2011−9−10
IH調理器からの接触電流に関して、色々と考えている中で、ちょっとこの電流の測定に疑問が出てきました。
IH調理器の上の鍋に触れた場合の接触電流は、50Hzを全波整流した100Hzの正弦波形でAM変調された20KHzのパルス性電流です。
ICNIRPの低周波に関する基本的な考えからすれば、50Hzの正弦波のピークの時点における漏洩電流の値を実効値に換算して接触電流の規定値と比較することになります。
ということは、接触電流を測定する場合、ピーク指示を行ってくれる電流計が必要になります。
50Hzも20KHzの測定できる低周波のスペアナで、ピークサーチを行えば、正しい値が把握できると言えます。
一般市販されている漏洩電流計で測定した場合、スペアナのピークサーチのような形で、測定は可能なのでしょうか?
もし、通常の実効値指示、真の実効値指示の電流計(もしくは1kオームの抵抗の電圧降下による電圧測定)で測定した場合、正しく測定できるのでしょうか?
参考までに、エクセルを利用して、正弦波の1周期の時間を 適当に分割してAM変調されたパルス電流が流れると想定して、パルス電流の実効値を計算してみました。
パルス電流のDutyが25%や20%であると仮定すれば、全周期にわたって算出した「50HzでAM変調されたパルス電流の実効値」はかなり低くなります。
ピークの時点の電流だけから実効値を計算した場合に比べて、全周期にわたって流れる電流からの算出した実効値は半分程度になります。
ということは、場合によっては、IH調理器の上の鍋から流れる接触電流を通常の全周期にわたって実効値を指示する電流計で測定した場合は半分程度以下の値となり、過小評価になります。
計算の対象とした波形の例
どのように考えれば良いのでしょうか??
上記のNITE機構のデータは甘すぎる と言い切れるのでしょうか?
追記:2011−9−12
NITEで漏洩電流測定に使用した電流計は日置電機の漏洩電流計であった。
そこで、日置電機のWEBで当該の漏洩電流計のカタログを見た。
現在市販されているモデル・現在サイトに紹介されているモデルには、クレストファクターの仕様欄がない。
そこで、50Hzで振幅変調されている20KHzのパルス性(非正弦波)の波形をもつ漏洩電流の測定に関して、サイトの質問箱に質問を残した。
そして、回答を得た。
・日置の漏洩電流計のクレストファクターは1.5までしか考慮していない。すなわち、パルス性・非正弦波の電流に関しては対応していない。
すなわち、測定結果の数字は表示されても、その数字が正しいかどうかは不明となる。
・日置の漏洩電流計にはACピークというピーク値を測定する機能はある。
しかし、この機能は振幅変調されたり、時間で変動する場合にポークサーチやピークホールドといった最大値を得たりする機能はなく、同じ波形が繰り返している場合のピーク値測定機能である。
と、
これらの情報から、NITEで測定したIH調理器からの漏洩電流、最大1.725mAという数字は、正しいという保証はないということになる。
それでは、正しい値は幾らか????
以下の論文を入手した。
************************* ************
掲載誌:電気学会電磁環境研究会資料 EMC−08−15 2008年
研究者:太良尾浩生、伊坂勝生ら
タイトル:詳細人体モデル内の低周波接触電流に起因する心臓電流密度の解析
この研究は50Hzの交流電流が手から流入したとした時に、その電流がどの程度、心臓に流れるかを研究したものです。
この研究の結果では、心臓に流れる電流の割合は、
左手から入り裸足に抜けた場合は39.7%
右手から入り、裸足に抜けた場合は33.7%
手から入り、反対側の手に抜けた場合は34.6%であった。
******************** ****************
この結果から、通常の感電電流の規制値が0.5mAであるとすれば、0.15mAから0.2mAが心臓に流れることになります。
0.1mAを超える電流が心臓に流れると心室細動が発生するとされるので、こうした0.5mAという感電電流の規制値も、感電している時間が長いと危ない ということがわかります。
通常の感電では、瞬間的に手を放すので、たぶん、問題は発生していないのでしょう。
また、この論文では 「IEC規格では「左手-両足」の電流経路において、心室細動を起こす電流値が示されている。・・・・・ 」 という記述がある。
このIEC規格は
IEC:
Technical Specification, Effects of Current on Human being and
Livestock-part 1 General Aspect, IEC/TS 60479-1 2005年
と引用文献欄に紹介されている。
このIEC規格が、たぶん 日本の電気用品安全取締法の論拠になっているのでしょう。
60479−1を見ると、この規定は50−60Hzを中心にしか書かれていません。
記:2011−3−17
以下の研究論文がある。
************************* *********************
掲載誌:電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ、 環境電磁工学 108(97)、 53-58、
2008-06-13
タイトル:低周波接触電流による体内電流密度分布の基礎的検討
研究者:平尾賢司ら
概要:
本論文では、人体数値モデルに電位の異なる電極を配置した場合に体内における電界・電流密度の基本的な分布特性を示している。
まず、SPFD法を一部改良した数値解析手法を紹介し、直方体型の単純な生体媒質に対して測定結果と解析結果を比較検討することで数値解析コードの妥当性を検証した。
次に、日本人成人男性の数値モデルを用いて、(1)左手のひら-両足の裏、(2)右手のひら-両足の裏、(3)右手のひら-左手のひらの3パターンの電極配置を考え、0.5mAの接触電流を流した場合におけるモデル内の電界・電流密度を数値解析した。
解析結果から、0.5mAの接触電流に対して神経(脊髄)の電流密度の最大値はICNIRPの基本制限(2mA/m2)を5倍程度上回ることが分かった。
また、3つの解析パターンで心臓を通過する電流の割合は33〜40%であり、左手のひら-両足の裏の場合が最も大きい割合となることが分かった。
*********************** **********************
この研究の結果、50Hzなどの低周波の接触電流0.5mAで、心臓に流れ込む電流は約0.2mAであることが判る。
記:2011−9−29
この本では比較的詳しく感電に関して書かれています。
以下の表には、心臓に流れる電流比が掲載されています、 死体を使った実験データで、手から手に漏洩電流がながれた場合は心臓に平均で3.3%の電流が、手から足に漏洩電流が流れた場合は平均で6.7%の電流が心臓に流れていることが示されている。 周波数はたぶん50−60Hzでしょう。
これはFreibergerによる1934年の、たぶんドイツ語で書かれた研究論文からの引用でしょう。
記;2012−3−20
2012年3月6日に東京で総務省主催の電波の安全に関する説明会が開催されました。
この中に、講演3 「電波の植込み型心臓ペースメーカー等への影響と対策」 埼玉医科大学 豊島健の講演がありました。
「心臓ペースメーカーでは、心臓に3mAの電流(流す期間は0.4m秒)で心臓は鼓動する。」 という基本機能の説明がありました。
僅か3mA、時間では0.4m秒で心臓の筋肉は鼓動します。
0.4m秒と言うことは、周波数に直せば125kHzの半サイクルに相当する極めて短い時間です。
したがって、25KHzのIH調理器の漏洩電流が、3mAを超えて一発でも心臓に流れれば、心臓は鼓動します。
いいかえると心臓は誤動作します。
と、ここまでは言えることが判りました。
でも、この話から、不整脈になる ということは残念ながら言うことができません。
以下の様なIH調理器に関する情報がありました。
****************
IHに関しては、相対的に研究は少ないので、WHOは更なる研究を勧めている。
スイス連邦政府の内務省公衆衛生局(FOPH)が今年の1月にFact
Sheet(英文)を出している。
不適切な鍋(底が平らではない鍋)は使うな・・・と。
不適切に使うと大きな磁界が出る。
6.25μTを近づけば超える値が報告されている。
また、鍋を中心から離して使用すれば、同じく6.25μTを超える場合があると報告されている。
最悪のケース、不適切な鍋で調理中心から外れて使用した場合は、ガイドライン値の5-6倍になっている。
調理中は金属製のスプーンを使用しないこと。誘導電流が流れるから。
****************** ************
このスイスの文書の原文を見つけてみたいとBEMSJは思っています。
記:2011−1−11
スイスの政府情報として、IH調理器の使用に関する情報シートが刊行されていました。
以下のサイトにあります。 英文です。
http://www.bag.admin.ch/themen/strahlung/00053/00673/03156/index.html?lang=en
私はこの報告書を翻訳してみました。
全文は公開できませんが、概要を示します。 <追記:2014−6−29 全文公開 こちらへ >
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スイス連邦公衆衛生局
・調理ゾーンのサイズに合う適切なサイズの調理器具(訳者注;鍋など)を使用すること。つまり、広い調理ゾーンには小さな鍋を置かず、調理ゾーンが完全に覆われる鍋を使用する、また、調理ゾーンの中央に常に鍋を置くようにする。
・鍋が支障なく加熱できたとしても、歪んだり、曲がったりしたような変形した鍋は使用してはいけない。
・調理機器から鍋に効率よくエネルギーが伝えられる、特別に製造された鍋を使用することはきわめて重要である。そうした鍋には製造業者が電磁調理器に適したことを示すラベルを貼っている。使用する最適な鍋は電磁調理器と共に提供されたものである
・あなたの体と調理機器の間を5―10cmの距離を保つことで磁界の曝露をかなり軽減可能である。
・漏洩電流があなたの体へ流れるのを防ぐために、金属製の調理スプーンを使用してはいけない。
・心臓ペースメーカーもしくは埋め込みの除細動器を装着した人は電磁調理器を使用する前に医師と相談すべきである。
漏洩電流
誘導コイルと調理ゾーンに置かれている鍋はコンデンサを形成する。誘導コイルのスイッチをオンにすると、鍋には電荷が充電する。
もし、鍋に人が触れるならば、微小電流(漏洩電流)が人体に流れるだろう。
適切な鍋で中心を合わせた場合と 不適切な鍋で中心を合わせなかった場合
図4に適切な鍋で中心を合わせた場合と、不適切な鍋で中心を合わせなかった場合(最悪の条件)の磁界値の比較を示す。
規格に定められた使用方法での漏洩磁界値に比べると、最悪条件では9.5倍に達するような増加である。
図4 適切な鍋で中心を合わせて置いた場合と、
不適切な鍋で中心を合わせなかった場合の、距離1−30cmでの磁界測定結果
橙色: ICNIRP 1998年 磁界曝露限度値(参照レベル)
実線:調理ゾーンと鍋の中心を一致させた場合で、かつ適切な鍋を使用
破線:調理ゾーンと鍋の中心を一致させなかった場合で かつ 不適切な鍋を使用
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記:2011−1−8
電気学会 電磁環境研究会 開催:平成18年11月22日の資料にあった内容です。
タイトル:EMC-06-13 IH調理器からの電磁界の振る舞いについて
発表者:野田臣光ら
IH調理器の上に置いた鍋からの接触電流の実測例が以下のグラフで示されている。
接触電流は1kオームの抵抗の両端の電圧で測定されているので、1Vが1mAとなる。
表によれば、20kHzではグラフから読み取って0.72mA、40kHzでは0.843mAである、約80kHzでは0.28mAと読み取れる。
これをICNIRP 1998年ガイドラインの一般公衆に対する接触電流の規定を比べてみると
20kHz ICNIRP値 4mAに対して0.72mAと、約18%とそれなりの値になっている。
40kHz ICNIRP値 8mAに対して0.843mAと約11%と それなりの値となっている。
80kHz ICNIRP値 16mAに対して0.28mAと約2%となり、かなり小さい。
20kHzと40kHzの接触電流の総和をとれば、計31%と、それなりの値になっている。
3つの周波数成分の単純な合成値を計算すると、1.14mAとなる。
この値が最悪値であるか否かは不詳。野田論文にはこうした条件に関する記述はない。
また、50−60Hz成分の接触電流がどの程度あったかも、記述されていない。
本来であれば、50Hzなどの成分も含めて総和を計算しなければならない。すなわち、31%より大きくなることは自明である。
また、以下には、野田論文に掲載されている日本の電気用品取締法(電気安全法)に規定されている漏洩電流の限度値の周波数特性を示す。
1kHzまでの周波数では1mAまで、30kHz以上では20mAまで、1kHzから30KHzまでは周波数に応じて段階的に決められている。
この値は、ICNIRPのガイドライン 一般公衆に対する接触電流の規定値より甘い。
追記:2011−9−10
BEMSJのコメント:
電気安全法に規定する漏洩電流を満足することとICNIRP(新・旧)の接触電流の規定に満足することは必ずしも一致しない ということに、気が付きました。
話を簡単にするために、IH調理器の上に置いた鍋にふれた時の接触電流の周波数は、20KHzの成分のみとします。
ICNIRPの接触電流の規定は、20KHzでは4mAです。
電気安全法の漏洩電流の測定では、上の図3に示すように、高周波の成分は、小さくなるようにフィルターを通して測定します。
