1.可視光線の曝露限度値
2.日光も注意しなければならない。
3.遠赤外線も電磁波
4.低線量の放射線
5.放射線ホルミシス
6.放射線ホルミシスの研究の例−1
7.放射線ホルミシスの研究の例−2 電中研報告2003年
8.放射線ホルミシスの研究の例−3 電中研報告2003年
8A.放射線ホルミシスの研究の例−4 酒井一夫 電中研報告2001年
8B.放射線ホルミシスの研究の例−5 野村崇治 電中研報告2002年
9.放射線ホルミシスの研究の状況
9A.電中研の低線量の疫学研究2009年
9B.劣化ウランによる健康影響
9C.コバルト放射による健康影響、ホルミシス効果か否か、台湾の事例
10.草間著 放射線の本
11.フランス原子力施設と小児白血病2004年
12.ホルミシス効果は放射線以外でも発見されている
13.電中研 2005年 ホルミシス講演会
14.自然界に存在する宇宙からの放射線
15.日光に含まれる紫外線(UVB)による白血病リスク
16.日光は多発性硬化症のリスクを減少 2003年の研究
17.日焼けマシンの発がん性最高レベルに 2009年
18.放射線ホルミシスの参考文献 1997年の加藤幸弘論文
19.1997年の放射線医学研究所のホルミシス研究
19A.シンガポール政府の見解「放射線リスク」2019年
20.宮尾らの広島原爆による癌の研究 2008年
21.微量放射線による効果を謳った商品に関する東京都の調査結果
21B.2004年原子力安全委員会での低線量放射線リスクの議論
22.蛍光灯電球と日光過敏症
23.蛍光灯電球による皮膚障害の事例
24.蛍光灯型電球に関するスイス公衆衛生局の公開文書
25.スイスのITISによる蛍光灯電球からの電磁界調査報告書
26.LED照明とフリッカー
26A.光源からの紫外線等 フィンランドの1990年の研究
26B.Hartmanらの蛍光灯の変異原性
26C.蛍光灯からの紫外線UVCの実測例
26D.蛍光灯とLEDからの紫外線比較
26E.英国Health Protection Agency(健康保護庁)2008年の電球型蛍光灯に関する勧告
27.放射線、電離放射線に関連する情報−1 近畿大学原研ニュースから
28.放射線、電離放射線に関連する情報−2 宇宙飛行士の被曝
29.放射線、電離放射線に関連する情報−3 国際宇宙ステーションの宇宙飛行士の被曝
30.放射線、電離放射線に関連する情報−4 宇宙飛行士の弁
30A.1998年共同通信による宇宙空間での放射線被爆
30B.財形新聞2019年掲載の宇宙での放射線曝露
31.放射線、電離放射線に関連する情報−5 航空機内での放射線実測
32.放射線、電離放射線に関連する情報−6 富士山頂での宇宙放射線の放射線実測
33.放射線、電離放射線に関連する情報−7 体内曝露 食品から摂取する放射性物質
34.放射線、電離放射線に関連する情報−8 低線量被曝とECRP2003年報告
35.放射線、電離放射線に関連する情報−9 日用品に含まれる放射性物質
36.放射線、電離放射線に関連する情報−10 過去の放射線被曝量 降下した放射性物質
37.放射線、電離放射線に関連する情報−11 アメリカの1991年の研究にみるラドン濃度
38.放射線、電離放射線に関連する情報−12 世界の高い自然放射線地域
38A.Forsterらのインド・ケララ(自然界の放射線に高曝露)での遺伝子変異研究2002年
38B.放射線ホライゾンのサイトにあった自然放射線レベルの高い地域での発ガンリスク
38C.Sankei Bizの記事2014年 インド・ケララの疫学調査 世界の高い自然放射線地域
38D.環境省報告2018年 秋葉のインド・ケララの疫学報告
38E.高バックグランド放射線地域住民におけるがんリスクについての秋葉2012年研究
38F.放射線の高曝露による染色体異常の発現 2018年北朝鮮の例
39.ブルーライトの殺虫効果2014年
40.岐阜薬科大学のブルーライト研究2014年
40A.参天製薬のパンフレットにあったブルーライトと加齢黄斑変性の関係
40B.パソコンモニターからのブルーライト低減法
40C.台湾でのLEDの目への影響に関する研究2014年
40D. 韮崎高校の実験2017年
40E.産業衛生2016年VDTとブルーライト
40F.メディアコクショのLED記事2017年の内容は不十分
40G.ブルーライトの測定と光毒性の研究 綾木ら2013年
40H.坪田2017年バイオレットライトの研究
40I.ブルーライト20181003トレド大学の研究
40J.ブルーライトカットメガネの効能に関する学会の見解
40K.ブルーライトに関連してLEDが規制されているという荻野説の検証
40L.President Onlineにあったブルーライトに関する西野論
40M.小児のブルーライトメガネ装用に関する医学会の2021年見解
40N.Singh
2021年 ブルーライト遮光眼鏡はVDT作業時の眼精疲労に効果なし
40O.Ayakiら 2015年 ブルーライト遮光眼鏡に効果ありの研究
40P.Nakamuraら 2017年 ブルーライトが網膜に影響
40Q.Ooe ら2018年 ブルーライトの影響
40R.太陽光とスマホ・パソコンからのブルーライト量の違いは480倍
40S.Opländerらの2013年ブルーライトの皮膚への影響
40T.Niwanoら2014年青色レーザ光の網膜への光毒性の研究
40U.資生堂ブルーライト量の実測2020年
40V.太陽光のブルーライトに関するNakamuraら 2017年研究
41.日光・紫外線と、放射線ホルミシスの研究論文の概要の紹介
42.「イオネージ」放射線ホルミシスを利用した日清紡の繊維
43.強い放射線による医療事故例2005年
43A.強い放射線による医療事故例2001年
43B.2012年Tokonamiらの福島原発事故による避難者の甲状腺線量の研究
43C.福島で被爆牛を対象とした世界初の実験
43D.福島での低線量被爆を考える 2016年2月16日の産経新聞より
43E.福島原発事故に関する安井論文2013年
43F.福島民友2015年の記事から、福島曝露実態高校生調査
43G.甲状腺がん「被曝と関連なし」福島県 子供巡目検査 中間報告2019年
43H.2006年フランス原子力施設と小児白血病の研究
43I.食品安全情報blog過去記事2016年福島甲状腺リスク
43J.Livedoorニュースにあった低線量不斜線の影響、福島での研究結果202304
44.光刺激 映画での光の点滅
45.韓国のマンションに高濃度のラドン2019年
46.マイナスイオンを発生させるために放射性物質を用いた韓国のベッド2018年
47.スイスでマイナスイオン発生グッズに放射性物質2018年
48.スイス2015年 低線量電離放射線曝露と小児がん
目に見える光も電磁波です。 同じ電磁波でも携帯電話の電波に関しては非常に健康影響などに関心を持つことが多いのですが、目に見える光(可視光線)に関しては、全くといってよいほどに気にされていません。 「自然に存在する」光であっても、健康に無害という訳ではありません。 かといってさほど気にする必要もありません。
アメリカの産業衛生上の規定として有名なACGIHの「物理的因子とそのTLVs」には可視光線の曝露に関する規定があります。 TLVとは許容基準(Threshold Limits Values for
Physical Agents in Work-Environment )の意味です。
この規定「ACGIHの可視光線と近赤外線のTLVs」によれば、
1)ほとんどすべての労働者が曝露しても健康に悪影響を及ぼさない波長範囲(400 nm 〜 3,000 nm)の可視光線および近赤外線に関する許容基準である。
2)曝露のコントロール(管理や制限)の指針として用いるものであって、安全レベルと危険レベルの境界線を明示するものではない。
3)広帯域の可視光線と近赤外線に対する眼の1日8時間曝露に対して規定する。
4)光の波長によって眼の網膜火傷の程度が異なる。 強い青色光の長期曝露によって網膜の光化学的な損傷も考慮する。 しかし、白色光線のスペクトル放射輝度が10,000 cd/m2 を超えない場合は、詳細な評価は不要となる。
このことから、詳細は割愛しますが、非常に明るい可視光線は、健康影響がある、ということができます。
網膜を保護するために、加熱用赤外線ランプなどの近赤外線についても、このACGIHは限度値を設けています。(詳細は割愛)。
参考文献: 労働科学研究所 「ワークサイエンスリポート」 2001年
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020724-00001013-mai-soci にあった情報です。(2002年7月24日のニュース)
日光に含まれる紫外線も広義の電磁波です。
電磁波の健康影響を論ずる時に、「自然界に存在するものは問題がなくて、人工的なものは安全性が保証されていないので危険である」という論調がありますが。
このWHOの注意を見れば、 日光という自然界にあるものでも人類が誕生する以前から自然界に存在している日光に含まれる紫外線も場合によっては健康への影響がある ということから、 上記論調は必ずしも正しいとはいえない ことが判ります。
────────[一部 抜粋して 引用]──
■<日光浴>皮膚がんや白内障の原因と自粛を呼びかけ WHO
【ジュネーブ大木俊治】日光浴はお勧めできません――。世界保健機関
(WHO)は23日、日光の紫外線は皮膚がんや白内障の原因になるとして“日光浴自粛”を呼びかける報告書を発表した。
WHOのプロジェクトチーム「インターサン」がまとめた報告書は、70年代以降、ライフスタイルの変化による日光浴ブームとオゾン層の破壊進行との相乗効果で、白人を中心に皮膚がんの患者が世界で急増していると指摘した。
紫外線の浴びすぎは免疫機能の低下につながる恐れもあるという。 このため太陽光の強い夏の日中は外出を避け、出掛ける場合は衣服で皮膚を覆ったり、帽子やサングラスを着用するよう呼びかけている。
ただし、実際の影響は人種や職業で異なり、黒人や、日常から炎天下で働く人たちにはある程度の抗力があるため、一概に基準を当てはめることはできないという。 (毎日新聞)[7月24日10時10分更新]
電磁波の中でも遠赤外線に関するものです。
研究者: 佐藤清ら
タイトル: 常温遠赤外線放射シーツの生体に対する効果
雑誌:医学・生物学サーモロジー 1998年
概要:
遠赤外線は‘光’エネルギの一種,電磁波である。 普通,光または電磁波はその波長の長さから,可視光線(おおむね波長400〜700nm)より短波長のものを紫外線,また長波長域の電磁波を赤外線と呼び, さらに波長700nm〜3000nm(3μm)の電磁波を近赤外線,波長が3000nm(3μm)〜1000μmの電磁波(又は光)が遠赤外線と呼ばれる。
遠赤外線は太陽光にも10数%含まれるが, 生体をはじめ衣類やあらゆる物体からも放射されているほか,吸収反射の現象が見られる。
生体に対する遠赤外線の作用は生体による吸収と分子振動の励起が著しくなる場合,温度の急激な上昇に注意が必要であるものの非常に安全性の高いものである。
近年,遠赤外線の生体に対する様々な効果と効能が注目され医療分野においても遠赤外線の利用が目指されている。
医療分野における遠赤外線の利用はその放射条件と放射体や装置に基づき二種類が考えられる。
1)何らかの加温(加熱)条件と装置を組み合わせその作用と効果を利用する, 局所照射式遠赤外線治療器や遠赤外線サウナボックスなど医療用または健康器具類などに代表されるもの。
2)加温や加熱条件を必要としない常温下での遠赤外線放射を利用し,遠赤外線の生体への効果を期待するものである。
今回我々は医療分野で常温下における遠赤外線(以下,遠赤外線)効果について,その放射体が珪酸塩セラミックス粒子を主材料とする‘常温遠赤外線放射シーツ’を用い,遠赤外線の生体に与える影響と効果について,主に体表皮膚温度(以下皮膚温度)上昇の検証から,生体に対する温熱効果と保温効果についての検討をした。
結果は多くの場合、体温の上昇効果が得られた。
詳細は原典を読んでください。
X線などの電離放射線は、遺伝子などの損傷を起こすので、どんなに微量でも危険である という一般論に対して、低いレベルの被曝は放射線に対する耐性を高める という研究が行われ始めています。
これを放射線ホルミシスといいます.
Authers :
生島隆治
Title : 低線量放射線に対する適応応答;免疫学からみた放射線治療
Journal : 癌の臨床
研究では、事前に微量な放射線を浴びせておく. その後に大きな放射線に曝露する.
大きな放射線に対する影響度は、事前に微量を浴びなかった群よりも、微量を浴びた群が、影響を受けにくくなっている。
すなわち事前の微量曝露で耐性ができてくる というものです。
この研究から、放射線(電磁波の一種)はどんなに微量でも危険である、という定説は覆るかも知れません.
興味のある方は、原著を読んでください.
2000/11/01の産経新聞朝刊に面白い記事がありました。
低レベルならば放射線も人体に有益? という記事で、
生物は低レベルの放射線ならば、それを刺激として受け止め、逆に有益な効果を得ることができる場合もある、という20年前のアメリカのラッキー教授の研究を受けて、日本でも研究を行う、というものでした。
この放射線ホルミシスは、学会などではまだまだ少数意見のようです。
今でも、放射線はどんなに微量でも健康に影響がある、というのが学会の主流です。
興味のある方は 藤宗平・著 人は放射線になぜ弱いか? 1991年
講談社ブルーバックス を読んで見てください。
放射線や紫外線、可視光線、マイクロ波などの電波、低周波電磁界は全て電磁界(電磁波)です。
「放射線は電磁波の一種、放射線はどんなに微量でも健康影響がある、だから、低周波電磁界といった電磁波は、微量でも健康影響がある。」という論があります。 という仮説があります。
この仮説は正しくないことになります。
放射線ホルミシスはまだ学会では少数意見であるとして、除外しても電磁波の一種の可視光線が、どんなに弱くても人体に有害とは誰も考えないでしょう。
紫外線は、強ければ健康影響があります。でも、完全に避ければビタミンDが作られず、健康を害します。 ある程度の紫外線は人体にとって必要です。
ということから、上記の仮説は正しくない といえます。
高い線量の放射線は生物に対して有害な作用を示すことが知られている。これに対し微量の放射線については、高い線量での放射線の有害作用からの類推に基づいて、どんなに低い線量であっても害があるとされてきた。
しかし、低線量放射線の生物作用を詳しく調べてみると、生物が放射線に対して実に巧妙な反応を示すことがわかってきた。
例えば、予め低線量の放射線を照射しておくと、細胞がその後の高線量照射に対して抵抗性を示すことがわかった。
これは放射線適応応答、放射線ホルミシスと呼ばれる。
電力中央研究所の研究(2000年)がある。
小核は、DNA(遺伝子)に生じた切断が修復されずに残るために生ずるもので、遺伝子損傷の残存量の指標となる。
これを指標として、培養細胞を用いて適応応答の解析を行った。
結果は、
1)正常組織由来の培養細胞(V79細胞)においては、高線量(3Gy)の放射線(X線)を照射する4時間前に低線量(0.1Gy〜0.2Gy)の照射をしておくことによって出現する小核が減少した(下図)。
2)ところが、同じような条件で照射しても、がん組織由来の細胞(HeLa細胞)では図のような放射線適応応答は見られなかった。
図 小核形成を指標とした放射線抵抗応答 引用:電力中研2000年報
もう一つ、放射線ホルミシスに関して、面白いというか興味の深い研究報告を見つけました。
低線量の放射線暴露によって、寿命が延びる という報告です。
電力中央研究所 2003年 報告 G03006から
タイトル:低線量率放射線による重症自己免疫疾患モデルマウスの寿命延長 −免疫機構正常化と脳を含む全身性の病態改善−
研究者:稲恭宏
主な成果
非照射の重症自己免疫疾患モデルマウス(MRL-lpr/lpr マウス)に比べて、137Csγ線を空間線量率 0.35 mGy/hr または 1.2 mGy/hr(腹腔内線量率 0.30 mGy/hr または 0.95 mGy/hr)の低線量率で照射した同系マウスにおいて、以下の現象が確認された。
1. 線量率依存性に顕著な寿命の延長が認められた(図1)。
2. 以下 略
引用:電中研報告 2003年より
興味のある方は、原著を入手して、読んでください。
タイトル:マウス放射線発がんの線量率依存性 ― 低線量率なら長期継続照射しても胸腺リンパ腫を生じない―
研究者:稲 恭宏
主な成果
空間線量率2.0 Gy/minの高線量率でX 線を10 週齢から13 週齢まで、1.8 Gy/週× 4 回照射したマウス(高線量率照射群)に比較して、137Cs γ 線を空間線量率1.2 mGy/hrの低線量率で、330 日間にわたって積算総線量では致死線量を超える線量を照射したマウス(低線量率照射群)において、以下の現象が確認された。
1. 高線量率照射群では 90 % のマウスで胸腺リンパ腫が発生したのに対して、低線量率照射群では一例も発生が認められなかった(図1)。
2. 高線量率照射群では、胸腺以外の臓器においても放射線障害によると思われる所見が認められたのに対して、低線量率照射群では一例も認められなかった。
3. 高線量率照射群では、外見上も放射線障害と思われる立毛、呼吸不全等が観察されたのに対して、低線量率照射群では一例も認められなかった。
引用: 電中研 報告 2003年より
BEMSJの注) 累積では致死量を超える放射線量を浴びても、それが微小で長期にわたる場合は影響がない という興味の深い研究成果です。
興味のある方は、原文を入手して読んでください。
電力中央研究所2001年年報にあった研究
********************
タイトル:低線量率放射線の長期照射における発がん抑制作用
主担当者: 低線量放射線研究センター 上席研究員 酒井 一夫
背 景
放射線の発がんリスクについては、高い線量域で得られたデータからの低い線量域への外挿に基づいた評価が一般的であるために、どんなに微量であっても線量に応じたリスクがあると仮定されている。
近年、低線量放射線に対する生体の応答が詳しく解析されるようになった結果、わずかな量の放射線によって生体内で様々な機能が活性化されることが明らかとなってきている。
これらには、抗酸化物質の誘導、DNA修復能の活性化、アポトーシスの活性化、免疫機能の増強などが含まれる。
これらの機能の活性化は、発がん機構の各段階において、がんの発症に抑制的にはたらくものと考えられる。
低線量・低線量率放射線が発がんを抑制する作用があるか否かの検証は、微量の放射線に対する生体の応答を理解する上で、また、低線量域における放射線の発がんリスクを評価する上で重要な情報を提供することとなろう。
目 的
化学発がん剤を投与したマウスに低線量率のガンマ線を長期にわたって照射した場合に、発がん率にどのような変化が現れるかを検討する。
主な成果
一群35匹のICRマウス(広く研究に用いられる代表的な系統。雌、6週齢。)を、低線量率放射線長期照射設備のガンマ線源(セシウム137)から3m、5m、10mの距離に配置し、35日間照射を行った。
各照射における線量率は、新規に開発された小型蛍光ガラス素子をマウス体内に埋め込み、腹腔内吸収線量として評価した。
その後、右そけい部に発がん剤(メチルコラントレン0.5mg)を注射し、引き続き同じ線量率で照射を続けながら経過観察を行った。
同様の操作を行ったマウスを、厚さ60cmのコンクリート壁の裏側に配置し、非照射対照群とした。
発がん剤投与後216日目までのがんの発生の経過を図-3(割愛)に示す。
(1)線源から10mの距離で照射した群では、非照射対照群との間に腫瘍発生率に差はなかった。
(2)5mの距離に配置した群では統計学的に有意な腫瘍発生率の低下が認められた。
(3)3mの距離に置いた群では、腫瘍発生率の低下する傾向が見られたものの有意差はなかった。
(4)発がん抑制作用には1mGy/hr程度に至適線量率があり、それよりも線量率が高くても低くても、効果が小さくなることが示された。
今後の展開
(1)種々の照射条件で発がん抑制作用の検証を行い、最も抑制作用の大きな線量、線量率を明らかにする。
(2)化学発がん以外の、放射線発がんやウイルス発がん、あるいは遺伝性発がんについても同様の抑制作用が見られるかどうかの検討を行い、発がん抑制作用の一般性を確認する。
(3)発がん抑制が認められる条件下で、マウス体内の抗酸化物質レベル、DNA修復能、アポトーシスの程度および免疫機能を解析して、発がん抑制作用の機構を明らかにする。
以上の研究を通じて、低い線量の放射線が発がんの過程におよぼす影響について理解を深め、放射線の発がんリスクの評価に資する情報の提供を目指したい。
<図は割愛>
********************
関心のある方は、原文を読んでください。
電力中央研究所報告リーフレット 2002年1月 より
********************************
研究報告:G02002
U型糖尿病モデルマウスに対する低線量の照射効果の検証
主担当者野村 崇治(低線量放射線研究センター)
背 景
U型糖尿病と言われる糖尿病は、過食による糖分の供給過剰が原因で、現代における生活習慣病の一つとして注目されている。
糖尿病には、若年性で膵臓の細胞が自己免疫的に活性酸素によって障害を受け発症するT型が存在し、これまでに我々は、低線量放射線によってT型糖尿病の発症が抑制されることを示してきた。
しかし、U型糖尿病に対する低線量あるいは低線量率放射線の照射効果を見た実例はなく、照射効果の有無は不明であり、マウスの個体を用いた確認試験の実施が強く望まれていた。
目 的
U型糖尿病のモデルマウスを低線量率ガンマ線で長期に渡って照射し、尿糖値の変化を調べ、低線量率放射線が糖尿病の症状の改善に及ぼす効果の有無を解明する。
主な成果
1.セシウム137を線源とするガンマ線を線量率0.65mGy/hrで長期に渡って照射したマウスの一部(12匹中3匹)において、糖尿病の改善が認められた。
これに対し非照射群においては、症状の改善例は皆無であった。
2.食餌量、飲水量、および体重の変化は、照射群と非照射群の間で差は認められなかった。
また、照射群の中でも症状改善群に固有な体重の変化は認められず、症状の改善が単純に照射による摂食障害と、それに伴う体重の減少によるものではないことが示唆される。
3.照射群は非照射群に比べ死亡例の出現時期が遅く、また90週齢時の生存率も顕著に高かった。
また照射群では、加齢に伴う脱毛の程度が低く、皮膚や尾の柔軟性が保たれており、外見上の加齢現象の抑制を示唆する所見が認められる。
今後の展開
長期低線量率照射によって糖尿病の症状の改善する機構を解明するため、照射方法(線量、線量率の変化)、照射時期などを変えた実験を継続実施する。
<図は割愛>
***********************
関心のある方は、原著を読んでください。
作成: 2004−6−11
参考になる情報が以下のWEBにありました。 興味のある方は参照してください。
放射線と健康を考える会のWEB http://www.iips.co.jp/rah/index.htm です。
このサイトでは、以下のような情報が公開されています。
*「放射線ホルミシスを考える」 東京理科大学 生命科学研究所 客員研究員 高橋希之
放射線ホルミシスは、今では専門家でなくても放射線にかかわる人々や一般人の間でもかなり知られた言葉となっている。
その意味するところは、“少しの放射線は体に良い作用がある”というものだ。
少しの、弱い、微量の、少量の、低線量の・・・といろいろな言葉で表現される。
*「低線量放射線に対する生物応答:障害とホルミシス パート1:線量によって異なる応答」 Ludwig E. Feinendegen Myron Pollycove
低レベル放射線の有益な作用はその後も報告されたが、医学関係の分野ではあまり注目はされなかった。
しかし、ここ5-10年間で放射線ホルミシスは興味をもたれるようになり、2001年5月20日のワシントンポスト誌では放射線ホルミシスはもっと研究される値打ちがあるとされた。
*「低線量放射線の生物影響‐寿命への影響」 財団法人 環境科学技術研究所
財)環境科学技術研究所は、青森県からの受託業務として平成3年から「低線量放射線生物影響実験」を計画、平成7年度から低線量率長期連続照射実験を開始し、平成14年度に「低線量放射線の長期被ばくが寿命に及ぼす影響」について、一連の研究成果が取りまとめられた。
*「ヒトにおける低線量放射線ホルミシス」 Department of Physics, K.L. Mehta D.N. College
for Woman, India K. Kantら
放射線ホルミシスは低線量電離放射線による有益な作用のことである。
動物実験やヒトのデータから、がんの抑制においても同様なメカニズムが作用していることがうかがえる。
これまでの研究から、低線量電離放射線(LLIR)の全身照射ががんの発生を低減することが示唆された。
ここではLLIRに関する研究や報告のデータを包括的に示した。
これらから実験動物とヒトにおいて、LLIR全身照射ががんによる死亡率を低減するという結論を得た。
*「低線量放射照射による癌発生に関するデータベースの概観」
International Centre for Low-Dose Radiation Research, Institute of the Environment, University of
Ottawa, Canada Dr. Phillippe Duport
現在低線量域での発がんリスクは、200mSv以上の線量におけるデータを外挿する形で見積もられる。
1つの疫学データや動物実験データでは確かな判断はできない。
この論文では、これまで何10年にもわたって蓄積されてきた実験動物のデータをまとめた。
目的は、実験動物での低線量放射線照射と発がんの相関を明らかにすることだ。
*「ラドンによる外部被ばくと内部被ばくの慢性的影響 200mGy以下での線量―作用曲線」
Laboratoire de Radiobiologie, Universite
Rennes/UPRES EA 2231, Centre Eugene Marquis, France K. Nourgalieva ら
人々が自然から被ばくする放射線源としては、ラドン-222がもっとも重要だ。
被ばく線量の50%以上を占め、ウラン鉱山での抗夫の放射線障害の最も重要な因子である。
多くの疫学調査からラドン被ばくによる肺がんの誘発が明らかにされてきた。しかし低線量での被ばくの影響はあまり報告されていない。
*「放射線線量と細胞および分子レベルでの変化」 ノーマン・ベチューン医科大学教授(中国) Shu-Zheng Liu
放射線の生体影響の線量‐作用曲線は対象の様々な因子に依存するが、中でも線量域と線量率が重要である。
線量0.2Gy以下になると0.5Gy以上で見られる作用とは反対の作用が観察されることがしばしば報告され、UまたはJ型の線量-作用曲線が得られている。
*「放射線の危険性と論理」 ズビグニェフ・ジャヴォロフスキー
現在世界中で実際行われている放射線防護に関する規制には、年間数千億ドルもの費用を必要としている。
この高コストは世界のエネルギーシステムの将来さえ決定しかねないが、それは妥当なことなのだろうか?
*「被爆者の疫学的データから導いた線量‐量反応関係‐しきい値の存在についての考察‐ 」
NPO法人放射線教育フォーラム 事務局長 松浦辰男 財団法人体質研究会 理事長 菅原努
筆者らは、被爆者の受けた放射線量は慢性的被ばくの影響を考慮に入れて再評価することが必要だと主張してきた。
(略)発がんに関する現在の線量−反応関係はこの線量だけ右側に平行移動すべきであり、低放射線領域における発がんのしきい値は、約0.37Svであるといえる。
*「低線量率放射線は人の寿命を延ばす」 Wisconsin大学名誉教授John R. Cameron
20世紀の後半、低線量率放射線は健康にとって良いことはないと考えられたが、ここ数十年の間に、高自然放射線レベルや職業被ばくの線量率が健康に良いことを示す立派な疫学的証拠が出てきている。
自然放射線レベルが最も高い米国の6つの州平均がん死亡率が、48すべての州の平均より15%も低いことは、1973年(Frigerio他)以来知られている。
Jagger(1998)は、ロッキー山脈のまたがる州(山岳州)の自然放射線は、メキシコ湾岸諸州よりおよそ3倍高いけれども、3つの山岳州(アイダホ、コロラド、ニューメキシコ)でのがん死亡率は、3つの湾岸諸州(ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ)より25%も低いことを示した。
メキシコ湾岸諸州は放射線欠乏症に罹っているように思われる(Cameron 2001)。
*「ラドンのリスクは課題評価されているか? −ウラン鉱山での肺がんリスク推定において見過ごされている線量‐」 Phillippe Duport
ここでのもうひとつの結論は、ウラン坑夫のラドンのリスクを室内ラドンのリスクに適用する場合には、ウラン鉱山での調査では見過ごされていたような(他の線源からの)線量の作用を考慮すべきである
*「三朝ラドン温泉適応症の機構にかんする検討‐温熱効果とラドン効果の比較‐」 岡山大学医学部 山岡
聖典
温泉には「化学効果」、「温熱効果」、および「放射能効果」の三つの効果があり、比較検討することは重要である。
今回は化学効果(化学成分)を同じにし、血液中の活性酸素関連物質を指標に健常者に対しては温熱効果と放射能(ラドン)効果の比較を、患者に対してはその治療効果に関し、それぞれラドン吸入1週間における変化特性の検討を行った。
*「放射線ホルミシス ‐低線量放射線の生体への有益な作用‐」 東京理科大学
薬学部 教授 小島周二
低線量放射線による生体(物)影響に関する現象の多くは、これまで再現性が得られず、かつ科学的根拠に乏しいものとして見なされてきた。
しかし、その後、低線量放射線が生体に及ぼす影響に関する過去の研究例の見直しが行われ、「放射線は例え少量であっても生体(物)に害をもたらす」とする従来の定説にとらわれない新たな視点からの研究が活発に行われるようになってきた。
この結果、放射線の高線量域での生態(物)影響からは推定できないような非常に興味ある現象が次々に見出されている。
*「米国原子力造船所作業者の調査結果 −少しの放射線は健康によい?‐」 放射線と健康を考える会
重要な調査結果が、10年待っても学術誌に発表されないため、この調査の技術諮問委員会(Technical Advisory Panel)のメンバーであったWisconsin大学名誉教授のJohn Cameron博士は、他の科学者たちの注意を引かせるため、米国物理学会のForum
on Physics & Society (2001年10月号)で紹介された。
以下に米国の原子力造船所作業者について行われた調査の最終報告の結果とその評価について解説する。(略)
*「低線量の放射線生物学」 加・チョークリバー研究所 放射線生物学・保健物理学部門長 R.E.J.Mitchel
放射線防護に用いられる考え方、例えば"可能な限り、被曝線量は低減するべき"とか、"予防的措置"という考え方は低線量放射線の生物学とは相容れない。
現実の生体応答をもとにした、新しい放射線防護のリスク評価が必要な時期だ。
*「20世紀とその後の電離放射線」 Prof. Dr.
Zbigniew Jaworowski ポーランド放射線防護中央研究所
第2次世界大戦後に急に起こってきた社会的風潮の変化は、放射線の新たな危険が発見されたことによるものではなく、放射線の実際の影響とも関係なく、政治的、社会的な理由から生じたものである(Jaworowski, 1999年)。
*「英国放射線科医の100年にわたる調査結果 −1897年から1997年のがんおよびその他の病気による死亡率」
Berrington, A., Darby, S.C., Weiss, H.A., Doll, R
放射線科医と放射線治療士は放射線利用の初期の頃に職業的に放射線被ばくした集団の一つであり、彼らの死亡率パターンは長期の断続的外部被ばくの影響についての知見を提供する。
1897年から1979年の間に放射線医師学会に登録した英国の放射線科医について1997年1月まで追跡調査し、初めて放射線防護の勧告が公表された1920年以降の登録医における死亡率を検討した。
*「欧州におけるラドン療法の医学的研究に関する最近の動向」
岡山大学医学部医用放射線科学研究室助教授 山岡聖典 岡山大学附属病院三朝分室講師 御舩尚志
本総説は、本邦で実施している三朝ラドン温泉の適応症に関する機構解明に資するために調査した欧州におけるラドン療法の医学的研究に関する最近の動向の概要についてまとめたものである。
*「欧州におけるラドン療法の医学的研究に関する最近の動向」
医療被ばく、放射能の放出、そして誤った情報:フランス医学アカデミーの意見
X線による医療被ばくや放射能の環境への放出、そしてこれらに関する誤った情報などに関して公衆において生じる問題に関して意見を述べたいと思う。
*「高自然放射線地域住民の健康調査 (中国1979−95)」 (財)体質研究会 理事長 菅原 努
中国広東省の高自然放射線地域のことについては10年前の1990年9月発行の「環境と健康(Vol.3、5)」に“自然放射線と健康”と題して、中国の工業衛生実験所の発表を材料にして報告しました。
これが一つの契機になって日中共同研究の話が持ち上がり、翌1991年1月に京都で日中の専門家が集まり今までの成果を検討し、新しい研究計画の提案がなされました。
それを受けて1991年度に一年をかけて予備調査を行い、それに基づいて1992年から3年づつ2期6年の共同研究を行いました。
*「ドイツ原子力学会誌ATW2002年1月号より 放射線防護の進展に関するシンポジウム」
放射線・科学・健康協会:副会長 クラウス・ベッカー(ベルリン)
放射線防護分野のベテラン・ステーツマンであるL. S. Taylor(元NCRP会長、ICRP委員、等歴任)は、1957年にすでに次のようにいっている。
「放射線防護は、単に科学の問題であるばかりでなく、哲学、道徳、究極の英知の問題である」と。
45年経った現在、LNTモデルは多くの場合適用できず、誤解を招いていることが明らかになっている。
*「糖尿病と放射線の作用」 東京理科大学客員研究員 高橋希之
低線量放射線は細胞内に抗酸化物質の合成を誘導することが知られており、細胞内活性酸素の増加およびベータ細胞のアポトーシスを抑制し、結果として糖尿病の発症を抑制する可能性が考えられている。
*「低線量の発ガン作用―しきい値なし直線相関の有効性―」 フランス科学アカデミー会員 Dr. Maurice Tubiana
最近のUNSCEAR報告書は発がんの危険性(リスク)における「しきい値なし直線的相関」(LNT)の有効性についての議論を再燃させている。
*「低線量放射線の不思議な生体作用―ラドン温泉が効くわけを探るー」
岡山大学医学部 医用放射線科学研究室 助教授 山岡聖典 東京理科大学 薬学部 教授 小島周二
ラドン温泉が種々の疾患に対して有効であることは、さまざまな調査でわかっていたが、なぜ効くかは不明だった。
最近、低線量の放射線を用いた実験から、その謎を解くヒントがみつかりはじめている。
電中研ニュース451号 2009年1月19日発行からの引用です。
低線量放射線の影響解明に挑む‐高自然放射線地域における疫学調査結果から−
私たちを含めた地球上の生物は、実は常に宇宙と大地、さらには空気中や食物中からの「自然放射線」を受けながら生活しています。
このうち大地からの自然放射線の強さの分布をみると、世界の中ではインドのケララ州をはじめ、イラン、そして中国・広東省にある陽江地区などが日本よりもかなり高くなっていることがわかります。
電力中央研究所では、自然放射線の影響を明らかにすることを目的として、高自然放射線地域(HBRA - High Background Radiation Area)で生活している人々を対象にした疫学調査研究に取り組み、その影響が従来の定説とは異なっていることを見出しました。
■HBRA調査の有用性
高自然放射線地域(以下HBRA)の住民を対象とした調査は、男女両性の幅広い年齢層を含み、通常の生活を送っているために特殊なストレスを受けていない人々が対象であるという特長があります。
しかもこれは、低線量率で長期(生涯)にわたる被ばく影響の調査であることも重要なポイントです。
しかし反面、こうした住民調査では小さい影響に対しても統計的な正確さを維持するため、大規模な集団を対象とする必要があり、また健康リスク影響を判断するには長期間継続して観察する必要があります。
■30年以上にわたる長期調査
HBRAの疫学調査は1972年から中国政府により開始され、
1992年からは京都大学名誉教授の菅原努博士を中心に、日本の財団法人体質研究会と中国の研究グループとの国際共同研究という形で大規模に進められてきました。
1998年からは、さらにインドやイランを含めた国際共同研究に発展し、2003年から当研究所もこの国際共同研究に参画し現在に至っています。
イランのHBRAでは人口が少ないため疫学調査には至っておりませんが、中国での調査は、HBRAと比較の対照地域とを併せ約200万人午(対象者数×追跡年数)、インドでは約74万人年という規模に達しており、現在これらの解析を進めています。
この中から、これまでの定説を覆す結果が徐々に得られています。
■中国の調査では死亡率には有意差なし
中国での疫学調査は広東省の陽江地区で行なわれてきました。
同地域は広州から200km程の所ですが、土壌や建築材料中にトリウムやウランが含まれ、自然放射線量が高くなっています。
また、比較のための通常の放射線レベル地域(対照地域)として隣の恩平地区を選び、それぞれの地域で住民の生活環境が似ている農村を選定しました。
さらに、その地域に二世代以上継続して居住している漢民族系の人に限定して調査を実施しました(図1)。
平均で約2.6倍線量率が異なる両地域での、1979年から98年までの死亡率を示したのが表1です。
まず、表中の死亡率(1000人に対する相対値)から明らかなように、両地域の死亡率には有意な差はないことがわかりました。
さらに、対照地域に対する相対的なリスク(相対リスク)について、被ばくした総線量あたりのがんリスクの増減をグラフにしてその傾きを計算すると、 1シーベルト(Sv)あたりで-0.11と、有意ではないもののむしろHBRAの方が、若干がん死亡率が低くなる傾向が観察されています。
この結果からは、 HBRAのレベルの放射線を生涯にわたって受けても有意な健康影響がみられることはないと考えられます。
今後、この地域のデータの交絡因子(放射線以外の諸要因)に関する解析などを継続し、より詳細に分析をしていく予定です。
■インドでも調査を実施
インド南西端ケララ州のアラビア海に面した海岸地帯にあるカルナガパリ地区も、高自然放射線地区として知られています。
この海岸には、放射性物質を含んだモナザイトという鉱物が混ざった黒い砂浜が広がっており、その中の放射性物質から出るガンマ線により自然放射線量が高くなっています。
1990年にケララ州にある地域がんセンターがこの地方のがん罹患率などの調査を開始し、その後国際共同研究へと発展してきました。
カルナガパリ地区の高自然放射線地域4支区をHBRAとして、同地区内の2支区をその対照として設定し調査を実施しました(図2)。
これらの6地域にはカルナガパリ地区全体38万人の人口のうちの約半数が居住しており、その調査では中国で観察している「がん死亡」よりも詳細なデータで、精度も高いとされる「がん罹患」についても観察しています。
まずこの地域で、食物由来などを除く体外からの自然放射線による被ばく線量を測定した結果、世界での平均が0.9mSvのところ、対照地域の平均が0.77mSvであったのに対し、HBRAの平均は2.10mSvと約3倍高いことがわかりました。
■中・印で同様の結果を確認
インドでの健廉影響調査の結果、白血病については線量に伴う多少の増加傾向はあるものの有意差はみられず、それ以外のがんについては、被ばくした総線量あたりでも年間の線量率あたりでも、がんの相対リスクの増加はないことがわかりました。
さらに、総線量あたりのグラフの傾きを計算すると- 0.13と、有意ではないもののリスクの減少傾向が観察されており、中国と同様の結果がインドでも確認されました。
また、中国・インドともに、いくつかの特定部位のがんに対象を絞った詳細な検討も行ってきましたが、両者に一致して有意なリスクの上昇を示すデータはありませんでした。
さらに、がん以外の疾病を対象にして解析を行っても、有意な健康影響はみられていません
ただし、インドの調査規模は中国に比べると小さいことから、今後、調査対象をカルナガパリ地区全体に拡大し、これからもデータの蓄積と解析を継続していきます。
■継続した調査が重要
長年にわたる中国・インドのHBRAの疫学調査からは、通常の自然放射線レベルの3-5倍程度の放射線量であっても、人体に対する健康影響としては有意差が認められないことがわかってきました。
放射線は往々にして、どんなに少量であってもそれが発がん要因であるかのように言われていますが、本調査からはそれらの説を支持する結果は得られていません。
関心のある方は、この研究の全文を入手して、読んでください。
以下は 食品安全情報blog http://d.hatena.ne.jp/uneyama/ にあった内容です。
一部を引用して紹介。
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2010-06-16
■[EU]劣化ウランによる環境と健康リスクに関するSCHERの意見
SCHER Opinion on: the environmental and health risks posed by depleted uranium
http://ec.europa.eu/health/scientific_committees/environmental_risks/docs/scher_o_123.pdf
パブリックコメント募集を経て2010年5月18日の本会議で採択されたもの
PDF 41ページ
天然の食品や水に含まれる放射性ウランはがんやその他の健康影響はないとNRCは述べている。
さらにウランの採掘労働者の累積内部線量200mSv以下でのウランの暴露と肺がんの関連は見られていない。
ウラン採掘労働者の場合肺がんの主なリスク要因はラドンで、大きな交絡要因は喫煙である。
放射線学的には劣化ウランや天然ウランによる放射線由来の健康ハザードはない。
また軍事的に劣化ウランが使用された地域の暴露量はウランの化学毒性閾値より低く、劣化ウランの化学的および放射線学的毒性による一般人の健康リスクはない。
この結論は全ての専門家委員会が支持している。
劣化ウランが使用された地域で従軍していた軍人の子どもに奇形が多いという主張がしばしばなされるが実証されていない。
イラク南部やクウェートでの奇形が増加しているという報告は科学文献には存在しない。
(略)
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記:2016−1−30
*最初に
ダイヤモンドオンライン 2011年5月21日配信に以下の記事があった。
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やはり後手に回った放射能汚泥 建築資材で都内に15万トン流通か
週刊ダイヤモンド(4月16日号)が明らかにした下水汚泥の放射能汚染と、それが建築資材などとして流通する問題が今月、最悪のかたちで現実のものとなった。
(略)
1992年に台湾で発覚したマンションの鉄筋にコバルトが誤って混入した問題では、1500世帯が長期間被ばくし、ガンなどの健康被害が多数確認された。
他国の教訓も生かせずに後手に回る対応は、まぎれもなく人災である。
***********************
この記事にある1992年台湾の事例を、まとめてみることにする。
*台湾におけるコバルト曝露の概要
Atomicaにあった情報
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-03-03-07
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3.スクラップ材の再利用による外国での事故例
1983年1月14日に台湾電力第一原子力発電所の燃料貯蔵槽の建設のため、製鉄業者が鉄筋をトラックに積載して第一原子力発電所のゲートを通過した時、ゲート付近に設置されていた放射線モニタがアラームを発したことにより放射能汚染の鉄筋が発見された。
その後の調査の結果、60Coによる鉄筋汚染の原因は、1982年に陸軍化学兵学校で紛失した60Co線源23.8Ci(8.81×1011Bq)が、学校の出入規則の緩さのため、勝手に入り込んだ民衆に拾われ、それを金属スクラップとして古物屋に売り、製鉄会社に転売されて鉄筋として再利用されたことによるものと考えられている。
台湾の台北市で1984年に完成した「民生アパート」やその他多くのビルが、60Coで汚染した鉄筋で建設された。
そして、これらのビルに入居した多くの住民が外部被爆した。
「民生アパート」に入居した啓元歯科医院のレントゲン室およびその隣に入居した億昌音響会社事務所兼倉庫の線量率測定結果を図4<図は割愛>に示す。
「中国商銀天母社員寮」および「民生アパート」入居者の健康影響および被害状況を表1<表は割愛>に示す。
1983年以後に建設された放射線汚染ビルの調査は、放射能汚染鉄筋事件が明るみになった1992年から民間の手掛かり、建築会社の資科、台湾放射線防護協会、原子力委員会等によりサーベイメータ、TLDで市内175のビルについて測定され、放射線汚染の程度が分析された。
放射線汚染家屋の居住者は1,600世帯におよんでいる。
結局、放射能汚染の鉄筋が市場に出回り、建築材料として使用され、10年以上の間に数千人が被害者となった。
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*コバルトを含む鉄骨の建物に住む人への健康影響
以下の研究では水晶体への放射線の影響を検出
掲載誌:Radiat Res. 2001 Jul;156(1):71-7.
