主にME学会医療電磁環境研究会に参加した時の報告書のページです。
1.日本ME学会 医療電磁環境研究会 平成15年 第2回研究会 参加報告
2. 日本ME学会 医療電磁環境研究会 平成15年 第4回 参加報告
3.日本ME学会 医療電磁環境研究会 平成16年 第2回研究会 に参加して
4.日本ME学会 医療電磁環境研究会 平成16年 第3回研究会 参加報告
5.日本ME学会 医療電磁環境研究会 平成16年 第4回研究会
6.日本ME学会 医療電磁環境研究会 平成16年 第5回研究会
7.日本生体医工学会 医療電磁環境研究会 平成17年 第1回研究会
8.日本生体医工学会 医療電磁環境研究会 平成17年 第2回研究会
9.医療電磁環境研究会 平成18年 第1回研究会
10.医療電磁環境研究会 平成18年 第2回研究会の内容
11.医療・福祉電磁環境研究会 平成19年 第3回研究会 参加の記
12.医療・福祉電磁環境研究会 平成20年 第4回研究会 参観の記
13.医療・福祉電磁環境研究会 平成21年 第2回研究会
14.医療電磁環境研究会 平成22年 第2回研究会
15.医療電磁環境研究会 平成22年 第3回研究会 聴講の記
16.医療電磁環境研究会 平成23年 第2回研究会 聴講の記
17.医療・福祉電磁環境研究会 平成23年 第3回研究会に参加の報告
18.医療電磁環境研究会 平成24年 第1回研究会の概要
19.医療電磁環境研究会 平成24年 第3回研究会
19A.医療電気環境研究会 平成25年 第1回研究会が開催
20.医療電磁環境研究会 平成25年 第4回研究会参加の記
21.医療電磁環境研究会 平成26年 第1回研究会の概要
22.医療電磁環境研究会 平成26年 第4回研究会の概要
23.医療電磁環境研究会 平成27年 第2回研究会の概要
24.医療電磁環境研究会 平成27年 第4回研究会 の概要
25.医療電磁環境研究会 平成28年 第1回研究会の概要
26.医療電磁環境研究会 平成28年 第2回研究会の概要
27.医療電磁環境研究会 平成28年 第4回研究会の概要
28.医療・福祉電磁環境研究会 平成29年 第1回研究会の概要
29.医療・福祉電磁環境研究会 平成29年 第4回研究会の概要
30.医療・福祉電磁環境研究会 平成30年 第2回研究会の概要
31.医療・福祉電磁環境研究会 平成30年 第4回研究会の概要
32.医療・福祉電磁環境研究会 令和1年 第2回研究会の概要
その他の、医療と電磁環境に関連する情報です。
** 病院外から到来する無線周波数ノイズ
作成: 2003−9−14
開催: 2003年9月13日
場所: 東京 フクダ電子本郷事業所5Fホール
参加者:研究会メンバーの他に、ペースメーカ友の会の関係者やペースメーカの装着者なども参加 合計80名程度
プログラム(敬称略)
1)携帯電話等からの無線通信機器からの影響 三井記念病院 加納隆
2)ワイヤレスカードシステムからの影響 NTTアドバンステクノロジ(株) 小野聡明
3)電子商品監視(EAS)機器からの影響 日本品質保証機構(JQA)安全・電磁センタ 加藤哲夫
4)ペースメーカ患者のための電磁防護服 東邦大学医学部附属大森病院 小山 信彌
5)ペースメーカ患者絵の影響とその対策 三井記念病院 加納隆
6)自由討議
講演の概要
詳しくは研究会の予稿集を参照してください。
以下は気のついた点と質疑応答のメモです。 (注: )は私のコメント
1)携帯電話等からの無線通信機器からの影響 三井記念病院 加納隆
・内容は過去の2回の携帯電話などと医療機器との電磁環境の試験報告書の概要の解説
・質疑応答
Q(フロア):干渉試験に使用した人体ファントムでは、ペースメーカなどが生理食塩水で覆われており、これらの生理食塩水は携帯電話などからの電波のシールドとして働いていないか?
A:使用したのは0.18%の食塩水であり、これは生理食塩水ではない、ファントムの導電率を調節する目的で使用している。人体ファントムの大きさを変えると電磁干渉の結果も変わるので、この人体ファントムが最悪であるかは定かではない。
A(フロアから、参加していたNTTドコモの垂澤):使用している人体ファントムでの試験は過大側にあることが確認されている。
2)ワイヤレスカードシステムからの影響 NTTアドバンステクノロジ(株) 小野聡明
・ワイヤレスカードシステムは、13.56MHzの磁界をアンテナから発信している。
・試験に際しては、人体ファントムを用い、0.18%の食塩水の中にペースメーカなどを入れた。(注: 13MHzでの導電率を考えたときに、0.18%の食塩水で良いのか?900MHzなどの実験条件と同じで良い?)
・詳細の調査結果は総務省のWEBに公開してある。
・この総務省の報告で、もっとも影響の大きかった(機器から8cmのところでペースメーカに影響を与えたシステムが最悪のもの)ものは、H15年3月末で廃止された。
・アンテナから連続波で発信するシステムでは影響がなく、断続的に発信しているシステムでの影響があった。(注: これは発信磁界のdB/dtが影響している?)
・最悪8cmで影響があったので、磁界強度が半分になるということから12cm以上の距離をとってもらうことにした。(BEMSJのコメント:この周波数の磁気をループアンテナで発信したときに、近傍界は距離の2乗に逆比例する?)
3)電子商品監視(EAS)機器からの影響 日本品質保証機構(JQA)安全・電磁センタ 加藤哲夫
・詳細は電波産業会の報告書(総務省委託研究)を参照。
・試験を行ったEAS機器は、どういう周波数を発信しているなどは公表できない形で試験を行い、報告書にまとめてある。EASをどのようにして破るかなどに関するWEBもあり、EASの情報を公開できない情勢にある。
・システムの一例として、ゲートから58kHzの磁界を間欠的に発信、物品に添付されたタグはこの磁界を受けて共振し、自己共振し、ある程度の時間継続する。ゲートからの発信を停止(間欠発信での停止状態)でもタグからの磁界の発信があれば、これを検出する。
・ゲートの中央部から水平に距離をとったとき、最悪の場合は2.75m以上は 離れないとペースメーカに影響を与えるケースがあった。この場合は、ゲートの外側では2.80m以上離れる必要があった。このEASはどういう周波数の電磁界を発信するタイプか? 公表できない。
・使用した人体ファントムのセンシングループ面積は、普通の人の体の2倍のループ面積を持っているので、実験結果は2倍過大側で試験を行っているといえる。(注: EASから発信している磁界などの分布が均一とみなせるのであれば2倍過大側かもしれないが、不均一電磁界であれば、これはどうなるか?)
:ゲートに対して、人体ファントムの向きを変える(ゲートの発信ループコイルとペースメーカを模した人体ファントムのセンシングループの面が平行になる条件)と、影響が大きくなる。(注; EASから低周波磁界が発信しているのであれば、発信ループと受信ループとが平行になった条件が厳しくなる、もしEASからの発信が8MHzといった電波帯域であれば、どうなる?)
4)ペースメーカ患者のための電磁防護服 東邦大学医学部附属大森病院 小山 信彌
・ペースメーカの患者10名の同意を得て、直接携帯電話を近づけて影響があるかを調べたが、影響はなかった。(BEMSJが後で質問したが、携帯電話からの電波発信状況を最大になるように・・・・・といった環境は整えず、単に参考データを取っただけとのこと)
・患者200名にアンケートをとったが、電磁波干渉に不安をもつ割合は83%、携帯電話の影響に不安:75%、電子レンジの電磁波に不安:17%、何か保護衣料が欲しい:66%であった。
・このアンケートから、グンゼの保護衣料開発に協力することにした。
グンゼは数年前に開発をしたが、使用中に電磁波防護効果が劣化するということで、販売を中止した。その後耐久性を改良したものを研究してきた。
ようやく完成した(2003年9月にグンゼから報道発表があった。販売価格は15000円、グンゼも会場におり、実物の防護下着を回覧した。)
・グンゼの保護衣料はマネキンに着せて、ペースメーカの影響度を測定した。
携帯電話の電波などに対しては80-90%カットできた。
EASからの磁界に関しては効果が得られなかった。
質疑応答
Q:携帯電話からの影響に関しては、これまでの報告書やガイドラインにあるように22cm以上離せば問題はないので、こうした情報の提供で不安感を払拭できないのか?
A:22cm以上云々の説明は医者として十分やっているつもり。それでも患者の不安は払拭できない、電車の中で多数の携帯電話を使用した場合の問題などが新聞などに報道されているので、不安は払拭できない。
Q(NTTドコモ):防護衣料の防護効果のある周波数範囲などを考慮しないと、そうした防護衣料の着用ですべての電磁波に対して大丈夫と思われると、大変なことになる。
A;当然のこととして、理解している。
5)ペースメーカ患者への影響とその対策 三井記念病院 加納隆
・患者が不安を感じている機器
コピー機、パソコン、TVのリモコン もリストに入っている。(BEMSJ注:多数の製品が画面に表示されたが、すべてはメモできず)
・携帯電話が多数一斉に使用される場合(電車事故発生時など)は、リスクが高くなる(多数の携帯電話の使用によって、位相差などを勘案したらどの程度のリスク増加かは別途検討する必要があるが、ここでは増加の傾向にあるかもしれない、という意味)
・ペースメーカ着用者のために
電波シールドは可能であることはよい。
しかし、磁界シールドが不可能なことは、問題である。
6)自由討議
・日本メドトロニクス 藤井?:市販されているすべての機器に対して製造しているペースメーカが大丈夫かという検証を行うことは、不可能。個別対応になっている。
・ペースメーカ友の会 副会長?:EAS機器からの影響に関しては、どういう電磁波が出ていて、どういう影響があるのか、機種によっては影響がほとんどない、といった明確な区別ができないことが問題である。友の会としてもEASに関しては注目している。着用者に対しては「EASの中央部を、立ち止まらずに、通れ」と指導している。
携帯電話からの影響に関しては、「この5年間のペースメーカでは問題がない」としてきている。
着用者にシールド衣料の着用や、ペースメーカの着用を示すバッチの着用などは一切勧めていない。
特例的にある工場で働く着用者に関しては、シールド衣料を、登録の上で、着用させている、一般の人には勧めていない。
以上
以下の研究会が開催された。
テーマ 「電磁波と生体」
●日時:平成16年1月24日(土)午後1時30分〜午後4時30分
●会場:フクダ電子本郷事業所5Fホール(東京・本郷)
プログラム
1.電磁波と健康‐WHOの動きから‐ 大久保千代次(国立保健医療科学院)
2.携帯電話の生体安全性
多氣昌生(東京都立大学大学院工学研究科
3.直流磁界による小動物心拍への影響 池田哲夫(名古屋工業大学名誉教授)
4.電磁界と生体-電波法の「電波防護基準」に関連して- 鈴木務(電気通信大学名誉教授)(日本工業大学名誉教授
以下は参加した筆者のメモから概要を紹介
1.電磁波と健康 大久保千代次
・WHOの国際EMFプロジェクトは10年計画であるが、さらに延びそうである。
・2004年には低周波電磁界に関する環境保健基準EHCが、2007年には高周波に関するEHCが出る予定。
・リスクコミュニケーションに関しては、一般の人に如何にして紹介すべきか、課題である。
・WTOの要請で、非関税障壁を防ぐために、各国で統一した電磁界暴露基準を推進する。
・疫学の研究成果は、人を対象とした研究ということで、Priorityが高い。必要条件であっても、十分条件ではない。
・再現性のある実験が行なわれて、Evidence Basedの知見となる。
・2001年にIARCは低周波電磁界の発がん性の評価を行い、2Bとした。
2003−4年にWHOは、癌以外の健康影響に関して、評価を行う。
・予防原則について、WHOとして予防原則のFlame-Workを構築し、電磁波の健康影響を初の適用ケースとするかも知れない。
・予防原則では、「検討した結果、何もしない」ことも選択肢の中に含めている。
質疑応答
Q:一般の人にわかり易く、旧ソ連の基準値とアメリカの基準値の違いを説明する方法は?
A:旧ソ連の基準は生理的な影響を考慮している。例えば、太陽からの光を浴びると暖かいと感じる、こうした感じることを旧ソ連の基準の論拠にしている。太陽光でも、限度を越すと「やけど」を起こす。欧米の基準はこうした障害の発生が論拠となっている。
Q:BBB脳関門に関する影響の研究で、成人を対象とした研究はあるのか?
A:全て、動物を対象とした実験である。
Q:携帯電話の普及の前を現在では、なにか疾病率に差異は出ているのか?
A:差異はない。
Q:日本で行なわれている携帯電話使用と脳腫瘍などの疫学研究は?
A:リスクを1.5倍程度とすれば、症例を500−700必要となる。現在研究中。
Q:旧ソ連の基準値と欧米の基準値は2桁も異なる。そうした厳しい曝露基準で産業界は屋っていけるのか?
A:第3世代の携帯電話では成立しない。
A(多氣):旧ソ連圏では規制は確かに厳しくしている。しかし、実効面では?
例えば、チェコで1990年頃にテレビ塔が建設された。曝露基準値を超えていたので、緩和する方向に動いた。基準は策定しても、測定方法もなく、測定器もない、政治的な規制値といえる。
Q:WHOから低周波電磁界のEHCは今年こそは刊行されるか?
A:出るだろう。
2.携帯電話の生体安全性 多氣昌生
・携帯電話の電磁界にしぼって話をする。
・BBB脳関門に関するフィンランドの研究があり、英国のマスコミで脚光
・スウェーデンのHardelの研究、携帯電話を使用した方の脳に脳腫瘍が多いという(リスクが2 倍)という研究がある。この研究では脳の左右を合算すればリスクはないとなっており、片方に脳腫瘍の発生を促進するとすれば、反対方向の側は脳腫瘍を抑制する効果があることになる。よって、この研究は疑問が残る。
質疑応答
Q:実験を行なう時の曝露装置、温度分布、対流などの制御にかんしては?
A:色々な実験を行なう時に、曝露装置の問題、曝露における温度勾配、対流の問題など色々な要素がある。2W/kgの熱の吸収があれば、温度は上昇する。細胞をシャーレに入れても、シャーレ内部の温度分布は一様か?温度測定のためにサーミスタを挿入すれば、そのリード線によって電界強度分布が変わる・・・・・人を対象とすれば血流の影響もある・・・・・と大変である。それだけに実験結果の評価も大変になる。
Q:旧ソ連や中国での研究は?
A:中国では色々な研究成果が発表されている。しかし、中国の場合は、影響が見られないというNegativeデータは報告として刊行されない、なぜならば電磁界は微弱でも影響があると決め付けているからである。Publication Biasである。厚生省は規制を優先、通信省は産業育成とその間の壁は大きい。
3.直流磁界による小動物心拍への影響 池田哲夫(名古屋工業大学名誉教授)
・金魚にDC磁界0.1Tを曝露すると心拍数は減少するが2時間程度で元にもどる。
・ドジョウにDC磁場1.5Tを曝露すると心拍数が減少する、ある時間で元に戻る。磁界が強いと戻る時間が長くなる。強度X影響を受ける時間に一定の関係がありそうである。
質疑応答
Q:強度X時間で一定の関係があるとすれば、0.01mTといった微弱でも時間が十分長くなれば影響が出ると言えるのか?
