学術研究論文の概要などの紹介 その2です。
2002年以降の情報を別ページ(独立した頁)として、設定しました。
19.2002年3月シンポジウム「リスクコミュニケーションの為の科学的証拠のとらえ方」
20.2002年12月電波産業会 電磁波防護講演会の概要
21.2003年3月開催の生体電磁界シンポジウム
22. 2003年9月開催JET主催2003年電磁界の健康影響に関するシンポジウムの概要
23.環境研「生活環境中の電磁界リスクとガバナンスについて」公開シンポジウム
24.「電磁波リスク問題のより良いガバナンスに向けて」公開シンポジウム2004年
25. MWE2004 マイクロウェーブ展でのワークショップ参加報告
27.「電磁場曝露に関する調査研究報告書(平成9年度〜平成14年度 総括報告書) より
26.運輸分野における電磁環境の安全性評価のワークショップに参加して(2005年)
28.2005年6月 電磁環境セミナ
29.2005年JETの「第6回電磁界の健康影響に関するシンポジウム」聴講の報告
29A.Asia Pacific
Symposium on EMC Taipei 2005のレジメから
29B.スウェーデンのSSI報告2005年より
29C.総務省「諸外国における電波防護規制等に関する調査」報告書2005年より
30.2006年11月 NICT生体電磁環境国際シンポジウムに聴講の記
30A.第4回日韓EU米 生体電磁環境ワークショップ 聴講の記
31.電磁界の健康影響に関するシンポジウム 2007年12月 参加の記
33.保健医療科学誌2007年の電磁波特集
35.2007年建築学会の電磁環境研究発表会に参加の記
32.ロシアにおける電磁波規制と関連技術」 に関する講演会 聴講の記 2008年10月
34.電磁界の健康影響に関するシンポジウム2009年1月(横浜シンポジウム)参観の記
36.総務省電波の安全性講演会 2009年3月 参加の記
37.第2回電磁界情報センターシンポジウム参加の記 2009年3月
38.レパチョリ講演会 2009年6月 参加の記
39.2009年10月 総務省電波講演会聴講の記
40.2009年10月 総務省生体電磁環境研究成果発表会の聴講の記
41.2009年10月 第1回電磁界情報センター電磁界フォーラム 参加の記
42.2009年12月 電磁界情報センター 第2回電磁界フォーラム参加の記
43.第229回 鉄道総研月例発表会(2009年12月)の聴講の記
44.2010年3月 総務省電波講演会参加の記
45.2010年3月 経産省・JET電磁界シンポジウム参加の記
46.2010年4月 衆議院第2議員会館
院内集会「電磁波による健康被害の実態 〜医師による調査報告」 参加の記
47.2010年4月 日弁連主催電磁波シンポジウム聴講の記
48.2010年5月 第3回電磁界情報センターフォーラム参観の記
49.第235回 鉄道総研月例発表会2010年6月の発表から
50.インターフォン研究 ARIB 懇話会2010年7月参加の記
51.電磁界情報センター2010年8月20日セミナ聴講の記
52.2010年8月科学裁判シンポ聴講の記
53.2009年10月総務省「電波の安全性に関する説明会」参加の記
54.電磁界情報センター20101104講演会参加の記
55.20101206経産省電磁界シンポジウム聴講の記
56.20101215電磁界情報センター新ICNIRPガイドライン説明会 聴講の記
57.20110204電磁界情報センター第4回フォーラム聴講の記
58.20110308総務省「電波の安全性に関する説明会」聴講の記
59.20110801総務省「電波の安全性説明会」 聴講の記
60.20110930電磁界情報センター第5回フォーラム参加の記
60A.20111118電気学会2011年講演会の概要
61.20120209電磁界情報センター電磁界セミナ(川崎)聴講の記
62.20120306総務省電波の安全説明会聴講の記
63.20120321電磁界情報センター第6回フォーラム参加の記
64.20120324携帯電話基地局の健康被害シンポジウム 聴講の記
65.平成24年電気学会全国大会プログラム から
66.電磁界情報センター第7回電磁界フォーラム「電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状」参加の記
67.20121002電波の安全性に関する説明会参加の記
68.2012年電磁界の健康影響に関する国際コーディネート会合傍聴の記
69.20121211経産省電磁界シンポジウム聴講の記
70.20121115日弁連電磁波シンポジウム 聴講の記
71.20130315総務省電波の安全説明会の概要
72.2013年11月「シンポジウム どうする?高圧線 健康被害と電力システムを考える」の概要
73.2013年12月東京:経済産業省主催の電磁界シンポジウムの聴講記
74.201403総務省電波安全説明会聴講の記
75.JR総研第276回月例発表会の聴講の記
76.総務省電波の安全性説明会参加の記2015年2月
77.2015年3月 第9回NICT/EMC−NETシンポジウム参加の記
77.20150516電磁波シンポジウム−身近に潜む電磁波のリスクを考える− 参加の記
78.201507 EMC−NET研究会参加の記
79.20160126第10回NICT
EMC-netシンポジウム参加の記
80.20160217総務省電波講演会の概要
81.20160421電子情報通信学会マイクロ波研究会 聴講の記
82.20160705第1回NICT/EMC-NET将来課題研究会参加の記
83.20170123 NICT/EMC-Net聴講の記
84.20170223総務省電波安全講演会の聴講記
85.20171205第4回人体の電磁界ばく露評価研究会
86.20191210第6回人体の電磁界ばく露評価研究会
86A.NICT EMF-NET研究会2020年12月
87.NICT電波ばく露レベルモニタリングシンポジウム2021年12月
88.NICT
EMC-NET 20220110研究会 聴講の記
89.NICT
EMC-Net 2023年 研究会2023年1月
科学と社会を考える土曜講座 が主催した「リスクコミュニケーションの為の科学的証拠のとらえ方」というシンポジウムに参加しました。
2002年3月9日 岩波ホールにて開催。 参加者は60名と狭い会議室にいっぱい。
その概要です。
講演の内容
1.低周波電磁波疫学調査をふまえた話 兜真徳
*細胞MCF7で12ミリガウスの低周波磁界で影響が出た。
*WHOの予防原則の提案を受けて、朝日新聞は「勧告」が出たという表現を使用したが、日本語でいう勧告というような強い意 味ではない。
WHOはこれらに対して、さらに追加のコメントを出している。
英語でのニュアンスをどのように解釈するか非常に難しいことであるが、WHOに行って直接担当官と兜が話をした感じでは、多少は強い感じで「行うべし」とWHOが言っていると感じた。
*イタリアで1兆円の予算を計上した送電線からの磁界対策(予防措置)の費用は、今、見直しがなされている。(場合によってはこの予算はなくなってしまう可能性がある。)
*日本の疫学調査
対照郡に応じてくれた人の応諾率が30%と低い。これは応諾してくれた方の住居の近傍に高圧送電線があったりして、問題意識の強い人が、より多く参加しているというSelection Bias の可能性もあるので、このバイアスに関しても調査中。
対照郡の1週間に平均値を見ると、0.4μT以上の暴露を受けているのは1.5%に過ぎない。
2.リスクコミュニケーションの現場から 新しい化学物質管理 竹田宣人
東京都環境局の職員であるが、都立大学大学院の研究生としての発言
街づくりという観点からのリスクの考え方の解説、
3.リスクコミュニケーションという考えから 吉川 肇子 心理学者
*リスク認知のバイアス
専門家と異なる多数の判断基準がある。ことば使いひとつで判断が決まる。
例「目に見えない」何かの危険は、科学的なリスクをそのまま受け入れようとしない。
*対策ができないリスク、監視していくだけのリスクも存在する。
これらは新しい知識を待つしかない。
*「人々が合意できない」「最良の決定ができない」と時が、真のリスク管理の場
*リスクコミュニケーションは「安全」も「安心」も求めるのではない。リスクは目に見えなくてもたいへんと自覚することかもしれない。
4.全体討議 Q&A
Q:現在の研究の結論がでた時、どうするのか?
A(兜):政府としてはWatchingしている。 IARCの発がん性評価2Bを受けての対応は、4月以降の省庁間連絡会議で論議される であろう。
アメリカではテロの関係でリスクに対して見方が変わってきている。 テロに比べて見えないリスクは低く見られるようになってきている。小児白血病は治療が可能であるという側面もある。
A(吉川):「どうすべきか」ではなく、「どうしたいか」である。
Q:高圧送電線からの磁界の他に、PCなどの家電製品からの磁界の影響は?
A(兜):疫学調査における磁界暴露評価結果では、送電線由来の磁界が大きなウエイトを占めている。 その他の家電製品から の磁界はあってもウエイトは小さい。
細胞実験は予備的な実験である。
原発と疫学の場合は、周囲に住む人口に大きく影響される。
感想:
高圧送電線の下で20年間住み、電磁波の為に夫と子供を亡くしたといって電磁波は怖い、、、と発言した年をとった婦人は、その後ふと見るとPDAからのデータを、携帯電話を使用してどこかに送信していた。
この婦人にとっては高圧線由来の磁界は危険であるが、携帯電話の電波は安全と思っているのであろうか?
作成: 2002−12−9
2002年12月9日に芝公園メルパークで開催された講演会に参加した。
電波産業会ARIBでは年に数回、こうした講演会を開催している。
春には一般の人を対象として、また、11月から1月にかけては、電波に関係する人を対象に、講演会を開催している。
今回は、電波に関係する人を対象とした講演会である。
この講演会では
*携帯電話による電波の健康影響問題と防護指針の動向 都立大学 多気昌生
*WHO電磁界プロジェクトと健康リスク 国立保健医療科学院 大久保千代次
による講演があった。
レジメ(添付)はあったが、そのレジメとは独立にプレゼンが行われた。 私が気のついた点を以下にまとめた。
多気先生の講演から
*電磁波の健康影響を語るとき、むなしい面もある。
*電磁波に関する不安感があるので、規制を行っている。問題があるから、危険性があるから規制を行うのではない。
*過去の規定では、ICNIRPとアメリカのANSIは異なっていたが、ANSIは今後ICNIRPに歩調を合わせる予定。
*再現実験が重要視されるようになり、再現実験の結果も論文として認められるようになった。
今までは再現実験は学術的な価値が低いとされ、論文としては認められず、公表されることは少なかった。
*DNA連鎖の切断というLaiらの研究は、否定されるようになった。
*睡眠に与える健康影響(スイスのチューリッヒ大学)の研究もある。 この程度の差異が問題か?疑問である。
*欧州では電磁波過敏症が問題視されている。 フィンランドの研究では、携帯電話からの電磁波に過敏な人を集めて研究したが、検知できなかった。
BEMSの2002年に報告にある。
*電車の中で携帯電話の電波エネルギーが集積するという本堂研究もあるが、これはおかしい研究である。
*大規模な研究結果からは、高周波電磁界による健康影響は見出されていない。
*携帯電話の基地局からの電磁界による健康影響を疫学で行うことは、やる価値がない とされている。 これは。基地局の近くに住んでいるからといって、それだけで電磁界暴露と深い関係が見出せないからである。
*スウェーデンの脳腫瘍と携帯電話の研究で、携帯電話の使用する左右の脳に脳腫瘍が多いという研究は、リコールバイアスの可能性がある。
*悪影響はないが、影響が全くないともいえない。
以下は多気先生の講演に関する質疑応答から
Q:プレゼンの中で紹介されたマウスをアンテナの周囲に配置して電磁界を暴露している実験では、マウスの頭部とアンテナの距離から考えて、近傍界の暴露にしているのか?
A:そのつもりである。
Q:最近の環境研究所の疫学で、低周波磁界0.4μテスラ以上で小児白血病が2倍という中間報告があるが、先生の見解は?
A:この研究の推進委員であり、評価委員でもあるので、現時点ではコメントはできない。
大久保先生の講演
*WHOプロジェクトは、国際的に統一された基準の推進を図る。
*IARCの発がん性評価2Bは「発ガン性は あるかもしれない」2Aは「おそらく発がん性がある」という表現。 英文ではpossible, Probable
である。
*電磁波過敏症に関するFact Sheetを作成しているが、なかなか最終的に発行されない。
*WHOでは、科学的な知見を超えた勧告は行わない。
(すなわち0.4μテスラ以上の低周波磁界による小児癌増発が科学的であると認定されない限り、0.4μテスラ云々はWHOの勧告には盛り込まれない、という意味に私は受け取った。)
*ラットを用いたBBB脳関門機能への携帯電話の電磁界の影響に関する実験の内容に関して、詳しい説明があった。(この研究は、総務省から公表されている)
大久保先生の講演に関する質疑応答から
Q:発がん性2Bの表現「あるかもしれない」は、日本語のニュアンスとして「あるかもしれないが、最終的にはないことになるかもしれない」という解釈になる。 判定基準4として「発がん性はない」というレベルがあり、2B判定は少なくとも「発がん性がないことはない」になる。 従って2Bは、「可能性がゼロではない」といった表現のほうが適切ではないか?
A:そうかもしれない。 IARCでは英文では厳然たる差異があるPossibleとprobableであるが、これらの表現をやめることも検討している。
作成: 2003−3−5
このシンポジウムに参加した。結果を簡単にまとめました。
1.シンポジウムの概要
生体電磁界シンポジウム BEMS Symposium on Health Effect of
Electromagnetics
日時 平成15年3月4日(火) 午後13時00分 から 17時30分
会場 化学会館ホール 東京都千代田区神田駿河台1-5
主催:生体電磁界シンポジウム実行委員会
共同主催:Bioelectromagnetics Society
「生体電磁界シンポジウム」の開催にあたって
Bioelectromagnetics Society (BEMS)が設立されて,25周年を迎えます。
生体電磁気学(Bioelectromagnetics)は医学,生物学,物理学,工学などの多くの学問領域の学際研究です。
この研究分野は,BEMSの設立を契機として学際的な協力の場を得ることによって,認知された学術分野として発展してきました。
この学会は米国で設立されましたが,世界各国の研究者間の国際的な連携の場として重要な意義を担ってきました。
毎年開催される年次大会(Annual Meeting)には、広く世界各国の研究者が参加しています。
わが国からも多くの研究者が参加しています。
運営面でも現在、副会長(次期会長)はじめ複数の役員がわが国から選出され,活躍しています。
2003年度のBEMSの年次大会は,6月にハワイで開催されます。
BEMSの25周年記念大会にあたり、さまざまな記念行事が予定されています。
この記念の機会に,BEMSとの共同主催による、記念のシンポジウムを開催することになりました。
生体電磁気学の分野で最近の重要な話題は,国際がん研究機関(IARC)が低周波磁界への曝露に対して「ヒトに対する発がん性の可能性がある」と分類したことです。
この判定は,疫学研究において小児白血病と超低周波磁界への曝露の間に一貫した関連性が見られることを唯一の根拠としています。
しかし,磁界の有害性の証拠が生物学実験によって示されていないこと,環境レベルの弱い磁界が健康に影響を与える因果関係を推測できる機序の説明ができないこと,このようリスク上昇がわずかな問題に対しての疫学研究の限界など,さまざまな問題点も残されています。
このため,低周波磁界による健康リスクをどのように理解し,今後のリスク管理にどのように取り組めばよいのか,ということについての戸惑いが見られます。
そこで,本シンポジウムでは,このトピックスに焦点を絞り,低周波磁界の健康リスクについて,さまざまな角度から検討を加える機会を設けたいと思います。
この目的のために,わが国の生体電磁気学研究の中心的な研究者に加えて,小児白血病の臨床経験の豊富な医師の先生にも参加いただくことにしました。
また,約半分の時間をパネルディスカッションの形式で,フロアからのご質問等に基づき幅広く討論し,この問題の現状についての理解を深めることを目的としたプログラムを企画しました。
関係の皆様のご賛同をいただき,このシンポジウムに参加いただければ幸いです。
生体電磁界シンポジウム実行委員長 上野 照剛 東京大学医学部教授 Bioelectromagnetics Society副会長
プログラム
13:00 開会
13:00−13:20 バイオエレクトロマグネティックス研究の25年 上野照剛(東大・医)
13:20−13:50 低周波磁界の生体影響(細胞生物学的影響) 宮越順二(弘前大・医)
13:50−14:20 低周波磁界の生体影響(動物実験) 重光 司(電中研)
14:20−14:50 疫学研究の方法論とリスク評価 山口直人(東京女子医大)
14:50−15:20 低周波磁界の健康影響の疫学研究 兜 眞徳(環境研)
15:40−17:30 特別講演と総合討論(パネルディスカッション)
特別講演 小児白血病発生の原因について 恒松由記子(国立成育医療センター小児腫瘍科医長・血液科医長 )
パネルディスカッション「低周波磁界のリスクをどのように考えるか」
パネリスト: 宮越順二(弘前大・医) 重光司(電中研) 山口直人(東京女子医大) 兜眞徳(国立環境研)
城内博(日大大学院) (当日欠席) 大久保千代次(国立保健医療科学院)
司会: 多氣昌生(都立大大学院)
2.以下は メモしてきた範囲でのシンポジウムの内容
1)バイオエレクトロマグネティックス研究の25年 上野照剛(東大・医)
*BEMSは電磁波の生体影響と医療への応用を研究する人の集まりで、電磁界研究の権威ある学会。
*電気学会の報告によれば「人の居住環境下における50Hz・60Hz磁界強度は2μTから20μTで、DCでは20μTから50 μTであり、環境電磁界は、ヒトの健康影響を与えているとは言えない。」としている。
*今の研究は安全性の精度を高める段階である。
*ガイドラインへの取り扱いは、WHO=大久保、ICNIRP=多気、IARC=宮越である。
*疫学は動物実験などの研究がない時は重要である。
*パルス磁界、ピーク1T、パルス幅100μsで脳細胞を磁気刺激することができる、
*直流磁気8Tでは、骨の成長を促進に影響している。
2)低周波磁界の生体影響(細胞生物学的影響) 宮越順二(弘前大・医)
*細胞増殖・DNA合成には、低周波磁界(ELF磁界)は影響を与えない。
*DNA鎖切断や染色体異常は、低周波磁界強度50mTや400mTでX線暴露の併用により起こる。
数十mTの磁界で発生するこの影響は、μTオーダでは何もなかった。
*ELF電磁界は、染色体異常を引き起こす可能性は非常に小さい。
*他の研究で報告されているコメットアッセイを用いた低周波磁界によるDNA切断への影響は、宮越などの実験では発生しない。
低周波磁界だけの暴露では発生しない。
X線などとともに5、50、400mTの低周波磁界を暴露すると、磁界の影響が現れることから、プロモータ作用と考えられる。
*突然変異の発現は、低周波磁界400mTという強度で発生している。
この場合は、明らかに誘導電流の大きさに比例した影響が出ている。
丸い細胞培養シャーレの外周になるほど誘導電流は大きくなり、影響も大きく出た。
*磁界だけではなく、電界の影響もある。10V/mの電界で、突然変異発生が2倍となった。
でも、磁界の影響に比べると小さい。
*これらの実験から、突然変異を発言させる低周波磁界の閾値は5mTより大きいといえる。
*IARCでの低周波磁界の発がん性2B判定評価に参加した。これまでIARCが発がん性評価を行った中で「グループ2B」と分類されたもののほとんどは「十分な(sufficient)動物実験の証拠があるものの,疫学研究の証拠が不十分(inadequate)、もしくはデータのない(nodata)場合」であった。
ところが,「ELF磁界については不十分な(inadequate)動物実験の証拠でありながら,限定的な(limited)疫学証拠を重くみた結果」となった。
同様な判定を受けている身近なものとして,このグループにはコーヒーや漬け物が含まれる。
3)低周波磁界の生体影響(動物実験) 重光 司(電中研)
*BEMSも25年経過して、電磁波の生体影響はひとつの学問分野となった。
*電中研での研究、他の研究では、動物実験結果はがんやメラトニンへの影響などが報告されているが、影響がないという報告が多い。IARCでの評価で、疫学評価とは異なり、動物実験では「一貫した証拠はない」となっている所以である。
4)疫学研究の方法論とリスク評価 山口直人(東京女子医大)
*疫学はマクロで物事を捉える。 こまかいことを精度よくとらえることは苦手。
*疫学とは、Epi(uponの上に)、demo(people人々)、logoo(discipline学)で、「人々の上に何が起こっているのかを追及する学問」である。
観察が基本で実験とは異なる。
*評価として、因果関係を出すことはしない。
*症例対照研究では、対照群の調査の精度がより重要である。
*個々の疫学調査には限界があるので、複数の疫学研究を総合して、疫学の限界を克服していく。
*大きいリスクの数字を示すものは研究尽くし、現在の疫学では相対危険度RR、オッズ比が1から2程度のものを対象に研究が行われている。
5)低周波磁界の健康影響の疫学研究 兜 眞徳(環境研)
*磁界強度には季節変動があるので、症例と対照の磁界測定はタイミングを合わせて実施した。
*症例1に対して対照群への参加要請10名に対して、応諾率は29%と低い。
これは選択バイアスとして問題となるので、GISを用いた地図上の調査で、対照群で応諾した人とそうでない人の住宅の分布を、送電線からの距離で検討した。送電線に100m以内と100mを超える人を調査したが、選択バイアスの可能性はなかった。
*研究の最終結論として、0.4μT以下の暴露ではリスクは増加しない。
0.4μT以上の暴露でのリスクは2.6倍(0〜14歳)であったが、統計的には有意ではなかった。
実質上リスクは計算できない。
*8歳未満に絞ると、有意にリスクは高くなる。また、リスクは50Hz>60Hz、男性>女性であった。
6)特別講演 小児白血病発生の原因について 恒松由記子(国立成育医療センター小児腫瘍科医長・血液科医長 )
*過去30年間、小児白血病をみてきた。
*家族で兄弟3名が連続的に白血病になった集中発生のケースもあり、調べたが原因は不明であった。
*白血病だけを発症させる遺伝子はまだ見つかっていない。
*日本における小児がんの発生は、がん登録が整備されていないので厳密にはいえないが、大阪の調査では、0-14歳で、白血病が31%、脳腫瘍が21%、リンパ腫が10.5%となっている。
*同じ大阪の調査で、1972年から1995年の調査では、罹患は10万人当たり4名程度で、死亡は2-3名程度で推移しており、増加の傾向はない。他はスクリーニングの効果で増加している。白血病の生存率は70%である。
*全世界では、0-6歳でのALL急性白血病が多い。
*白血病のメカニズムは、成人の白血病のメカニズムと小児白血病のメカニズムとは異なる面が多い。
生まれた時に先天的に異常クローンを持つ割合が1%あり、これが何らかの原因で小児白血病として0.1%の発症にいたると考えられる。
ほとんど潜伏期のまま発症せず、何らかのプロモータが作用し、発症する。
7)パネルディスカッション「低周波磁界のリスクをどのように考えるか」
最初に話題提供を行い、その後にフロアからの質問なども交えて、パネルディスカッションを行った。
司会の多気先生の質問Qは、本人の質問のほかに、あらかじめ入手した質問用紙を読みながらの質問もある。これらは区別していない。
8)話題提供―1 リスク評価とWHOの動向 大久保千代次
*WHOの動向、IARCの判定などの解説があった。
*環境保健基準(EHC: Environment Health Criteria )のワークショップを、EHCの目次7.8.9.10項について9月ごろ日本で開催予定。
その後のディスカッション
*多気:パネルディスカッションでは、低周波ELFの磁界に関して集中的に論議を行う。
*Q(多気):リスクとしての発がん性をどのように考えるか、リスクとしては、発がん性はOne of themか?
*大久保:発がん性2B判定が表に出ている。メンタルヘルスも考えて、電磁波過敏症も対象に加える。
この電磁波過敏症は、原因がどこにあるかは別にして、そのような自覚症状を持っている人がいる。
*兜:発がん性2Bということで、対象となる。
*Q(多気):リスク評価に関しては、それでは発がん性2Bに絞ってもよいか?
*宮越:低周波磁界に関してIn Vitroの研究はほとんど済んでいる。
*Q(多気):低周波電磁界の健康影響は、生物学的にわかっていることは?
*宮越:動物実験、細胞実験では、大きい磁界強度では影響が出ている。0.4μTレベルでの動物、細胞の影響評価は100万匹のマウスを1点で評価するレベルまでやらないと出てこない。動物、細胞レベルの研究と疫学研究にはギャップがある。
*兜:もし低周波磁界のプロモータ作用があるとすれば、疫学調査の結果と調和する。
*Q(多気)遺伝的、先天的な原因は?
*宮越:色々なイベントがあり、遺伝的な要素はFirst Stepとなる。その後に磁界がプロモータとして働いているかもしれない。
動物実験と疫学の間にギャップがある。
*池端(JR総研 フロアから):ショウジョバエを使った実験で、遺伝子を欠損(AT欠損(血管拡張性欠損))させたハエでは20mTで影響が出ている。
遺伝子欠損させなければもっと強い磁界暴露でも異常は発生しない。
このことから、人でもそうした因子を持つ保因者と、普通の人では影響の出方が異なるかも知れない。
*Q(多気)非常に感受性の高い人は特殊なケースとして考えてよいか?
*池端:表面上は正常に見える保因者の感受性が高いことが問題といえる。
*宮越:紫外線やX線では、こうした電離放射線に弱い遺伝子が見つかっている。
低周波磁界に関してはそうした遺伝子が見つかればよい。
*大久保:高暴露群の中で、癌などになりやすい人に絞って研究はできないか?高暴露で小児白血病になる人とならない人がいるがこれらのグループを調査すると、どんな遺伝子なのかわかるのではないか。
*恒松:それをまさに英国、米国で研究中。もう少し経つと出てくる。
*兜:今回の研究ではそれをやろうとしたが、高暴露群の症例が少なかった。2%ぐらいなので-。
*多気:低周波電磁界研究では、2mGでは何も出てきていない。
*Q(大久保 多気):電力消費が増えればそれに伴う磁界暴露も増える。
日本ではここ20年来小児白血病は増加していない。しかし消費電力は着実に増加している。電磁界が本当に影響あるのか。
*恒松:日本では小児白血病の地域登録が完全でないので、増えているかどうか不明
*山口:仮に相対危険度を2として、白血病全体への磁界の寄与率を計算してみると1%程度である。
したがって、この程度の寄与率であれば、電力消費の増加との因果関係を追いかけても多分つかまらないであろう。
*Q(フロアから):先日TVのウェークアップを見たが、先生方は厳密にそして良心的に話されているが、TVは悪意に満ちている。
発がん性についてIARCのマトリックスがバイブルのようになっているが、動物実験と疫学の関係がおかしくないか。
本来疫学をやってから動物実験をやるのが通常でないか。
*兜:各研究を順番にやるフローで見るものではない。すべては動物実験で確認は出来ていない。
砒素を例に取ると、人では明らかに皮膚がんを誘発する。
しかし、動物実験では発生しない。こうしたケースもある。疫学と動物実験が一致しないこともありえる。
*宮越:疫学を重視して2B判定を行ったことは確かである。IARCでの普通の判定法では定性的な判定を行い、定量的な判定は行わない。
今回の低周波磁界の判定で、0.4μT以上で云々という数値を前に出した判定は、稀なケース。
*Q.(フロア):研究者の話す言葉と、一般の人たちのwordingが違うので、一般の人たちが受け取る意味が違ってくる。
*兜:説明するときは、IARCの決められ方などを含めて説明している。
*多気:2Bの捕らえ方はどうかという点について、2Bの内身近なもの(コーヒー、漬物等)は今までどのように扱っているか、また産業衛生の中で、どのように扱っているのか、その比較などを城内先生に話してもらおうと思っていたのですが、今日は残念ながら欠席です。
9)話題提供―2:リスク管理と予防原則 大久保千代次
*WHOでは科学的な根拠による以上の政策を推奨しない。
*90%以上の信頼性でICNIRPはガイドラインを作っている。
*この2月ルクセンブルグで開催されたEUとWHOの予防原則に関するワークショップに参加した。
審議結果に基づいてこれから文書の作成を行う。
科学的な論拠による暴露制限ということでICNIRPのガイドラインが基本となる。
しかし、法的ではなく、ボランタリーとして予防原則の実施も含める。
現状のままで何もしないことも予防原則の検討結果としての選択肢の一つ。
携帯電話の使用を全面的に禁止することも同じく選択肢の一つ。
以降はディスカッション
*Q(フロアから): ==?==
*重光:論文を見れば、パルス磁界をかけると有益な生体効果が見られるケースがある。
*Q.(多気): WHOの役割は、リスク評価であり、リスク管理ではないはず。なのに、なぜ予防原則を討議しているのか。
*大久保:WHOの健康の定義からすると、社会的にも健康であるために予防に力を入れている。
*Q.(フロア) :マウスから血液を採取して、電磁波を照射して白血病になるかならないかを調べる実験はやられているか。
*恒松:人とマウスの白血病は違うのではないか。今まで考えたことがないので、すぐには答えられない。
*重光:動物実験はない。
*Q(フロアから): ==?==
*兜:大久保さんとともにルクセンブルグの会議に出席した。予防原則の取り上げ方は国によって温度差がある。
*大久保:ウェークアップの予防原則のコメントは間違っている。Hazardがわかっているものに対するものは予防でpreventionである。
*山口:IARC判定2Bは、登山で言えば中腹に当たる。さらに登り続けるか山を降りるか、そういう状況にある。
研究を継続するか? 現状では手詰まりである、疫学ではこれ以上のことはできない、動物実験も100点満点ではなく、あるモデルに従って行っているものである。こちらも手詰まり。
*Q(多気);磁界暴露とCost Benifitは?予防原則の適用はコスト-ベネフィットを考えるべきである。
磁界対策の場合ベネフィットはあるのか、送電線を移し変えるより、白血病研究、骨髄バンク充実などをしたほうがいいのではないか。
*恒松:どの地域でどれぐらい発生しているかを見るべきである。
イギリスでは集中発生しているか、細かく見ている。お金のかけ方については別問題である。
*兜:いろんな考えの人がいる。健康と金はトレードオフすべきではないという人もいる。
健康は必ずまもるべきものである、とする人たちがいる。
イタリアでは、US$6500Mを1500Mに削減、3μTに引き上げて対策をとっている。
スイスは1μTでやっている。いろんな意見がある。
*大久保:コスト中心、ベネフィット中心に考えて他は考えないやり方がある。
予防原則をコスト-ベネフィットで実施したことはまだない。
*山口:同じ2Bでコーヒーはなぜ予防原則をやらないか、パブリックの提起がない。
世論の高まりと、結果のエビデンスよってやることになるであろう。
たとえばコーヒーによって膀胱がんになったと言う人が増えてくれば。
予防原則はサイエンスではない。政策決定に正義はないこともある。
声の大きいほうに走る、マジョリティが勝つ。
よりよい決定のためにどうするか。
タバコのようにメーカを訴えるケースで行くか、ステークホールダがテーブルに載って、冷静に納得してやるか。
不毛の議論をやっていくかあるいは冷静に処するか、今がクリティカルな時期であろう。
われわれ科学者だけの力ではだめである。
*重光:最後に、25年かけてBEMSもここまで来た。これからは電磁界の有効利用の研究推進もひとつの道である。
10)参加者は100名程度、狭い部屋にほぼ満席。
作成; 2003-9-19
2003年9月9日東京JAホールで開催されたシンポジウムの概要です。
詳細は予稿集などを参照
1.主催者の挨拶 JET高本理事長
低周波に限定した電磁界の健康影響に関するシンポジウムです。本日は300数十名の参加を得ている。
2.基調講演「電磁界と健康」 国立保健医療科学院 大久保千代次
・興味のトリガは、1979年のデンバー地区の小児白血病発生率に関する統計発表
・その後RAPID計画やWHOのプロジェクト等がスタート
・電磁界とは...(既にご存じの通り)
・疫学研究とは、環境因子を設定しその因子が病気を引き起こす可能性を調べる統計的研究
・その強みは実社会における「人」を対象にしていること(動物や細胞ではない)
・相対危険度(Relative Risk : RR)が1を超えると正の関係あり、大きくなるほど関係強
・0.4μTを超える暴露レベルでは小児白血病のRRは2倍になり統計的に有意
・生物学的研究とは、「人」ではなく動物や細胞を使うが、精度高く再現性もある
・この分野では居住環境におけるELF電磁界による健康影響があるという確実な証拠は見つかっていない。
しかし、確実に影響がないという証拠もない。(生活環境を超える強い電磁界では様々な影響が知られている)
・各専門機関の見解は予稿集記載の通り
・国際的なガイドラインはICNIRP、但しこれは熱的・刺激的根拠によるもので発ガン性など非熱的なものは考慮されていない
・各国の規制状況は予稿集記載の通り
・予防原則:確定していないリスクに対してコストと便益を検討しつつ導入
・日本の国レベルでの取り組みは予稿集記載の通り、研究者間のネットワークも進んでいる
・国際的な取り組みはWHOのプロジェクト、スケジュールは遅れぎみ、基準はICNIRPから
・WHOのファクトシート(解説書)はWHOのWEBサイトからダウンロード可能
・JETのWEBサイトでも詳しい情報を提供している
・疫学や動物、細胞実験などを総合的に評価する必要がある。
・IARCの発ガン判定は、発癌物質であるかどうかを様々な証拠を基に分類したもので、発がん性の強さや、社会的なリスクの大きさを評価したものではない。
・予防原則には、「何もしない」から「規制を行う」まで幅の広い選択肢がある。
・WHO国際EMFプロイジェクトでは、暴露基準作成は行わないが、各国の基準のハーモナイズは行う。
・WHOのEHCモノグラムの発行
低周波のEHCは2003年の予定であったが、2004年に延びる。報道発表は2004年の春、実際の文書の発行は2004年の夏以降になるかもしれない。
3.特別講演「身の回りのリスクとリスクコミュニケージョン」吉川肇子
・「リスク」を「危険」と訳すことによる誤解があるかもしれない。リスクは危険そのものを示すものではない。
・学問としてのリスクの表し方は「被害の大きさ」×「発生確率」、「程度」×「度合」の場合も
(注:電磁界の場合「電磁界の強さ」×「暴露時間」は意味がない)
・専門家と一般の人々ではリスクのとらえ方が変わる(どちらが正しいということはない)
・リスクコミュニケーション:様々な人々が話し合って判断基準を決めていく
・リスクコミュニケーションという言葉は1980年頃から出てきたが、新しい手法ではない
・課題として「価値観」が反映していることを理解すべき、特に電磁界問題のように科学的に立証しきれないものはその傾向が強い
4.パネルディスカッション
各10分程度の講演の後にパネルディスカッションを行う。
テーマ1「疫学研究の概要」兜正徳
・講演内容は文部科学省のWEBサイトで紹介したもの (http://www.chousei-seika.com/search/info/infonet.aspx)
・この調査の強みは、国内全てを登録し、データが新鮮であること
・小児白血病のALL(急性リンパ性白血病)に注目すると、0.4μT以上の暴露では4.73倍のリスクがあり、明らかに正の関係がある
・0.4μT以上の磁界に暴露している割合は1%未満であった。
・そうした高レベル群は、高圧送電線周辺の家屋だけではなかった。
(BEMSJ注:高圧送電線周辺ではない場合は、どのような場所で、どのような発生源か?これに関しては触れられていない、機会を見て質問しましょう!)
テーマ2「動物実験の概要」重光司
・ガン、生殖、神経系の研究を行った
・ガン発症に関しての影響は確認されていない
・生殖に関しての影響は確認されていない
・神経系に関しての影響はほとんど確認されていない
・動物実験は多くの論文があり、すべてを横に並べて真贋を判断していくことも大切
・FAMの1993年、1996年の研究で影響があるとされた研究(60Hz24mT磁界をマウスに3世代に渡って暴露)の暴露設備は疑問のあるものであった。
・動物実験では、再現性が重要である。
テーマ3「細胞実験の概要」宮越順二
・細胞増殖や染色体異常、DNA鎖切断などを評価している
・結論として生活環境でのELFは細胞増殖やDNA合成に影響しないだろう
・数十mTを超える強磁界では染色体異常やDNA鎖切断、突然変異を誘発する
・ELFの影響については、 私見として、閾値Th>5mTと推定、但し複合暴露の場合は変わってくる
・研究者によってはもっと低い閾を提案している人もいる
テーマ4「ICNIRPガイドライン」多氣昌生
・日本の電波防護指針は50/60Hzをカバーしていない、電気設備基準は感電防止を意図
・米国、英国は予稿集の通り(0Hz〜がやっとできた)
・ICNIRPのガイドラインを越えてもただちに悪影響が出るわけではない
・ガイドライン内であっても未知の生体作用があるかもしれない
・基本制限の値は測定しづらいので、測定しやすい参考レベルを示している
・不確かなリスクへの対応の必要性を今後の改訂にいれていく
・ICNIRPガイドラインの改訂作業 低周波側から開始する。
・2004年5月にメンバーが大きく変わるが、既に基本方針が出ているので向かう方向は変わらないだろう(委員の任期は3期12年を限度と規定)
パネルディスカッション 司会:大久保千代次
重光:予防原則といった場合、規制を伴うものか?
吉川:規制を伴うと考えている人もいる。
大久保:WHOの予防原則では行政が最終責任者である。
宮越:吉川さんの講演では専門家と非専門家の違いを強調されているが、非専門家とは?選び方は何かあるか。
吉川:非専門家といっても多様なので、一言ではいえない。
知識、関心の持ちようで異なる。
知識、関心の違い、マスコミ、NPO、NGO、一般公衆など非専門家の代表を選ぶのは難しい。
選び方はない。わかりやすくするために、二者対立の形で説明した。
大久保:リスクに起こる可能性が考慮される。
吉川さんの講演にあった「電磁界のリスク=強度X暴露時間」に関して、どのように考える?
吉川:電磁波に関しては専門ではないので、わからない。
兜:来週 日本でWHOリスク評価に関するWGを開催し、疫学、暴露の専門家で集中審議を行う子供の部屋での曝露量について、過去の集積度は不明。電磁界に関しては電離放射線のような累積線量というようなことはいえない、暴露強度何μTx暴露年数という形での暴露評価は難しい。
大久保:吉川氏の説明に電磁波リスクを「強さ」×「時間」と表現されていたがどう考えるか?
兜:電離放射線の被爆線量のようなとらえ方はできない。
大久保: 「強さ」×「時間」の強さが強い時と弱い時で違いは出るか?
重光:弱い×2年で出ない、強い×数時間で出る場合あり。「低レベルの磁界強度×時間」を評価基準として過去の報告を見たとして、一口で言えばそうしたことはない。EMFは不確実性が伴なっている。
宮越:細胞実験では答えはない。イオン化として考え、電離放射線では線量として累積を考える。
非電離放射線の暴露では、誘導電流による突然変異の増加が、暴露時間によって増えた例はある。
大久保:高周波では どうか?
宮越:まだ ない。高周波ではSARで考えているので。ELFが細胞に影響しているのは、遺伝子に直接影響するのではなく、遺伝子が動いているときに何か影響を受けているかもしれない。間接影響なので遺伝子合成しているときしか影響を受けない。
多氣:吉川さんの「強度×時間」は、例として話をされただけではないでしょうか。
大久保:兜先生の講演に関する質問は?
兜:その前に、今回の研究の公衆衛生的な意義に関して説明します。
主催者からの依頼のあったテーマです。0.4μT以上の磁界暴露を受ける割合を1%とすれば、日本では対象人口は15歳未満の人:20万人となる。
小児白血病の発生率を10万人当たり3.5人として、ALL+AMLの場合は、リスクを2.6倍とすれば磁界暴露による過剰発生は年間11名。
ALLだけとすればリスクが4.7倍となるので、年間過剰発生は20名となる。
宮越:動物や細胞の中ではどうしても見つけられない。
兜先生は動物実験もやっているようだが、何かメカニズムに関する考えはないか?こうした疫学研究から、何か想定されるメカニズムは?
兜:MCF-7の細胞で乳がんの実験も行った。メラトニンを入れると細胞分裂が抑制される、メラトニンの機能が12mG程度の磁界に1週間曝露でも抑制された。
メラトニンの機能としてのがん細胞分裂抑制作用がなくなるという実験結果がある。
メラトニンが利いているプロセスにチャージがかかった時だけ抑制作用があるとすると(仮説)このようなことが生じる。
特定の脳腫瘍細胞に働くメラトニンに対しても、磁界が効果を抑制する例がある。
シャーレの中の曝露とヒトへの曝露が同じかどうかは不明。急性に対しては影響がないと見てよい。追加実験をおこないたい。
5.質疑応答 会場からの質問を集めて、応答を行った。 司会(大久保)が質問を読み、講演者が回答
Q:日本人の国民性を考慮したリスクコミュニケーションのあり方は?
A(吉川):リスクコミュニケーションに国民性は関与しない。むしろ日本人といってもいろいろなレベルの人がある。
日本の国民の中でも色々な人がいる。リスクコミュニケーションの言葉は広がらないかも知れないが、考え方は広がる。
例えば自動車のリコール。これは社会の中でリスク情報を共有することで安全とするシステム。
Q:電磁波の健康影響は、小児白血病に限定されるのか?
A(大久保):基調講演で話をしたように、いろいろある。
IARCが評価した時も小児白血病が位置付けられた。
WHOはヒトへの栄起用として、ガンのほかに生殖、神経、過敏症なども加えている。
リスクとして、評価に耐えるものとしては小児白血病がトップ。
Q:電磁界の健康影響を周波数別に個別に考える必要はあるのか?
A(多氣):電磁界と一言であっても50Hzから300GHzまで8桁の幅がある。
たとえば人の身長を考えても電磁界暴露下におけるカップリングを考ええても、波長1m以下と以上では影響が異なる。
体内の臓器の大きさを考えても、臓器の大きさを考慮すれば波長による影響度の違いは出てくる。
このように周波数によって影響度は異なる。
Q:疫学研究で家電製品からの磁界影響はなかったのか?
A(兜):家電製品に関しては、アメリカの報告書で質問票の中に入っており、家電製品の利用がリスクになっていないか調査しており、今回も質問表の中で調査を行った。
家電製品の使用が小児白血病のバイアスになっていないかチェックしている。
電気毛布、カーペットなど個々の家電製品の使用との関係に関しては、現在も検討中である。
Q:強い磁界での研究は多数あるが、そうした研究から住環境下のような低レベル磁界の影響を外装できるのか?
A(宮越):一言で言うのは難しい。閾値のある研究を持ち寄って検討すべき。
A(重光):低レベルの磁界での動物実験はいろいろな暴露条件を整備する必要があって、困難である。
Q:最近北里大学の研究云々が報道されているが、電磁波過敏症に関しては?
A(大久保):1990年代前半にはそうした研究もあった。北里大学の研究に関しては細かい情報がないのでなんともいえない。
電磁波過敏症の存在はある。自分自身がそう思うことでそうなる。
科学的に電磁界とどう結びついているかは不明である。
こうした電磁波過敏症の研究では2重盲検法で行なう必要がある。
Q:2001年、2Bに指定されたことに関し、IARCの評価は疫学結果を重視し、ICNIRPは動物実験結果からのサポ―トがないため、ガイドラインにいれることを見送っている。別々の見解を出しているのをどう見るか。
A(兜):ICNIRPは発ガンの慢性曝露については考慮していない。
急性についてはガイドラインとしている。
その後IARCは4mGで2B、2倍のリスクと具体的に書いている。
ICNIRPはPrecautional riskとして取り入れていくかどうか不明。
A(多氣):IARCは人に対する発がん性評価を行うので、人を対象とした疫学研究が重視される。
疫学の場合は、各種バイアスが排除できないという欠点がある。
ICNIRPは発ガン性の強さのみを入れているのではなく、因果関係があるかないかを含めた、法規制などの基準に使用されることを念頭において策定しているので、科学的に確定したものをベースとしている。
健康影響に関して、可能性が排除できないケースに関しては、ICNIRPではなく、別のやり方が必要となる。
同列に扱うことは避けるべき。
兜先生の言われた、慢性曝露については考慮していないというのは、慢性影響の結果に対して何も出ていないので触れていないだけです。
Q:ICNIRPの安全率50倍の根拠は?
A(多氣):科学的に判断された閾値を設定し、そこから10倍の安全率を見て職業的な暴露基準を定め、一般公衆は様々な人がいるのでさらに5倍の安全率を見越した。
Q:兜先生の研究で、低周波磁界と小児がんの研究は、これで結論が出たといえるのか?それとも更なる研究が必要となるのか?
A(兜):2.3年の研究で、ある程度の決論は出た、といえる。今回の結果は、他の研究の追認という形となった。
これ以上の予算をつぎ込んでの研究は考えていない。
IARCの評価の後、さらにイギリスの評価結果がでてきて、イタリアがおくれている。
日本がいかに効率よく結果を出したかということ。
今後はこれらの評価をどう取り入れていくかということだが、ICNIRPのガイドがバックにあって、Precautional Frame workに書き込むようなスタイルになるのではないか。
Q:兜先生の研究を文部科学省のWEBで読んだ。一部母親の喫煙など交絡因子と思われる因子があると思うが?
A(兜):交絡因子に関しては、全部まとめた場合も、個別でも解析を行った。
Q:WHOのEHCの発行の進捗状況は?
A(大久保):低周波のEHCは、2003年12月の予定であったが遅れている。
早くて2004年春に報道発表になるのではないか。
Q:ICNIRPのガイドラインはWHOの暴露指針となるのか?
A(多氣):WHOはリスクの評価を行う、リスク評価に基づいてガイドラインを策定するのはICNIRPという役割分担になっている。
問題はPrecautional Frame workであり、科学的ガイドをだすものである。
何らかの数値を出すにしても、予防原則云々の話となればICNIRPの仕事ではなく、WHOの仕事となる。
1999年ロンドンで環境保健相会議が開かれ、WHOがPrecautinal Frame Workを要請された。
この結果WHOは本来とは違うことをやるようになった。
以上
作成: 2003−10−15
気のついた点をメモした、その他は予稿集を参照。
開催:2003年9月15日 東京:ホテルハートイン乃木坂.
1.兜先生の挨拶から
当初の予定から講演者の都合などで変更があった。
アメリカのGreenlandさんは都合が悪くなり欠席、高周波(携帯電話)と脳腫瘍の易学研究に関して山口直人さんに話をしてもらう予定であったが、この内容は「時期尚早」ということで取りやめた。
2.環境研究所 西岡所長の挨拶
数日のうちに多くの申し込みがあり、関心が高い。
電磁界の科学的評価に対する関心の高さをどのように当てはめて政策にまで持っていくかが大事である。
生活環境にかかわるものとして、米国RAPID計画に焦点を当て、細胞実験、疫学調査を進めてきた。
6月に文科省より日本での疫学の発表があった。
本日は、兜先生、WHO担当者のカイフェツ博士、カロリンスカ研究所のオルボーン博士の発表をしてもらいます。
3.電磁界と小児がんに関する疫学研究に関する講演
「小児白血病の疫学調査のプール分析:カロリンスカ研究所:オルボーン」
・個別の疫学調査では高曝露群における症例数が少なく、十分な解析ができなかったが、プール分析を行うことによって、高曝露群における症例数などを大きくすることができ、解析が可能になった。
結果として、プール分析で、0.4μT以上の高曝露群では、症例数が44となり、相対危険度RRが2.00、95%信頼区間が1.27−3.13と狭くなり、下限値も1を超えるようになった。
・IRACの発ガン判定2Bは、科学的な不確実性を持っている。
しかし、公衆衛生の観点からは、発がん性があるとして取り扱うことになり、政策決定が必要となる。
・現在、ドイツ、アメリカのカリフォルニア、イタリアで疫学研究が継続中。
質疑応答
Q(フロア):疫学の研究成果の話の中に、磁界の強度は示されたが、周波数は?
A:住環境下における50Hz、60Hzの磁界である。
Q(フロア:東北大):電力消費は歴史的に見れば増加傾向にあるが、一方で小児白血病の発生率などは横ばいにあり、電力消費の増加は磁界暴露の増加に密接しているはずである。
これらのことと磁界による白血病リスクの疫学研究を如何に考えるか?
A:白血病の中で、磁界に関連している割合が低いので、そうした電力量との相関では検出できないのかもしれない。
4.電磁界と小児がんに関する疫学研究に関する講演
「わが国の小児がんの疫学調査結果概要 小児白血病について 環境研:兜真徳」
・6月に文部科学省のWEBに報告書を掲載してから、初めての詳細報告である。
・高圧送電線および住宅近傍の6600V配電線からの磁界漏洩に着目した。
高曝露群は高圧送電線の近くに住む人だけではなく、6600V配電線による高曝露の例もある。
家電機器からの磁界は別途考慮とした。
・小児白血病の発症は5歳以下が多い。
・ALL(リンパ性)とAML(骨髄性)を一括するとRRは2.63
ALLのみで解析するとRRは4.73 となる。
これらから磁界はAMLにとってはNegative Riskとなっているのかもしれない。(BEMSJ注:磁界暴露はAMLのリスクを減らす方向に働く という意味)
・暴露測定データの日内変動、週内変動を見ると、送電線・配電線からの磁界を反映していた。
5.電磁界と小児がんに関する疫学研究に関する講演
「わが国の小児がんの疫学調査結果概要 小児脳腫瘍について 国立成育医療センター斉藤友博」
・小児脳腫瘍は1−5歳での発症が多い。
がんになるためには数年の年月が必要なので、胎児期の暴露の関与が疑われる。
・疑われているリスクの例 いろいろな研究があり、はっきりしないが傾向として
母親の薬剤使用: 睡眠薬 RR:1−5倍
母親の喫煙: RR 0.9−2倍
母親の食生活で 燻製や焼き魚などこげるもの RR 0.4−6倍
子供がフルーツを食べる 0.2−4倍
父親が職業的に炭化水素に暴露 RR 0.1−2倍
こうしたリスクの大きさと、電磁界によるリスクの大きさを比較して考える。
・今回の疫学研究から、リスクがあるとして計算した場合の、小児脳腫瘍の余剰リスクは年10名となる。
6.講演「WHOのリスク評価とリスクマネジメントの考え方 WHO:L. Kheifets」
・WHOのA Dialogue on Risks from
EMFの日本語訳ができている。
質疑応答
Q(フロア):リスクコミュニケーションにあっては利害関係者を入れることが肝要とあるが、国によってはうまく関係者を集めることができるとは限らない。どうすべきか?
A:リスクコミュニケーションとは広報活動にとどまらない、各国の状況に応じて、利害関係者を集めればよい。
Q(フロア):私の質問の趣旨は、リスクコミュニケーションでうまくいった事例などを教えて欲しいのですが。
A:アメリカでは、原子力発電所の近傍の住民を参加させて健康調査などを行っている。
7.パネルディスカッション 司会者:東京女子医大の山口直人
最初に司会者が質問を出し、各パネラーが回答をし、その後にフロアからの質問を入れて討論を行った。
山口:RAPID計画の推進者であったアメリカNIEHSのC. Portierさん
Portier:
・NIEHSではRAPID計画の後、現在では子供の健康、水質、漢方薬、ナノテク関連の研究を行っている。
規制を作るより、データを作ることが仕事。
・EMFのRAPID計画では3年間で15回の公聴会を実施している。
電磁波の健康影響に関しては、電力・送電線からの磁界から、現在では、携帯電話の影響に関心が移ってきている。
低周波磁界に関しては、アメリカ政府としては、RAPID計画後はさほど進展していない。
・IARCの発ガン判定で2Bにリストされても、法的な規制などを行っていない物質もあり、低周波磁界もそうしたもののひとつとして取り扱っている。
・電磁界の健康影響は、現在では国家的なプロジェクトにはなっていない。
・現在は小児白血病に関して、電磁界にとどまらず、真の原因を探る研究を行っている。
なぜならば、小児白血病の原因がわかっていないからである。
山口:英国で疫学調査を推進されたJ. Swansonさん、イギリスでは1998年のイギリスでの小児白血病と低周波磁界の疫学研究でリスクは否定できないが、高い曝露群での症例は多くはなく、0.4μTを超える暴露でも相関はないと問題なしとしている。
最近では高周波RFの健康影響をかなり探求して、厳しい対応を取っています。現在の低周波磁界に関する見解は?
Swanson:
・英国における低周波磁界の疫学調査ではリスクはないという結論であった。
この結果で低周波磁界の問題を忘れてもよいとはいえない、なぜならば、その後の英国のデータも含めたオルボーンのプール分析での0.4μTで2倍のリスクがあるとの結果を無視できないからである。
・低周波磁界のリスクはリスクの大きさに応じた応分の負担をとるべきである。
・一般大衆は目にすることが多くなった携帯電話の基地局からの電磁界に大きな関心を持つようになっており、政府としても対応などの検討が必要となっている。
・リスクの存在を放置すべきではない、電力業界ではもっと責任のある行動をとろうとしている。
社会全体に対する企業の責任としては、放置は正しくない。
・2月にWHOのルクセンブルクで開催された予防原則のワークショップに参加しており、すべてのグループを代表して何をすべきか模索している。
山口:アメリカUCLAのA. Afifiさん、疫学ではプール分析が重視されているが、方法論について解説をしてください。
Afifi:
・メタ解析は対象とする個々の研究を1ポイントとして取り扱う、各研究の質を考慮する必要がある。
医学界における統計・方法は疫学研究にも当てはまる均一な方法はないが、メタアナリシスではひとつの試験報告をひとつの独立した解析要素として取り扱う。
・プール分析は、個々に行われた疫学研究の生データ(1次データ)を集めて、ひとつの大きな母集団として改めて解析を行う。
個々の調査における症例数はプール分析では重み付けを与える。
・職業曝露や脳腫瘍と白血病調査に関係しているので報告するが、なぜメタ分析で2つの報告に差がでたかを調べる必要がある。
たとえば、ランダムサンプリングでなかったか等。
山口:アメリカのB. Kauneさん 今話題になっている接触電流に関して解説をしてください。
Kaune:
・疫学研究で、磁界への暴露0.4μTで小児白血病のリスクが2倍となっているが、なぜそうした結果になるのか、因果関係はどうか、まだわかっていない。何か交絡因子が入っているのかもしれない。計測された曝露と発生に関連がなければならない。
・こうした観点からアメリカでは接触電流の検討を行っている。アメリカの配電システムは感電を防ぐためにアース接地を行っている。
アースに流れ込む電流によって小さいかもしれないが電位降下が発生する。
家庭内のアースに接続されている金属やアース接地されている箇所では、数ミリボルトかもしれないが電位を持つ。
こうした電位を持つ部分に体が触れることによって、接触電流が体内に流れるのではないかと、かんがえている。
シャワーを浴びるときに、金属製のカランに触れれば、ぬれた手や体に電流が流れる。
こうした接触電流は仮説の段階である。家屋の中に電磁場が高くなるのか、磁界の曝露を受けるのか測定データはない。
山口:WHOでEHCなどを担当されているE. Deventerさん、リスクコミュニケーションの実施に当たって、リスク認知や行政などで、日本特有のものがあるかもしれない。WHOでの世界基準作成に際して、いかにこうした特異点を盛り込むか?
Deventer:
・リスク認知は国などで異なる。アメリカではインタネットなどを利用して、幅広い公聴会を実施している。
フランスではパリの政府が決めてしまう、といったように。フランスではすこし方針変更を行ってきてはいる。
山口:アメリカのEPRIで疫学を担当されているG. Mezeiさん、低周波磁界のリスクに関して、今後いかなる研究を行うべきか?
Mezei:
・われわれは何をなすべきか、3mG、4mGに曝露された場合のオルボーン先生の研究結果ではそうだろうが、動物実験ではnegativeである。
・0.4μTと小児がんの関係に関しては、選択バイアスの対処に関する研究と接触電流に関する研究を行うべきである。
選択バイアスではケース・コントロールでどのような影響があるかを調べる。
カリフォルニア大バークレイ校や電力中央研究所(EPRI)で接触電流を研究する。
山口: それでは今からフロアの方からの質問も交えて、討論を行う。最初に日本の疫学に関してパネラーの皆さんからのコメントを。
Kkeifts:白血病に関する疫学では他の研究と同じ結論になっている。
ケース・コントロールの参加したもののバイアスについて、かなり多くことを網羅している。
優れた研究だ。日本での曝露評価を精密にする必要がある。
日本での高曝露群の割合が低くなっているが、これまでは高曝露群の割合は高いのではないかと思われてきた。
それが否定された。1週間のデータをとることによって平均されて低くなったのか、数値を見る必要がある。
本当に日本では高曝露群の割合が低いのか確認が必要である。
Ahlbom:先ほどのコメントに同じ。
山口:2004年に出るWHOのEHCは?これに日本の声をどうやって反映させる?
Kheifets:EHCのドラフトはwebsiteに公開しており、意見を取り込もうとしている。
日本からは諮問委員として兜、大久保先生が参加している。
この二人経由でも、また直接WHOにコメントでもできる。WHOにとって日本も利害関係者であるので意見を言ってください。
Q(フロア):産業医科大学 吉村):リスクコミュニケーションの実施に当たって、いかに0.4μT以上の磁界暴露による影響度を明確にするか?
Ahlbom: 科学者として研究し、結果を出すことと、その結果を大衆に伝えることは別である。
そうした説明は難しい。同僚の研究者に話をするのは簡単である。
小児白血病における電磁界の寄与率を出すことは可能で、2倍になったとして、たとえば1%となる。全症例の一部としかならない。
公衆衛生の問題で、コストとベニフィットとの問題である。
Q(フロア:電気技術者):フランスでは美観の観点から送電線は外に出さず、埋設している、フランスでの小児白血病の率は?
A:ある場所では埋設かもしれないが、高圧送電線に関していえば架空送電線となっている。
A(山口):送電線と小児白血病の率を単純に比較したとする。小児がんにおける磁界の寄与率は1%程度なので2倍になったとしても、症例数100が101になるだけなので、全体の小児がんの罹患率などに影響を与えるレベルにない。
IARCで販売しているCD-RONに世界のガンの死亡率が入っている。
A(兜):高圧送電線を埋設した場合は、線間の距離が短くなるので、磁界が打ち消しあい、低磁界となるかもしれない。すべてとはいい切れないが。
Q(山口):疫学の将来像は?さらに追加してやるべきか、新しいものに進むべきか。
Ahlbom : 新しい研究をやるのもよいが、現在の結果の解析を徹底してやるべき。
山口:兜先生の発表に関する質問は?
Q(フロア:三浦):これまでの疫学調査では、磁界の暴露は家庭における暴露だけを見てきている。
家庭外での磁界暴露、たとえば電車など、を考慮し、家庭での暴露が個人暴露にとって主要な暴露源であることの確認はされているのか?
兜:空間別、時間別分布の平均化をしても、実際の曝露レベルではないケースがある。
電気カーペットや電気毛布などの個別の電気機器の使用である。
背景(バックグラウンド)のリスクと個別の電気機器のリスクは別にしている。
NCIもリスクを別途分けている。これまでの疫学調査では背景暴露は別扱いにしている。
24時間の個人暴露と、24時間の背景暴露との乖離はこれからも検討する。
電気毛布を使うことがどれだけのリスクになるのかはデータがない。バックグラウンドリスクに関しては、他の電気機器の使用が交絡因子になっていないことは確認した。
Q(フロア:主婦 唐沢):主婦で、自称電磁波過敏症です。高圧送電線から100m位のところに30年間すみ、ある日突然 過敏症になった。
50名以上のこうした過敏症に悩んでいる人がいる。
山口:どなたかパネラーから回答は? (回答なし)、貴重なコメントに感謝します。
Q(フロア):電磁波問題の市民運動グループです。WHOでの発がん性判定2Bとなった。
2Bというリスクを一般の人にわかりやすく説明する方法は? コーヒーと同じなので問題なしとする説もある。
Kheifet: 小児白血病の因果関係のみを取り上げた疫学結果のプール分析から2Bとなっている、選択バイアスの可能性も残っている。
2Bには多くの物質がリストされている。(三浦注:質問の趣旨が生かされていない)
Q(フロア:大久保):疫学調査をこれ以上行っても答えは出てこないだろう。動物実験との結果の乖離も大きい。
このままでは結論は出ない。これは大久保の仮説であるが、人に何か特有な遺伝子があって、その遺伝子に磁界などが関与した場合にのみ発症するのではないか?高曝露群での遺伝子の研究を行ってはどうか?
Portier:アメリカではRAPID終了後、小児白血病に関しては、電磁波に限定せずに、一般論として、幅広く小児白血病の病因を探る研究を行っている。
こうした研究を行うべきである。そうした研究の中から、やがて電磁波の関与もわかってくるかもしれない。
RAPID計画で6500万ドルをかけて動物実験をしたが、将来追加すべきものはなかった。
もう一件疫学調査をやって、同じ結果であれば、プール分析で十分である。
Kaune(??):カリフォルニアでの疫学研究は接触電流の影響も考慮している。こうした研究の中で遺伝子の影響の話も出てくるかもしれない。
8.最後の挨拶 筑波大学・池田三郎
以上
独立行政法人科学技術振興機構 「H16年度 環境・技術リスクのガバナンス・プロジェクト」主催 公開シンポジウム「電磁波リスク問題のより良いガバナンスに向けて−科学報道と消費者教育、そして消費者参加−」 が開催された。
以下は聴講してメモを取った内容です。必要に応じて予稿集を見てください。
作成: 2004-9-18
以下は開催の案内から
************** ***************
日時:平成16年9月13日(月) 10:00-17:10
場所:国連大学 ウ・タント国際会議場
東京都渋谷区神宮前5丁目53-70
生活環境中に増加している電磁界を巡る健康リスクへの対応については、国際的にもよりよいガバナンスが求められ、とりわけ利害関係者間でのリスク・コミュニケ−ション(RC)のあり方も重要な論点となっています。
本シンポジウムでは、科学報道および消費者教育、消費者参加のあり方や役割等について議論を深めるため、ドイツを始めとする欧米および日本から科学報道やRC研究の第一人者を招へいし、各国・地域の実情を紹介して頂くとともに、望ましいRCのあり方を探ることにしました。
電磁界の健康リスクにご関心のある方、技術リスクや環境リスク、RCや教育、リスク管理の関係あるいはご関心のある方などのご参加を歓迎します。
スケジュ−ル
(司会:青柳みどり)
10:00-10:10
開会の辞
池田 三郎 (研究代表)
10:10-10:50 WHOにおける国際EMFプロジェクトについて 兜 真徳 (国立環境研究所)
日本・ヨーロッパにおける市民参加について 西澤 真理子(独・シュツットガルト大学)
10:50 ?11:30 ドイツを中心とする動向 Ortwin Renn (独・シュツットガルト大学)
11:30 - 12:10 イギリスを中心とする動向 Ray
Kemp (英・Galson Science Ltd, 元欧州SRA会長)
12:10 - 13:10 休憩(昼食)
(司会:西澤真理子)
13:10 - 13:50 アメリカ合衆国の動向 Julie Downs (米・カーネギーメロン大学)
13:50 - 14:30 日本におけるリスク問題の科学報道 中村 雅美(日本経済新聞編集委員)
14:30 ? 15:00 休憩
(司会:兜 真徳、 記録:前田恭伸)
15:00 - 17:00 総合討議 (指定コメントとパネルを含む質疑応答)
コメンテータ:小林 傳司(南山大学)、 青柳みどり(国立環境研究所)
17:00 - 17:10 閉会 池田 三郎(研究代表)
代表・講演・討論者
1.池田三郎(環境・技術リスクのガバナンス・プロジェクト代表、筑波大学名誉教授)Society for
Risk Analysis フェロー、日本リスク研究学会元会長・理事、独立行政法人防災科学技術研究所客員研究員等。
2.兜真徳(独立行政法人国立環境研究所、首席研究官)WHO国際EMFプロジェクトの研究協力機関・諮問委員会委員、日本リスク研究学会理事、我が国の電磁環境と小児白血病の疫学調査(1999-2001)の研究代表。
3.Ortwin Renn(オートウィン・レン,
Professor, University of Stuttgart,Germany)欧州リスク学会元会長,技術アセスメントセンター・バーデンヴュルテンブルク所長、ドイツ連邦政府地球環境変化諮問委員会委員を経て,現在米科学アカデミ−(NAS)市民参加諮問委員会委員、市民参加と政策決定調査実践機関ディアロギック所長等。
4.Ray Kemp(レイ・ケンプ, Director,
Galson Science Ltd. UK)イギリス・サリー大学において教鞭を執るほか、WHO、EU、イギリス政府のアドバイザを勤め、英国のシンクタンク(Galson Science
Ltd)所長、欧州リスク学会元会長等。特にEMF問題に関してはWHOのアドバイザをつとめ、健康リスクのリスクコミュニケーションについての座長をする。
5.Julie Downs(ジュリ−・ド−ンズ, Center
for Risk Perception and Communication センター長、Carnegie
Mellon University, USA) 米国における医療関連のリスクコミュニケーションの心理学的研究で活躍。
6.中村雅美(日本経済新聞社科学技術部 編集委員)「日経サイエンス」誌編集長などを経て日本経済新聞社科学技術部次長。内閣府食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会専門参考人等。
7.小林傳司 (南山大学社会倫理研究所所長、教授) 科学技術社会論学会(The Japanese
Society for Science and Technology Studies) 初代会長、現理事。科学哲学及び科学技術論を専攻。日本でコンセンサス会議の実施に携わる。
8.西澤真理子(University of Stuttgart社会学専攻研究員, Germany)ロンドン大学インペリアルカレッジサイエンスコミュニケーション学科博士号。フンボルト財団特別研究員、技術アセスメントセンター・バーデンヴュルテンブルク研究員を経て、現在シュツットガルト大学にてリスク問題への市民参加研究に従事。
9.青柳みどり(独立行政法人国立環境研究所社会環境システム研究領域、主任研究員)日本リスク学会会員。環境をめぐる人々の意識と行動についての社会調査を手がける。
********** ***********
参加して、講演を聴いて、メモを取った箇所を以下にまとめた。
(同時通訳付であるが、日本語訳の翻訳者が早口で、なかなか聞き取ることも困難であった。)
開会の辞 池田三郎
(研究代表)から
・現在リスクガバナンスの研究プロジェクトを推進している。
・リスクガバナンスとは、問題としているリスクに関連する1)関係者郡が 2)様々なレベルでのネットワークで、 リスクを分析し、対話と論議で意思決定を行う ことである。
・EMFの健康影響は混沌とした状況にある。WHOは予防原則を提案し、ICNIRPのガイドライン値との間の乖離もある。
・社会的なプラットホームの構築が必要である。
2.「日本・ヨーロッパにおける市民参加について」西澤真理子(独・シュツットガルト大学)
・リスクをめぐる市民参加が増加している。
・市民参加のやり方は、コンセンサス会議(デンマークで始まったやり方)など30種類ものやり方がある。
市民参加には、次の3つの落とし穴がある。
1)コミュニケーションの落とし穴:情報が一方通行に終わる、メディアが反応しない。
2)手続き上の落とし穴: 例:時間が不足
3)システム上の落とし穴: 論議をして結論や提言をまとめたとしても、その後どうなるか不明、提言だけに終わってしまう。
・日本の場合は、コンセンサス会議を行うにしても、日本の土壌にあったやり方を考えなければならない。
・市民の情報の入手先 テレビ:90% 新聞:60% 講演会:3% となっており、ジャーナリズム(センセーショナリズム)の影響をまともに受ける。
3.「ドイツを中心とする動向」Ortwin Renn (独・シュツットガルト大学)
・複雑な事象に対しても、一般の人々は「Yes」か「No」かのシンプルな回答を求める傾向にある。
・不確実な事象、もしかしてあるかも知れないという事象に対する人々の評価は、人によって大きく異なる。近代化が進みすぎて、不安や懸念持つようになっている。
・リスクをどのように受け取るか? 見えない、忍び寄る危険(電磁波の問題もこれに入る)の関する情報は、人々は第3者の情報に頼るしかない。
信頼のある情報源の情報が信頼される。
・情報源の情報が信頼できるか否かが鍵となる。
・ドイツでの例、携帯電話中継塔での反対運動で円卓会議を招集。
・ラッセルの言葉「What man desires is not knowledge, but
certainty.」(人は知識ではなく、確実性を求める)
4.「イギリスを中心とする動向」 Ray Kemp(英・Galson
Science Ltd, 元欧州SRA会長)
・10年前と異なり、最近では誰を信用してよいかわからなくなってきている。
・業界は人々から信頼されなくなってきている。
・オーストラリアは少し異なる状況にある。広大な土地に携帯電話網を構築する必要がある。
かつては中継塔が完成すると携帯電話中継塔の完成記念祝賀パーティが開かれ、人々は喜んだ。
しかし、現在では建設反対の声も出ている。
・イタリアのカタニアの例、中継塔からの電波の強さを計測し、WEBで公開している。同じことをイギリスでも行っている。
そのデータによれば電界強度は1V/mを超えていない。
5.「アメリカ合衆国の動向」Julie Downs (米・カーネギーメロン大学)
・コミュニケーションを行うが、価値の伝達(例:麻薬の危険度の告知)、PLの対応(PLの対応のための様々な警告)、アメリカ政府のテロの危険度の告知 などは、市民は慣れてしまい、結果として誰もきちんと見ようとはしなくなる。
これは、本当に、他の重要な警告を発しても無視し、政府の他の重要な警告・通知を信じなくなってしまう恐れがある。
・リスクコミュニケーションを行うとき、受け手の事象に対する理解度を把握してから、はじめる必要がある。
これを「メンタルモデル」として提唱する。
6.「日本におけるリスク問題の科学報道」中村雅美(日本経済新聞編集委員)
・新聞社は、白か黒かはっきりしているものを論ずることは強い。
・左か右か、明白ではないもの、グレイの状態のものを報道することには弱い。
・新聞記者・マスコミの関係者の90%は文化系の人間であり、科学には弱い。
したがって研究者などがマスコミに説明する場合は、文系の人間にわかるように説明して欲しい。
・報道のエンターテイメント化が進んでいる。
・「安全」とは、科学的で客観的なものであり、「安心」は主観的なものである。
この安全と安心のギャップをいかに埋めるか。
・リスクとはおきるかも知れないことであり、ハザード(障害)との違いを、マスコミは理解できていない。
リスクは日本語にはなかった概念である。
薬(くすり)は逆に読めばリスクであり、薬はリスクの存在を認識した上で使用している。
・「ゼロリスク」はありえない。リスクの低減は必要である。市民はゼロリスクを要求する。
・予防原則を適用した場合、「ゆれぎぬ」であったことが判明した場合、誰が責任を取るか?
・電磁波に関する課題は 1)問題点が整理されているか 2)情報の提供が十分か? 3)科学の論争になっているか? 4)誰にとってのリスク・利便か?生産者なのか、消費者か、企業か?
7.コメント 小林博司(南山大学)
・科学の世界では「黒 灰 白」と3段階である。
しかし、政治の世界では「黒 白」で灰はない。
・従来は科学で得た結論を政治が実効に移していた、科学と政治は独立していた。
グレイのある科学では、政治家と科学者の相互乗り入れ、重なり合う分野が発生する。
・リスク、確率が低い場合、1)無視できるレベルであるか、 2)何らかの対策が必要であるか? この判断は科学では答えられない。科学では一致した答えが出せない。
8.コメント 青柳みどり(国立環境研究所)
・調査結果では、もっとも信頼のある情報源はマスメディアである。
・「不安感」を増長せず、冷静な判断を求めるにはどうしたらよいか? これは「メディアの役割」であろう。
9.予定されていた兜先生の講演は都合でなく、代わりに簡単な説明があった。
10.予稿集には、その他の参考資料が付記されている。 詳細は予稿集を参照。 一部 レジメのない講演もあった。
11.総合討論から
1)ドイツのOrtwin Renn
・以下の3点が重要
・EMFは長期暴露で何か影響があるかも知れない。
・コミュニケーションは研究者と一般の人が直接行うことは不可能で、マスコミが介在する。
マスコミの対応が課題となる。それがわかればリスクコミュニケーションをする上で有効になる。
・モダンな科学では結論・回答が複数ある。
2)イギリスのRay Kemp
・ELF磁界は発がん性2Bに判定された。コーヒーも同じである。
・ICNIRPのガイドラインもある。熱作用などを元にしている。
・非熱作用も考慮しなければならない。
3)アメリカのJulie Downs
・「研究者です。研究計画の立案に際して、研究の独立性のともに、リスクコミュニケーションを盛り込むべきか?」という質問が来ています。
これに対して、リスクコミュニケーションと研究の推進はまったく別個と考えます。
4)西澤
・いくつかのフロアからの質問に答えます。
・Q「コンセンサス会議の進め方は?」A「目的によって進め方は異なる。実験的なコンセンサス会議の場合は、淡々と行う。」
・Q「専門家と一般人ではコミュニケーションが成立しない、どうするか?」A「研究室で働く専門家はきちんと研究を行うのが責務。外部への説明に慣れていないかも知れないが、「知は力」であり、力のある人は、説明を行うべき。」
・Q「日本における市民の参加は?」A「1950年代以降の歴史を分析すれば、日本の土壌が変化してきているかがわかるであろう。コアの部分は不変に見える。日本の土壌を見るべき。」
5)司会からの質問、電磁波の問題は総務省、厚生労働省、経済産業省、環境省と所管が分かれている。総合的に動きたいが、どうしたらよいか?