タイトル:Lenticular opacities(水晶体の不透明) in populations exposed to chronic low-dose-rate gamma radiation
from radio-contaminated buildings in Taiwan.
研究者:Chen WL, Hwang JS, Hu TH, Chen MS, Chang WP.
1998年コバルト60を包含した鉄骨で建設された建物に住んで低線量―慢性被爆をうけた台湾の114名を対象にして、目の水晶体の定量的な検査を行った。
対象者は20歳未満、20−40歳、40歳以上の3群に分けた。
台湾の累積曝露評価法によって、個々の対象者の累積曝露を評価した。
20歳以下の群では、水晶体の損傷の有意な曝露量と関連した増加がみられた。他の2群では有意な増加は見られなかった。
この結果は、若い人の水晶体に、特に慢性的な低線量の曝露が損傷を与えることを示唆している。
以下の研究は被爆の甲状腺への影響を見つけたもの。
掲載誌:Int J Radiat Biol.
2001 Nov;77(11):1117-22.
タイトル:Effect of prolonged radiation exposure on the
thyroid gland甲状腺 of residents living in
60Co-contaminated rebar buildings.
研究者:Chang TC, Chen WL, Chang WP, Chen CJ.
目的:コバルト60を包含した鉄骨製建物の住む住民の甲状腺に、長期間の低線量のガンマ線曝露が影響するか検討する。
方法:
1346名の住民を対象に甲状腺の機能などを検査。
対象群は、15歳以下と以上、男女別、被爆量で階層化した。
結果と結論
男性の全年齢階層と、女性の15歳以下の年齢階層の群に、被曝量に関連する甲状腺異常の有意な増加がみられた。
以下の研究は、住民の染色体異常が有意に高かったというもの。
掲載誌:Int J Radiat Biol.
2002 Jul;78(7):635-9.
タイトル:Health examination and chromosome aberration
analysis of residents living in 60Co-contaminated rebar buildings.
研究者:Liu RS1, Chen WL, Chen FD.
目的:
コバルト60を包含した鉄骨製建物の住む住民の染色体異常に、長期間の低線量のガンマ線曝露が影響するか検討する。
方法
被爆が判明して6ヶ月以内に、189名の住民対象とした。
対象者の年間被曝量は、台湾の一般的な被曝量を超えて、2−95ミリシーベルト/年であった。
136名の住民の染色体を調査した。
結果
放射能物質を取り込んだ建物の住民に二動原体染色体が発生する頻度の統計解析結果は0.69で対照群の0.33に比べて、有意に高かった。
BEMSJ注:二動原体;二動原体染色体が発生する頻度は、放射線をどのぐらい浴びたかという被ばく量に伴って増加し、二動原体染色体の発生頻度と被ばくの量には一定の相関関係がある事が知られています。
*ホルミシスを認めた研究―2
掲載誌:Proceedings of the 14th Pacific Basin Nuclear
Conference, Honolulu, HI, Mar. 21-25, 2004
タイトル:Effects of Cobalt-60 Exposure on Health of Taiwan
Residents Suggest New Approach Needed in Radiation Protection
研究者:W.L. Chenら
この論文の概要:
コバルト60が鉄筋に混入したアパート住民の健康影響調査
2004年3月21日から25日に行われた第14回環太平洋国際会議(PBNC)で、台湾の研究者から、誤ってコバルト60が混入した鉄筋を使って建てられたアパートの住民に対する健康影響調査の結果が報告されました。
約20年前(1982〜1984年)、廃棄されたコバルト60線源が偶然リサイクル鉄鋼に混入し、それが、台北市とその近郊のアパートを含む約1700の建物の鉄筋に使われてしまいました。およそ1万人の人々が、これらの建物に9〜20年間居住し、平均約400mSvの放射線を被曝しました。
調査結果によると、アパートの居住者のがん死亡率は、台湾の一般公衆の3パーセントにまで大幅に低下しました(図1)。
また、先天性奇形の発生率も、一般人の発生率のおよそ7パーセントに減少しました。
この発表は、同会議において大いに議論を呼び、米国エネルギ省(DOE)の仲介でカナダの疫学調査の専門家が研究に加わり、さらに詳しい調査が行われることになりました。
γ線の測定で、明らかにコバルト60によって汚染されていることがわかり、居住初年度の1983年には、最高で1年間1Sv(通常の1,000倍)近く被ばくをした住民がいたことが推測されている。
放射線レベルの特に高い部屋に住んでいる人は1,000名程度で、この人達の受けた初年度の平均年間線量は525mSv、つまり通常の約500倍であった。
このマンション居住者の1983年頃に受けていた平均年間線量率は約73mSv/年であった。
マンションの放射線レベルがこのように高いことが発見されたのは完成後10年も経過してからで、原因がコバルト60によることも確認されているので、完成直後はどのようであったかについてはコバルト60の5年あまりの半減期から逆算したものである。
もちろん、現在は年間の放射線レベルは1983年当時の1/10以下になっている。
さて、このマンション居住者のがん死亡者はわずかに7名であり、これは驚異的な値である。
なぜかといえば、この台北地域のがん死亡率は年間10-3あまりで、この死亡率から20年間にマンションの住民約10,000人のがん死亡者数を計算すると200名程度ということになるから、これに比べると7名というのはがん死亡者数が5%以下になってしまったということになる。
図1 一般公衆とアパート居住者のがん死亡率の比較
一般公衆のがん死亡率は1983年から2002年にかけて徐々に増加している。
コバルトを含んだ鉄骨で建てられた建物で放射線に長期に被爆した人々の癌死亡率は、一般に比べて低く、年々減ってきている。
<BEMSJ注:台湾のChenはコバルトからの放射線被爆の陰性効果と、陽性効果を共に見つけている。バイアスのかかっていない研究者と言える。>
<BEMSJ注:このChenの2004年研究は、かなり広く「放射線ホルミシスの効果が検証された事例として、様々な論文や解説書で引用されている。しかし、以下に示すように、この研究は否定されている。疫学研究の難易さを示す事例といえる。疫学研究だけで、判断できないことを示す事例とも言える。>
*ホルミシスを認めなかった後年の研究2007年
掲載誌:International Congress Series 1299 (2007) 87–97
タイトル:Cancer risk analysis of low-dose radiation
exposure 線量被曝における発癌リスクの分析
研究者:Sulun Hwangら
コバルト60に汚染された鉄筋をつかって建てられたアパートから約10年の長期にわたり低線量のγ線被曝を受けた台湾人住民における発癌リスクへの放射線の影響を調査した。
このグループの発癌リスクを、台湾における同じ時期、同じ地理的性格の住民と、年齢と性別で調整した標準化罹患比により比較した。
標準化罹患比は、男性の慢性リンパ球性白血病を除くすべての白血病でアパート住民が有意に高く、また、女性の甲状腺癌で有意傾向にあった。
すべての癌を合わせてみると、最初の被曝が30歳前の個人においては被曝に応じた有意な増加が見られたが、30歳以降の場合はそれが見られなかった。
Cox比例ハザードモデルによる1シーベルトの過剰相対リスクはすべての癌を合わせた場合、そして乳がんと白血病において有意に高く、固形癌、すべての固形癌を合わせた場合、胃癌、肺癌において有意傾向にあった。
この結果は、長期にわたる低線量被曝が一般公衆の発癌リスクとりわけ白血病罹患リスクを高めること、および、そのリスクは急性放射線被曝の場合と同等であることを示している。
*ホルミシスを否定した2008年の研究
掲載誌:Radiation Research 170(2):143-148. 2008
タイトル:Estimates of Relative Risks for Cancers in a
Population after Prolonged Low-Dose-Rate Radiation Exposure: A Follow-up
Assessment from 1983 to 2005 長期的な低線量被曝による相対発癌リスク推定:1983年から2005年のフォローアップ
研究者:Hwangag, et. al.
コバルト60に汚染された鉄筋をつかって建てられたアパートから長期にわたる低線量のγ線被曝を受けた台湾人住民のコホートにおける発癌リスクへの放射線の影響を調査し、放射線に被曝した他のコホートとリスクを比較した。
分析は、コホート集団のより包括的なフォローアップに基づいており、そこでは、1983年から2005年のあいだに、推定平均48 mGyの超過累積被曝を受けた6242人の中で117の発癌ケースが見られた。
ケースは、台湾の全国癌登録に基づき同定された。
発癌リスクに対する放射線の影響は、比例ハザードモデルを用いて推定され100-mGyの被曝増加に対する危険率(HR100mGy)によりまとめられた。
慢性リンパ球性白血病以外の白血病については、有意な放射線のリスクが観察された(HR100mGy 1.19 ,
90%信頼区間 1.01–1.31)。
乳がんについてもわずかに有意な用量反応関係が見られた(HR100mGy 1.12 , 90%信頼区間0.99–1.21)。
この結果は、調査対象となったコホート集団において、とりわけ乳がんと白血病に関して長期的な低線量被曝と発癌リスクの間に関係があることをさらに支持するものである。
草間朋子 著 放射能 見えない危険
読売科学選書 1990年 読売新聞社 を読んで気のついた点です。
東大医学部の草間先生の著書、"放射線みえない危険"を読みました。
低周波の磁界影響と直接的に関係が無いかもしれませんが、こうした放射線、いわゆる電離放射線の影響や研究の手法を学ぶ事は、低周波磁界等の非電離放射線の影響を調査する為には、それなりに有効です。
興味のある方は、この本を探して、読んで下さい。
この中で非常に興味を持ったことが2点有ります。
1)人間は宇宙線や地球を構成している岩石からの放射線被爆を受けている。 自分の体の中にある骨の成分などのカリウムの一部が放射能を持っている。
これによる自己暴露によって1)の被爆量の2ー3倍の放射線被爆を受けている。
こうした電離放射線は細胞やDNAを傷つける事ができる。
2)これらの外部及び内部の放射線によって、人間の体内の細胞等は毎日被爆し続けており、DNA等は損傷・影響を受けている。
こうした放射線は人類誕生前から地球上に存在し、人間にはこれに耐える機能が備わっている。
仮にDNAが損傷を受けたとしても、DNAの損傷を修理する機能や、損傷した細胞は自ら死んでしまう自己防護機能がある。
自己防護機能で対応仕切れないような大量の放射線被爆を受けると、当然 影響は生じる(原爆の例)。
微量の時は、修復作用でまかなえる、 しかし修復モレ等の可能性はあり、そうした生き残った異常なDNA等が後で 健康に影響を与える可能性はある。
この点から、放射線はできるだけ被爆しないようにする。 これは、放射線はどんな低レベルでも危険であるという現在の一般的な科学的な論拠になっていることです。
1)にあるように、人間の体内に放射線源を持っていることは、変な言い方をすれば "もし、放射線はどんな低レベルでも危険であるとすれば、 そのためには人間の体に含まれている微量な放射線源を無くすために、その人間を殺さなければならない。 生きていく為には 自らを殺さなければならない。" という自己矛盾に陥ってしまいます。
掲載誌: British Journal
of Cancer 31 August 2004, Volume 91, Issue 5
British
Journal of Cancer advance online publication 27 July 2004; doi:10.1038/sj.bjc.6602068
タイトル:Incidence
of childhood leukemia in the vicinity of nuclear sites in France, 1990-1998 1990−98年のフランスの原子力施設周辺における小児白血病の発生率
研究者:M L White-Koning 1, D
Hémon1, D Laurier 2, M Tirmarche 2, E Jougla 3, A
Goubin1 and J Clavel 1
1:Institut National de la Santé et de la Recherche Médicale INSERM - U170-IFR69, 16 avenue Paul Vaillant
Couturier, 94807 Villejuif Cedex, France
概要:
Overall, 670 cases (O) of childhood leukemia were
diagnosed within 20 km of the 29 French nuclear installations between 1990 and
1998 compared to an expected number (E) of 729.09 cases (O/E=0.92, 95%
confidence interval (CI)=[0.85-0.99]).
1990年から1998年にかけて、フランスの29箇所の原子力施設から20km以内で小児白血病と診断された670の症例(O:観察)を対象とした。比較の対照は729.09例(E:期待値)である。
Each of the four areas defined around the sites showed non
significant deficits of cases (0-5 km: O=65, O/E=0.87, CI=[0.67-1.10];
5-10 km: O=165, O/E=0.95, CI=[0.81-1.10]; 10-15 km: O=220, O/E=0.88,
CI=[0.77-1.00]; 15-20 km: O=220, O/E=0.96, CI=[0.84-1.10]).
距離を4階層に区分して解析した結果、統計的には有意ではないが、リスクの低下が見られた。
0-5kmでは観察値=65 O/E比=0.87, 信頼区間CI=0.67-1.10; 距離5-10 kmでは観察値=165, O/E比=0.95, 信頼区間CI=0.81-1.10; 距離10-15kmでは観察値=220, O/E比=0.88, 信頼区間CI=0.77-1.00; 距離15-20kmでは観察値=220, O/E比=0.96, 信頼区間CI=0.84-1.10であった、
There was no evidence of a trend in standardized incidence ratio with distance
from the sites for all children or for any of the three age groups studied.
全ての子供で解析しても、もしくは年齢階層を3階層に区分して解析しても、原子力施設からの距離と発生率の傾向は見られない。(近距離になっても増加の傾向はない)。
Similar results were obtained when the start-up year of the electricity-generating
nuclear sites and their electric nuclear power were taken into account.
原子力発電所の稼動時期や、発電量などを考慮しても、同じ結果であった。
No evidence was found of a generally increased risk of childhood leukemia
around the 29 French nuclear sites under study during 1990-1998.
1990−98年の29のフランスにおける原子力施設の周囲における小児白血病のリスク増加は見られない。
興味をもたれた方は、原著論文を入手され、読んでください。
12.ホルミシス効果は放射線以外でも発見されている
「日経サイエンス」2003年11月号に「少量の毒は薬にも 環境汚染物質は常に有害とは限らないようだ ホルミシスと呼ぶ奇妙な現象の研究が進みつつある」という興味深い記事があります。
興味のある方は、バックナンバーを探して、読んでください。
この中で、以下の図に示す例も紹介されている。公害に関連して対応が必須になっているカドミニウムに関しても、ある一定以上の量の場合は害があるが、ある一定以下の量の場合は、逆に、カドミニウムに暴露したヒト卵巣細胞の生存率が上昇するという効果である。
引用:日経サイエンス 2003年11月号
電力中研の放射線ホルミシスに関する講演会が開催され、聴講した。 110名ほどが、会場にぎっしりと入り、盛況であった。
作成:2005-12-15
電力中央研究所 低線量放射線研究センター 平成17 年度「成果発表と講演の会」
低線量放射線研究〜10年の成果と今後の展開〜
平成17年12月15日(木) KDDIホール(東京・大手町)
■プログラム
◆開会挨拶 13:30 - 13:35 常務理事 岡本 尚武
◆電中研および連携研究の成果より
1. 10年前の問題提起とその解決に向けての取り組み 13:35 - 14:05 低線量放射線研究センター
センター長 石田 健二
2. 原爆被爆者の調査研究からみた放射線のリスク 14:05 - 14:35 長崎大学医歯薬学総合研究科
助教授 三根 真理子
3. 放射線適応応答 〜マウス個体の放射線抵抗性獲得〜 14:35 - 15:05 元大阪府立大学
教授 米澤 司郎
4. 低線量放射線による発がんの一次標的はDNA であろうか? 〜バイスタンダー影響と遅延型影響〜 15:05 - 15:35 京都大学原子炉実験所 教授 渡邉 正己
◆特別講演
5. 低線量影響研究への期待 〜放射線防護の立場から〜 15:55 - 16:25 京都大学放射線生物研究センター
教授 丹羽 太貫
◆総合討論 16:25 - 17:25 座長 低線量放射線研究センター 副センター長 酒井 一夫
◆閉会挨拶 17:25 - 17:30 原子力技術研究所 所長 横山 速一
以下はBEMSJが残してきたメモをまとめたものである。 興味のある方は、詳細は、講演会のレジメを入手して読んでください。
*10年前の問題提起とその解決に向けての取り組み
低線量放射線研究センター センター長 石田 健二
・放射線防護に関して、1950年までの勧告は放射線曝露とその影響には閾値があるとしていた。
・しかし、一部の遺伝学者からはショウジョバエを使った研究成果などに基づく批判があった。
・1958年のICRPの勧告では、線量に注目した。
・1977年に晩発性の影響を示すデータが出てきた。
・1990年、ガンの誘発の着目し、閾値なし直線仮説LNTが定着した。
・1990年頃はまだ低線量放射線に関する研究はほとんどなかった。
・1982年のWolffの研究に関連して、電中研では低線量放射線の研究を、プロジェクトを始めた。
・研究によって、放射線の影響には、線量だけではなく、線量率が大きく関係しているように見える。
・自然界の高い放射線曝露を受けている地域(中国、インド、イラン)における疫学調査も進めている。
・中国の疫学調査によれば、対照群の曝露1.67mSvに対して、高曝露群の曝露は6mSvである。高曝露群に有意なガンの増加はない。遺伝子の突然変異発現の割合は高かった。
・今後は、疫学と生物・動物実験を組み合わせて、低線量放射線の研究を進めていく。
*原爆被爆者の調査研究からみた放射線のリスク 長崎大学医歯薬学総合研究科
助教授 三根 真理子
・広島の放射線影響研究所の研究データは、一部は公開されている。そのデータを再解析している。疫学の研究を行なっている。
・その結果、例として、白血病の発生・死亡リスクと曝露した線量との関係が直線ではなく、0.2Sv以下の曝露ではリスクがないという閾値が見られた。
予稿集から引用
*放射線適応応答 〜マウス個体の放射線抵抗性獲得〜 元大阪府立大学
教授 米澤 司郎
・定年になるまでこの研究を行なっていた。
・0.45GyのX線をマウスに照射した研究で、放射線適応特性(ホルミシス効果)が現れるが、その効果は照射後8日以降に発現し、13日後にピークとなり、21日後以降は効果がなくなるという関係があった。
*低線量放射線による発がんの一次標的はDNAであろうか? 〜バイスタンダー影響と遅延型影響〜 京都大学原子炉実験所 教授 渡邉 正己
・演題に示すように、低線量放射線による発がんは、DNAの損傷によるものではないとは断定できないが、かなり疑わしいというのが研究成果であり、そのために、「だろうか?」と?マークをつけた。
・従来の「放射線(電離放射線)による遺伝子・DNAの損傷 → 突然変異の発生 → 発がん」という発がん仮説は疑わしい。
・インビトロでの研究結果と、この発がん仮説は、結びつかない。 何が影響?
・以下の図に示す例のように、線量を変えて、生存率を調べ、同時に突然変異の発現率と細胞のガン化発生率を調べているが、この2者の関係が一致していない。
突然変異の発現が少ないにも関わらず、細胞のガンの発生が多い。これは理屈では説明できない。何か、細胞のガン化を強烈に促進する機能・要素が別にないと、こうしたことは起こりえない。
・新しい知見として、バイスタンダー効果がある。放射線を浴びた細胞の近くにあって直接放射線照射を受けていない細胞に、間接的な影響を与えている可能性がある。何か照射を受けた細胞から受けない細胞に情報が伝わり、その情報によってそれらの細胞が変化をしている。 また遅延型効果もある。何代かの細胞分裂を繰り返した後に、影響が発現する。
生存率 突然変異の発生率 細胞のガン化率
予稿集から引用
細胞ガン化率
*低線量影響研究への期待 〜放射線防護の立場から〜 京都大学放射線生物研究センター 教授
丹羽 太貫
・ICRPの委員も務めているので、放射線防護も念頭においている。
・LNT閾値なし直線仮説は、放射線防護のために有効な仮説であると、ICRPでは考える。低線量の領域に関してはまだ判っていない。
よってあくまでもリスク管理の手法である。過剰な適用は好ましくない。
・100mSv以下の線量の影響はまだわかっていない、フランスの科学アカデミーでは閾値ありと見ている。
ICRPは直線と仮定している、もっときびしく見るべきという立場もある。
・ICRPでは放射線曝露は発がんに関連すると考えている。昔考えていた遺伝的な放射線の影響は考えなくなってきた。
それば、長崎・広島の被爆者の追跡調査の結果、親が被曝した子供に何も影響があらわれていないという研究結果があり、仮に子孫に影響が残ったとすればそうした影響を受けた子孫の生存率は低くなり、遺伝的な影響は全体から見れば少ない、といえるからである。
・放射線の影響は、発育中の子供などが受け易く、大人になればそうした影響度は低くなる。そうした観点から18歳以上を対象とした職業的な曝露限度値は大きくしてある。
*総合討論 座長 低線量放射線研究センター 副センター長 酒井 一夫
・Q(フロア):ICRPは国際的な権威である。設定した暴露基準値に対して、それより低い曝露に対しては、明確に、「大丈夫・OK・安全である」ということを宣言したり、宣伝したりすべきである。
・A:ICRPの規定は、LNT仮説は、あくまでもリスク管理の規定である。
(その他の総合討論は割愛、内容が難しくメモを残せなかった。)
これは筆者が1991年10月に静岡県 浜岡の原子力発電所を訪問し、発電所内の広報館である原子力館に入り、そこにあった放射線カウンタの指示値をメモしてきた結果である。
原子力館では、自然界に、宇宙から飛んでくる放射線の量をガイガーカウンターで常に測定を行っていた。
その数字は10−12μR/Hであった。
記;2009−8−19
以下は日本人による研究です。
掲載誌:Environmental Research, Vol. 92, pp78-84. 2003
タイトル:Geographical correlation between ambient UVB level
and mortality risk of leukemia in Japan,
研究者:Masamichi Uehara et al.,
概要:
日本人の研究者達がB紫外線(UVB)を浴びるとリンパ性白血病のリスクが高まることを発見した。
オゾン層が少なくなったために、太陽からの紫外線が近年増加している。
皮膚ガンの症例が同じく増加している。
これまで皮膚ガンが紫外線にさらされて起こると知られているがんのただ1つタイプであった。
しかしながら、最近の動物実験から紫外線にさらされたマウスは免疫力が抑制されて白血病を誘発することが実証されている。
日本の南西部では北東部よりT細胞白血病の症例がより多く発見されている。
この現象を説明するのに南部の人がより高レベルのB紫外線にさらされたためであることが考えられる。
従って、北九州市の産業医科大学の研究者達は推定したB紫外線レベルと日本での白血病による死亡リスクとの間に地理的な相互関係があるかどうか調査した。
研究者達は1961―1969年、1970―79年、1980―89年と1990年に46〜62ヶ所の気象観測所から11の地域と38の都市のB紫外線レベルに関する情報を集めた。
さらに1973年から1994年に亘ってこれらの地域で9つの異なったタイプの白血病による死亡率に関する情報を同じく集めた。
研究者達は北部から南部にわたってB紫外線レベルが高まり、2つのタイプの白血病による死亡率が同様に増えたことを発見した。
この正の相互関係は、特に40歳以上の人にみられた。このことはB紫外線の効果が累積的あるいは長い潜伏期間の後に現れる事を示している。
研究者達はB紫外線に多くさらされることが未知の発がん性ウイルスを活性化し2つのタイプの白血病を起こすという仮説をたてた。
しかしながら、この仮説は将来証明されなければならない。
関心のある方は、この論文の全文を入手して読んでください。
記:2009−8−20
研究者:I A F van der Mei at al.,
タイトル:Past exposure to sun, skin phenotype, and risk of
multiple sclerosis: case-control study,
掲載誌:BMJ, Vol. 327, pp316-20. 2003
「多発性硬化症を避けるために日光を浴びるべき」
オーストラリアの研究者達は、6歳から15歳までに沢山日光を浴びることや日光による皮膚の大きな破損が多発性硬化症のリスクの減少に関連しているという新しい証拠を発見した。
多発性硬化症(Multiple sclerosis、MS)は自己免疫疾患でその病原ははっきりしないが、神経の炎症疾患である。手足の衰弱や麻痺、ぼんやりとした視覚、困難なバランス、そして嘔吐のようないろいろな症状をともなう。
そしてMSは(赤道からより離れた)より高い緯度においてより多く発症していることが知られている。
この事実を説明するのに考えられる1つの理由は、より高い緯度に住んでいる人々は一般により低いレベルの紫外線にさらされているということである。
この仮説を試すために、オーストラリアのタスマニア大学の研究者達はMS患者136人と性別と年齢が一致した健常人272人を調査した。
被験者達は赤道から最も遠いオーストラリアのタスマニア島の住民であった。
1999年3月と2001年6月の間に、研究者達は過去の冬と夏にどのくらい日光にさらされたか、日光をさけるためにとった処置、ビタミンDの使用、病歴と多発性硬化症と関連していると思われる他の要因(喫煙やメラニン濃度)についてMS患者と健常人からアンケートをとった。
また、研究者達は同じく皮膚の破損と皮膚の色を評価した。
研究者達は、6歳から15歳までの年齢により多く日光を浴びること(夏に1日平均 2―3時間日光を浴びること)が多発性硬化症のリスク70%減少に関連していることを発見した。
けれども、MS防止のためには(夏より)冬に日光により多くさらされることがより重要であるように思われた。
さらに、研究者達は皮膚がより白い人は多発性硬化症をより早く発症するリスクが高く、日光のためにより大きい皮膚損傷をした人はその反対にリスクが低くなることを発見した。
この研究は、紫外線をあまり浴びないことがMSの原因であるかもしれないことを示唆している。
関心のある方は、この論文の全文を入手して読んでください。
記:2009−9−23
日焼けマシンの発がん性に関する記事が、以下の朝日コムにありました。
http://www.asahi.com/health/news/TKY200907300398.html
以下 一部を引用します。
************ ************
「日焼けマシン、発がんリスク最高レベル」 WHO
2009年7月30日23時30分
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、日焼けサロンやスポーツジムで使われ、人工的に紫外線を出す「日焼けマシン」の使用は発がんリスクを確実に高めるとして、発がんリスク分類でもっとも危険性の高い「グループ1」に引き上げた。
IARCは、日焼けマシンと皮膚がん(メラノーマ)との関係を調べた19論文を分析。
30歳未満で日焼けマシンを使った経験のある人は、使ったことのない人より75%もリスクが高いことがわかった。
日焼けマシンの使用による、眼球の色素細胞にできるがんのリスクも高かった。
以下 略
***************** **********
関心の方は、上記のニュースの原典を読んでください。
記:2009−10−19
放射線ホルミシスに関する判りやすい解説論文を見つけました。 1997年の医学雑誌に掲載されたものです。
関心のある方は、この論文を入手し、読んでください。
タイトル:放射線ホルミシスについて
掲載誌:日本放射線技師会雑誌(1997年5月号掲載)
研究者: 加藤幸弘 名古屋西クリニック病院 放射線室
【要旨】
多くの診療放射線技師は、医療の最前線で放射線を取扱う業務に携わり、画像・放射線の専門職として幅広い知識・高い技術力が求められている。
なかでも放射線被曝に関するテ−マは重要である。
ICRPなどは放射線被曝における確率的影響については「しきい値は存在しない」と仮定した“仮説”を採用し、その直線モデルから「低線量においても放射線は危険である」としている。
しかし、1980年、Missouri大学Luckey教授による仮説「放射線ホルミシス」は、新しい概念「低線量なら放射線は生物に害を与えず刺激に働く。
放射線は生物に必須である」を打出している。
この仮説を認めるか否かではなく、放射線が生物におよぼす影響について関心持つ事、その中の[放射線ホルミシス]という概念を知る事が重要であると考える。
記;2009−11−4
放射線医学研究所ニュース1997年第4号に掲載された研究報告
http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/9704/hik3p.html
にあった報告から一部抜粋して紹介。
関心のある方は、元ネタにアクセスしてください。
********** 一部 引用 **************
タイトル;低線量前照射による放射線抵抗性の誘導
研究者:大山ハルミ、湯川修身、能勢正子、中嶋徹夫、五日市 ひろみ
概要:
マウス個体の実験系で、X線50cGy前照射、2週間後に致死線量を照射し30日目までの生存率を観察すると、図のように前照射した群では高率の生存が認められ、すなわち著しい放射線抵抗性の誘導が確かめられた。
しかも、この生残マウスは、体重、造血能低下、体毛の脱色などの異常があるが、長期生存した。
また、前照射により、高線量照射による造血能低下も抑制され、造血系での抵抗性誘導が起こっていることも明らかになった。
図 0.5Gy照射、2週間後に6.5Gy照射したC57Bl、オス、マウスの生存率変化
上記の系は、低線量照射が後続の高線量照射に対しきわめて抵抗性とすることを示しており、現在、その誘導機構の解析を進めている。
記:2020−1−31
食品安全情報blog2にあった情報 一部引用
https://uneyama.hatenablog.com/
[SFA ] 放射線と食品安全
Radiation and Food Safety
Friday, December 27, 2019
https://www.sfa.gov.sg/food-information/risk-at-a-glance/radiation-and-food-safety
序
科学における放射線の定義は波や粒子によるエネルギである。
一般の会話において、放射線は有害なイオン化放射線を指す。
それは、化学結合を破壊するエネルギをもつ粒子で、DNAに変異を引き起こし、がんのリスクを増加させるものである。
放射性物質はエネルギが大きく、放射線を放出しながらより安定した物質形態へと自然崩壊する不安定な物質である。
ヒトは大気圏外(宇宙放射)、環境、医療用スキャン及び食品からの放射に常に暴露されしている。
例えば、環境において、放射性ガスであるラドンは天然に我々の吸っている大気中に見られる。
ジルコンのようないくつかの宝石用原石にも天然に放射能がある。
例えば、ウラン、トリウム及びアクチニウムのような他の放射性元素は天然に地球の鉱物に存在する。
この記事では、食品中の放射性物質の発生と安全性に関する詳しい情報を提供する。
食品中の自然放射線とは何か?
我々が常に食品中の自然放射線に暴露していることを知っていましたか?
すべての食品は天然に放射性物質を含む。
健康に不可欠な栄養素であるカリウムは、わずかな割合で放射性形態(カリウム40)を含む。
もう一つの放射性元素であるラジウムも、一般的にカリウムを含む食品に見られる。
そのため、すべての食品、特にバナナ、人参、ジャガイモ、葉物野菜、塩、ピーナッツ及び赤肉のようなカリウム高含有の食品は「放射能がある」。
放射能は我々のDNAを損傷する可能性があるが、身体はその損傷を修復することができる。
食品や環境からの自然放射線は、大気圏外からの宇宙放射と併せて、ヒトの体が十分耐容できるレベル内である。
Chart 1は典型的なヒトの放射線の暴露量を示す。
SFAの食品安全監視制度の一環として、SFAの国立食品科学センター(NCFS)は卵、野菜、牛乳及び魚といった一般的な食品の放射能濃度を定期的に監視する。
調査した食品の放射能レベルは自然に発生するレベルと一致していた。
携帯電話の使用 0
1年間原子力発電所から80q圏内に居住 0.00009
バナナを1本食べる 0.0001
歯医者でX-rayを1回撮る 0.005
1日当たりの自然放射 0.01
6時間の飛行 0.04
1年間毎日1.5箱のタバコを吸う 36
放射線致死量 10,000
ミリシーベルト(mSv)単位、体内に吸収された場合の放射線暴露の危険性を示す
Chart 1 –様々な源からの放射線暴露の比較
食品中の人工放射能―食品安全性の懸念になるか?
食品中の人工放射能は、大部分は原子力発電所事故からのフォールアウトによるものである。
そのような事故の間は、大量の人工放射性物質がガスやほこりとして大気中に放出される。
有名な原発事故は1979年のスリーマイル島(米国)原発事故、1986年のチェルノブイリ原発事故(ウクライナ)及び2011年の福島原発事故(日本)がある。
これらの人工放射性物質は野菜、土壌及び水に堆積し、その後、我々が食べる動植物がそれらを摂取する。
自然発生のものと比較すると、これらの原子力発電所から放出された放射性物質は、有意に濃度が高く、それゆえ、深刻な健康問題を引き起こす可能性がある。
原発事故に影響を受けた地域/国からの食品を食べて安全であることを保証するためにSFAは何をしているのか?
SFAには、輸入食品も国内現地生産の食品も食べて安全であることを保証するための適切なシステムがある。
原発事故のフォールアウトの場合、シンガポールへの食品輸出調達において、SFAは状況の評価を行い、輸入の差し止めのような必要な措置を講じる。
輸入される食品もまたSFAの査察と検査を受ける。
SFAの食品安全要件に満たない食品は販売が許可されない。
今日、これらの人工放射性物質からの放射能の多くは自然崩壊過程により年月をかけ減衰した。
密な監視やサーベイランスを介し、SFAは食品安全要件に従っている場合、原発事故の影響受けた地域/国の食品輸入の制限を緩和したり、差し止めを解除したりする。
そのため、影響をうけた地域/国の食品はある程度の人工放射能を含むと予測される可能性があるが、これらは十分安全な濃度の範囲内になる。
記:2010−1−22
毎日新聞 2008年8月4日の記事です。
********** 一部 引用 *************
低放射線量 癌死高率
広島原爆 非被爆者の2・7倍も
爆心地から2・7〜10km離れた場所で被爆し、原爆のさく裂に伴う放射線を直接浴びた量が少ない極低線量被爆者でも、被爆していない人よりがんによる死亡リスクが高いことが、名古屋大などの研究者グループの疫学調査で分かった。
放射線影響研究所(放影研)が寿命の追跡調査をしている広島被爆者の集団と、広島、岡山両県の住民データを非被爆者群として比較した。低線量被爆者と一般住民を比べた初めての本格的な研究で、「黒い雨」による残留放射線などの影響が表れた結果と分析している。
以下 略
*********** ************
この研究の詳細は以下の雑誌に掲載されています。
************* ************
掲載誌:Environ Health Prev Med.
