変動しない磁界、変動しない電界、直流磁気、静電気、に関連する情報
1. ポーランドの研究 直流8ミリテスラの影響
2. 日本に志賀論文にみる直流磁界の影響
3. 日本の上野論文にみる強い直流磁界の研究
4. ボタン電池でも健康影響がある?
5. 直流電流による磁界発生
6. 電磁波(直流磁気)の免疫効果
7. 地磁気の変動と生物
8. 強い永久磁石での障害事例
9. 直流磁界と心臓ペースメーカ
9A.2009年Fuらのヘッドホンの磁石と医療機器への影響の研究
10.WHOの静電界及び磁界に関する見解
11.強い静磁場に関する日本の研究 2007年
12.1999年Okanoら10ガウスで血流に変化
13.式部啓ら編「電磁界の健康影響 その安全性を検証する」1999年文光堂発行から
14.強い磁石20テスラで水をはじく
15.2003年池畑らの14テスラでの研究
16.直流磁界がアポートシスに影響という1999年の研究
17.静磁界はヒトに影響せず2014年の英国の研究
18.磁石に痛み緩和効果なしという2004年のアメリカの研究
19.1999年飯島の研究にみる静磁場の影響
20.Jelinekらの地磁気が鶏卵の発育に影響1999年研究
21.Nakaharaら2002年わずかな生体影響の研究
22.中岡の2005年強い直流磁場におけるゾウリムシの挙動
23.Ritzらの鳥類の地磁気感知に関する研究2000年
23A.直流磁界は鳩の帰巣に影響する
24.新城らの静磁場と牛の精子の研究2題
25.Ussawawongaraya
2005年 静電界の効果
26.Kopanevら地磁気の必要性1979年
27.MRI曝露に関する2016年 Rostamzadehらの研究
28.MRI曝露に関する2019年 Rostamzadehらの研究
29.MRI曝露に関する1987年 Shiversらの研究
29A.MRI曝露に関する1987年 Sweetlandらの研究
30.MRI曝露に関する1990年 Pratoらの研究
31.MRI曝露に関する1992年 Liburdyらの研究
32.MRI曝露・直流磁界曝露にPratoら 1994年研究
33.MRI曝露に関するPratoら 1994年研究 その2
34.MRIの電磁波曝露に関する一般的な解説
35.MRI曝露に関するMalikら 2022年研究 MRIの高周波電磁界への子供の曝露
関連情報
B1.非常に強い直流磁界では水の流れを止めることもできる
産業衛生学会の英文誌 2001年11月号に掲載
タイトル:Influence of a 7mT Static Magnetic
Field and Iron Ions on Apoptosis and Necrosis in Rat Blood Lymphocytes
研究者; J. Jejte et
al
概要;
ラットの血液中のリンパ細胞に直流磁界8mTを印加した時に発生する細胞死の割合を調査した。
対照群に比較して、磁界を曝露した群には有意差はなかった。
磁界の曝露と同時にFeCl2(塩化鉄?)を10マイクログラム/ミリリットルを加えると、細胞死が有意に増加し、特にNecrosisで死ぬ割合が磁界だけの曝露時の10%から、32%に増加した。
このことから、鉄イオンの存在が磁界の影響と関連している、
という内容です。
交流電磁波だけではなく、こうした直流磁界でも生体影響があるとして研究が行われています。
磁界の強さは8ミリテスラですから、古い単位に換算すると80ガウスです。
この論文でちょっと私が気になったのは、加えた塩化鉄の量です。
人体の中にどの程度の鉄分があるのでしょうか?血液中にはヘモグロビンという鉄成分がありますが、どの程度の割合なのでしょうか?
加えた量と、実際にヒトなどの体内にある鉄の量があまりにもかけ離れているのであれば、ヒトの人体内部では研究結果と同じことは起こらないことになります。
2.日本に志賀論文にみる直流磁界の影響
直流磁気と人体影響に関する情報です。Tはテスラで一万ガウスと等価です。
研究者:志賀健
論文名:磁場の人体影響
掲載雑誌:日本医事新報 1995年 からの情報です。
*動脈血流は影響を受けないが、血液中の赤血球のヘモグリペンは磁気(磁場)の影響を受けるので、肺や肝の血流は磁気の影響を受ける。
但し磁気強度と磁気勾配の積が100 T2(テスラの二乗)/m以上でないと影響が現れない。
*数T以上の強い磁場では、扁平円盤状の赤血球が、磁気の向きと円盤面が平行になるように配向する。
*ある理論計算によれば、上行大動脈に直角に5Tを負荷すると、血流速度が1割低下する。
*心電図に影響: 1Tの磁界を加えても正常な心電図であるが、1Tを超えると影響がある。
*MRIの改良に伴う人体実験。 ボランティア11名が4TのMRIで試験した。
試験中は半数にめまいなどの症状がでたが、試験後に回復した。
1年後の検査でも健康影響は無かった。
*マウスを2Tの磁界に曝露、100日間飼育したが影響無し。
*妊娠マウスを1日1時間、胎児の臓器形成期間に6.3Tの磁界に曝露、 対照群に比べて差異はなかった。
詳細は原著を読んでください。
非常に強い直流磁界に関する研究情報です。
タイトル: 磁界の生体作用
研究者: 上野 照剛
掲載雑誌: 医器学 1998年
上野先生は非常に強い直流磁気の生体影響を研究しています。
この論文は、それらの研究を総説しているものです。
参考までにどのような研究が行われているかというと
*アフリカツメガエルの受精卵に8テスラ(8万ガウス)および14テスラの磁界中で保温。
結果は対照群と比べて、顕著な差異はなかった。
*ショウジョバエの幼虫に8テスラの磁界を8時間曝露。
対照群に比べて、1.8倍の眼色モザイク突然変異が観察された。
(遺伝子に対する変異原性が認められた)。
*15テスラ程度までの曝露では酵素の活性に影響はなかった。
*非常に強い磁気で、同時に磁気勾配を急峻にすると、8テスラの磁界下で、水の流れが止まる。水の分子に磁界が影響する。
以上 興味のある方は、上記論文を読んでください。
直流磁界、変動しない磁界でもこのように強い磁界では生体影響が現れます。
直流磁界であっても、非常に強ければ何らかの生体影響が現れます。 「直流磁界は安全で、交流磁界は危険」であるという論法は、それぞれの強度を考慮すると、必ずしも正しくはありません。 |
直流の電池、乾電池ではなく小さいボタン電池での健康障害の例を見つけました。
直流の3Vという低い電圧での障害の例です。
一部を引用して紹介します。
********* 一部 引用 *************
全国で幼児が誤ってコイン型の電池(直流電圧3V)を飲み込み、体内で電池から電流が流れて食道に火傷を負う事故が増えています。 ・・・・・ (略)
田中淳介医師は「コイン型電池が食道に引っかかると、組織に電流が流れ、体液が電気分解される。
その結果、生じた水酸化ナトリウムが化学火傷を引き起こす。
わずか3Vの電池でも、火傷の進行は速く、犬での実験では30分程度で食道に穴があいた」と報告している。
***************** *****************
引用文献:貴田晞照「ごしんじょう」 2001年 扶桑社 より
わずか3Vの電池でも、場合によっては体の中で火傷や食道に穴を開けるという障害を発生させます。
交流はいやであるとして、家庭内で直流配線を行なった場合の磁界発生を考えます。
直流白熱電球による直流磁界の発生:
直流のバッテリーを準備し、マイナス側は大地に接地し、プラス側を電線でひいて、色々な機器に直流電力を供給するものと仮定します。
1本の導体に直流電流が流れている時、その導体の長さが十分に長いとすれば
導体からaメートル離れた地点における磁界は 参考書によれば
磁界H = 流れる電流/2πa (A/m)
磁束密度B = 4π x 10ー7 x H(テスラ) となります。
例題として 40ワット12ボルトの直流白熱電球1個に流れる電流は
40W/12V = 3.32 A となる。
この電流によって発生する磁界は、導体から10 cmの距離では
H
= 3.32/(2π x 0.1)= 5.28 A/m
B = 6.34 x 10-6 テスラ=
6.34マイクロテスラ = 63.4 ミリガウス
1個の40ワットの直流白熱電球の為に電線1本からこれだけの磁界が発生する。もし10個の、合計400ワットの白熱電球を使用していれば(普通の家庭ならば400ワット程度の照明器具を使用している?)634ミリガウスとなる。
634ミリガウスは自然界に存在する地磁気の強さに匹敵する。
直流電流の変動による発生磁界?
白熱電球の場合は、スイッチを投入した時に大きな過大電流が流れ、フィラメントの赤熱にともなって徐々にある一定の電流に安定する。したがって直流白熱電球といえども電流の大きさは変動している。
変動するということは低周波の磁界成分をなんらかの形で発生することになる。
例えば1Hzというような低周波の磁界が発生する。
直流電流によって直流磁界しか発生させないためには、流れる電流が一定(不変)でなけれればならない。いかなる変動や変化があってはならない。
電池で動く剃刀であっても 電流の変動はある。
電池で動くモーターでも電流の変動はある。交流のように正負に極性が切り替わらないだけであって、直流(電池)で動くものであってもそこに流れる電流は一定(不変)であるとは限らない。
したがって低周波の磁界が少なからず漏洩する。
上記例の634ミリガウスの直流磁界でも、もし1秒間隔で断続を繰り返せば、単純計算で約200ミリガウスの交流磁界は電線の周囲に発生することになる。
従って、直流のバッテリーから供給する直流電力であっても、交流の磁界は発生する恐れがある。
直流磁気が体によい影響を与えているという研究です。
研究者:B. D. Jankovic et al:
論文名: Brain-applied magnetic fields and Immune response: Role of the Pineal Gland.