6)中村
・新聞やテレビに登場する専門家がきちんと答えてくれれば、一般人に信じてもらえるであろう。
ただし。そうした答えは、個人としての自論や個々の研究成果だけに関するものではなく、学会レベルとしてのまとまった知見として発表しなければならない。マスコミはそうした場を作ります。
・総合的に動きたいのであれば、学者たちがまず横断的に活動を行うべきである。そうすればマスコミは応援をする。
7)司会(池田):学会レベルでのまとまった知見というのが得られないのが、この電磁波の問題です。
8)小林
・最近のトピックスは全てが実験室でクリアになる前に社会に出て行く。研究と、情報伝達が同時進行している。科学者間の統一見解はない。
・「失敗の可能性を念頭において、失敗したらあきらめる」ということに合意する、こうしたシステムを作っていくべきである。
9)青柳
・素人も参加する。リスクの大きさは個人によって異なる。個々人にそのリスクの説明を行えばよい。
科学者の出すリスクは平均値となる。これを個々人に広げて、個々人のリスクの大きさを提示する。
10)フロアからの質問
Q(フロア):第一に「Who are WE」このリスクガバナンスのシンポジウムに参加している我々は専門家といえるのか?
A(Julie Downs):このシンポジウムの参加者は各分野の専門家である。
A(中村):研究室では各自はその道の専門家、しかし、日本にはまだリスクコミュニケーションの専門家はいないので、非専門家となる。
A(小林):ダブルデスタントということが重要になる。
一般公衆とは異なるが、リスクコミュニケーションに関する役割と、電磁波の研究者としての役割を担う必要がある。
昔の哲学者はみなダブルデスタントであった。
A(Ortwin Renn):豚と羊を同時に扱うことが出来ないように、コミュニケーターは一人では出来ない。
A(Ray Kemp):日本におけるEMFに関するリスクコミュニケーションは大事である。
Q(フロア):先般の環境研究所の疫学研究では少しのリスク増加が見られた。
評価も低い。それにもかかわらず、なぜ、こうした研究を継続しているのか?
A(池田):「見逃さず」「放置せず」「慎重に」というスタンスでこのリスクに関する研究を行っている。
日本では過去の事例からも、外圧がないと動かない癖があることから、早めにアクションを取るべきと考えて、このプロジェクトを推進している。
A(西澤):このプロジェクトには様々な分野の人間が参加している。情報発信をして、このプロジェクトを推進していきたい。
以上
作成:2004−11−12
2004年11月10-12日に横浜パシフィコで開催されたマイクロウェーブ展で、ワークショップが行われた。各種マイクロ波関連のテーマの中に、ワークショップ11「電磁波の人体影響とSAR評価技術の最新動向」があり、参加した。 以下は私の参観メモ。
ワークショップの座長:王建青(名工大)
1)講演「電波防護指針の根拠と経緯」 上村佳嗣(宇都宮大学)
はじめに:近年、携帯電話等の電波の健康への影響がしばしば話題になっている。米国では、「脳腫瘍で死亡した妻の病気の原因は携帯電話の使用によるものである」とか、「勤務中の電波の浴びすぎで病気になった」などと携帯電話メーカが訴えられるケースが続発しており、携帯電話メーカは対応に苦慮している。
郵政省(当時)の電波防護指針の策定時、WGでの活動に「したっぱ」として実務を担当した。今ではそれなりの年配となった。
マスコミなどでは「電磁波」として「ELFなどの低周波電磁界」も、「携帯電話などのマイクロ波」もすべて一緒くたにして、扱っているのは、好ましくない。
人体防護を考えるときに、熱作用の場合は、人の基礎代謝を考慮する。人の1秒間あたりの発熱量はワットに換算すると100Wに相当する。100Wの電球1個分のエネルギーを消費していることになる。 この代謝量100Wを平均体重70kgで割れば、1.4W/kgとなり、全身平均SARの値に近くなる。
その他はレジメを参照
質疑応答 Q「郵政省電波防護指針は10KHz以上の周波数であるが、低い周波数の規定作成などの動きは?」 A「直接の当事者ではないので、なんともいえないが、総務省は10kHz以下の周波数には手を出さないのではないか、出すとすれば商用電力周波数に限定したりして、経済産業省が指針を出すかも知れない。」
2)講演「生物学的影響についての最新研究動向」渡辺聡一(情報通信研究機構)
概要: 電波による健康影響を避けるために電波防護指針が勧告されている一方で,特に,携帯電話を対象としたマイクロ波による生物学的影響に関する研究が盛んに行われている.
生物学的研究は,培養細胞を用いた研究,実験動物を用いた研究,ヒトを対象とした研究に大別され,リスク評価の際には,これらの研究項目に応じて結果の扱いが異なる. これまでの研究成果からは,携帯電話のような低レベルのマイクロ波曝露で発がんのような重大な健康影響が生じる可能性は小さいと考えられている.
今後,発がん以外の健康影響も含めた総合的なリスク評価のために,さらなる関連研究が必要である.
細胞実験の場合でも、シャーレの深さによって電磁界の空間分布が異なるので、細胞実験とはいえ電磁界の暴露条件の設定は容易ではない。したがって得られた結果の評価も単純ではない。
コメットアッセイを用いたLaiらの研究で、DNAの切断が起こると報告されたが、その後の他のグループによる研究ではほとんど再現にしていない。
レパチョリの報告(鼠を自由に動ける形で飼育し、部屋の片隅に置いたアンテナからの電磁界暴露(したがって飼育箱の位置によって暴露レベルが大幅に変動)でガンの増発が報告された。オーストラリアの実験(ラットは動けないように固定)では再現しなかった。欧州でも同様な実験が進行中。
IARCの国際プロジェクトとして、脳のガン(脳腫瘍に限定されない)と携帯電話の疫学調査は、データの収集は完了、現在解析中。2005年にIARCから報告書(モノグラム)として刊行される予定。
その他はレジメを参照
質疑応答 Q「レパチョリの研究では、飼育箱は定期的に位置を変えて等分に暴露するようにしているので、全ての鼠は同じ最大暴露値と考えるべき?」
A「同じ飼育箱の中でも、鼠は寝るときに重なり合って寝る習性があるので、重なり具合によっても大きく暴露量は異なってくる。」
Q「携帯電話と脳のガンの国際プロトコルに従った疫学研究では、携帯電話による暴露は基地局との距離による電力制御機能の為に、暴露値は大幅に変動していると思われる。こうした点を考慮しているのか?」A:「考慮している。重み付けと変えている。」
3)講演「SAR計測技術」王建青(名工大)
Abstract:
With the recent widespread use of radio waves, public concern regarding
the possible health hazards has been growing. Safety guidelines for protecting
the human bodies have been issued in various countries, in which the basic
safety limits are being defined in terms of the absorbed power per unit mass,
or the specific absorption rate (SAR).
This paper is focused on the SAR computation techniques with the finite-difference time-domain (FDTD) method. The status and new trends in the SAR computation techniques are reviewed.
携帯電話のSARの測定の説明 レジメを参照
基地局からの電波による人体のSAR測定 人がいない場合の電磁界強度を入射電磁界とし、人の影響で発生する散乱界を別の手法(2つほど手法を紹介)で計算して、それらの和として解析を行う。
その他、レジメを参照
質疑応答 Q「FDTD法では広帯域での測定は困難ではないか、例えば人体の電気的特性が周波数特性を持っているとすれば。」A「難しいが、不可能ではない」
Q「計算速度を上げるために8並列計算の場合、事例では解析時間は6倍にしかなっていない。これは相互の通信時間などの為に、ロスがあるのか?」A「そうです。」
Q「小型アンテナと近接している人体との相互作用を含めて解析をうまくやる方法は?」A「アンテナの開口面積から、人体との相互作用を限定的に考えることもできる、影響の少ない箇所を割愛して計算する。またサブグリッド法もあり、必要度に応じて、グリッドの大きさを変えて、解析を簡略化する。」
4)講演「SAR測定技術」 上林真司(NTTドコモ)
1. まえがき: 携帯電話使用時の人体側頭部のSAR(Specific
Absorption Rate)(人体の単位質量あたりの吸収電力)測定法の標準化が進んでおり、我が国では、電波産業会(ARIB
: Association of Radio Industries and
Businesses)が、2002 年に、国際電気標準会議(IEC
: International Electro technical Commission)に準拠した測定法を標準化している。
携帯電話のSAR測定は、電界測定法と温度上昇測定法がある。電界測定法は、3mm程度の微小なセンサを使用するが、それでも空間分解能に限度はあり、液体ファントムの境界面付近では金属製センサのエレメントと液体との影響も発生する。これらに関しては、国際・国内規格として内挿・外挿によって推定を行っている。最近では1mm程度のセンサもある。
今後の課題であるが、現在の液体ファントムを利用した携帯電話のSAR測定システムでは対応できないパームトップ型、携帯電話を腰に付けた場合など、より広範な利用の形態に合わせた測定システムを開発していく。その一つは固体ファントムを用いた平板ファントムで、センサを走査させられないので、携帯電話を動かすことを考えている。
質疑応答 Q「測定ではなく、計算でSARを出すほうが良いのでは?」A「計算でも良いが、本当に大丈夫かという確認も必要となり、実測となっている」
Q「携帯電話の形態によっては、SAR測定が出来ない場合があるが」A「最新のSAR測定システムは改善されているので、再確認して欲しい。」
興味のある方は予稿集を入手され、それぞれのレジメを読んでください。
作成:2005−1−27
以下のワークショップを聴講した。その内容を、私のメモを中心にまとめた。
1.ワークショップの概要
運輸分野における電磁環境の安全性評価 −人体防護の側面からの研究の現状と国際動向−
運輸分野における複合的な電磁環境の安全性評価に関する研究成果を公開するとともに、国際的な動向と課題を紹介する
主催:運輸システムにおける電磁環境の安全性評価手法に関する基礎的研究プロジェクト (独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構
協賛:電波科学研連K分科会(URSI−K)
日時:2005年1月26日(水) 10:25〜16:00
場所:虎ノ門パストラル 〒105-0001 東京都港区虎ノ門4-1-1
2.プログラム
開会の辞 10:25〜10:30 (独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構
研究開発主管 小ア文雄
Session 1 (運輸システムにおける電磁環境の安全性評価手法に関する基礎的研究) 10:30〜12:30
*研究プロジェクトの紹介 (財)鉄道総合技術研究所
副主任研究員 池畑政輝
*研究プロジェクトの成果報告 運輸システムの電磁環境におけるドシメトリと曝露装置の開発 東京都立大学 助手 鈴木敬久
*複合的な電磁環境の生物影響評価に関する研究 (財)鉄道総合技術研究所
副主任研究員 池畑政輝
*強磁場の副次的な効果の解明−正確な生体影響評価のために− 千葉大学 助教授 岩坂正和
Session 2 (招待講演 電磁環境の安全性に関する研究の現状と国際動向)13:30〜16:00
国内外の動向
*鉄道の電磁環境の実際と測定法 (独)交通安全環境研究所
上席研究員 水間 毅
*UIC(世界鉄道連合)におけるEMF 問題への取り組み スイス連邦鉄道 Roger Müller
*WHO のEMF プロジェクトに関して 国立保健医療科学院
生活環境部部長 大久保千代次
*ICNIRP の活動とガイドラインに関して 東京都立大学 教授 多氣昌生
*強磁場の生体影響とリスクに関する考え方 (財)電力中央研究所
上級特別契約研究員 小穴孝夫
*まとめ、閉会
3.私のメモからワークショップの概要
詳細に関しては、興味のある方はレジメ集を入手して読んでください。
1)参加者数 90名ほど収容できそうな会場に、70名位の参加者数であった。
2)開会の辞 小崎
・JR総研、都立大学、千葉大学の共同研究プロジェクトである。リーダーはJR総研。
・運輸関係の電磁環境に関して研究と提案を行なう目的のプロジェクトで、これまでの研究成果の発表と意見交換の場として、このワークショップを開催した。
3)研究プロジェクトの紹介 池畑
・ドシメータによる個人曝露計測では、電車内での磁界曝露が比較的大きいとされる例がある。WHOの国際EMFプロジェクトでも、運輸関係が研究対象として着目されている。こうしたことから研究を行なうことにした。
4)運輸システムの電磁環境におけるドシメトリと曝露装置の開発 鈴木
・鉄道車両の磁界発生源としては、リアクトルやインバータなどがあり、複雑でモデル化することは困難である。
・そこで簡易的なモデルを構築した。(1)電車線からの磁界として、直線電線から放射される磁界と、(2)車両搭載機器からの磁界として、磁気ダイポールからの磁界、の組み合わせとした。磁界発生源は床面にあると想定した。床面は非金属とした。
・過去の実測から、交流60Hzの磁界が支配的と見て、60Hz磁界で検討を行なった。
・解析には、直立の人体モデル(臓器などの特性を加味した非均質モデル)と、姿勢などを自由に設定できる人体モデルから座席に座った状態での人体モデル(σ = 0.2 S/mと一定な均質モデル)を用いた。
・直立モデルでの解析。直線電線からの磁界では、磁界の距離減衰が少ないためか、胴体などの体幹部分まで、誘導電流が流れていた。磁気ダイポールからの磁界の場合は、流れる誘導電流は足首などに限定された。
・着座モデルでの解析。誘導電流は足首とひざ、腰の部分に大きい誘導電流が流れている。
・誘導電流の最大は0.45A/m2で、ICNIRPの一般公衆への曝露に関する基本制限では誘導電流2mA/m2であり、満足している。
・また、静磁界と交流磁界の複合曝露装置の開発も行なった。
質疑応答
Q:最近の電車はVVVFで発生磁界周波数が必ずしも60Hzとはいえないが?
A:実測などでは60Hz磁界成分が大きいので、60Hzで解析を行なった。VVVFなどに関連して、その他の周波数に関しては、今後の課題である。
Q:床面以外の側面などの金属に電流が誘導し、それらからの磁界発生もあるが?
A:今回は簡易的なモデルの想定ということで、考慮していない。今後の課題である。
5)複合的な電磁環境の生物影響評価に関する研究 池畑
・単一周波数による生体影響に関しては、これまでにある程度の知見はある。静磁界と交流磁界の複合的な磁界曝露による生体影響は検討すべき課題であった。
・そこで、できるだけ強い磁界で生体影響を検出することにした。
・静磁界5T、50Hz交流磁界1mTの複合曝露とした。
・強い磁界は、均一な磁界空間としては狭い限定された領域しか得られないので、細胞などを用いた試験となる。細胞を用いた変異原性の試験を行なった。
・静磁界5T+交流1mTをサルモネラ菌に曝露(誘導電流は0.6mA/m2)、影響はない。
・静磁界5T+交流1mTを酵母に曝露、染色体組み換えによる変異原性がわずかに増加した。この影響は、過去のJR総研での研究結果から、交流磁界の影響ではなく、静磁界の影響と見ることができる。
・電磁波の健康影響に関しては「正常に怖がるための努力」が必要である。
6)強磁場の副次的な効果の解明−正確な生体影響評価のために− 岩坂
・電磁界曝露による生体影響で、電磁界が生体に直接影響を与えているのか、電磁界が環境条件に影響を与え、その環境影響の変化で生体影響が発生しているのかを見極める必要がある。
・そこで、物理化学的な観点から、研究を行なった。磁界は空気中の常磁性の酸素に影響を与える。この影響を受けた酸素分子による生体影響なども考えられる。
・静磁界14T、但し磁界が空間的に勾配を持っている場合、水の静水圧の影響はなかった。同じ磁界で、常磁性の酸素分子の分布の変化で、生体が影響を受けるようである。
・物理化学的な評価を今後の生体影響評価に反映させたい。
7)鉄道の電磁環境の実際と測定法 水間(代理で山口)
・IEC62236という鉄道に関するEMC規格があり、2003年に発効した。TC106の人体影響も考えなければならない。
・過去の鉄道関係の電磁界測定では、周波数はDCから300kHz程度までで、測定値に再現性がない。インバータの上部で55−80Hzの磁界18μT、座席ではDCで190μT,30Hzで30μTが観察されている。車外では、距離は離れていることもあって、リニアモータ車の場合、DCで3μT、60Hzで0.4μT程度である。ICNIRPのガイドラインに、30kHzまでの電磁界に関して適合しているといえる。IGBTなどの高速スイッチングの場合は要注意である。
質疑応答
Q:リニアモーターカーからの電磁界に一般の人の関心が集中すると思うが、実測などは?
A:愛知万博のリニアモーターカーで実測を行なった。結果は後日 報告できると思う。
8)UIC(世界鉄道連合)におけるEMF 問題への取り組み Roger Müller
・UICでは電磁界に関して取り組んでいる。詳細はUICのWEBを見て欲しい。
・スイス・イタリーの電磁界曝露に関する予防原則を適用した規定は、ICNIRPの値に対して100倍も厳しい。
・電車のカテナリー線からの磁界放射もある。
・マルチモードの変電設備付近で、ICNIRPの値に近い電磁界が観測されている例などは厳しい例である。
・EUとしては1999年にICNIRPの限度値を採用した。しかし、イタリーとスイスは予防原則として厳しい値を規制した。フィンランドとベルギーも厳しい規制を行なっているが、鉄道はその対象にはなっていない。
・イタリーで測定方法を開発、運転席と客席での測定ではICNIRPの値に適合していた。
・スイスの研究として、予測方法を開発、実測との差異は10%であった。
・電車線に帰路を設けることで、磁界漏洩を低減させることができる。
質疑応答
Q:スイスとイタリーで電磁界を厳しくしている理由は?
A:スイスでは予防原則を適用し、0.4μT云々を考慮している。
Q:予防原則の適用の対象は?
A:スイスは1μTという限度値であるが、これは電車線などの固定設備が対象、可動物である電車は対象外である。
Q:日本では電車内の携帯電話の使用を制限するなどと話題になっているが、スイスでは?
A:そうしたことは考慮していない。
Q:鉄道線路沿いで、発生磁界によるテレビやパソコンへの障害があり、アモルファスなどで対応しているが、UICでは?
A:スイスの電化の周波数は16.67Hzであるので、テレビやパソコンへの障害は発生しにくい。
9)WHO のEMF プロジェクトに関して 大久保千代次
・一般的なWHOのEMFプロジェクトの概況の紹介。
・昨年12月にWHOでの静電界のEHC(環境保健基準)の会議に参加した。
近々報道発表がある予定で、その後6ヶ月程度で文書として刊行される。
・2005年に低周波電磁界のEHCの作成が行なわれる。
5−6月にリスク評価の会議があり、報道発表し、それから6ヵ月後の年末には文書として刊行される予定。
・携帯電話の国際プロジェクトに関して、デンマークとスウェーデンから、それぞれ相異なる報告が出されている。
デンマークの結果(特に有意差なし)
|
RR |
95%信頼区間 |
不使用 |
1 |
|
1-4年 |
0.86 |
0.45-1.62 |
5-9年 |
0.86 |
0.39-1.93 |
10年以上 |
0.22 |
0.04-1.11 |
スウェーデンの結果(使用側に有意差有り)
|
RR |
95%信頼区間 |
不使用 |
1 |
|
1-4年 |
0.86 |
0.45-1.62 |
5-9年 |
1.1 |
0.6-1.8 |
10年以上 |
1.9 |
0.9-4.1 |
使用側 |
3.9 |
1.6-9.6 |
反対側 |
0.8 |
0.8-2.9 |
10)ICNIRP の活動とガイドラインに関して 多氣
・1994年の直流電磁界、1998年の交流電磁界のガイドラインの改訂作業中。直流の電磁界に関しては、2005年夏までに改訂する予定。低周波電磁界に関しては2005年春までにドラフトを作成し、2006年秋までには完了される予定。
・ICNIRPの本部のWEBには各種情報を公開してあるので、参照して欲しい。
・ICNIRPにメンバーがかなり交代した。新チェアマンの2004年2月のセルビアでの会議で談が参考になる「現在のガイドラインに大きな変更を加える新しい証拠は見つかっていない。しかし、同時に、いくつもの行動が必要である。」
11)強磁場の生体影響とリスクに関する考え方 小穴
・テスラレベルの静磁界による変異原性の試験では、0.5T付近で0に比べて発生率が減少し、1Tから2Tでは増加し、それ以上の1Tまでは同じレベルを維持する、という結果である。
これは、X線照射の場合と同様な傾向にある。0に対してある程度低いX線照射では改善効果(ホルミシス)があり、ある程度以上の強度では影響が出る。
・交流20mT程度の曝露で変異原性があったが、これは明らかに誘導電流が支配的であった。
・磁界による直接的な影響ではなく、磁界がDNAの修復効果を阻害している可能性がある。DNAが傷つくと通常は修復機能で修復するが、この修復機能を阻害している。なぜならば、磁界だけの曝露では影響が現れないが、紫外線を照射して紫外線でDNAに障害を発生させると、磁界曝露によって修復機能が阻害されて、磁界の影響は現れる。
・現在のICRPの放射線防護規定は、LNT直線閾値無し仮説に基づいて、暴露基準が設定されている。このLNTは科学的ではないとICRPも認識している。ホルミシス効果などが判明しているからである。
以上
発行:2004年9月 中央労働災害防止協会 労働衛生調査分析センター 」を読んで
作成: 2005−2−15
興味を持った点を列記する。
詳細は当該の報告書を参照。
1.P22、アメリカのIEEEとICNIRPの指針の考え方の相違
以下に、この相違が簡潔に纏められている。
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(2)IEEE防護指針の根拠とICNIRP指針との比較
IEEEによる防護指針の基本的な考え方はICNIRPの防護指針と同様であり、科学的に根拠の示された健康影響の閾値を推定し、それに安全率を考慮して指針値を決めている。ここで、ICNIRP指針の低周波領域の指針値に対する根拠は、「100m/cm2を超える電流密度は中枢神経系興奮の急性変化及び視覚誘発電位の反転などの急性影響の閾値を超える」というやや漠然としたものであったのに対し、IEEE指針では、神経興奮、心臓の興奮、シナプス性の活動の変化という、より具体的な現象を考慮している。また、参考レベルの導出についても、ICNIRPは根拠を抽象的に示しているだけなのに対し、IEEEではモデルを明示して導出の根拠を示している。逆に、IEEEでは根拠を具体的に示しているために、そこで言及されていない現象に対してどのように評価しているのかが明確でない。
数値的には、例えば公衆に対す50Hzの磁場についての参考レベルで比較すると、ICNIRPが1OOマイクロテスラに対してIEEEでは904マイクロテスラという大きな違いがある。
このような違いは混乱のもととなるので、今後整合させることが必要であると考えられている。
WH0による国際電磁場プロジェクトでは、防護指針の調和を目的とした会議が開かれており、今後は次第に整合されてゆくことが期待される。
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2.P27「保護具などの使用」の項で、OA用電磁波防護エプロンの効能にも触れている。
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4.5保護具等の使用
電磁場から人体を防護するためのさまざまな保護具が作られている。しかし、防護指針を超える高レベルのばく露から人体を防護することのできる保護具は限られている。米軍の作業員は軍用通信施設での勤務で強い高周波電磁場に曝露される。このため、防護服が開発されている。シールド繊維で作られた防護服は、内部への電磁波の侵入を防ぐ効果がある。但し、シールドは完全ではないのでシールド布と人体との距離に応じて透過率が変化する場合があり得る。人体とシールド布が、たまたま外部から見たインピーダンスが整合するような間隔となった場合には、シールドの存在によってかえって人体のばく露が増加する可能性もある。
高周波用の防護服で特に問題になったのは、高電場中で使用すると、細い導電性繊維に大電流が流れるため、温度が上昇して発火する恐れがある問題である。実験で発火した実例も報告されている。また、防護服に包まれると、外界への熱の放散が制限される。高周波の防護指針は通常の環境での人体と外界の熱交換を前提として定められている。熱の放散が制限される場合には、防護指針で想定しているより低い吸収電力でも体温の上昇が起きる可能性がある。このことにも注意が必要である。
低周波電磁場についても、職業的に防護指針を上回る強い電磁場中で作業しなければならない場合に、なんらかの保護具を利用せざるを得ない場合も想定される。低周波電場の危険は、電場そのものより電場の発生源や電場によって金属物体に誘導される高電圧による電撃である。この問題に対する保護具は、高電圧作業で使われる絶縁手袋などと同様である。低周波磁場では、シールドが困難なこともあり、保護具の開発は行われていないようである。
磁場に関しては、防護指針値以下の弱い電磁場中で使用することを想定した保護具が数多く開発されている。
例えば0A機器を使用する際に着用されることのあるエプロンなどである。これらの製品は、電場に対してはある程度のシールド性能を持つ場合があるが、磁場に対してはほとんど効果がない。これらの多くは、防護指針値以下のレベルでも不安を感じる人々の二一ズを考慮したもので、性能評価が十分になされているとはいえないし、原理的に効果があることを説明できない製品も多い。弱い電磁場で使用することだけを想定しているため、現実に事故につながることは無いと思われるが、この種の製品に対する客観的な性能評価が必要である。なお、この種のシールド繊維による保護具の場合、職業的な強いばく露環境で使用した場合には、細い繊維に過大な電流が流れる場合があり、発火などの危険も想定しなければならない。
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この報告書に掲載されている職場での個人曝露調査はEMDEXU(測定周波数:40Hz-800Hz)で行なっている。
3.職場での電磁界曝露のまとめ から P55-P58に掲載
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5.2.1電力設備における測定結果の評価
発電部門ではICNIRPの参考レベルに近い個人ばく露レベルが2例で観察されたが、送電、変電、配電の3つの職種においては、ICNIRPの参考レベルを超えるようなレベルは個人ばく露測定では見られなかった。発電部門の監視などでは参考レベルを超える高磁場に曝される機会があると思われるので注意が必要であろう。(以下略)
5.2.2鉄道における測定結果の評価
鉄道施設における発生磁場が50Hzあるいは60Hzとすると、車両運転士、車掌及びホーム駅務員においてICNIRP参考レベルを超えるようなばく露レベルは観察されなかった。曝露レベルは低いものの、車輌のモデル(製造年月)により磁束密度が大きく異なることが判明し、車輌の場所によっても磁束密度が大きく異なることが示唆された。新しい車輌では磁束密度レベルが低くなる傾向が見られた。
5.2.3加熱溶解設備における測定結果の評価
加熱溶解設備の作業者41名のうち14名で、ICNIRPの参考レベルを超えるばく露が記録された。特に比較的周波数の高い(250Hz、300Hz、500Hz、830Hz)加熱溶解設備でこの傾向が著しかった。加熱溶解設傭での他の作業者ではこの参考レベルを超えるようなばく露レベルは観察されなかったが、これを超える可能性を示唆する値が多く観察された。また加熱設備(鍛造)では基本周波数が測定器EMDEXIIの範囲を超えているため、正確な値を得ることは出来なかったが、やはり3名のうち2名の作業者で参考レベルを超えるばく露が示唆された。他の職種に比べて誘導加熱設傭や電気炉での磁場ばく露レベルは高いと思われる。
(以下略)
5.2.4溶接機器における測定結果の評価
サブマージアーク溶接作業者1名で1240μT、ガスシールドアーク溶接作業者でも1名で1410μTというICNIRPの参考レベルを超えるようなばく露レベルが検出された。
他の溶接作業者ではこの参考レベルを超えるばく露レベルのものはなかったが、他の職種に比べて比較的高レベルのばく露を受けている。
(略)
溶接作業では他の危険有害性のほうが重大であるためと思われるが、電磁場に対する関心は非常に低い。
5.2.5病院設備での測定結果の評価
病院では手術室、集中治療室、リハビリテーション室、MRI操作室、ハイパーサーミア治療室について、磁場の個人ばく露測定及び定点測定を行ったが、ICNIRPの参考レベルを超えるようなばく露レベルは観察されなかった。一方、スポット測定において、電気メス、ハイパーサーミア、マイクロ波治療器等で、参考レベルを超えるばく露の可能性が示唆された。これらの機器から不必要なばく露を避けるための教育(行動範囲の設定など)が必要であろう。病院では参考レベルを超える電磁場を発生する設備や機器があるにもかかわらず、電磁場に対する関心が低いように思われた。
5.2.6家電製造ラインにおける測定結果の評価
家電製造ラインではICNIRPの参考レベルを超えるような磁場レベルは観察されなかった。IHのスポット測定では、IHの直上付近ではICNIRPのガイドラインの参考値(職業性のばく露)に近い値が観察されたが、IHの大きさに適合した鍋をかけ通常の使い方をする場合には参考レベルを大きく超えるような値のばく露を受ける可能性は少ないように思われた。
5.2.7自動車製造ラインにおける測定結果の評価
自動車製造ラインでは溶接と焼入れでICNIRPの参考レベルを超えるような磁場レベルが観察された。その他の作業、旋盤、塗装、めっきでは指針を超えるような値は観察されなかった。また、比較的高い磁場ばく露が焼き入れ作業でもあり得ることが示唆された。めっき工程においては直流が使用され、従ってここからは静磁場が発生するが、今回の調査ではEMDEXII(40Hz〜800Hz)で測定を行った。EMDEXIIでとらえられた磁場は整流変動分と考えられる。
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以上 興味もたれた方は、原文を入手して読んでください。
.2005年6月13日に長野県松本市で、総務省信越総合通信局、社団法人 電波産業会、信越情報通信懇談会の主催で「電波環境セミナ2005(安心な電波環境に向けて)」が開催された。 その中で、北海道大学の野島教授の講演の中から、興味深い点を紹介する。
作成:2005−6−23
*携帯電話の電車内使用における電波の反射はあるか?
携帯電話を電車内で使用すれば反射などの影響があるとされる報告に対して、私は、スーパーコンピュータでシミュレーションを行なっている。電車の中に人がおり、中央で携帯電話の電波を発信させた時の電車内の電波の強度を解析している。こうした研究も行なっている。
(BEMSJ注:この研究に関して、大丈夫であった云々までは言及していない、現在解析中ということかも知れない。)
*電子レンジによる食品の変化はあるか?
英国で発行されている「エコロジスト」2003年11月号に、「電子レンジで調理を行なうと、活性酸素が増えるので、健康によくない・・・・」という記事が掲載された。
これに関して、検証すべく、総務省の資金で、研究を行なった。結果はマイクロ波の影響ではなかった。温度を170℃以上に加熱すると、活性酸素は増えることがわかった。これはマイクロ波の影響ではなく、マイクロ波加熱でなくても、他の方法で170℃に加熱すれば活性酸素が増えることがわかった。
*電子レンジの2,450MHzは水分に吸収され易いか?
「電子レンジに使用されるマイクロ波の2,450は水分を含む物体を吸収される率が高いので、同じようなマイクロ波を使用している携帯電話もあぶない・・・・」といわれる。
これに関する研究を行なった。できるだけフレッシュな牛肉を買ってきて、牛肉の誘電率・導電率を、周波数を変えて測定を行った。1,000MHzから10,000MHzまで周波数を変えて測定を行ったが、2,450MHz付近で共鳴や吸収率が大きくなるということはなかった。ちなみに牛肉だけではなく、鶏肉、豚肉、マグロなどでのやってみたが、同じ傾向にあった。したがって、2,450MHzは水分などに共振する(共鳴する、吸収が大きくなる)ということは誤りといえる。
作成:2005−12−1
財団法人電気安全環境研究所JETは経済産業省原子力安全・保安院の委託事業「平成17年度電力設備電磁環境影響調査(情報調査提供事業)」の一環として、「第6回電磁界の健康影響に関するシンポジウム」を開催した。
シンポジウムでは、商用周波(50Hz/60Hz)電磁界の健康影響について関心を持つ人対象に、この分野の専門家による講演・パネルディスカッションが行われた。
日時:平成17年11月14日(月) 13:00 〜 17:00
場所:東京 北の丸公園の科学技術館 地階 サイエンスホール
聴講者数は200名程度とのこと。
◆ プログラム
13:00〜13:05 主催者挨拶
13:05〜14:05
基調講演(電磁界と健康) 世界保健機関(WHO)大久保千代次 先生
14:05〜14:15 休憩
14:15〜14:40
疫学研究の概要 国立環境研究所 兜真徳 先生
14:40〜15:05 生物学的研究の概要 弘前大学 宮越順二 先生
15:05〜15:30 ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドライン 首都大学東京 多氣昌生 先生
15:30〜15:50 休憩
15:50〜17:00 電磁界と健康に関する質問を踏まえた討論会
パネリスト 国立環境研究所 兜真徳 先生、 弘前大学 宮越順二 先生、 首都大学東京 多氣昌生 先生
司 会: 世界保健機関 大久保千代次 先生
以下は聴講したBEMSJ のメモを中心にして、まとめた。
(詳細に関しては、関心のある方は、「の講演会の予稿集を参照のこと。)
1.「電磁界と健康」 世界保健機関(WHO)大久保千代次 先生
・2005年10月に低周波電磁界のEHC(環境基準文書)に関するタスク会議が開催された。内容に関してはまだ詰めなければならない状況で、まだ公表する段階ではない。来年の今頃に提示(発行)できるだろう。
・リスクマネジメントは必要である。しかし、科学に基づく既存のガイドラインなどを書き換えることは困る。
・2006年に高周波(携帯電話など)の電磁界に関する発がん性評価が行われる予定である。
・WHOは、2005年7月より、これまでは「precaution」(予防原則)と言った用語を使用してきたが、これらの用語の使用をやめて、「public health policy」という用語を用いることにした。
2.「疫学研究の概要」 国立環境研究所 兜真徳 先生
・環境研究所の疫学研究(磁界と小児ガン)の論文は、来年早々に学術誌に掲載される。
・疫学研究で4mGを超えて曝露していた対照群では、磁界発生源は高圧送電線だけではなく、半分は、家の前の配電線が大きなウエイトを占めていた。
個人の磁界曝露を、寝室における24時間スポット測定に加えて、個人曝露計を着用してテストを行った。この研究結果に関しては環境省のWEBに公開してある。夜間の曝露は寝室でのスポット測定と個人曝露計の結果は同じである。昼間の曝露は差異があり、室内で遊んでいる場合、部屋の暖房が電気カーペットの場合などの場合は差異がある。
(BEMSJ 注:これは重要なことで、詳細情報を見る必要がある。過去の多くの疫学調査では高圧送電線からの磁界のみに着目し、高圧送電線の電流と対象群の家の距離関係から各家における曝露磁界値を推定したりしている。自宅の前の配電線が大きな影響を持っているとすれば、過去の疫学調査における曝露評価は不十分だったといえることになる。)
・磁界によるリスクは否定できない、「低コストでの低曝露」を推奨する。
・疫学でいう曝露とは何か、明確にしないと対応・対策がとりにくい。これに関しては継続した検討が必要である。
・低周波磁界の小児白血病に対する寄与率は、日本の研究結果では最大2%、その他海外での研究では最大9%程度である。
3.「生物学的研究の概要」 弘前大学
宮越順二 先生
・数十mTを超える低周波電磁界では、染色体異常に影響を与える。
・低周波電磁界はDNA損傷に影響を与えないが、数十mTを超えると影響が出る。
・低周波電磁界はc-mycガン遺伝子の発現に影響を及ぼさないと考えられる。50mTを超えると影響が出る。
・こうした細胞実験から、磁界が遺伝子発現や突然変異誘発に対する閾値は、5mTと考えることができる。
・Reflexプロジェクトの論文が刊行され始めている。それらでは、もう少し低い閾値を主張している。
・2001年のIARCの低周波電磁界のIARC判定に参加した。宮越教授のWEBを見て欲しい。
4.「ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドライン」 首都大学東京 多氣昌生 先生
・スイスやイタリーではICNIRPガイドライン値より低い値に規制しているとよく言われる。しかし、スイスやイタリーでの「電磁界曝露基準値」はICNIRPガイドライン値と同準で、特定の「電気設備などからの電磁界輻射レベル」をきつくしているのである。
・生体に電流が流れている。この自然な生体内電流を乱さないレベルに外部電磁界強度を規制するというのがICNIRPの基本的な考え方である。より低いレベルの電磁界でも長期曝露では問題があるのではないかという質問を受けるが、このように自然に体内に存在する電流以下・・・ということを考えればよい。
・ICNIRPガイドラインの改訂は検討している。しかし、ガイドラインの指針値を変えなければならないという新たな知見はない。工学的な研究の進展、リスクマネジメントという側面、IARCの発がん評価などを勘案して、レビューを開始した。高周波に関するIARCの評価を待つ必要があるので、改訂は2007年以降になる。
・これらの改訂に関しては、2004年にICNIRPの委員長となったVaccina氏が2004年5月セビリアで講演した内容が参考になる。「集中的に行われてきた最近の研究の結果からは、現在のガイドラインに大きな変更を加える新しい根拠は見つかっていない。しかし、生体作用に関する知識が進歩し、作用機構に対する理解が深まったことから、何らかの改良と明確化を行う必要はある。」。詳細は予稿集を参照。
5.パネル討論
パネリスト 国立環境研究所 兜真徳、 弘前大学 宮越順二、首都大学東京 多氣昌生
司 会: 世界保健機関 大久保千代次 先生
大久保:これまでの講演で、同じ研究結果に対しても、演者によって大きく異なるニュアンスを提示している。疫学研究と生物学的研究の間には乖離がある。
ハザード(障害)があるのか、不確実性を考えなければならない。どの程度の電磁界曝露があるのか?それらは何パーセントの人が浴びることになるのか、それらを踏まえて総合的な判断が必要になる。
疫学研究にしても、生物学的な研究にしても、それぞれ長所と短所がある。
対策を実施するにしても、具体的に何をどうしたらいいのか定かではない、平均的な磁界曝露の指標であるTWAでよいのか?一方では平均値ではなく、ピーク値との関連を示唆している妊娠への影響の研究もある。ピーク値で規制する?平均値で規制する?
こうした不確実性に関する論議を行なう必要がある。これに関して兜先生は?
兜:不確実性、あぶないかもしれない時の手法としてリスクアセスメントがある。できるだけ安全サイドを選択すべき。これは政策としての選択である。「リスク」は「ハザード」ではない。リスクはあっても、ハザードがあるとは言っていない。電磁界に関して、Hazard Identification(障害ありとの認定)は確立しているとは言わない。
大久保:多氣先生、ガイドライン作成の立場で、この不確実性に関しては?
多氣:規制を行う時は、明確な量―反応作用の確定が必要である。どこまで曝露を制限したら、影響がどうなるかを見極める必要がある。0.4μT云々に関して、高圧送電線からの磁界を規制すればそれでよいのか?こうした疫学研究を無視はしていない。これらは一つの指標であっても、規制まで行うという判断には不適切である。
宮越:元は電離放射線を研究していた。電離放射線の場合でも、低曝露領域でははっきりした影響を把握することはできなかった。そこで、アメリカで、100万匹のマウスに対して曝露実験を行い、少し影響があることが判った。そして、閾値無しの量―反応作用があると認定して、電離放射線の曝露限度を定めている。現在の科学技術では、そうした低レベルでの電磁界曝露の影響を研究することは不可能と思う。生物学的な研究者として、疫学研究で示唆された磁界の小児ガンへの影響は、考えにくい。
大久保:疫学研究に関するHillの判定基準を利用することをWHOでは考えているが、兜先生は?
兜:量―反応作用に関しては、疫学研究で0.4μTをカットポイントにしたりしているが、細かくカットポイントを分ければ量―反応作用があると見ることができる。
宮越:現状の研究を見れば、磁界の影響はHillの判定基準を満足していない。
多氣:「曝露」と言っても、何に曝露しているのか、明確になっていない。
兜:カーペットの上に寝ている場合などは、局所的に曝露していることになる。曝露は様々である。
大久保:曝露指標としてのTWAは目安になるか?
兜:磁界への曝露は日内変動などもあるので、TWAは一つの指標としては有効。
大久保:フロアからの質問に答える。10月に行われた低周波電磁界のEHCに関するタスク会議には兜先生・宮越先生が参加された。EHCの内容に関しては緘口令がしかれており、細かい話はできない。
高周波の影響に関しては、Interphone計画の結果待ちである。中間周波数に関しては、今後とも取り組むべき課題である。
大久保:疫学で言われている小児白血病の発生率は?
兜:日本と海外での発生率に大きな差異はない。
大久保:フロアからのプール分析に関する質問で、誤差の大きい疫学研究を合成したプール分析は、誤差の累積でさらに誤差が大きくなるのではないか?
兜:プール分析では個々のデータを再解析する、解析手段として、基データの条件などの違いに関して調整する手法もあり、誤差の累積にはならない。
大久保:フロアからの質問で、ICNIRPのガイドライン値は甘いのではないかという声もあるが?
多氣:磁界曝露値として50Hzで1ガウスという値を考えると、現実に判っていることから考えればそれでも厳しいということもできる。設定した閾値からのマージン(安全率)が十分かどうかは今後の検討課題である。
大久保:フロアからの質問で「電磁波過敏症に関しては?」とある。「そういう人はいることは事実、国によっては数%の電磁波過敏症がいるとされる。ボランティアを対象としたテストでは電磁波曝露と疾病との関係は立証されていない。電磁波以外のその他の物理的な要因、個々人のストレスが関連しているかも知れない」というのがWHOの見解である。
「家電製品からの電磁波に関しては?」という質問に関しては、「そうした報告はあるが、関連を立証する強い証拠はない」が、これに関して兜先生は?
兜:日本の疫学研究の中でも家電製品との関係を調査した。テレビ受信機の場合、1mで見る場合と2mで見る場合で少し影響は検出された。しかし、比較的強い磁界に曝露するはずの電気カーペットとの関係では影響は検出されなかった。こうした研究を継続するには、体に取り付けられる非常に小型の個人曝露計の開発が望まれる。床暖房からの磁界で高曝露になっているものもある。ちょっと注意が必要である。
大久保:家電製品からの電磁界に関しては、これから刊行されるEHCを見てください。
大久保:フロアからの質問として「電磁波以外の他の要因との複合的な影響は?」
宮越:REFLEXの研究の中で、何か複合的な曝露に関する研究結果が出てきそうである。
大久保::フロアからの質問で「炭やグッズでの電磁波防護効果はあるのか?」がある。これは「ない」と明言する。
大久保:フロアからの質問で「昔に比べて、周囲に電化製品が増え、電磁波曝露は増加している。小児白血病などは増加の傾向にあるのか?」
兜:こうした小児ガンの発生件数の推移などは、研究の為に欲しいデータである。日本ではガン登録が未完成なので、そうしたデータはない。昔の統計データを見れば、現在より少し多いようにも見える。ガンセンターの先生は、少なくなっていると感じている模様。
大久保:フロアからの質問で「0.4μTをカットポイントとしての解析結果がある。もしカットポイントを0.1μT以上としたらリスクの数字はどうなる?」
兜:レジメにある数字を再計算してみてください。カットポイントを0.6μTにすることもでき、その場合は、オッズ比はより大きくなります。
以上
記:20105−1
2005年12月の台湾でのAPEMCの予稿集を見ています。
そこで、ざっと見た中で、EMF関連の事項だけを紹介します。
*P140 L. Matabishi: Safe Use
of Cellular Phone: Assessing the Safety of Woman Hanging Cellular Phones in
front of their Chest from Breast Cancer
Risk.
携帯電話を胸に下げていると乳がんにリスクがある という論。携帯電話は脳腫瘍などのリスクがある、調査したら女性の多くは胸にぶら下げている、よって乳がんのリスクになる という論理。
*P143 S. Nicol et al: SAR
Analysis at 900MHz of Layered and Homogeneous Phantoms Incorporating Variation
to the Thickness of Fat and Muscle Tissues, at Multiple Dipole Distance.
皮膚・筋肉・脂肪と実際の頭部を疑似した場合と、均質なファントムを用いて、アンテナとファントムの距離を変化させてSARを検討した。
結果はおおむね、均質ファントムが厳しい方向になっている。
P146 A. Train et al: Specific Absorption Rate Values at
5.2GHz and 5.8GHz with respect to the separation between the Phantom Shell and
the antenna.
ファントムのシェルの厚さが厚いと、内部に伝達する高周波エネルギーが多くなり、SAR値が大きくなる。
P293 D. Chang et al: Loop Antenna for watch type
Temperature Sensor at 434MHz
台湾の会社からの報告、サーズへの対策として体温測定が行われている、
体温測定の為に、腕時計の形をした無線体温計が開発されている、
使用周波数は434MHzである。
これまでの内臓アンテナは性能に問題があったので改良した、この改良によって18mまで電波が届くようになった。
(BEMSJ注:この無線体温計のRF出力はいくらか?レジメには記載はない)。
P298 Y. Ishida et al: Visualization of Radiated
Emission Source Using Cylindrically Distributed Far Field Amplitude.
日本の福岡工業技術センタからの報告、
EMI対策を行うときに、どこから放射しているかを調べるために、放射源の可視化の研究を行なっている。
3m法で円周状に機器からの電磁界を測定する。そしてノイズの発信源として微小な電流源(微小ダイポールアンテナ?)があるとし、どの位置に、どの位の電流源があれば円周状で測定した電磁界強度になるかを計算して求める。
例としては、パソコン機器の信号ケーブルや電源コードが発信源になっていることを確かめた。
P343 S. Huang et al: Influence of Radiation Energy of
External Antenna on Human Head
送信アンテナの特性が近傍の頭部によって影響を受けるという研究で、頭部のSARに関する記述はほとんどない。
*P353 T. Rotcharoen
et al: The Comparison of Vertical and Horizontal Electric Field Treatment for
Rice Growth
直流高電圧送電線下の条件から、28.5kV/mの電界が、種もみの発育に影響するか実験を行った。
結果は、電界曝露は発育を促進する。
記:2020−5−7
以下の報告書を読み、以下に概要の部分を紹介する。
********************************
タイトル:Recent Research on EMF and Health Risks. Third
annual report from SSI’s Independent Expert Group on Electromagnetic Fields.
電磁波の健康リスクに関する最新の研究:電磁波に関するSSIの独立専門家グループからの3回目の年報
SSI’s Independent Group on Electromagnetic Fields, 2005
発行:SSIの電磁波に関する独立専門グループ:2005年
<報告書の概要の部分を対訳>
ELF 低周波
Recent biology 最近の生物学の研究
A German research group has published additional data that support their previous
results suggesting enhanced development of chemically-induced mammary tumors in
a specific sub strain of rats exposed to ELF magnetic fields.
ドイツの研究グループは、低周波電磁界に暴露したラットの特定の系統種に化学的に誘導した乳がんを増発させることを示唆した過去の研究を補足する論文を発表した。
Some recent studies, e.g. within the REFLEX program, suggest genotoxic effects
from exposure to relatively weak magnetic fields.
REFLEX計画を含む、幾つかの最近の研究は、比較的低い磁界曝露による遺伝子への影響を示唆している。
However, results from other recent studies were negative.
しかしながら、その他の研究での結果は、陰性(問題は見つからない)であった。
Previous evidence for carcinogenic and genotoxic effects of ELF magnetic fields
is inadequate and mainly negative.
低周波電磁波の発がん性と遺伝子への過去の結果(確証)は、「不十分」であり、主に「陰性(問題は見つからない)」である。
The recent studies have not established effects that would change the previous
conclusions.
過去の結論を変更しなければならないと言うような確立した最近の研究はない。
Recent epidemiology 最近の疫学
The recent childhood leukemia study from the UK is very large and uses
digitized exposure information, which requires no access to study participants’ homes and thus minimizes potential for selection bias.
最近のイギリスの小児白血病に関する研究は、規模は大きく、デジタル化された曝露情報を用いている、これは、研究対象者の家に行く必要はなく、それゆえに選択バイアスの可能性を低くできる。
However, the current publication uses distance between home at birth and power
line as proxy for EMF exposure.
しかしながら、現在の報告では、電磁波曝露の指標として生まれた家と送電線の距離を用いている。
The authors acknowledge that this is a poor marker for exposure and we await
further results based on calculated magnetic fields which we hope will be more
informative.
この研究者は、これは曝露の指標としては貧弱でると認めている。そして、さらなる情報となると我々が希望する計算に基づく磁界強度を指標とした更なる研究結果を待ち望む。
RF 高周波
Recent laboratory studies 最近の実験室での研究
Several recent animal and cell culture studies have evaluated possible
genotoxic effects of RF electromagnetic fields.
幾多の最近の動物と培養細胞の研究は、高周波電磁波の遺伝子への影響を評価している。
Two research groups reported increased DNA strand breaks and micronuclei.
二つの研究が、DNA一重連鎖の破断と微小核の増加を報告している。
However, these results are weakened by methodological limitations, and other
studies reported no effects, which is consistent with the majority of previous
studies.
しかしながら、これらの研究は方法的な限度から弱点がある。他の研究は過去の主な研究と一致するように影響を見出していない。
On balance, the recent studies reviewed, including those from the REFLEX
program, do not provide sufficient evidence to conclude that RF fields are
genotoxic.
これらを考慮すると、REFLEXプロジェクトの研究を含むレビューした最近の研究は、高周波電磁波が遺伝毒性を持つと結論づけるための「十分な確証」を提供しているとは言えない。
Blood-Brain Barrier脳血管関門
Most of the recent results of studies aimed at replicating earlier positive
work have been negative at low SAR levels.
初期の陽性(問題を見つけた)研究の再現実験としての最近行われた研究の多くは、低SAR曝露で、陰性(問題は見つからなかった)結果であった。
Further studies on the permeability of the blood-brain-barrier or on damaged
(darkly-staining) neurons are ongoing and should give more information on the
issue.
脳血管関門の透過性や神経細胞の障害に関する更なる研究が現在行われている。そして、それらは本件に関する更なる情報を与えてくれるだろう。
On balance, the evidence that exposure to RF fields alters the
blood-brain-barrier is weak.
これらを考慮すると、高周波電磁波曝露が脳血管関門を変化させると言う確証は弱い。
Human laboratory studies 人を対象とした実験室での研究
Recent work on cognitive functions in volunteers (including children) exposed
to RF fields has been negative; however, methodological limitations prevents
firm conclusions.
子供を含むボランティを対象とした電磁波曝露時の認知機能の最新研究は、陰性(問題は見つからない)である。しかし、方法論的な限度があり、確定した結論を導き出せないでいる。
There have been reports of some positive findings on alterations of sleep.
睡眠の変化という幾つかの陽性(問題がある)効果を見出した研究がある。
The data obtained on alteration of cerebral blood flow following RF exposure
are among the most interesting observations of biological effects even if they
do not point clearly to health effects.
高周波電磁波曝露に伴う大脳の血流の変化という得られたデータは、それらが健康影響に明白にならないかもしれないが、生体影響としての得られた観察結果として興味深いものになっている。
Following all of the recent publications on hearing and in particular those
originating from the European Commission’s GUARD
program, one could now conclude about the absence of effects of RF exposure due
to cellular phones at GSM frequencies, on the main parameters of the auditory
system.
聴覚に関する最近の研究と、GUARDプログラムという欧州委員会が始めた最近の研究から、聴覚システムの主流であるGSM携帯周波数の高周波曝露による効果(影響)はないと結論付けることができる。
Recent epidemiology 最近の疫学研究
Two recent Interphone studies on brain tumors suggest that there is no risk
increase either for short-term or long-term use, although long-term data are
sparse.
脳腫瘍に関するインターフォン計画の最近の2研究は、長期間のデータは希薄であるが、短期間の使用でも長期間の使用でもリスクはないことを示唆している。
A joint international publication of some of the studies taking part in
Interphone on acoustic neuroma showed no effect for short-term use and no
overall effect for long-term use.
聴神経膠腫に関するインターフォン計画の一部としての国際共同論文は、短期間の使用では影響はなく、長期間の使用では全体としては影響がない、ことを示している。
However, the laterality analysis did show a risk increase for ten or more years
of use.
しかしながら、携帯電話と同側での使用時の解析では、10年以上の使用でリスクの増加を見ている。
Some other Swedish data have also been presented but they are given less weight
in the overall analysis.
その他のスウェーデンのデータが提示されているが、全体の解析には大きな影響を与えてない。
On balance the currently available evidence suggests that for adult brain
tumors there is no association with mobile phone use for at least up to, say,
ten years of use.
現在入手可能なこれらの確証を考慮すると、成人の脳腫瘍に関しては、少なくとも10年間に至る携帯電話の使用とは無関係であること示唆していると言える。
For longer latency the majority of the evidence also speaks against an
association, but the data are still sparse.
長期使用に関して、確証の多くは関連性を語っているが、それらのデータはまだ「希薄」と言える。
The same conclusion holds for short-term use and acoustic neuroma.
同じ結論が短期間使用と聴神経膠腫についても言える。
However, for long-term use and acoustic neuroma there is a concern, and more
information is required.
Furthermore, studies of children are yet to be done, as well as studies on
outcomes other than cancer.
しかし、長期間の使用と聴神経膠腫に関しては心配があり、さらなる情報が必要である。
さらに、子供に関する研究はまだ行われていいない、癌以外の問題に関する研究も同様である。
**********************
関心のある方は、原著を入手して読んでください。
平成17年3月総務省より、
以下は報告書からの抜粋
*スウェーデン
電磁界の健康影響問題の起こる以前 (1960 年代といわれる)から感電等の電気安全性の観点から、スウェーデンでは送電線の下から10m以内(電圧値にもよる)には住居を建ててはいけないことが規定されている。
数年前までは、送電線の電磁界について、市民からの懸念や問合せなどが多かったが、現在では、停電問題に対する議論の方が多くなっているそうである。
*ポーランド
教会の塔に設置したアンテナ
多くのアンテナは、見えないように教会の塔の中に入れて設置されている。人々は教会の塔にある十字架がアンテナであることを知らない。
使用料は建物のオーナーに支払われるが、神父側は教区に資金が入るメリットがあり、信者は教会ということで取り立てて特に抗議をしない。
携帯電話のオペレーターは使用料を支払う義務があり定価表も定められているが、プラスアルファの補償額をいくらにするかという交渉がある。
*スペイン
送電線の設置に関しては、2000 年以前には送電線を人家の上に通してはならないが、既にある送電線の下に建築することに関しては規制が無かった。
2000 年からの規制は人家の上を通してはならないし、送電線の下に人家を建築してもならなくなった。
しかし、2000年以前に送電線の下に建築された人家で電磁界の問題が起きている、訴訟になったケースもあるが保健・消貴者省より、ICNIRP ガイドラインの範囲であれば健康上影響しないとの見解が出された結果電力会社が勝訴している。
現在最高裁で争っている別の1件のケースはICNIRPのガイドラインが出る前からの訴訟である。
*カナダ
( 3 )地方における EMF規制
カナダは連邦国家であり連邦、州および準州の管轄事項が決まっており、連邦政府管轄事項に関して州および準州が基準・規定を制定することが出来ない。
したがってIndustry CanadaやHuman
Resources Development Canada の基準と異なる基準を州および準州政府や地方の市町村が規定することは出来ない。
また州および準州管轄事項は連邦政府が規制することはない、したがって各州で規制内容が異なることもある。
一時期トロント市から携帯電話の基地局からの放射基準を厳しくする提案があったが、基地局の管轄は連邦政府であり、またトロント市の5箇所における実際の基地局での測定結果でも連邦基準値を大きく下回っており、更に基準値を下げる必要が無いと判断され、連邦基準のSafety Code6 が滴用され現在に至っている。
作成: 2006-11-10
2006年11月8日東京の全国都市会館で開催された国際シンポジウムに参加した。
300名収容の大ホールに、満席、予備の椅子を持ち出すほどの盛況であった。
以下は聴講して気のついた点を列記。
プログラム順
*開会の挨拶 NICT理事 松島祐一
*総務省挨拶 電波部長 河内正孝
ICNIRPの活動の紹介がメインテーマで、以下のプレゼンがあった。
*全体の活動概要 現在のICNIRP議長 P.Vecchia(パッキア)
・概要の説明
・特記すべき事項として、ICNIRPは「確立した知見に基づいて曝露基準を定めている」とあるが、この「確立した」という用語の説明があった。
「Peer-Reviewed研究」であること、「再現された研究」and/or 「異なる研究間で一致する研究」を「確立した研究」といっている。
*疫学研究とガイドライン A. Ahlbom
・IARCでの低周波磁界と小児癌の判定において、疫学研究結果は「Suffiecient
Evidence」であると判定されている。
・IARCの判定を受けて、Ahlbomとしての個人見解であるが「ICNIRPは予防原則の採用を推奨すべき」と考えている。
・RFと疫学の研究では、携帯電話と脳腫瘍の国際協調の研究が行われている。日本の研究結果もPPTのリストに含まれている。
リスクは検出されていない。
・RFの疫学の結果から、短期間の携帯使用でのリスクはない。長期使用に関しては現在リスクの増加はないとされるが、一部にリスク増加を示すデータがある。長期使用とAcoustic neuroma(聴神経腫)に関しては、いくつかの研究でリスクの増加を見ている。現在のICNIRPガイドライン値を代えることはない。
*生物研究とガイドライン B. Veyret
・WHOのEMFプロジェクトのWEBに、現在進行中の研究などのDBがある。
・これまでの動物実験結果から、「ほとんどの生体影響は体温の上昇(熱効果)で説明できそうである。」
・RF曝露における皮膚がんの発生の実験結果は、影響は見られなかった。
・オランダのTNOの携帯電話の実験に関して、スイスの再現実験では影響は見られなかった。
*物理・工学研究とガイドライン R.Matthes
・特記事項なし
*WHOとガイドライン M. Repacholli
・特記事項なし
以下は各パネラーからの10分程度の話題提供があり、その後にフロアから集めた質問に答える形で、Q&Aが行われた。
*WHOの取り組みについて WHO 大久保千代次
・WHOのEMFプロジェクトは11年目になった。
・低周波電磁界のEHCは、来年2月にWEBで公開できる見込み。現在6−7名で編集作業中。
Q:IARC判定の2Aと2Bの違いは?
A (Reachoilli):動物実験も疫学研究も共に十分な確証がある場合が、2A。
Probablly(2A)とPossible(2B)の違いは、日本語でも混乱があるようだが、フランス語・スペイン語の場合は、両者に違いはなく、言語による表現の違いがある。
Q:疫学研究の信頼性は?
A (Ahlbom):疫学はメタ解析などで信頼性を高めている。疫学の結果は偶然の結果であるとはいえない。
*日本の研究 九州大学 上野照剛
・IARCに山口直人、ICNIRPに多氣、WHO本部に大久保・・・と日本は世界に貢献している。
・日本での携帯電話と脳腫瘍の疫学研究は。影響がない という結果になり、IARCにはデータを送ってある。
2006年度末には、報告書が発行される予定。
*NICTの研究 NICT 山中幸雄
・特記事項なし
*小児の電波吸収特性 名古屋工大 藤原修
・精密な最近の解析結果は、30年前の研究結果で定めた曝露指針を変えなければならないようなことはない。過去のデータはかなり正確であることが判明してした。
・子供でも成人でも現在の防護指針でOk。
*国民生活と電磁波問題 主婦蓮 山根香織
・電波も目に見えない不安のひとつ
・情報の多さが逆に不安を広げている。
*電磁波過敏症について M. Hietanen
・WHOからFact Sheetが発行された。
*予防原則について P.Vecchia
・予防原則に関するWHOのドラフトを作成中
Q: Precautionary Principleは何を予防するものか?
A:ここにも英語のPrecautionとPreventionの日本語訳に関連する問題がある。
英語では明確な差異があるが、日本語ではその違いがなくなってしまう。 Preventionは予防である、予防注射にようにリスクの確定したものを防ぐことを意味する。Precautionは影響を最小限にする という違いがある。
Q:スウェーデンでのPrecautionの実施状況は?
A (Ahlbom):携帯電話に関しては、SSIが勧告を出し、不必要な曝露を避けるべしとなっている。高圧送電線に関しては、不必要な曝露を避けるとなっている。電力会社は考えられないというスタンス。送電線の移設などに関しては、一部で、小さい規模でやったという実績はある。
A (Vecchia):予防原則に関しては、コミュニケーションが大事である。
以上 関心のある方は、詳細は予稿集を入手して読んでください。
2006年に開催されたこのワークショップの聴講の記を、2014年1月になって、当時のメモを見て、まとめた。
1.ワークショップの概要
日時:2006年11月4日
場所:東京・新宿・京王プラザホテル
主催:総務省
目的:携帯電話の急激な普及や多種多様な無線設備の登場により、電波の安全性について国民の関心が高まってきていることから、日韓EU米各国の専門家・行政官を招いて施策や研究活動などに関する情婦交換・意見交換を行うことにより、各国間の電波防護に関する取組みの調和を推進することを目的としたワークショップを開催。
プログラム:
10:00−10:05 開会挨拶 総務省 河内電波部長
10:05−10:25 日本における電磁波調査の状況について 上野生体電磁波研究推進委員長
10:25−10:45 韓国におけるEMF調査状況について Nam Kim教授
10:45‐11:00 休憩
11:00−11:20 COST281の意見について 電波利用調査会(独)Dr. Gerd Friedrich
11:20‐11:40 IEEE C95.1の新しい基準について IEEE C. K. Chou氏
11:40‐13:30 昼食
13:30‐14:00 携帯電話と健康に関する疫学研究―現状と今後の方向性について 東京女子医大 山口教授
14:00‐14:30 高周波曝露の細胞生物学的影響について 弘前大学 宮越教授
14:30‐15:00 韓国における生体に関する研究について
Jae-Seon Lee氏
15:00−15:30 ボディマウント機器のSAR測定法について As-Kyouong Lee氏
15:30−15:50 休憩
15:50‐16:10 EMF-NETの役割、目的及び活動について EMF-NET Dr. Paolo Ravazzoni
16:10−16:30 米国における取組などについて FDA
Mr. Desta
16:30−17:00 EMF研究調整におけるWHOの役割 WHO 大久保専門研究員
17:00‐17:05 閉会挨拶
2.ワークションプでの話題
・全て英語で行われた。その中でメモを残した点を以下に纏める。200名程度の部屋に150人ほどの参加者があった。
1)日本における電磁波調査の状況について 上野生体電磁波研究推進委員長
・日本での研究では、結果は陰性効果のものが多い。研究中のものもある。
2)韓国におけるEMF調査状況について Nam Kim教授
・韓国ではかなり携帯電話の電磁波に不安を持っている。
・携帯電話基地局の強度測定を法律で義務付けることを提案中。今年の11月頃には法案が国会を通過する予定、現在は測定したり、測定の手順を定めたり・・・などの作業を行っている。
・2002−2005年に、中間周波数電磁界の健康影響に関する動物実験を行った。結果は、6.25μTの20kHz三角波磁界の長期曝露は見つからなかった、等
3)COST281の意見について 電波利用調査会(独)Dr. Gerd Friedrich
・科学者が中心になって活動
・参加各国での費用で活動し、EUとしての費用はなし。
・科学者は熱心に基本的なことを研究している。国民は具体的な回答(危険か否か)が欲しいという。この両者に乖離がある。
・多くの情報を出しているので参照して欲しい。WWW.Cost281.orgのWEBサイトを見て欲しい。
4) IEEE C95.1の新しい基準について IEEE C. K. Chou氏
・C95.1−2005を2006年4月に発行した。
・SARに関して、1gあたり1.6W/kgという数値を、10gあたり2W/kgに変更した。
数値的にはICNIRPの数値と調和しているが、詳細に関しては差異が残っている。
5) 携帯電話と健康に関する疫学研究―現状と今後の方向性について 山口教授
・過去の疫学研究は色々有り、リコールバイアスなどの分析が不十分だったりした。
そこで、信頼性のある研究として、IARCが中心となって、インターフォン研究が始まった。
日本:陰性、デンマーク:陰性、デンマーク:陰性、スウェーデン:一部陽性、ドイツ:一部陽性、英国:一部陽性 という結果である。
・日本では補則的な研究として、100名のボランティアを得て、実際の携帯電話の使用時間を調査する。
(携帯電話の使用実績に関して、質問に答えた数字と実際の使用時間に乖離が無いかを調査する。)
Q:100名の記録は何?
A:使用したか否かの発信記録のみ。携帯端末からの実際の発信電力に関しては記録を取っていない。
発信電力は電力制御もあり、この発信電力の調査は別の研究として行いたい。
Q:インターフォン研究の結果は、参加各国が個別に論文発表を行っているが?
A:各国ごとの研究は、個別に論文発表を行っても良い、という取り決めになっている。
Q:携帯電話による脳腫瘍に関して、無線周波数エネルギーの影響、音声スピーカからの磁気的なエネルギーの影響、低周波電磁界の影響 等の因子があるが何か?
A:意見に感謝。
6)高周波曝露の細胞生物学的影響について 弘前大学 宮越教授
・細胞実験の紹介 特記事項なし
7)韓国における生体に関する研究について Jae-Seon
Lee氏
・さまざまな研究、20kHzといった中間周波数の研究もある。質問があれば、個別の研究者に出して欲しい。
8)ボディマウント機器のSAR測定法について As-Kyouong Lee氏
・韓国ではボディマウント機器からのSAR測定法の準備を行っている。IEC62209パート2の規定を考慮している。
・人体寸法については、韓国人モデルを用いている。
・フラットファントムはアナトミカルモデルに比較して、SAR値は厳しくなる。
9)EMF-NETの役割、目的及び活動について EMF-NET Dr. Paolo Ravazzoni
・EUが基金を出している組織である。
・さまざまな情報・文書を発行しているので、WEBを見て欲しい。
10)米国における取組などについて FDA Mr. Desta
・National Toxicology Program(アメリカ毒物学研究プログラム)で、携帯電話に関する研究をスタートする。発がん性の研究等。
・この研究は2012年に最終報告書を刊行する予定。
<BEMSJ注:2014年1月のチェックでは、この研究はまだ継続中で、2014年までに完了・報告となっている。>
11)EMF研究調整におけるWHOの役割 WHO 大久保専門研究員
・レジメなし
・WHOのリサーチDBを利用して欲しい。
関心のある方は、このワークショップのレジメを入手して読んでください。
作成:2007-12-10
シンポジウムの概要
東京シンポジウム
日時:平成19年12月10日(月) 12:30 〜 16:30
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター/カルチャー棟大ホール
プログラム
1. 開会挨拶、経済産業省、総務省における取組
2. 世界保健機関国際電磁界プロジェクトの動向
講演者:大久保千代次 (明治薬科大学大学院教授、前、世界保健機関(WHO)放射線・環境ユニット サイエンティスト)
3. 国際非電離放射線防護委員会におけるガイドライン
講演者:多氣昌生 (首都大学東京大学院 理工学研究科電気電子専攻教授)
4. 生物学的研究の概要
講演者:宮越順二 (弘前大学 医学部保健学科教授)
5. 電磁波の疫学研究
講演者:山口直人 (東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学教授)
6. 「電磁波と健康」に関するパネルディスカッション
コーディネーター: 大久保千代次 氏
パネラー: 行政(森下) 多氣昌生氏 宮越順二氏 山口直人氏
講演の内容
・ 2の大久保千代次氏の冒頭の挨拶の中で、「WHOは予防原則の採用に関連して、「予防原則の枠組み」という文書の発行の準備を行った。
しかし、WHOの上層部から、科学的な論拠によらないことはWHOとしては不適切である という理由で却下された」という報告があった。
・ その他4名の講演に関しては、ほとんどがレジメに沿った話であった。 レジメに沿った話であるので、特記メモはない。
関心のある方は、この講演会のレジメを入手して、読んでください。
*パネルディスカッションの内容(以下はBEMSJのメモを纏めたもの)
・ 司会は大久保先生、事前に事務局に寄せられた質問と、当日フロアから回収した質問表を纏めて、質疑応答の形で進められた。
時間の割には多くの質問が有り、かなり早いペースで質疑応答が行われたので、メモを取るのが大変であった。
大久保:まずは経産省関連の質問から、家電製品からの電磁界に関する考え方は?
森下:家電製品からの電磁波に関しては、関心が高いことは認識している。
電力設備WGでも家電製品からの電磁波に関する話が出ている。
電力設備からの磁界に対応するのが第一歩であり、家電製品からの電磁波に関してはまだ検討は行っていない。
大久保;経産省サイドからの情報発信については?
森下;これは大きな課題であると考えている。電力設備からの電磁波に関する情報発信を行う、これをコアとしたい。
大久保:電磁波の健康影響云々であれば、環境省の担当業務ではないか?
森下:電力設備に関しては経産省の保安院が電気事業法に関する所轄官庁となっている。
大久保:電磁波の問題で、自治体での対応は?
森下:電力事業は国が規制を行っているので、自治体が対応することはないであろう。
但し、より低い磁界レベル云々の話の場合は、個別の案件として自治体組織が関係することになるかも知れない。
大久保:山口先生への疫学に関する質問です。
曝露評価では0.1、0.3、0,4μTという数字は疫学研究で出てくるが、それ以上の大きな磁界の数値は出てこないが?
山口:本日の講演の中でも説明したが、0.4μT以上の対象者は全体の1%程度以下である。
統計的に信頼性のある数値データを得ようとすると、この程度の数字となる。より大きい数字で解析を行えば、信頼性が担保できなくなる。
大久保:補足すれば、WHOのEHCの第13章に、0.4μT云々の記述があるので、読んで欲しい。
大久保:小児白血病の発生率は?戦後、電力需要が増大していることとの関連は?
山口:日本での小児白血病の発生率は、罹患率で置き換えて説明する。罹患率を得る元データは日本の中にいくつかある地域ガン登録のデータである。
1976年以降のガンのデータはある。電力需要の増加(で磁界への曝露は増加していると思われるが)があっても、罹患率は上昇していない。
大久保:(補足すれば)1年間の小児白血病の罹患は450名(15歳以下)である。
この1%が磁界に関連していると仮定すれば、4.5名の過剰罹患となる。受動喫煙に関連する過剰死亡率は・・・名であり、
これに比べれば、磁界によると 仮定される過剰罹患(死亡)率は小さいといえる。こうしたリスクの大きさよりは、
一般には「磁界によるリスク2倍」という「リスク2倍」というところに大きな不安を抱いているのではないか。
大久保:高周波・RFIDなどについては、本日は低周波に限定したシンポジウムということでカットする。中間周波数を含めてペースメーカへの影響は?
多氣;古いペースメーカは、その当時は携帯電話などの影響は考えられなかったので、影響を受けやすい。
旧名でいえば不要協が多くの調査報告データを発表している。参照して欲しい。
大久保:宮越先生への質問。脳幹・セレトニンなどへの影響は?
宮越;脳幹ではセレトニンが作られる、セレトニンを材料にしてメラトニンが生成される。かつてはメラトニン仮説が話題になった。
低周波電磁界に関しては、これまでの研究結果、メラトニン仮説は支持されていない。高周波電磁界に関しては、研究中。
大久保:環境研の国内疫学で、学歴による補正を行った理由は?
山口;これまでの疫学研究から、社会経済的指標が疫学結果に影響していることがわかっている。
環境研の疫学研究は、小児白血病で小児が対象であるので、代わりに母親の学歴をこの社会経済的指標としての選択を行った。
大久保:WHOでは、ELFとしては300Hzまでが対象であった。発行されて低周波電磁界のEHCは100KHzまでとなっているが、これはなぜか?
大久保:熱的な作用と刺激作用を論拠に、高周波のEHC,低周波のEHCと2分することにした。
中間周波数を独立したEHCにするには、研究・データが少ないことと、検討期間などの作業時間と費用を考えて、2分した。
大久保;家庭では家電機器は多数あり、複合的な曝露となるが?
多氣:複数の機器からの曝露に関しては、複数の周波数への曝露も含めて、ICNIRPのガイドラインに詳細な記述がある。
それを参照して欲しい。IECTC106ではより簡便な測定・評価法を規格化している。
家電製品からの電磁波は距離によって減衰するので、最も近い機器からの曝露が支配的になっていると考えられる。
大久保:IH電磁調理器に関しては?