2008 September; 13(5): 264–270.
タイトル:Hiroshima survivors exposed to very low doses of
A-bomb primary radiation showed a high risk for cancers
研究者:Tomoyuki Watanabe, Masaru Miyao,
Ryumon Honda, and Yuichi Yamada
概要
目的:本研究の目的は,寿命調査(LSS)の原爆被爆者のがんのリスクを,広島県の全人口からなる非曝露群(広島県全住民対照群(HPCG)),隣接する岡山県の全人口からなる非曝露群(岡山県全住民対照群(OPCG))と比較することである。
方法:調査対象は,寿命調査(LSS)12報で報告された広島の被爆者集団(LSS−Hグループ)と,広島県全住民対照群(HPCG)及び岡山県全住民対照群(OPCG)からなる比較対照群であった。
本研究では,寿命調査(LSS)12報における広島の被爆者集団の年齢構成を,原爆が投下された1945年に0歳から34歳であった広島・岡山県民の集団と同等の年齢構成に補正した上で,広島の被爆者集団が,観察期間中,前記広島・岡山県民の集団なみに死亡したとして,寿命調査(LSS)12報における広島の被爆者集団の全死因及び各種のがんによる死亡の期待数がどれほどになるか推定した。
そして,広島県全住民対照群(HPCG)および岡山県全住民対照群(OPCG)を基準とする広島の被爆者集団(LSS−Hグループ)の2つの標準化死亡比(SMR−H)と(SMR−O)を算出して比較した。
結果:低線量及び極低線量の被爆者分類にあっても,広島県全住民対照群に対する標準化死亡比(SMR−H)と岡山県全住民対照群に対する標準化死亡比(SMR−O)は,全死因による死亡,全がん,固形がん,男性の肝臓がん,女性の子宮がん,肝臓がんについて,それぞれ有意に高かった。
この結果は,仮に1986年線量推定方式(DS86)による線量推定が正しいとすると,極低線量被爆者にあってさえ,がんのリスクが有意に増加していることを示すものである。
結論:DS86による線量推定については,爆心地から遠距離の地域の線量を過小評価しているとの批判がなされてきた。
寿命調査(LSS)において無視されている残留放射線の寄与や,DS86によって過小評価された中性子線の寄与が,かなり高いのではないかと示唆された。
***************** ***********
関心のある方は、当該の新聞や研究論文の原文(英文)を読んでください。
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/hyoji/info/080522radium.html <リンク切れ>にあった内容
東京都では以下の様な調査を行い、結果を公表しています。
************** 一部 引用 ****************
「ラジウム効果をご家庭のお風呂で」などの表示にご注意!〜「微量放射線による効果・性能をうたった商品」の表示を科学的視点からチェックしました〜
消費者の健康志向などを背景に、微量の放射線※1を発生させることにより「細胞を刺激して体の恒常性を高める」、「肩こりやだるさが和らぐ」等、一見、科学的な根拠に基づくかのような効果・性能をうたった浴用品や装身具などの商品が販売されています。
東京都では、こうした「微量放射線による効果・性能をうたった商品」について、不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景品表示法」という。)の観点から調査を実施し、表示に関する科学的視点からの検討を行いました。
その結果等について報告します。
「微量放射線による効果・性能をうたった商品」とは
本調査では、放射性物質を含む鉱石やセラミック等を用いた浴用品及び装身具のうち、微量の放射線を放出することにより健康等への効果が得られることを表示し、微量の放射線による様々な効果・性能(ホルミシス効果をうたっている商品を、本調査では「微量放射線による効果・性能をうたった商品」とした。
なお、商品を浴槽に入れたり、身に付けるだけでホルミシス効果が得られるとした浴用品5商品及び装身具1商品を調査対象とした。
調査結果の概要
(1) 商品から、微量の放射線が出ているとしても、販売事業者が提出した試験結果からは、「それが人体に効果がある」と結論付けることはできなかった。
したがって、広告の中で「ホルミシス効果がある」等と断定的に表示することは、客観的事実に基づくものと認めることはできない。
2) 「北投石」や「ガスタイン鉱石」などの健康上の効果をうたった表示(例えば、「血流をスムーズにして、細胞を活発にします」等)と当該商品に「ホルミシス効果があること」との関連性については、表示の根拠として提出された資料からは不明確であり、客観的事実に基づくものとは認められなかった。
(3) 今回の調査対象とした商品は、すべて通信販売によるものであったが、販売事業者の中には、販売商品に関する十分な情報や根拠を持たないまま、広告の表示を行っているものがあった。
消費者へのアドバイス
今回、調査した「微量放射線による効果・性能をうたった商品」の効果・性能表示は、客観的事実に基づくものとは認められないものでした。
事業者からの情報だけをうのみにせず、一見、科学的な根拠に基づくかのようにみえても、多角的に情報を収集したり、東京都消費生活総合センターに相談するなどしたりして、商品やサービスを合理的に選択するようにしましょう。
**************** ***************
関心のある方は、上記のサイトにアクセスしてください。
記:2012−11−30
原子力安全委員会・放射線障害防止基本部会・低線量放射線影響分科会報告書;低線量放射線リスクの科学的基盤‐現状と課題‐,2004年3月の資料が公開されていました。
関心のあるからは、ダウンロードして全文を読んでください。
様々な情報、議論が掲載されています。
以下は、纏めの部分をOCRでテキスト化して紹介します。(OCR化で文字化けがあるかもしれません。)
*********************************
参考資料5 低線量放射線リスクの科学的基盤一現状と課題−
平成16年3月
低線量放射線影響分科会
まとめ
現行の公衆を対象とした低線量放射線に対する我が国の防護基準はICRP1990年勧告に準拠している。
ICRP勧告は、ヒトを放射線の害から守るための腺源規制の側面からみた運用上の防護基準であって、その根底には、放射線の腺質、線量配分のほか、組織・臓器感受性、性差、年齢差などの生物学的変動要因を考慮した放射線リスクの数量化があり、それに基づく総体としての容認可能な線量域が勧告されている。
従って、勧告にある防護基準は必ずしも集団の個々人に対する放射線リスクの評価基準を示すものではない。
しかし、最近になり、その防護基準の基盤となる放射線リスクの数量化に直接関係するような新しい生物学的現象が次々と明らかになりつつある。
本分科会では、特に低線量域の放射線に対するこのような新しい生物学的現象に視点を置き、ICRP1990年勧告では取り上げられていなかったか或いはその後に明らかとなってきた生物学的現象が防護基準、安全規制にどのようなインパクトを与えるか、リスク評価の観点からその現状と課題について検討を行った。
高線量急性被ばくの場合、広島・長崎の原爆被爆者のデータは、その精度においてリスク評価の骨格をなすものであり、その線量効果関係は防護基準の基盤としても十分な説得力を持つものであるが、放射線防護上問題とされる低線量、特に100mSv以下の放射線のリスクにそれをそのまま直接適用できるかどうかについては、原爆被爆者のデータも含め、それを積極的に肯定あるいは否定するデータを得るには至っていない。
最近急速に関心の高まってきている突然変異性隣接効果、ゲノム不安定性の誘導、免疫監視機構の活性化等は低線量放射線発がんの修飾要因として注目されるが、現在のところ発がんに対する作用機構とその大きさは明らかでなく、急性被ばくにおけるLNT仮説を根本から問いただすまでには至っていない。
低線量率慢性被ばくや低線量反復被ばくのリスク評価には、線量・線量率効果係数として統一的に扱われているように、低線量急性被ばくのリスクの単純なる積分値がリスク係数となっている。
しかし、持続的放射線場における生体応答のダイナミズムを無視したこの物理学的一般化理論の正当性に関しては最近国際的にも議論の多いところである。
放射線に対する生体応答が次にくる放射線の生物効果を左右するという点で、急性被ばくの場合と事情は全く異なる。
低線量放射線に対する適応応答、適応的隣接効果、DNA修復能の活性化、アポトーシス監視機構、レドックス制御機構の活性化、逆線量率効果など低線量率放射線被ばくのリスクに直接関係する新しい生物現象が注目される。
さらに生体内では組織の細胞分裂と分化の動態が最重要であるが、これを考慮したリスク関連研究は皆無に近い。
低線量放射線のリスクは、種々の放射線利用や原子力開発に伴う安全規制と直接関係する重要な間趣であるが、利用開発の推進や公益性の論理とは分離独立した立場に立ち、その科学性と中立性から評価されなければならない。
その中から国民的合意に基づく合理的な安全指針が構築される。
低線量放射線影響の研究は、今や生命科学と深く係わり、一種の新しい型の巨大科学とまで言われている。
生物・生命原理の上に立った新しい総合的研究戦略が求められている。
低線量放射線影響に関係する上述の新しい生物現象の発見はいずれも研究のニーズからではなくシーズから生まれ、その展開研究が放射線防護に新しいインパクトを与えるようになってきている。
防護基準や防護指針など安全確保の科学的基盤の確立には、学術研究を申し、とする大学と研究開発を使命とする研究開発機関が連携・協力により総合的に取り組む必要がある。
安全指針が科学的合理性と国民的合意に基づいて決められるためには、放射線影響の研究が純正科学として社会に素直に受け入れられ、科学教育を通して正しく理解されなければならない。
世界で唯一の原爆被爆国である我が国では、原子力そのものに対する不信と不安があるといわれる。
しかし、我が国の放射線影響研究は、この不幸な出来事を原点として発展し、行政と科学者が一体となって線量と影響を定量的にとらえる科学的基盤の形成に貢献してきた。
最近では、マスコミ報道にも科学性を重視した報道が多くなり、線量と影響評価を正しく見つめる姿勢がうかがわれる。
放射線影響を科学としてとらえる国民的理解が醸成されつつあるといえる。
放射線の安全規制、容認レベル、防護基準の国民的合意の基盤として、低線量放射線影響の科学としての確立は重要である。
我が国では、放射線影響研究に関連する学会や団体、研究機関や研究組織の数、さらに研究者数の多さにおいて、世界に類例が無い。
このような状況で、さまざまな研究者の情報交換の組織を持ち、環境放射能研究、保健物理学研究、放射線生物学研究が一体となって放射線影響の研究では世界をリードする研究業績をあげてきた。
また、低線量放射線影響の研究でも、実証型研究・展開研究から基礎研究に至るまで幅広い分野で先端的研究が進められている。
それらは、目的、方法、規模、設置形態など様々であるが、得られた成果を科学として客観的に整理統合することによって低線量放射線影響の理解に活用することができる。
しかし、行政主導型の研究組織や行政機構・産業機構の一部として設置されている研究組織にくらべて、学術研究と人材育成を担う大学における研究体制は、その研究実績の高さに比してまことに弱体である。
我が国の財政事情や構造改革の方向性を考えれば、共同利用研究や総合研究機構など新大学法人の組織的枠組みを越えた有機的な研究・教育推進体制の強化などによるバランスのとれた取り組みが必要である。
我が国は、放射線影響研究の成果を科学的にレビューし、行政あるいは世界に発信する権威ある組織を持たない。
これは我が国の国民に不利益であるのみならず、国際的にも誤解を招く結果にも繋がりかねない。
原子力安全を支える学術的基盤をさらに堅固なものとするためには、社会的にも国際的にも認知された中立性と科学性の保証された独立の権能を有する諮問組織の設置が望まれ、それによってはじめて、世界をリードする原子力安全の基盤が確立される。
本報告の主旨が十分に生かされることを切に念願するものである。
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記:2011−2−3
*日光過敏症とは
メルクマニュアル家庭版
http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec18/ch214/ch214c.html からの抜粋です。
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皮膚の光線過敏症
光線過敏症は日光アレルギーとも呼ばれ、日光によって引き起こされる免疫システムの反応です。
光線過敏症には日光じんま疹、化学物質による光感作、多形日光疹などがあり、太陽光にさらされた皮膚にかゆみを伴う皮疹ができるのが特徴です。
日光じんま疹は、日光にさらされてわずか数分で現れるじんま疹、つまり大きくて赤く、かゆみを伴う発疹です。
日光にあたって10分以内にじんま疹が皮膚に現れ、日光にあたらない状態になると1〜2時間以内に消えます。
このじんま疹が広範囲にできると、頭痛、体力減退、吐き気などを伴うことがあります。
化学物質による光線過敏では、日光に短時間さらされた後に、皮膚に赤みや炎症、ときには茶色や青の変色が生じます。
この反応は日焼けとは異なり、ある種の薬や化学物質を服用、または皮膚に塗った後で日にあたった場合にしか現れません。
こうした化学物質には、一部の人を紫外線に対して過敏にする作用があります。
多形日光疹は、日光に対する異常な反応で、原因はわかっていません。
これは日光に関連する皮膚の問題として最も多いものの1つで、女性や、日にあたる機会があまりない人に多い傾向があります。
症状としては、日光にあたったところに複数の赤い隆起や不規則な形の赤い皮疹が生じます。
診断、予防、治療
光線過敏症を診断するための特別な検査はありません。
皮膚が露出した部分だけに発疹が出た場合は、光線過敏症を疑います。
その他の病気、服用した薬、皮膚に塗った薬や化粧品などを詳しく調べると、光線過敏症を起こした原因を特定するのに役立ちます。
原因が何であれ、日光に過敏な人は、紫外線を防止できる衣類を着用し、日光を極力避け、日焼け止めを使うべきです。
光線過敏を引き起こす薬や化学物質は可能ならば中止します。
*日光過敏症患者にとっては、白熱電球から蛍光灯電球への切り替えは問題であるとした2008年の英国皮膚科医学会の声明
http://www.bad.org.uk/site/1289/default.aspx <リンク切れ>にあった内容
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THE BRITISH ASSOCIATION OF DERMATOLOGISTS
Eco light-bulbs may cause reactions in patients with light sensitive skin
diseases
エコー電球は日光過敏症患者に問題を呈する
For immediate release 03.01.2008
政府は2011年で伝統的な白熱電球を禁止しようとしている。
白熱電球は光線過敏症患者にとっては、唯一の電気照明器具である。
政府は真にこうした影響を受ける患者のために、蛍光灯照明では生活ができない人に罰を与えることのないように、白熱電球の供給を維持することを望む。
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関心のある方は、上記の声明の全文を読んでください。
BEMSJ注:蛍光灯電球、コンパクト蛍光灯電球とよばれる照明器具に関しては、紫外線の漏洩を抑える手段が肝要なようです。
ねじったパイプの形をした蛍光灯電球は、むき出しの状態ではなく、2重のガラスによる紫外線の遮断が必要かもしれません。
紫外線は石英ガラス以外のガラスは透過しませんが、コンパクト蛍光灯電球の場合は、ねじったりして成型することから、ガラスの厚さが薄く、紫外線が漏れてしまうのかもしれません。
記:2011−2−3
*電磁波市民研会報64号(2010−5−30発行)の記事
以下の小さな囲み記事が64号に掲載されていた。
*元ネタの探求
元ネタは何か? 市民研の大久保貞則氏に問い合わせたが、元ネタの資料は見つからなかったと。
そこで、2日ほどかけて、日本語と英語の関連しそうなキーワードで、ネットを検索した。
そして、上記の元ネタにある被害の画像を見つけた。
2009年1月にカナダのテレビ放送Global
Television Networkで放映された番組「the
investigative television program 16:9 The Bigger Picture」の一連の番組の中の「Dirty
Electricity - Part 1 - Rays of Rash」に元ネタがあった。
この番組は蛍光灯電球に関する番組で、以下に示すカナダ人の女性が、蛍光灯電球を使用したら20分程度で画像に示すような皮膚障害、極端な日焼けを起こした とい事例であった。
白人は太陽光や紫外線に弱く、日焼けしやすいのかもしれないが、画像を見るとかなりひどい日焼けである。
この番組の最後の方では、以下に示すように、紫外線の放射を少なくするために、ねじった形のガラス管をさらに、白熱電球と同じ形状のガラスで、2重に覆った形の蛍光灯電球の使用を推奨していた。
日焼けの実例
推奨されていた2重ガラスの蛍光灯電球
BEMSJ注:こうした蛍光灯電球から放射する紫外線は、どの程度か? どこかにデータがあれば、入手してみたいものである。
そして、ACGIHやICNIRPの光に関する曝露基準値と比較してみたいものである。
記:2011−2−9
以下の文書が公開されている。英文報告書の中から気になるポイントだけを抜粋する。
関心のある方は、原文全文を入手して読んでください。
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Federal Office of Public Health FOPH スイス連邦公衆衛生局
発行 2010年3月30日 30 March 2010
題 Fact Sheet Energy-saving
lamps ファクトシート エネルギー節約電球
むき出し型蛍光灯電球 2重ガラス防護型蛍光灯電球
抜粋:
・ランプの型式にもよるが、ランプの直近では誘導電流に関する曝露基準の10%から55%に上る曝露がある。
この曝露はランプからの距離をとれば、急激に減衰し、20cmの距離では曝露基準の2%から10%になる。
・紫外線の放射
むき出し型の蛍光灯型電球は、紫外線を完璧に防護することができないと思われ、少量の紫外線が漏れ出す。
20cm以上の距離をとらない人は数時間の電球からの紫外線曝露で、紫外線の過剰曝露による皮膚の赤面化を経験するするかもしれない。
2重ガラス防護型の電球では、紫外線の漏洩は非常に少ないか、紫外線の漏洩はない。
・推奨として、紫外線の曝露と電界曝露を最低限度にするために、長時間居ることになる作業場や休憩所などでは、エネルギ節約型電球から最低30cm離れるべきである。
・25kHzから70kHzの中間周波数の電磁界への曝露
さまざまな蛍光灯電球からの電磁界を距離15cmと30cmで測定した。
磁界は全ての電球でICNIRPの参考レベル(1998年)に比べると50分の1から100分の1と、非常に低かった。
対照的に、電界は距離15cmでは参考レベルの5倍までという強さであった。
・電界によって体内に誘導する電流は、計算の結果、距離2cmで、ICNIRPの基本制限に対して、最も悪かった電球では、55.7%に上った。
・エネルギ節約型蛍光灯電球は、日光過敏症の人に影響を与える恐れがある。
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記:2011−2−9
以下の報告書は、上記のスイス連邦公衆衛生局のファクトシートの元になった資料とされる。
この報告書もWEBで公開されている。
関心のある方は、全文英文の原典を入手して読んでください。
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発行:ITIS Foundation
題:Final Report: Assessment of EM Exposure of
Energy-Saving Bulbs & Possible Mitigation Strategies
最終報告:エネルギ節約型電球からの電磁界曝露評価と可能な対応策
発行日:2010年3月21日 March 21, 2010
抜粋
・最近発行されたIEC規格62493(照明機器からの電磁界の測定評価法)は十分ではなく、再検討が必要である。
・11種の蛍光灯型電球、2種の直管の蛍光灯、2種の白熱電球、2種のLED電球を対象として、放射する電磁界を測定した。
結果として、人の体内に誘導する誘導電流は、放射する磁界ではなく、放射する電界によるものであった。
蛍光灯電球の2cmの距離で、体内に誘導する誘導電流はICNIRPの基本制限に対して9%から56%であった。
その他の電球では十分に低かった。
・蛍光灯電球は、ICNIRPのガイドラインに「自明で適合*」とは言えないことが分かった。
*注:個別の測定などを行わなくても、適合していると判断できるレベルであること
・電界の測定 ほとんどの蛍光灯電球から、15cmの距離では、ICNIRPの電界強度に関する参考レベル(87V/m)を超えていた。
もっとも強い電界は、433V/mで、参考レベルの5倍であった。
電磁波ではないが、最近使用され始めているLED照明では、光のちらつき(フリッカー)が問題になっている。
http://www.19inch.jp/led/news/led_flicker_trouble.pdf にあった内容から一部抜粋します。
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LED照明に「フリッカー」現象緊急レポート
2010/9/3
有限会社三晃電設
LED照明におけるフリッカー現象 「チラつきで体調不良」
□ 記事の内容
札幌市が市役所の蛍光灯9000本をLEDに取り替えたのは20103月のこと。
ところが。一部の職員が「目が疲れる」、「気分が悪い」と体調不良を訴えた。
市のアンケート調査の結果、「業務に支障がある」と訴えた職員の割合が7.4%に及んだ。
体調不良を訴えた職員の執務室のLED蛍光灯は細かく点滅していた。
□ 原因分析
これは「フリッカー」と呼ばれる、ちらつきが原因です。
LEDは直流で光るため、一般の交流電気(AC)を直流(DC)に変換させるための回路をLED照明に内蔵する。
問題になったLED照明器内蔵の整流器は、交流電圧をそのまま凹凸のある直流の波形に変換し、LEDを点灯している。
そうすると札幌市の周波数は50Hzであるので、この整流器を介した電気は1秒間で100回の頻度でONとOFFを繰り返している訳である。
LEDは蛍光灯と違って残光時間がなく、明るさが瞬時に変わるものである。
その結果、ちらつきを感じやすくなる。
□ メーカの対策
全てのLED照明に対し、電圧が0に落ちず、変化も少ない回路を備えた別のLED照明を納入し直すことにした。
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記:2011−12−7
テレビジョンスタジオなどでの明るい照明器具に関する研究結果です。
タイトル:テレビジョンスタジオおよび劇場紫外線および光源からの紫外線おび青色光
Ultraviolet radiation and blue light from Photofloods in television studios and
theaters.
研究者:HIETANEN M T K,et al:
掲載誌:Heath Phys VOL59,NO,2 PAGE.193−198 1990
概要:
標記施設で一般に使用されている575から5000Wの写真用光源について、可視・紫外放射線のスペクトルと強度を、スペクトル放射計を用いて2.25− 10mの位置で測定。
テレビスタジオでは網膜傷害防止のために電球の直視は1日に数分以内に限るべきことを勧告、
眼の傷害は雪原など自然環境以外でも起こり得ることを述べた。
眼に適切な値の数倍である輝度についても計算した。
BEMSJはこの論文のフルテキストは読んでいません。
関心のある方は、原著全文を入手して読んでください。
記:2011−12−8
蛍光灯からの紫外線による変異原性の試験結果です。
タイトル:サルモネラにおける白色蛍光の変異原性 Mutagenicity of cool white fluorescent light for Salmonella.
研究者:HARTMAN Z,et al
掲載誌:Mutat Res VOL.260,N0.1 PAGE.25−38 1991
概要:
家庭や職場で一般的に使用されている蛍光灯の変異原性をサルモネラにより調べた。
塩基置換変異をもつ株では高い変異原性があった。
370nm以下の波長をフィルタで防ぐと,変異原性が除去され,蛍光灯から漏れてくる紫外線が変異原性に関与していると推定した。
最近導入されたソフトホワイト燈では変異原性が1/10だった。
BEMSJはこの論文のフルテキストは読んでいません。
関心のある方は、原著全文を入手して読んでください。
記:2013−11−28
古いメモを見つけました。
2001年7月のメモです。
フラットパネルディスプレィ製造技術展の結果
本日ビッグサイトに出かけ、この展示を見てきました。
出展しているとある会社の人間から、暇だろうから見にきてはと招待状を貰ったからです。
光源に関連して、光源からの紫外線関係の情報が得られないかとこの点に注目して見ましたが、特に有益な情報は得られませんでした。
一つだけ 情報がえられた。
トッパンの紫外線放射計 UVR-2(本体)とUD-25(中心感度254nmのUBC流域のセンサ)が実物展示をしていたので、 実測を試みました。
説明員は、こうした生活環境下ではUVCは測定できない位に低レベルだといっていたので、説明の展示パネル(明るくする為にかなり明るい多数の蛍光灯が入っている)の近くで測定をして見ました。
結果は3.6μW/cm2もありました。
ACGIHの規定によれは 8時間連続暴露可能なレベルは これらのUBCに対しては0.1μW/cm2であり、15分までの限定時間であれば3.3μW/cm2までとなっています。
この実測から、「ちょっと明るい」というか「かなり明るい蛍光灯」の場合は、蛍光灯のガラスで遮断され、プラスチックの説明展示パネルで更に遮断されるといっても、それなりのUBCが洩れているということが言えます。
記:2015−3−28
会社名 株式会社ベストエコロジー(研究開発ベンチャー) のサイト
http://www.b-eco.com/LED.pdf にあった内容です。
許諾を得て、以下に転載します。
「 ≪小論文≫ 蛍光灯とLED灯は何が違うか」より、蛍光灯とLEDの紫外線領域の発光スペクトラムの違いです。
以下の勧告が出ている。
Emissions from compact fluorescent lights 電球型蛍光灯からの輻射
9 October 2008
電球型蛍光灯から紫外線が出ているので、注意する。
Fig.1.
Typical designs of open (single envelope) fluorescent light bulbs for which HPA
precautionary advice applies.
They should not be used where people are likely to be in very close proximity
(less than 30 cm / 1ft) to bulbs for prolonged periods (more than 1 hr a day).
図1:オープン型(1重ガラス)型の電球型蛍光灯の代表的な形式で、この形式のものは健康保護庁の予防原則に関する勧告を適用する。
この型の電球型蛍光灯は、長時間(1日にい時間以上)、電球に近接(約30cm以内)するような場所では使用すべきではない。
Fig.2. A typical design of an
encapsulated (double envelope) compact fluorescent light bulb for which
precautionary measures are not needed.
Ultraviolet radiation is absorbed by the outer glass container. They can be used
anywhere in the home.
図2:カバー付(2重ガラス)の電球型蛍光灯の代表的な形式で、この形式のものは健康保護庁の予防原則に関する勧告を適用する必要はない。
紫外線は外側にガラス被覆で吸収される。この方式は家庭内のどこでも使用することができる。
近畿大学 「原研ニュース」にあった記事からの抜粋です。
関心のある方は、当該のニュースを見てください。
第2号 2004年5月発行から
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連載Quiz「環境とエネルギ」
Q.スウェーデンでは1980年に脱原子力の方針が議決され、原子力発電所の数は徐々に減っている。
A.X
スウェーデンで脱原子力の方針が出された1980年当時の原子力発電所数は7基、現在は11基であり4基増加している。
正確には、1基が運転停止し、5基が新たに運転開始した。脱原子力政策の採択に当たって、@原子力に代わるエネルギ源が開発されること、A脱原子力政策によって経済・雇用に悪影響がでないこと、の2点が前提条件とされていたが、このいずれの条件も満たされなかったためである。
ノーベル経済学賞受賞者サムエルソンの著作「サムエルソン経済学」の共著者でもあるDr.D.ノードハウスが行なった「原子力フェーズアウト」問題のエネルギ・環境・経済モデル(SEEP)解析で、脱原子力政策が非現実的であることが明らかにされたことも大きい。
スイスでは、2003年3月に議会で原子力モラトリアム(凍結)を解除する改正原子力法が決定され、これに対抗して5月に反原発グループが提出した2つの脱原子力政策案が国民投票にかけられたが、2案とも否決された。
スイスも脱原子力路線を歩んでいる国としてマスコミでは報道されてきたが、わが国のマスコミは、改正原子力法の採択も国民投票の結果もほとんど報道しなかった。
この国民投票の結果が「可決」であれば第1面トップ記事になったことはまちがいない。
この例に見られるように、わが国のジャーナリストの多数がポピュリズム路線をとり、反原子力派に歩調を合わせるようになった結果、その主張に沿わない事実はまったく報道されないのが常態になっている。報道の中立公正の原則はとっくに消滅した。
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第3号 2004年10月発行
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「第6回高自然放射線地域とラドン国際会議」
2004年9月6日〜10日、近畿大学11月ホールにおいて「第6回高自然放射線地域とラドン国際会議」が開催された。
特別講演の中では、イラク戦争で話題になった劣化ウランのがん等の影響について、影響はないことが報告された。
また、宇宙線の影響については、飛行機によるフライト時間との関係で、長くなればなるほど宇宙線による被ばく放射線が増え、滞空制限が問題となることが報告された
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記:2011−4−30
本日、浅草に出かけていました。
私の趣味の切手収集 この切手の展覧会というか、収集家の集まり・イベントが浅草の都立産業会館で行われていました。
このイベント(スタンプショー2011)では、宇宙に関する切手が企画展示として展示され、関連してJAXAの元職員の方が、宇宙飛行に関する講演を行っていました。
毛利、向井、山崎さんといった日本の宇宙飛行士の話がメインでした。
こうした宇宙飛行では、無重力に伴う骨の劣化、 筋肉の劣化、心肺機能の変化、 閉鎖空間に長期間滞在することによる精神的な苦痛などが問題になる という話に
加えて、
宇宙飛行では宇宙放射線の曝露があり、被ばく量は1日で1ミリシーベルトになるとのことでした。
1ミリシーベルトといえば、一般の人間の1年間の被曝量です。
一般の人に宇宙飛行の話をする講演だったので、宇宙放射線にかんしては本当の一言 触れただけでした。
機会があれば、この宇宙飛行士の放射線被ばく量に関しても調べてみたいものです。
記:2011−5−1
以下の論文があることが判りました。
一部を引用します。
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掲載誌:宇宙航空環境医学 Vol. 46, No. 1, 5-12, 2009
タイトル:国際宇宙ステーションと宇宙飛行士の健康管理
研究者:立花 正一
地上に生活する我々は厚い大気の層に守られて宇宙からの放射線に直接暴露されることはあまりないが,宇宙環境に滞在する飛行士は直接銀河宇宙線(太陽系以外から飛来する宇宙線)および太陽放射線(太陽から放射される陽子を主体とした荷電粒子)に暴露されることになる。
地上400kmの軌道上を飛行するISSの場合,飛行士は平均1mSv(0.3〜1.5)/日の被曝をするとされ,これは単純化すると胸部レントゲン写真を毎日2〜3枚(最近のレントゲンは被曝量が少ないので比較枚数はもっと多くなっている)撮ることに相当する。
過剰な被曝は発癌のリスクを高め,眼に過剰に浴びると白内障を誘発する危険がある。
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ガジェット通信にあった内容の一部紹介です。
http://getnews.jp/archives/106127にあった内容
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宇宙飛行士は1日で地球上の半年分の放射線を浴びる
2011.03.23 21:16:17
「宇宙飛行士が1日で浴びる放射線の量は通常の人の4〜6か月分、しかし発ガンリスクは最大3%上がる程度」――宇宙航空研究開発機構(JAXA)の古川聡宇宙飛行士は2011年3月22日、記者会見に登場し、放射線を浴びるリスクについてこのように述べた。
古川氏は今年5月末にロシアの宇宙船「ソユーズ」に搭乗し、国際宇宙ステーションで約半年間滞在する。
通常、人が生活していて浴びる放射線の量は1年に2〜3ミリシーベルといわれるが、古川氏によると国際宇宙ステーション(ISS)では1日で1ミリシーベルの放射線を浴びるという。
古川氏のようにISSに6ヶ月程度滞在する場合、それだけで約180ミリシーベルの放射線を浴びることになる。
NASAでは宇宙飛行士が浴びる放射線の量を、最初に宇宙に行った年齢や性別によって厳しく管理するルールがあるという。
宇宙で浴びる放射線量の多さについて古川氏は、「3年の間を空けて2回、それぞれ半年ずつ宇宙に行った場合であっても、発ガンリスクは多くて3%上がる程度」とし、これは許容できる範囲のリスクだと話した。
記:2017−10−29
以下の古い情報が出てきた。
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1998年11月2日
地上とけた違いの被ばく 科学的な評価に期待 宇宙放射
共同通信ニュース速報
【解説】
米スペースシャトルや国際宇宙基地が飛ぶ高度の地上約400〜500キロでは、宇宙飛行士の平均被ばく線量は、1日約0.3ミリシーベルト程度とみられているがはっきりしない。
飛行士の安全を見込めば、1日1ミリシーベルト程度と想定して対策を進める必要がある。
また、太陽表面で爆発的なフレア活動が起きた場合などは、一時的にさらに何けたも高い放射線を浴びる恐れがあるという。
一方、国際放射線防護委員会が定めた一般人の地上での被ばく線量限度は、1日ではなく1年間で1ミリシーベルトだ。
放射線作業従事者の基準でも1年50ミリシーベルトが上限なのに比べて、宇宙飛行士の被ばく線量はけた違いに高い。
さらに、地上と宇宙では問題になる放射線の種類や性質も違う。
原子力発電所や医療機関での被ばくは電磁波であるエックス線やガンマ線がほとんど。
これに対し、宇宙で被ばくする陽子線や重粒子線は高速で飛んでくる粒子がピンポイントで人体に衝突する。
がんの発生や脳、中枢神経系、生殖器への影響を引き起こさないかと心配されている。
重粒子加速器(HIMAC)での実験は、培養細胞に一定の強さの重粒子線を繰り返し浴びせたり、多様な粒子を交互に当てる実験が可能。放射線の生物への影響を解明する、という宇宙開発を離れた研究面でも、科学的な評価に結び付く成果が期待される。
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記:2024−4−14
https://www.zaikei.co.jp/article/20190703/519036.htmlにあった記事の一部紹介
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宇宙からの放射線が人体に及ぼす影響は? 欧州宇宙機関の研究
2019年7月3日
(略)
宇宙からの放射線は恒星内部で起こる核融合反応に起因するもので、最も身近なものは太陽風だ。
それ以外には太陽以外の恒星の超新星爆発に起因する放射線がある。
地球には磁場があり、そのおかげで大気が太陽風によって弾き飛ばされることがないため、地上は厚い大気で覆われている。その結果、宇宙からの放射線から、人類は大気層によって保護されている。
ちなみに日本では人口の99%が高度400m以下の場所に居住するため、宇宙からの放射線の被ばく量は年間0.26mシーベルトに過ぎないが、高度が1500m増すごとに被ばく量が2倍になる。
しかしながら、標高2250mに位置するメキシコシティの住民に癌が多いというデータは得られておらず、このレベルの被ばくは人体にはほとんど影響がない。
一方、人類が再び月を目指し、火星への有人飛行の夢も膨らみつつある現在、宇宙空間を航行する際に、宇宙からの放射線で受ける人体への影響については、人類はほとんどデータを持ち合わせていない。
このような事情から欧州宇宙機関(ESA)では、宇宙飛行士が宇宙からの放射線によって受ける様々な影響についての研究を行っている。
ESAのホームページ情報によれば、火星に向かう宇宙飛行士が浴びる放射線量は、地上の人間の最大700倍にも達するという。
ESAでは、原子を光速に近い速度にまで加速させ、宇宙放射線を再現し、脳や心臓、中枢神経系への影響について研究を進めている。
また、宇宙航行中あるいは帰還後の放射線被ばくによる癌の発生リスクや進行リスクが生じない放射線量の見極めも行っている。
50年前の人類月面到達のニュースは華々しかったが、航行期間が短かく、放射線の人体への影響も大きくなかった。
だが火星旅行となれば、その50倍以上の期間を要し、放射線との戦いを避けて通ることはできない。
ESAの今後の研究成果に期待しよう。
航空機内で放射線を実測してくれた例がなんとネットにありました。
驚きです。
「宇宙飛行士 放射線」の2語で検索した結果です。
なんと、URLの中に漢字が入っています。
http://sutooffice.jimdo.com/自然科学調査-須藤技術士事務所/国外-県内科学調査の報告/ <リンク切れ>にあった例
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My 須藤事務所
国外・県内、自然科学調査の報告
欧州の放射線岩石の活用事例
2010年5月23日〜6月7日
5/23から、欧州先進4ヶ国(イギリスは火山噴火により中止)で放射線の実態調査を行った。
(宇宙放射線)高度3万m :2.8μS/hr 〜 2万m:2.5 〜 1万m:2.0 〜 地上:0.08
※高度飛行中の機内は地上の約35倍の放射線が測定されました。
なお国際基準によれば5μS/hr以下であれば健康に害はない。
宇宙飛行士は大気圏外で地上の約200倍近い放射線を浴び、その宇宙から感じ取ったものは何か?是非、聞きたいですね。
中国の活用実態調査
2010年11月6日〜9日 中国江南、蘇州・杭州・上海で放射線の測定
上海〜羽田 飛行高度8千m機内の放射線1.38μS/hrは 地上0.07μS/hrの20倍でした。
高度3万m :2.8μS/hr×24hr(一日)=67μS/hr 960倍。
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予想以上に高い放射線強度です。
記;2011−5−2
航空機での宇宙線被曝を少なくするために、
「飛行機に乗らざるを得ない時は、夜に乗ったほうが宇宙放射線の影響がより少なくてすむそうです。
発信源は太陽が強いからということなのでしょうけれども」
という意見がありました。
そこで、ちょっと調べてみました。
以下に示すように、夜間のフライトでも昼間のフライトでも、宇宙放射線への被曝は同じと言えるようです。
宇宙線・宇宙放射線とは何かをWikipediaでひも解くと、以下になります。
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宇宙線のほとんどは銀河系内を起源とし、超新星残骸などにより加速されていると考えられている。
これらは、銀河磁場で銀河内に長時間閉じ込められるため、銀河内物質との衝突で破砕し、他の原子核に変化することがある。
実際、Li、Be、B、Sc、Vなどの元素の存在比が、太陽系内のものと宇宙線中とで大きく異なることが知られている。
このため、宇宙線の元素比や同位元素の存在比を測定することで、宇宙線の通過した物質量を推測することが出来る。
エネルギの高い宇宙線の到来頻度は極端に低くなるが、そのエネルギースペクトルは冪関数 dI/dE∝E-α(α〜3)で近似できる。
このため、宇宙線の加速は熱的なものではなく、星間磁気雲や衝撃波との衝突を繰り返すフェルミ加速のような機構が考えられる。
地球大気内に高エネルギの宇宙線が入射した場合、空気シャワー現象が生じ、多くの二次粒子が発生する。
寿命の短いものはすぐに崩壊するが、安定な粒子は地上で観測される。
このとき、大気中に入射する宇宙線を一次宇宙線、そこから発生した粒子を 二次宇宙線と呼ぶ。
一次宇宙線の大部分は陽子をはじめとする荷電粒子である。
それに対して、二次宇宙線は地上高度では大半がμ粒子である。
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ということで、宇宙放射線の発生源は太陽だけではないようです。 発生源は全銀河宇宙です。
たぶん、太陽からも宇宙放射線は飛んでくるのでしょう。
さらに、航空機のフライトを想定して、高度の場所として富士山頂で宇宙放射線のリアルタイム測定を行った事例が見つかりました。
以下に図を引用しますが、これをみても、夜間に少なくといった日変化は観測されていません。
**********************引用 ************
2008年度富士山測候所 研究報告書
氏 名 保田 浩志
所 属 独立行政法人放射線医学総合研究所
共同研究者 (所 属) 矢島 千秋(放射線医学総合研究所)、鳥居 建男(日本原子力研究開発機構)、東又 厚(三樹工業株式会社)
研究テーマ 高高度宇宙線被ばくのリアルタイム推定
研究結果
太陽フレアの発生により大気圏内の宇宙線強度が突発的に変動した時の航空機内での被ばく線量を正確に評価するため、できるだけ航空機の巡航高度に近い(大気厚の薄い)富士山頂において宇宙線をリアルタイム計測し、モデル計算との照合によって上空(10〜12km)の線量を推定する手法を確立することを目的とした実験を行った。
特に今夏は、高エネルギの宇宙線中性子に重点をおいた観測データの連続取得とそのリアルタイム遠隔通信の実現を主な狙いとした。
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記;2011−5−2
最近の福島原発事故に関連して、空気中に存在する放射性物質による体外曝露の他に、体内曝露も考量する必要があると主張されている。
体内曝露の代表が商品から摂取するものではないかと思う。
少し古いデータであるが、過去の食品から摂取する放射性物質に関するデータがあったので、以下に引用する。
引用元:兵庫県立健康環境科学研究センター 発行の「健環研リポート」第13号 2007年1月発行の掲載された記事
人が一日に食事から摂取する放射性セシウムの量の過去からの推移を示しています。
以前は大気圏内核実験などの影響により、摂取食事に含まれていました。 最近(この記事の2007年)はそれらもほとんどなくなっています。
記:2011−5−3
以下の資料がサイト(京都大学)に公開されていました。
>第99回原子力安全問題ゼミ「低線量被曝リスクの諸問題」
>2004年12月15日
>ECRR2003報告における新しい低線量被曝評価の考え方
>山内知也(ECRR2003翻訳委員会)
このECRR2003年報告では以下の提言を行っている。
*公衆の構成員の被曝限度を0.1mSv以下に引き下げること。原子力産業労働者の被曝限度を5mSvに引き下げること。
*放射線被曝線量は、最も優れた利用可能な技術を用いて合理的に達成できるレベルに低く保たねばならない。
この報告書は、以下に示す立場で作成されている。
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本報告書の基礎と扱う範囲
第2.2節本報告書作成の理由
• 本報告書には、審査付き学術雑誌に掲載された論文も取り上げるが、審査付きでない論文も取り上げる。
さらに、テレビのドキュメンタリー番組に始まり法廷闘争に発展したケースも取り上げる。
それは彼らの足で投票を実現させた人たちや、かつて原子力施設があったが放棄された土地についても考察する。
すなわち、最も貧しい人たちしか住まないような荒れ地に徐々になっていった土地、砂浜が行楽客に見捨てられ、さらに魚を捕まえるにしても、またそれを売るにしても著しく困難になった地域についての考察を行う。
インドにおいて、ナミビア、カザフスタン、ネバダ、オーストラリア、ベラルーシ、そして太平洋の島々において人造放射能の影響をこうむった市井の人たちの物語をとりあげる。
• 論争になっている内容(放射線リスクの権威筋からは被曝が原因ではないと言われている事件)を取り上げる。
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この審査付きでない論文も取り上げるとしているところがECRR2003年報告の難点といえるでしょう。
これでは、このECRR2003年報告の提言内容がよほどのことがない限り、行政や規制・規格の論拠に採用されにくいでしょう。極論すれば、法規制の論拠には採用されないでしょう。
追記:2011−5−4
上記のECRR2003年報告書の紹介に合わせて、同じゼミで、以下の報告もなされていた。
>第99回原子力安全問題ゼミ
>2004年12月15日
>低線量被曝リスク評価に関する話題紹介と問題整理
>今中哲二
この今中哲二氏の講演の中には、以下の纏めがある。
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まとめ
*ECRRのリスク評価は、「ミソもクソも一緒」になっていて付き合いきれない.
*ECRRに安易に乗っかると、なんでもかんでも「よく分からない内部被曝が原因」となってしまう.
*湾岸戦争でのDU弾使用とその後のバスラ住民の「健康悪化との相関関係」に関するデータはたくさんあるが、「放射線被爆との因果関係」を示唆するデータはほとんどない.
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この今中氏の纏め「ミソもクソも一緒」というのが、ECRR2003年報告の実情なのかもしれない。
なお、BEMSJは上記のゼミの予稿集を読んだだけで、ECRR2003年報告の全文は読んでいません。
関心のある方は、全文を読んでください。 たぶん、どこかに日本語訳の全文があるでしょう。
記:2011−5−8
以下の論文を見つけた。
日用品の中に天然の放射性物質が含まれていることを指摘する論文である。
論文の一部を紹介する。
関心のある方は、全文を入手して読んでください。
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掲載誌:化学生物総合管理 第4巻第2号(2008.12)146−153頁
タイトル:日用品に含まれる放射性物質のリスク評価と存在の問題点
研究者:古田悦子 お茶の水女子大学大学院
1.はじめに
1896年、放射線を放出する放射性物質(鉱石)がベクレルにより発見されて以来、放射性物質は種々の目的のために、生活圏内において使われてきている。
放射性物質を含む日用品は、放射性コンシューマプロダクト(Radioactive
consumer product:RCP)と呼ばれ、長い歴史を持つ。
例えば、キャンプ・登山用晶のガスランタン用マントルはRCPであった。
マントルは、Carl Auer von Welsbachが1885年に特許化したものである。
当時は成分の分析が完璧ではなかったが、後に天然放射性同位元素のトリウム(Th)が含まれていると判明した。
このThによる白熱光が有効であると長い間信じられてきたが、近年になり、他の希土類元素で代用できることが判明した。
現在ではイットリウム(Y)がThに変わって使われている例が多くなり、ガスランタン用マントルはRCPではなくなりつつある。
近年、この例のように放射性物質を使う必要がない場合、非放射性の物質に変えようという動きがある。
これは、国際放射線防護委員会(International Commission
on Radiological Protection:ICRP)が提案した「放射線による被ばく影響は出来うる限り低くすべきである」とする「アララ」(As Low As Reasonably Achievable:ALARA)の理念に基づく動きである。
この考え方は、イギリス放射線防護庁(National Radiological Protection
Board:NRPB,現在のHealth Protection
Agency)の「1個のRCPからの被ばく線量は10μSv/年以下に抑えることが望ましい」とする指針に反映されている(NRPB1997)。
これに対し国際原子力機関(International Atomic Energy Agency:IAEA)は、1個のRCPからの数十μSvまでの被ばくは問題ないとする考えを示している(IAEA1988)。
一方、1978年T.D.Luckeyは、ホルミシス効果の概念を発表(Luckey1982)し、生物に対して通常有害な作用を示すものが、微量であれば逆に良い作用を示す生理的刺激作用を提唱した。
これを受けて、電力中央研究所などが低線量被ばく影響評価に関する研究を多数行ってきている。
しかし、ここで用いられている研究手法は、小動物あるいは細胞にγ線(]線)を外部照射する方法である。
微量の放射性物質によるα線、β線などによる連続被ばくの影響は研究されてきていない。
放射性物質を人体に直接用いた例としては、治療を目的としたラジウム(Ra)の頭皮への塗布例があり、後に人体内部への浸透が認められ、この治療は中止された。
さらに、この治療を受けた人が50年後に皮膚癌になった報告例がある。
現在の日本では、健康に良いとする天然の放射性物質を含む日用品が相当数存在する。
RCPの中で特に、その放射線源が天然放射性物質であるものをNORM(Naturally Occurring Radioactive Materials:NORM)と呼ぶ。
これらNORMの中には、外見からは判断することが出来ないものの、放射線測定器に強く反応する量の放射性物質を含む日用品もある。
こうしたRCPまたはNORMの存在は、法的に問題ないのか、法的に問題ないとすれば、被ばく線量も問題ないのかといった疑問が生じる。
本報告は、過去に行われてきている著者による研究をまとめたものであり、代表的なRCP (NORM)に含まれる放射性物質の種類、濃度を示すとともに、そこから受けるリスクの評価結果を示すことにより、これら放射性物質を含む日用品が示す問題を提起することにある。
4.RCPおよびNORMにおける問題点:正当性とリスク評価
生活圏内に相当数のRCPが存在する。先に示した試料N0.9のメタルマッチやテレビのブラウン管のように、原材料に天然放射性同位元素が含まれている元素を使用するために自動的にRCPとなったものもある。
これらは、避けようのない、または誤使用の起こり得ない商品であって、被ばく線量評価値が低いことが確かめられている場合、RCPであることを問題視する必要性はないと考えられる。
一方、ここに紹介したNORMの一部は、健康に良いなどの謳い文句のもと、意図的に天然放射性同位元素を添加したものである。
これらは、避けることが出来る商品であり、一般の使用法を逸脱した使用または誤使用が起こり得る商品である。
特に人体に密着した状態で使う健康効果を謳っているNORMは、添加の必要性に疑問が残る。
なぜならば、低線量放射線による被ばく影響については未だ不明な部分が多く、かつ、個々に被ばく線量評価がなされている商品が極めて少ない。
すなわち、添加の正当性が証明されていない。極めて科学的に聞こえる「効果」が、実は実証されていないという事実にも注目すべきである。
欧州原子力共同体(EURATOM)の放射線防護指令書(EU1996)にはRIの添加を禁止する対象が6品目あげられており、ドイツを始め6カ国が憲法で添加禁止対象品目を指定している。
その対象とは、食品、飼料、飲料水、玩具、装身具と化粧品である。
これらは、一商品毎にリスク評価を行ったわけではなく、一般論として、添加する正当性がない、という考え方により指定されている。
一方、日本では一商品毎にリスク評価を行うこととされている。
日に見ることの出来ない放射線の放出は、放射線測定器による測定以外には感知できない。
NORMを個々に被ばく線量評価する方法では、発見されないNORMであって放射性物質の濃度が高いものが存在する可能性を否定できない。
低線量放射線による被ばく影響が明らかとなるまで市場に放置するのではなく、EUのように添加することに正当性があるかないかの判断により、添加禁止リスト作成の法整備が望まれる。
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記;2011−5−12
過去の放射線曝露の実態を、空からの降下物における放射線量の実測・モニタリングデータで示す。
そのほかにもあるかもしれないが、とりあえず、見つかった国内の3例とニュージーランドの例を示す。
*気象研究所のデータ
タイトル:Artificial Radionuclides in the Environment 2007
発行:2007年(平成19年)12月
編集兼発行者:気象研究所地球化学研究部
膨大な報告書の中の一部を紹介
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気象研究所では、大気圏での人工放射性核種の濃度変動の実態とその変動要因を明らかにすべく、1954年4月に放射性降下物(いわゆるフォールアウト)の全βの観測を開始した。
核種分析は1957年に始まり、以降現在に至るまで50年間途切れることなく継続されている。
特に気象研究所での観測値は、現在でも検出限界以下とすることなく必ず数値化されている。
この時系列データは、ハワイマウナロアにおける二酸化炭素の時系列データ同様、地球環境に人工的に汚染物質を付加した場合、汚染物質がどのような環境動態をとるのかを如実に反映しており、実に5桁の降下量の水準変動が記録されている。
対象は重要核種である90Sr、137CsおよびPu同位体である。
人工放射性核種は主として大気圏内核実験により全球に放出されたため、部分核実験停止条約の発効前に行われた米ソの大規模実験の影響を受けて1963年の6月に最大の降下量となり(90Sr約170Bq/m2、137Cs 約550 Bq/m2)、その後徐々に低下した。
しかし、1960年代中期から中国核実験による影響で降下量は度々増大し、1980年を最後に大気圏内核実験が中止されたのでようやく低下した。
放射能の降下量が再び増大したのは、1986年4月の旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所の事故による。
大気圏内核実験のように成層圏に大量に放射能は輸送されなかったため、この影響は長くは続かず、1990年代になると、90Sr、137Cs、Puの降下量は大きく低下し、試料採取に4m2の大型水盤を用いている気象研究所以外では検出限界以下となって、降下量を容易に数値化できなくなった。
このため、気象研究所での観測記録は我が国のみならず、世界で唯一最長の記録となった。
1990年代での90Sr、137Csの月間降下量はともに数〜数10mBq/m2で推移して、「放射性降下物」とは呼べない状況に至った。
このように、人工放射性核種の投入は壮大な規模のトレーサー実験に例えることが出来、それは依然として継続されていると言える。
気象研究所では、投入されてからの期間における変化を降下物という形態で眺め続けてきた。
以下は月間のデータの推移である。 縦軸はミリベクレル/m2である。
*北海道立衛生研究所のデータ
掲載誌:道衛研所報Rep. Hokkaido Inst. Pub. Health, 57, 1-14(2007)
タイトル:北海道立衛生研究所における環境放射能調査50年の変遷
研究者:福田一義
縦軸はメガベクレル/km2 であり、ベクレル/m2と等価である。
*兵庫県のデータ
引用元:H20年度兵庫県立健康環境科学研究センター 講演会のレジメ 2009年2月24日開催
タイトル:食品および環境中の放射能調査‐兵庫県における50年の変遷‐
研究者: 健康科学部 主任研究員 礒村公郎
縦軸はメガベクレル/km2 であり、ベクレル/m2と等価である。
*ニュージーランドのデータ
報告書名:Environmental Radioactivity in New
Zealand and Rarotonga – Annual Report 2009
編集者:N Hermanspahn
発行者: Published in June 2010 by National Radiation
Laboratory Ministry of Health New Zealand
一部を以下に引用
************ ************
3.2 Radioactive deposition
No artificial radionuclides were detected in the deposition samples by gammaspectrometric analysis. The TBC deposition for 2009 at
Hokitika was 529 ± 19 Bq/m2
with 2900 mm of rainfall. The average weekly deposition was 10.4 ± 2.5 Bq/m2.
