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  学術研究論文の概要などの紹介 


. 1993年福岡開催「電磁界生体影響国際シンポジウム」概要

2.1995年電気学会・編"電磁界の生体効果と計測"の紹介

A1996年全米科学アカデミーの電磁波報告

B1997年電気学会シンポの報告

3.1998年国際シンポジウム「電磁界による人体影響と環境リスク」の概要
4.1998年電気学会の見解の概要

1998RAPID計画の作業部会ドラフトレポートに記載された結論
6.1999RAPID計画の最終報告書に記載された結論  
7.RAPIDの「Q&A」文書関連情報 

A第3回電磁界の健康影響に関するワークショップ 2001年 参加報告
8.2001JR総研月例発表会から 

9.2001年イギリスのNRPB発行 Dollレポートの概要
10
英国NRPB報告に見る職業的な電磁界への暴露状況 

11
2001年国際がん研究機関IARCの低周波磁界発がん性2B判定 
12
発がん性グループ2Bにリストされている物質など
13
発がん性グループ1にリストされている物質など
14
発がん性グループ2Aにリストされている物質など
15
IARCによる「低周波磁界は発がん性2B」判定を受けてのICNIRPの見解
16
IARCによる「低周波磁界は発がん性2B」判定を受けてのICNIRP論文
17
発がん性ありと判定されているアルコール飲料に関する研究 
18
アルコールの飲酒と発ガンの研究 

19
第1回労働衛生重点研究推進協議会シンポジウム2001


 

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1. 1993年福岡開催「電磁界生体影響国際シンポジウム」概要

International Symposium on Biological Effects of Magnetic and Electromagnetic Fields, Sept.93 Fukuoka (199393-4日、福岡で開催された磁界及び電磁界の生体影響に関する国際シンポジウム) 参加した時の概要。

*アメリカ Colorado大学 F. Barnes教授による”ELF電磁界と生体についてのReview
ELF
電磁界の生体影響は仮設として、化学作用で説明できるかもしれない。
ダイオードやトランジスターのJunctionLayer、極性による特性・影響度の違いといったような形で、電磁界が細胞に何らかの影響を与えているかもしれないということを化学的に説明出来る可能性がある。

人体は60Hzの電磁波を、一つの外乱ノイズとして検知しているかもしれない。
でも、たぶん神経系が訓練結果として 反応しなくなっている可能性がある。
人体と電磁波がどのようにしてCoupling(結合)しているのか?わからない。

ハチ(Honey Bee)は体内にマグネタイトを持っている、ΔB=10-9テスラという微小なレベルを感知している。
電磁波による発熱作用もある。 しかし 人体は例えば運動をすることによって 通常の10倍以上のエネルギーを消費するが 体温は一定である。
 よって 電磁波のエネルギーの体内吸収が即体温上昇に直結するとは限らない。 

生体内の電界強度は空中での電界強度より小さい。
磁界強度は同一である。 よって、磁界の方が生体への影響が大きい。
だだし 生体はkT = 26meV程度の内部エネルギー源を持っているので、この生体内エネルギー量と外乱としての電磁界による影響を、S/N比ということで考慮する必要がある。 

Colorado
での自然界の 電界は、60Hz8V/m程ある。 
Coloradoでは送電線は230/115kVが多く、地上における電界強度は10kV/mを越える。

*北海道大学 加藤教授 ”50Hz磁界のメラトニンへの影響” 
ネズミを使った実験結果 

ネズミに50Hz磁界を印加すると松果体からのメラトニンに影響がある。 
50
μT50ミリガウス: 50mG)程度のStoray磁界でも 松果体からのメラトニンに変化をあたえる。  Dose-Response(量―反応)関係にある。
1μT10mG)以上で影響があり、この1μTThreshold level(閾値)といえるかもしれない。 

ネズミの松果体は 人間と大きく異なり 外部に近いため電磁波の影響を受けやすいのかもしれない。 鼠の松果体はネズミの頭部の外部に近い所にある。
外界の影響を受け易い。 人体の松果体は脳の深部にあって、外界の影響を受け難い。

 どのようにして磁界が松果体に影響しているのか?
 @Direct Coupling 磁界による渦電流が直接影響をあたえている。
 APhotoreceptor へのDirect Couple
 などが考えられるが わからない。

 Q&Aより
 Q;テスト条件としての温度制御は 完璧か?
 AYes

 Q;磁界発生装置等からの振動や音・超音波については十分考慮したか?
  Rodentといったネズミは人間より、そうしたことに対して、かなりSensitiveであり、 ストレスとなる。
  AYes

*アメリカ Battle Pacific Northwest 研 Tenforde博士 ”ELF磁界の生体影響”
ファンがONする時、10テスラ/秒という磁界が100nSec間生じたりしている。
ELF
磁界は生体内に誘導電流を発生させ そして 何かの影響をあたえているかもしれない。 
非熱作用は考えていない。
DNA
に対する影響、癌に対する影響ではInitiatorにはならない、Copromotorになるか、、、は わからない。
磁界の生体影響:定常磁界;影響があるとしても 少ない。

 Transient; ?がある。何かあるかもしれない。 
 何かTrigerとして 働いているかもしれない。

*九州大学、上野教授 ”磁界の生物的及び物理化学的影響”
強力な直流磁界では 水を止めることもできる。 8テスラ等では水の流れを止める。
この実験は 実演があった。

 Q&Aより 
 Q;テストに純水を使用しても同一の結果がでるか?
 A;やってみる。

*アメリカ California Institute Technology  Kirschvink教授  ”生物磁気と生物磁気センサ”
 
「みつばち」は磁場に対して強い検知能力をもっている。
 人体にも脳内に”マグネタイト”があることが実証された。

*東京農工大学 松永教授 ”生体におけるマグネタイト形成に関する遺伝子の解析”
 完全に 細胞レベルの研究。 良くわからない。

*アメリカ Utah大学 Gandhi教授  ”高周波電磁界の生体作用”
MRI
を利用して、人体を3mm刻みで測定をした。 これを利用して、SARのシミュレーションがかなり精密に計算出来るようになった。
RF
帯はSARで考える。低周波帯は誘導電流で考える。 

携帯電話のSARの例。 
   全身(Total Body)     33-78mW 
   peak SAR1g当たりの計算) 0.2- 0.085W/kg

              ANSI1.6W/kgより小さい が、 
   耳                  0.52- 1.6W/kg 
          Very Localな部分で越える可能性がある。 
送電線下にある人体の誘導電流の精密なシミュレーションによれば10kV/m下では30mA/cm2となり、現行のIRPAの考えより厳しくなっている。 

 Q&Aより  
 Q60Hzで変調した高周波に対して、検討したか?
 A;まだやっていない。

*アメリカ California大学 Liburdy博士
 ”高周波及びELF電磁界と細胞内カルシウムイオンの挙動”
地磁気を遮断して 交流磁界のみ印加出来る装置を作った。地磁気は10mG程度になっている。  これに細胞(MCF-7)をいれてテストした。
  4回繰り返してテスト。
  結果; 0.5-2mGまでは OK
      12mGでは メラトニンが抑制せれた。
 この結果は Threshold Level(閾値)を示唆している。

 Q&Aより 
 Q;地磁気のDC分をシールドしているが、もしDC分をシールドしなければどうなるか?DC分が10mG残留し AC分が12mG いう条件は桁が近いので、この影響がAC12mGによるものか DC分を10mGに 下げたことによるものか判断しにくい。 DCAC の方向に関しては吟味してあるか?
 A;アドバイスにしたがって 今後検討を続けます。

*アメリカ Rhode Island大学 Polk教授  ”ELF電磁界の生物影響における物理的機構”
ELF
の生体影響については 誘導電流で考える。
Kirsch\vink
教授が最近発見された人体脳内のマグネタイトは、人間の実生活には何の影響も与えなくなっていると思うが この   マグネタイトが電磁界の人体への影響に関連しているかも知れない。 今後の研究課題である。 

*徳島文理大学 宮本教授 ”培養細胞のイオン膜輸送に対する磁場の影響”
 DC
磁界 0.5- 1.7テスラ では何の影響もない。
 0.35
もしくは0.07テスラと1.8テスラON/OFF切替との組み合わせ
 
分単位でのON/OFF   ;  何の影響もない。
 3-5
秒単位でのON/OFF;  影響が認められた。

*大阪大学 志賀教授 ”血流流動への磁場の影響” 
 強いDC磁場もしくは磁場傾度が血流にどのように影響するか調べた。 
 磁気マグネット1000ガウス程度のものが使用されている。

 DC 500ガウスでは血流に何の影響もない。 
 より大きな磁場、もしくは磁場傾度によって、血流が影響するようになる。 
 T値×T/m がパラメータとして重要である。

*鉄道総研 中川博士 ”リニアモーターカーと磁場の安全性” 
 はえ(Fruit fly)を使った磁場影響のテストをしたり、リニアモーターカーの磁場強度を測定したり、シミュレーションを実施している。
 各国の磁気に関する暴露基準や MRIの磁気に関する調査研究状況等を調査している。 
 リニアモーターカーの発生磁場をいかにして 安全であると証明するかが課題である。

 Q&Aより 
 Q;磁気に関して理論的に考えるだけでなく、早くリニアモーターカーの磁界強度を実測せよ。
 A;アドバイスありがとう。 現在建設中のリニアモーターカーが完成したら 実測してみます。

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2.1995年電気学会・編"電磁界の生体効果と計測"の紹介


コロナ社1995年発行、ISBN:4339006254 定価は5665円と安くない本です。 
高周波電磁界の生体効果に関する計測技術調査専門委員会として多数の学者や専門家を集めて、共同で執筆したもの、
直流の磁界・電界から、低周波電磁界・マイクロ波から医療応用、そして計測と安全規格まで、一応網羅されています。 

内容はきちんと書いてあり、興味を持った点では更に突っ込める様にそれぞれの引用文献が整理されています。 推奨できる本です。 但し、一応専門書の形態をとっていますので、電磁波の工学もしくは医学の知識が無いと、理解できないかもしれません。
気がついた点を少し引用(” ”の部分)しながら紹介します。 