A.2450MHzのマイクロ波照射と白内障の研究ではある一定値以下では白内障は発生しないという研究がある。直流磁界の場合はまだわからないが、1T以下では影響が出ないかもしれない。閾値はあるかも知れない。
ただし、6TのDC磁界に(MRIに長時間)10時間、20時間曝露したドジョウは、曝露停止後は生きているが、翌日には全て死んでいる。これは心拍数が下がったり、血圧が下がったり、脳への血流が低下して、脳が酸欠状態になってしまうからではないかと思う。
4.電磁界と生体-電波法の「電波防護基準」に関連して-
鈴木務(電気通信大学名誉教授)(日本工業大学名誉教授
・詳細はレジメを参照。
・イラクで使用されたというE爆弾の概要がアメリカの雑誌に出ている。周波数は1−10GHz、爆弾の先端のアンテナからGW単位の電波を放射する。コンクリートも透過し、放送機器などの電子機器に障害を与えた、人に対してはOKだった。
・研究によれば、全身曝露の場合、100mW/cm2の電力で体温は37度から39度に2度上昇、
脳の場合は、135mW/cm2の電力で37度から8度も上昇する。
睾丸は熱に弱く、5mW/cm2の電力で、35.6度から37度に上昇する。
・光ケーブルを海底通信ケーブルに採用して敷設したら、なぜか断線事故が多発した。鮫がケーブルをかじった。鮫は電界を感じるセンサーを持ち、獲物を見つける。光ファイバーケーブルは減衰を補償するために短区間毎に中継増幅器を入れる、そのために必要は大きい電流をケーブルに流している、この電流による電界を鮫は感知し、獲物と間違えてケーブルをかじったと想定される。
・金魚に繰り返し周波数約10Hzで照射した。これで金魚は逆さになって寝てしまう。
実験を行なった人も立っていられないという影響を受けた。光でも電磁界でもこうししたシューマン共振周波数近傍では、影響が現れるのかも知れない。
質疑応答
Q:金魚が逆さになった実験は光の点滅か?電気的なパルスか?
A:光の点滅である。個々の金魚によって共振する周波数は異なり、数Hzの幅を持つ。
Q:電位治療器の効能をはっきりさせたいが、どのように評価すべきか?
A:「安心」すれば、「ストレス」が取れれば、それはそれでもよいのではないか。害が無ければ、それでもよいのかも知れない。
以上
2004年7月10日 東邦大学医学部大橋病院にて開催
以下の内容であった。 BEMSJ取ったメモから。
1.携帯電話院内使用の現状と解禁の条件 講演者:三井記念病院MEサービス部 加納隆
・1995年11月15日の朝日新聞で、携帯電話で医療機器の誤作動が報じられた。
・病院での携帯電話は使用禁止であるが、病院内での携帯電話解禁の動きがある。
・アメリカでの動向として、2003年11・12月に記事が掲載されているが、それによれば、2003年1月で、病院で携帯電話の使用を解禁していたのは13%であるが、2003年11月では39%に増加している。
・病院内の医師・スタッフ間の通信連絡のツールとして、患者のQOLとしてのメリットと、医療機器の誤動作というデメリットに対して、どちらに重きを置くかが判定基準となる。
・判定のためには、過去の報告書(H9年の不要協、H14年のARIB)を参照すること。
・これらの報告によれば、周波数が2000MHzのものに対して、900MHzのものは影響が大きい。
・病院内で実際の試験を行うとしても、携帯電話からの電波送信は最大になっているとは限らない、ということを念頭に置く必要がある。それでも、ある程度の判断は可能となる。また、どういう影響が医療機器に出るかがわかる。
・医療機器はJIST0601−1−2でイミュニティの規定がある。一般の医療機器のイミュニティは3V/m程度であり、携帯電話でPDCの0.8Wのものからの電界放射が3V/mになるのは、150cm離れた場所である。こうしたことから、JISに規定に合致しているといっても現場では十分とはいえない。
質疑応答
Q:XXX無線のものです。携帯電話と並んでアマチュア無線機器も医療機器に影響すると聞き、上司に報告します。医療機器の影響は発信する無線機の周波数や変調方式によって異なるのか?
A(フロアにいた野島氏):色々と考えられます。アマチュア無線の場合、連続波ではOKで、Push Talkで断続すると影響が出た場合もある。これまでの評価は「About」であると理解して欲しい。
A(フロア):不要協の評価試験などに関与したものです。病院での携帯電話解禁に当たっては、全面解禁は行なってはならない。特に生命維持装置などのあるICUには携帯電話は持ち込ませてはならない。
2。院内PHSによる影響調査の結果 講演者:東大病院 医療機器・材料管理部 新秀直
・東大病院の手術室に緊急連絡用にPHSの使用が可能か検討を行なった。
・影響があるかもしれないと思った体外式心臓ペースメーカは影響がなかった。
・超音波血流計に影響が現れた。1.5cmの距離で可逆的な影響があった。7.8%の機器に影響があった。
・50cm以上の距離をとれば、影響はなかった。
・そこで、安全率を2倍(論拠なし)として50cm×2=1mの距離を確保することで、PHS使用をOKとした。
・3年経過し、特に問題は出ていない。
3.医療現場におけるEMCソリューション 講演者:NTTアドバンステクノロジ(株) 小野聡明
・病院内に無線通信システムを導入する場合の手順や注意事項を紹介
・無線LANなどの採用で、意外な機器が問題になる場合がある。それは、病院内にある電子レンジである。
無線LANに影響する場合がある。
4.ISO TC215における病院内無線機器使用に関するテクニカルレポートについて 講演者:NTTドコモ ワイヤレス研究所 上林真司
・ISOのテクニカルレポートの紹介
・最近の医療機器が10V/mの電界に対してイミュニティがあるとしても、全てではない。
携帯電話などの無線機器の近傍の電界強度は10V/mを超える。
こうした状況において、いかにして使用するかのガイドを示すためのテクニカルレポートである。
・実際の試験方法はANSI C63.18を参照して、医療機器の試験を行う。
・PHSであっても最悪医療機器の上に置いたりするので、携帯電話などを医療機器に密着させた状態まで試験を行う必要がある。
・医療現場ではPHSも、携帯電話も無線機であるという認識はない。通常のアナログの有線電話と同じ感覚でいる。
作成: 2004−9−4
以下の研究会に参加した。 この研究会はオープンな研究会で、ペースメーカ友の会の事務局からも参加されていた。
日本ME学会 医療電磁環境研究会平成16年第3回研究会
主題:EAS・無線LAN・RFIDがペースメーカ・ICDへ及ぼす影響について 〜電波の医用機器等への影響に関する平成16年度調査研究報告〜
日時:平成16年9月4日(土)13:30〜16:30
会場:フクダ電子本郷事業所5Fホール(東京・本郷)
プログラム
1.電波の医用機器等への影響に関する調査研究の全体像 東京慈恵会医科大学 古幡 博
2. 電子商品監視(EAS)機器が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響 日本品質保証機構 加藤 哲夫
3. 無線LAN装置が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響 NTTアドバンステクノロジ 小野 聡明
4. RFID機器が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響 NTTアドバンステクノロジ 元満 民生(都合で小野聡明氏が代行)
各講演の内容は、総務省報告の概要で、特に報告書にはない裏話などの紹介はなかった。
興味を持った方は、講演のレジメを入手し、読んでください。
以下は講演後の質疑応答を中心として、筆者のメモをまとめたものです。
1.「電波の医用機器等への影響に関する調査研究の全体像」東京慈恵会医科大学 古幡博の講演から
・最後のまとめの中で、「医療関係としては電磁環境の整備が必要である。建物や窓での対策、携帯電話の通話を不可能にするジャミングなど」と述べている。
・質疑応答
Q(フロア); 医療機器のイミュニティとしては電界強度10V/mをクリアすれば、十分といえるのではないか?
A:10V/mの電界強度に対応できていれば、90%は大丈夫と思う。問題は一部の機器で10V/mのイミュニティを達成できないものがあり、これが問題となる。
A:医療現場で、医療機器への影響があるということから携帯電話が医療現場で使用できないのか決してほめられたことではない。携帯電話が病院内のコミュニケーション手段として使用できるようになって欲しい。
A(司会者:加納):そうなって欲しい。自由に携帯無線機器を使用したい。どうすればそうなるか、これから考えて行きたい。
Q(フロア):海外での状況は?
A:細かい調査は行っていないので不詳。一例として、アメリカのテキサス大学の場合は、CE(臨床工学士)が医療機器の購入に当たって、電磁環境のテストなどを行い、問題のない機器のみを購入するということをやっている。したがって、ある日本人が渡米中に怪我をした、下半身麻酔されて手術中に、携帯電話で日本と連絡を取っている、というケースもある。
Q(フロア):マナーについて論及されたが、医療現場独自のものは避けるべきで、無線機器全体に関するマナーとかマナー教育を考慮すべきである。
A:基本的にはそうであるが、看護婦が特定の患者の世話をしている最中に、もし携帯電話で他の患者から緊急として呼ばれた場合の対応など、医療現場の独自なものもある。
Q(フロア):すべての医療機器のイミュニティを等しく向上させるというのはなかなか困難であるが、「特定の機器、特定の範疇の機器を優先してイミュニティ向上を図れ」といわれれば、医療機器メーカとしては対応はやりやすくなる。
A:こうしたテーマもこの研究会で検討していくべきかもしれない。
2.「電子商品監視(EAS)機器が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響」日本品質保証機構 加藤哲夫の講演後の質疑応答から
Q(フロア):EASステッカーは貼ってあっても必ずしも見やすい場所に貼ってあるとは限らないのではないか?
A:EAS協議会では、見やすい位置に貼るなどの指導を行っているはずである。
Q:EASステッカーの添付の普及率は?
A:どなたかフロアでわかる方いませんか? (誰もいない)
A(フロア):以前に、EASステッカーの印刷枚数を聞いたことがあるが、数字は覚えていない。「EASステッカーは見にくいし、貼っていない」と改善を依頼したことがある。
A(古幡博):今年の春に開催されたある会議で、EAS協議会関係者から「数ヶ月以内に、100%貼り付ける」という話を聞いたことがある。
A:EASはこの3月から電気安全法の対象となった。全体としての機器安全性の評価の中に、EMC関連も含まれている。アメリカではFCCの規制を受けている。
3.「無線LAN装置が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響」NTTアドバンステクノロジ 小野聡明の後援後の質疑応答から
Q(フロア):無線LANの場合の出力は講演の中にもあったが、1MHzあたり10mWとなっている。実際に試験を行った無線LAN機器の無線電力はどの程度であったか?それらがわかれば他の試験(携帯電話の場合)と比較して、総合的な評価が可能になる。
A:どの無線LAN機器もこの無線電力に関して明らかにしていない。帯域は20MHz程度であり、実際の無線機器は10mWという規格の最大値に対して半分程度以下で動作している、とされる。今回は市販されている無線LANとして代表的なモデルでのテストであった。
Q(フロア):無線LANの発信側のアンテナが指向性を持っていればアンテナ利得はそれなりに大きくなり、実効的な無線電力は大きくなる。こうしたことも配慮して今回の試験は行われているのか?
A:指向性アンテナの例もこの試験の中に含まれている。したがって、とりあえず無線LANの場合は医療機器への影響はほとんどないといえる。むしろ、病院の中で電子レンジなどを動作させると、無線LANでの通信を行うことが出来なくなり、被害者の立場でもある。
4.「RFID機器が植込み型心臓ペースメーカ等へ及ぼす影響」NTTアドバンステクノロジ 元満民生(都合で小野聡明氏が代行)の講演後の質疑応答から
Q(フロア):EASの場合もそうであるが、試験した機器の具体的な無線出力、周波数などがまったく報告書に記載されていない。これでは、この報告書をよりどころにして、現場レベルで評価判定を行うことは出来ない。
A:現状ではそうした情報の開示は行われないというのが現状である。
以上
作成: 2005年2月
この研究会は松山市で開催されたので、参加はできなかった。 予稿集から、その内容を紹介する。
興味のある方は、予稿集を入手して、読んでください。
日本ME学会 医療電磁環境研究会 平成16年度第4回研究会(2004年11月 松山市で開催)
セッション「携帯電話院内使用の現状と今後の課題」で発表された内容
1)テーマ:携帯電話院内使用の条件に関する検討〜ガイドライン作成に向けて〜
研究者;加納 隆 三井記念病院MEサービス部
はじめに
携帯電話を使用することによるリスクは確かにゼロではないが、携帯電話を使用しないことによる患者や医療スタッフのデメリットの方が大きいのでないかと考え始めたのである。しかし、携帯電話院内使用を実施するにはいくつか条件がある。
本セッションの趣旨
本セッションでは、携帯電話院内使用を実施するに当たっての諸条件を検討すると同時に、国で出された指針からもう一歩進んだ形のガイドライン作成の可能性も是非検討したいと考えている。
参加した報告です。 作成:2005−3−20
テーマ:携帯電話の院内使用と安全管理
●日時:平成17年3月19日(土)13:30〜16:30
●会場:順天堂大学医学部8号館(東京・文京区)
プログラム:
1.携帯電話院内使用の条件と安全性 亀田総合病院 高倉照彦
2.携帯電話院内使用におけるチェックポイントと安全対策 三井記念病院 加納隆
3.EMC規格から見た医療機器のチェックポイント フクダ電子(株) 平野知
4.携帯電話機能抑止装置の機能と安全性 (株)マクロスジャパン 河本浩樹 東京慈恵会医科大学 古幡博
参加した筆者のメモから
1.携帯電話院内使用の条件と安全性 亀田総合病院 高倉照彦
・亀田総合病院は千葉県の突端にある病院である。
・1998年6月に、病院内PHS使用開始。使用端末は500台、中継器は20m間隔で設置することで、個々の中継器の無線出力を低く抑えた。
・PHS導入にあたり、医療機器への影響をテストした。
・2002年9月には携帯電話の使用を開始した。
・最近の情報として、ヘリカルCTで診断中に心臓ペースメーカ(メドトロニクス社製)の誤動作が報告された。これまでのCT診断では影響は報告されていなかった。
Q&A
Q:研究所の近傍にNTTのパラボラアンテナがあり、電界強度が1V/m程度の電磁環境であるが、亀田病院ではどうか?
A:目の前が海という自然環境の中なので、目立つような外来電磁波ノイズはなかった。
A(司会者):九州大学の場合は、近傍に福岡空港があり、空港レーダによる電磁ノイズとして、数十V/mを記録したことがある。
2.携帯電話院内使用におけるチェックポイントと安全対策 三井記念病院 加納隆
・三井記念病院は、過去の総務省の携帯電話と医療機器の影響の調査対象病院となっており、病院内の機器などに関しては、調べつくしているので、これまで「携帯電話の全面禁止」などは行なったことはない。
・医療機器で影響の受け易いものに、対外式ペースメーカがある。これは個別の対応が必須である。
対外式ペースメーカを入れるポーチとして、メッシュで中が見える形で、電磁波シールド材(銀メッキ)で作成した。携帯電話に電波(電磁波)の影響を防ぐことができた。体内埋め込み式心臓ペースメーカの場合は、ペースメーカ本体よりはリード線に携帯電話からの電波が干渉するが、対外式の場合は、外部のリード線への干渉は見られなかった。携帯電話に電波では影響を防止できたが、アマチュア無線の無線機(使用周波数が少し低い)による影響は防護できなかった。
3.EMC規格から見た医療機器のチェックポイント フクダ電子(株) 平野知
・医療施設における携帯電話解禁の動きがある。
1995年は「病院で携帯電話禁止」が話題であり、2004年には「院内での携帯電話 解禁」が報道され、この10年間に大きな動きがある。
・医療機器に対するEMC規制に関しては、厚生労働省からの通達で「JIS T601-1-2(2002年)の規格に適合せよ」とある。この内容は高周波電界に対するイミュニティの規制で、周波数:26MHz〜1GHz、電界強度:3V/m 変調:80%AM変調 である。
・IECの2001年版では、周波数範囲を2.5GHzまで拡大する。これにあわせた新JISの動きもあり、2005年秋には発行の予定。
・電界強度と変調を変えた実験を行なった。 3V/mではOKでも、20V/mにすれば影響を受ける。 80%AM変調では影響が出るが、50%Dutyのパルス変調では影響が出ない。 変調方式によって、医療機器の影響度が異なる。
Q&A
Q:プレゼンの中で、ある特定の周波数だけで影響を受けていた。特定の周波数に弱い・・・といったことがあるのか?