********************** *************:
2009年のモニタリングで、大気中の放射性物質の量は、2900mmの降雨の時に529ベクレル/m2を記録した。
平均的な1週間での放射線量は10.4ベクレル/m2である(注:単純に30日を1か月として換算すれば45ベクレル/m2)。
記;2011−12−10
アメリカにおける大気中の放射線ラドンの濃度に関する1991年頃の研究報告です。
1992年頃のメモが出てきましたので、このWEBに紹介します。
タイトル:Radon levels in a high-rise apartment. 高層集合住宅におけるラドンレベル
掲載誌:Health Phys Vol.61, No.2,
Page263‐265 (1991)
概要:
米国エネルギ省(DOE)の研究計画の一部として開発した連続ラドンモニタを用いてのニュージャージー州Hudson郡の高層アパート室内のラドン濃度を測定し、屋外濃度より著しく高いかについて検討した。
1982‐1985年の3.5年間で平均ラドン濃度は室内が40%高く、特に1982年は2.1倍であった。
各種の既報告から推定するとアメリカなどの室内ラドン濃度は10Bq/m3以下で、屋外濃度より約50%高い。
タイトル:Annual Average Radon Concentrations in California
Residences. カリフォルニアの住宅における年平均ラドン濃度
研究者:LIU K‐S et al:
掲載誌:J Air Waste Manag
Assoc Vol:41 No.9 1207‐1212
概要:
全州にわたる310住宅について、受動サンプラーを用いて調査した。
室内濃度(寝室及び居間)は、0.1‐16pCi/l(平均0.85pCi/l)で、カリフォルニアの68000住宅大気質基準(4pCi/l)を超えるのと推定した。
高濃度の地域はSierre Nabade, Venture, Barbara郡で、海岸地域は少なかった。
ここでキューリーCiという単位が出てきたので、調べてみる:
curie. 放射能の国際単位系(SI)の補助単位。歴史的には1gのRa−226の放射能量を基準にして定められた単位で、1キュリー(Ci)は、毎秒の崩壊数が3.7E+10Bq(ベクレル)に相当する放射能の強さとして定義される。
したがって上記の4pCi/lは約0.15Bq/リットル=150Bq/m3 となる。
記:2011−12−10
1992年頃に調べたメモが出てきました。
それを基に、最新情報に加工してこのWEBに公開します。
以下は「公益財団法人 体質研究会」のサイト http://www.taishitsu.or.jp/HBG/ko-shizen-2.htmlにあった内容です。
一部の引用。関心のある方はこのサイトにアクセスしてください。
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世界には大地放射線の量が日本の数倍以上の地域があります。
中国の広東省にある陽江県、インドのケララ州を含む西海岸、ブラジルのガラパリ(現在は再開発が進み海岸だけが自然放射線の高い場所として残っている)およびイランのラムサールが有名です。
下図は、近畿大学の森嶋彌重教授が 1993年国連科学委員会報告書よりまとめられた「世界各地の大地から受ける年間の自然放射線量」の分布図です。
大地放射線が多くなるのには、いろいろな原因があります。
中国広東省の陽江、インドのケララとブラジルのガラパリでは、放射線を出すトリウムという元素を含む砂が原因であり、イランのラムサールは温泉の噴出によってたまったラジウムという放射性元素が原因です。
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以下の論文に詳細があります。関心のある方は読んでください。
掲載誌:近畿大学原子力研究所年報 Vol.42 (2005)
タイトル:世界の高自然放射線地域の線源、線量測定および線量分布
研究者:森嶋禰重ら
以下は電中研ニュース451号(2009年1月)にあったものです。
1993年のデータ、2000年のデータから世界では高い自然放射線を受けている地域があることが判ります。
記:2020−1−7
名古屋生活クラブのサイト にあった情報です。
http://www.nagoyaseikatsuclub.com/essay/syokuhinnzyouhou/184.html
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掲載誌:PNAS October 15, 2002 Vol.99 no.21
タイトル:Natural radioactivity and human mitochondrial DNA
mutations
自然放射線とヒトミトコンドリア遺伝子の突然変異
研究者:Lucy Forsterら ミュンスター大学 ドイツ
自然放射線は土地によって変動する。
すべての生物は進化の最初から照射され続けてきている。
染色体の傷害とガンがよく知られている放射線の影響です。
最新の研究は、照射のDNA(遺伝子)配列への影響が中心になっており、照射を受けたマウスのDNAの繰り返し配列が何世代にもわたって不安定化していることが明らかになった。
その様な発見は、放射線作業者や、広島・長崎や、チェルノブイリの被曝者の現在及び子孫にとくに重大な意味あいがある。
インドのケララ州の海岸地域には、世界で最も高い自然放射能の場所があり、多くの人が生活している。
その放射線は、10%までのリン酸トリウムを含んだモナザイトという鉱石から生じている。
その地域には、数千人の人が漁業を営んでいる。
その人達の受ける放射線は、10〜12ミリシーベルト/年という値で、世界平均の10倍以上である(訳注.世界平均は、2.4ミリシーベルト/年なので単純に計算すると、4倍から5倍。日本人の場合、医療被曝も含めると3.8ミリシーベルト/年なので2.6倍〜3.2倍)。
ケララ州のラットの形態、ダウン症の発症率、染色体異常、先天性奇型の研究では、放射線による異常を決定的に明らかにすることはできていないが、直接DNAの配列を決定して(突然変異を調べる研究)は、ケララはじめ世界のどこでも行われていない。
今回の研究では、高レベルの自然放射線の生涯にわたっての曝露がミトコンドリアDNA配列の変化にどう影響しているのかを248家族、計988人のケララの人を分析した。
ミトコンドリアDNAは、母親から遺伝するので家系内で追跡できる。
1つの細胞に数千個も含まれており、分析しやすい利点がある。
結果
私達は高線量地域から180家族730人、それに近接している低線量地域から68家族258人(合わせて248家族988人)のミトコンドリアDNAを抽出、分析した。
高線量地域に住む家族は、統計的に有意に(P<0.01)生殖細胞由来の点突然変異が高かった。
驚くことに、放射線は、進化的に突然変異が多く報告されているDNAの部分に多くの突然変異がより多く起こっていた。
高線量地域の595伝達(母から子へ)の内22の突然変異を、低線量地域の200伝達の内1個の突然変異を検出した。
解説
20ミリシーベルトまでなら、100ミリシーベルトまでなら安全と、放射線の専門家がテレビ、新聞などで力説しています。
その根拠として「自然放射線が高い所でも何ら影響がみられていない」と一方的なことを断定しています。
が、事実はかなり違っている様です。
IARC(国際ガン研究機関)のエリザベス・カーディスさんが、J. Radiol
Prot, 29 (2009) A29-A42. でまとめていますが、ラドンによる肺ガンのリスク上昇がほとんど確実なことや、そもそもこれらの高線量地域に住んでいる人が少なかったり、ガンの統計がととのってなかったり、疫学としてはっきりとした事がいえる条件がととのっていないといった方が良いのです。
今回の論文では、突然変異を遺伝子DNAまで直接さかのぼって配列を決定することで、突然変異を検出するものです。
母のミトコンドリアDNAの配列と子供のミトコンドリアDNAの配列を直接比べることで突然変異があったことが検出できます。
高線量地域では、母から子供、595の伝達の内、22個の突然変異を検出したのに対し、低線量地域では、母から子供200の伝達の内、たった1個の突然変異しか検出できなかったのです。
放射線の影響は、
DNAの突然変異 → 染色体異常 → ガンなどの病気 の順に起こります。
ガンだけ調べていても、タバコの影響もあり、簡単に分かることではないのです。
でも確実に突然変異が増えているのなら、当然のごとく、ガンが増えていることは予測されます。
今回のインド・ケララ州の線量は、10〜12ミリシーベルトという値です。
今、学校の運動場の放射能の規制値は20ミリシーベルトです。
専門家の中には、100ミリシーベルトまで安全だといっている人も多いです。
分かったつもりになって原発を推進し、分かったつもりになって低線量なら安全だと言う。
もっと科学者は謙虚になるべきではないでしょうか。(伊澤)
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記:2020−1−6
放射線ホライゾン 知識とリスクを共有するコラム にあった情報
https://rad-horizon.net/radiation-and-biology/93-carcinogen-risk-in-high-natural-radi…
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自然放射線レベルの高い地域での発ガンリスク
作成日:2013年11月27日(水)07:10
(1) 中国・陽紅における調査
中国広東省陽紅市の高自然放射線地域では,1972年から中国政府による疫学調査が開始され,1992年からは京都大学名誉教授の菅原努博士を中心に日本の財団法人体質研究会と中国の研究グループとの国際共同研究という形で,大規模に進められてきた。陽江地区の住民約80,000人の被ばく線量は約6mSv/年である。
一方,被ばく線量約2mSv/年の対照地域の恩平および台山市の住民約80,000人と比較すると、がん死亡率(全がん)は有意には増加しない。
一方,染色体異常の研究では、1)2動原体,リング形成などの不安定型異常は高線量地域では年齢と共に有意に増加し、蓄積線量に比例する、2)安定型異常は年齢による増加は認められるが、放射線による増加は認められないことが明らかになった。
(2)インド・ケララ州における調査
同様の調査は,インド南西部ケララ州のカルナガパリ地区でも実施された。
結果は,中国の場合と同じく,測定された平均被曝量の範囲では,ガンの相対的リスクは増大しなかった。
グラフからの印象は,逆に小さいが負の相関を持っているかのように見えるほどである。
これらの結果が示すところは,繰り返しになるが,不安定型の染色体異常は,どうやらしきい値なしの直線(LNT)仮説にしたがうようであるが,ガンの発生リスクに関する限り,測定されている年間15mGy までの範囲では,増大しないと言ってよいと思われる。
では,その間 (15-100 mSv)はどうか。
少なくとも動物実験の例と併せて考えると,どこかにしきい値が存在すると考えるのが妥当なのであろう。
このしきい値は,ガンの種類によっても異なってくると思われるし,また被曝時期(年齢)によっても異なる可能性がある。さらに慎重な研究の発展が望まれる。
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記:2020−1−6
https://www.sankeibiz.jp/compliance/news/140317/cpc1403172245002-n1.htmのサイトにあった情報
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【放射線と健康リスク】世界初 大規模で精密な疫学調査 〜インド・ケララ州
2014年3月18日
高い自然放射線 受けても健康リスクの上昇は見られず
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故から3年が経過したが、放射線による人体への影響や健康被害について、不安に感じている人も多い。
そこで、今回、インド・ケララ州で行われた疫学調査から、放射線と健康への影響を考える。
日中印の研究チームが検証
放射線が人の健康にどのように影響するのかを考えるうえで、一つの興味深いデータが存在する。
日本・中国・インドの国際共同研究チームが取り組んでいる高自然放射線地域住民を対象にした疫学調査から得られた低線量放射線被ばくによる健康影響の知見だ。
どんなに少量であっても放射線はがんを発生させる・・・。
こんな見方を覆す、研究チームの長年にわたる詳細かつ大規模な追跡調査の結果が注目されているのだ。
地球上にはもともと、宇宙や大地、大気、食物などから出る自然放射線が存在している。
世界には、大地からの自然放射線量が世界平均年間0.48ミリシーベルトより数倍高い地域(高自然放射線地域)があり、その代表的な地域としてインドのケララ州、中国・広東省の陽江地区、イランのラムサールなどがこれに該当する。
10ミリシーベルト超える自然放射線
低線量の放射線被ばくの健康影響に関して最近注目を集めているのが、インド南西端に位置するアラビア海に面したケララ州カルナガパリ地区で実施された疫学調査の結果だ。
同地区は海岸一帯に放射性物質を含んだ「モナザイト」と呼ばれる鉱物が混ざった黒い砂浜が広がり、地域の住民の中には日本より数倍高い年間10ミリシーベルト超という自然放射線を大地から受けている人もいる。
放射線が人体におよぼす影響について、高線量の放射線に関しては多くの疫学的知見が得られている。
広島、長崎の原爆被ばく者12万人を対象とした疫学調査では、100ミリシーベルトを超える被ばくにより、リスクが有意に上昇するという結果が得られている。
このデータは国際放射線防護委員会(ICRP)のリスク評価の基礎となっており、「100ミリシーベルトを超える放射線を被ばくすると、被ばくしない場合と比べ、がんによる死亡率が0.5%程度増える」といった内容だ。
では、100ミリシーベルト未満の低線量の被ばくによる健康への影響はどうなのか。
これについては、放射線によるリスクが、喫煙や飲酒など個人の生活習慣によって、がんになるリスクと明確に区別できないほど小さいため、不明な点も多く、はっきりと解明できていないのが現状だ。
原爆被爆者は一瞬の急性被ばくであり、長崎、広島の知見をそのまま当てはめるわけにはいかない。
その意味で、高自然放射線地域の疫学調査は重要な意義を持っている。
低線量被ばく 未解明の部分に光
共同研究チームがインド・ケララ州のカルナガパリ地区で1998年から実施している疫学調査は、「低線量放射線被ばくと健康リスク」という未解明の部分に光を当てる結果となった。
調査は、同地区でも年間線量の高い4支区(チャバラ、ニンダカラ、アラパド、パンマナ)を高自然放射線地域として、年間線量の低い2支区(オアチラ、テバラカラ)を対照地域として設定し、単純な地区間の比較ではなく、その地区の住人を個人単位で情報を把握し追跡調査する方法をとった。
調査対象は約17万人で、その内容は詳細をきわめている。
6地域すべての家屋で屋内外の空間線量を測定する一方、男女・年齢別の居住係数(1日のうち屋内外それぞれの場所にどれだけの時間滞在したかの割合を示す係数)を綿密に調査して対象者全員の個人被ばく線量を推定。
また、喫煙・飲酒などの生活習慣や宗教・収入・職業といった社会経済状況も調べ、これらの健康リスクを排除した放射線だけの影響を解析した。
調査対象約17万人のうち、がんが発生する年齢に達した30〜84歳の約7万人について、低線量から高線量までいくつかのグループに分けて発がんリスクを解析した結果、放射線による発がんリスクの上昇は見られないことが判明した。
白血病についても線量に伴う多少の増加傾向は認められるものの、有意な差はなかったという。
調査結果によると、最も被ばく量が多いグループの平均総線量は600ミリグレイ(質量あたりのエネルギー吸収量を表す単位。本調査の場合、シーベルトと同じ値と考えてよい)を超えており、また年間線量が最も高いグループは年平均14.4ミリグレイに達するが、いずれも発がんリスクの増加は観察されなかった。
中国の調査でも同様の結果
このような高自然放射線地域の疫学調査は、1972年に中国政府によって広東省陽江地区で開始されたのが始まり。
ここでも放射線量の測定だけでなく住民への健康影響を調査し、80年に「通常の放射線レベルの地域(対照地域)と比較してがん死亡は増えておらず、むしろがん死亡率が低くなる傾向がみられた」との結果が報告されている。
中国での調査は92年から日本との国際共同研究という形で進められ、98年からインドを加えた国際共同研究に発展した。
インド・ケララ州カルナガパリ地区での疫学調査の結果は、先行する中国での調査結果とほぼ一致している。
白血病以外のすべてのがんに関する解析結果。被ばくした総線量を横軸として、被ばくを受けた集団の、対照とする被ばくしていない集団に対する相対的なリスク(相対リスク)を示す。
相対リスクの数値が1.0を超えると、リスクが高まることを示す。
インド・ケララ州の疫学調査では、リスクの上昇は見られなかった。
秋葉澄伯・鹿児島大学大学院教授に聞く
1シーベルトの被ばくでも、がんが増えた証拠は得られず
今回の疫学調査で中心的な役割を果たしている秋葉澄伯・鹿児島大学大学院教授に、調査の経緯や成果、低線量放射線と健康リスクの関係などを聞いた。
*カルナガパリ地区に注目したのは
「カルナガパリは放射線レベルと人口密度からみて世界的にも有数の高自然放射線地域です。
海岸地帯にはモナザイトという鉱物が混ざった黒い砂が堆積しており、その中のトリウム、ウラニウムなどから出るガンマ線によって自然放射線量が世界平均の数倍高くなっています。
ここが注目され始めたのはWHO(世界保健機関)の専門家委員会が1959年にチャバラ、ニーンダカラ地域の放射線レベルが高い可能性を指摘してからのことです。
この地域の人口は約40万人(91年調査)で、世帯数は約7万。
疫学調査のためには現地の人の協力が必要ですが、90年ごろから州都・トリバンドラムにある地域がんセンターが全住民の生活習慣調査を実施する一方、がん登録センター(RCC)が設立されたので、そこの協力を得てがん罹患率などの調査を始めました」
*調査はどのように進めたのですか
「サーベイメーター(携帯用の放射線測定器)を使って全世帯の放射線レベルを測定し、これを基に住民の生涯累積被ばく線量を推定して、がんのリスクとの関係を調べました。
もちろん放射線以外の要因も調べないと正確な評価をできないので、喫煙や飲酒、教育、宗教的背景なども含めて詳しく調査しました。
調査には7〜8年かかりました。がん登録のデータは世界がん研究機関から出版されている『五大陸のがん』にも掲載されており、信頼に足るものと考えます」
「調査では地域の放射線量だけではなく、どの程度の時間を屋外・屋内で過ごしているかなど個人線量の測定も重要です。2000年には、がんが発生する年齢に達した30〜84歳までの住民を対象に線量計を2〜3カ月携帯してもらい、個人線量を測定、解析しました。調査の結果、住民のがん罹患率が高自然放射線による生涯累積線量と関連することを示す証拠は得られませんでした。2005年までのデータを09年に米国保健物理学会誌『ヘルス・フィジックス』に発表し、世界から一定の評価を受けました」
*インドの調査結果からみえてきた放射線とがんとの関係を教えてください
「固形がんの場合は、そのリスクを考えたとき、同じ線量でも原爆被ばくのように一度に浴びた場合と、福島のようにゆっくり、あるいは繰り返し浴びる場合とではリスクが違います。
時間当たりの線量=線量率が高いとがんのリスクが高く、線量率が低いとリスクは低い。
ただ、リスクがないということをこの調査だけで証明することはできません。
原爆被ばくでは、1シーベルト(1000ミリシーベルト)の放射線を浴びると固形がんが約5割増えるといわれていますが、この地域では全く増えていませんでした。
実際、どのくらいの推定値だったかというと、1シーベルトの被ばくに換算すると13%減るという結果です。
ただし、私たちは放射線を浴びるとがんが減るということを主張したいわけではなく、少なくともがんが増えているという証拠は得られなかった、ということです」
*あらためて今回の疫学調査の意義を聞かせてください
「放射線技師や原発関連従事者などを対象とした職業被ばく疫学調査も非常に重要ですが、ほとんどが喫煙などの生活習慣ファクターを調整していません。また、職業被ばく集団は年齢や性別に偏りがあり、子供や女性への影響を正しく評価できないという問題があります。これに対し、今回の調査では全員の個人線量や社会経済状況などを調べ、信頼に足るがん罹患データを用いてリスクも検討しました。幅広い年齢層の男女を含み、事故や病気などの心理的ストレスを受けていない普通の生活を送っている人たちが調査対象という点で信頼できる内容になっていると思います」
*最後に、日本の果たす役割について
「疫学調査というのは、新しいことをやろうとすると、その基盤整備などに資金が必要となります。また、調査対象地域が経済発展すると人の動きが激しくなり、放射線以外のファクターが多くなるので、分析はますます難しくなります。今回のような長期にわたる調査は、日本だからこそ調査ができたのだと思います。日本はこれまで、短期的に成果の出ない研究にも比較的寛容でした。欧米のように短期的な結果を求めると、今回のような長期的な調査は難しい。日本がこのような役割を果たしていくことは重要です」
(略)
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2020−1−7
https://www.env.go.jp/chemi/chemi/rhm/h3004e_2.pdfにあった情報
環境省のサイトにあった報告書であるが、Topから入れず(入るルートが見つからない)、「平成30年発行の環境省報告」の一部とみられる。報告書の表紙は見つからず、報告書のタイトルは不祥。
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2-3:小児・青年期の低線量率放射線被曝によるがんリスクの評価―インド・ケララ州の高自然放射線地域住民の調査結果を中心として
研究者:秋葉 澄伯
研究要旨
福島の原子力事故で被曝した住民における健康影響が懸念されている。特に懸念されるのが悪性腫瘍リスクであるが、小児期に被曝した場合、悪性腫瘍の線量あたりの過剰相対リスクは、成人と比べ2−3倍高い場合もあると考えられており、福島事故でも、小児・青年期の被曝によるがんリスク増加を懸念する住民が少なくないようである。
本研究では、ケララ州カルナガパリ地域(高自然放射線地域)のがん罹患データを用いて、小児・青年期の放射線被曝によるがんリスクを推定し、原爆被爆者など高線量被曝を受けた集団の疫学調査結果などと比較するなどする。
1990−97年にインドのケララ州カルナガパリ地域住民全体を対象にベースライン調査が行われ、コホートが設立された(カルナガパリコホート)。現在、2013年までのがん罹患調査データが収集され、データベース化されている。これまで主任研究者は、インド側の研究者と連携して、この調査で得られたデータを用いて自然放射線への累積被曝線量と悪性腫瘍などのリスクにかんして、検討を行ってきた。
本研究では、年間に2回程度インドを訪問し、カルナガパリ地域の腫瘍登録の担当者と面談して、白血病や甲状腺がんなどの悪性腫瘍症例に関して地域がん登録で収集された症例の診断の正確性や症例の把握漏れに関して口頭で情報を収集するとともに、登録事務所が管理している詳細な診断情報の検討を行った。白血病に関しては全例が血液学的診断を受けていることを確認した。固形がんに関しては、部位により異なるものと約80%が病理学的診断(細胞診を含む)を受けていた。また、放射線被曝による悪性腫瘍リスクの予備的解析を行った。統計解析では、データを性、年齢、観察期間、累積線量などで層別し、層別データを用いてポアソン回帰分析を行った。
2013年までのカルナガパリコホートの追跡調査で、到達年齢が30歳未満の対象者は約10万人である。これまでの解析では追跡期間中に200例あまりのがん症例(診断年齢30歳未満)が確認された。解析では、累積線量を屋内外線量と居住係数などから推定し、この累積線量と30歳までのがんリスクの関連を検討した。
平成28年と29年に米国を訪問し、放射線疫学・生物統計の分野で著名な研究者であるDavid Hoel博士と面談し、意見交換を行い、解析結果などを検討した。また、弘前大学医学部、福島県立医科大学などを訪問し、床次真司教授ら(弘前大学医学部)、安村誠司教授ら(福島医科大学)と面談し、インドでの調査に関して助言などを得るとともに、研究成果の福島県などの住民にどのように還元するのが良いか探った。
I. 研究目的研究の背景
福島の原子力事故で被曝した住民における健康影響が懸念されている。国連の原子力放射線の影響に関する科学委員会(UNSCEAR)報告書2013によると、悪性腫瘍の線量あたりの過剰相対リスクは、小児期に被曝した場合に成人と比べ2−3倍高い場合もあると考えられており、福島事故でも、小児・青年期の被曝によるがんリスク増加を懸念する住民が少なくないようである1)。
放射線被曝によるがんリスクの定量的評価において、最も重要な役割を果たしているのは広島・長崎の原爆被爆生存者の追跡調査の結果である。しかし、これは高線量率の放射線被曝である。一方、福島の原子力事故による放射線被曝は低線量率の被曝である。しかし、低線量率の被曝による健康影響は不明確な点が多く、定量的なリスク評価に関するデータは不十分である。
世界各地にはバックグランド放射線レベルが高い地域があり、住民は比較的低い線量率であるが、必ずしも低くない累積線量の放射線被曝を受けている。そのような地域の住民の放射線被曝によるがんリスクの調査結果が、UNSCEAR2017報告書にまとめられている2)。
この報告書では、自然放射線による被曝に伴う小児がんリスク3-8)、チェルノブイリ事故汚染地域での小児白血病リスク9)、高バックグランド地域(テチャ川流域など放射能汚染地域とインド国ケララ州カルナガパリなどの高自然放射線地域)の住民の放射線被曝とがんリスクが検討されている。
その中のイギリスでの調査では、自然放射線被曝により小児の白血病が増加し、その線量あたりの過剰相対リスクが高線量率被曝での推定値と変わらないことが報告されている 5)。この研究では、ラドン被曝と小児がんとの関連も検討されたが、明確な関連は認められなかった。なお、この研究では、個人線量が推定されているが、地域ごとの平均線量を基に得られた値であり、線量推定は正確とは言えない。
同様の研究がスイスでも行われ、自然放射線の累積被曝線量と小児の白血病や脳腫瘍などのリスクが関連していることが示された6)。
一方、フランスで行われた同様の調査では急性白血病と自然放射線被曝との関連が検討されたが、リスクの増加は認められなかった 7)。
UNSCEAR2017報告書にはインドの高自然放射線地域での疫学調査結果も取り上げられている。この調査では、成人の固形がんに関しては、低線量率での放射線被曝が高線量率での被曝に比べ、線量あたりの過剰相対リスクが低くなることが強く示唆されている10)。しかし、小児・青年期の被曝による白血病や固形がんに関しては、不明確な点が多い。
目的:本研究の目的は、ケララ州カルナガパリ地域(高自然放射線地域)のがん罹患データの正確性などを検討したうえで、がんリスクとの関連が特に強いと考えられている小児・青年期の放射線被曝によるがんリスクを推定するとともに、その線量あたりのリスクを成人期の被曝によるものと比較する。
仮に、小児期・青年期の被曝でリスクが増加しているがんの部位があれば、成人期の被曝の場合と比べて、リスクの大きさがどの程度異なりうるかを検討する。さらに、本研究で得られた低線量率被曝による線量あたりのリスクが、他の研究で得られた中・高線量率の被曝を含む、様々な線量率で得られたリスク推定値と異ならないか(どの程度異なるか)を検討する。
この目的を達成するには、がん登録で得られたがん症例の診断の信頼性の確認、症例の把握漏れなどの検討、小児期の被曝線量に焦点を当てたリスク解析など総合的な検討が必要である。
II. 研究方法
主任研究者秋葉澄伯は、公益財団法人(以下、公財と略)体質研究会がインド・中国の研究者と共同で行ってきた高自然放射線地域の住民の疫学調査に協力してきている。
調査方法の詳細は、平成23-25年度に原子力災害影響調査等事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業)として実施された「低線量率放射線被曝の健康影響―インド・中国の高自然放射線被曝地域住民の調査結果を中心として(主任研究者:秋葉澄伯)の報告書でも記述した。
本研究では、平成28年と29年に米国を訪問し、放射線疫学・生物統計の分野で著名な研究者である David Hoel博士と面談して意見交換を行い、これまでの解析結果などを検討するとともに、解析方法などに関し、助言を受けた。また、研究期間中、年に2回程度インドを訪問し、カルナガパリ地域の腫瘍登録の担当者と面談して、白血病や甲状腺がんなどの悪性腫瘍症例に関して地域がん登録で収集された症例の診断の正確性や症例の把握漏れに関して口頭で情報を収集するとともに、登録事務所が管理している詳細な診断情報の検討を行った。国内では、弘前大学医学部、福島県立医科大学などを訪問し、床次真司教授ら(弘前大学医学部)、安村誠司教授ら(福島医科大学)と面談し、インドでの調査に関して助言などを得るとともに、研究成果の福島県などの住民にどのように還元するのが良いか探った。
以下、インド国ケララ州カルナガパリ地域でのコホート調査の概要を記述する。
1990−97年にインドのケララ州カルナガパリ地域住民全体を対象にベースライン調査が行われ、コホートが設立された。この調査には、それ以降にカルナガパリ地域で生まれた住民、または移住してきた住民は含まれていない。このコホートをカルナガパリコホートと呼ぶこととする。2009年のNairらの報告では、このコホートの半分(放射線コホート)を対象に2005年までの成人のがん罹患率が検討された10)。
その後、カルナガパリコホート全体のデータベースが完成し、また、追跡期間は5年間延長され2013年までとなった。本研究では、このコホート研究で得られたデータを用いて、統計解析を行った。具体的には、データを性、年齢、観察期間、累積線量などで層別し、層別データを用いてポアソン回帰分析を行った。なお、累積線量は、それぞれの住民で測定された屋内外の線量と住民約1万人の調査から得られた性・年齢別の居住係数から計算された結腸線量である。
(倫理面への配慮)
本研究で得られるがん罹患率、死亡率のデータは、インドの研究者が(公財)体質研究会との共同研究で得たものであり、調査の実施に当たっては倫理委員会の承認を得ている。データの供与に関しては、(公財)体質研究会の許可、インドの研究者の同意を既に得ている。また、平成24年2月に鹿児島大学医歯学総合研究科疫学研究等倫理委員会から疫学調査で得られたデータの使用に関する承認を得た。しかし、平成27年3月末で、承認を受けた研究期間が終了したので、あらためて倫理委員会に申請を行い、平成28年4月に承認を得た。
III. 研究結果
2013年末までの悪性腫瘍罹患例は224例であった(診断年齢30歳未満)。このうち、白血病を除く悪性腫瘍は184例で160例が病理組織診断・細胞診などに基づくものであった。
死亡診断書のみに基づく登録症例は15例であった。白血病症例は40例が同定されており、全例が血液学的診断などを受けていることを確認した。白血病の亜型に関しては、コホートメンバー以外の症例も含めて検討したが、急性リンパ性白血病との診断が半数以上(54%)を占め、また、約20%が急性骨髄性白血病と診断されていた。診断年齢は正確に計算できないが、0歳が1例、1-4歳未満が3例、5−9歳が4例、10-14歳が4例であった。小児白血病では3−5歳にピークがあることが多いのが、このデータでは明確でなかった。
甲状腺がん(36例)に関しては病理組織診断・細胞診に基づくものであった。15歳未満で診断された症例は無かった。
放射線被曝による悪性腫瘍リスクの解析を行った。2013年までのカルナガパリコホートの追跡調査で、到達年齢が30歳未満の対象者は約10万人である。白血病に関しても、また白血病以外の悪性腫瘍に関しても、その罹患率と累積線量との間に統計学的に有意な関連は認められなかった(甲状腺がんに関しても関連は認められなかった)。
累積線量を0-,10-,20-50-,100+mGyにわけ、線量0-群(0mGy以上、10mGy未満の群)を参照群にして相対リスクを計算すると相対リスクは0.8(95%CI=0.5-1.1)、1.0(0.6-1.5)、1.3(0.7-2.3)、1.5(0.7-3.6)であった。
傾向性のP値は0.206であった。
なお、親の社会経済状態などに関して調整を行ったが、同様の結果であった。
小児(15歳未満)に限定した解析も行ったが、統計学的な誤差が大きく、意味があると思われる結果は得られなかった(累積線量とがんリスクに統計学的に有意な関連は得られなかった)。
白血病に関しては、症例数が少なく詳細な検討が困難であった。
今後、さらに症例が収集されるのを待ってリスク解析を行う予定である。
本研究では、また、欧州各国から報告された自然放射線レベルと小児白血病リスクの関連に関する報告との比較解析を行った3-6, 8,9)。
被曝線量当たりの過剰相対白血病リスクは、100mGy当たりで0−27に分布しており、平均的な値は原爆被爆者で得られた結果と矛盾しないように思われた(表)。
表 自然放射線被曝による白血病リスクと原爆生存者の白血病リスクの比較
100mGy当たりの過剰相対リスク(95%新絡区間)
英国のUKCCS研究 3)
|
過剰リスクなし |
スウェーデン 4)
|
過剰リスクあり |
チェルノブイリ 9)
|
急性白血病 3(1-8) |
英国(ブリテン島)5)
|
12 (3- 22) |
スイス 6)
|
4 (0-8) |
フランス 7)
|
過剰リスクなし |
フィンランド 8)
|
2−7歳群で27(1-160);8−15歳群で5(0-100) |
原爆被爆生存者 11)
|
被曝時年齢15歳で3-4 |
IV. 考察
本研究では、診断の正確性、悪性腫瘍症例の把握漏れなどの可能性を検討した。
客観的な評価を行うための調査は行われていないが、病理診断などを持つ症例の全症例の中での割合、死亡診断書のみによる登録の割合、情報を収集するために訪れている病院・診療所・検査施設の網羅の程度などから、大きな問題があるとは思われない。
コホート研究から得られたデータの統計学的解析では、小児がんリスクと自然放射線被曝の関連を検討した。小児がんのなかで甲状腺がんと白血病は放射線との関連が強いと考えられるが、これらのがんを含め、小児がんと累積線量に統計学的に有意な関連は認められなかった。
統計学的検出力は計算していないが、線量当たりの過剰相対リスク推定値の95%信頼区間は非常に広く、この研究単独で線量当たりのリスクを十分に評価できる可能性は低い。
小児期・青年期の放射線被曝は、成人期での被曝に比べて、線量あたりのがんリスクが高くなる可能性が高い。
また、被曝線量が同じでも、線量率が異なると健康影響は異なる可能性がある。
in vitroや動物実験では、線量当たりの生物影響は、低線量・低線量率のほうが高線量・高線量率より小さい可能性が示されているが、ヒトでは十分な証拠は得られていない。
本研究では、また、欧州各国から報告された自然放射線レベルと小児白血病リスクの関連に関する報告の比較解析を行った3-9)。
被曝線量当たりの白血病リスクは、原爆被爆者で得られた結果と矛盾しないように思われた。
しかし、得られた推定値の信頼区間は広く、また、UNSCEAR2017でも指摘されているように、これらの研究には幾つかの不確実性がある。
現在、英国での研究に関しては、そのような不確実性を検討する追加の研究が実施されている。
主任研究者は、英国の研究者と連絡を取ってきており、本研究が終了した後も、彼らと意見交換を行うなどしながら、この問題の検討を継続する予定である。
V. 結論
本研究では、診断の正確性、悪性腫瘍症例の把握漏れなどの可能性を検討したが、他の同様の調査と比べて大きな問題はないと考えられる。
また、コホート研究から得られたデータを用いて統計学的解析を行ったが、小児がんと累積線量に統計学的に有意な関連は認められなかった。
統計学的検出力は計算していないが、線量当たりの過剰相対リスク推定値の95%信頼区間は非常に広く、この研究単独で線量当たりのリスクを十分に評価できる可能性は低い。
VI. 今後の展望など
最近公表された UNSCEAR2017報告書では、世界各国で行われた自然放射線被曝に伴う小児がんリスクが検討されている。
小児の医療被曝によるがんリスクにも注目が集まっており、ヨーロッパ各国では共同研究も行われている。
そのような状況の中で、インドの高自然放射線地域での疫学調査は大きな意味を持ちうる。
残念ながら、症例数が少なく、十分な統計学的検出力は得られていないが、インド政府の研究助成によりコホートは拡大されており、今後の成果が待たれるところである。
記:2020−1−31
以下の研究がある、一部を引用する。
関心のある方は、原著全文を読んでください。
掲載誌:放射線生物研究 47(4),361-378,2012
タイトル:高バックグランド放射線地域住民におけるがんリスクについて
研究者:秋葉澄伯
100−200mSv以下の積算線量を被曝する低線量放射線被曝では、急性の健康影響はなく、長期的な健康影響(がんリスクの増加など)の大きさも不明である。
影響の解明を妨げている主な理由は,仮にリスクの大きさが線量に比例するとしても、低線量に伴う健康影響の大きさは小さく、特にがんのような比較的稀な疾患のリスクを評価するには大規模な疫学調査が必要となること、影響が喫煙習慣などの生活・環境要因の陰に隠れやすくなることなどである。
本稿では、高バックグラウンド地域住民の疫学調査を中心に低線量放射線被曝とがんリスクに関して考察する。
4.その他の高バックグラウンド放射線地域
イラン北部カスピ海沿岸のRasar市周辺の高バックグラウンド放射線地域には数千人が居住している。
Talesh Mahalleh地区などの住宅地域の一部に高線量の自然放射線が検出されるほか、50ほどある温泉の一部は高濃度のRa-226を含んでいる。
RamsarのTalesh Mahalleh地区などでは、260mSv/yに達する家もあると言われている。
一部の家屋では微量のラジウムを含む石灰を家屋の壁に塗りこんでいるため、屋内線量が非常に高くなる場合もあるようである。
Ghiassi−Nejadの研究グループはRa-226の土壌から野菜への移行係数は4/1000から1.6/100と推定し、野菜を食べることによる被曝の実効線量が72.3μSv/yと推定し、これが通常の12倍に当たると指摘した。
彼らは、このほかに、Ramsarの高バックグラウンド放射線地域と対照地域住民の比較調査を行い、リンパ球の染色体異常の頻度は両地域住民で異ならなかったが、住民から得られたリンパ球に1.5Gyのガンマ線を照射すると、高バックグラウンド放射線地域住民で得られる染色体異常の頻度が対照地域住民の56%に過ぎなかったと報告した。
<BEMSJ注:これはホルミシス効果か?>
その後の研究では、免疫能、小核形成、アポトーシス誘導、DNA傷害の誘導と修復などが調べられ、興味深い知見が得られたが、実験手法の妥当性・正確性などを検証する必要があるかもしれない。
また、放射線との関連とされた観察結果が放射線以外の要因によるものでないかも慎重に検討する必要がある。
5.1 台湾のCo-60汚染鋼材使用ビル住民
台湾で1982年にCo-60を含む鋼材が補強材として加工され、1983年と1984年にかけて学校を含む200以上の建築物で用いられ、このため1万人以上の市民や学童が長期にわたり0.5−270μGy/時の放射線被曝を受けた。
張武修博士の研究グループは被曝線量の分かった6,242人(男性:2,967人、女性:3,275人)の1983−2005年のがん羅患率を調べた。
平均推定累積被曝線量は約48mGy(中央値は6.3mGy;1- 2,363mGy)で、最初の被曝時と追跡期間の終了時における平均年齢はそれぞれ17±17歳と36±18歳であった。
追跡期間は平均19年で、台湾がん登録とのコンピュータによる記録照合で128例のがん症例が同定された。
リスク解析では潜伏期問を白血病2年、その他のがん10年とし、性と出生年を調整して、到達年齢をタイムスケールとしたCox比例ハザードモデルを用いた。
得られた相対リスクから近似的に求めた過剰相対リスクは、慢性リンパ球性白血病を除く白血病で1.9/Gy(両側検定P=0.08)、白血病を除くがんでは0.2/Gy(90%信頼区間:-0.5,0.8)であった。
部位別の検討では乳がんが放射線被曝線量と最も強い関連を示し、過剰相対リスクは1.2/Gy(両側検定P=0.13)であった。
それ以外で比較的大きな過剰相対リスクを示したのは肺がんと胃がんで、それぞれ過剰相対リスクは0.9/Gy(両側検定p=0.21)と1.0/Gy(両側検定P=0.41)であった。
放射線被曝と関連した甲状腺がんの増加は見られなかった。
この研究では屋内の線量分布が不均等であり、線量推定が容易ではないこと、生活習慣などの重要な交絡要因を考慮した解析が行われていないことなどが重要なlimitationである。
6.まとめ−低線量率の放射線被曝によるがんリスク
6. 1 白血病
白血病の線量反応関係は原爆被爆者の調査結果から線型2次と考えられている。
実際、原爆被爆者では、1Gyでの過剰相対リスクが3.1(95%信頼区間=1.8,4.3)と報告されており、これを単純に100mSvに外挿すれば0.31となるが、実際に得られた100mGyでの過剰相対リスクは0.15(95%信頼区間=-0.01,0.31)であった。
一方、国際がん研究機関(IARC)が主導して15カ国の原子力作業者のデータを持ち寄り、これをプールして行った統計解析(以下、プール解析と呼ぶ)では、100mSvでの過剰相対リスクは0.19と原爆被爆者の低線量域での結果と似た値になった。
この結果は低線量率被曝では線量当たりの過剰相対リスクが低くなる可能性を示唆している。
また、最近、米国の研究者が行った放射線の遷延性被曝による白血病リスクのメタ解析でも、やはり100mSvでの過剰相対リスクは0.19(95%CI:0.07,0.32)であった。
なお、この解析では以下の研究から得られたリスク推定値が用いられた。
@ 原子力作業者、
A Chernobyl事故の復旧作業者
B インド・ケララ州などの高バックグラウンド放射線地域住民、
C事故などにより生じた高放射線地域(Chernobyl施設周辺地域、ロシア南ウラルのTecha側流域、台湾のCo-60で汚染された建材を使ったビル)の住民
記:2018−1−12
以下の報道がある。
***********一部 引用 ************
毎日新聞2018年1月9日
北朝鮮 核実験場近くで染色体異常 住民被曝か
北朝鮮の地下核実験場=咸鏡北道(ハムギョンプクド)吉州(キルジュ)郡豊渓里(プンゲリ)=付近に住み、2度の核実験後に脱北した元住民2人に、原爆被爆者にみられるような染色体異常が発現している。
韓国の研究者が収集したデータを広島の専門家が確認し判明した。
推定される被曝線量は、高値の人では累積394ミリシーベルトに達し、核実験による放射線の影響が疑われる。
この数値は、広島に投下された原子爆弾の爆心地から約1.6キロの初期放射線量に相当する。
豊渓里周辺では近年、核実験の影響が疑われる体調不良を訴える住民が増えており、被害の実態把握を求める声が上がっている。
(略)
********************
関心のある方は、元ネタの毎日新聞を読んでください。
記:2014−12−13
以下の研究結果に関して、東北大学から報道発表がありました。
以下に、一部を引用して紹介します。
関心のある方は、東北大学のサイトにアクセスして下さい。
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2014年12月9日
東北大学大学院農学研究科
青色光を当てると昆虫が死ぬことを発見(新たな害虫防除技術の開発に期待)
<概要>
東北大学大学院農学研究科の堀雅敏准教授の研究グループは、青色光を当てると昆虫が死ぬことを発見しました。
紫外線の中でも波長が短いUVCやUVBは生物に対して強い毒性をもつことが知られています。
しかし、比較的複雑な動物に対しては、長波長の紫外線(UVA)でも致死させるほどの強い毒性は知られていません。
ある種の昆虫では、紫外線よりも青色光のほうが強い殺虫効果が得られること、また、昆虫の種により効果的な光の波長が異なることも明らかになりました。
本研究成果は青色光を当てるだけで殺虫できる新たな技術の開発につながるだけでなく、可視光の生体への影響を明らかにする上でも役立つと考えられます。
2.研究内容:
様々な波長のLED 光を昆虫に当てて、殺虫効果を調べました。
最初に、378〜732nm(長波長紫外線〜近赤外光)に渡る様々な波長のLED光の下にショウジョウバエの蛹を置き、羽化できずに死亡した蛹の割合を調べました。
LEDの光の強さは直射日光に含まれる青色光の3分の1程度としました。
その結果、青色光を当てた蛹は羽化できずに死亡しました。
青色光の中でも効果の高い波長と効果の低い波長があり、440nmと467nmの2つの波長が高い効果を示しました。
そこで、卵、幼虫、成虫に対しても467nmの光の殺虫効果を調べたところ、いずれも照射により死亡しました。
次に、蚊(チカイエカ)の蛹に対する青色光の殺虫効果を調べました。
蚊も青色光を当てると死亡しました。
しかし、効果の高い波長は417nmの1つだけで、ショウジョウバエと異なっていました。
また、蚊はショウジョウバエよりも青色光に強く、全ての蚊を殺すには、直射日光に含まれる青色光の1.5倍程度の光の強さを必要としました。
417nmの殺虫効果は卵でも認められました。
青色光の殺虫効果を、小麦粉などの大害虫であるヒラタコクヌストモドキの蛹でも調べたところ、非常に高い殺虫効果が認められ、直射日光の5分の1から4分の1程度の光の強さで、全ての蛹が死亡しました。
3.明らかになったこと
青色光は様々な昆虫種に対して殺虫効果を示します。
また、その効果は卵、幼虫、蛹、成虫のいずれの発育段階でも得られます。
ただし、青色光であっても効果的な波長は昆虫の種により異なっております。
また、ショウジョウバエのように、ある種の昆虫にとっては、紫外線よりも青色光のほうが高い殺虫効果を示し、動物に対する光の致死効果は波長が短いほど大きいという従来の考えには当てはまらない動物種の存在が明らかになりました。
4.推測される青色光の殺虫メカニズム
昆虫の種により有効波長が異なることから、その殺虫効果はヒトの目に対する傷害メカニズムに似ていると推測しています。
すなわち、種によって吸収しやすい光の波長が異なり、これによって、種により異なる波長の光が昆虫の内部組織に吸収され、活性酸素が生じ、細胞や組織が傷害を受け死亡すると推測していいます。
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BEMSJの感想:
卵でも殺虫効果があったことから、卵そして蛹、成虫の体組織の一部に光を感じる組織というか材料があり、その組織で光を感じるから、殺虫効果が出るのではないでしょうか。
ブルーライトを「怖いO−157」といった細菌に照射しても、0−157には光を感受する組織・材料がないので、たぶん、殺菌効果は出てこないのではないでしょうか?