宮越:IH電磁調理器に関連する研究報告を出した(BEMSJ注:Bio Electro Magnetics誌2007年10月の論文と推定。
この論文はまだ読んでいないが、手元にある)。これは細胞実験に関するもので、ICNIRPの80倍の強度まで試験を行い、
遺伝子を傷つけるかに関しては障害が与えなかった。変異原性も見つからなかった。
同じ様な研究が電力中研からも出ている(BEMSJ注;これから発行される論文のようなニュアンスであった)。
日本では動物実験がスタートしている。
多氣:胎児への影響に関しては、局所的な磁界に局所が曝露する場合の研究もある。曝露する局所のサイズが小さいと誘導する誘導電流は小さくなる。
局部的に大きな磁界の値があっても、曝露する面積が小さい場合や、胎児もサイズは小さいので、誘導電流は小さいと思われる。
大久保:中間周波数に関しては、WHOとしても、継続して研究すべし、となっている。
多氣:IH調理器に関しては、リスクはあるかも知れない。
しかし、調理自体が家庭内で最も大きいリスクをもつ作業である、ということも考えるべきである。
大久保:中間周波数に関してはICNIRPのHiternenがレビューを行い、Blue Bookとして刊行してある。参照して欲しい。
大久保:ICNIRPの規定値より厳しくしている国に関しては?
大久保:スイスとイタリアのことを指していると思われる。EUのコメントではそうした厳しい規定は否定している。
WHOとしては、暗に、スイス・イタリアの動き、政治的に決めた厳しい値の設定を、批判しているつもりである。
大久保:ICNIRPの低周波電磁界のガイドラインの改訂は?
多氣:2007年4月に議論を行った、2007年10月に最初のドラフトができて、論議を行っている。WHOの低周波電磁界のEHCがベースである。
中間周波数に関してはICNIRPと日本の電波防護指針が異なるという領域もある。これらの中間周波数の安全率が変わるかも知れない。
大久保:日本でも予防原則を採用すべきでは?
森下;この件に関しては電力設備WGでも論議を行った。結果としてWHOのEHCをFollowした。
不安を感じる人には説明できるようにしていきたい。
大久保:電磁波過敏症に関しては?
大久保:2004年WHOで電磁波過敏症に関するワークショップがあり、2005年に報告書を纏めた。この報告書を参照して欲しい。
2重盲検法で試験をした場合、電磁波の影響は見つけられていない。電磁波に対する不安感が最も大きな過敏症の要因であるかも知れない。
大久保;パネル討議を行う予定であったが、時間の関係で、質疑応答に終わってしまった。
これで終わります。
フロア:その前に是非、一言。電気マッサージ機から70mGを越える磁界を観測した。
これをメーカに連絡したら、1mあたり2万円もするシールド繊維を持ってきた。
欧州に輸出するモデルではCEマーキングの為に、シールド繊維を使っているが、国内向けはコスト削減の為に、シールド布を取り付けていない
というメーカの説明であった、何とか一本化して欲しい。
(BEMSJ注;持参していたシールド布は普通の銀メッキをしたような電磁波シールド繊維、これでは50Hzなどの磁界のシールドには効果はないはず。)
大久保:医療目的の場合は、電磁界曝露は除外されている。WHOの見解もそうである。
作成: 2008−10−22
1.以下の講演会を聴講した。
*期日:10月22日(水) 13:30-16:30
*会場:東北大学 東京分室(東京駅北口 東京都千代田区丸の内1丁目サピアタワー10階)
*主催:ISTC
*協賛:東北大学 東北アジア研究センター
*テーマ:「ロシアにおける電磁波規制と関連技術」
ロシアの電波ばく露基準に関する技術的解説していただくと共に、現在のロシアにおける環境電磁工学技術の紹介、研究活動、企業化などの現状を紹介していただきます。
*主催者ISTC:旧ソ連の研究者と日米欧の研究者、企業との共同研究を推進しています。今回、環境電磁工学(EMC)に携わるロシア人研究者を招へいし、講演会を開催いたします。合わせて我が国の研究者との交流により共同研究などへ結びつけていただきたいと思います。
*講演は英語で行います。一部ロシア語による講演には日本語通訳をつけます。
2.講演要旨など
講演1:
講演要旨
講演者: Valentina Nikitina (St.Petersburg
State Marine Technical University)
タイトル:Electromagnetic
fields on board ships. Assessment of danger for the crew, hygienic regulation,
Russian experience in protection from EMF”.
Statistics shows that no less than two thirds of accidents in the water
transport take place due to false actions of the navigators and crews of ships
(human factor). This report considers the problems of hygienic assessment of
electromagnetic fields on board ships, possible role and significance of the
electromagnetic factor in ensuring the navigation safety. The unfavorable
electromagnetic situation on board ships (in premises and on open decks) is
formed by the changed natural electromagnetic background and EMF radiation of
technical aids. First of all, these are electro-energetic systems, which are
the sources of low frequency magnetic fields. The highest levels of magnetic
fields are registered at watch posts in the premises of the power compartment.
There is a problem of irradiation of the crew by radiofrequency EMF produced by
the antennas of radars and marine radio communication transmitters on the open
decks. Investigations on hygienic assessment and biological effect of modulated
EMF produced by the marine radio-electronic aids were performed in the
この講演はロシア語で行われ、日本語への逐次通訳が行われた。
船舶の乗組員の電磁波曝露に関する講演である。
ロシアでは船舶による輸送が多い。多くの船舶の運航があり、したがって事故も多い。
乗組員のヒューマンエラーの防止などと共に、様々な環境・曝露の中で仕事をする乗組員のことを考える。曝露の一つとして電磁波の曝露もある。
船舶内は、鉄や金属の塊の中なので、地磁気も自然界に比べると2分の1から7分の1に低下している。
エアコンの使用で、加湿なしで行うと、室内の湿度は低くなり、静電気の問題も発生する。
搭載する無線機器やレーダからの電磁界曝露もある。
船舶での低周波電界は数10V/m、磁界は中央官制室では75〜102μT、エンジン室では135〜200μTである。
周波数で見ると50Hzよりも0〜25Hzの帯域が大きい。
短波やVHF帯域ではオープンデッキでの電界は150〜300V/mである。
レーダからの電波曝露は問題がある。レーダアンテナからの電磁界強度の測定は困難である。
アンテナの回転を止めて、静止した状態で測定を行おうとすれば、レーダの電波は自動的に停波となる。
レーダを回転させると測定ができない。
海外からロシアに輸入されるレーダの場合は、各製造元で電波曝露に関する資料を準備することになっている。
但し様式などは定まっていないので、あるメーカは曝露量などの記述があったりするが、メーカによっては、単純に・・・m以上離れること、という程度の記述しかない。
こうした記述が不完全なので、乗組員は電波曝露に関して十分に理解することができず、レーダを怖がることになりる。
レーダがきちんと利用されないことになり、船舶事故に繋がる。
国際的な船舶レーダの評価基準や様式を統一する必要がある。
旧ソ連時代の調査では、船乗りに疾患が多い。
1966年のUspenskaの研究、マイクロ波曝露の影響の研究では、職歴が長くなると疾患が多くなるという報告がある。
1994年の私(Nikitina)の研究では、3-30MHzの電磁界への曝露で、対照群に比べて、頭痛が多くなっている。また、心肺機能に関連する疾病では5.2倍、精子無力症では11.4倍となっている。
曝露基準が1989年に制定され、その最新版である1989-06によれば、
船内の居住区では静電気は15kV/m、50Hzの電界は500V/m 磁界は10μT(100ミリガウス)である。
30kHz以上の無線周波数に対する規定もあり、例えば30MHz-300MHzでは電界強度で規定され、3V/m、300MHzから300GHzでは電力密度で規定され10μW/cm2となっている。
作業環境では、静磁場は10mT、50Hzの電界は5000V/m 磁界は100μTである。
30kHzから300GHzの規定もあり、これは曝露強度と時間の積で規定されている。詳細はここでは割愛。
質疑応答
Q:なぜ船舶か、同様な電磁環境、電気で動くものとして飛行機や鉄道もある。
A:電車なども研究の対象としている。現在船舶工学関係の職についているので、今回は船舶上の電磁環境に関して講演を行った。
Q:パルス性電磁界と正弦波の電磁波では健康影響に差異があるか?
A:パルス性が影響度大と思う。
Q:例にあげた疾病が多いという疫学調査、これらのメカニズムは判っているのか?
A:複雑なのでメカニズムはまだ判明していない。
関心のある方は、詳細はレジメ集を入手され、読んでください。
講演2
講演要旨
講演者:Nikolay Khokhlov (Limited Liability Company
NANODIAGNOSTIKA)
タイトル:Quasistatic
electromagnetic tomography methods and its applications developed in the
Institute for Radioengineering and
Electronics(Moscow, Russia)
Some new quasistatic tomography methods have been developed for different
medical applications in the Laboratory of mathematical methods in radio physics
of the
The device uses voltage measurements on the object's surface when the electric
current passes through the volume, as initial data for the image
reconstruction. High accuracy initial electrical data are processed by fast and
effective reconstruction algorithms. As the measurements in electrical
impedance tomography can be performed rather fast, it enables to visualize many
processes (such as heart pulsation) in real time. MIT unlike EIT doesn't
requires electrical contacts with the body and uses interaction of oscillating
magnetic field with conductive media. The conductivity (and permittivity) can
be reconstructed from the measurements of perturbed field outside the objects.
The EFT method exploits interaction of high-frequency electric field with
inhomogeneous conductive medium without contact with the electrodes. Unlike an
electrical impedance tomography no electric current is injected into the medium
from the outside.
この講演は、医療診断法として電磁界を利用するものである。
電気インピーダンス法:開発が完了し、市販中。
磁界法;開発中
電界法:開発中
この講演は電磁界の健康影響には関連はない。 よって以下詳細は割愛。
講演3:
講演要旨:
講演者:Nina Rubtsova (Research
Institute of Occupational Health of Russian Academy of Medical Sciences)
タイトル:EMF Hygienic standardization in the Russian Federation and prospects
of its harmonization with international
In Russia EMF hygienic standards are developed on the basis of hygienic, clinical-physiological,
epidemiological and experimental researches in view of published scientific
data. The main role is played the data of experimental researches under chronic
exposure allowing to receive time-value dependences of biological effects and to
establish a threshold of harmful effects. Hygienic norms are developed for
discrete frequency ranges. In Russia there are hygienic norms of occupational
exposure for hypo-geomagnetic conditions, static electric and magnetic fields,
50 Hz electric and magnetic field and radiofrequency EMF (from 10 kHz to 300
GHz), and for special EMF case (ultra broadband
pulses). General public hygienic standards are developed for static electric
field, power frequency (50 Hz) electric and magnetic fields and radiofrequency
EMF (from 30 kHz to 300 GHz). Sanitary Rules and Norms are developed for mobile
communication systems (27-2400 MHz frequency range) and VDT. The basic problems
of international harmonization of EMF norms is different principles of
threshold permissible levels definition in RF and ICNIRP (as international) -
chronic exposure adverse effects in RF and acute exposure hazard in
international rules.
レジメとは異なる講演となる。
この講演の中心は電力周波数である。
色々な場所で電磁界に曝露している。
高圧線関係の従事者の調査で、全死因ではリスクが0.59と低いにもかかわらず、白血病は2.03倍という結果もある。
旧ソ連時代から曝露規定に関しては長い歴史がある。
最も古くは1960年に50Hzの職業的な曝露規定を定めた。その後各種の規定が作られた。
最近は、2007年に磁界曝露に関して職業・一般公衆に対する規定が策定された。
50Hz電界 住宅内 0.5kV/m 高圧送電線路(330kV-1130kV)との境界 1kV/m 高速道路とのクロス地点では10kV/m
50Hz 磁界 幼稚園や学校の近くの一般公衆の曝露は 5μT
電磁界曝露を低減するための研究を行っている。
Active、Passive、共振の方法で、住居内の電界を1kV/m以内に、磁界を10μT以下に出きる方法で特許を取得した(BEMSJ注:いわゆる磁界をキャンセルさせる方法)。
関心のある方は、詳細はレジメ集を入手され、読んでください。
講演4
講演要旨
研究者:Alexander Worshevsky
(ELEMCOM)
タイトル:EMC
Standardization and activities in Russia Federal agency of technical regulation
is the national competent body in Russia. EMC law is under consideration.
Technical Committee (TC EMC) prepares national EMC standards. Specialists from
different institutes and organizations work in Technical Committee. There are
many subcommittees. Russian Maritime Register of shipping set EMC requirements
for shipboard equipment. Many EMC standards have become mandatory. Standards
are used to prove EMC properties of products. Basic and generic standards are
based on IEC standards. Many product family and product standards have been
renovated. The equipment of potential hazardous objects such as ships,
railroad, nuclear power plants has the highest immunity. The standards require
10 immunity tests for shipboard and 16 tests for nuclear power plant equipment.
The test level is higher then the level used in
generic standard for industry environment. New current tests in grounding wires
are mandatory. Immunity test of the whole system after an installation will be
determined. EMC test equipment are produced in
この講演はEMCがテーマである。
EMCに関する規定はある。多くはIEC,CISPRを準拠し、ほぼ同じ内容であるが、わずかな差異はある。
ロシアではEMCはまだ法規制にはなっていない。しかし、近々そうなるだろう。
機器の安全性などの技術認定を行う必要がある。機器によって何を試験を行うか、膨大なリストがある。そのリストの中に、EMCの試験もリストされていれば、EMC規定に基づいて試験を行うことになる。
但し、船舶機器に関してはロシア独自の規定で有り、対応するIECなどの規定はない。
鉄道関係、原子力関係も同じで、これらはかなり多くの試験を要求している。
ロシアにおけるEMCに関する情報は、以下のサイトでロシア語・英語で公開しているので、参照のこと。 www.elemcom.ru
質疑応答から
Q;ロシアの船舶用機器のEMCテストに関する質問、サージ電圧に関して、IECでは1kVであるのにロシアでは2kVになっている。なぜか? 国際調和を図らないのか?
A:これには長い歴史がある。船舶での調査で1kVを超え、2kVまではいかないというデータがある。将来的にはIECの規定に調和するかも知れないが、現状ではバリスタを1個追加すれば対応できる。
この講演は電磁界の健康影響には関連はない。 よって以下詳細は割愛。
講演5
講演要旨
講演者:Nikolay Chubinsky (Moscow
Institute of Physics and Technology)
タイトル:The
electromagnetic field probe for registration of ultra
wideband pulses
Measurement of parameters radiated ultra wideband
(UWB) pulses is of interest for many applied and scientific researches. They
include an UWB radar with extremely high spatial resolution, sounding of media
with average and big losses (georadar systems), a
wireless UWB communication systems, a systems for monitoring of the radiated
electromagnetic pulses parameters. The last are used in various researches,
including at the decision of the electromagnetic compatibility problems. The
main elements of such measurements are of electromagnetic field probes.
They are intended for measurements of spatial distributions of the radiated
signals. As against measuring antennas, they have the small electric sizes that
allow to carry out measurements with higher spatial resolution. The majority of
such probe designs are developed for registration a relative narrow-band (quasicoherent) signals. Even at relatively wide of covering
frequency range, with rare exception, it cannot be used for measurements of
parameters radiated UWB pulses having relative width of a spectrum more of an
octave.
It is caused by a dispersion, that is by nonlinearity of the phase
characteristic the element - converter of an electromagnetic field in an
electric signal on its output. The design of the electromagnetic pulse probe is
developed and investigated. It has the smooth phase characteristic close to
linear at frequencies of 100-2500 MHz. Thus
minimization of dispersive distortions of the nanosecond pulses is achieved.
The probe is made on the three-layer printed-circuit-board together with
sections of microstrip lines. The last provide balancing a connecting line
between the probe and the recording device (a digital oscillograph). Thus
attenuation of inphase interfering signal is achieved
on 25-30 dB. The similar probe for registration
electromagnetic UWB pulses by nanosecond duration with the field amplitude up
to 50-100 kV/m is developed. Output signals of similar devices considerably
differ from time function of an electromagnetic field. The processing
algorithms of the registered signals are developed and are allowing to restore
the true form of a field in a point of an arrangement of the probe.
この講演はUWBの電波の測定用プローブの話である。
内容が難解で、全く理解できなかった。
この講演は電磁界の健康影響には関連はない。よって以下詳細は割愛。
記:2008−12−6
「保健医療科学」2007年に電磁波の健康影響特集が掲載されています。
その概要を紹介します。以下に各パートの概要だけを紹介しますので、関心のある方は原文全文を入手して読んでください。
*「電磁界の健康リスク」 大久保千代次
日本人で電磁界の曝露を受けない人はいない。言い換えれば全国民が電気や電波の恩恵を受けている。しかし、恩恵を受けながらも、電磁界の健康影響を懸念する人々がいるのも事実である。電磁界と生体との相互作用は、低周波領域では誘導電流による神経系への刺激作用が、高周波領域では生体に含まれる水分が振動・回転して発生する熱作用が主となる。
国際非電離放射線防護委員会は、これらの相互作用を根拠に、電磁界曝露制限値を設定している。しかし、同委員会が提言する国際的ガイドライン値を大幅に下回る曝露レベルでも健康影響をもたらすとの報告が報道されるため、国民に漠然とした不安を抱かせている。
商用周波を含む超低周波電磁界の健康リスク評価での問題点は、疫学研究結果と細胞や動物を用いた生物学的研究結果の乖離である。リスクの存在が疫学研究で示唆される0。3-0。4µT にあるのか、あるいはこれまでの生物学的知見から数千µT以上と考えるのかによって、電磁界防護政策が大きく変わるのは当然である。
一方、無線周波電磁界の健康リスク評価作業では、13ヶ国による携帯電話使用と脳腫瘍の関連性を探る大規模な疫学研究結果が近く発表される予定である。WHOは14年前に国際電磁界プロジェクトを発足させ現在も継続中である。プロジェクトの健康リスク評価となる電磁界の周波数は0-300GHzで、広範囲に亘る。リスク評価の結果は、環境保健クライテリアとして順次出版している。本稿では、WHO国際電磁界プロジェクトの取り組みを中心に電磁界のリスク分析を紹介した。
*「電磁界の疫学 ―低周波―」 笽島茂
電磁界による健康影響の問題は多岐にわたる。本総説は、低周波電磁界の中でも居住地における超低周波(ELF)の電磁界(EMF)への慢性的で低強度の曝露と小児白血病の発生に関する疫学的研究の動向、国際がん研究機関(IARC)による因果関係の評価を紹介する。
この関係についての疫学的研究は商用電力周波数(50Hz/60Hz)の電磁界への曝露評価の方法によって、主に(1)ワイヤー・コードによるもの、(2)計算による磁束密度によるもの、および(3)実測による磁束密度によるものに分類できる。
それぞれのプール解析の結果は、(1)の方法を用いることに否定的なものだが、(2)の計算、あるいは(3)の実測による磁束密度が0。3µT
から0。4µT以上で0。1µT以下に比べて白血病罹患リスクが2倍前後に増大していることを示唆していた。
この結果を受けて2001年にIARCは次の内容の評価を下した。
すなわち、ELF磁界による小児白血病罹患リスク増大の疫学的研究は正の関係を示している。
バイアスの問題が残っており、動物実験の結果も十分ではないが、因果関係があり得るのでグループ2B(Possibly carcinogenic to humans)が相当である。
これを受けて2007年にWHOが策定した環境保健基準238号(EHC238)は、IARCの評価以降の主要な研究を吟味した上で現段階ではグループ2Bの評価を変更する必要はないとし、プレコーションに基づくアプローチをとることが適当であるとした。
しかし、そのようなアプローチはEHC238にもあるように、電気エネルギーが今日の社会の福祉を向上させていることと調和のとれたものでなければならない。
*「電磁界の疫学 ―高周波―」 山口直人
国際共同疫学研究であるINTERPHONE STUDY を中心に、携帯電話端末使用と聴神経鞘腫、神経膠腫、髄膜腫との関連に関して実施された疫学調査をレビューした。
INTERPHONE STUDYは、イギリス(2地域)、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェイ、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、そして日本の13カ国が参加して実施されている国際共同の症例対照研究である。
共通のコアプロトコールを採用しているのが特徴である。これまでに、聴神経鞘腫については日本を含む6カ国から結果が公表されており、また、北欧4カ国と英国2地域を総合した研究結果が公表されている。
また、神経膠腫については6カ国から結果が公表されており、北欧4カ国および英国1地域を総合した結果も公表されている。
髄膜腫については5カ国から結果が公表されている。
聴神経鞘腫、神経膠腫、髄膜腫とも携帯電話非使用者と比較して携帯電話端末使用者でリスクが高いという結果は一切、報告されていない。
10年以上前からの長期使用者に限っても特段、高いリスクは認められない。
10年以上前からの長期使用者に限って、さらに携帯電話使用と同側のリスクを見た場合に、聴神経鞘腫と神経膠腫でリスクの増加を示す報告がある。
聴神経鞘腫では、スウェーデンにおける相対リスク3.9、北欧州の6研究を総合した場合に、累積使用年数が10年以上の携帯電話使用者に限ると相対リスク1.8という結果が注目される。
神経膠腫では10年以上前からの長期使用者に限って、さらに携帯電話使用と同側のリスクを見た4報告では一貫して1を超える相対リスクが見られる。
しかし、その中の3報告では反対側の相対リスクはむしろ低い値であり、recall biasの影響が示唆される。
したがって、神経膠腫については長期使用者でリスクが増加するかどうか、現時点では判断できない。
いずれの腫瘍についても、INTERPHONE全体の報告が公表されて、詳細なリスク評価が完了するまでは、リスクの有無について判断を下すのは時期尚早と言わざるを得ない。
*「静磁界と健康」 池畑政輝
静磁界は我々の生活環境の様々な箇所で使われている。便利な反面、社会の必需品となった磁気カード、またペースメーカーなどは静磁界によってある条件では影響を受ける場合があることも事実である。
一方では、医療用のMRIの普及が進み、数T(テスラ、1T=10、000Gauss)の強静磁界に曝露する機会も増えている。
このような技術の進捗に合わせ、その生体作用、健康影響を評価する研究が行われている。
国際保健機関(WHO)はこれらの科学的知見をもとに、2006年に静磁界(および静電界)についての環境保健クライテリアを発刊した。
本稿では、この内容や我々の研究で得られた知見を通して、静磁界の健康影響を考える。
静磁界の発生源としては、地球自身の地磁気から始まり、身の回りにある磁石を利用した製品、電気機器・装置、医療用MRIなどが日常の環境中にある。
また、これまでに明らかな生体作用としては、短期・急性の影響として強静磁界中での移動時に発生する誘導電界による神経刺激作用が、試験管レベルでは磁界による生体高分子の配向等が挙げられるが、これらの作用がどの程度人の健康に対するリスクとなり得るかについては、議論が続いている。
また発がんなどの長期影響については、研究が不足していることは否めないが、変異原性に関しての我々の研究結果からは、影響があるとしても、健康リスクとしては極めて小さいと解釈できる結果を得ている。
しかしながら、全体として健康リスクを評価するための知見が非常に少ないため、そのリスクを最終的に結論づけることは現状では難しく、国際がん機関(IARC)の発がん分類では『Group3(発がん性を分類できない)』、WHOの環境保健クライテリアでは『リスクを適切に特徴付けることはできない』と記述され、必要な知見を得るための研究勧告がなされている。
一方で、静磁界の持つエネルギーやこれまでの知見を踏まえて考えるならば、医療用MRIでしか曝露することの無い数Tレベルの静磁界であっても、今後の研究によって顕著な生物影響はおそらく認められないと予測して良いであろう。
しかしながら、今後の研究により、そのことを予測の範疇でなく科学的に明らかにしていくことが、すなわち電磁界と健康を正しく理解するために、科学の果たすべき責任であるといえよう。
*「低周波電磁界と健康―生物学的研究から―」 牛山明
さまざまな電気機器の利用はわれわれの生活をより便利に、そして快適にしてきた。それらの電気機器の運転を支えるための電力の供給は不可欠である。
一方で、電力の供給量と発生する電磁界は密接に相関することから、我々が日常生活で受ける可能性のある電磁界は増加の一途であることが容易に推察され、そのため電磁界への曝露による健康影響が懸念されてきた。
そのような背景のもと、WHO国際電磁界プロジェクトによってまとめられた低周波電磁界への曝露による健康リスクを中心とする環境保健基準モノグラグ(EHC238)が2007年6月に発刊された。
評価の対象になった文献の多くは、商用周波(50または60Hz)磁界に関する研究である。
このEHCでは、工学、医学、生物学、心理学など多くの学問分野にまたがる文献を総括的に評価している。
本稿においては、その中でも生物学的研究を中心にこれまでの知見を概説し、電磁界の健康リスクに対する現状について述べる。
*「電磁界の人体曝露に関する防護指針と規制」 多氣昌生、渡辺聡一
電磁界の防護指針は、健康リスク評価に基づき、人体の健康に悪影響を及ぼす可能性のある曝露条件を同定し、必要な安全率を設定したものであり、人体を保護するために守るべき指針である。
防護指針は、電磁界環境の安全性を評価、管理するための指針としてさまざまに活用されている。
防護指針は、人体の健康を保護するために電磁界の利用を制限するだけでなく、生活に不可欠な電磁界をどの程度まで許容してよいか、というガイドラインでもある。
米国では、1950年代からマイクロ波の生体影響を中心に多くの研究が行われてきた。
この成果に基づいて、早くから安全規格が作られた。欧州では、放射線防護の拡張として電磁界などの非電離放射に対する防護が行われてきた。
これらの防護指針は、確立された生体影響の閾値に基づき、適切な安全率を考慮して構成されている。
このような科学的根拠に立つガイドラインを用いて、電磁界環境を管理することが推奨されている。
一方で、短期的な曝露でも観察される確立された現象以外の、長期的な曝露による健康影響に対する探索は長い間行われてきた。
しかし、そのような現象は確立されていない。
予防的な対策として、現在のガイドラインに比べて非常に低い恣意的な制限値を用いた規制がなされる場合があるが、それが安全性の限度値であるかのような誤解を招く恐れがあるので、規制としてそのような制限値を用いることは望ましくない。
*「電磁界のリスクコミュニケーション」 長田徹
電磁界の健康影響については、これまで国内外で研究が進められてきたものの、そのリスクは依然として不確実な状況にある。
そのような状況下で、政策立案者、事業者は公衆の不安に直面し、リスクコミュニケーションの重要性が認識されつつある。
本稿では、最初に、リスクコミュニケーションの定義及びその背景にある人々のリスク認知を解説した。
次に、電磁界のリスクコミュニケーションに関する留意点として、目的の設定及びメッセージ内容について述べた。
最後に、今後の課題として、「予防原則」の導入、曝露情報、マスコミとの関係を、リスクコミュニケーションとの文脈において議論した。
作成:2007−3−28
以下の研究会は、学会員外にもオープンな研究会ということで、参加した。
第11回 電磁環境研究発表会
開催場所:建築会館会議室
開催日:2007年1月24日(水)
プログラム
13:30-13:40 開会の挨拶 黒崎幸夫(三井住友建設)
13:40-14:07 電磁シールド性能評価手法に関する一考察 笠井泰彰(大林組)
14:07-14:34 都心部での到来波信号に関する測定実験 川瀬隆治(東急建設)
14:34-15:01 石膏ボード型電磁波吸収建材の開発と室内伝送速度改善 鈴木宏和(熊谷組)
15:07-15:34 一般建材を使った3層型電波吸収体の開発に関する基礎的検討 木村健一(フジタ)
15:34-16:01 建築電磁環境設計と性能検証おける設計者の説明責任 長田耕治(清水建設)
16:25-17:20 最近のトピックス−医療電磁環境について− 医療電磁環境研究会より
医療の現場における電磁環境 花田英輔(島根大学医学部附属病院)
医療機器と使用環境 平野知(フクダ電子EMCセンタ)
興味のある方は、上記研究会のレジメを入手して読んでください。
以下は参加した筆者のメモから
1.開会の挨拶 黒崎幸夫(三井住友建設)
・この電磁環境研究会は16年の歴史を持っている。
2.電磁シールド性能評価手法に関する一考察 笠井泰彰(大林組)
電磁波シールドを施した場合の性能評価法に関する検討。建築施工側として如何に評価を行うか悩んでいる。
3.都心部での到来波信号に関する測定実験 川瀬隆治(東急建設)
電磁波シールドを施した場合の性能評価として、東京タワーなどから到来する外部電波を利用できないかという研究。
・東京の江戸橋の近くにある13階建てのビルの9F、東京タワーに面した部屋での到来電波の強さを測定。TV放送波は90dBμV程度ある。
・同じ建物の屋上では、120.6dBμV(TV10chの映像搬送波 205MHz)あった。
4.石膏ボード型電磁波吸収建材の開発と室内伝送速度改善 鈴木宏和(熊谷組)
石膏ボードによる電磁波吸収建材を造り、部屋の中の無線LANの伝送速度を測定して吸収材の効果を検証した。
5.一般建材を使った3層型電波吸収体の開発に関する基礎的検討 木村健一(フジタ)
特殊な材料を用いるのではなく、建築材として一般に使用されている材料を用いた電波吸収材を開発中という報告。
6.建築電磁環境設計と性能検証おける設計者の説明責任 長田耕治(清水建設)
・建築施工側も電磁環境に関連する設計などで悩んでいる。
7.質疑応答から
・九州大学病院が高層建築に改装になった頃の話であるが、九州大学病院は福岡空港に近い場所にある。
建築前には予想しなかったが、建設を進め、高層階ができた段階で、福岡空港のレーダ電波の直撃を受けることが判明した。結果として、レーダの直射を受ける場所には電波シールドを施した、という例がある。
8.医療の現場における電磁環境 花田英輔(島根大学医学部附属病院)
・外来電波に対するイミュニティだけではなく、接地の問題などもある。
9.医療機器と使用環境 平野知(フクダ電子EMCセンタ)
・過去の関連機器からの電磁界漏洩を測定した例の中に、大型のパソコンモニタから、VLF帯域で292nT(測定器はコンビノーバの磁界測定器)という値がある。
・医療機器の電磁環境という観点から、最近GoがかかったPLC通信、このPLCによる医療機器への影響を医療機器メーカとしては気にしている。医療機器には伝導イミュニティに関する測定基準はあるが、PLCによる影響とは少し条件が異なるので、再確認は必要と感じている。
雑感:電磁波の人体影響に関してはあまり話が出なかった。
作成; 2009−3−3
以下の講演会(説明会)に参加した。
1.講演会の概要 <案内のパンフレットより>
電波の安全性に関する説明会」を東京都北区で開催≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫
総務省関東総合通信局(局長 岡山淳)は、社団法人電波産業会(会長 西田厚聰)との共催により、「電波の安全性に関する説明会」≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫を以下のとおり開催いたします。
本説明会は、近年ますます身近に利用されている電波の性質や健康への影響について、行政、工学、医学のそれぞれの観点から、一般の方にもわかりやすく説明するものです。
1) 日時 平成21年3月2日月曜日 13時30分から16時30分まで
2) 場所 北とぴあ 飛鳥ホール
(東京都北区王子1-11-1)
3) 主催 総務省関東総合通信局、社団法人電波産業会
4) 講演内容
講演1 「電波の人体への影響に対する総務省の取組みについて」 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課長補佐 島田 淳一
講演2 「安心できる電波利用のための生体影響研究」 北海道大学大学院 情報科学研究科 教授 野島 俊雄
講演3 「電磁波の成人と乳幼児への影響に関する実験的研究」 名古屋市立大学大学院 医学研究科 教授 白井 智之
5) 定員 250名
2.講演の内容
1)「電波の人体への影響に対する総務省の取組みについて」 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課長補佐 島田 淳一
・携帯電話と心臓ペースメーカの電磁干渉の件で、不要協で調査した当時の状況で、22cmの距離を設定した。
第2世代の携帯電話から15cm以上という実験結果から22cmの距離とした。
その後の携帯電話との影響調査では必要な距離は短くなっている。
あと数年で第2世代の携帯電話サービスも終了する。
第2世代の携帯サービスがなくなってから、22cmの距離をどうするかを、考える。
・その他はレジメを参照
2)「安心できる電波利用のための生体影響研究」 北海道大学大学院 情報科学研究科 教授 野島 俊雄
・「安心と安全」に関して、「ISO/IECでは「受容できないリスクがないことを安全と定義」」という紹介があった。<BEMSJ注:この考えは重要>
・ネットにあるブログなどでは誤った情報もある。「ロバート・ベッカーが、携帯電話の電磁波には100Hzといった低周波が混じっている・・・・」と。
・地表で受ける太陽輻射エネルギで、最も強いのは可視光線である。
したがって、長い生命の進化の過程で、太陽の光エネルギーを利用する細胞ができて、そうした細胞で網膜が作られ、我々は光を感知することができる。
人の体には可視光線を感知するセンサはあるが、電波の帯域の電磁波を感知する能力はない(野島の仮説)。
・電波の変調方式を色々と変えて細胞に曝露し、変調方式によって差異があるかを調べたが、差異はなかった。
・その他 レジメ参照
3)「電磁波の成人と乳幼児への影響に関する実験的研究」 名古屋市立大学大学院 医学研究科 教授 白井 智之
・15年ほど前に、ふとしたきっかけから電磁波の動物実験を行うようになり、現在様々な研究を行っている。
・様々な陰性結果(問題は見つからなかった)という研究結果を得ている。
こうした陰性効果を学会雑誌に論文として発表するが、陽性結果の論文に比べると、審査がきつい。
4)質疑応答
Q(フロア):野島講演の中に、安全の定義としてIECの定義が紹介されているが、IECの規格番号などを教えて欲しい。
A(野島):詳しいことは覚えていない。レジメに記載して電子情報通信学会の論文を読んで欲しい。
<質疑応答はこの1件だけ、フロアからの質問はこの1件だけで、時間を20分程度余して、早めに終了した。>
関心のある方は、レジメをを入手して読んでください。
記: 2009-3-24
1.シンポジウムの概要 (開催案内から抜粋)
第2回電磁界情報センターシンポジウム開催(東京)−WHOからのメッセージ−
2008年12月12日に電磁界情報センタの開所を記念し、センタの業務内容の紹介や専門家によるリスクコミュニケ−ションの必要性などにターゲットを絞ったシンポジウムを開催致しました。
開所記念シンポジウムでの議論を踏まえ、この度、第2回シンポジウムを下記の通り開催することと致しました。
第2回シンポジウムでは、国際研究機関における電磁界のリスク評価手法とその手続き、電磁界への念のための(Precautionary)政策を紹介すると共に、世界保健機関(WHO)から発刊された環境保健クライテリアやファクトシートを踏まえてWHOからのメッセージについて議論します。
日 時:平成21年3月23日(月)13:00−16:30
場 所:東京都渋谷区代々木神園町3番1号
国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホール
定員:300名(参加費無料)
プログラム(案)
・13:00−13:05 開会挨拶 電磁界情報センタ 望月 照一
・13:05−13:30 環境保健基準を日本でどう活かすべきか 電磁波問題市民研究会事務局長 大久保貞利
・13:30−14:00 電磁界のリスク評価−IARC(WHO)のリスク評価手法とその手順− 弘前大学大学院教授 宮越 順二
・14:00−14:15 休憩
・14:15−14:40 電磁界への念のための(Precautionary)政策 野村総合研究所 長田 徹
・14:40−15:05 WHOの環境保健クライテリアとファクトシート 電磁界情報センタ所長 大久保 千代次
・15:05−15:15 休憩
・15:15−16:25 総合討論電磁界情報センタ所長 大久保 千代次
・16:25−16:30 閉会挨拶 電磁界情報センタ 望月 照一
2、参加して気のついた点(BEMSJのメモから)
1)開会挨拶 電磁界情報センタ 大久保千代次
WHOのFact SheetとEHCの違い、WHOは何を言っているのかなどに的を絞った説明を行う。
2)講演「環境保健基準を日本でどう活かすべきか」大久保貞利
・これまでに、各地の住民と連携して、100局の携帯電話基地局の建設をつぶしてきた。
・リスクコミュニケーションには市民団体・NGOとの共同行動が必要である。
3)講演「電磁界のリスク評価−IARC(WHO)のリスク評価手法とその手順−」 宮越順二
・2001年のIARCにおける低周波電磁界の発がん性判定会議にエキスパートとして参加した。
WHOのEHCタスク会議にもエキスパートとして参加した。
今回は2001年のIARC判定会議に関する話に限定する。
・IARCの発がん性判定は、質的な評価を行う(BEMSJ注:発がん性の研究に関する信頼性の判定といえる。定性的に発がん性があるか否かの判定)。
量的な評価は行わない(BEMSJ:発ガンの発生が100万人に一人以下であろうが、1万人に10人であろうが、被曝の対象者が多かろうと少なかろうと、そ うしたことは考慮しない)。
・小児白血病の疫学の評価に関しては、簡単に投票で済ませたのではなく、2日もかけて論議を行った上で、評決を行った。
4)講演「電磁界への念のための(Precautionary)政策」長田徹
・委託を受けて、各国の電磁界曝露の規格や実態などの調査を行ってきている。
・オランダでは予防原則に基づく規制を行っている国として知られている。
国が方針を決めるが、実施するか否かは各自治体の権限となっている。
自治体に聞いた話では、実施はケースバイケースである。
なぜならば、費用の発生があるからである。電力会社は応分の費用を負担できるが、自治体としては費用負担が可能な場合と、不可能な場合が あるので、ケースバイケースにならざるを得ないと。
5)講演「WHOの環境保健クライテリアとファクトシート」 大久保千代次
・特記なし
6)総合討論 フロアからの質問を受けての討論
大久保千代次と大久保貞則の発言が多いので、千代次・貞則と略記する。
司会:司会を務める西澤です。
Q(フロア):宮越先生への質問。小児白血病の研究に関して、どのようなバイアスはあるのか?
A(宮越):私は疫学者ではないので、十分に理解しているとはいえないが、2001年の段階では、アールボームらのプール分析を見ると、プール分析の対象となった個々の各国のデータが、大きくばらついている。
なぜばらつきが大きいのか、この点は2001年の会議で2日もかけて討議しなければならなかった点である。
なぜ、低周波磁界が小児白血病にだけ発ガン因子として働くのか、疑問である。
これまでに発がん性有りと判定された発ガン物質は、年齢や、対象となる臓器が限定されていない。
こうした点から2001年の会議では「バイアス有り」とした。現在は「バイアス有り」と考えている。
司会:WHOが刊行した文書の法的な位置づけは?
A(千代次):各国政府への推奨である。
低周波電磁界にEHC等を受けて、直接的は行動をとったのは、経産省の電磁波WGによる活動は、もしかして最初かも知れない。
A(千代次):Fact Sheetは最終的には事務総長のサインを得て、発行される。
担当部門と何段階かのレベルを得て事務総長のサインまで、上と下の間で、何回も文書の往復がある。
Q(フロア:網代):WHOの刊行したEHCとFact Sheetとは若干異なっている。
素人目には専門家集団がまとめたWHCの観点を、変更してFact
Sheetを刊行したWHOのやり方に疑問を感じる。
Fact Sheetの編集経歴などは公開されているのか?
A(千代次):WHOは従来からEvidenceベースで判断を行ってきていた。
1999年にEUからの要求で、Precautionを取り入れることにした。
しかし、結局はEvidenceベースに戻った。こうした方針の中で、WHO全体からPrecautionが消え、低周波電磁界のFact Sheetに見えるように、Precautionは削除されている。
(BEMSJW注:EHCは専門家グループの作業文案であり、WHO事務局は意見を述べられるが決定権はないので、WHOの方針とは別にPrecautionの考え方は記述できる。WHOとしては採用できないのでFact Sheetの形で、Precautionを削除した。)
Fact Sheetの発行は、通常、各国にドラフトの提示があり、意見が言える。低周波電磁界のFact Sheetに関しては配布されてはいない。
2007年3月末までWHOの当該事務局に勤務していたが、6月に出したFact Sheetに関しては、どのようにして発行に至ったのかは判らない。WHO本部の担当(エミリー)に聞けば判るかもしれない。
Fact Sheetの発行履歴に関する情報は公開していない。
司会:Precaution Principleは政策提言の中での手法と思っているが、リスク評価の中にも入り込んでいるように見えるが?
A(千代次):WHOの場合は全てに関連付けている。
司会:EUではPrecaution Principleを適用する条件設定があるのでは?
A(長田):「どのように適用するか」という局面で、Precautionary Principleを適用している。
Q(フロア すがい):たばこはどのようにして発がん性と立証されたのか、これに対して電磁波はどうなのか。
A(宮越):たばこと肺がんの関係では、疫学、多くは症例対照研究であるが、リスクは低周波電磁界のような2倍程度ではなく、6倍から10倍と十分に大きい。
電磁界の場合は、1990年代に行われたマウスなどの動物実験を行っていた。
そのままの曝露では差異が出にくいので、プロモータ作用や複合曝露の形で研究がなされており、陽性結果(発がん性がある)が出た。
その後の研究では、陰性効果(発ガン性がない)となっていた。
こうした研究傾向から2001年の判定では動物実験の評決としては「不十分」とした。
A(千代次):たばこと発ガンに関するコホート研究としては、有名な平山研究がある。
たばこと発ガン判定については、ヒルの判定基準に従えば、関連性の強さ:有り、関連の一貫性:有り、量―反応関係:有り、実験結果ではラットの実験では肺がんにはならなかったが、喉頭がんなどは発生した。
ラットはたばこを肺まで吸い込まないので、肺がんにはならないのだろう、たばこの煙が入る喉頭がんが発生していることから、ラットでも肺まで煙が行けば肺がんになると予想される・・・・ということから、実験結果での裏づけ:有りと判定、メカニズムではたばこの成分分析などで裏づけあり、と判定されている。
これに比べると、低周波発ガンの判定は、さきほど述べたとおりであり、レジメを見て欲しい。
司会:WHOの見解に関して、市民の受け取り方は違うのではないか?
A(貞則):予防原則の記述が立ち消えになった経過・理由が本日、このシンポで聞いて判った。
予防原則は消えたが、リスクコミュニケーションで市民は関与すべきである。
市民はEvidenceベースではなく、不安を感じるという観点で考えている。
欧州では2005年に、WHOのEHCが出る前から、対応済みといえる。日本は遅れている。
A(千代次):欧州での低周波磁界の曝露で、ハイリスクとされる割合は0.8%もある。
日本は厳しい電界規制を先駆けて行っていた。この電界規制は結果として低磁界になっていた。
こうした事実は欧州以上のことを日本では実施していた、と評価すべきである。
Q(フロア):一般には2Bとは何かも知らない。生活の周囲にある2B対象は?
A(千代次):発がん性判定で2Bとなっているものに、漬物、コーヒーがある。
繰り返すが、IARCの判定は質的な評価である。リスクが2倍でも、100倍でも確実であれば判定される。
Q(フロア:網代):専門家はEvidenceで判断できるが、素人は不安感で判断する
これだけではなく、研究者の中にも厳しく見ている人もいるのではないか、例えばバイオイニシアティブ報告に参加した研究者のように。
A(宮越):専門家の間の差異に関しては、否定もできない、また肯定もできない。
陽性結果を見いだした研究者は、問題ありという意識を持っている。
宮越としては低周波磁界に限定すれば、強い磁界では影響はある。研究者間に差異があるが、科学は一つのはずである、どうやってその間の溝を埋めるかが課題となる、100%OKといった証明は不可能、そこで、多くの研究を集めて、それらの評価を行うことになる。
2001年の会議では1000点位の論文を集めて、全体としての評価を行った。
A(千代次):バイオイニシアティブ報告に関しては、オランダ保健協議会が評価を下している。
「コンセンサスを得た報告ではなく、また、データの選択が公正ではない」と批判している。
A(貞則):バイオイニシアティブの報告は、2月4日のフランスの高裁(携帯電話の基地局アンテナの撤去を命ずる判決)でも証拠として採用されている。
A(千代次);そのフランスの高裁判決に関しては、既にフランスの医学アカデミーから非難の声明が出されている。
A(千代次):情報センタが提供する「正確な情報」とは何か、センタの開所に当たって表明している。
それは1)政府機関や国際機関などが出した正式見解、2)査読付の学術論文などで、新聞報道や学会口頭報告などは含めないことにしている。
裁判の判決に関する情報も「正確な情報」には含めない。正確な情報とは何か・・・・という意見があれば、別途論議を行う。
Q(フロア):宮越先生への質問。IARC判定会議に参加した21名中の10名がアメリカからということであったが、如何に感じたか、また、1000件の論文を読んだとあるが、どこの国に論文が多いのか?
A(宮越);21名中10名がアメリカというのは、多いと感じた。
1000件の論文からモノグラムに参考文献としてリストしたのは700件ほど、載せる価値があると判断した論文だけを採録した。
詳細はモノグラムを読んで欲しい。アメリカの研究論文が多かった。
Q(フロア):大久保千代次先生への質問。電磁波過敏症に関するファクトシートの発行で、部門(クラスター)から提出した案が事務総長から戻されたとき、どのように感じた?
A(千代次):その時はWHOの事務局に勤務していたのではないが、事務総長がRejectしたのは困ったと思った。
Q(フロア):長田先生への質問。大久保貞利の話にあった高裁判決に関して、感想は?
A(長田):詳細を調べてみないと良く判らない、答えにくい。
Q(フロア):文科省で評価Cとなった兜研究が、WHOのタスク会議で評価の対象に取上げられたのはなぜか?
A(千代次):2001年のIARC判定以後の大規模な疫学研究はイギリスと日本の兜研究しかない。
大規模は研究の成果として、評価の対象となった。
記;2009−6−5
1.電磁界情報センターの以下の講演会が開催された。
電磁界情報センターの案内を転記
電磁界情報センター特別講演開催のご案内
平成21年6月4日(木)、東京代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて、世界保健機関(WHO)国際電磁界プロジェクトの前責任者を務め、現在はローマ大学電気工学部教授のマイク・レパコリ氏をお招きして、最新の低周波・高周波電磁波の健康影響評価についての特別講演を下記の通り開催します。
日 時:平成21年6月4日(木) 14:00−16:30
場 所:東京都渋谷区代々木神園町3番1号 国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホール
定員:300名(参加費無料) <BEMSJ注:当日の参加者は100名程度>
プログラム
14:00−14:10 開会挨拶,マイク・レパコリ氏の紹介 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
14:10−15:10 電磁界の健康リスクとコミュニケーション ローマ大学電気工学部教授 マイク・レパコリ氏
(EMH health risks and communication Dr. Mike Repacholi)
※マイク・レパコリ氏の講演は、英語⇒日本語通訳にて行います。
15:10−15:20 休憩
15:20−16:20 質疑応答
※質疑応答は、日本語⇔英語通訳にて行います
16:20−16:30 閉会挨拶 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
2.開催の辞(大久保)
10日ほど前に、レパチョリ氏がプライベートな旅行で日本に来ることが判ったので、急遽こうした講演会を企画した。
3.レパチョリの講演内容
・基本的な話、リスクの話があった。
内容が多岐にわたるので、まとめ切れません。
関心のある方は、レジメ入手して読んでください。
・レジメになかった事項では、IARCで進行中のインターフォン研究の論文がようやく刊行の見込みとなり、6ヵ月後に刊行されるかも知れない、とレパチョリは語った。
4.質疑応答(BEMSJがメモした範囲)
司会:大久保が司会を勤める。最初は事前に戴いた質問の中から、今回のレパチョリに講演内容に即したもののみを回答してもらう。
司会:質問の一つとして、WHOの高周波電磁界のEHCの発行は?
A(レパチョリ):EHCは作成中。ただし、文書には大きな壁が残っている。インターフォン研究及びIARCによる発がん性判定を評価の対象とすることになっている。あと3年から4年後の発行になると思われる。
司会:質問の二つ目として、欧米では本当にリスクコミュニケーションが進んでいるのか?
<どうやら通訳が「リスクコミュニケーション」を「ミスコミュニケーション」と聞き誤って翻訳した模様>
A(レパチョリ):残念ながらYESである。メディアは懸念があるとして情報を流し、活動家は特定の研究だけを取上げ、研究の全体像を把握しないで、問題ありと主張している。こうしたことからミスリードする情報は広まっている。
Q(フロア):ICNIRPガイドラインは見直しが行われるのか?その場合は限度値は厳しくなるのか?
A(レパチョリ);ICNIRPはWHOのEHCの発行を受けて、ガイドラインを見直すことになっている。静電磁界に関しては改訂版を発行した。低周波電磁界のガイドラインの改訂版は、今年の末にはできるかも知れない。高周波のガイドラインは、WHOのEHCが発行されるまで待たなければならない。
司会:静電磁界のガイドラインに関しては、電磁界情報センターのWEBに公開指定あるので、見て欲しい。それと質問であるが、ICBIRPのガイドラインの値は空間平均を示しているのか、時間平均を示しているのか?
A(レパチョリ):ちょっと専門外になるので判らない。時間的な平均値かも知れないが、定かではない。
A(世森):ICNIRPの値に基づく測定の手順などは別の組織で策定している。別途情報センターとして情報提供を考える。
Q(フロア):2007年WHOはEHCと同時にFact sheetを刊行した。Fact sheetがWHOの正式な見解文書であるとされる情報が流れているが、どうか?
A(レパチョリ):EHCは膨大な頁で詳細を記述している。EHCはタスクグループの提言であり、WHOの見解を示すものではない・・・・と注意を喚起する一文も記載されている。Fact
sheetはWHOの見解文書である。どちらかといえば、Fact
sheetは一般の人に向けた概要版、EHCは専門家に向けた文書といえる。各国の政策決定者は、両方の文書を読んで欲しい。
Q(フロア):職業曝露と一般公衆の曝露の違いに関して、子供と老人では異なることは理解できるが、それ以外の違いは理解できないが。
A(レパチョリ):ICNIRPでは安全係数を設定している。一般公衆には子供、老人のほかに病人も含まれる。職業的な曝露では、曝露・リスクの事実とその対処法を知っているから安全係数は小さい。
Q(フロア):EHCとFact
sheetではどちらが優先されるのか?
A(レパチョリ):政策決定者は両方を読むことを勧める。優先度は同じ。
A(司会);補足を行う。これにはEHCの策定の課程が関連してきている。2006年にWHOとしては、WHO全体としては、予防原則は採用しないことに決定した。EHCの作業はその前から始まっていた。EHCはタスクグループの作業で、その作業にWHOとしては口は出せない。従って、WHOの方針・方針変更があっても、EHCの文章は変更されない。よって、EHCには予防原則の文言が残った。
そこで、WHOの方針を明確に打ち出すために、Fact
sheetを同時に発行し、WHOの基本方針と異なる点を明らかにした。それ以外はEHCに同じである。
Q(フロア)EHCでは「懸念するには十分な論拠が残る」とある。欧米におけるリスクコミュニケーションの実情はどうか?
A(レパチョリ):EMF-NETという欧州委員会の基金で行われている組織がある。ここでは一般向けの情報などを提供している。
A(司会):追加して、2002年にWHOからリスクハンドブックが刊行されている。この文書を読んで欲しい。
Q(フロア):非熱効果に関しては?
A(レパチョリ);国際ガイドライン値以下の曝露で、非熱効果として確立されたものはない。
Q(フロア):リスクコミュニケーションが良く行われているという状況としては、1)不安解消のためにさまざまな作業が行われている状況 2)十分な情報が行き渡っていて、不安感がない状況のいずれが好ましいのか?
A(レパチョリ):理想的なリスクコミュニケーションとは・・・・はまだ確立していない。研究結果などが出た時、報告書のほかに、TRやFact sheet(概要の意味?)を作成し、プレスリリースの文書も準備する。こうした情報が揃えば、マスコミは記事を書いてくれるであろう。ここまで準備しないと、記者に理解させるのは困難かも知れない。
マスコミの記者がきちんと理解して記事を書いてもらえば、それは一般の人に理解してもらえることになる。
記;2009-10-3
「電波の安全性に関する説明会」が以下の日程で開催された。
*日時:2009年10月2日
*場所:ワークピア横浜(横浜市)
*主催:総務省関東総合通信局、社団法人電波産業会
*講演
・講演1 「安心して電波を利用するために」 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課長補佐 斉藤康弘
・講演2 「身の回りの電波と健康への影響について」 首都大学東京大学院 理工学研究科 教授 多氣
昌生
・講演3 「高周波電磁波の生体に及ぼす影響について」 東京大学大学院 医学系研究科 教授 名川 弘一
250名定員の部屋に200名程度の入場者がいたと思われる。
以下は聴講したBEMSJのメモ
1)講演1 「安心して電波を利用するために」 総務省 総合通信基盤局 電波部 電波環境課長補佐 斉藤康弘
・総務省のWEBの中に、生体電磁環境に関する検討会の頁がある。
・電磁波(電波)防護に関する情報リテラシーを行うことは、電波法の改正時に条文が追加され、総務省としての「法定業務」になっている。
・その他はレジメを参照
2)講演2 「身の回りの電波と健康への影響について」 首都大学東京大学院 理工学研究科 教授 多氣
昌生
・2009年8月30日のサンデー日経の頁に「水と健康・・・」といった記事が掲載されている。
「電磁波はDNAに障害を与える・・・」と不確実な情報も含まれている。
・携帯電話の機種を選定する場合、公表されているSARの値が小さい機種の選定が必ずしも実使用状態における電磁波吸収量の低減に繋がるとは限らないので、注意が必要。
ハンドセットの発信電力は、通信状態に応じて変化させている。公表されたSAR値は最大の電力発信時の値である。
最大時にSAR値が小さくても、十分な電力制御機能が働かず、大きい電力で発信しているしているモデルでの実際の吸収量より、最大時のSAR値は仮に大きくても、十分な電力制御機能が働き、より少ない発信電力で通話が可能なモデルでは、実際の使用状態における吸収量がより小さいこともありえる。
・ICNIRPは2009年9月声明を発表した。「ICNIRPは、1998年のガイドライン以降に行われた研究が、ガイドライン以下のレベルで健康に悪影響を及ぼす証拠を示しておらず、したがって、高周波電磁界のガイドラインを直ちに改定する必要はない。 ICNIR`は、改めて周知するまでは、1998年のガイドラインが現在も有効であることを再確認する。」と。
3)講演3 「高周波電磁波の生体に及ぼす影響について」東京大学大学院 医学系研究科 教授 名川 弘一
・実験に使用したSDラットは、比較的大型の鼠で、体長は20cm程度もある。
・BBB(脳関門)に関する研究を行った。脳は体温が43度を超えるとBBB機能は破綻する。したがって熱作用で体温が上昇する場合は、BBBは破綻するのは当然である。
・BBBに関する研究は1975年頃から多くの研究がなされ、陰性・陽性の結果が混在している。1994年以前の研究論文では、曝露条件が不明確である。よって厳格な評価はできない。
1994年のサルフォードらの研究、1997年のFritzeらの研究は曝露条件などが明確であり、陽性効果(BBB機能の破綻による透過性の亢進が見られた)は、評価する必要があり、日本でも研究を開始した。透過性の亢進が見られたFritzeらの研究では、シャム曝露でも20%の透過性亢進が見られ、実験条件などに問題がある。
日本での研究結果では、BBBの破綻は見られなかった。
・Wangらの水迷路を利用した記憶学習への悪影響が見られたという研究に対して、日本では「T迷路」を用いて研究を行った。結果は電波曝露の影響は見られなかった。
・その他、この講演では各種の実験結果を解説している、詳細はレジメを参照。
4)質疑応答
Q(フロア:)名川の講演にあったT迷路では悪影響は検出されなかったという研究に対して、もし日本でWangらと同じ水迷路で実験を行ったとすれば、どうなるか?
A(名川)やっていないのでわかりません、としかいえません。
A(多氣)Wangらの研究では使用した迷路の違いの他に、曝露条件が異なる。Duty比1000のパルス電磁界を用いており、もしかしてラットはマイクロ波可聴を感じて、それがストレスになっているのかも知れない。
Q(フロア)名川の講演にあったBBBの研究に関して・・・・・
A(名川)BBBの透過性の亢進を見たサルフォードの実験装置と同じもので、日本(大久保)、アメリカ(ブルックリン空軍研究所)と(・・・メモできず)で再現実験を試みたが、再現しなかったという報告がある。
Q(フロア)斉藤の講演に関して、医療機器・心臓ペースメーカへの影響に関して、病院内で発生するかも知れない影響に関する情報開示が少ないように思うが、如何?
A(斉藤)今後、考えていきます。
Q(フロア)仕事から短波帯の大電力(10kWなど)を取り扱っている。これらの健康影響に関して聞かれることがある。こうした、携帯電話の周波数以外の研究は?
A(多氣)短波帯でも、ガイドラインに従って曝露評価を行えばよい。最近はマイクロ波が研究の中心となっているが、昔は様々な研究を行っている。何もしなかったのではない。レーダの電波照射に関しても、先ほどの質問に対する回答の中でも述べたマイクロ波可聴に関しては、昔、熱心に研究を行った。
以上 関心のある方は、当日のレジメを入手して読んでください。
記:2009−10−6
以下の発表会を聴講した。
1.発表会の概要
*********** ********
このたび、平成20年度に総務省が実施した「生体電磁環境研究」の成果発表会を開催いたします。
日時:平成21年10月5日(月)
場所:品川区立総合区民会館 きゅりあん(東京都品川区東大井5-18-1)7F イベントホール
定員:150名
プログラム(予定)
12:30-12:35 開会挨拶
12:35-12:50 研究報告1 携帯電話端末からの電波による症状に関する研究
12:50-13:05 研究報告2 携帯電話からの電波の睡眠に対する影響
13:05-13:20 研究報告3 携帯電話端末からの電波によるヒトの眼球運動への影響
13:20-13:35 研究報告4 電波の細胞生物学的影響評価と機構解析
13:35-13:50 研究報告5 免疫細胞及び神経膠細胞を対象としたマイクロ波照射影響に関する実験評価
13:50-14:05 研究報告6 小児・若年期における携帯電話端末使用と健康に関する疫学調査
14:05-14:20 研究報告7 2GHz帯電波の多世代ばく露の脳の発達及び脳機能への影響
14:20-14:35 研究報告8 ミリ波、準ミリ波帯電波の眼部ばく露による影響の指針値妥当性の再評価
(休憩[10分])
14:45-15:00 研究報告9 脳内免疫細胞に及ぼす電波ばく露の影響評価
15:00-15:15 研究報告10 頭部局所電波ばく露の及ぼす生体影響評価とその閾値の検索
15:15-15:30 研究報告11 複数の電波ばく露による電波複合ばく露の生体への影響
15:30-15:45 研究報告12 小児に対する人体全身平均SARと体内深部温度上昇の特性評価
15:45-16:00 研究報告13 ミリ波帯細胞用ばく露装置開発と物理的環境の検索
16:00-16:15 研究報告14 実験に基づく電磁界強度指針の妥当性評価及び確認
16:15-16:30 研究報告15 成人の携帯電話使用者の追跡調査研究
**************** ************
2.参加者数 発表者を含めて、90名程度と思われる。
3.概要 以下はBEMSJのメモしたものとレジメから抜粋
1)研究報告1 携帯電話端末からの電波による症状に関する研究 発表:牛山明(国立医療保健科学院)
・携帯電話ハンドセットからの電磁波に関する電磁波過敏症の再現実験を行った。
・断面的な調査では一般市民の1%強の人が携帯電話の使用で健康を害したと回答したり、それと同数以上の方が強い愁訴を訴える一方、実際に実験室レベルで曝露実験を行っても、それらの症状と電波の因果関係は認められず、それは心理学、神経生理学、生理学的な客観的な指標を用いても同様であった。
・この実験では携帯電話機(フォーマ)の実機を用い、無線電力は最大になるように設定して行った。
2)研究報告2 携帯電話からの電波の睡眠に対する影響 発表:榎本雪(福島県立医科大)
・携帯電話の使用が睡眠への影響に関する研究を開始した。予備実験の段階である。
・脳波のセンサを着けた状態で一晩眠るという条件なので、慣れの問題が大きい。
3日間連続テストで、初日のデータは解析から外し、2日と3日目は曝露・シャムをうまく振り分けることで、慣れの問題に対処する予定。
3)研究報告3 携帯電話端末からの電波によるヒトの眼球運動への影響 発表:寺尾安生(東大 神経内科)
・携帯電話の使用で注意に影響するということから、眼球運動と携帯端末からの電波の影響を研究し、注意への影響の研究の一助とする。
・結果として、携帯電話の30分程度の通話による電磁界曝露は、Succade課題に関しては眼球運動への有意な影響はなかった。
4)研究報告5 免疫細胞及び神経膠細胞を対象としたマイクロ波照射影響に関する実験評価 発表:宮越順二(弘前大学)
・電磁波曝露による細胞実験である。活性酸素による細胞への影響が話題になっているので、活性酸素の元である過酸化水素水を用いた実験を行った。
・今回検討した曝露条件下では、過酸化水素水の単独曝露は小核形成頻度を上昇させることが示された。電磁波単独の曝露は、小核形成に及ぼす影響はないことが示唆された。
また、電磁波と過酸化水素水の複合曝露では、過酸化水素水の単独曝露と比較して、有意な差異は認められず、電磁波が過酸化水素水の効果に影響を与えないことが示唆された。
5)研究報告4 電波の細胞生物学的影響評価と機構解析 発表:宮越順二(弘前大学)
・細胞実験で、予備実験の段階である。
・SAR:10W/kgではデータに少し変化が出ている。温度は一定に保つようになっている。
6)研究報告6 小児・若年期における携帯電話端末使用と健康に関する疫学調査 発表:山口直人(東京女子医大)
・コホート内症例対照研究を行いたい。その準備を進めている。
・コホート対象となる参加者を如何にして集めるかが課題。
7)研究報告7 2GHz帯電波の多世代ばく露の脳の発達及び脳機能への影響
発表:河部真弓(DIMS医科研)
・ラットを3世代にわたって長期に曝露、全身平均SAR:0.08W/KG及び0.24W/kg(ICNIRP基準及びその3倍に相当)
・継続した研究中で、来年2月に終了する。
・ラットの飼育研究では、体重が減少することが問題、何らかのストレスなどで影響を受けていると判断できる。体重が増加することは、偶発的なことで、影響を受けているとは考えない。
8)研究報告8 ミリ波、準ミリ波帯電波の眼部ばく露による影響の指針値妥当性の再評価 発表:小島正美(金沢医大)
・目へのミリ波(18GHz‐40GHz)での影響の研究。周波数によって目への浸透深さが異なる。
・ウサギの目に温度で色の変わる液晶をマイクロカプセル化したものを注入して、温度を観察。
・周波数が高ければ高いほど高い眼内温度上昇が見られた。
・防護指針値以下の曝露では眼内温度上昇は見られなかった。
9)研究報告9 脳内免疫細胞に及ぼす電波ばく露の影響評価 発表:名川弘一(東京大学)
・工藤玄恵の2007年の研究で、TEMセルを使用し、全身曝露でSAR:7.5W/kgでミクログリア(脳の組織体)に影響が見られた。
・この研究では、ラットの頭部に局所的な曝露を行い、脳の局所SAR=2、6W/kgで1回120分、週4回、4週間曝露した。グリア細胞(アストロサイト、ミクログリア)の形態変化や活性化は認められなかった。
10)研究報告10 頭部局所電波ばく露の及ぼす生体影響評価とその閾値の検索 発表:平田晃正(名古屋工大)
・ラットへの電磁界曝露による温度上昇の実験と、熱伝達も考慮した電磁波曝露に関する数値モデルの開発による値との比較が可能になった。
11)研究報告12 小児に対する人体全身平均SARと体内深部温度上昇の特性評価 発表:藤原修(名古屋工大)
・ANSIの1982年の曝露基準では、1GHz以下の帯域は多くの実験データなどに基づいているが、1GHz以上の周波数は根拠となるデータは少なかった。ANSI1982年の曝露規定が現在も大きな影響を持っているので、1GHz以上の周波数での研究状況をレビューする。
・人は1(大人)から3W/kg(子供)に相当する基礎代謝量を持っている。
・1-2W/kgの全身平均SARで、1度の体温上昇とされる。
・同じSAR値であっても、実際の温度上昇は、大人に比べると子供は低い。これは、子供は吸収するエネルギーの絶対値は低くなるが、それ以上に対表面の相対的な面積が大きくなり、熱の発散が多くなるからと思われる。
12)研究報告11 複数の電波ばく露による電波複合ばく露の生体への影響 発表:藤原修(名古屋工大)
・複数の電波曝露による複合曝露とあるが、具体的にはUWBのように超広帯域の電波発信源による曝露評価を対象としている。
・モデル化とその基礎実験を開始した。
13)研究報告13 ミリ波帯細胞用ばく露装置開発と物理的環境の検索 発表者:多氣昌生(首都大学東京)
・1970年代の研究で、ミリ波帯での熱以外の効果を提起しているものがある。
・昨今では60GHz帯の無線応用が多くなってきている。ミリ波では熱作用以外の効果に関する研究が必要となる。
・曝露装置の開発、評価法の開発などを行っている。
・ミリ波曝露では試料の表面に吸収が集中し、温度や曝露強度に大きな空間分布に不均一さが発生する。よって、実験には曝露状況(物理環境)に十分な注意が必要となる。
14)研究報告14 実験に基づく電磁界強度指針の妥当性評価及び確認 発表者;日景隆(北海道大学)
・全身平均SARはこれまでは数値解析などの手法しかなかった。これを如何にして実証実験を行うかに関して研究を行っている。
・平面波曝露装置を開発し、3次元の電磁界を測定することによって実証の可能が出てきた。現時点では3次元の電磁界測定に24時間かかる。
15)研究報告15 成人の携帯電話使用者の追跡調査研究 発表者:武林享(慶応義塾大学)
・インターフォン研究で「10年以上の携帯使用、携帯使用と同側で、リスクの増加」という一部の研究がある。これを受けて、欧州5カ国では20万人以上を20-30年間追跡するコホート研究を行おうとしている。
・そこで、日本での研究の可能性を検討している。脳腫瘍をターゲットにしたコホート内症例対照研究を行うとすれば、50万人を5年間追跡する必要がある。
予備的に研究への参加を呼びかけた結果では、応諾率は4.7%程度しかない。
以上 関心のある方は、当日のレジメを入手して読んでください。
記:2009−10−21
1.フォーラムの概要 <開催案内から>
第1回電磁界フォーラム(総合討論会)〜電磁界問題の過去・現在を知り、未来を考えよう〜
電磁界情報センターでは、電力設備や家電製品から発生する50/60Hzの電磁波(電磁界)に関して、さまざまな視点から議論するべく、11回シリーズの「総合討論会」を開催していくこととしております。
第1回目のテーマは『電磁界問題の過去・現在を知り、未来を考えよう』です。
電磁界問題の経緯、社会動向や研究結果について、専門家、市民、各々の立場から紹介していただくとともに、各分野でのこれからの課題などについて議論し、この問題の「現在」をあらためて皆様と認識し合いたいと思います。このような趣旨から、下記のとおり総合討論会を開催いたしますので、多くの方のご参加をお待ちしております。
1)日 時:平成21年10月20日(火) 13:00−16:30
2)場 所:国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホール
3)定員:200名(参加料無料) 実際の参加者数は100名程度と推定
4)プログラム
13:00−13:05 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
13:05−13:45 電磁界問題に関する歴史 電磁界情報センター 倉成 祐幸
13:45−14:15 電磁界問題市民研究会の歴史 電磁波問題市民研究会 事務局長 大久保 貞利
14:15−14:45 市民の電磁界リスク認知とその歴史 電力中央研究所 主任研究員 小杉 素子
14:45−15:05 休憩
15:05−16:25 パネルディスカッション
16:25−16:30 閉会挨拶 電磁界情報センター 事務局
2.講演の内容
詳細はレジメを参照。
1)開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 大久保千代次
・情報提供の業務を行ってきている。
・その一部として、3年位の時間をかけて、じっくりと情報の共有を図っていきたい。
2)講演 電磁界問題に関する歴史 電磁界情報センター 倉成 祐幸
・米国・欧州・日本、国際機関での対応の歴史を解説 (詳細はレジメを参照)
3)講演 電磁界問題市民研究会の歴史 電磁波問題市民研究会 事務局長 大久保 貞利
・1996年のガウスアクション結成以降の活動の歴史を解説 (詳細はレジメを参照)
4)講演 市民の電磁界リスク認知とその歴史 電力中央研究所 主任研究員 小杉 素子
・主として2002年以降に電力中研がアンケートなどで調査を行った一般市民と専門家のリスクの考え方の違いに関して解説。(詳細はレジメを参照)
5)パネルディスカッション
司会:西澤真理子 パネリスト:上記の3名の講演者 補助として情報センター長の大久保千代次 が参画。
以下はBEMSJが取ったメモである。
司会:今回は第1回目のフォーラムである。これまでの講演からリスク認知に違いがあるが、なぜか?
小杉:電磁界に限らず、一般市民と専門家ではリスク認知に違いがある。専門家は科学に基づくリスク認知を行う。一般市民は、目に見えないもの・身近になく馴染のないものはリスクを高く見る、例えば自動車はハイリスクであるが、馴染んでいるのでリスクを低く感じている。
倉成:身近にあるかないかでリスク認知に差異がある。兜研究で、0.4μTを超える曝露は全体の1%であり、馴染みは少ない。しかし、住宅購入等で土地を見て歩いた時、送電線が目につけば、急に気になるようになる。
大久保貞則:一般市民は情報を隠しているのではないかと疑い、不信感が強い。企業などはPositiveとNegativeの両方の情報を出すべきである。
小杉:情報を隠しているのではないか・・・は情報発信者の信頼性に係わってくる。隠していない ということを如何にして信じてもらうか!
司会:フロアからの質問「電磁波が原因で障害が発生したという事例はあるのか?」については?
大久保千代次:電磁波は強ければ危険である。これは確定した事実。労働環境下での曝露に関しても含めて防護指針がある。防護指針以下の曝露が危険か否かが問題で、この点には様々なギャップがある。
大久保貞則:慢性影響・微弱な曝露での影響が考えなければならない。強ければ影響はある。
倉成:慢性影響はGrayというが、どの程度のGrayか問題。小児白血病に関して言えば、過去30年間も研究を継続してきている、それでも明確な因果関係は見つけることができなかった。こうした状態を考えれば、白に近いGrayといえる。
大久保貞則:倉成氏とは見解が異なる。WHOの2007年低周波電磁界のEHCにある「小児白血病のリスク2倍を支持する」と書かれているが、これは尊重すべき。
大久保千代次:科学者は「安全である」とは断定することはできない。もしそうした発言があれば、それは「うそ」である。みなし安全という考えがある、「安全であるとみなす」=「安全である」とするのは行政の手法。
大久保貞則:多くの場合、企業は「安全である」と言っている。これは無神経は発言といえる。
司会:大久保貞則氏のGrayは、かなり黒に近いGrayか?
大久保貞則:WHOの2007年EHCには「懸念が残るには十分な証拠がある」と書かれている。この部分を皆さんはどう見るか!
倉成:リスクを考える時、絶対リスクを考慮する必要がある。10万人に1人の障害の割合で、2倍になり2名の障害が発生するのと、10万人に1000人の障害がある要素で2倍になり、2000人の障害が発生するのでは、大きく対応が異なる。
大久保千代次:WHOのEHCは600ページとかで膨大、一部の表記を抜き出すと、悩ましくなる。
大久保貞則:フロアからの意見も求めるべき。
フロア:専門家の研究成果を評価するのは専門家ではなく、社会である。それでは誰が評価し、コンセンサスを得るか?
フロア:専門家と一般市民を区別するのは意味がないのではないか。またこうしたフォーラムでは、黒に近いGrayと主張する研究者も呼んで講演させるべき。情報センタの出す情報は適格か?
大久保千代次:情報センターとして出す「正確な情報」とは、センター発足時から宣言している。国際的な機関の公式見解や、査読つき学術論文に掲載された研究結果などである。バイオイニシアテイブの報告にしても、EUでは議会が取上げてることは確かであるが、EUとしての、EU理事会としての公式見解がまだ出ていない。
司会:質問の中に「IARCの判定2B」とあるが、電磁波以外のものは?
倉成:2B判定されたものにコーヒーや漬物などがあった。
大久保貞則:2Bに判定されたものは100を超える。比べることは意味がない。
司会:一般市民はなぜ不満を持つか?
小杉:難しい。知りたいと思っても情報が公開されていないから不満になるのではないか。
大久保貞則:現場での不満がある。一般市民が身近に問題意識を持ったとき、業者などがきちんと対応し、説明を行っていないので、不満となる。業者は説明責任を果たしていない。
一般市民への情報提供の量でも、4年前の統計でイギリスのBBC放送は年に30回も電磁波に関する放送を行っている。同じ立場にある日本のNHKは年に何回そうした放送を行っているか?