*低周波電磁界の章

"サイクロトロン共鳴説に対しては、提唱者のグループ以外からは支持が得られていない。
彼らの実験報告が正しいとすれば、現象としてこれほど明確な作用の例はなく、そのモデルもかりに物理的実体としては不十分であっても、比喩的なモデルとしての意義は十分にある。
逆に、報告が正しく無いとすれば、この分野の研究全体の信頼を損なうものとなるであろう。" と。 

超最新の情報では、サイクロトロン共鳴説を唱えた研究者は別の仮説を提唱しています。
このように電磁波の問題は、研究過程にあることもあって、日々変化・進展しています。  

*低周波電界の植物への影響:
電界の大きさが01ないし1kV/mの場合: 
キュウリ・カボチャでは根の成長が抑制されるという研究、 エンドウでは根の成長が抑制されるという研究がある。 

電界の大きさが1ないし10kV/mの場合: 
ヒマワリ 発芽率がわずかに低下という研究がある。 

電界の大きさが10ないし100kV/mの場合: 
75
種の植物 尖鋭な葉先が損傷を受けるという研究、 
85
種の植物 丸味を帯びた葉先に損傷なし という研究がある。 

これらの研究は電界に着目しています。 植物に対する電磁波の影響研究はどちらかと言えば電界に着目したものが多いと思います。
比較的最近の日本の研究で、詳細は覚えていませんが、電磁界が植物によい影響(発育促進)を与えている、という研究も有ります。
磁界だけではなく電界も考慮すべきということがよくわかると思います。 

RF及びマイクロ波による行動への影響 
"西洋で行われた電磁波の行動への影響に関する研究は主に急性暴露の結果に基礎をおいている。
これに対し、ソ連や東欧諸国では慢性的な弱い電磁界暴露が行動に影響を及ぼし、神経衰弱症などをもたらすという報告がなされていた。 
西欧でもこのような作用の追試が試みられたが、結果は否定的である。(引用文献38" と。 

この情報は、電磁波の安全規格のレベルに関してアメリカに対して旧ソ連は桁違いに厳しい基準を作成していた。 
その根拠は神経衰弱などの生理学的な研究成果によると説明されてきていますが、旧ソ連の根拠の再現性の無さを示すことになります。 

*電磁波の医療応用 
"
すでに古代ローマの時代から、シビレエイの電気ショックが痛みの治療に使われていたように神経系の適度な電気刺激は疾病の治療や機能補綴というプラスの面での応用も数多く行われている。" と。 
磁気治療器が電磁気の医療応用の先駆けかと思っていましたが、古代ローマからとは 驚きです。   

*電磁波の医療応用に関連して、 
半導体レーザーを利用した電磁波の医療応用の項で 
"
腫瘍治療など種々の治療効果が報告されているが定量的な治療効果の評価が難しいこともあり、生体への作用機序は解明されていない部分が多い。" とあります。 

医療方面では副作用が少なく、治療効果が有れば、理屈は後にして、レーザーを始め各種の電磁波を利用しているとみえます。 

局所ハイパーサーミア(電磁波による体内に局所的に熱を発生させて、その熱で比較的熱に弱い癌細胞をやっつける治療法)の項に 
"
最も臨床応用が進んでいるのは脳腫瘍へのトライアルであり、その予備的な成績は良好である。"と。  

携帯電話の電磁界による脳腫瘍の危険性が一方で論議されていて、他方では脳腫瘍の治療に電磁波を利用するという話がある。 

*送電線下のヒト体内の電流密度分布 
高圧送電線の下にヒトがたった時に、人体の各部にどの程度の電流が誘起されるか計算例が紹介されています。 
各部の割合は、頭、肩、胸、胴、腰が10、細くなっている首、太もも、ふくら脛等の脚部が4050、くるぶしの足首の部分で120、地面に接している足の裏で30。 という割合でした。 
足首は細く、胴体に誘起された電流が大地に流れ去るルートにあたる為に、電流が集中するものといわれています。 

*マイクロ波などの高周波電磁界の熱作用の研究
"
温度もしくは電界の非浸襲な測定(人体の外から内部の温度・電界を測定する手段)が可能となれば、生きた生体についてSARの直接測定を行なうことが期待できるが、現状においてはファントムを利用せざるを得ない。" と。 

これは現実的に脳の中の発生電界強度や温度を外部から直接測定する手段がまだ開発されていないことを意味しています。

"
埋め込み型の電界プローブを用いる。この適用例として携帯電話利用者の人体頭部でのSAR測定がある。
人体頭部ファントムは本物の頭蓋骨にジェリー状ファントム材(食塩水等を主材にして人間の体の電気的性質に似せた材料)を貼り付けて作成している。" と。 

この説明の図では、頭蓋骨の一部に穴を開けて、電界プローブを挿入して内部の電界分布を測定している。 あくまでも模擬的な研究です。 

"
ファントムモデルは分解可能であり、、、内部の温度分布を測定する。" と。 
マイクロ波によって脳の中にホットスポットと呼ばれる異常が発生するという見識はこうした模擬的な実験によって得られた報告の様です。 

別の頁では、"脳の中は血流が多く、部分的な熱の発生は考え難い"という説明もありました。  
血流が多ければホットスポットの発生はないことになります。 このホットスポットに関しては、更なる研究が必要でしょう。 

*医療従事者の電磁界博暴露 
"
医療従事者、、、、ハイパーサーミア従事者がさらされる漏れ電磁界の強さを測定して電磁波暴露を抑制する為のガイドブックを策定した。" と。 
患者はある時間の限定ですが、医者は毎日被爆するので危険性が高いといえます。 これに関しては規定が作られているようです。 

*安全基準の紹介 
付録として電磁波の安全基準の項目があり、歴史的な背景や各国の電磁波暴露基準の紹介があります。 
郵政省の電磁波防護指針も紹介されています。これらに関しては特に目新しいことは有りません。 

スウェーデンのMPR2に関しての記述が有りました。 
"
これは技術的にできるだけ漏洩電磁波を減らそうという観点から決められたもので、防護指針と比べるときわめて厳しい値になっている。
機器間の電磁干渉防止の立場からはたいへん歓迎されるが、電磁ハザードの立場からいえば人体防護を強調されると無用な誤解を生じるもととなる。
個々の基準の目的と理念をよく理解しておく必要があろう。"と。 

 

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A1996年全米科学アカデミーの電磁波報告


1996
11月以下に示す日経新聞のほかに、多数の新聞に掲載された。
一部引用する。

************   **********
電磁波とがん発生、関係確認できず 米で17年越す調査の報告書
【ワシントン31日共同】
高圧送電線や家庭用電気製品から出る電磁波が、がんを発生させるか、という長い間論争になっている問題について全米科学アカデミーの研究評議会は31日、「がんなど健康被害に結びつく因果関係は確認できなかった」とする報告書を発表した。

報告書は、米国を代表する学術機関である同アカデミーの研究評議会特別委員会の16人の専門家が17年以上にわたり、関係する500以上の研究論文の調査方法や結論の導き方などを詳しく調べ直してまとめた。
BEMSJ注: 記事に誤りがある。正確に記述すれば、
様々な研究者によって過去17年以上にわたり行われてきた、関係する500以上の研究論文の調査方法や結論の導き方などを、米国を代表する学術機関である同アカデミーの研究評議会特別委員会の16人の専門家が、詳しく調べ直して、報告書にまとめた。」 となるでしょう。>

因果関係の再調査対象になったのは、高圧送電線のほかヘアドライアー、電子レンジ、コンピューター端末などの電気製品。

高レベルの電磁波を動物や培養細胞に浴びさせる実験も実施した。

その結果、がんのほか生殖機能障害、発育障害など健康被害を科学的に証明する根拠は見つからなかったという。
(以下 略)
*************
関心のある方は、当該の新聞を読んでください。

最近になってパークの著作を読みました。
その中に、この報告書の作成に当たって、興味深い背景の説明が書かれていました。
その部分のみを引用します。

************   *********
ロバート・パーク著 栗木さつき訳「わたしたちはなぜ科学にだまされるか、インチキ!ブードゥー・サイエンス」 2001年 角川書店発行

7章 恐怖の電流 の冒頭を引用

1996
年、全米科学アカデミーは、「住宅周辺の電磁場が健康におよぼす影響」について3年にわたって徹底的に調査した結果を、記者会見で報告した。
だが、そのとき、ポール・ブローダーは会見場に姿を見せなかった。
そのうえポール・ブローダーは、そのころにはもう「ニューヨーカー」に記事を書いていなかった。
1992
年の夏、「ニューヨーカー」は誌面の大刷新を敢行し、ブローダーは新しい誌面のスタイルにふさわしいライターではない、と判断されたのである。

そもそも、送電線とガンの関係について国民のあいだに不安が広がったのは、この記者会見の7年前、1989年にブローダーが「ニューヨーカー」に連載した衝撃的な記事が原因だった。
すべての事の発端は、ブローダーであった。

ポール・ブローダーがいなければ、科学アカデミーが3年もの歳月をかけて綿密な調査を実施することもなかったろう。
環境衛生大論争の第一線から退いたブローダーであったが、科学アカデミーが報告書を発表したとあれば、電磁場論争の前線に復帰しようと、論陣を張るのは必至と思われた。

その日、ワシントンDC にあるリンカーン記念館近くのコンスティテユーソン通りに面した典雅な科学アカデミービルの大会議室は、記者やテレビカメラ、そして数名の科学者でごった返していた。
会見で報告されるのは、送電線とガンの関係に関する科学的証拠の集大成であり、もっとも詳細で、もっとも新しい、もっとも格式ある調査結果であった。

冒頭、ソーク研究所の著名な神経生物学者で、調査委員会の委員長を務めるチャールズ・スティーヴンズが、あいさつを述べた。
「環境に有害な微弱要因をあきらかにするのは、非常に困難な作業です。科学者は十七年にわたり、送電線の電磁場の危険性に評価を下そうと、苦労してきました。疫学調査、実験室での研究、コンピュータ分析など、あらゆる手法を駆使し、研究を重ねてきたのです。当委員会は、その500以上の調査結果を吟味し、評価を下しました。そして・・・・」スティーヴンズは、ひと呼吸おいた。「送電線の電磁場が健康に害を与えるという証拠はない、という結論にいたりました」