追記:2015−10−9
ブルーライトの研究者の見解が、電磁波研会報No.96(2015年9月27日発行)に研究の内容と共に、記載されていたので、以下に抜粋して紹介する。
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論文を書かれた東北大学大学院の堀雅敏教授に問い合わせた。
Q:今回の虫の影響から、人間への影響を推定できますか?
A:人間の場合は、直射日光を直接浴びる機会が多く、その分、光に対する耐性も、これらの虫に比べてずっと高いものと考えます。
強い青色光は細胞にとって必ずしも良いものではないかもしれませんが、人間の場合はプロテクト機能と修復機能により、青色光に対応できる仕組みが備わっているのではないでしょうか。
Q:照明器異に使われる白色LEDからもブルーライトはでていますよね。
A:確かに白色光にも青色波長は含まれます。LEDの場会は白色であっても、ブロードな波長を含む蛍光灯や自熱球などと違い、特定の波長しか含まないので、その分、特定の青色波長の光束度は高いかもしれません。
しかし、青色光は直射日光にも含まれており、そこに含まれる青色光の強度の方が、白色LED照明に含まれる青色光よりも強いです。
Q:では今回の研究から白色LED照明の人への影響については?
A:虫に比べ直射日光を浴びるリスクが高い人間の場合は、それだけ青色光に対する耐性も強いと考えられるのと、白色LED照明を浴びることによるリスクは直射日光を浴びるリスクから比べれば低いと言えるでしょう。
殺虫作用が分かったブルーライトは、太陽光に含まれるほど強力なもの。
死んだ昆虫は直接太陽光を浴びないように生息している。
一方、人間は太陽光の下で暮らしている。
太陽光に紫外線で日焼けすることはあるが、虫のようにブルーライトを全身に浴びることのリスクはなさそうだ。
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記:2014−12−16
http://www.nhk.or.jp/tokai-news/20140723/3190031.htmlにあった内容の一部引用です。
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NHK岐阜放送局
青い光が目に悪影響 仕組み解明
2014年07月23日12時28分
岐阜薬科大学の研究グループが、スマートフォンなどの画面から出る青い光=ブルーライトが、目の細胞を死滅させる仕組みを、マウスを使った実験で解明したと発表し、ブルーライトの影響を防ぐ今後の対策に役立つことが期待されています。
岐阜薬科大学の原英彰教授などの研究グループが発表しました。
研究では、スマートフォンの画面などに使われるLED=発光ダイオードから出る青・緑・白の3色の光を6時間ずつマウスの目の細胞にあてたところ、緑の光をあてた細胞はあまり変化がなかった一方、白は約70%、青は約80%の細胞が死滅したということです。
また、これらの細胞を詳しく調べると、老化を進める活性酸素が、緑の光を当てた細胞で、通常の、1.5倍に増加したほか、白が2倍、青が3倍に増えたということです。
ブルーライトは、これまでも目の機能を低下させると指摘されていましたが、研究グループはブルーライトが活性酸素を急激に増やして、細胞を死滅させるという仕組みが解明されたとしています。
原教授は「今回の研究でスマートフォンなどのブルーライトによる目の影響を防ぐ対策が進むことを期待したい」と話しています。
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この研究は以下の論文として公開されている。
掲載誌:Scientific Report published:
9 June 2014
タイトル:Damage of photoreceptor-derived cells in culture
induced by light emitting diode-derived blue light
研究者:Yoshiki Kuse, Hideaki
Haraら
関心のある方は、上記の論文全文を読んでください。
BEMSJの関心は、この研究がどの程度の強さのブルーライトを当てた研究なのか、です。
論文を読むと、
・Murine cone photoreceptor-derived cells (661 W) were
exposed to blue, white, or green LED light (0.38 mW/cm2).
ネズミの円錐形光受光体由来の細胞(661W)にLEDの青、白、緑の光(0.38mW/cm2)を照射した。
・The 661W cells were seeded at a density of 3×103 cells per well into 96-well plates, and then
incubated for 24 h under a humidified atmosphere of 5% CO2 at 37℃.
661W細胞を96‐Wellプレートの3×103の密度で蒔いて、37度で5% 2酸化炭素の湿気のある雰囲気で24時間、培養した。
・After 661 W cells were treated Nacetylcystein
(NAC) (Wako, Osaka, Japan) or vehicle (1% FBS, DMEM), the cells were incubated
for 1 h.
661W細胞をNacetylcysteinか介在剤で処理をしてから1時間培養した。
・Then, the cells were exposed to 0.38 mW/cm2 [equivalent to 450 lux for blue LED light (464 nm);
1,600 lux for white LED light (the wavelength peak is 456 nm and 553 nm); and
2,500 lux for green LED light (522 nm)] or alternately, to 2,500 lux of blue,
white or green LED light from below the 96-well plates for 24 h.
それから細胞は0.38mW/cm2の光に曝露した。
この光の強さは、等価的に、464nmの波長の青色LEDによる450 Lux、白色LED(ピークの波長は456nmと553nm)による1,600 Lux、波長522nmの緑色LEDによる2,500 Lux、もしくは青、白、緑のLEDによる2,500 Luxの光で、24時間、96‐Wellプレートの下から照射した。
青色光で450 Luxという条件は、かなり明るい、明るすぎてまぶしい位の光の量ではないかと、BEMSJは感じました。
さて、上記研究の照明条件が、一般的な光の曝露限度に対して、どの程度の割合になるのか、調べてみました。
可視光線に関しては、強すぎる光は有害であるとして、規定が設けられています。
以下の文献に関連する情報がありました。
掲載誌:産衛誌 46巻 2004年
タイトル:有害光線の衛生管理
研究者:奥野 勉
・ACGIHの曝露基準によれば、波長400nmから500nmのブルーライトに対する、曝露時間が10,000秒(約3.3時間)を超える場合の実効照度の曝露限度値は1.0μW/cm2である。
このことから、岐阜薬科大学の研究は、規定のブルーライト曝露限度値の380倍も強い照射条件で行った結果であると、言える。
今後は、どこまで光照射を低くすれば、変化がみられなくなるのか・・・・という閾値を見つける研究を行うことが望ましい。
追記 2015−10−9
ブルーライトの研究者の見解が、電磁波研会報No.96(2015年9月27日発行)に研究の内容と共に、記載されていたので、以下に抜粋して紹介する。
********************************
実験を行った岐阜薬科大学の原英彰教授に伺った。
Q:我々が日常的に浴びる程度のブルーライトでも目に傷害を与える可能性を示唆している、ということでしょうか?
A:細胞を使ったメカニズム解明のための実験なので、照射したのはかなり強い光であることは確かです。
人間で、日常的に浴びる照明などのブルーライトの光によってすぐに細胞に障害が起こるということまでは言えません。
しかし長期的に浴び続けた場合の影響については懸念があります。
白色LEDはスマートホンのバックライトにも使われています。
近年、高校生たちの間では、スマホを1日5時間以上見続けるような生活をしている人たちも多い。
その人たちが何十年後に何の影響も出ないのかが心配です。
A:スマホのディスプレイや照明のLEDについて何らかの対策が必要だということでしょうか?
Q:今すく規制せよというわけではありませんが、ブルーライトをカットするメガネや、ブルーライト成分を減らしたディスプレイなどの開発も進められている。
技術的に低減可能なものは低減しておいた方が良いと思います。
**************************
記:2015−9−25
参天製薬のWEBにもパンフレットが公開されていますが、私は、先日定期検診を受けている眼科で以下のパンフレットをみました。
以下の問い合わせを参天製薬に送りました。
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「知っていますか? 加齢黄斑変性 監修 石橋達郎 パンフレット番号2087401 1A4SE 1A4SE」
このパンフレットのP17に「太陽光のとくに青色光は黄斑の老化に関係するといわれています。また、パソコンやテレビなどの青色光も同様によくないといわれています。」とあります。
前半の太陽光に関しては、納得ができます。
パソコンとテレビに関しては、具体的にどのくらいの量の青色光が出ているので、黄斑の原因となるというような、具体的な論拠というか、研究論文などはあるのでしょうか? 教えてください。
****************************
以下の回答が着信しました。
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パソコンやテレビなどから発生する青色光は、380nm〜495nmの波長の可視光線で、通常、ブルーライトといわれています。
ブルーライトは可視光線の中で、最もエネルギが高く、眼の角膜や水晶体で吸収されずに、網膜まで到達します。
網膜障害を惹起する分光特性は435nmが最も生じやすいといわれています。
ブルーライトの人体に対する影響については網膜に変性を与える影響(加齢黄斑変性症等を来す可能性)以外にピントのズレによる目の疲れや不定愁訴などの症状の発生の可能性や眼以外の影響としてサーカディアンリズム(生体リズム)への影響が考えられています。
ただ、ブルーライトを長時間見続けるライフスタイルはここ数年の間に広まったもので、サルを用いた青色発光ダイオード光による網膜障害(急性障害)については報告がありますが、人体への影響について実証されたものは今のところありません。
ブルーライトの人体への影響を医学的に検証することを目的に設立されたブルーライト研究会(世話人代表:慶應大学眼科教授 坪田一男先生)に関連データが掲載されていますので、ご確認をお願いいたします。
ブルーライト研究会>ブルーライト http://blue-light.biz/
参天製薬株式会社 お客様相談室
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BEMSJとしては、参天製薬とも言える会社であるからして、もう少し、厳格な、定量的なパソコンやテレビからのブルーライトの光の量のデータなどを含めた情報の公開があるかと、期待していましたが、完全に期待外れでした。
追記:2023−1−31
参天製薬のWEBを確認、掲載されているパンフレットは同じものでした。
記;2017−2−21
以下の資料はナナオが2012年に制作したパンフレットの一部の引用です。
画面の色を青っぽい白(色温度が高い)ではなく、黄色みというかクリーム色に近い白(色温度が低い)に調節するとブルーの発光量が減る、ということです。
記:2017−2−21
以下の研究がある、
タイトル:White Light–Emitting
Diodes (LEDs) at Domestic Lighting Levels and Retinal Injury in a Rat Model
家庭内仕様の白色発光ダイオード(LED)と実験用ラットでの網膜損傷
研究者:シャン・ユーマン(台湾大学)、ワン・ゲンシュー(台湾大学)、デビッド・スライニー(元アメリカ陸軍医療部)、ヤン・チャンハオ(台湾大学)、リー・リーリン(台湾工業技術研究所)
掲載誌:Environmental Health Perspectives ,volume 122, No.
3, March 2014
『環境健康展望』122巻3号、2014年3月
概要:
背景:発光ダイオード(LED)は、在来の照明用光源よりも強い青色光を、網膜に到達させる。高強度光(2000から10000ルクス)への慢性曝露が網膜の損傷をもたらすことは以前から知られているが、比較的低強度の光(750ルクス)への慢性曝露が、齧歯類の動物実験により評価されたことはなかった。
目的:LEDにより引き起こされるSDラットの網膜神経細胞損傷を、機能学的・組織学的・生化学的方法を用いて調べた。
方法:青色LED(460ナノメートル)とフルスペクトルの白色LED、およびそれに相当するコンパクト蛍光灯を、照射のために使用した。
生理学的検査は電子網膜撮影、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色、免疫組織化学(IHC)および走査型電子顕微鏡(TEM)をふくむ。
酸化ストレス水準を決定するために、網膜内のフリーラジカルの生成を計測した。
結果:H&E染色とTEMは光受容体の細胞死および壊死を示し、青色光が網膜の光化学的損傷を誘発することが示唆された。
LED曝露集団においては、網膜内でのフリーラジカル生成も増加した。
LED集団では重度の網膜損傷がみられ、一方コンパクト蛍光灯(CFL)集団では中度あるいは軽度の損傷がみられた。
結論:LED光への慢性的曝露は、青色光のより少ない他の光源にくらべて、網膜に悪影響を及ぼしやすいのではないかとの疑問が持たれる。
したがって、青色光の豊富な「白色」LEDを一般照明に使用する際には、予防的な措置が講じられるべきであることが示唆される。
詳細から
光源 単一波長青色LED(460±10ナノメートル)およびPC白色LEDは、曝露実験のために特注されたもの(台北・ブルードッグテクノロジー社)である。
PCLEDの当該色温度(CCT)は6500ケルビンである。
白色CFL(川世・中華工業社のESE27D-EX)のCCTも6500ケルビンだが、黄色CFL(同社のESE27L-EX)のCCTは3000ケルビンである。
それぞれの光源は、積分球において40の測定をなすように計画された。
すべての光源のスペクトル強度分布(SPD)および総強度は、試験認証機関である新竹の工業技術研究所で検査されたが、その結果は図2に表示されている。
図2 (A)青色LED、(B)白色LED、(C)白色CFLおよび(D)黄色CFLの光源SPD曲線。
単一波長青色LED光(A)のピークは460ナノメートル(出力0.1ワット毎ナノメートル)にあった。
白色LED光(B)のCCTは6500ケルビンであった。
波長460ナノメートルで出力0.028ワット毎ナノメートルの最初のピークは青色成分を示しており、第二の鐘状のピークはより強力な黄色成分を示している。
CCT6500ケルビンのCFL光(C)は、スペクトル中に複数のするどいピークを示すが、青のピークは黄色ないし赤のそれに比較して短く、また全幅半最大値(FWHM)は(A)や(B)より小さい。
黄色CFL光のSPD曲線(D)は(C)と類似しているが、CCTは3000ケルビンであり、最大ピークも黄色にある。
試験されたすべての光源は青のピークをふくむが、曲線の形状がちがえば全体の強度もことなる。
各光源における目盛りのちがいにも注意。
図5 TUNEL標識により検知された網膜細胞死(損傷した網膜細胞が陽性となる)
関心のある方は、原著全文を読んでください。
BEMSJのコメント
・この研究ではコンパクト蛍光灯(白色、黄味が非常に強い白色)に比べて、LED(青単色、白色)は眼に影響するという結果になっている。
これはブルーライトの影響であるとしている。
・実験に用いた光源のブルーライトの発光・スペクトラムを見ると、グラフからおおよその数字を読み取れば、青単色LEDは0.09mW/nm、白色LEDは0.03mW/nm、白色コンパクト蛍光灯は0.08W/nm、黄味が非常に強い白色コンパクト蛍光灯では0.07mW/nmとなっている。
もしブルーライトの影響であるとすれば、白色LEDの曝露群が他の曝露群に比して影響が少ない、という実験結果にならなければならない。
・実験結果はそのようにはなっていないので、この研究から「LEDは眼に影響が大きい、ブルーライトの影響である」とは断定できない。
・ブルーライトの発光スペクトラムの波長の幅も何か影響しているのかもしれない、
・LEDは光源の輝度が非常の大きい、光源を直接見ると非常の明るく、まぶしい。
しかし、LEDは光源から発射される光束が小さく、周りを照らす時は床面などでは照度(ルックス)が小さい。
発光輝度・光束がそれぞれの光源で異なるので、照度が同じになるように、光源と飼育箱の距離を変えなければならない。
実験ではどのようにして、異なる光源からの光の照射量(照度)を一定にしたのかの、正確な記述はない。
実験で、ラットが光源を直接見るような状態であれば、コンパクト蛍光灯に比べればラットはかなりまぶしい状況に置かれたのではないかとも思われる。
これを避けるためには、光源を直視できないように、間接照明で実験を行う必要があるのではないかと、思われる。
・よって、この実験・研究はLEDから出るブルーライトによる目の影響としては、不十分なものと言える。
記:2017−10−7
*以下の新聞記事があった
朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASK9G3F4MK9GUZOB001.html より一部引用
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2017年9月27日
ハエ、⻘い光を当てるとなぜ死ぬ︖ ⼭梨の⾼校⽣が解明
宮城県で8⽉に開催された全国⾼校総合⽂化祭(総⽂祭)の⾃然科学部門のポスター発表部門で、山梨県の韮崎高校生物研究部が文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞した。
韮崎⾼は⽣物研究部の平⽥匠部⻑(3年)が「⻘⾊光によるハエの死亡原因は本当に酸化ストレスなのか」の題で発表した。
⻘光にはハエなどに殺⾍効果があることが知られているが、詳しい仕組みは分かっていないという。
韮崎高は生物研究部の平田匠部長(3年)が「青色光によるハエの死亡原因は本当に酸化ストレスなのか」の題で発表した。
青い光にはハエなどに殺虫効果があることが知られているが、詳しい仕組みは分かっていないという。
平⽥さんはショウジョウバエを使い1年半がかりで実験。⻘い光を当てると、体内の活性酸素が細胞を傷つける「酸化ストレス」が強まり、細胞が自ら死ぬアポトーシスを促すことを突き止めた。
実際の実験では、ショウジョバエのさなぎを使用
***********************
実験装置を示す写真から、青い光は、青色のLEDによる発光とみることができる。
この記事を読んで、どの位の強さの青い光を当てたのか、関心を持った。
*韮崎高校のWEBに、以下の記事があった。
1年前の2016年に、同様な研究発表を行っており、明るさは「青色10000ルックス、白色3000ルックス」ロいう照射条件であったことが分かった。
2017年の発表の実験条件と、2016年の発表の実験条件は同じであろうと、推定した。
********************
12月2日(金曜日)
第39回日本分子生物学会年会 高校生発表(パシフィコ横浜)で発表してきました!
【演題】「青色光によるハエの死亡原因は、本当に酸化ストレスなのか」 韮崎高等学校生物研究部2年 平田 匠
【発表要旨】
東北大学の堀雅敏准教授らの研究によって、可視光である青色光の昆虫に対する高い殺虫効果があると発表された(2014)。
私は殺虫効果の検証と、まだ明らかになっていない死亡のメカニズム解明を試みている。
ショウジョウバエの蛹に対して、青色光10,000 Lux、白色光3,000
Luxで光照射をしたものと全暗条件との比較から、青色光に高い殺虫効果があることが確かめられた。
さらにその関連分子は、ハエの全身に分布する青色光受容タンパク質「Cryptochrome(クリプトクロム)」ではないかという仮説を立て、クリプトクロム変異体(cryb)を用いて同様の検証を行ったが、その結果、野生型同様に高い死亡率を示し、クリプトクロムが光受容物質である可能性は少ないと考察した。
現在は、死亡の原因は酸化ストレスの上昇によるものではないかと考え、酵素SODの活性を測定するとともに、他の青色光受容物質を模索している。
今後は、単眼複眼に局在する色素「Rh(ロドプシン)が関係しているのか研究していく。
**********************
以下はBEMSJのコメント:
ここでブルーライト10,000LUXは光曝露量としてはどうか?
以下は一般的な照度の例である。当然白色光を対象にしている。
1)一般的な作業環境では白色光で300LUX程度以下
作業や室内における一般的な照度の目安は、視力の変化も考慮すると、オフィスフロアでは150〜300ルクスぐらいがよいと考えられています。また、デスク上で使用する電気スタンドの明るさは、同じく150〜300ルクスの間が適度とされています。
視力検査では、照度200ルクス下で視力表を見るのが標準とされていますが、視力は照明(照度)によっても大きく変化します。
2)JISに規定されている照度基準の例
非常に明るく照らしている場合も2,000ルックスであることが判る。
実験条件の3,000ルックスはかなり明るい白色光であると言える。
3)ICNIRPの光曝露規定では、光源の輝度を網膜上での照射強度という観点で記述している。
4)日本工業規格JIS C7550:2011ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性 という規格では
「青色光による網膜傷害:青色光による網膜傷害の実効放射輝度又は露光許容時間」として、目の網膜への影響を評価する手段を規定している。
この場合は、青い光の波長、波長によって異なる係数、波長ごとの発光輝度、これらの積分値で評価することになっており、単純に10000ルックスがどうかは判定できない。
残念ながら、青い光に関する照度基準などに関しては、これ以上の情報は見つからない。
いずれにしても、10,000ルックスの青い光は、生活環境下では浴びることのないかなり強い光と言える。
「殺虫剤」ならぬ「殺虫ライトの研究」としては、この韮崎高校の研究は面白い。
前述の「40.岐阜薬科大学のブルーライト研究2014年」では、波長464nmの青色LEDで450LUXとしている。
この岐阜薬科大学の照射はACGIHの曝露規定の380倍の量であった。
もし、同じ波長の青色LEDで、10,000ルックスであるとすれば、単純計算で、ACGIHの曝露規定の380倍×22倍=8360倍も強い殺虫ライトでの実験と言えるかもしれない。
以下の研究がある。
掲載誌;産業衛生学雑誌
58(1): 41 -41 2016
タイトル:液晶モニタのバックライトとVDT作業一ブルーライトの測定と視覚実験一
研究者:吉村公美子ら 名古屋大学・院・医学系研究科
【はじめに】ブルーライト領域の光は,目の網膜を損傷するといわれている。
本研究では,視覚実験を行い、液晶モニタの見やすさについてパソコン用モニタと医用モニタを比較し、ブルーライト領域の光量との関連を検討した。
【方法】比較したモニタは4種類で、パソコン用モニタ(ブルーライト軽減機能:なし、あり)および医用モニタ(表示モード:医用画像,テキスト)であり、各モニタの分光輝度を測定した。
被験者17人(男8名、女9名、平均年齢31.7±10.8才)に、1モニタにつき480課題行い、正答率と反応時間を得て、各モニタを比較するためカイニ乗検定および分散分析を行った。
【結果】視覚実験の結果は、輝度が高いモニタの正答率が高く、反応時間が短いという結果だった。
【考察】ブルーライト領域の光は、網膜を損傷させるといわれているが、実際のVDT作業としてモニタのコントラスト差の認識には影響が無いと示唆された。
記:2017−10−10
http://www.kokusyo.jp/led/11912/ にあった内容の一部引用
2017年08月17日 (木曜日) |
この研究は、以下の内容
*************************
掲載誌:
Tsukuba Journal of Biology (2012) 11, TJB201206IS 2012
タイトル:特集:SSリーグ研究報告「サケ・メダカの孵化・成長と光質の関係」
研究者:住谷 伊織(茗溪学園高等学校3年)
近年ではヒラメなどで光環境と成長速度の関係についても注目されつつあるが、研究例は多くない。
そこで本研究ではサケ・メダカ胚を用いて光環境に着目して実験を行った。
クリップライトの電源部分にタイマーをセットし、毎日12 時間ごとにスイッチがON、OFF になるようにする。
【考察】
1.光の照射時間について
サケでは、受精卵の際は恒暗群、仔魚には昼夜群がよい、という結果であった。
その理由として、親サケは自分が産卵した卵に土をかけ敵に食べられないようにする習性がある。
この土の中の受精卵は太陽の光が当たらない、“恒暗群”にあたる。その後孵化した仔魚は泳ぎだして太陽の光を浴びる、“昼夜群”である。
よってサケの成長には自然環境に近い形での照射時間がもっともよいということが考えられる。
それに対し、メダカは受精卵、仔魚時ともに昼夜群がよいという結果であった。
その理由は、メダカの受精卵は水草等の太陽光が当たる場所に産み付けられるため、常に“昼夜群”で育っている。
そのことからこちらも自然環境に近い形での照射時間がもっともよいということがわかった。
2.光の色について
サケでは、孵化するまでの日数、孵化率、孵化直後の体長、孵化後の成長率、孵化後の死亡率ともに青色光照射群は悪影響を及ぼしていた。
逆によい影響を与えていたのは赤、緑色光であった。
青色光が悪影響を与えている理由は定かではないが、考えられることは、ホルモンやタンパクの分泌を抑えていて、それらが影響を及ぼしているのかもしれない。
また、別に行った実験より、青色光を照射した群には奇形率が高かったことからも、なにかしらの影響を受けているということが確実である。
さらに実験3、4から受精卵が孵化するまでの期間に青色光を浴びると、成長に必要な体内物質の合成、もしくは青色光により物質が変化する可能性が考えられる。
同様に、メダカにおいても青色光が悪影響を与えていると考えることができる。
同じような実験を行っている参考文献が非常に少なく、サケ・メダカを用いている例を見つけることができなかったので原因はわからない。
この結果をもとに今後の実験に役立てていきたいと思う。
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高校生の実験ということで、照明条件が定かではない。
クリップライトは一般的には白色光のはずで、それをどのようにして、赤単色、青単色といった光源に加工したのか、その時の輝度というか照度はどの程度か? 報告書ではわからない。
メディアコクショのサイトでは「サケとメダカの受精卵に4色のLEDを照射した実験報告」とあるが、オリジナルの報告書には「4色のLED・・・」の記述は見当たらない。
また、アカゲザル6匹をつかった青色光照射による網膜破壊実験も行われており、40分で細胞が壊死します。(資料 ※b) (資料 ※b)… http://ameblo.jp/yudaganka/entry-10569082259.htmlきくな湯田眼科 青色光の網膜毒性 より |
この研究の概要は以下である。
眼科医が、他の研究者の研究の概要を紹介している。
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問題は青色ダイオードの光毒性についてです。
これについては小出らがサル眼を用いた実験を行っています。(日本眼科学会雑誌 2001;105:687-695)
この実験は成熟雄アカゲザル6匹を用い、中心波長460nm、照射パワー1.2mWの青色LEDを使用、アトロピンで散瞳し、細隙灯顕微鏡と集光レンズを用いて網膜黄斑部に照射径が3mmになるようにして、それぞれ12分、23分、34分、40分、45分、90分間青色光を照射した実験です。
照射後30日目に屠殺し病理組織を見ています。
(大変力の入った研究です。なお実験に供されたサルは人のためとはいえかわいそう。冥福を祈ります)
この結果は23分以内の照射では何ら異常は生じなかった。
34分照射したサルでは蛍光眼底造影でわずかな過螢光を認めたのみ。
40分照射したサルで、蛍光眼底造影で30日目後期の過螢光を認め、組織学的検査で視細胞外節が崩壊、網膜色素細胞がほぼ壊死に陥っていた。
”と言うことです。
このことから彼らは28.8J/cm2 以上の照射で青色光での網膜障害が起こることを指摘しています。
いずれにしろ強い光を長時間網膜に当て続ければ光障害は避けられませんが、今回見られた実験系のように、散瞳状態で意図的に照射するようなことでもない限り、通常このような光が網膜に連続して当たることはありません。
逆に言うと、このような過酷な条件下でも23分程度であったら何ら網膜に影響を与えないと考えた方がよいと思います。
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以上のことから、強いブルーライトには、目の網膜への影響はあります。
「ブルーライトの波長を含むLEDを細胞に照射した際に活性酸素が増加したことによって細胞のエネルギ産生の場であるミトコンドリアが障害を受け、さらにタンパク質合成の場である小胞体に障害が起きることで、細胞障害が惹き起こされたと考えられます。」(岐阜薬科大学薬効解析学研究室) (資料 ※c)… http://news.mynavi.jp/news/2014/07/25/304/ マイナビニュース より |
資料Cにある情報は
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なぜLEDによるブルーライトが目に悪いのか? - 岐阜薬科大が仕組みを解明
[2014/07/25]
岐阜薬科大学は、青色発光ダイオード(LED)から発せられる青い光(ブルーライト)が、目にダメージを与えるメカニズムを解明したと発表した。
同成果は、同大薬効解析研究室の原英彰 教授らによるもの。詳細は英国学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
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岐阜薬科大学の研究の詳細は以下
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掲載誌:Scientific Report published:
9 June 2014
タイトル:Damage of photoreceptor-derived cells in culture
induced by light emitting diode-derived blue light
研究者:Yoshiki Kuse, Hideaki
Haraら
論文を読むと、
・ネズミの円錐形光受光体由来の細胞(661W)にLEDの青、白、緑の光(0.38mW/cm2)を照射した。
・661W細胞を96‐Wellプレートの3×103の密度で蒔いて、37度で5% 2酸化炭素の湿気のある雰囲気で24時間、培養した。
・661W細胞をNacetylcysteinか介在剤で処理をしてから1時間培養した。
・それから細胞は0.38mW/cm2の光に曝露した。
この光の強さは、等価的に、464nmの波長の青色LEDによる450 Lux、白色LED(ピークの波長は456nmと553nm)による1,600
Lux、波長522nmの緑色LEDによる2,500 Lux、もしくは青、白、緑のLEDによる2,500 Luxの光で、24時間、96‐Wellプレートの下から照射した。
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青色光で450 Luxという条件は、かなり明るい、明るすぎてまぶしい位の光の量ではないかと、BEMSJは感じました。
さて、上記研究の照明条件が、一般的な光の曝露限度に対して、どの程度の割合になるのか、調べてみました。
可視光線に関しては、強すぎる光は有害であるとして、規定が設けられています。
以下の文献に関連する情報がありました。
********************
掲載誌:産衛誌 46巻 2004年
タイトル:有害光線の衛生管理
研究者:奥野 勉
・ACGIHの曝露基準によれば、波長400nmから500nmのブルーライトに対する、曝露時間が10,000秒(約3.3時間)を超える場合の実効照度の曝露限度値は1.0μW/cm2(換算すると10mW/m2)である。
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このことから、岐阜薬科大学の研究は、曝露規定のブルーライト限度値の380倍も強い照射条件で行った結果であると、言える。
さらに従来は安全とされていた青色以外のLEDにも、リスクがあることを指摘している。 |
この研究は、材料の問題で、蛍光灯の中の水銀・・・・と同じ。
以上の検証から、
「今世紀最大の公害・LED、危険な実体とメカニズム、研究者からメディア黒書へ情報提供」で、
「研究者からメディア黒書へ情報提供」から「今世紀最大の公害・LED、危険な実体とメカニズム」が判明したので、「LEDは危険」というのは、ちょっと論が合わないと考える。
記:2019−1−28
以下の研究報告がある。
公益財団法人 三井住友海上福祉財団 助成結果公開資料:2013年度研究結果報告
研究課題:運転中に受けるブルーライト量の測定と安全運転への影響
研究者:綾木雅彦、坪田一男、井手武
まとめ
生活環境内の自然光と人工照明中のブルーライト成分を試作した光センサを使用して測定した。
ブルーライトを発する光源を使用して眼の角膜上皮細胞への光毒性の培養実験を行って、眼障害の可能性と対策について考察した。
ブルーライトならびにブルーライトの覚醒度への影響を検証した。
以上の結果から、通常の視力や視野の確保以外にも眼の健康に配慮した照明、遮光が使用されるべきであると結論した。
内容の一部を抜粋
本研究では太陽光、環境照明、電子機器の光量、ブルーライト成分、ブルーライト遮光の効果を検証する。
次に、ブルーライトと覚醒度の関連を検証する。
1)ブルーライト測定
試作した光センサを使用して、太陽光、照明装置、計器の光量とブルーライト成分を測定する。
眼鏡型センサで被験者の眼の高さ、角度を適正に調整して測定でき、400-500nm のブルーライト領域を選択的に測定できる。
市販のブルーライト遮光板(PC用眼鏡レンズ)の効果も測定した。
表 各種光源の光エネルギ実測値、ブルーライト成分(400-500nm)とブルーライト遮光板の効果
(光エネルギーの単位はmW/m2)
光源 |
全光量 |
ブルー ライト量 |
遮光時のブルー ライト量 |
ブルーライト 含有率(%) |
遮光板の 遮光率(%) |
太陽光(夕陽) |
102 |
18 |
5 |
17 |
38 |
太陽光(窓越し、曇天) |
628 |
68 |
66 |
10 |
3 |
太陽光(窓越し、晴天) |
814 |
77 |
63 |
17 |
18 |
パソコン画面(距離50cm) |
73 |
16 |
14 |
10 |
13 |
スマホ画面(距離0cm) |
769 |
150 |
121 |
20 |
19 |
スマホ画面(距離15cm) |
463 |
97 |
87 |
21 |
10 |
パソコン: NEC AS 191 WM- c 白色画面、最大光量
スマホ:アップル社 iPhone 4 白色画面、最大光量
最近問題にされているコンピュータやスマホからのブルーライトであるが、眼に近い距離では昼間の車内や屋内の明るさに等しいことがわかる。
BEMSJ注)上記の測定結果を見ると、驚くべきことが判る。
40Fの項でも紹介したが、以下の情報がある。
***************************
掲載誌:産衛誌 46巻 2004年
タイトル:有害光線の衛生管理
研究者:奥野 勉
・ACGIHの曝露基準によれば、波長400nmから500nmのブルーライトに対する、曝露時間が10,000秒(約3.3時間)を超える場合の実効照度の曝露限度値は1.0μW/cm2(換算すると10mW/m2)である。
*********************
パソコンやスマホの光だけではなく、窓越しに入射する曇天時の太陽光に含まれる光の中に含まれるブルーライトの量は、3,3時間を超える長時間の曝露制限値を超えることになっている。
2) 培養角膜細胞に対するブルーライトの光毒性
ウサギ培養角膜上皮細胞(RC-1)とマウス線維芽細胞の光毒性試験を行った。
使用した光源は405nmのレーザ照射装置(リコー光学RV-1000、花巻市)である。
940mW/cm2のエネルギで3分間照射し、サブコンフルエント(約10-30%)の状態で細胞生存率を対照との比率を算出した。
われわれは眼表面の培養細胞を使用してブルーライトの光毒性を測定した。
今回使用した光源のブルーライトエネルギは太陽光を直視するくらいの強さで細胞毒性が出現している。
結果:
照射後は細胞が障害され、細胞数が著明に減少している。
グラフにはウサギ角膜上皮細胞(RC-1、SIRC)と比較対象としてマウス線維芽細胞である3T3細胞の結果を示した。
ブルーライト照射により有意に細胞生存率が下がっている。
図 ブルーライトの培養細胞に対する光毒性
ウサギ角膜上皮細胞(RC-1)405nmブルーライト照射後の細胞生存率。LD=ブルーライト照射
BEMSJ注:光毒性が検出されたこの実験の照射強度は940mW/cm2=9400kW/m2であり、表にあるブルーライトの測定値の最大であるスマホ0pにおける強度150mW/m2の約6万倍の強度である。
「今回使用した光源のブルーライトエネルギは太陽光を直視するくらいの強さで細胞毒性が出現している。」と論文にあるが、まさにそのようである。
3) ブルーライトと覚醒/眠気度
対象は健常者、22−40歳10名男性7名女性3名である。
環境条件を一定にした宿泊施設にて就寝前2 時間ブルーライト遮光眼鏡(ブルーライト遮光率70%)を3日間装用し、装用中はタブレットPCで読書などの作業をおこなった。
60分おきに唾液メラトニン、アミラーゼ、血圧、脈拍測定を行った。
PC 作業中1時間おきにカロリンスカ眠気尺度、日中は毎日エプワース眠気尺度を施行した。
対照はブルーライト遮光機能のない眼鏡を使用した。
実験期間中は毎日アクチグラフ(睡眠覚醒サイクル記録装置)を装着し記録した。
結果:
夜間就寝前、人工照明からのブルーライトを遮光することにより、メラトニン分泌が増加した(図は割愛)。
脈拍、血圧、アミラーゼ、日中の眠気には差がなかった(メラトニンの測定は全部終了していないため、一部のみ報告)。
夜間のPC作業中、ブルーライトを遮光した場合はしない場合よりも眠気が増強した(図は割愛)。
以上の結果から、人工照明やコンピュータ液晶端末から発するブルーライトには覚醒作用があり、ブルーライトを遮光すると覚醒作用が減り、眠気が増すと考えられた。
関心のある方は、原著全文を読んでください。
記:2019−2−4
以下の研究がある。
掲載誌:ペトロテック 石油学会情報誌 第40巻第11号 2017年
タイトル:バイオレットライトの禁止予防における効果と期待
研究者:坪田一男
********一部の引用************
2. 2 近視の原因
なぜ近視になるのかは不明であり、諸説ある。
以前は、遺伝半分、環境半分とよくいわれていた。
両親ともに背が高いと、子どもも背が高くなる確率は高い。
目の形状にしても、同様である。
しかし、近年の急激な近視の増加は、遺伝だけでは説明がつかない。
「近くばかりを見るライフスタイルの影響」ということがよくいわれるようになってきたが.文字文明は紀元前からあり、また近くを見ている生活で皆が近視になるわけではない。
近年になり、「外で遊んでいる子どもは近視になりにくい」というデータがいくつかの研究チームから報告されるようになった。
親が近視でも、近くを見る時聞が長くても、1日に2時間以上の屋外活動の時間を持つ子どもは近視になりにくい、ということがわかってきたのだ(図5)。
運動もよいことは確かであるが、運動よりも太陽光を浴びることがよいということもわかってきた。
しかし、太陽光の何が影響をしているのかは不明であった。
図5
2.3 バイオレットライトに近視抑制の可能性
われわれ慶応義塾大学の眼科チームは、可視光線の中で最も短波長域の360〜400nmの光「バイオレットライト」に近視抑制の可能性を見いだし、2017年に報告した。
このことをきっかけに、われわれは実験近視モデルのヒヨコを用いて、バイオレットライトについての研究を進めた。
その結果、バイオレットライトを浴びたヒヨコの近視進行が抑制され、また、近視進行を抑制する遺伝子の1つとして知られているEarly Growth Response 1 (EGR1)がバイオレットライトを浴びたヒヨコの目において上昇していることがわかった。
現在の眼鏡はバイオレットライトを通さず、コンタクトレンズにはバイオレットライトを通すものと通さないものがあり、近視の患者において、バイオレットライトを透過するコンタクトレンズを装用している者のほうが,バイオレットライトを透過しないコンタクトレンズや眼鏡を装用している人よりも眼軸長の伸びが抑制されていることが確認できた。
つまり,近視になり眼鏡を装用することでさらに近視が進行する可能性が高まるということになる。
また、現在、日常的に使用されているLEDや蛍光灯などの照明にはバイオレットライトはほとんど含まれておらず、眼鏡のみならず窓ガラスなどの材質もバイオレットライトをほとんど通さないことがわかった。
すなわち,室内においてはバイオレットライトが欠加しており、室内で過ごす時間が長くなったことが、近視の急増と関係している可能性が示唆された。
また、可視光においてバイオレットライトのちょうど隣に位置するブルーライトも悪い情報が大きく取り上げられているが、実は、昼間には必要な光である。
朝浴びることで体内時計が整えられる。
夜間は逆に体内時計を狂わすので、避けるべき光である。
******************
以上のことから、
・波長380−400nmのバイオレットライトは必要な光である。
・波長380−500nmのブルーライトは、昼間は必要な光で、夜間は避けるべきである。
ということが判る。
記:2019−4−24
1)はじめに:ヤフーニュース20181003にあったAbemaの記事
以下の記事は非常にわかりにくい。
原典は? ということで調べてみることにした。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181003-00010017-abema-soci
*******抜粋**************
眼科医「メチャクチャな記事だ」ブルーライトに悪影響はないという記事は誤訳か
2018/10/3(水)
13:09配信 ABEMA Times
「スマホのブルーライトでは“視力が低下しない“とアメリカ眼科学会が発表した」。
そんなニュースがネット上を駆け巡った。
しかし、2日放送のAbemaTV“AbemaPrime”が同学会の記事を改めて翻訳してみたところ、「スマホからのブルーライトでは目は悪くならない」ということが書かれているだけだった。
坪田一男・慶応大学医学部教授は
『今回発表された“目は悪くならない“は、スマホ程度では白内障などの重い病気にはならない可能性があるという話。視力については関係ないだろう。ただ、重い病気にはならなくても、目の疲れを起こしたり睡眠を妨げたりするので、ブルーライトカットメガネは有効だ』と話す。
また、深作秀春・深作眼科院長は
『オリジナル記事を読んでみると、コロンビア大学の眼科の先生が“ブルーライトは目に影響しない“というスリランカの先生の主張に対して“それは間違ったことだ“と言っている。ブルーライトは非常に毒性が強く、目にとってまずいということも言っている。つまり、話題になっている翻訳記事と全く逆のことを言っていで、メチャクチャで話にならない。非常に恥ずかしい』と厳しく批判した。
そもそもブルーライトとは、可視光線の中でも特にエネルギーが強い光で、太陽光の他、パソコン・スマホなどの液晶画面やLED照明には特に多く含まれているという。「ブルーライトは非常に波長の短い電磁波なので、網膜の奥まで届いて細胞を傷付ける。これを防ぐためにはブルーライトを防いでくれるメガネが効果的だ」。
(略)
************************
2)ヤフーニュースにあったハフポスト日本版20181003の記事
このハフポストの記事は、1)の記事に比べれば、わかりやすくまとめてある。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181003-00010001-huffpost-int
******一部 引用****************
「スマホのブルーライトで失明はしない」米国眼科学会、大学の研究結果に真っ向から反論
10/3(水) 12:28配信
スマホで失明するのか・・・このテーマをめぐって、アメリカでは議論が巻き起こっている。
米国眼科学会(AAO)は8月、「スマホのブルーライトで失明はしない」とする声明を出した。
声明は、眼球内の光を感じる分子がブルーライトと結合すると、細胞を傷つける可能性があるとする研究結果が7月に発表されたことを受けたもの。この研究を真っ向から否定する形となっている。
この研究は、トレド大学が発表し、「Scientific Reports」に掲載された。特定の化学分子(網膜)がブルーライトに晒されるとどうなるのかを調査。太陽光に含まれるブルーライトと、電子機器から出るブルーライトの両方で実験し、細胞を傷つける可能性があるとしている。
これに対して米国眼科学会は公式サイトで、現実の世界では起こり得ないと指摘した。
その理由について、「研究で使用した細胞は人の目から採取したものではなく、ブルーライトの当て方も、実際にそのような方法で眼に光が入ることはないものだ」と指摘している。
米国眼科学会はさらに、この研究の著者のひとりが、電子機器の使用が失明につながるのかどうか「THE VERGE」の取材で問われ「あり得ない」と答えた記事も紹介している。
スマートフォンのブルーライトをめぐっては他に、「スマートフォンの失明」というタイトルの研究も2017年に発表されている。
米国眼科学会は、ブルーライトカットのメガネの使用も推奨していない。その理由として、効果が証明されておらず、長期的に使用した際にどんな副作用があるのかも分かっていないと説明している。
一方で、ブルーライトは人の概日リズムに影響を与え、睡眠の妨げになる可能性があると紹介。就寝前には、電子機器を利用しすぎないよう勧めている。また眼の健康が気になる人は、眼科医に相談するよう呼びかけている。
****************************
3)米国眼科学会の声明
https://www.goo.ne.jp/green/column/lifehacker_176337.html
*******一部引用***************
米国眼科学会「ブルーライトは失明させない。PC用メガネも推奨しない」
2018年10月1日
スマートフォンのスクリーンから出るブルーライトが目に害を及ぼすかのような、広告やヘッドラインを見かけることがありますが、果たしてこれは真実でしょうか。
ブルーライトと失明に関連性はない:
実のところ、ブルーライトは睡眠の妨げにはなっても、目を傷めるという科学的根拠はありません。
眼細胞が自然に含有する化学物質とブルーライトが結合すると、細胞を傷つける可能性があるとする研究が今夏発表されたことを受けて、最近、米国眼科学会(AAO)は「スマートフォンのブルーライトは失明させない(目を傷めない)」とはっきり宣言しました。
問題の研究では、人間の眼から採取した細胞が使用されたわけではなく、人間の眼はまさにこの種のダメージを防ぐ力が備わっているからです(ですから、眼の健康とは無関係な問題を研究していたことになります。この実験ついては、情報サイトVergeに詳しく掲載されています)。
昨年、別の研究のタイトルに「スマートフォン失明」という言葉が登場しました。
しかし、これは片方の眼を閉じながら、もう片方の眼でスクリーンを見続けると、一時的に発生する状態でしかありません。
「失明の世界的流行」を示唆するようなおどろおどろしい見出しをつけた研究もありますが、それは極端な量の光を投射したラットが実験対象でした。結局のところ、目の健康の専門家が心配していないなら、私も心配しません。
ブルーライトカットのメガネの副作用は不透明:
AAOはブルーライトをブロックする眼鏡やフィルタの推奨もしていません。なぜなら、効果が実証されておらず、長期的にはどのような副作用があるのかもわからないからです。
ブルーライトは睡眠の質を低下させるため、携帯電話を寝室の外に置くことと、ドライアイになる可能性があるため、長時間携帯電話を凝視しないことは推奨しています。
(略)
***********************
4)日本のブルーライト研究会の声明
2018年10月5⽇の発表
********一部 引用*****************
ブルーライト研究会
アメリカ眼科学会(AAO)がブルーライトに関して掲載した記事に対して、「ブルーライトは視力に影響しない」というネット等の報道が散見されています。
一部には英語の誤訳もみられ、本質が伝えられていない状況に、健康を守ることを仕事とする医師として、危惧しています。
ブルーライトをあびたり、スマホのブルーライトを見ることによって、突然失明したり、突然眼疾患を発病するという報告はありません。
しかし、ブルーライトの光の特性を考えたとき、この影響は慎重に検討していかなければならないものであり、アメリカ医師会が「光公害の時代だ」と警鐘を鳴らしたことは当然のことで、決して軽んじてはいけない問題と考えます。
ブルーライトが、目と体の両方にさまざまな影響を与えることはすでに多くの科学的検証がなされています。
スマホやPC、あるいはブルーライトを悪者にするのではなく、新しい科学技術に対して正しい知識を持ち、健康に配慮したうえで快適に有効に活用することが重要と考えます。ここに情報を整理します。
(略)
*************
以下はブルーライト研究が正確に翻訳したアメリカ眼科学会の声明
********一部引用*********************
【完訳への経緯とポイント】
・今回AAO の声明は、Scientific Reports volume 8,2018 での“Blue light excited retinal intercepts cellular signaling”という論文発表により世界的にブルーライトの目への影響の過激な報道がされているのを受けて、この論文の解説と筆者へのコメント、そして有識者のコメントを整理した声明となっている。
・過熱報道にたいして、上記論文結果を見ただけで、ブルーライトは視力に影響する(失明原因になりうる)とは言えないということを発信しており、決してブルーライトを浴び続けても安全であるという事をAAOとして発信したわけではない。
・上記論文は、実験手法の確認のための試験であり、ブルーライトが眼に及ぼす影響を確かめるための試験ではない。
・そして、AAOは、ブルーライトが睡眠(体内時計)に与える影響や、液晶画面を見続けることによる目の乾きや疲れは、学術的に証明されており、これを否定するものではないとしている。
アメリカ眼科学会の声明の本文:
タイトル:スマホのブルーライトで失明することはない
スマホからのブルーライトで失明することはありません。最近、発表された研究(※1)によって、広く懸念が生まれ、世界中のメディアが過激な報道をしている。
でも、専門家はこれらのニュースは飛躍しており、ブルーライトの目への影響について、この研究(※1)結果の内容と異なる結論を伝えていると危惧しています。
この論文(※1)の筆頭執筆者であるKarunarathne博士は、Vergeという雑誌で、「この研究は、電子機器の液晶画面で失明を起こすことを示したものですか?」、と聞かれた時、「全くそういうことではありません」と答えています。
スマホなどの液晶画面を使わないようにする理由に結びつかないのです。
Toledo大学のこの研究は、Scientific Reportに発表されたもので、研究者たちは、レチナール(訳注:目の網膜にある物質)にブルーライトを暴露すると、何が起こるかを見ています。
レチナールとは目に存在する物質です。ブルーライトは、自然の太陽光からも、電子機器からも目に入ります。一方で、この研究で起きたことは、そのまま人に当てはまる訳ではありません。
(略)
***************************
関心のある方は、ブルーライト研究会のサイトで、原文・全文を読んでください。
BEMSJも読みましたが、問題とされるトレド大学の研究は如何なる強度のブルーライトを照射したのか、またアメリカ眼科学会は、どの程度の強度のブルーライトまで大丈夫と言っているのか、非常に大事な観点がブルーライト研究会の声明などでは、言及されていないのです。
5)トレド大学の研究
掲載誌:Sci Rep . 2018 Jul 5;8(1):10207.