倉成:説明責任を果たしていないことに関しては、電力会社などは今度の対応が必要。
司会:フロアに韓国から電磁波の研究者がおられる、ひとこと。
フロア(韓国):15年前に韓国で電磁波の研究を始めた。初めて研究を行ったといえる。韓国では送電線や変電所の周囲の人から不満の声が出ている。また、マスメディアに如何に情報を提供していくかが鍵といえる。日本語は韓国語に翻訳しやすいので、日本のマスコミ報道は、韓国に翻訳されて容易に流れる傾向にあるので、日本での報道は韓国にとっても重要である。
司会:これから何ができるか?
小杉:一般市民の不満と、問題を抱えている現場の不満には違いがある。そこを踏まえた情報提供を考えていく必要がある。
大久保貞則:情報公開は日本では進んでいないといえる。
倉成;情報センターとしては一般の人が知りたい情報の提供をしていきたい。
記:2009−12−5
以下のフォーラムに参加した。
1.フォーラムの概要 開催案内から
第2回電磁界フォーラム 〜電磁界の健康リスク評価 発がん性『2B』の意味を考えよう〜
財団法人電気安全環境研究所 電磁界情報センターでは、電力設備や家電製品などから発生する50/60Hzの電磁波(電磁界)に関して、さまざまな視点から議論する機会を設け、11回シリーズの電磁界フォーラム(総合討論会)を開催していくこととしております。
第2回目のテーマは『電磁界の健康リスク評価 発がん性『2B』の意味を考えよう』です。
50/60Hz(商用周波)の磁界については、国際がん研究機関(IARC)による発がん性リスク評価で「2B」に分類されています。
この発がん性「2B」という評価について、その意味、評価手法などについて専門家を招いて説明いただくとともに、リスク評価の解釈について議論したいと思います。
講師には、IARCに勤務されておられた山崎先生、日本の商用周波磁界と小児白血病の疫学調査(兜研究)に参加された山口先生をお招きしました。
また、もう一人の講師、大久保センター所長は、2005年から2007年の2年間WHOに勤務していました。
このような趣旨から、下記のとおり電磁界フォーラムを開催いたしますので、多くの方のご参加をお待ちしております。
1)日 時:平成21年12月4日(金) 10:30−13:00
2)場 所:国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 小ホール
3)定員:200名
4)プログラム
10:30−10:40 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
10:40−11:10 国際がん研究機関(IARC)は発がん性の何をどのように評価しているのか? 関西学院大学名誉教授 山崎 洋 氏
11:10−11:40 疫学研究から見た「2B」 東京女子医科大学教授 山口 直人 氏
11:40−11:55 商用周波磁界に対する世界保健機関(WHO)のガイダンス 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
11:55−12:05 休憩
12:05−12:55 パネルディスカッション
12:55−13:00 閉会挨拶
電磁界情報センター 事務局
2.講演内容
1)国際がん研究機関(IARC)は発がん性の何をどのように評価しているのか? 関西学院大学名誉教授 山崎
洋 氏
・IARCは「発がん性の強さを評価」しているのではなく、「発がん性の証拠の強さを評価」しているのである。これはよくある誤解である。
発がん性が強くても、証拠の強さ(BEMSJ;確かさ?)が弱ければ、発がん性判定は例:3となる。
発がん性が弱くても。証拠の強さが強ければ、発がん性判定は例:1となる。、
・IARCは「発がん性のリスク評価」しているのではなく、「発がん性ハザード評価」を死地得るのである。これもよくある誤解である。
・低周波磁界が2Bに判定されたのは「ヒトの発がん性(BEMSJ注:疫学の結果)がLimited evidenceで、動物での発がん性が、Limited evidence以下の場合」に相当すると判定されたことによる。
2)疫学研究から見た「2B」 東京女子医科大学教授 山口 直人 氏
・疫学研究の方法、限界などを解説
3)商用周波磁界に対する世界保健機関(WHO)のガイダンス 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
・WHOのガイダンスによれば、「磁界と小児白血病の間に因果関係があるとは言えない。」
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
4)パネル討議 (以下はあくまでもBEMSJがメモを取った内容から)
司会は西澤、パネリストは3名の講演者
司会:今回のパネル討議では、低周波の電磁界そして、発がん性2Bに関連することだけを取上げる。
事前に戴いた質問に対して、討論を行う。
司会)組織に関して、WHO, IARC、ICNIRPに関して、夫々の役割などを説明して欲しい。
大久保:発がん性に関してはIARCが担当、WHOは、発がん性以外の健康影響も含めて総合評価、評価後にリスク対策などが必要になれば、ガイドラインについてはICNIRPが担当、という役割である。
Q:判定には疫学を優先させるのか?
A(山崎):IARCの発ガン判定ではヒトを対象とした研究ということから、疫学を優先させている。
Q:判定2Bというのは、発がん性のつよさを判定したのものか?
A(山崎):証拠の強さをカテゴリー分類したもの。
Q:リスク評価の見直しの可能性はあるのか?
A(大久保):2007年に低周波電磁界の評価をWHOでやっているので、当面は見直しはないであろう。
ただし、重要な新たな知見が出てくれば、別である。
Q:判定が変更になった過去の事例はあるのか?
A(山崎):しばしば判定は変更される。2Aから1になる(ランクアップ)場合もあれば、逆に2Aから2Bになる(ランクダウン)場合もある。
サッカリンは当初2Bと判定されたが、5-6年後に、その後の研究で、ヒトへの影響は否定されたので、カテゴリー3にランクダウンした例もある。
Q:低周波磁界の判定2Bとなったが、曝露条件は?
A(山口):日本での疫学では1週間の磁界測定で時間加重平均を取った。
アルボームらのプール分析に用いた研究では、半分強は24時間もしくは48時間の平均値だったはず。
Q:疫学で見ているのは発症率か死亡率か?
A(山口):多くの疫学は症例対照研究であり、発症率(罹患率)を見ている。死亡率ではない。
Q:磁界による発ガンのメカニズムは?
A(山崎):0.4μテスラ程度の磁界で細胞などを直接動かすことはないので、メカニズムに関しては判らない としかいえない。
これまで知られてメカニズムでは説明できない。
Q:今後の研究は?
A(大久保):コホート研究をやれといわれているが、コホート研究をやっても成果は得られないのではないかと個人的には感じている。
何か特定の因子、高感受性を加味した研究は有効かも知れない。
A(山口):磁界と小児白血病の研究に限らず、白血病そのものの原因を探る研究が必要。
Q:疫学で更なる精度の向上は可能か?
A(山口):これ以上の実りは少ないだろう。
A(山崎):IARCは組織の基本方針として、Hazard評価に限定し、Risk評価には踏み込めない。
A(大久保):送電線由来の磁界以外で、高曝露の群があることがイギリスの最近の研究でわかった。
司会:以上で事前に受け付けた質問に対する討議は終わり。フロアからの質問は?
Q(フロア):今回の説明で「同定」という一般には使用しない用語があった。判りやすくいえばどうなる?
A(山崎):「評価」ということである。
Q(フロア):磁界と小児白血病に関するIARCの判定では「関連性がある。因果関係に信頼性がある」と、一方WHOのガイダンスでは「関連性はある。
因果関係は見られない」となっている。同じ2B判定といえ、因果関係に関しては、差異があるように思える。
A(山崎):IARCは評価対象とする研究は、信頼性のある研究に限定している。
A(大久保):発がん性に関するIARCの判定も踏まえて、WHOでは全体評価を行い、因果関係はないと見た。
Q(フロア):判定2Bといった場合の確率はどの位か?「あるを100%」、「ないを0%」とすれば2Bは何%に相当するか?
A(山崎):2Bに判定されているものには雑多なものがあり、確率%はいえない。
Working Groupでもそうした確率の論議は行っていない。
Q(フロア):発がん性判定は発ガンの強さの判定か?
A(山崎):発ガンの強さではない、証拠の強さの判定である。発がん性が弱くても、証拠が確たるもので強ければ、発がん性判定は1になる。
IARCの発ガン判定の例で、アルコールは1(発がん性あり)となっているが、IARCのモノグラムを見れば、冒頭に「1日2杯の飲酒は健康に良い」と明記してある。
モノグラムは結論だけではなく、全体を読むことが肝要。
Q(フロア):プール分析で0.4μT以上で相対リスク2倍とある。0,4μT以上の群に10μ、100μといった曝露も含まれているのか?
A(山口):プール分析の生データはないので不明。日本の兜研究では、4.5μTといった曝露例もある。
Q:グループ判定のリストの中に、職業曝露も入っている。個別の因子のカテゴリーと職業曝露の場合で判定結果が異なるように見えるが?
A(山崎):疫学結果で判定する場合、どの因子が発ガンの元になっているか確定していない場合もある。
ニッケル精錬工場の場合、ニッケルの曝露以外の要素も含めて、工場として判定を行っている。
司会:最後にパネラーから一言
山崎:こうしたフォーラムに参加してきているが、今回はサイエンティフィックな会でよかった。
山口:研究者として説明をするときに、一般の人と言葉・用語が一致していないことを感じた。
大久保:テーマを限定した初のフォーラムでした。色々と意見を下さい。
西澤:司会として参加しながら、情報の整理ができた。良いフォーラムであった。
記:2009−12−18
以下の発表会の後半の部分を聴講した。
第229回 鉄道総研月例発表会
日時: 平成21年12月16日(水) 13:30〜16:55
場所: 新宿 工学院大学 3階 アーバンテックホール
主題: 電力技術に関する最近の研究開発
関心を持った発表の内容
1)紫外線検出式離線測定装置の開発 電力技術研究部 電車線構造 副主任研究員 早坂 高雅
離線時のアーク光を検出する光学式離線測定装置は、可視光線を検出している。
しかし、この装置は測定精度が周囲の明るさに影響されるため、測定は夜間に限られている。
そこで昼間でも測定が可能な装置として、紫外線を検出して離線を測定する装置を開発した。
開発した装置は受光部に紫外線を可視光線に変換するアダプタを装着することで、コストを低減している。
本発表では、開発した装置の概要および検証試験結果を報告する。
BEMSJメモ:
・アーク光には紫外線が含まれる。その周波数は210nm-250nmの範囲を紫外線測定器で測定している。この波長から言えばUVCである。
・このUVCは銅イオンからの発光である。
・絶対値は不明であるが、アーク光を分光分析を行っている。
2)電鉄用変電所が発生する電磁界解析と低減対策 電力技術研究部 き電 研究員 森田 岳
変電所周辺で発生する低周波電磁界に関して、国内では「電磁界情報センター」が設立される等、電磁界問題の解消に向けたに調査や情報提供が進められているが、低周波磁界は低減が困難なため、変電所設計段階で発生量の予測、低減対策が重要である。
そこで、電鉄用変電所が発生する磁界解析手法を提案するとともに解析式に基づく低減対策について検討を行ったので報告する。
BEMSJのメモ:
・変圧器からの磁界漏洩は距離の4乗に反比例して減衰する。 よってほとんど問題にはならない。
・電鉄用変電所の電磁界で課題となるのは架線の電線からの磁界である。
・適切な相配列を行うことで、磁界の低減化は可能。
関心のある方は、当該のレジメの全文を入手して、読んでください。
記:2010-3-6
「電波の安全性に関する説明会 ≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫が開催された。
1.開催案内から
総務省関東総合通信局は、社団法人電波産業会との共催により、「電波の安全性に関する説明会≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫」を下記のとおり開催いたします。
本説明会は、近年ますます身近に利用されている電波の性質や健康への影響について、行政、工学、医学のそれぞれの観点から、一般の方にも分かりやすく説明するものです。
1) 日時:平成22年3月5日(金曜日)13時30分から16時30分まで
2) 場所:国際ファッションセンタービル3階 KFCホール (東京都墨田区)
3) 主催:総務省関東総合通信局 社団法人電波産業会
4) 講演内容
講演1 「安心して電波を利用するために」 総務省 関東総合通信局 電波利用環境課長 小原 勝明
講演2 「電波防護ガイドラインについて」 名古屋工業大学大学院 工学研究科情報工学専攻 おもひ領域 教授 藤原 修氏
講演3 「電磁環境と健康リスク」 国立保健医療科学院 生活環境部 快適性評価室長 牛山 明氏
5) 定員 240名
2.講演の内容など
講演1 「安心して電波を利用するために」 総務省 関東総合通信局 小原 勝明
・携帯電話基地局の近傍の電磁界強度に関しては、旧版の総務省「電波と安心な暮らし」パンフレットを引用し、「屋上10m上に建設された基地局アンテナナの直下では防護指針の37分の1で直下でも問題ない、直下20mの地上では、建物の蔭になっているといったことから電波は低くなり防護指針の2000分の1」と説明。
・その他は、一般的な話のみ
講演2 「電波防護ガイドラインについて」 名古屋工業大学大学院 教授 藤原 修氏
・「局所曝露指針SAR1−2W/kgで体温1度上昇」という防護指針などの論拠は、「全身曝露SARの研究で、体の部分によっては局所的に高いSARの箇所もある、平均値に対して局所的に高いSARの値は、16倍程度であって、20倍を超えなかった」ということから、全身平均SARの20倍を局所SARの指針値にしている。
・電波曝露における蓄積作用、ストレスを感じればそれは蓄積するかも知れない。それ以外の蓄積作用はない。体内深部温度上昇は少なく、深部温度の通常のふらつきの範囲に入るといえる。
・高周波帯域の平均SARと電力密度に関しては、周波数ごとのSARの研究があるが、1GHzを超えたりすると研究データはない。1GHz以下の研究データから、誰かが外装で線を引いたとと見られる。
1GHzから10GHz弱の範囲では、動物実験で可逆的な小動物の行動影響の研究データがある。このデータから健康影響の閾値を定めている。この場合も300GHzまでは外装で決定している。
・藤原研究室では、こうした論拠の工学的な研究を行っている。
・1984年頃の簡素な研究結果で得られた周波数ごとのSAR研究と、最近の細かい解析などによる研究結果は、驚くことに一致を見ている。
・3GHzまではSARの研究データ有、ICNIRPは10GHzまでのSARを規定している、3-10GHz間は論証データはない。そこで、藤原研究室では研究を行い、6GHzまで延長した、結果は外装による論拠と同じ傾向にあった。これを10GHzまで、さらに15GHzまで延長できるようになってきている。
・SARの体内・体表面での分布の研究から、2GHzと周波数が高くなると、SARは体表面に分布するようになってくる。
・その他は一般的な話
講演3 「電磁環境と健康リスク」 国立保健医療科学院 牛山 明氏
・ものの見方:ものの見方は色々ある。絵の世界であれば個人の解釈で色々と異なる見方ができるし、そうした差異があってもかまわない。しかし、電磁波の健康影響に関しては、科学の視点・見方で、考えなければならない。(レジメにない話)
・リスク: リスクゼロ社会はない ということが基本的に押さえなければならない要点である。日々、何らかのリスクの中で生活している。確率的に小さければ実質的に安全であるとする、一般的に10−5ないし10−6のリスクで安全性を決める。
アメリカの事例であるが、10−6のリスクとしては、1)ジェット機で1000マイル飛行する、2)マイアミで水道水を1年間飲む といった例がある。(レジメにない話) <BEMSJ注:10例ほどの例示があったが、メモしきれなかった。>
・メディアバイアスということを考える。松永和紀著 光文社新書「メディアバイアス」に書かれた「・・・・10か条」を参照して欲しい。(レジメにない話)
質疑応答(BEMSJのメモによる)
Q(フロア):電子レンジを使用すると無線LANやコードレス電話が誤動作する。健康に影響はあるか?
A:これはEMIの問題、人体への問題はOK。
Q(フロア):NPOに参加しているものです。高速通信になれば、速度に応じて健康への影響が大きくなるのではないか?また、携帯電話などを長時間、例えば1日10時間も使用した場合、どうなるのか?
A:高速通信化と体の影響は比例しない。基本的にはPOWER Level・SARで考えればよい。長時間の曝露に関しては、ラットの例ですが、ラットを生涯にわたって連続曝露した研究があるが、問題はなかったというデータがある。人での生涯にわたる曝露データはない。
Q(フロア):・・・・・警察に相談しても電波の強度などを調査してくれなかった。・・・・も何もしてくれなかった。どこか調べてくれる部門はないのか?
A:有料であれば、電波測定をしてくれる会社はある。
Q(フロア):防護指針は50倍、10倍の安全率を見ていると説明があった。指針値に対して少し超えるような場合、2倍程度の曝露でも安全ですと言っても良いか?
A:工学の立場で言えば、関係ないといえば言える。2倍程度の曝露でも体内深部温度上昇は0.1度程度である。
A:若干の温度上昇があっても、即病気になるとは限らない とはいえる。
関心のある方は、この講演会のレジメを入手して、読んでください。
まとめ:2010−3−15
電磁界の健康影響に関するシンポジウムが開催された。
1.シンポジウムの概要 開催案内と予稿集の目次から
近年、送電線等の電力設備や各種通信機器等から発生する、電磁波の健康への影響についてさまざまな情報が発信されています。
本シンポジウムは行政、各分野の専門家による講演及びパネルディスカッションを通じて、電磁波の健康影響に関する基礎知識や国内外の最新の情報を正確、かつ、分かりやすくご紹介するものです。
1)開催 日時:平成22年3月10日(水) 12:30〜16:30 場所:市民会館うらわ ホール
2)内容 プログラム
*開会挨拶
*講演の部
・行政における取り組み 経産省
・電磁界問題への世界保健機関(WHO)の取り組み
・講演内容の質疑応答
*休憩
*パネル討議 1
*休憩
*パネル討議 2
*休憩
*パネル討議 3
3)主催:経済産業省
4)事務局:財団法人 電気安全環境研究所
パネル討議参加者
コーディネーター:三島 セコムIS研究所
パネリスト:
佐藤 経産省 大久保 電磁界情報センター 多氣 首都大学東京 飛田 東京都地域婦人団体連盟 宮越 弘前大学 山口 東京女子医大
2.以下は1時間ほど遅刻して会場に入ったBEMSJのメモから
1)講演の部
*「行政における取り組み」経産省は遅刻して会場に入ったので、話は聞けなかった。
・レジメには、「今後の予定:低周波磁界の規制について:規制値はICNIRPのガイドライン値を参考とする。電気設備に関する技術基準を定める省令により規制を行う(現在、準備中)」と書かれていた。
*宮越氏の説明
・動物実験で、ヒヒなどを使った実験で陽性結果の報告はあった。しかし、現在は明確な健康影響は認められていない。
*質疑応答
司会:IARCの発がん性判2Bに関しては?
大久保:レジメにそって疫学から見た判定2Bを説明、IARCの判定基準を説明。
司会:これで質問1を終わる。
飛田:発がん性に関して、小児白血病のリスクを他の環境リスクと比較した場合は?
大久保:分析技術の進歩で、発がん性物質がないと思っていたものの中にも、非常に微量な物質も分析・検出できるようになって来たので、発がん性物質をゼロにすることができないことが判った。
アメリカの例では、薬にも微妙に発がん性物質が包含されていることが分析技術の進歩で検出できるようになり、発がん性物質をゼロにできなくなった。
その故をもって薬が使えないことは不都合と考えた。ゼロリスク、発がん性物質ゼロを担保できなくなった。
そこで、あるリスクレベルで「みなし安全」とすることになってきた。
日本の場合は、1992年の水道の水質基準にリスクを入れた。
ベンゼンは発がん物質である。水道水に含まれるベンゼンの量は、10μg/Lとした。リスクレベルで10−5である。
これは人が一生(80歳まで)飲み続けた場合、1年間に16名が癌(白血病)発生となるリスクである。
これは受容すべきリスクとした。
大気中の空気に含まれるベンゼンの量も、年に28.6名が発ガンするレベルのリスクである。
小児白血病が低周波磁界によってリスクが高まると仮定した場合、0.4μT以上の磁界曝露で、日本で年間4名の白血病発生というリスクレベルである。
飛田:小児白血病以外の磁界による健康影響は?
大久保:WHOのFact Sheetによれば、その他の健康影響の証拠は小児白血病より弱いとある。
司会:リスク管理について、ICNIRPガイドライン値の根拠は?
多氣:私は1995年にスウェーデンのAhlbomと一緒にICNIRPに参加した。
低周波磁界50Hz100μTを全身曝露した場合、局部によっては大きな電流が誘導し、その最大値は2mA/cm2(基本制限値に同じ)であった。
よって、参考レベルとして100μTとした。
全身均等曝露ではなく、局所的に曝露した場合、局所で100μTの曝露であっても、20分の1程度の誘導電流におさまる。
現在ICNIRPはガイドラインを改定中である。案では50Hz磁界に関しては従来と同じで、100μTである。
司会:国によっては、例;スイス・イタリアでは、異なる念のための規格を規定しているが?
多氣:イタリア・スイスでも法規定・人体曝露規定は100μTである。
イタリアでは2003年に注意値として10μT、品質目標値として3μTを定めた。
これらは絶対超えてはならない値ではなく、24時間の中央値として規定されている。
送電設備からの磁界が対象であって、家電製品などからの磁界は対象外である。
本当に危険であれば、全ての電磁界漏洩を等しく規制すべきである。
したがって、これらは安心のための政策と言える。
スウェーデンも厳しい規制を行っているという話が流れているが、国としてはそうした規制は行っていない。
司会;旧ソ連圏では厳しい規制を行っていると聞くが?
多氣:厳しい・・・・は、多分、高周波(μ波帯)領域で、1960年代にアメリカでは10mW/cm2の規定に対して、旧ソ連では1000倍厳しい規定を定めた、ということに由来するのであろう。
現在の50Hz磁界に関しては、ロシアは10μTで少し厳しい、ポーランドは75μT、チェコは100μTと同順で、ハンガリーでは磁界の規制はない。
ということで、低周波電磁界に関してはほとんど同じと言える。
大久保:WHOでは、「それらは恣意的な値である」と、記している。
司会:欧州の一部の国で厳しい規制があるが?
多氣:それはもう先ほど説明した。
飛田:意見に近いかも知れない。様々な要因があることは判ったが、不安を除くことを期待したい。
司会:長期的な健康影響に不確かさなどがある。予防原則の話になるが?
大久保:日本語の予防に対応する英語に、Prevention(あぶないことが科学的に確定、予防注射で予防する)とPrecaution(不確かな状況にある場合)がある。
意味は全く異なる。
EHCの中に、防護方策(予防対策)には1)何もしない、2)研究する、3)コミュニケーションを行う、4)対策を行う(低費用で?)、 5)規制を行う(厳しい値に?)、 がある。WHOとしては1)と5)は賛成しない、2)から4)を推奨している。
2)パネル討議2
飛田:色々な情報を提示して欲しい。
司会:電磁波の心臓ペースメーカへの影響については?
多氣:IH炊飯器で心臓ペースメーカが誤動作したという情報(新聞記事)がある。
これは極端な例で、IH炊飯器に胸が覆いかぶさったような特殊な状況で発生している。
ペースメーカ協議会やEMCCで多くの調査研究が行われて、情報提供しているので、それらの報告を見て欲しい。
体より機器は影響を受けやすい。
司会;IH調理器に関しては
宮越:IH周波数の磁界による研究は少ない。宮越研究室でも研究を行っている。
BEMS誌に2007年に報告したが、バクテリアを使って、IH周波数532μT(ICNIRPの80倍)の強度でエームステストによる毒性判定を行ったが、細胞に変異原性はなかった。
鼠の細胞にも曝露したが、雑誌に発表済みであるが、遺伝特性に影響は無かった。この種の研究は継続中。
多氣:IH調理器の側で局所的な測定を行えば、100μTを超える値が観察される。
しかし、経産省の家電からの磁界漏洩調査では、IEC106の試験法によって、IH調理器などはICNIRPの10%以下であった。
人体が一部しか電磁界にさらされない場合は、局所的な磁界値では評価してはならない。受ける影響としての誘導電流の大きさが異なる。
大久保:WHOからもIH周波数を含む中間周波数の電磁界に関する見解(情報シート)が出ている。
WHOの低周波電磁界のEHCは100kHzまでを対象としている。
WHOとしては100Hz から100kHzの電磁界に関しては十分なデータがなかったので、更に研究すべし としている。
厚生労働件研究としてこれらの研究(細胞・動物実験)を行う、4年計画で現在1年目で研究を立ち上げたばかりである。
司会:携帯電話に電波の健康影響に関しては?
多氣:電波の領域の健康影響に関しては、総務省の「電波利用」のWEBを見てほしい。
山口:携帯電話と癌に関しては国際インターフォン研究が行われている。調査は完了している、これから結果は出る。
日本だけのデータではリスクは出ていない。
宮越:細胞実験として、2.45GHzで最大200W/kgのSARまで実験できる。
この装置でエームステストを行う、5W/kgから200W/kgまでの実験で、変異原性(発がん性)は検出されなかった。染色体異常もなかった。
大久保:高周波に関してはまだEHCは出ていないが、WHOから高周波の電磁界に関するFact Sheetが出ているので読んで欲しい。
司会:電子レンジに関しては?
多氣:電子レンジから漏洩する電磁波に関しては、電気用品安全法で規制されている。
電子レンジで調理した食品は栄養素などに影響するのではないかという研究・報道があるが、噂に過ぎない。
それでも何かあるかと、最近、総務省のプロジェクトとして北大で研究を行ったが、問題は無かった。
司会:電磁波過敏症に関しては?
大久保:EMF−NET、英国のNRPBの報告書、WHOのFact
Sheetなどがある。
WHOでは、症状は確かに存在する、しかし、電磁波過敏症と電磁波曝露との関連性は見つからなかった、と。
2重盲検法で実験を行う必要がある。
司会;電磁波防護グッズに関しては?
多氣;物理的に評価した場合は低減効果はない。
人によっては、防護グッズを使用することで安心すればブラシボ効果で「ストレス」は減るかもしれない。
司会:リスクコミュニケーションとは?
三島:一方的な説明ではなく、双方向での情報のやり取りを行うこと。説得や合意を得ることが目的ではない。
司会;これでパネル討議2を終える。
3)パネル討議3
司会:フロアから集めた質問に答えていきます。日本の電磁界規制は1976年のもので古い。当時の分析法などは妥当なものであったか?
佐藤:低周波電界(50Hz等)で電界を3kV/mに規制している。
これを定めた当時は、磁界の健康影響は話題になっていなかった。
電界に関しては、健康影響という観点ではなく、感電防止という意味で規制を行うことにした。
この規制値はICNIRPの規制値5kV/mより厳しい。3kV/mを5kV./mにすることも一案であるが、感電防止という観点から、健康影響も考えて、この規制値を維持していく。
司会:イタリアやスイスの10μT、3μT,1μTといった規制値の根拠は?
大久保:WHOの見解の中ではイタリアの例を取上げ、「恣意的なものである」と言っている。
3μTの代わりに2.9でも3.5でもよかったのであろう。政治的なもので、科学的な論拠はない。
司会:永久磁石に関しては?
多氣:ICNIRPは静磁界・直流磁界も扱っている。
1984年にガイドラインを出している。さらに2009年には改訂版をだした。
1984年版では最大2Tであったが、2009年版では職場環境では8Tまでと緩和している。
これは、欧州で職業曝露の規制を開始しようとして、MRIが医療診断に使用できなくなるという問題が発生したからである。
はっきり判っている事象から緩和した。
心臓ペースメーカや機器によっては、静磁界は影響を受けることがある。
司会;ICNIRPでは長期的な影響は制限値の論拠としないとしているが?
多氣:長期的なメカニズムの想像すらできない中で癌学以外の研究データがなく、規制しようがない。
ガイドライン制定のための科学的な論拠がない。100μTの値を信じるしかない。
短期的な影響を無いようにしておけば、可逆的な影響がないレベルにしておけば、長期的にも影響はない、と考える(IEEEで1982年採用された考えであった。但し、その他のメカニズムもない訳ではないので、今ではこの考え方はしていない。)。
司会:白血病以外は更に証拠は弱いといっているが、その証拠とは?
大久保:一言で言えば、研究結果が一致していないので、リスクを決める時に使用できるデータがない、という意味である。
司会:100μTよりはるかに高いレベルでは健康影響(筋肉を収縮させる)がある得るとあるが、厚労省による職業的な曝露の規制はどうか?
佐藤:職業曝露に関する規制に関しては、この意見は担当の厚労省に伝える。
多氣:前半部分に関し答える。筋肉を収縮させることは体組織への接触式では可能、非接触で例;磁界曝露で筋肉を収縮させる研究が行われているが、簡単には収縮させることができない状況である。
磁界の時間変化がパラメータになるが、ガイドライン値の数千倍を超えてもまだまだである、というレベルである。
司会:WHOの見解にある「研究の推進」とは?
佐藤:疫学・動物実験等の推進である。関係省庁と連携して進める、まだ具体的には動いていない。
司会:WHOの見解Fact Sheet 322に書かれた見解は、どの程度、携帯電話の電磁波にも当てはめることができるのか?
大久保:FS322は低周波電磁界に関する見解で、携帯電話や基地局からの電磁波に関する見解ではない。
研究をしろ、リスクコミュニケーションをとれ といった方策は共通になるだろう。
司会:1960年代と現在では小児白血病の率に差異はあるのか?
山口;日本のデータでは、1975年から2003年にかけての罹患率のデータはある。特に増加の傾向は見られない。
他の国の場合も大きな差異はない。日本が高いということもない。
司会;小児癌より妊婦への影響の方がリスクは小さいのか?
大久保:「妊婦への影響はまず無い」というのがWHOの見解である。
司会:動物実験の場合は、長期曝露の実験条件は? ラットなどはライフサイクルは異なる?
宮越:ラットやヒヒはヒトとライフサイクルは異なる。ラットの長期曝露は、雑菌が入らないように無菌室でケージで飼育している。
大久保:アメリカのNTPという毒性研究(薬を導入する前の実験)の場合は、ケージでの飼育、シャム曝露、曝露のレベルを3段階で、比較実験を行う、雄・雌を各100匹、1生涯(2年位)の曝露 である。
動物実験で毒性(気質的に変化)が検出された場合、薬などの場合は、閾値に対して100倍の安全率をかけて、曝露限度値を決めている。
電磁波・ICNIRPの場合は、機能的影響(磁気閃光)を基にしているので、10倍×5倍といった安全率を採用している。
司会;高レベル磁界における発ガン因子に関する網羅的な解析研究は?
宮越:過去に最大400mTといった細胞レベルの磁界曝露研究を行い、5mTを超えると何か影響が見られた。
昔は網羅的に遺伝子解析は技術が無かったのでやっていない。
ゲノム解析で網羅的に解析する研究が行われ始めている。多くはない。今後も、何か判ったら、報告する。
司会;最後にまとめを
飛田:フロアからの質問も含め、勉強によい機会となった。
多氣:このシンポジウムの冒頭の経産省の佐藤さんのプレゼンを再掲しよう。
短期的な影響に関しては、ICNIRPのガイドラインを採用して規制しよう、測定法は大事で、明確にしよう。
長期的な影響に関しては、0.4μTと癌に因果関係があるとは言えない。
スイス・イタリアの念のための策でも、0.4μTといった値は採用していないことには注目すべき。
先ほど大久保先生の話の中にあった、5つの予防原則の中にある1)何もしない、5)厳しい規制 は採らないが、2・3・4の方策を行うべき。
司会;全ての質問には答えられなかった。時間になったのでこれで終了します。
記;2010−4−10
主催:電磁波から健康を守る全国連絡会
日時:2010年 4月9日(金曜)昼0:00〜2:00
場所;衆議院第2議員会館第1会議室
開催の趣旨など: <パンフレットから>
沖縄の医師、新城哲治先生は、自宅マンションの屋上に建てられた携帯電話基地局の影響でご家族が体調を崩したことから、マンションでの健康調査を行い、基地局の電磁波の影響を確認しています。
電磁波による健康被害に直面した医師として、新城先生が携帯電話基地局や電磁波の安全性について報告します。
講師プロフィール
・新城哲治先生(医学博士[分子生物学]、内科医)
・加藤やすこさん 電磁波過敏症と化学物質過敏症の患者会「VOC-電磁波対策研究会」の代表。
この集会に参加した。
以下はBEMSJのメモを纏めたもの。
1.参加者:主催者発表で約100名、会議室にほぼ一杯。
大河原議員の他に議員の秘書が多数参加。
2.挨拶:外山参議院議員(無所属で選出、現在民主党所属、電波行政に関する委員会に所属)の挨拶。
・宮崎県の出身で、延岡の携帯基地局の健康影響、裁判の話から、原告の岡田氏とあって話を聞き、この電磁波の問題に関心をもち始めている。
2.講演の内容
1)加藤やすこ氏の講演
・スウェーデンのストックホルム市では、電磁波過敏症への対策を講じている。
申請により、調査や対策を実施してくれている、例:電気の暖房をガス暖房に置き換える、蛍光灯を白熱電球に代える・・・など
・アメリカ国立建築科学研究所では、建物の中の環境品位に関するIEQ報告を出している。
携帯電話などの電磁波の為にヒトがアクセスできないことも、この中に含まれている。
・カナダの人権委員会の報告では、環境過敏症として、電磁波過敏症も含めている。
・フランスの市民グループNext−UPは、電磁波過敏症の人の為に、避難所を作った。
・日本国内での電磁波過敏症の事例 電磁波過敏症であると診断したりしてくれる病院は少なく、アンケート調査結果では10病院程度、その中の1例は、眼科医が、自らを電磁波過敏症であると診断した事例も含めている。
・国内での電磁波過敏症の事例:放射線科の看護婦が、MRI診断を受けて、電磁波過敏症を発症した例がある。
・太陽光発電を採用して耳鳴りなどの症状が出たケースがある。
この人が太陽光発電の販売店の人に確認したら、販売店の人が「そうした事例があります」と認めたと。
販売店やメーカはこうした問題を承知しているのではないか。
2)新城明美氏の講演
・那覇のマンションの屋上に建てられた携帯基地局アンテナによる健康被害を受けたとする本人の話があった。
主人(後で講演を行う新城哲治医師)が後で、詳細を述べる。家で発生した状況を説明する。
・平成12年に沖縄に戻った。
・マンションの3階に賃貸で入居した。800MHzの携帯電話基地局があった。健康に優れなかった(鼻血を出す、不正脈)。
4年経過して、同じマンションの最上階に引っ越した(部屋が開いたので分譲で購入)。そうしたら、半年後に、健康に問題が出始めた。
手は、箸ももてない状態になった。RSD(・・・神経性ジストロフィー)と判定され、8ヶ月入院した。
・退院後、翌年、アンテナの増設の話があった。このアンテナは2GHzのアンテナであった。
・2GHzのアンテナが稼働し始めてから1週間後から、長女に激しい鼻血が出るなどの症状が出た。
主人も健康でなくなり、眠れず酒を飲んで寝ても3時間で起きてしまうようになった。私は精神錯乱状態に陥った。
・携帯電話の電磁波が原因だと、気がついた。
・2GHzの携帯アンテナが原因と思い、住居をウィークリーマンsンションに一時退避した。
数日で家族の症状が無くなった。
・現在は、他の賃貸マンションで生活をしている。正常に戻っている。
・理事会にかけて、契約解除に即決。
3)新城哲治氏の講演
・医師で、白血病やリンパ種の臨床医師も勤めた。アポトーシスの研究(癌遺伝子に関連)も行った。
・因果関係は別として、事実として経過などを語りたい。
・住んでいたマンションは築20年、10階建てである。最上階に住んだ。
・アンテナは1基は、建物の外壁に沿って、2基は屋上に直に取り付けられた。
・私は、そのアンテナの直下の部屋に住んだ。間隔は5m程度か。
・57歳男性、マンションにもどると駄目、外で車に乗っていれば大丈夫、鳥の写真を撮るカメラマンの為に車に乗って出かけて、車内で寝て、朝に写真撮る。
車内で寝ていれば体調はOK, このケースでは再現性がある。
停波後は、マンションに戻っても体調は良い。
・同じマンションの隣(10階には2部屋しかない)の住民(倦怠感、飛紋症)は、マンションの2階に住む彼の親戚の部屋に移ると、症状は軽減すると言っていた。2GHz停波後は症状は軽減した。
・電球が良く切れた。
・マンションの他の住民の健康状態を、聞き取りでアンケート調査を行った。
聞き取りに関してバイアスを避けるために、そのまま書きとめた。住民の有訴を全て、時系列で纏めた(800MHz動作時、2GHz動作時、電波停止後)。詳細はメモしきれず。
停波によって、ほとんどの症状は消えるか軽減した。
・こうしたことから理事会に具申した、結果としてアンテナは撤去された。
4)質疑応答
Q(フロア F):四谷図書館では自動貸出機の導入により、その電磁波のよると思われる障害で担当職員は全員退職した、
そして現在は非正規雇用者が業務を担っている。WHOの基準ではOKと言われた。
電磁波の程度を知りたい。どうしたら測定ができるか?
A(司会:網代):あとで、測定を補助してくれる市民団体もあるので、あとで案内する。
Q(フロア F):川西市では携帯電話中継塔の撤去に成功したが、撤去を見ずになくなった方がいる。
第3世代の携帯アンテナが直に、水平方向見える30mの距離に住む70代の女性(最初に体調を崩した人)は、脳梗塞で亡くなった。
脳梗塞を起こすこと、電磁波の曝露で脳血流に影響が出て、脳梗塞になるといったことは証明できないか?
A(新城);そうした事例はない、しかし、個人的には電磁波で何が起こっても不思議ではない。
Q(フロアM):鎌倉の市民団体のブログで紹介されていた海外の動画で、携帯電話を耳に近づけた場合、耳の抹消血液の赤血球がアミーバ状になるというものがあった。こうしたことが起こるのであれば、血流に障害を与えるのではないか、新城さん、これは実験で確認できませんか?
A(新城):民間の病院の勤務医師になったので、実験設備などはなく、テストは不可能。考えてみる。
Q(フロア M):新城さんのマンションでの携帯電話の電波の強さは?
A(新城):低すぎて疑問を持っていたので先ほどの講演では出さなかった。測定結果は以下です。
15箇所ほど測定を行った。結果は・・・・・ 全てメモできず。
この測定に立ち会った。測定者は電話で「これから測定を始めます」と連絡をしていた。
もしかして何か基地局の電波出力を遠隔で操作していたのかも知れない。
1001号室のリビングの上の屋上 21nW/cm2
1002号室のベランダ 3nW/cm2
1002号室の寝室の上の屋上 15nW/cm2
屋上 アルミ棚の前 3nW/cm2
6階の玄関前 0.4nW/cm2 8階より高い 向かいのマンションからの反射かも。
1002号室のリビング 0.1nW/cm2以下
A(加藤):これまでの裁判への提出データを見れば、異常に低い場合が多い。
A(フロアM):延岡では基地局を停破した前後で測定を行ったが、停破後では20nW/cm2であった。
那覇のマンションでの測定はアンテナからの電波を止めた状態に設定して測定を行ったのではないか?
私からの質問ですが、新城さんのようなケース、10階の屋上にアンテナを建てることはよくあることで、なぜそうした健康被害が出たのか?
もう一つの質問、鼻血が出るという症状は延岡の住民にも出ている。なぜか?
携帯アンテナの稼働によって耳鳴りや頭痛の訴えはあった、那覇の新城の事例を知り、ふりかえって考えると、鼻血が出るようになった人が多いことが気がついた。なぜ鼻血が出るのか?
A(新城):今回のケースでは、沖縄では始めての2GHzのアンテナであった。
したがって、2GHz特有の問題かも知れない。
鼻血の原因は、鼻の奥には毛細血管がある。鼻の穴から電磁波が浸透するのが原因かも知れない。
A(フロアF):川西市のデータとして、荻野氏の測定では、アンテナの撤去前後の電波強度を測定結果がある。
基地局の撤去で電波の強さは140分の1に減少した。
私は携帯を使用していない。持っている人がやったら、それでも、携帯電話は使用できる状態であった。
A(フロアF):鎌倉でも鼻血という事例は多い。
ところで、鎌倉市役所に今度、地デジの放送塔が建てられることになった。地デジでの健康障害などの事例は?
A(加藤やすこ):地デジでの事例もある。私自身もそのような経験あり、ある時突然体調が悪くなったので、調べてみたら地デジの試験電波の発信日であった
福岡で地デジの試験電波発射日に倒れて、結果として電磁波過敏症になった例がある。
東北地方で、地デジの放送が始まってから耳鳴りが始まった という事例もある。
Q(フロアM):NTTのサーバービルの建設に反対で活動中です。アンケート用紙の質問事項などを共用化できないか?
A(新城):我々の場合も、本当に試行錯誤で聞き取り調査を行った。
海外で電磁波過敏症の調査アンケートのフォーマットは提案されており、その日本語版も作成中と聞きます。
Q(フロア F):質問。携帯電話と心臓ペースメーカの問題は?
A(加藤やすこ):古い型のペースメーカはまだ使用している人もいる、これらは影響を受けやすい。
A(新城):電子レンジの2.45GHzは水の分子を暖めやすい周波数として選択されている
(BEMSJ注:これや誤り)。
携帯の2GHzはこの周波数に近く、人の体を暖めやすい、発ガンを起こしやすい状態にあると言える。
Q(フロアF):アマチュア無線は大きな電力を扱っている。健康被害があるのでないか、と思って活動しています。
5)最後の挨拶 参議院議員・大河原議員(民主党)の挨拶
都議の時代に、この電磁波の問題に気がつき、規制の必要を感じた。
政権交代した今日であるが、現在の行政は、まだ「科学的な知見 待ち」の体制である。未然防止・予防原則は必要であろう。
以上で講演会は終了。
関心のある方は。主催者からレジメなどを入手して、読んでください。
記;2010−4−18
1.以下のシンポジウムが開催された。
以下はシンポジウムのパンフレットからの転載
シンポジウム「身の回りの電磁波とその問題」
私たちは、送電線や携帯電話・家電・パソコンなどの電気機器により便利な生活をしています。
しかし、これらから発せられる電磁波に囲まれてもいます。欧米では電磁波過敏症や子どもなどへの影響を考えた規制や対策がとられている国がありますが、わが国では電磁波に関する情報が少なく、まして対応策についての議論もされていないのが現状です。
本シンポジウムでは、被害実態や国際的動向、国・自治体の取り組みなどをふまえて、将来取り返しのつかない被害が発生しないよう、今後わが国で電磁波の問題にどのように取り組むべきか、また、電磁波に関する情報公開やリスクコミュニケーションはいかにあるべきかについて考えます。
日時 2010年4月10日(土)13:00〜17:00
場所 弁護士会館17階 1701会議室)
プログラム 総合司会:竹澤克己会員
・電磁波による被害事例の報告(被害者)
・基調報告
・基調講演 坂部貢氏(東海大学医学部教授)
・パネルディスカッション コーディネーター:浅野明子会員・高峰真会員
パネリスト
大久保千代次 氏(電磁界情報センター所長)
加藤やすこ 氏 (VOC−電磁波対策研究会代表)
新城哲治 氏(医師・被害者)
坂部貢 氏(東海大学医学部教授)
本堂毅 氏(東北大学大学院理学研究科助教)
・主催 日本弁護士連合会
2.参加者数は300名弱
3.シンポジウムの内容
・BEMSJがメモできた範囲での記録です。
1)開会の挨拶 道上 日弁連副会長
・日弁連では様々なシンポジウムを開催している。部屋一杯に大勢の人に参加していただき感謝。
2)事例発表 鎌倉市に住む梅田さんによる電磁波過敏症の事例報告
・北里大学の坂部教授によって化学物質過敏症と診断される。都内に住んでいた。 8年前、電磁波過敏症も併発。
・突然、電磁波過敏症を発症、電気冷蔵庫に反応し始めた。電気冷蔵庫から離れると回復。そして全ての家電製品に反応した。
そして、電線の下は歩けない、めまいや頭痛が起こる。電車に乗るのも困難になった。
・自宅で対策の取れることは全て行った。冷蔵庫は可能な限り離れた場所に置いた。
・家の中の電磁波対策だけでは駄目で、外部から携帯電話などの電波が入ってくる。
・電話も使えない。
・転地療養すると回復(八ヶ岳の山の中の山小屋みたいな所)。転地療法先で散歩するとき苦しくなってくる場合があり、その場合に周囲を見ると携帯電話のアンテナがあったり、アマチュア無線のアンテナがあったりした。
アンテナを見てから苦しくなるのではなく、苦しくなって見渡すとアンテナがあった。回復して東京に戻る車中で駄目になる。
・鎌倉に引っ越した、2003年春。携帯電話の通話の不可能な場所を選択、電力用配電線からも離れた場所にある家に住んだ。
冷蔵庫は離れた物置に設置。家はかなり改造することが許された。それでかなり体調が良くなってきた。
・2006年秋になって、近所に携帯電話基地局アンテナが建つという話が持ち上がった。
近所の人は電磁波過敏症の理解があったので、携帯基地局の建設はなし となった。
・測定器を購入し(高周波を測定できるもの)、周囲を測定したりしている。体調が不調になるところでは高周波測定器もおおきな値を示した。
・こうした人前で話ができるように、現在は回復している。
・こうした経緯から、鎌倉市議会(2008年秋)などに携帯電話の基地局に関する陳情などを行い、条例制定に結びついた。
2)パネリストの講演 本堂毅(東北大学)「電磁波とはなにか」
・電磁波に関する一般的な説明をする。
・研究者は「・・・」側であってはならない。サイエンスとしてはおかしい。
・どこまで安全・危険という判断は科学者だけでは決まらない、市民の価値判断が入るべき。
・科学者として仕方なしに研究している。
・電車内・エレベータ内の反射に関する本堂の研究成果の報告。
3)パネリストの講演「リスク評価とは」 大久保 千代次(電磁界情報センター)
・電磁波の健康リスクに関して説明。
・あと数ヶ月でインターフォン研究の論文が出版されるであろう。
・インターフォン研究に基づき、高周波電磁波に関して、2011年2月にIARCの発ガン性判定の予定。
・研究に再現性があることが求められる。
4)パネリストの講演「医学界による研究、電磁波過敏症」 坂部 貢(東海大学)
・1998年に、古屋との共著で50Hz磁界とマウスの論文を書いたのが、電磁波と関わりをもつ端緒であった。
・マウスへの1mTの曝露は、ヒトへの0.07mT曝露に相当する。マウスへの1mT曝露でマウスの精子に影響を与えた。
<BEMSJ注;この考えは、マウスと人の胴体のサイズの違いで、同じ磁界曝露に対して誘導される電流が異なることが論拠となっている。>
・高感度・感受性の高いグループでの研究結果を用いて、電磁波の曝露基準を決めるべき。
・電磁波に関する実験の結果、脳内血流に変化が起こった。被験者によって変化が起こる電磁波の周波数が異なったりした。
このことは、電磁波は脳に変化を与えるが、悪影響があるとは断定できない。なぜならば、立ったり座ったりするだけで、脳内血流は変化する。
・ポケモンによる光癲癇に関して、キンドリング現象(最初に何かが発生すると、それ以降は低いレベルで同様な症状を呈すること)が発生している。
5)日弁連としての研究グループの活動報告 伊達弁護士
・電磁波に関するStudyを行ってきている。
・レジメに各国の電磁波防護指針を纏めた。
・予防原則(Precaution)と未然防止(Prevention)に関しては、レジメを参照して欲しい。
・国によって予防原則を適用している場合がある。レジメを参照。
6)パネリストの講演「被害報告」 新城哲治(被害者 医師)
・人体と電磁波に関する説明
・マンションの屋上に設置された携帯基地局アンテナは、自宅(1002号室)のベランダから5m程度の距離で見える。合計3基のアンテナが設置された。
・複数のマンション住民に有訴があった。
頭痛、不眠症、中途かくすい、めまい、ふらつき、視力の低下、耳鳴りなど
・800MHzのアンテナ稼働中、2GHzアンテナだけ稼働中、撤去後の3段階で住民の健康状態をアンケート調査を行った。
・理事会に提案し、アンテナは撤去になった。
・アンテナの撤去によってほとんどの有訴は消えた。
・典型的な症例:57歳男性、カメラマンで外出が多い。入居時より耳鳴りや肩関節症が出た。2GHz稼働後に倦怠感、いらいら感、意識障害などが発生。
電磁波のない箇所、例:自動車で道の駅に行き、自動車内で寝ると症状は無い。マンションに帰ると症状が出る。再現性あり。
撤去後は耳鳴りは残るが、他の症状は軽快した。
・10階の住民(1001号)は、2GHz稼働後に頭痛が悪化した。2階の妹の部屋に移動すると、症状が改善する。撤去後は症状は改善した。
・11歳の男子、2GHz基地局稼働後に視力が低下、撤去後2ヶ月で視力は復帰した。ゲームなどに熱中している子供ではない。
・基地局設置で症状が発生、多数の人に発生、その頻度は尋常ではない、撤去によってそれらの有訴のほとんどが軽快・改善した。
症状に再現性があった。
7)パネリストの講演 「日本の現状、諸外国の動向」 加藤やすこ
・ここは電磁波はきつく、今まで寝ていた。調子が良くない。
・1999年に化学物質過敏症となり、病院で処方された薬がきっかけであった。
3年後に電磁波過敏症も併発した。
・スウェーデンでは障害として認められ、ストックホルム市では申請により、対応してくれる。
例;シールドなど。費用はストックホルム市で年間450万―600万。
・アメリカ障害者法で、電磁波過敏症は障害者として認められる。
・アメリカではIEQ報告が出ている。電磁波過敏症者でも建物に入れるように対処すること。
・フランス 昨年に電磁波過敏症者のための避難所ができた。市民グループが建設。
・日本での過敏症の実態をアンケート調査を、加藤やすこが行った。
対象は75名、結果はレジメにあり。但しグラフが文字化けを起こしているので、後に加藤やすこのWEBにPDFファイルで公開する。
8)パネル討議
司会:本日の討論は非電離放射線の電磁波に限定する。パネリストの講演に少し補足は?
本堂:曝露基準の設定は科学だけでは決められない。科学で100%判るとはいえない。科学だけではなく皆で考えるべき。
WHOは何を論拠に基準を作っているのか? 研究で再現性の無いものは駄目といるが、何をもってそのように言っているのか?
脳関門BBBの研究でも再現した研究もある。
司会:再現性に関しては、大久保さん。
大久保:リスク評価はあくまでもサイエンスである。リスク管理は行政の担当である。
脳関門BBBの実験では再現しなかった例はある。
Salfordの試験装置を借りて、同じ装置で、アメリカ、日本、フランスの3箇所で実験を行った。
結果はRadiation Journal 2009年に論文を出した(大久保の名前も入っている)。
Salford自身が、実験が再現しなかったこともあると自らも認めている。
本堂:再現実験は難しい。実験条件の制御は難しい。自分でも細胞実験をやるが、再現性に苦労する場合もある。
Salfordは大久保さんに再現実験の提案をした、一度やることになったが、最終的にやらないことになった・・・・という話を、私はSalfordから聞いたことがあるが、どうか?
大久保;それは、この研究では3つの研究所(日本、アメリカ、フランス)で共同で動いていて、私は合意したが、他の2つの研究所からの合意が得られず、結果としてやれなかった。
ひとつの事実、ひとつのデータが出たということは事実、それをどのように考えるかがサイエンスである。
本堂;厳密なデータがでるまでには時間がかかってしまう。
科学者は時間を気にしないで研究を続けるのであろうが、それに対して市民・社会はどうするかが大事である。
司会:研究論文の評価の仕方は?
新城:論文の評価では、そのデータでその他の研究者がどの程度利用したかがひとつの評価である。Impact
Factorという。
これだけではないが、ひとつの評価にはなる。
司会:例えば、Natureに掲載されるということは研究が認められる、ということか?
本堂:Impact Factorは雑誌の評価であって、掲載された個々の論文の評価ではない。Natureは査読などが厳しい。
厳しい審査に合格した研究は「質が高い可能性がある」論文とは言える。
大久保:電磁波の健康影響の場合は、手法が異なる。曝露量評価が重要になるので、他の学術雑誌での審査とは異なる。
坂部:学会と商業ベースの雑誌の違いもある。雑誌にとって有効と思われる論文・記事が優先されることもありえる。
専門性が高すぎるとImpact factor が低くなるという傾向もある。
本堂:2006年に兜先生研究が、International
Journal of Cancerに掲載された。これも査読を通って掲載された論文なので、評価されるものである。
司会:複合的な要因については?
坂部:基礎的な研究では電磁波だけの曝露で行う。その結果で、ヒトに影響するかはギャップがある。
動物実験で影響が出たという結果が一人歩きして、それがヒトに健康障害を与えるとかないとかといいがちになる。
人の健康影響に与える要因を含めて考えるべき。
司会:疫学に関して、複合的な要因も含めると疫学に課題はあるのでは?
坂部:それは、最後まで残る問題。その他に、誰でも影響を受ける場合と、特定の感度の高い場合に影響が出る場合も考慮していかなければならない。
大久保:複合的な要因の影響の前に、研究における交絡因子のどうするかが課題である。
ひとつひとつ犯人探しをして、それから複合的な要因の研究に進む、数十年先になるであろう。それがサイエンスである。
本堂:50年経ったら判るのか!
大久保;それはわからないのは当たり前、たばこの例では、1965年に健康影響に関する問題提起され、日本の場合は、今もって分煙していない。
本堂:すぐにわからないことを考えるのが予防原則ではないか。
予防原則を適用せよとは主張しないが、科学ではできないこと・・・などを踏まえて、社会として考えていくべき。
大久保:そこで、ICNIRPはこういうことは足りないからやってくれ・・・・と言っているのです。
司会:リスク評価に関して、スポット的なこととか、個人差などで判っていることは?
坂部:紫外線に関しては、遺伝的な要因で特定の因子を持った人に対する日光過敏症というケースがある。
司会:ここで休憩を取りましょう。10分休憩。
司会:後半のパネル討議を始める。フロアからの質問の中から、選択して質疑応答とします。
予防的取り組みについて、日本の規制値との関係は?
大久保:定義による。閾値に対して10倍厳しく、一般公衆にはさらに5倍厳しく、という考え方は、予防ということもできる。
司会:熱効果による規制値は予防という概念があるとして、熱効果ではないという部分に関しては、予防的な取り組みはしていない となるのか?
大久保:予防というと・・・・・・・説明しましょうか。
司会:予防原則云々に関しては、説明があると長くなるので、レジメを見ていただくことにして、次に進みます。
電磁波は50倍は、化学物質の規制の場合は100倍を見ている。これらはエイヤーで定めた数字?
本堂:現在の規定は熱的な効果から、10倍、そして50倍厳しくしている。
ICNIRPは現在まで判っていることに対して、10倍、50倍としている。
非熱作用、電磁波過敏症の話になれば、この10倍・50倍の話とは、明確に分けて考えなければならない。
司会:日本における電磁波に関する訴訟の結果を紹介する。詳しくはレジメに纏めてある。
フランスの携帯裁判に関して、大分の中村弁護士から話をして欲しい。
中村:日本の判決では、最近になって、大分の裁判(高裁判決)で予防原則の論議が行われるに至った。
但し「予防原則は立法の問題であって、司法判断にはなりえない」というレベルである。
フランスの携帯電話基地局訴訟で撤去の判決が下った。フランスへ行き、原告側の弁護士と面談してきた。
「スランスは何か、予防原則的な措置を認める実体的な法律があるのか」と聞いた。
回答は「特別な法律はない。昔から伝統的にフランスにある民法に定める異常近隣妨害で判定された。
隣人への妨害のレベルが異常か否かで判断された(BEMSJ注:異常なレベルと裁判官が判断した、基地局撤去の判決が下った、という意味であろう、異常なレベルと判断されなければ、住民側は敗訴したであろう)。
フランスのベルサイユ判決では「研究の最中、曝露は連続的に一方的に押しつけられる性質である」となっている。
日本とフランスの司法システムの違いであろう。フランスでも日本でも科学的な論拠は共通である。
司会:日本の地方自治体の動きを紹介する。レジメを参照して欲しい。
住民の動きは?
新城:那覇の携帯電話アンテナの場合は、契約の更新をしないことに決めただけで、自動的にアンテナは撤去された。
健康影響があったのでアンテナを撤去した という姿勢ではない。
加藤:反対運動を取材してみると、事業者の説明不足が共通している。
説明会をやっても「安全」の説明だけ、こうした状態では紛争はなくならない。
ソフトバンク札幌の裁判では、通信会社の担当は「総務省のパンフレットでの説明で安全」の論だけ、「他の裁判事例のことはある程度知っていたが、説明する必要があるとは思っていなかった」と、「GHz」の読み方も判らない担当が「安全です」と説明している、というレベルであった。
司会:裁判を経験した中村さんから見て、どういうシステムが必要か?
中村:大久保さんの説明で「リスク評価はサイエンスで、リスク管理は行政」と言われたが、リスクのレベルはどうして決める?
どうやって受忍限度を決めるか、科学者・市民・法律家などが議論していくべきこと。
司会;事業者の責任については?
中村:科学で十分に住民に説明することは必要。
司会:アセスメント法案はあるが、電磁波は対象外。法曹界として、考えていくべき課題である。
司会;続いて、ICNIRPより厳しい規制は、特に最新の情報は?
加藤:フランスのウーラン市の場合、バイオイニシアティブの提案を入れた。
司会:EU議会の採択の情報をレジメに入れてあるので参照して欲しい。
大久保:関連して、最新の情報を伝える。今年の2月にEU委員会はコメントなどを発表している。電磁界情報センターのWEBに公開してある。
司会;電磁波過敏症をテーマとする。加藤さんから紹介されたIEQ報告(レジメにあり)を如何に評価するか?
坂部:導入に関しては評価可能。
加藤:最低限 必要なもの、
坂部:一番の問題は、医学者教育である。医学生の時にそうしたことを学ばせる必要がある。
司会:スウェーデンは電磁波過敏症は疾病とは認めていないが、障害者としての対応はしている。そうした対応は日本でも必要なのではないか。
司会:最後に何か一言
大久保:どれが正しい情報であるか、見極めて欲しい。
新城:琉球新聞(マンションでの事例の記事)を見て欲しい。
問題だといえば、携帯電話の基地局は減るであろう。日本の新しい技術を開発力があるから、何か良い方法を携帯電話会社で考えてもらえ。
加藤;過敏症者の立場では、50年も結論が出るまでは待てない。政治的な配慮を望む。
本堂;正しい情報は必要である。正しい情報が出てくるような委員会・組織が必要である。
海外の情報を日本語に翻訳するとき、欧米と日本では科学に対する受け取り方がかなり異なるので、判りやすく翻訳して欲しい。
市民は英語の原文を読めるようになるべき。そうすれば日本と海外での相違に気がつくであろう。
科学者に政治判断を求めるな、政治判断は皆さんでやるべき。
中村:科学は統計で語る学問でしょう。統計を取るには時間がかかる。
統計を取る間もない科学的なテーマに関しては、法のシステムとして如何にあるべきか、議論してこなかった。この議論が必要。
坂部:こういう会を増やして欲しい。今日は来ていないが、行政も来て、長い時間の論議が欲しい。医学教育が大事である、啓蒙活動をしていきたい。
司会:これだけ課題が多いことを知った。これからも日弁連としてStudyを続ける。
旭川市議会議員の山城さんが来ている。一言。
山城;10年前から電磁波の測定などを行っている。
5年前に被害を受けた。真向かいに基地局アンテナが建った。納得できなかったのは、どこに相談しても情報が得られなかったこと。
そして、加藤さんの本などみた。その後3ヶ月かけて撤廃させた。
市議会員として、行政の課題であるとした。2年前から学集会などで活動を行っている。相談窓口を市に作らせた。市の条例を作ることを目指している。
国の判断を超えることを地方では動けない、という状況の中にいる。仲間を増やす活動中。
旭川市は日本では珍しく、化学物質過敏症に対しては転地療法させるなどの対応策を取っている。
司会:これから質疑応答に入る。多数の質問のなかから。
Q司会:エネルギーは減らないと説明があった。発生源から離れれば曝露量・影響は減ると思っていたが、これは間違いか?
これはエレベータの中だけに限定された話か?また、閉じられた空間での影響を防ぐ方法は?
A本堂:外であれば距離に応じて減少する。反射がある場所では減らないと説明したつもり。
閉じられた空間での低減策はシールドする方法などはあるが、エレベータの中での低減は現実的には困難。
Q司会:基地局アンテナの真下は影響は無いはずだが?なぜ新城先生のマンションでは直下で問題が発生したのか?
A新城:一般にはそういわれている。実際に電波の強度を測定しても異常は無かった。
反射のせいではない。なぜ症状が出たのか科学では説明できていない。
Q司会:電子レンジ・パソコン、携帯電話などではどのようにして低減するか?
A加藤:電子レンジは使わないのが一番、パソコンの場合は、無線LANや無線マウスを使用せず、有線のものを使用する。
Q司会:携帯電話の電磁波による精子への影響に関する最近の研究に関しては?
A大久保;全ての課題を含めて、ICNIRPでは全ての研究を精査していく。
Q司会:研究に関して、曝露量がはっきりしているのは労働環境ではないか、電力会社などで健康診断をしているので、疫学研究としてそうした研究はないのか?
A大久保:国内では報告は大きくないが、人も集まりやすいので疫学研究では労働環境を扱う。結果として今の見解がある。
司会:質問者は、なぜ国内でそうした疫学調査を行わないのか?との意味もある。
A大久保:1980年代と記憶しているが、どこかの電力会社で実施したが。問題は見つからなかったので、論文にしなかった、という話を聞いている。
電磁波曝露しない事務職より、曝露する工事現場の人では、体力などが異なる、屈強で元気な人だけが現場で曝露しながら作業を行うので、結果として影響が出てこない、という傾向にある。こうしたことから疫学調査では難しい問題が出てくる。
本堂:確かではないが、プール分析で、労働環境で有意な結果が出ていなかった?確か低周波で、白血病か何かと思うが。
大久保:どの疫学かはっきりしないと、
本堂;スイス国鉄では? 白血病に関する、ミーガーらの研究では。
司会:今の話はネットなどで検索可能?
本堂:Medlineなどで検索できるかも。その研究者は知っている人なので、コメントしました。
坂部:今の議論を見ると、医学の立場では、塗装・ペンキを作っている工場の従業員が、化学物質曝露で健康に影響するかというもの、これはアスベストを作る工場の従業員が塵肺になるような話で、ある意味では、それは影響が出ても当たり前である。
大事なのは、アスベストに職業的に曝露されなかった人が、微量な曝露で癌になることである。
職業性曝露と一般公衆の曝露は分けて考える必要がある。
本堂:そうです。
Q司会:法律の壁が立ち下がっている。予防原則はどこまで法的に強制力があるか?
A中村:福岡高裁の回答では、裁判基準にならないので、予防原則は強制力はない。
Q司会;科学では答えられないものを法で何とかならないのか?
A中村:科学と同じで、科学のシステムの中で答えをだすように、法のシステムの中で答えを出す。
私たちの役割は科学の適用限界を示すように、法の適用限界を示すことだと思う。それでよいかは市民の判断となる。
司会;これで本日のパネル討議終わる。
閉会の挨拶:弁護士会館でこれだけの科学論争はめったに無いことであった。今日は291名の参加があったことを報告します。
総合司会:シンポジウムを終了。
以上 関心のある方は、レジメ・資料集を入手して読んでください。
以下のフォーラムに参加した。 記;2010−5−21
$1.フォーラムの概要
電磁界情報センターのサイトにあった案内から抜粋
第3回電磁界フォーラム〜電磁界の健康影響評価方法とその解釈について考えよう〜
電磁界情報センターでは、電力設備や家電製品などから発生する50/60Hzの電磁波(電磁界)に関して、さまざまな視点から議論する機会を設け、11回シリーズの電磁界フォーラムを開催しています。
第3回目のテーマは「電磁界の健康影響評価方法とその解釈について考えよう」です。
電磁界やその他の環境因子の健康リスク評価はどのように行われているのか、2007年8月に公表された「バイオイニシアチブ報告」※をどのように捉えればよいのかなどについて専門家を招いて説明いただくとともに、パネルディスカッションにより、参加者の皆さまと共に考え、理解を深めたいと思います。
このような趣旨から、下記のとおり電磁界フォーラムを開催いたしますので、多くの方のご参加をお待ちしております。
※バイオイニシアチブ報告:2007年8月に欧米の研究者らにより取りまとめられた報告書
であり、同年に公表された世界保健機関(WHO)の環境保健クライテリア(EHC)238「超低周波電磁界」と比較し、厳しいリスク管理を求めています。
EU議会は強い関心を払っている一方、同報告書に否定的な見解を示す政府機関も複数あります。
記
1.日 時:平成22年5月20日(木) 13:30〜16:30
2.場 所:日本科学未来館 みらいCANホール
3.定員:200名
4.プログラム(案)
13:30−13:40 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
13:40−14:10 環境中の有害化学物質の健康リスク評価の枠組みと考え方について 京都大学名誉教授 内山 巌雄
14:10−14:30 国際機関による電磁界リスク評価手法について 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
14:30−15:00 「バイオイニシアチブ報告」の意義について 市民科学研究室代表 上田 昌文
15:00−15:15 休憩
15:15−16:25 パネルディスカッション
司会 :関西大学 社会安全研究科・社会安全学部 副学部長 土田 昭司
16:25−16:30 閉会挨拶 電磁界情報センター 事務局
$2.以下は参加したBEMSJのメモから
1.開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
・電磁界情報センターの概要の紹介
・今回のフォーラムの論点は1)健康リスク評価の方法 2)バイオイニシアティブ報告(BIRと略記)をどのように捉えるか である。
2.環境中の有害化学物質の健康リスク評価の枠組みと考え方について 内山 巌雄
・電磁波の専門家ではないが、比較するために、化学物質のリスクのついて話をする。
・1968年1969のPCB、カネミ油症の問題が国内での化学物質の健康影響に関する取り組みの始まりであった。
5年度に化審法として法制定になった。
これは世界に先駆ける、有害化学物質を市場に出す前に審査を行うという法規制であった。既存の化学物質は対象外であった。
・死亡率の年推移を見てみる。男性の肺がんは1995年をピークに減ってきている。
但し、喫煙に伴う癌(扁平上皮癌)は減っているが、喫煙によらない癌(腺癌)は減っていない。
肺がんに関しては、環境中に何かたばこ以外の要因があるのかも知れない。
大気汚染物質や化学物質などの環境要因による数%や10%程度の寄与率でしかない化学物質などをなぜ規制するかについてはこれから説明していく。
・従来、非発がん性物質については、閾値内が安全、閾値を越えると危険という2分法であった。
安全宣言が出せるのは、閾値があるからであった。
・現在、閾値のないものに対する考え方としては、確率で考える。
利便性も考慮して、リスクが10-5や10-6以下であれば、「実質的に安全であるとみなす」量を決める。これをVSD(実質安全容量)という。
・化学物質に関しては、WHOの1979年の「化学物質管理におけるリスクの概念」は、「ある物資の曝露により起こりえる望ましくない影響の予測値」である。
・アメリカでスペースシャトルで事故が起こり、宇宙飛行士全員が死亡した。
事故があるのなら宇宙開発を止めるべきか・・・の議論になった。
結果、「99.9999%以下の確率、10-6の事故確率ならば許容する」というアメリカの国民的コンセンサスが得られて、宇宙開発は再開した。
・大気中の有害物質規制や水道水の発ガンリスクは10-5である。(BEMSJ:いずれもゼロリスクではない。)
・詳細は講演のレジメを参照。
3.国際機関による電磁界リスク評価手法について 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
・リスク評価を行うときに、「健康影響」と「生体影響」を区別して考える必要がある。
旧ソ連圏の曝露規定は健康影響ではなく、生体影響を対象にリスク評価を行っていると見られる。
生体影響のレベルを「あぶない」とすれば、厳しい曝露評価になってくる。
・WHOのEHC238などのリスク評価の規範は、
1)世界規模の電磁界研究の評価と徹底的な科学的な証拠の重み付けによる批判的レビューを行う。
2)研究報告は、研究手法、研究データ、結果の分析保法と結論が記載されていなければならない、
3)全ての研究は、再現されなければならないか、類似したこれまでの知見と整合性がなければならない。
4)科学的証拠を評価する際は、陽性(問題がある)・陰性(問題はない)両方の研究結果を平等に評価しなければならない。
・ハザード(障害)の同定は、疫学研究・動物研究・細胞研究の総合評価による。
・詳細は講演のレジメを参照。
4.バイオイニシアチブ報告」の意義について 市民科学研究室代表 上田 昌文
・全員が合意できる筋の通ったリスク評価の手法は確立されていないと見る。
・BIRは、現行の基準値を正しいとして進めることの対する専門家としての反論である。
この「BIRが100%正しい」とは私は思わない、これが論議のきっかけとすべきである。
・BIRはBEMSの2006年総会の中で、こうした報告書をまとめようとした動きから始まったもの。
・BIRはWEBに公開されていた、論文誌に掲載されたので、現在は無料ではダウンロードできない。
・BIRには指摘されているように欠陥はあることは事実。
オランダ健康評議会HCNの指摘は、上田としても、かなり当たっているといえる。
それでも、BIRは社会的価値のある報告書である。
・疫学に関して、過去のたばこのリスク評価はどうか、もしICNIRPがたばこに関して同様にリスク評価を行ったら、たばこの疫学結果から「因果関係あり」と認定したのでしょうか?
・NPOでPower Watchでは、陽性・陰性の両方の研究を紹介している。
5.パネル討議
司会:司会を務める土田です。今回は限定はしないが、低周波電磁界が主である。
WHOのEHC238とBIRの違いなどに関して論を進める。
EHCでは「急性影響に関しては国際的なガイドラインを守れ、疫学や長期暴露(小児白血病)のリスクはあるが、因果関係が見出せないので、曝露制限は推奨しない。予防的取り組みは方策のひとつ」であり、
BIRは「現行ICNIRP値は不十分、長期曝露の影響を考慮すべき」ということで、相反する論調となっている、
この違いが今回のテーマであろう。
上田:BIRでは・・・でリスク評価を行ったと明確に打ち出してはいない。過去のデータをみて、WHOの判断では不十分とした。
BIRが提唱している限度値は、自分たちが・・・・という研究を行った結果からであると主張しているのではない。
ある意味では恣意的な解釈をしている。
WHOはどこまで確認したら因果関係があると認めるのか?こうした点はWHOの報告書を読んでもはっきりしない。
大久保:一つはBIRはリスク評価書はないのではないということか?
上田:リスク評価そのものではない。BIRは過去のデータを並べて、見落とせないポイントを示したもの。
大久保:それは、国際的に考えされているリスク評価の方法ではないということか、
上田:国際的なリスク評価法とは何かを私は知りたい。
大久保:それは、陰性・陽性の研究結果の両方を評価すること。
BIRは影響があるという陽性結果だけを並べた、ということか。
そうであれば、普通に言われている「リスク評価」ではないのではないか。
上田:もし大久保さんのいうようにリスク評価は「陰性・陽性の両方の研究を評価する」ことが条件であれば、BIRは「リスク評価」とはいえない。
大久保:ですね。そうでない観点から行うリスク評価はあるのか、科学的に。
甘い・辛いものの中から甘いものだけを取り出して、「あまい」から・・・・すべきと言っているだけではないか。
上田:たしかに、BIRにはそういう欠陥はある。
かといって、このBIRはリスク評価書ではなく、恣意的なものともいえない、なぜか、低周波磁界と小児白血病の疫学研究から、・・・・すべきとBIRは提言を行っているので、無根拠とはいえない。
大久保:BIRのメンバーは勉強不足なのではないか、2001年の段階で、IARCは既に、低周波磁界の発がん性評価において、疫学は方法論的に問題があるので、疫学の評価によって、判定1の発がん性ありとはできないと判定し、2に分類した。
2は動物学的な研究の強さで、強ければ2Aとなり、弱ければ2Bに判定される。結果として2Bに判定された。
これは2007年のEHCは発行の前の、2001年の動きである。
このように疫学の結果が2001年の段階で既に明確に判定されていることを、BIRのメンバーは読み込んでいない。
上田:BIRは、疫学研究結果に関しては因果関係は薄いが、予防原則をとる根拠としては考慮に値すると主張している。
また、一方として、動物実験などではどこまでわかれば因果関係ありとWHOは認めるのでしょうか?