A:プレゼンで示した実験ではたまたま800MHz付近で影響が出た。機種によって大きく異なり、影響の現れる周波数は一定ではない、機器内部のリード線の長さ、デバイスの動作条件などが絡んでいると思われる。
4.携帯電話機能抑止装置の機能と安全性 (株)マクロスジャパン 河本浩樹 東京慈恵会医科大学 古幡博
・抑止装置はこれまで国内130施設に導入されている。 これらの装置の使用者は第3種特殊陸上無線通信士の資格が必要となる。
・医療用の抑止装置(テレボーズME)を開発した。
・旧来の抑止装置(無線出力:最大50mW)では医療機器への影響があった。
テレボーズMEは、発信方式などを工夫した(携帯電話ハンドセットの受信S/N比を劣化させる方式、詳細は社外秘?)。無線出力は最大50mWであるが、パワーフィルターを取り除き、100mWまで出力して、ペースメーカへの影響を調査したが、距離ゼロでも影響がなかった。
Q&A
Q:抑止装置からの電波発信は指向性を持つか?
A:無指向性である。
Q:価格などは
A:これまでのテレボーズは売り切りで、250万円程度であった。現在、総務省からの認可待ちで、レンタル(新しい携帯電話方式などに対応していくために、売り切りではなく、レンタルとして継続したサービスの提供も行なう計画)で、安い価格を設定する予定。
参加したBEMSjのメモです。 まとめ:2005-9-24
日本生体医工学会専門別研究「医療電磁環境研究会」平成17年第1回研究会
テーマ:携帯電話の院内使用のための手引書作成について
●日時 平成17年9月17日(土) 13:30~16:30
●会場 東邦大学大橋病院 教育棟講堂
プログラム
1)総務省調査ならびに指針について
東京慈恵会医科大学 古幡 博 三井記念病院MEサービス部 加納 隆
2)病院内での携帯電話の使用実施状況
2-1)島根大学医学部附属病院の場合 島根大学医学部附属病院医療情報部 花田英輔
2-2)NTT東日本関東病院の場合 NTT東日本関東病院看護部 山元友子
2-3)亀田総合病院の場合 亀田総合病院ME室 高倉照彦
3.携帯電話院内使用のアンケート結果と手引書(案) 三井記念病院MEサービス部 加納 隆
4.手引書作成についてのディスカッション
以下はこの研究会に参加(聴講)した私のメモです。
「開会の挨拶」(加納隆)から
・研究会で携帯電話の院内使用に関するアンケート調査を行なった。
その結果がまとまり、「携帯電話の院内使用に関する手引書が必要」という声が大きかったので、急遽この研究会を開催することにした。
「総務省調査ならびに指針について」三井記念病院MEサービス部 加納隆 から
・平成17年3月にもARIBから携帯電話と医療機器に関する報告書が出された(BEMSJコメント:8月に総務省から報道発表されたRFIDなどに関連する報告書のことと思われる)。
・過去の試験事例では、800MHzのPDC方式携帯電話で、人工呼吸器は修理が必要な状態にまで影響を受けた。距離は50cmで発生。但しこのモデルはメーカ側で改善対策を実施している。
・不要協の院内使用に関する指針は、指針だけを読んだ医療機関は、全面的に携帯電話の使用を禁止する方向を選択することになる。いかなる影響がどの程度出るのかを、少しでも実験に参加したりして知っている関係者がいる医療機関では、そうした動きは必ずしもとらない。
「病院内での携帯電話の使用実施状況 島根大学医学部附属病院の場合」 島根大学医学部附属病院医療情報部 花田英輔 から
・患者のQOLの観点から、携帯電話の院内使用を解禁している。九大医院で解禁し、結果は好評である。また次いで、島根大病院でも2004年1月携帯電話の院内使用を一部解禁した。
・院内でPHS電話による安全柵は、電話器の貸し出しを行なえば、病院としても新たな収入源となる。
・6人部屋の病室ではメールのみの解禁とした。病室に医療機器が入るとしても、それらの機器と50cmの距離は確保できると判断した。
「病院内での携帯電話の使用実施状況 NTT東日本関東病院の場合」 NTT東日本関東病院看護部 山元友子
・NTTという会社の病院ということから、従来は携帯電話の使用は廊下ではOKとしてきた。しかし、1991年に一旦全面禁止にした。
・その後、解禁に向けて動き出した。220台の医療機器への携帯電話による影響を調査した。携帯電話の調査では結果として、旧式の輸液ポンプに携帯電話を密着させたときに、動作の停止という影響が出た。この機器は新しい機器に更新した。テレメータにノイズが入ることがあったが、OKと判断した。PHSでは全ての機器に影響は出なかった。こうしたこと以外に問題はなかった。
・このことから、H9年7月から条件付で院内使用を解禁している。待合室でも隣の患者と22cmの距離は確保できるので、マナーモードでの使用をOKとした。入り口には「電源Off」の表示はしてある。
・H11年にPHSによる院内システムを構築、職員用であり、ナースコールとPHSは連動している。便利であり、QOLの改善に役立っている。
・但し、「院内では携帯電話は駄目なはずだ・・・・」という声はある。まだ社会としてコンセンサスは得られていないと言える。
「病院内での携帯電話の使用実施状況 亀田総合病院の場合」 亀田総合病院ME室 高倉照彦
・200台の医療機器を携帯電話の実機で試験を行なった。NTTの協力を得て、携帯電話からの電波を最大になる条件に設定した。
・WCDMA院内基地局を導入した。これは出力を10mWに制限している。そのために院内に多数の中継アンテナを設置している。このWCDMAによる電子カルテのサービスをおこなっている。
「携帯電話院内使用のアンケート結果と手引書(案)」 三井記念病院MEサービス部 加納 隆
・アンケート調査を行なった。結果は別紙。
・院内での携帯電話の使用に関する手引書の案を作成した。本日はこの件で議論を行なう。
・医療機器に対する影響の実験には、電話会社に依頼して、携帯電話の出力をモニタできる専用機を借りればよいのではないか。
(フロアのNTTドコモの関係者:そうした専用機はサービスエリア調査用に使用している。この専用機の使用に当たっては色々と複雑な事情もあるので、別途相談させてください。)
・先週の朝日新聞にも携帯電話の院内使用の記事が出ている。(BEMSJコメント:朝日ではなく、毎日新聞の記事を確認できた。)
「手引書作成についてのディスカッション」
・固定して使用する医療機器の場合は対応が可能であるが、移動用医用機器(心臓ペースメーカ)の着用者は、22cm・・・ということから影響を受けるのではないかと、不安感が先行している。
・医用機器に関するIEC規定の改定2版では「・・・cmまでの距離までは影響を受けない・・・」と表示せよという規定まである。
・PDCの0.8W出力がこれまでの経験から最も影響を受け易いが・・・・
・もしそうであれば「医療機器から2m離れる」ことと記載しなければならなくなるおそれもあり、現実的ではない。
・手引書の案はこれから研究会の幹事の間で、検討する。
以上
参加(聴講)したBEMSjのメモです。 まとめ:2005-12-4
医療電磁環境研究会の平成17年第2回研究会が開催された。
テーマ」電磁波による医療機器への影響測定について
●日 時:平成17年12月3日(土)13:30~17:00
●会 場:順天堂大学9号館2F8番教室(文京区本郷)
プログラム
1.病院内外の電磁環境測定
1-1)医療施設における電磁波環境の実測例 東急建設(株) 川瀬 隆治
1-2)病院内外に浮遊する電磁波の測定手段と実例 日本板硝子環境アメニティ(株) 星野康
2.無線LANアクセスポイントからの電磁界測定 アイ・ビー・エス・ジャパン(株) 橋本孝雄
3.医療施設内における電磁干渉によるトラブル事例 日本光電工業(株) 二神 成一
4.EMC規格Ed.2:推奨分離距離の規格要求と解説
オリンパス・メディカルシステムズ(株) 谷川 廣治
5.総合討論
以下はこの研究会に参加したBEMSJのメモから。 関心のある方は研究会のレジメを入手し、読んでください。
*医療施設における電磁波環境の実測例 東急建設(株) 川瀬 隆治
東急の電気鉄道由来の電磁環境を研究していう部門がある。そうした中で、幅広く電磁環境も研究している。
ビルの屋上で測定した場合、強い外部の電磁環境測定結果の例として、120dBμV(1V/m)を観測した。これはテレビ放送の電波で205MHzであった。
病院内で、到来する電磁環境の調査を行なった。携帯電話の電波(925MHz)で最大111dBμVを観察した。
(フロアにいたNTTドコモの関係者の発言:この925MHzは周波数としては、携帯電話の基地局のアンテナからの発信周波数ではなく、ハンドセットからの発振周波数である。したがって、病院内で観察されたピークは、近隣で誰かが携帯電話を使用したことによるものと推定される。)
*病院内外に浮遊する電磁波の測定手段と実例 日本板硝子環境アメニティ(株) 星野 康
会社はもともとガラス屋で、騒音防止などの観点から環境事業に取り組み、電磁波もその一環として活動を行なっている。
測定に関しては、東急建設の調査事例に類似している。
建物の鉄筋がかなり強い磁気(地磁気が0.5ガウスであるに対して、2.5ガウス程度)を帯びており、設置したCRTモニタに大きな影響を与えた事例がある。
*無線LANアクセスポイントからの電磁界測定 アイ・ビー・エス・ジャパン(株) 橋本 孝雄
海外のソフトを輸入販売している。
パソコンと無線LANカードなどを準備して、無線LANを構築してあるビル内で、各所の電波状況を調査する。その結果を解析し、表示するソフトである。こうした調査で無線LANの電波の状況を把握できる。また、シミュレーション機能もあり、どこにアクセスポイントを置いたら、どの様な電波伝搬状態になるかを検討することが可能。このシミュレーション機能には壁による遮蔽も盛り込んである。こうした機能を利用すれば、院内の無線LANの電波の状態を可視化できるし、必要に応じて、そうした電波が到来しては困る医療機器のある場所の隔離なども検討することが可能。
*医療施設内における電磁干渉によるトラブル事例 日本光電工業(株) 二神 成一
従来の脳波測定は周囲の電磁環境に影響されないように、コントロールされた・シールドされた部屋で行っていた。
しかし、昨今の脳死判定において、最大感度で脳波測定を行うことになり、一般の環境下で脳波測定を行うことになった。脳波計や患者の頭部の周囲の環境磁界強度を0.1μT以下にすれば、周囲の磁界ノイズの影響を避けて、脳波判定は可能になる。このために、開口面積の小さい脳波パッドを作った。
ICU内にあるベッドの周囲の磁界を測定した。0.1μTから大きいところでは1.6μTであった。温熱パッドは大電流を流しているので、距離ゼロで測定を行えば、10-40μTの磁界となる。蛍光灯照明でインバータ方式のものは、磁界のノイズ源になる場合がある。
*EMC規格Ed.2:推奨分離距離の規格要求と解説
オリンパス・メディカルシステムズ(株) 谷川 廣治
医療機器の新要求として、携帯電話の電波の影響を受けない距離を、各医療機器は提示しなければならなくなった。基本的にイミュニティの限度値(メーカによってはイミュニティの要求規格値より大きい値でテストしている場合はその試験値)と、携帯電話ハンドセットからの遠方界で計算した電界強度値が同じになる距離(機器によってことなる係数も考慮)を計算で算出する。
*総合討論
携帯電話などの病院内使用に関して、不要協のガイドラインが発行されてから年数が経過している。患者のQOLなどから、病院としては使用の制限が必要なところはきちんと制限し、その上で、何らかの制限を設けて、院内での携帯電話の利用を図る必要がある。当医療電磁環境研究会として、そうした院内使用に関する「手引書」の作成を行っている。ドラフトを提示するので、意見を聞きたい。
(BEMSJの感想:この様にして、病院内での携帯電話は、これまでの全面禁止から、条件付で解禁という方向に進んでいくと思われる。)
以上
2006年7月22日 東京・フクダ電子本郷事業所会議室にて開催
以下はその参加のメモ
1.花田英輔「医療電磁環境問題の広がり」
・今までは携帯電話などの医療機器への影響ということで、どちらかといえば放射電磁界に対する検討を中心に行ってきたが、これからは、幅を広げて、供給電源に関連する問題(瞬間停電など)、接地(アース)に関連、サージ(雷や静電気)に関すること、静磁場の影響を考慮していく必要がある。
2.廣瀬稔「X線によるペースメーカへの影響」
・2006年5月13日の朝日新聞にこの研究に関する記事が掲載された。掲載後1週間は多くの問い合わせを受けた。
この研究の実情の紹介があった。詳しくは添付のレジメを参照。
・X線撮影程度の線量でも、心臓ペースメーカは影響を受ける。受ける場所はペースメーカ本体のCMOS回路の部分に照射した場合である。
CMOSがX線によって光電効果を起こすものと見られる。
3.高野香子「電圧ディップによる医療機器への影響」
・電源瞬間停電試験による影響を調査した。
4.加納隆「携帯電話の院内使用に関する手引書」
・2006年7月にこの手引書が完成した。手引書本文は医療電磁環境研究会のWEBに公開してある。
関連するQ&Aに関しては公開していない。印刷した手引書にはQ&Aも含めてあるので、ぜひ購入して利用して欲しい。
・手引書では、携帯電話の院内使用に関して、使用を禁止するエリアと、条件付で使用を許可するエリアを区別することにある。
一律全面禁止ではない。集中治療室のように絶対的に禁止しなければならない場所もある。
以下 関心のある方は、研究会のレジメを入手して読んでください。
作成:2006−12−20
2006年11月に開催された医療電磁環境研究会の内容です。
私は都合で参加できませんでした。 以下はレジメからの概要です。
タイトル:携帯電話の院内使用に関する手引書発行の経緯と反響
研究者:花田 英輔
携帯電話の病院内の使用禁止を緩和する手引書の発行意図とその反響などをまとめたものです。
タイトル:携帯電話電波保護ポーチ
研究者 伊藤 充幸ら
現在、病院で携帯電話の「使用解禁」の動きが広まっています。
ロビーや医療機器がない個室などに限った部分解禁が大半ですが、全面禁止の病院でも、今後、解禁を検討している病院が多いとされます。
そうなりますと、医療機器の誤作動等を引き起こす可能性も高くなってくると思われます。
弊社では、トータルインテリア企業として事業の柱を「生活空間環境整備」と位置け、医療空間には主としてカーテンを納めさせていただいております。
加えて空間環境整備事業の一環として、病院内の電磁環境を整備するお手伝いができないかということで、病院様からのニーズにお応えするかたちで、電磁波シールド繊維を使用しました携帯電話電波保護ポーチを製作いたしました。
タイトル:病院内における携帯電話切り忘れ防止装置の運用開始について
研究者:河本浩樹ら
昨秋、ようやく総務省(元郵政省)より実験局として病院内での設置運用を認可されたテレ・ポーズME(エムイー)携帯電話切り忘れ防止装置を紹介する。