タイトル:Blue light excited retinal intercepts cellular signaling
ブルーライト光励起網膜は細胞シグナル伝達を遮断する
研究者:Kasun Ratnayake, John L Payton, O Harshana Lakmal, Ajith Karunarathne
Abstract概要:
Photoreceptor chromophore, 11-cis retinal (11CR) and the photoproduct, all-trans retinal (ATR), are present in the retina at higher concentrations and interact with the visual cells.
光受容体発色団である11-シスレチナール(11CR)および光生成物であるオールトランスレチナール(ATR)は、より高い濃度で網膜に存在し、視覚細胞と相互作用します。
Non-visual cells in the body are also exposed to retinal that enters the circulation.
体内の非視覚細胞も、循環に入る網膜にさらされています。
Although the cornea and the lens of the eye are transparent to the blue light region where retinal can absorb and undergo excitation, the reported phototoxicity in the eye has been assigned to lipophilic non-degradable materials known as lipofuscins, which also includes retinal condensation products.
眼の角膜および水晶体は、網膜が吸収して励起を受けることができるブルーライト領域に対して透明であるが、眼における報告された光毒性は、網膜凝縮生成物も含むリポフスチンとして知られる親油性非分解性物質に割り当てられている。
The possibility of blue light excited retinal interacting with cells; intercepting signaling in the presence or absence of light has not been explored.
ブルーライト光励起網膜が細胞と相互作用する可能性;光の有無下での傍受シグナリングは調査されていない。
Using live cell imaging and optogenetic signaling control, we uncovered that blue light-excited ATR and 11CR irreversibly change/distort plasma membrane (PM) bound phospholipid; phosphatidylinositol 4,5 bisphosphate (PIP2) and disrupt its function.
ライブセルイメージングと光遺伝学的シグナル伝達制御を使用して、ブルーライト光励起ATRと11CRが原形質膜(PM)結合リン脂質を不可逆的に変化/歪ませることを発見しました。ホスファチジルイノシトール4,5ビスリン酸(PIP2)およびその機能を破壊する。
This distortion in PIP2 was independent of visual or non-visual G-protein coupled receptor activation.
PIP2におけるこの歪みは、視覚的または非視覚的Gタンパク質共役受容体活性化とは無関係であった。
The change in PIP2 was followed by an increase in the cytosolic calcium, excessive cell shape change, and cell death.
PIP2の変化に続いて、細胞質カルシウムの増加、過剰な細胞形状変化、および細胞死が続きました。
Blue light alone or retinal alone did not perturb PIP2 or elicit cytosolic calcium increase.
ブルーライト光単独または網膜単独では、PIP2を乱したり、細胞質カルシウム増加を誘発したりしなかった。
Our data also suggest that photoexcited retinal-induced PIP2 distortion and subsequent oxidative damage incur in the core of the PM.
我々のデータはまた、光励起された網膜誘発PIP2歪みとそれに続く酸化的損傷がPMのコアに生じることを示唆しています。
These findings suggest that retinal exerts light sensitivity to both photoreceptor and non-photoreceptor cells, and intercepts crucial signaling events, altering the cellular fate.
これらの知見は、網膜が光受容体細胞と非視細胞の両方に光感受性を発揮し、重要なシグナル伝達事象を遮断して細胞の運命を変化させることを示唆している。
概要を和訳したが、難解で、理解できない。
この概要の部分には。どのようなブルーライトを細胞に照射したのかは、書かれていない。
本文中の興味深いデータのみを以下に転記する。
データAをみれば、0.22μWの照射では影響が見えず、4.86μWと9.70μWの照射では影響が出ている。
データBは、横軸に照射パワーを、縦軸に影響度を示す。ある一定以上の強度の照射で影響が出ている。
データDは、ブルーライトの波長によって、影響の有無が決まる。
445nmでは影響があり、488nm・515nm・594nmでは影響が出ない。
6)BEMSJの中間のまとめ
トレド大学の論文の本文を読むと、レーザ光装置を用いており、その出力を調整している。
したがって、細胞の立場で言えば、照射強度が不明となる。
影響が見られた出力4.86μWでも、1ミリ四方の面積に照射したとすれば、486μW/cm2となる。
影響が見られない出力0.22μWでも、1ミリ四方の面積に照射したとすれば、22μW/cm2となる。
別論文でBEMSJが見つけたスマホからのブルーライトの量は0cmの距離で、15μW/cm2であった。
このことから、スマホからのブルーライトの量程度では、トレド大学の研究と同じことをやっても、影響はない、ということが出来そうである。
こうしたことから、トレド大学の研究は、強烈な強さのブルーライトを細胞に照射しており、ある一定以上の強度において影響を見出していることが判る。
また、スマホからのブルーライトの強さでは、トレド大学が見出した影響は表れそうにないことから、アメリカ眼科学会が声明を出したことも理解できる。
記:2021−5−5
以下の学会の見解が出された。
日経メディカルのサイトにあった情報
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202104/569938.html
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4月14日、日本眼科学会、日本眼科医会、日本近視学会など6団体が共同で、「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」という意見書を公開した。
「小児にブルーライトカット眼鏡の装用を推奨する根拠はなく、むしろブルーライトカット眼鏡装用は発育に悪影響を与えかねない」という内容で、参考文献や米国眼科アカデミーのブルーライトに関するQ&Aとともに根拠を記載している。
ブルーライトは可視光線の一部(波長380〜495nm前後の青色成分)で、太陽光や電球から出る光に含まれている。
スマートフォンなどのデジタル機器の普及に伴い、小児にブルーライトカット眼鏡を装用させることを推奨する動きが一部にあることに対して、以下の4点から「危惧する」としている。
(1)デジタル端末の液晶画面から発せられるブルーライトは、曇天や窓越しの自然光よりも少なく(綾木雅彦、他.住総研研究論文集 2016;42:85-95.)、網膜に障害を生じることはないレベルであり、いたずらにブルーライトを恐れる必要はないと報告されていること(Duarte IA, et al. An Bras Dermatol 2015;90:595-7.)。
(2)小児にとって太陽光は、心身の発育に好影響を与えるものであり、中でも十分な太陽光を浴びない場合、小児の近視進行のリスクが高まる(Eppenberger LS, et
al. Clin Ophthalmol 2020;14:1875-90.)。
ブルーライトカット眼鏡の装用は、ブルーライトの曝露自体よりも有害である可能性が否定できない(米国眼科アカデミー、2021年3月10日)。
(3)最新の米国一流科学誌(Am J Ophthalmol)に掲載されたランダム化比較試験では、ブルーライトカット眼鏡には眼精疲労を軽減する効果が全くないという結果が得られた(Singh S, et al. Am J Ophthalmol, doi: 10.1016/j.ajo.2021.02.010. Online ahead of print)。
(4)体内時計を考慮した場合、就寝前ならともかく、日中にブルーライトカット眼鏡をあえて装用する有用性は根拠に欠ける。
産業衛生分野では、日中の仕事は窓ぎわの明るい環境下で行うことが勧められている(Lowden A, et al. Ind Health 2019;57:213-27.)。
一般に販売されているブルーライトカット眼鏡は、デジタル端末使用時の睡眠障害や眼精疲労の軽減、また眼球への障害を予防するとうたっている。
このうち、睡眠障害に関しては意見書で「夜遅くまでデジタル端末の強い光を浴びると、睡眠障害を来す恐れが指摘されているので、夕方以降にブルーライトをカットすることには、一定の効果が見込まれる可能性はある」としている。
近視と光の関係については、慶應義塾大学名誉教授・坪田一男氏のグループなどが、太陽光に含まれるバイオレットライト(波長360〜400nm)が近視の進行を抑制するという報告を行っている(Hidemasa Torii, et
al.EBioMedicine.2017;15:210-9.)。
それを受け、通常のUVカット機能では一緒にカットされてしまうバイオレットライトを透過する眼鏡などの開発が進んでいる。
患者に指導する場面では、意見書の(4)にあるように、少なくとも日中にブルーライトカット眼鏡をかける意味はない、もしくは有害な可能性があること、睡眠障害の予防のためにかけるなら就寝前の数時間にとどめること、加えて、眼精疲労予防のためには頻繁に休憩をとって、画面から目を離すことが大切だと伝えるのがよさそうだ。
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記:2023−1−26
1)ブルーライトに関連してLEDが規制されているという荻野説
荻野晃也著「身の回りの電磁波被曝」2019年緑風出版にあったLED規制
P224に以下の記述がある。
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『 LED画面の危険性
青色光障害が問題なのは、脳内ホルモンである「メラトニン分泌」を抑制するからで、ドイツではLEDに対して規制がなされているほどです。』
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さて、ドイツにさような規制があるか?検証してみる。
2)ブルーライト研究会のシンポジウムにあった関連しそうな欧州の動き
https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20130826/299183/より一部転載
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電機業界では不可避の「ブルーライト問題」、医師やデバイス研究者を集めた国際会議が開催
2013.08.27
ブルーライトを規制する立場からの発表としては、欧州のCIEから、LEDランプのブルーライトに関して近くクラス分けを実施するとの報告があった。登壇者に講演後、「スマートフォンやテレビに関しても同様の取り組みをしていくのか?」とたずねたところ、「検討中」との回答だった。まずは急速に普及が進むLED照明を対象とし、今後は電子機器全般にわたってブルーライトの規制に関する検討を進めていく考えのようだ。
後日、NHK大阪がブルーライトに関する特集番組を放映していた。それによると、ドイツ工業規格(DIN)はLED照明のブルーライトに関するガイドラインを既に打ち出しているという。そのガイドラインに基づいて、大学の教室で昼間はブルーライトを強調し、夜は減光するという実験が行われた様子が紹介されていた。
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この情報によれば、欧州のCIE(照明学会?)とドイツのDIN規格に動きがあるように見える。
「ブルーライト LED ドイツ」、「Blue light LED DIN」、「Blau licht LED DIN」で検索しても、関連しそうな情報は見つからない。
どなたか、DINの規格に関する情報をお持ちの方は、教えて欲しい。
3)CIEの2019年見解
日本照明工業会のサイトに以下の紹介があった。
https://www.jlma.or.jp/jcie/pdf/cie/CIE_Position_Statement_on_Blue%20Light_Hazard_jp.pdf
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ブルーライトハザードに関するCIE ポジション声明
2019 年4 月
「ブルーライトハザード」(BLH)という用語を使用した発光ダイオード(LED)などの光源からの光にさらされた後の人間の健康への危険性についてメディアで多く取り上げられています。この用語は、実際の眼の損傷のリスクと一般的な健康への影響を表すために不正確に使用されています。
「ブルーライトハザード」という用語は、通常、太陽や溶接アークなどの明るい光源を見つめることに関連する、眼の網膜組織への光化学的リスク(技術的には「光黄斑症」と呼ばれる)を考慮する場合にのみ使用します。光化学的損傷の危険性は波長に依存し、435〜440nm付近の光放射スペクトルの青い部分でピークに達するため、「青」という言葉がこの用語に含まれます。
非電離放射線防護国際委員会(ICNIRP)は、波長依存の重み付け関数である「ブルーライトハザード関数」と露光限界のガイドラインを発表しました。
CIEは、この関数を、現在IEC 62471:2006/CIE
S 009:2002 として公開されているCIE S 009:2002「ランプおよびランプシステムの光生物学的安全性」の一部として標準化しています。露光限界での断続的な露光による人の健康への悪影響についての証拠はありません。
主に白色光を放射するLEDを含む各種のランプは、通常、青色光の危険性の評価に関連する波長の光を含みます。「クール」または「高色温度」ランプは、「ウオーム」または「低色温度」ランプよりも青色光の割合が高い可能性があります。実際に白熱ランプおよび一般照明用のLEDランプによる青色光の露光限界は、同じ色温度の場合は同じになります。実際の評価では、照明用LEDランプは合理的に予測可能なすべての使用条件下でブルーライトハザード露光限界を超えていないことが示されています。さらに、その露光レベルは青い空を見たときの経験値よりも低いことがよくあります。
眼の被曝を実験条件も考慮することも重要です。白色光源からの悪影響を主張する関連するメディア報道が引用する多くの研究成果が発表されています。これらの研究のほとんどは、次のような一般的ではない条件で実施されています。
・極めて長時間の露光
・超高色温度LED(すなわち、非常に青色成分が多いLED)の使用
・ICNIRPの露光限界を大幅に超える露光
・光源への(眼の)固定
・夜間動物モデルまたはヒト細胞の人工的な条件での使用
ブルーライトハザードの露光限界に近いレベルの青色光を放射する白色光源は非常に明るく、不快グレアを生じることになり、そのような光源を凝視することは非現実的な行動と見なされることを認識することが基本となります。
さらに、非常に高色温度の照明は、特に家庭の照明には、感じが悪く不快なものとしてほとんどの人に認識されています。
通常の行動の間に、我々は一時的な高い光レベルの露光を経験し、1日にそのような露光を多く受ける可能性があることが認識されています。しかし、高い光レベルの一時的な露光が一日に渡って蓄積しても露光限界を超えることはありません。
CIEは、「ブルーライトハザード」は、一般的な照明で使用される白色光源では問題にならないと考えていますが、青色成分が多い光源に連続的にさらされる状況では注意が必要です。青色光の露光限界に近いレベルでの露光は避けるべきです。そのような露光は白色光源ではありそうもないのですが、主に青色光を発する光源ではありえるかもしれません。
主に青色光を放射する光源の使用は、子供の眼にさらされることへの懸念の原因であることも認識すべきです。たとえブルーライトの露光限界を超えていなくても、そのような光源は若者にとってまぶしいほど明るいかもしれません。このため、青いインジケーターランプの使用は、子供が見る玩具やその他の機器にはお勧めできません。
そのような製品に青色光源が使用されている場合は、青色光の露光限界を10分の1に減らす必要があります。これは、紫外および深紫外の光放射を放射する光源ではさらに重要です。
青色光の露光は加齢黄斑変性のリスクと関連している可能性があるという主張があります。そのような主張は推論的であり、査読付き論文によって支持されていません。
「ブルーライトハザード」という用語は、概日リズムの乱れや睡眠障害を指すのに使用しないでください。CIEは、人間の健康に対する青色光の目に見えない影響についての社会的関心があることを認識しており、以前にこれに関する意見書を発表しています。これに関する最新版は、例えば、新しい国際標準CIE S 026:2018を考慮して、やがて発行されるでしょう。
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BEMSJ注:上記のCIEの見解を読むと、CIEがLEDの規制を行っているとは思えない。
記:2023−1−27
https://president.jp/articles/-/34033?page=4から一部引用
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2020/03/30 17:00
「夜間モードだから寝る前のスマホもOK」は間違っている問題はブルーライトだけではない
西野 精治スタンフォード大学医学部精神科教授
「夜間のブルーライト」が悪いのではない
眠りに入るときは、脳も体も休息に入りやすいように、できるだけ脳への刺激を避けるようにすることが求められます。なぜなら、脳は刺激を受けると活動的になるからです。
脳への刺激が自律神経に作用し、交感神経が活発になると、覚醒系のホルモンも分泌されやすくなるので体が休めなくなってしまうのです。
眠りに入るときは、副交感神経系が優位になるように、リラックスできる環境をつくるのが肝要だということです。
夜間のパソコンやスマホはブルーライトの光が悪いと言われますが、わたしは、光よりもパソコンを操作したり、スマホでゲームしたりしている行為そのものが睡眠には悪いと考えています。
脳を過度に刺激し続けているのですから、脳がすぐに休めるわけがありません。
そこで、睡眠の質を高めようとするなら、自分なりにルールをつくることです。
たとえば、夜10時以降はデジタル機器から離れるとか、寝る1時間前にはゲームを終了するとか、ルールをつくろうと思えばいくらでもできるでしょう。
特に子どもには時間制限をするべきです。
もちろん、子どもだけでは守れないでしょうから、親の管理が求められます。
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記:2023−1−27
以下の見解が公開されている。
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小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見
令和3 年4 月14 日
日本眼科学会 日本眼科医会 日本近視学会 日本弱視斜視学会 日本小児眼科学会 日本視能訓練士協会
ブルーライトは可視光線の一部(波長380〜495nm 前後の青色成分)であり、太陽光や電球から出る光に含まれています。近年、デジタル機器の普及に伴い、液晶画面から発せられるブルーライトについての議論が盛んになってきました。
その中で、小児にブルーライトカット眼鏡を装用させることを推奨する動きが一部にありますが、我々は以下の科学的観点からそれを危惧するものであります。
現在、一般に販売されているブルーライトカット眼鏡は、デジタル端末使用時の睡眠障害や眼精疲労の軽減、また眼球への障害を予防すると謳っています。
このうち、いわゆる体内時計とブルーライトの関係についてはいくつかの論文があり、夜遅くまでデジタル端末の強い光を浴びると、睡眠障害をきたす恐れが指摘されています。
従って、夕方以降にブルーライトをカットすることには、一定の効果が見込まれる可能性はあります。
しかしながら、その他の点はエビデンスに乏しく、いくつかの問題点があります。
@デジタル端末の液晶画面から発せられるブルーライトは、曇天や窓越しの自然光よりも少なく*1、網膜に障害を生じることはないレベルであり、いたずらにブルーライトを恐れる必要はないと報告されています*2。
<BEMSJ注:引用されている*2の論文は、紫外線に関する研究で、ブルーライトに関するものではない。>
A小児にとって太陽光は、心身の発育に好影響を与えるものです。なかでも十分な太陽光を浴びない場合、小児の近視進行のリスクが高まります*3。ブルーライトカット眼鏡の装用は、ブルーライトの曝露自体よりも有害である可能性が否定できません*4。
B最新の米国一流科学誌に掲載されたランダム化比較試験では、ブルーライトカット眼鏡には眼精疲労を軽減する効果が全くないと報告されています*5。
<次項Singh 2021ブルーライト遮光眼鏡はVDT作業時の眼精疲労に効果なし 参照>
C体内時計を考慮した場合、就寝前ならともかく、日中にブルーライトカット眼鏡をあえて装用する有用性は根拠に欠けます。産業衛生分野では、日中の仕事は窓ぎわの明るい環境下で行うことが奨められています*6。
以上から、小児にブルーライトカット眼鏡の装用を推奨する根拠はなく、むしろブルーライトカット眼鏡装用は発育に悪影響を与えかねません。偏りのない情報と充分な科学的根拠に基づいて、小児の目の健康を守って頂くことを願います。
参考文献
(略)
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記:2023−1−27
掲載誌:Am J Ophthalmol . 2021 Jun; 226:243-251.
タイトル:Do Blue-blocking Lenses Reduce Eye Strain From
Extended Screen Time? A Double-Masked Randomized Controlled Trial
研究者:Sumeer Singh , Laura E Downie , Andrew J
Anderson
Abstract 概要
Purpose: To investigate if blue-blocking lenses are effective in reducing the
ocular signs and symptoms of eye strain associated with computer use.
目的:ブルーライト遮光眼鏡が、コンピュータ使用に関連する眼精疲労の兆候や症状を軽減するのに効果的であるかどうかを調査すること。
Design: Double-masked, randomized controlled trial.
デザイン:二重マスクランダム化比較試験。
Methods: A total of 120 symptomatic computer users were randomly assigned (1:1)
into a "positive" or "negative" advocacy arm (ie, a clinician either advocating or not advocating for the
intervention via a prerecorded video).
方法:合計120人の症候的なコンピューターユーザーをランダムに割り当てた(1:1)「ポジティブ」または「ネガティブ」なアドボカシーアーム(代弁者とでも訳す?)(つまり、事前に録画されたビデオを介して介入を提唱する、または擁護しない臨床医)。
Participants were further sub-randomized (1:1) to receive either clear
(placebo) or blue-blocking spectacles.
参加者はさらにサブランダム化(1:1)され、プラセボまたはブルーライト遮光眼鏡のいずれかを受けました。
All participants were led to believe they had received an active intervention.
すべての参加者は、積極的な介入を受けたと信じるように導かれました。
<BEMSJ注:ブルーライト遮光眼鏡もしくはブルーライト遮光効果のない疑似メガネ(ブラセボ)を受け取ったとしても、共に有効なメガネであると教えた、という意味と思われる。>
Participants performed a 2-hour computer task while wearing their assigned
spectacle intervention.
参加者は、割り当てられた眼鏡を着用しながら、2時間のコンピュータ作業を実行した。
The prespecified primary outcome measures were the mean change (post- minus
pre-computer task) in eye strain symptom score and critical flicker-fusion
frequency (CFF, an objective measure of eye strain).
事前に指定された主要アウトカム指標は、眼精疲労症状スコアの平均変化(コンピュータ作業前後の差)と臨界ちらつき融合頻度(CFF、眼精疲労の客観的尺度)であった。
The study also investigated whether clinician advocacy of the intervention (in
a positive or negative light) modulated clinical outcomes.
この研究では、本実験に対する臨床医の説明(肯定的または否定的な見方)が臨床的な結果に影響するかも調査した。
Results: All participants completed the study. In the primary analysis, for
CFF, no significant effect was found for advocacy type (positive or negative, p
= .164) and spectacle intervention type (blue-blocking or clear lens, p =
.304).
結果:参加者全員が研究を全うした。一次解析では、CFFについては、アドボカシータイプ(ポジティブまたはネガティブ、p = 0.164)および眼鏡介入タイプ(ブルーライト遮光またはクリアレンズ、p = 0.304)に有意な効果は見られなかった。
(注:コンピュータ作業による目の疲れに有意差はなかった、という意味)
Likewise, for eye strain symptom score, no
differences were found for advocacy (p = .410) or spectacle lens types (p =
.394). No adverse events were documented.
同様に、眼精疲労症状スコアについても、アドボカシー (p = 0.410) または眼鏡レンズタイプ(p = 0.394)に差は見られなかった。有害事象は記録されなかった。
Conclusions: Blue-blocking lenses did not alter signs or symptoms of eye strain
with computer use relative to standard clear lenses. Clinician advocacy type
had no bearing on clinical outcomes.
結論:ブルーライト遮光眼鏡は、標準的な透明なレンズと比較して、コンピュータ使用による眼精疲労の兆候または症状を変化させなかった。臨床医のアドボカシータイプは臨床結果とは無関係であった。
記:2023−1−28
以下の研究がある。
掲載誌:Chronobiology International Vol:33, 2016, Pages 134-139
Published online: 05 Jan 2016
タイトル:Protective effect of blue-light shield eyewear for
adults against light pollution from self-luminous devices used at night
夜間に使用される自発光装置からの光害に対する成人用ブルーライト遮光メガネの保護効果
研究者:Masahiko Ayaki, Atsuhiko Hattori, Yusuke Maruyama, Masaki Nakano, Michitaka Yoshimura, Momoko Kitazawa,
ABSTRACT
We investigated sleep quality and melatonin in 12 adults who wore blue-light
shield or control eyewear 2 hours before sleep while using a self-luminous
portable device, and assessed visual quality for the two eyewear types.
睡眠の2時間前にブルーライト遮光の、または比較対照用のコントロールメガネを着用し、自発光ポータブルデバイスを使用した成人12人の睡眠の質とメラトニンを調査することで、2種類のアイウェア(メガネ)の視覚的品質を評価した。
Overnight melatonin secretion was significantly higher after using the
blue-light shield (P < 0.05) than with the control eyewear.
夜中のメラトニン分泌は、ブルーライト遮光眼鏡を使用した場合は、対照眼鏡よりも有意に高かった(P <
0.05)。
Sleep efficacy and sleep latency were significantly superior for wearers of the
blue-light shield (P < 0.05 for both), and this group reported greater
sleepiness during portable device use compared to those using the control
eyewear.
睡眠効果と睡眠潜時は、ブルーライ遮光眼鏡の着用者で有意に優れており(P < 0.05)、このグループは、対照眼鏡を使用したグループと比較して、ポータブルデバイス使用中の眠気が大きいと報告した。
<BEMSJ注:夜寝る前の2時間、ポータブル機器を操作しているが、ブルーライト遮光眼鏡の群の参加者は、より早く眠くなり、ブルーライト遮光器機能のないメガネの群の参加者は眠くならなかった、ということかもしれない。>
Participants rated the blue-light shield as providing acceptable visual
quality.
参加者は、ブルーライトシールドが許容できる視覚的品質を提供すると評価しました。
<BEMSJ注:ブルーライト遮光眼鏡の着用群の参加者は、このメガネによる画面の演色性の変化を受け入れて、問題なしと評価をした、という意味であろう。>
Full Textを読む。
・盲検法のように、主観が入らない条件下で、この種の実験は可能か?
Full Textを読んだが、盲検法・・・に関する記述はない。ブルーライト遮光メガネの着用によって、見ている画面の演色性が明らかに変化し、主観の入らない実験は不可能と言える。
On two consecutive nights, participants were asked to stay in a dark room
(<3 lux) from 21:00 to 22:00 while wearing control eyewear, and then spend 2
hours in the same dark room doing tasks on a portable self-luminous device
while wearing either the blue-light shield or control eyewear. They were asked
to go to bed at about midnight and sleep for 7 hours in the same dark room. A
cross-over study design was used, so the type of eyewear was changed in the
second phase (after 2 weeks).
2夜連続で、参加者は対照比較用メガネを着用した状態で21:00から22:00まで暗室(3ルクス以下)に滞在し、その後、同じ暗室で2時間過ごし、ブルーライト遮光または対象比較用メガネのいずれかを着用しながら、ポータブル自発光デバイスで作業を行うように求められた。彼らは真夜中頃に就寝し、同じ暗い部屋で7時間眠るように求められた。クロスオーバー研究デザインを使用したため、第2フェーズ(2週間後)でメガネの種類が変更された。
The self-luminous devices used were iPadR and iPhoneR (Apple
Inc, Tokyo, Japan) and ArrowsR (Fujitsu Co Ltd, Tokyo, Japan) emitting approximately 410 cd/m2 of visible light; they were held less than 25 cm from the
participants’ eyes. The tasks performed using these
devices were reading (literature of each participant’s
choice) and/or writing about health and habits.
使用した自発光デバイスは、iPad RとiPhone R(アップル社、東京、日本)およびArrows R(富士通株式会社、東京、日本)で、約410cd/m2の可視光を放射している。それらは参加者の目から25cm以内に保持された。これらのデバイスを使用して実行されたタスクは、健康と習慣について(各参加者が選択した文献)を読んだり、書いたりすることでした。
The experimental blue light shield eyewear that participants wore in this study
was brown-tinted and designed to transmit 43.8% of visible blue light (395–490 nm) and 76.9% of whole luminous light. The
control eyewear was gray-tinted and designed to transmit 93.2% of visible blue
light and 76.4% of whole luminous light.
メガネの特性:
この研究で参加者が着用した実験的なブルーライト遮光眼鏡は茶色がかっており、可視青色光(395〜490 nm)の43.8%と全発光光の76.9%を透過するように設計された。
対照比較用メガネは灰色がかっており、可視青色光の93.2%と全発光光の76.4%を透過するように設計された。
参加者:
Twelve healthy Japanese adults (age range, 24–40 years;
mean age, 29.0 ± 5.0 years; 6 women) participated the
study.
健常な日本人成人12名(年齢層24-40歳,平均年齢29.0歳±5.0歳,女性6名)が参加した。
結果のデータ:
作業中の眠気に差異があったと概要には記述、これは統計的には有意差はない。
20人の被験者の中から11人のメラトニンの変化を図示している。11人中3人だけがブルーライト遮光眼鏡の効果が出ている。これでは遮光の効果があると断言できるのか?他の9名分のデータは?
BEMSJ注:3ルックス以下の暗い部屋で、2時間、スマホを使わせた。使ったスマホはかなり高輝度である。この視作業ではかなり画面はギラギラしてまぶしく、眼が疲れる状況かもしれない。一般的な夜間にスマホを使う時のことを考えると、一般家庭の夜の室内は50ルックスや100ルックス程度ではないだろうか?
かつてのCRT VDTでは100cd/m2程度、液晶VDTでもたぶん同程度で昨今は少し輝度が高くなっているかもしれない。したがって、スマホはかなり高輝度であり、その分だけブルーライトは多いことはうなずける。
さらに、最近の4Kテレビは500cd/m2以上と高輝度と思われる。この4Kテレビからのブルーライトは大丈夫か??
記:2023−1−31
東芝ライテック(株)のサイトにあったLED照明からのブルーライトの情報
以下はサイトにあった情報
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LED照明のブルーライト(青色光)について
一般照明用白色LEDは、青色LEDと黄色の蛍光体の組み合わせで構成しており、分光分布は図1に示すように2つのピークを持つかたちをしています。過度の青色光は網膜障害を生じるリスクがあることがわかっており、相対的に青色
光の多いLED照明の使用を危惧する声があります。
しかし図2に示すように、同じ色温度のLEDと蛍光ランプを、同じ照度で比較した場合、青色光の量は大きく異なりません。具体的な数値の比較では、昼白色
(5000K)のLEDが青色網膜障害に与える影響度を1とすると、同図3波長蛍光ランプは1.01とほぼ同等となり、LED照明の青色光による網膜障害リスクが特に高いわけではないことがわかります。JISにおいても「ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性(JIS C 7550)」で青色光網膜障害リスクの定量評価法が定められています。
※青色光による網膜障害の実効放射輝度LBを算出し、100以下であればリスク免除グループとなります。
表1は弊社の代表的なLEDベースライトの青色光による網膜障害の実効放射輝度LBを示します。LBの値は18であり、リスク免除グループに該当します。
******************
この情報によれば、このランプからのブルーライトによる目の網膜への影響は大丈夫 ということになる。
記:2023−2−1
「青色LEDによる目へのダメージは動物実験レベルでも明らかになっており、青色LEDを浴びたマウスは視機能が低下していました[7]」としてネットで紹介されていた研究論文をチェックした。
掲載誌:Biol. Pharm. Bull. Vol. 40, No. 8, 1219–1225 (2017)
タイトル:The Involvement of the Oxidative Stress in Murine
Blue LED Light-Induced Retinal Damage Model
研究者:Maho Nakamura, Yoshiki Kuse, Kazuhiro Tsuruma, Masamitsu Shimazawa, and Hideaki Hara
The aim of study was to establish a mouse model of blue light emitting diode
(LED) light-induced retinal damage and to evaluate the effects of the
antioxidant N-acetylcysteine (NAC).
研究の目的は、青色発光ダイオード(LED)光誘発網膜損傷のマウスモデルを確立し、抗酸化剤N-アセチルシステイン(NAC)の効果を評価することでした。
Mice were exposed to 400 or 800 lx blue LED light for 2 h, and were evaluated
for retinal damage 5 d later by electroretinogram amplitude and outer nuclear
layer (ONL) thickness.
マウスを400または800lxの青色LED光に2時間曝露し、網膜電図振幅および外顆粒層(ONL)厚さによって5日後の網膜損傷について評価した。
Additionally, we investigated the effect of blue LED light exposure on shorts-wave-sensitive
opsin (S-opsin), and rhodopsin expression by immunohistochemistry.
さらに、青色LED光曝露が短波感受性オプシン(S-オプシン)およびロドプシン発現に及ぼす影響を免疫組織化学により検討した。
Blue LED light induced light intensity dependent retinal damage and led to
collapse of S-opsin and altered rhodopsin localization from inner and outer
segments to ONL.
青色LED光は光強度依存的な網膜損傷を誘発し、S-オプシンの崩壊を引き起こし、ロドプシンの局在を内側および外側のセグメントからONLに変化させました。
Conversely, NAC administered at 100 or 250 mg/kg intraperitoneally twice a day,
before dark adaptation and before light exposure.
逆に、NACは1日2回、暗順応前と光曝露前に100または250mg/kgで腹腔内投与されます。
NAC protected the blue LED light-induced retinal damage in a dose-dependent
manner.
NACは、青色LED光誘発網膜損傷を用量依存的に保護した。
Further, blue LED light-induced decreasing of S-opsin levels and altered rhodopsin
localization, which were suppressed by NAC.
さらに、青色LED光によるS-オプシンレベルの低下とロドプシン局在の変化は、NACによって抑制されました。
We established a mouse model of blue LED light-induced retinal damage and these
findings indicated that oxidative stress was partially involved in blue LED
light-induced retinal damage.