大久保:IARCの判定は、疫学を重視する。疫学結果が十分ではなければ、判定1にはならない。
動物実験の結果などは、あくまでも補足であり、「発がん性あり:1」と判定するか否かは、疫学による評価であり、動物実験の結果には依存しない。
上田:WHOは「疫学のリスクによる曝露制限は推奨しない」とあるが、本当にそれでよいのかというのがBIRの言い分である。
大久保;意見としてあっても良い。
但し曝露制限は最も強い方法論であり、preventionに近い方策(あぶないことが判っているから規制する)である。
今の判定では、IARCの疫学判定が2Bなので、まだあぶないか否かがはっきりしない、こうした時点での考え方の違いであろう。
それはリスク管理の話になる。リスク管理は別のフォーラムでやりたい、今回はリスク評価のフォーラムである。
上田:リスク評価の話とリスク管理とはっきり分けて考えても良いのか?
大久保:今回のフォーラムはリスク評価に関する論議に限定する。
上田:それはそれでよいが・・・・
大久保:EEA欧州環境庁だけがBIRを支持する見解を出している。
この見解を読むと、前段で「EEAは電磁波の専門家ではない」と断っている。
その上で「曝露基準を変えるだけの強さがある」と言っているに過ぎない。
専門家ではなく、電磁波については良くわからないが、環境問題としてみれば・・・・というレベルで、見解を出しているに過ぎない。
同じ欧州の機関であるEMF-NETはBIRを支持しない見解を出している、BIRはリスク評価のステップを踏んでいないと。
こうしたことから、BIRには脆弱性があるのではないか、と考える。
上田;BIRに脆弱性があることには同意できる。
しかし、科学的に証明しなければ・・・・・という方策は採るべきではない という姿勢は、これまでの化学物質の例を含めて多くの事例がある。
したがって、リスク管理とリスク評価は同時に考えなければならない。
大久保:疫学の評価に関しては、ヒルの判定基準(関連性か、因果関係かの判定)として9項目がある。
たばこの疫学評価では項目3を除けば判定基準をクリアしている。そしてたばこは因果関係があるとされた。
一方、低周波磁界の疫学では、適合している項目もあるが、適合していない項目が多く、こうした判定によって、低周波磁界の疫学評価では、「因果関係はあるほど強くない」と判定するに至っている。
司会:不確実性については、不確実性にはデータが不十分な場合と・・・・・・の場合がある。
何か他に分野での事例として、相反する結果が出ていた例はあるか?
内田:化学物質などの場合、基準を作るには、ヒトに対して十分な疫学データがあるものに対して行っている。
人の疫学研究で量反応関係が得られない場合は、やむを得ず動物での結果から出すが、この場合は、基準ではなく、日本の場合は、ガイドラインのレベルとしている。
大気汚染などでは疫学を重視しているが、ヒルの判定基準を日本ではきちんと評価に使用していない。
物質ごとに決めている、ケースバイケースで決めている。
日本で低周波磁界に関する基準を作ろうとすれば、判定が2Bなので、疫学としては不十分となる。
量反応関係が見出されていないので、ガイドラインのレベルにしようとしてもできない。
BIRの考えは、規制のレビューのきっかけにはなるが、すぐに基準やガイドラインの作成にはならない。
大久保:WHOでは、2006年末までは、Precautionを考えることにしていたが、方針が変わり、あくまでも科学、Evidence Basedで進めることになった。
判定2A・2Bのレベルで規制開始となった事例はあるか?
内山:有害大気汚染の優先取り組み物質としては、IARC判定2B以上のものを取上げる。
しかし、物質物質ごとに対応を決めているので、発がん性2Aに判定されたから規制する、評価を行う、というものではない。
水銀は発がん性ではなく、他の健康影響の観点から、評価を行った。
上田:化学物質は歴史がある。曝露調査も簡単ではない。厳密な科学的な方法だけで済む問題ではないと思う。
大久保:上田氏の話からは、precautionは低周波磁界の規制と捉えているように見えるが。
上田:そういう方法もあるが、それ以外もあるだろう。IH調理器の磁界を調査した結果から、使用制限なども考えていくのもある。
大久保;あぶないかもしれなから規制すべき、は疑問がある。「かもしれない」では駄目。そうした場合は、情報提供が先ではないか?
上田:情報提供には賛成。
司会:それではここからは、フロアからの質問に答えましょう。
Q(フロア):WHOのリスク評価のシステムはあるが、それは本当にうまく機能しているのか?
A(大久保):WHOのタスク会議のメンバー選定に直接関与はしていないので、様々なジャンル・専門性・地域性などをも考慮しているが。
Q(フロア):漏れ聞くと、レパチョリが後に電力関係の顧問になったとか、会議に特定の関係者を傍聴させたとか、こうした市民団体発の情報もあるが。
A(大久保):レパチョリの件は、私も個人的には望ましいとは思わない。
タスク会議にオブザーバーとして参加するのは認められている。議決権なし。
発言権はない。必要な情報を提供してもらうために、議長が指名して発言させることはある、これは電磁界のタスク会議以外でも行われていること。
これがまずいといわれるのか?
Q(フロア):それが本来認められていることであれば、良い。
Q(フロア):BIRのメンバーの場合は、利害関係者との関係はなかったのか?
A(上田):なかったとは言えないかも知れない。但し、報告書の中で、構成メンバーの素性は公開している。
S・サージの主張に合うメンバーが選定されたのかも知れない。
Q(フロア):BIRに対する日本の公的なコメントは?
A(大久保):日本では出ていない。
Q(フロア):BIRはリスクをどのレベルで判定しているのか?WHOが10-5や10-6とすれば、10-1といったレベルか?
A(上田);BIRでは定量的なリスク評価は行っていない。
Q(フロア):それではリスク評価は不可能ではないか?
A(上田):リスクレベルが10-5などのリスクレベルは取上げていない。
Q(フロア):リスクはゼロでないと駄目と言っているのか?
A(上田):難しい。そこまでは言っていない。個々の研究成果の中に踏み込むしかない。
BIRは陽性・陰性のデータをつき合わせてはいないことは確か。
Q(フロア):疫学研究では曝露量の把握が大事ではないか?これまでどのようなことをしてきたか?
A(大久保):疫学では時間平均をとっている。
兜先生研究では、1週間の連続データで曝露評価を行っている。この例が最も長いデータであろう。
化学物質のような厳密な量の把握はできていない。
Q(フロア):公的には是非どの程度の曝露を調べて欲しい。
A(大久保):私のところで? そうした意見として受ける。
A(上田):私の調査は疫学ではない。
Q(フロア):電気の需要が増えて磁界が増えるのであれば、電力需要と小児白血病の研究も可能ではないか?
A(大久保):疫学調査としてある、日本全体で考えれば、電気の使用量の増加が大きい(10倍?)が、小児白血病は横ばいという傾向にある。:
司会:もう1人から質問を。
Q(フロア):(大久保貞則)非熱作用についても考慮すべき。非熱作用に関しては疫学研究しかないのではないか。
日本での調査など希望する。
司会;希望ということで、聞いておきます。最後にパネラーから一言。
内山:大気中のアスベストでは1987年、リスクが10-4レベルで、検出が困難ということでやらなかった
高濃度の曝露(労働環境)でのデータから、類推した。
電磁波、低周波磁界と白血病の問題ではリスクの大きさの観点から、難しい?
子供の健康に関するコホート研究がスタートする。10万人を13年間の調査。このコホートには電磁波の研究は含まれていない。何か、知恵はないか。
大久保:リスク評価が評価を行う組織によって異なっては困る。
IARCの判定2Aと2Bの違いもすっきりしない。
小児白血病は罹患で10-5のリスク、死亡では10-6のリスク、こうしたレベルのリスクをどうしていくか?
上田:リスク評価・リスク管理を専門家に任せるのはまずい。議論は必要。
土田:最後の本日のまとめであるが、科学的なリスク評価が今回のテーマであるが、リスク管理の話が入り込んでくる。
リスクとはそういうものか。何を評価するかも考えなけならない。
ガス器具の死亡事故より医療事故に方が大きい、マスコミはガス器具の事故だけを大きく取り上げる。
何を考えるべきか、これはガバナンスの問題。次回以降はこうしたテーマで論議されるのであろう。
記:2010−6−22
私は都合がつかず、聴講しませんでしたが、以下の発表が行われています。
************* ****************
日時: 2010年6月17日(木) 13:30〜16:55
場所: 新宿 工学院大学 3階 アーバンテックホール
主題: 環境工学に関する最近の研究開発
タイトル:静磁界と極低周波変動磁界の複合曝露による生体作用評価
発表者:環境工学研究部 生物工学 副主任研究員 吉江幸子
概要
近年、世界保健機関(WHO)において電磁界の健康リスク評価が進められるなど、電磁界が生体に与える影響に対する社会の関心は高く、鉄道総研では生体に対する電磁界の作用機構の解明を目的として基礎的な研究を行っている。
本研究では、鉄道に特有な電磁環境の生体影響評価の一環として静磁界と極低周波変動磁界との複合曝露試験を実施した結果、発がんなどの要因となる遺伝毒性を示さないことがわかった。本発表では、この実験結果について報告する。
レジメには以下の図が掲載されている。
直流磁界5テスラ(5万ガウス)と50Hz交流磁界1mT(10ガウス)および直流磁界1mT(10ガウス)と50Hz交流磁界0.5mT(5ガウス)の曝露では変異原性(発がん性)はない ことが判った と。
**************** **************
関心のある方は、原著全文を入手して、読んでください。
記:2010−7−5
以下のARIBの懇話会に参加した。
1.懇話会の概要: 開催案内から抜粋
第73回電波利用懇話会 「電磁波と健康に関する疫学研究の最新動向」
日時:2010年07月05日(月) 14時00分〜 15時30分
場所:社団法人電波産業会 会議室
定員:60人
概要:
世界保健機関(WHO: World Health Organization)のがん研究専門組織である国際がん研究機関(IARC: International Agency for Research on Cancer)は、携帯電話の使用と頭部の腫瘍との間に何らかの関連があるかどうかを調べるため、我が国を含む13カ国において大規模な国際共同疫学研究(通称インターフォン研究)を実施しました。
この研究における各国のデータの全体的な分析結果が、2010年5月17日に専門誌インターナショナル・ジャーナル・オブ・エピデミオロジー電子版に発表されました。
当会では、下記により第73回電波利用懇話会を開催し、こうした研究結果の発表を踏まえて、その概要と、電磁波と健康に関する疫学研究の最新動向について、東京女子医科大学の山口直人教授をお招きし、ご講演いただくことといたしました。
会員の皆様には、ぜひご参加下さいますようご案内申し上げます。
2.講演の概要
以下はBEMSJのメモによる概要
*インターフォン研究の結果を中心にして話をする。
*5月インターフォン研究の総括論文が刊行された。これは神経膠腫と髄膜腫に限定した報告である。
*聴神経鞘腫と耳下腺に関する最終論文は刊行されないのではないかと、あきらめの声があった。
しかし、来年には刊行されるかも知れない、来年5月にIARCは高周波電磁界の発ガン性判定会議を開催するが、この判定に論文は間に合うか・・・・・
*耳下腺腫瘍の場合は、悪性に限定した。耳下腺腫瘍の場合、良性であればそのままほっておかれる可能性が高いため。
腫瘍は、他に転移する場合は悪性という、悪性腫瘍をがんという。他に転移しないで、自己増殖する場合を良性という。
*日本のインターフォン研究では、東京と周辺の25都市に住居する症例だけを集めたので、全体の症例数は少ない。
結果などはレジメを参照。
*インターフォン研究全体で聴神経鞘腫の研究結果を、以下に示す。
<聴神経鞘腫に関してはまだ総括論文が刊行されていないので、この話は貴重と言える。>
・携帯電話使用・非使用によるオッズ比は、各国別のデータを見れば、有意なリスクの増加はない。
・10年以上の長期使用では、スウェーデンの結果だけが大きなリスクの増加を見ている。
・長期間の使用で、携帯の使用と同側側でのリスクの増加は、スウェーデンの結果だけが大きなリスクの増加を見出している。
*インターフォン研究の総括論文(神経膠腫と髄膜腫)の概要
・累積使用時間とオッズ比の関係では、使用時間を10区分した最大の時間帯でのみリスクの増加を見ている。
この点が研究者間では大きな論議の的になった。
・髄膜腫と神経膠腫を同時に解析した。髄膜腫はリスクはない、というコンセンサスが得られた。
神経膠腫と髄膜腫の研究で一致点と相違点がある。
山口の個人見解であるが、髄膜腫と神経膠腫が共に真のリスク増大があるならば、相違点の説明が不可欠となる。神経膠腫だけに真のリスクがあるならば、一致していることが説明できなければならない。したがって、これらの総合的に、共にリスクの増大はないと、考えられる。
・その他はレジメ参照。
*IARCでの発ガン性判定
インターフォン研究の結果などを、この疫学研究を「限定的な証拠がある」とみなすとグループ2Bに、「証拠は不十分」とみなすと、グループ3に判定されることになるだろう。
詳細に関して、関心のある方は、レジメなどを入手して読んでください。
まとめ: 2010−11−3
$1.セミナーの概要
以下は電磁界情報センターの案内の抜粋
************** ***********
電磁波セミナー「身の周りの電磁波と健康影響について」(東京)開催のご案内
電磁界情報センターでは、電磁波(電磁界)に不安や疑問を持つ方に少しでも理解を深めていただくために、送電線や家電製品など身の周りの電磁波(電磁界)とその健康影響について、世界保健機関(WHO)などの科学的な見解をわかりやすくお伝えすることを目的としたセミナーを、下記のとおり開催します。
多くの方のご参加をお待ちしております。
記
1.日 時:平成22年8月20日(金) 13:00〜15:00
2.場 所:国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟311室(3階)
3.定員:100名(参加無料)
4.プログラム(予定)
13:00−13:05 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
13:05−13:25 身の周りの電磁波(電磁界)について 電磁界情報センター 森山 孝史
13:25−14:10 電磁波(電磁界)の健康影響について 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
14:10−14:20 休憩
14:20−15:00 質疑応答
15:00 閉会
**************** **********
150名ほどの参加者数。
$2.セミナーを聴講して気のついた点(BEMSJのメモから)
1.開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
・電磁界情報センターの紹介があった。
2.身の周りの電磁波(電磁界)について 電磁界情報センター 森山 孝史
・一般的な話のみ、 詳細はレジメを参照
3.電磁波(電磁界)の健康影響について 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
・大半は一般的な話のみ、詳細はレジメを参照
・疫学などではしばしば「低周波磁界と小児癌の関連性は示唆される」と述べられている。
「関連性」と「因果関係」とは似ているようで全く異なる用語であると解説があった。
関連性は「ある現象が本当の原因でなくても、結果を導いている」こと。
なぜそうしたことが起こるかが証明された場合は「因果関係」という。
4.質疑応答
事前質問l:先だって東京電力に磁界測定サービスを依頼したところ電気製品のない場所(おもに生活、就寝していて頭部がある位置)で、0.5マイク口テスラありました。
電磁波について最近知り始めたばかりで、ほとんど無知ですが、5月以前より頭に金の輪をつけられたような感じです。
A:WHOのファクトシート322にあるように、調べてきたが、小児白血病の問題の因果関係より強い影響はないと考えられる。
今までわかっていることを総合すると0.5マイクロテスラでも問題はないであろう。
事前質問2:高圧線による電磁波が身体に与える影響についてお聞きしたい。高圧受変電設備による磁界強度と人体への影響。
A:これまでに説明したように、変電所の敷地境で最大4マイクロテスラ程度である。
事前質問3:日常で電磁波(IH調理器等)が人体に及ぼす悪影響数値を知りたい。
電子レンジやIH調理器などから発生する電磁波による健康への被害の有無についてお伺いしたいです。
また、友人が電子レンジやIH調理器が作動すると、耳鳴りがするという風に言っていますが、これは勘違いでしようか?
本当にその友人は感じているのでしようか?
A:中間周波に関するWHOのとりまとめ文書がある。
VDTに関しては多くの中間周波数の研究はあり。曝露ガイドライン以内では問題はないとされる。
IHに関しては相対的に研究は少ないので、WHOは更なる研究を勧めている。
スイス連邦政府の内務省公衆衛生局(FOPH)が今年の1月にFact Sheet(英文)を出している。
不適切な鍋(底が平らではない鍋)は使うな・・・と。
使うと大きな磁界が出る。6.25μTを近づけば超える値が報告されている。
また、鍋を中心から離して使用すれば、同じく6.25μTを超える場合があると報告されている。
最悪のケース、不適切な鍋で調理中心から外れて使用した場合は、ガイドライン値の5-6倍になっている。
調理中は金属製のスプーンを使用しないこと。誘導電流が流れるから。
キーンという音がすると、20万ヘルツの音が聞こえる人は若い人にいる。
電子レンジに関してはWHOは情報シートを発行している。
電子レンジの使用でフリーラジカルが発生し影響があるのではないかという質問もあった。
通常は起こりえない。170度位まで温度を上げるとフリーラジカルは発生する。
数ナノ秒間だけ発生する。外に取り出したらフリーラジカルは消えている。
事前質問4:電磁波の熱効果について知りたい。電子レンジの外側と内側でどれくらい電力密度が違うのか。
内側がどれくらいの強さだから物が温まるのか。通常はW(ワット)数しか書いていないので、電力密度 等の電磁波の強さを知りたい。
A:電子レンジの外部の電力密度の規制値はある。
内部の電力密度に関しては、結論として、電力密度で管理していないのでは判らない。
事前質問5:IH調理器で不整脈がでたとの報道がありますが、どのように分析していますか。
A:先週あたりに産経新聞の話と思う。接触電流に関してはICNIRPなどの規定がある。
産経の元データはNITEの資料と思う。これによれば、誘導電流は1.5mA程度であり、規定値を超えなかった。これで不整脈が出るとは考えにくい。
事前質問6:携帯電話の電磁波と人体への影響・高周波利用設備関連・携帯電話の電磁波で脳がゆで卵になる、ポップコーンができるなどの情報が流れているが、どれくらいの強さでできるのか知りたい。
携帯電話機からの電波授受と携帯電話基地局からの電波とでは、人体への影響は分けて考えるべきと思いますが、実際はどうなのでしようか?
A:基地局と端末は別にする。WHOのFact Sheetがある。
これらから曝露による健康影響は考えにくい。
ポップコーンの話は、造作であることがはっきりしている。
事前質問7:2010年5月に発表されたインターフォン研究についてどう受け止めたらよいでしようか?
A:IARCの研究が出ている。WHOからFact
Sheet193が2010年5月に出た、見て欲しい。
事前質問8:電車やバスにおいて、「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください。
それ以外ではマナーモードを設定の上、通話はご遠慮ください。」が一般的なマナー/ルールであるが、実際には優先席付近を含めた車内や、他人の頭や体の近くでも平気で携帯電話を使っている人がいるなど、守られていない。
電磁界情報センターの情報でも概ね「影響なし」となっているが、このような行為を問題視しなくても良いのでしようか?それとも携帯電話のマナーは継続すべき(守ってもらうべき)なのでしようか?
A:ペースメーカに関しては影響がある。機器と機器との問題と人の健康影響とは別である。
事前質問9:スカイツリーの一般市民に与える影響はどうでしようか?
A:電波防護指針に適合することになるだろう。
事前質問10:医療環境の磁界強度の強弱
A:強い電磁波はMRIから出る、0.2から3テスラ。職業的曝露が考えられる。ICNIRPのガイドラインが出ている。
受益との関係もある、医療行為はWHOでは除外している。
事前質問11:電車やバスの車内における電磁波について
A:電車:本日配布した環境省のパンフレットに記載がある。
静磁界、低周波などが出る。ICNIRPのガイドライン以下である。
バスに関してはデータが見つからなかった。
事前質問12:電磁波で、体に良い電磁波・悪い電磁波はありますか?
A:ガイドラインを大幅に超えたら悪い。「良い」は治療目的に使うもの。
事前質問13:電磁波の生活面に及ぼす健康上の問題。・これまでに、電磁波による影響がどんな風に現れているのか?具体的な事例を知りたいです。
A(大久保):これまでの話ですむ。
事前質問14:電磁波から身を守る方法・商品を詳しく教えてもらいたい。
A:用心政策のWHO見解が出ている。携帯ではヘッドホンを使えなどが書かれている。
グッズに関しては把握し切れていない、個別に確認して欲しい。
事前質問15:電磁界の測定方法(測定規格、測定器の紹介)の部分では、世界の法規や規格等も含めてお聞きしたいと考えます。
A:IEC規格が定めている。
事前質問16:周波数帯毎に危険な可能性があるとされる部分などの情報やそれらの情報源の取得方法などのアドバイスがほしい。
A:放射線は危険。非電離放射に関してはガイドライン値以下では影響は確立されていない。
当センターのサイト、電話を利用して欲しい。
司会:フロアから、一般質問があれば受けたい。
Q(フロア):大久保先生の話の中に、因果関係と関連性に関して。もう少し判りやすく説明してください。
A:関連性とはある事象とある事象との間に関連性がある、アイスクリームの消費量と水難事故の多さに関連性がある、とする。
これは高温という要素がある。この場合は因果関係はない。
たばこの場合のように、原因と結果の間にメカニズムなども判明している場合は、因果関係があるという。
Q(フロア):道路の送電線を架空にするか地下埋設にするか検討中。違いは?
A:磁界は地下に埋設してもシールドされない。条件によって異なる。計算でも可能。電力会社に相談されたい。
Q(フロア):路上に変圧器が設置されると聞いたが、電磁波は?
A:変圧器からも磁界は出る。磁界の強さは差異はないのではないか。
Q(フロア):自動車でガソリン車とハイブリッドでは差異はある?
司会:何かデータはある?
A:2010年8月4日にアメリカのConsumer Reportで、ハイブリッドとガソリン車の電磁波測定結果が出ている。
詳細は不詳であるが、ガソリン車で最大3μテスラ、ハイブリッド車で最大1.4μテスラというデータが出ている。
Q(フロア):各被爆のデータは全身暴露に換算した平均値で示された。局所の方が意味があるのではないか。
A:個人的な見解であるが、私もそう思います。
やはり、ドライヤーの場合は頭部に来る、IHの場合は全身曝露でよいが、頭部に近い使用条件の機器では局所で考える。
Q(フロア):太陽光発電の電磁波は?
A:太陽光では直流発電なので静磁界は出る。ICNIRPのガイドライン値を超えない。
直流を交流に変換して後は、通常の交流配電と同じである。
大久保:最後に配布した環境省の「身の回りの電磁界について」を利用して欲しい。
これで終了。
注: 電磁界情報センターのサイトに、このセミナーのレジメと質疑応答の記録が公開されている。
関心のある方は、アクセスしてください。
まとめ:2010-11-25
2010年8月「科学裁判を考える」といういシンポジウムがあった。
主催者側はこれまで電磁波の健康影響に関連する裁判に係わってきている人が多いので、電磁波に関連するかも知れないと思い、聴講した。
1.シンポジウム「科学裁判を考える」の概要
以下は 開催案内などからの抜粋
主催:独立行政法人 科学技術振興機構(JST) 社会技術研究開発センター(RISTEX)
研究プロジェクト「不確実な科学的状況での法的意思決定」
後援: 大分県弁護士会 日本物理学会 科学技術社会論学会 日本臨床環境医学会
日時:2010年8月23日(月)17時30分〜20時30分
場所:弁護士会館 2階 講堂クレオ 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3
内容:
法と科学の接点には、科学者、法律家相互の不理解から、解決すべき問題が山積しています。
本シンポジウムは科学的証拠の取扱や専門家証人尋問に焦点をあて、諸外国の取り組みとの対比などから、法廷における科学の課題を議論します。
基調講演には、科学技術社会論の立場から「法と科学」の先駆的研究を続け、米国司法制度にも影響を与えてきたハーバード大学教授 Sheila Jasanoff氏、 科学的知見のより合理的な活用法である Concurrent Evidence の開発で知られるオーストラリアNSW州最高裁判所判事 Peter McClellan氏、専門家証人の体験から日本における課題を明らかにしてきた岡山大学大学院環境学研究科教授 津田敏秀氏の3名を迎えます。
パネルディスカッションでは、民事訴訟法を専門とする金子宏直氏を加え、法廷で科学をより適切に扱うための条件やシステム、そして、前提となるべき科学者と法律家の協働の可能性を考えます。「法廷における科学」に関心を持つ多く方の参加をお待ちしています(同時通訳付き)。
<<<<<<<<<< プログラム
>>>>>>>>>>>
開会の挨拶(17:30〜17:35)
基調講演(17:35〜19:00)
・「専門家証人の経験から」(17:35〜18:00) 岡山大学大学院環境学研究科教授(疫学、環境医学) 津田
敏秀 氏
専門領域:疫学、環境医学、根拠に基づく医学
・「科学者証人の新しい活用」(18:00〜18:30) "Australian
Experience of Concurrent Evidence。"
オーストラリアNSW州最高裁判所判事(Chief Judge
at Common Law) Peter McClellan (ペーター・マクレラン)氏
専門領域:専門家証人(expert witnesses)をはじめとするオーストラリアの司法制度
・「法廷における科学論争」(18:30〜19:00) "Perspectives on Scientific Disputes in Court"
ハーバード大学ケネディースクール教授(科学技術社会論) Sheila Jasanoff
(シーラ・ジャサノフ)氏
専門領域:科学技術社会論(Science and Technology Studies: STS)
休憩(19:00〜19:10)
・パネルディスカッション(19:10〜20:30)
パネリスト:オーストラリアNSW州最高裁判所 McClellan
氏
ハーバード大学 Jasanoff 氏(科学技術社会論)
岡山大学 津田 敏秀 氏(疫学、環境医学)
東京工業大学 金子 宏直 氏(民事訴訟法)
2.内容 BEMSJの取りえたメモから
1)聴講者は200名程度と推定。
2)開会の挨拶
市民の声からJSTとしてプロジェクトを立ち上げた。二つの文化、理系と文系の乖離に関して論議してもらう。
3)講演「専門家証人の経験から」 津田 敏秀
・日本語による講演 内容はレジメ(関心のある方はレジメを入手して読んでください)を参照。
・これまでの日本の裁判での事例として、タバコ会社への損害賠償裁判判決で「他方、疫学研究によって、ある要因と疾病との間の一般的な関連性が明らかになっても、それのみである個人の疾病罹患原因や診断内容を確定することはできない」「個人における因果関係を求める方法は、疫学的な方法とは基本的に異なるものである、疫学的方法では、どのような個人に対しても因果関係を当てはめようとすることはできない。」(横浜地方裁判所判決 2010年1月20日)となっている。
・科学的合理性を論議しにくい法廷である。
4)講演「科学者証人の新しい活用」ペーター・マクレラン<同時通訳付>
・レジメを参照。 和訳されており、わかりやすい。(関心のある方はレジメを入手して読んでください)
・科学が正しいか否かは別である。
・かつて弁護士をやっていて、プロセスを曲げる人がいることを知った。 当事者が裁判で勝利することを選んでいる。
・判事になってからの経験。10年前、肺がんになった女性の訴え、バーでのタバコの煙が原因と思われる。
受動喫煙と癌の関係は未確立であったが、裁判で女性が勝利した。論争では科学を正しく活用しなかった。
その後、タバコと癌の関係は大きく変った。タバコの規制のきっかけとなった。
・NSWの判事となった。環境問題を取り扱った。専門家証人を多用したが、問題を感じた。
そこで、専門家証人のプロセスを変えた。同時に多数の証人に質問を行う。また証人同士がお互いに直接論議できるようにした(対質)。
このプロセスがオーストラリアでは普及してきている。
5)講演「法廷における科学論争」シーラ・ジャサノフ <同時通訳付>
・真理だけではなく・・・
・法廷の中でのサイエンスは質が低くなる、ジャンクサイエンス。
<この講演内容は難解。ほとんどメモを取れなかった。>
6)パネルディスカッション
司会は弁護士:中村多美子と東北大:本堂毅が勤めた。
中村:素朴な質問を出して、パネリスト間で論議を行ってもらう。
中村:金子さん、日本の民事訴訟では陪審の制度は存在しない?
金子:はい、裁判制度には存在しない。
中村:裁判では鑑定人(裁判所が選定)制度と、専門家証人(原告・被告が連れてくる)があるが?
金子・日本での割合は、地裁レベルの数として、証人:1.4万件 鑑定人:約0.1万件の割合。
中村:専門家証人への尋問は?
金子:民事訴訟法規則では、証人の尋問の順序はつれてきた側の尋問、そして反対尋問、最後につれてきた側の尋問の順序となっている。
中村;裁判官が質問に答えてくれない、弁護士が質問に答えてくれないとされるが?
金子:裁判官は証人に質問できることになっているので、実務的には可能。
中村:証人同士で質問しあうことは?
金子:対質は認められている。
中村:しかし、対質は見たことはないが?
津田:見たことはない。
中村:なぜか?
津田:日本の医学者は議論をしない。裁判所でも議論はしない。学会でも議論はしない。質問してもいけないという雰囲気がある。
中村:コンカーレントエビデンスの実施時で、専門家証言でクライアントに不利な証人発言はなかったか?
マクレラン:そうした発言はあった。あっても乗り越えた。受け入れられた。
中村:最も受け入れられているポイントは?
マクレラン:システムに関して、外から変化を求める声・・・・・。
中村:日本ではコンカーレントエビデンスに似たシステムはあるか?
金子:コンカーレントに近い方式があった。東京地裁で、コンファレンス方式の鑑定がある。医療関係の訴訟で、数名の鑑定人・医学関係者が議論を行った。
中村:コンカーレントエビデンスであれば、科学者として証人として出やすいと感じるか?
津田:日本では、国立大学の職員は職務として義務として出ることになっているが、出る人は変わり者か、もしくは利益相反が濃い者と見られる。
コンカーレントエビデンスになれば、出やすくなる。
中村:科学の不確実性があると裁判では扱いにくくなる?
ジャサノフ:アメリカでは判事に権限があり、コンカーレントエビデンスをやらせることができる。
マクレラン:オーストラリアでは、民事訴訟では陪審での裁判は皆無になっている。 アメリカとは異なる文化である。
ジャサノフ:タバコに関する論争はジャンクサイエンスと見る。 タバコ産業は多額の研究資金で対応研究をやらせている。
マクラレン:・・・・・・
本堂:科学者は不確実なことは言えないという倫理観を持つ。 アメリカでは不確実さを相手の弁護士に追及される?
ジャサノフ:科学者と法律家が共通の協会を作って、活動している。・・・・・
中村:学際的なエリア・不確実性のあるエリアに関して、日本での専門家証人について
津田:弁護士がやってきて頼まれる。そして、中立のつもりで発言しても、依頼主の代理人側に立つと見られる。
中村:環境問題や学際的な分野で、どのようにして専門家証人を見つける?
マクラレン:環境問題を解決する専門家証人は裁判に来なかった。しかし。システムを変え、コンカーレントエビデンスに変えたら、参加しても良いといわれるようになった。アスベストに関して・・・・
ジャサノフ:どうやって見つけるか?ゴルフ場でどのクラブを選択するか、適切は判断基準がないことに類似している。
中村:法律家は科学の営みについて何を知っておくべきか?
ジャサノフ:科学は1枚岩ではない。・・・・・・
マクラレン:・・・・・
中村:最後にパネリストから一言。
津田:正確な情報を出していきたい。
金子:法律家と科学者はまずコミュニケーションが必要である。
マクラレン:・・・・・・
ジャサノフ:・・・・・・・・・・
7)このシンポジウムでは、最後まで「電磁波・・・・」の話題は出なかった。
記:2010-10-22
$1.以下の説明会が開催された。
開催案内からの抜粋
*********** ******************
総務省関東総合通信局は、社団法人電波産業会との共催により、「電波の安全性に関する説明会≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫」を下記のとおり開催いたします。
本説明会は、近年ますます身近に利用されている電波の性質や健康への影響について、行政、工学、医学のそれぞれの観点から、一般の方にも分かりやすく説明するものです。
1 日時 平成22年10月21日(木曜日)13時30分から16時30分まで
2 場所 大宮ソニックシティ 国際会議室
3 主催 総務省関東総合通信局、社団法人電波産業会
4 講演内容
講演1 「安心して電波を利用するために」 総務省 関東総合通信局 電波監理部 電波監理部長 横田 徹
講演2 「電波の生体・電子機器影響の基本と実験研究」 北海道大学 大学院情報科学研究科 教授 野島 俊雄氏
講演3 「携帯電話のヒトへの影響に関する研究の動向」 福島県立医科大学 医学部神経内科講座 教授 宇川 義一氏
5 定員 170名
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$2.参加者
・主催者発表では170名の募集に対して応募が多く、185名に参加証を配信した。
$3.講演などの概要 BEMSJのメモから
開会の挨拶 関東総合通信局長 吉崎
・電波利用に関して、ちょっとした懸念として、健康影響がある。
講演1 「安心して電波を利用するために」横田 徹に代わって小原勝明
・一般的な説明のみ
詳細はレジメ参照
講演2 「電波の生体・電子機器影響の基本と実験研究」 野島俊雄
・「光(電磁波)に対して地球の生物はレセプタ(網膜)を進化の過程で獲得した。
極めて高感度の受信機、だから宵の明星でも見える。
しかし、電波に関してはレセプタは持たないから、弱い電波を感知することはできないと考えられる」というのは野島の仮説である。
・電離放射線でなくても、例えば超音波は染色体とDNAの2重鎖を切断する。非電離放射線ではどうか?
非電離放射線の周波数によっては振動し、切断が起こるかもしれない。
もしくは、傷つけられた遺伝子の修復機能に電波が影響するかも知れない。
しかし、人などは多細胞動物であり、細胞・組織の粘性が振動を妨げるので、切断などが起こるレベルより小さいレベルで、切断が起こる前に、発熱などの作用が起きるはずである。
これらに関しては細胞実験や動物実験を行えばよい。
細胞実験で、実験装置の換気装置の低レベル低周波音が細胞の増殖性に影響した、という報告はある。
・三菱化学研究所でNTTドコモらとの共同研究では、4台の実験装置(電波暗室など)を準備した。
結果は報道発表したので、周知のこと。この実験には30億位の金がかかった。
・WHOが2010年10月に公表した見解がある。
参照URL:http://www.who.int/phe-emf/about/whatisEMF/en.index1.html
これによれば,
「この30年間に約25,000件の論文が公表された。これらの情報に基づき、現時点での証拠が低レベルの電磁界曝露による如何なる健康影響の存在を確認していない、とWHOは結論する。」とある。
ここで、低レベルとは、防護指針などの規定するレベルを超えないレベルのことである。
講演3 「携帯電話のヒトへの影響に関する研究の動向」 宇川義一
・脳神経が専門なので、脳神経と携帯電話の電波曝露の研究を行っている。
・様々な研究を行っているが、これまでに「悪影響」は見つかっていない。 詳細 レジメ参照。
・携帯電話に電波曝露が精子に影響するという報告がある。
レジメにはないが、携帯電話端末を精子を入れたシャーレに近接して、実験を行っている例を紹介する。
この実験条件は、曝露条件が悪すぎる。日本ではこうした条件を改善して、きちんとした曝露条件として、研究を行う予定である。
以上 関心のある方は、レジメなどを入手して読んでください。
記: 2010−11−16
$1.以下の講演会が開催された。
講演会の開催案内からの抜粋
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電磁界情報センター特別講演(ICNIRP議長パオロ・ベッキア氏)開催のご案内(11/4東京)
〜超低周波電磁界に関するガイドラインの改定について〜
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)では、電力設備や家電製品などから発生する50/60Hzを含む超低周波電磁界のばく露制限のためのガイドラインについて、現在、改定作業を進めています。
そこで、電磁界情報センターでは、同委員会の議長であるパオロ・ベッキア氏をお招きし、ガイドラインの基本的な考え方やガイドライン改定の概要などについて、講演をいただくこととしました。
電磁界の健康影響に関心を持たれている方、ガイドラインについて詳しく知りたい方など、多くの皆様のご参加をお待ちしております。
なお、本特別講演では、上記テーマに特化した内容で実施いたします。電磁波全般の基礎的な内容についての説明・質疑応答は予定しておりませんので、予めご了承下さい。
記
1.日 時:平成22年11月4日(木) 13:30〜17:00
2.場 所:日本科学未来館 みらいCANホール
3.定員:250名(参加費無料)
4.プログラム(案)
13:30−13:40 開会挨拶、パオロ・ベッキア氏の紹介 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
13:40−15:40 超低周波電磁界に関するガイドラインの改定について(仮称)
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP) 議長 パオロ・ベッキア氏 (Dr. Paolo Vecchia)
※講演は、英語⇒日本語の逐次通訳にて行います。
15:40−15:50 休 憩
15:50−16:50 質疑応答
※質疑応答は、日本語⇔英語の逐次通訳にて行います。
16:50−17:00 閉会挨拶 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
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$2.講演会の内容 (BEMSJのメモから)
1.開会挨拶 大久保千代次
1998年のICNIRPガイドラインは近々改訂版が発行される。このガイドラインの趣旨などに関して説明してもらう。
この講演は8月末に依頼した。予想では11月上旬であれば、改定ガイドラインは刊行されていると見込んだが、現実にはまだ発行されていない。
具体的な数値などは公開できないが、考え方などを説明してもらう。
2.超低周波電磁界に関するガイドラインの改定について パオロ・ベッキア氏
・ICNIRPの本委員会のメンバー(委員)の数は14名に限定されている。
それゆえに、常設の専門委員会が4つあり、各8名までのメンバーで構成されている。
・電磁波スモッグという用語で、電磁波は誤解されている。
場合によっては各種機器からの様々な電磁波を纏めて「電磁波」として論じて、「電磁波の恐れ」としてひろまっている。
・明確にしなければならないのは、電磁波は周波数によって、物理特性によっても、影響は異なることである。
・周波数の範囲で考えても、10の12乗に及ぶ広範囲なものはEMF以外に存在しない。50Hzと800MHzでは大きく異なる。
・50Hzの電磁界の場合、送電線からの電磁波もあるが、その他の発生源も除外しえない。
・ICNIRPガイドラインのCriteriaは、科学に限定し、証拠に重み付けすることによる。社会・経済的な要素は入れない。
・科学では絶対的なゼロリスクとはいえない、信頼性をもって高いか低いかリスクで決める。
・様々な研究結果の批判的レビューを行う。レビューでは全ての論文を対象とするが、それらは全て同じレベルの研究とはみなさない。
・疫学は観察の科学であり、統計でもある、疫学には限界がある。特定の要素との関連性を観察する。
特定の疾病と曝露との関連性があるが、因果関係(原因と結果)があるとは言い切れない。
その他の手法によるサポートが重要となる。例えば、ヒトボランティアを対象とした研究によるサポートなど。
動物実験で支持できれば、疫学結果は信頼性が上がる。
・動物実験の結果は、細胞実験によって担保されていなければならない。
・疫学の結果 エビデンス(事実として得られたもの)はプルーフ(影響ありと証明されること)と同じではない。
・疫学の「統計的な関連性」は、「因果関係の立証」とイコールではない。
・ICNIRPとしては、Criticalな影響を見出して、それからガイドラインを作る。
・新しい改定版(低周波)のガイドラインはあと数週間で刊行される。
・確立した閾値のある影響に関しては、これに基づいてガイドライン値を定める。
・確立した閾値のない影響に関しては、リスクと利便性のバランスをとる。この手法は電磁放射線の防護規定に利用されている。
・確立していない影響に関しては、プレコーション方策を用いことができる。しかし、WHOもICNIRPもこのプレコーション方策は採用していない(三浦注:この部分は翻訳がおかしかった)。どの方策を採るかは科学による。
・確立された影響としては、体内誘導電界・誘導電流による細胞組織の刺激作用がある。
・基本制限の設定には、Prudent Approach(慎重な方策、注:予防原則ともいえる)が考慮されている。
・科学的な論拠に関する不確実性があるので、これに対処するために、低減係数(安全係数)を設定して曝露制限値を提案している。
・確立された閾値のレベルから低減係数をかけて編みだした限度値以内、ガイドラインの規制値内の曝露は「安全な曝露」である。
「完全に安全」とは言い切れないが、相当な精度を持って「安全」とするレベルである。
こうした論点から、1998年のガイドラインを設定した。
・改定版ガイドラインはHealth Physics誌2010年12月号に掲載される予定。
・数値は話せないが、改定版の特徴などの以下に話をする。
・確立した論拠として低周波磁界では「磁気閃光」を採用した。
健康影響ではないにしても、脳内の神経系への影響があるかも知れないという観点から、採用した。
これもICNIRPにおけるPrudent Approachを採用している例と言える。
・長期曝露に関して、1998年のガイドラインでは疫学の結果は不採用とした。
2010年の改訂版でも、証拠としては弱いので、Evidenceとはせず、1998年と同じ立場であることを確認した。
・電磁波過敏症に関しても、不採用である。
・社会的な影響(プレコーション的な政策など)は、ICNIRPの権限外である。以下は個人的な見解である。
・2001年のIARCの発ガン判定(低周波磁界2B)に関しては、承知している。
・プレコーション的政策を実施した場合、効果が逆になっている例・不安を増加させることもある。
プレコーション的政策を実施することが、リスクの存在・危険性を認定したと受け止められるからである。
これは科学的な論文にも紹介されている。2006年Wiedemannの研究の例がある。
$3 質疑応答
司会(大久保):ガイドラインはまだ公表されていない。公表と同時にファクトシートが出される予定。
公表されたら直ぐに、ファクトシートだけは電磁界情報センターで翻訳して公表したい。
司会:事前質問に対する質疑応答を行う。多くの質問を整理してある。1)ガイドライン改定の動機について。講演中にあったので、割愛する。
2)ガイドライン改定作業時の主な論点 @基本制限に用いる物理量について、
A:体内誘導電流による基本制限が、体内誘導電界に変わった理由は
・科学的に適切である。
・計測でも実施上、有益である。
・生物学的な影響で、直接的な影響が体内電界であることが明らか。これは前回のガイドライン策定時でもわかっていたが、当時は科学的な十分な計測、数学的解析のモデルが十分なレベルではなかった。
しかし、現時点では、時間の経過とともに進展してきたので、現在は推定や計算が可能になった。
司会:A参考レベルについて、まだガイドラインが公表されていないので、現在は質問出来ない。
B電界と磁界の同時曝露について
A:電界と磁界を同時加算する事については、ドラフト案にあり、新しいガイドラインにも採択されている。
科学的にも正当性があり、正しいと考えている。その両方の参考レベルのコンプライアンスを取る事について、不可能なほど厳しいものではない。
基本制限については、慎重な分析が必要となるが、新たな研究や計測モデルが進展して、可能となっている。
司会:C長期ばく露の影響(小児白血病)について、これに関しては私から、参考情報を出します。
アールボムらの後に、いくつかの新たなプール分析が行われた。
1ヶ月ほど前の発表、カイフェツの研究。兜先生の報告も入れた上で、分析している。結果は、オッズ比の値は若干弱められているが、高いレベルではリスク比は高くなっているので、危険度は減ったが、方向性としては同じであろう。
これは新しい知見である。近日中に電磁界情報センターより解説記事を出す。
司会:D電磁過敏症について、講演の中で触れているので質問としては割愛。
司会:(3)2009年改訂案へのパブリックコメントの取扱い@パブリックコメントの主な内容については?
A:100を超えるコメントを頂いた。そのうちの支持する、しないといった単純なコメントを除いたか数は70位である。
関係ある内容としては、「電磁界の神経系についての影響をどう捕らえて行くのか。」また「導入された低減係数」については、相当議論してきた。
司会:AパブリックコメントへのICNIRPの対応について、B上記の公表について
A:A、BともICNIRPとしての対応の具体的な内容などは公表はしない。
過去のガイドライン作成では、限られた国際機関、数人のエキスパートのみで行われていた。
今回の改訂版では、それを公開方式のコンサルテーション(協議)とした事は非常に大きな効果があったが、そのコメントを議論・考察するのに6ヶ月かかった。
どのような議論をなされたかについては事細かに説明出来ないほど複雑であり、1冊の本が出来てしまう。
また、要約してもおかしな誤解を招いてしまうか知れない。よって公表はしない。
司会:(4)今後の動向 @新ガイドラインの公表時期について、 これは講演の中で説明済みなので割愛。
同じくAICNIRPの今後の活動についても 講演の中で説明があったので、割愛。
司会:(5)ガイドライン基本的な考え方 @曝露時間について
A:曝露時間をどのように捕らえる(職場環境の労働時間か、生涯を通じて)かによるかと思うが、職場環境では、曝露時間は考慮されない、1秒の数分の1で影響があるので、一瞬たりとも超えてはならない。慢性的な曝露、長期的な影響に関しては、基本制限の規定には取り入れていない。
司会:A中間周波電磁界ばく露の影響について
A:IH調理器の20〜90kHzが該当する。旧1998年のガイドラインでは、低周波と高周波の値からの外挿で決めた。
新しいガイドラインで中間周波数帯についても触れている。
レジメ(P.17上)のグラフで数100 kHzの帯域での末梢神経刺激に関する新しい研究結果を示している。
こうした新研究を元により精度の高い限度値を示している。
司会:B子供や妊婦への影響・防護について
A:ICNIRPガイドラインの基準値の設定では、Conservative(控えめ)な推定値を用いることによって、ICNIRPの勧告は全人口をカバーすることが出来る事を意図している。全ての人にあてはまるものと考えている。
妊婦への影響についての研究が相当進んでいる、特にMRIからの影響について。結果が出たら必要に応じてガイドラインに採用していく。
司会:C安全係数(1998年)と低減係数(2010年)の違いについて
A:安全係数、低減係数も全く同じものである。
しかし用語として、安全係数は使わない事を推奨するとなっている。
それは言葉の意味より、これを使えば安全が保証される、使わなければ保証されないと、捕らえられる危険があるからである。
低減係数を導入しているのは、科学的な不確実性を担保するものと言うことをご理解頂きたい。
司会;Dプレコーション(念のため)という概念について これは講演の中で、説明済みなので割愛。
司会:(6)その他 @プレコーショナリー政策に基づくICNIRPガイドライン以外の基準採用について
A:プレコーショナリー政策として政府が、ICNIRPの提案値とは違った採択をする可能性がある事は十分承知している。ICNIRPが、政治的な決断に関与する意図も無いし、出来ないと思っている。
ただし、これはICNIRPだけでなくWHOの立場としてでもあるが、ICNIRPとは違う基準を取り上げたことに対して、科学的な根拠が対立する様なものではあってはいけないと言う事を強く主張したい。
それらが対立する事は信頼性を損なうものになってしまうので、別の形でのプレコーショナリー対策を取るのは良いが、対立してはいけない。
司会:A電磁界の職業者曝露露に関するEU指令、公衆曝露に関するEC勧告について
2008年4月に実行する様にとの勧告が、2012年4月に延期されたことについて、関与しているのか、する予定はあるのか。
A:ICNIRPはこの指令のプロセスに、アドバイス・情報提供をすると言う形では関わっているがそれだけで、指令の実際の作成には全く関わっていない。
司会:B静磁界のガイドライン(2009年)について
これは大阪会場での質問。今回のテーマである、超低周波電磁界に関するガイドラインとは主旨が異なっているので、割愛。
以上で散会
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
記: 2010−12−7
$1:以下のシンポジウムが開催された。
開催案内からの抜粋
********************* ************
電磁界の健康影響に関するシンポジウム
近年、送電線等の電力設備等から発生する、電磁界の健康への影響についてさまざまな情報が発信されています。
本シンポジウムは、行政、専門家による講演及び行政並びに各分野の専門家によるパネルディスカッションを通じて、電磁界の健康影響に関する基礎知識や国内外の最新の情報を正確、かつ、分かりやすくご紹介するものです。
今年度は、東京都で開催いたしますので、この機会に是非ご参加頂きますようご案内申し上げます。
◆日時:平成22年12月6日(月)
◆場所:国立オリンピック記念青少年総合センター/カルチャー棟大ホール
◆ プログラム(予定)
1. 主催者挨拶
2. 行政における取組み(講演)
3. 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインの見直しについて(講演)
休 憩
4. パネルディスカッション
休 憩
5. お寄せいただいた質問への回答
◆ 講演者・パネリスト(予定)
•経済産業省 原子力安全・保安院
•総務省 電波環境課
•多氣 昌生 (首都大学東京大学院 教授)
•飛田 恵理子 (東京都地域婦人団体連盟)
•宮越 順二 (京都大学 生存圏研究所 教授)
•山口 直人 (東京女子医科大学 教授)
•大久保 千代次 ((財)電気安全環境研究所 電磁界情報センター 所長)
•三島 和子 (セコム(株)IS研究所)コーディネーター
◆主催: 経済産業省 原子力安全・保安院
◆事務局: 財団法人 電気安全環境研究所
◆参加費: 無料
************** ****************
$2.シンポジウムの内容 BEMSJのメモをもとにまとめたもの。
1.参加者数 約250名
2. 主催者挨拶
・電磁界の健康影響に関する不安解消を目的とする。本日は総務省からの講演もある。
3. 行政における取組み(講演)「原子力安全・保安院の電磁界に係る取り組みについて」原子力保安院 佐藤室長
・国内の磁界規制に関しては作業中。
・その他はレジメを参照。
4.行政における取組み(講演)「電波の安全性に関する総務省の取組み」総務省山田課長
・内容に関してはレジメを参照。
5.(講演)「国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインの見直しについて」首都大学東京 多気教授
・ガイドラインに定める曝露限度値以下は「安全な曝露」である。
・改訂ガイドラインには「低減係数」に関する明確な定義が記載されている。
・従来は中枢神経(BEMSJ注:脳や脊髄の神経)のみであったが、改訂版では末梢神経系(BEMSJ注:脳や脊髄以外の神経系)の刺激作用を基本制限の論拠とした。
・不均一な電磁界への曝露:20cm以上の距離では空間分布の平均をとる。(従来は距離の制限はなく、空間分布の平均をとる)。極近傍では基本制限で曝露評価を行う。
・ICNIRPの委員として、2008年からは疫学者が3名参加している。
そうした中で、IARCの低周波磁界の発がん性判定2Bがあったとしても、改訂ガイドラインの論拠とする科学的に確立した証拠とはみなさなかった。
6.パネル討議
司会:三島です。
大久保:よろしく
多気:よろしく
山口:疫学をやっています。
宮越:京大で細胞実験を行っています。
飛田:質問の手助けをします。
経産省:主催者です。
司会:WHOのEMFプロジェクトの目的とICNIRPの改訂ガイドラインとの関係について
大久保:1996年にWHOのEMFプロジェクトは始まった、リスク評価が目的である。リスク管理はWHOの管理外にある。リスク管理の中のガイドラインの制定に関してはICNIRPが担当する。
飛田:WHOの見解の中に、低レベルの磁界の曝露逓減は効果が不明とあるが?
大久保:IARC判定で低周波磁界は疫学の結果から2Bと判定されているが、全体として因果関係があるとみなせるほど強いものではない、とある。
司会:疫学という言葉が出たので、
山口:「限定的な証拠」という意味を説明する。リスクの有無と結果に相関関係があるかで4つのブロックを作ると、ちょうど真ん中に来る という状況。「十分な証拠」となるためには相対リスクが5以上、メカニズムの仮説(提案レベルでも可)がある、という条件が必要となる。
宮越:低周波電磁界に関して、生活環境レベルでは細胞・動物実験結果から、健康影響は極めて小さい。
飛田:研究を進めてほしい。
飛田:がん以外の、その他の健康影響は?
大久保:WHOのファクトシート322にあるように、「その他の影響は小児白血病についての証拠よりさらに弱い。」と。
司会:小児白血病のリスクについては?
大久保:電磁界以外の要素とリスクの比較を示す。曝露低減した時の損失余命の研究がある。受動喫煙(全死亡):120日 カドミウム:0.87日 商用周波電磁界:0.02日であり、リスクは小さい。しかし、リスクに関する認知度は、一般の人にとっては大きく異なり、喫煙より電磁波が危ないと感じている。
司会:ICNIRPの改訂ガイドラインで50Hzと60Hzでの磁界限度値が同じになった理由は?
多気:外部磁界による体内誘導電界は周波数に比例するが、論拠となった磁気閃光では60Hzでの感知値が高いので、結果として磁界曝露レベルは同一になった。
飛田:磁界限度値が100μTから200μTになったが、社会的な影響は?
多気:ICNIRPは社会的・経済的な要因はガイドライ値の設定では考慮しない。今回より正確なモデルの設定によって定めたガイドラインである。
飛田:メーカや業界などはうまく対処してほしい。
司会:スイスでは1μTといった厳しい規定があるが?
多気:スイス・イタリアでは「念のための方策」が行われている。スイスではimissionとして曝露レベルを考え、ICNIRPガイドライン値を採用している。そして、Emissionとして、設備からの放射レベルを規定している。この放射規定レベルに到達できなければ、申請をすればよいだけである。
大久保:WHOは0.4μT・・・を法規制に取り入れる合理的な意味は認められない、と言っている。
司会:プレコーションと予防との違いは?
大久保:英語ではprevention(科学的に効果が確定したもの)precaution(科学的に効果が確定していないもの、未然防止とでも訳すべき)では明らかな意味の違いがあるが、日本語ではともに予防と訳される。
飛田:社会のありようとしては、傾向がうかがえるのであれば、配慮してほしい。
飛田:日常の電磁界曝露のレベルは?
多気:レジメにあるように、家電製品からの電磁界測定の例を示す。ドライヤーは25μTといった値である、頭部に近接して使用する、近接した場合の磁界レベルの曝露評価は改訂ガイドラインに基づき、基本制限で評価を行えば良い。
飛田:電子レンジなどの測定は30cmの距離で行っている。実際はもっと近距離で使用している、こうしたことを考えてほしい。
多気:30cmでの測定は、金属に近接しすぎると測定器が正しく動作しなくなるから。ご指摘ありがとう。
司会:これでパネル討議は終了です。
7.質疑応答
フロアからの質問ではなく、事前に受け付けた質問にのみ答えるという形であった。
司会:事前に受けた質問に対して、答えてもらう。
司会:携帯電話の電磁波と、基地局からの電磁波の健康影響に関しては?
A山口:レジメにあるように、インターフォン研究の結果が出ている。
A宮越:レジメにあるように、国際研究動向として、細胞実験などをまとめるとDNA切断などの影響はおおむね否定的である。熱ショックタンパクの発現で、発熱しない条件下で陽性報告はある。動物実験の結果では、体温が上昇しないレベル(SAR 4W/s以下)ではBBBへの影響などはないだろう といえる。
IARCによる「携帯電話からの高周波電波の発がん性評価」は2011年5月末に実施することが内定した。宮越はこのメンバーに内定している。
A大久保:基地局に関してはWHOのファクトシートがあり、基地局からの電波曝露はOKになっている。
司会:携帯電話基地局からの電波強度と距離の関係は?
A総務省:レジメで説明したが、この例では200m先で最も強く、真下では弱い。
司会:心臓ペースメーカへの影響は?
A総務省:携帯電話をペースメーカに密着させれば駄目である。
司会:家庭での無線LANの場合は?
A総務省:無線LANの電波は弱い、電波防護指針を満たしている。
司会:IH調理器に関しては?
A宮越:中間周波電磁界に関しては研究がスタートしている。韓国でも研究が行われている。総じて現時点では否定的である。
司会:電磁波過敏症に関しては
A大久保:WHOのファクトシート296がある。電磁界への曝露と電磁波過敏症との科学的な根拠は存在しない とある。
司会:電磁波防護エプロンなどの効果は?
A多気:物理的な説明では、電界はシールド材の裏側では効果がある。磁界で効果はない。製品の説明では効果があるという数字があっても、着用した条件下ではその効果が出ない。心理的な効能としてエプロンを着用することで安心するかもしれないが、エプロンを着用しなければ危険であるということで不安を増強させるかもしれない。
A大久保:WHOのファクトシート201にもあるが、WHOではそうしたエプロンは推奨していない。
司会:携帯電話や家電機器からの電磁波の適切な測定器は?
A多気:校正された測定器を使用すること。簡易的な測定であれば、安価な測定器もある。携帯電話と家電では周波数が違いすぎて、同じ測定器で測定することは難しい。
司会:電気設備技術基準への磁界曝露規定の導入の状況は?
A経産省:2年前にWGで提言を受けた。@ICNIRPのガイドライン値の導入、A測定法として国際規格の採用 である。測定法の国際規格はIECで昨年8月に発効した。これを受けて現在JIS化の作業中である。こうしたことから本年度中には取り込みたい。
飛田:最後に、ありがとう。
司会:これで質疑応答を終了します。
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
記:2010−12−16
$1.以下の説明会が開催された。
開催案内からの抜粋
********************* ************
電磁界情報センター「新ICNIRPガイドライン説明会」開催のご案内
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、2010年11月16日、新たな低周波電磁界に関するガイドラインとファクトシートを、ICNIRPホームページに公表しました。
電磁界情報センターでは、新ガイドライン制定の経緯やその概要、特に旧ガイドラインからの評価方法の変更や制限値・参考レベルの算出方法などについて、首都大学東京の多氣先生、電力中央研究所の山ア先生をお招きし、新ガイドラインに関する知識を深めるための説明会を行うこととしました。
電磁界の健康影響に関心を持たれている方、新ガイドラインについて詳しく知りたい方など、多くの皆様のご参加をお待ちしております。
なお、本説明会の性格上、電磁波全般の基礎的な内容についての説明・質疑応答は予定しておりませんので、予めご了承ください。また、説明会の事前質問を12月8日まで受け付けておりますので、ご質問がある方は下記事務局宛にお寄せください。
記
1.日時:平成22年12月15日(水)13:30〜16:00
2.場所:日本科学未来館 みらいCANホール(住所:東京都江東区青海2-3-6)
3.定員:250名(参加無料)
4.プログラム(案)
13:30−13:40 開会挨拶・事務連絡 司会 電磁界情報センター 倉成 祐幸
13:40−14:00 新ガイドライン制定の経緯について 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
14:00−15:00 新ガイドラインの概要について 首都大学東京大学院教授 多氣 昌生 氏
15:00−15:10 休憩
15:10−15:30 制限値・参考レベルの算出方法と新旧ガイドラインの比較 電力中央研究所 上席研究員 山崎 健一 氏
15:30−16:00 質疑応答 コーディネーター 電磁界情報センター 世森 啓之
16:00 閉会
$2.説明会の内容(BEMSJのメモから)
1.新ガイドライン制定の経緯について 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
・新ガイドラインでは中枢神経と末梢神経という用語が出てくる。中枢神経とは脳と脊髄の神経、末梢神経とは、中枢神経につながっている神経、という意味である。
・その他に関しては、レジメを参照。
2.新ガイドラインの概要について 首都大学東京大学院教授 多氣 昌生
・ICNIRPのガイドラインは絶対安全なのかということが言われる。現在わかっている科学的な確立した知見に対してガイドラインを設定したものであり、まだ未確定な、不確実な事項に関してはICNIRPのガイドラインの対象とはしていない。
・ICNIRPの委員は、3期12年以上の長期にわたって委員となることはできない。
・現在の委員として、疫学者が3名も入っている。スウェーデンのフェイヒティッヒ、オーストラリアのGreen、英国のSwerdlowである。
こうした疫学者も参画して、今回の低周波電磁界ガイドラインを策定した。
慢性影響に関して疫学の結果(磁界による小児白血病のリスク)に関心があるが、疫学者も含めた論議の結果が、この新ガイドラインである。
(BEMSJ注:フェイヒティッヒはスウェーデンでの磁界と送電線の疫学で、小児白血病のリスクを見出した研究者)。
・高周波のガイドラインは2013年の見込み。
・1Hz以下の電磁界に関しては、別途ガイドラインを策定する予定。2-4TのMRI診断時に頭を動かすとめまいや磁気閃光を感じる場合などがあり、対処のため。
・四肢電流による影響は、高周波でのハザードであるので、100kHzまでの新ガイドラインでは、無視した。
・ICNIRPの議長であるベッキア氏から頂いた図を示す。曝露限度値以下の曝露は「Safety Exposure(安全な曝露)」という説明になっている。
・これまでは安全係数という表現であったが、今般は低減係数と表現した。動物実験から人への外挿による不確実性などに対応するため、という明確な定義が作られた。したがって、人を対象とした実験で、個人差も少ない磁気選閃光をもとにして定めたガイドライン値に関しては、低減係数は1とした。
・電磁界の間接的な影響である接触電流に関しては、今回は、あまり深く論議はされていない模様。
・ドラフトの発表時点では50Hz磁界の参考レベルは100μTであった。これが200μTに変更にあったのは、詳細なドシメトリの検討結果によるものである。
・その他はレジメを参照
2.制限値・参考レベルの算出方法と新旧ガイドラインの比較 電力中央研究所 上席研究員 山崎 健一
・電界と磁界は加算的に扱わない。
・詳細はレジメを参照。
3.質疑応答 事前質問に対する質疑応答
Q:新旧ガイドラインの違いは? 講演で説明済であるが、補足は?
A多氣:大事な点は、磁気閃光を根拠にしたこと。ドシメトリが進歩したので、ドシメトリの進歩によって曝露限度値が変わった、ということ。
Q:見直しの根拠は何か? WHOのEHCなどが根拠となっているのか?
A大久保:長期曝露に関しては、WHOで言っているように「磁界の小児白血病のリスクは因果関係がない」としたことなどがある。
A多気:1998年はドシメトリの研究が数値解析法に移行し始めたばかりの時期で、解析に数値エラーなどが混じって、厳しい限度値を提唱した。こうしたことから、中間周波数に関しては、1999年頃にICNIRPとしても「見直しが必要・修正されるだろう」という声明を出している。今回はこうしたことから修正を加えた。
Q:ドラフト案から最終版になって限度値が変わった理由は? 講演で説明があったが、補足することはあるか?
A多氣:100μTが200μTに変わったことに関しては、経緯はわからない。何か圧力があってゆるめたとは思えない。ドシメトリの研究の進化、99%タイルをとるといったことからの見直しの結果であろう、としか言えない。
Q:25Hzから10MHzの周波数帯域で限度値が緩和された理由は?
A多氣:生物学的な論拠に差異はない。内部電流密度から内部電界強度に基本制限が変わったことと、誘導電流の解析では局所的に過大になる傾向があったことなど。
A山崎:旧ガイドライン策定頃のStuchlyの研究論文では、過大な評価になっていたのかもしれない。
Q;100kHz以上の周波数に関してどのように対応すべき?
A多氣:筋肉か、脂肪かなどの組織によって、100kHz、1MHz、10MHzでは内部電界が支配的か熱的なSARが支配的か異なってくる。低周波では瞬時値で、高周波では6分間平均ということもある。1MHzを超えるとSARが支配的になる傾向がある。瞬時値では新ガイドラインの考え方をし、時間平均ではSARが支配的になるかもしれない。
Q:50Hzでも60Hzでも参考レベルが同じになった理由は? これは講演で話があったので割愛。
Q:ガイドライン値は安全な曝露値といえるのか? この質問に関しては、多氣先生の講演の冒頭で「ガイドラインは確立した影響に基づくもの。研究の成果で新たな確立した研究が出るかもしれないので、断定はしていない。」とあるので、詳細は割愛。<BEMSJ注:そういいながら、ICNIRP議長ベッキア氏と同じ安全な曝露という説明をプレゼンの中で行っている。>
Q:20cm未満の距離における評価法は? に関しては講演の中で、「解析モデルを作ればよい。」とあるので、割愛。
Q:電界と磁界の影響の加算方法について? に関しても講演の中「新ガイドラインでは、加算は不要とある。」とあるので、詳細論議は割愛。
Q:旧ガイドライン値の誘導電流と、新ガイドラインの内部電界強度を換算することは可能か?
A山崎:このままでは比較できない。・・・・・
A多気:新ガイドラインに関するファクトシートで、比較しては駄目と書いてある。解析評価などの条件が異なるので、単純に換算することはできない。
Q:磁気閃光は人に有害か?
A多氣:個人的には無害とは言い切れない。磁気閃光の実験を行うと、被験者は頭痛などを訴える。
ただし、そうした実験では磁気閃光の閾値を大きく超えた強度でも実験しているので、そうした強度への曝露が問題なのかもしれない。
ICNIRPの委員はこの磁気閃光が大きな健康影響とは捉えていない傾向にある。
Q:接触電流の値が緩和されていない理由は?
A山崎:新たな知見がなかっただけかもしれない。
A多氣:電子機器などの漏洩電流を参考にした程度。接触電流をガイドラインで取り上げるのは好ましくないのかもしれない。
Q:接触電流の測定で手がぬれた時は?
A山崎:測定法・手順はICNIRPの範囲外。
Q:新ICNIRPガイドラインによって、IECの測定規定なども変わる?
A山崎:IECが規定する電磁界曝露に関する測定法は、曝露ガイドラインに依存しないことになっている。
A多氣:EUの指令などでは、旧ICNIRPのガイドライン値がそのまま数値として取り入れられている。こうした指令の中に取り込まれた数値がいつ変わるかは・・・・・。
Q:WHOの低周波に関するファクトシートは、今回のICNIRP数値の変更に伴って、数値を読み替えてよい?
A大久保:読み替えてよい。
Q(フロア):経産省の電力WGでの磁界制限はどうなるか? 100μTを200μTに変更になる?
A大久保:それは行政の判断であろう。
司会:それではこれからフロアからの質問に答える。
Q(フロア):山崎さんの説明の中に、「頭部および胴体の全組織」という表現があったが、胴体といえば体幹に限定されるが、新ガイドラインでは、全身が対象になっているのでは?
A山崎:指摘ありがとう、Bodyをどう訳すかだが、胴体といえは四肢を含まないとなるので、「全身」という表現がよいかもしれない。
Q(フロア):低減係数は従来5で一定であったが、新ガイドラインでは一定ではない。また、IEEEとの関係は?
A山崎:IEEEとの差異は、ドシメトリのモデルの違いによる。IEEEはシンプルな楕円体で解析、解析界のある条件での規定づくりを旨としている。新ICNIRPは詳細なボクセルモデルである。
A多氣:低減係数に関して、低減係数の定義にもあるように、人を対象とした研究である磁気閃光に関しては低減係数は1である。その他は、同じ係数を使うのが基本であろうが、よくわからない。議長のベッキア氏に聞いてみたい。
Q(フロア):癌が増えている、ICNIPは癌に関しては因果関係がないと言っている。安心して生活ができない。電磁界情報センターは、中立的な機関として働け。
司会:癌に不安という意見として、受けます。
Q(フロア):EUの指令に関して、EN規格番号か何か参考情報がほしい。
A山崎:EUはあまり知らないが、IECであれば、家電は62233、電力設備であれば62110です。
司会:以上で終わり。
関心のある方は、講演会のレジメを入手して読んでください。
記:20110206
$1.以下のフォーラムが開催された。
電磁界情報センターの開催案内より抜粋
************ **********
第4回電磁界フォーラム開催のご案内(2/4東京) 〜身の周りの電磁界について理解を深めよう〜
電磁界情報センターでは、電力設備や家電製品などから発生する50/60Hzの電磁波(電磁界)に関して、さまざまな視点から議論する機会を設け、11回シリーズの電磁界フォーラムを開催しています。
第4回目のテーマは「身の周りの電磁界について理解を深めよう」です。
私たちの身の周りにはどのような電磁界が存在しているのか、また、私たちは電磁界とどのように共存しているのかということについて、自然界で発生する電磁界、人工的に発生する電磁界、電磁界との共存という3つの視点からそれぞれ専門家を招いて説明いただくとともに、参加者の皆さまとの質疑応答により、理解を深めたいと思います。
このような趣旨から、下記のとおり電磁界フォーラムを開催いたしますので、多くの方のご参加をお待ちしております。
なお、本フォーラムは、上記テーマに特化した内容で実施いたします。電磁波全般の基礎的な内容についての説明・質疑応答は予定しておりませんので、予めご了承下さい。
記
1.日時:平成23年2月4日(金) 13:00〜16:30
2.場所:日本科学未来館 みらいCANホール(住所:東京都江東区青海2-3-6)
3.定員:200名
4.プログラム
13:00−13:05 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
13:05−13:55 自然界で発生する電磁界について−雷現象を中心に− 大阪大学大学院 工学研究科教授 河崎
善一郎 氏
13:55−14:05 休憩
14:05−14:55 人工的に発生する電磁界について−家電製品から発生する電磁界を中心に−
国際電気標準会議 国際無線障害特別委員会 エキスパート 野田
臣光 氏
14:55−15:05 休憩
15:05−15:55 電磁界との共存について−電磁界のペースメーカへの影響を中心に−
日本メドトロニック株式会社 カーディアックリズムディジーズマネージメント テクニカルフェロー 豊島 健 氏
15:55−16:00 休憩
16:00−16:30 質疑応答 司会 電磁界情報センター 事務局
16:30 閉会
$2.概要 BEMSJのメモから
1)開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
・今回は工学的な話題を取り上げる。
2)講演「自然界で発生する電磁界について−雷現象を中心に−」
・落雷によって、低周波だけではなく、VHF帯からガンマー線まで発生している。
・落雷時、初期放電ではVHF・MF・LF?? リーダー進展時はVHF・UHFの電波を出す。
大地からの帰還雷撃時はMF・LF・VLF帯の電波を出す。
・世界各地40か所に落雷の観測所を設けて、落雷の観測データをWEBに公開している。
このWEBにあるように、常に地球上では落雷が発生している。
・人間も電磁波を放射している。観測は可能で、野辺山の電波観測所に行けば、人間から発する電波を観測できる展示コーナーが設けられている。
・土星も電波を発信している。土星では雷の発生があるので、落雷が電波の発信源とみられる。
・火山活動でも電磁波を発生する。地下のマグマが電荷をもっており、マグマが移動することは電流が流れることになり、電磁波が発生する。
・詳細はレジメを参照
質疑応答
所要により退席しなければならないので、質疑応答を行う。
Q:雷によるシューマン共振の電磁界強度はどの程度が観測されているのか?
A:研究では、落雷時の周波数はよく研究されているが、絶対値の強度に関しては関心が薄く、きちんとしたデータはない。
古い磁界では0.0000・・・ガウスという過去のデータはあった。
Q:落雷と金属の関係は?
A:金属を持っていようがいまいが、背が高いとダメ。身に着けていたネックレスや金属部にやけどが見られるのは、そうした金属部に落雷したのではなく、落雷によって体に流れた電流がそうした金属にも流れ、金属の抵抗分によるジュール熱で体がやけどを負ったものである。
Q:雷の時に、電源コンセントを抜くのは効果的か?
A:それもよいが、雷は大地から天空に向かって帰還雷撃がある。
大地アース線を経由して帰還雷撃が発生するので、落雷の直撃を受けたら、何をやってもダメであろう。
3)講演「人工的に発生する電磁界について−家電製品から発生する電磁界を中心に−」
・IEC規格622233(シロモノ家電からの電磁界の測定法)は和訳され、技術資料TS-C0044として2010年12月に発表された。
この技術資料は将来にはJIS規格となることを狙っている。
・IEC規格62233では、電界曝露は「検討中」となっている。
・IH調理器では、加熱コイルの周囲にショートリングを設け、調理用鍋以外の部分への磁界漏洩を少なくしている。
・IECの安全規格に、機器からの漏洩電流の規定があるが、この規格では手のひらの面積を想定した大きさで接触した場合の感知電流で規定している。
ICNIRPの接触電流は点接触による感知電流で規定している。
・新ICNIRP(2010年版)では、手や足も基本制限の対象となっている。
IH調理器に手が近接した場合の基本制限への適合を考える。
手のひらの大きさに漏洩磁界が曝露した時の内部電界強度を計算した。
基本制限2.7V/mになる外部磁界は860μTであり、これだけ大きい磁界は近傍にはないだろう。
・詳細はレジメを参照
4)講演「電磁界との共存について−電磁界のペースメーカへの影響を中心に−」
・電車の中で「ペースメーカへの影響から携帯電話の使用を・・・・」と言っていうのは、世界の中では日本だけである。
・かつて「カナダ訪問時に高円宮殿下が心室細動で亡くなった・・・・」という報道がなされた。あえて心室細動で・・・という報道がなされたのは、もしかして、心室細動を防ぐAEDの普及をもくろんだのかもしれない。
心室細動を起こしたら10分以内にAEDを使用すれば蘇生できる。こうしたことから現在は、色々な箇所にAEDが備え付けられている。
・IH調理器だけではなく、IH炊飯器も心臓ペースメーカに影響を及ぼす。この事例を取り上げた論文もある。
IH炊飯器を利用してたびたび影響を受けたので、最後はこの患者はIH炊飯器を取り上げられてしまった。
・詳細はレジメを参照。
5)質疑応答
司会:最初に事前に受けた質問から
Q:IH調理器からの電磁界・接触電流に関して、ICNIRPの2010年ガイドラインへの対応は?