じつは、この調査委員会の人選については、科学界から懸念の声があがっていた。
「電磁場論争の決着はまだついていない、と考えたがる科学者のみで構成されている」と、科学界は批判していたのである。
副委員長を務めるノースカロライナ大学の疫学者デーヴィツド・サヴィツは、電磁場問題におのれの名声を賭けており、そのサヴィツが調査委員会で幅をきかせていたことが、不安の種となっていた。
おまけに16名の委員の半分が、電磁場が健康に与える影響を個人的にも研究していた。

かれらが電磁場の容疑をはらす報告をしようものなら、研究への資金援助が打ち切られてしまう。
「電磁場には用心すべき」という立場をとり、「さらなる研究が必要である」と主張しなければ、自分たちの研究を続行できなくなるのである。
そんな背景はあったものの、調査委員会は、「現在のところ、送電線の電磁場が人体に悪影響をおよぼすことをしめす証拠はない」という、満場一致の結論をだした。

**************   *********

これから判ることは、選ばれた委員・科学者は、己の今後の研究資金が得られなくなることを理解したうえで、科学者としての結論をまとめていることです。
関心のある方は、当該のパークの著書を読んでください。

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B.1997年電気学会シンポの報告

WERB公開:2009−10−22
古い資料の中にあったシンポジウムの報告です。
BEMSJ
はこのシンポジウムは聴講していません。 

電磁界の生体影響に関するシンポジウム(第1回)
主催:電気学会

開催期日:1997年7月11日
開催場所:東京電機大学7号館 講堂

講演とその内容

1.シンポジウム実行委員長 (司会、宅間 薫:京大教授)の挨拶
・電界や磁界は目に見えず、耳に聞こえないという、人の五感に触れないため、何かがあると電磁界は恐ろしい物のように言われます。
・「電磁波が健康に影響」と言う言葉がしばしば使われるが、電磁波は紫外線、赤外線、可視光線まで含まれるので、電磁波が影響するなら光も有害です。
・地磁気は300mG(注:後述)から600mGもあるので、送電線や配電線が家庭内に作る磁界よりずっと高い値です。

・人の健康に何が影響するのかメカニズムを解明するために、内外の研究機関が電磁波の研究しているので、電気学会も「電磁界生体影響問題調査特別委員会」を設立して調査を進めています。
・電気、磁気並びに電磁界の健康影響について、出来るだけ正しい知識と情報を提供するために今回のシンポジウムを開催した。

2.電磁界の生体影響問題に関するシンポジウム開催にあたって
  電気学会電磁界生体影響問題調査特別委員会 委員長 東京大学名誉教授  関根 泰次
・1972年、変電所で働く労働者に「疲労感や頭痛が見られる」というソ連の発表に端を発した電磁波問題は、翌年アメリカでの高圧送電線設置計画で論議を起こす事になった。

・また1979年、米国のウェルトハイマー博士が磁界と小児ガンに関する疫学研究の結果を発表し、翌年、ニューヨーク州が電力線磁界の研究プロジェクトを開始した。
・1992年、スウェーデン・カロリンスカ研究所のアルボム博士が2mG以上の磁界では小児白血病などの健康への影響が考えられると示唆した。
・この問題はその後、日本を含め世界各国の研究機関で研究が進められる事になり、WHO(世界保健機構)やIRPA(国際放射線防護委員会)などでガイドラインを発表するに至った。

・最近では全米アカデミーの「居住環境における電磁界曝露による健康への影響について(’96年10月)」と題する報告書が注目されている。
・我が国でも日米科学技術協力協定に基づく電界曝露実験や電磁界曝露実験などを行うと共に、環境庁や通産省資源エネルギー庁ではそれぞれの調査結果を発表し、「居住環境で生じる電磁界により有害な影響があるという証拠は認められないものの、さらに一層の研究が望ましい」と結論づけた。

3.電磁界の人体への影響評価研究について
  東京大学大学院医学系研究科 医用生体工学講座 上野 照剛
・静磁界およびELF(30−300Hzの電磁界)の人体への影響を検討するために、細胞やバクテリア、小動物、水や血液、或いは高分子などに超高レベルの磁界を当てて影響やその再現性を調べている。

・電磁界の利用法として人体への局所的磁気刺激法が考案され、人工呼吸への応用なども研究されているが、研究の成果として、多くは、ガン細胞増殖の抑制効果を求めて進められている。
・一方で、正常健康な人の磁界曝露の究極の安全性に関する情報はほとんど得ることが出来ていないのが実状である。

4.身の周りの電磁界
  徳島大学工学部  伊坂 勝生
・体内には固有の生体電気が存在している。
・細胞内活動電位があり、網膜電位図、脳波、筋電図、心電図等として測定されるが、これらはDC成分から数KHz以上の周波数帯域に分離しており、電位は微弱であるが、外部刺激によって変化する事は知られている。

・人の行動によっても電磁波が生じる。
・衣服や履き物の摩擦によって100万ボルト/mの電界を受ける事もあり、人の回転運動によって、地磁気(0.5G)の鎖交磁束で体内誘導電流が発生する。
・自然界には雷により30KV/mの電界が発生するし、晴天時には150V/mの直流電界が発生している。

・500KV送電線の下20m付近では2KV/m、また6.6KV配電線の下10m付近では30V/m程度の電界が生じている。
・米国での資料によると家電製品で、電気毛布では50μT、電気カーペットで300μT等に成る事がある。、
・乗り物では、都内の電車の中で約1μT、新幹線の天井付近では50μTになる事が分かった。
・医療機関ではガンの治療や骨折の治療に電磁波が有効に使われており、1−10mT程度の磁界が使用されている。

5.生物学的側面から見た細胞・分子レベルでの研究
  京都大学大学院医学研究科 宮腰 順二
・近年ELF(極低周波)の変動磁界による発癌性が話題になっているが、学術調査としては陽性の報告と陰性の報告があり、まだ研究が尽くされていない。
・細胞に対する外的要因の影響調査として、細胞死の有無や増殖の変化を調べているが、変動磁界の曝露による有為な効果は確認されていない。
・また、DNA合成に関しても同様であった。

・カルシウムイオンは、筋肉収縮やホルモンの放出、膜電位の維持その他色々な情報伝達に役立っているが、ラットの胸腺由来細胞内の細胞内カルシウムイオン濃度について磁界曝露が有為に影響する事が報告されている。
・ヒト由来培養樹立細胞を15cmドーナツシャーレで培養し、400mTの変動磁界を曝露した実験によると、突然変異誘発頻度が明らかに増加した。2時間で4.5倍、10時間で6倍になり、その後は余り増加しなかった。
・その他外的要因との相乗効果など、まだ多くの研究が待たれている。

6.医学的側面から見た個体・動物レベルでの研究
  北大名誉教授     加藤 正道
・1972年ソ連では送電線下での労働基準として、5kV/m以下の電界強度では無制限に作業が出来るが、それ以上で10kV/mのまでの電界強度では1日、180分の作業が限度とした。

・疫学的研究
関連性の一致性をみると、脳腫瘍についてカナダ/フランスの共同研究と南カリフォルニアの調査結果が一致しない。
白血病については強い相関関係が見られるカナダ/フランス共同研究と比べて、他の二つの研究報告との相関性がみられない。
他に、関連の強固性、関連の特異性、関連の時間性、関連の整合性など確かな成果が見られない。

・ヒトを対象とする実験研究
(1)
神経系への影響
強力な磁気を頭部に曝露すると光が見える現象がある。20Hz付近が最も強く、この場合8mT程度の曝露で当該現象が生じる。
スウェーデンでは電気過敏症として、頭痛、眼精疲労、疲労感、顔面のかゆみ、刺すような感じ、焼けるような感じを訴える人が多い。

(2)
その他
心臓・循環器系に及ぼす影響、内分泌系への、血液、免疫系への影響などが調査されているが、有為な影響は認められていない。

・動物を対象とする実験
 (1)
ガンに関する研究
ラットの肝臓ガン、皮膚ガンに対しては磁界の促進効果は認められなかったが乳ガンについては促進効果があったと報告されているので、各国で再現性の研究が続けられている。

(2)
胎仔への影響
ラットを20日間曝露した時軽微な骨格異常が見られた旨の報告があるため、電力中央研究所で再現実験を行ったが有為さは認められていない。

(3)
メラトニン
生理機能のリズム調節、制ガン作用、性ホルモン調節機能、神経内分泌への影響、免疫系への効果などがあるとされるメラトニンへの影響について調査したところ、回転円磁界14mG以上曝露した場合減少する事が確認された。またこの影響は磁界曝露停止後1週間以内に回復した。

その他免疫系への影響、中枢神経・行動への影響などを調査しているが、磁界曝露に対する有為な影響は否定的である。

7.高周波電磁界について
  東京都立大学大学院  多気 昌生
(1)
電磁波の組織での吸収
生体組織を構成する分子の多くは電荷に偏りがある。交流電界が加わると電荷を帯びた部分は向きを変え、振動或いは回転運動が起きる。
周波数が高くなると振動が高速になり、摩擦によってエネルギーが失われる。この為に高周波電磁界の電力は体表面の近いところで吸収される。
高周波電磁界の性質が低周波電磁界の性質と明らかに違う点は、エネルギーが生体組織で吸収され易い事と、波長が人体の大きさ程度のため、波動の性質をもち、反射、散乱、強震などの波動特有な現象を示す点にある。

(2)
電磁界と人体との直接結合による作用
生体に吸収された電磁界のエネルギーの多くは熱に変換される。これを熱作用といい、全身で平均した比吸収率(SAR)が1−4W/kgを超えると深部体温の上昇による影響の恐れがあり、局所に集中して曝露されると白内障、不妊、熱傷などが発生する事が考えられる。

(3)
受動物体を介しての間接作用
大きな金属物体が電磁界中にあるとき、金属に高い高周波電圧が生じる場合がある。人がその金属に触れると大きな接触電流が流れ、熱傷を受ける事がある。
この現象は弱電界でも大きな高周波電圧が生じる事があり、1V/mの放送電波で、大きなクレーンの先端に1000Vもの電圧が生じた事が報告されている。
医療目的で金属の補綴物を埋め込んだ患者でも、埋め込んだ金属と電磁界の結合を介しての作用を考慮しなければならない。