掲載雑誌: Intern. J. Neuroscience. 1993, Vol 70, PP 127-34
概要;
600ガウスの直流磁石が、生体の免疫機能を増強する作用がある可能性が見つかったという研究、
鼠に磁石を埋め込み、他の条件と比較したら、磁石を埋め込んだ鼠の免疫機能が良かったという研究。
研究データの一部を転載します。
number of Plaque-forming cell(PFC)/10(6)cell のデータのみ転載。
1)松果体を除去した鼠 740
2)磁石を松果体の近くに埋め込んだ鼠 3163
3)松果体を除去して、かつそこに磁石を埋め込んだ鼠 2098
4)松果体を除去して、かつそこに磁石でない物を埋め込んだ鼠 1872
5)比較の為に何もしなかった鼠 1662
という結果であった。
このことから、磁石は松果体及びその近隣の臓器に作用して、免疫機能を増強する作用があると認められる。2)のデータからみて、明らかである。
この研究でこうした知見が確定する訳ではないが、一つの確証である。
鼠等の場合は、メラトニンは松果体で生成されるが、その他の臓器組織でも生成される、従って、3)の様に松果体がなくても、磁石は他の臓器に作用して免疫機能を維持していると言える。
ここからは筆者のコメント:
詳細はJOIS等からこの原著を入手して読んで戴くことにします。
1)の様に松果体を削除してしまえば、鼠の免疫機能は低下する。
2)磁石があれば松果体の機能を増強する。
3)松果体がなくても、磁石は近隣の臓器に作用をして免疫機能を維持する、と、
ここまでは素人の筆者でも実験結果に納得がいきます。
しかし、
4)は、松果体は除去されていて、磁石ではないダミーが埋め込まれているので、基本的には免疫作用は1)の状態に限りなく近くまで低下するはずである。
しかし、この実験結果では、免疫機能は殆ど低下していない。
ということは、研究全体もしくは一部にどこかおかしい点があるといえます。
すペで松果体を除去する時に、十分に除去されずに、一部の組織が残っていたとか、色々な研究手段の不正確さが残っているといえます。
この研究で検査されたPFCとは何?(筆者は調べていません)
この研究で使用された磁石の強さ600ガウスは、磁気ネックレス等に使用されているマグネットの強さ(約1000ガウス)に比べると少し低いレベル、地球の磁場は0・5ガウス程度であるので、地磁気に比べると非常に強い磁気となる。
KDDの広報誌ON
THELINEという小冊子の1995年6月号に掲載された科学的なエッセイとして、"地磁気の中に生きる"と題して 巨大な磁石・地球と生命進化のかかわりを解いています。
***************************************
"鳩や鯨は地磁気に頼って長距離移動の際の航法を行なっているという説が唱えられている。
しかし、おそらく彼らも、ただ地球磁場だけをあてにして航法を行なっているのではあるまい。
なぜなら、地球磁場はけっして安定した存在ではなく、数十万年ないし数百万年の周期で消滅し、南北の極が逆転するという現象を繰り返しているからである。
長距離を渡るガンカモ科の鳥は、遅くとも7000年前恐竜時代の末期にはもう姿を現していた。
この時代から生きてきた彼らは、何度も地磁気の消失や磁場の逆転を経験しているはずである。
彼らがそんな頼りない航法システムだけで、これまでの長い時間を生き延びてこられたとは思えない。 " と。
********************************
日本語訳版も出ている電磁波の健康影響に関しては読者も多い「クロスカーレント」、著者のベッカーはこうした地磁気と生命進化のことを取りあげて、交流磁気の恐ろしさを説いています。
「長い地球の歴史の中で、地磁気が逆転したような(これは地層等の研究で明らかになっている事実)時期と、恐竜が滅亡したり、色々な地球上の生物の大きな変革(それまでに勢力を誇っていた生物が滅亡して、新しい生物が地球上を支配する)時期とは、面白いことにかなりのケースで一致している。」
ベッカーは「こうした地磁気の逆転や大きな変動のあった時に、同時にシューマン共鳴によって地球上に存在する低周波電磁界も変化をしたのではないかという説を提唱している。」
(これは事実ではなく、仮説を提唱している、原著では「I Propose」という表現になっている。)
地磁気と低周波の電磁界の絡みで、サイクロトロン共鳴等で生命に影響を与えることになって、恐竜等も滅亡した、
従って低周波磁界は大きく生命全体の存亡に影響を与えるので危険である。と。
ベッカーの論理でいけば、ガンカモ科の鳥は既に死に絶えていなければならないことになります。
ここにベッカーの著作に、大きな疑問点を見つけてしまいました。
ベッカーの「クロスカーレント」もこうした点からみれば、参考になる著書ですが、100%正しいとは言えず、バイブルとする訳にはいかないようです。
追記:2013−6−3
産経新聞 1997年4月30日の記事として、以下の報告があります。
*************** 一部を引用 *****************
2億5000万年前の生物大絶滅
地層のすき間から答見えた?
地球規模の”超酸欠”か
日本の研究で解明に進展地球は四士ハ億年の歴史で何度か生物絶滅を経験した。
最大の絶滅は約二億五千万年前。海の生物はほぼ全滅し、陸の動植物も一変した。
この絶滅では、地球の地殻や内部で起きた変動が引き金となって、大規模な「酸欠事件」が起きたらしい。
その真相に迫る研究が日本の地層を突破口に進み出した。
○火山活動が原因か
この絶滅が起きたのは古生代ペルム紀と中生代三畳紀の間。地質学では「PT境界」と呼ぶ。
三葉虫や原生動物のフズリナなど古生代型生物は一掃され、海の無脊椎(せきつい)動物の九六%が死滅した。
原因をめぐっては、六千五百万年前の恐竜絶滅と同様のいん石落下説や、氷河期や温暖化など諸説あるが、いん石説は証拠がなく旗色か悪い。
最近、世界的に注目されているのが磯崎行雄東京工業大助教授(生物絶減史)の火山活動説。
シナリオはこうだ。
古代末期、地球上の陸地は一つに集まり超大陸パンゲアを形成した。
大陸間にあった海洋プレート(岩板)はマントルに沈み地球の「核」に落下する。
反動で核から熱いマントルの塊「スーパーブルーム」が上昇、異常な火山活動をもたらした・・・。
「火山灰などで太陽光が遮られ植物は光合成ができなくなり、地球規模で、超酸素欠乏事件″が起きた。
有毒ガスの発生や酸性雨、寒冷化も進んだ」(磯崎助教授)。
○手掛かりは付加体
問題は、PT境界の地層がなかなか見つからず、仮説の検征が難しいことだ。
当時の陸のたい積物は風雨による侵食で消滅している。
かろうじて中国南部など一部地域に当時の浅い海底の地層が残っていたが、生物絶滅の原因は絞り込めなかった。
磯崎助教授は1990年代に入り、かつての遠洋の海底たい積物の分析から、地球規模の酸欠現象が起きたことを裏付ける証拠を次々と見つけた。
かぎは金魚鉢に入れたりするたい積岩の「チャート」。
海洋プレートは大洋の大山脈「中央海嶺」で生まれ、大洋の緑で陸側プレートの下に次々に沈むため、二億年以前の海底は既に存在しない。
だが表面のたい積物はこそぎ取られて陸側にくっつき、陸からの土砂と混ざった「付加体」を作る。
磯崎助教授は愛知・岐阜県境にあった付加体中のチャートを調べた。
▽新しいなぞ
その結果、PT境界の前後約二千万年間、鉄が酸化されずにたい積しており、大規模な酸欠現象の発生が立証された。
カナダのブリティッシュコロンビアにある付加体でも結果は同じだった。
(略)
************************************
この磯崎研究からも、ベッカーの仮説は、仮説に留まっているということができる。
産業医科大学ニュース 2003年10月号に掲載された情報です。
************** ****************** ************
産業保健実務相談窓口事例
Q :強力な永久磁石(磁石表面で1.3テスラ)を使用した製品の開発部門において、1時間程度の作業後に頭痛・眩暈を訴える作業者が数名おります。
数時間後には症状は改善しますが、永久磁石とこれらの症状との間の因果関係につきご意見を頂ければ幸いです。
A: (略)・・・・・・・ (略) ・・・・・・・・・・・ 以上をまとめますと、定常磁界の生体影響については、分子レベルではメカニズムが解明されていますが、個体のレベルにまで影響を及ぼすほど強い作用は有していないと考えられています。
ただし、強磁場において様々な自律神経系の症状を訴える者が多いという報告があり、貴職場でみられた症状はこれと思われます。
現時点での安全基準として、ICNIRPのガイドラインにより職業上の曝露上限として1時間平均が0.2テスラに設定されていること、距離の3乗に比例して磁束密度が減少することから、永久磁石までの距離・磁界曝露時間を考慮することで、磁界曝露を減らすことができると考えられます。
************ ***************** ******************
このように直流磁界・磁石でも、1.3テスラ(13000ガウス)といった強力な場合は、個人にもよるが、こうした障害の事例はあるようです。
興味のある方は、全文を入手して読んでください。
「ペースメーカ装着者の就労や社会参加の促進に向けた電磁波干渉防止に関する研究 ( 調 査 報 告 )」 特定非営利活動法人 ペースメーカ電磁波情報協会2004年 11月 8日 初版発行 の中に、以下の点が有りました。
「1)静磁界(直流の磁界)による干渉
心臓ペースメーカは、動作確認のために外部から0.002T(2mT=20ガウス)以上の静磁界を加えると固定レートで動作するように作られています(マグネットモード)。 このため、0.002T を超える静磁界に曝されるとモード変更が起こります。核磁気共鳴装置や超電導磁気浮上式リニアモーターカーを利用する時は、この条件に相当します。」
興味のある方は、詳細に関しては、この報告書を入手され、読んでください。
記:2020−11−3
以下の研究がある。
*EMF Portalのサイトにあった情報
*****************
掲載誌: Heart Rhythm 2009; 6 (10): 1432-1436
タイトル:Clinically significant magnetic interference of
implanted cardiac devices by portable headphones
ポータブルヘッドフォンによる植込み型心臓用装置と磁界との臨床的に重大な干渉.