A(野田):講演の中で説明した。
Q:家電製品からの電磁界に関する測定法は?
A(野田):講演の中で説明した。
Q:電力設備からの磁界規制もあるが、家電製品からの磁界の法規制は?
A(野田):法規制の話は行政に判断。基準や測定法はICNIRP,IEEE,IECの規定があり、それらを利用すればよいと考える。
Q:電磁界とペースメーカについて、影響を受ける商用周波数の電磁界の強さは? 新ICNIRPの200μTに耐えられる? 変圧器に対しては?
A(豊島):交流電界では3kV/mまではOK,磁界200μTに関しては、磁界発信源の大きさによる。
変圧器に関しては、ほとんどの場合は大丈夫。
Q:パソコンや携帯機器に関してペースメーカは?
A(豊島):パソコンの中では気になるのが無線LANであるが、これはOK,携帯機器で携帯電話と同じ送信方式のものは、携帯電話の場合と同様に扱う。
Q:旧式のペースメーカは問題か?
A(豊島):1995年頃以降に対策を講じ始めているので、これらに関して限定していえば、旧式も新式も変わっているとは言えない。性能は変わっていない。
総務省の報告書をみれば新式ほど影響が少ないようにみえる。これは新式の携帯電話が影響しなくなっているということである。
900MHzの携帯電話によって影響を受けるというので、対応した会社もある。900MHz以外の400MHz以下の周波数に関しては無効であるのでそうした通信機器などへの影響も同時に考えないで、携帯電話の周波数の対応だけを行うのは問題であるとして、携帯電話への対応を行わないペースメーカ製造会社もある。
Q:医療機器への電磁界の影響に関する適切な問い合わせ先は?
A(豊島):PLの問題もあり、答えることができるのはそれぞれの医療機器メーカしかないかもしれない。
司会:これからフロアから質問を受ける。
Q(フロア):非接触式充電機器(携帯電話、バス等)のペースメーカへの影響は?また一般的に非接触式充電機器に関する電磁界の健康影響に関する何か動向や規制に関する情報は?
A(野田):家庭用であれば、IEC62233を適用すればよい。その他の場合はわからない。
A(豊島):業界同士の話し合いの機会を設けてはどうか。
Q(フロア):義理の母がペースメーカを入れた。電気敷毛布と電気毛布の使用に関しては注意を受けた。
スマートフォンやタブレット式の電子機器の影響は?
A(豊島):敷毛布は電力が低いのでOK,電気毛布は気になるのであれば、寝る時にコンセントからプラグを抜けばよい。
電気カーペットは電力が大きいので、直に埋め込んだペースメーカが密着すれば問題であろう。
ただし、カーペットの上に直に寝たりすれば、問題が起こる前に、風邪をひいてしまうだろう。
スマートフォン等色々あるが、これらに関しては、まだわからない。
Q(フロア):電磁界防護にはICNIRPのガイドラインがあるが、ペースメーカに関するガイドラインはないのか?
A(豊島):心臓ペースメーカを埋め込んだ人のためのガイドラインは作成中と聞きます。
司会:以上で本日のフォーラムを終わります。
関心のある方はレジメを入手して読んでください。
もしかして、数か月後に電磁界情報センターのWEBにこのフォーラムの記録が公開されるかもしれない。
記:2011−3−10
「電波の安全性に関する説明会 安全で安心な電波利用環境に向けて」が開催された。
$1.説明会の概要
開催案内から抜粋
総務省関東総合通信局は、社団法人電波産業会との共催により、「電波の安全性に関する説明会≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫」を下記のとおり開催いたします。
本説明会は、近年ますます身近に利用されている電波の性質や健康への影響について、行政、工学、医学のそれぞれの観点から、一般の方にも分かりやすく説明するものです。
また、参加者の方々からの御質問を幅広く受け付け、回答をさせていただくこととします。
1 日時 平成23年3月8日(火曜日)13時から16時30分まで
2 場所 日暮里サニーホール(東京都荒川区)
3 主催 総務省関東総合通信局、社団法人電波産業会
4 講演内容
・講演1 「安心して電波を利用するために」 総務省 関東総合通信局 電波監理部 電波監理部長 横田徹
・講演2 「電波防護指針の根拠と測り方」 独立行政法人情報通信研究機構 電磁波計測研究センター 研究マネージャー
渡辺聡一氏
・講演3 「身の周りの電磁界と健康」 東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学第二講座 主任教授 山口直人氏
$2.以下は聴講のメモの纏め
1)開催の挨拶 関東綜合通信局長 吉崎
・安心と安全という言葉には違いがある。安全は客観的に大丈夫なこと、安心は主観的に大丈夫であると判断すること。
フグ料理に例えれば、フグの毒の部分を除去すれば安全であり、そうした毒の除去を専門の免許を得た調理師が調理すれば安心である。
フグの毒の除去を行ったとしても安全であっても、素人が行ったのでは安心できない。
講演1 「安心して電波を利用するために」横田徹
・スカイツリーを見てきた、事前質問にもあるが、スカイツリーが完成しても、すべての放送電波の発信が東京タワーからスカイツリーに移るのではない。
放送大学・FM東京などは継続して東京タワーから電波発信を行う。当分の間は両社が並行して運用される。
・レジメのP4に携帯電話端末器からの電波発信強度の実測例が示されている。
シールドルームの中で測定し、扉を閉めるとアンテナバーは1本で、発信強度は3−3.9V/m
扉を1cm開けると、アンテナバーは2本で、発信強度は1−1.5V/m
扉を5cm開けると、アンテナバーは3本で、発信強度は測定器の限界以下。
・その他は、一般的な説明であった。
3)講演2 「電波防護指針の根拠と測り方」渡辺聡一氏
・レジメのP66にある研究。国際共同研究(NICTを含む14研究機関)でSAMファントム、成人男性モデル、小児モデルで頭部SARの違いに関する研究を行った
結果は2006年にIEEEで発刊した論文にある。これによれば、SAM>成人>小児であり、現用のSAMファントムで評価を行えば、小児に対しても安全といえることが判った。
・妊娠女性の胎児へのSARも研究した。結果は胎児のSARは母親のSARに比べて最大でも半分程度以下であった。論文は2007年の刊行。
・その他は一般的な説明であった。
4)講演3 「身の周りの電磁界と健康」山口直人氏
・今年の5月にフランスで開催されるIARCの高周波電磁界の発がん性判定会議の結果を待つ。
・その他は、一般的な説明であった。
5)質疑応答
司会:最初に事前に受け付けた質問に対する質疑応答を行う。
司会:質問「電波と電磁波、低周波と高周波などの用語の違いを説明して欲しい。」
A(渡辺):電波は電磁波の一部、電波法では3THz以下の周波数の電磁波を電波という。低周波では刺激作用が支配的、高周波では熱作用が支配的である。
司会:質問「電磁波は安全か? 電車内での携帯使用は心臓ペースメーカに影響する? 携帯電話基地局および防災無線子局の周辺の住民の健康影響は?」
A(山口):研究中でもあり、100%安全ともいえないし、100%危険ともいえない。
A(渡辺):ペースメーカについて、携帯電話端末は局所曝露なのでSARで規定している、心臓ペースメーカへの影響は総務省で実験を行っている。22cm離せばよい。
電車の中での携帯電話使用は車内の反射などで強くなる・・・・という話があったが、その後のARIBでの実際の電車を利用しての実験では局所的に強くなることはない ことが判った。
A(横田):防災無線子局は、昔は受信だけであったが、最近は子局からも電波の発信を行っているケースもある。発信電力としては携帯電話基地局と同じ程度か低いとして考えればよい。
司会:質問「電磁波が直接の原因で発病が認められた事例はあるか? 非熱作用に関しては?」
A(山口):電磁波が直接の原因での発病の事例はない。電磁波過敏症という話があるが、電磁波で発病したという科学的な検証例はない。
A(渡辺):ICNIRPも電波防護指針も熱作用と刺激作用に基づいている。ICNIRPは2009年に声明を発表し、「1998年策定の現在のガイドラインでよい」としている。ICNIRPは高周波に関してはIARCの発がん判定を待っている。
司会:質問「IH調理器や電子レンジからの電磁波は大丈夫か? IH調理器からの接触電流に関して電波防護の規制に加える予定はあるか? 高周波の接触電流で感電を感じたというレベルを超えて病院に運ばれたというような重篤な事故例はあるか?」
A(渡辺):専門ではないが、電子レンジなどからの電磁波は無線通信に影響しないレベルに規制しているので、電波防護指針には適合しているであろう。
IH調理器からの接触電流に関しては、法規制は行っていないが、答申された電波防護指針の中に含まれているので、自主的に適合すべきである。平成9年の総務省への答申の中で、測定評価法が定まったものは法規制すべき となっている。接触電流に関しては標準的な測定法が定まっていないのは課題かもしれない。
接触電流での重篤な事故例は、確定的なことは言えないが、知らない。
司会:質問「電波防護指針の見直しの予定は?」
A(横田):状況が変われば、電波防護指針は変更しなければならない。現在の局所指針は3GHzまでである。これからは3.6GHzなどの携帯電話周波数の利用もあるので、調査研究をスタートしている。
司会:質問「ICNIRPの参考値や基本制限について」
A(渡辺):本日の横田氏の講演レジメを読めばよい。
司会:質問「ワイヤレス給電の安全性について」
A(横田):現在は小電力のワイヤレス給電が、コードレス電話の充電などに用いられている。今後大電力で、電気自動車の給電などに利用されるかもしれない。今は、他の無線通信に影響しないかの調査を行っている。通信への影響を抑えれば、このレベルは厳しいので、健康への影響はないかもしれない。
司会:質問「高圧送電線、JRの送電線からの電磁波は? 電磁波を防ぐ方法は?」
A(山口):本日配布した経産省のパンフレットを見てほしい。送電線と小児白血病の発がん性評価は2Bであった。発がん性2Bであれば、規制に結びつくことはない。
A(渡辺):低周波の磁界のシールドは困難である。電界は家の中では遮蔽され、かなり低くなっている。
司会:質問「スカイツリー完成後は東京タワーからの電波は? 数年前にフランスの裁判で携帯電話基地局の撤去という判決があったが、類似の日本での例は?」
A(横田):講演の中でも述べたが、東京タワーからの電波発信は継続する。すべてがスカイツリーに移行するのではない。
フランスの裁判の件、判決か理由が電波の安全性そのものに関係のない判決であった、と聞いている。
司会:質問「アマチュア無線のアンテナで、特殊な形のアンテナの電波防護指針への適合法は?」
A(渡辺):アンテナの利得が判れば基本算定式で適合判定ができるはずである。個々のアンテナに関しては詳細な評価方法は規定されていない。
司会:質問「鎌倉で携帯基地局からの低周波振動で紛争があったと聞くが?」
A(横田):調べてみたら、公害に関する裁定事件で、振動・音波の話で、平成22年8月に棄却になっていた。
司会:これからはフロアからの質問を
Q(フロア):インターフォン研究の紹介があった。携帯電話による頭部SARは基地局との通話の状態で大きく変動する。これらの影響は?
A(山口):まさにその通り。少しは研究の中で調査を行った。インターフォン研究の結果には反映していない。その影響はインターフォンの結果を極端な方向に持っていくことはないと考えている。
A(渡辺):特にコメントはない。
Q(フロア:女性):アンテナ基地局がマンションの屋上にあり、最上階に住んでいる場合は大丈夫か?
A(渡辺):屋上に建設されても防護指針には合致しているはず。携帯電話基地局から発信される電波は真下方向には強く出すようにはなっていない。心配であれば、測定してもらえばよい。
司会:これで質疑応答を終わります。
関心のある方は、この説明会のレジメを入手して、読んでください。
記: 2011-8-19
1.以下の説明会が開催された。
電波の安全性に関する説明会の開催 −国際がん研究機関の電波の発がん性評価を中心に−
総務省は、厚生労働省の協力を得て、平成23年8月1日(月)13:00からKFCホール(東京・両国)において、「電波の安全性に関する説明会」を下記のとおり開催します。
世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)が、先月31日、携帯電話等に用いられる電波の発がん性評価として、携帯電話の使用について、「人に対して発がん性があるかもしれない」と発表しました。
本件に関連して、電波について正しい知識を身につけていただくために、総務省では一般の方を対象に「電波の安全性に関する説明会」を開催します。
当該説明会では、携帯電話等の電波による健康影響や国内外のがんの発生トレンド等について、WHO及びIARCの健康リスク評価に携わった経験のある専門家の方にわかりやすく説明いただきますので、多くの皆様に御参加いただきたく、御案内申し上げます。
記
1)日時 平成23年8月1日(月)13:00〜16:30
2)場所 KFCホール 東京都墨田区横網一丁目6番1号国際ファッションセンタービル 3階
3)主催 総務省
4)講演内容
(1)電波と安全な暮らし 総務省 総合通信基盤局 電波部長 吉田 靖
(2)電波の発がん性評価と生体電磁環境研究の動向について 京都大学 生存圏研究所 特定教授 宮越 順二 氏
(電磁波に関するIARCの専門委員会ワーキングメンバーとして評価に携わるなど、国際機関等における電磁波の影響評価に従事)
(3)脳腫瘍の種類と罹患率及び診断について 国立がん研究センター 脳脊髄腫瘍科 副科長 成田 善孝氏
(4)国際機関による電磁界のリスク評価手法について 一般財団法人電気安全環境研究所 電磁界情報センター 所長 大久保 千代次 氏
(WHO放射線・環境衛生ユニット・サイエンティストを歴任するなど、電磁波の健康リスクに関する研究に従事。明治薬科大学客員教授)
5)定員 240名
6)参加費 無料
2.聴講の記 BEMSJが聴講して気の付いた点を列記
1)開会の挨拶 電波部長 吉田 靖
・この説明会には500名を超える申し込みがあった。そこで240名の定員を360名に増やした。
・「あるかもしれない」という判定の理解は難しい。
・IARCの判定は「発がん性の可能性あり」と判定いるが、そのリスクの程度を明らかにしていないことも、理解が難しくしているのかもしれない。
2)講演「電波と安全な暮らし 総務省の取組み」 吉田 靖
・配布したレジメとは異なるプレゼンであった。
・簡単な説明だけであり、特記事項はない。
3)講演「電波の発がん性評価と生体電磁環境研究の動向について」宮越 順二氏
・IARCの判定会議はクローズドな会議であり、可能な範囲で話をする。
・IARCの発がん性評価の意味は「対象となる作用因子(物理的因子、化学的因子、特殊な環境的な因子など)による発がんの性質の程度をグループ別に分類するものであり、定量的な評価を行うものではない」。ここが本日一番大事なプレゼンである。
・携帯電話と疫学に関する評価の中には、スウェーデンのHardellらの研究結果も対象になっていた。
(BEMSJ注:このHardellの研究とインターフォン研究の結果が大きく評価の対象となり、結果として2B判定に結びついている。)
・レジメには特記されていないが、テレビ放送・ラジオ放送に加えて携帯電話基地局からの電波も「問題なし」とした。
・実験動物の研究に関する評価では、これまでの実験動物に関する研究を総合評価すると、陰性の結果が多いものの、一部の複合的発がん研究の「陽性結果」は発がん性の証拠として認められ、ワーキンググループは「限定的な証拠」と評価した。
4)脳腫瘍の種類と罹患率及び診断について 成田 善孝氏
・脳腫瘍に関する一般的な解説
・多くの脳腫瘍を診てきているが、脳腫瘍が増加しているという感じはない。他の医師の意識も同じ。
・がん登録は日本では完備されていない。
・インターフォン研究の結果の紹介
・日本でのインターフォン研究の結果の紹介
・携帯電話と発がんについての国立がん研究センターの見解を出している。
5)国際機関による電磁界のリスク評価手法について 大久保 千代次 氏
・IARCモノグラフ(判定)の意図するものは、純粋な科学的評価、定性的な評価、各国での癌原物質使用の規制及び法制化への勧告は出さない、である。
・IARCは何を評価しているかと言えば、「発がん性の強さを評価しているのではなく、発がん性の証拠の強さを評価している」、「発がん性のリスク評価を行っているのではなく、発がん性ハザードを評価している」であり、誤解される場合が多い。
・レジメにはないが、CEFALOの7月27日の研究が出た。
7-19歳の子供の携帯電話使用と脳腫瘍の研究で、2004年―2008年の脳腫瘍患者を対象とした。
がん登録を利用した研究。結果は有意な症例の増かはなかった。
6)質疑応答
説明会の参加申し込み時に記されて質問から、時間の許す限り、回答する。
Q:IARCの発がん判定2Bに関して、総務省の見解は?また海外での見解は?
A(総務省山田):ハザードが2Bと判定され、携帯電話はリスクがあるとなったので、さらなる研究が必要。
A(大久保):WHOのFact Sheet 193で、発がん判定2Bとなった高周波電磁界に関するリスク評価を2012年に行う。
ICNIRPは声明をだし、IARCのモノグラフの刊行を待つと。イギリスのHPAは、リスクの可能性ありとして、子供の携帯電話使用に関してはプレコーションを薦める、と。
スペインのCREALは2011年6月1日に「リスクはないとは言えない」と発表している。
Q:限定的な証拠があるとされている。神経膠腫は増加しているのか?
A(成田):日本はがん登録が十分ではないので、わからない。
Q:強い電磁波を浴びるとどうなるか?
A(大久保):吉田さんのプレゼンにもあるように、熱作用、刺激作用があり、最悪は死に至る。
A(宮越):肝臓癌治療には、強い高周波の電磁界を利用している。骨折治療に低周波電磁界が利用されている。
Q:現在の研究は? 特に、子供を対象とした研究は?
A(大久保):WHOでは研究調整も行っている。電磁界の研究アジェンダを出している。
また、H23年の総務省の研究課題の中には、胎児の造血器への影響、中間周波数の電磁界の人との間接的な結合(注:いわゆる接触電流の影響)に関する研究もテーマに入っている。
Q:海外の規格と比較した場合の電波防護指針は?
A(山田):SAR値を比較しても日本の電波防護指針は他国と同準。
Q:低い値のSAR値の携帯電話を選ぶべきか?
A(大久保):それも選択肢の一つ。Freiの2009年の研究によれば、GSM900は133mW、GSM1800は62.2mW、UMTSは0.65mWと無線出力が小さくなってきている。日本での携帯電話の方式の変遷に伴う無線出力の低下も同じ。
Q:アナログに比較してデジタル携帯は影響が大きいのか?
A(山田):影響は電波の強さによるので、アナログ・デジタルといった方式による差異はない。
デジタル電話化によって無線出力は低くなっているということもある。
Q:マンションに基地局があるが?
A(大久保):WHOのFact Sheet 193を見てほしい、実測でも規定値の1万分の1程度である。
Q:放射線と電磁波は同じ?
A(宮越):電波としての電磁波は非電離放射線、電離放射線とは作用メカニズムが異なる。
Q:心臓ペースメーカへの影響は?
A(山田):毎年のように総務省では調査研究を行っている。昨年はWimaxとの関係を調査した。
Q:家電製品からの電磁波や携帯電話からの電磁波に過敏な人もいるが?
A(大久保):WHOのFact Sheet 296を読んで欲しい。電磁波過敏症と電磁界の科学的な根拠は存在しない。
フロアからの質問は時間の関係で皆無であった。
記:2011−11−2
1.フォーラムの概要
以下のフォーラムが開催された。
************* *************
第5回電磁界フォーラム開催のご案内(9/30東京) 〜小児白血病!これからの研究をどうするか〜
電磁界情報センターでは、電力設備や家電製品などから発生する50/60Hzの電磁波(電磁界)に関して、さまざまな視点から議論する機会を設け、11回シリーズの電磁界フォーラムを開催しています。
第5回目のテーマは「小児白血病!これからの研究をどうするか」です。
疫学研究のプール分析結果によれば、超低周波磁界の強さが平均0.4マイクロテスラを超える居住環境で小児白血病の発症率が倍増することが示されていますが、そもそも小児白血病とはどういう病気なのか、電磁界と小児白血病との関連はあるのか、それを明らかにする新たな疫学手法や他の研究アプローチはあるか、などについてそれぞれ専門家を招いて説明いただくとともに、参加者の皆さまとの質疑応答により、理解を深めたいと思います。
このような趣旨から、下記のとおり電磁界フォーラムを開催いたしますので、多くの方のご参加をお待ちしております。
なお、本フォーラムは、上記テーマに特化した内容で実施いたします。
電磁波全般の基礎的な内容についての説明・質疑応答は予定しておりませんので、予めご了承ください。
記
1.日 時:平成23年9月30日(金) 13:00〜16:30
2.場 所:日本科学未来館 みらいCANホール (住所:東京都江東区青海2-3-6)
3.定員:200名(参加無料)
4.プログラム
13:00−13:05 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
13:05−13:25 電磁界と小児白血病に関する研究のこれまでの経緯について 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
13:25−14:15 こどもの白血病について〜疾患の概説とその病因について〜 大阪市立総合医療センター 副院長 原 純一
氏
14:15−14:30 休憩
14:30−15:10 疫学研究の最近の動向と今後について 東京女子医科大学 教授 山口 直人 氏
15:10−15:40 新たな研究アプローチの可能性について 電力中央研究所 上席研究員 中園 聡
氏
15:40−15:55 休憩
15:55−16:25 質疑応答 司会 電磁界情報センター 事務局
16:25−16:30 閉会
参加者数は100名+αであった。
2.概要
1)電磁界と小児白血病に関する研究のこれまでの経緯について 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
・WHOは低周波と小児癌について、疫学者と実験学者との共働研究を推奨している。
・欧州では、2011年に「小児白血病と原因について理解を深める研究」として、「FP7-ENV-2011 ARIMMOYA」プロジェクトをスタートさせた。3か年計画、4億円程度の基金。
・日本としては何をすべきか、これが本日のテーマである。
2)こどもの白血病について〜疾患の概説とその病因について〜 大阪市立総合医療センター 副院長 原 純一 氏
・白血病に関する基本的な解説があった。
・白血病は遺伝子異常によって発症する。
・小児白血病も多段階発癌である。
・1stヒットは胎児期に起こり、前白血病細胞が生じる。ほとんどはそのような細胞は死滅するが、一部の細胞は2ndヒットにより癌化する。
・2ndヒットは出生後に生じる。
・2ndヒットは素因と環境要因(?)による遺伝子異常
3)疫学研究の最近の動向と今後について 東京女子医科大学 教授 山口 直人 氏
・研究結果と真実は異なる可能性がある。
・疫学研究の信頼性を左右する諸因子として、真のリスクと、不確実性(バイアス・統計的な不確実性)がある。
相対危険度RRが2程度であれば、不確実性が大きく結果に影響を与える。
・超低周波電磁界の小児白血病への影響に関しては、発症プロセスのどこに影響するかを見ていく必要がある。
1stヒットと前白血病クローン形成に関与? 2ndヒットと白血病発祥の関与?
・数多くの疫学調査が実施されたが、「限定的な証拠」という状況は変わっていない。
4)新たな研究アプローチの可能性について 電力中央研究所 上席研究員 中園 聡 氏
・新たな実験手法の開発が必要であった。
・ヒト化マウスによる前白血病モデルを構築する。ヒト細胞での白血病(B-ALL)発症を模擬できる。
・小児白血病のうち、B-ALLに対する磁界影響が明らかになる、可能性がある。
・東京農工大と電力研究所の共同研究として実施中である。
<BEMSJ注:こうした研究は素晴らしいと感じた。研究成果が出るのを期待。>
5)質疑応答
・所要があり、この質疑応答には参加できなかった。中途で退場した。
記;2013−3−10
1.以下の講演会が開催された。
以下は開催案内からの抜粋
*********************
講演会「電磁界生体影響問題の最近の動向」開催のご案内
電気学会では平成7年に「電磁界生体影響問題調査特別委員会(委員長:関根泰次 東京大学名誉教授)」を発足させ,身の回りにある電磁界が人の健康に影響するかどうかについて,これまでの研究状況を調査し,総合的に評価を行なってきました。
得られた成果は,平成10年および15年発行の2冊の報告書や,小冊子「電気の暮らしと健康不安」を通じて紹介してきました。
その後も引き続いて調査・評価活動を続けてきましたが,最近では,2007年のWHO(世界保健機関)による電磁界の健康影響についての評価結果の公表,2010年の人体防護のためのガイドラインの改訂,ならびに本年10月に施行の電力設備の磁界規制など大きな動きがありました。
このような状況から,前小冊子の内容を全面的に見直し,一般向け解説の決定版ともいうべき「新・電気の暮らしと健康不安」を本年2月に発刊しました。
今般,電磁界生体影響問題の最近の動向について,知見を深め議論いただくとともに,これまでの活動を振り返って,取りまとめをおこなうことは有益と考え,講演会を開催することとしました。多くの皆様のご参加をお待ちしております。
日時 2011年11月18日(金) 13:00〜16:10
場所 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京・代々木)
主催 電気学会 電磁界生体影響問題調査特別委員会(委員長 多氣昌生)
プログラム
13:00-13:20 電磁界生体影響問題の経緯と最近の動向(総論) 座長・多氣昌生氏(首都大学東京)
13:20-13:45 生物影響研究の動向 重光 司氏(電磁界情報センター)
13:45-14:10 疫学研究の動向 山口直人氏(東京女子医科大学)
14:10-14:35 電磁界生体影響問題のリスクコミュニケーション 世森啓之氏(電磁界情報センター)
14:35-14:50 休憩
14:50-15:15 ドシメトリ研究の動向山崎健一氏(電力中央研究所)
15:15-15:40 人体ばく露に関連する電磁界の測定方法 水野幸男氏(名古屋工業大学)
15:40-16:10 総合討論
パネラー:関根泰次氏,宅間董氏,上野照剛氏,大久保千代次氏(以上,本特別委員会顧問)および上記講演者
16:10 閉会
2.BEMSJはこの講演会に参加していなかった。
以下は入手したレジメ・開催記録から、参考になるポイントのみを紹介する。
1)「電磁界生体影響問題の経緯と最近の動向(総論)」から
本特別委員会のアウトプット・成果として,一般の方を対象とした小冊子の2度にわたる刊行,ならびに全国各地において講演会を実施したことなど,本特別委員会が果たした役割について述べられ,本委員会は来年の3 月で解散の予定であるが,今後も電磁界生体影響についての研究を続けることが重要であるとの総括がなされた。
2)講演「生物影響研究の動向 重光 司」から
・中間周波電磁界(300Hz一100kHz)IH調理器(クッキングヒ一夕)は、数10kHzの中間周波電磁界で駆動しています。
このような中間周波数帯の電磁界の健康への影響が懸念され始めたことから、疫学、実験研究がなされるようになってきました。
しかし、健康影響に焦点を絞った疫学研究は殆どなされていません。
動物を用いた生殖毒性試験、遺伝毒性試験などが電力中央研究所の研究者から発表されていますが、中間周波電磁界の健康リスク評価を行うには、データベースが不足しているのが現状であります。
3)講演「疫学研究の動向 山口直人」から
・最近の疫学研究から
・小児白血病の発症メカニズムの解明は急速に進んでいる。
多くの小児白血病、特に、B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病では、出生前に第一ヒット、出生後に第二ヒットが起こって発症する、いわゆる2段階発がんメカニズムが明らかになっている。
第一ヒットは、染色体転座、染色体の高二倍性の形成によって起こり、前白血病クローンが形成される。
そして出生後に、前白血病クローン中の細胞に第二ヒットが起こって白血病が発症する。
また、小児白血病の中でも、骨髄性かリンパ芽球性かなど、サブタイプによって発症プロセスも異なる。
以上の小児白血病発症メカニズムから考えると、超低周波電磁界が発症リスクに影響するとしたら、どのサブタイプに影響するのか、発症プロセスのどの部分に影響するのか、発症プロセスに配慮した研究が待たれる。
纏め:2012−4−23
1.以下のセミナが開催された。
開催案内から抜粋
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電磁波セミナ「身の周りの電磁波と健康影響について」(川崎)開催のご案内(後援:川崎市)
電磁界情報センターでは、電磁波(電磁界)に不安や疑問を持つ方に少しでも理解を深めていただくために、送電線や家電製品など身の周りの電磁波(電磁界)とその健康影響について、世界保健機関(WHO)などの科学的な見解をわかりやすくお伝えすることを目的としたセミナを、下記のとおり開催します。
多くの方のご参加をお待ちしております。
記
1.日 時:平成24年2月9日(木) 13:00〜15:00
2.場 所:川崎市立労働会館(サンピアンかわさき) 4階 第3会議室
3.定員:50名(参加無料)
4.プログラム
13:00−13:10 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
13:10−13:40 電磁波(電磁界)の健康影響について 電磁界情報センター 倉成 祐幸
13:40−14:00 電磁波のリスクとのつきあい方 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
14:00−14:10 休憩
14:10−15:00 質疑応答
15:00 閉会
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2.気の付いた点等
1)参加者
・韓国のKBS放送からのTV取材が行われた。
・参加数は会場に一杯。50名の予定に対して70名を応募があった由。ほとんどが一般の人と推定。
2)講演「電磁波(電磁界)の健康影響について 電磁界情報センター 倉成 祐幸」
・一般的な説明
・詳細はレジメ参照
3)講演「電磁波のリスクとのつきあい方 電磁界情報センター所長 大久保 千代次」
・一般的な説明
・詳細はレジメ参照
4)質疑応答:事前に受けた質問に関しては、レジメとして質問内容と回答が準備されていた。
Q:太陽光発電システムから発生する磁界は?
A:以下に示す静磁界(太陽光発電パネルからの直流磁界)とパワーコンディショナー(直流電力を交流電力に変換する)からの交流磁界のデータが電磁界情報センターの実測例として示された。
Q:スマートメータからの高周波電磁界は?
A:以下に示すカリフォルニア州の報告書にあるデータが示された。
これによれば、スマートメータ(常時稼働中)から90cmの距離での電力密度の最大値は40μW/cm2である。
電界強度に換算すると12.2V/mとなり、人への健康影響は無いにしても、周囲にある電子機器の誤動作する恐れが出てくる。
同様に3mの距離での電力密度の最大値は4μW/cm2とあり、電界強度に換算して3.8V/mとなり、同じく電子機器の誤動作のおそれがある。
5)質疑応答
Q(フロア):今回のセミナでは磁界の健康影響に絞っているが?
A:電界の影響はないと、WHOのFact Sheet にある。
Q(フロア):携帯電話の基地局に関しては?
A:WHOのFact Sheet 203等を読んでください。この資料は本日配布の資料の中にあります。
Q(フロア):事前質問のQ/Aにあった太陽光発電からの実測例で、想定値とある欄の意味は?
A:電磁界情報センターで計算をして想定した値を参考に記述してあります。
関心のある方は、このセミナのレジメを入手して、読んでください。
纏め:2012年3月20日
1.以下の説明会に参加した。
開催案内書からの抜粋
*******************
「電波の安全性に関する説明会」を東京都千代田区で開催 ≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫
報道資料/平成23年12月26日
総務省関東総合通信局(局長 吉田 靖)は、「電波の安全性に関する説明会≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫」を下記のとおり開催いたします。
本説明会は、近年ますます身近に利用されている電波の性質や健康への影響について、行政、工学、医学のそれぞれの観点から、一般の方にも分かりやすく説明するものです。
また、参加者の方々からのご質問を幅広く受け付け、回答をさせていただくこととします。
1.日時:平成24年3月6日(火曜日) 14時00分から17時00分まで
2.場所:九段第三合同庁舎 11階 共用会議室(東京都千代田区九段南1-2-1)
3.主催:総務省関東総合通信局
4.講演内容
講演1 「安心して電波を利用するために」 総務省 関東総合通信局 電波監理部長 渡辺 照重
講演2 「電波の安全性とリスクマネージメント」 国立保健医療科学院 生活環境研究部 上席主任研究官 牛山 明
講演3 「電波の植込み型心臓ペースメーカー等への影響と対策」 埼玉医科大学 保健医療学部 医用生体工学科 非常勤講師 豊島 健
*********************
2.以下は三浦の気が付いたポイント
1)講演1 「安心して電波を利用するために」総務省 渡辺 照重
・健康影響の可能性があるという指摘に対しては、継続して研究を行う、というスタンスで対応する。
・あとは一般的な説明であり、レジメ参照。
2)「電波の安全性とリスクマネージメント」 国立保健医療科学院 牛山 明
・産経新聞2011年5月27日に曽野綾子さんのリスクに関する記事の紹介「絶対安全はない」。
・ゼロリスクにすることはできるか?飛行機に絶対載らない、タバコは絶対吸わない といったことは可能ではあるが、全てのことをゼロリスクにすることはできない。
・10−6の死亡のリスクの紹介があった。例えば0.5リットルのワインを飲むこと、自転車で16km移動すること・・・・等。
<BEMSJ:この10−6のリスクは受け入れるリスクの例として一般的。>
・携帯電話の使用と脳腫瘍に関して、子供を対象としたコホート研究は始まっているが、大人を対象としたコホート研究も開始した。
・インターフォン研究で、「携帯電話を長時間かつ長期間使用すると、神経膠腫を罹患する可能性が1.4倍になる」という結果を真実と仮定する。
神経膠腫の罹患率は10万人当たり約3人なので、1.4倍となれば10万人当たり約4.2名となる。
携帯電話使用による過剰増加分は10万人あたり約1.2人となり、1.2×10−5のリスクとなる。
<BEMSJ:講演では言及しなかったが、この10−5のリスクは、死亡リスクではないとしても、受け入れようとするリスク10−6より大きいことになる。>
・その他はレジメ参照。
3)講演3 「電波の植込み型心臓ペースメーカー等への影響と対策」 埼玉医科大学 豊島 健
・心臓ペースメーカーでは、心臓に3mAの電流(流す期間は0.4m秒)で心臓は鼓動する。
・携帯電話の周波数の電磁波に対しては、ペースメーカーにフィルターを入れることで対処できる。そうしたフィルターを全てのメーカのペースメーカーに入っているとは言えない。
なぜならば、携帯電話の電磁波に対応したしてもその他の周波数の電磁波に対応できないので、意味がないとして、入れない医療機器メーカもある。
・「電車の中で携帯電話の電源を切ること」のアナウンスに関しては、実は、ペースメーカー友の会の患者団体が要請したことに始まる。
・携帯基地局の電波に対しては、基地局のアンテナの真横で7m以内に入らなければ良い。
(BEMSJ;こうした範囲に入る恐れのあるのは仕事として基地局アンテナの保守を行う人に限られている。)
・その他はレジメを参照。
4)質疑応答から
Q(フロア):夫が除細動器を入れた、仕事の関係上、静電気曝露の環境や、帯電した静電気に触れた時の感電の機会があるが。大丈夫か?
A(豊島):静電気の場合は、瞬間的に大きな電流が体内に流れるが、一瞬の誤動作で済むので、静電気はOKと言える。交流の電磁界は避けこと。
Q(フロア):携帯電話によって心臓ペースメーカーが誤動作したという事例・事故例はあるのか?
A(豊島):携帯電話による事故例はない。22cm離して使用せよというガイダンスの効用か否かは不明。低周波治療器の使用などによる事故例はある。
Q(フロア):電車の中の携帯電話による心臓ペースメーカーへの影響は?
A(豊島):長時間でなければOK. 22cm離れていること。
Q(フロア):無線局数が2.4万倍に増加したとあるが、増加に伴って環境中の電磁波曝露も増加しているのではないか?
A(渡辺):測定していないので実態の曝露量の増加は判らない。
Q(フロア):ペースメーカーは誤動作した時、その場から離れれば自己復帰するのか?
A(豊島):ほとんどが一時的な誤動作、一般的にはその場から離れればOK.
以上 関心のある方はこの説明会のレジメを入手して、読んでください。
記:2012−3−22
1.以下のフォーラムが開催された。
開催案内から抜粋
********************
第6回電磁界フォーラム開催のご案内(3/21東京)
〜電磁界とプレコーショナリ原則(Precautionary
Principle)〜
電磁界情報センターでは、電力設備や家電製品などから発生する50/60Hzの電磁波(電磁界)に関して、さまざまな視点から議論する機会を設け、11回シリーズの電磁界フォーラムを開催しています。
第6回のテーマは「電磁界とプレコーショナリ原則(Precautionary
Principle)」です。
商用周波電磁界ばく露と小児白血病発症の可能性など不確実性のある電磁界リスクへの対応として、プレコーショナリ原則の適用が議論されてきました。プレコーショナリ原則とは何か、プレコーショナリ政策とは何か、プレコーショナリ原則とプリベンティブ原則(Preventive Principle)との違いは何か、プレコーショナリ原則を日本語で予防原則と訳す場合の問題点、更には電磁界問題への適用是非について、これまでの議論の経緯を振り返ります。また、欧米や我が国で採用されているプレコーショナリ政策の事例を紹介しながら、電磁界リスク管理のあり方について理解を深めたいと思います。
このような趣旨から、下記のとおり電磁界フォーラムを開催いたしますので、多くの方のご参加をお待ちしております。
1.日 時:平成24年3月21日(水) 13:00〜16:30
2.場 所:日本科学未来館 みらいCANホール(住所:東京都江東区青海2-3-6)
4.プログラム
13:00−13:05 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
13:05−13:20 フォーラム開催の背景 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
13:20−14:00 電磁界とプレコーショナリ原則 株式会社野村総合研究所 長田 徹 氏
14:00−14:10 休憩
14:10−14:40 米国におけるプレコーショナリ政策の事例 電磁界情報センター 倉成 祐幸
14:40−15:10 欧州におけるプレコーショナリ政策の事例 株式会社野村総合研究所 長田 徹
氏
15:10−15:30 日本におけるプレコーショナリ政策の事例 電磁界情報センター 小路 泰弘
15:30−15:45 休憩
15:45−16:25 質疑応答 司会 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
16:25−16:30 閉会挨拶 電磁界情報センター 事務局
2.講演を聞いて気の付いた点
1)フォーラム開催の背景 電磁界情報センター所長 大久保千代次
・不確かな影響にどのように対処するか、低周波磁界曝露0.4μTでの小児白血病への対応 からプレコーションが浮かび上がってきた。
・用語の使い方、言葉の違いなどが大きい、これが本日のテーマである。
・その他はレジメを参照。
2)電磁界とプレコーショナリ原則 株式会社野村総合研究所 長田徹
・予防原則の定義は確定していない。同じ国でも時代によって定義が変わっている場合もある。
・予防原則とは何か、その定義を読むときに、1)どのような時に発動するか(発動条件)、2)どのように適用するか(適用条件)の二つを確認すれば良い。
・WHOの低周波電磁界に関するFact Sheet 322にはプレコーションという用語は使用されていない、しかし、「長期影響に関するガイダンス」の項に記述されていることは、プレコーションのことを記述していると解釈できる。
・欧州連合は2002年に「プレコーション原則は発動できない」とした。「プレコーション原則は環境、人、動物、植物の衛生に対して、生じうる影響が潜在的に危険であるとの示唆がある場合」に発動するとしているので、「電磁界が人の健康に対して潜在的に危険であろうとするはっきりした示唆がない」ためである。
・欧州連合は2009年の見解で、「一定レベルのプレコーションを含んだ曝露ガイドラインの防護の枠組み(理事会勧告1999/519/EC これはICNIRPのガイドラインを採用したもの)が労働者と一般公衆の双方に対して設定されている」と述べ、欧州連合としてプレコーションは適用していると、述べている。
(BEMSJ:ICNIRPのガイドライン採用がプレコーションであると述べていることになる。)
・「プレコーションを行うことが、かえって一般の人の不安を増加させる」というWiedemannの2005年の研究もある。プレコーションを実施すれば、「問題があるから実施したのだ」と解釈し、不安が増加する。
3)米国におけるプレコーショナリ政策の事例 電磁界情報センター 倉成祐幸
・アメリカの場合は、1999年のRAPID最終報告書の刊行で、低周波電磁界への関心は収まった、と言える。
・アメリカのPrudent
Avoidance(慎重なる回避と訳されるが、賢明なる回避の方が適切かもしれない)はMorgan氏らの提唱したもので、「それほど大きくないコストで、不都合を最小限に抑えて、実施できるのであれば、人々を電磁環境から遠ざけるべきである。しかし、電磁界を低コストで容易に回避する方法がない場合、躍起になって、無理なことを行うべきではない」という内容である。
<BEMSJ:この提唱の後半の部分は、紹介されたり、言及されたりすることは少ない。>
・アメリカ・アーバイン市の磁界規制の実情の紹介
アーバイン市の38区画を住宅地として開発しようとした時、この区画に隣接してサザン・カリフォルニア・エジソン社の高圧送電線があった。
住宅地としての開発に関する環境影響評価の中で、送電線からの電磁界の問題が提起された。
電磁界の健康影響ありとなしの意見があり、結論は出せなかった。
そこで、保守的に考えて、4mGまでは大丈夫として、4mG以内の場所の住所を送電線から離して建築することにした。
この規制で影響を受けたのは20件の住宅のみであった。
この規制は、この38区画に開発にのみ適用され、他の区画には適用されない。
アーバイン市で4mGの規制を市内全域に適用したとか、生活環境で4mGを超えてはならない という規制を行った などと言うことはない。
38地区の土地区画条例の中に記述されている。
・アーバイン市では携帯電話の基地局建設で、住居から150フィート(約50m)以内に建てる場合は、許可が必要である。
建てられないという情報は誤りである。
Q:カリフォルニア州の政策は今でも有効か?
A: そうです。
Q:カリフォルニア州教育局の政策で、2006年に例外規定を作ったとされるが、220kV以上の高圧送電線に関する例外規定はないのか?
A:カリフォルニア州では学校用地を確保しようとした場合、6万ボルトの送電線が多いので、これらを避けたいということで、除外規定を作ったというのが趣旨。
4)欧州におけるプレコーショナリ政策の事例 株式会社野村総合研究所 長田徹
・イタリアの例 予算規模の観点から磁界規制値を定めた。
・スイスの例 実行可能な値を規制値とした。
・オランダ:高圧送電線に対しては子供が滞在する場所では合理的に可能な範囲で避ける。その他については欧州勧告に同じ。
・スウェーデン:1996年政府5省庁の共同で、ガイダンスを発行。規制値はなし、費用対効果を考慮。
・イギリス:相最適化などを実施
・ドイツ:法令としては疫学の結果は規制値に引用できない。可能な限り曝露を低くする。
・フランス:2010年に長期の健康影響を示唆する科学的な証拠は不十分であり、曝露制限値の修正は正当化できない。当面の策として、高圧送電線の近くには新たな子供のケア施設は設置しない。
Q:スイスは送電線からの磁界規制だけか?
A:送電線のほかに対象として電力設備が含まれる。
Q:スウェーデンでは1996年の5省庁のガイダンスの前に、何か規制や予防原則に関連する動きがあったのではないか?
A:1996年以前に何か、コメントは出しているかもしれない。スウェーデンの電気安全委員会が電力会社宛に規制に関するコメントを出したという情報を聞いたので、そうした文書があるかと放射線防護庁に聞いたが、「そうしたものはない、コメントみたいなものは出しているが、公文書ではない」ということであった。
5)日本におけるプレコーショナリ政策の事例 電磁界情報センター 小路泰弘
・日本の電力設備電磁界対策WGでの健康内容を紹介
日本の場合のプレショーン政策は1)更なる研究 2)リスクコミュニケーション活動、3)曝露低減のための低費用の方策 である。
Q:日本における送電線の逆相配列の実施は92%となっているか、今は?
A:電力WGの報告書のデータを紹介したもの。
Q:日本における「さらに磁界の低減策」に関しては?
A:多くの電力会社は逆相化などを行っているが、これらをきちんと実施していくのではないか。
Q:日本のプレコーション政策としてリスクコミュニケーションとある。マスコミに対する指導と言うか教育も必要ではないか?
A:おかしければ報道機関に連絡をしたり、マスコミ向けのレクチャーを行ったりしている。
Q:日本における「更なる研究」とは?
A:電中研で新たな研究手法として白血病の研究が提案されている。研究者と共同で、「研究提案」をまとめようとしている。
6)全般的な質疑応答
司会:話題提供として、WHOの動きを紹介。WHOではプリコーションの枠組みをまとめようとしていた。2003年にはドラフトを作った。2006年には採択寸前までになっていた。しかし、WHOは「あくまでも科学の論拠で行うべし」となり、WHOのプレコーション政策は凍結された。
Q:本日は低周波の電磁界に関するプレコーション政策の話であった。高周波に関しては?
A:総務省の報告書に含まれているはず。
Q:総務省の報告書は目をとおしている。
A:検討してみる。
Q:疫学の結果に対する本日の講演は参考になった。韓国、台湾などでの動きは?
A:韓国にヘアリングをしたが、プレコーションは行っていない ということであった。
A:ソウルで講演を行ったことがある。市民グループも参加した論議で、プレコーションと言える。
Q:国が研究すべきと提言を行ったのか?
A:本日の講演では、電力WGが政策提言を行った内容を紹介している。
国に研究を進める具体的な動きはない。そこで何らかの研究提言を行いたい。
Q:予防原則という用語に関して、マスコミや地方議員、市民団体がどのように定義して使用しているのかを、調査しては? 海外でプレコーションを誤って使用した例があったか?
A:プレコーションは定義がない。BSEの問題ではプレコーションでイギリスは大損害、反面フランスとドイツは儲けた。こうしたことでは駄目であろう。違和感を持つ国が出てきた。
Q:アーバインの紹介があった。これはアメリカでは一般的な動向か?
A:アメリカは連邦法の磁界規制はない。州法の規定がある州もあり。今回紹介したアーバイン市は特殊な事例。アーバイン市の38区画という特定の区画での住宅開発に限定した動きである。アーバイン市は全市で4mGの磁界規制値を作ったとよく誤解されるが、そうではない。
A:高周波に関しては、アメリカではFCCが国レベル規制を行っている。低周波に関しては連邦による規制がなく、電力会社はコンプライアンス対応に苦慮している。
*関心のある方は、このフォーラムのレジメを入手して読んでください。
纏め:2012−3−24 修正:2012−5−17
1.以下のシンポジウムが開催された。
開催案内書から抜粋
********************
シンポジウム「もう一つのヒバク 携帯電話基地局の健康被害を考える」
趣旨
あなたの家や職場の近くにあるかもしれない携帯電話基地局。この基地局による健康被害の訴えが各地で相次いでいます。
“基地局が健康に悪影響を及ぼす証拠はないとWHOが言っている”として、国は実態調査や対策などを一切行いません。
しかし、全ての公害は症状が優先します。被害の訴えがある以上、早急な取り組みが必要ではないでしょうか。
基地局周辺住民や、調査を行った医師・研究者らが一同に会し、現実に起きていることをご報告します。
多くの方々のご参加をお願いいたします。
日時 2012年3月24日(土)13時〜17時
会場 東京ウィメンズプラザ(東京メトロ表参道駅下車B2出口から徒歩約7分)
基調講演
○「電磁波について」荻野晃也さん(電磁波環境研究所所長)
○「電磁波についてのリスクコミュニケーション」高峰真さん(弁護士・日弁連公害対策環境保全委員)
携帯電話基地局周辺における健康調査報告
○「兵庫県川西市の健康調査と電磁波過敏症について」加藤やすこさん(ジャーナリスト)
○「福岡県太宰府市の健康調査」近藤加代子さん(九州大学大学院芸術工学研究院准教授)
○「沖縄県那覇市の健康調査」新城哲治さん(大道中央病院内科医、医学博士(分子生物学))
電磁波の実状
○懸樋哲夫さん(ガウスネット代表)
○門川淑子さん(スカパー巨大アンテナに反対する住民の会代表)
携帯電話基地局による健康被害事例報告
○兵庫 ○横浜 ○長野 ○沖縄
参加料 1000円
主催 電磁波から健康を守る全国連絡会
*********************
また、このシンポジウムに先行して、以下のパレード(デモ行進)も行われた。
以下は主催者の案内から抜粋
****************************
3.24ウォーク「ヒバクは終わる あなたが望めば」
日時 2012年3月24日(土)11時45分〜12時半
場所 代々木公園原宿門に11時半集合、東京ウィメンズプラザまで
趣旨
自宅近くに携帯電話基地局が建ってから、私たち一家は、頭痛やめまい、吐き気など、電磁波過敏症の症状に悩まされました。
山奥の圏外に引っ越しましたが、そこにも基地局が建ってしまいました。
2010年の夏、ケータイ圏外を取り戻すため東京ドコモ本社まで13日かけて220kmを歩き、海外からもこんなメッセージを受け取りました。
「電磁波過敏症の問題を眼に見える形にしてくれてありがとう」。
3月24日に東京で開催される電磁波のシンポジウムにあわせて、小さなウォークを行ないます。
今回は45分だけのウォークですが、ハートのある多くの人たちと楽しく歩けると夢を膨らませています。
ヒロシマ、ナガサキの原爆、フクシマの原発、電磁波ヒバク。気がつけば日本は、世界一のヒバク国になってしまいました。
でも電磁波ヒバクは今すぐ終わらせることができます。
総務省、ケータイ電話会社、マスコミ…そしてあなたが望めば。
電磁波ヒバクにより奪われている胎児の未来、子どもたちの未来を取り戻すために、一緒に歩きましょう。
あなたのパワーが必要です。(塩田永、三枝子)
ウォーク参加者へのお願い
・ ケータイOFF
・ 香水、整髪料、化粧品など控えて下さい(化学物質過敏症の人も参加できるように)
・ プラカードをつくれる人は持参してください
・ 鳴りもの、楽器、合唱などで盛り上げて歩きます
******************************
BEMSJは、シンポジウム会場に向かう途中、渋谷駅から会場までの間に、このパレードに遭遇した。参加者数を数えると、19名か20名であった。
2.シンポジウムの概要
BEMSJのメモから
参加者数:シンポジウムの参加者数は200名程度と思われた。主催者の発表では220名。
参加者はどちらかと言えば年配者が目立ち、女性も多かった。
1)挨拶 大久保貞則
・「電磁波から健康を守る百万人署名連絡会議」で95,041の署名を集めたが、この会を基に「電磁波から健康を守る全国連絡会」を3年前に発足した。300名の参加を得て、シンポジウムも開催した。
・低周波・高周波電磁界ともにIARC判定で2Bとなり、電磁波は低周波であれ、高周波であれ、電磁波の100%の安全性は崩れた。黒ではないが。
・世界の動向として、携帯電話のハンドセットからの電磁波に関する不安よりも、基地局からの24時間連続の電磁波曝露により大きな不安を感じている。
・その他はレジメ参照
2)基調講演「電磁波について」荻野晃也
・一般的な電磁波の話をする。
・生命の発生はたぶん、深海の太陽光の届かない、電磁波は届く場所で発生したと思われる。
・太陽の光も危ない。太陽の光に耐えられる生物だけが生き残っただけである。太陽光に弱い(免疫機能が不全、その原因は不明)人が、日本には100名ほどいる。太陽光から逃げることはできない、
・自然放射線からも逃げることはできない。日本で自然放射線で癌になっている人は、私の推定では、数万人はいるだろう。
・その他 レジメ参照
3)基調講演 「電磁波についてのリスクコミュニケーション」高峰真
・電磁波の慢性効果に関しては法規制の対象になっていない。
・国の規制値を守っていると言っても、慢性影響に対してOKであるとしている訳ではない。
・突然、近隣で携帯電話の基地局塔の建設が始まっても、説明もなしに建設が始まっても、法的には問題にはならない。
・法律だけではなく、地域の条例などで住民への説明義務を課している例が出てきている。鎌倉市等。
・2011年3月にスイス・スウェーデンに調査に行った。スイスの場合、携帯電話基地局の建設にあっては、建設前に公示、電波強度の計算値を役所に提示、住民はそれらを見て意見を出せる、という仕組みになっていた。
・国民は知る権利を持つ、正確な情報を知ることが必要、これがリスクコミュニケーションである。
4)携帯電話基地局周辺における健康調査報告
「兵庫県川西市の健康調査と電磁波過敏症について」加藤やすこ
・電磁波過敏症に関するアンケート調査では、電磁波過敏症になった事例で一番多かったのは携帯電話・PHSの基地局からの電磁波曝露であった。
・川西市で、携帯基地局停波前後の健康状態と、電波の強さを測定した。アンケートに協力してくれた周辺の住民の住居での電波強度の比較では、1階で64%に、2階で73%という電波の強さに減少している。これはドコモの基地局からの電波だけではなく、周囲に存在する電波の総合的な測定結果である。また基地局周辺の住民の疾病に関するアンケート調査を行った。電波停波後は愁訴が減少している。
・詳細はレジメ参照
5)携帯電話基地局周辺における健康調査報告 「福岡県太宰府市の健康調査」近藤加代子
・大宰府の東小学校の生徒の健康状態を調査した。近くにNTTドコモの基地局がある。
・小学生に健康障害があり、調査を行った。統計的に有意な値がみられる。
・自宅と小学校での電波曝露との関連性が疑われた。
・無線ゲームとの関連性も疑われる。これも電波曝露と言える。
・小学校の電波強度を測定した。強度の強い場所で0.2μW/cm2であった。
・日本は世界で厳しい自動車の排気ガス規制を行った、結果は良い車ができた。排気ガスが問題なので車に乗らない という方向ではなく、技術開発を進めて、規制への対応ができた。これと同じで、携帯電話の使用を制限する方向ではなく、制限しないで、健康障害をなくす方向で技術開発を行うべきである。
<BEMSJ:電界強度に換算して0.86V/m程度>
・詳細はレジメ参照
6)携帯電話基地局周辺における健康調査報告 「沖縄県那覇市の健康調査」新城哲治
・8年間屋上に携帯電話基地局が設置されたマンションに8年間住んでいた。
・電磁波被曝によって家族全員に健康障害が発生。マンションから一時期退去したら、1週間程度で障害が回復した。マンションの他の住民にも類似の健康障害が出ていた。聞き取り調査を行った。
・基地局撤去によって、健康状態が改善した。
・詳細はレジメ参照
10階建てのマンションの全形 10階の最上階 アンテナの直下に住んでいた。
マンション屋上のアンテナ群
7)電磁波の実状 懸樋哲夫
・低周波の電磁波の話をする。
・リニア新幹線の電磁波に取り組んでいる。山梨のリニア実験線での電磁波の実測値などの公開を求めても、出てこない。したがって、推測でしかものをいうことができない。
・リニア新幹線は消費電力の量も問題と思う。どの位の電力を使うかを聞いてもなかなかデータがでてこない。ピーク電力も知りたいが、正確な数値が出てこない、原発の2-3基分。
・磁気シールドするとされるが、厚みや効果を質問しても回答が出てこない。簡単にシールドもできないので、技術開発で、基準値に抑えられるだろうという雰囲気。
・東電の株主総会で、送電線をすべて売却し、5兆円程度の資金を得て、福島原発の被害補償に充てるべき、税金から補償金を補てんするな と提言する予定。
・地域ごとの発電をその電力使用を推進して、無用な送電線をなくす運動を進めたい。
・詳細はレジメ参照
8)電磁波の実状 門川淑子
・パラボラアンテナ設置に関してスカパーを5年前に提訴した。現在は係争中。
・パラボラアンテナとマンションのベランダの距離は50mもない。
・裁判での請求の根拠は「人格権」
・アンテナ設置に反対する理由は、1)立地条件 2)異様な景観 3)電磁波 4)スカパーと竹中工務店の横暴さ
・ルーバーが設置され、見えないようになっているが、ルーバーの向こうにおぞましいアンテナがあると判るので恐ろしい。
・この問題に取り組んでもっとも有意義だったことは、他の電磁波に関する市民団体との連携強化であった。2007年以降の電磁波から健康を守る百万人署名連絡会議の存在はありがたかった。
・現在は和解の席についている。
・低周波であれ、高周波であれ、強かろうと、弱かろうと、電磁波は浴びないことに越したことはない。健康影響をもたらす電磁波がまき散らされない環境を取り戻す必要がある。
9)電話基地局による健康被害事例報告 兵庫 川西市 山路寿美子
・関西電磁波環境の会に参加し、助けてもらった。
・加藤やすこの報告にあるように、NTTドコモの基地局を撤去させた。稼働中に経験した愁訴を報告する。前立腺がん、てんかん、その他。
・「住民の反対にあったら貸さない」という地権者とNTTドコモとの契約条項に反するとして、基地局は撤去となった。
・基地局稼働によって体調不良が続出し、停波によって回復した。
・停波前後で荻野晃也による電波の強さの測定は行った。当該の携帯基地局からの電波強度は低くなった。しかし、停波後でもNTTドコモの携帯電話は使用が可能な状態。
・詳細 レジメ参照
10)電話基地局による健康被害事例報告 横浜 猪野順之助
・マンションにKDDIの基地局建設時に一人だけの反対であった。設置が承認された。月々123万円に受託金が入った。
・アメリカ在住時に、送電線などからは300m離れて住むことを教えられていた。
・稼働開始後、2日間 寝込んでしまった。また、妻の耳が聞こえなくなった。
・電磁波問題市民研に参加、理事長が変わり、電磁波問題に理解が進んだ。
・3年かけて、契約解約に持ち込んだ。「1年前に言い出すことで、契約解除可能」という契約事項を利用して解除。
・近隣に建設中のマンションが3棟もあり、そちらに基地局が建つ恐れがあり、建築の進展をみて、情報の提供を行う予定。
・詳細はレジメ参照。
11)電話基地局による健康被害事例報告 長野 塩田三枝子
・13年間 基地局の電磁波の影響を受けている。
・高遠でパン屋をやっていた。250mの距離に基地局が建ち、家族全員は体調不良になった。鼻血、急性緑内障、等。ためしに電磁波の少ない環境に移動すると家族の体調不調は回復し、家に戻ると不調がぶり返した。
・さらに第3世代のNTTドコモの携帯基地局稼働によって一家の体調不良が劣化。遠出すると症状が軽快し、家に戻ると症状が出る。そこで圏外となる山奥に引っ越しをした。体調が回復した。
・その山奥に、携帯電話基地局が設置された。1.7kmの距離に。
・子供は修学旅行にも参加できない、なぜならば行き先が小学校は東京タワーであり、中学では宿が京都タワー直下であるから。
<BEMSJ注:京都タワーは電波塔ではない。>
・家では夜、ブレーカ(電源)を落とすと楽なので、夜はローソクで過ごしている。
・家の周囲半径500mを携帯電話の圏外とすることを望んでいる。
・レジメには目次程度のことしか書かれていない。
12)電話基地局による健康被害事例報告 沖縄 當山冨美子
・沖縄の主婦、70才、沖縄の沖縄市のマンションに住んでいる。最上階に住む。5年の契約。
・2009年マンションの屋上にKDDIの基地局アンテナ3本が設置され、それ以降健康障害にあっている。マンションとしての動きはとろく、孤軍奮闘であるがあきらめず闘っている。
・携帯基地局のアンテナの電波は下には向いていないから安全と言われたが、送電線の電磁波問題を知っていたので、その弁を信用しなかった。他の住民にはなぜ反対するのかと、言われた。
・8月に工事、稼働後1か月で、耳鳴りが起こり、右耳は聞こえなくなった。12月に間脳に髄膜腫は見つかった。
・アンテナ建設後1年半後、2011年2月、新城哲治の事例(週刊金曜日)を知った。
・実家のある横浜に引っ越そうとしたが、2011年3月の大震災で断念。
・新城夫妻を招いて講演会を開いても、他の住民は一向に信用しない。
・4-6月那覇の友人で過ごしたら、腰痛が治った。床にせんべい布団を敷いて寝たせいかもしれない。
・ベッドのスプリングコイルが電磁波を吸収して体に良くないと友人に言われた。夫は自宅のベッドのコイルスプリングをすべて取り外した。そうして寝たら夫の腰痛も治った。
・最上階の隣の居室に住む人の娘は耳がおかしくなったので、アンテナが原因かと思って、賃貸であったこともあって、引っ越して行った。
・3階の一室は賃貸として、基地局用のバッテリー装置がある。その真上の部屋の40代の住民は脳腫瘍で亡くなった。
・詳細はレジメ参照。
13)電話基地局による健康被害事例報告 熊本 中原久男
・携帯基地局撤去に関する裁判は、最高裁まですべて敗訴で終わった。
・高裁で敗訴したら、基地局が稼働開始した。
・めまいなどの愁訴を、稼働後、周辺の住民にアンケート調査した。
・退職し、毎日家にいるようになったら、耳鳴りがし始めた。また、坐骨神経痛が発症。
・基地局電磁波によると思われる健康障害は継続している。
・現在は、様々な形で議員への働きかけの活動を行っている。
14)電話基地局による健康被害事例報告 宮崎 岡田澄夫
・現在 KDDIと係争中。 地裁での審理は結審し、10月に判決が出る。
・宮田医師による「電磁波被曝に起因する・・・・」という所見書を書いてもらった。
・延岡では、実際に健康被害が出ていることで裁判となっているので、この裁判で勝てなければ今後の全ての裁判では勝てないことになりかねない。
・2月の結審の時、10月に判決を言い渡す と裁判長に言われて、退席しようとする裁判長に「なんで10月か!」と食ってかかった。判決を書くために8か月は長い。高峰弁護士には「原告に有利なことの可能性を探るために時間がかかるかもしれない」と言われた。
・詳細はレジメ参照
15)全般的な質疑応答
Q:住んでいるマンションの隣のマンションに携帯電話基地局が建つ予定。2週間以内に開始。住んでいるマンションで反対しているのは私一人。隣のマンションでの建設に反対した例などの情報は?
A:回答なし。
Q:一つのアンテナ建設をつぶしたら、その周りにたくさん基地局が建つようになった。反対運動を行った仲間の一人が金で相手に取り込まれたと見える。見回りをしているが、1か所に建ってしまったら、さらに2か所も建ってしまった。2か所は撤去させたが。こうしたことへの対処の方法はあるか?携帯電話の場合は、音声通話ではなく、動画などを受信すると携帯電話の通話量が増えて、結果として電磁波の増加、基地局の増加につながる。携帯電話の利用では、動画の利用はあきらめるなども必要と思います。これは意見として。
A(近藤):区長の所に1本携帯基地局アンテナが建っている。また、アンテナの容認派と区内での対立が顕在化している。原因は情報不足から、国民は「携帯電話基地局の電磁波は健康影響がありえる」と知るべきである。
Q:鎌倉から来た。鎌倉の場合は市の条例ができても鎌倉での建設は止められない。川西の場合は条例が無くても建設を止められているとあるとは大きな関心があります。
A(山路):ドコモは区や市の条例には従うと言われた。そこで条例化の請願などの運動を行い、条例案を提示した。市議らに意見を求めると、「条例」という言葉自体が嫌いで、条例化は困難と判った。そこで、条例ではなく、市が4社の携帯通信会社にうまく通告を行ってくれた。これが功を奏している。川西のこうした動きは評判になり、市内には基地局は建設されなくなり、過疎の所には建つが、どこも嫌がって建たない。そこで、隣接の町に建つようになっている。
Q:治療薬としてのホルモン剤の服用、カフェインの取り過ぎで、電磁波過敏症と類似の症状が出るようになった。薬の影響と電磁波過敏症は何か、共通点はあるか?
A(新城):難しい問題。ホルモン剤などは自律神経に影響することは確か。電磁波過敏症も神経に影響しているかもしれない。
Q:横浜の海抜40mの所に住んでいる。東京スカイツリーの電波の影響は? 3月以降 強い電磁波を感じるので。
A(網代):わからない。スカイツリーからは試験電波は出始めている、タクシー無線などの電波利用は始まっていることは確かである。
Q:娘が電磁波の影響を受けている。高周波の防護服の着用を考えている。服の空いている部分からの電磁波の侵入や、服の中での反射などは?低周波は効果がないのでは?
A(加藤):電磁波のシールドクロスがあり、自分で服を作っている人もいる。そうした服の着用で楽になったという人もいる。シールドクロスは電磁波を反射してくれるが、帯電もする。帯電によってかえって逆効果の場合もある。ケースバイケースで考える必要がある、安価な素材で試してみて、良ければさらに工夫する というやり方が良い。
A(荻野):やみくもに防護するのではなく、高周波なのか低周波なのか、強度などどの程度のことまでやるかをある程度 見極めてから試行した方が良い。
Q:千葉からきた。コンビニなどの角地によく見かけるY字型のアンテナは?
A(網代):何のことは判らない。写真などを取ってきてください。
16)最後の挨拶 荻野晃也
・電磁波の健康影響問題を広げていく先駆けとなるこの集会、今後も広げていきましょう。
以上で1時から5時20分までのシンポジウムを終了。
関心のある方は、このシンポジウムのレジメ集を入手して、読んでください。
記;2012−5−9
電気学会全国大会が開催され、以下の3点の電磁波の健康影響に関する発表がありました。
(広島工業大学 五日市キャンパス 2012年3月21日(水)午前〜3月23日(金)午後)
1-161
電磁波が健康に与える影響
(1):コードレス電話
○藪根一正(日本医療・電磁環境研究所)・今村貞洋(今村眼科クリニック)・伊藤峯雄(日本医療・電磁環境研究所)
近年情報通信の発達に伴い、電磁波が健康に与える影響について多方面で懸念されるようになった。
例えば、2011年5月にWHOのIARCが携帯電話と悪性脳腫瘍を発症するリスクの関係について言及した。
筆者らも電磁波と健康の関係について研究を進めている。
その一端として、コードレス電話の普及率が高くなるに従い、悪性脳腫瘍もほぼ同じ増加率で増える傾向にあることを見つけた。
今回、コードレス電話の電磁波強度と健康に着目し、その強度をシステマチックに測定したので報告する。
1-165
簡易2媒質生体モデル内における接触電流の計測
○壱岐祐典・青木秀幸・浜元 勲・林 則行(宮崎大学)・太良尾浩生(香川高等専門学校)
著者らは,人体詳細モデルを用いて人体インピーダンスや接触電流の数値解析を行っている.
この数値解析に用いているプログラムは,外部電磁界への暴露に伴う誘導電界や電流の解析で良く使用されているSPFD法を独自に改良したものである.
現在は、この改良SPFD法の有用性を確認するために複雑な生体モデルを作製しようとしている。
本稿では,生体の導電率を模擬した2媒質モデル内の誘導電界を実測し,さらにFEMと改良SPFD法という原理の異なる二つの数値解析手法で求めた解析値と実測値とを比較検討した結果を報告している。
2-123
中間周波数帯の磁界曝露による遺伝子の損傷評価
○福井健介・遠藤銀郎・宮内啓介・芳賀 昭(東北学院大学)・松木英敏(東北大学)
中間周波数帯の磁界に着目し、それが人体にどのような影響を与えるかをDNAの損傷程度を発光によって検知出来る大腸菌の変異株を用いて、直接その菌に対して磁界を曝露することによって評価する。
DNAの損傷をその修復過程において発光タンパク質を生成する変異株を大腸菌に形質転換し、大腸菌に対して磁界曝露を行い、発光強度を測定する。曝露時間が30分の場合は結果の差が大きいが2時間では差が小さく安定した。
曝露時間2時間の場合に1.2倍程度の差が現れるがそれは確実に磁界影響とは言い切れない。
BEMSJはこの学会には参加してはいません。
電気学会のサイトにあるプログラムから、上記の情報を得ました。
関心のある方は、学会の論文集などを読んでください。
纏め:2012−10−21
1.主催者の開催案内から
開催のご案内
電磁界情報センターでは、電力設備や家電製品などから発生する50/60Hzの電磁波(電磁界)に関して、さまざまな視点から議論する機会を設け、10回シリーズの電磁界フォーラムを開催しています。
第7回のテーマは「電磁過敏症:臨床および実験的研究の現状」です。非常に弱い電磁界に曝露されても、なんらかの身体症状が出ていると訴える人々がいます。
このような症状は、一般的に電磁過敏症(EHS)と呼ばれていますが、そもそも発症と電磁界の関連はあるのか、電磁過敏症に関する研究の状況はどうなのか、その対策など、専門家を招いて説明いただくとともに、パネルディスカッションにより参加者の皆さまと共に考え、理解を深めたいと思います。
なお、本フォーラムは、できる限り多くの質問を効率的に回答させていただくため、「事前質問」の形式をとります。当日会場からの口頭質問は予定しておりませんので予めご了承ください。
記
会 場 日本科学未来館 みらいCANホール
日 時 平成24年7月20日(金)13:00〜15:30
≪プログラム≫
・13:00−13:05 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
・13:05−13:25 講演 フォーラム開催の背景 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
・13:25−13:55 講演 携帯電話端末からの電波による症状に関する研究 福島県立医科大学 医学部教授 宇川 義一
・13:55−14:25 講演 プロス・アンド・コンスから見た「いわゆる電磁過敏症」 東海大学 医学部専任教授 坂部 貢
・14:25−14:40 休憩
・14:40−15:25 パネルディスカッション 司会 シーアンドピートレーディング株式会社 伝 理奈
・15:25−15:30 閉会挨拶 電磁界情報センター 事務局
2.気の付いた点等
1)開会挨拶 小路
・本日の論点は、電磁波過敏症は有るのか(電磁波曝露と疾病の関係は有るのか?)、研究の状況、その対策は何があるか?である。
2)講演 フォーラム開催の背景 大久保千代次
・1997年に欧州の電磁波過敏症(電磁過敏症、EHS)に関する報告書が出た。
2004年WHOがプラハで電磁波過敏症に関する国際会議を開催した。
結論は同じなので、本日はWHOの電磁波過敏症に関する2005年発行のFact Sheetの内容で説明する。
・臨床医に対する勧告として、職場や家庭の電磁波の曝露低減を図って欲しいという人々の認知上の要求に焦点を当てるべきではない、とWHOは言っている。
・Roosiliの2008年の研究。電磁波過敏症の人は電波への感受性が高いのかを研究。結果は電磁波過敏症の被験者の正答率は偶然よりも高いことを示す証拠は得られなかった。
電磁波過敏症の人々の大多数は、実験室内での2重盲検法の条件下では感知できないことが示された。
・Rubinの2010年の研究、システムレビューがある。広汎な文献を調査。
結果として、電磁波過敏症の患者は自身の症状が電磁波曝露によって誘発されると確信していたが、反復実験では管理環境下で、この現象を再現できなかった。
・2011年12月、EU欧州はCOST計画の報告書を発行。電磁波曝露と症状の出現の因果関係を示す科学的な証拠がないために、電磁波過敏症の診断基準はない。
まだ、これを医学的状態として認めたEU諸国はない。
・その他はレジメ参照。
3)講演 携帯電話端末からの電波による症状に関する研究 宇川義一
・携帯電話基地局、携帯電話端末からの電磁波放射を擬似した条件下で、実験を行った。
・結果は、携帯電話基地局からの電波曝露が、感受性があるという方々に、何らかの影響をしているという客観的な効果は認められなかった。
携帯端末からの電波曝露に関しても同様の結果であった。
4)講演 プロス・アンド・コンスから見た「いわゆる電磁過敏症」 坂部貢
・プロス・アンド・コンスとは「肯定・否定」という意味。
・電磁波過敏症に関しては、早稲田大学のグループが社会学的なアプローチをふくめて、研究を開始している。
・講演者はこの講演の中で、電磁波過敏症の患者を「Self-reported Electro-Hyper-Sensitivity」(自称電磁波過敏症・自己申告電磁波過敏症)と表現した。
・シックハウスの研究の歴史をふりかえると、電磁波過敏症の研究の方向性が見えてくると思われる。
・その他はレジメを参照
5)パネル討議
司会:司会を務める「つたえ・りな」です。事前質問を盛り込んでパネル討議を行う。
司会:本日の講演内容を振返る。大久保先生はWHOの報告などを、宇川先生は国内で実施した実験の内容を、坂部先生は今後の研究方法に関する提案などを、話をしてもらいました。
司会:ノセボ効果とは? 大久保先生。
大久保:Rubinの研究で、症状は全てではないが、一部にノセボ効果があるとされる。ノセボ効果とは実際は曝露していないが、何かあると思うだけで症状が出てくること。
ドイツでfMRIを使用した実験では、携帯電話の電波を出していないにも関わらず、「電波を出しますよ」と言っただけで、電磁波過敏症患者は反応を示した。
Rubinの2011年BEMSに発表した研究がある。システムレビューである。
司会:大久保先生。日本では電磁波過敏症は診断名ではない。スウェーデンは電磁波過敏症に関する国家補償が充実している・・・・とネットでは紹介されているが?