図3は対数グラフなので、正確な数字は読み取ることはできませんが20KHzでは10分の1から12分の1程度にフィルターで減衰させて測定を行います。
1.それでは、電気安全法の規定で1mAぎりぎりのものがあり、漏洩する電流の周波数が20KHzであったとすると、20kHzでの実際の漏洩電流は10mAないし12mAとなります。
となれば、ICNIRPの4mAの規定値を大きく超えます。
2.20KHzでの実際の漏洩電流値がICNIRPの規定値4mAぎりぎりであったとします。
これを電気安全法に規定する漏洩電流として測定すると10分の1の0.4mAから 12分の1の0・33mAとなります。
すなわち、電気安全法の規定1mAに対して、0.33mAとか0.4mA程度の漏洩電流に設計されていれば、その機器は自動的にICNIRPの接触電流の規定も満足していることになります。
ということは、IH調理器の製造会社として、電気安全法の規定値1mAではなく、その3割か4割程度以下になるように設計しておかなければならない、と言えます。
たぶん、その程度のレベルに漏洩電流は抑えられているのだろうと想像はしています。
記:2011−1−9
以下の論文には、IH調理器からの接触電流に関する調査報告が掲載されている。
掲載誌:平成19年度電気関係学会四国支部連合大会 予稿集
タイトル:電磁調理器からの接触電流の測定
研究者:長尾宣紀 ら
IH調理器の上に鍋を置き、人がさわり、足元から大地に流れる電流を周波数分析しながら測定を行った。
結果 AC200Vで動作するIH調理器の場合の実測値
周波数 kHz |
ICNIRP参照レベル mA |
コンタクト電流 mA |
21.5 |
4.30 |
0.55 |
43.3 |
8.65 |
0.88 |
64.8 |
12.95 |
0.52 |
|
参照レベルとの比の総和 |
26% |
3つの周波数成分の単純な合成値を計算すると1.16mAとなる。
前項の野田らの研究での総和は31%であった。
この長尾らの研究での総和は26%となっており、おおよその傾向は一致している。
この長尾らの研究にも、50−60Hz成分の接触電流がどの程度あったかも、記述されていない。
本来であれば、50Hzなどの成分も含めて総和を計算しなければならない。すなわち、26%より大きくなることは自明である。
記:2011−1−10
以下の論文には、IH調理器からの接触電流に関する調査報告が掲載されている。
掲載誌:平成22年度電気関係学会四国支部連合大会 予稿集
タイトル:電磁調理器からの曝露磁界と接触電流の同時測定
研究者:寺川拓弥ら
この研究ではIH調理器の上に乗せる金属製鍋の大きさをいろいろ変えて、磁界の漏洩測定と同時に、接触電流も測定している。
図3にその研究結果の一部を紹介する。
「図3から接触電流は鍋の面積によって増加する傾向にあることがわかる。これは鍋の底部の面積が大きい場合、鍋の底部と電磁調理器との間の静電容量が大きくなるため、接触電流が大きくなるために、考えられる。」とある。
記:2011−1−11
以下の論文には、IH調理器からの曝露磁界と接触電流に関する調査報告が掲載されている。
掲載誌:平成22年度電気学会基礎・材料・共通部門合大会 予稿集
タイトル:電磁調理システムからの曝露磁界と接触電流の測定
研究者:寺川拓弥ら
以下に示すように、卓上タイプのIH調理器の曝露磁界と、接触電流は鍋の大きさに依存し、鍋が大きいと接触電流は大きくなり、曝露磁界は少なくなる。
メルクマニュアル家庭版 にあった感電に関する知識
一部を抜粋して紹介します。定性的な解説です。
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電気による損傷
電流は直流(DC)と交流(AC)に分類されます。
直流は、電池から得られる電流のように、常に同じ方向に流れます。交流は家庭の電源コンセントから得られる電流などで、周期的に方向が変化します。
交流は米国の大半の家庭で使用されていますが、直流よりも危険です。
直流は強い筋収縮を一度だけ起こすため、触れた人は電源をすばやく離すことが多いのです。
しかし交流は持続的な筋収縮を起こすため、電源を握った手を離すのが妨げられるからです。
結果的に長時間電流にさらされることになります。
ほんの軽いショックを感じるような少量の電流でも、交流では握った手を麻痺(まひ)させることもあります。
少し強い交流では、胸の筋肉が収縮し、呼吸ができなくなることがあります。さらに強い電流は、致死的な不整脈を起こします。
電流が体を流れる経路によって、損傷を受ける組織が決まります。
電気の入り口となるのは、最も多いのは手で、次は頭です。
出口で多いのは足です。
腕から腕へ、あるいは腕から脚まで通り抜ける電流は心臓を通過するので、脚から地面へ流れる電流より格段に危険です。
頭を通り抜ける電流は脳に影響を与えます。
電気抵抗は電気の流れを妨げる力です。
体の電気抵抗の大部分は皮膚に集中しています。
皮膚がぬれている場合は、抵抗が減少します。
皮膚の抵抗が大きいと、損傷は局所的になり、皮膚のやけどだけですみます。
皮膚の抵抗が小さいと、体内の臓器に与える損傷が大きくなります。
軽度のショックは、筋肉の痛みを起こしたり、軽い筋肉収縮や驚きのために転倒したりすることがあります。
重度のショックは不整脈を起こし、さほど問題ないこともありますが、即死することもあります。
心臓のポンプ作用にも障害が起こります。
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帝京平成大学現代ライフ学部 講師 小林郁夫 の講義のサイトにあった情報
2010−11−17のログ
http://www.signalysis.co.jp/teihei/te1/100608.pdf にあったファイルから抜粋
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ミクロショック:心室細動誘発値(100μA)
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この100μAという値は、交流50Hz・60Hzでの値と思われる。
http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/me2/anzenkanri01.html
にあった内容
ME(医用電気)の安全管理に関するサイトからの一部引用です。
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人体の電撃反応
マクロショック: 低周波(1kHz以下)の電流が皮膚から体内に流れることにより起こる反応をマクロショックと呼びます。
ミクロショック:: 心臓に電極リードやカテーテルにつながれた機器が漏電し、心臓に直接電流が流れ込むことで起こる反応をミクロショックと呼びます。
電撃の種類 |
電流値 |
人体の反応 |
マクロショック |
1mA |
ビリビリ感じ始める(最小感知電流) |
10〜20mA |
手が離せなくなる(離脱限界電流) |
|
100mA |
心室細動 |
|
ミクロショック |
100μA |
心室細動 |
BEMSJ注:手・皮膚を経由して体内に流れ込んだマクロショックによって心室細動を起こす電流と、直接心臓電流が流れた場合のミクロショックによって心室細動を起こす電流の間には、1000倍の開きがある。手・皮膚から流れ込んだ50−60Hzの電流の「1000分の1」しか心臓に流れない というのであろうか??
上記に紹介した「3.太良尾らの2008年の研究 低周波接触電流に起因する心臓電流密度」によれば、皮膚から流入した感電電流の4割が心臓に流れている という研究と、まったく相容れない。
以下は 帝京大学救命救急センターのサイトにあった情報の抜粋です。
http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~dangan/MANUAL/Burn/Electrical/electburn.htm
感電、落雷、電気スパーク、弧光(アーク)などの電気的障害による損傷を電撃傷といい、特殊なものに落雷による
雷撃傷がある。
電撃傷の本態は次の3つであると言える。
・電流そのものによる損傷
・生体内でのジュール熱発生による損傷
・アーク(arc)やスパーク(flash)の熱による損傷
心臓への影響
・死亡原因の多くは心室細動
・40〜100Hzで最も起こりやすい
・皮膚を介して60mA、心筋直接通電100μAで起こる
・周波数が高いほど安全
・25〜30Vでも細動が起こり得る(濡れた状態)
・手から下肢への通電経路で最も発生頻度高い
・心室細動、心房細動、副調律、非特異的ST〜T変化が起こり得る
・受傷直後から起こるが、8〜12時間後に起こった報告もある
・不整脈は治療に反応するが、長期持続することもある
生体内でのジュール熱の発生
・V ボルト、I アンペアの電流が R オームの生体を T 秒通電したときに発生する熱エネルギー J(joule) は、
J = I2・R・T = V2・T
/ R
( Kcal = 4.18× J )
・このジュール熱による変性壊死が起こる
離脱電流(let-go current)と膠着電流(freezing
current)
人体に対する電流の作用 |
直流 |
交流 |
||||
60 Hz |
10,000 Hz |
|||||
男性 |
女性 |
男性 |
女性 |
男性 |
女性 |
|
感知電流(少しチクチク) |
5.2 mA |
3.5 mA |
1.1 mA |
0.7 mA |
12 mA |
8 mA |
苦痛を伴わない(筋肉自由) |
9 |
6 |
1.8 |
1.2 |
17 |
11 |
苦痛を伴う(筋肉自由) |
62 |
41 |
9 |
6 |
55 |
37 |
苦痛を伴う(離脱限界) |
74 |
50 |
16 |
10.5 |
75 |
50 |
激しいショック(筋肉硬直、呼吸困難) |
90 |
60 |
23 |
15 |
94 |
63 |
心室細動可能性(通電 0.03秒) |
1300 |
1300 |
1000 |
1000 |
1100 |
1100 |
心室細動可能性(通電 3.0秒) |
500 |
500 |
100 |
100 |
500 |
500 |
心室細動 確実 |
上記の値の2.75倍 |
(田中ら)
BEMSJ注:心室細動可能性は通電時間3秒までしか表にない、もう少し通電時間が長くなったらどうなのか・・・・知りたいと思った。
上記の表は田中らの論文からの引用となっている。
原典は「田中隆二、市川健二:産業安全研究所安全資料:電撃危険性と危険限界、労働省産業安全研究所、1970」である。
この原典を入手して読んでみたが、上記の表のさらなる詳細情報は記述されていなかった。
記:2011−9−24
この図7−3では、裁判で論点となっている20KHz付近のミクロショックの値として、「南山堂の医学書では 周波数が高くなればミクロショックの電流は大きくなっても構わない、周波数が4kHzであれば、50Hzでのミクロショック100μAに対して、10mA程度と100倍大きくてもよい」という説と、同時に、IESの考え方として、周波数4kHzの場合でも50Hzの場合の2倍程度、100μA程度であるという説が紹介されている。
この厳しい説の元となる資料を探そうと思った。
上に紹介した図7−3は、菅原勇勝著「柔道整復治療法T」にあった図である。
・JIS C6310は古いJISで低周波治療器に関する規定
・JISC6310−1986を見ても、ミクロショックなどに関する記述は見られない。
したがってJISの方面からはこれ以上探求はできない。
この図の出典元となっているのは桜井靖久著 1980年 協立出版 発行である。
この本は、「医用工学ME基礎と応用」であり、中古の本がアマゾンで1500円程度の価格で売っていたので手配した。
2011−9−8に桜井靖久著の本が届いた。
しかし、どこを見ても、なんと、図7−3に紹介されている図は掲載されていない。
菅原著は引用元の紹介を誤っている、と言える。
この菅原氏に問い合わせをしようと、勤務先などをネットで検索したら、「故菅原勇勝先生に師事・・・・・」という治療師のサイトがあった。
故人となっており、上記の著者に問い合わせたくてもできない。
残念、これで元ネタ探求の糸は切れました。
どなたか、ご存じの方がおられれば、教えてください。
記;2011−9−29
かなり古い本ですが、この本は1991年に購入して読んで棚の奥にしまいこんでしまっていました。
改めて、読んでみると以下のことが記されていました。
漏洩電流の規定の項に
「1kHzを超える周波数の場合には、表4(漏洩電流の規定の表:このでは割愛)に従う許容値にその周波をkHzで表した数値を乗ずること。但し、その積は10mAを超えないこと。」 という文章です。
この規定から、医療機器でミクロショックを考えて漏洩電流を規定している正常時10μA、故障時50μAという50Hzの周波数での規定から
50μAを取り出し、1kHzまでは50μAであり、1kHzを超えると周波数に比例してミクロショックの許容値は周波数に比例して大きくなる ことが判ります。
このことは、図で示せば、11Bの項の図にあった厳しいミクロショックの規制値(IES・・・・の考え方)と一致します。
したがって、「IESの考え方」は正しくは「IECの考え方」であったかもしれない と言えます。 これでとりあえず元ネタは見つかったとしましょう。
また、「胸部に500μA(単一故障状態における最大許容電流:マクロショック)流入した場合の心臓における電流密度は、心配されるレベルに対して十分低い、0.025μA/mm2=2.5μA/cm2である。」とあります。 この数字はある研究によって得られた数字です。
マクロショックで500μAの電流が体内に流れ込んだ時の心臓における電流密度2.5μA/cm2という情報は、以下の情報と数字と条件は若干異なるが、方向は一致していることが判った。
3A.平尾らの2008年の研究 低周波接触電流による体内電流密度分布の基礎的研究