研究者Lee S, Fu K, Kohno T, Ransford B, Maisel WH
この臨床調査は、心臓用植え込み機器装着患者100人(ペースメーカ(PM):45人、植込み型除細動器(ICD):55人)に8機種の携帯型ヘッドホンで磁界ばく露を与えてPMとICDの機能への影響を評価し、ヘッドホンの磁界強度も測定した。
その結果、臨床的に重大な磁界干渉の出現頻度は、ICDで21/55(38.2%)、PMで9/45(20.0%)であった。
磁界干渉によりPMでは非同期ペーシング、ICDでは頻性不整脈検出の妨害を特徴とする「磁石反応」が経験された。
磁界干渉を受けた30例のうち1例を除いて、ヘッドホンを胸部から遠ざけると直ちに機能は正常に戻った。
2cmの距離で磁界強度が10ガウス以上のヘッドホンは干渉を起こしやすく、またヘッドホンを皮膚表面から3cm以上離すと磁界干渉は観察されなかったと報告している。
**************************
*Full Textを読む
実験に使用したヘッドホン
実験結果の一例
*BEMSJのコメント:
・基本的に心臓ペースメーカは、何らかの異常時にペースメーカの動作をリセットモードに戻すことができるようにしてある。この機能は20ガウス以上の磁石を装着したペースメーカに近づけることによって動作する。
・従って、ヘッドホンなどに取り付けられた小さな直流磁石(マグネット)が20ガウス以上の強さがあり、ペースメーカに近づけば、ペースメーカは影響を受ける。当然の実験結果である。
WHO 国際EMFプロジェクト ファクトシートNo.299 電磁界と公衆術生:「静電界及び磁界」 が 2006年3月に刊行されています。
その概要です。
世界保健機関(WHO)の国際EMFプロジェクトは最近、高い静電磁界曝露の健康への意味合い(possib1e
health Imp1ications)についてレビューを行い、医療スタッフ及び患者(特に子供及び妊婦)、ならびに高強度の磁石を製造する産業の作業者に対する公衆衛生防護の重要性を強調した(環境保健基準 Environmental Health Criteria, 2006)。
発生源
最近の技術革新により、最大で地磁気の10万倍も強い磁界が利用されるようになっている。
これらは、研究や、脳やその他の軟組織の三次元画像が得られるMRI等の医療応用の分野で用いられている。
通常の医療システムでは、スキャンされる患者、及び装置のオペレータは、0.2〜3Tの範囲の強い磁界に曝露される可能性がある。
医学的研究応用においては、更に高い最大約10Tの磁界が、患者の全身スキャンに用いられている。
健康影響
静電界については、研究はほとんど実施されていない。
これまでの結果では、急性の影響は、体毛との相互作用を通じた電界の直接的な知覚と、火花放電による不快感のみであることを示唆している。
静電界の慢性または遅延性の影響は適切に調査されていない。
静磁界については、急性の影響は、例えば人の動きや身体内部での血流や心拍といった、磁界環境内での運動の際にのみ生じると思われる。
2T以上の磁界環境で動く人は、目眩や吐き気、場含によっては金属質の味覚や閃光を感じる可能性がある。
ほんの一時的ではあるものの、そのような影響は繊細な作業を実施する作業者(例えば、MRI装置内部で作業を行う外科医)にとって、安全上のインパクトがあるかもしれない。
これまでのところ、質の良い疫学研究または長期的な動物実験がないので、たとえmT領域の磁界曝露であっても、それによる何らかの長期的な健康影響があるかどうかを決定することはできない。よって、静磁界のヒトに対する発がん性は現時点では分類できない(IARC,2002)。
国際基準
静磁界への曝露は、国際非電離放射線防護委員会(ICMRP)が扱っている(www.icnirp.org
参照)。
職業曝露については、現行の限度値は静磁界の内部での運動により生じる目眩や吐き気の感覚の回避に基づいている。
推奨されている限度値は、職業曝露に関する作業日の時間加重平均値が200mT、上限値が2Tである。
一般公衆に関する連続的な曝露限度値は40mTとされている。
各国の当局ができることは?
WHOは当局に対し、以下の措置を講じることを推奨する。
・科学に基づく国際的な曝露限度値を採用すること。
・防護措置の実施を確実にするため、2Tを超える磁界を生じる磁気共鳴画像法(MRI)装置の免許制度を検討すること。
詳細に関しては、原文を入手され、全体を読んでください。
作成;2009−2−28
独立行政法人 物質・材料研究機構 共用基盤部門 強磁場共用ステーション 2007年度成果報告書にあった報告の抜粋です。
関心のある方は、全文を読んでください。
タイトル:静磁場の骨芽細胞及び破骨細胞に対する作用:魚のウロコを用いたモデル系による解析
研究者:鈴木信雄 ら
概要:高強度の静磁場が骨形成に有効である可能性がある。
そこで物質・材料研究機構の超伝導マグネットを用いて、13T の静磁場に対する骨芽細胞に加えて破骨細胞の影響をウロコの培養系により解析した。
キンギョのウロコを取り、そのウロコを半分に切りった。半分に切断したウロコは、2 群に分け、実験群と対照群とした。
13Tの磁場に、6及び24時間曝露し、骨芽細胞と破骨細胞の活性に及ぼす影響を調ペた。
結果として、静磁場により、骨芽細胞の活性は上昇し、破骨細胞の活性は逆に低下することが判明した。
今後これらの遺伝子の発現解析を行い、静磁場による骨形成機構をさらに詳細に調ペ、骨折の治療に貢献するための基礎データをとる予定である。
タイトル;強磁場の生体影響に関する研究
研究者:池畑政輝ら
研究では、遺伝子を欠損する大腸菌を用い,変異原性を指標として磁場の生物影響を評価することを目的とした。
定常磁場曝露装置として,磁東密度が最大13T の定常磁場を発生することが可能な超伝導磁石を用い,5 , 10 , 13T での磁場の変異原性を検討した。
結果,どの磁東密度条件においても明らかな変異原性は見られなかった。
作成: 2000−3−21
興味深い論文を見つけました。
掲載誌 Bio ElectroMagnetics Vol.20.Nov. 1999
研究者:H.Okano et al;
タイトル:Biphaseic Efdfects of Static Magnetic Fields on
Cutaneous Microcirculation in Rabbits.
日本の研究です、 厚生省の公衆衛生関係の研究所にいる大久保先生とビップエレキバンの会社と思われる会社に勤務している岡野さんの研究です。
10ガウスの直流磁界を ウサギの耳に当てて、局部の末梢血流への影響を顕微鏡的な手法で観察したものです。
知識がなく、十分に読みこなす事ができませんが、結論は、血流に変化が現れた となっています。
まずか10ガウス、ちょっとした棒磁石や馬蹄形磁石のレベルで、こうした生体影響が現れるとは、信じがたいのですが・・・・・・ 関心のある方は原著論文を入手して読んでください。
記:2013−4−3
以下の記述があり、引用して紹介する。
************************
静磁界の作用
そのほか、体内のマグネタイトは渡り鳥の方向感覚、鮭などの回遊方向の感覚、伝書鳩や蜜蜂などの帰巣方向感覚、に関係するといわれている。
しかし、マグネタイトが体内にあっても、まだ感知器官であるとの証拠がなく、感知メカニズムを説明するための決定的な論拠もない。
これらは地磁気という非常に弱い磁界による方向感知そのものの証明とマグネタイト含有の器官という物証と両方にまだ問題がある。
さらに脳内での複雑な方向感覚とその記憶の説明となると全く証明困難である。
伝書鳩の帰巣に関するKeetonの実験例(1971)が地磁気の感知としてしばしば引用されていたが、その続報や追試が不成功に終わり、もはや引用されなくなった。
ヒトでも脳内にマグネタイト結晶を見つけたとの報文がある(Kirschvinck et al,1992)が、まだ正確な追試ができていない。
静磁界の作用
異常赤血球:先天性ヘモグロビン異常のある鎌状赤血球性貧血の患者血では、脱酸素化により赤血球形態が鎌状または棒状に変化する。
このような棒状赤血球を均一な静磁界の中でゆっくり流動させると、棒の長軸が磁界の向きに垂直になるように配向する。
棒状赤血球の長軸方向と短軸方向とでは磁界との間の相互作用の強度が異なる(磁気異方性が大きい)ためである。
棒状化した赤血球の配向は静磁界強度0.35T程度で起こる。
この現象は1965年に報告され(Murayama,1965)、20年後に追試確認された(Brody
et al,1985)。
また、この知見は1970年代に、強磁界装置(とくに線形加速器)従事者の曝磁基準や一般人の立入禁止区域を設定するのに役立った。
例えば線形加速器周辺において、鎌状赤血球性貧血患者に対する立入禁止の静磁界レベルは一般人のレベルより10倍厳しく設定されていた。
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2000年頃の情報です。
古いメモに残っていました。
http://www.from.co.jp/niroku/26tayori.htmというWEBに有った内容です。
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磁石情報配信メール・二六便り
二六便り・Vol,10 みなさんこんにちは!
株式会社二六製作所 村上肇です。
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● 磁石情報 ● <磁石で、乾燥機・冷蔵庫を作る!!??>
◆磁気で洗濯物を乾かす?
日本経済新聞より。
これは水が磁気に反発する「モーゼ効果」を利用して水を弾き飛ばし、洗濯物などを早く乾かすのに使えるのではと言うものです。
磁気による水滴浮上実験は、東北大学の本河光博教授により成功しているそうです。
まず、10ccの水滴の両横から約20テスラ(ネオジウムのBrが
1.22テスラ)というものすごく強い磁気をかけたところ「水滴がジャンプした」ものであります。
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産業衛生誌 45巻 2003年 「2003年日本産業衛生学会総会の予稿集」から
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酵母を用いた電磁場の変異原性および遺伝子発現に対する影響の評価
池畑政輝1)、高島良生2)、宮越順二3)、小穴孝夫1)
1)財団法人鉄道総合技術研究所環境工学研究部生物工学研究室
2)東京工業大学人間環境システム、3)弘前大学医学部
目的:
近年の技術の進歩により、核磁気共鳴画像診断装置(MRI)等が汎用となり、強磁場への職業曝露、公衆曝露の機会が増加している。
しかしながら、磁場曝露の生体影響についての知見は未だ少なく、安全性も含め詳細に検討する必要が生じている。
磁場の変異原性に関して、これまでにいくつかの報告があるが、その変異原性は、塩基レベルの損傷ではなく染色体レベルの損傷もしくは修復等への影響である可能性が示唆されている。
そこで、本研究では真核細胞のモデルとして非常に有用である、出芽酵母(Saccharomyces
cerevisiae)を用いて、磁場の生体影響を検討することを目的とし、最大14Tの定常磁場および最大40mTの50Hz変動磁場の生体影響に関して、突然変異および遺伝子発現特性を指標として検討をおこなった。
【方法】
1. S. Cerevisiae XD83 (MATa/MATα,his4-519/his4-519, +/pet1,arg4-4/arg4-17,ade2-18/+,lys1-1/lya1-1)を用い、対数後期まで培養後、リジンとアルギニンの選択培地に播種し、磁場曝露群と対照群に無作為に分けて30℃にて5日間培養した。
その後、lys1-1の点変異復帰頻度およびαarg4における遺伝子変換/組換頻度を測定し比較をおこなった。
2. S.Cerevisiae4338を磁場中で24時間静置培養した。この菌体よりmRNAを抽出し、通常の培養器で静置培養した菌体を対照として、cDNAマイクロアレイを用いて全遺伝子レベルでの遺伝子発現の解析をおこなった。
【結果】
定常磁場5Tの曝露により、arg4の復帰変異頻度がわずかながら有意に増加した。
一方、lys1-1の復婦変異頻度には差違は認められなかった。
また、変動磁場では40mTの磁場曝露でも影響は見られなかった。
したがって、これまでの報告と同様に磁場曝露により遺伝子変換/組換が増加する可能性が示唆された。
一方、遺伝子発現特性については、14Tの曝露によりいくつかの遺伝子において発現の誘導が見られたが、特異的な遺伝子ネットワーク、シグナルトランスダクション等に関する明確な影響は観察されなかった。
したがって、14T程度の強磁場曝露によって細胞が何らかの応答を示す可能性は低いと考えられる。
また、他の曝露条件では影響は見られなかった。
これらの結果から、磁場曝露により細胞が明確に認識し応答を示す程のストレスや1塩基レベルでのDNA損傷・修飾は生じていないが、染色体レベルでの組換えを促進する、磁場の特異的な効果が示唆された。
一方、磁場の変異原性の強度に関しては、陽性対照として用いた紫外線の変異原性との比較により、日本の平均的な太陽光中に含まれる紫外線の数千分の一以下であると評価された。
今後、その作用機構について、遺伝子発現解析の条件検討や、磁場と各種変異原の複合的な曝露による効果の検討などを通して解明し、合わせて曝露によるリスクの検討をおこなっていきたい。
本研究の一部は日本学術振興会・未来開拓推進事業「強磁場下の生体挙動と影響評価」研究プロジェクトの援助によった。
作成: 2003-8-12
アブストラクトのみ入手、仮訳をつけた。
この文章は難解。 ちょっと仮訳に自信がない。
掲載誌:The
FASEB Journal. 1999; 13: 95-102 1999
論文名:Magnetic
fields increase cell survival by inhibiting apoptosis via modulation of Ca2+
influx
直流磁界はカルシウムイオンの流入によってアポートシスを防止して、細胞の生存を増加させる。
研究者:C.