当該装置は、携帯電話基地局が発する電波と同様の周波数を利用して、携帯電話を根本的に通信ができないように「圏外」にすることで携帯電話が発する電磁波の発生を未然に防止することを目的とした携帯電話に特化した安全対策機器である。
現在のところ、有用である機器はテレ・ポーズMEだけである。
病院内の一部のエリアにおいて携帯電話を解禁した病院では、ICU、CCU、新生児室などの医用電子機器のある部屋への入室時には必ず電源を切るように周知しているが、現実には電源を切り忘れた携帯電話が持ち込まれているとの報告がある。そこで、実際に導入された事例を含めてここに紹介する。
タイトル:携帯マナーステーション
研究者: 高橋壽男ら
病院内での携帯電話の使用については、医療機器への電波の影響を考慮して不要協のガイドラインに従い、病院側が認めた区域以外では持ち込み禁止、電源を切るなど基本的に使用が禁止されている。
しかし、携帯電話の普及につれて、病院の入院患者、見舞い客等来訪者の殆んどが携帯電話を保有するようになってきており、病院内で携帯電話が使用できないことは不便だという声が聞かれるようになってきた。
このため、病院の中でも医療機器に影響ないよう電波遮蔽した通話用ボックスを用意し、病院外に設置した外部アンテナを通じて通話をすることができる携帯電話通話ボックス(以下、商品名「携帯マナーステーション」という)を作成した。
これにより、電波の影響を軽減させるとともに、音声の遮断も可能となり携帯電話利用マナー向上にも効果があるツールを提供することが可能となった。
タイトル:EMC管理者の配置について
研究者:加納 隆
現在、医療現場で使用される電子機器の数は日々増え続けているといっても過言ではない。
これらには、直接患者の治療や検査を行ういわゆる医療機器の他、コンピュータ及びその周辺機器、携帯電話や無線LANをはじめとする無線通信機器、テレビジョン、電子レンジ、電気毛布、冷蔵庫といった一般の家電製品など、非医療機器も含まれ、医療機器と一緒に患者環境内で使用されることも多い。
その結果、病院内で使用されるこういった機器同士が相互に電磁波障害を受けたり与えたりというケースがますます多くなってきている。
関心のある方は、詳細に関しては研究会のレジメを入手して読んでください。
作成:2007−11−24
●日 時: 平成19年11月17日(土)14:00〜17:00
●会 場: 東邦大学医療センタ大橋病院 教育棟講堂
●セッションタイトル:「携帯電話及びRF-ID機器からの電波による心臓ペースメーカ干渉」
携帯電話及びRF-ID機器からの電波による心臓ペースメーカ干渉について関連分野の専門家が最新の研究調査動向を紹介する
●プログラム:
1 「心臓ペースメーカの電磁干渉評価法と対策の研究動向」
豊島 健(日本メドトロニック(株)カーディアックリズムディジーズマネージメントテクニカルフェロー)
2.「携帯電話/基地局電波による心臓ペースメーカ干渉調査」
垂澤 芳明((株)NTTドコモ総合研究所)
3.「RF-ID機器からの電波による医療機器(心臓ペースメーカ他)への影響についての実験評価」
樋口 衛(八木アンテナ(株)RF-ID事業化推進プロジェクト)
4.「電車/エレベータ内における携帯電話電波による心臓ペースメーカ電磁干渉の推定」
野島 俊雄(北海道大学 大学院情報科学研究科)
●後 援: 東京都臨床工学技士会
以下は聴講したBEMSJのメモから。
関心のある方は、詳細はこの研究会のレジメ集を入手して読んでください。
*心臓ペースメーカの電磁干渉評価法と対策の研究動向 豊島健
・概要の説明
・ペースメーカの電磁耐性は、外部の電磁界強度では規制されていない。
外部磁界の磁界源の大きさによって、影響度がことなるので、単純に磁界強度では規制できない。
ペースメーカのカテーテルによるループ面積573cm2の時に、50Hz磁界の場合外部の磁界強度0.2ガウスでペースメーカに与えるノイズは1mVp-pとなる。こうした計算で外部の磁界の影響度は計算したことはある。
*携帯電話/基地局電波による心臓ペースメーカ干渉調査 垂澤芳明
・携帯電話から発信される電波の特製に関して、実際の波形なども含めて解説を行った。
その一部はレジメに残っている。細かい電波の波形の例などの紹介があったが、レジメには全ては掲載されていない。
*RF-ID機器からの電波による医療機器(心臓ペースメーカ他)への影響についての実験評価 樋口衛
・実験結果や数値解析による電波の強さの推定の研究状況の紹介
*電車/エレベータ内における携帯電話電波による心臓ペースメーカ電磁干渉の推定 野島俊雄
・東北大学の本堂助手が電車の中で携帯電話の電波の充満や共振云々を説いている。
・閉空間で、完全反射もしくはそれに近い空間で、人などの電波の吸収体が皆無の条件で、電波を発信すれば本堂の言うような状況は起りえる。
人がいれば、人体が電波エネルギを吸収するので、本堂のいうような状況は実際の人が存在する空間では起こり得ない。
・2002年7月30日の電波新聞にNTTOBの談が掲載されている、「通勤電車に充満するはずはない」と。
・エレベータ内で電波が充満・共振するかの研究を行った。
エレベータ内に人がいない条件で、周波数814MHzで電力1Wの電波を発信させれば、エレベータ内は150dBμV/m(30V/m)といった極めて強い電界強度のホットスポットが発生する。しかし、一人でも人がいれば、そうしたホットスポットの発生はない。
記:2009−1−27
テーマ「最新の通信技術と電磁環境」が開催された。
● 日時:平成21年1月17日(土)14:00〜16:30
●会場:竹中工務店東陽町インテスホール
演題
1)無線ボディエリアネットワークにおける超広帯域無線システムの利用 滝沢賢一 (独)情報通信研究機構(NICT)新世代ワイヤレス研究センタ)
2)到来電波を用いた医療用電波シールド施設の電磁シールド性能測定方法の検討 堀之内淳(日本建築学会 電磁環境小委員会)
3.気のついた点
1)無線ボディエリアネットワークにおける超広帯域無線システムの利用
・超広帯域無線通信システムの利用例
日立 Wooステーションの画像伝送に利用
NEC,レノボなどのノートPCにも利用
Ecma−368(2005)としてワイヤレスUSB・高速画像通信に関する規定 がある。
・国内では2006年8月 利用が解禁された。使用周波数は3.4GHz−4.8GHz 及び7.25GHz−10.25GHzである。
無線出力は、-41.3dBm/MHzで、周波数帯域は450MHz以上と帯域が広いが、ERPとしては1mW程度で、20mW以下の低電力機器とみなせる。
2)到来電波を用いた医療用電波シールド施設の電磁シールド性能測定方法の検討
・シールド施設の性能評価の検討であるが、一般環境における放送電波の強度を知る上には参考になる。
関心のある方は、この研究会の予稿集を入手して、読んでください。
記;2009−11−20
以下の内容の研究会が行われた。
○テーマ:「医療機器の正常動作環境としての接地の役割と保守管理」
副題:電波障害対策に不可欠な病院接地設備の実態と、保守点検、監視方法について
○日時:平成21年度8月22日(土)13:00〜17:00
○会場:東邦大学医療センタ大橋病院(教育講義棟)
概要
1)医療機器のための接地の役割 加納 隆 (埼玉医科大学保健医療学部 )
医療機器のための接地(アース)の役割は大きく2 つに分かれる。
1つは医療機器等に誘導される商用交流の漏れ電流を安全に大地に流す電気安全的な役割であり、もう1つは医療機器等に誘導される不用な電位を大地と同電位に下げて、生体信号等に混入する雑音を抑制する電磁障害対策的な役割である。
いずれの場合も、品質の保証された接地設備が必要であり、病院電気設備の安全基準(JIST1022)で規定されている。
このように、病院内の電気設備に関しては、JISでその安全基準も示されているが、医療機器は在宅で使用されることもある。
今回の発表では在宅における問題点も併せて指摘した。
クラスU機器は、追加保護手段として補強絶縁を施すことにより電気的安全性が確保されている。したがって、保護接地設備が必要ないので、在宅用医療機器には適している。
しかし、筐体が接地されないので、電磁障害的には若干問題があるのではないかと考えている。
実際、保護接地されているクラスT機器と比較すると機器から放射される電界は格段に大きくなっていることが分かる。
病院における電源の3P(アース端子付)化は昨今の20-30年間の動きであり、それより古い病院(1982年より古い)では、まだ2P(アース端子なし)が多い。
クラス2機器の近くでは、例として、距離10cmで交流電界強度が150V/mもしくは200V/mもある。
2)測定方法の検討接地の品質不良がもたらす医療機器使用時のリスクと接地の品質点検方法の検討 花田 英輔 (島根大学医学部附属病院)
今回の実験により接地が不良な電気製品により人体にショックをもたらす可能性があることが確認された。
接地状態の悪化と放射電磁界の強さが比例の関係にあることが示されたことから、簡易な電界強度測定器により接地の良悪を判断可能と考えられる。
様々な医療機器の中で、精密な測定や精密な動作を要求されるものは数多い。
これらの動作環境として、供給電源と共によりよい接地環境を提供することが、今後の高度医療を安心安全に遂行するために必須になると考える。
接地は数十年前から医療の安全に関わることとして、その重要性が指摘されているが、近年は手術室などを除き重要視されない傾向がある。病院設置はJIS にも定められていることから、改めて正しい接地による医療の安全性向上を望む。
3)医療機器EMC規制の最新動向とその取り組み 橘 康晴(テルモ株式会社)
今後、医療機器周辺における電磁環境は多様化し、また対応すべき規格はより多く、より厳しくなると思われる。
医療機器の開発に携わる担当者は、これらの情報を早く正しく理解し、安全で安心な商品開発をし続ける必要がある。
4)接地接続点検のための簡易測定技術の開発及び試作と性能検証 岩下 誠 (オフィスG)
医療機器メーカの立場からは、医療機器(医用電気機器)は、その使用中には接地接続があることを前提に安全性と有効性を保証しているのであり、安全基準に適合しないものは製造も販売もできない。
一方、JIS規格の「病院電気設備の安全基準」では、全ての医用室に保護接地設備を設けることとしており、医療機器使用環境では3P 電源コンセントを十分な口数設備すべきである。
にもかかわらず、そうではないことも事実である。
さらに、接地設備の定期点検も十分には行われていないと思われる。
3P–2P変換アダプタの誤使用などは、十分な3P電源コンセントが設備されていないことも要因のひとつとなっている。
本研究における成果は、医療機器を診断、治療に使用する上で、特に、医療機器使用中不可欠といえる接地接続のエビデンスを提供する手段として、有効であった。
5)医療機器の安全管理を目的とした電磁環境調査と医療機器EMC性能検証 黒澤 秀郎(東京大学医学部附属病院)
電界強度測定器EC-2000 を試用する機会が得られ為、小児集中治療室とMEセンターで、放射電磁界について調査を行った。
また、電気設備についても調査を行った。
調査した中でいくつかの機器から放射電磁波が確認された。
それらは接地線を接続することで放射電磁波をシールドし、等電位化させることができた。
特に、静電シールドを採用している機器については正しい接地線接続が電波障害対策の為に重要である事もわかった。
電界強度測定器 EC-2000 は正しい接地線接続や等電位化が簡便に確認でき、安全な電磁波環境を整えるのに非常に役立てる事が出来た。
関心のある方は、レジメの全文を入手して、読んでください。
記:2010−12−4
以下の研究会が開催された。
BEMSJは参加しなかったが、以下のようなことが報告された。
テーマ:医療機関における無線利用
日時:7月24日(土)13:00〜18:30
場所:機械振興会館
1.無線通信を利用した生体モニタの歴史と現状 0村井 義浩 (日本光電株式会社技術推進センタ)
・医用テレメータの空中線電力は1mWもしくは10mWである。
2.医療現場への無線LAN導入に向けた電磁界シミュレーション 花田英輔(島根大学医学部附属病院
医療情報部)ら
・実験によれば、厚さ12cmのプレスコンクリートは1・5GHzでは2dBの遮蔽能力。
厚さ0.5mmの鉄板2枚で圧縮紙を挟んだパーテーションは39dBの遮蔽能力を持つ。
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
記:2010−12−4
以下の研究会が開催された。
日時:平成22年12月4日(土)
会場:竹中工務店インテスホール
テーマ:病院内における無線通信導入の手順
内容: 1.無線LAN導入事例の紹介(14:00〜14:50)
・はじめに
病院に無線LANの導入が始まっている。この導入プロセスに関する規定はまだない。
事例などを紹介する。
1)医療機器の保守管理における院内位置情報検出システムの展望と問題点 東京大学医学部附属病院 新
秀直
・医療機器を適切に保守管理するために、医療機器に無線タグを取り付けた場合の研究プロジェクトの報告である。
・病院内に既設の無線LANを利用して、院内のどこに医療機器があるかを確認できた。
・院内の輸液ポンプだけでも700台を超えるので、費用として1000万円を超えるので、実用化には至っていない。
2)島根大学医学部附属病院における無線LANの運用と今後の予定 島根大学医学部附属病院 花田 英輔
・実例の紹介
2.三次元電磁界伝播シミュレーション(15:05〜15:55)
3) 医療現場の無線LAN構築における3次元電波伝搬シミュレーション 京セラコミュニケーションシステム株式会社 日比
学
・レイトレース法による院内無線LAN電波強度の推定をシミュレーションで行った事例の紹介。
4) MRI室用シールドサッシに関する電磁環境シミュレーション 大分大学工学部電気電子工学科 工藤 孝人
・MRI室の150MHz帯電波遮蔽性能のシミュレーションの実例紹介。
3.病院への無線LAN導入手順について(討論、16:10〜17:00)
5) 医療現場への無線LAN導入手順私案 島根大学医学部附属病院 花田 英輔
・無線LAN導入の手順書を作っていきたい。
記:2011−9−8
以下の研究会が開催された。
日時:平成23年9月3(土)
会場:東京大学医学部付属病院 中央診療棟2 7F小会議室
テーマ:医療を取り巻く電磁環境
1) Edition 4 of IEC 60601-1-2 Medical
electrical equipment- Electromagnetic disturbance
Video letterの上映
審議中の改訂案の紹介
2)携帯電話抑止装置の医療器、無線Lanへの影響 北里大学大学院 医療系研究科 石田 開
・一般に売られている抑止装置の発信電力値などは不明
・実測を行った、その結果を紹介
3) 一般電子機器と医療機器混在における接地漏れ電流増加とその適切な対策とは
