電磁波測定器「トリフィールドメータ」の特徴と問題点

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1997年に纏めたBEMSJの古いレポートです。

作成:97ー4ー15

 

1。トリフィールドメータの取扱説明書に記載してある事項から、

・磁界と電界の測定は周波数で重み付けをしている。

・低周波の電界/磁界共に3軸の測定である。

・50Hz用のトリフィールドメータは50Hzで校正されている。

・低い周波数から500Hzまでは周波数に比例して大きな値が表示される。

 

すなわち100Hzでは、真値が2ミリガウスであってもこの測定器は100/50=2倍の磁界値の4ミリガウスと指示する。

   500Hzの周波数の磁界を測定すれば真値は2ミリガウスであっても、500/50=10倍の20ミリガウスを指示する。

 

60Hz用のトリフィールドの場合は、60Hzで校正されている。

50Hz用のトリフィールドメータで60Hzの磁界を測定すれば 真値が2ミリガウスに対して 60/50=1・2倍の 2・4ミリガウスとなり、20%の測定誤差が通常の測定誤差に累積される。

 

・500Hzから1000Hzに対しては、周波数特性は平坦な特性を示す。

・1000Hzを越えると徐々に応答特性は劣化していき、100kHz付近で応答しなくなる。

 

・このトリフィールドメータの測定誤差は 指示値の+/−20%(磁界)、+/−30%(電界)である。
・取扱い説明書ではない他のトリフィールドメータのパンフレットによれば、 測定誤差は Mid Rangeで+/−20%となっている。

しかし、検証結果では実用的な使用状況では、この保証された誤差以上の要素が入り込んでおり、とても信頼出きる測定器ではない。

・マイクロ波に関しては50MHzから3GHzに応答しているが、電子レンジの2GHzで校正している。
・測定誤差は測定者のボデーエフェクト等があるので −50%から+100%である。

 

・この測定器は簡易的に用いるべし、測定器のレッドゾーンを指示したとしても必ずしも健康障害を与えるということではない。
この簡易測定結果で、ドラスチックに何かを行なおうと考えるならば、他の測定器での測定を専門家に依頼すること。
覚えておいて欲しいことは、この測定器は周波数で重み付けをしてあるということである。
疫学調査に使用しているような測定器や健康問題の規格値を策定する為等に使用されている他の測定器に比べて高い指示値を出す。
という趣旨の説明が取扱い説明書に記述されている。

 

2.磁界測定の検証

トリフィールドメータ(T値)とSwedenのコンビノバ社のフィールドドシメータ(F値)の相関をとった。

 

結果としては 機器からの磁界放射の波形が50Hzもしくは60Hzの正弦波であるとみなせる場合は、ほぼ正確である。

正確な例:

1)高圧送電線からの磁界

T値   1mG     F値 1mG

T値   11mG   F値 8mG

2)電気ストーブ

T値   1mG     F値 1mG

T値   80mG   F値 100mG

3)電気時計 

T値     10mG   F値   10mG

T値   100mG   F値 100mG

 

不正確な例:

1)14インチTV受信機

T値   100mG   F値 2mG   50倍

2) 20インチTV受信機

T値   3mG     F値 2mG

T値   80mG   F値 10mG    8倍

3)家庭の分電盤

T値   4mG     F値 5mG

T値   100mG   F値 20mG    5倍

4)掃除機

T値   100mG   F値 50mG    2倍

5)扇風機

T値   100mG   F値 20mG    5倍

6)石油ファンヒータ

T値   10mG     F値 2mG

T値   80mG   F値 10mG    8倍

7)電子レンジ

T値   15mG     F値 5mG

T値   100mG   F値 20mG    5倍

8)蛍光燈スタンド

T値   3mG     F値 2mG

T値   100mG   F値 20mG    5倍

9)30Wx2 蛍光燈

T値   5mG     F値 5mG

T値   100mG   F値 20mG    5倍

10)15インチモニター  垂直周波数 70Hz

T値   3mG     F値 0・5mG

T値   50mG   F値 2mG    25倍

11)電車の中、駅のプラットホーム

T値はF値の2から10倍の間の数値を示す。

 

3.電界測定・マイクロ波測定の検証

正確な測定器は手元にないので検証は未実施。

 

4.結論

このトリフィールドメータは 以下に簡易測定が目的としてあるといえども、一般の人が家庭環境等を測定するには測定誤差が、常識の範囲を超えており、とても測定器として使用できるものではない。

数倍から数十倍の誤った値を示す。

推奨はできない。 この測定器の使用は、かえって誤解を招く恐れがある。

 

以下は二つの測定器の相関をとったデータである。




図1 電車の中やプラットホームでの測定 トリフィルドメータは真値の2倍から10倍 大きく表示される。

 

図2 15インチモニターの場合 真値の10倍を超える。

 

3 高圧送電線の線下での磁界測定結果

 

4 30W2ランプの家庭用蛍光灯照明  低い値の時は真値に近いが高い値では真値に3倍程度になる。

 

5 電気ストーブの場合 50mG 以下の場合は真値に近いが、高い場合は真値より低くなる。

 

6 蛍光灯スタンドのベースに近い場所での測定 低いと真値に近いが、高い値では真値の5倍位になる。

 

7 交流100Vで動作する電気時計 真値に近い。

 

8 電子レンジの場合 電子レンジの加熱機能が動作していない場合は、真値に近いが、動作中は真値の5倍になる。

 

9 石油ファンヒータのファンからの磁界、扇風機のモータ部分からの磁界 真値の10倍、真値の30倍となる。

 

10 自宅の分電盤からの磁界の場合 低いと真値に近いが 高い時は真値の5倍を超える。掃除機の場合は真値の20倍となる。

 

11 テレビ受信機の場合  20インチテレビの場合は、真値の10倍、14インチテレビの場合は50倍となる。
多分、テレビから漏洩している磁界の波形や周波数が異なるからであろう。

これではトリフィールドメータで磁界を測定した場合、測定値の相互の比較はできない。