大久保:スウェーデンでも電磁波過敏症は診断名ではない。政府はケアについてガイドラインを出し、ある種の身体障害者として扱い、補助金も出ている。
スウェーデンでは、1次対応は地方の医療機関で、2次対応はカロリンスカ病院が担当している。
ストックホルムではEHSと症状名として記載されれば、そうした人(年に20名程度)に補助金を出している。
スウェーデンの例:2009年、ある患者を電磁波過敏症とし、それ故に適切な医療を行わなかったとして、その他にも適切な医療を行わなかった例があるということで、最高裁での判決で、医師免許が剥奪された例もある。
電磁波による過敏症であるとして、適切な医療を受けない事例も発生している。
司会:事前質問からの質問。電磁波過敏症の割合は1.2%から10%と言われるが?
大久保:年々数字は変わってきている。スウェーデンはVDTによる過敏症から始まっている。
定義によって数値は変わる。1.2%というのは携帯電話に関する過敏症の数字であろう。
司会:講演の中で、電磁波過敏症は診断名としては未認可とあった。なぜか?
宇川:診断名と症状名とは異なる。電磁波過敏症はdisease(疾患)にはなっていない。
司会:電磁波過敏症はどのような周波数の電磁波が関係しているのか?
坂部:50Hzの低周波磁界、携帯電話の電波があり、そのように訴える人はいるが、診断は現実には困難。
北里大学には各地で「お手上げ」になり、紹介されてくる例がある。
すべて自己申告でしかない、これが現実的な対応である。
化学物質過敏症で経験した例であるが、引っ越してからふらつくようになった中年の女性の場合、神経内科で見てもらったら脳腫瘍がみつかった。引越しのタイミングでたまたま症状が出た。症状に隠れた重篤な疾病がある場合もある。
司会:日本子孫基金が北里大学と共同で電磁波を感知するか、脳の血流の変化を調べる研究を行った。電磁波過敏症の人に変化が見られたと報告。
2重盲検法で行ったのか?査読付き学術論文として刊行したのか?
坂部;かなり前のPilot研究であった。2重盲検法で行った。この研究は電磁波過敏症を決定づけたものではない。
H17年の厚労省の委託研究でシックハウスに関する研究報告の中で、電磁波過敏症に関して3-4頁記述した。子孫基金で記事にしたので、学術論文にはしていない。
司会:宇川先生の研究では?
宇川:2009年に基地局の電磁波に関する過敏症の研究を行い、論文にした。携帯電話端末に関する研究は刊行の準備中。
司会:北里研究所病院は?
坂部:マスコミ情報が先行しているきらいがある。北里にある診療科は化学物質に関する外来である。
電磁波過敏症は、化学物質過敏症が先行している例がある。臨床的には、電磁波源から遠ざかれ、と言っている。
化学物質過敏への対応をすれば、電磁波の過敏も解消する例がある。
司会:北里研究所病院は今もそうした診療を行っている?
坂部:そうです。今も外来は受け付けています。拒否できません。
但し、他の医療機関の紹介を受けての診断に限定している。
司会:其の他のクリニックでの対応は?
坂部:国立病院機構で環境医学を扱っている場合は、対応している。
司会:何か、電磁波関連の事業者として対応すべきことは?
坂部:仮に電磁波過敏症が解明されたとしても、携帯電話の利便性からなくすことはできない。
リスクと利便性から、どのように携帯電話を使用していくかが課題となる。
宇川:説明もできないので、報告されている学術論文などを紹介すべきであろう。
大久保:電磁波過敏症の人に直接話をしても、信用してもらえない。第3者的な機関の情報、WHOや各国の見解等を伝えるべきである。
司会:行政は何をすべきか?
坂部:研究のすそ野を広げることを促進。研究者を増やす。
宇川:同じ、できる事ならば。
大久保:これまでにかなりの研究報告が出ている。
人口の1%、2%の人が対象と考えれば、一般医からは見捨てられている、割合から言えば無視できない。身障者として手を差し伸べるというのが個人的な希望です。
司会:最後に何か?
司会:なければ、これにて終了。
関心のある方は、このフォーラムのレジメ集を入手して、全文を読んでください。
記;2012−10−20
1.セミナの概要
主催者の公表資料から
***********************
総務省関東総合通信局(局長 吉田 靖)は、「電波の安全性に関する説明会 ≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫」を下記のとおり開催いたします。
本説明会は、近年ますます身近に利用されている電波の性質や健康への影響について、一般の方に分かりやすく説明するものです。
また、参加者の方々からの御質問を幅広く受け付け、回答をさせていただくこととします。
記
1)日時:平成24年10月2日(火曜日) 13時30分から16時30分まで
2)場所:神奈川県横浜市中区 開港記念会館 1号室会議室
3)主催:総務省関東総合通信局
4)講演内容
講演1:「安心して電波を利用するために」総務省 関東総合通信局 電波監理部長 渡辺 照重
講演2 「電磁波の健康影響と身の周りのリスクについて」 一般財団法人電気安全環境研究所 電磁界情報センター 所長 大久保 千代次
2.参加して気の付いた点など
当日のBemsJのメモから
1)開会の挨拶 総務省関東総合通信局 局長 吉田 靖
・「電磁波・電波は安全である。これまでの研究から悪影響はない」というが、開き直っているようにも見える。
・絶対安全であることの証明は困難で、科学的に正確に言えばそのように言える。
2)講演1:「安心して電波を利用するために」 渡辺 照重
・携帯電話の使用と脳腫瘍に関する日本のコホート研究(疫学研究)は、当初小学生が対象であったが、昨年から大人も対象に拡大した。
・心臓ペースメーカの着用者への携帯電話の電磁波影響で、これまでは22cmの距離を取ることをガイドラインとしてきたが、このガイドラインの見直しを検討中である。
・その他はレジメを参照。
3)講演2 「電磁波の健康影響と身の周りのリスクについて」 大久保 千代次
・たばこは疫学だけではなく、様々な研究でリスクが確定しているといえる。したがって、健康増進法などで法規制も行っている。
・それに比べると電磁波の健康影響は、疫学で関連性はあるという研究は有るが、まだ確定しているとは言えない。最低限度、WHOの見解は信頼して欲しい。
・さまざまな要因のリスクを比較した研究がある。「失う命の日数」で比較すると、商用周波数のリスクを1とすれば、たばこのリスク(喫煙)は75000倍となる。
・WHOは高周波電磁界のEHC環境保健クライテリアを、たぶん、2014年に発行するであろう。
・その他はレジメ参照。
4)質疑応答
Q(フロア):人体と医療器に関する質問、電波・電磁波をシールドすることは容易ではないか?心臓ペースメーカ側で防御できないのか?
A(渡辺):心臓ペースメーカに関しては判りませんが、携帯電話との影響では22cmの距離をとるという指針を出している。この指針は見直し中。
Q(フロア):電子レンジは稼働中には1m離れるべしと、本に書いてあったが?
A(大久保):電子レンジからの電波漏洩は法規制されている。WHOのFact Sheetを読んでほしい、健康影響はないとされる。電子レンジで調理するとフリーラジカルが増加するという論があるが、これは誤り。
Q(フロア):電磁波の問題に厚労省が絡んでいない。原子力ムラ等で政府を信じていない。電磁波の問題を環境省などと横断的にやる必要があるのではないか?WHOが言っていても信じられない。わが国でも研究を推進・貢献すべき。
A(大久保):対応は省庁別になっていることは確か。1年前に厚労省に癌対策健康増進課ができて、電磁波対応することになった。私は30年前に癌の増殖に関する研究したが、強い電磁波では癌が抑制する効果が得られた。WHOの言っていることは信用して欲しい。
A(元電波部長):元電波部長をやっていた。大臣から総務省でやってもダメ・信用されないだろう、厚労省に頼めと言われて、やり始めた。WHOの見解は信用して欲しい。
A(大久保):わが国でも研究に貢献を・・・・について、総務省の関連委員会の座長を務めている。国際的にみて研究に関してはベスト10か国に入っている。どのようなことをやっているのか、外からは見えてこない、情報提供が不足している。
Q(フロア):PHSは影響が少ないと言われているが?
A(渡辺):PHSは20mWと無線電力は低い。
Q(フロア):電波は見えないので不安である。電磁波を可視化できる簡易的なセンサがあれば良いが。
A(渡辺):電波・電磁波は周波数の範囲も広く、どの周波数を計るか、一度に全帯域を図ることは困難。
Q(フロア):電磁波の健康影響に関する報道が少ないように感じるが?
A(渡辺):総務省としては報道発表を行っているつもりですが。 東京スカイツリーからの電波強度に関しては、測定結果を公開している。サイトを見て欲しい。
以上
関心のある方は、この説明会のレジメを入手して、全文を読んでください。
記;2012−11−15
1.以下の会合が開催された。
主催者の開催案内から
********************************
2012年電磁界の健康影響に関する国際コーディネート会合の開催
平成24年11月15日に、電磁界の健康影響に関する国際コーディネート会合(GLORE会合)を開催し、一般に公開することとしております。
GLORE会合は、各国の専門家・行政官により、電波の生体影響に関する最新の研究状況及び各国政府が執っている施策の動向等について発表を行うとともに、今後の研究及び施策の方向性等について意見交換を行うことにより、当該分野に関し国際協調の推進を図ることを目的として、平成9年より毎年開催されている会合です。
今回のGLORE会合では、電磁界の健康影響に関係する主要な国際機関(WHO、IARC、ICNIRP)の専門家3名を招聘し、電磁界における予防原則に関する基調講演を行っていただくこととしております。
1.会合日程:平成24年11月15日(木) 9:30〜18:00
2.会場:品川プリンスホテル メインタワー28階 エメラルド28
3.参加者:各国政府代表、関係国際機関、研究者等
4.プログラム
セッション1:電磁界における予防原則と健康への影響に関する考え方
このセッションでは、以下の国際機関の専門家3名に基調講演を行っていただく予定です。
・Emilie van Deventer 氏 (世界保健機関※1(WHO)国際電磁界プロジェクト事務局長)
・Joachim Schüz 氏 (国際がん研究機関※2(IARC)環境・放射線部門長)
・Rüdiger Matthes 氏 (国際非電離放射線防護委員会※3(ICNIRP)上部委員会議長)
セッション2:大規模研究プロジェクト
このセッションでは、各国を代表する研究者の方から、最新の研究プロジェクトの動向について紹介していただく予定です。
※1 世界保健機関(WHO):国際連合の専門機関。国際電磁界プロジェクトを推進し、電磁界の健康影響に関する科学的知見の評価、研究計画の促進・調整及び世界各国への情報提供等を行っている。
2014年に、無線周波電磁界に関する環境保健クライテリアを発刊し、総合的な健康リスク評価を行う予定。
※2 国際がん研究機関(IARC):WHOのがん研究に関する専門機関。様々な物質等に関する発がん性を調査し、その証拠の確かさを評価している。
2011年に発表した発がん性評価において、無線周波電磁界の発がん性に関する証拠の確かさを評価し、グループ2B(発がん性があるかもしれない)に分類した。
※3 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP):WHOや国際労働機関(ILO)等の国際機関と協力する中立の非政府組織であり、非電離放射線に対する人体防護ガイドラインの勧告と科学的な情報の提供を主要な役割としている。
1998年に、無線周波電磁界に対する国際的なガイドラインとして世界各国で用いられている「時間変化する電界、磁界及び電磁界へのばく露制限のためのガイドライン(300GHzまで)」を作成した。
このガイドラインは、我が国の電波防護指針とも同等のものである。
5.傍聴希望について
一般の方の傍聴を受け付けております。
会合は全て英語で行われ、同時通訳の用意はありませんが、傍聴をご希望になる場合は、以下の事項をご覧の上、傍聴登録をお願いします。
******************************
2.以下は傍聴したメモによる。
・全て英語での会合であり、同時通訳もなく、判った範囲での記録です。
1)Application of the Precautionary Principles and
Possible Health Effects of EMFs – 予防原則の適用と電磁界の健康影響の可能性:大久保千代次
・予防原則は、様々な定義がある。
・ECの2000年の定義がある。
・WHOの2000年の背景説明では、ECの2000年の定義は電磁界には不適用、Prudent Avoidance(慎重なる回避)が適当かもしれないと、記している。
・EEA(欧州環境庁)は2011年、携帯電話の使用に関して、予防原則の適用を推奨。
・低周波電磁界のIARCによる発がん判定2Bを受けてICNIRPはガイドランの改訂は行わないとした。
2)EMF and Health: A WHO Perspective -電磁界と健康:WHOの見解Emillie van
Deventer
・不安を低減、不確実性を低減、曝露を低減する。
・フランスは2012年に携帯電話に使用に関するパンフレットを作製した。
・カナダでは、政府は携帯電話の使用を制限する確証はないとしているが、地方自治体・トロント市では子供の使用を5-10分に制限することを推奨している。
Q:如何にして不安を解消するか?
A(Deventer):・・・・・(聞き取れず)
3)IARC Assessment of the
Carcinogenicity of EMFs: evaluation and recent studies 電磁界の発がん性に関するIARCの評価:評価と最近の研究 J. Schuz
・IARCの評価には、Magnitude of Carcinogenicity(発がん性に大きさ)は含まれていない。
・Deltourらの2012年研究(北欧諸国での脳腫瘍の発生頻度の1979年から2009年までに変化を見てもの)では、脳腫瘍の増加に傾向はみられない。
・2001年の低周波電磁界判定2B以降の動き、見直しの計画もあったが、新たな確証がなく、見直しに作業は行っていない。
・高周波電磁界の発がん性評価結果のモノグラフは、通常判定から1年程度で刊行するのであるが、高周波電磁界のモノグラフの刊行は遅れている。
4)ICNIRP The precautionary
principles and possible health effects of EMFs (ICNIRP: 予防原則と電磁界に健康影響に可能性) R. Matthes
・予防原則はリスク管理の手法である。リスク管理は各国の規制当局の責任で行うもの。
Q:ICNIRPの安全率(Reduction factor)は予防原則の観点からか?
A:・・・・・(聞き取れず)
5)Precautionary Approach for health effects and
regulations of RF-EMF in Japan (日本における高周波電磁界の法と健康影響に関する予防原則) 大久保千代次
・日本の電波防護指針には予防原則は採用されていない。
・予防政策として、研究を継続していく。
Q:研究の継続は予防政策か?
A(大久保):WHOのEHSには予防政策の中に「研究の継続」も含まれている。
司会:日本はそうかもしれないが、フランスではそのように受け取られていない。
6)Risk communication and precautionary Activities in
Korea (韓国におけるリスクコミュニケーションと予防政策) Nam Kim
・韓国では年内に青少年・子供の携帯電話使用に関するガイドラインを作る。
・韓国では携帯電話による頭部SARを1.6W/kgとした。
・韓国KCAのサイトでは基地局に関する情報が公開されている。(BEMSJ注;ハングル表記の為に、当該の頁を見つけることができなかった)
・電磁界情報センターを開設する予定。
Q:アメリカでの携帯電話のSARは殆どが1.6W/kgに近い値であるが、韓国の場合は?
A:測定を行った。・・・・・・(聞き取れず)
司会:韓国はSARとして1.6W/kgをアメリカに次いで採用した国である。
7)Regulation of RF Exposure in the USA (アメリカにおける高周波電磁界に法規制) R. D. Weller
・アメリカでは、携帯端末からの電波曝露の方が大きいにも関わらず、基地局からの電波曝露を気にしている。
・アメリカの法規制は科学に基づき、コンセンサスを得て決めているので、予防政策ではない。
・気にする人は、ほとんどの携帯電話のSAR値は大きな差異はないので、低SARの携帯電話を選ぶ事よりは、携帯電話を頭部から離して使用する(イヤホンマイクの使用等)ことが大事。
8)Precautionary approaches to RF fields in New Zealand (ニュージーランドにおける高周波電磁界への予防原則)M. Gledhill
・会合へは出席せず、メッセージだけが紹介された。
・重要ではない限度値をもつICNIRPの限度値に対して十分低いレベルの無線基地局からの生活環境に電磁界曝露がある。これらの低いレベルの電磁界曝露が完全に安全とは言い切れないので、何か考えなければならない。不必要な曝露を少なくすることが一つの方法である。
・ICNIRPはその規定値は十分に安全であると言っていて、ニュージーランド保健省も同意している。
9)European Commission-Directorate General for Health
and Consumers regarding the EMF issue(電磁界問題に関する健康に関するEC指令と住民) V. Garkov
・1999年のEC指令519は、加盟国に強制しないが、ICNIRPのガイドラインを採用している、これは予防原則の適用である。
10)討論
司会:WHOのEHC・Fact sheetに対応策として書かれていることが全て予防政策と言えるか?
大久保:WHOのEHCの第13章に書かれた防護措置の項に基づき、そのように考えている。
(BEMSJ注:EHCには「ある程度の科学的不確実性を前提として、適切と考えられる防護措置について勧告する。」とあるので、この13章に記載されている勧告は、科学的不確実性を前提とした、すなわちプレコーション・アプローチであると、解することができる。)
Deventer:低コスト、低電磁界放射対策などが予防政策として考えられる・・・・・(聞き取れず)。
韓国:韓国でもPrecautionとPreventionの違いなどで、混同している。低SARの携帯電話が健康に良いか・・・に関しては明日の非公開会合で詳細を討議する。
其の他の討議があったが、聞き取れず。
11)Epidemiological Studies on Mobile Phone Use and
Health among Children and Adolescents (Mobi-Kids) in Japan (日本における青少年・子供の携帯使用と健康に関する疫学研究) N. Yamagichi
・15か国の国際共同研究の一環。
・研究中
・携帯をどちらの耳で使用したか記録できる特殊な携帯電話も作った。
12)Dosimetry for Mob-Kids(携帯と子供の研究に曝露評価) M. Taki
・レジメなし
・携帯電話からの高周波電磁界の他に、低周波電磁界も評価している。
13)Mobile phone use and brain tumors in children and
adolescents :result of the CEFLO study (子供・青少年の携帯電話使用と脳腫瘍:CEFLO研究の結果) J. Schuz
・Aydinらの2011年研究報告にあるように、自己申告による使用年数、累積使用時間と脳腫瘍との関係はない。
携帯電話会社の記録に基づく使用年数との関係では2.8年以上の使用者に有意な脳腫瘍の増加がみられた。
1990年から2008年までの脳腫瘍発生頻度の変化を見ると増加の傾向はみられない。
13)LEXNET J. Whist
・レジメなし
・国際電話に関する欧州の国際共同研究、プロジェクターに表示された画面は細かくて見えず。聞き取れず。
(BEMSJ注:LEXNETは携帯電話などの電磁界曝露を、基地局からの曝露と携帯端末からの曝露を合算して考え、如何にしてトータルの曝露を低減するかを研究するプロジェクトの様である。)
14)The EFHRAN Project: an European experience of EMF
Health Risk Assessment (電磁界の健康リスク評価に関する欧州の経験) P. Ravazzani
・2009年から2012年までの欧州の共同研究
・リスク評価を行った。
・高周波と低周波電磁界の曝露レベルを調査した。
・関連する科学的な確証と欧州の市民の健康リスク認知との乖離を減らすためのリスクコミュニケーションの改善が今後の課題である。
記:2012−12−13
1.以下のシンポジウムが開催された。
主催者の開催案内からの抜粋
*****************************
平成24年度 電磁界の健康影響に関するシンポジウム開催のご案内近年、送電線等の電力設備等から発生する電磁界の健康への影響について、さまざまな情報が発信されています。
本シンポジウムでは、商用周波(50Hz/60Hz)電磁界の健康影響に関心をお持ちの方を対象に、行政や電磁界の専門家による講演や各分野からのパネリストによるディスカッションを通じて、電磁界の健康影響に関する知識と国内外の最新情報を正確かつ分かりやすく紹介します。
また、携帯電話など高周波電磁界に関する皆様からの質問についても回答いたします。
是非ご参加頂きますようご案内申し上げます。
日 時 平成24年12月11日(火) 13:00 〜 17:00(開場12:30〜)
場 所 科学技術館「サイエンスホール」 〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園2-1 (定員350名)
主 催 者 経済産業省
事 務 局 一般財団法人 電気安全環境研究所 電磁界情報センタ
参 加 費 無料
プログラム
13:00 開会挨拶 事務局
13:05 講演 主催者挨拶および講演1「経済産業省の電磁界に係わる取り組みについて」 経済産業省
13:15 講演2「電磁界リスク評価から管理までの手順」 大久保 千代次 電気安全環境研究所 電磁界情報センタ 所長
13:35 講演3「ICNIRPガイドラインの考え方」
多氣 昌生 首都大学東京大学院 理工学研究科 電気電子工学専攻 教授
13:50 講演4「電力設備 磁界測定調査結果」 多氣 昌生
14:05 講演5「海外における商用周波電磁界の規制動向」 長田 徹 野村総合研究所 インフラ産業コンサルティング部 資源&環境・グループ 上級コンサルタント
14:35 パネルディスカッション
1.電力設備磁界測定調査結果をどう考えるべきか
2.磁界による小児白血病のリスクをどう考えるべきか
≪進行≫ 土田 昭司 関西大学 社会安全学部 教授
≪パネリスト≫
経済産業省
長田 徹 野村総合研究所 インフラ産業コンサルティング部 資源&環境・グループ 上級コンサルタント
多氣 昌生 首都大学東京大学院 理工学研究科 電気電子工学専攻 教授
飛田 恵理子 東京都地域婦人団体連盟 生活環境部 部長
山口 直人 東京女子医科大学 医学部 衛生学公衆衛生学第二講座 教授
大久保 千代次 電気安全環境研究所 電磁界情報センタ 所長
16:00 質疑応答
≪進行≫ 土田 昭司
********************************
2.聴講の記
気の付いた点、残したメモによる記録です。
1)主催者挨拶および講演1「経済産業省の電磁界に係わる取り組みについて」 経済産業省
・正確な知識を持って電気機器などを使って欲しい。
・講演内容はWHOのFact Sheetとそれによる経産省の電力WGの対応、JEICの設立などに関する説明。詳細はレジメ参照。
2)講演2「電磁界リスク評価から管理までの手順」 大久保千代次
・WHOのFact Sheetの説明と日本の対応に関する解説。 詳細はレジメ参照。
3)講演3「ICNIRPガイドラインの考え方」 多氣 昌生
・ICNIRPは2012年5月に委員の改選があった。
・ICNIRPは2013年に委員会構成などを改組する。
・高周波のガイドラインは2014年になるかもしれない。
・ICNIRPの新低周波ガイドラインは、参考レベルは甘くなっているが、基本は変えていない。ドシメトリの進歩によって、基本制限は変わらず、参考レベルは甘くなった。
・その他はレジメ参照
4)講演4「電力設備 磁界測定調査結果」 多氣 昌生
・測定結果の報告、詳細はレジメ参照。
5)講演5「海外における商用周波電磁界の規制動向」長田 徹
・ドラフトで終わってしまったがWHOの予防原則に関するガイダンスの発行以降は、WHOがいうプレコーショナリー政策(数値による曝露制限値を設定するだけではなく、予防原則に基づく施策には研究の推進なども含むとする)を採用する国も増えてきている。
・ドイツでは規格を改訂する動きがある、50Hzの数値はICNIRP1998年ガイドラインのままに据え置くが、その他の周波数に関してはICNIRP2010年ガイドライン値にする。
・オーストラリアでは独自の規定、低周波で300μTという規定を提案していたが、国際的な数値に調和するかもしれない。
・その他 レジメ参照
6)パネルディスカッション
1.電力設備磁界測定調査結果をどう考えるべきか
2.磁界による小児白血病のリスクをどう考えるべきか
≪進行≫ 土田 昭司
司会:土田です。二つのテーマでパネル討議を行う。最初は「電力設備磁界測定調査結果をどう考えるべきか」です。
経産省:磁界の規制を行った。測定法は省令で、国際的な測定法を採用することにした。電力会社にとっては義務となった。電力会社がデータを公開義務はない。そこで、どの程度の磁界曝露であるのか知るために調査を行った。
司会:実際の測定は?
多氣:きちんとした測定器で、きちんとした測定法で測定評価を行うことが大事。
測定結果はすべて、数マイクロテスラのレベルであった。省令に規定する条件以外でも測定を行った。高い磁界があるかもしれないと言われかねない送電線などが入り組んだ場所でも磁界は低かった。
司会:海外でのデータは?
長田:国によって曝露情報の公開は異なる。イタリア・スペインでは情報量は多い。やみくもに数値などの情報を出すと防護グッズの宣伝に用いられるということを気にする国もあった。曝露情報に関する国際シンポジウムも開催される例は少ない、今回は良い例である。
飛田:具体的な数値が知りたかった。測定結果を見て、低い数値なので安心した。
多氣:大学にいて、3点測定など・・・と測定法を審議していた。実際の設備で測定を行うことは、3点測定の必要性、その実際の測定における課題などが判り、実際の測定評価時とは違うことが判った。
司会:来年も測定するとすれば、何か希望は?
飛田:暮らしの中の電磁界曝露、新エネルギー(自然エネルギー)方式の発電などの設備でも測定して欲しい。また、スマートメータでの電磁界測定も行って欲しい。
司会:新エネルギー方式に関しては?
大久保:スマートメータは高周波電磁波の利用なので、どのように対処するか?
司会:このパネル討議のテーマ1をまとめると、200μTの規制値に比べて2ケタ位小さい値であった。実際の数値が得られた。ということになる。
司会:次のテーマ「2.磁界による小児白血病のリスクをどう考えるべきか」について
山口:発がん性評価は疫学、細胞実験、動物実験の結果の総合判定である。IARCの2B判定はそうした限定条件下での結果である。
大久保:身の回りには様々なリスクはある。リスクを失う命の日数で評価する。電磁波を1とすると受動喫煙は1200倍のリスクとなる。一般の人の感知は、まったく逆になっている。メディアは危険情報を期待している。
長田:社会心理学が専門です。マスコミは誰でも知っている既知の危険に関しては報道しない。目新しいことであれば、あまり大きな危険性がないことでも大きく報道する。
司会;リスクへの対応は?
飛田:ジーゼル粒子のリスクの場合、30年以上、カプセルを貼り付けて、市民がジーゼルに関しては大気汚染を把握するために、実際に測定などを行ってきている。不安に追い込まれるだけではなく、そうした実際に測定するなど、様々な努力は必要。
経産省:電磁界の影響は30年前に提起されて以来、研究がおこなわれてきたが、判らないことが残っている。IARC判定2Bとなっているが、今後も情報を集めていく。
多氣:電界・磁界は工学で説明できる。生体影響の場合は、生体内の電気現象がある。きちんとした評価が必要で、根拠を情報提供していきたい。
飛田;IARC判定2Bについて、2Bとなっているので、何かしなければならないと思っている。できるだけ低曝露に、リスクの低減を図るべき。メーカもできることはやって欲しい。
山口:2B判定は、放置しておいて良いというものではない。
長田:送電線新設の時は大きなシンポジウムが行われるが、一般的な情報提供事業としてのシンポジウム等は少ない。海外ではインタネットだけで、パンフレットを作る予算すらつかないケースもある。
司会:全体としては?
多氣:情報提供事業としての本日のシンポジウムである。「危ない」の連呼ではなく、「安全」の連呼でもなく、言っていることの根拠を知ってほしい。そして、各人の判断が必要。
司会:この世界にゼロリスクはない。将来のことは誰にも判らない。ある特定の要素のリスクだけにこだわると、他のリスクを見落とす恐れがある。バランスを持ってリスクを考えることが必要。以上でパネル討議を終わる。
7.質疑応答
司会:大久保です。事前質問と本日フロアからの質問で質疑応答を行う。数十のフロアからの質問がある。
司会:磁界の癌患者へのリスクは? という質問に対して、がんのリスクを否定することはできない。小児白血病の可能性はある。がん患者への電磁界曝露は関しては、知見はないが、電磁波が癌治療に利用されていることもある。
司会:安全となる閾値は? と言う質問に対して、0・4μテスラという数値は疫学の研究におけるCut Pointである。0.4μテスラ以上の曝露群での症例が少ないので、閾値に関する確立したデータはない。
司会:10年前の環境研究所の研究に関する現在の見解は?
山口:2006年に学術雑誌に論文として掲載された。その後の類似の研究結果(アルボームのプール分析以降の研究をまとめたカイフェッツによるプール分析)も同じ傾向にある。
司会:更なる研究とは?と言う質問に対して、JEICは小児白血病に関するフォーラムを2011年に開催した。これはまだ提案にとどまっている。この提案内容はJEICのサイトに公開してある。動物実験ではラットの血液をヒトの血液にした動物モデルを作成する研究が進んでおり、そうしたマウスを利用した白血病の研究も可能になるであろう。
司会:電気カーペット・毛布等からの影響は? パソコンからの影響は?
多氣:家電機器からの電磁波に関しては測定結果がある。低レベルであり、空間分布が均一ではない曝露に関してIEC規定のカップリング係数を用いて評価した結果でも大丈夫であった。200μテスラを1時間曝露と20μTテスラを10時間曝露では同じか?今の、ICNIRPは長時間曝露に関しては考えていない、長くても、短くても同じとしている。パソコンに関しては、WHOのFact Sheetを見て欲しい、電磁界への曝露はOKであるが、人間工学的な課題には要注意である。
司会:IH調理器については、という質問に関して。WHOのInfo Sheetが参考になる。WHOの低周波電磁界のEHCでは中間周波数の電磁界に関しては研究が不足している、とある。スイスのFOPHは2009年にFact Sheetをだし、使用法を適切にすれば低曝露になると、また金属製スプーンは使用しない様に、と記している。
司会;携帯電話に関しては?
山口:脳への短期影響(血流等)に関しては未確定。長期影響(脳腫瘍)に関してはIARC判定2Bが参考になる。子供への影響に関しては、Mobi-Kidの国際共同研究が進行中。
大久保:欧州共同研究CEFLOの研究では子供への影響はなかった。
司会:携帯基地局からの影響は?
多氣:WHOはFact Sheet304発行、それを見て欲しい。携帯基地局からの電波は弱い。弱くて済むので、多くの人が同時に携帯電話を利用できる。総務省の電波強度測定結果の報告もある。基地局の近傍だから強い電波であることはない。非特異性症状に関して、今年の研究としてコホート研究が出てきている。携帯基地局の近くで耳鳴りがする(電波のせい)という人がいる、研究結果は電波が原因であると示唆することはなかったというもの。
司会:周りで多くの携帯電話が使用されており、怖い、という質問に対して
多氣:本堂の研究があるからであろう。電車の中で電磁波が強くなる・・・・という研究である。しかし、フィンランドの研究では本堂理論に通りにはならない、という結果である。野島のEMC誌NO.222に掲載された解説では、電車の中での心配は不要となっている。
司会:日本より厳しい規定は?
多氣:設備からの放射を規制している例はある。日本の曝露規定はICNIRPの規定と同じ。
司会:電磁波過敏症に関しての質問が多い。これに関しては、WHOのFact Sheet 296が参考になる。リヒテンシュタインでは厳しく規制した。しかし、通信ができなくなって不便になったので、国民投票で厳しい規制は否定された、という例もある。
司会:フロアからの質問に答える時間が少なくなってしまった。それぞれの担当から回答を。
経産省:電磁波過敏症に関する原因究明を行うか?と言う質問に対して、経産省としては情報の収集を継続する。本日紹介した電力設備からの磁界測定結果は公表するのか?という質問に関しては、公表したい。家電や携帯電話に関する規制はどうなっているか?という質問に関しては、本日配布のJEICのパンフレットに記載してある各担当省庁に聞いて欲しい。電力設備からの磁界測定は来年度も行うのか、という質問に関しては、予算は請求中です。
長田:イタリアで3μTに規制に関して、という質問に対して、イタリアでは新設の設備からの曝露は3μTとしたが、たぶん大きな問題はないだろうとされる、既設の設備からは10μTに規制されるが、これは改修が必要で、費用が掛かる。欧州では電界規制が厳しいように見えるが、という質問に関して、欧州では電界を5kV/mに、磁界を100μTに規制するが、100μTは適合可能、電界は鉄塔を高くしなければならないので、対応が困難とされる。
山口:過去の疫学調査、1979年、という質問に対して、これは1979年アメリカ、コロラド州での研究である。
飛田;相対リスクの小さい電磁界の低減より他に大きなリスクのあることに金を回せ、という質問に対して、悪徳業者もいて、測定や水晶玉等の防護グッズを売る場合もあり、電磁界の問題は、社会問題の一つとして取り組みを継続すべき。
司会:以上で質疑応答は終了。フロアからの質問で回答できなかったものに関しては、氏名・連絡先が記入されていれば、個別に回答します。
関心のある方は、このシンポジウムのレジメを入手して、読んでください。
記:2012−12−15
1.以下のシンポジウムが開催された。
主催者の開催案内から
*********************
電磁波問題シンポジウム‐予防原則と人権保障の観点から
平成24 年12 月15 日
於: 千代田区立日比谷図書文化館
2011年5月にIARC(国際がん研究機関)が携帯電話から発せられる高周波の電磁波による発がん性リスクを2Bとランク付けるなど、現在、電磁波の健康影響に関する関心が高まっています。
そこで、日弁連では、今般、電磁波問題に関する意見書を公表し、同意見書においては、予防原則の観点から幼稚園、小学校等が存在する地域の電磁波に関する規制値を検討することや電磁波放出施設を設置する際に住民と協議することなどを求めております。
本シンポジウムでは、日弁連が公表した意見書の内容をご報告するとともに、改めて、今後わが国で電磁波の問題にどのように取り組むべきかを考えます。
◆入場無料
【プログラム 】
○日本弁護士連合会 意見書に関するご報告
○海外調査報告 中西良一 弁護士(日弁連公害対策・環境保全委員会
○講演「電磁波の健康影響に関する最新の研究(仮題)」坂部貢氏 (東海大学医学部教授・日本臨床環境医学会理事長)
○ 報告 小学校における電磁波の健康影響に関する報告 近藤加代子 氏
○パネルディスカッション
(パネリスト) 坂部貢、戸部真澄(大阪経済大学経済学部准教授)、石川寿美(鎌倉市議)、加藤やす子(環境ジャーナリスト)、高峰真(弁護士)
(コーディネーター) 浅野明子(弁護士)村山雅則(弁護士)
◆主催 日本弁護士連合会
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2.シンポジウムの内容、BEMSJのメモから
1)参加者数 100名弱の参加者数と思われた。
数年前2010年の日弁連の電磁波シンポジウムでは、300名といった超満員の参加者があったが、今回は、かなりの空席が目立った。
2)開会の挨拶 山下弁護士 日弁連副会長
・私は、23年前のショルダーフォンの時代から、太巻きのような携帯電話をふくめて、携帯電話を使用してきた。
電磁波に関して、不安をあおるだけではなく、メリット・デメリットを知るきっかけになれば良い。
3)基調報告:日本弁護士連合会 電磁波問題に関する意見書について 高峰真
・意見書に関する経緯と概要を簡単に説明する。
・詳細はレジメにある意見書を読んで欲しい。
・日弁連では2011年3月にスイスとスウェーデンへの海外調査を行った。
・意見書では、新たな安全対策の創設、暫定的な規制(センシティブエリアへの対応)、情報公開(携帯電話基地局に関する情報等)、実態調査、電磁波過敏症への対応 を盛り込んである。
・ICNIRP以下の電磁波曝露では健康影響は確立していないが、予防原則は適用すべき。
4)基調報告:電磁波問題に関するスウェーデン・スイス調査報告 中西良一
・世界的に電磁波問題では先駆的とされるスウェーデン、スイスを訪問した。
・スウェーデンでの政府の対応は、日本と同じであった。
・スウェーデンの市民団体との交流では、「自治体の中に一定の支援を行っている場合もあるが、政府としては動いていない」とあった。
・スウェーデンでは、マツ氏と交流した。「市内に低電磁波区域を作ろうとして、携帯電話基地局を規制したが、政府の基準に適合しているという観点から、裁判に訴えられ、敗訴してしまった。
国会議員になり、動かそうとしたが、駄目であった。」と。
・スイスでは、連邦としてはICNIRPが基準となっている。健康影響の可能性があることから、予防原則を適用した。10年経過しているが、電力も、携帯電話も、安定して利用されている。
・詳しくはレジメにある報告書を読んで欲しい。
レジメから抜粋、 講演の中では言及されなかったが、講演終了後にレジメを読んだBEMSJが重要と感じた個所を、以下に列記。
・最初の訪問先である労働環境機関でショックだったのは、スウェーデンにおいても政府の電磁波問題に対する考え方が日本とあまり変わらない、ということでした。
・電磁波過敏症に対するスウェーデン政府・自治体の対応:スウェーデンでも、電磁波過敏症という病名が認められているわけではありません。したがって、電磁波過敏症にかかったことによって、仕事を休んでも休業補償を受けられるわけではなく、その場合は別の福祉制度で生活費の保障を受けなければならないそうです。もっとも、自治体には全ての人に適切な住宅を提供する義務があるので、電磁波過敏症の人でも住みやすい住宅にするための支援はしているということでした。
・無害だと主張する研究者のなかには、当該電磁波を発生させている企業・団体やこれを推進している組織から経済的援助を受けていたりすることも知られています。そうすると、我々、法律家としては、そうした研究者の研究報告がどれくらい信用できるのか、公正かつ客観的に、電磁波の健康影響を調査するには、どうした形で研究が行われるべきなのかといった疑問が出てくるところです。そこで、この点を、(スウェーデンの)ヨハンソン准教授に質問してみたところ、科学者らしいというか、我々には意外な答えが返ってきました。すなわち、同准教授は、「碗究成果を考えるにあたって研究資金の出資者とか、公平さなんて問題にすべきではないし、実際にも、カロリンツカでノーベル医学賞を決めるときにおいて公平さなんて全く考えていない。研究成果の価値や当否は研究内容のみで決まる。あなた方も、研究内容だけを見るべきだ。」と仰っていました。
・電磁波過敏症患者は増えているか。:(スウェーデンの)トンデル氏は、電磁波過敏症の患者はこの10年間で増えていないといいます。同氏によれば、スウェーデンでは1999年と2007年にアンケート調査を行っているらしく、この結果を基にすすれば、いずれの調査でも電磁波過敏症を訴える人は3%位ということで変わりがないとのことでした。また、同氏によれば、似たような調査をした幾つかの国があって、それらの調査結果でも電磁波過敏症を訴えた人は2〜8%とされていて、電磁波過敏症患者の増加を示すものはないということのようです。
・最後に:トンデル氏からは、フランス議会や保険社会庁、ドイツ健康省、アメリカの機関からも話を聞きに担当者が訪れてくるが、どうしてスウェーデンに来るのかといった質問がありました。我々から、日本でもスウェーデンの電磁波問題に対する対応が先進的であるとの報告が多数紹介されていることを伝えると、何か国際的に勘違いがあるように思うとの苦笑いしておられたのが印象的でした。その原因として、同氏は、スウェーデンでは電磁波過敏症の患者がよく組織化されており、政治家らに意見をうまく伝えている結果で、ロビーイズムの成功した結果ではないかと思うと分析されていました。確かに、スウェーデンの行政の現状は、今回実際に現地で調査をするより以前に考えていたレベルと比べると先進的とはいえないように感じました。
・(スイスの)ガントナー氏の担当事案:ガントナー氏の事案は、A(政府の規制値以下であっても当該曝露の値は高すぎる)の理由によるものだったそうで、バイオイニシアチブレポート等を根拠に政府の定める規制値が守られていても安全とはいえないとの主張をしたそうですが、連邦裁判所まで進み敗訴に終わったということでした。ガントナー氏は、裁判所は、専門家が要るのは行政だから、行政に任せておけば良いという姿勢であるように感じたということでした。スイスにおいて、Aを理由とした基地局の差止めに成功した例はないそうです。
5)基調講演:電磁波の健康影響に関する最新の研究 坂部 貢
・疾病には環境因子と遺伝因子の両方が交絡している。
・このシンポジウムの開始前に、会場の入り口などで見ていたら、反原発の腕章をつけた人がタバコを吸うために喫煙室に入っていった。リスクを考える。
・電磁波のエネルギー強度に依存する影響と、過敏症的な影響は別であり、個別に医学的な検証が必要。
6)事例報告:小学校における電磁環境と子供たちの健康について 近藤加代子
・娘が通学している小学校での事例である。
・携帯電話基地局が9年前に校舎から100mの地点に建設された。2年前にAUの携帯電話基地局の建設の話があって、この増設が契機となって電磁波が話題になった。小学校の学童の健康調査を行った。校舎の1階でも0.3μW/cm2の電磁波強度である。3階で3.7μW/cm2であった。
・学校の環境要因と、家庭での要因(家庭と携帯電話基地局との距離、携帯の使用、家庭での無線ゲームの利用など)との間に相関関係があった。
・校舎に電磁波シールドを追加する父兄による作業が行われている。シールドした時の電磁界強度の数値もPPTの画面に表示されていたが、細かくて読み取れず、演者もこの点に触れずに終わった。
・シールドを貼った教室の児童の愁訴は減った。
7)パネル討議
司会:4つのテーマ、携帯電話などに関する予防原則、センシティブエリアへの対応、電磁波過敏症への対応、そしてまとめ で話を進める。
司会:携帯電話などの予防原則に関して。 最初に日本の現状は?
高峰:建築法での規制はあっても、電磁波に関して格別の法規制はない。日本では携帯電話基地局からの電磁波への不安などから裁判になっている。基地局周辺の住民への情報開示は不十分である。
司会:ドイツでは?
戸部:日本とドイツの環境法が専門で、ドイツの電磁波規制を調べたことがある。詳細はレジメを読んで欲しい。
1990年代の携帯電話普及時期に、高圧線に関する訴訟の他に、携帯電話基地局に関する訴訟もあった。1990年代はドイツでは法的な基準値はなかったので、裁判官の独自認定で判断された。第1審では電磁波は危険と認定され、控訴審では逆転判決(住民敗訴)となるなど、マチマチで、法的には不安定であった。
1997年に法規定(連邦エミッション防止法)が行われた。危険(科学的にわかっている危険、未然防止Preventionを行う)とリスク(不確実性があり、予防原則Precautionを適用する)に明確に分けている。
危険とされ、未然防止策は、高周波では熱作用に基づき、ICNIRPレベルの全身平均SAR0.08W/kgであり、50Hzの低周波では5kV/m、100μTに規制。リスクに関しては、高周波は設定されず、低周波に関しては、学校などセンシティブエリアに関しては50Hz で1.7kV/m、10μTとした。
その後、ドイツ連邦政府では2002年から2008年にかけて調査を行い、現状の規制値以下では発がんのリスクは確認されなかったとして、高周波に関しては予防的な規制値は設定されていない。
司会:ドイツの規制値の話があった。日本の規制値や裁判は?
高峰:日本の携帯電話基地局の差し止め裁判では、電波防護指針に適合しているとして、健康影響は認めていない。健康影響が出ているとした延岡裁判でも、認められなかった。ドイツのような予防原則による法規制は日本では進んでいない。自治体としての動きは?
石川:鎌倉市の携帯基地局に関する条例は、褒められてはいる。市民からの陳情が市議会で採択され、市条例の策定となった。条例化にあたっては多くのパブコメが寄せられた。携帯電話基地局設置にあたっては告知が義務化された。この条例は公布されたかが、運用に不備がある。「地縁団体」の定義から自治会が対象となるが、電波の届く範囲から、全ての周辺住民を対象とすべきである。2012年9月にこの条例改訂にかんする陳情が出され、市議会で採択された。紛争防止が目的の条例であるが、この条例で情報開示などを行い、住民との間に紛争が起ってしまっている。鎌倉市は紛争に対して何もできていない。
司会:センシティブエリアに関して論議。
加藤:日本では文科省が学校の教育のデジタル化を推進している。デジタル教科書を使用、タブレットを支給し、校内に無線Lan設置と。また、家庭にスマートメータが設置されようとしている。学校も家庭にも無線電波発信源が設置されてしまう。レジメに記載したが、札幌の地下街では携帯電話のインフラ整備が進み、実測した結果では3.89μW/cm2もあった。
坂部:成長期の子供、胎児は細胞分裂が盛んで、様々な要因の影響を受けやすい。
司会:周波数による健康影響に違いはあるのか、坂部さん
坂部:・・・・・・<BEMSJ注:意味が不明でメモが取れない、周波数による健康影響に関して、まともに回答していない。>
司会:IARC2002年の低周波電磁界発がん性2Bは、ドイツの規制に結び付いたのか?
戸部:ドイツでは1997年の段階で、低周波に関しては様々な論文があったので、対応策がまとまった。
司会:周波数が高いと影響度は大きくなるのか?周波数と無関係なのか?坂部さん。
坂部:一般的には電磁波の強度より、周波数による特異的な影響が大きい。
司会:大宰府では父兄がシールドを貼ろうとしたが止められたというが、鎌倉では?
石川:父兄が貼りたいことを市などが反対することはあってはならないこと。鎌倉の市条例では「学校の周辺では特に配慮すべき」としてあるので、この条文を基に、学校の近くでの携帯電話基地局建設には意見を言える。
司会:電磁波の発生源に関して?
加藤:家庭環境ではデジタル・コードレス電話が大きな発生源となっている。家庭の外からの電磁波が入ってくるのではなく、家庭内に大きな発生源があったケースもある。IH炊飯器も電磁波を漏洩している。
近藤:学校でのWifiが問題と思う。小学校での測定で、3階で簡易測定器での測定での記録では、外に有る携帯基地局からの電磁波より、Wifiの方が大きい。九州大学もWifi化された。色々と調査すれば判るはず。
高峰:調査に関しては、まさにそうだ。
司会:電磁波過敏症に関して
加藤:日本で75名の電磁波過敏症者に関する調査報告書を書いた。発症の基になった発生源は携帯基地局とPHS基地局が多かった。発症して仕事を失い、電磁波対策で多額の費用をかけている。
坂部:化学物質過敏症の場合は、日本にコアとなる病院があり、元いた北里大学病院などで研究ができた。電磁波過敏症に関しては、標準化された診断基準を作る必要がある。これがあれば、多くの医師は診断を行い、関心を持って研究もおこなわれるようになる。
司会:オーストリアの医師会は携帯電話の使用などに関するルールを作っている。日本の医師会としては何か?
坂部:日本の医学界は一般の人に向けてそうした活動は少ない。最初は医学雑誌などで医者向けに情報を発信することから始める。
司会:携帯電話に何か注意書きは書かれていないのか?
加藤:携帯電話の使い過ぎに注意という記述はあるのか?アメリカでは携帯電話を購入して、開封すれば、そうした注意書きは読めるようになっている。そうした注意書きは購入前にパッケージの外から見えるようにすべき、というのがサンフランシスコ市の動き。
戸部:ドイツでのそうした動きは、判らない。
加藤:ドイツ、イギリスでは基地局情報はインタネットで公開されている。日本では公開はない。
司会:電磁波過敏症に関して国ではなく、自治体での対応は?
石川:役所での対応はない。自治体ではなく、市民が、たとえば携帯電話基地局マップを作り、これだけ多数の基地局がある、十分ではないかと、示すことは可能。
司会:スウェーデンでは自治体が電磁波過敏症を容認しているという報告があったが?
高峰:スウェーデンでは、容認している自治体もあるが、国レベルでの対応は必要。電磁波過敏症は人権問題である。
司会:纏めに入る。世論の形成をどうするか?
坂部:電磁波過敏症は疾患として確立していない。問題提起を行い、それで、医学が後をついていく。
戸部:調査を行い、知見が無ければ何もしなくてもよいことになる。低周波電磁界の規制で日本、ドイツ(10μT)は、政策判断の結果で異なったものになっている。予防原則は科学の課題ではなく、政策である。
石川:地方自治体、議会は役割を果たしていない。
加藤:私は電磁波過敏症と化学物質過敏症を発症している。患者会の代表もやっている。被害を少なくしていきたい。
高峰:人権を守る、電磁波問題を訴えていく。
司会:これで終了。
8)閉会の辞 西島弁護士
関心のある方は、レジメを入手して、読んでください。
記:2013−3−18
1.以下の説明会が開催された。
開催案内から抜粋
*********************
「電波の安全性に関する説明会」を東京都千代田区で開催
安全で安心な電波利用環境に向けて 総務省関東総合通信局(局長 吉田は、「電波の安全性に関する説明会 ≪安全で安心な電波利用環境に向けて≫」を下記のとおり開催いたします。
本説明会は、近年ますます身近に利用されている電波の性質や健康への影響について、行政、医学のそれぞれの観点から、一般の方にも分かりやすく説明するものです。
また、参加者の方々からのご質問を幅広く受け付け、回答をさせていただくこととします。
記
1)日時 平成25年3月8日(金曜日) 13時30分から16時00分まで
2)場所 九段第三合同庁舎 11階 共用会議室
3)主催 総務省関東総合通信局
4)講演内容
講演1 「安心して電波を利用するために」 総務省 関東総合通信局 電波監理部長 渡辺 照重
講演2 「身のまわりの電磁界と健康について」 東京女子医科大学 教授 山口 直人
**********************************
2.BEMSJは怪我のためにこの説明会に出席できなかった。
レジメと事前質問・回答の資料は入手した。
これらの資料から気が付いた点を以下に列記する。
1)講演1 「安心して電波を利用するために」 渡辺 照重
・電波の安全性確保の観点から、スマートフォンやタブレット端末、新たな無線通信機器にも適用すべく、現在、人体の側頭部以外の部位に近づけて使用する無線設備に対してもSAR許容値を適用することを検討中。
2)講演2 「身のまわりの電磁界と健康について」 山口 直人
・携帯電話と癌の疫学研究の紹介
3)事前質問と回答の資料から
Q:隣接の地にスカバーの会社があり大きなアンテナが設置されていて、電波を発信しています。
電磁波が体に与える影響はどんなものか。新しい科学的根拠を聴講させて下さい。
A:衛星通信で使用されているカセグレン(パラボラ)アンテナは、人工衛星を追尾しており、指向性が強いという特性があります。
この伝搬路から外れると電波の強さは著しく減表します。
また、伝送路上に障害物があると通信自体に支障が起きます。
社団法人電波産業会が平成11年10月26日に策定した「電波防護標準規格への適合性の確認法」では、パラボラアンテナの場合で出力3000W、アンテナ直径18m、周波数6GHzとした場合の一般環境の防護指針を下回る距離を試算しています(伝送路の主軸(発射される電波の中心部分)から15度外れた場合で6.6m、主軸上で4720.1mと試算しています)。
スカバーの出力は270W、アンテナ直径6m程度、周波数14GHzですので、この試算値よりも短い距離で防護指針を満足します。
電磁波が身体に与える影響については.講演で説明します。
A:高周波電磁波に関して、ICNIRPのガイドライシの今後の修正予定は
Q:今後、ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)では、様々な通信・放送システムで用いられている高周波電磁界(100kHz−300GHz)のガイドラインの改訂作業が開始される予定です。
改訂ガイドラインは、昨年(2011年)のWHO/lARC(国際がん研究機関)による電波の発がん性評価結果を考慮したものとなり、我が国をはじめ世界各国の電波防護規制に対して、大きな影響を与えるものと予想されます。
(NICT NEWS2012年5月号から)。動向としては、今年にも改訂される動きといわれていましたが、遅れているようです。
関心のある方は、レジメなどを入手して読んでください。
記;2014−2−3
1.以下のシンポジウムが開催された。
日 時 : 2013年11月16日(土)13:30〜16:30
会 場 : 東京ウイメンズプラザ ホール
参加費 : 1,000円
主 催 : 「 高圧線問題と電力システム改革」シンポジウム実行委員会
共 催 : 日本消費者連盟、ガウスネット
後 援 : 電磁波からいのちを守る全国ネット
プログラム
・お話とDVD上映 「青海小水力発電プロジェクトによる回る水車の羽根」 濱田 光一 青梅小水力発電プロジェクト たまあじさいの会
・「極低周波電磁波の危険性」 荻野 晃也 電磁波環境研究所長 京都大学原子核工学元講師
・「高圧線から見た電力自由化と発送電分離」 熊本 一規 明治学院大学教授
・「藤野電力の取り組みとトランジションタウン」 小山 宮佳江 藤野観光協会 トランジションタウン藤野
・アピール : 藤田幸雄「 福島原発100万ボルト高圧線の撤去を!」
2.内容
BEMSJはこのシンポジウムには参加していない。レジメを入手し、一読した。
荻野晃也のレジメは、一般的な電磁波に関する解説であって、特記事項は無い。
その他の講演の中には、電磁波の健康影響に関する記述は見当たらない。
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
3.実際のシンポジウムではどのように論議されたか不詳であるが、レジメには以下のアピールが掲載されている。
*********************
福島原発からの100万ボルト超高圧線撤去を求める訴訟の呼びかけ
超高圧送電線撤去請求案件
原告7名は各々南いわき幹線超高圧送電線の線下土地を東白川郡棚倉町地内に於いて所有し、所有権移転登記を経由している。
1、原告は被告東京電力株式会社の指名委員(前監査委員)らに対し被告が所有する、「新いわき開閉所より東側の500kV高圧送電線の福島幹線、同福島東幹線、同相馬双葉幹線、同双葉線、及び新いわき線全線、南いわき幹線(1000kV設計)A、B、C、ルート全線の各々高圧送電線設備一式を直ちに撤去せよ」と要求する。
何故ならば、福島県内に存在する原子力発電所1号機ないし10号機の全原子力発電設備は廃炉が確定しており、従って、当該原子力発電設備から電力を移送する必要は将来全く無く、当該各々高圧送電設備一式を維持管理する全費用(原告らの概算によれば、固定資産税を含めると年間金100億円以上の費用と思慮される。)は極めて無駄な支出に該当するから、直ちに当該高圧送電設備一式は取り壊し撤去すべきである。
そして、上記要求が却下された場合、商法266条第1項5号の法令定款違反に基づく東京電力取締役らに対する責任追及の為、株主代表訴訟を提起して、各々高圧送電線設備一式を直ちに取り壊し撤去する様、請求する。
2、同時に本件訴訟とは別に、原告ら7名全員から後記物件目録記載土地上空を通過する超高圧送電線(南いわき幹線)の撤去を求める訴訟を請求する。
提案:藤田幸雄ほか7名
*******************
記:2014−1−5
1:シンポジウムの概要
以下は開催案内から
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送電線等の電力設備のまわりに発生する電磁界の健康影響に関するシンポジウム
日時: 平成25年12月17日(火) 13:10 〜 17:30
場所: 東京都荒川区・日暮里サニーホール
プログラム
13:10−13:15 開会挨拶及び主催者挨拶
13:15−13:35 講演1「送電線等の電力設備のまわりに発生する電磁界に係わる経済産業省の取り組みについて」
経済産業省 田所利一 経済産業省 商務情報政策局 電力安全課 課長補佐
13:35‐14:05 講演2 「超低周波電磁界のリスク評価から管理までの手順」 電磁界情報センター 所長 大久保千代次
14:05‐14:15 講演3 「ICNIRPガイドラインの考え方」首都大学東京大学院 教授 多氣 昌生
14:15‐14:30 講演4 「電力設備磁界測定調査結果」首都大学東京大学院 教授
多氣 昌生
14:30‐14:45 講演5 「くらしを取り巻くその他の電磁界の影響について」電磁界情報センター 所長 大久保千代次
14:45‐15:00 休憩
15:00‐16:00 パネルディスカッション
16:00‐16:15 休憩
16:15‐17:25 質疑応答
17:25‐17:30 閉会挨拶
パネリスト:
経済産業省
野村総合研究所 上級コンサルタント 長田 徹
首都大学東京大学院 教授 多氣 昌生
東京都地域婦人団体連盟 部長 飛田 恵理子
東京女子医科大学 教授 山口 直人
電磁界情報センター 所長 大久保 千代次
進行 関西大学 教授 土田 昭司
主催: 経済産業省
*****************
2.シンポジウムの内容等
以下は聴講して、気の付いた点のメモである。
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
1)主催者挨拶 田所
・電力安全課は発電から家庭のコンセントまでの安全を担当している。
2)講演1「送電線等の電力設備のまわりに発生する電磁界に係わる経済産業省の取り組みについて」田所 利一
・野村総研に委託して、情報収集活動を行っている。
・その他はレジメ参照。
3)講演2 「超低周波電磁界のリスク評価から管理までの手順」大久保 千代次
・特記事項なし、レジメ参照
4)講演3 「ICNIRPガイドラインの考え方」多氣 昌生
・ICNIRPの高周波の新ガイドラインは作成中(2015年に刊行されるか?)。
・ICNIRPは「確立された知見・作用」に基づきガイドラインを作成している。
「確立された」という意味は、ガイドラインの用語集の蘭に記載があるが、次のような特徴を持つ生体電気的メカニズムのことで、
a ヒトの生物学的影響が予測可能
b 明快なモデルが構築可能である
c ヒトにおいて検証されている、あるいは動物実験のデータが確信をもってヒトへの外挿が可能である。
d 強力な証拠によって指示されている。
e 学会の専門家に広く受け入れられている。
・ICNIRPが50Hzの磁界のガイドライン値を200μTに変更したのは、緩和したのではなく、発癌に関することではなく、算出の方式が異なり、より正確にヒトの体内の内部電界を推定することができるようになったからである。
5)講演4 「電力設備磁界測定調査結果」多氣 昌生
・色々と測定を行った。結果としては数μT以下であった。
・詳細はレジメを参照。
6)講演5 「くらしを取り巻くその他の電磁界の影響について」 大久保千代次
・送電線以外のIH調理器と携帯電話の電磁波について解説する。
・IH調理器の場合、金属製スプーンを使うと、体内に漏洩電流が流れることがある。
・厚労省の研究費で、JR総研の池畑氏らによって、居室における中間周波数の電磁界に関する研究が行われた。平成21−24年度に行われた。IH調理器等。結果はレジメにあるように、「中間周波数電磁界発生源であるIH調理器使用に伴う生物学的ハザードの有無を検討した。IH調理器の使用を想定した中間周波電磁界の生物学的ハザードは確認できないと言える」という結論であった。
・WHOは高周波電磁界に関するタスク会議を、2014年に予定。
7)パネルディスカッション
・テーマ1「電力設備電磁界測定調査結果について」、テーマ2「複数の発生源からの電磁界曝露のリスクについて」として、論議する。進行役は土田が務める。
司会:テーマ1から始める。測定調査のいきさつなどについて
経産省:平成23年に技術基準を定めた。一般の人に説明するために測定を行い、数値を提示することが目的。
司会:結果のおさらいは?
多氣:結果はレジメに示した。数値データの他に、どのように測定調査のために準備を行ったかが大事である。2年間、異なる場所で、測定を行い、共に10μT以下であった。
司会:今回の結果について如何に考えるか?
飛田:中立的なデータで、勉強になった。
多氣:電力会社関係者の協力を得たが、電力会社関係者も測定を行うチャンスは少ないので、良い機会であった。
大久保:電磁界情報センターでも、磁界測定器の無料貸し出しを行っている。
牛山:このデータはモニタリングとして、平時のデータとして積み重ねていって欲しい。
飛田:不安につけいって商売をする悪質者が多い。情報を知ることによって免疫が付く。
司会:今後の研究・調査については?
飛田:エネルギー、小規模発電や蓄電、エネルギーの自己管理が出てきている。こうした新しい電力・発電設備に関しても測定・調査して欲しい。マンションの受電設備、EV車の充電設備に関して対象にして欲しい。
司会:まとめると、調査結果は規制値に対して十分に小さい。今後も継続すべき。
司会:テーマ2に関する論議に移る。まずは、長期的影響と短期的影響について
大久保:WHOの見解を説明する。電磁波は色々あるが、今議論しているのは非電離放射線である。電離放射線は遺伝子を傷つける、電離放射線被爆では障害の蓄積効果があるので、考慮する。100kHz以下の電磁波の場合、非電離放射線で、短期影響に関しては強い電磁界への曝露の影響が確立している。磁気閃光はその一つ。長期的な影響に関しては、疫学での関連性に関しては、WHOのEHC・ファクトシートに因れば、因果関係は弱いとなっている。
司会:疫学研究については?
山口:研究結果と真実とは異なることがある。IARCの発がん性判定2Bに関する背景を説明する。
牛山:非電離放射線である電磁波は蓄積性がない。化学物質でたばこのタールは癌を誘発することは、蓄積効果が出ている。紫外線と皮膚癌の関係は、紫外線による皮膚障害は蓄積する。
司会:複数の電磁界曝露に関して、ICNIRPのガイドラインでは?
多氣:複数の電磁界への曝露に関しては、電界と磁界を分けて考え、夫々曝露がガイドライン値に対する比の総和が1を越えなければ良い。これらに関しては、ICNIRPのガイドラインに説明が書かれている。電界と磁界は、夫々影響の受け方が異なるので、合算する必要はないとしている。低周波と高周波の影響も受け方が異なるので、それらを合算する必要はない。
飛田:単純な足し算ではないといわれた。安心する反面、大人の場合であっても各種電磁界に曝露していることを知らねばならない、スマートメータなど等新種の曝露源が出てきている。子供は避けるべきではないか、専門家は如何に考える?
司会:それも含めて、海外の規制動向は?
長田:規制として、海外での複数の電磁界への曝露に関して、低周波電磁界に関する規制は欧州ではトラム・鉄道と定置型電力設備が対象となっている。家電製品は規制の対象外。
司会:複数の発生源からの研究に関しては?
大久保:低周波ではほとんどない。あるとすれば、高周波に関してはあるかもしれない。
牛山:そうかもしれない。
司会;言い残したこと、何かありますか?
大久保:複数の発生源に関して、ドイツの寝室での曝露評価の例として、高周波曝露を携帯電話とWifi、FM放送、テレビなどの電波をまとめて評価している。太陽光発電設備に関して電磁界情報センターで測定した、これは直流と商用周波数の電磁界を測定した。
8)質疑応答
・司会は大久保千代次
Q:電力設備に関する質問3件あり、これは講演の中で説明した。
Q:電磁波の閾値に関する質問に対して、これも講演の中で説明した。
Q:電気カーペットをつけっぱなしで寝たが、癌になるか? という質問に関しても、講演の中で説明した。なお、カーペットの電磁界に関して説得性のある確証はない。
Q:白血病に関する研究に関する質問がある。これは更なる研究として電磁界情報センターが提言を行ったが、実現には至っていない。
Q:家庭内の電磁界測定に関して、信頼できる測定士は? という質問に関して、インターネットでそうした測定を行う団体があることは知っているが団体の詳細は把握しておらず、何も言えない。きちんとした測定を行うことが肝要、電力設備に関しては各電力会社のWEBサイトを見てください。電磁界情報センターでは測定器を貸し出しているんで、家電製品も測定は可能となる。
Q:IARCの低周波磁界発がん性2B判定の見直しは? という質問に関して、今の所では見直しの動きはない。2007年以降の見直しを必要とするような新しい研究結果は出ていない。
Q:電磁波過敏症に関する多数の質問はきている。このシンポジウムは経産省主催なので、WHOの見解を紹介することに留める。WHOのファクトシート296を読んで欲しい。
つい先週にでた論文で、「メディアにおける電磁波過敏症の取り扱い」に関する論文で「はやまった情報が、流れていて、それが結果的に一般の人に電磁波過敏症が存在していると誤解させているのではないか」という内容でした。ノルウェーの新聞の研究結果では、「結論としては、新聞で伝えた電磁波過敏症の原因及び症状への対応策の推奨は、現在の証拠(証拠はない、電磁波との関連はない)に著しく反していた。」である。
Q:電磁波防護グッズに関して
A(多氣):電磁波カットの商品に関して、例:携帯電話用のグッズがあるが、最近の携帯電話の送信電力は40μWオーダと極めて微弱になっている。防護グッズを使うことによって、携帯電話端末機の送信電力が却って大きくなり、電池の減りも大きくなり、効果が出ないことになる。使わないことを薦める。
シールドカーテンの使用は何分の1には低減するが、効果は薄い、ないよりはましなのかもしれない。
Q:10mの所のビルに携帯電話基地局アンテナが有り、電磁波強度は600mV/mや、2−6V/mの時もあるが・・・・、と言う質問。
A(多氣):どのようにして測定したのか、正しく測定しているのかが、気になる。高周波の電磁界測定は簡単ではない。
総務省の電波の安全に関するパンフレットによれば、携帯電話基地局のアンテナから50cm以上離れれば安全指針値を超えない、と記載されている。
Q:電車内の携帯電話の電磁波に関する研究は、という質問に関して、心臓ペースメーカへの影響を考えると、最近の携帯電話による心臓ペースメーカへの影響は減ってきていて、今までは22cm以上離せとなっていたのが、15cmに改定された。閉鎖空間における本堂研究もあるが、野島研究で、数値解析などでそうしたことは起こらないという結果も報告されている。
Q:MRI、CTについての質問、質問の趣旨が判らない。
A(大久保):MRIは静磁界、高周波磁界を使用している。CTは電離放射線の被曝である。一長一短がある。
Q:アパートの2階に居住し、1階にある店に生けすが有り、その音が響いて寝られない、という質問に対して、電磁波ではなく、低周波音かもしれない。環境省のWEBに低周波音に関する情報があるので、見て欲しい。
Q:電磁波に関して日常生活で最も気を付けるべきものは、という質問に関して、日常生活では強い曝露はないだろう、原則としてないだろう。
司会:これまでは事前に頂いた質問への回答でした。これからは、本日頂いたフロアからの質問に答えます。
Q:経産省における更なる研究は?
Q:電磁波は全般的に不安である。国としての対処は?
A(田所):二つの質問に合わせて答えます。経産省の取り組みとして情報提供事業の他に、研究論文などに関する情報調査事業も行っている。情報提供に関しては、年に1−2回、電磁界に関する関係省庁連絡会を開催している。
Q:オール電化マンションに関しては?
A(大久保):オール電化マンションの電磁波での話題はIH調理器であろう。IH調理器に関しては、大久保がこの講演の中で説明した。
Q:職業曝露に関する質問、複数の曝露に関して、保守の為の作業員などの曝露基準は?
A:職業的な曝露に関しては、厚労省が管轄。現在、国内での職業的な曝露制限規定はない。EU欧州では2016年に労働環境下の電磁界曝露に関する指令が発効する。
Q:今後の疫学調査の予定は?
A(山口):予定はない。疫学は継続すべきという研究者はいる。選択バイアスを最低限にするにはコホート研究を行うなど、巨大な費用が必要となる。世界の研究者と情報交換は行っている。
Q:磁界測定調査結果で、レジメ54頁にあるが、時間や電流の変化を考慮した場合、最大ではどの程度の磁界になるのか?
A(多氣):今回はたまたま測定時の磁界の値を記録しただけである。最大条件を設定しての測定ではない。運用上の最大値を推定すると、パンフレットにあるような20μT程度になるだろう。
Q:短期曝露の短期とはどの程度の時間か?
A(多氣):短期とは影響が即現れることをいう、50Hzに対する磁界値200μTは24時間365日曝露してもOKという条件である。
Q:柱上トランスの近くに職場があるが?
A(大久保):先ほどの回答で良いでしょう。
Q:ICNIRPガイドラインの低減係数は如何にして決めた?空間的均一、不均一についてもう少し説明して欲しい。
A(多氣):低減係数に関しては、明確な根拠はない、5倍位として決めた。均一・不均一の場に関する空間平均については、身長より小さいもの、足元に磁界発生源があるものに関しては不均一な場として、今回の測定調査では、空間平均値を算出した。単純に言えば、最大値が規定値を超えたら、空間平均を取る。
Q:ICNIRPのガイドラインでは発生源から20cm以上では空間平均を取るとしている。20cm以内の近距離での曝露評価はどうする?
A(多氣):20cm以内の近距離での曝露評価に際して、FDTD法での評価例もあるが、全てはできない。ICNIRPは評価法に関しては定めない。そうした評価法はたとえばIECのTC106 が担当している。IECTC106でのCoupling Factorの提案・規定の例もある。
Q:磁気閃光に関して、家の中で磁気閃光がみられた場合、どのようなことが考えられるか?
A(多氣):磁気閃光は20Hzでは5mT、50Hzでは35mTを超えないと見えない、MRIの近くでは磁気閃光は見えるかもしれないが、隣の家からの磁界・磁気程度で見えることはない。
Q:電磁波の視力低下への影響は?
A(大久保):そうしたデータはない。長時間の細かい文字を見ること、TVの凝視などでは、眼精疲労を起こすかもしれない。
Q:ワイヤレス給電に関する質問、空中誘導放電に関して教えて欲しい。
A:誘導放電に関しては良くわからない、核電磁パルスの話かもしれない。
Q:パソコン作業で肩こりなどがあるが、これは電磁波の影響か?
A(大久保):長時間のパソコン作業、一定の姿勢での作業は疲労するし、結果としては自律神経にも影響する。しかし、電磁波の有害性はない、WHOのファクトシート201を見て欲しい。
司会:最後にパネラーの皆さん、何か?
牛山:特にない。
土田:理科系の人間、科学者は断言しない、神でないので、絶対こうであると言い切ることはしない、そのような立場に立つように教育されてきている。すぐ結果が出ないものを不安視する傾向にある。
長田:ない。
飛田:フロアに家電メーカ・機器類のメーカの方がいたら、複合曝露で加算しても大丈夫と言わずに、できるだけ電磁波が漏れないものを作って欲しい。
山口:パネラーの中で唯一私が医師であった。医師の責任は重大。
田所:本日の論議の内容は、電磁界のパンフレットなどのFQAに応用していきたい。
司会:これで質問コーナーを終わります。
記:2014−03−16
1.以下の説明会が開催された。
開催案内から抜粋
**********************
「電波の安全性に関する説明会」を東京都千代田区で開催
総務省関東総合通信局(局長岡崎俊一)は、「電波の安全性に関する説明会」を下記のとおり開催いたします。
本説明会は、近年ますます身近に利用されている電波の性質や健康への影響について、一般の方に分かりやすく説明するものです。
また、参加者の方々からのご質問を幅広く受け付け、回答をさせていただきます。
記
1)日時:平成26年3月7日(金曜日)
2)場所:九段第3合同庁舎11階共用会議室(東京都千代田区九段南1−2−1)
3)主催:総務省関東総合通信局
4)講演内容:
講演1 「電波の安全性に関する総務省の取り組み」 総務省関東総合通信局電波監理部長中村治幸
講演2 「身の周りの電波とその安全性について」 首都大学東京大学院理工学研究科教授多氣昌生氏
2.説明会の内容
気が付いた点を列記。
1)開会の挨拶 岡崎局長
2)講演1 「電波の安全性に関する総務省の取り組み」 総務省関東総合通信局電波監理部長中村治幸
・800MHz、1400MHzはレーダー、航空監視でも利用している。
・タブレット等頭部以外に身の回りで使用する無線機器は、今年の4月から規制の対象となる。
3)「身の周りの電波とその安全性について」 首都大学東京大学院理工学研究科教授多氣昌生氏
・1953年生まれ、昨年還暦を迎えた。
・1990年の郵政省電波防護指針は、当時の共産圏諸国を除けば、国レベルで対応を決めた国としては最初ではないか。
・電波防護指針改定の動きがあるが、これは低周波領域の見直しが主で、例:ワイヤレス給電の利用に対応する為。
・携帯電話端末からの発信電波の平均値は、第1世代は600mW、第2世代100mW、第3世代のCDMA方式では1.2mW程度とどんどん低くなってきている。
・携帯電話端末から発信される電波強度は、電波の受信電力によって大幅に変化する。
基地局からの受信電波が弱い場合は、端末からの発信電波は100mW程度、受信電波が十分に強い場合は、端末からの発信電波は0.01mW以下となっている。
レジメに図有り。 以下に転記
・名古屋市立大学との共同で肝がんを対象とした発現性の実験を行った。
1年目は900MHz、2年目は1400MHzで行った。発がん実験は普通では2年もかかる。
しかし、この実験では早く、8週間で結果を出すことができるということで、肝がんの発がん実験となった。
イニシエータを入れて発がんさせる。
その後、肝臓を3分の2ほど切り取る。
肝臓は復元力が旺盛なので、切り取られた箇所の復元で、どんどん細胞分裂が起こる、したがって、通常の臓器よりも癌の増殖が起こりやすくなる。
1997年、1998年の研究論文として発表済。
<注:なぜ肝がんを対象に発がん試験を行ったのか、電磁波の発がん性に関して肝がんは疫学研究などで話題になっていない。たまたま研究者が肝がんの専門研究者だったからかと、思っていた。この説明で肝がんを対象とした理由が理解できた。>
・スウェーデンのハーデルの研究(脳腫瘍と携帯電話)に対して、他の研究者は問題点を指摘している。
・SARの測定データと脳腫瘍の発生部位のSARを推定し、携帯電話の電磁波によるSARとの関連性を研究している。
携帯を右側で使っているか、左側で使っているかはっきりしないと、どうにもならないことが判った。
この研究は日本の研究で、2008年BBCでも報じられた。
・レジメに無い話、リスクコミュニケーションについて。
携帯とガンに関してEpidemiologyという雑誌にコメンタリーとしてIARCのインターフォン研究者(判定を下したワーキンググループの委員長とIARCの事務局担当者ら3・4人)が共同で投稿した内容で、
「IARCの発がん発表直後の騒動とリスク管理に関する教訓を振り返る。人によって非常に大げさに考えたり、非常に些細なことに考えたりして、当惑した。2B分類の微妙さをコミュニケートすることは困難であることを示している。より明確な見解を求めるメディアにはうまくフィットしなかった。メディアは問題ある、あるいは問題ない、と両極端に走ってしまった。IARCとしては判定2Bを伝えたかったが、この判定で社会の人々に不安を抱かせてしまった。この不安が健康な状態からかけ離れた状態になってしまった。」
は着目に値する。
・電磁波に不安を持つ人は、マイクロ波聴覚効果に関心を持っている。
15年・20年前に多氣も研究した。自分自身で聞いてみた。
かなりの大きい電力で、音は聞こえるが、お寺の鐘のような音で、特定の周波数の音は伝わるが、とても音声が伝わるというものではない。
特許は出ているので、できるかもしれないが、現実的ではない。よほどの設備がないとできないというのが研究の結果である。
4)質疑応答−1
事前に質問が寄せられた項目に関しては、別紙で回答が記されていた。一部を以下に引用する。
Q:携帯電話及び携帯電話基地局が発する電波に対して、防護指針の見直し予定尾はあるか?