記:2011−3−17
以下の研究論文がある。
************************* *********************
掲載誌:電子情報通信学会技術研究報告. EMCJ、 環境電磁工学 108(97)、 53-58、
2008-06-13
タイトル:低周波接触電流による体内電流密度分布の基礎的検討
研究者:平尾賢司ら
概要:
解析結果から、0.5mAの接触電流に対して神経(脊髄)の電流密度の最大値はICNIRPの基本制限(2mA/m2)を5倍程度上回ることが分かった。
***************** *******************
500μAの流入電流に対して、神経(脊髄)の電流密度は2mA/m2の5倍程度になる、すなわち10mA/m2 = 1μA/cm2 となる。
心臓と脊髄、1と2.5と若干異なるが、方向は一致していることは確かである。
http://www.shiga-med.ac.jp/̃koyama/analgesia/pain-skin.html<リンク切れ> にあった内容の一部抜粋です。
*********************** ************
痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief -皮膚の痛み
電気熱傷 =電撃傷
電流による損傷。電流への抵抗によって生じる5000℃ほどの熱で組織が破壊される。
一般の火傷と違い、電気熱傷では、局所の損傷がわずかでも不整脈おこすことがある。
体表面の損傷の広さでは重症度は判定できないこと、時間がたつとともに局所の損傷が拡大すること、筋肉の損傷、壊死を伴うことも多く、二次的に出血をきたすことが特徴。
筋損傷、血管損傷になる可能性が高く、重症例では、心停止(心室細動)のおそれがあり、また絶縁後も進行性壊死が見られる。
主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難。
重症度は電圧、電流、伝導体への接触時間に左右され、交流電源は直流電源より危険度が高いと言われている。
主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難である。
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以下は技術に関する解説のサイトからの一部引用です。
http://homepage3.nifty.com/tsato/terms/electric-shock.html
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[ Home > 電気製品の EMC/安全適合性
>感電
一般的な電気機器の接触電流 (人が機器に触れた際に人体を通して流れる電流) が、通常状態において0.5mA 以下、 単一故障状態において 3.5mA 以下のように規定されていることがあるが、このレベルであれば通常状態においてはほとんどの人は電流を知覚せず、また故障状態においても有害な影響を生じないことが期待される。
電流を人体の内部 (特に心臓の付近) に直接注入した場合には、極めて低い電流 (例えば100μA程度の)で心室細動を引き起こし得る。
これはミクロショックと呼ばれるものであり、この防止のために侵襲型の医療機器の患者漏洩電流は通常は10μA以下に制限される。
******************** ************************
以下の論文がある。
掲載誌:関東学院大学 建築設備工学研究所報 No.30 2 0 0 7年3月
タイトル:日本における感電保護の現状と課題
研究者:高橋健彦
この論文にある一部を引用する。
ビーゲルマイヤー博士は,オーストリア電気用品試験所に入所以来,一貫として電気安全技術に関する研究に携わり,その成果は国際規格に採用されると共に感電防止方式の確立に大きく貢献した。
特に,彼は1970〜1980年代において危険な感電レベルにおける人体インピーダンスの測定を行い,電気病理学上の基礎を導いた。
また,従来,感電死と電流の関係はエネルギーに依存するとしていた定説についてその誤解を指摘し,人体通過電流とその心臓の心室細動に関する各種データを収集し,その統計分析を行い,心室細動電流は心拍を境にZカーブとなることを提案した。
これによって,電流による感電死のメカニズムが解明され,各種保護方式が可能になった。
1930年代のケッペン博士(独)やダルジ−ル博士(米)らの考え方を基として1974年にIECレポート479“人体を通過する電流の影響”が発行されたが,彼はこれを不十分とし,TC64のWG 4(人体通過電流の影響)の議長として,その改正に精力的に取り組み,彼自身のデータを基に原案を作成した。
この原案はIEC 加盟各国の検討を経て国際的に認められ,1984年に第1編(人体インピーダンス,15〜100Hzの交流による影響,直流による影響),1987年に第2編(100Hzを超える交流による影響,特殊波形電流による影響,短時間単方向性インパルス電流による影響)が発行された。
以来このレポートは,IECの各TCにおいて安全基準を作成する際の基礎として重要な役割を果たしている。
BEMSJ注:人体通過電流と心臓の心室細動のデータ取集とあるが、このデータに関しては、この高橋論文では詳細に関する記述はない。
一部を引用して紹介する。
参照URL:http://health.goo.ne.jp/medical/search/105A0300.html
電撃傷はどんな外傷か
生体に電気がとおって何らかの反応を示す現象は、一般的に感電と呼ばれていますが、このような電気的傷害は電撃傷と呼ばれ、特殊なものに落雷による雷撃傷があります。
通常の熱傷との違いは、傷害の大部分がジュール熱(人体に電流が流れた場合に人体抵抗により発生する熱)により生体内部から発生する熱によって起こることで、その取り扱いには特殊な点が多くなります。
感電が明らかならば、皮膚の傷害が軽度であっても重症と判断します。
死亡原因の多くは、心室細動という致死的な不整脈が起こることによります
BEMSJ注:心室細動が不整脈の一種であることが、この記述から理解できました。
一部を引用して紹介する。
参照URL:http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/legal.dir/lectures/newest/lecturenotes.html
法病理学講義ノート 2010年度版
青木康博 名古屋市立大学医学部法医学教室
12.5.1.2 周波数
50Hz(東日本)または 60Hz(西日本)。交流 40-150 Hzがもっとも人体に有害であるとされる。
50,000Hz以上の高周波は感電という側面からは一応安全と考えられており,熱的感覚を覚える。
12.5.1.3 電流量
感知電流
体内に通電されていることを感じる最低限の電流量。
皮膚で60Hz交流1mA,直流5mA。舌尖では45μA。
BEMSJ注:舌先に直接通電すれば、45μAでも感知する ということです。
記:2011−1−14
以下の報告書には、心臓への刺激として、アメリカのIEEE規格の論拠が紹介されている。
******************************* ********
電磁界の生体影響に関する現状評価と今後の課題
第U期報告書
平成15年3月
社団法人 電気学会 電磁界生体影響問題調査特別委員会
(2)心臓の興奮
心臓の興奮そのものは必ずしも有害なものではないが,正弦波や繰返しパルスの心臓刺激が繰り返し起きると危険な可能性があるため,限度値制定の根拠として採用されている。
心臓の興奮も神経と同様に,強度‐継続時間および強度‐周波数の法則に従う。
実験データによれば,時定数τは刺激の集中の度合いに依存し,微小電極などを用いた局所刺激に対しては,磁気刺激のような分散的な刺激に比べ時定数はより小さくなる。
本規格では,収縮‐弛緩の時定数としてτ=3msを仮定した(先に述べた神経刺激の時定数よりかなり大きい)。
これは大きな接触電極や心臓の組織に対する分散的な刺激に対応するものである。
最小興奮しきい値については,E0=12.3V/m(ピーク値)が実験データに基づく最小興奮しきい値の中央値として仮定された。
なお,心室細動のしきい値は,興奮のしきい値の50倍以上であるが,心臓刺激が繰り返して起きたりすると,この値は約2倍にまで減少することが記されている。
******************* *************
上記はアメリカのIEEE規格の説明である。
これらの電気学会報告書の記述は、IEEEの電磁界曝露ガイドラインにおける低周波領域での基本制限として、感電(刺激)作用が論拠として挙げられているが、刺激作用の対象として心臓も考慮していることを意味している。ICNIRP(1998年)のガイドラインでは明記はない。
体内の内部に誘起する電界強度が12.3V/m(ピーク値、中央値)が心臓の最小興奮閾値であるとされる。
この値が50Hz・60Hzを対象としたものか、もう少し高い、20kHz、40kHzといった中間周波数での値なのか、上記の報告書では定かではない。
以下は50−60Hzを対象としたものとして、考えてみる。
心臓の100Hzにおける電導率をIEC62311の規定から抜き出すと0.09S/mとなる。
50Hzも同じ電導率と仮定して、50Hzでの心臓に流れる電流密度の「最小興奮刺激値」を求めると12.3×0.09=1.11A/m2となる。
ところで、ICNIRPの1998年ガイドラインに定める基本制限、50Hzでの体内誘導電流密度の制限値は一般公衆:2mA/m2、職業的な曝露:10mA/m2であり、上記の心臓の刺激閾値に比べて、かなり低く抑えていることがわかる。
すなわち、ICNIRPの1998年ガイドラインによる基本制限に基づく電界曝露・磁界曝露下では、心臓の興奮刺激は起こりえないことになる。
ICNIRPガイドラインにある接触電流に関しては、別に検討する必要がある。
ICNIRPの2010ガイドラインでは、基本制限を体内の部位ごとに規定している。
一般公衆に対する基本制限で、心臓を含む部位では50Hzに対して内部電界強度を一般公衆: 0.4 V/m、職業曝露 0.8 V/mと規定している。
ICNIRP 2010ガイドラインには明示されていないが、IEEE規定にある心臓刺激閾値の12.3V/m に比べて低いので、ICNIRP2010ガイドラインに規定する磁界曝露、電界曝露下では、心臓の興奮刺激は起こりえないことになる。
12項では50Hz考えた。 以降は20kHzで考えてみる。
ICNIRPの改訂版ガイドラインでは、基本制限としては体内に誘導される電界強度で規定し、その体内誘導電界強度を超えないための 曝露する電磁界強度を参考レベルとして提案しています。
改訂版では 20KHzに対して、一般公衆の曝露では,基本制限は 体内誘導電界強度としては、体内の全ての部分で2.7V/m(これは実効値) を超えないこと と規定しています。
この値は、上記12項にある 最小心臓興奮閾値は12.3V/m(ピーク値)の半分 を超えてはならない、ことと略一致します。
体内誘導電界が2.7V/m を超えないために 曝露する電界強度は体外の、空間における電界強度として最大83V/mと規定されています。
ということは、ICNIRP2010ガイドラインに規定する磁界曝露・電界曝露の制限値を守っていれば、心臓への刺激は起こらない ことになります。
ただし、ICNIRP2010 ガイドラインに規定する接触電流に関しては、別途、検証しなければなりません。
以下の研究がある。
掲載誌:電気設備学会誌 2006年2月
タイトル:電磁調理器からの中間周波漏れ磁界による体内誘導電流の解析と平均化処理
研究者:太良尾浩生ら
・鍋の大きさ14cm、18cm、22cmを使用した。
・14cmの鍋の場合、鍋に入れた水量の加熱による変化が大きく、これによる調理器の動作モードの変化によるものと思われる磁界の変化があって、周囲の磁界分布などを正確に測定できなかった。そこで、安定して測定できた18cmの鍋で集中的な解析を行った。
・20.9kHzの磁界強度、調理器のエッジに接する箇所で、2.6μTであった。
・この状態での体内に誘導する電流は最大で、筋肉の部位で、5.31mA/m2であった。
・この結果、体内誘導電流がICNIRP1998年の基本制限41.8mA/m2を超えるのは、最大曝露磁界12.6μTと推定できた。
とある。
以下の研究がある。
掲載誌:EMC誌 2007年7月5日号 No.231
タイトル:電磁調理器周辺の中間周波磁界による生体誘導電流解析
研究者:林則行 ら
直径14cmの鍋をIH調理器の上に置いて、人が調理器の前に立ったとした場合の、体内の各部にIH調理器の20.9kHzの磁界による誘導電流を数値解析した結果が示されている。 磁界の強さは、直径14cmの鍋を使用した場合で、調理コイルの中心から30cm、調理器の端からでは6cmの距離で3.0μTという条件での解析である。
結果の一部として、成人男性の場合の結果を以下に示す。
心臓と同じ高さにおける誘導電流の最大値は8mA/m2程度である。
心臓の導電率σは、20.9kHzにおいては0.173S/mと表記されている。
******************* ******************
これらの8mA/m2と0.173S/mから
心臓の大きさを8X10cmの柱状のものと仮定すれば、この形状の心臓に流れる電流は64μA程度となる。
この大きさで心臓に影響があるのか??
8mA/m2の電流が0.176S/mの電導体に流れた時の電界は、45mV/mとなる。
ICNIRP2010年のガイドライン 20KHzにおける基本制限は、2.7V/mであり、これに比べると十分に低い。
仮にこの研究では人体に曝露する磁界は3.0μTであるが、もっと大きく、2倍とか3倍の磁界に曝露するとしても、心臓に流れる電流や印加される電界で影響が出るか????