国立国際医療研究センタ 医療安全推進部 目黒 勉
・医療機器と情報処理機器が手術室に混在すると、より大きな漏洩電流が流れる。
・ミクロショックが実際に発生したという実例はないのではないか。
4) ICタグを利用したリアルタイムロケーションシステム
三菱電線工業(株) 辻 貢司
・システムと関連機器の紹介
5)「医療現場への無線LAN導入上の注意点」作成案について(討論)
島根大学医学部附属病院 花田 英輔
・無線LAN導入の手順書を作っていきたい。
詳細に関して、関心のある方はレジメなどを入手して読んでください。
記:2012−1−29
以下の研究会に参加しました。
日 時: 平成24年1月28日(土)
場 所: (株)セントラルユニ本社 大会議室(東京都千代田区西神田2丁目)
発表T)計画停電における部門対応 〜薬剤部内での計画停電対応の経験〜
松川智彦、花田彩(株式会社セントラルユニ CPSプロジェクト)
・内容に関しては特記事項なし
発表2)電気マッサージ器による植込み型心臓ペースメーカへの影響
吉田冴子、藤原康作、廣瀬稔(北里大学医療衛生学部臨床工学専攻)
・この発表の結語は
「家庭用マッサージ器の作動方式によってはペースメーカに影響があることが確認できた」とある。
これは重大なことである。
以下に概要を転記する。
*****************************
2.目的
マッサージ器がペースメーカに与える影響について検討することを目的とした。
3.方法
3.1 磁界強度測定
ループアンテナを使用し、マッサージ器から発生する磁界を測定した。
マッサージ器はソレノイドコイルを利用したもの(タイプA)とモータを利用したもの(タイプB)を使用した。
測定位置はマッサージ器内の電磁波発生源を中心に、上下、左右それぞれ8 cm ずつを2 cm 間隔で、マッサージ器の前1 cm 平面と、8.5 cm で測定した。
ループアンテナの起電力は電磁波モニタ計(HI-3604、HI-3603:アステック株式会社)で校正を行った。
4.結果
4.1 磁界強度測定
1)タイプA
タイプA ではマッサージ器の前1 cm平面での磁界強度は、最大で約200(A/m)であった。
8.5 cm 平面では、最大で約20(A/m)であった。
また、電磁波発生源に近いほど磁界強度は大きく、電磁波発生源から離れると磁界強度は小さくなった。
BEMSJ注:200A/mの磁界強度は約200μT(2ガウス)となり、非常に強い局所磁界曝露となる。
2)タイプB
タイプB ではマッサージ器の前1 cm平面での磁界強度は、最大で約0.2(A/m)であった。
8.5 cm 平面は、磁界強度が小さくなり測定できなかった。
4.2 電磁干渉実験
1)タイプA
タイプA では、抑制試験で28 cm の距離までペーシングパルスの不必要な抑制が見られた。
また非同期試験では12 cm の距離まで、擬似R波があるにもかかわらず不必要なペーシングパルスの発生が見られた。
このことから、最大干渉距離は28 cm となった。
2)タイプB
タイプB では抑制試験、非同期試験ともに電磁干渉は起こらなかった。
5.考察
タイプA は、ソレノイドコイルを使用して作動しているため、動作時に変動磁界を発生させ、ペースメーカに電磁干渉を及ぼした。
ペースメーカ植込み患者がマッサージ器を使用すると使用中長期にわたって影響が出ることが考えられ、このことは臨床的に問題があるといえる。
また、実際に使用する際、最大干渉距離よりマッサージ器を遠ざけて使用することは難しい。
このため、ペースメーカ植込み患者に対して、タイプA を使用する際の注意喚起が必要であると考える。
特に、添付文書や取扱説明書にペースメーカ植込み患者への使用は禁止事項として記載する必要がある。
******************************
発表3)院内無線LAN構築時の侵入波計測
花田英輔(島根大学医学部附属病院 医療情報部)
・内容に関しては特記事項なし。
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
記;2012−12−20
● 日 時:8月4日(土)13:30〜17:00
● 場 所:国立国際医療研究センタ 研究所会議室AB
BEMSJは出席できなかったが、以下のような講演が行われた。
1)医療への無線LAN 導入の手引き発行について
花田 英輔 島根大学医学部附属病院 医療情報部
無線LANを有効に活用するためには、費用対効果や医療安全といった面での目的設定と共に、電磁的安全性の確保や情報保護策の策定が重要である。
また情報の電子化との並行が必須である。医療現場ではメンテナンスの困難さにも注意すべきである
無線通信の安全かつ注意深い導入と正しい利用は医療の効率と安全を高める。
そのためにも、我々がまとめた「医療への無線LAN 導入の手引き」が役立つことを望む。
2)ZigBee とその用法について
井上慶輔 アドソル日進株式会社 ユビキタス・ソリューション事業部
ワイヤレス通信規格として策定された通信規格がZigBeeである。
ZigBee は近距離無線通信規格である。
3)学内無線LAN を利用した病棟透析装置の遠隔管理の試み
川邉 学、加納 隆 埼玉医科大学保健医療学部 医用生体工学科
医療安全強化を目的として、遠隔で持続的血液浄化装置の稼働状況がモニタできるシステムを構築中である。
システム内のデータ通信は、無線LAN を使用しているため、特に大きな工事を必要とせずに、システムの構築が可能である。
使用した市販されている無線LANアクセスポイントの最大出力が電波法により200mW程度に抑えられていることで、医療機器への影響はほとんどないとされている。
4)カテーテルアブレーションにおけるノイズ検証
倉持龍彦、田切恭平、中原毅、高野真史、久松学、小橋和彦、上野信一 *小松雄樹、谷口宏史、家坂義人
JA 茨城県厚生連 総合病院 土浦協同病院 臨床工学部 *同 循環器内科
土浦協同病院での不整脈に対するカテーテルアブレーション術中に図に示すような心内心電図上のハムノイズを認めた。
電圧変動がありTHD が高く、その電源系統全体のME 機器にノイズ混入を引き起こす原因の一つであることが推察された。
ポリグラフの絶縁トランスが距離1[cm]で5260[mG]を示し、カテ室平均静磁界の約2500 倍であった。
よって今回のノイズの原因は、通常電磁界の2500倍を示した絶縁トランスが、心電図ケーブルとの干渉し、Lentzの法則に準ずる誘導起電力が発生した可能性が、最も高いことが考えられた。
5)無線LAN を用いた位置情報検出システムの導入事例
松月正樹、岩田英城 三重大学医学部附属病院 臨床工学部
新病棟・診療棟においてICタグと多数のAPによる無線情報通信技術を活用した位置情報検出システムを導入することになった。
モノの所在・情報が即時情報共有できることは、省力化および医療安全管理につながると考える。
関心のある方は、レジメを入手して、読んでください。
記:2014−1−3
BEMSJは参加できなかったが、以下の講演などが行われた。
1.概要
日 時:3月16日(土)
場 所:フクダ電子本郷新館セミナールーム
オーガナイザー:花田英輔(島根大学医学部附属病院 医療情報部)
内 容:医療における無線利用の新たな流れ
2.講演の概要
1)無線ボディエリアネットワーク技術仕様の国際標準化動向
独立行政法人情報通信研究機構ワイヤレスネットワーク研究所 滝沢賢一、李還幇、三浦龍
2)電子式車両用施解錠装置の電波強度測定および植込み型心臓ペースメーカへの影響の検証
北里大学大学院医療系研究科、*北里大学医療衛生学部臨床工学専攻 石田 開、金川達彦、柿沼由莉、藤原康作、廣瀬
稔、池田憲昭
国内で購入可能な 6 種の自動車を対象に、スマートキーシステムに使用される電波の中心周波数およびその強度、電波発信源であるアンテナ位置と電波の発信されるイベントを明らかにした。
測定された電波強度ならびに、生体モデルを用いた植込み型心臓ペースメーカへの干渉実験の結果、影響が起きる可能性は低いことが示唆された。
3)LANシートの基本原理と納入事例
株式会社イトーキ ソリューション開発統括部ICT システム設計技術室 吉川 洋
二次元通信は、通信シートであるLANシート(二次元の通信媒体)に電波を閉じ込めることで無駄な広がりを抑えて、効率的に通信する技術である。
電波を閉じ込めると言っても、電波は通信シート表面にしみ出していて、それを使って通信シートの上に置かれた通信機器同士が通信できる。
表面にしみ出した電波は通常の電波と異なり、遠くへ飛んでいくことはない。
4)移動体通信による医療機器への影響に関する指針の変更について
USCI ホールディングス株式会社 豊島 健
PDC 方式の携帯電話の平成24 年7 月24日以降の運用停止を受け、今後の携帯電話運用状況下での、植込み型医療機器へ及ぼす影響の調査、植込み型医療機器の電磁両立性に関する国際規格の動向、海外での指針運用状況等の調査を経て、22cm 指針が国際的にも整合性のある15cm 指針へと改定された。
5)「企業等が安心して無線LANを導入・運用するために」について
島根大学医学部附属病院医療情報部 花田英輔
総務省が手引書を出すことは、無線LANの安全な導入と運用にとって極めて重要であり、歓迎すべきことである。
しかし業種による特性を考慮する必要性を考えると、他省庁との調整を行ったうえで、業種単位で手引書を作ることが望ましいと考える。
今後の動きに期待する。
関心のある方は、レジメを入手し、全文を読んでください。
記:2014−2−9
BEMSJは参加しなかったが、以下の論議が行われた。
概要
日 時:7月20日(土)14:00〜16:30
場 所:フクダ電子本郷新館セミナーホール
コーディネータ:花田英輔(島根大学医学部附属病院)
内 容:医療現場における無線利用の拡がり
1.【招待講演】「無線型FPDの有用性と環境整備」 岩永秀幸 山口大学医学部附属病院放射線部
現在の医療において、画像のディジタル化は不可欠である。
一方で、画像データは医療において最大級のデータ群と言える。
IT 技術によってさまざまなシーンで画像を得ることが出来る時代になって来ているが、利便性が高いWi-Fi 環境の整備は、今後の医療現場の重要なカギを握ると考える。
2.「法人向け無線LAN技術について」 長野 敢 (株)コンテック
無線LAN は、IT 家電はもちろん、ゲーム機や白物家電にも採用されるほど普及が進み、今や情報機器のデータ通信で最も使われている手段と言っても過言ではない。
本稿では、店舗・倉庫・工場での無線LAN構築や建屋間の長距離通信といった、オフィス環境とは異なる環境下での無線LAN構築といった現場ニーズにフォーカスし、適用可能な無線LAN 機器の新製品や有効な機能について解説していく。
3.「電気メスによる植込み型心臓ペースメーカに対する電磁干渉シミュレーションモデルの構築」 吉田冴子 北里大学大学院医療系研究科
電気メスの取扱説明書にはペースメーカ植込み患者への使用は避けること、やむを得ず使用する際には十分に安全であることを確認した上で使用するように警告されている。
今回の実験では、電気メスがバイポーラの場合にはペースメーカへの影響は少なかった。
これは、バイポーラの場合、高周波電流が拡散せず、2つの電極の間だけに電流が流れているためだと考える。
このため、ペースメーカ植込み患者に対してバイポーラ型電気メスを使用しても、電磁干渉が生じない可能性が高いと言える。
一方、電気メスがモノポーラの場合、特にペースメーカの先端電極がメス先と対極板の間にある場合には、ペースメーカに高電圧が加わり電磁干渉を発生させやすかった。
FEMモデルによる解析を行うと解析結果が実測値に近い値を示したことから、FEM モデルによる電磁干渉の検証が有用であることがわかった。
今後は、同様にして生体のX線CT画像から人体FEMモデルを作成することで、動物や検体などを用いずに詳細な電磁干渉を検討することができると考えられた。
記:2014−2−4
1.開催案内から
●日 時: 平成26年2月1日(土)13:30〜16:30
●場 所: (株)セントラルユニ マッシュアップスタジオ 〒113-0034 東京都文京区湯島
●参 加費:
1,000円 申込み不要で参加できます。学会員でない方の参加も可能です。
●予定内容:
13:30〜13:35 開会挨拶
13:35〜13:55
1. 電磁波シールド塗料の医療電磁環境への適応の可能性について 藤倉化成株式会社 開発研究所 管 武
休憩・デモ(25分)
14:20〜14:35
2. 高速PLCの医療機器周辺への利用拡大について 高速電力線通信推進協議会(PLC-J)運営委員長 北地西峰
14:35〜15:10
3. 医療・介護領域における高速PLC活用への期待 高速電力線通信推進協議会(PLC-J)技術委員 井形祐司
休憩(20分)
15:30〜15:50
4. 高速電力線通信(PLC)による医療機器への影響に関する研究 北里大学医療衛生学部臨床工学専攻
廣瀬 稔
15:50〜16:10
5. 医療機器に対するPLC機器使用による影響調査について 島根大学医学部附属病院医療情報部 花田英輔
16:10〜16:25 総合討論
16:25〜16:30 閉会挨拶
2.研究会の内容
気が付いたBEMSJのメモから
1) 電磁波シールド塗料の医療電磁環境への適応の可能性について 藤倉化成株式会社 開発研究所 管 武
・電磁波シールド塗料の紹介
・低周波帯の磁気シールドとして適した塗料材料は存在しない。
・高周波帯では、複素透磁率で、実数部透磁率と虚数部透磁率を適当に組み合わせることで、ある周波数帯の磁気シールド材料を作ることができる。
・詳細はレジメ参照。
2)高速PLCの医療機器周辺への利用拡大について 高速電力線通信推進協議会(PLC-J)運営委員長 北地西峰
. 医療・介護領域における高速PLC活用への期待 高速電力線通信推進協議会(PLC-J)技術委員 井形祐司
・高速PLCを推進する側からの解説
・医療機器に関しては、検証データなどが無いことから、実質的にPLCは医療環境には導入されていない。
・今回の解説が医療関係へのPLC導入のきっかけになれば良い。
・日本では電磁界放射などを厳しく抑えているので(コモンモード電流の規制)、そうしたことからも通信速度に限界がある。
・詳細はレジメ参照。
3)高速電力線通信(PLC)による医療機器への影響に関する研究 北里大学医療衛生学部臨床工学専攻
廣瀬 稔
・学生の研究テーマで、数年雨に行ったもの。
・こうした研究をきちんと条件整備して、繰り返す必要がある。
・詳細はレジメを参照。
4)医療機器に対するPLC機器使用による影響調査について
島根大学医学部附属病院医療情報部 花田英輔
・医療機器使用環境における電源品質への影響を調査する必要がある。
・放射電磁界による医療機器への影響も調査する必要がある。
・どちらもまったくないことを期待するが、実際には存在する可能性は排除できない。
関心のある方は、レジメを入手して、全文を読んでください。
記:2014−11−9