8.パネル討論
テーマ  :「電磁界は本当に心配か」
パネラー:青山 三千子(国民生活センタ)、伊坂 勝生(徳島大学)、甲斐 麗子(主婦連合会)、加藤 正道(北海道大学名誉教授)、笹野 隆生(電力中央研究所)、多気 昌生(東京都立大学)、東  敏昭(産業医科大学)、宮腰 順二(京都大学)
司 会 :上野 照剛(東京大学)

青山:国民生活センタのデータベースに200万件の情報が入っている。これは消費者の言い分として大切にして活用する必要がある。電磁波問題は即、消費者問題であり情報の開示が必要である。

甲斐:主婦は電磁波に関する知識に弱い。電磁波に起因する誤作動等も含めて正しい情報を分かり易く提供してほしい。何か変更があった時は何が変わったか、メリットは、デメリットは何か等も含めた情報が欲しい。

笹野:電力中央研究所では100万ボルト送電線の設置に関する影響を調査するために、20年前から電磁波の影響を調査してきた。植物の成長、ヒヒの社会学習行動、ラット・マウス・ハムスタ等の生殖機能、細胞の免疫性、細胞内カルシウムイオン濃度の変化など、電磁波の影響を調査してきた。

東 :産業医科大学では電磁波の生体への影響を調査しているが、研究手法として生体学的研究、横断的研究、症例/対象研究、コホート研究、介入予防研究などを行っている。

伊坂:徳島大学では電磁界の影響について調査している。電磁界はあらゆる場所に存在しており、その影響がどうかは未だ不明のまま安全対策を云々している。電磁波の抑制対策が今、金をかけてまで本当に必要か、疑問に思う。情報の開示は必要だが、EMCは難しく、誤解を生まないように気を付ける必要がある。

多気:携帯電話は0.6Wであるが頭部での吸収があり、実効電力を下げると共に、頭部での熱作用として影響する。携帯電話は、頭部での吸収を防ぐことを研究すれば0.6W以下の電力で利用できることになり、電磁波の電子機器からの影響を少なくする事に役立つ。

笹野:一般の人に電界と磁界の違いを分かって貰い、理解した上で電気機器を利用してもらいたい。

 
東 :日本や台湾では高圧送電線の下に家があるが、北米では確実に離して家が建てられている。電磁波の違いと影響はどうであろうか。

加藤:スウェーデンで「慎重なる回避」としたガイドラインがあるが、60Hzは危ないのか? 各国それぞれの対応をしているが日本では「どう考えるか」を決める必要が無いだろうか。

甲斐:資源は有限、電波を有効に安全に使う必要がある。地球上をクリーンに、住み良い生活空間を作る必要がある。行政の対応も適時・適切に実施して欲しい。話しは変わるが、米国でサリドマイド患者は一人もいない事を考え直したい。電磁波の影響は慎重に検討して、電磁波の測定法や測定器を早急に決定して欲しい。

青山:家庭内の磁場を知りたい。事実を知って考えること、細胞レベルでの研究も大切だろうが、もっと生活に密着した研究もしてほしい。

加藤:家庭に密着した研究、出来ればそうしたい。しかし、先ず磁界の影響一つとっても難しい。時間のファクターが大きく、長いから良いとも限らず、短ければ使い物にもならない。時間に制限された研究になるので、出来るものから、分かり易い物から進めざるを得ない。

宮腰:細胞生物学と電流放射線について研究しているが、結果が早く分かるので応用が効く。シャレーに入れた細胞は、電磁波の場合は400テスラ加えても生きているが、X線やγ線ではすぐ死んだり突然変異も多く発生し、研究が困難である。また、複合研究となると更に困難になり、生活に密着したものはなお困難である。

  :通産省、厚生省、その他各省庁で様々な電磁界の影響調査をバラバラでやっていて効率的でない。電気学会で電磁界の情報交換をやっているとは知らなかったが、今後は活用したい。疫学的研究について、インターネットを使って検診を併用すれば、これからもっと有意義な研究が出来るかも知れない。

この後質疑応答があった。

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3.国際シンポジウム 電磁界による人体影響と環境リスク

19984月 環境庁と電気学会の共同開催 大手町JAホールにて開催
聴講した時のメモ   作成;2000-5-8  修正 2001-10-12

1.ICNIRPの最近の活動と今後の計画 J. Bernhardt (Germany)
序論 ICNIRPの活動の紹介

* VDTに関するPublicationも発行している、
* 1996年には携帯電話の電磁波に関してもPublicationを発行した。
* 新しい電磁波暴露のガイドラインを発行した。 既知のAdverse effectsを基に暴露基準を規定している、疫学による結果はNot Sufficientであるとして取り込んでいない。

* Prudential Avoidanceは考えていない。
* WHOの国際電磁界プロジェクトでは電磁界暴露基準値は作らない。 
この作業はICNIRPで行う。

2.ガイドラインおよび基準の作成とALARA原則およびブルーデントアボイダンス(慎重な回避) Ulf Bergqvist 
リスク評価と防護の体系

* 不明なことに上限をもうけることは解ではない。
* ICNIRPとしては、人々の挙動や社会的にやるべきかを考える。 
そして、Guaranteeする上限値を提案したり、ALARAを提案したりする。 
情報の収集が本当に大事である。
* 慎重なる回避という言葉は送電線磁界とがんの問題を背景として提唱された。

3.電磁界国際プロジェクト  M. H. Repacholi

* 本プロジェクトの結論はICNIRPに提供され、これに基づき暴露基準ガイドラインが作成される。
* 静電磁界に関してはMore ResearchNO Needである。
 但し 2テスラ以上の強い磁界の研究と***以上の強い電界の継続研究は必要。
* 疫学研究の評価; IARCには2つ以上の大規模な疫学報告がないと発癌性の因としないという判定基準がある。

4.物理的な性質・波長・暴露レベル  M. Grandolfo (Italy)

*近傍界と遠方界の境界に関して、放射源のアンテナの大きさを考えなければならない。
  例えば D2/λ D;アンテナの大きさ 2GHzでアンテナの大きさが3 m であれば λ=15 cmであっても D2/λ=30 mとなる。
* 携帯電話のハンドセットでは、GSMで送信電力が2.5Wであっても10cmの距離では145 V/m, 60cmの距離では24.2V/mである。 これが40Wの送信電力の場合、電界は38 V/m磁界は0.1 A/m程度である。

5.静電磁界および低周波電磁界の生体影響とメカニズム  T. Tenforde (USA)

* 2テスラの静磁界で血流に13.4 mVの誘導電圧が発生。
* DC100ガウス以上の静磁界で心電図に影響が出る、しかし、血圧には影響が出なかった。 このことから、これは物理的な作用で、生物的な作用ではない。
* MRIの強い静磁界は、10テスラまではOKである。 それ以上では血液に影響を与える。

* 静磁界1-2テスラの実験データは多数ある。 静磁界2テスラまではOKと考える。 短時間では5-10テスラまでOKと考える。
* 低周波電磁界 ELFに関しては 60Hz 57mGの磁界でmycに影響が出たという報告がある。 しかし、1995年に追試験を行ったが再現はしなかった。

* ELFと発癌のリスクに関して、Laiの研究でDNAの連鎖が切れるという報告がある。 しかし、この研究の追試験では再現していない。
* 60Hzの磁界1mT2年間暴露させても癌の発生はなかった、という報告がある。
* 60Hzの磁界1mT18ヶ月暴露させても癌の発生はなかった、という報告がある。

* ラットを使用した実験で 1991USSRでのテストで乳がん発生、1993年にドイツでの追試験で、再現した。 しかし、最近のアメリカでの大規模な追試験では再現はしなかった。
* この10年間の研究で、ようやくELFの生体影響がわかってきた というのが結論。

6.高周波電磁界の生体影響とメカニズム  J. Stolwijk (USA)

* 高周波電磁界の生体影響に関して、刺激作用・熱作用以外のメカニズムの存在は提案されている。
* しかし、No mechanism is proposed in the research report. である。
* ラジオスイスでの研究: 送信アンテナからの暴露の影響調査、100人が対象。
 10ヶ月間、個々にRF送信を停止したりした。 変化は見られなかった。 
メラトニンへの影響も見られなかった。

7.疫学研究とその評価  A. Ahlbom (Sweden)

* 今までの研究のレビューは不完全なものであった。
* アメリカのNAS1997年の報告
ワイヤーコードとの関係では1.5倍のリスクとなった。 しかし、実測の平均磁界強度との関係ではリスクはなかった。 従って、最終的な結論は出せない。
ワイヤーコードと発癌の関係は、磁界への暴露なのか、その他の交絡因子が絡んでいるのかわからない。

* アメリカのリネットの研究 1997
ワイヤーコードと発癌は無関係であった。 24時間測定による実測値の磁界との関係を見ると、02μTをカットオフ点とした時にリスクが1.2倍 信頼区間(0.9-1.8)。 
これが 0.3μTをカットオフ点にすれば、リスクは 1.7倍、 信頼区間(1.0-2.9)となっている。
この研究結果は、かえって研究者に混乱を与えている。今までとは異なる結果であるから。

* その他の疫学研究の概要
  ドイツ 1997年 
  磁界0.2μT以上  症例数 4、 RR 3.2(CI 0.7-   ) 
  スポット測定 磁界0.2μT以上 症例数 3、 RR 0.9 (CI 0.2-3.6)

ノルウェー 1997年 白血病
         症例数 2、 RR 0.5 (CI 0.1-2.2)

*各種疫学調査のサマリーを作った。14件の疫学を纏めた。
「単純な数字の平均に意味があるのかという声があり、意味がないかも知れない。 
平均値で見れば 疫学で磁界は発癌性を示している。」と研究者Ahlbomは語っている。 
少なくとも筆者の英語能力の限界の中で、このように語ったと、理解した。
メタアナリシスといわれる手法で、14件の個別に行われた疫学をまとめで解析を行うことで、個々の疫学における短所を補っているということはいえる。 


*結論として、ワイヤーコードとの関連性は少し減少してきている。 
実測値の磁界との関係は強くなってきている。発癌のメカニズムはまだ不明である。

8.携帯電話:健康問題と研究の方向  A. Mckinlay (UK)

* Science cannot provide there is NO RISK.
* Epidemiological data: not a base for Limits.
* 研究の続行が必須

質疑応答から
1.非電離放射線は蓄積性がないとすれば、Doseとしてふさわしくないのでは?
「短時間の暴露ではそうであるが、Long Termの暴露では別途検討が必要、まだわかっていない面がある。」

2.周波数が異なる界が同時に存在する時は? 
  「ICNIPRのガイドラインに記載してあり、読んでください。」

3.信頼性のある報告はあるのか?