平成21年 7月13日(月) 14:00〜17:00に開催された総務省の生体電磁環境に関する検討会(第3回)
議事要旨に以下の内容が「研究課題」として、含まれている。
整理番号1-12:中間周波数帯の電磁界と人体との間接結合に関する数値ドシメトリ評価
接触電流は、筋肉や末梢神経を刺激する恐れがある。
接触電流による体内誘導電界は、電流が流れる経路上で大きくなるため、特定の人体部位に影響する可能性が指摘されている。
本課題では、中間周波帯の接触電流による体内誘導量評価に焦点をあて、過渡成分及びおよび定常成分の数値ドシメトリ評価を実施する。
ICNIRPPの防護指針では間接結合の参考レベルに関しては、110MHzを上限周波数として定めているが、中間周波帯に関する定量的評価は不十分である。
間接結合に伴う体内誘導電磁界は、接触する部位により体内に誘導される物理量も大きく依存することが知られており、最悪の曝露条件に関する検討も十分行われていない。
整理番号1-1:刺激作用の周波数依存性の定量的評価
刺激作用を考慮すべき上限の周波数を神経生理学的実験及び数理モデルにより明らかにする。
具体的には、被験者に電流を安全に流入させる装置を用いて、電流刺激閾値を求める。
性別・年齢の様々な集団を対象に閾値データを蓄積する。
同時に心理・生理学的情報等も収集する。
また、周波数、電流波形、電極形状、接触位置等への依存性についても検討する。
これらの検討を通じて、電波防護指針の根拠の妥当性を再確認する。
電波防護指針では、100kHzまでは刺激作用を考膚した制限を置いている。
ICNIRPでは.10MHzまで考慮している。
この項目は、SARでの制限を基本としている電波防護指針の適用を煩雑にしており、必要十分な制限の在り方をしめすことが必要である。
特に、RFID.EASやIH調理器等の比較的高強度の電磁界を発生する装置が一般公衆の環境で使用されるようになっていることから、接触電流の感知閾値に関する研究成果はこれまでにほとんど医学・生物研究データが存在しなかった中間周波数帯における電波防護指針値の根拠の信頼性を向上させるため、必要である。
記;2011−8−19
総務省のサイトにあった報告書です。 http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/ele/body/report/pdf/35.pdf
生体電磁環境研究に関する報告書
平成22年度報告書(平成23年3月) の一部としての報告書
「中間周波数帯の電磁界と人体との間接結合に関する数値ドシメトリ評価報告書 名古屋工大」
と
「中間周波数帯の電磁界と人体との間接結合に関する数値ドシメトリ評価報告書 首都大学東京」
です。
中間周波数電磁界の接触電流の研究が始まっています。
但し、この22年度では解析方法等の研究で終わっている。
報告書は難解で非常に判りにくい。
なぜかと言えば、本論の研究に入る前に、いかなる解析方法が正しいかというったことをこのH22年度の研究では行っているからです。
でも、遅まきながら、中間周波数の接触電流の詳細研究が総務省でも始まったと言えます。
以下の規定があることを見つけた。
IECの規定であるが、これらの和訳は、ネットで検索した範囲では、見つからなかった。
また、英語の原本はIECから購入できるが、それぞれ100ドルー200ドルと安くはない。
よって、BEMSJはこれらの規格の詳細を知りたいが、費用の面もあり、まだ購入などは行っていない。
以下、これらの規定を引用した文献を見つけたので、それらから、この二つの規定の概要を想像する。
*IEC/TS 60479-1 Edition 4.0 発行 2005-07
TECHNICAL SPECIFICATION Effects of current on human beings and livestock –Part 1: General aspects
対応している周波数は100Hz以下の電力周波数に限定されている。
IEC60479−1によれば、100Hz以下の感電電流に関しては、0.5mA以下であれば、「通常無反応」とされる。
BEMSJ注:このIEC規定では最長でも10秒までしか想定していない。
すなわち、0.5mA以下であれば、ピリピリとした感電を感じた時に、自ら手を引っ込めたりして、長期にわたって感電し続けることはない という想定のもとに決められたものと、想像することができる。
*IEC/TS 60479-2 Edition 3 発行 2007-05
TECHNICAL SPECIFICATION Effects of current on human beings and livestock –Part 1: Special aspects
対応している周波数は100Hz以上
IEC60479−2は10
KHz 以上の電流に関しても規定されているが、規格書原文を見ない限り、詳細は不詳。
わずか1件、60479−2の内容を引用した文献に転載されている内容を上に示す。
マクロショックといわれる手などから感電した場合の、心室細動を起こす電流値は、50Hz・60Hzの場合に比べると、1kHzでは14倍になっている。
高周波になれば、心室細動は起こりにくい という論である。
記:2011−1−21
接触電流の元になる論文、報告書を探していて、1993年にWHOが刊行した環境保健基準 ENVIRONMENTAL
HEALTH CRITERIA 137 ELECTROMAGNETIC FIELDS (300 Hz TO 300 GHz)を見つけた。
この文書の中には、接触電流に関する記述はあった。
それは、確立した知見として、「周波数によって異なる感電の感知電流値・・・」に限定されていた。
どの位の接触電流で不整脈が出るか・・・・に関しては、何も記述がなかった。
以下は、この環境保健基準137にあった周波数によって異なるという感知電流のグラフである。
記:2011−3−19
以下の記述がある。
**************************** *****************
電界および磁界の間接的影響
電磁界の間接的影響は、人と物体、例えば金属構造物など異なる電位の物体、との物理的接触(触れる、擦れ含うなど)によって生じる。
そのような接触の結果、物体または人体に蓄積していた電荷が流れる(接触電流)。
約100kHzまでの周波数の場合、物体から人体への電流は筋肉および/または末梢神経に刺激を与える可能性がある。
電流レベルの上昇につれて、感知、感電および/または熱傷による痛み、握った物体を手放すことができない、呼吸困難などがおこり、また電流が極めて高いと心室細動が起きる(Tenforde and Kaune 1987)。
これらの影響の閾値には周波数依存性があり、10〜100Hzで閾値が最も低い。
末梢神経反応の閾値は、数kHzの周波数まで低いままである。
適切な工学技術および/または管理体制によるコントロールで、さらには防護衣の着用などで、これらの問題の発生を防止することができる。
接触電流および誘導電流の参考レベル
FM無線通信周波数帯を含む110MHzまでの周波数について、接触電流に対する参考レベルが示されている。
このレベルを超える場合には、感電や熱傷を回避するために注意が喚起されなければならない。
点接触についての参考レベルを表8に示す。
接触電流による生物学的反応の閾値は、子供と成人女性の場合、成人男性のそれのそれぞれ1/2および2/3であるため、接触電流に対する公衆の曝露の参考レベルは、職業的曝露の値の1/2に設定される。
****************** *******************
ICNIRPの2010年ガイドラインでは、接触電流に関しては、何も変更はなかった。
ICNIRPのガイドラインに参考とした1987年のTenfordeらの研究の原文を読んでみた。
掲載誌:Health Physics Vol.53 No.6 P585-606 1987
タイトル: Interaction of Extremely Low Frequency Electric
and Magnetic Fields with Humans
研究者: T.S. Tenforde, W. T.
Kaune
この論文を読んでみたが、20KHzといった周波数帯域での接触電流に関する明確な研究結果は紹介されていない。
主に50-60Hzにおける感電電流の研究結果を紹介しているにとどまる。
60Hzの感電電流でVentricular
Fibrillation (心室細動)を起こるのは時間が関連するとして以下の図が紹介されている。
この図は最大で10秒までしかデータがない。
図の赤字に示した部分は、BEMSJが勝手に延長線を追加した部分である。
感電している時間が長くなり、100秒となれば、10mA程度で、心室細動を起こすとなる。
記:2011−9−27
南江堂出版 MEの基礎知識と安全管理 改訂第4版 2005年発行 (社)日本エム・イー学会ME技術教育委員会 監修 を入手した。
この本では、ミクロショック・マクロショックに関して、さほど詳しい解説や論拠の説明はなかった。
しかし、医療機器からの漏洩電流の測定の説明の中に、
通常の漏洩電流は50−60Hzの周波数を基本として設定してあり、高い周波数成分はフィルターで除去して測定することになっているが
同時に、高い周波数成分を含む場合は、フィルターを使用しないで直接測定を行い、10mAを超えてはならない という規定があることにきがついた。
すなわち、医療機器の場合、50Hz60Hzより高い周波数の電流が漏洩する場合でも、10mAを超えてはならない と規定されている。
記:2011−10−19
以下の論文を読んでみた。
掲載誌: Radio Frequency Radiation Dosimetry and Its
Relationship to the Biological Effects of Electromagnetic Fields 2000年刊行の本に掲載 P301−307
タイトル: Development of on Induced and Contact Current
(ICC) Limits in the HF and VHF Regions
著者: J. A. Leonowich
この論文は、HF帯(高周波)やVHF帯の周波数帯域における接触電流に関する論文である。
詳細な情報が得られるかと期待して、複写文献を手配した。
届いた文献を読むと、単にICNIRPやIEEEにおける規定の紹介程度のものであった。
したがって、このコーナーに紹介できる有効な情報は皆無であった。
以下はWikipediaの記事の抜粋である。
感電事故は50−60Hzの低周波だけでおこるものではないことがわかる事例である。
**************** **************
減力放送 – Wikipedia
減力放送とは、放送局の放送用送信設備の不測の不具合や、計画的なメンテナンス、あるいは昼夜でのサービスエリアの変動を小さくするなどの目的のために、放送用送信機の送信出力を減じて放送を継続することをいう。
各国の電波法の定めによるが、日本の放送の場合、そのサービスエリアは厳密に定められており、輻射電力は強くても弱くてもいけない。従って減力放送は正常な放送ではなく、その実施にあたっては所定の手続きを必要とする。
今日、放送局の送信設備の多くの部分は多重化されているが、特に日本の場合、広い敷地を確保することが困難であり、放送用送信鉄塔が1本、すなわち放送用送信空中線についてはひとつであることがほとんどである。
近年の日本では終夜放送が常態化し、放送用送信空中線系統のメンテナンスには非常な困難を伴うようになった(業務用無線局の送信機からは高圧の高周波電力が出力されており、不用意に触ろうものなら高周波感電を起こし死に至る)。
この状況下で考え出されたものが減力放送である。
********************** ****************
BEMSJ注:上記の事例は、高周波でも高い電圧による影響かもしれないが、「高周波であれば感電の影響はない」とは言えない、ことは確かでしょう。
社団法人全国労働基準関係団体連合会のサイトにあった労災に関する紛争の事例 です。
http://www.zenkiren.com/jinji/hannrei/shoshi/06730.html
********************************* *************
労働基準判例検索-全情報
本件事故は、高周波を発していた本件機械の金型部分に接触したことによって生じたものであるとは認められる
いわゆる事件名: 原シート製作所事件
事案概要: 高周波ウェルダーによる塩化ビニール製品溶着作業中に発生した通電事故につき、被災者が使用者の安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求した事例。
裁判年月日: 1995年7月21日
裁判所名: 名古屋地
事件番号: 平成1年 (ワ) 2791
******************************************* ************
高周波ウェルダーとは、誘電加熱を利用して塩化ビニール等の製品の溶融接着を行う機械で、数MHz以上の比較的高い周波数を使用します。
シート状のものを回転電極により連続的に接着する機械で高周波ミシンという。
詳細は不詳ですが、高周波での感電事故の例です。
記:2011−1−20
スタック電子のサイトにあった技術情報です。一部を引用して紹介します。
参照URL:http://www.stack-elec.co.jp/tech/skin_effect.html
*********************** ****************
金属に電流を流すと直流信号は金属の中を一様に流れ、その電流の最大値は金属の固有抵抗ρと断面積Sと長さLで決まります。
即ち、抵抗値Rは
R=ρ・L/S
従って断面積が大きいほど抵抗値が小さくなるという性質をもっています。
では、金属に高周波信号を加えるとどうなるでしょうか。
高周波信号は周波数が高くなるに従って、導体の断面を一様には流れず、表面に近いところを密集して流れ中心部には殆ど流れません。
このような現象を表皮効果と呼んでいます。
これは電流を流すとその直角方向に磁界が生じます。
この磁界の密度は導体の中心部ほど強くなり、その磁界による逆起電力が発生し電流の流れるのを阻止する方向に働くからです。
******************************* *********************
BEMSJ注:IH調理器からの接触電流は20kHzといった周波数なので、電源の50−60Hzに比べると、体内に電流は流れにくい・・・・・・体表面にのみ流れるかといえば、そうは言えないことがわかる。
人体は均一な電導物質でできているのではない、感電した場合、体内のどこを流れるかは、流れやすい個所を経由して流れる といえる、
記:2011−1−20
国際規格IEC62233は、家電製品から漏洩する電磁界の曝露に関して、測定・評価法に関する規定で、400KHz以下の周波数を対象としている。
このIEC62233に規定する手法で測定すれば、それで万全か? 実は、万全とは言えない側面があります。