Fanellia, S. Coppolaa, R. Baronea, C. Colussia, G. Gualandib, P. Volpea,c and L. Ghibellia,
Dipartimento di Biologia, Universita di Roma `Tor Vergata',
via della Ricerca Scientifica, 00133, Rome, Italy
概要:
Static magnetic fields with intensities starting from 6 gauss (6x10-4 tesla, T)
were found to decrease in an intensity-dependent fashion, reaching a plateau at
6 x 10-3 T, the extent of cell death by apoptosis induced by several agents in
different human cell systems.
6ガウスから始まり、量反応関係が減少し、60ガウスでは飽和してしまうが、直流磁界は色々なヒト細胞でさまざまなエージェントによって誘発されるアポートシスによる細胞死を減らす。
This is not due to a change in the mode of cell death (i.e., to necrosis) or to
a delay of the process itself; rather, the presence of magnetic fields allows
the indefinite survival and replication of the cells hit by apoptogenic(意味?)
agents.
これは細胞死の種類が変化したり(ネクローシスに変化)、細胞死への過程が遅延したりすることによる変化ではない。
むしろ、磁界の存在が生存期間を無限化したり、XXXXしているためである。
The protective effect was found to be mediated by the ability of the fields to
enhance Ca2+ influx from the extra cellular medium;
accordingly, it was limited to those cell systems where Ca2+ influx was shown
to have an antiapoptotic(意味?)effect.
この防護効果は、磁界が細胞外からカルシウムイオンの流入を増強することによってなされている。
カルシウムイオンの流入がantiapoptotic効果を持つ細胞に限定した効果である。
Magnetic fields thus might interfere with human health by altering/restoring
the equilibrium between cell death and proliferation; indeed, the rescue of
damaged cells may be the mechanism explaining why magnetic fields that are not
mutagenic per se are often able to increase mutation and tumor frequencies.
磁界は細胞の死と再生のバランスを変化させることにより、ヒトの健康に影響を与えているかもしれない。 障害を受けた細胞の救出は、「磁界は突然変異や
腫瘍頻度の増加などを起こすことができる変異原性を持つものではない」ということを説明している。
FASEB: The Federation of American Societies for Experimental Biology
記:2015-3-21
*始めに
以下の情報が「Interference
Technology日本版 2015年3月号」に掲載されていた。
****************引用 ****************
自然界の磁界は人間に悪影響を与えない
英国マンチェスター大学の科学者グループが「電磁波スモッグ」への曝露環境は人の健康に悪影響を与えないという研究を発表した。
電磁波スモッグとは、Wi-Fi ルータや携帯電話、タブレット、ノートPC、電源ライン、携帯基地局などから環境に発生する磁界(MF) の総称である。
こういった磁界被曝の悪影響に対する関心は近年、高まってきていたが、この研究により議論はようやく一時休戦となりそうだ。
グループがラボで実施した研究では、フラビン依存性酵素という酵素の磁界感受性を調査した。
この酵素はDNA
修復やエネルギー生成、自然細胞死の調整、神経発生など数々の生物学的過程に関わっている。
Daily Telegraph 紙によれば「ラジカル対の中には、こういった酵素主導の反応の間に一時的に発生するものがあり、MF感受性から生じる反応の中で時期的に誘導された変化に科学者グループは着目した」という。
「ラジカル対に関わると考えられていた酵素分類の過程が磁界への被曝によって変化しようがしまいが、それは細胞にダメージを与える可能性がある。
彼らはこの反応が磁界に対して感受性はないことを発見した」と同紙は述べている。
電線や携帯電話などの機器からの弱い磁界によるリスクがあるため、明確な結論が出るまでにはさらに研究が必要である。
詳細はNHS
Choices のウェブへ。(2015/01/22)
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何か、意味が判然としない、ニュースの翻訳文である。
*元ネタへの探求とその結果
この解説の元ネタは
http://www.nhs.uk/news/2014/12December/Pages/Electromagnetic-smog-unlikely-to-harm-humans.aspx で、英国のDepartment
of Health(英国保健省とでも訳す?)の健康情報サイトにあったニュースである。
'Electromagnetic smog' unlikely to harm humans
Thursday December 18 2014
さらに、英国マンチェスター大学の研究報告は、
タイトル:Magnetic
field effects as a result of the radical pair mechanism are unlikely in redox enzymes.
研究者:Messiha
HL, Wongnate T, Chaiyen P, Jones AR, Scrutton NS
掲載誌:J
R Soc Interface 2015; 12 (103): 20141155-1 - 20141155-10
である。
Messihaらは、11.1mTから 163.1mTの磁界で同様な結果を得たとして、「Although
widely implicated in radical pair chemistry, we conclude that thermally driven,
flavoezyme catalyzed reactions are unlikely to be
influenced by exposure to external magnetic fields. ラジカルペア化学で広く用いられていることであるが、熱的に誘起されるフラビン酵素触媒反応は、外部磁界への曝露によって影響されたとは言えない。」と結んでいる。
Messihaらのこの2014年論文には、磁界の周波数などに関しては、何も記述がない。別の論文を参照となっている。
そこで、EMF-Portalのサイトを見ると、Messihaらの2014年論文を紹介しており、曝露条件が明記してあった。
これによれば、この研究は、ネオジウム磁石を用い、静磁界で実験を行ったことが判った。
11.1mTから163.1 mT(111ガウスから1631ガウス)の静磁界を細胞などに曝露して、影響がなかったことが判っただけで、この研究から、英国NHSのサイトやInterference誌にあるような
「電磁波スモッグとは、Wi-Fi ルータや携帯電話、タブレット、ノートPC、電源ライン、携帯基地局などから環境に発生する磁界(MF) の総称である。こういった磁界被曝の悪影響に対する関心は近年、高まってきていたが、この研究により議論はようやく一時休戦となりそうだ。」と
いうことはできない。
以下のニュースが読売新聞に掲載されている。
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「磁石」には痛み緩和の効果なし?米大学の研究で判明
【ワシントン=笹沢教一】体の痛みを緩和する効果があるとされる「磁石」には、医学的な効果が認められないことが、米オクラホマ大の研究でわかった。
米医学専門誌「アメリカ苦痛管理ジャーナル」の最新号に発表された。
磁石が持つ痛みの緩和効果については、磁力が神経に作用して痛覚神経の信号を抑えたり、血行をよくすることで、何らかの改善効果が得られると一般に信じられ、そのような効能をうたって販売される健康器具が米国内でも少なくない。
同大の研究チームは、痛覚信号の抑制効果について確認するため、49人の健康な人に磁石と偽の磁石のいずれかを装着。
被験者の体の1点に軽く触れるテストを行い、痛覚神経より敏感な触覚神経に信号の抑制がみられるかどうかを調べた。
その結果、磁石による信号の抑制効果は確認できなかった。
米国でも日本と同様に磁石を使った健康器具の支持者は多く、肩こりや慢性の関節痛が和らいだと主張する人もいる。
こうした“効き目”について、同大のデビッド・ギャリソン博士は「偽薬(プラシーボ)でも効いたと思い込むプラシーボ効果ではないか。
磁石をつけた腕輪状の健康器具で、腕輪の圧覚が脳に伝わり、結果として手首からの痛みの情報が制限されることも考えられるが、それは磁石の効果とはいえない」と説明している。
読売新聞社:2004年08月26日
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以下の論文から、静磁場に関する部分を抜粋して、紹介する。
掲載誌;山梨医科大学雑誌 第14巻1号 001-005(1999)
タイトル:<総説>電磁場が染色体に及ぼす影響
研究者:飯島純夫
定常磁場が染色体に及ぼす影響:
Wolffらは一連の研究により、CHO細胞でもヒト末梢血リンパ球でも数テスラという強定常磁場が染色体異常、SCE、DNA合成能のいずれにも有意な影響を及ぼさなかったことを報告している。
同様の結果はヒト末梢血リンパ球を用いた実験で報告されている。
筆者らの研究でも定常磁場の場合には、0.8Tまでの磁場強度で染色体異常もSCEも認められなかった。
このように現在までのところ定常磁場によって染色体異常および、SCEが誘発されたという報告はみられていない。
しかし、染色体異常の簡便な検出法の1つである小核試験では、マウスの骨髄赤芽球系細胞の小核誘発頻度が4.7Tという高定常磁場の単独曝露でも化学物質との複合曝露でも有意に増加するという結果が報告されている。
微生物を用いた変異原性試験であるエームステストでは、11.7Tという極めて高い定常磁場でも変異原性はなかったと報告されている。
同じ研究グループのCHL細胞を用いたin vitro小核試験でも単独曝露の場合には小核の有意な増加はみられていない。
筆者らはこれまでに、@定常磁場(400、800mT)によるヒト末梢血リンパ球でのSCE頻度、A定常磁場( 800mT)とX線(1、2、4Gy)を複合させた場合のヒト末梢血リンパ球での染色体構造異常頻度、BESR(Electron
Spin Resonance ;電子スピン共鳴装置)からの磁場(50、150、450、1350mT)によるヒト末梢血リンパ球およびマウス大腿骨骨髄細胞でのSCE頻度、の3つの実験を、常磁場を用いて行ってきたが、これらの一連の実験結果はいずれも陰性であり、過去の知見と類似していた。
以上の知見から、定常磁場単独ではかなりの強磁場でも変異原性は認められないといっていいと思われる。
記:2019−10−17
以下の研究がある。
掲載誌:Biologia, Bratislava 1999.- V.54 suppl 6- S. 151-156.