「骨の骨折に使用している電磁界の治療は確率した報告である。」

4.発癌に関してPromoter効果に触れていたが、詳細は?
「フランスでのテストで、10μT100μTの磁界で、ラットを使用した研究で脳腫瘍のPromoter作用の例がある。」

5.送電線の下では植物がよく育つという効果がある。 但し送電線の分岐点などで分布の乱れがある場所では成長が乱れる。 こうした研究をどう考えるのか?
345kV送電線で植物の先端に害があったという報告がある。 最近はこの種の研究が少なくなっている。」

6.疫学研究でのリスクは2-3程度であり、信頼区間の下限値も1を切っているものがほとんど、更に研究は必要か?
 「一つの研究だけでは駄目、継続研究が必要。」

7.交絡因子の可能性、ラドンや車の排気ガスなどついては?
「ラドンと小児癌の研究は現在2つ位の研究しかない。 磁界と癌に関しては現在まだはっきりしていない。」

8.相対リスクRR2以上の研究報告は?  
  「   」 記入漏れ。

9.低周波の磁界と小児癌の研究で、アメリカの科学アカデミの研究とリネットの研究で終結という方向ではないのか?
Possibilityは残っているので、研究は継続」

10.50Hz磁界の発癌に関する今後の研究は?
「高い暴露の集団を含む研究が必要。 日本では、人口密度と高い暴露で研究の成果があげられるかも知れない。」

11.100m先と70m先に送電線があるが どうか?
「イギリスのNRPBでは多くのこの種の質問を受けている。アドバイスは科学によることが必要である。一つの可能性を示した研究だけで即何かのアクションを取るものではない。」
Ahlbomです。不確定な要素に対してどうするか?という問題がある。これは政治的なもしくは個人個人の判断の問題である。科学者は情報を提供するだけである。」

12.Swedenでの磁界対応は?1992年に2mGという話もある。
1994年に幼稚園等の移設がスタートした。 これはGovernmentの方針。 ELFに関しての法規制はない。Prudential Avoidanceは当局のアドバイス、Costを考えてより低暴露を選択できるというもの」

13.「VDTと異常妊娠の問題は?
「リスクは1.0と確認、癌に関しては色々と研究が行われている、VDTに関しては問題ないとされている。 但しVDT作業に関して エルゴノミクスの問題は残っている。」

14.携帯電話と基地局の電磁界は?
RF送信局の近傍で白血病がおおいという報告もある。 暴露評価が難しく、まだよくわかっていない。送受話器より基地局の方が影響は少ないだろう。」

15.ICNIRPPrudential Avoidanceを支持していない、その根拠は?
「ガイドラインの根拠は確立したBaseが根拠となる。 Prudential Avoidanceは時代の社会影響の範囲である。」


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4.1998年電気学会の見解の概要

1998年(平成10年)電気学会発行「電磁界の生体影響に関する現状評価と今後の課題」を読んで気の付いた点をまとめた。
    作成; 2000-1-29  
この本は、基本的には低周波電磁界を中心にして纏めてある。

P8
.この報告書の校正中にアメリカからRAPIDのワーキンググループの報告書が発行された。 

P8
この報告書としては、「通常の居住環境における電磁界が人の健康に影響を与えるとは言えない」と結論できる。 

P14
.低周波の電磁界 
解析の一例によると、100kmの三相1回線の送電線の場合、線路と直角の方向に放射される電力は負荷に輸送される電力の僅か2/1011 1011乗分の2)程度に過ぎない。輸送電力を100KWとすれば、放射電力は0.02Wになる。 

P15
.自然界に存在する電磁界 落雷時の観測によれば、雷電流の時間変化率の最大は300kA/マイクロ秒である。従って、落雷地点の近傍では過渡的に大きな磁界が生じていると考えられる。

P58
.日米の送電線による磁界の比較 
日本における地表面での磁界は前述のとおり最大でも20マイクロテスラとなる。 
一方、アメリカでは、電線地上高は低く設定されている。 この為想定される磁界最大値の目安としては50マイクロテスラ(500ミリガウス)が採用されることが多い。 

P61
.電気鉄道 測定例 
文献(電力中研 1992年)では、通勤中の車内での測定例が示されている。 

P70
.職業環境 実態調査手法の概要 
職場環境における曝露実態が生活全体のどの割合になるかは、重要な問題である。 英国放射線防護評議会(NRPB)では、電力会社の従業員の仕事内容と磁界曝露量との関係について細分化した資料を示している。 (1992年の資料) 職種により多少のばらつきが見られるが、総曝露量の70%程度が職場、20%程度が家庭、残り10%程度が通勤・その他である。 

P78
.各国の防護指針および規制  欧州諸国 
ドイツ: 1997年から連邦排出物規正法の中に電磁界の放射を取り入れ、法的に強制力のある規制を開始した。 この規制に用いられる指針は、DIN/VDE規格やCENELECによる欧州暫定規格のような電気技術基準ではなく、保健衛生の立場からICNIRPおよび前身のIRPAによる指針を採用している。 

P80
.各国の防護指針および規制 各防護指針の比較 
VDT
からの漏れ電磁界に適用されるスウェーデンのVDT機器からの朗詠電磁界に関する測定法のガイドラインがある。 健康影響についての根拠があるわけではない。 単に技術的に可能である範囲で不必要な電磁界を低減することを勧告しているに過ぎない。 我が国でも類似のガイドラインが検討された。 これも健康影響を根拠にしたものではない。 

P96
.電磁界問題の経緯 
ニューヨーク州送電線プロジェクトの結果は、殆ど研究で影響は見られないとの結論であったが、Savitz等が小児白血病とワイヤーコードとの間の関連性を示唆するWertheimer等の結果を再現したことから、「磁界と癌の関係については、更に研究が必要である」とする最終報告書がニューヨーク州保健局から公表された。 

P107
.疫学研究の方法 
精度の信頼性について単純な指標としては信頼性区間の下限値の上限値に対する比が用いられている。 精度が高いほどこの比は1に近づくが、0.5以上を精度が高い、0.50.25の間を中間、0.25以下を精度が低いと区分している例がある。


P116
.職業曝露と悪性疾病 
職業曝露に加え、住居内曝露を考慮した疫学調査が行われた(1997Feichting.)。 この研究では住居内および職業曝露が共に高い場合に、白血病のリスクが有意に大きい。 

P120
.磁界曝露とメラトニン・免疫機能 
その後の報告では、低メラトニン分泌グループのみを20マイクロテスラの磁界に曝露したが磁界の影響は見られなかった。 このように同じ研究室で行われた実験においても異なる結果が得られている。 

P141
.交流磁界 
生体を数百kHzの高周波磁界内におくと体内に誘導される渦電流によって発熱を伴うことがある。 直腸温度が1度C上昇すると実験動物の作業能率などに変化が生じる。 

P144
.喫煙の健康リスク 
タバコ煙中の発ガン物質の殆どは、イニシエーション、プロモーション作用を持っていることが、実験的に明らかになり、ラット、マウス、ハムスターやイヌなどを用いた動物実験からも、たばこ煙の発ガン性が明らかになっている。 

以下は研究の概要 
P180
Mevissen 1996年の研究 50Hz 10マイクロテスラの磁界をラットに曝露。 メラトニンは磁界によって抑制された。 
しかし、腫瘍に対しては磁界の影響はなかった。 

P190
Rogers 1995年の研究 
50Hz 50
マイクロテスラの磁界と6kV/mの電界をヒヒに曝露。 
電源の突入を急速に(83ミリ秒過渡変化)行った時、夜間メラトニンは抑制。 電源の突入をゆっくり行った時、夜間メラトニンは変化なし。

P201
Alfredsson 1996年の研究 電車運転手にリンパ性白血病のリスクが2.3 

P222
Saffer 研究中  
がん化は始まったがまだ完全にがん化していないJB6細胞に60Hz 0-1ミリテスラの磁界を曝露、 磁界の影響は見られなかった。

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5.1998年RAPID計画の作業部会ドラフトレポートに記載された結論

              作成: 98103  

 アメリカでは過去5年間、アメリカの国会が決議して5060Hzを中心とした電磁波の生体影響の研究を行ってきました。 その結論の作業部会報告書が纏まりつつあります。 そのドラフトを入手しました。概要を報告します。
 アメリカではこのドラフトを受けて、各地で意見を聞く会や、文書でのコメントを集める作業を109日迄に行います。 その後に最終報告書が起草される事になっています。

原著:
Assessment of Health Effects from Exposure to Power-Line Frequency Electric and Magnetic Fields.
NIEH Working Group Report, Aug. 1998
に記載された結論の部分の概略。

上記報告書を入手。結論の部分だけをまず読んだので概要を紹介います。

5章:最終的な総論と評価
 最終的に電力周波数の電磁界が発ガン性を持つかは、基本的にIARC国際癌研究協会の手順によった。

 IARCの基準では、以下に分類される。

グループ1。 人への発ガン性がある。
 十分な証拠を持って、その物質が人に癌を発生させる事が明確である。 人への発ガン性の確証が十分でなくても、実験動物に対する発ガン性が十分な確証を持っており、かつ、十分な確証を持ってヒトへの発ガンの機序が明確になっている時は、この分類に入る。

グループ2A。 ヒトへの発ガン性が、高い確率(probably)で存在する。

グループ2B。 ヒトへの発ガン性が、可能性(Possibly)がある。

(コメント:このグループ2Bには、普段我々が何気なく食っている食物が多数、含まれている、例:コーヒーや漬物)

グループ3。 ヒトへの発ガン性に関しては、分類できない。
このグループには、ヒトへの発ガン性の確証が十分でない(Inadequate)の場合や、実験動物に対する発ガン性の確証としては、限定された(Limited)ものしかない場合に、該当する。 他のどのグループにも分類できない時に、このグループに分類する。

グループ4。 ヒトへの発ガン性は、高い確率で(probably)存在しない。

5-1章 ヒトへの発ガン性
この報告書のワーキンググループ(WG)としては、「電磁波」はヒトに対する発癌性の可能性があると(グループ2B)、結論した。

 この結論は、WG19名の委員が賛成の投票を行った。8名はグループ3に入ると投票。1名はグループ4に入ると投票。1名は投票に棄権。欠席して投票しなかった委員はゼロ。 (このWGの総計は29名となる。) 

コメント: この51章の結論では、電磁波の強さや磁界・電界の区別等を一切行っておらず、以下の各論の結論と必ずしも一致しない。果たして、そうした強さなどを無視して、一般論としてこのような結論を導き出す事が科学的であろうか? 