ICNIRPは曝露に関するガイドラインを定めるが、個々の機器や曝露環境毎に具体的な測定・評価法は定めない。
ICNIRPは「・・・・以下にしろ」、と曝露限界を提案しているが、具体的な測定法の基準を定めていません。
そこで、IECは個別の機器からの電磁界の測定法の基準を定めました。
ICNIRPでは
*電界の規定
*磁界の規定
*接触電流の規定 を定めています。
ところが、現在のIEC62233では
*磁界に関しては、細かい測定法を定めた。
*電界に関しては、すべての対象となる家電機器からの電界は測定しなくても、自動的にICNIRPの電界の規制値に合致するとして、測定・評価は不要としています。
この電界に関しては、50Hz・60Hzの周波数だけで動作する家電製品であれば、IEC62233の記述にあるように、自明で、測定・評価は不要でしょう、しかし、20kHz等の中間周波数で動作する機器の場合は、電界もきちんと評価する必要があります。
*接触電流に関しては、特段の測定法を定めていません。 まったく無視しています。
こうしたIEC62233の規定の問題点は、次回の改版の時に審議されるでしょう。審議されなければなりません。
記:2011−1−21
この項はBEMSJのオリジナルです。
H調理器の内部にある電界発生源と、調理器のガラストップ(調理ゾーン)の上に置かれた外部金属(金属製鍋)間の発生するキャパシタンスによって、IH調理機器の外部にある金属が人を経由してアース接地することによって、以下のような接触電流が発生する。
$1 発生するキャパシタンス
機器の内部にあるそれなりに高い電圧で動作している回路部分があって、当該の電圧が比較的大きな金属部材に印加されているとする。
ICの中のごく一部の、小さい占有面積の金属部に高い電圧が印加されているとしても、コンデンサを構成しても面積がせまいために、発生するキャパシタンスが小さい場合は、たぶん、問題にはならない。周波数が高くなれば、問題となる。
1)4oの絶縁ガラスによるキャパシタンス
機器内部のIH調理コイル部の金属材の面積を30cm×30cmの面積と仮定する。
コイルの上に厚さ4mmのガラスがあるとする。
ガラスの上に、密着させて、30cm×30cmの金属があると仮定する。
これによる平板コンデンサのキャパシタンスは
C=εS/d S;面積 m2 d:間隔 m
C=5×8.85×10-12×0.3×0.3/0.004 =3.98×10-12/0.004=996×10−12(F)=996PF
2)0.5oの空気層によるキャパシタンス 対向面積は30cm×30cm
C=1×8.85×10-12×0.3×0.3/0.0005=1593PF
3)0.5oの厚さの水の層によるキャパシタンス 対向面積は同じ
C=80×1593PF=127440PF
4) 厚さ4oのガラスのIH調理器の上に、0.5mmの空気層を経由して金属製鍋があるとした場合、対抗面積を30cm×30cmとして、合成のキャパシタンスは1と2の直接接続として 612PFとなる
5)厚さ4oのガラスのIH調理器の上に、0.5mmの水の層を経由して金属製鍋があるとした場合(すなわち調理器の上が水でぬれていた場合)、対抗面積を30cm×30cmとして、合成のキャパシタンスは1と3の直接接続として 988PFとなる。
4)と5)を比較すれば、IH調理器上の水の濡れによって、1.5倍も接触電流が流れや少なる。
$2.上記のコンデンサを経由した、IH調理器上に置いた金属鍋(底の対向面積を簡便的に30cm×30cmと想定)を経由して流れる接触電流を推定する。
20KHzの動作周波数にて
ケース1:
内部の電圧源を200Vrmsと仮定
調理器上が水でぬれていたと想定
周波数を20KHzとする。
接触電流=コンデンサに流れる電流=2πFC×V F:周波数 V:内部電圧
接触電流1 =2×3.14×20×103×988×10‐12×200 =24.8×10−3(A)=24.8mA
ケース2:
内部の電圧源を200Vrmsと仮定
調理器上が水でぬれていない、鍋との間に0.5mmの空気層があった想定
周波数を20KHzとする。
接触電流=コンデンサに流れる電流=2πFC×V F:周波数 V:内部電圧
接触電流1 =2×3.14×20×103×612×10‐12×200 =14.9×10−3(A)=14.9mA
検討1:20KHzの接触電流
これまでのNITEの測定などから、また、寺川・太良尾らの実測では0.5mA程度である。
対向面積30cm×30cmより実際の鍋やIH調理器の電圧の印加されている金属部材の面積が小さいのかもしれない。
電圧源の大きさがもっと小さいのかもしれない。
ガラスの厚さがもっと熱くキャパシタンスを小さくしているのかもしれない、また、内部の電圧源とガラスの間に数mmの空気層があって、キャパシタンスを小さくしているのかもしれない。
逆に言えば、IH調理器の設計によっては、14.9mAといった大きな接触電流が流れるものもあるかもしれない。
BEMSJ注:器の内部構造、設計に関する情報が皆無なBEMSJが、適当に数値を想定して計算を行っているので、現実とは乖離しているかもしれない。
内部電圧を200Vrmsとしたが、20KHzの動作中の調理器内部の金属部に印加されている電圧の大きさと、空間分布もわからない。
過剰な計算になっているかもしれない。もしかして甘い計算になっているかもしれない。
差し支えない範囲で、関連する情報を示していただければ、再計算してみたい。
$3.上記のコンデンサを経由した、IH調理器上に置いた金属鍋(底の対向面積を簡便的に30cm×30cmと想定)を経由して流れる接触電流を推定する。
100Hzの電源周波数にて(50Hzの全波整流)
ケース1:
内部の電圧源を200Vrmsと仮定
調理器上が水でぬれていたと想定
周波数を100Hzとする。
接触電流=コンデンサに流れる電流=2πFC×V F:周波数 V:内部電圧
接触電流 =2×3.14×100×988×10‐12×200 =12409×10−8(A)=0.124mA
20KHzの動作周波数の接触電流に比べると、100Hzの接触電流は比較的低いレベルにある。
******* 参考 **********
平行板コンデンサの特性:
平行板コンデンサの容量は、極板面積と誘電体の誘電率に比例し、極板間距離に反比例する…ということに尽きてしまいます。
極板面積をS [m2]、極板間距離をd
[m]、誘電体の誘電率をε [F/m]とします。このコンデンサの静電容量C [F]は、
C=εS/d [F] …(1)
と表されます。
容量の大きなコンデンサを作りたければ、Sを大きくするか、dを小さく(誘電体を薄く)すればいいわけです。もちろん、εを大きくしても構いません。
真空の誘電率と比誘電率:
何もない真空にも誘電率があって、これをε0と表します。
ε0=8.85×10-12 [F/m]です。
空気などの非電離気体は、通常は誘電率がほとんどε0とみなして構いません。
比誘電率とは、ある物質の誘電率εと真空の誘電率ε0の比をいいます。
これをεrと書くことにすると、先の記述で、空気ではεrがほぼ1、ということです。
一般には、 ε=εrε0 …(2) と書けます。
ですから、平行板コンデンサの誘電体が真空の時と、比誘電率がεrの誘電体を挿入した同じ形状のコンデンサでは、容量がεr倍異なる、ということになります。
εr 空気 1 ガラス 5.4〜10 純粋な水 80
水は空気より、ガラスよりも、接触電流を流しやすい。
************************* ***********
記:2011−3−10
「電波の安全性に関する説明会 安全で安心な電波利用環境に向けて」が開催された。
1 日時 平成23年3月8日(火曜日)13時から16時30分まで
2 場所 日暮里サニーホール(東京都荒川区)
この中で、以下の質疑応答があった。
司会:質問「IH調理器や電子レンジからの電磁波は大丈夫か? IH調理器からの接触電流に関して電波防護の規制に加える予定はあるか? 高周波の接触電流で感電を感じたというレベルを超えて病院に運ばれたというような重篤な事故例はあるか?」
A(渡辺):専門ではないが、電子レンジなどからの電磁波は無線通信に影響しないレベルに規制しているので、電波防護指針には適合しているであろう。
IH調理器からの接触電流に関しては、法規制は行っていないが、答申された電波防護指針の中に含まれているので、自主的に適合すべきである。
平成9年の総務省への答申の中で、測定評価法が定まったものは法規制すべき となっている。
接触電流に関しては標準的な測定法が定まっていないのは課題かもしれない。
接触電流での重篤な事故例は、確定的なことは言えないが、知らない。
記;2011−3−18
以下の研究論文を見つけた。
掲載誌:Europace (2006) 8. 377-384
タイトル: Do induction Cooktops interfere with Cardiac
pacemakers? IH調理器は心臓ペースメーカーに障害?
研究者: W. Irnichら
この論文には、IH調理器の上においた鍋に触れた時の心臓ペースメーカーへの影響に関しても研究が行われている。
関連する箇所を 抜き書きして紹介する。
・鍋からの接触電流は9台のIH調理器を対象に研究した結果、5.8mA+/− 3.8mAであった。<論文に周波数の記述がない。>
・モデルによって、同じ会社のものでも、接触電流は大きく異なる、製造会社はこの接触電流を少なくするような配慮は行っていない。
・心臓ペースメーカーの着用者は、長い時間、IH調理器のナベに触らないように、また金属製スプーンで鍋の中をかき混ぜないこと、がアドバイスとして記述されている。
記;2011−3−20
以下の論文を読んだ。概要だけである。原著全文はまだ入手も読んでもいない。
*************** ****************
掲載誌:IEEE Trans Biomed Eng. 2001 Sep; 48(9):1020-6.
タイトル:Electric fields in the human body resulting from
60-Hz contact currents
60Hzの接触電流による人体内部の電界
研究者:Dawson TW, Caputa K, Stuchly MA, Kavet R,
Department of Electrical and Computer Engineering, University of Victoria, BC,
Canada
Abstract 概要
Contact currents occur when a person touches conductive surfaces at different
potentials and completes a path for current flow through the body.
Such currents provide an additional coupling mechanism to that, due to the
direct field effect between the human body and low-frequency external fields.
異なる電位を持つ表面に人が触れ、体を通る電流路が形成されると、接触電流が流れる。
この接触電流は、人体と外部にある低周波電磁界の直接結合によるメカニズムと同じメカニズムによってさらなる結合をもたらす。
The scalar potential finite difference method, with minor modifications, is
applied to assess current density and electric field within excitable tissue
and bone marrow due to contact current.
改良を加えたSPFD法を用いて、接触電流による刺激される細胞と骨髄における電流密度と強度を計算した。
An anatomically correct adult model is used, as well as a proportionally
downsized child model.
Three pathways of contact current are modeled: hand to opposite hand and both
feet, hand to hand only, and hand to both feet.
解剖学的に正しい成人モデルを用い、また比例させることで子供のモデルも用いた。
電流の流れるルートは、片手から他方の手と両足、片手から他方の手のみ、片手から両足とした。
Because of its larger size relative to the child, the adult model has lower
electric field and current-density values in tissues/unit of contact current.
子供に比べて相対的に大きいので、成人モデルでは接触電流による組織・器官における電界と電流密度は低かった。
For a contact current of 1 mA [the occupational reference level set by the
International Commission on Non-ionizing Protection (ICNIRP)], the current
density in brain does not exceed the basic restriction of 10 mA/m2.
The restriction is exceeded slightly in the spine(脊柱),
and by a factor of more than 2 in the heart.
ICNIRPが職業的曝露として定めている1mAの接触電流が流れた場合、脳内の電流密度は基本制限の10mA/m2を超えない。
脊注では少し越え、心臓では2倍以上の電流密度となる。
For a contact current of 0.5 mA (ICNIRP general public reference level), the
basic restriction of 2 mA/m2 is exceeded several-fold in the spine and
heart.
ICNRPが一般公衆の曝露として定めている0.5mAの接触電流が流れた場合、体内誘導電流2mA/m2という基本制限を、脊柱と心臓で数倍となって超えている。
(BEMSJ注:原文の表現がseveralなので2-3倍ではなく、5-6倍程度と推定される。原著を読めば数字が出ているかもしれないが、心臓では10mA/m2を超える誘導電流となっているのかもしれない。)
Several microamperes of contact current produces tens of mV/m within the
child's lower arm bone marrow(骨髄).