A:現在のところ、見直しの予定は有りません。
Q:2007年1月の東京新聞に「江東区スカパーアンテナ 差し止め提訴」というニュースがありました。
7年以上経過していますが、新聞にも報道されていないようです、この裁判の結果はどうなったのか?
A:すべてを把握している訳ではありませんが、2011年12月に和解勧告され、その後、和解が成立したようです。
Q:最近増えているスマホを使い始めてから電磁波過敏症と診断される患者数の増加や傾向について
A:現在のところ、電磁波過敏症には明確な診断基準はなく、電磁波過敏症の症状を電磁界曝露と結びつける科学的根拠がないため、把握しておりません。
5)質疑応答―2
フロアからの質問を受け付けた。
Q:病院で使用する電波でラジオ波というものがあるが?
A(多氣):マイクロ波ジアテルミーとラジオ波ジアテルミーと分けている例がある。
Q:WHO IARC発がん判定2Bの例としてコーヒーもあると例示されている。
電波は24時間365日曝露しており、曝露条件などが異なるので、同列に扱うべきではないのではないか?
A(多氣):発がん性の分類は、発がん性のリスクの程度を示すものではなく、証拠の強さを示すものである。
リスクの大きさを示す表ではない。
表に挙げている物質などは、一般の人が知っているものを選択した。曝露量は、発がん性判定には考慮していない。
Q:電磁波過敏症の人はいる、携帯電話に不安を感じている。
A:WHOの見解によれば、電磁波過敏症に関しては、説明したとおりになる。
Q:マイクロ波聴覚効果の説明の中で、周波数特性を示す図があったが、これは何か?
A(多氣):パルス印加時のインパルス応答と、その応答をフーリエ変換して周波数軸で著したグラフである。
Q:電波曝露で6分間平均を取る理由は?
A(多氣):人体が温まるためには時間が必要で、過渡応答の問題である。
たとえば3分間までであれば2倍の曝露があっても良い、6分以上であれば長時間でも1倍となる。
Q:人間のもつ五感が大事、熱は危険である。何か電波を受けて熱を感じる。電波の照射が無いか、総務省は調べてくれるのか?
A(多氣):温度が上昇しているのか、感覚として温度を感知しているのか?電波が原因か客観的な証拠が必要。電波が原因か、それ以外の要素か、調べていく必要がある。
Q:電波の調査に来てくれるのか?
A(中村):はっきりとした因果関係に因れば、電波による温度上昇は起きない、よほど発信源に近くないと起こらないと起きない。
Q:普通に使っている電波では起きないことは判った。それでは、知らない無線の分野であればあり得るか?
A(多氣):電波は周波数によって吸収が異なるが、温度上昇がある。
A(中村):電波は測定が可能であるが、・・・・・
Q:アマチュア無線で、無免許でやっていたりすれば?
A(中村):アマチュア無線の機械であれば、仮に免許が無くても、10Wや20Wの機械であれば、そうしたことは起こりえない。無免許であれば、調べることはできる。
<注:この質疑応答は何か、うまくかみ合っていません。>
関心のある方は、この説明会のレジメを入手して、読んで下さい。
記:2014−3−221
以下の月例発表会を聴講した。
日時: 3月19日(水)13:30 〜 16:55
場所: ベルサール神保町
主題: 浮上式鉄道とその技術の応用に関する最近の研究開発
以下の8件の研究報告があった。
・浮上式鉄道とその技術の応用に関する最近の研究開発 浮上式鉄道技術研究部 部長 長嶋賢
・次世代高温超電導線材を用いた小型5T超電導磁石の開発 浮上式鉄道技術研究部 低温システム 研究員 水野克俊
・電磁波検出による推進系地上コイルの新たな絶縁診断手法 浮上式鉄道技術研究部 山梨実験センター所長 鈴木正夫
・自己給電機能を持つ浮上式鉄道用異状検知センサの開発 浮上式鉄道技術研究部 低温システム 主任研究員 田中実
・非接触給電システムの鉄道車両への適用 浮上式鉄道技術研究部 電磁システム 主任研究員 柏木隆行
・鉄道車両の低周波磁界の評価方法 浮上式鉄道技術研究部 電磁システム 主任研究員 加藤佳仁
近年、国内外で低周波磁界に関する規制・規格化が進められている。
鉄道総研では、超電導磁石から発生する磁界についてこれまでに測定手法や磁気シールド等のノウハウを蓄積してきた。
そこで、このような技術を応用して、在来方式鉄道車両における低周波磁界の推定法、評価法を検討した。
ここでは、国内外の低周波磁界に関する動向を解説するとともに、磁気シールドや車両構体構造を考慮して構築した鉄道車両磁界の解析モデル、国際ガイドラインに基づいた評価方法等について紹介する。
・フライホイール蓄電装置用超電導磁気軸受の開発 浮上式鉄道技術研究部 低温システム 副主任研究員 荒井有気
・鉄道車両内空調用磁気冷凍機の開発 浮上式鉄道技術研究部 低温システム 副主任研究員 宮崎佳樹
電磁波の生体影響に関する研究は、1件のみであった。
聴講したが、この発表ではJR東海が進めている中央リニアの電磁界に関しては、全くふれることはなかった。
関心のある方は、JR総研のWEBを見てください。
記:2015-02-21
以下の説明会に参加した。
$1:説明会の概要
主催者の開催案内から
**************
「電波の安全性に関する説明会≪知っていただきたい身近な電波の知識≫」を東京都千代田区で開催
総務省関東総合通信局では「電波の安全性に関する説明会≪知っていただきたい身近な電波の知識≫」を下記のとおり開催いたします。
現在、携帯電話やスマートフォンが爆発的に普及し、また、Wi-FiやBluetoothなど、日常生活に欠かすことのできない通信システムも拡大しており、今や電波利用は国民生活や社会経済活動に不可欠なものとなっています。
その一方で、「電波が人体に悪い影響を与えるのではないか」との懸念をもたれる方もおられます。
このため、総務省では、より安全で安心できる電波利用環境を整備するため、電波の影響に関する調査・研究や安全基準の策定・制度化、周知・広報等の施策に取り組んでいるところです。
本説明会では、こうした不安を解消し、電波の安全基準や健康への影響など、電波の安全性について正しい理解を深めていただくため、2名の講師から分かりやすく説明していただきます。
また、参加者の方々からのご質問にも回答いたします。
記
1) 日時: 平成27年2月20日(金曜日) 13時30分から16時00分まで
九段第3合同庁舎 11階共用会議室(東京都千代田区九段南1-2-1)
3) 主催:総務省関東総合通信局
4) 講演内容:
•講演1 「電波の安全性に関する総務省の取り組み」 総務省関東総合通信局 電波監理部長 中村
治幸
•講演2「電波と健康」 京都大学生存圏研究所 特定教授 宮越 順二
$2 講演を聞いて
1)演者の都合から講演2が最初に行われた。
講演2「電波と健康」 京都大学生存圏研究所 特定教授 宮越順二
・電磁波による細胞での実験を行っている。
脳、神経細胞、筋肉、骨の細胞は変わらない。
口から大腸にかけての粘膜細胞は毎日死んで、細胞が再生されている。
骨髄では血液の基になる細胞が毎日作られている。
ヒトは60兆個の細胞からなる、毎日数千個の細胞が死んでいる。
・放射線が細胞を傷つける能力を持っているが、DNAに直接障害を与えることは稀で、放射線がラジカルなどを発生させ、そのラジカルがDNAを損傷させることが多い。
損傷を受けたDNAは殆どが修復される。
に修復されない細胞があるが、その多くはアポトーシスで死んでくれるが、稀に細胞が癌化する。
・IARCの高周波電磁界の発がん性判定会議に参加した。その中での論議の状況を説明。<関心のある方はレジメを参照>
・WHOの高周波電磁界に関するEHCのドラフト(2014年)の概要を説明。<関心のある方はレジメを参照>
2)講演1 「電波の安全性に関する総務省の取り組み」 総務省関東総合通信局 電波監理部長 中村
治幸
・一般的な説明で、特記事項はない。
・レジメの付録として「医療機関における携帯電話などの使用に関する指針について」が付いているが、この件に関する説明はなかった。<関心のある方はレジメを参照>
3)質疑応答
・事前提出の質問に関しては、別紙で回答などが準備されていた。<関心のある方はレジメを参照>
・以下はフロアからの質問に対する応答
Q:マンションの屋上などに携帯電話基地局を作る時に、電波防護指針を守れば、人体への影響はないと言えるのか?
A:その通り。
Q:基地局を作る時に総務省などから説明会をやるように何か指導しているのか?
A:過去に2回ほど、通信事業者に説明会の実施について、指導を行っている。
Q:近隣の住民に説明とあるが、対象者はだれか?また説明会を実施しなければならないとする根拠は何か?構造的な観点か、人体影響の観点か?
A:要請として行っている、詳細は各事業者が基準などを決めてやっていると聞いている。構造などの問題に関しては総務省としては言っていない。
Q:送電線に関連して、超電導DC送電線の研究が進んでいる。超伝導DC送電線の建設に際しては何か健康影響に関して検証などを行っているのか?
A:超電導DC送電に関しては、工学者でないので、判らない。今までにない周波数での新システムの場合は、当然にして、実施の前に、電磁波の健康影響を論証すべき。
Q:IARCの2B判定は携帯電話の周波数帯に限定したものか?
A:評価の対象となった研究は700MHz-2500MHzといった携帯電話の周波数帯のものが殆どであった。
Q:実現しようとしている中央リニアの電磁波は?
A:関係者から話は聞いた。座席に座っている時のDC、変動磁界のレベルは低い。電磁界は列車の速度、場所などによって異なるので、もう少し電磁界強度に関してデータが必要になると思われる。
Q:総務省からの指導による説明会の実施は、場合によっては徹底されていないが?
A:過去2回、通信事業の本社宛に通知を出している。実際の工事などは工事会社が行っている。工事会社が説明会を実施していない・・・・という趣旨のクレームがあった時は、其々の会社の本社宛に連絡を入れている。3回目の指導文書を出すか否かは、そうしたクレームの頻度などによる。
Q:自治体に、基地局に関する不安の声が住民から寄せられる。基地局の数や位置などの情報は開示できるのか?
A:市町村レベルの位置までの情報は開示している。基地局の数もそれを数えればわかる。
Q:基地局に対して、テレビなどの放送電波は強い、これに関しては?
A:放送局の場合は、レジメにある例のように、10m以内に近接しないように柵を設けるなどの対処を行っている。
Q:宮越先生に質問、細胞などの実験に曝露する電磁波の強度はどの程度か?
A:動物実験・細胞実験での電磁波曝露強度は、ICNIRPの規定値より大きい値でも実験している。
Q:人体影響と言っても幼児や、基地局が幼稚園に近接しているといった場合もあるが?
A:研究の初期は、幼児への影響・・・といった危惧からスタートした。携帯電話と子供の癌に関する疫学研究データも出ており、これによれば、影響はなかった。
A:法規制の対象としては、保育所であるから・・・・・という規制はない。
記;2015−4−7
1.以下のシンポジウムが開催された。
********主催者の開催案内から************
第9回NICT/EMC-net シンポジウム
今日の情報社会では、あらゆる電気・電子機器が通信機能を持つようになるため、身の回りの小型無線機器や電子機器、家電製品、電磁エネルギー利用などに対する「安全・安心」の確保に必要なEMC技術が非常に重要な課題になります。
このような状況を背景として、独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)では2006年秋に産学官連携織NICT/EMC-net を立ち上げ、現在、4研究会が活動をしております。
おかげさまで延べ500名のEMC技術者が参加し、EMCの様々な課題について、研究会などを通じて情報交換や意見交換を行い、さらに妨害波測定やアンテナ校正について会員参加の巡回測定を実施しております。
本シンポジウムでは、今後のEMCに関連する様々な話題について、各界の専門家に御講演を頂くとともに、各研究会の一年間の活動を報告し、今後の事業について幅広くご議論頂きたいと考えております。
主 催: 独立行政法人情報通信研究機構 (NICT)
期 日: 2015年3月9日月曜日 14:00〜17:15
会 場: ベルサール八重洲 (電話:03-3548-3770)
〒103-0028 東京都中央区八重洲1-3-7八重洲ファーストフィナンシャルビル2F
参 加 費: 無料
<プログラム> (敬称略)
14:00 開会挨拶 井口 俊夫(NICT 電磁波計測研究所 所長)
基調講演
14:10〜14:50 「植込み心臓治療デバイスのEMIと携帯電話指針改正の背景」 豊島
健(一般財団法人 日本デバイス治療研究所 理事長)
一般講演
14:50-15:20 「医療機関における携帯電話使用の新指針と医療への無線通信導入」 花田 英輔(佐賀大学大学院工学系研究科知能情報システム学専攻
教授)
15:20‐15:50 「医用電気機器EMC国際規格IEC60601-1-2 第4版の紹介」 石黒 信一(GEヘルスケア・ジャパン(株)EMCセンター センター長)
〜休憩〜
EMC-net 活動報告
16:10〜16:25 妨害波測定法研究会 (幹事) 石上 忍(NICT 電磁波計測研究所電磁環境研究室)
16:25〜16:40 EMI アンテナ校正研究会 (主任) 藤井 勝巳(NICT 電磁波計測研究所 電磁環境研究室)
16:40〜16:55 APD 応用研究会 (主任) 松本泰(NICT
電磁波計測研究所 電磁環境研究室)
16:55〜17:10 人体の電磁界ばく露評価研究会 (主任)多氣 昌生(首都大学東京 理工学研究科
電気電子工学専攻 教授)
17:10 閉会
*************************
2.以下は聴講した三浦のメモから
1)開会挨拶 井口俊夫
・電磁波の人体曝露に関してもこのEMC-net・シンポジウムの対象とした。
2)「植込み心臓治療デバイスのEMIと携帯電話指針改正の背景」 豊島健
・電車内で「心臓ペースメーカの為に携帯電話の使用を・・・・」とアナウンスしているのは日本だけである。
・心臓ペースメーカの患者団体が、「車内での携帯電話の使用を・・・・してほしい」という依頼を出したことは確かである。
・その他は一般的な解説
Q:一般人の電流感知が400μAであるのに対し、ペースメーカは45μAで影響を受けるとの説明があった。この時の電流の周波数は?
A:商用の50Hz・60Hzを想定している。
Q:高出力型RFIDが問題との説明であった。この場合のRFIDの高周波出力は?
A:アンテナの入力電力で1W、ERPでは4Wである。
3)医療機関における携帯電話使用の新指針と医療への無線通信導入 花田英輔
・医療現場でマイクロ波を発生させている機器として、マイクロ波治療器がある、年間3000台も売れている。出力は100W。
・「医療機関における携帯電話などの使用に関する新指針」は10ページ程度のもの、このガイドライン作成になった報告書は膨大なもの。ともにWEBからPDFファイルでダウンロードできる。
・その他は、一般的な解説
Q:医療現場におけるインバータ照明器具による影響は?
A:まったく影響がないとは言えない。脳波を検査する部屋の場合は、LED照明は駄目で、白熱電球が必須である。
4)「医用電気機器EMC国際規格IEC60601-1-2 第4版の紹介」 石黒信一
・EMCに関する国際規格の紹介
Q:従来機器に注意ラベルを貼れば試験免除できたが、今般はそれができなくなったのか?なにか、具体的な悪い事象があったのか?
A:安全対策なので、そのようになった。具体的な事象が例示された訳ではない。
Q:リスクマネジメントがより重要になるのでは?
A:親規格の60601-1にそれは規定されている。
Q:製品としてではなく、何か部品レベルでも要求事項があるのか?
A:部品メーカに対する特段の要求事項はない。
5)妨害波測定法研究会の報告 (幹事) 石上忍
・機器に近接した場合のイミュニティ試験の規格を作る。
(従来は電磁波の発信源は影響を受ける機器と距離が十分に離れた状況で試験を行ってきた。携帯電話が医療機器に近接する場合などのイミュニティも試験が必要である。)
Q:400MHz以上の周波数の電磁波測定で、測定機関として何を準備すべき?
A:特定のものを参照しないで、共通性のある方法を規定したい。
この点からTEMホーンアンテナを候補としている。
6)アンテナ校正研究会の報告(主任) 藤井勝巳
・特にメモはない。
7)APD応用研究会の報告 (主任) 松本泰
・特にメモはない。
8)人体の電磁界ばく露評価研究会の報告 (主任)多氣昌生
・本年度に発足した研究会で、昨年8月に第1回研究会を開催。
・現在の塔録者数は71名
・総務省の委員会でCISPRとIEC106が一緒に検討することになり、NICTでも同じ方向に進むことにした。
・3月12日に低周波ガイドラインに関して、総務省に答申予定。
・欧州のSCENIHIRは、IH調理器の電磁波測定法が甘すぎる指摘した最終報告が出ている。
・今後は年に1−2回、研究会を開催したい。
9)閉会の辞
・NICTは4月1日に、現在の独立行政法人から国立研究開発法人に改組となる。
関心のある方は、このシンポジウムのレジメ集を入手して、読んでください。
記:2015-5-18
1.以下のシンポジウムが開催された。
***********開催案内より**************
日時:2015年5月16日
場所:東京・板橋区立グリーンホール
携帯電話やスマートフォン、スマートメーターから発せられる電磁波は、目に見えなければ匂いも感じません。
被曝しても痛みを伴いません。しかし最近、きわめて低い被曝レベルでも人体に悪影響を及ぼすことが分かってきました。
特に子どもへの影響は心配です。
こうした中で、電磁波による公害とは何かを再認識する必要があります。
「電磁波からいのちを守る全国ネット」は、電磁波問題の第一人者を招いて、みんなで考える機会を設定しました。
【プログラム】
・講演13:30〜15:00
荻野晃也『電磁波問題とは何か?』携帯電話とその基地局からスカイツリー、LED、軍事レーダーまで
加藤やすこ『電磁波利用の裏面』増え続ける電磁波で苦しむ過敏症患者たち〜職場環境の安全性を問う訴訟とスマートメーターの危険性
懸樋哲夫『リニアと高圧送電線』リニア新幹線は本当に必要?〜報道されない電磁波問題と環境破壊
天笠啓祐『スマートフォンの子供への影響』スマホを子どもに使わせて大丈夫?心と健康を守るには
・質疑応答15:10〜15:50
・各地からの報告15:50〜16:30
*************************
・参集は100名程度
2.聴講した三浦の目メモから
1)荻野晃也『電磁波問題とは何か?』
・スカイツリーからの電波を測定した。最大値は0.7μW/cm2あった。
・宮古島での軍用レーダーからの電波を測定、最大値200μW/cm2以上で振り切れた。
・その他は一般的な話。
2)加藤やすこ『電磁波利用の裏面』
・宇都宮市で電磁波過敏症に関する裁判(電磁波過敏症の認知を求める裁判)が始まった。
・その他は一般的な話。
3)懸樋哲夫 『リニアと高圧送電線』
・宮崎実験線の時代のリニアからの磁界測定結果で、遮へいしても3.8ガウス。
・JR東海から最近の報告があるが、肝心の時間変動磁界に関する報告が3.2%ということしか書かれていない。これは説明にならない説明である。
<BEMSJ:JR東海は時間変動磁界に関しては、測定対象範囲内の全ての周波数において、各周波数における規定値への割合の総和として発表していることに対して、懸樋は理解できていない、またJR東海も判りやすく説明もしていない。>
・その他一般的な話。
4)天笠啓祐 『スマートフォンの子供への影響』
・携帯電話もスマホも使っていない人間が、パソコンはオフラインでの利用に限定している人間が、この話題について、話をする。
・電磁波に関して、特にメモはない。
5)質疑応答
当日フロアから質問を書いてもらい、それを講演者3名(加藤やすこは講演後に体調不調を理由に退場)で回答した。
Q:変動磁界について基本的なことを知りたい。
A懸樋:静磁界は周波数ゼロの地磁気など、変動磁界は高圧送電線からの磁界等、リニアも100Hzや130Hzと言った磁界の発生源となる。
<BEMSJ注:懸樋のリニアから100Hzの磁界発生・・・・はおかしい。>
Q:蛍光灯とLEDの違いは?
A荻野:蛍光灯は紫外線が出る、LEDはブルーライトが強い。ブルーが強い光は自殺が少ないという話もある。ドイツだけがLEDからのブルーライトを法規制している。
Q:バックライトのLEDからのブルーライトはブルーライトカット眼鏡の着用で安全か?
A荻野:パソコンなどは離れてみるべし。<BEMSJ注:質問にきちんと答えていない。>
Q:目の奥が痛くなるのはなぜか?
A荻野:そういう人はいる。<BEMSJ注:質問にきちんと答えていない。>
Q:スマホを1台生産する為にどの程度のエネルギーを費やしているか?
A天笠:わかる人はいない。大事なことは、スマホに使うレアアースの生産時の環境破壊や、スマホの廃棄時の処理のことを考えると、ばく大なエネルギー使う。
Q:近くの消防署の無線がアナログからデジタルに変わってから、体調がより悪くなった。その他にアナログからデジタルに変わったものはあるのか?テレビ以外に。
A天笠:アナログがなくなった、デジタルになったという時代。
Q:インタネット時代である。何か労災に関してどのような取り組みがあるのか?
A天笠:労災に関しては国内でも問題になった事例は聞いたことがない。
Q:電磁波の爬虫類への影響は?
A荻野:そうした研究は知らない。
Q:電磁波で視覚が変化?
A懸樋:講演の中で解説済
Q:電磁波による攻撃は可能か?
A荻野:兵器に関しては極秘事項が多く、色々あるらしいが、判らない。電磁波を当てて相手の脳の中に「相手のやる気を削ぐ」ような「神の声兵器」と言われる兵器もあると聞く。具体的に証拠になるのはない。
Q:電磁波過敏症について
A荻野:電磁波過敏症を認知している国はスウェーデンのみ。確実に電磁波に過敏であることの証拠を集めることが難しい。空港で実測したことはない。
スマホの近傍電磁界でELF磁界数ミリガウス程度、高周波電波と低周波の相乗効果が出るのかもしれない。
Q:携帯電話基地局について、屋上に設置された場合の距離の影響は?
A懸樋:屋上に基地局があって、1階では、真下には届きにくい。
Q:携帯電話のイヤホンマイク利用の効果は、被曝は減るか?
A荻野:イヤホンマイクの使用で却って曝露が増えるという研究はあるが、荻野の測定ではイヤホンマイクによる低減効果はあった。
Q:電力密度での基準値について
A荻野:平均値より瞬時値、最大値がより重要。
Q:携帯電話基地局の周辺での対応は?
A荻野:周辺の問題では、リスクとベニフィットを如何に考えるかである。
ICNIRPの高周波ガイドラインの改訂版は最終段階である。秘密になっていて、判らない。
<BEMSJ注:2015年5月18日にICNIRP本部のサイトを見ると「The Project Group
associated with this task is set up. A draft will be posted here for public
consultation at a later stage.」とあり、「最終段階になったらドラフトをこのWEBで公開討論の為に公開する」と書かれている。荻野は知らないだけかもしれない。>
Q:電車での電磁波は?
A天笠:飛行機での測定例でも、強い場所と弱い場所がある。電車もそうである。
Q:中央リニアの送電電圧は?
A懸樋:33000Vと聞いている。
Q:電磁波に関する裁判について
A荻野:携帯基地局の裁判等、全て敗訴している。最近の延岡の裁判では実際に被害が出ているが「被害を原告の住民が証明しろ」という判決で終わっている。
Q:渦巻きコイルを電源コンセントに貼る効果は?
A懸樋:コンセントからの電磁波は低レベル、貼る必要はない。
Q:オーストリアはなぜ低い電磁波規制か?
A荻野:ザルツブルグのことと思う、法規制ではないが、健康影響からその程度に抑える必要があると考え、そのレベルでも携帯電話は利用できたこと。
なお、国レベルではウクライナが世界では最も厳しく電磁波規制を行っている。ウクライナでは旧ソ連時代から研究を行っている。
A天笠:最後に、ドイツから帰国したばかり。環境保護と民主主義は大事である。
6)3名からの事例報告
1)調布市の原(M)
・調布市の柴崎に住んでいる。
・昨年1月に、ソフトバンクの基地局が建った。
・住民側の対応は、当マンションでは隣組と言ったマンション内交流会が有り、これがベースで対応に当った。理事会も支持してくれた。
・マンションのオーナーとは当初はルートすらなかった。10月になって理解してくれるようになった。
・交渉では、全てソフトバンクの孫社長宛の文書として、10通提出。
・説明会は口実になるだけなので、開催はさせなかった。
・5月20日に撤去の工事が開始する。このシンポに間に合った。
2)目黒の瀬口(F)
・ベネッセという老人ホームの上にドコモが基地局を設置。
・介護の仕事をしている。老人ホームではそうした反対運動はできない傾向にある。
・400名の署名を2012年11月に纏めた。しかし、2013年盆明けに工事は再開。
・お盆明けに学習会開催、集まった30人の中から運動を開始、区議をしたことのある夫婦も参加。
・実質3-4か月の運動で、建設阻止に成功、黒薮さんのサイトでこの運動を紹介してくれたことも効果的であった。
・近くの世田谷で同様な運動有、協力して行く。
3)古庄(F)<BEMSJ注:電磁波に関する著書もある古庄弘枝>
・ノンフィクションライターである。
・2019年まで小学校にIPADを持たせる動き、電磁波問題に注目。
・大宰府の小学校の近くに携帯基地局、被害が出た。
・宮崎県小林市では裁判にするか相談中。
国立研究開発法人情報通信研究機構 NICT/EMC-net 人体の電磁界ばく露評価研究会
第2回人体の電磁界ばく露評価研究会
1.研究会の概要
開催案内より
*************************:
日時 平成27年7月31日(金曜日) 9:30〜12:00
場所 首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス
プログラム
1)開会挨拶 多氣 昌生(首都大学東京 大学院理工学研究科 電気電子工学専攻 教授)
2)ワイヤレス電力伝送システムに対する人体防護を考慮した技術基準について 和氣 加奈子(国立研究開発法人 情報通信研究機構)
3)ワイヤレス電力電送のシステムの人体防護に関する国際標準化動向
大西 輝夫((株)NTTドコモ先進技術研究所 アンテナ・デバイス研究グループ主任研究員)
4)ワイヤレス電力伝送機器による植込み型心臓ペースメーカ/ICDへの電磁干渉影響に関する調査例
日景 隆(北海道大学 大学院情報科学研究科 メディアネットワーク専攻 情報通信システム学講座 助教)
5)今後の予定について 渡辺 聡一 (国立研究開発法人 情報通信研究機構)
2.講演などの概要
1)開会挨拶 多氣 昌生
・2015年7月17日 電気自動車へのWPTに関する答申が出た。
2)ワイヤレス電力伝送システムに対する人体防護を考慮した技術基準について 和氣 加奈子
・ワイヤレス電力電送WPTの実用化及び普及の為には、システム周辺に位置する生体への電波曝露を想定した安全性の確認が重要
・接触電流に関する評価も行う。非接地金属への接触に関しては一般環境の電界強度指針を満足する場合、90%以上ン人々に対して電界による接触電流を防止できると考えられる。
質疑応答:
Qフロア:GHz帯でのWPTに関しては?
A和氣:2015年以降に実用化するものに絞った。
Qフロア:接触電流の場合は、金属部が大きかったりすると大きくなるが?
A和氣:WPTシステムに限定した評価法である。
Qフロア:EVに人が載っていない場合に限定した評価法になっているが?
A和氣:JASOの電磁界曝露評価では車の電装部品などからの曝露を考慮して、ヒトが載った場合で評価をしているが、今般のWPTではEVの充電中はヒトの乗車はないことを前提にしている。業界などでそのように運用していくという前提である。
走行中の充電に関しても、考えてはいる。
A(藤原):車内に人がいる場合の研究もおこなわれている。
Qフロア:充電中の自車への電磁誘導による接触電流などに関しては?
A和氣:そうしたことも検討したが、自車・・・・に関しては周囲にいる人への電磁波曝露の観点からではなく、EVの製品安全の面から、別の基準で対処すべきとした。
Qフロア:接触電流の測定ではPoint Contactなどに配慮する必要があるが?
A和氣:直径10mmの先端で実験を行った。
Qフロア:WPTは、EVの場合は床面に設置されるので、床面に近い部分で大きな曝露強度になるが?
A和氣:人の体全体への曝露として平均をとってもよいが、床面に近い場所20cmでの最大値で評価しても問題はなさそう。
Qフロア:実際にヒトが触って感電するかなどの実験を行ったのか?
A和氣:倫理の問題があり、行っていはいない。しかし、委託研究で知覚検知の研究もある。
3)ワイヤレス電力電送のシステムの人体防護に関する国際標準化動向 大西輝夫
・WPTでは日本が先行しているので、国際動向・・・・ということは・・・・・
・電気自動車に関してはIEC規格化が進んでいる。
質疑応答:
Qフロア:EVでは結合係数を考慮しなくてもOKか?
A大西:詳しいことは判らない。
A和氣:いけそうなデータである。
Qフロア:今回の話はNon-Beamの場合だけであるが、Beam型の場合は?
A大西:他の曝露評価法を利用できるのではないかと思う。
4)ワイヤレス電力伝送機器による植込み型心臓ペースメーカ/ICDへの電磁干渉影響に関する調査例 日景
隆
・実機による縦型ファントムを用いた実験を行った。
・結果:50W未満の家電製品用ワイヤレス充電器の場合は、ペースメーカでは2cm以内で影響、ICDでは1cm以内で影響がでた。
・結果:電気自動車用充電器での実用試験では影響はなかった。実用ではない充電器により近接した場合は、影響がでた。
質疑応答:
Qフロア:縦型ファントムに入れた生理食塩水の濃度について
A日景:塩分濃度はペースメーカの適切な動作の為にペースメーカ側で決めたもので、人体の誘電率などを模擬した濃度ではない。
Qフロア:ペースメーカとして10年間使用とあるが、使用されたペースメーカの数などのデータベースはあるのか?
A日景:データベースはない、各製造会社がどの位使用されているかは知っていると思う。
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
記;2016-1-27
1.シンポジウムの概要
開催案内から
************************
第10回NICT/EMC-net シンポジウム
今日の情報社会では、あらゆる電気・電子機器が通信機能を持つようになるため、身の回りの小型無線機器や電子機器、家電製品、電磁エネルギー利用などに対する「安全・安心」の確保に必要なEMC技術が非常に重要な課題になります。
このような状況を背景として、国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)では2006年秋に産学官連携織NICT/EMC-net を立ち上げ、現在、4研究会が活動をしております。
おかげさまで延べ543名のEMC技術者が参加し、EMCの様々な課題について、研究会などを通じて情報交換や意見交換を行い、さらに妨害波測定やアンテナ校正について会員参加の巡回測定を実施しております。
本シンポジウムでは、今後のEMCに関連する様々な話題について、各界の専門家に御講演を頂くとともに、各研究会の一年間の活動を報告し、今後の事業について幅広くご議論頂きたいと考えております。
主 催: 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
期 日: 2016年1月26日火曜日14:00〜17:30
会 場: ベルサール八重洲 (電話:03-3548-3770) 〒103-0028 東京都中央区八重洲1-3-7八重洲ファーストフィナンシャルビル2F
<プログラム> (敬称略)
14:00 開会挨拶 富田 二三彦(NICT 理事)
基調講演
14:10-14:50 「 ワイヤレス電力伝送技術の実用化に向けた動向と取り組み〜 国内制度化、国際協調活動、標準化動向〜」庄木 裕樹(株式会社東芝
研究開発統括部 技術企画室 参事)
講演
14:50-15:20 「ワイヤレス電力伝送システムの高周波エミッション規格の動向」
久保田 文人(財団法人テレコムエンジニアリングセンター電磁環境・較正事業本部副本部長)
15:20〜15:50 「自動車用WPTについてのSAEおよびIEC/TC69の動向」
塚原 仁(日産自動車株式会社 電子・電動要素開発本部 主査)<実際の講演は代理で宮川氏>
休憩
EMC-net 活動報告
16:20〜16:35 妨害波測定法研究会 (主任) 和田 修己(京都大学大学院工学研究科電気工学専攻
教授)
16:35〜16:50 EMI アンテナ校正研究会 (主任) 藤井 勝巳(NICT 電磁波計測研究所 電磁環境研究室)
16:50〜17:05 APD 応用研究会 (主任) 松本泰(NICT
電磁波計測研究所 電磁環境研究室)
17:05〜17:20 人体の電磁界ばく露評価研究会 (主任)多氣 昌生(首都大学東京 理工学研究科
電気電子工学専攻 教授)
17:20 閉会挨拶 山中 幸雄(NICT 電磁波計測研究所 所長)
****************」
2.参加の記
1)2時間半のシンポジウムの中で、電磁波の健康影響に直接関連する話題は少なかった。
2)基調講演「ワイヤレス電力伝送技術の実用化に向けた動向と取り組み〜 国内制度化、国際協調活動、標準化動向〜」 庄木 裕樹
レジメの中には、「人体曝露、人体防護」という用語はあるが、具体的な電磁波の健康影響には触れず。
3)講演「ワイヤレス電力伝送システムの高周波エミッション規格の動向」 久保田 文人
人体曝露、人体防護」という用語には触れず。
4)講演「自動車用WPTについてのSAEおよびIEC/TC69の動向」塚原 仁 <実際の講演は代理で宮川氏>
・ワイヤレス電力伝送装置からの電磁界放射は、動作基本周波数帯域の場合は、10mの距離で磁界強度で68dBμA/mが提案されている。
・電磁界の人体曝露に関しては、1)心臓ペースメーカへの影響、2)ICNIRPガイドラインの適用を検討している。心臓ペースメーカへの影響に関してはアメリカのFCCとAAMI(Association for the Advancement of
Medical Instrumentation)が検討中。ICNIRPへの対応は、喧々諤々論議中。
・車へのワイヤレス電力伝送(充電)に関しては、車の下部にヒトが入った場合の曝露制限に関しては、充電をオフにすることにしたい。車の車体の側面近での曝露レベルも規定したい。現在のレベルでは実測で5μT程度である。
5)妨害波測定法研究会
・特記事項なし、人体曝露に言及なし。
6)アンテナ校正研究会
・特記事項なし、人体曝露に言及なし。
7)APD 応用研究会
・特記事項なし、人体曝露に言及なし。
8)人体の電磁界ばく露評価研究会 (主任)多氣 昌生(首都大学東京 理工学研究科 電気電子工学専攻 教授)
・2015年7月に開催したEMC NET研究会の概要の紹介
関心のある方は、レジメを入手して読んでください。
記:2016−2−25
1.電波の安全性に関する説明会が開催された。
以下は開催案内から
**********************
関東総合通信局
「電波の安全性に関する説明会」を東京都千代田区で開催
総務省関東総合通信局(局長:山田 俊之)では、「電波の安全性に関する説明会」を下記のとおり開催いたします。
近年、携帯電話やスマートフォンの普及により無線局数は著しく増大しており、また、無線LANやブルートゥースなど様々な生活環境の中に電波が利用されています。
その一方で、電波が身近になったことに伴い、「電波が人体に悪い影響を与えるのではないか」との懸念をもたれる方もおられます。
このため、総務省では、より安全で安心できる電波利用環境を整備するため、電波の影響に関する調査・研究や安全基準の策定・制度化、周知・広報等の施策に取り組んでいるところです。
本説明会では、これらの指針に基づいた、適切な電波利用、合理的なルールの作成や安心して医療機器を使用していただけるように、その分野の専門の先生から説明します。
また、参加者の方々からのご質問にも回答いたします。
記
1 日時 平成28年2月17日(水曜日) 13時30分から16時15分まで
2 場所 九段第3合同庁舎 11階共用会議室(東京都千代田区九段南1−2−1)
3 主催 総務省 関東総合通信局
4 後援 電波環境協議会
5 講演内容
講演1 「電波の安全性に関する総務省の取り組み」 総務省 総合通信基盤局 電波部電波環境課長 杉野 勲
講演2 「電波利用の安全性−基本的考えと研究例−」 国立大学法人北海道大学 名誉教授 野島 俊雄 氏
*****************
2.講演内容
BEMSJは体調を崩し、当日参加できなかった。
以下はレジメを見て、気の付いた点を書きだした。
1)講演1 「電波の安全性に関する総務省の取り組み」 総務省 杉野 勲
・一般的な解説であり、特記事項はない。
2)講演2 「電波利用の安全性−基本的考えと研究例−」 北海道大学 野島 俊雄
・広い空間での携帯電話からの電波強度とエレベーター内での強度の比較
以下の図に示すように、携帯電話から離れた場所で電波は重なり合い電波が強い場所(ホットスポット)が発生するが、人体の付近での電波の強度に比べると、低いレベルである。
・電磁レンジでの調理で、「電磁波による影響で食物にフリーラジカルが発生する」は否定された。
「スイスのローザンヌ大学の実験では電子レンジで調理された食材の栄養素は60−90%破壊されるか、発がん物質に変化する・・・・と、恐ろしい報告をしています。特に蛋白質を合成するアミノ酸はビタミンB群・C・Eを破壊し、ミネラルは高周波電磁波によってフリーラジカルとなって、体の参加を促進するそうです」は、否定された。
こうした変化は電磁波によるものではなく、単純に加熱による温度上昇の効果で、通常の加熱方法と同じであった。
・低曝露量1W/kg程度のマイクロ波電波曝露でDNA切断が発生したというLaiらの実験は、その後の追試などで、否定された。
・その他、関心のある方は、レジメを入手して、全文を読んでください。
記:2016−4−22
1)以下の研究会が開催された。
電子情報通信学会 研究会
マイクロ波研究会(MW)・無線電力伝送研究会(WPT)
日時 2016年 4月21日(木) 10:30 - 16:50
議題 電力伝送/マイクロ波一般
会場名 機会振興会館6階67号室
住所 〒105-0011 東京都港区芝公園3-5-8
4月21日(木)
午前 能動デバイス
(略)
4月21日(木)
午後 電力伝送システム、デバイス
(略)
4月21日(木)
午後 受動デバイス、その他
座長: 石川 容平(京都大学)
14:10 - 15:40
(6) 14:10-14:40 スタブ装荷メアンダライン共振器を用いた超伝導トリバンド帯域通過フィルタの設計 ○海野雄丈・關谷尚人(山梨大)
(7) 14:40-15:10 導電性材料装荷における共振周波数の高周波シフトの解釈 ○杉山順一・森住真紀・佐藤千佳(産総研)
(8) 15:10-15:40 マイクロ波聴覚効果 ○小池 誠(MKマイクロ波研)
4月21日(木)
午後 IEEE
MTT-S Distinguished Microwave Lecturer
15:50 - 16:40
(9) 15:50-16:40 [特別講演]マイクロ波送電研究開発の現状 〜 DML 〜 ○篠原真毅(京大)
2)マイクロ波可聴に関する口演
BEMSJにとって、関心のあるテーマは以下の1点のみでした。
*レジメから
***********************
タイトル:マイクロ波聴覚効果
発表者:小池 誠(MKマイクロ波研)
概要
音は聞こえるが,電波は聞こえないとされている。
しかしながら,マイクロ波はパルス波形のときに聴覚を刺激するという実験結果が多数,報告されている。
そこで,本稿はパルス変調されたマイクロ波が音として聞こえる現象,即ち,マイクロ波聴覚効果について紹介する。
マイクロ波パルスが聴覚を刺激する生理機構としては,頭部が音響トランスデューサとして機能してマイクロ波を音響波に変換し,内耳の蝸牛がこの音響波をインパルスに変換し,更に聴神経がこのインパルスを聴覚野に伝える。
*********************
*口演内容の中から
・小池は弁理士であり、アメリカの特許の中にテレパシーに関する特許があることを知り、まぜこうしたことが可能か調べ始めたのが、このテーマに入るきっかけである。
・1947年50万Wのレーダーアンテナの前で音が聞こえたということが判ったが、この情報が公表されたのは1956年と、9年後である。
これは何か、秘密として公表を妨げていたのではないかと、小池は思っている。
*口演後の質疑応答
Q:口演で使用された技術用語に誤りもある、今後の発表では注意すべき
A:周波数の高い・低いを「小さい」とかにしてしまいました。
Q:マイクロ波可聴が聞こえたとする研究の、実験距離(発信機と被験者の距離)は?
A:多くの研究は室内・電波暗室で行われており、距離は1mとか3mと思われる。
Q:マイクロ波可聴を報告している研究では、マイクロ波パルスは1秒に3回といった条件とのこと、これでは音声繻子は数としては3Hzとなり、ヒトの可聴周波数(20Hz―10KHz)から外れ、聞こえないのではないか? どのような音が感知されているのか?
A:感知された音は、コンとかコリコリと言った音とされる。
Q:このテーマは医学界向けのものと思われる。医学界で発表された?
A:日本の医学界に何度か口演の応募を行ったが、全て、拒絶された。
Q(座長:京都大学 石川容平 纏めとして)この発表は、この研究会の目的・趣旨などと一致していない。
今後は適切な他の研究会を探し、そこで行うことを薦める。
*BEMSJの感想:
この口演を聴きましたが、他の研究者の報告の引用、他の特許の紹介という程度で、本人の独自の実験結果などが全く含まれていなく、かつその内容も、私が知っている範囲のことであったので、おもしろくない口演でした。
口演者は、こうした情報を多くのマイクロ波研究者に知って欲しいという願望から、この研究会での発表を試みたのかもしれませんが、かなり多くの方が、マイクロ波可聴を知っていると思います。
こうしたことから、口演後の質疑応答があり、最後に座長が「この口演内容は、本研究会の目的などにマッチしていない、他の研究会などでの発表を試みられた方が良い」という趣旨の発言があったことは、的をえた、うまい表現であったと感心しました。
記:2016−7−6
1.以下の研究会が開催された。
**************開催案内からの転記**********
第 1 回 NICT/EMC-net 将来課題研究会
NICT/EMC-net では電磁環境技術分野において今後我が国が取り組むべき重点的研究課題について幅広い議論・意見交換を行うことを目的とした、将来課題研究会を新設いたしました。
この度、電波の安全性をテーマに第1回研究会を開催することとなりましたので、奮ってご参加いただけますよう、お願い申し上げます。
主 催: 国立研究開発法人情報通信研究機構 (NICT)
期 日: 2016 年 7 月 5 日 火曜日 14:30〜16:30
会 場: 首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス会議室
< プログラム >
14:30〜14:35 開会挨拶
14:35〜14:45 「NICT/EMC-net の組織改変について」
松本 泰(NICT)
14:45〜16:25 「電波の安全性に関する将来課題パネルセッション」
・パネリスト(50 音順:敬称略)
今井田克己(香川大学)
牛山 明(厚労省国立保健医療科学院)
大久保 千代次(電磁界情報センター)
関島 勝(LSI メディエンス・旧 三菱化学メディエンス)
豊島 健(日本デバイス治療研究所、USCI ホールディングス、日本メドトロニクス)
平田 晃正(名古屋工業大学)
渡辺 聡一(NICT)
・モデレーター 多氣 昌生(首都大学東京)
16:25〜16:35 閉会挨拶
******************
・60名ほどの参加があった。
2.聴講の記。
1)開会のあいさつ NICT電磁波研究所所長 平
・山中氏の後任として、所長となった。
・電波利用が進み、多様化し、人体への影響も研究する必要があり、EMC屋の出番である。
・NICTの役割は、先端的な電磁波測定、生体影響の2本の柱に加えて、他の研究機関や国際規格の制定に寄与する活動などとして、中核的な研究機関として活動することを柱に加えることである。
2)「NICT/EMC-net の組織改変について」 松本 泰(NICT)
・2016年4月より第4中長期計画に。
・2本の柱と中核的な研究機関として活動するために、EMC-NETの改変を行った。
3)電波の安全性に関する将来課題パネルセッション
司会:多氣が務める。問題点の提起への対処、新しい電波利用(WBCなど)への対処などを討議していく。このパネル討議では5件のパネリストによる背景説明と提案の後に中間の討論を行い、4件のパネリストによる発表の後に、総合討論を行う。
4)「総務省生体電磁環境に関する検討会第1次報告書」牛山明
・報告書の紹介と、特に「第5章:今後の取り組みについて」の解説。
5)「痛覚閾値に関する研究」 平田晃正
・研究の促進で、曝露基準の参考レベル制定に貢献できる。
6)「局所加熱に関する研究」平田晃正
・研究の促進で、ICNIRP高周波ガイドラインへの対応が可能になる。
7)「培養細胞を用いた総合的毒性試験」関島勝
・電磁波の健康影響は専門ではなく、化学物質などの毒性試験専門とする。
・ヒトの多様性を踏まえた新しいサイエンス評価が必要。
8)「NTPと今回の動物実験の結果について」今井田克己
・レジメなし、最近発表されたNTPの報告について解説。
・NTPからの電磁波に関連する報告書とは、TR-488、TR-489がある。
・今回のNTP報告で、曝露群に統計的に優位な陽性効果が認められた。
報告書を読むと、ラットにおける発がんが数パーセントの自然発生がある、しかし、今回の実験では対照群での発生はゼロであった。対照群に1匹でも発生があれば、曝露群での発生は「統計的に有意とは言えなくなる」という課題を抱えている。
<マスコミの報道を見るだけではなく、このNTPの報告書をじっくり読む必要があると 感じた。>
9)「中間周波数電磁界に関する疫学研究の提案」大久保千代次
・IH調理器から生じる中間周波数帯域の磁界への曝露と妊娠結果に及ぼす影響に関するコホート研究を提案する。
10)中間の討論
大久保:関島先生のプレゼンにあった「Validation」の必要性は?
関島:日本から国際的に提案することは可能。
渡辺:今井田先生のプレゼンにあったNPT動物実験での曝露量は6W/kgであり、熱作用が発生するレベルではないか?
今井田:NTPでは最大耐性量として、温度上昇1度までの曝露量を定めた。
大久保:NPTの実験では対照群は電磁波曝露ゼロとしている。曝露群に温度上昇があるのであれば、対照群も同じ条件にすべきではないか?
今井田:NTPのプロジェクトは化学物質などの曝露を前提としているので、電磁波の曝露実験には無理な面もある。
多氣:このNTP実験では、電磁波のInitiationの実験を行っているが?
今井田:今回のNTP実験では2年間の連続曝露であり、別にPromotor作用の点も考える必要がある。
多氣:関島先生への質問、電磁波の影響を確認するためにはすべての周波数で行う必要があるのか、ひとくくりの実験でよいのか?
関島:化学物質の場合は、・・・・・・
フロア(宮越):遺伝子の影響もあれば、細胞実験だけでは不十分ではないか?
関島:遺伝子の影響はある。不変性と多様性の両面での研究は必要。
11)「将来的な健康リスク評価のための長期モニタリング」 多氣昌生
・疫学での曝露評価が難しい。
12)「医療機器などへの電磁干渉についての総合影響評価体制の構築」 豊島 健
・病院環境でのEMCでは、イミュニティレベルを3−10V/mから28V/mに増強。
13)「電磁界のリスク認知の継続的な調査の提案」 大久保千代次
・GSMの報告書に、各国の携帯基地局からの電波曝露強度の測定例がある。日本では低いレベルであった。
・リスク認知のパターンを時間的に変化させる要素を長期的にモニタリングする研究は価値がある。
14)「WHO、ICNIRPなどと連携した国際共同研究」 渡辺聡一
・WHO、ICNIRPとのつながりが深いので、共同研究の促進を。
15)総合討論
フロア:WHOの研究アジェンダでは動物実験の必要性が低いが?
牛山:わが国でも必要なら、推進すべき。
渡辺:すべてではないが、日本でも動物実験はやっている。
フロア(雨宮):フランスに行った時、地下鉄が途中で止まった。目の前にトンネル内携帯電話のための基地局が目の前にあった。こうしたことも配慮すべき?
多氣:一般人の曝露実態はGERoNiMOで試験中。6月のBIOEMでも報告があった。
フロア:医療機器のイミュイティレベルを上げている。これは何かリスク低減などの裏付けがあるのか?
豊島:外国の規格制定の動きをみているが、一方的に上げているように見える。電磁環境を制御できない在宅医療を考えている。
渡辺:医療機器への電磁環境実験では、ペースメーカへの影響に関しては、実機の携帯端末を用いているが?
豊島:総務省の実験では、ダイポールアンテナを用いた実験を行い、その後に、携帯端末の実機で実験を行っている。
司会(多氣):IH調理器や中間周波数、ミリ波の帯域に関して、フロアにメーカーなどの関係者がおられれば、何か意見を
フロア(塚原):ミリ波に関しては自動車の自動運転のために車載レーダーに77GHzを用いている。自動車の安全運転に必要な条件とともに、人体影響に関しても、何らかの調査は必要かもしれない。
平田:ミリ波帯域などの曝露基準に関しては、ICNIRPでは論拠はあいまいで、エイヤーで決めていると思われる。ある論議では「10年前は、現在のようにここまでこうした帯域の電磁波が使用されるとは思っていなかったので、当時はエイヤーで決めた」ということもあった。
渡辺:本日欠席であるが、被験者を対象とした研究を行っている宇川先生から「高齢化社会を考慮した研究が必要」とのメッセージ。例えば、電磁波とアルツハイマー病との関係を調査する・・・・等。
16)まとめ
ラポーターの渡辺聡一さんが、本日の論議の概要をまとめ、報告があった。
17)最後に、司会者の多氣先生より
・本日の研究会は結論を出すことが目的ではない。今後、何をしていくべきかの討論の場であった。
<関心のある方は、この研究会のレジメを入手して、読んでください。>
記;「2017−3−4
以下の研究会が開催された。
開催案内からの抜粋
**********************
第3回人体の電磁界ばく露評価研究会
主催:国立研究開発法人情報通信研究機構 NICT/EMCnet人体の電磁界曝露評価研究会
日時 平成29年1月23 日(月曜日) 10:00〜12:00
場所 首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス
プログラム(敬称略)
議題 【 電波の安全性に関する国際動向
】
1.開会挨拶 10:00〜10:05
多氣 昌生 (首都大学東京 大学院理工学研究科 電気電子工学専攻 教授)
2.WHO および GLORE(電磁界の健康影響に関する国際コーディネート会合)動向(仮)
10:05〜10:35 大久保 千代次 (電磁界情報センター所長)
3.IEEE/ICES 動向(仮) 10:35〜11:05
平田 晃正 (名古屋工業大学大学院 工学研究科 教授)
4.ICNIRP 動向(仮) 11:05〜11:35
渡辺 聡一 (国立研究開発法人情報通信研究機構)
5.オープンディスカッション
11:35〜12:00
***********************
2.講演などの内容から
1)講演「WHOの動向とGLORE会議について」大久保千代次
・WHOのRF環境保健クライテリアの編集が進行中である。
2017年にタスク会議が開催されて、最終案がとりまとめられるかもしれない。
この環境クライテリアでは、メタ分析結果は採用されない予定で、メタ分析には研究の質の観点から環境クライテリアの評価の対象から外した研究も含めて、結論を出しているためである。
・その他 特記事項なし。レジメ参照。
2)講演「IEEE電磁界安全に関わる国際委員会の規格動向と関連研究」平田晃正
・IEEEのICESのSC6のチェアマンを務めている。
・IEEEはSafe Useを目的に、確立した事象を基にして対応している。
・IEEEはICNIRPとはExpert Judgement(専門家判断)としての安全率に関する考え方が異なるので、結果として基準値が異なってくる。
・かなり難解なレベルの講演、レジメ参照。
3)講演「ICNIRP 動向」渡辺 聡一
・ICNIRPにおける健康の定義は、WHOの定義より限定的で、「病理的な条件、相当な苦痛や不快感」を基本としている。
・高周波のガイドラインの改訂作業中。
・ICNIRPは、財源は公的な政府からの基金によっているが、財政的にきつい。
・その他はレジメ参照。
4)オープン討議
Q:WHOの環境基準クライテリアが刊行された後の動向は?低周波に関する環境基準クライテリアが刊行されてからの産業界や各国の動きは?
A(大久保):低周波電磁界の環境基準クライテリアが刊行された後は、WHOの推奨によって曝露基準をICNIRPのガイドラインを改訂・採用した国はある、ノルウェー、オーストラリア、トルコ、日本等。
Q:高周波の環境基準クライテリアが刊行された後のWHOの活動は?
A(大久保):国連組織レベルでのガイドライン・基準を作ろうとしている。
2020年が目標で、それまではWHOのEMFプロジェクトが継続する。
Q:電気通信連合ITUの動きは?
A(平田):IEEEの議論に参加して、聞いているだけ。
Q:IEEEとICNIRPの値が結果として異なる。論拠としている6W/kgという閾値は苦痛を伴う値か?
A(渡辺):動物実験での動物の行動異常は観察されているが、苦痛と言えるかは?安全サイドに立つ値であろう。
Q:1982年のIEEEの規定では短期曝露といった場合の短期の条件等を規定していたが今の規定ではなくなっている。
A(平田):十分な議論・規定はしていないといえる。
Q:逓減率25は?20ではどうか?
A(渡辺):ガイドラインを作る時は継続性も考慮が必要。熱作用は確立しているが、まだまだ研究は必要である。
Q:ICNIRPは社会・経済性を無視するとしているが、言い続けていいのか?
A(渡辺):ICNIRPの建前としては言えないのはないか、「科学的な論拠」に基づくとしている。
Q:逓減率は10×5だったこれは機能的な変化の場合である。98年以降のガイドラインはわかりにくい。
A(渡辺):IEEEがカギになりそう。ICNIRPの規定はIEEEの規定がベース。IEEEでの論議に期待する。IEEEは軍が関与し、高曝露での実験研究などを行ってくれていた。今後もそうした貢献に期待したい。
A(平田):自らの体で接触電流の閾値を研究した人はいるが、必ずしも論文になっていない。インドなどの高温地域でのことも考慮する必要がある。
まとめ:多氣
ICNIRPはコンセプトが重要、IEEEは雑多な人の参加を得て、最終的にはまとめている。双方の活動と協調が寛容であろう。
記7;2017−3−2
1.以下の講演会(説明会)が開催された。
開催案内から一部抜粋
*********************
「電波の安全性に関する説明会」を東京都千代田区で開催
総務省関東総合通信局(局長:高崎 一郎)では、「電波の安全性に関する説明会〜安全で安心な電波利用環境に向けて〜」を下記のとおり開催いたします。
現在、携帯電話やスマートフォンが爆発的に普及し、また、無線LANやキーレスエントリーなど、日常 生活に欠かすことのできない通信システムも拡大しており、今や電波利用は国民生活や社会経済活動に不可欠なものとなっています。
その一方で、電波が身近になったことに伴い、「電波が人体に悪い影響を与えるのではないか」との懸念をもたれる方もおられます。
このため、総務省では、より安全で安心できる電波利用環境を整備するため、電波の影響に関する調査・研究や安全基準の策定・制度化、周知・広報等の施策に取り組んでいるところです。
本説明会では、これまでの研究の成果で解明されている電波(電磁波)の性質や健康への影響等を一般の方にも分かりやすく説明します。
また、参加者の方々からのご質問にも回答いたします。
記
1 日時 平成29年2月23日(木曜日)
2 場所 九段第3合同庁舎 11階共用会議室 (東京都千代田区九段南1−2−1)
3 主催 総務省 関東総合通信局
4 講演内容
•講演1 「電波の安全性に関する総務省の取り組み」 総務省総合通信基盤局電波部電波環境課 篠澤康夫
課長補佐 •
講演2 「電磁波の健康への影響と電波防護指針について」一般財団法人電気安全環境研究所 電磁界情報センター所長
大久保千代次 氏
**************
2.以下は聴講した時のメモから
1)開会のあいさつ
・平成16年度よりこの種の説明会を開催している。
2)講演1「電波の安全性に関する総務省の取り組み」 篠澤康夫
・安全という言葉は人体に影響なし、機器に影響なし という意味で使用している。
・科学的な事実に基づいて対応する。
・その他は一般的な話であったが、以下に示すように、医療機関における携帯電話の利用環境の変化は興味深いデータであった。
この図をみれば、かつては「病院内では携帯電話の使用は禁止」となっていたのが、大幅に緩和されていることが判る。
3)講演2 「電磁波の健康への影響と電波防護指針について」 大久保千代次 氏
・いろいろと一般的な話があったが、以下の点は興味深い。
上記のグラフは電磁波ではなく、一般の癌に関するリスクの大きさを、主婦と専門研究者(癌の疫学者)では感じるレベルが大きく異なるという例である。
専門的には「普通の食べ物のリスクは大きくて、食品添加物のリスクは小さい」にも関わらず、主婦は全く逆に感じている。
4)質疑応答
最初に事前質問に対する回答があった。
Q:ネズミ退治のコンセントに差し込むグッズを使っていて体調を崩した。
A:WHOの用心政策に関するFact Sheet を読んで欲しい。
Q:電磁波とは何か
A:WHOのWEBや総務省のWEBを見て欲しい。
Q:いわゆるEMCと電磁波曝露との関係は?
A:VCCIなどのEMC規格とは全く別のものである。
Q:体重計がしばしば、異なる表示をする、これは何か電磁波の影響か?
A:電磁波の影響とは考えにくい、メーカに修理を依頼してはどうか。
Q;高圧送電線の下に保育所があり、電磁波が心配。
A:WHOのFact Sheetを読んで欲しい、IARCで発がん性判定2Bとしているが、因果関係があるとはみなせない。
Q:携帯電話を胸のポケットに入れても大丈夫か? また画面から出るブルーライトは大丈夫か?
A:携帯電話は医療器には影響が出るが、胸に入れても健常者は大丈夫。
ブルーライトに関してはまだ研究が少ない。強いブルーライトはメラトニンを抑制するとされる、ICNIRPで検討中である。
Q:労働環境での電磁波曝露は?
A:電波防護指針の管理環境に対する曝露基準を考えればよい。
Q:電磁波の健康影響に関して一般の人に説明するための根拠となる資料は?
A:今回の配布資料の中にあるWHOのFact Sheet集や電波と安心なくらしのパンフレット等を利用してほしい。
以上が事前質問、これからはフロアからの質問に答える。
Q1:昨年もこの説明会に出席した。昨年の説明会で質問したところ、野島?先生からモスクワシグナルという事件は集団パニックであるといわれた。
同じ質問をします。
A(大久保):前回の回答者ではないので、集団パニック・・・に関しては何も言えない。
集団パニックのような精神的なストレスがあれば免疫機能が低下して癌になる。例えば大使館で人質事件などがあれば、多くのか方が癌でなくなっているという事例もある。
モスクワシグナルに関する追跡調査が行われて、その結果では問題はなかったとされる。
Q2:フレイ効果、パルス波形によるマイクロ波可聴効果に関しては?
A(篠沢):マイクロ波可聴効果があるとは聞いている。電波防護指針ではこのフレイ効果は対象としていない。
A(大久保):一般環境下ではマイクロ波可聴音が出るような状態にはない、レーダーなどの軍事環境下ではありうる。
Q2:関連する電子通信情報学会の論文を持参した。読んでください。
Q3:先ほどのネズミ退治器に関連して、わが家でも超音波と電磁波を利用するものを取り付けている。
このネズミ退治器の取り扱い説明書には「肩こりが発生する恐れがある・・・・」とある。
こうしたことに関しては?
また、今回の説明の中で、「食品添加物より普通の食事のリスクが大きいことに関して詳しく知りたい。
A(大久保):片寄った食事はだめである。
食物にも添加物には様々な成分が複合されている。これらの成分の中には、良い成分と悪い成分がある。
例えばコーヒは膀胱癌を高める成分が、また肝臓がんを抑制する成分を含んでいる。
すべての野菜・食物には良い面(抗がん性)と悪い面(発がん性)が複合している。
Q4:曝露基準を定める時の安全率はどうやって決めた?
A(大久保):化学物資では器質的変化(可塑的な変化)が動物実験で確定し閾値が判る。
動物からヒトへの適用で10倍、ヒトには老若男女がいるのでさらに10倍の安全率を設定、すなわち100倍の安全を見込む。
電磁波の場合は機能的な変化(可逆的な変化)なので、ヒトへの適用で10倍、年齢などを考慮して5倍、計50倍の安全率としている。
関心のある方は、この説明会のレジメを入手して、読んで下さい。
記:2021−3−11
以下の研究会は開催されました。
BEMSJは出席できませんでした。
プログラムのみの紹介です。
レジメは入手しましたが、専門的な話で、ここに紹介するトピックスはありませんので、割愛します。
************************
国立研究開発法人情報通信研究機構 NICT/EMC・net
人体の電磁界ばく露評価研究会
日時 平成29年12月5日(火曜日)10:00〜12:00
場所 NICTイノベーションセンター(KDDI大手町ビル16階)
プログラム(敬称略)
議題 【5Gシステムからの電磁界への人体ばく鼻評価】
1.開会挨拶 多気 昌生
2.5Gからのミリ波電波への人体防護に関する研究動向および人体防護ガイドライン改定動向 平田 晃正
3.5Gに関する国際標準化動向 大西 輝夫
4.5Gからのミリ波電波に対する人体防護指針への適合性評価に関する研究動向 佐々木 謙介
5.オープンディスカッション
************************
記:2021−3−11
以下の研究会は開催されました。
BEMSJは出席できませんでした。
プログラムのみの紹介です。
レジメは入手しましたが、専門的な話ばかりで、ここに紹介するトピックスはありませんので、割愛します。
***************************
国立研究開発法人情報通信研究機構 NICT/EMC‐net
人体の電磁界ばく露評価研究会
日時 令和元年12月10日(火曜日)14:00〜17:00
場所 首都大学東京秋葉原キャンパス
プログラム(敬称略)
1.研究会開会挨拶 多気 昌生
2.携帯電話基地局の人体防護のこれまでの状況 渡辺 聡一
3.基地局の電波ばく露技術の国際標準化動向 東山 潤司
4.携帯電話基地局からの電波ばく露 多気 昌生
5.電波ばく露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用 大西 輝夫
6.自由討論
***********************
記:2023−1−31
第7回人体の電磁界ばく露評価研究会― 電波防護ガイドラインとばく露評価法の最新動向 −
国立研究開発法人情報通信研究機構 NICT/EMC-net 人体の電磁界ばく露評価研究会
日時 2020年12 月16 日(水曜日)13:30〜16:30
場所 オンライン開催
プログラム(敬称略)
1.研究会開会挨拶 13:30〜13:40 多氣 昌生(情報通信研究機構)
2.電波防護指針の経緯と今後の展望− 防護指針の答申からの30年とこれから− 13:40〜14:00 梶原 亮(総務省
)
3.ICNIRP2020 ガイドラインと今後の動向 14:00〜14:30 平田 晃正(名古屋工業大学
教授)
4.SAR 測定法の新規格 14:30〜15:00 井山 隆弘(株式会社NTT ドコモ)
休憩
5.電力密度評価法の国際標準化動向 15:10〜15:40 佐々木 謙介(情報通信研究機構
パネルディスカッション ― 電波防護ガイドラインとばく露評価法 −
最後のパネル討議の時間に以下の話があった。
・先日キューバ大使館の音声攻撃に関するNAS報告書での、原因はFrey効果による・・・とされた。
・報告書を読むと、作成者の中に電磁波の専門家がいないようで、きちんとFrey効果の評価ができていないようであるが・・・・
・これに関して、IEEEやCOMERが見解を出したくても、学会としての立場や手続きの問題があって、出したくても出せない。
・ICNIRPもまだ論議を行っていない。
・詳しいFosterやC. K. Chouがレビュー記事を書くかもしれない。
記:2021−12−27
以下のシンポジウムがオンラインで開催された。
********************
電波曝露レベルモニタリングシンポジウム-生活環境における長期モニタリングへの取り組みと展望-
第5世代移動通信システム(5G)やInternet of Things(IoT)等の普及・展開 により、様々な無線装置より様々な周波数帯の電波に曝露する機会が増大しています。
また今後、ワイヤレス電力伝送(WPT)などの実用化・普及により、電波に曝露する機会は増大することが見込まれています
このような状況を背景として、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)では2019年に総務省生体電磁環境研究を受託し「電波曝露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用」の研究を実施しています。
本研究の主な目的は、日常生活における電波環境を長期にわたり網羅的に明確にすることで、人体曝露の実態について定量的な根拠に基づく理解を深め、電波利用の発展と拡大にともなうリスクの可能性について、適切な説明と対話を可能にするリスクコミュニケーションの在り方を示すことにあります。
本シンポジウムでは、本研究のこれまでの取り組みをご紹介し、パネル討論にて課題と期待される成果及び将来への展望について有識者の方々に議論していただきます。
開催日程:2021年12月16日(木)13:30〜17:00
開催会場:オンライン開催
参加対象:関係省庁、関連業界、大学・研究機関、マスコミ関係等
参加費:無料
参加申込:https://www2.nict.go.jp/cgi-bin/cgimail/202111100016/index.cgi
申込締切:2021年12月10日(金)17:00
定員になり次第、参加受付を締め切らせていただきます。
問い合わせ先:
国立研究開発法人情報通信研究機構
電磁波研究所電磁波標準研究センター電磁環境研究室
シンポジウム事務局
プログラム
13:30-13:40 開会挨拶 徳田 英幸(NICT 理事長)
13:40-13:50 来賓挨拶 野崎 雅稔(総務省総合通信基盤局電波部長)
第1部 講演
13:50-14:20 「総務省における電波の安全性に関する取組み」
中里 学(総務省総合通信基盤局電波部 電波環境課長)
14:20-14:40 「電波曝露レベルモニタリング研究の背景と研究計画」
渡辺 聡一 (NICT電磁波研究所電磁波標準研究センター 電磁環境研究室 室長)
14:40-15:00 「電波曝露レベルモニタリングデータの取得」
大西 輝夫 (NICT電磁波研究所電磁波標準研究センター電磁環境研究室 主任研究員)
15:00-15:20 休憩
15:20-15:40 「電波曝露レベルモニタリングデータの活用」
多氣 昌生 (NICT電磁波研究所電磁波標準研究センター電磁環境研究室 上席研究員)
第2部 パネルディスカッション
15:40-16:50 「電波曝露レベルモニタリング研究における課題と期待される成果および将来への展望」
パネリスト:
高田 潤一(国立大学法人東京工業大学 教授)
甲斐 倫明(日本文理大学 教授)
増田 悦子(公益社団法人全国消費生活相談員協会 理事長)
加藤 彰浩(総務省総合通信基盤局電波部電波環境課 課長補佐)
多氣 昌生(NICT)
モデレータ:花土 ゆう子 (NICT電磁波研究所電磁波標準研究センター 研究センター長)
ラポータ:渡辺 聡一(NICT)
16:50-17:00 ;閉会挨拶 平 和昌(NICT電磁波研究所 研究所長)
********************
BEMSJはオンラインで聴講した。
この講演で、元NTTで現在NICTに勤務する大西氏が短時間の画面での紹介だけでしたが、5Gの電波強度の測定例を見せてくれました。
28GHz帯
データトラフィックありで電波が強くなり、強度は0.1V/m程度、時間軸での測定におけるピークは1V/mに届かずという一例でした。
アンテナとの距離とかその他の条件は不詳です。
NICTではこのように電波環境の実測を、5Gも含めて行っている様です。
まだ報告書に纏まる段階ではなさそうです。
ということで、少なくともNICTではミリ波の5Gの電波強度の測定も行っていることだけは 判りました。
記:2023−1−31
NICT/EMC-net第8回人体の電磁界曝露評価研究会
■日時:2022年1月20日(木) 14:00-17:00
14:00 研究会開会挨拶 多氣 昌生(NICT電磁波研究所)
14:05〜14:35 依頼講演 5G端末の曝露評価と課題 清木 嘉裕 (シャープ株式会社)
14:35〜15:05 依頼講演 5G基地局の曝露評価と課題 東山 潤司 (株式会社NTTドコモ)
15:20〜15:40 講演 最近の電波防護に関する標準化動向 大西 輝夫 (NICT電磁波研究所)
15:40〜16:40 依頼講演 IEEEにおけるSAR評価法の標準化 田邉
信二 ((元)三菱電機株式会社/大阪工業大学非常勤講師)
16:40〜17:00 パネルディスカッション 今後の電波防護に関する国際標準化について
・オンラインで参加した。
・5Gのミリ波でのサービスは、NTTドコモは2020年9月23日に開始した。
・5Gのミリ波での電波曝露評価のために電波測定を行う時、この通信サービスでは様々な通信パラメータの設定は通信会社に自由度が与えられているために、これらの通信パラメータが判らないと、測定は不可能に近い、極論を言えば、それぞれの通信会社が自社の通信パラメータを知った上での測定のみが可能と言える。
・5Gにミリ波での電波測定は、ビームフォーミングなどを行うために、3軸プローブでも、3軸同時測定を行わないと、正確に測定できないかもしれない。3軸プローブでもそれぞれの軸の測定を時間で区切って順次測定している場合は、ダメかもしれない。
・その他は割愛。
記:2023−1−31
以下の研究会がZoomで開催された。
80名ほどの参加者があり、BEMSJも参加した。
内容な非常に難解であった
第9回人体の電磁界曝露評価研究会― 5G/B5Gにおける人体曝露評価方法
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国立研究開発法人情報通信研究機構 NICT/EMC-net
日時 2023年1月31日(火曜日)14:00〜16:00
場所 オンライン開催
プログラム
1.研究会開会挨拶
14:00〜14:05 多氣 昌生(情報通信研究機構)
2.電波の安全性に関する総務省の取組み
14:05〜14:35 藤原 史隆(総務省 総合通信基盤局)
5Gに関する取り組みにも言及。
3.Beyond 5Gに向けた3GPP等標準化動向
14:35〜15:05 安藤 桂(株式会社NTTドコモ)
5G以降の通信方式に関する解説、難解。
4.吸収電力密度評価方法の標準化動向
15:20〜15:40 佐々木 謙介(情報通信研究機構)
これも難解。
5.5G基地局曝露評価法に関する標準化最新動向
15:40〜16:00 東山 潤司(株式会社NTTドコモ)
5Gのミリ波バンドの場合はビームフォーミングという手法で、通信を行おうとする端末に対して、基地局はその端末の方向に向けてダウンリンクの電波を放射する。したがって、基地局から発信される電波の曝露量を測定する場合は、単に基地局の回りで電波強度測定器を測定しても何も測定できない。
よって、基地局からの電波曝露量の測定には、測定器の近くに端末を準備し、端末と基地局間で強制的な通信を行う、そして、スペアナ等で基地局からのダウンリンク電波の周波数の電波強度を測定する。