BEMSJは怪我の為に参加できなかったが、以下の研究会が開催された。
● 日 時:7月19日(土)14:00〜17:00
● 場 所:北里大学薬学部1507セミナー室
● コーディネータ:廣瀬 稔(北里大学医療衛生学部)
● 内 容:電磁環境測定の基礎と実例
1.【教育講演】「病院内の電磁環境測定:電源および接地について」 花田英輔 島根大学医学部附属病院医療情報部
ここでは、現代医療にとって不可欠な電源設備の調査方法と注意点をまとめた。
安定した電源の供給は医療機器のみならずネットワーク及び病院情報システム端末の安定した動作にとって不可欠である。
また正しい接地は特に生理機能検査を行う機器の動作を保証し、また患者安全にも寄与する。
より良い医療電磁環境の構築と維持は今後ますます重要となることから、本稿を参考にされることを望む。
2.【教育講演】「病院内の電磁環境測定:放射電磁界について」 澤木 誠 アイコム株式会社
2.4GHz 帯は様々な機器が利用する周波数であるため電波干渉による通信障害が発生する場合がある。
通信障害の要因切り分けを速やかに行うには、想定される要因の有無を段階的に確認し、適切な測定方法で電波測定を実施する。
障害の未発生時の状況と障害発生時の状況を比較して要因の特定を行い効果的な対処を検討する。
3.「病院内における携帯電話電波強度測定」 藤岡友美 大成建設株式会社
今回、大学新病院の竣工後から開院前の時期において、病院内各部位代表点の電磁環境を測定する機会を得たため、可能な限り、設置・準備中の医療機器の稼動や業者等の持ち込み機器の影響を除いた条件での現状調査を実施したので、以下にその結果を報告する。
4.「医療機関の開院前における電波環境測定」 石田 開 東京医療保健大学医療保健学部
本研究では、病院の運用開始前後における外乱および施設内設置機器による電磁環境への影響を把握することを目的とし、平成26年2月に北里大学新病院において携帯電話の電磁環境調査を行った。
測定時、新病院は開院準備期間中であり、医療機器や通信設備などは稼働しておらず、建物内への出入りも限られており、電波は原則外来波(外乱)のみであると考えられた。
本報告では、医療機器や電子機器類の搬入以前で医療従事者、入院患者などの出入りも何もない稼働前の状態における院内携帯電話電波環境の測定をおこなった測定結果につて述べる。
5.「CISPR11におけるマイクロ波治療器の諸課題と対応」 西田裕二 伊藤超短波株式会社
マイクロ波治療器は、マグネトロンを使った発振の構造より電子レンジと共通の限度値が定められている。
しかし機器の特性から測定方法については、医療器の分類として、異なった測定条件が作られている。
最後は電子レンジとの比較試験を続けた結果、治療エネルギを十分吸収できる負荷を接続する測定条件の提案を行い、合意に至った。
関心のある方は、研究会のレジメなどを入手して読んでください。
記:2015−3−15
以下の研究会が開催された。
● 日 時:2月21日(土)14:00〜17:10
● 場 所:北里大学薬学部1603講義室
● 内 容:医療現場における電源線通信利用の可否、一般
1.【事業報告】「高速電力線搬送通信の医療現場での活用に向けて」 花田英輔 佐賀大学大学院工学系研究科
本稿ではPLCを医療現場で使用可能とすべき理由と、使用可能とするための取り組みについて紹介した。
無線通信の普及が進むにつれ、複数個所から発せられる信号が干渉することも考えなければならない事態は既に生じている。
PLCは診療情報を安定的かつコストをできるだけかけずに流通させる情報インフラということができる。
我々はPLCを安心して活用できる手立てを発表すべく、調査を続け、定期的に情報を提供する予定であると共に、手引書的な物を発行することを検討している。
2.【事業報告】「高速電力線搬送通信(PLC)の医療現場での安全な利用のための基礎的検討」 石田 開東京医療保健大学
医療保健学部
我々は、PLC の医療現場への安全な導入手法の確立に向け、PLC
使用による電源ノイズを、通常配線と分離する方法により、より正確にPLCの影響による電力線へのノイズ混入を検出し、その環境を用いて医療機器への影響の調査をおこなったので、報告する。
PLC 使用時の電源品質への影響および放射電磁界強度を測定した。
PLC と医療機器の電源供給の配線によっては、医療機器への影響が起こる可能性が示された。
3.【学生口演】「2.4GHz帯の無線通信機器が無線LAN環境に及ぼす影響の調査」 渡辺大地 北里大学医療衛生学部
ノートPCと携帯型ゲーム機との距離10m以内において通信の遮断、もしくはパフォーマンスが著しく低下した。
よって、実際の医療現場におけるベッドサイドでの電子カルテの記録や参照などに影響を与える可能性があると考える。
また、医療機器稼働状況の遠隔監視に無線LANを導入している場合、リアルタイムでの監視ができない可能性がある。
ゲーム機による通信は、小児科病棟や待合室のような場所で行われる可能性が高く、医療機関で院内無線LANを導入・運用する場合には、院内無線LANの5 GHz帯使用や使用可能エリアの設置など、何らかの対策を検討することが望ましいと考える。
4.【学生口演】「北里大学新病院稼動前後における医療電磁環境の変化検証」 細川 連 北里大学医療衛生学部
北里大学新病院の開院の際に院内の電磁環境を稼動前後に測定を行い、携帯電話端末や無線LANの周波数帯域に変化がみられた。
また、携帯電話基地局の電波が検出できない場所があったため医療機器の影響を考慮して、携帯電話使用に関する検討が必要である。
今回の検証においては、病院が稼動し始めても、医療機器や院内通信設備などに影響を与えると考えられる強度の電波は検出されなかった。
5.「医療用X線装置近傍の電磁界測定」 出路静彦 岐阜医療科学大学保健科学部
医用 ]線撮影装置近傍の磁界強度は、高電圧発生装置で最も高く最大値79,8μTを示した。
これはBG値の約4,000倍に相当した。電界強度が最大値を示したのは、]線管であった。
最大値は193.0V/mを示し、BG値の約90倍に相当した。
磁界強度は距離20cm付近から急激に減衰する傾向を示し、電界強度は距離40cmまでに大きく減衰する傾向を示した。
装置近傍の電磁界が最大となる装置は磁界強度と電界強度とで乖離していたが、]線管はどちらも高い値を示した。
磁界強度の主要周波数成分は、商用周波数の60Hzであった。
電界強度の主要周波数成分は]線管で60Hzであったが、他の装置は416Hzから15,107Hzまで帯域が広がっていた。
磁界強度と電界強度とでは、観測された周波数は異なっていた。
磁界強度が最大を示した高電圧発生装置の79.8μTは, ICNIRPの職業曝露に対する参考レベルの約1/12、公衆曝露に対する参考レベルの約1/3の低いレベルであった。
電界強度が最大を示した]線管の193.0V/mは、ICNIRPの職業曝露に対する参考レベルの1/40、公衆曝露に対する参考レベルの1/20の低いレベルでであった。
電界及び磁界強度はともにICNIRPのガイドラインの参考レベルを下回ったが、装置近傍で作業を行う放射線診療従事者に対する安全防護や、急激な電磁界変動などによる人体並びに装着した電子機器-の影響について周波数帯域を広げて調べていくことが今後の課題である。
6.「「アースチェッカー」による手術室の接地環境の事例報告」 奥村雅美 美和医療電機株式会社
今回行った手術室の接地環境調査により、ME機器の誤動作が発生し得る電磁環境を再度見直し、正しい電源の選択と接地のあり方について再考した感がある。
等電位接地すべき「手術室」においても、これから起こり得る電磁的な不具合問題を控え、正しい接地を施工しておく事が寛容であり、かつ改修工事等で器材室をOP室に改修する時も患者や使用者側の安全を確保するため、電源のみならず機器の誤動作や電磁環境を防ぐ「正しい接地」も是非とも忘れない様に喚起したい。
関心のある方は、レジメ全文を入手して、読んでください。
●日 時:7月25日(土)14:00〜17:05
●場 所:東京大学医学部教育研究棟13階 第5セミナー室
●内 容:EMCに関する規格と試験の実際、一般
1.「EMC第4版の規格概要について」 村井義浩 JEITA EMC委員会
2.「これからの医療ICT化と懸念材料」 花田英輔 佐賀大学大学院工学系研究科
3.「【事例報告】カプセル内視鏡検査における電磁干渉事例」亀井智成 コヴィディエン ジャパン株式会社
4.【事例報告】「電気メス点検中に発生した医療ガス圧力監視盤の誤作動に関する検討」 古平聡 北里大学病院ME部
5.【事例報告】「電気メスから映像機器への影響と対策、あらたな問題」 田中健二 美和医療電機株式会社
以下は報告などの概要です。
1.IEC
60601-1-2:2014(第4 版)の概要について 村井義浩
IEC 60601-1-2 第4版の概要
IEC 60601-1-2 第4版は2014年の2月に正式発行されたが、その改訂内容の構想自体は、2005年の時点から検討されている。
その経緯により、第4版は正しくはEMC(Electromagnetic Compatibility)の規格では無く、新たにEMD(Electromagnetic Disturbances)の規格として発行されている。
2.これからの医療のICT 化と懸念材料 花田英輔
既に医療のICT 化は進んでおり、今後のさらなる進展は必至である。移動体通信・無線LAN の活用は避けて通れない。
医療に限らず、ICT は単に導入を図るだけでは有効活用できないことは明らかである。ICT、特に無線通信技術を導入する際は、安全安心に活用できる環境とルールの構築と維持を図った上で、行うべきである。
医療者のみならず、無線通信に携わる業界や建築業界、医療機器業界等が連携し、効率よく、かつ安全な医療を推進できるよう努力することを望む。
3.カプセル内視鏡検査における電磁干渉事例 亀井 智成ら
カプセル内視鏡は、イスラエルのGavriel Iddan博士によって1981年に開発が着手された。
その発想は、簡単に飲み込むことができ、消化管を通過しながらその画像を送信する「ミニチュアミサイル」のアイデアからであった。
その後、製品化が進み、ワイヤレスのカプセル内視鏡システムとして2001 年に米国FDA承認、2007年、本邦においても薬事承認を取得し、販売が開始された。
本報告は、カプセル内視鏡検査時に生じた医療用テレメータとの電磁干渉事例ならびにその原因、対応について検討した結果について述べる。
4.電気メス点検中に発生した医療ガス圧力監視エリアモニターの誤作動に関する検討 古平 聡ら
医療機器使用時の患者安全を担保するためには、医療機器の信頼性や安全性の確保のみならず、電気・医療ガスの安定供給や電磁環境などの使用環境を整備・確立しておくことが望ましいと思われる。
当施設の医療ガス圧力供給情報は従来、中央監視のみであったが、新病院開設を契機にICU や手術室に医療ガス圧力監視エリアモニター(以下エリアモニター)が設置され、臨床現場において医療ガスの供給状況をリアルタイムに確認できるようになった。
今回、このエリアモニターの圧力センサーが電気メス点検中に誤作動するというトラブルを経験した。
検証結果ならびに初期対応について報告するとともに医療設備における電磁干渉に関してディスカッションしたい。
5.電気メスから映像機器への影響と対策、あらたな問題 田中健二 美和医療電機株式会社
近年の手術室では映像モニタを使用する機会が増えている。
映像機器ではなくとも、モダリティから得られる情報を手術室内のスタッフと共有するために、壁面やアームに搭載されたモニタに表示することは当たり前のように行われている。
その一方で、電気メス使用時のノイズがモニタ上に乗ってしまう症状はかなり以前から問題になっていた。
しかし、対策として言われていた電源回路の分離や接地接続では改善されず、それでも今なお改善策としては電源やアースのとこが指摘される。
今回は2013 年ころから障害が発生していた医療施設などの検証を基に、対策とそこに至る過程を紹介する。
関心のある方は、研究会のレジメなどを入手して読んで下さい。
以下の研究会が開催された。三浦は参加できなかったが、レジメを読んで、概要をまとめた。
日 時:2月20日(土)15:00〜17:10
場 所:東京大学医学部附属病院院棟A 1階 レセプションルーム
内 容:医療現場の電磁界
1)「高速電力線搬送通信(PLC)の医療現場での安全な利用のための 基礎的検討(第2報)」 石田開 東京医療保健大学医療保健学部
PLC使用時に発生する電源重畳電圧および放射電磁ノイズの周波数成分を測定した。
電源重畳電圧は一部のモデムで30MHzを超える周波数があったが、放射電磁ノイズではすべてのモデムが規定の周波数帯に収まっていた。
また、放射電磁ノイズはモデムまたは電源線から30cm以上離れることで、ほとんど影響は無いものと考えられた。
電源配線長の違いによる放射電磁ノイズレベルの違いについて調査を実施し、配線長の差異はノイズレベルには大きく影響はせず、電源線長の違いは考慮する必要が無いことが分かった。
PLCの通信と超音波診断装置の電源供給線が同一の場合(渡り配線時)に、診療に影響を及ぼすレベルの雑音がモニタおよびスピーカに混入した。
しかし、PLCの通信を医療機器の供給電源と分離することで、雑音は回避可能であった。
故に、医療機関でのPLCの使用時には配線の確認が必要であると結論する。
2)「誘電体周期構造による帯域的電磁波遮へいに関する数値解析」 工藤孝人 大分大学工学部
本研究の目的;
本研究では、医療現場において今後更に利用度が高まると予想されるマイクロ波帯の電磁波を対象に、誘電体フォトニック結晶構造を用いた帯域的電磁波遮へい材の開発を志向している。
電磁環境に起因する医療機器への悪影響防止、医療情報のセキュリティ強化,採光性や通風性の確保による患者アメニティの向上など、在宅を含む安全安心な医療電磁環境の構築が目的である。
3)「医療用X線CT装置近傍の電磁界強度測定」 出路静彦 岐阜医療科学大学保健科学部
医療用]線CT装置のガントリー開口部において装置近傍の電磁場強度を測定し、植込み型心臓ペースメーカ及び人体に及ぼす影響を調査した。
磁場強度から算出したペースメーカに生じる誘導起電力は、欧州規格が示す許容値以下であり、ペースメーカ-の影響はないと考えられる。
電磁場強度は人体曝露制限ガイドラインが示す指針値以下であり、短期曝露による人体-の影響はないと考えられる。
今後は、 X線CT装置の高電圧発生装置について調査を行う必要がある。
関心のある方は、研究会のレジメなどを入手して読んで下さい。
掲載誌:J
Med Syst. 2001 Aug; 25(4):257-67.
論文名:Possible
electromagnetic interference with electronic medical equipment by radio waves
coming from outside the hospital.