数μAの接触電流は子供の下腕と骨髄で数10mV/mの電界強度となる。
*********************** *****************
この研究から、接触電流(機器からの感電電流、漏洩電流)1mAが体内に流れた場合、心臓における電流密度はICNIRPが職業的な曝露の基本制限として定めた誘導電流10mA/m2の2倍を超えるとなっています。
ICNIRPは体内に誘導する電流密度の健康影響の閾値は100mA/m2とし、この値に10倍の安全係数をかけて限度値は職業的な曝露を10mA/m2としました。
この10mA/m2を超える誘導電流が流れないように、外部の電磁界強度の規制値を、電磁界の直接的な影響として、1998年に定めました。
一般公衆はさらに5倍の安全率を追加しています。
上記の研究、2001年の研究によれば、1mAの接触電流で、20mA/m2を超える電流が心臓に流れることが判明しています。
20mA/m2を超えるといっても、まだ閾値以下です。
電気安全法は漏洩電流1mAが限度値です。
そうすると、限度値一杯の機器があり、それに触れると心臓には20mA/m2という電流が流れます。
この値では、安全率が不足することになります。
感電を感知して、とっさに手を離すという時間が限定されているのであれば、大丈夫なのでしょうが、
IH調理器の様に、長時間にわたって感電することを考えると、IH調理器の場合は、1mAという感電電流の規定では甘すぎて
少なくとも0.1mA程度に規制しないといけない といえます。
IH調理器からの漏洩電流は最大0.1mAにすれば、心臓に流れる電流は2mA/m2以下となり、体内誘導電流を制限するという基本的な考え方と一致します。
これは、不整脈・・・・の裁判の件とは独立に、検討すべきことです。
記;2011−3−21
以下は http://www.m-junkanki.com/heart_diseases/atrial_fibril.html 循環器内科のサイトにあった情報の抜粋です。
******************** *****************
Q14:なぜ心房細動は治りにくいのか?
類似の質問:「なぜ心房細動は慢性化するのか?」、「なぜ上室性頻拍や心房粗動は、心房細動に移行するのか?」
A:心房細動や心房の頻拍が持続すると、心房筋に変化(電気生理学的、可逆的変化)が生じ、これがさらに心房細動になりやすくする。
さらに長期間、心房細動が持続すると心房筋に元に戻らない構造的な変化(不可逆的変化)が生じるため、心房細動が正常洞調律に復帰しなくなる。
心房細動や他の原因による頻拍により、心房筋の収縮が高頻度に生じると心房筋内のカルシウムが過剰になった場合、もしくは、心房筋の仕事量増加による相対的酸素供給不足(心房筋の虚血)などの原因により、心房筋の傷害が生じる。
短期間ならもとに戻るが、長期間に及ぶと傷害はもとに戻らなくなる。このためできるだけ早期の除細動が勧められる。
--- 短期間の頻拍の影響 ----
実験的に、山羊の心房をペースメーカーという一定の間隔で電気刺激を発生する器械を使って、電気的に高頻度に刺激すると、心房細動が生じやすくなり、約1週間で持続性の心房細動になったと報告されている。
つまり、心房細動は長く続くと戻りにくくなる。
これは、心房細動が持続すると心房筋に電気生理学的な変化(電気的リモデリング)を生じるためと説明されている。
実験では、
●電気刺激24時間で心房細動は誘発されやすくなる。
●電気的リモデリングは断続的な電気刺激を中止すると1週間で正常化する。
●電気的リモデリングはカルシウム過負荷が原因であり、心房筋の虚血や心筋の伸展は関与していない。
●心房細動が長期間(9-23週間)持続すると、心房筋に構造的な変化がでる(・筋原線維の消失、・グリコーゲンの増加、・ミトコンドリアの形態変化、・筋小胞体の断裂)。
実験では、心房の高頻度刺激の2日目から心房筋の収縮力の低下が見られるため、心房細動の持続時間が短くても左房内に血栓が形成されやすいと考えられる。
***************** ****************
上記の「山羊の心房を・・・・」というのは、以下の研究論文である。
掲載誌:Circulation 1995; 92: 1954-1968
タイトル:atrial Fibrillation begets atrial fibrillation.
Study in awake chronically instrumented goats
研究者:Wijffels MC et al;
この原著論文を入手したが、医学関係者でないものにとっては超難解な論文、本当に医学の専門論文で、BEMSJは全く理解ができませんでした。
関心のある方は原著論文(英文)を入手して読んでください。
BEMSJコメント:以上のことから、心房に電気刺激を加えると、心房細動に至る恐れがあることが1995年の研究から判った。
それでは、IH調理器に触れることで流れ込む接触電流で心房が刺激を受けるか? 否かは不詳である。
記;2011−3−21
以下の研究があります。
掲載誌:Ann. Occup. Hyg., Vol. 49, No. 8, pp. 673–682,
2005
タイトル:Equipment Grounding Affects Contact Current
Exposure: A Case Study of Sewing Machines
研究者:JOHN C. NIPLE, JACK D. SAHL, MICHAEL A. KELSH and
ROBERT KAVET
この研究は、被服などの製造(縫製産業)においてミシンを使用する場合、ミシンに手を触れるのでミシンからの漏洩電流がどの程度かを調査したものです。
大地アース接地をきちんと取らないと、作業者の人体を経由した漏洩電流がふえることを指摘しています。
調査の結果は、ICNIRPの職業的な接触電流の規定値1mAを超えない という結果です。
このように、連続して人体に流れる場合は、漏洩電流の規定は如何にあるべきか? ちょっと考えるべきかもしれません。
もっともこうした機器の場合は、きちんと金属部を大地にアース接続を行えば、人体への漏洩電流はほとんどなくなるようになるので、対応は簡単です。
記;2011−3−22
IH調理器の上に置いた金属製鍋に触れた場合に、人体を経由して接触電流が流れることは製造会社としては認知しており、その方策を実用新案や特許として申請していたことが判った。
以下は特許庁のWEBで検索して見つけた3例です。
もしかすれば、関連する対策技術に関する実用新案・特許はたくさん提案されているかもしれません。
すべての特許をリストするのは主旨ではないので、たまたま見つけた3件の紹介にとどめます。
*実用新案 タイトル;誘導加熱調理器のリーク電流防止装置
出願人:松下電器産業(株)
出願:昭和48年11月
実用新案出願公告:昭54-23001
実用断案登録請求の範囲
トッププレートの裏面に実質的にループを構成しない放射状または閉弧状の導電膜を設け、この導電膜を接地したことを特徴とする誘導加熱調理器のリーク電流防止装置。
説明:
一般に誘導力廊調理器においては、鍋と加熱コイル間の浮遊容量により、鍋を通じてセラミック等で構成したトッププレートに高周波電流がリークする。
これを防止するには、トッププレートの裏面に導電膜を設け、これを接地すればよい。
上記実施例より明らかなように本考案は、トッププレートの裏面に実質的にループを構成しない導電膜を設け、この導電膜を接地したので、導電膜にはほとんど高周波電流は流れず、導電膜が発熱することがない。
この結果、トッププレートを触っても感電、火傷等の人身事故を未然に防止することができ、きわめて安全性の高い誘導加熱調調理器を提供することができる。
また最近になって以下のような、さらに改良を加えたシールド方法が提案されている。
*特許 タイトル;誘導加熱装置
出願人:松下電器産業(株)
出願:平成17年7月
特許出願公開番号:特開2007-35473
説明の一部を抜粋
【課題】人体への感電をなくし、かつ被加熱物の浮き上がりを防止した信頼性が高く、ばらつきの少ない効果的な静電シールド機能を有する品質の安定した誘導加熱装置を提供すること。
【解決手段】加熱コイルとトッププレートの間に設けた電気導体は、電気導体と加熱コイルは同一中心で、電気導体の内径を加熱コイルの内径以下とし、電気導体の内径は、被加熱物に対する漏洩電流の変極点以下とすることにより、人体への感電をなくし、かつ被加熱物の浮き上がりを防止し、ばらつきの少ない効果的な静電シールド機能を有する品質の安定した誘導加熱装置が実現できることとなる。
*特許 タイトル;誘導加熱装置
出願人:松下電器産業(株)
出願:平成16年2月
特許出願番号:特願2004−29897
説明の一部を抜粋
加熱コイルと被加熱物との間に浮遊容量(等価容量)が存在し、ユーザが被加熱物に触ると、浮遊容量及びユーザの身体の内部抵抗(等価抵抗)を通じて、加熱コイルからグラウンドに電流が流れる。
低透磁率で高電気伝導率の被加熱物を加熱する場合の方が、高透磁率の被加熱物を加熱する場合よりも、加熱コイルの巻数が多く、加熱コイルに印加される電圧が高い。
高圧の加熱コイルから人体に所定以上の電流が漏洩することは危険であるため、低透磁率で高電気伝導率の被加熱物を加熱する誘導加熱装置の場合、人体に漏洩電流が流れることを防止する必要があった。
実開昭50−82046号公報に、導電膜を用いて人体に漏洩電流が流れることを防止する従来例1の誘導加熱装置が開示されている。
トッププレートの裏面に導電膜を設け、その導電膜を接地する。
加熱コイルからの漏洩電流はほとんど導電膜を通じてグラウンドに流れるため、被加熱物を通じて人体に漏洩電流がほとんど流れない。
記:2011−3−26
http://konarch.blog4.fc2.com/?no=1487
にあった情報です。ブログの管理者の許諾を得たので、以下に転記します。
▼日々喜怒哀楽▲
最近気になっていること、喜怒哀楽して伝えたいこと等ジャンルを問わずUPします!
コメント&TB宜しくお願いします。
2011.01.12 (Wed)
IH調理器接触電流に関する特設コーナー
ウチのブログに訪問されたBEMSJさんより、情報を頂いたので取り急ぎそのままUPさせて頂きます。
※専門的で少し難しい所もありますが、興味深い内容となっておりますのでご自身の健康の為にご覧頂ければ幸いです。
http://homepage3.nifty.com/~bemsj/IF2.htm<リンク切れです。URLが変更になっています。>
*IH調理器接触電流に関する特設コーナー
IH調理器からの接触電流が原因かもしれないという健康障害を訴える裁判が始まっている。
この裁判では、従来の電磁界曝露による健康影響とはかなり異なる側面があるように、BEMSJには見える。
そこで、関連する情報を集めてみることにする。
集まった情報を、羅列にとどまるかもしれないが、紹介していきます。
(このページの最初の公開:2011−1−4)
ちなみに…ウチのお客さんでもIHからガスに変更されたお客さんはいますよ!
理由は不整脈になってしまったから。
IHが原因かどうかは分かりませんが、個人的にはクロだと思っています。
私のサイトの紹介をしてくれています。
そして、最後の3行は意味深長です。
詳細はわかりません。
記:2011−4−3
本日、ネットで見つけて情報です。
カナダの医大の電磁波に関する大学内の講義録(教科書)です。
Physical Health Hazards: Health Effects of Electromagnetism
McGill Course OCCH-605
Course Notes
Paul Héroux, PhD Faculty of Medicine McGill
University
September 2010
This text can be freely copied, distributed and used for formal and informal
educational purposes.
2.1.6. Heart Physiology
In nerve or skeletal muscle, each cell responds individually so that only cells
exposed to supra-threshold excitation are stimulated.
Also, each muscle fiber depends on the nervous system to trigger contractions.
By contrast, excitation generated anywhere within the
heart muscle is propagated to all cells of the heart.
Myocardial fibers are capable of propagating the action potentials of the
heartbeat without attenuation, due to the intercalated disks present at cell
boundaries.
という部分があります。
医学的な文章のために、BEMSJはうまく翻訳できません。
おおよその意味は、「中枢神経や、骨格の筋肉は、電気刺激を受けても、反応するのはそれぞれの細胞であり、独立して反応する。
対象的に、心臓の筋肉は、どこかの心臓筋肉が刺激に反応するとその反応は心臓内のすべての細胞に伝わる。」
という主旨と思います。
すなわち、一般的に感電電流は、指などで感電した場合に感知するレベルで規定されている。
この場合は、個々の刺激を受けた筋肉や細胞に影響はとどまると思われる。
しかし、感電電流の一部が心臓に流れた場合は、流れた心臓の部分にとどまらず、心臓の筋肉・細胞のすべてに影響を及ぼす ことが医学で明らかで、感電電流は、こうした心臓の筋肉の特質も考慮しなければならないと 思える。
記:2011−4−7
http://www.inductionpan-uk.co.uk/induction-hobs-safety-information <リンク切れ>にあった内容
2011年3月のログ
****************** ********************
Induction Hobs Safety - Important Information - Use Of Your i-hob Induction Hob
• Do not use metal cooking spoons - this will prevent
leakage current from flowing through your body.
