世界保健機構WHO、国際非電離放射線防護委員会ICNIRP,カロリンス化研究所や日本の環境研究所などの低周波磁界と小児癌の疫学研究、国際癌研究機構IARC、等の動きを簡単にまとめてみた。
作成:2002年12月15日
1.カロリンスカ研究所などの低周波磁界(50Hzなど)と小児癌の疫学研究
1979年にワートハイマーらによって、送電線などに由来する低周波磁界による小児癌増加という疫学研究が発表された。これが契機となって、その後研究が行われた。
1992年頃にはスウェーデンのカロリンスカ研究所の疫学研究などで、0.2マイクロテスラ(2ミリガウス)以上、0.3マイクロテスラ(3ミリガウス)以上、もしくは0.4マイクロテスラ(4ミリガウス)以上の低周波磁界暴露で、小児癌の増加があるとの報告がなされた。
これらは全て疫学調査であり、細胞実験や動物実験での発がん性は認められていない。
日本の環境研究所も、日本における状況の把握の為に、おそまきながら、疫学調査を開始した。
2002年8月24日の朝日新聞の報道はその中間報告であり、日本の研究も0.4マイクロテスラ以上で小児癌増加ということになった。
2.ICNIRPの電磁界暴露ガイドライン 1998年発行
ICNIRPは300GHzまでの電磁界への暴露のガイドラインを発行した。一般公衆への暴露は、測定可能な手段で表した参考レベルで示せば、50Hz に対しては100マイクロテスラ(1ガウス)である。
3.WHOの国際EMFプロジェクト
WHOは公正な立場で電磁波の健康影響を評価するために、1996年国際プロジェクトを発足させた。これは10年計画で進行中である。
WHOは健康影響の評価を行なう、どの程度まで暴露しても大丈夫かの限度値は、共同研究を行っているICNIRPが定める。暴露の程度の測定法に関しては、IEC国際電気標準会議が定める、という分担になっている。
4.IARCの発がん性判定
2001年IARCは、低周波磁界は発がん性2B(可能性があるが低い、可能性がゼロではない)と判定した。この判定は、動物実験では確認されていないが、疫学調査結果で、0,4マイクロテスラ以上で、小児癌増加という結果によって判定を行った。
5.ICNIRPの見解
IARCの発がん性判定を受けて、ICNIRPは見解を公表した。0.4マイクロテスラ以上の低周波磁界で小児癌増加という論拠は、まだICNIRPのガイドラインを改版する科学的な論拠とはみなしえない。
ICNIRPの疫学研究評価グループは論文を発表した「0.4マイクロテスラ以上の低周波磁界の暴露で小児癌増加は偶然に起こったとは言いがたい。しかし、この研究は選択バイアスの可能性がある」と。
また2002年8月に中国の電磁波調査団が欧州を訪問した時、ICNIRPの関係者は「現行のICNIRPのガイドラインはこの数年間は、改版することはないだろう」と語っている。
6.WHOの見解
まだWHOからの最終的な結論は出ていないが、IARCの判定結果を受けて、「まだ結論は出ていないが、電磁波に関しては予防原則を適用することも、選択肢の一つ」という見解を出している。