5-1-1章 評価を支持する疫学調査からの確証 
 WG26人中の20名は、「磁界が小児白血病(癌)をおこすということには限定された確証がある。」という意見に投票。 残りの6名は、「十分な確証がない」に投票。 

 WG25人中の14名は、「職業的な磁界の曝露がCLLリンパ腫(癌)をおこすということには、限定された確証がある」という意見に投票。 残りの11名は「十分な確証がない」に投票。 

 WG25名中の22名は、「職業的に電磁波に曝露することによるその他の癌を発生させるという事には、十分な確証ない。」に投票。 その他の癌としては、ACL白血病、脳腫瘍、男性の乳癌、女性の乳癌に関する研究を調査した。

 WG25名中の24名は、「居住環境における磁界への曝露による大人のガンを発生させるということには、十分な確証がない」に投票。

 WG25名は「電磁波の曝露によって、子供の脳腫瘍等を発生させることは、十分な確証がない」に投票。 その他2名は棄権、2名は欠席。 

 WG25名は「電磁波の曝露によって、子供にリンパ腫を発生させことには、十分な確証がない」に投票。 その他2名は棄権、2名は欠席。 

5-1-2章 評価を支持する動物実験(動物を生きたままの状態で試験した研究)による発ガン性の確証。

 WG27名中の19名は「実験動物に対する電磁波の曝露によって発ガンすることには、十分な確証がない」に投票。 
 幾つかの研究では、鼠に電磁波を浴びせても、白血病やリンパ腫は発生していない事が判明している。 

5-1-3章 評価を支持する細胞実験(In Vitro、細胞等を取り出して試験管で電磁波を曝露して行う実験)による発癌性の確証。 

 WG27名全員は、「100マイクロテスラ(1ガウス)を越える磁界を曝露した時に、厳密に行われた細胞レベルの実験で、IARCの定義する“中程度の影響”を確認したという、限定された確証がある」に賛成。 

 WG26名全員は「約100マイクロテスラ(1ガウス)以下の磁界の曝露では、IARCの定義する“弱い影響”があること」に賛成。 

 最近の研究では、100マイクロテスラ以下の磁界では、遺伝子の突然変異に影響はなかった。 200マイクロテスラ(2ガウス)から400 000マイクロテスラ(4000ガウス)では、X線等であらかじめ刺激を与えて置けば、遺伝子の突然変異に磁界の影響が見られた。 400 000マイクロテスラでは、X線の予備刺激のない場合でも、遺伝子の突然変異に影響が見られた。

 色々な研究では、100マイクロテスラを越えると、影響がある。

5-1-4章 議論
今回の結論は、明らかに動物実験等からの結論ではなく、疫学調査に基づく小児白血病と磁界の関係を示す疫学、大人の癌の中でもCLLに関する疫学調査が本論の結論の基になっている事は、疑いのない事実である。

5-2章 癌以外の健康影響
5-2-1章 癌以外の健康影響
 電磁波による影響で、ヒトに対して「Inadequate」(不十分な)レベルを越える確証はない。 また動物実験でも「weak(弱い)影響レベルを越える確証もない。

 「職業的な電磁波曝露は、生殖(Birth Outcome)に影響するという、十分な確証はない。」にWGの22名が賛成。 その他は、棄権1名、欠席2名、その他の意見2名。

 「職業的な電磁波曝露は、生殖(Reproductive)に影響するという、十分な確証はない。」にWG20名が賛成。 その他は、棄権2名、欠席4名、その他の意見3名。

 「職業的な電磁波曝露は、アルツハイマーに影響するという、十分な確証はない。」にWG23名が賛成。 その他は、棄権1名、欠席4名、その他の意見1名。

 「職業的な電磁波曝露は、自殺やうつ病に影響するという、十分な確証はない。」にWG24名が賛成。 その他は、棄権1名、欠席4名。

 「住居環境の電磁波曝露は、妊娠(pregnancy outcomes)に影響するという、十分な確証はない。」にWG23名が賛成。 その他は、棄権1名、欠席4名、その他の意見(確証はない)1名。

 「動物実験で、電磁波曝露は、免疫機能に影響するという、確証はない。」にWG13名が賛成。 その他は、棄権1名、欠席9名、その他の意見(弱い確証がある)6名。

 「動物実験で、電磁波曝露は、鼠のHematological  Parameterに影響するという、確証はない。」にWG17名が賛成。 その他は、棄権1名、欠席11名。

 「動物実験で、電磁波曝露は、実験動物の神経機能等に弱い影響を与えるという、確証がある。」にWG9名が賛成。 その他は、棄権3名、欠席9名、 その他の意見で「中程度の影響あり」8名。

 「動物実験で、正弦波の磁界曝露は、生殖等に影響するという、確証はない。」にWG17名が賛成。 その他は、棄権8名、欠席1名、その他の意見で「弱い確証がある」3名。

5-2-2章 その他の生体影響
WG19
名の中で14名が合意したのは。「骨折の治療に電磁波は利用されている」という事である。

 「電磁波は、短時間曝露で、ヒトの心臓の心拍数に影響を与えるという弱い確証がある」に、WG13名が賛成、棄権 8名、 欠席5名、「中程度の確証あり」が1名、「確証がない」が2名。

 「電磁波は、短時間曝露で、ヒトの就寝に影響を与えるという弱い確証がある」に、WG15名が賛成、棄権 9名、 欠席5名。

 「電磁波は、短時間曝露で、ヒトのメラトニンに影響を与えるという弱い確証がある」に、WG16名が賛成、 棄権 5名、 欠席5名、「中程度の確証あり」が1名、「確証なし」が2名。

 「電磁波は、鼠のメラトニンに影響を与えるという弱い確証がある」に、WG14名が賛成、棄権 4名、 欠席2名、「中程度の確証あり」が9名。

 「電磁波は、ヒツジやヒヒのメラトニンに影響を与えるという確証はない」に、WG14名が賛成、棄権 13名、 欠席2名。

 「電界は感じることができる という強い確証がある」にWG18名が賛成、棄権 2名、 欠席9名。

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という状況です。 私の英語力では、多少 おぼつかないところがあります。 興味のある方は、原著を入手して読んで下さい。

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6.1999RAPID計画の最終報告書に記載された結論

 

原著: NIEHS REPORT on Health Effects from Exposure to Power-Line Frequency Electric and Magnetic Field


The NIEHS concludes that ELF-EMF exposure cannot be recognized as entirely safe because of weak scientific evidence that exposure may pose a leukemia hazard.
 In our opinion, this finding is insufficient to warrant aggressive regulatory concern.
 However, because virtually everyone in the United States uses electricity and therefore is routinely exposed to ELF-EMF, passive regulatory action is warranted such as a continued emphasis on educating both the public and the regulated community on means aimed at reducing exposures.  
 The NIEHS does not believe that other cancers or non-cancer health outcomes provide sufficient evidence of a risk to currently warrant concern.

アメリカのRAPID計画は、2項に紹介した作業部会の報告書を受けて、アメリカ国内で(3箇所で)公聴会を開催、また文書で意見などを広く募集した。 こうした活動を行ってから、この最終報告書を作成して、アメリカ議会に報告した。

 

上記原文を読んでいただければ判るように、低周波電磁界は全く安全とはいえない、なぜならば、小児白血病を促進するという弱い科学的な証拠ではある。 しかし、法的に規制などを行うほど必要があるものではない。 低周波電磁界に日常的に曝露しているので、より低い曝露にする必要はある。 小児白血病やその他の癌、癌以外の健康影響に関する確固たる証拠はない。

詳細は原文を読んでください。

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7.RAPIDの「Q&A」文書関連情報  

 

MICROWAVE NEWS March/April 2003の記事から

以下の文書が転載されています。この文書はいったんWEBに公開されたのですが、色々と反論もあり、WEBから削除された模様です。 仮訳をつけました。 作成: 2003-7-12 

National Institute of Environmental Health Science
  NIEHS News Features September 2002

アメリカ国立環境保健科学研究所  20029

DO Power Lines Cause Childhood Leukemia?  送電線は小児白血病病を起こすか?

NIEHS' New EMF Booklet Has the Answer
  NIEHSの新しいEMF文書は回答を示している。

Ever since a 1979 study in Denver suggested that children living close to big power lines had a slightly higher risk of getting leukemia, the National Institute of Environmental Health Sciences and other environmental agencies have received thousands of inquiries about how far a house needs to be from a power line to be "safe" for the kids.

1979
年のデンバーにおける研究(送電線の近くに住むと小児白血病のちょっと高いリスクがあることの示した研究)以来、環境保健科学研究所や関連する組織は、子供の安全のために送電線からどのくらい離れるべきか、という数千の問い合わせを受けてきた。

Electrical and magnetic fields, or EMF, are generated in the creation, transmission and use of electric power and electric devices. The earth itself produces EMF naturally. Scientists believe the earth's core produces electric currents.

電磁界、EMFは電力の発電、送電、使用および電気機器の使用によって発生し、地球も自然界にEMFを発生している。科学者は、地球の核にはそうした電磁界の源となる電流が流れていると考えている。

A new NIEHS booklet currently being printed, "EMF Questions & Answers," says flatly that in terms of children's health, it doesn't matter whether or not a house is close to power lines. There is no valid association between nearby power lines and any cancer - including childhood leukemia, the booklet says.