• Avoid touching pans for extended periods while they
are in use on the induction hob.
********************* *******************
仮訳
IH調理器の安全性 重要な情報
・調理用の金属製スプーンを使用してはならない。 これはあなたの体を経由した漏れ電流が流れることを防ぐため。
・IH調理器で調理中に、長い間、金属製鍋に触らないこと。
こうした注意書きが英国で行われていることを初めて知りました。
記:2011−9−10
以下の書籍にあった情報です。
桜井靖久著 医用工学MEの基礎と応用 1980年 共立出版
心室細動をひきおこす電流閾値の周波数特性が、山下らの1975年研究から引用されて、紹介されています。
周波数は1kHzまでのデータに限定されています。
この山下らの研究が、具体的にどの学術雑誌に掲載されたものか、不詳です。 検索してみましたが、原論文を見つけることはできませんでした。
記;2011−9−14
以下の論文にあった記述です。
>掲載誌:北海道大学医療技術短期大学部紀要, 10: 85-92 発行:1997-12
>タイトル:静電気と医療環境
>研究者:伊達, 広行
「ミクロショックに関しては,健康犬による試験で,電極を直接右心室に接触させた場合,0.1mAで心臓の周期的鼓動がなくなることが報告されている。」
これ以上の詳しいことは書かれていません。
記:2011−9−17
以下の研究論文を読んでみた。
掲載誌:CIRCULATION: VOL 58, No 6, DECEMBER 1978
タイトル:A Conductive Catheter to Improve Patient Safety During Cardiac Catheterization
研究者:MARTIN J. LIPTON, M.D. et al:
この研究はカテーテルを心臓にあてるような状態の時に、電気ショックによって心室細動を起こさないように、カテーテルの材質を導電性にすればよい、という目的の研究である。
実験として、犬を使い、従来のカテーテルの場合は、71μAの60Hz交流電流が心臓に流れ込むだけで、心室細動を起こしている、という結果が含まれている。
記:2011−9−17
以下の医学雑誌に、事例の紹介がありました。
********************* ***************
新潟医学会雑誌第120巻 第1号 平成18年(2006) 1月
5 ミクロ,マクロショックが疑われた術中心停止
古谷健太ら 県立中央病院麻酔科
患者は62歳男性, 肺癌のため左上葉切除を予定された.
硬膜外とプロポフォールにて麻酔を維持していたが, 術者が葉間を分け始めると低血圧傾向となり, 電気メスの音とともに心停止した.
心マッサージにて,30秒後に自己心拍は再開, 術後呼吸器管理としたものの, その後は後遺症なく経過し, 術後15日目に退院した.
心停止の発生頻度は0.07 - 0.28%の範囲に入る.
原因としては術操作, 患者の術前状態, 麻酔がある.
本症例では, 肺門部を剥離中であったことから, 迷走神経反射や電気メスによるショックが考えられた.
電気メスに関してはCF形のものを使用しており,その後の点検では異常が認められなかったこと,
心室細動になっていないことから可能性としては迷走神経反射のほうが高いと考えられる.
迷走神経反射のうち心停止にまで至るものは0.045%であるとされる.
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記:2011−9−17
ウサギを使って、感電死させた実験の報告です。
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掲載誌:東京女医大誌 第27巻第11号 昭和32年
タイトル:実験的感電死における心電図並びに血液O2量の変動について
研究者:東京女子医科大学法医学教室 吉成京子 ら
実験成績
1)左前肢一右後肢通電(100V,85mA,10〜30sec.)通電と殆んど同時に全身の強直性痙攣を起し、呼吸も停止した。
強直性痙攣は20秒ぐらい持続しそのあとは頸部,顔面に微細な痙攣が起る。
10〜20秒通電では死亡しないのもあったが30秒通電では5例とも死亡した。
末期呼吸は明瞭に認められたものも認められないものもあり、全経過は通電開始後ほぼ1分乃至1分30秒であった。
略
心電図では(10秒通電の例であるが)第1図(図は割愛)に示す様に,中止後17秒で心電図をとったところ既に心室細動が起こり、約6分で心臓運動は停止した。
******************* **************
マクロショックとして、85mAの商用周波数交流電流では心室細動が起こり、ウサギは5例中すべてが死亡した という動物実験の結果です。
記:2011−9−18
以下の医学書をみました。
Practical Approach to Cardiac Anesthesia 「心臓麻痺に関する実用的なアプローチ」とでも訳すのでしょうか
編集者:Frederick A. Hensley ら
ミクロショックの電流閾値はかなり複雑なようです。
2008年発行の本で、アマゾンでも売っているが8000円と高価な医学書です。
カテーテルが細く0.224mm2の場合は約50μAで心室細動が発生し、電流密度は22mA/cm2
カテーテルが太く100mm2の場合は約1000μAで心室細動が発生し、電流密度は1mA/cm2と
このグラフからは読み取れる。 この研究は1976年の報告
<BEMSJのコメント:この研究から、ミクロショックは心臓に直接電流が流れ込むということもあるが、心臓に接するカテーテルの接触面積などを考えると、それなりの電流密度になっていることが条件となっているのかもしれない。>
電流の閾値
電流の閾値は60Hzで心室細動を起こす電流の量と定義する。
様々な研究があり、その閾値は50μAから1mAの間にあるとされる。
ある研究によれば、上図に示すように、カテーテルのサイズの小さくなり、結果として心臓への流れ込む電流密度が大きくなると、心室細動を起こす電流の閾値は小さくなる。
ミクロショックの纏め
・ヒトでの心室細動の電流の閾値は10μAから1mAの間にある。
・心室細動が起こる電流に達する前に心拍リズムの乱れが発生する。
この心拍リズムの乱れは、重篤な低血圧症を引き起こし、心室細動と同様に死亡につながるので、重要である。
心拍リズムの乱れによる心臓のポンプ機能の障害は心室細動を引き起こす電流の閾値のほぼ半分の大きさで発生する。
記:2011−9−19
2008年のアメリカの大学の研究報告書(フェンスに電気を流しておいた場合の安全性の検討報告書)の中にあった情報です。
この報告書のP11に、他の研究の事例として、1973年の研究からの紹介として「マクロショックとして、犬と馬(ポニー)に電流を流した時の心室細動の実験結果」が紹介されている。
この結果からも、1秒以上の長い感電は危険ということができます。
記:2011−9−20
以下の論文を見つけた。
掲載誌:Circulation.1999;99:2559-2564.
タイトル:Cardiovascular Collapse Caused by
Electrocardiographically Silent 60-Hz Intra-cardiac Leakage Current;
Implications for Electrical Safety
研究者」Charles D. Swerdlow, MD
et al;
この論文は、ヒトを対象とした実験結果の報告である。
交流60Hzn電流が心臓に流れ込んだ場合に、心臓の機能に障害を与える程度を試験したものである。
40名の心臓病の患者の心臓に電流を流しこんだ場合、下表に示すように心室細動を起こすだけではなく、心室細動を起こす電流値より低い電流値で断続的な低血圧心室頻脈や連続した低血圧心室頻脈を起こすことを見出している。
40名の患者でのもっとも低い電流値で心室細動を起こした電流値は61μAと49μAであり、連続した低血圧心室頻脈を起こす電流値は32μAであり、断続した低血圧頻脈を起こす電流値は20μAであった。(論文のTable 2 参照 下図に示す)
この論文では、こうした研究からアメリカのミクロショックを考慮した機器からの漏洩電流の規格値、最大50μAは不十分で、最大値を20μAにすることを提案している。
この研究から、感電電流の規定の根拠などに用いられている心室細動を起こす電流値より低い、4割程度の電流値で心室頻脈といった影響を及ぼしていることが判る。
記:2011−9−20
アメリカ 1994年の医学報告にみる高周波電流が誘導して、ミクロショックで非持続性の心室頻脈を起こした事例を見つけた。
掲載誌:Anesth Analg
1994;78:587-9
タイトル:Transmitted Radiofrequency Current Through a Flow
Directed Pulmonary Artery Catheter
研究者:Stephen E. McNulty et al;
心臓にカテーテルが挿入されている状態で、ESU(電気メス)を動作させたら、電気メスを患者に接触させる前に、患者に非持続性の心室頻脈が起こったというもの。
この電気メスは417kHz、540kHzといった周波数で動作するもので、患者に接触させた場合に、患者に流れ込む60Hz交流の漏洩電流は最大10μAになるように設計されている。
心室頻脈が発生したのは、417kHzといった電気メスの電気出力が空間を伝わってカテーテルに誘導して、ミクロショックとして患者の心臓に流れこんだのが原因と推定される。
どの程度の電流が心臓に流れ込んだのかは、この事例報告では記述されていない。
文献にあった図の一部
記:2011−10−20
以下の論文に、ミクロショックの実例を見つけた。
掲載誌:麻酔:40巻6号 P986−990 1991年
タイトル:Swan−Ganzカテーテル挿入患者における電気メスによる心室性不整脈の誘発
研究者: 光畑 裕正 ら
概要:
swan−Ganzカテーテル挿入中の患者にて,電気メスの使用中に心室性不整脈が誘発された症例を経験した。
発生機序としては電気メス本体からの漏れ電流,メス先電極と生体との接触点での整流作用によるパルス状の直流電圧の発生がもっとも考えられたが,原因を確定することはできなかった。
複数のME機器を使用する場合には、等電位アースシステムにする必要があることを改めて考えさせられた。
記;2011−9−22
以下の論文を見つけました。
掲載誌:東京女子医科大学雑誌, 29(7):484-504, 1959
タイトル:交流並びに直流剌戟による心室細動の研究 : とくに除去における通電方向の問題について
研究者: 岩本九州夫
「今迄は心臓に比較的弱い電力を通ずると心室細動を惹起し,比較的強い電力を通ずると心室細動を除去出来るといわれている。」と書かれている、
この研究は最終的には発生した心室細動を電気刺激で除細動する研究である。
この研究の場合、除細動に先立って、犬を使い、犬の心臓に電流を流して(ミクロショック)心室細動の発生の状況を見ている。
結果として、交流電圧が低い場合は心室細動が発生し、電圧が高い場合には心室細動が発生しないことを実験で確かめている。
電圧が低い場合では、通電時間が短いと心室細動は起こらず、ある程度以上の通電時間が長いと心室細動が起こることが確認されている。
その結果を以下の表に引用する。
記:2011−9−27
以下の論文を見つけた。
掲載誌:呼吸と循環 1977年3月号
タイトル:マクロショックと心室細動
研究者:東京女子医科大学理論外科 丹治 康浩ら
論文の中から一部を紹介する。
********************* ***********
マクロショックで生体の反応の仕方に影響を与えるのは人体に加わる電圧ではなく,体内を流れる電流の大きさ,すなわち電流密度であると考えられている。
同じ電流を流した時でも,心臓に流れる比率は生体の体重および心重量/体重比によってかなり変化する。
(略)
マクロショック時の心室細動発生閾値を求める目的で次の実験を行なった。
雑種成犬24頭を用い,実験犬の左前肢,右後肢の剃毛した皮膚上に心電計用のステンレス製方形板状電極(4×6cm)を,生食水を浸したガーゼをはさみ圧著し,その電極間に電流を流した。
50または60Hzの交流正弦波の定電流通電装置または定電圧通電装置を使用し,10秒間の繰り返し通電または連続通電を行ない,通電時の電流値,電圧値,電極間インピーダンス値の変化および心室細動発生の有無を調べた。
********************** *************
記:2011-9-29
以下の論文を読みました。
掲載誌: IEEE Spectrum Feb 1972
タイトル: Electric Shock Hazard
研究者: C. F. Dalziel
感電に関する専門研究家の解説論文です。
以下の点に気が付きました。
*人体のインピーダンスは、50Hzから50kHzに周波数が上がると、50%程度に低下する。
*感電している時間が数秒を超えると、接触部分における皮膚の絶縁が破壊されてしまい、さらに低いインピーダンスになり、体内への電流は流れ込みやすくなる。
記:2012−5−3
電気安全法(経産省の所管)によって安全性の試験は行われているだけではなく、以下に示すように電波法(総務省の所管)の規制も受けていることが判った。
********************
電波法施行規則 抄
(昭和25年11月30日電波監理委員会規則第14号)
最終改正:平成23年12月16日総務省令第164号
第3節 製造業者等による型式の確認
(型式確認)
第46条の7 製造業者等は、その製造し、又は輸入する電子レンジ又は電磁誘導加熱式調理器の型式について、次の各号の区別に従い、当該各号に掲げる条件に適合していることの確認(以下「型式確認」という。)を行うことができる。
二 電磁誘導加熱式調理器
(1) 利用周波数が20.05kHzから100kHzまでの範囲内にあること。
(2) 高周波出力の定格値が3kW以下であり、かつ、動作状態における高周波出力の最大値が定格値の120パーセントを超えないこと。
(3) 利用周波数による発射及びスプリアス発射による漏えい電界強度が当該設備の発振器から30メートルの距離において次に掲げる値以下であること。
(一) 利用周波数において毎メートル1mV
(略)
(4) 当該設備の操作に伴って人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないこと。
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BEMSJがこの施行規則で注目したのは、「(4)人体に危害を及ぼし・・・・おそれがないこと」という条文である。
この(4)に記述された条文が、いつ書き加えられたのか定かではないが、この条文からは、型式認定作業を行う機関(製造する会社が自己責任で行う場合もあるだろうし、第3者の試験機関に委託する場合もあるだろう)が、具体的にどのようにして「人体に危害を及ぼさないこと」の試験を行っているのであろうか?