タイトル:Absence of geomagnetic field does not influence
the chick embryo development
鶏卵の発育に地磁気のなさは影響しない
研究者:Richard Jelinek, Jiri Blaha, and Jitka Janoutova
Effects of incubation in the absence of geomagnetic field was studied embryos
of White Leghorns in a series of repeated experiments comprising about 500
treated and approximately the same number of control specimens.
孵化器を地磁気の状態にした時の効果を、500回の繰り返し実験と、同数の対照群の実験を繰り返すことによってホワイトレグホン種の鶏卵で研究した。
No adverse effects were detected after 2- and 9-day lasting incubation in zero
magnetic field yielded by compensation method in a special computer-controlled
space.
コンピュータ制御の条件下で比較を行うことで、地磁気がない状態で、2日と9日間の孵化期間後は、異常がないことが判った。
Prevalence of malformed and dead embryos, malformation spectra as well as stage
distribution and mean weight of normal foetuses were
found similar in control and experimental groups.
奇形の傾向、鶏卵の死、奇形の段階と分布、正常な胎児の体重は対照群と実験・曝露群では同じであった。
We may conclude that magnetic field deprivation exerts no influence upon the chick embryo development.
地磁気の欠乏は鶏卵の発育に影響を及ぼさないと結論付けることができるかもしれない。
本文を読むと、鶏卵の孵化条件は、37.5+/-0.5℃となっている。
incubated parallely at 37.5℃:
within practical limits +/- 0.5℃:
入手した原著はテキストのみで、図表・データがかけているので、対照群・実験群にどの程度の奇形などの発生率があったのかは不詳である。
以下の研究がある。
掲載誌:2002年度BEMS年次総会予稿集
タイトル:STATIC MAGNETIC FIELD HAS LITTLE EFFECT FOR GENE
EXPRESSION AND LIGATION EFFICIENCY IN INVITRO.
静磁界は遺伝子発現とインビトロにおける結紮効率に影響しない。
研究者:T. Nakahara, M. Yoshida, J. Miyakoshi.
Department of Radiation Genetics, Graduate School of Medicine, Kyoto
University, Kyoto 606-8501, Japan.
注:ligation:結紮(けっさつ)は、医療においては、外科的処置の際に用いられる身体の一部や医療機器を縛って固定する技術のこと。字の意味は「むすび、からげる」ことであるが、医療においては特定の技術を示す。
OBJECTIVE: 目的
Firstly, we attempt to clear whether strong SMF can affect a specific gene
expression.
We have done DNA microarray analysis.
最初に我々は強い静磁場が特定の遺伝子発現に栄養するかを明らかにすることにした。
我々はDNAマイクロアレイ解析を用いた。
Then, one of gene expressions changing by exposure to strong SMF is analyzed by
RT-PCR and western blotting.
To clear mechanisms enhancing the X-ray-induced micronucleus formation by
exposure to strong SMF, we have examined effects of SMF on ligation reaction in
in vitro.
そして、強い静磁場への曝露によって遺伝子発現が変化した遺伝子を、PT-PCR法で解析を行った。
X線で誘導された微小核形成が強い静磁場曝露によって強調されるメカニズムを明確にするために、インビトロにおける結紮効率の静磁場による影響を検討した。
METHODS: To assay the change of gene expression, we used UniGEM
Human V Ver. 2.0 (IncyteGenomics) as a DNA
microarray.
方法:遺伝子発現の変化を解析するために、我々は、DNAマイクロアレイとしてUniGEMを使用した。
Human glioma cell line MO54 after SMF-exposure or sham exposure (6 hours) were
used as a mRNA source.
静磁場曝露もしくは疑似曝露後に、ヒト神経膠腫由来の細胞株MO54を、mRNAのソースとして使用した。
CONCLUSIONS: We found a little difference in gene expression by using DNA
microarray analysis.
These data suggest that strong SMF, up to 10T, had a little biological effect
in cultured cells.
結論:我々は、DNAマイクロアレイ解析を使うことで、遺伝子発現に小さな変化を見出した。
この結果は、10Tに及ぶ強い静磁場は、細胞の培養の中で、小さな生体影響があることを支持している。
記:2020−3−2
以下の研究がある。
この研究では60Hzの強磁場におけるゾウリムシの動きも研究されているが、ここでは以下の定常磁場(直流磁場)に関する部分のみを、抜粋して紹介する。図は全て割愛。
掲載誌;臨床環境医学第14巻2号 2005
タイトル:原生生物における電磁場の影響
研究者:中岡 保夫
1)はじめに
人間のつくりだした電磁場環境が、ヒトをはじめとする生物にどのような影響を与えるのか不明な点が多い。ここでは電磁場が原生生物の一種ゾウリムシの遊泳行動に影響した例について述べ、その作用の仕方を考察する。
ゾウリムシは長さ0.2mmほどの単細胞生物で、細胞表面に数千本の繊毛が生えでおり多数の繊毛が協調して打つことにより水中を泳ぎ回る。
3)定常磁場の影響
定常磁場の場合、うず電流は発生じなむもので磁場だけの影響を見ることができる。
そこでまず定常磁場でも変動磁場と同じようにゾウリムシが容器の上部に集まるかどうかを調ぺた。図1と同じ配置で磁極に永久磁石(ネオマツクス、住友特殊金属)を用い、平行磁場の強度0.68T中のゾウリムシの泳ぎを観察した。
しかし、変動磁場で見たように上部に極端に集まることはなかった。
次に定常磁場中のゾウリムシの泳ぎを、ゾウリムシの種類、培養時期、外液の組成なだを変えて観察した。
その結果、培養初期のゾウリムシをK+濃度の低い液に入れ、膜電位を過分極状態に保ち、ゾウリムシがほとんど自発的な方向変換をせず直進して泳ぎ続けるような条件にすると、ゾウリムシは磁場と垂直の向きに泳ぐことが見つかった(図3)。
磁場をかけ始めた時のゾウリムシの泳ぎを見ると、初めいろいろな向きに泳いでいたゾウリムシが徐々にその向きを変え数秒以内で磁場方向に対し垂直の向きになってそのまま直進する。
ゾウリムシが磁場に対し垂直方向に泳ぐ理由として、我々はゾウリムシの細胞内器官がもつ反磁性のためではないかと予想した。
繊毛の中にある微小管は、その構成ユニットのチエ‐プリンが重合して長い管状の構造を形成している。このような重合体の場合、強い磁場の中に置かれると構成ユニットの反磁性が加算され、重合体の長軸方向に外部磁場と反対向きの反磁性が生まれ外部磁場と平行に並ぼうとする。
ゾウリムシは、数千本の繊毛が細胞表面に並んで生えでいるので、反磁性がさらに加算きれゾウリムシの泳ぎに影響することが予想される。
またゾウリムシの細胞膜直下には、トリコシストと呼ぼれる一種の刺胞(ピ―ル瓶型の袋の中に蛋白ユニットが準結晶状態につまっている)が細胞の膜面に対し垂直向きに多数配列しでおり、これも反磁性を持つことが予想される。
そこでゾウリムシから繊毛(長さ10μm)とトリコシスト(長さ4μm)を分離しで集め、それぞれ0.7Tの定常磁場の中に入れ顕微鏡で観察した。
すると、繊毛とトリコシストは、ブラウン運動のために常にその向きを変動きせているが、多数の繊毛とトリコシストの磁場方向に対する角度を測定しその分布を調べると、いずれもその長軸を磁場方向と平行にしで並ぶものが多かった(図4)。
ゾウリムシは一匹あたり数千本の繊毛とリコシストを持ち、細胞の形は細長い楕円体に近いので、多数の繊毛とトリコシストは細胞の長軸に封し垂直方向に向いている。
したがって、定常磁場の中で細胞の長軸が磁場と垂直方向に向いた時に多くの繊毛とトリコシストが磁場と平行に並び安定な状態になるので、自発的な方向変換をせず直進して泳ぐ場合には、磁場方向に対し垂直の方向に泳ぐと考えられる(図5)。
繊毛やトリコシストの持つ反磁性が加算されて磁場方向と垂直向きに泳ぐのであれば、変動磁場中でも定常磁場と同じように磁場と垂直向きに泳ぐと予想される。
ところが、変動磁場(0.65T60Hz)によってゾウリムシの泳ぎ方向は全く影響されなかった。
定常磁場の場合、0.6Tでも磁場方向と垂直の向きに泳ぐので、磁場強度が弱いせいではない。
変動磁場では常に磁場の向きが逆転し、同時に磁場強度が変動しているので、ゾウリムシ細胞に生じる反磁性も常に変動する。
そのために泳ぎの向きを変えるほどの力にはならないのであろうか。
しかし、変動磁場であっても磁場の方向は変わらないので、定常磁場と同じく磁場と垂直向きに泳ぐように反磁性は働くと予想されるが、そうはならない。
変動磁場と定常磁場との影響を比較すると、まだよく分からない問題が残されている。
ここでみたゾウリムシの泳ぎに影響する磁場の強さは地球磁場の五万倍程度である。
これほどの強い磁場は普通自然界で出会うことはないので、ゾウリムシにとって生理的に意味のあることではないかもしれない。
しかし、超伝導磁石などによる強い磁場環境下では、細胞とか細胞内小器官が磁場によって配向し、そのために細胞の生理的機能に何らかの影響の出る可能性があることを示している。
記:2020−7−9
以下の研究がEMF Portalのサイトに紹介されている。
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掲載誌: Biophys J 2000; 78 (2):
707-718
タイトル:A model for photoreceptor-based magnetoreception
in birds
鳥類における光受容器に基づく磁覚のモデル
研究者: Ritz T, Adem S, Schulten K
多くの動物が地磁気を感知する能力を持っており、方向付けの情報源として、地磁気を利用している。
この磁覚についての生物物理的機序は未知のままである。
磁覚がラジカルペアプロセス、(不対)電子と核スピンとの間の異方的なハイパーファイン・カップリングで支配されていることを調べた。
理論的には、地磁気程度、または弱い磁界が磁界に対してラジカルペアが違った方位付けで有意に違った反応場を生じることをしめした。
磁覚器のモデルとして、ラジカルペアが、1) 分子基質で秩序だって方向付けされている、2) 視覚伝達経路に影響するような反応場での変化を示している様な系を提案。
ラジカルペアの系に対する地磁気の影響を示すような3次元パターンを評価した。
地磁気の方向、強度で変化するパターンを、鳥の磁気コンパス能を行動実験で見られる同じような特徴で調べた。
最近見出された光受容体のクリプトクロムが、磁覚器の一部であると提案し、この仮説をさらに研究する必要がある、と著者らは主張している。
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記:2024−11−25
以下は筑波大学のサイトにあった情報の一部
https://www.px.tsukuba.ac.jp/~onoda/ssh/node33.html
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鳩の磁気コンパス
花の蜜を吸ったミツバチは数km離れた巣箱に帰り着く.伝書バトは数百km離れた場所で放されても,かなりの確率で鳩舎に戻ることができる.