病院の外部から来る無線周波数ノイズによる医療機器の電磁障害
研究者:Hanada E, Kodama K, Takano K,
Watanabe Y, Nose Y. 花田ら
Department of Medical Information Science, Graduate School of Medical Sciences,
Kyushu University, Fukuoka, Japan. hanada@med.kyushu-u.ac.jp
概要:
携帯電話の電波による医療機器へのEMI障害に関しては報告があり、幅広い関心が集まっている。
病院外から到来する各種無線による医療機器へのEMIの可能性も指摘されている。
そういいながらも、当来する無線ノイズの周波数分布やその強度の測定報告はない。
そこで、建設中の11階建ての病院で、到来電波強度を測定した。
最大強度は空港管制レーダからの電波で、2.79GHzで約200V/mであった。
携帯電話の基地局からの到来電波の最大強度は1.78V/mであった。
これらのデータは、都市部には共通な様々な周波数の電波があり、強い電界強度を示していることがわかった。
これらの強い電界強度は医療機器にEMI障害を起こすかもしれない。
医療機器のEMI障害を防ぐために、都市部にある病院では、個々に測定を行うべきである。
関心のある方は、原著全文を入手して、読んでください。 私はまだ原著全文は読んでいません。
記:2016−6−12
以下の研究会が開催された。
BEMSJは参加できなかったが、レジメから興味のある点だけを紹介する。
1.開催の概要
日時:5月12日(土)13:00〜16:50
場所:北海道情報大学松尾記念講堂
コーディネータ:廣瀬 稔(北里大学医療衛生学部)
内容:
1)ELF電界の生体作用機序に関する研究 ―電界をなぜ感じるのか?−(招待講演) 清水久恵 北海道科学大学 保健医療学部
2)医用電気機器に関するEMC規制と測定/評価方法 村井義浩 日本光電株式会社
3)改定された病院内における携帯電話の使用指針 加納 隆 埼玉医科大学 保健医療学部
4)医療機関において安心・安全に電波を使用するための手引き 花田英輔佐賀大学 大学院工学系研究科
5)臨床工学部門における包括的植込み型心臓デバイス管理−職場電磁環境調査実施に至る背景と患者安全への取り組み− 清水芳行 北海道情報大学 医療情報学部
6)欧州における医療機関での高速PLC活用事例とレギュレーションについて 井形裕司 高速電力線通信推進協議会
2.口演の内容から
1)ELF電界の生体作用機序に関する研究 ―電界をなぜ感じるのか?−(招待講演)清水久恵
近年、電磁界と生体との関わり合いが問題となり、多くの研究が盛んに行われている。
しかし、高圧送電線下などに見られるELF(Extremely Low Frequency,0-300Hz)電磁界の生体作用機序ついては、未だ不明の点が多い。
その中で、明らかな生体作用としては、電界曝露に伴う体表刺激作用がある。我が国の安全基準は、この刺激の感知限界、すなわち感知閾値を重要な要因として決定されている。
我々はこれまで、電界の生体影響の機序解明に向け、電界の感知につき理論的、実験的検討を行ってきた。
ここではそれらのうち、電界をなぜ感じるのか、またなぜ感じ方が種々異なるのかについて検討した結果を紹介する。
次のような実験を行った。比較的敏感で体毛状態がわかりやすい前腕部外側の部分に局所的に電界を曝露し、その感じ方を調べた。
まず、体毛の存在する部分に電界を曝露し刺激感覚があることを確認した後、体毛を除毛(剃毛)して同様の電界曝露を行った。
その結果、同部位、同電界強度であるにもかかわらず、後者の場合、ほとんど電界を感知できないことがわかった。
2)医用電気機器に関するEMC規制と測定/評価方法 村井義浩
特別な点はない。
3)改定された病院内における携帯電話の使用指針 加納 隆
国際医療センタ内で、携帯電話の電波状況の現状調査を行うことにした。
具体的には「屋外基地局からの受信電力測定調査」と「携帯電話からの送信電力測定調査」の双方を実施した。
その結果、現状でも十分に低出力(10mW 以下)になっているエリア(屋外基地局に面しているエリア)がある一方、250mW
の最大出力になっているエリア(センター中心部寄りのエリア)があることも判明した。
今後は、すべてのエリアが10mW以下の低出力になるような適切なアンテナ配置を行えば、第3 世代携帯電話の院内全面使用も可能である。
しかし、屋内アンテナを多数設置するには膨大なコストが掛かるので、実際に埼玉医科大学国際医療センターで行ったことは、病院敷地内に屋外アンテナをもう1箇所増設することで、電波状況の改善を計った。
4)医療機関において安心・安全に電波を使用するための手引き 花田英輔
電磁的な干渉源の例として、近年導入が進むLED 照明器具が挙げられている。LED 器具はCISPR15 で放射電磁界の放出(emission)に制限がかかっている。
しかし現時点において、その周波数範囲の上限は300MHz であり、モニタが使用する周波数よりも低い。
すなわち、規格に従っている器具であっても、モニタに対して影響がないことは保証されない。
病院内での携帯電話の利用は、新指針発表により大きく延びている。
このことは調査結果にも現れている。2005 年に医療電磁環境研究会が行った調査と併せて考えると、一部使用可も含めて病院内で携帯電話を使用できる割合は2005 年には46.8%であったものが新指針発表直前の2014 年に90.2%になり、2015
年には95.7%にまで上がっている。
5)臨床工学部門における包括的植込み型心臓デバイス管理−職場電磁環境調査実施に至る背景と患者安全への取り組み− 清水芳行
特別な点はない。
6)欧州における医療機関での高速PLC活用事例とレギュレーションについて 井形裕司
医療機器周辺での高速PLC の活用の参考とするため、欧州の事例を紹介した。
国内でも介護新時代に向け、医療介護領域での活用が大いに期待されている。
本研究会において高速PLC から医療機器への影響を明らかにし、厚生労働省から求められている「安全対策上の措置」を、早期に具体的に明らかにしていきたい。
関心のある方は、レジメなどを入手して読んでください。
記:2016−10−31
以下の研究会が開催された。
参加した時のメモとレジメから興味のある点だけを紹介する。
1.開催の概要
平成28年度 第2回研究会
日 時:8月7日(土)14:00〜17:15
場 所:東京大学医学部附属病院 管理・研究棟2階 第一会議室
座 長:廣瀬 稔(北里大学)
内 容:病院内の電磁環境管理と安全の確保
2.講演内容から
1)医療機関において安全・安心に電波を使用するための手引きの概要 田英輔 佐賀大学大学院工学系研究科
知能情報システム学専攻
今回発表された手引きは、必ずしも病院での電波利用を促進するものではなく、安全安心の確保との両立を図ることを優先している。
手引きに書かれたトラブル事例とそれに関する注意点に配慮し、病院全体として取り組むことで、ほとんどの問題は解決でき、両立は可能になると考えられる。
今後はこの手引きを様々な手段を講じて全国の病院に周知することが重要である。
また通信機器の進化や規格の変更への対応も必要であると共に、知識の啓発も必要であると考える。
2)スマートデバイスの活用と院内電波管理 山下 芳範 福井大学医学部附属病院
医療情報部
無線利用の拡大と課題;今後は、スマートデバイスだけでなく、IoT に代表される機器ネットワークとの連携が重要となり、これまで以上に無線通信の利用が拡大するものと考えられる。
このような環境を実現するためには、無線環境の適切な管理が必要となってくる。
3)MRI 対応植込み型不整脈治療デバイスの国内導入状況と課題 坪井
亨 日本メドトロニック株式会社CRHF 事業部マーケティング部
従来心臓ペースメーカを代表とする植込み型不整脈心臓デバイスは、MRI検査は禁忌とされ、MRI Unsafeのカテゴリとして周知されていた。
しかし、心臓ペースメーカの初回植込みの平均年齢が73歳であることから、脳卒中や変形性関節症などの併存疾患で患者がデバイス植込み後にMRI検査を必要とする可能性は50%から75%と高い。
この「不都合」を解決するニーズは高く、弊社メドトロニックを含む製造販売会社はMRI対応デバイスの開発を推進することになった。
Medtronic
Inc.(当時)が最初のMRI Conditional
Pacemaker を2009 年に欧州で導入し、国内でも弊社が2012年に最初の条件付きMRI対応ペースメーカを導入した。
4)医療機関における無線LAN の使用状況の調査 石田
開ら 東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科
医療機関において無線LANの使用状況を調査し、2.4GHz帯では全体の約4割が外来波であった。
また、持込みされたAPも少なからず存在し、場合によっては院内無線LANとの干渉の可能性も否定できないことが明らかになった。
5)電源タップ消耗品化における取組み 松月正樹 三重大学医学部附属病院
臨床工学部
院内3Pコンセント化における2P電源タップ排除および電源タップの消耗品統一化を目的に、電源タップの選定を行い87品目から4品目へ物品システム品目を削減することとした。
6)在宅ケア向け「HD-PLC」を使用したネットワーク構成の一検討 古賀
久雄ら パナソニック
人手不足の解消、あるいは福祉・医療の高度化のため、医療機器あるいは様々な情報を収集するためのIoT機器が今後宅内で使用されると考えられている。
これらの機器の一部はクラウドへ接続されることになるが、そのためには安価なネットワークが必要である。
また、通信機器と医療機器が近くで使われることが多くなってきており、短波帯(2-28MHz)を使用した高速PLC(Power Line Communication)からの医療機器への影響についての調査も開始されている。
本研究では、上記ネットワークを構成する候補となる「HD-PLC」を使用した在宅ケア向け屋内外ネットワーク構成の一検討について報告する。
詳細に関して、関心のある方は、レジメ全文などを入手して読んでください。
BEMSJは参加しなかったが、以下のような講演が行われた。
1.研究会の概要
平成28年度第4回医療電磁環境研究会
日時:平成29年2月11日(土)13:30〜17:20
場所:(株)セントラルユニ マッシュアップスタジオ
コーディネータ:廣瀬 稔(北里大学医療衛生学部)
内容:病院内の電磁環境管理と安全の確保
1)「高速電力線通信(PLC)と医療機器の両立に向けた提言」花田英輔 佐賀大学大学院工学系研究科
2)「医療分野における電波利用の推進に向けた総務省の取組」篠澤康夫 総務省総合通信基盤局
3)「電磁環境の簡易的把握におけるSDR受信機の活用」高橋 淳 マイクロ・パワー研究所
4)「開院後半世紀を経過した医療機関での電波環境調査」石田 開 NICT
5)「LED照明からの放射雑音の測定と医用テレメータへの影響の検 証」鈴木啓太 北里大学医療衛生学部
6)「無線LANを利用した医療用テレメータにおけるトラブル事例」藤井清孝 西神戸医療センタ
7)「医療機関における電源・接地に関するトラブル事例」村井義浩 日本光電株式会社
2.講演の概要
1)高速電力線搬送通信(PLC)と医療機器の両立に向けた提言
花田英輔
今回対象とした医療機器では、微弱な生体信号の計測を対象とした脳波計以外、ノイズ混入は観察されなかった。
これを前回実験の結果と比較すると、前回、雑音混入が観察された超音波診断装置の製造年度が1994年及び2005年とかなり古いことが判っており、いずれも伝導ノイズによるものと考えられる。
これに対し今回対象とした超 音波診断装置は2007年度以降の購入で あることを考えると、ある時期以降、電源回路に対してEMCの面で何らかの対策が取られたと考えられ、IEC60601-1-2:2005の適用と関係があると考えることができる。
以上のことから、次のような結論が得られると我々は考える。
・PLC使用により、超音波診断装置などの一部の古い機器においてノイズ重畳などの干渉を受ける可能性はある。
・微弱な生体信号を抽出する機器もまた、干渉を受ける可能性を否定できない。
・干渉の原因は、その多くは放射電磁界ではなく、伝導ノイズ(電源重畳ノイズ)によるものと考えられる。
2)医療機関における電波利用推進に向けた総務省の取組 篠澤康夫
携帯電話の普及に伴い、その電波の医用電気機器への影響が懸念されたことから、平成9年、総務省と関係省庁・関係団体で構成される「不要電波問題対策協議会」は、携帯電話を診察室、手術室や集中治療室等へは持ち込まないことや、心臓ペースメーカから22cm程度以上離すことを推奨する『医用電気機器への電 波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針』を策定した。
これを受け、多くの医療機関では携帯 電話の利用を禁止する措置が取られ、また,電車内での携帯電話の利用マナーとして「優先席の付近では携帯電話の電源をOFF」というルールが全国に普及した。
一方、比較的強い電波を出す第2世代 携帯電話サービスが平成24年7月で終了し、3分の1程度の弱い電波で通話できる第3世代携帯電話サービスに移行した。
そこで総務省では、国際規格や総務省の調査等を基に、平成25年1月、携帯電話とペースメーカ等の植込み型医療機器との離隔距離を15cm程度以上へと指針を緩和し、更に平成27年8月にはペースメーカや除細動器以外の植込み型医療機 器等についても対象に追加した
こうした指針の変更や、スマートフォンの普及など社会の変化を受け、優先席付近での携帯電話利用マナーについても「『混雑時には』携帯電話の電源をOFF」とするように変わってきている。
3)病院内での中波放送の受信改善 電磁環境の簡易的な把握におけるSDR受信機の活用 角 英樹
NHKおよび民間放送局へ寄せられる受信相談の中には入院中の病室にてラジオ(中波放送)の受信状態の改善に関する質問、要望が多々有ると聞く。
実際に一部の民放局のホームページでは具体的な受信の改善方法を紹介している。
入院病棟のみならず、近年の建物は建築材料や構造から中波放送の受信には不利である。
これらの外的な条件に加え、各種電子機器から発生する電磁波ノイズが放送の受信妨害となり、建物による放送電波の減衰に重畳され中波帯の放送受信を一層困難としている。
今回、身近なテレビなどの電子機器から発生する電磁波ノイズがラジオ放送受信にどのように影響するか、具体例を示すとともに、ラジオ受信機に付加し受信状態を改善する装置を紹介する。
さらに電磁波ノイズの発生源を検知し特定する上でペルセウス『Perseus』の名称で市販されているソフトウェア受信機(SDR受信機)とフェライト・バーアンテナ『ノイズ検知コイル』の活用を紹介する。
4)開院後半世紀を経過した医療機関での電波環境調査 石田開
今回、我々は開院から半世紀以上を経過し、病院機能を移転した都市部の医療機関において、電波環境を測定する機会を得たため、以下にその結果を報告する。
測定対象は、国家公務員共済組合連合会斗南病院(北海道札幌市)の旧病院である。当該施設は1961年に竣工し、2016年10月10日まで診療がおこなわれており、病院機能は現在、新病院へと移行している。
建物は地下1階・地上8階建て、病床数は243床である。測定は2016年10月22 (土)に実施し、測定者以外の出入りはなかった。
測定された電波の内、最も強度が高かったものは8階で測定されたWiMAX基地局(2629MHz)からの電波であり、103.4dBμV/mであった。
特異的なものとして、2階のカルテ庫では、1070〜1400MHz帯と1590〜1910MHz
帯において、約37MHzの帯域幅を持つ電波が等間隔で確認された。
また、2階の手術室(西側)2部屋では300〜1000MHz帯において、7MHz間隔で帯域幅3MHzの雑音(電波)が確認された。
同様の雑音は6階東側中央の病室においても確認されたが原因は特定できなかった。
5)LED 照明からの放射妨害波の測定と医用テレメータへの影響の検証
鈴木啓太
本研究では、LEDからの放射妨害波強度を定量的に測定し、医用テレメータへの影響を検証することを目的とした。
今回測定をおこなったLEDには、400MHz帯に大きな雑音ピークを持つものがあり、使用する環境によっては、医用テレメータへ受信障害を与える可能性があると考えられる。
また、製品ごとに放射妨害波が強く発生している部位が存在したため、今後は内部構造(電源回路の位置) や点灯方式を考慮した測定や評価が必要であると考えられる。
6)無線LANを利用した医療用テレメータにおけるトラブル事例
藤井 清孝
今回、医療用テレメータ修理件数集計と無線LANテレメータに関するトラブル事例報告をおこなった。
無線LAN領域はメーカへの依存度が高く、トラブルが発生した場合、時間を要する場合が多い。
今回、USBリアルタイムスペクトラムアナライザを用い実地調査をおこなったが、十分な測定結果を得ることができなかった。
しかし、臨床工学技士による無線LAN領域の管理は今後必要不可欠であり、引き続き調査をおこない、臨床現場で実施可能な測定プロトコールを作成していきたいと考えている。
7)医療機関における電源・接地に関するトラブル事例 村井義浩
<医用電気システムの安全基準について>
・複数の医療機器を接続する場合には、必ずJIS T0601-1の箇条16“MEシステム”及び附属書I表I.1に述べられている接続方法を守ること。
・接地端子間の接続状況の確認時には、必ず抵抗計と電圧計の両方のモードで測定し、且つテストリード線の赤黒を交互に入れ替えて測定を行うこと。
極性を入れ替えた場合に、互いの指示値が異なる場合には、その接地間が正しく 等電位化されていない可能性が高い。
<接地漏れ電流、接触電流の主要因について>
・EMC対策用のフィルタ回路が漏れ電流の主要因である場合が多い。
・クラスT機器の接地を外した場合、筐体に電源電圧の約1/2の電圧が現れる事がある。
・接地を取らないと安全性の問題の他にハム等が乗りやすくなるので、必ず接地を取る。
<接地配線に関係するトラブル事例>