我々は、青色LED光による網膜損傷のマウスモデルを確立し、これらの知見は、酸化ストレスが青色LED光誘発網膜損傷に部分的に関与していることを示した。
難解、理解しがたい。
Full Textを見ると
・使用したランプに関して
「青色LED の波長は456nm light. Blue LED system (456 nm, Cree; Durham, NC, U.S.A.)」とある。
Creeのサイトを見たが、単一波長の青色照明器具は見つからない。この会社は室内・室外の照明器具の会社で、LEDの部品の会社ではない。研究者にメールをいれて聞いてみたら「直管型のLEDランプで、現在はCreeでは販売していない。実験当時はこのブランドのものしか見つからなかった。現在は色々なブランドで類似品が販売されている。」とのことであった。
・曝露強度はLEDランプからの光照射量を照度計でLUXとして測定している。
実験条件は青色、波長456nm 800もしくは400Luxである。
さて、ここに課題がありそうである。
照度計で光の量を測定する場合、照度計はヒトの視感度カーブに合わせて波長毎に補正を行っている。以下に視感度カーブを示す。
従って、視感度補正のないとした時の光量を同じとした場合、緑色では100 Luxとなるが波長456nmのブルーライトの場合は、5Lux程度の明るさと表示される。
従って、ブルーライトを照度計で800Luxという条件は、例えば、緑色の場合は16000Luxという非常に明るい光を照射していることになる。
照度から照射エネルギー(単位:mW/cm2)に換算することはできそうもないが、かなりの照射エネルギであり、それゆえに、ブルーライトの照射を受けたマウスの網膜に影響が出たのではないかと、危惧される。
追記:
「450Lux(0.38mW/cm2)」という情報があり、これから単純に800Lux(0.68mW/cm2)という過大な照射量であると言える。
記:2023−2−1
1)ブルーイトによる目の影響をサプルメントで守る・・・・・という情報
https://kenkyu.wakasa.jp/information/detail_1788.htmlにあった情報
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ブルーライトのダメージから目を守る〜北欧産野生種ブルーベリー「ビルベリー」の効果を日本薬学会で発表〜
株式会社わかさ生活(本社:京都市、代表取締役:角谷建耀知)は、ブルーベリーサプリメントの主成分である北欧産野生種ブルーベリー「ビルベリー」や北欧に自生するサンタベリー[学名:Vaccinium visits-idaea
L.]の機能性についての研究を続けてまいりました。
弊社では、商品をお客様にお届けするだけでなく、素材が持つ機能を明らかにすることで健康に悩みを持つ多くの方に役立てていただけると信じ、研究を進めています。
この度、岐阜薬科大学 原英彰教授(所在地:岐阜市)との共同研究で、『ビルベリーおよびサンタベリーがブルーライトによって引き起こされる網膜障害を軽減する』ことが明らかになり、この結果を、2014年3月29日(土)に日本薬学会
第134年会(熊本県)にて発表致しました。
(略)
<<研究の概要および結果>>
網膜視細胞(光受容体)を用いたin vitro試験において、ブルーライトにより引き起こされる細胞障害(細胞死、活性酸素種の産生、細胞死誘導因子の増加)に対し、ビルベリーエキス、サンタベリーエキスによる細胞保護効果について検討致しました。
【方法】本実験では、網膜視細胞(661W cell)を用いて試験を行いました。暗所にて細胞を培養し、培養中の網膜視細胞にブルーライト(青色LED:約470 nmの波長)を照射することで、細胞障害を引き起こしました。ブルーライト照射前にビルベリーエキス、サンタベリーエキスを細胞に添加し、ブルーライトが引き起こす細胞障害に対する保護効果について検討致しました。
【結果】網膜視細胞にブルーライトを照射することで引き起こされる細胞障害は、ビルベリーエキスまたはサンタベリーエキスの添加により抑制されました。
本研究の結果から、ビルベリーやサンタベリーを日常的に摂取することで網膜視細胞の健康維持に役立ち、ブルーライトによる目のダメージ軽減に繋がることが期待されます。
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2)英文での論文 2016年
掲載誌:Molecular Vision 2018; 24:621-632
タイトル:Bilberry extract and anthocyanins suppress
unfolded protein response induced by exposure to blue LED light of cells in
photoreceptor cell line
ビルベリー抽出物とアントシアニンは視細胞株の細胞の青色LED光曝露によって誘導されるタンパク質応答の展開を抑制する
研究者:Emi Ooe, Yoshiki Kuse, Tomohiro Yako, Tetsuya Sogon, Shinsuke Nakamura, Hideaki
Hara, Masamitsu Shimazawa
Purpose: The purpose of this study was to investigate the effects of bilberry
extract with its anthocyanins on retinal photoreceptor cell damage and on the
endoplasmic reticulum (ER) stress induced by exposure to blue light-emitting
diode (LED) light.
目的::研究の目的はビルベリー抽出物とそのアントシアニンが網膜光受容体細胞障害および青色発光ダイオード(LED)光照射による小胞体(ER)ストレスに及ぼす影響を検討することである。
Methods: Cultured murine photoreceptor cells (661W) were exposed to blue LED
light with or without bilberry extract or its anthocyanins in the culture
media.
方法:培養マウス視細胞(661W)を、ビルベリー抽出物またはそのアントシアニンの有無にかかわらず、培養液中の青色LED光に曝露した。
Aggregated short-wavelength opsin (S-opsin) in murine photoreceptor cells was
observed with immunostaining.
マウス視細胞における短波長オプシン(S-オプシン)の凝集を免疫染色で観察した。
The expression of factors involved in the unfolded protein response was
examined with immunoblot analysis and quantitative real-time reverse
transcription (RT)-PCR.
アンフォールディングタンパク質応答に関与する因子の発現を、イムノブロット分析および定量的リアルタイム逆転写(RT)-PCRを用いて調べた。
Furthermore, cell death was observed with double staining with Hoechst 33342
and propidium iodide after dithiothreitol (DTT) treatment.
さらに、ジチオスレイトール(DTT)処理後のHoechst
33342およびヨウ化プロピジウムによる二重染色で細胞死が観察された。
Results: Bilberry extract and anthocyanins suppressed the aggregation of
S-opsin, activation of ATF4, and expression of the mRNA of the factors
associated with the unfolded protein response (UPR).
結果:ビルベリー抽出物とアントシアニンは、S-オプシンの凝集、ATF4の活性化、および折り畳まれていないタンパク質応答(UPR)に関連する因子のmRNAの発現を抑制した。
In addition, bilberry extract and the anthocyanins inhibited the death of
photoreceptor cells induced by DTT, an ER stress inducer.
さらに、ビルベリー抽出物とアントシアニンは、小胞体ストレス誘導物質であるDTTによって誘導される視細胞の死を抑制した。
Conclusions: These findings suggest that bilberry extract containing
anthocyanins can alter the effects of blue LED light and DTT-induced retinal
photoreceptor cell damage.
結論:アントシアニンを含有するビルベリー抽出物は、青色LED光およびDTT誘導網膜視細胞損傷の影響を変化させる可能性が示唆された。
These effects were achieved by modulating the activation of ATF4 and through
the suppression of the abnormal aggregation of S-opsin.
これらの効果は、ATF4の活性化を調節し、S-オプシンの異常な凝集を抑制することによって達成された。
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上記の論文は、青色LED光によって網膜細胞が損傷し、それをビルベリー抽出物が抑制するということを述べている。
どの程度の強さのブルーライトを取捨したのか?Full Textを見てみる。
・450Lux(0.38mW/cm2 と等価)の光を細胞に照射。 とある。
この照射量を他のデータ「太陽光に含まれるブルーライト、室内、窓際 晴天で68mW/m2=6,8μW/cm2」というデータと比較すると、56倍も強いブルーライトの照射になる。
記:2023−2−2
以下は資生堂のサイトにあった情報
https://faq.wp.shiseido.co.jp/faq/show/24613?back=front%
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ブルーライトは肌に影響はありますか?
太陽の光にはブルーライト(青色光)が含まれており、当社では太陽に含まれるブルーライトと同じ強さのブルーライトが肌に影響(酸化ストレス)を与えることを確認し、このブルーライトをカットすることで、酸化ストレスから肌を守ります。
一方で、パソコン・スマホからも太陽光と同じブルーライトが出ていますが、その強度はとても弱いものであることも当社では確認しております。
太陽から出ているブルーライトに比べて強度がとても弱いことから、パソコン・スマホから出ているブルーライトが肌に同じような影響を及ぼしているかどうかは確認できておりません。
パソコン(※1)の前で約8時間作業した時のブルーライト量は、晴れた日の強度の強い時間帯に外で太陽光(※2)を1分浴びたこととほぼ同じです。
※1 PCの設定・種類や測定条件などによって異なります。
※2 太陽光測定は8月の横浜(日本)で実施。
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BEMSJ注:上記から、太陽光からと、スマホ・パソコンからのブルーライトの強さの違いは480倍と言えます。
記:2023−2−2
以下の研究がある。
掲載誌:Free Radical Biology and Medicine Available online 9 October 2013
タイトル:Mechanism and biological relevance of blue-light (420–453 nm)-induced nonenzymatic nitric raoxide generation from Photo labile nitric oxide derivates in human skin in vitro and in vivo
光不安定な一酸化窒素誘導体からの青色光(420–453nm)誘発非酵素的一酸化窒素生成のメカニズムと生物学的関連性、in vitroおよびin vivoでヒト皮膚に誘導
研究者Christian Opländer, AnnikaDeck, ChristineM.Volkmar, MichaelKirsch, et al;
abstract
Human skin contains photo labile nitric-oxide (NO)
derivates such as nitrite and S-nitrosothiols, which
upon UVA radiation decompose under high-output NO formation and exert
NO-specific biological responses such as increased local blood flow or reduced
blood pressure.
ヒトの皮膚には、亜硝酸塩やS-ニトロソチオールなどの光に不安定な一酸化窒素(NO)誘導体が含まれており、UVA放射線照射により高出力NO形成下で分解し、局所血流の増加や血圧低下などのNO特異的な生物学的応答を発揮します。
To avoid the injurious effects of UVA radiation, we here
investigated the mechanism and biological relevance of blue-light (420– 453
nm)-induced non enzymatic NO generation from photo labile nitric oxide
derivates in human skin in vitro and in vivo.
UVA放射線の有害な影響を回避するために、ここでは、ヒトの皮膚における光不安定な一酸化窒素誘導体からの青色光(420〜453 nm)誘発性の非酵素的NO生成のメカニズムと生物学的関連性を調査しました。
As quantified by chemiluminesconce
detection (CLD), at physio-logical pH blue light at 420 or 453nm induced a
significant NO formation from S-nitroso albumin and also from aqueous nitrite
solutions by a to-date not entirely identified Cu1+ dependent mechanism.
化学発光検出(CLD)によって定量されるように、420または453nmの生理学的pH青色光では、S-ニトロソアルブミンおよび亜硝酸塩水溶液から有意なNO形成が誘導されました。
As detected by electron paramagnetic resonance
spectrometry in vitro with human skin specimens, blue light irradiation
significantly increased the intradermal levels of free NO.
ヒト皮膚標本を用いたin vitroでの電子常磁性共鳴分光法によって検出されたように、青色光照射は遊離NOの皮内レベルを有意に増加させた。
As detected by CLD in vivo in healthy volunteers,
irradiation of human skin with blue light induced a significant emanation of NO
from the irradiated skin area as well as a significant trans location of NO
from the skin surface into the underlying tissue.
健康なボランティアのin vivoでCLDによって検出されたように、青色光をヒト皮膚に照射すると、照射された皮膚領域からのNOの有意な発散と、皮膚表面から下にある組織へのNOの有意なトランス位置が誘発されました。
In parallel, blue light
irradiation caused a rapid and significant rise in local cutaneous blood flow
as detected noninvasively by using micro-light-guide spectrophotometry.
並行して、青色光照射は、マイクロライトガイド分光光度法を使用して非侵襲的に検出されるため、局所的な皮膚血流の急速かつ有意な上昇を引き起こしました。
Irradiation of human skin with
moderate doses of blue light caused a significant increase in
enzyme-independent cutaneous NO formation as well as NO-dependent local
biological responses, i.e., increased blood flow.
中程度の線量の青色光をヒト皮膚に照射すると、酵素非依存性の皮膚NO形成とNO依存性の局所生物学的応答、すなわち血流の増加が有意に増加しました。
The effects were attributed to
blue-light-induced release of NO from cutaneous photo labile NO derivates.
その効果は、皮膚光に不安定なNO誘導体からのNOの青色光誘発放出に起因していた。
Thus, in-contrast to UVA,
blue-light-induced NO generation might be therapeutically used in the treatment
of systemic and local hemodynamic disorders that are based on impaired
physiological NO production or bio avail ability.
したがって、UVAとは対照的に、青色光誘発性NO生成は、生理学的NO産生または生物学的利用能力の障害に基づく全身性および局所血行動態障害の治療に治療的に使用される可能性があります。
Full Textを見る
・照射光源
In our in vitro experiments we used
narrow-band LED devices (12×10-cm LED arrays with
60LEDs), provided by Philips Research (Eindhoven, The Netherlands), emitting in
the visible light spectrum with intensities of up to 58mW/cm2 at 420nm(blue),
453nm(blue),524nm(green),592(amber), and 689nm(red) or emitting with in the
infrared spectrum (834 nm).
in vitro実験では、フィリップスリサーチ(オランダ、アイントホーフェン)が提供する狭帯域LEDデバイス(60 LEDを備えた12×10cm LEDアレイ)を使用し、420nm(青)、453nm(青)、524nm(緑)、592(琥珀)、および689nm(赤)で最大58mW/cm2の強度の可視光スペクトルで発光するか、赤外スペクトル(834nm)で発光しました。
・データの一例
ブルーライトの帯域の波長の光では反応があり、他の波長では反応はない、というデータの例。
記:2023−2−3
掲載誌:The British journal of ophthalmology · March 2014
タイトル:Blue light injures corneal epithelial cells in the
mitotic phase in vitro
青色光はin vitroで有糸分裂期の角膜上皮細胞を傷つける。
研究者:Yoshimi Niwano,
Masahiko Ayaki
INTRODUCTION はじめに
Blue light is a part of the visible light spectrum in the wavelength range of
390–490 nm. In modern society, light-emitting diode
lamps and computer displays deliver much more blue light to the cornea than
ever before.
青色光は、390〜490nmの波長範囲の可視光スペクトルの一部です。現代社会では、発光ダイオードランプとコンピューターディスプレイがこれまで以上に多くの青色光を角膜に届けます。
The retinal phototoxicity of blue light has been extensively investigated
because of concerns about macular degeneration.
青色光の網膜光毒性は、黄斑変性症の懸念から広範囲に調査されてきている。
The effects of blue light on the health of the ocular surface are less clear.
Like skin, the ocular surface is directly exposed to visible blue light and
this contributes to photophobia and ocular pain. We have carried out culture
experiments to examine the phototoxicity of blue light in corneal cells.
眼の表面の健康に対する青色光の影響はあまり明確ではありません。皮膚と同様に、眼の表面は可視青色光に直接さらされ、これは羞明と眼の痛みの一因となります。我々は角膜細胞における青色光の光毒性を調べるための培養実験を行っています。
METHODS 方法
A continuous-wave laser device equipped with an indium gallium nitride laser
diode (RV-1000, Ricoh Optical Industry, Hanamaki, Japan) was used as a blue light source. Two
rabbit corneal epithelial cell lines (SIRC and RC-1) were cultured in Dulbecco’s Modified Eagle Medium containing 10% fetal bovine serum.
青色光源として、窒化インジウムガリウムレーザダイオードを搭載した連続波レーザ装置(RV-1000、リコー光学工業、花巻)を用いた。 2つのウサギ角膜上皮細胞株(SIRCおよびRC-1)を、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地で培養した。
An aliquot (100μL) of the cell suspension (2×104 cells/mL) was placed in each well of a 96-well culture plate.
The plates were incubated at 37°C in humidified 5% CO2
for 3 days to achieve 90–100% confluence or for 24–28 h for sub-confluence (10–30%).
細胞懸濁液(2×104細胞/mL)のアリコート(100μL)を96ウェル培養プレートの各ウェルに入れた。 プレートを加湿した5%CO2中で37°Cで3日間インキュベートして、90〜100%のコンフルエントを達成するか、サブコンフルエンス(10〜30%)で24〜28時間インキュベートしました。
The cells were irradiated with 405 ±5 nm light with
output power from 100 to 300mW. This corresponds to an energy density ranging
from 310 to 930mW/cm2.
セルに、100〜300mWの出力電力で波長405±5nmのレーザ光を照射した。
これは、310〜930mW/cm2の範囲のエネルギ密度に相当します。
The cells were further incubated for defined time periods to determine cell
viability by the methyl thiazolyl tetrazorium assay.
Experiments were replicated four to six times.
細胞をさらに規定された期間インキュベートし、メチルチアゾリルテトラゾリウムアッセイによって細胞生存率を決定した。実験は4〜6回繰り返しておこなった。
RESULTS 結果
When confluent cells were irradiated for 3 min at
300mW, there was no reduction in viability for either cell line 4 h after irradiation compared with controls (figure 1A). Similarly,
there was no reduction in viability for RC-1 cells 24 h
after irradiation (figure 1B).
コンフルエントな細胞を300mWで3分間照射した場合、コントロールと比較して、照射後4時間後のいずれの細胞株についても生存率の低下はなかった(図1A)。
同様に、照射後24時間でRC-1細胞についても生存率の低下はなかった(図1B)。
In contrast, when sub-confluent cells were irradiated, viability was
significantly reduced 24 h after irradiation in both
cell lines compared with controls (figure 2A). The significant reduction in the
cell viability of RC-1 cells was observed in a power-dependent and a
time-dependent manner at approximately 20–30 h after
irradiation (figure 2B, C).
対照的に、サブコンフルエント細胞を照射した場合、生存率は対照と比較して両方の細胞株において照射後24時間で有意に低下した(図2A)。 RC-1細胞の細胞生存率の有意な低下は、照射後約20〜30時間で、電力依存的および時間依存的に観察されました(図2B、C)。
Cell damage was confirmed morphologically by light microscopy (data not shown).
細胞損傷は光学顕微鏡により形態学的に確認した(データは示さず)。
・データの一部を紹介
・レーザ・装置<リコーのサイトよりの情報>
RV-1000はバイオレットレーザーダイオードを複数個組み込み,小型でありながら405nmの光出力1Wを200μmファイバコアから射出する事が出来る光源ユニットである。
記:2023−2−18
1)資生堂のサイトにあった太陽光などからのブルーライト測定データ
https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/2971_k1a95_jp.pdfにあった情報
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資生堂、ブルーライトが肌に与える影響を確認
−バイオフォトン(UPE)測定でブルーライトカット技術の効果を可視化−
2020-9 株式会社資生堂
資生堂は、肌の酸化ストレスを高精度に可視化できるバイオフォトン(UPE)測定技術と、皮膚中成分の分析により、太陽光強度のブルーライトが肌に悪影響を与えることを確認しました。
太陽光中のブルーライトは、室内の照明やパソコンやスマートフォンなどから発せられるブルーライトと比較して、圧倒的に強度が高く、肌に酸化ストレスを与え、皮膚中の肌トラブルの原因となる成分(過酸化脂質)を増加させます。
また今回、当社が開発してきたブルーライトをカットする技術の効果を可視化することにも成功しました。
今後、得られた知見を活用し、ブルーライトから肌を守り、健やかで美しい肌へ導く製品開発を進めていきます。
研究背景
ブルーライト(青色光)とは、目に見える可視光線の中で、波長が短く、比較的強いエネルギをもつ光です。
昨今、ブルーライトによる身体への影響は指摘されはじめていますが、そのメカニズムなどは詳細に解明されていません。
資生堂の調査では、太陽光中に含まれるブルーライトは、室内の照明やパソコンやスマートフォンなどから発せられるブルーライトと比較しておよそ数百倍の強度があることがわかりました。
そこで、今回太陽光強度のブルーライトが肌に与える影響について、研究を進めました。
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上記の図3にスマホ・PC・太陽光のブルー測定例が示されている。
しかし、縦軸の強度の単位などはなく、判りにくい。
そこで、資生堂に問い合わせて、外部に公開した学術論文誌の書誌情報を得て、Full Textを入手した。
2)資生堂の学術論文から
掲載誌:Photochemical & Photobiological Sciences:published online 22 Oct. 2022
タイトル:Blue light‑induced lipid oxidation and the
antioxidant property of hypotaurine: evaluation via
measuring ultraweak photon emission
青色光誘起脂質酸化とヒポタウリンの抗酸化特性:超微弱光子放射測定による評価
研究者:Katsuhiko Tsuchida · Natsuki Sakiyama
を読むと
・太陽光は8月に横浜で測定。
・実測値は
BEMSJ注:
・スマホからのブルーライトは距離0との比較で、太陽光の250分の1という値である。
・スマホからのブルーライトは距離0で0.0436mW/cm2=43.6μW/cm2で、この値は 上記にある「ブルーライトの測定と光毒性の研究 綾木ら2013年」の測定値150mW/m2=15μW/cm2と比べて桁数はあっている。
記:2023−2−22
以下の研究がある。
掲載誌:Free Radical Biology and Medicine Vol:108 July
2017. P 300-310
タイトル:Blue light-induced oxidative stress in live skin
生きた皮膚におけるブル―ライト誘発酸化ストレス
研究者:Yuya Nakashima, Shigeo Ohta
et al;
Abstract 概要
Skin damage from exposure to sunlight induces aging-like changes in appearance
and is attributed to the ultraviolet (UV) component of light.
日光にさらされることによる皮膚の損傷は、光の紫外線(UV)成分に起因して、老化のような外観の変化を引き起こす。
Photosensitized production of reactive oxygen species (ROS) by UVA light is
widely accepted to contribute to skin damage and carcinogenesis, but visible
light is thought not to do so.
UVA光による活性酸素種(ROS)の光増感産生は、皮膚の損傷や発がんに寄与すると広く受け入れられていますが、可視光はそうではないと考えられています。
Using mice expressing redox-sensitive GFP to detect ROS, blue light could
produce oxidative stress in live skin.
酸化還元感受性GFPを発現するマウスを使用してROSを検出すると、ブル―ライトは生きた皮膚に酸化ストレスを引き起こすことができます。
Blue light induced oxidative stress preferentially in mitochondria, but green,
red, far red or infrared light did not.
ブルーライトはミトコンドリアで優先的に酸化ストレスを誘発したが、緑、赤、遠赤または赤外光は誘導しなかった。
Blue light-induced oxidative stress was also detected in cultured human
keratinocytes, but the per photon efficacy was only 25%
of UVA in human keratinocyte mitochondria, compared to 68% of UVA in mouse
skin.
ブル―ライト誘発酸化ストレスは培養ヒトケラチノサイトでも検出されましたが、光子あたりの有効性は、マウス皮膚のUVAの68%と比較して、ヒトケラチノサイトミトコンドリアのUVAのわずか25%でした。
Skin autofluorescence was reduced by blue light, suggesting flavins are the
photosensitizer.
皮膚の自家蛍光はブルーライトによって減少し、フラビンが光増感剤であることを示唆しています。
Exposing human skin to the blue light contained in sunlight depressed flavin
autofluorescence, demonstrating that the visible component of sunlight has a
physiologically significant effect on human skin.
太陽光に含まれるブル―ライトにヒトの皮膚を曝露すると、フラビン自家蛍光が低下し、太陽光の可視成分がヒトの皮膚に生理学的に有意な影響を与えることが実証された。
The ROS produced by blue light is probably superoxide, but not singlet oxygen.
ブル―ライトによって生成されるROSはおそらくスーパーオキシドですが、一重項酸素ではありません。
These results suggest that blue light contributes to skin aging similar to UVA.
これらの結果は、ブル―ライトがUVAと同様に皮膚の老化に寄与することを示唆しています。
さて、この論文で関心があるのは、この研究ではどの程度の光の強度で曝露したのか、である。
Full Textを見ると
・The right and left hand of five human volunteers was
exposed to blue light equivalent to the blue component of direct sunlight. The
average irradiance was 11 mW/cm2. This corresponds to
the high energy blue light component (wavelengths 400 to 480 nm) of direct
solar radiation (Reference Solar Spectral Irradiance ASTM G173-03 “global tilt”, i.e. including light scattered
by the atmosphere and coming from other directions than the sun).
・5名のボランティアの右手と左手に、直射日光のブル―ライト成分に相当するブル―ライトを照射した。平均放射照度は11mW/cm2であった。これは、直接太陽放射の高エネルギーブル―ライト成分(波長400〜480nm)に対応する(参照;太陽分光放射照度ASTM G173-03「グローバルチルト」、すなわち大気によって散乱され、太陽以外の方向から来る光を含む)。
<BEMSJ注>この情報から、アメリカの試験機関が行う試験条件の中に、太陽光照射下で試験を行う時、太陽光に含まれるブル―ライトの量として規定があることが判る。
・Irradiating
hairless mice expressing roGFP1 in keratinocyte mitochondria (Fig. 1a) with
blue light (peak wavelength 460 nm, average intensity 44mW/cm2), Supplementary
Fig S1) led to an immediate oxidation of roGFP in the
illuminated skin region (Fig. 1b), and roGFP
oxidation continued during illumination (Fig. 1b, c).
・ケラチノサイトミトコンドリアでroGFP1を発現する無毛マウス(図1a)にブルーライト(ピーク波長460nm、平均強度44mW/cm2、補足図S1)を照射すると、照射された皮膚領域でroGFPが即座に酸化され(図1b)、照明中もroGFPの酸化が継続しました(図1b、c)。
Increasing the
blue light irradiance threefold caused the initial rate of roGFP
ratio change to increase in a similar magnitude (Fig. 1d, f).
ブルーライト放射照度を3倍にすると、roGFP比の変化の初期速度が同様の大きさで増加しました(図1d、f)。
The fluorescence
ratio response, however, reached a plateau after about 4 minutes of irradiation
at high intensity (Fig. 1d).
しかし、蛍光比応答は、高強度で約4分間照射すると飽和状態に達しました(図1d)。
Green light illumination (peak wavelength 523 nm) did not cause any significant
change in mitochondrial roGFP redox state both at low
and high illumination intensities (Fig. 1c, d, f).
緑色光照明(ピーク波長523nm)は、低照度と高照度の両方でミトコンドリアroGFP酸化還元状態に有意な変化を引き起こさなかった(図1c、d、f)。
We also tested the red, far red and infrared light (Fig. 1e, f), but none of
these longer wavelengths was able to induce oxidative stress in mitochondria.
また、赤色光、遠赤色光、赤外光(図1e、f)もテストしましたが、これらのより長い波長のいずれもミトコンドリアに酸化ストレスを誘発することはできませんでした。
Using the initial rate of redox state change (Fig. 1f) during UVA and blue
light at equal irradiance, the per photon efficacy of oxidative stress
induction of blue (460 nm) light in epidermal mitochondria was about 68% of
that of UVA (365 nm) radiation.
UVAと青色光の等しい放射照度での酸化還元状態変化の初期速度(図1f)を使用すると、表皮ミトコンドリアにおけるブル―ライト(460 nm)光の酸化ストレス誘導の光子当たりの有効性は、UVA(365 nm)放射線の約68%でした。
注:Full Textの和訳では、文中にある図などの転載は割愛しました。
実験データの一例;UVAの波長では影響が表れ、ブルーライトではUVAに比べて弱いが影響が現れ、緑光では影響がない、ことを示す。
41.日光・紫外線と、放射線ホルミシスの研究論文の概要の紹介
記:2015−1−4
掲載誌:生物の科学 遺伝 VOL.53,NO.5 PAGE.25‐29 1999
タイトル:紫外線と皮膚
研究者:上田正登
概要:
代表的な皮膚がんとして、基底細胞がん、有極細胞がん、悪性黒色腫があげられる。いずれの成因にも紫外線が関与している。白人種では皮膚がん患者の明らかな増加が問題となっている。日本人においても皮膚がん患者の増加を示唆する報告がある。
疫学研究の結果、皮膚がんの危険因子が明らかにされた。紫外線による発がんのメカニズムとして,宿主の免疫抑制効果に加えて、紫外線によるDNA損傷生成をトリガーとした細胞遺伝子の変異の誘導が重要である。
正常のp53がん抑制遺伝子産物は紫外線発がんの防御に重要な作用を有しているが、この遺伝子の変異が腫瘍のみならず、正常の日光曝露部皮膚にも見いだされる。
紫外線発がんのきわめて初期に生じたこの遺伝子変異がつぎのがん化過程を促進するのであろう。
掲載誌:Carcinogenesis
タイトル:COX-2 expression is induced by UVB exposure in
human skin: Implications for the development of skin cancer.
ヒト皮膚においてUVB曝露によりCOX‐2発現が誘導される: 皮膚癌発生との関連
研究者:BUCKMAN S Y et al:
概要:
培養ヒトケラチン細胞をUVB照射に急性曝露すると、プロスタグランジンE2産生増加、COX‐2(シクロオキシゲナーゼ2)蛋白質増加、COX‐2mRNA誘導増加がみられた。
UVB照射した被験者皮膚の生検ではCOX‐2蛋白質発現のアップレギュレーションがあり、ヒトへん平上皮癌の生検ではCOX‐2蛋白質の免疫染色が増大していた。
掲載誌:地球環境研究総合推進費 平成7年度終了研究成果報告集1. PAGE.341‐346 1996
タイトル:紫外線の増加がヒトの健康に及ぼす影響に関する研究 紫外線の人健康への総合的影響に関する分子疫学的研究
研究者:渡辺昌, 宗像信生 ら
概要:
1993年度から1995年度にかけての検診にて各地域における日本人口10万人当りの皮膚癌の前癌症である日光角化症の有病率は、横手市では814、南佐久郡では654、過西市では480、清武町では744、沖縄県伊江村では1900であった。
その他の皮膚癌は基底細胞上皮種15例、有し細胞癌3例その他の皮膚癌7例が発見された。
この様な地理的差異は紫外線強度の違いよると思われ、高齢化と紫外線Bの増加が予想されるので、今後もモニタリングの必要がある。
掲載誌:Radiol Prot Bull.NO.183 PAGE.26‐28 1996
タイトル:Epidemiology of cutaneous malignant melanoma.
皮膚悪性黒色腫の疫学
研究者:SWERDLOW A
概要:
皮膚癌死の過半の原因である標記疾病について、疫学的知見をもとに考察した。
黒色腫の誘因は紫外線曝露とされているが、その因果関係は単純でないことを世界各地の住民・環境条件と発生率についてのデータから示した。
発生率の高い白人については色素性母斑との関係などが知られている。
黒色腫と太陽光曝露の関連はあるが多くの研究結果は決定的でない。
この関係の明確化に向けての進展と予防対策の確立には疫学的手法が役立つと結論した。
掲載誌:Radiol Prot Bull.NO.183 PAGE.3‐4 1996
タイトル:Skin injury.
皮膚障害
研究者:MACKIE R M
概要:
近年紫外線などの非電離放射線によるリスクに関心が集りつつあることにかんがみ、電離・非電離の両放射線による皮膚障害に関する諸問題をとりあげた。
放射性ホットパーティクルの影響、皮膚放射線症候群、皮膚悪性黒色腫の疫学、公衆の健康問題・管理の対象としての皮膚癌、アフリカでの白子等に関する幾つかの報告について概略を示した。
掲載誌:日本皮膚科学会雑誌VOL.106,NO.3 PAGE.225‐238 1996
タイトル:光と発がん
研究者:市橋正光
概要:
地表太陽紫外線とオゾン層について簡単に触れた後,紫外線による非黒色腫型皮膚がんの疫学について述べた。
白人および日本人の皮膚がん発生率と太陽紫外線の関係の現状に触れ、動物実験の意義とその成果について述べた。
紫外線発癌の誘因には,紫外線の直接作用によるDNAの突然変異、活性酸素を介する遺伝子変異または転写活性への影響および免疫抑制が考えられる。
掲載誌:Environ Health Perspect
VOL.103,NO.Suppl 8 PAGE.251‐254 1995
タイトル:Overview of Ultraviolet Radiation and Cancer: What
Is the Link? How Are We Doing?
紫外線と癌に関するレビュー 何が関係するのか,我々はどうするのか
研究者:WEINSTOCK M A
概要:
太陽光線曝露は非黒色腫皮膚癌(NMSC)と黒色腫の原因である。
黒色腫発生と致死は、過去数十年間で急激に増加したが、現在の増加は遅く、15~45才の致死は減少した。
NMSCの発生は増加したが、致死は減少した。
曝露の減少、皮膚癌を早期発見する技術の開発、癌発生と致死のモニタリング、オゾン枯渇影響のモニタリングを必要とする。
掲載誌:AMBIO VOL.24,NO.3 PAGE.153‐165 1995
タイトル:Effects of Increased Solar Ultraviolet Radiation
on Human Health.
ヒト健康に対する太陽紫外線増加の影響
研究者:LONGSTRETH J D et al:
概要:
実験によるUVは眼の網膜と水晶体に障害を与えた。
成層圏オゾン減少の1%増加は0.6~0.8%の白内障増加を招くだろう。
動物実験によるとUV曝露は皮膚癌、感染症、抗原に対する免疫反応を減らした。
皮膚色の弱い集団ではUV‐B放射線は非黒色腫皮膚癌発達の重要なリスク因子である。
成層圏オゾンの持続的な1%減少は約2%の上記癌増加を惹起しよう。
掲載誌:地球環境研究総合推進費 平成5年度研究成果報告集(中間報告)1: PAGE.126‐129 1994
タイトル:紫外線の増加がヒトの健康に及ぼす影響に関する研究 紫外線の人健康への総合的影響に関する分子疫学的研究
研究者:市橋正光ら
概要:
オゾン層破壊による紫外線増加は深刻な健康影響を及ぼすと試算されている。
紫外線曝露と直接関連する癌は皮膚癌である。予防のため癌発症に至る遺伝子レベルの変化を把握する必要がある。
日光角化症の生検材料を調査した。皮膚癌の前癌病変である日光角化症の遺伝子変化が把握できた。
今後のがん予防を目指した生体指標とすることができるようになった。
掲載誌:Pollut Atmos:VOL.36,NO.142 PAGE.50‐56 1994
タイトル:The International Research Program on Health,
Solar UV Radiation and Environmental Changes.
健康,太陽紫外線および環境変化に関する国際的研究計画(INTERSUN)
研究者:ARMSTRONG B K
概要:
WHOの下部機関IARC(国際癌研究機関)の標記計画は、12~15か所のセンターの協力で地表の紫外線量と皮膚癌、白内障、免疫反応との関係を定量化するものである。
5年ごとの調査を繰り返し、多数の人の疫学的傾向を明らかにする。
紫外線量のデータベースは既に作成中であり、解析の手順を定めた。皮膚の変異を累積曝露量のマーカーとする研究も始めた。
掲載誌:J Radiat Res:VOL.27,NO.2
PAGE.141‐150 1986
タイトル:An epidemiological investigation of mutational
diseases in the high background radiation area of Yangjiang,
China.
中国Yangjiangの高バックグラウンド放射線地域における突然変異病の疫学的調査
研究者:TAO Z, WEI L
概要:
中国Yangjiangの高バックグラウンド放射線地域(HBRA)で突然変異に基づく病気を疫学調査。
HBRAのガンマ線レベルは対照地域(CA)の3倍、HBRAの家族の約90%は6代以上生活しているが、がん死亡率にはHBRAとCAとの間に有意差がなく、HBRA住民の末しょうリンパ球の染色体異常はCAのものよりも有意に高かった。
記:2015−1−27
*古いニフティの化学の広場のフォーラムに以下の論議と言うか、紹介がありました。
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フォーラム名:<化学の広場・本館>
会議室名
:( 19 )【疑似】化学のようで科学でないようなもの
題名 :放射線を出している繊維
登録日時
:00/03/29 16:07
繊維機械学会3月号に「放射線ホルミシスとマイナスイオン」という題で、放射線を出すように加工した繊維の紹介があります。
ホルミシスとは、微量の放射線ならば、生物活性を上昇させるということを言うのだそうです。
で、「微量の放射線を放出する天然ミネラル鉱石を微粉末化して繊維に付着させ」・・・・空気中にイオンを作るのだそうです。
プラスイオンは・・・マイナスイオンは・・・・・・・・ということだそうです。
どこにも、放射線でイオンを発生させる繊維が「良い」とは書いていないところが、クールです。
(略)
フォーラム名:<化学の広場・本館>
会議室名
:( 19 )【疑似】化学のようで科学でないようなもの
題名 :RE:放射線を出している繊維
登録日時
:00/03/31 14:55
ご紹介の文献を読んでみましたが、通常の大気と、イオネージ加工した生地を導入した大気と比較して、大気中の小イオンが増したとの結果を示してありました。
イオネージ加工を施さない生地を入れた場合との比較がないので、静電気などの影響が不明な点と、発生放射線量が自然放射線量より一桁以上低く安全であるとの主張が、通常の使用での放射線の効果と矛盾しないかが疑問点として残ります。
(略)
*******************
*フォーラムに紹介されている論文を読みました。
繊維機械学会誌「繊維工学」53巻3号2000年 から抜粋
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放射線ホルミシスとマイナスイオン
柳内 雄一
日清紡では放射線ホルミシスとマイナスイオン効果を特長とする「イオネージ」の名称の製品を上市している。
同様の商品として、大和紡「イオリナ」、カネボウ繊維「イオーネ」、富士紡「ステイヤーズ」、敷紡「ホーリック」等がある。
これらの効用の原理については,必ずしも検証十分とはいえない面か多いが、知り得る範囲で若干の解説を行う。
(略)
7.イオネージ加工の効果と安全性
日清紡のイオネージ加工による空気中のイオン量の変化を測定したデータを表1に示すが、イオネージには、小イオンを生み出す効果がある。
イオネージ加工の放射線は低線量である。
イオネージ加工の生地から実際に出る放射線量を測定してみると、一般的な生地で、約0.003マイクロシーベルト/時間/m2 (地表からの放射線を含まず)であり、1着分の生地でも約0.014マイクロシーベルト/時間であった。
これは年間にすると約157マイクロシーベルト年になる。
法令で定められている自然放射線を除く放射線被ばく線量当量限度は、1000マイクロシーベルト/年であり(自然放射線は年間2.400マイクロシーベルト)、イオネージ加工の放射線当量はそれより低く安全である。
また、イオネージ加工に使用する天然ミネラル鉱石の経口毒性値は、LD50 : 2000mg/kg以上で、変異原性も陰性、皮膚刺激性も異常がないことがわかっている。
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現在(2015年1月)、この日清紡のイオネージはもう製造販売していないかもしれません。
低放射線の例として、紹介しておきます。
*ユニフォームナビのサイトにあったイオネージの紹介記事から一部引用して紹介
www2.uniform.co.jp/navi/home/nisshinbo/ionage.htm
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イオネージ
日清紡は人間の明日を考え、永年の研究から導き出された先進のハイテクと現代にマッチした商品開発で数種類の天然鉱石を独自のノウハウで精製、テキスタイルへ加工して、繊維に付着させる技術を開発しました。
波動分析器でも実証
「イオネージ」の健康への関連度を表す諸データ(傾向値)は波動分析器による測定でも相対的にプラスであることが認められます。
波動分析器は客観的に検体の状態を測定しようとするもので、病院、専門医療機関、食品、化粧品、住宅関連など、多岐の産業分野で普及しています。
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波動測定器で効果検証とは、日清紡という著名な繊維会社でも、誤った測定を行っていたことが判ります。
2000年頃に波動測定は流行したのですが、まさか、日清紡でも使用しているとは思いませんでした。
これで、このイオネージのイメージは地に落ちたと言えます。
記:2015−11−28
2005年10月20日の共同通信にあったニュースから一部引用
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和歌山県を医療ミスで提訴 放射線過剰照射で
和歌山県立医大病院で放射線の過剰照射を受け死亡した男性の遺族が19日までに、和歌山県に慰謝料や損害賠償など約5170万円を求め、和歌山地裁に提訴した。
訴えたのは、2004年5月に死亡した和歌山市の男性=当時(70)=の遺族4人。
訴えによると、男性は03年6月に咽頭(いんとう)がんと診断され、放射線治療として2.5グレイずつ4回の照射を受けるはずだったが、担当者が同年9月19、22日にそれぞれ4倍にあたる10グレイを照射。
男性は、1度は退院したが、容体が悪化し04年5月に咽頭出血で死亡した。
(略)
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以下は朝日新聞2006年9月23日の記事から一部引用
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誤照射医師ら書類送検へ 業過致死容疑 和歌山男性死亡
(略)
和歌山西署の調べでは、助教授らは03年9月19日と22日の2回、初期の下咽頭(いんとう)がんで入院中の男性患者(当時70)の患部に放射線を照射。
その際、本来は1回分の照射量が2.5グレイだったのに、過って2回とも10グレイを照射した。
助教授が間違った照射量を機械に入力し、技師らも見逃したという。
記録を見た別の技師が過剰照射に気づき、病院側が患者に事情を説明。
患者は退院後、通院治療を受けていたが、04年3月に再入院。
同5月に下咽頭にできた潰瘍(かいよう)から大量出血して死亡した。
同署と県警捜査1課は、助教授や技師から事情聴取。
さらに専門医に鑑定を依頼して、死因を詳しく調べた。
その結果、照射量を機械に誤入力した助教授と、誤った数値を見逃した放射線技師らの「過失の競合」によって過剰照射が起き、それで生じた潰瘍からの出血によって患者を死亡させた疑いが強まった、と判断した。
(略)
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以下は産経新聞2001年12月22日の記事です。
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国立大蔵病院
作業員X線浴びる
最大、年間限度の千倍1シーベルトの可能性
気づかずテスト 命に別条なし
文部科学省に21日入った連絡によると、東京都世田谷区の国立大蔵病院で、医療用放射線発生装置(リニアック)の据え付け諷整作業をしていた男性作業員(34)が誤って大量のエックス線を浴びる事故がった。
今後、血液検査で正確な被曝線量を調べるが、最大で、一般人の年間限度の千倍にあたる一シーベルト(自然照射は除く)の可能性があるという。
被曝した男性は別の病院に入院したが、これまでのところ、特段の急性症状は表れておらず、文科省は命に別条はないとみている。
事故が起こったのは同日午前9時35分ごろ。
医療機器販売会社、東芝メディカル(東京都文京区)が大蔵病院でリニアックの据え付け調整作業を行っている際、天井裏に下請け会社の作業員がいることに気が付かないまま、天井方向に向けて放射線の照射テストを行った。
照射時間は約5分間だったという。
東芝メディカルでは「部屋から退出するよう声をかけたが、装置が発生する音で聞こえなかったようだ。何らかの確認を忘れた人的ミス」広報広告部)と話している。
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記:2021−10−10
以下の研究がある。
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掲載誌:SCIENTIFIC REPORTS 2 : 507 2012
タイトル:Thyroid doses for evacuees from the Fukushima
nuclear accident
福島原子力発電所事故による避難者の甲状腺線量
研究者:Shinji Tokonami, Masahiro
Hosoda, Suminori Akiba, Atsuyuki
Sorimachi, Ikuo Kashiwakura, Mikhail Balonov
東京電力福島第一原子力発電所事故直後の被災地の居住者と避難者の主な健康上の懸念は、放射性ヨウ素、特にヨウ素-131による甲状腺の内部被ばくにともなう甲状腺がんのリスクである。
2011年3月に日本で起きた地震と津波の自然災害によって、福島第一原子力発電所(F1-NPP)は重要な機能を失い、大量の放射性物質が環境中に放出された。
今回われわれは、高汚染地域での居住者と沿岸域からの避難者の62名に対してヨウ素-131の被ばく線量を初めて測定した結果を報告した。
測定した62人のうち46人から甲状腺におけるヨウ素-131が検出された。
甲状腺等価線量の中央値は、未成年者で4.2mSv、成人で3.5mSvと見積もられた。
この値は、チェルノブイリ事故の避難者の甲状腺線量の平均値(490mSv)よりはるかに小さい。
甲状腺線量の最大値は、未成年者で23mSv、成人で33mSvであった。
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関心のある方は、英文の原著全文を読んでください。
記:2016−2−15
1)研究開始の報
以下の記事が産経新聞2016年2月13日の記事にあった。
参考になる個所だけを、一部引用して紹介する。
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福島から問う 被爆リスクの探求 5年 (中) 殺処分決定を拒否 牛160頭で世界初の実験
山本さんの牧場を含む浪江、大熊の両町の3カ所では、殺処分を拒否した被曝牛計約160頭の調査が続けられている。
「大型動物の被曝を長期的に調べるのは世界初。
実験室ではできない。
その研究が人間にとっても参考になり還元されていく」。
岩手大農学部准教授の岡田啓司さん(生産獣医療学)は力を込める。
原発事故があった平成23年の夏、岡田さんは原発から20キロ圏に入った。
24年9月には、山本さんらの牧場と協力し、獣医師や北里大、東北大などの研究者と団体を結成。
被爆した牛の採血、採尿、遺伝子変化の解析などを通して放射線の影響調査を継続してきた。
累積の被曝線量が、2千ミリシーベルトと推定される牛もいる。
人の年間目安量1ミリシーベルトの2千倍だ。
しかし、これまでの調査では、白血球の減少など被爆による影響は確認されていない。
放射性物質に汚染されていない餌を与えていれば、3カ月ほどで体内の放射性物質が排出されることも分かった。
こうした活動に対し、批判的な声も多い。
事故当時、原発から20キロ圏では、農家約300戸が計約3000頭を飼育。
国現状の研究では、被曝の影響がないことが牛で実証されているが、その影響は長期にわたり、見極めには時間がかかる。
「本当だったら何も出ないで幸せな形で終わるのが1番いい。それが住民の帰還や復興にもつながる。しかし、私たちはストーリーも到達点もつくらない。純粋に科学者として中立的な立場で、何が起きて、あるいは何が起きていないかをきちっと整理することが大事だ」。岡田さんはこう言い切った。
************************
2)研究成果の一例
記:2021−10−11
いくつかの論文や報告が出ている様であるが、以下に1例のみ紹介する。2019年の論文
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掲載誌;Anim Sci J.2019 Jan;90(1):128-134.