多くの渡鳥は,繁殖地と越冬地の間の長い距離を毎年移動する.
このような,長距離にわたる帰巣や移動の例は動物界では広く知られている.
では,動物たちは,何を道しるべに,長い道のりを移動できるのであろうか?
この疑問は現在までの時点では未解決であるが,どのような可能性が指摘されているかを、伝書バトを例にして考えてみることにする.
まず,伝書バトの帰巣にさいしては,太陽が見えるときには,太陽コンパスを主として用いる、曇天下では入射光の偏光電磁ベクトルを検知して,直接には見えない太陽の位置を知る太陽光偏光コンパスを用いる.磁気コンパス,聴覚,嗅覚を総合的に利用する.
鳩舎の近くまでくると,視覚をたよりに目標に到達する.と考えられている.
図 4.6: 鳩の帰路調査における磁場の影響.鳥が飛ぶとき,地球の磁気を利用して方位を決めるという「磁場説」は1世紀以上前に提唱された仮説だが,初期の実験で,鳩に磁石を取り付けたときに帰巣の定位が防げられることを立証できなかったため,最近まで否定されてきた.
しかし,最近の実験では,棒状磁石をつけた鳩が,完全に曇っている日に見知らぬ場所で放されると定位できないが,太陽が見えるときには定位できることがわかった.
黄銅製の棒を取り付けた鳩では晴れていても曇っていても,姿を消す平均的方向はほとんど違いがない.
黒丸は各個体が姿を消す方角(観察者が双眼鏡を使って判断した方角),破線は実際のすみ家の方角,矢印はテスト群の鳥全部の平均ベクトルを示す.
平均ベクトルの長さは,テスト群の鳥の間で方位選択が一致する程度を統計的に表したものである.完全に一致した場合にはベクトルの長さは円の半径と一致する.
飛び去る方角がばらばらであるほどベクトルは短い.
ヴィグァイァーは1882年に鳥は渡りにおいて磁気コンパスを利用している可能性を指摘したが,初期の実験では鳩に磁石を取り付けたときに帰巣の定位が妨げられることを立証できなかったため,最近まで否定されてきた.
しかし1969〜1973年キートンらによって図4.5(本引用では割愛)に示すように,無線による鳩の帰路を決定する方法が確立された.
この実験で,棒状磁石をつけた鳩が,完全に曇っている日に見知らぬ場所で放されると定位できないが,太陽が見えるときには定位できることがわかった.
図4.6にその結果を示すが,晴れた日には磁石をつけた鳩もダミーである黄銅棒をつけた鳩も破線で示すすみかの方角へ飛び立つが,曇った日ではダミーをつけた鳩は晴れた日と同様にすみか方向を目指すのに対して,磁石をもった鳩はてんでばらばらの方向へ飛び出すことがわかる。
略
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BEMSJのまとめ:
直流磁界・磁石が鳩の帰巣時の方向検知は、太陽光と地磁気、聴覚、臭覚などの総合判定によるもので、
曇天時のように太陽の位置を検出できない場合は、地磁気の検知などで行うために、直流磁気の影響を受けやすくなる、ということの要である。
記:2020−10−26
以下の研究がある。
1) その1:1992年の研究
掲載誌:獣医情報科学雑誌No.29、13-15 1992年
タイトル:牛精子の生存率に及ぼす静磁場の影響
研究者:新城明久、内村正幸
要約
牛の人工授精に用いられている凍結精液を溶解し、8倍に薄め、20℃で1,600ガウスの静磁場を8時間にわたり経時的に照射した。
精子の生存率は対照区に比較し、7時間後はやや高くなり、8時間後は有意に高くなった。
このことから磁場が精子に延命効果を及ぼすことが示唆された。
本実験から、磁力によって精子の運動や生存時間などが制御できるならば、凍結精液の製造に関して磁場の利用という可能性が示唆された。
2)その2:1995年
掲載誌:日本応用磁気学会誌19、 872-874 (1995)
タイトル:牛精子の生存率と運動性に及ぼす弱い定常磁場の影響
研究者:菅大助、新城明久、西川周一、千葉好夫
新城と内村が、牛凍結精液の融解後、20℃で1,600Gauss(G)磁場に連続8時間曝露し、7時間と8時間後で曝磁区の生存率が有意に高くなることを認め、静磁場が精子に対して延命効果を及ぼすことを報告した。
しかし、1頭からの精子であったため、本実験では例数を増やし、曝磁温度も4℃、20℃、および38℃とし、牛精子の生存率と運動性に対する静磁場の影響を調べたので報告する。
5. まとめ
牛凍結精液融解後の精子の生存率と運動性に対する弱い定常磁場の影響を調べた。
実験は4頭の種雄牛を用い、1種雄牛当たり4ストローを実験に用いた。
曝磁は1,000Gのアルニコ永久磁石を用い、温度条件は4℃、20℃および38℃で曝磁した。
生存率算定はエオシンB染色法で行い、運動性はコンピュータ精子運動解析システムCellSoft 3000を使用した。
実験の結果、生存率は、4℃で8時間後、20℃で6と8時間後、38℃で2と4時間後に曝磁区が対照区と比べて有意に高かった。
運動率は、38℃で1時間後にのみ有意差が認められた。
平均運動速度では有意差が認められなかった。
このことから、弱い定常磁場は精子生存率に対して効果を及ぼすが、運動性に対する影響はほとんど無いことが示唆された。
以下の研究がある。
この研究論文はPubmedにも、EMF Portalにも採録されていない。学会の口演録である。
掲載誌:31st Congress on Science and Technology of Thailand
at Suranaree University of Technology, 18 – 20 October 2005
タイトル:EFFECT OF ELECTRIC FIELDS ON MEDIAN NERVE
CONDUCTION VELOCITY
正中神経伝導速度に及ぼす電界の影響
研究者:Weerasak Ussawawongaraya, Woravit
Rattanawong and Soawanee Loahalidanond
Abstract: 概要
The aim in this study is to investigate the effect of static electric fields on
median nerve conduction velocity.
本研究の目的は、静電界が正中神経伝導速度に及ぼす影響を調べる事である。
Exposures both horizontal and vertical directions at various static electric
field strengths of 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0 and 2.5 kV/m to the
median nerve of the left forearm were examined in this research.
この研究では、左前腕の正中神経に対する0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5kV/mの様々な静電界強度(水平および垂直方向の両方)の影響を検討した。
Statistical significance at only 2.5 kV/m of the horizontal direction is
obtained.
水平方向の2.5kV/mの場合のみ、統計的有意な影響が見られた。
Comparison with pre-exposure, median nerve conduction velocity significantly
decreases immediately for post-exposure.
曝露前に比べて、正中神経伝導速度は、暴露後に直ちに有意に低下した。
It may be due
to the fact that intracellular ions move into its opposite charges
corresponding to each capacitor plates and cause the loose of membrane
integrity.
細胞内イオンが各コンデンサ電極に対して逆向きに電荷が移動して、膜完全性の緩みをもたらすことによるものかもしれない。
In addition, when each of pre-exposure was compared, it was found that the
increase of the amount of exposure causes the increase of median nerve
conduction velocity.
また、曝露前を比較して、曝露量の増加が正中神経伝導速度の増加を引き起こすことが分かった。
This effect is
possibly due to median nerve acclimatization to electric fields. The benefit of
this study may be used for nerve rehabilitation in physical therapy.
この効果は、おそらく電界に対する正中神経順応によるものでしょう。この研究の利点は、理学療法における神経リハビリテーションに利用できるかもしれない、ということです。
記:2023−1−14
以下はネットで紹介されている原文ロシア語の研究の概要の紹介
PubmedにもEMF Portalの日本語版にも紹介はない。
掲載誌:Biology bulletin of the Academy of Sciences of the
USSR Published 1979
タイトル:Biological
effect of a hypogeomagnetic environment on an
organism.
生物に対する低地磁気環境の生物学的影響。
研究者:V. Kopanev, G. D.
Efimenko, A. V. Shakula
In an age of a scientific and technical revolution, when many operators work in
structures shielding the geomagnetic field (GMF) by a factor of 100 or more,
the urgency of this problem is shown.
科学技術革新の時代で、多くの作業者が地磁気(GMF)を100倍以上遮蔽する構造物で作業する場合、この問題の緊急性をしめす。
To study the effect of a hypogeomagnetic environment
on warm-blooded organisms, series of experiments were conducted on rabbits that
passed through entire embryogenesis and grew to an age of one month in a
shielded chamber where the GMF was reduced by a factor of 600.
温血生物に対する低地磁気環境の影響を研究するために、地磁気を600分の1に減少した遮蔽室で全胚発生をえて、1ヶ月齢に成長したウサギで一連の実験が行われた。
The results obtained confirm that the effect of the GMF is needed for normal
development of the organism.
得られた結果から、地磁気の効果が生物の正常な発達に必要であることが確認された。
Degenerative disturbances in the liver,
myocardium, and gastrointestinal tract were noted in animals reared in a
reduced GMF.
肝臓、心筋、および胃腸管の変性障害は、低下した地磁気環境下で飼育された動物で認められた。
Structural and energy metabolism are disturbed, and the marked inhibition of
activity of the investigated enzymatic systems, except the glycolytic, is
shown.
構造的およびエネルギー代謝が乱され、さらに、解糖系を除く調査対象の酵素系の活性の著しい阻害が示された。
Changes in the motor activity of the experimental animals and insufficiency of
the neuromuscular apparatus were revealed.
実験動物の運動活動の変化および神経筋装置の機能不全が明らかにされた。
The mortality rate among the experimental animals was statistically higher than
for the controls.
実験動物の死亡率は対照動物よりも統計的に高かった。
The authors raise the question of the need for further comprehensive
investigations of the established effects of the hypogeomagnetic
environment.