・医用電気機器の不具合原因が、実は全く違う製品が関与している場合がある。
・特に接地配線に関する問題は、悪院内全体に波及するので、良く注意を払うこと
関心のある方は、当該のレジメ全文を入手して読んでください。
記:2017−7−26
BEMSJは参加・聴講していませんが、以下の研究会がありました。
・日 時:平成29年6月3日(土)14:00〜16:45
・会 場:東京大学医学部附属病院 管理・研究棟2階 第一会議室
・プログラム(敬称略)
14:00〜14:10 開会挨拶
1.14:10〜14:40:埋め込み式ペースメーカに妨害を与える低周波磁界の評価方法 (独)労働者健康安全機構 風間 智
2.14:45〜15:25:新しいリアルタイムUSBスペアナ 大正医科器械
加藤直也
3.15:40〜16:00:医用テレメータの簡易スペアナ機能を利用した放射妨害波発生源の特定法 埼玉医科大学
川邉 学
4.16:00〜16:20:携帯電話屋内基地局を設置した医療機関の電波強度測定 三重大学 松月正樹
.16:20〜16:40:対象物の差異による電気メスから発生する放射雑音の変動の検討 情報通信研究機構 石田 開
16:40〜16:45 閉会挨拶
主な内容
1.埋め込み式ペースメーカに妨害を与える低周波磁界の評価方法
埋め込み式ペースメーの誤動作の事例として、自動麻雀卓等の低い周波数の電磁界によるものが知られている。
しかし、この低い周波数の電磁界がどれくらいあると誤動作の可能性があるのか、等の評価方法が明確でなく、その電磁界の評価は行われていなかった。
ロボット介護機器等は、モータ等の電磁ノイズを発生する可能性のある部品を使用しているため、この誤動作リスクは無視できないと考えられる。
このため、このリスク評価方法の検討を行う。
人体内部の電界は、人体が導体(比誘電率:80、導電率:0.3 S/m 程度)であるため、人体周辺の空気(比誘電率:1、導電率:3×10−15 S/m 程度)中の電界に比べて極端に小さくなる。
このため、電界によりペースメーカに生ずる起電圧も小さくなり、誤動作リスクは無いと考えられ、電界の評価は不要である。
人体内部の磁界は、人体の比透磁率がほぼ1であるため、人体周辺の空気中の磁界とほぼ同じと考えられる。
体内のペースメーカは、電極ケーブルと導電体である人体とで構成されるループと等価と考えられる。
このループと交差した磁界が、信号入力端子に起電圧を発生させる。このループは、電極ケーブルの標準的な長さ(58cm)から、半径18cmの半円のループが最悪状態を表す磁界センサーとして使用できる。
介護用リフトを評価機器として用いた、評価事例を示す。
この介護用リフトの動作時、使用しているモータの直近にループを配置した場合、図7に示す電圧が測定される。
図7 0.1mV/Div
これは、2mVppに比べて無視できるレベルではない。
この様にモータを使用した機器については、ペースメーカへの誤動作リスクの評価が必要であることがわかる。
この機器においては、このモータは胸部が近づく可能性がない場所に配置されており、人体が存在する可能性のある範囲内での測定値はノイズフロアレベルの値になっている。
このため、この装置が発生する磁界によるペースメーカの誤動作リスクは無いと判断できる。
2.「医療機器」と「電波環境」と「ノイズ」について
無線通信医療機器の使用増加により、医療機器とノイズ(放射ノイズ・電動ノイズ)の関係性につきましても、今まで以上にクローズアップされております。
「電波環境調査」と「ノイズ調査」用途に最も適している測定器がテクトロニクスのUSBスペクトラムアナライザになります。
3.医用テレメータの簡易スペアナ機能を利用した放射妨害波発生源の特定法
医療機関内で使用される代表的な電波利用医用電気機器である医用テレメータの周波数帯を対象として、医用テレメータを使用した放射妨害波発生源の特定方法を提案する。
放射妨害波発生源の特定に用いた医用テレメータはDS-7640(A型:フクダ電子社製)を使用した。
同軸ケーブルで延長したホイップアンテナを医用テレメータに接続し、医用テレメータを簡易スペアナ機能画面に設定する。
そして、延長したホイップアンテナを放射妨害波発信源と思われる電気機器(LED 照明及び通信機器など)に接近させることで放射妨害波の有無を確認する、という方法である。
LED照明電球及び電源ケーブルの近傍では受信不可のポイントが多く、LED照明電球から400(mm)離れた場所においても受信不安定となるポイントが存在した。
4.携帯電話屋内基地局を設置した医療機関の電波強度測定
平成26年8月に「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」が新たに公表された。
これにより、医療機関の利用者と医療従事者双方による携帯電話の利用促進が期待される。
一方、携帯電話の院内使用基準緩和時における問題もある。
携帯電話の受信状況と送信電力の関係から受信状況が悪い、すなわち基地局電波が弱いと携帯電話電波は強くなる場合があり、医療機器等に影響を及ぼすことが懸念される。
当院では改善目的で新病院開院後に屋内基地局(2GHz 帯)が設置され運用されている。
そこで、開院前、開院後(設置前)、設置後に基地局電波強度を分布測定し比較し、屋内基地局設置による環境の変移を評価したので報告する。
開院前、開院後、設置後の各時期において、基地局が発信する電波強度を外来棟22か所で分布測定した。
結果は、開院前: 45.7±4.75[dBμV/m]、開院後:43.5±6.15[dBμV/m]、基地局設置後:48.0±6.12[dBμV/m]であった。
屋内基地局設置後環境下の外来棟22か所で、ダイポールアンテナから15cmの位置に携帯電話端末(Galaxy S4)を固定し、データ通信および通話をそれぞれ10 秒間行った。
その時、放射された電波の周波数および電波強度をスペクトラムアナライザの最大値モードで測定し、その最大値を測定値とした。
結果は、測定通話時は82.0±10.4[dBμV/m]、データ通信時は102.1±9.26[dBμV/m]であった。
5.対象物の差異による電気メスから発生する放射雑音の変動の検討
本研究では、電気メスから発生する放射雑音の強度と周波数分布について、様々な条件下で検討をおこなうことを目的とした。
対象物の違いにより、電気メスの放射雑音の強度および周波数分布が異なることを実験的に示した。
以下の研究会が開催された。
BEMSJは出席していないが、公開されているレジメから、抜粋して、概要を紹介する。
医療・福祉における電磁環境研究会
平成29年度 第4回研究会
● 日 時:平成30年1月27日(土)14:00〜17:15
● 場 所:(株)ケアコム本社 大会議室
● コーディネータ:花田英輔(佐賀大学大学院工学系研究科)
● 内 容:病院内における電磁ノイズと電磁環境の管理
1)「病院電機設備として医用無停電電源装置(UPS)の必要性」
大川拓也 ニシム電子工業株式会社
ULの「医療設備向け無停電電源装置」カテゴリの規格を満たしたUPSは、医療機器レベルの電気安全性を持つUPS です。
世界では7社、国内では当社のみ(⽶国5社、台湾1社、当社)で供給されている。
2)「LED照明と医用テレメータの受信障害に関する振幅確率分布を用いた検討」
有江 授 北里大学大学院
近年、LED 照明が急速に普及している。LED 照明は低消費電力を実現するためにスイッチング電源を搭載しているが、同時に高周波雑音を放射するため、テレビやラジオの受信障害をはじめとした電磁干渉を発生する可能性がある。
医療機関においても、LED 照明の導入による医用テレメータの受信障害が懸念されており、急速に解決すべき課題であると言える。
我々は先行研究において、一部のLED照明が医用テレメータの使用周波数帯(420〜450 MHz)の放射妨害波を高強度で発生していることを明らかにした。
さらに、模擬環境において、LED 照明を医用テレメータの受信アンテナ付近で点灯した際に受信障害を確認した。
LED 照明は、雑音規制の国際規格であるCISPR 152)に準拠することとされているが、現状の規格では放射妨害波の上限周波数は300 MHz までであり、医用テレメータの周波数帯は考慮されていない。
加えて、測定対物との距離は3 m もしくは10 m とされており、医用テレメータの受信系(アンテナ)の敷設環境である近傍界(概ね1 m 以下)では考慮されておらず、評価方法も確立されていない。
LED 照明はスイッチング電源由来のインパルス的な放射妨害波を発生することが報告されている。
またそれによる、地上デジタル放送(周波数帯域幅5.7MHz)のような、広帯域受信に対する影響評価方法は確立されている。
一方で、医用テレメータは12.5 kHz の狭帯域受信をおこなうため、受信障害に対する評価は、医用テレメータと同等の狭帯域幅での定量的な評価が必要である。加えて、LED 照明に搭載されたスイッチング電源が生じる放射妨害波の時間変動特性は製品毎に異なる。
従って、通信品質へ与える影響を推定する際には、これらを統計的に評価する必要がある。
本研究では、LED 照明が発生する放射妨害波の特性を把握し、 無線通信システムの通信品質劣化との間に高い相関を持つ振幅確率分布(APD:Amplitude Probability Distribution)にて評価をおこない、医用テレメータに対する受信障害の評価方法を検討することを目的とした。
3)「手術室における新たな電磁干渉」
石田 開 情報通信研究機構
近年の手術室では医療機器以外にも、情報通信機器や設備機器などが数多く用いられるようになってきた。特にIoT 化の恩恵を受けたこともあり、コンピュータや無線通信の積極的な利用は広く進みつつある。しかし、近年の電子機器の多くはスイッチング電源を搭載した機器(コンピュータや照明器具、また医療機器自体も)であり、新たな雑音源であるとも言える。
さらに、RFID をはじめとする電波(無線)を利用した診療補助機器の導入も増加している。
これらの機器は、新たな雑音源になると同時に、医療機器を含む既存の機器や設備からの干渉を受ける対象とも成り得る。
ここでは、手術室における新たな電磁干渉の問題について述べる。
4)「医療機関における無線LAN設計と今後の応用」
松居和広 シスコシステムズ合同会社
無線LAN を設計する上では、事前定義を明確化し、送信・受信端末それぞれの特性を理解した上で設計していくことが求められる。また、導入後にも定期的な監視およびチューニングが必要となる。
また、今後は新たなサービス展開として大容量通信や音声などのデリケートな通信も見込まれるため、今まで以上に無線LAN
の事前設計および継続運用が重要になってくる。
5)「医療・福祉施設の電磁環境」
鍛冶良作 産業技術総合研究所
近年,医工連携が進み,手術室などの医療空間にも電気電子機器が多く導入されている。輸液ポンプや医用テレメータなどの医療機器を電磁界ノイズから保護して安心安全に利用するために,多くの医療電子機器に備わっている電磁耐性を確認し,この電磁耐性を上回る電磁環境と「ならない」室内空間を構築する必要がある。
一方,JIS T 1022:2006(病院電気設備の安全基準)では,手術室における電気設備の安全基準が規格化されており,心室細動(心臓の機能停止)を起こさないよう考慮されている。
本報告では,電磁環境基準,測定評価方法,対策技術をまとめた、「電気・電子機器の運用空間指針」について紹介すると共に、より安心安全な手術室の構築に必要なノイズ対策技術について提案する。
遵守すべき電磁環境基準
運用空間が遵守すべき電磁環境基準を以下とする。
・3V/m 以下(=129dBμV/m 以下)
*放射無線周波電磁界(電界)(26MHz〜2.5GHz )
関心のある方は、レジメ全文を「入手して、読んでください。
平成30年度 第2回研究会
● 日 時:8月4日(土)14:00〜16:40
● 場 所:(株) フィリップス・ジャパン 品川オフィス
会議室
● 座 長:花田英輔(佐賀大学)
● 内 容:新しい病院電気設備と医療機器EMCのJIS
1)EMC規格 JIS T 0601-1-2:2018の新たな考え方
平野 知 JEITA SC/62A 国内委員会 SC/62AMT23(EMC)対応G
医用電気機器のEMC 国際規格であるIEC 60601-1-2
の第4 版(JIS T 0601-1-2:2018)が発行されたことによる従来規格との差異について解説する。
2)JIS T 1022:2018の主な改正内容について
加納 隆 滋慶医療科学大学院大学
本稿では、改正された「病院電気設備の安全基準」JIS T 1022:2018 の中でも、特に臨床現場に関係が深い部分の変更点について取り上げて解説した。
3)手術室電気設備における施工後不良及びJISと実施工の解離
松月 正樹 三重大学医学部附属病院
(著者希望により予稿不掲載)
よって講演内容は不祥。
平成30年度 第4回研究会
● 日 時:平成30年1月26日(土)14:00〜16:00
● 場 所:東京大学医学部附属病院 中央診療棟2 7階大会議室
● コーディネータ:花田英輔(佐賀大学理工学部)
● 内 容:医療現場の電磁環境整備に向けた動き
1)(招待講演) 「医療機関における無線通信機器の電磁環境簡易評価手法の検討」
遠藤哲夫 大成建設株式会社技術センタ
本開発は,医療機器が安定して通信できる環境を提供し,電波的トラブルの解消と病院スタッフによる定期的な電波管理をサポートすることを目的としてBIM,電波環境シミュレーション,電波調査・計測に関する各技術を組み合わせ,病院内の電波環境を可視化するT-Hospital Wireless Viewer を開発した。
埼玉医科大学国際医療センタにおける電波管理の実証試験の中で, T-Hospital Wireless Viewer によって電波が非常に弱いと表示されたエリアでは生体情報モニタに誤表示が発生していることを確認した。
可視化することで受信アンテナ配線と電波の弱いエリアの関連を容易に把握することを確認できた。
さらに,電波環境シミュレーションが電波の弱いエリアの事前推定と調査後の対策検討に効果的な手段であることが明らかになった。
今後は,本技術を比較的大規模な病院を中心に展開し,電波環境の評価に関わるノウハウの蓄積によって「電波がどこでもつながる病院」の設計と病院スタッフの効率的な電波管理のサポートを実施する所存である。
2)(記念講演)「合理的な電磁環境推進に必要な総合的判断力 --文系・理系の壁を解消した教養を--」
石原 謙 愛媛大学医学部医療情報学
「利用禁止の根拠や背景」
日本における電波活用の遅れには、様々な要因がある。
一つには、心臓ペースメーカへの携帯電話などから発する電波干渉で事故を起こしてはならないという関係者の賢明な懸念が発端ではあったろう。
通称不要協・不要電波問題対策協議会での実験などにより、絶対に安全と推定されるまでの条件が策定され、よく知られていた「携帯電話はペースメーカ本体から15cm(2014 年以前は、22cm)離して利用すれば安全」というコンセンサスが周知され、利用制限として守られた。
携帯電話会社への「電波が私の健康を障害している」というクレームも多く、その対策として、せめて車内での携帯電話利用を制限すれば減るだろうという判断も働いたとも聞く。
さらには、JR などの列車内で、実際には車内での携帯電話会話を発端とする乗客同士の騒音トラブルを抑制したいという運航会社の思惑により、ペースメーカ患者への配慮という名目で、過度に電波利用が抑制された。
2012 年以降の携帯電話やスマホでは、意図的に障害を発生させる実験室レベルでもペースメーカとの距離が3cm 以上離れておれば、障害は発生しておらず、仮に発生してもペースメーカ側の安全機構により、固定レートでのペーシングになる一時的な障害程度で、離せばすぐに元の正常動作に回復するものである。
実際、携帯電話やスマホでのペースメーカに関する重大人身事故は2019 年1月15 日の時点で、全く起きていない。
ついでに言うと、携帯電話やスマホあるいはパソコンなどの民生機器が発する電波でペースメーカが重大事故を起こした事例も、全く無い。
「患者に幸福をもたらしたか」
車内や医療機関などでの携帯電話利用制限をこのまま続けると、ペースメーカ埋め込み患者が安心するどころか、本当は安心して生活し、外出の際にも自由にすれば良いのに、車内放送や通達により、逆に不要な不安を感じさせてしまうことになる。
患者の幸福には全く逆効果である。患者に無用な不安を煽ってはいけない。
これは単純な理系の電波の知識による判断ではなく、人々の心理や実情を理解する文系のセンスかもしれない。
筆者は循環器専門医として多くの患者を診療しており、電波のことを充分に理解できない高齢患者が多い現状を知っていると、そのように強く思う。
関心のある方は、レジメ全文を入手して読んでください。
医療・福祉における電磁環境研究会
令和元年度 第2回研究会
● 日 時:8月3日(土)14:00〜17:00
● 場 所:東京大学医学部附属病院 中央診療棟27階中会議室
● 座 長:花田英輔(佐賀大学)
● 内 容:医療現場の電磁環境整備等に向けた動き
口演内容の概要
1)医用テレメータとLED照明の電磁両立性に関する研究
石田 開 国立研究開発法人情報通信研究機構 電磁波研究所
(著者希望により予稿不掲載)
よって口演内容は不祥。
2)小児集中治療室の改修で熟考した電気設備のあるべき設計について
長江 祐吾 東京大学医学部附属病院 企画情報運営部
(著者希望により予稿不掲載)
よって口演内容は不祥。
3)重症患者空輸時の医療機器搭載に係る電磁適合性許容指針の必要性
藤田 真敬 防衛医科大学校 防衛医学研究センタ
阪神淡路大震災(平成7 年)の教訓から広域医療搬送が検討され、我が国の患者空輸制度は順調な発展を遂げている。
一方、より重症の患者空輸の需要、新規医療機器の出現から大きな課題に直面している。
重症患者空輸において、人工呼吸器、患者監視モニタ、輸液ポンプなどの医療機器の搭載が必要となる。航空機に搭載する医療機器の電磁適合性の扱いについて我が国に統一指針が無く、官公庁毎、陸海空自衛隊毎、航空会社毎の指針のもとで行われ、災害時の省庁間連携、官民連携への障害が危惧される。