たぶん、電波防護指針に適合していることの試験は行っているのであろうと、想像されるが、基準に関しては詳細な情報は未入手である。どこまできちんと試験をしているか?
販売されているIH調理器は電波法に適用している旨のラベルなどの表示はあると思われる。
*Wikipediaの解説にも以下の記述がある。
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電波法による規制
電磁調理器は電子レンジと同様、高周波利用設備に該当し、放送や無線通信に影響を与えるため、電波法により規制されている。
総務省による型式認定がなされた製品(定格出力3kW以下かつ最大値が定格値の120%以下)は設置許可が不要だが、型式認定の対象とならない業務用の大出力のものは所轄の総合通信局の設置許可が必要である。
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*対応策:機器が技術的基準に適合していることを自ら確認し、総務大臣に試験成績書とともに届け出る。
機器に適合表示をする。
*電磁調理器のテスト報告から
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「卓上式電磁調理器のテスト結果」(概要)
卓上式電磁調理器(通称IH クッキングヒーター)は、各種安全装置が付いており、高齢者にも安全に使用できる調理器として注目され、店頭に様々な機種が並べられています。
その一方で、使用中に白煙が出たり、火災に至った事例も発生しています。
そこで、北陸三県(富山県、石川県、福井県)の消費生活(支援)センターでは、安全性や性能等のテストを共同で実施しました。
記
1 テスト対象品:北陸三県のホームセンターや家電量販店などで購入した卓上式電磁調理器9 銘柄
2 テスト期間:平成23 年9 月〜平成24 年3 月
4 テスト結果
(1) 価格、表示、使用上の注意
@ 9 銘柄の価格は、5,080 円〜17,800 円の範囲であった。
A 電気用品安全法や電波法に基づく表示は、全ての銘柄に適正に表示されていた。
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記;2011−1−22
約1か月、このケースを考えてきた。
1)当該のIH調理器で、最悪の条件で、調理器の上に置いた鍋に触れた場合の体内流入電流が、周波数分析の上で、どの程度なのかを明確にする必要がある。
IH調理器は内部の高電圧印加部と、ガラストップ部を挟んで、調理器の上に置かれた金属製鍋との間で、平板コンデンサを形成し、金属製鍋に人が触れた場合に、コンデンサを経由して電流が流れる。
このコンデンサのキャパシタンスや流れる電流は、個々のIH調理器の設計によって異なると思われる。
また、どのような条件が、最も大きな感電電流が流れるか、検討する必要がある、鍋のサイズ、IH調理器の設計・構造にちなむ因子、調理器の動作条件、手や調理ゾーンの上の水の濡れ・・・・・、AC電源の変動や重畳してくるノイズなどによる影響・・・・・2台の調理器の同時運転、 複数の調理ゾーンの上に置いた鍋が接触した場合・・・・・・
この流入電流(コンタクト電流、感電電流、接触電流)の正確な情報なしには、すべてが机上の空論に終わる。空論に終わるが、以下は中間のまとめ。
2)50−100Hzの感電とその影響
多くの感電事故に関する研究は50−100Hzに集中している。
最悪の感電事故を防ぐためとして、心室細動を起こす感電電流の研究は確立しているといえる。
ミクロショックといわれる心臓に直接通電した場合に心室細動を起こす電流は、100μA程度である。
マイクロショックといわれる皮膚経由の感電によって心室細動を起こす電流は100mA程度である。
医療機器のように、患者(人)に連続して接する電気機器のばあい、ミクロショックなどを防ぐために(患者は感電を感じても、簡単に自ら離脱できないからかもしれない)非常に厳しい漏洩電流の規制を受けている。
マクロショックとミクロショックの電流の比から、50−100Hzで、皮膚から感電した場合、心臓に流れる割合は100分の1以下であるか否かは、BEMSJが検索した情報の範囲では、わからなかった。
重篤な心室細動を起こす前に、心臓の機能に何らかの障害を与える程度の感電電流とそうした障害の程度に関する医学的な情報は、BEMSJが検索した情報の範囲では、わからなかった。
3)感電の規制:50−100Hz
感電を防ぐために、人の感電の感知電流を基に、電気機器の感電電流(漏洩電流)は規制されている。
ICNIRPの接触電流では0.5mA, 日本の電気用品取締法では1.0mAである。
これらの感知電流以下であれば、人は感電したとしても、短時間で手を引っ込めたりして、離脱できる ことが条件となっていると思われる。
国際的な規格をみても、10秒までの時間を対象とした規制値は存在する。
しかし、IH調理器で調理しながら、10秒を超える長い時間での影響に関する情報は、BEMSJが検索した範囲では、わからなかった。
4)50−100Hzの感電電流の心臓への流入の割合
伊坂らの研究によれば、50Hz等の周波数の皮膚からの感電電流が、心臓に流れる割合は、40%程度であるとされる。
もし、ICNIRPの接触電流の規定0.5mAというレベルの電流が皮膚から流入したとしれば、心臓に200μAという電流が流れる。
これが、医学的に「ミクロショック100μAで心室細動」と同じであると、もし、いうことができれば、また、伊坂らの研究が正しいとすれば、わずか0.5mAという感電電流で、心室細動を起こすということになる。
0.5mA程度の感電は、BEMSJも、しばしば経験したことである。短時間で感電からショックを感じて、離脱したからよかったのか???
IH調理器は、調理中長時間にわたって、鍋やスプーン経由で、しかも手全体でつかんでいるので、感知閾も上がり、感電し続けることが問題になるのであろうか?????????
5)20kHzなどの中間周波数での心臓への影響
周波数が高いと心室細動などによる感電死はないとされる。
人の感知電流は周波数が高いと、大きな電流でも感じなくなる。
中間周波数での心室細動を起こす皮膚経由の電流の研究は、散見できた。5−100Hzより大きな電流によって、心室細動は起こる。
6)20kHzなどの感電電流の規制
周波数が高いと感知電流の閾値が上がるということから、国際的にも、日本の電気用品取締法でも、ICNIRPの接触電流の規定でも、感電電流としては大きな値を許容している。
これは、周波数が高くなれば、電流が対表面部を流れるという表皮効果ではなく、人が感じなくなる という経験則に基づくものとみられる。
7)20kHzなどの接触電流の心臓に流れる割合
BEMSJが検索した範囲では、こうした研究結果は見つからなかった。
8)IH調理器から漏洩する磁界による影響
最悪の使用条件は、感電の最悪条件と異なるかもしれない。すくなくとも、漏洩磁界に関しては、調理器上の鍋のサイズが小さい方が漏洩磁界は大きいことは確かである。感電電流は鍋の底の面積が大きければ大きい感電電流が流れる。
ICNIRPの曝露基準の磁界レベルや、少し超える程度の磁界によって体内に誘導される電流はかなり小さく、不整脈の因になるとは思えない。
8)神戸の喫茶店主の感電による不整脈
以上のことから、神戸の喫茶店主がIH調理器の使用によって、不整脈になったという確証は得られなかった。
また、同時に、不整脈にならない ということを保証する確証も得られなかった。
今後 追加の情報があれば、このページに追加していきます。
以下のようなことを経産省の家電機器の安全性評価担当部門が検討することを提言する。
IH調理器からの接触電流が不整脈を起こすか否かの論点とは別に、それ以前に、IH調理器からの接触電流が、正確に測定できていない可能性が高いので、測定器などの再確認が肝要である。
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IH調理器からの接触電流が原因かもしれないという健康障害を訴える裁判が2010年に始まりました。
この裁判は、裁判継続が困難になったことから、結論を得ずに、終結しています。
この裁判では、従来の電磁界曝露による健康影響とはかなり異なる側面があるように、見えます。
集めることができた情報は、上記に示すように公開してあります。
1.産経新聞2010年8月6日の報道
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「IH調理器の電流で健康被害」と提訴 三洋「欠陥ない」
徳島大が夫婦の依頼を受けてこのIH調理器を使って実験したところ、ステンレス製の調理器具には、周波数2万〜6万ヘルツの電流が流れ、一定の接触条件で人体にも流れることが判明。
徳島大の伊坂勝生名誉教授(電気工学)によると、IH調理器に乗せたステンレス製の鍋などに片手で触れるだけでは人体に電流はほとんど流れない。
しかし、プラスチックなどで覆われていない鍋の取っ手を片手で握りながら、もう片方の手がトッププレート縁の金属部分やステンレス製の流し台に触れるなどした場合、手を通って人体に微小電流が流れるという。
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この報道から、IH調理器上に置いた金属鍋に手を触れた時の20kHzなどの接触電流(漏洩電流)が課題になっていると言える。
2.IH調理器からの漏洩電流の実測
経済産業省主催第14回製品安全点検日セミナー(火二注意セミナー:平成20年5月13日、香川県高松市)で製品評価技術基盤機構NITEが講演しました資料「最近の製品事故事例と安全な使い方について」の8ページに以下の内容が掲載されている。
参照URL: http://www.meti.go.jp/product_safety/event/080513/080513021.pdf
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IHコンロ(電磁調理器)とコンタクト電流
測定状態 測定電流値(mA)
片手鍋. ポット
(1)片手→足(スリッパ) 0.204−0.561 0.195−0.565
(2)片手→素足 0.561−1.559 0.716−1.725
(3)片手→片手 0.470−1.392 0.401−1.722
ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドラインでは、公衆の曝露の接触電流に関する参考レベルは、4mA(20kHz)である。
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この報告書ではICNIRPのガイドライン値の半分以下であると、報告されている。
3.漏洩していると思われる電流の波形等
裁判で問題になっているIH調理器から漏洩している漏洩電流の波形などは情報未入手で、定かではない。
しかし、一般論として、IH調理器の上に置いた金属鍋に手を触れた場合の、手に流れ込む漏洩電流は、50Hzもしくは60Hzもしくはその全波整流された形の2倍の周波数の正弦波で振幅変調された、20KHzなどの動作周波数のIH調理コイルから漏れ出てくる20kHzのパルス性(非正弦波で、Duty比はたぶん3分の1から4分の1)の電流波形であると想像することができる。
4.2の報告書で使用された測定器
NITEで漏洩電流測定に使用した電流計は日置電機の漏洩電流計とされる。
そこで、日置電機のWEBで当該の漏洩電流計のカタログを見ました。
現在市販されているモデル・現在サイトに紹介されているモデルには、クレストファクターの仕様欄がありません。
そこで、50Hzで振幅変調されている20KHzのパルス性(非正弦波)の波形をもつ漏洩電流の測定に関して、サイトの質問箱に質問を残しました。
そして、回答を得ました。
・日置の漏洩電流計のクレストファクターは1.5までしか考慮していない。
これは正弦波の交流しか測定できないことを意味し、パルス性・非正弦波の電流に関しては対応していないことになる。
すなわち、測定結果の数字は表示されても、その数字が正しいかどうかは不明となる。
・日置の漏洩電流計にはACピークというピーク値を測定する機能はある。
しかし、この機能は振幅変調されたり、時間で変動する場合にポークサーチやピークホールドといった最大値を得たりする機能はなく、同じ波形が繰り返している場合のピーク値測定機能である。
と、
これらの情報から、NITEで測定したIH調理器からの漏洩電流、最大1.725mAという数字は、正しいかどうかは、本当に使用した漏洩電流計の仕様などを再確認しなければならないということになる。
正確に測れる測定器で測定した場合、1.725mAの2倍、3倍ともなれが、4mAという規定値を超えることになる。
5.電気安全法に規定するIH調理器の漏洩電流の測定法に関する疑問
測定に使用する漏洩電流計が、3に示した特殊な電流波形であることから、真に正しい測定値が得られる電流計で測定しているのか、検証する必要がある。
場合によっては、電気安全法の規定に適合しているとされたIH調理器でも、測定器が適切ではなかったとして、過小評価に終っている可能性もある。
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