新しいNIEHSの冊子「電磁界にQ&A」は印刷中である。子供の健康に関して言えば、家が送電線の近くであっても、遠くでも関係がない、子供の癌(白血病を含む)の送電線との確定した関係はない、と記載してある。

Answers to questions in the booklet are based primarily on the EMF Research and Public Information Dissemination, or EMF
 Rapid, program by NIEHS and the Institute's review of other available, peer-reviewed data worldwide.  

冊子の中のQ&Aは基本的に、EMF RAPID計画や他の世界中の査読済みの研究情報に基づいている。 

The Department of Energy administered EMF
 Rapid, but NIEHS handled health effects research and risk assessments.  

アメリカの電力庁はRAPID計画を管轄した、健康影響とリスク評価に関してはNIEHSが担当した。

The intensive NIEHS study included more than 100 cellular and animal studies and was completed in 1999 with a statement that the evidence of associations shown in some studies was "weak" and that the probability that EMF exposure "is truly a health hazard is currently small."

100
以上の細胞・動物実験を含めてNIEHSは集中的な研究を行った。1999年に、いくつかの研究は「弱い」関連を見出し、電磁界曝露は健康影響が「あったとしても、小さい」といいう声明を発表して、完了した。

NIEHS Director Ken Olden reported to Congress that he saw no public health problem "warranting aggressive regulatory action" but said power companies and utilities should, as a precaution, continue siting power lines so that exposures are reduced.
 

NIEHS
Olden所長は議会に「法令で規制する必要のある健康問題はない、しかし、電力会社などは予防的に、電磁界暴露を低減することを継続すべき」という報告書を送った。

The booklet incorporates information from later studies and reviews in Canada, Australia, several European counties and the World Health Organization and the National Academy of Sciences.

この冊子には、その後に行われた研究やレビュー(カナダ、オーストラリア、欧州、WHO,科学アカデミなど)の情報も盛り込んだ。 

 

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7A.第3回電磁界の健康影響に関するワークショップ 2001年 参加報告 

メモ作成; 2001−3−25 

日時:平成13年3月23日(金) 9:4517:00
開催場所:国立オリンピック記念青少年総合センター 国際交流棟 国際会議室
主催:国立環境研究所
協賛:WHO国際電磁界プロジェクト(1996-2005)

参加人数:受付に聞いたら事前の申し込みは51人、講演者も含めて会場にいる人数は70名程度であった。
以下は、簡単に気の付いた点を列記。
関心のある方は、詳細はレジメを入手して参照してください。

1.開会の挨拶 (9:4510:00) 高久史麿 (自治医科大学学長)

2.基調講演 (10:0010:20)
WHO国際電磁界プロジェクトの現状と今後の予定 マイク・レパチョリ(WHO)」
*WHOの国際EMFプロジェクトの概況紹介
*規格に関しては国際的な調和を図る。
*ユーザにわかりやすい(Friendly)ハンドブックやモノグラフを作る。
*研究成果をマスコミなどに公表する時は、社会的な側面も考えるべき。
 (単に研究結果が有害・無害であったと言うのではなく、社会的な側面も考えて公表すべきといっている?)
研究には、再現性が肝要。

*低周波電磁界の影響に関して、今までの研究では相対危険度RRが1.5程度以下である。
IARCが2001年6月に低周波電磁界と発ガン性に関するレビューを行う。WHOはその後にレビュー(Full Review)を行う。
疫学の結果と、実験室での研究(Laboratory Study)が一致しないのが、大きな問題である。
何か、研究にバイアスがかかっているのか? 何かを見逃しているのかも知れない。過渡的な曝露(Transient)も研究されている。過渡的な磁界に曝露した時はdB/dtの磁界の時間変動によって、大きい誘導電流が流れる。
*確証としての色々な研究成果は、それらを全体として考慮しなければならない。

V.高周波電磁界の健康リスク研究 (10:2012:00) 座長:上野照剛(東京大学)
1)わが国での研究 (10:2011:20)
「脳微小循環動態への影響に関する研究 大久保千代次(国立公衆衛生院)ら」
*携帯電話からの電磁波が血液・脳関門(BBB)の機能に影響を与えるかという研究。電磁波がBBBの機能に影響しているという報告がある。
*今までの研究にはない手法(この研究では動物が生きた状態でBBBの機能が観察できる手法を開発)で研究。ラットに内部の血管が外から観察できるように窓をつけて、顕微鏡で覗く。BBBの機能が影響を受けると血管から外に漏れるのが判る。
*モノポールアンテナから1.5GHzの電波を発信。

*10分間の短時間曝露、脳平均SARが1.4.8W/kgでテスト、8W/kgでは頭部の温度が上昇。BBBの機能等には影響が無かった。
*さらに、4W/kgの強度で1日1時間曝露、5日/週、4週間の長期曝露でテスト。この条件でもBBBの機能などに影響がでなかった。


*Q:より強い曝露条件でのテストはできないか? A:現在の設備では不可能。
 A(東大 上野先生)他の研究でSARを20W/kgまで大きくするとBBBが破壊されることがわかっている。

「高周波電磁波ばく露が脳高次機能(学習・記憶)に与える影響
   山口 博紀、名川 弘一、上野 照剛(東京大学医学系研究科) 」
*他の研究で携帯電話の電磁波がラットの脳機能(記憶など)に影響するという研究がある。
 実験条件の差異  
Wangら    山口ら
 全身平均SAR 1.2W/kg  1.7W/kg
 ピークSAR  1200W/kg 33W/kg  
 結果      記憶に影響あり  記憶に影響無し

*ラットを75%の体重にやせさせてからテストを開始した。
*脳平均SAR7.5W/kgでは参照記憶保持に影響はなかった。
*脳平均SAR7.5W・kgの電磁界に1日4時間4日間曝露、参照記憶獲得機能に影響が無かった。
*このことからWangらの研究は熱作用による可能性がある。

 Wangらは水槽を使用した迷路、山口らはT型迷路である。水槽の実験は下手をすれば水に落ちておぼれ死んでしまう可能性もあり、ラットにとっては生死をかけたテストで、ストレスが大きすぎて、電磁波のストレスが正確に反映されていないのではないか。T型迷路はそうしたストレスが少なく、電磁波の影響をうまく反映しているのではないか。

「脳腫瘍の疫学調査 山口直人(国立がんセンター研究所)」
*国内で携帯電話の電磁波とガンの症例対照研究を始めた。2000年12月にスタート。
*対象は脳腫瘍に限定。
*主として23区の脳外科のある病院と研究体制を構築した。

2)招待講演 
(11:2012:00)
「疫学研究レビュー アンダース・オルボン(カロリンスカ研究所)」
*疫学研究で曝露評価が難しい、部分的にしか曝露評価が行われていない。クラスタの問題も残っている。的を狙って鉄砲を撃つのではなく、撃ってから着弾点に的を描いている。

*最新の
5件の研究を紹介する。
Rothman 1996の報告。 対象集団が25万人のコホート研究。1993年にスタート。携帯電話の電磁波の影響を調査、ハンドセットを使用する人と、車の外にアンテナを取り付けている人では電磁波曝露に差があるとして2群に分けた。1994年の中間報告では、RR0.86であり影響は見つからなかった。僅か1年では短くて不十分である。

Dreier 1999の報告。Rothmanと同じ研究、対象母集団がより大きくなり、28万人となった。1年のフォローアップでは影響は見つかっていない。

Hardell 1999の報告。携帯電話の影響の症例対照研究。RR=1.0であったが、右側で携帯電話を使用していて脳の右側に腫瘍ができたケースではRR=2.4であった。症例数が少ない。また研究への参加率を見ると2/3が参加していない。スウェーデンではガン登録が完備しているので、100%補足できることから、なぜこのように参加率が悪いのか?疑問が残る。

Inskip 2000の報告。病院内の症例対照研究。携帯電話の影響。患者は100%回答してくれるので選択バイアスが無い事など長所もあるが、病院での患者ということで一般の人口を代表しているとはいえない欠点がある。RR=1.0で影響は見られなかった。

Muscat 2000の報告。アメリカの病院での携帯電話の症例対照研究。RR0.85で影響は見つからなかった。

Johansen 2001の報告。全デンマークの携帯電話使用者を対象とした研究、後ろ向きのコホート研究。脳腫瘍RR0.95 白血病RR=0.97で影響は見つからなかった。但し49%の人が携帯電話は1年未満の使用である。これではまだ結論は出せない。

*携帯電話がガンを増発するという確証も無いが、増発しないという強い確証もまだない。

W.超低周波(
ELF)電磁界の健康リスク研究 (13:0016:20
1)わが国の研究 
(13:0015:00) 座長:兜 真徳(国立環境研究所) 
 ○実験系研究:ヒト生理、動物及び細胞培養

「ヒト生理実験   黒河 佳香(国立環境研究所)」
*人を対象として低周波磁界
50Hzを曝露させて色々なテストを行った。結果は問題は見つからなかった。
*50
Hz、200マイクロテスラの磁界(過渡的な磁界も重畳)に曝露した時の、夜間血液の状況を調査。睡眠中もカテーテルを使用して血液を採取。結果は夜間メラトニンの影響は見られなかった。
このことから発癌へのメラトニン仮説に疑問が残る。 

「胸腺リンパ腫促進作用に関する動物実験 三枝 順三(産業医学研究所)」
*低周波磁界コンロロール・0.1m
T、1mTに遺伝的に胸腺リンパ腫瘍を発祥しやすくしたラットを曝露。同じ実験を2回繰り返した。27週にわたる長期曝露。
*1回目 
  磁界 テスト数 死亡数 リンパ腫発症数
  0   27   13   18
  0.1  27   9   21**
   1   28  14   23**
 死亡数では影響見られず。**ではリンパ腫発症では少し多くなっているが統計的に有意ではない。ただし、磁界曝露群では18週から死亡し始めている。

*2回目のテスト
  磁界 テスト数 死亡数 リンパ腫発症数
   0   33   6    5
  0.1  33  16   16**
   1   34  11   11**
  **ではリンパ腫発症では少し多くなっているが統計的に有意ではない。