タイトル:Decreased blood cell counts were not observed in
cattle living in the "difficult-to-return zone" of the Fukushima
nuclear accident
研究者:Itaru Sato, Jun Sasaki, Hiroshi Satoh, Yoshitaka Deguchi,
Hiroyuki Chida, Masahiro Natsuhori, Kumiko Otani, Keiji Okada
Abstract 概要
White blood cells, especially lymphocytes, are susceptible to radiation
exposure.
白血球、特にリンパ球は放射線被曝しやすい。
In the present study, red blood cell, total white blood cell, and lymphocyte
counts were repeatedly measured in cattle living on three farms located in the
"difficult-to-return zone" of the Fukushima nuclear accident, and
compared with two control groups from unaffected areas.
本研究では、福島原発事故の「帰還困難地帯」に位置する3つの農場に生息する牛で、赤血球、全白血球、リンパ球数を繰り返し測定し、影響を受けていない地域の2つの対照群と比較した。
Blood cell counts differed significantly between the two control groups,
although almost all the values fell within the normal range.
血球数は2つの対照群とは有意に異なっていたが、ほとんどすべての値は正常範囲内に収まっていた。
The blood cell counts of the cattle in the "difficult-to-return zone"
varied across sampling times even on the same farms, being sometimes higher or
lower than either of the two control groups.
「帰還困難地帯」の牛の血球数は、同じ農場でもサンプリング時期によって変化し、2つの対照群のいずれかよりも、高かったり、低かったりした。
However, neither a statistically significant decrease in blood cell counts nor
an increase in the rate of cattle with extremely low blood cell counts was
observed overall.
しかし、血球数の統計的に有意な減少も、血球数が極めて低い牛の割合の増加も、全体的には認められなかった。
The estimated cumulative exposure dose for the cattle on the most contaminated
farm was within a range of 500-1000 mSv, exceeding the threshold for the
lymphopenia.
最も汚染された農場の牛の推定累積被爆量は500-1000mSvの範囲内であり、リンパ球減少の閾値を超えていた。
Because of the low dose rate on these farms, potential radiation damages would
have been repaired and have not accumulated enough to cause deterministic
effects.
これらの農場の線量が低いため、潜在的な放射線損傷は修復され、決定的な影響を引き起こすほど蓄積されていない。
**************************
記;2016−2−22
産経新聞に以下の記事があった。
一部を引用する。
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福島から問う 被爆リスクの探求5年 (下)
上限20ミリシーベルトに懸念
低線量「理性的な判断を」
平成23年3月の東京電力島第1原発事故の影響で、福島に住むと放射線の危険にさらされるのではないか−という不安を払拭するデータがある。
生活協同組合(生協)の「コープふくしま」(福島市)の調査結果だ。
コープふくしまは26年4月、福島を含む12都道県の組合員102人に依頼し、日常的な外部被曝線量を調査。
放射線量の測定器を身に付けて生活してもらい、7日間の積算線量の違いを調べた。
その結果、福島では最大20.7マイクロシーベルトと全国で最も高い値が出たものの、東京=同17.6マイクロシーベルト▽広島=同17.4μシーベルト ▽奈良=同17.1マイクロシーベルト と全国的にそれほど違いはなかった。
(略)
低線量被曝のリスクについては最近、研究者も一つの結果を提示している。
放射線影響協会の放射線疫学調査センター長、笠原文善さん(66)らの研究グループは、原発など放射線業務務に携わる作業員らを対象に、1990年代から約20年にわたって追跡調査を行った。
調査数は約20万4千人。
うち的7万5千人は喫煙といった生活習慣との関連性も調べた。
累積線量は平均25.8ミリシーベルトで、一般の被曝線量の目安となる年1ミリシーベルトのおよそ26倍となったが、累積線量と死亡率のデータは関連を示さなかった。
むしろ、死亡率は喫煙など放射線以外の要因が影響を及ぼしていた。
「現状では低線量の放射線が、がんによる死亡に影響を及ぼしていると結論付けることはできない」。笠置さんはこう言い切った。
科学的根拠を聞き入れず不安ばかりに駆られる福島の現状について、コープふくしまの野中さんが一つの答えを示した。
「やみくもに怖がるのではなく、自分なりの物差しで理性的に判断しなければいけない」。
****************************
記:2018−3−18
以下の研究がある。
掲載誌:Journal of Risk Research Published online: 13 May
2013.
タイトル:An analysis of the argument over the health
effects of low-dose radiation exposure caused by the accident at the Fukushima
Daiichi APP in Japan 日本の福島第1原発の事故による低線量の放射線曝露に関する健康影響の論争の解析
研究者:Shojiro Yasui
概要:
Since the accident at the Fukushima Daiichi Atomic Power Plant last March,
there has been a huge controversy over the potential health effects of low-dose
radiation exposure.
去る3月の福島第1原発の事故以来、低線量の放射線曝露による健康影響の可能性に関する多くの論議がなされてきた。
This paper critically examines the argument between mainstream experts and
non-mainstreamers, which is revealed as an interdisciplinary argument caused by
the differences in the specialties to which the experts belong.
本論は、主流派と反主流派間の論議を批判的に検証し、それぞれの専門家が所属する専門性の違いによっておこる学際的な論議を明らかにする。
The concepts of confounding control and statistical significance, which are
epidemiologically powerful tools that can disprove the argument that harm was
caused by other causes, appeared to be less effective for denying the existence
of a hazard entirely.
障害は他の要因によるという議論を論駁することができる疫学的に有力な手法である交絡因子の制御と統計的な優位性の概念は、障害全体の存在を否定するためには、有効ではない。
The concept of risk is the most significant cause of confusion related to
low-dose exposure because the epidemiologists assume that risk is the incidence
rate of diseases, but biologists believe that risk includes DNA damage that may
cause cancer in the future.
リスクの概念は低線量曝露に関する混乱の最も有意な要因である、なぜならば、疫学者は「リスクは疾病の罹患率である」と仮定し、生物学者は「リスクは将来癌になるかもしれないDNA損傷を含む」と信じているからである。
This paper also reveals that public debate is useful to make collective choices
and decisions rationally when inferential questions become the subjects of
dispute.
本論では、また、推論上の疑問が論争のテーマになる時の合理的な討論と正しい選択を行うために、公開討論が有効であることを明らかにする。
関心のある方は、原著全文を読んでください。
記:2018−3−20
以下の新聞記事がある。
********************
福島民友ニュース
被曝量「国内外で差はない」 福島高生、英学術誌に論文
2015年11月27日
本県など国内とフランス、ポーランド、ベラルーシ各国の高校生の外部被ばく線量を比較研究してきた福島高スーパーサイエンス部は、被曝線量について「ほとんど差はない」と結論づけ、論文にまとめた。
論文は27日、英国の学術専門誌「ジャーナル・オブ・レディオロジカル・プロテクション」に掲載される。
研究は、線量計の名前から「D−シャトルブロジェクト」と名付け、26校の生徒と教員211人を対象に昨年6〜12月に実施。
1時間ごとの外部被曝量を計測できる線量計を2週間持ってもらい、集めたデータを比較した。
各校とも10人程度が協力、中間に位置した人の値を1年間分に換算して比べた。
その結果、本県は年間0.63〜0.97ミリシーベルト、本県以外の国内は0.55〜0.87ミリシーベルト、海外は0.51〜1.10ミリシーベルトだった。
また、放射線の遮蔽効果が高いコンクリート製校舎の福島高生は学校での数値が低く自宅の数値が高かつたが、放射線を出す花こう岩などが校舎に使用されている恵那高(岐阜)の生徒は学校での数値が高く、自宅が低いなどの傾向がみられたという。
数値に大差がなかつたことについて「福島は(自然界にもともとある)自然放射線が他の地域より低いため」としている。
論文は同部の生徒や専門家ら233人の共著として英文で掲載される。
同部の生徒が原稿をまとめ、東大大学院の早野龍五教授が翻訳して投稿した。
**************************
この論文は以下である。
掲載誌:J. Radiol. Prot. 36
(2016) 49–66
タイトル:Measurement and comparison of individual external
doses of high-school students living in Japan, France, Poland and Belarus—the ‘D-shuttle’
project—
研究者:N Adachiら
関心のある方は、原著論文を読んでください。
記:2019−7−14
以下の記事が、産経新聞2019年6月4日に掲載された。
*******************
甲状腺がん「被曝と関連なし」 福島県 子供2巡目検査 中間報告
東京電力福島第l原発事故の健康への影響を調べる福島県の県民健康調査検討委員会の評価部会は3日、事故当時18歳以下だった県内の全ての子供を対象に平成26、27年度に実施した2巡目の甲状腺検査の結果について「現時点では甲状腺がんと被曝との関連は認められない」とする中間報告を公表した。
推計被曝線量が高くなるとがん発見率が上がるといった相関関係が見られなかった。
基礎データ収集を目的に事故半年後から25年度まで行われた1巡目の検査と違い、事故後3〜5年目に実施した2巡目は本格検査と位置付けている。
部会長の鈴木元・国際医療福祉大クリニック院長は記者会見で「(2巡目の)データだけで、未来永劫、放射線の影響がないと結論付けるものではない」として、検査継続の必要性を強調した。
報告は今後文言を微調整した上で、検討委に提出する。
部会は、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が県内59市町村ごとに推計した甲状腺被曝線量を基に、甲状腺がんと診断された子供の年齢や市町村と照らし合わせて分析。
約38万人を対象とした2巡目の検査では、52人のがんが確定し、19人に疑いがあった。
*********************
記:2019−10−22
以下の研究がある。
掲載誌:British Journal of Cancer (2006) 94, 1342 – 1347
タイトル:Childhood leukaemia
incidence around French nuclear installations using geographic zoning based on
gaseous discharge dose estimates
研究者:A-S Evrard, D Hemon et al;
概要:
The present study investigated for the first time the incidence of childhood
leukemia (1990–2001) around French nuclear
installations using a geographic zoning based on estimated doses to the red
bone marrow due to gaseous radioactive discharges.
本研究は、ガス状の放射線放射による赤色骨髄への照射量を推定することによる地域区分を用いて、フランスの原子力施設の周辺における1990-2001年間の小児白血病の罹患率を、はじめて研究したものである。
The observed number of cases of acute leukemia (O=750) in 40 km2 centered on 23
French nuclear installations between 1990 and 2001 was lower than expected
(E=795.01), although not significantly so (standardized incidence ratio
SIR:0.94, 95% confidence interval:0.88–1.01).
23のフランスの原子力施設を中心とした40km2において観察された急性白血病の症例は750件であり、期待値795.1より低い。また、標準化罹患率は0.94で、95%信頼区間は0.88-1.01で、有意ではない。
In none of the five zones defined on the basis of the estimated doses was the
SIR significantly >1.
曝露量の推定の基礎となった5か所の地区のいずれも、標準化罹患率が1を超えていない。
There was no evidence of a trend in SIR with the estimated doses for all the
children or for any of the three age groups studied.
対象とした集団のすべてを対象としても、また3つの年齢区分に分けて解析しても、標準化罹患率が上がると言う傾向はみられなかった。
This study confirmed that there was no evidence of an increased incidence of
childhood leukemia around the 23 French nuclear sites.
この研究で、23のフランスの原子力施設の周辺で、小児白血病の罹患率が増加するという確証はない、ということが確認された。
関心のある方は、原著全文を読んでください。
記:2020−4−5
食品安全情報ブログにあった情報です。
https://uneyama.hatenadiary.jp/entry/20160304/p14にあった情報
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Scienceの今週号は福島特集 20160304
Science04 Mar 2016 Vol. 351, Issue 6277, pp. 1022-1023
恐怖の流行 Epidemic of fear
Dennis Normile
2011年3月の福島第一原子力発電所のメルトダウンは膨大な苦難を引き起こした−避難、感情的トラウマ、早期死亡、仕事や学業の中断。
これまでのところ、一般人への放射線が原因の病気はおこっておらず、がんやその他の病気が劇的に増えると予想する専門家はほとんどいない。
原子炉が放出した放射線はチェルノブイリの1/10でその多くは風で海に運ばれ、避難が速やかに行われた。
しかしこの惨劇に関連する病気がひとつあり、それは皮肉なことに善意で行われたスクリーンニングの結果である。
事故から何ヶ月か経って、福島県は何万人もの子どもの甲状腺を放射線が原因のがんの兆候を探して検査を始めた。
このようなスクリーニングは前例が無く、何がおこるか誰も知らなかった。
だから最初のラウンドで甲状腺の異常が約半分の子どもにみつかりそのうち100人以上がのちに甲状腺がんと診断されると大騒ぎになった。
東京大学の公衆衛生専門家Kenji Shibuyaは「過剰診断と過剰治療」という結果をもたらし、何十人もの子ども達が、多分必要もないのに、甲状腺を摘出した。
活動家達はこの知見を原子力の危険性の証拠だと吹聴した。
反核活動家Helen Caldicottは彼女のホームページに「事故直後にこれだけたくさんの異常がみられたということは、放射性ヨウ素を吸入したか飲み込んだかで子ども達が極めて大量の甲状腺被曝をしたことは確実であることを示す」と書いた。
科学者はきっぱり否定する。
「これまで発見されたほぼ全ての事例は放射線によるものではないことが根拠により示唆されている」と英国ケンブリッジ大学の甲状腺がん専門家Dillwyn Williamsは言う。
先月Epidemiologyに発表された一連のレターで、科学者たちは扇動家の解釈を批判した。
多くが汚染のない地域でのベースラインデータの必要性と、すぐに手術するのではなく監視することを受け容れるための、結果を理解するためのより良い教育が必要だと指摘している。
しかし同時に多くがこの知見は医学的謎でもあると言う:どうして子どもにはこんなに甲状腺の異常が多いのだろう?Williamsはこのスクリーニングの「驚くべき」結果は、「甲状腺がんはこれまで考えられていたよりずっと人生の早い時期から発生しているに違いない」ことを示すという。
チェルノブイリの記憶が日本当局に甲状腺がんの心配をさせた。
1986年の事故はベラルーシ、ロシア、ウクライナに放射性ヨウ素を降下させ乳牛が食べる草を汚染した。
子ども達は汚染されたミルクを飲み甲状腺に放射性ヨウ素を蓄積した。
WHOの2006年の研究では事故時18才以下だった人たちの約5000人が甲状腺がんになったことを発見した。
国連は2006年にチェルノブイリによる子どもの甲状腺がんで死亡したのは15人とした。
早期に発見すれば甲状腺がんはほぼ治療できる。
このことを念頭に日本の当局は事故時18才以下だった368651人の福島県住民の甲状腺スクリーニングを始めた。
ほとんどの専門家は甲状腺の問題が大量にみつかることを予想していなかった。最
初、福島住民の放射線被曝はチェルノブイリに比べて僅かで、メルトダウン後に発電所の20km以内に住む人は避難していて、食品は1週間後から検査されていた。
さらにヨウ素錠剤を提供されていた。
2013年にWHOは事故後最も影響が多い地域での最初の1年間12-25mSvの暴露はがんの発症率にはほんの僅かな影響しかないと推定した。
女性の生涯甲状腺がん発症リスクは0.75%で、福島での最も多い被曝でも追加リスクは0.5%だろうと推定した。
2011年遅くに始まった初回甲状腺スクリーニングは単にベースラインデータを提供するものだった。
少なくとも4年は放射線が原因のがんはできないと予想されたからである。
5.0mm以上の結節あるいは20.1mm以上の嚢胞がある子どもは二次検査とされ精密検査や必要であれば針吸引生検が行われた。
初回スクリーニング後、20才までは2年ごとに、その後は5年ごとに検査される。
スクリーニングが進み結果が発表されると、最初から驚くほど異常が多かった。
2015年4月に完了した初回スクリーニングの知見は2015年8月に発表され、300476人中の50%近くが結節や嚢胞を持っていた。
他の場所でのより小規模な研究では小さな甲状腺結節や嚢胞は全年齢でよく見られることを示していた。
しかし福島の結果で見られる頻度が高いのか低いのか専門家はわからない、と長崎大学原爆後障害医療研究所の放射線健康科学者Noboru Takamuraはいう。
がんと確定した事例が増えると放射線との関連を心配する声が大きくなりそのような懸念の提唱者が人気を集めた。
2013年に岡山大学の環境疫学者Toshihide Tsudaが国際学会で福島のスクリーニングで発見された甲状腺がんが異常に多いと主張する発表を始め、昨年の10月に全体としてがんが30倍増えたと結論する彼の結果をEpidemiologyにオンライン発表した。
この主張は警鐘報道となった。
他の科学者は速やかに厳しく批判した。
何人かの疫学研究者によると、Tsudaは高性能の超音波装置を用いた検査しなければわからなかったのであろう福島のスクリーニングの結果を、伝統的な甲状腺の腫れや症状があって病院に来て甲状腺がんと診断される患者での100万人あたり3人程度という数字と比べるという基本的な間違いをしている。
英国マンチェスター大学の疫学研究者Richard Wakefordは「そのようなデータを比較するのは不適切である」と福島の健康影響を調べたWHO専門家ワーキンググループのメンバーとして書いている。
彼らの意見は先月Epidemiology に発表されたTsudaの方法論と結論を批判した7つのレターのうちの一つである。
被曝していない集団での比較可能なスクリーニングではどうなるかを見るために、Takamuraのチームは福島調査のプロトコールを使って遠く離れた3県での3-18才の4365人の子ども達を調べた。
同様の数の結節や嚢胞とがん1例がみつかり、100万人あたり230のがん有病率になる。
Scientific Reportsに2015年3月に報告している。
他の日本の研究では甲状腺がんは100万人当たり300、350、そして1300というものすらある。
「高性能の超音波技術で検出された甲状腺がんの有病率は福島県と日本の他の地域とでは意味のある差はない」とTakamuraはEpidemiology に書いている。
Epidemiology へのレターでTsudaは超音波検査で見つかったものと臨床的に見つかるものの時間差を考慮してスクリーニング効果を補正したと主張している。
彼は他の批判には答えていないしScienceからの複数回にわたる取材にも反応しなかった。
多くの科学者が偏った解釈(spin)には合意しないにも関わらず、Tsudaや活動家らはその発見を振りまきスクリーニングを支持する。
「甲状腺検査は、放射線が原因かどうか関係なく、がんを早期発見して命を救う」とGeorgetown大学の放射線健康物理学者Timothy Jorgensenは言う。
しかし一般の人々や多くの医師ですらこの結果を全体の中で見るバックグラウンドを持っていないことが明らかである。
ほとんどの甲状腺の異常は無視しても問題はないにもかかわらず、「小さな病変の発見が患者を不安にする」と福島県の健康管理調査副委員長のSeiji Yasumuraはいう。
甲状腺がんと診断されたほとんどが、甲状腺を摘出した。
多くの場合経過観察のほうがよいという根拠がますます増えているにもかかわらず。
東京大学のShibuyaが加える。
韓国は教訓を提供する。
1999年に韓国政府は僅かな追加料金で甲状腺の超音波検査を提供できる検診を導入した−そして甲状腺がんの診断が爆発的に増えた。
2011年には1993年の15倍の甲状腺がんが診断されたが甲状腺がんによる死亡率は変わらない。
韓国Korea大学のHeyong Sik Ahnらが2014年11月にNEJMに報告している。
診断された人のほとんどが甲状腺の一部または全部を摘出し、多くは生涯にわたって甲状腺ホルモン治療を必要とする。
この「流行」を止めるため、Ahnらは甲状腺のルーチン検査をやめるよう言っている。
Williamsは子ども達の甲状腺の結節や嚢胞はこれまで考えられていたよりはるかによくあることであるという根拠があり、正常とみなすべきだという。
福島調査はそのような結節や嚢胞の「発生起源をより良く理解する」ことになりより良い治療法につながるかもしれないという。
(なんで日本の記者が外国人のDennis Normile並の報道ができないの?)
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https://news.livedoor.com/article/detail/24037872/にあった情報
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低線量放射線被ばく、植物の突然変異は増えず 福島の帰還困難区域で調査 福島大ら
2023年4月11日 財経新聞
原子力関連の事故などで、放射線量が上がった時、その地域の植物に世代を超えてどのような影響があるのかはこれまで調べられていなかった。
福島大学と森林総合研究所は、屋外の樹木のDNA突然変異を検出する方法を開発し、東日本大震災における帰還困難区域内外の植物の突然変異について調査
その結果、放射線量と突然変異の頻度には関連性が無いことが明らかになったと発表した。
事故等により放射線量が増加しても、その地域の植物の次世代には影響しないことがわかったのだ。
今回の研究は、森林研究・整備機構森林総合研究所の上野真義チーム長、福島大学共生システム理工学類の兼子伸吾准教授を中心とする研究グループにより行なわれた。
研究の詳細は、7日の「Environment
International」誌にて公開されている。
放射線は、放射性物質が出す粒子や電磁波のことである。
私たちにとって身近な光も電磁波の一種だ。
(略)
エネルギの強い電磁波は、体を通り抜ける時に細胞やDNAを傷つける。ダメージを受けた細胞やDNAは自分自身を修復するためにDNAのコピーをし、細胞分裂をする。これは、紫外線などが当たった時に通常体が行なっていることだ。
だが原子力発電所の事故のような非常事態で放射線量が上昇することにより、一度にたくさんの細胞やDNAの損傷が起こると、コピーミスが数も増えてくる。そのコピーミスで起こるのが突然変異だ。
生じた突然変異が遺伝し、次世代に伝わるとなると、その影響は長期間にわたることになる。
そのため、放射線への曝露が次世代にどのような影響があるのかを調べることは重要であろう。
研究チームは、膨大な遺伝情報から部分的にピックアップし、そのDNA配列を親子間で調べるという手法を用いて、突然変異を見つける手法を開発。東日本大地震における、東京電力原発事故の帰還困難区域内外のスギとソメイヨシノの突然変異を評価した。
ちなみにこの研究になぜスギとソメイヨシノが選ばれたかというと、スギについては針葉樹が放射線の影響を受けやすいため、ソメイヨシノは遺伝的に単一なクローンであるので比較しやすいためという。
その結果、放射線量の大小に関わらず、子の世代において突然変異はほぼ生じていないことがわかった。
スギにおいては、100万塩基中0.3〜7箇所程度の突然変異があったが、種子や枝を採取した場所による影響は見受けられるものの、放射線被ばくに関連した変異は無かったという。
ソメイヨシノにおいては1億800万塩基調べたが、新規の変異は皆無だった。
今回の研究結果より、原発事故で起こる放射線量の上昇は、その地域の次世代の植物には影響を与えないことが明らかになった。
この結果により、福島県の農産物や林業への不安を拭うことができるだろう。
また研究チームが開発した突然変異の測定方法は、放射線だけでなくさまざまな遺伝子に影響を与える環境で、どのような変異が起こるか、また、どのように変異を修復するかを明らかにしていく研究分野で活用されていくことが期待できる。
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記:2015−12−13
古い産経新聞に掲載された記事からの一部引用
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映画館、「目をそらして」 「バベル」で体調崩す 点滅シーンに7人吐き気
5月1日(火)
東京朝刊
映画「バベル」を上映している名古屋市と三重県四日市市の映画館で、28日の公開以降観客7人が吐き気などの体調不良を訴えていたことが30日、分かった。
いずれも症状は軽く、館内で休んだ後に自力で帰ったという。
このうち、名古屋市の「ミッドランドスクエアシネマ」は、点滅を繰り返すシーンで注意するよう呼び掛ける文書を配布している。
映画では、開始から約1時間20分後に菊地凛子さんが演じる高校生がクラブで踊る場面で、クラブの照明が1分程度、速い点滅を繰り返す。
同館が配布した文書は「このシーンになりましたら、スクリーンから適度に目をそらされるか、直視し続けないことをお薦めします」としている。
同館では28日に女性5人、29日には男性1人が体調不良を訴えた。
配給会社に問い合わせたところ、「対応は劇場に任せる」との返答があったといい、同館は29日から上映前に文書の配布を始めた。
また、四日市市の「109シネマズ四日市」でも28日、夫婦で見に来ていた年配の女性が上映中に体調不良を訴えた。
バベルは、菊地さんが米アカデミー賞助演女優賞にノミネートされるなど話題を呼んでいた。
十分な検証必要
埼玉医大学長で名誉教授、山内俊雄氏(精神医学)の話
「私自身、『バベル』は見ていないが、まず気分を悪くしたのが同じ映像、同じ時間か。
さらに発症者は光に敏感な14歳以下の子供なのか、スクリーンに近い観客席に集中しているのかについて検証する必要がある。
仮にそうであれば、映像と体調不良との関係が高いと推測され、『ポケモン・ショック』のような光刺激による健康被害といえるだろう。
映画館や配給元は文書配布だけでなく、もう少し踏み込んだ対応をしてほしい」
以下 略
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記:2020−1−3
室内のラドン濃度に関する情報です。
朝鮮日報日本語版にあったもの。
http://www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2019092780061<リンク切れ>
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屋内の仕上げ材・コンクリートから出ているもよう 一部の団地は勧告値の2.4倍以上
韓国国内の新築マンション10棟中6棟で、1級発がん性物質のラドンが基準値を超えて検出された。
26日に国会環境労働委員会の李貞味(イ・ジョンミ)議員(正義党)が環境部(省に相当)から受領した韓国国内の新築マンションにおける屋内ラドン調査の資料に表れた結果だ。
同資料によると、国立環境科学院は韓国首都圏および忠清道地域で、昨年11月から今年5月までの間に竣工したマンション9団地60戸で屋内ラドン濃度を測定した。
その結果、37戸(62%)で世界保健機関(WHO)勧告基準の1立方メートル当たり148ベクレルを上回る値を検出した。
ある団地では、ラドンの平均濃度が勧告値の2.4倍にもなる1立方メートル当たり345ベクレルを検出したというケースもあった。
ラドンは気体の状態で空気中に存在しているが、人が吸い込むとたばこを吸っていなくても肺がんを誘発しかねない1級発がん物質だ。
WHOは「肺がん患者の3−14%はラドンのせいで発病していると推定される」として「基準値以上のラドンを吸入したらがんにかかる危険性がある」と発表している。
ラドンは、屋内で使われる一部の仕上げ材や、コンクリートそのものから検出されると推定されている。
今回の調査に先立ち、全州のあるマンションの浴室でラドンが勧告基準値の20倍に達する1立方メートル当たり3000ベクレルまで検出されるなど、韓国各地のマンション団地で基準値以上のラドンが検出され、「ラドン・マンション恐怖」が生じていた。
だが韓国政府は「ラドン・マンション」に対し、これといって手が打てない。
現行の室内空気質管理法によると、事業承認が昨年1月以降に出たマンションは室内ラドン濃度が1立方メートル当たり200ベクレル、今年7月以降に出たマンションは同148ベクレルを超えてはならないと勧告してある。
だが昨年1月より前は規定がなく、その後も勧告事項にすぎないので、建設会社が基準に違反しても別に制裁条項はない。
このため、ポスコ建設が手掛けたあるマンション団地の入居者が「トイレの棚や玄関の足置きの石などからラドンが検出された」として交換するよう要求したが、会社側がこれを拒否して論争が起きている。
今回調査されたマンション団地は、まだ住民が入居する前の状態だ。
環境部は、財産価値が落ちるなど論争が生じる可能性があるとして、当該団地の名前を公開しなかった。
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参考:
ラドン:ラドンは喫煙に次ぐ肺癌のリスク要因とされ、これまでに、住居内におけるラドン濃度と肺癌リスクの関係について多数の研究が行われている。
それらの研究を統合したメタアナリシスの結果によれば、屋内ラドンによるリスクは線量に依存し、時間加重平均暴露値として150Bq/m3あたり24%の肺癌リスクの増加になることがわかった。
同様に大規模な症例数を用いた解析として、欧州9ヶ国の13の症例対照研究を対象にしたプール解析の結果は、線量応答反応はLNTモデルに従っており、統計学的に有意な正の値で、100Bq/m3(ランダム誤差を調整した暴露推定値)あたり16%の肺癌リスクの増加を示し、他の組織型に比べて小細胞肺癌のリスクが高く、ラドンに暴露した鉱夫の小細胞癌の疫学的研究とも矛盾しない結果が得られた。
ラドンによる体内被曝量は、日本平均で年間0.4mSv、世界平均で年間1.28mSvと言われている。
記:2020−1−3
http://zapzapjp.com/53440358.htmlにあった情報
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韓国『マイナスイオン』を謳ったベッド、放射性物質染汚で回収へ
2018年05月07日
韓国の複数メディアによると、デパートなどで販売されていたベッドに関して一部モデルから放射性物質ラドンが大量に検出されたとして指定されたモデルの販売中止及び回収が実施されていると報じられています。
韓国メディア聯合ニュースなどによると、韓国内の中小ベッドメーカー『DAIJIN』が2010年に製造販売していた製品から放射性物質『ラドン』が大量に検出されたとして消費者の懸念が広がっていると伝えています。
記事によると、韓国の室内ラドン低減協会が行った調査によるとDAIJINのベッドを購入した消費者の依頼としてベッドを調査した結果、室内から基準値の3倍を超えるラドンが検出されたとしています。
具体的には620ベクレル/立法メートルだったとしており、韓国が設けた新築住宅における室内の基準値200ベクレル/立法メートルを大幅に超える数値でした。
原因に関してはDAIJINのベッドは体に良い効果を与えるなどとマイナスイオンを発生させるマットレスとして鉱物粉末が入れられていたもののラドンを生成する放射性物質『ウラン』と『トリウム』が含まれていたことが原因だとしています。
またこのマットレスを製造しDAIJINに納品していた業者が他のベッドメーカー製品に納品はしていないことが確認されているとのことです。
一方、DAIJINは問題発覚後ホームページに謝罪文を掲載していたもののアクセスが集中したのか原因は不明なのですが、現在はホームページが閉鎖されており連絡が取れない状態だとしています。
この問題を受けて韓国ではラドン検出器のレンタルと販売量が先月の1日平均の40倍に達したとも報道されています。
韓国ではラドンが肺がん誘発1級物質にされており、韓国にける肺がん死亡者の12.6%が室内ラドンによるものだしています。
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マイナスイオンという用語は、日本ではほとんど使われなくなっていますが、2018年の時点で、韓国に「マイナスイオン」という用語が輸出されていたことが判る。
マイナスイオンを発生させるために、微量かもしれないが、放射性物質をベッドに入れたのでしょう。
スイスインフォ―日本語版にあった情報です。
https://www.swissinfo.ch/jpn/にあった内容
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ウランとトリウム
アクセサリーに⾼放射性物質 スイスの保健局が回収呼びかけ
2018-05-08 14:00
スイスの企業が販売したマイナスイオンのアクセサリーが、放射性物質であるウランとトリウムを⾼レベルで含んでいることが分かった。
連邦内務省保健局(BAG/OFSP)は購⼊者に通知し、製品の使⽤中⽌と回収を呼びかけた。
連邦内務省保健局のダニエル・ダウワルダー報道官は7⽇、メディアの取材に応じ、スイスの⼀企業が中国から輸⼊した岩粉に2種類の⾃然放射性物質が⾼レベルで含まれていたと認めた。
企業名は明らかにしていない。
ドイツの税関職員が問題を発⾒し、連邦内務省保健局に届け出た。
保険局によると、問題の岩粉が使われたブレスレットやネックレス、イヤリングを⼀⽇数時間、数年間続けて着⽤した場合、⽪膚の放射線被ばく量は年間50ミリシーベルトを超え、⻑期的に⾒ると⽪膚がんのリスクが増加するという。
ただ、これまでアクセサリーを着⽤していた購⼊者に対し医療措置を取る必要はないとしている。
対象製品の多くは既に回収済み。回収された製品は、適切に処分される。
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マイナスイオンという用語がスイスでも使用されている?
上記サイトの英語版の一部を以下に転記する。
Negative-Ion(陰イオン)という正常な用語が用いられている。日本語に翻訳時に「陰イオン」ではなく、世俗的な「マイナスイオン」という用語を用いたのであろう。
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A Swiss company has sold esoteric “negative-ion” jewellery
containing high levels of uranium and thorium.
The Federal Office of Public Health has written to people who have bought the jewellery, telling them to send it to the health office.
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記:2021−9−23
スイス情報というサイトにあった情報の一部引用
https://www.swissinfo.ch/
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スイスで低線量被曝と小児ガンのリスク研究 大きな反響
宇宙線と大地放射線(自然放射線)はどこにでもある。
スイス国民が受ける環境放射能の平均値は、毎時約0.1マイクロシーベルト。
だが、子どもたちは大人より影響を受けやすい
福島第一原発事故以降、低線量被曝による小児ガンのリスクは欧州でも関心を呼んでいる。
こうした中、スイス・ベルン大学が2月末に発表した研究は、低線量でも線量の増加と小児ガンのリスクは正比例だとし、「低線量の環境放射線は、すべての小児ガン、中でも白血病と脳腫瘍にかかるリスクを高める可能性がある」と結論した。
毎時0.25マイクロシーベルト以下といった低線量被曝を扱った研究は今でも数少なく、同研究はスイスやドイツの主要新聞に大きく取り上げられ反響を呼んだ。
このコンテンツは 2015/04/23 11:002015/04/23 11:00 里信邦子
(略)
日本を含め世界では現在、低線量被曝と発がんや遺伝子の影響に関する見解において、年間100ミリシーベルト以下の被曝では、「線量の増加に正比例して発がんや遺伝子の影響が起きる確率が増える」という考え、つまり、ある線量以下なら影響が出ないという「しきい値」を取り払った、直線しきい値なし仮説(LNT仮説)に従っている。
よって、(ISPMが扱ったような)毎時0.25マイクロシーベルト(BEMSJ注:年間に換算すれば2.2ミリシーベルト)以下といったわずかな線量でも、理論的には線量の増加と小児ガンのリスクは正比例の関係になる
しかし、実際にはこうした低線量被曝のリスク研究はわずかしか存在せず、しかも科学的にまだ不十分な点が多い。これが、ISPMが今回の研究に取り組んだ一つの理由だ。
(略)
それに、スイスの自然放射線量とチェルノブイリ事故後に飛散したセシウム137の土壌濃度を記した放射線量マップを基に、200万人の子ども全員の住居地の線量を把握した。
このマップは、連邦工科大学チューリヒ校が行ったスイスにおける放射線量研究(Raybachレポート)で作成されたものだ。
Raybachレポートはスイス全土の宇宙線と大地放射線、及びチェルノブイリ事故後のセシウム137を4平方キロメートルごとに測定。まず、それぞれの放射線の測定マップを作成した。
スイス全土の宇宙線と自然放射線
(略)
そこで、宇宙線と大地放射線、セシウム137の毎時の線量が計算できる前出のRaybachレポートのマップを使用した。
さらに、これら三つの放射線の、生まれたときから調査時までに浴びた総線量も計算。
毎時の放射線量と総線量の両面からガンにかかるリスクを分析した。
その結果、数値としては「生まれたときから浴びた総線量において、総線量が1ミリシーベルト増えるごとに4%ガンにかかるリスクが増える」を結果として提示した。
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このスイス情報には、研究報告の詳細はない。
研究報告は以下の論文である。
掲載誌:Environmental Health Perspectives volume 123 number 6 June 2015 •
タイトル:Background Ionizing Radiation and the Risk of
Childhood Cancer: A Census-Based Nationwide Cohort
Study
電離放射線への背景曝露と小児がんのリスク:国勢調査を利用したスイス全土を対象としたコホート研究
研究者:Ben D. Spycher, Judith E.
Lupatsch, et al;
Background: Exposure to medium or high doses of ionizing radiation is a known
risk factor for cancer in children. The extent to which low-dose radiation from
natural sources contributes to the risk of childhood cancer remains unclear.
背景:中量または高用量の電離放射線への曝露は、小児癌の既知のリスク因子である。
自然界からの低線量放射線が小児がんのリスクにどの程度寄与しているかは不明のままである。
Objectives: In a nationwide census-based cohort study, we investigated whether
the incidence of childhood cancer was associated with background radiation from
terrestrial gamma and cosmic rays.
目的:全国的な国勢調査ベースのコホート研究として、小児がんの発生率が大地由来のガンマ線と宇宙線からのバックグラウンド放射線曝露に関連しているかどうかを調べた。
Methods: Children < 16 years of age in the Swiss National Censuses in 1990
and 2000 were included. The follow-up period lasted until 2008, and incident
cancer cases were identified from the Swiss Childhood Cancer Registry.
方法;1990年と2000年のスイス国勢調査には、16歳以下の子供が含まれていた。
追跡期間は2008年まで続けた。発症したがん症例はスイスの小児がん登録簿から抽出した。
A radiation model was used to predict dose rates from terrestrial and cosmic
radiation at locations of residence. Cox regression models were used to assess
associations between cancer risk and dose rates and cumulative dose since
birth.
居住地の大地由来の放射線と、宇宙放射線からの線量率を予測するために放射線モデルを使用した。
癌リスクと用量率と出生後の累積線量との関連を評価するために、Cox回帰モデルを使用した。
Results: Among 2,093,660 children included at census, 1,782 incident cases of
cancer were identified including 530 with leukemia, 328 with lymphoma, and 423
with a tumor of the central nervous system (CNS).
結果:国勢調査に含まれていた2,093,660人の小児のうち、白血病の530例、リンパ腫を有する328人、中枢神経系腫瘍(CNS)を有する423人を含む1,782例の癌の症例が同定された。
Hazard ratios for each millisievert increase in cumulative dose of external
radiation were 1.03 (95% CI: 1.01, 1.05) for any cancer, 1.04 (95% CI: 1.00,
1.08) for leukemia,1.01 (95% CI: 0.96, 1.05) for lymphoma, and 1.04 (95% CI:
1.00, 1.08) for CNS tumors
Adjustment for a range of potential confounders had little effect on the
results.
外部放射線曝露の累積線量のミリシーベルト増加ごとのハザード比は全癌に対して1.03(95%CI:1.01、 1.05)、白血病の場合は1.04 (95% CI: 1.00, 1.08) 、リンパ腫の場合は1.01 (95%
CI: 0.96, 1.05) および 中枢神経種の場合は1.04 (95% CI: 1.00, 1.08)であった。
潜在的な交絡因子群の調整では、結果にほとんど影響を与えなかった。
Conclusions: Our study suggests that background radiation may contribute to the
risk of cancer in children, including leukemia and CNS tumors.
結論:我々の研究は、バックグラウンド放射線曝露が白血病や中枢神経腫瘍を含む小児癌のリスクに寄与する可能性があることを示唆している。
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関心のある方は、原著全文を読んでください。