著者らは、低地磁気環境の確立された影響のさらなる包括的な調査の必要性を提起する。
記:2023−2−23
以下の研究がある。
掲載誌: Electron Physician 2016; 8 (1): 1701-1710
タイトル:Evaluation of mouse embryos produced in vitro
after electromagnetic waves exposure; morphometric study
電磁波曝露後にインビトロで発生させたマウス胚の評価:形態学的研究
研究者: Rostamzadeh A,
Mohammadi M, Ahmadi R, Nazari A, Ghaderi O, Anjomshoa
M
この研究は、1.5TのMRI装置内で電磁波曝露した雌雄のNMRI(Naval Medical Research Institute)マウスを曝露終了後に体外受精(IVF)のために屠殺し、その受精率および発生した胚の形態への影響を調べた。
妊娠を確認したマウス(NMRIマウス、n=80)を同数ずつの曝露群と対照群に分け、MRI曝露は、36分間/日、1日/週で3週間実施した。
屠殺およびIVFは、曝露終了後の1日目、または35日目に実施した。
その結果、1)曝露後1日目のIVFの場合、胚の全直径、細胞質直径などの形態および受精率に影響が観察された、2)35日目の場合には有意な影響は見られなかった、と報告している。
Full Textを読むと曝露状態が判る。
・使用したMIRはジーメンス製、1.5テスラ、高周波電磁波は64MHz
・以下に曝露風景を示す。
記:2023−3−27
掲載誌: Oman Med J 2019; 34 (6): 544-552
タイトル;Biological Effects of Magnetic Resonance Imaging
on Testis Histology and Seminiferous Tubules Morphometry
精巣の組織学及び精細管の形態計測に対する磁気共鳴画像撮影の生物学的影響
研究者: Rostamzadeh A, Anjamrooz
SH, Rezaie MJ, Fathi F, Mohammadi M
この研究では、マウスの精巣組織学及び精細管の形態計測に対する、磁気共鳴画像撮影(MRI)の電磁波(1回あたり36分間、週1回、3週にわたる)曝露の影響を調べた。
マウスの成獣40匹を4群に割付け、第1群(最後の非曝露露の1時間後の対照群)、第2群(最後の曝露の1時間後の曝露群)、第3群(最後の非曝露の35時間後の対照群)、第4群(最後の曝露の35時間後の曝露群)とした。
精細管及び管腔の直径、ならびに精細管の上皮の厚さを調べた。
その結果、第2群では第1群と比較して、精巣重量の部分的な減少が認められた。
ジョンソンスコア(スコア10、完全な精子形成及び完全な尿細管)については、第1群、第3群、第4群(それぞれ91.4%、92.2%、90.5%)と比較して、第2群(87.5%)では僅かに低かった。第2群では上皮の空胞化、パキテン期の初代精母細胞の停止、ならびに精巣実質の破壊が認められた、と著者らは報告している。
Full Textを見る。
・曝露条件は、2016年論文に記載に同じ。
BEMSJ注:
MRIは電磁波曝露と同時に、ものすごい騒音に曝露される。この騒音の影響かもしれない。
騒音の影響がないような電磁波だけの曝露条件下での再現実験は可能であろうか????
記:2023−2−28
掲載誌:Neurosccience Letters
Vol.76. Issue 1, 23 April 1987 P 25-31
タイトル:Magnetic resonance imaging temporarily alters blood-brain barrier permeability in the rat
MRI磁気共鳴画像法はラットの血液脳関門透過性を一時的に変化させる
研究者:R. R. Shivers, M. Kavaliers, et al;
Exposure to a short (23.2 min) standard clinical magnetic resonance imaging (MRI) procedure elicits a temporary dysfunction of the blood-brain barrier in rats.
短い(23.2分)時間の標準的な臨床磁気共鳴画像法(MRI)検査の曝露は、ラットの血液脳関門の一時的な機能障害を誘発します。
Monitoring of the increased permeability of rat brain frontal cortex microvessels with the protein tracer horseradish peroxidase
and freeze-fracture electron microscopy, revealed an amplified vesicle-mediated
transport of tracer across the microvessel
endothelium to the albuminal basal lamina and
extracellular compartment of the brain parenchyma.
タンパク質トレーサー西洋ワサビペルオキシダーゼおよび凍結破壊電子顕微鏡によるラット脳前頭皮質微小血管の透過性の増加をモニタリングすると、微小血管内皮を越えてアルブミン基底層および脳実質の細胞外コンパートメントへのトレーサーの増幅された小胞媒介輸送が明らかになりました。
Recovery of normal blood-brain function, as evidenced by exclusion of protein
tracer from subendothelial basal lamina and neuropil extracellular milieu, was
complete 15 30 min following cessation of the MRI exposure.
内皮下基底膜およびニューロパイル細胞外環境からのタンパク質トレーサーの除外によって証明されるように、正常な血液脳機能の回復は、MRI曝露の停止後15〜30分で完了した。
These findings raise the possibility that exposure to clinical MRI procedures
may also temporarily alter central blood brain permeability in human subjects.
これらの検出は、臨床MRI処置への曝露がヒト被験者の中枢血中脳透過性を一時的に変化させる可能性も提起している。
記:2023−3−25
掲載誌: Magn Reson Imaging 1987;
5 (2): 129-135
タイトル:The effect of magnetic resonance imaging on human
cognition
ヒトの認知に対する磁気共鳴画像の効果
研究者:: Sweetland J, Kertesz A, Prato FS, Nantau K
MRI処置に関連して安全性に問題が存在する可能性についての懸念により、ヒトの認知に関するMRI曝露の潜在的な影響の調査を行った。
157名のボランティアの被験者をランダムに、画像撮影、擬似画像撮影、非画像撮影の対照条件に割り当てた。
以下の心理テストが処置前、処置後、そして追跡調査時に二重盲式で実施された。
ウェクスラー成人知能検査(改訂版)(行列推理、積み木模様および符号)、ウェクスラー記憶検査、ベントン視覚記銘検査、ヴァンデンバーグ心的回転試験、スターンバーグ記憶走査パラダイムおよび状況不安検査である。
総合的な分析結果では、0.15TのMRIでは評価した認知機能に対して有意な影響はなかった。
記:2023−3−1
掲載誌: Brain Res 1990; 523 (2): 301-304
タイトル:Magnetic resonance imaging increases the
blood-brain barrier permeability to 153-gadolinium
diethylenetriaminepentaacetic acid in rats
磁気共鳴画像法はラットの153-ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸の血液脳関門透過性を上昇させる
研究者:Prato FS, Frappier JR, Shivers RR, Kavaliers M, Zabel P, Drost D, Lee TY
この研究では、ラットを用いて、標準的な臨床的磁気共鳴画像法(MRI)の撮像時の曝露が、血液脳関門(BBB)透過性を変化させるか否かを調べた。
ラットに、連続した2回の23.2分間のMRI曝露を行い、2回の曝露の間に、放射性標識されたジエチレントリアミン五酢酸([153Gd]
DTPA)を心臓内注射した。
2回目の23.2分間の曝露終了から1時間後に、MRI曝露群(n = 21)と擬似曝露群(n = 22)における[153Gd] DTPAの滞留量を比較した結果、曝露群の方が、擬似曝露群に比べ、有意に高かった(29 %、P = 0.006)、と報告している。
記:2013−3−20
掲載誌: Ann N Y Acad Sci 1992;
649: 345-349
タイトル:Permeability of the blood-brain barrier of the rat
is not significantly altered by NMR exposure
ラットの血液脳関門の透過性はNMR(MRI)曝露によって有意な変化はみられない
研究者: Liburdy RP, de Manincor DJ, Roos MS, Brennan KM
この研究は、ラットの血液脳関門(BBB)に対するNMR(MRI)磁界曝露の影響を調べた。
このような影響に関しては、ポジティブおよびネガティブな結果がそれぞれ数件報告されているが、この研究ではそれら先行研究で採用された実験手法を吟味して、実験デザインを決定した。
すなわち、実験には、SDラットを用い、音響曝露を対照とし、ウシ血清アルブミンをBBB透過性マーカとし、NMR磁界曝露の直後に脳のin situ灌流を行った。
麻酔には、脳血流への影響を考慮して、ケタミンを用いた。
その結果、2.35 TのNMR(MRI)磁界はラットのBBB透過性に何も変化を起こさないことが示された、と報告している。
BEMSJ注:
MRIは電磁波曝露と同時に音響的に大きな騒音に暴露する。ラットをMRIに曝露した場合は、それらが同時に暴露するので、電磁波の影響か、音響・騒音の影響か判然としない。
Full Textを読んでいないので断定はできないが、この研究では対照群に音響曝露、曝露群は電磁波曝露で実験を行い、電磁波(磁界)の影響はないと報告している。
記:2023−3−25
掲載誌: Microsc Res Tech 1994;
27 (6): 528-534
タイトル:Blood-brain barrier permeability in rats is altered by exposure to magnetic fields associated with magnetic resonance imaging at 1.5 T
ラットの血液脳関門の透過性は1.5 TのMRI磁界ばく露で変化する
研究者: Prato FS, Wills JM, Roger J, Frappier H, Drost DJ, Lee TY, Shivers RR, Zabel P
目的:磁界曝露によるBBBの上昇が低周波磁界でしか見られないのは実験条件の差によるものか否かを検討するため、放射性標識物を用いて1.5Tという高い磁界に曝露した時のBBBの透過性を検討する。
方法:ラットを麻酔下に22.5分、磁界に曝露し1MBqの153^Gd-DTPAを静注し、再度22.5分磁界に曝露し、1時間後にラットを屠殺し、Brain blood partition coefficientを算出し、BBB透過性を検討した。
1群は1.5T磁界で勾配が2.8T/s、ラジオ周波数が0.03W/kg、2群では1.5T磁界で勾配が1.4T/s、ラジオ周波数が0.1W/kg、3群は1.5T直流磁界、4群は1.89Tの直流磁界とした。
結果:1群はBBB透過性が上昇した。一方、2群は透過性が低下した。
3群と4群、1.5Tの直流磁界および1.89Tの直流磁界の曝露でBBBの透過性が上昇した。
記:2023−3−26
掲載誌: Ann N Y Acad Sci 1992;
649: 44-58
タイトルExtremely low frequency magnetic field exposure
from MRI/MRS procedures. Implications for patients (acute exposures) and
operational personnel (chronic exposures)
MRI/MRS治療における超低周波磁界への曝露。患者(急性曝露)および操作者(慢性曝露)に対する影響
研究者:Prato FS, Kavaliers M, Ossenkopp KP, Carson JJ, Drost DJ, Frappier JR
この論文には概要にあたる記述がなく、判りにくい。
以下はFull Textの中の結論を述べている個所を仮訳して紹介する。
In conclusion, given the present concern regarding the possible harmful effects
of chronic ELFMF exposures, it is important to address whether or not such
exposures are of any concern in MRI/MRS.
結論として、慢性ELFMF曝露の有害な影響の可能性に関する現在の懸念を考えると、そのような曝露がMRI / MRSで懸念されるかどうかに対処することが重要です。
Even if ELFMF chronic exposures are harmful, evidence from our laboratory
suggests that acute exposures experienced by the patient should not be a
concern.
ELFMFの慢性曝露が有害であっても、私たちの研究室からの証拠は、患者が経験する急性曝露は心配すべきではないことを示唆しています。
Such brief exposure to ELFMF produces small effects that appear to be
reversible.
ELFMFへのこのような短時間の曝露は、可逆的であるように見える小さな効果を生み出します。
However, at this time, it would be prudent to limit chronic exposure to strong
ELFMF.
ただし、現時点では、強いELFMFへの慢性曝露を制限することが賢明です。
From our assessment, the ELF magnetic fields from MR systems drop off more
quickly than the static magnetic fields.
私たちの評価から、MRシステムからのELF磁場は静磁場よりも速く低下します。
Consequently, the MRI/MRS operator may be protected from significant ELFMF
exposure.
その結果、MRI / MRSオペレータは、ELFMFの重大な曝露から保護されるであろう。
Of course, considerably more research work must be done to firm up these
suggestions.
もちろん、これらの提案を確固たるものにするには、かなり多くの研究作業を行う必要があります。
The time course and recovery of the [Ca2+], changes as
a function of ELFMF exposure must be determined and additional measurements of
the ELFMF falloff distances from the magnet must be made, particularly for the
combination of unshielded magnets with unshielded gradient coils.
[Ca2+]イオンの時間経過と回復、ELFMF曝露の機能としての変化は確定されなければならないし。また、特にシールドされていない磁石とシールドされていない勾配コイルの組み合わせについては、磁石からのELFMFフォールオフ距離の追加測定を行う必要があります。
記;2023−3−22
1)使用する電磁波
MRIには3種類の電磁波、強い静磁界、高周波磁界、傾斜磁界(スキャナ内側の位置により強さが違う磁界)が使われる。
2)MRIから発生する電磁界の安全性について
・強い静磁界:
心臓ペースメーカなど植え込み型医用電子機器や、金属製の外科用クリップなどのインプラントは静磁界など磁界の影響を受ける可能性があります。
そのため、検査前に患者の検査適応について十分なチェックが必要です。
また、磁界は磁性体に力をおよぼします。
そのため、工具などの鉄製品などは強磁界の力を受けて磁界の方向に高速で移動・飛びます。
人体への直接的影響ではありませんが、MRI検査室内では注意が必要です。
・高周波磁界
人体の組織は高周波磁界エネルギーを吸収すると温度が上昇します。
しかし、通常のMRI装置の高周波磁界曝露レベルでは国際的なガイドライン値を上回る温度上昇はありません。
・傾斜磁界(約1kHzのオンオフ切替磁界)
オンオフの切替時に磁界が急激に変動するため、体内に比較的大きな誘導電流が生じ、末梢神経に刺激作用を起こすことが考えられます。
このため、MRI製造者を統制する国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)の基準により、患者と医療スタッフが末梢神経刺激を受けないように設計することが定められています。
3)MRIが関係するガイドライン
・患者の曝露
MRIは医療上の目的で使用される機器のため、患者の曝露について国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインは適用されません。
しかし、医療上の利益を考慮しつつ、患者の保護を確保するため、2014に発行されたICNIRPガイドライン(静磁界および時間変化する1Hz未満の磁界内での人体の動きにより誘導される電界への曝露を制限するためのガイドライン)は、患者の静磁界への全身曝露上限値は4テスラとすることを推奨しています。
この値までは胎児や乳児への影響を含め、有害な影響の確実な証拠がないことがその根拠です。
一般的なMRI装置はこれに準拠しています。
また、強磁界中で頭部を動かすと、めまいや吐き気などの急性症状が現れることが知られています。
これは急激な動作で一過性に生じた誘導電流が原因と思われるため、患者はMRIの近くやスキャナ内で動作をゆっくりするように指導されます。
・医療スタッフの曝露に関して
ICNIRPの静磁界ガイドラインの職業的曝露限度値は、頭部および体幹部では2テスラ、四肢では8テスラです。
ただし例外として、管理や教育、訓練が行われている職場では全身曝露限度値として8テスラまでを認めています。
MRI検査室もこのような職場に該当します。
記:2023−6−16
以下はMRIの高周波電磁界への曝露の研究ですが、この頁:直流電磁界の頁のMRI関連の項に、掲載する。
掲載誌: Magn Reson Med 2022; 88
(3): 1434-1449
タイトル:Evaluation of specific absorption rate and heating
in children exposed to a 7T MRI head coil
7TのMRI頭部コイルに曝露された子どもにおける比吸収率および加熱の評価
研究者: Malik SJ, Hand JW, Carmichael DW, Hajnal JV
この研究は、磁気共鳴画像撮影(MRI)用の7T頭部コイルへの小児の曝露によって生じる比吸収率(SAR)および温度分布を調べた。
297MHzのバードケージ型送信コイル(CPモード単一チャネル送信)からの曝露を、複数の子どものモデル(3-14歳、13.9-50.54 kg)および1種類の成人のモデルでシミュレートした。
位置のばらつき、誘電特性の年齢に関連した変化、体温調節の差異も考慮した。
その結果、年齢で調整した誘電特性の影響はほとんどなかった。
頭部平均SAR(hdSAR)がコイル中心での全てのモデルに対して制約要因であった。
平均hdSAR(正味電力で標準化)は体重増加と共に線形に減少することが示された。
空間平均化した10gあたりSAR(psSAR10g)には同様の関連は認められなかった。
各直交方向での位置の±25 mmのシフトに対し、hdSARの比較的小さい(< 10%)ばらつきが認められた。
位置に対する感度はpsSAR10gの方が大きかったが、大半の場合、hdSARが依然として制約量であった。
熱的シミュレーションでは、血液温度が一定の場合(即ち、体温調節が良好と仮定)、最大温度は国際電気標準会議(IEC)の60分間の曝露に対する限度値に適合した。
ばらつきのある血液温度の導入は全身平均SARに応じた深部体温の変化につながり、全ての子どもモデルでガイドラインの限度値を超過した。
この研究では、297MHzの頭部送信コイルからの曝露に対し、子どもには成人よりも高いSARが生じることが示された。
熱的シミュレーションでは、小柄な被験者には深部体温の変化が生じ得るが、実験データの検証が必要であることが示唆された、と著者らは報告している。
注:Full Textも見たが極めて難解。
記:2024−11−23
1)上野らの研究
BEMSJは2000年頃だったか、九州での何かの学会かセミナーに参加した時に、上野教授らの実験室で、非常に強ければ直流磁界で水の流れが止まる現象を見たことがある。
厳密な学術報告書としては以下がある。
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掲載誌:日本応用磁気学会誌 20, 513-516 (1996)
タイトル:磁場による非磁性液体の表面・界面形状制御一増強モーゼ効果の観測とその機構ー
研究者:廣田憲之・岩坂正和・上野照剛ら
はじめに
勾配磁場中に置かれた磁性体にはその体積磁化率xと,その場所での磁場の大きさと磁場勾配の積(HdH/dH)に比例する力が働くことは良く知られた事実である.
しかし,従来容易に扱うことのできた磁場はlテスラ程度の弱いものだったために,水などの磁化率の極めて小さな物質では勾配磁場の効果が無視されてきた.
ところが,最近の超伝導磁石技術のめざましい発達により広い空間に強磁場を発生させることができるようになってきたことで,ほぼ非磁性と考えられていた物質においてさえも磁場の効果が無視できない大きさに達することが認識されるようになった.
1991年,BeaugnonとTournierは27テスラという強磁場を用いて水などのいくつかの反磁性物質を浮上させたし、さらに,上野らは超伝導磁石のボア内においた容器の中の水の表面形状が8テスラの強い磁場を印加することで2‐3cm変化するモーゼ効果を初めて見いだした。
我々のグループでは,この現象に関連してこれまでに,超伝導磁石のボア内におかれた水槽中の液体の形状を観測する装置を試作し,磁化率の異なる数種の水溶液を用いて,その定常勾配磁場下における静的な形状分布を銀測し,定量化してきた。そしてその中で,ほぽ非磁性の2液体によって形成される界面の形状が磁場によってどのように影響されるかに関心をもち,その解明を本研究の目的とした.
現象の本質は,用いる2液体の密度を近づけることで界面における重力のエネルギーを極めて小さくし,永久磁石の弱い磁気エネルギーと同程度の大きさにすることができたことにある.
以上に得られた知見は,2液以上の界面を利用する,溶媒抽 出などの化学プロセスにおいて,その反応制御に用いることも考えられる.
また,生体内では異なる液体が柔らかい膜などを介して接触する領域がある.本研究は,このような生体内の界面が,永久磁石で得られる弱い磁場でも変形する可能性を示唆するものでもあり,生体に対する磁場の影響を考える上でも菫要な知見と考えられる.
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非常に難解で、BEMSJにも難易である。簡単な解説は書けない。
ただ、非常に強ければ直流磁界が水の流れに影響するほどの効果があることは確かである。
2)ネオマグ(株)のサイトにあったわかりやすい解説を引用する。
https://www.neomag.jp/mag_navi/
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【モーゼ効果】
モーゼ効果(Moses Effect)、エンハンストモーゼ効果(Enhanced Moses Effect)
「水は弱い反磁性の物質であるため、強磁場を加えると水は磁場の強いところから弱いところに逃げて、水面が凹む現象が起こり、これを“モーゼ効果”と呼ぶ。」
超伝導コイルが発生する磁場は、左下図のように中心位置が最大で、中心から離れるにしたがって減衰する。実際に、反磁性の物質である水に、超伝導磁石による10テスラ(T)程の強磁場を加えるとモーゼ効果が現れる。
モーゼの十戒で海面が割れるシーンから想像して命名されたもので、実際には深さ10mもの海面を割るには数百テスラ以上の強磁場が必要になる。但し比重がほぼ同じで磁化率が異なる液体(硫酸銅と有機溶剤など)の界面は、ネオジム磁石の0.5テスラ程度の磁場でも、右下図のように視覚ではっきり分かるほど変化する。これは“エンハンストモーゼ効果”と呼ばれていて、1995年東京大学の北沢宏一教授らが発表した。
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