*これらから、磁界はリンパ腫を促進するかも知れない。しかし、促進するとしてもその率は低い。
レパチョリからのコメント。実験動物の数が少ない、30程度では結論が出せない、少なくとも実験数は50から100であるべき。
*カイフェッツからのコメント。これはランダムバリエーションの範囲内ではないか。

「腫瘍促進作用に関する動物実験 根岸正((財)電力中央研究所)」
*アメリカ(影響を見つけなかった)とドイツ(影響を見つけた)で同様な試験が行われているが、結果の一致を見ていない。
*ラットに発癌物質を与え、磁界0、5、50、250マイクロテスラ、50
Hzを26週にわたって曝露。
*ドイツの試験では発癌物質は1匹あたりxxgと一定量を与えた。しかし、小さいラットにとっては体重差を考えると一定量は疑問が残る。事前の検討では発癌物質の量によって発癌が急速に発症し短期間に全数発症してり、経過時間に比例して発祥することがわかったので、経過時間と比例するようにラットの体重kgあたり30mgの発癌物質を投与した。

*ドイツの実験ではラットはケージにまとめて群飼しているが、ラットどうしの喧嘩などで傷ついたりするので、このテストではケージに1匹ずつ入れて飼育した。
*テストはブラインドで行なった。
*結果、250マイクロテスラまでの磁界は発ガンを促進しない。

「変異原性 小穴 孝夫((財)鉄道総合技術研究所)」
*ショウジョバエに50Hz20mTの磁界を曝露。磁界によって発生する遺伝子情報への影響を検討。
*結果は磁界そのものではなく、磁界によって誘導される電流によって何か遺伝子が影響を受けていると見られる。量子力学的な影響ではなく、電流の影響ではないか。
*ショウジョバエは小さく、体内に流れる誘導電流を測定・推定は困難。そこでショウジョバエは餌の中に潜り込んで生きているので、餌に流れる電流を計算。誘導電流が10mA/m2 で影響が出る。餌から電解質をとり誘導電流を少なくすると影響は消え、塩を入れると影響度が増した。

*また、同心円上に飼育した時、外周は誘導電流が大きい、そこでは遺伝子への影響が大きくでた。
*従って、
ICNIRPの基本である10mA/m2という誘導電流値を基にした磁界曝露限度値は効した件から要チェックである。

「感受性MCF−7細胞反応のメカニズム 石堂正美(国立環境研究所)」
Libertyの研究の追試に成功した。
*ヒト乳がん細胞MCF-7を使用し、50Hz100マイクロテスラの磁界を曝露。
*メラトニンの動きを磁界が阻害することを確認した。

○疫学研究

「小児がんの疫学研究の進捗概要 兜 真徳(国立環境研究所)」
ELFと小児ガンに関する国内疫学調査を開始した。研究は1999−2001年。
*磁界の曝露はスポット測定だけではなく、1週間の連続測定も行う。 過渡的な磁界曝露も評価。 

*800の症例が目標、300症例まで来た。
*鉄道の沿線における磁界曝露も検討
*中間報告であるが、259名の対照群で0.4マイクロテスラを超える曝露は3人で1%程度である。これは他の国の結果に等しい。

2)招待講演 (15:2016:20) 座長:秋葉 澄伯(鹿児島大学)
「これまでの小児白血病の疫学データのプール分析 
アンダース・オルボン(カロリンスカ研究所)」

*最近の研究を紹介
*カナダ 
Mcbride 1999の報告。小児ガンに関する症例対照研究。24時間測定を行っている。RR1.10.691.8
Green 1999の報告。症例対照研究、0.14マイクロテスラ以上でRR=4.31.3-16)という報告であるが、評価は低い。(なぜ低いかまでは言及せず)
UKCCS 1999の報告。0.2マイクロテスラ以上でRR0.9 
 
0.4マイクロテスラ以上に曝露している研究対象集団は僅か17名であった。

*オルボンの
Pooled解析。9件の研究を纏めて解析、0.4マイクロテスラ以上でRR2.01.27-3.13)であり、これは偶然の値とは考えにくい。

*ドイツの
Schuz 2001の報告。24時間の磁界曝露では磁界は影響が見られない。夜の磁界曝露だけを見れば、0.2マイクロテスラ以上でリスクが増加している。これはメラトニンとの関係があるのかも知れない。 

「電磁界の疫学研究の動向 リーカ・カイフェッツ(米国電力研究所)」
*小児喀血病の疫学調査はイタリ
-、日本、英国で進行中。
*現在行われている職業曝露と白血病・脳腫瘍に研究ない。
*乳がんとの関連 職業曝露との関連で
1件 住環境との関連で3件 研究が行われている。

X.総合討論 
(16:2016:50) 座長:大久保 千代次(国立公衆衛生院)
*靜磁界に関して
 輸送手段、
MRI,リニアモータカー等で靜磁界が使用される。
 リニアモータカーの場合、靜磁界は乗客の所、運転手の所でも2m
T以下となっているので大きな磁界は浴びることはない。但し車両の保守・点検などを行う従業員は強い磁界を浴びる可能性がある。

ELFとマイクロ波は現在研究が行われているが、その中間の周波数に関して
 
ELFで得られた知見を外装して考える。確認試験は必要。同じような研究を全て行なう必要はない。 

*短期間の曝露に限定して、論理に反しない範囲で、ヒトを対象とした研究を行なうべきである。

*RFとELFの重畳した研究は
今行っている研究で、できるだけ、RFを研究する時にELFの研究を行なう、ELFの研究を行なう時にRFに関しても研究を行なうべき。

Y.閉会の辞 
(16:5017:00) 合志 陽一(国立環境研究所 副所長)

   以上

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8.JR総研月例発表会から   

 
2001
627日に行われた発表会に参加した。 参加者数は100名以上、その中で電磁界に関する小穴さんの口演内容の概要です。

演題:小穴孝夫 鉄道の磁場環境とその安全性

概要
電車による磁界暴露の例 

 直流電車では 交流磁界 5~50ミリガウス
 交流電車では 交流磁界 2~1500ミリガウス

実験手法:
ショウジョバエを用いた発ガン性試験(遺伝子への変異原性の発生比率を観察する)
遺伝子修復機能を欠損させたショウジョバエを用いた。
自然突然変異と同程度の弱い変異原性も検出可能。
*羽根に発生する異常を検出

結果1.
*直流の磁界 5テスラ 24時間連続暴露で 羽根に異常が発生。5テスラの磁界は変異原性がある。
*この変異原性の強さは、太陽光の変異原性とほぼ同程度。 科学的に厳密な意味では発ガン性はゼロではないが、実用上無視できる程度の微弱さ。
*坑酸化剤ビタミンEの投与により、磁界の効果が消失。 磁界が変異原性を発揮する為にはラジカル対の存在が必要。

結果2
50Hz 20mTの磁界を24時間連続暴露。
10mA/m2の誘導電流が流れると、磁界の影響で変異原性が発生。
*電解質の導電率を80分の1にして、誘導電流を80分の1にしたら、変異原性は 検出されなかった。

このことから、低周波磁界の影響は磁界そのものではなく、磁界による誘導電流の効果であるといえる。
10mA/m2という誘導電流値は、WHOICNIRPが提唱している低周波磁界の暴露基準の根拠となっているもので、50Hz磁界の暴露限度値職業暴露で5ガウスは10mA/m2の誘導電流値となる。一般公衆は1ガウスで2mA/m2である。

*遺伝子修復機能を欠損している人の遺伝病(アタキシア・テランジェクタシア)の患者とその保因者の割合が0.1%程度いると推定されるので、彼らにとっては、現行の暴露規定は問題となる。

という概要。

これからは私の考察 帰りの電車の中で気がついたこと。
5
ガウスの暴露で10mA/m2の誘導電流が流れ、変異原性があることが判り、同時に80分の1の誘導電流では変位原生が見られなかったことは、50ミリガウスの磁界暴露は変異原性が無いことになる。 それでは50ミリガウスを超えて5ガウスの間ではどうなるか? この間に閾値があるのかも知れない

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9.イギリスのNRPB発行 Dollレポートの概要 

作成:2001-3-27
興味のある方はWEBもしくは原著を購入して読んでください。 以下は私の理解できた範囲での概要です。

Documents of NRPB Vol.12.  No.1.  2001
ELF Electromagnetic Fields and the Risk of Cancer
Report of an Advisory Group on Non-Ionizing Radiation Chairman: Sir R. Doll

原本はNRPBから30ポンドで購入可能。
概要はNRPBのWEBに目次と結論の部分だけが公開されている。 以下はこの公開された概要の概要である。 このWEBのURLは http://www.nrpb.org.uk 

*この報告はELF,低周波の電磁界に限定する報告である。
*NRPBの最初の1992年に発行したレポートでも行ったが、低周波電磁界の健康影響に関してレビューを行った。
*ヒトのガンに関して、職業的な曝露、住環境下における曝露との疫学調査、細胞実験、動物実験、ヒトを対象とした実験の結果をまとめた。

*過去の研究では曝露評価は不十分であったが、最近の研究では、磁界曝露評価が十分に行われるようになってきている。
(私のコメント: だから過去の疫学結果は信頼性に欠けるとは言っていないが)

*細胞実験結果
No Clear evidence, No convincing evidenceという表現で、電磁界が影響するということは、まだ明確な証拠、確定した証拠はない。
100マイクロテスラを超える磁界における影響があるとされる研究は、一般環境における0.01ないし0,2マイクロテスラの磁界に適用することはできない。

(私のコメント;ここでは100マイクロテスラを超えると影響する可能性があるとなっている。 ICNIRPの規定も一般大衆の曝露限度は100マイクロテスラである。)

*動物実験、ヒトを対象とした実験
全般的に、No convincing evidence(明確な証拠はない)となっている。

*住環境における曝露
相対的に強い磁界、0.4マイクロテスラを超える磁界への曝露で小児白血病が2倍になるというSuggest(提議)がある。 しかし、The evidence, however, not Conclusive.(まだ結論ではない)となっている。 英国において、0.4マイクロテスラを超える曝露を受けている小児の割合は多分0.4%程度であろう。

(私のコメント:323日に行われた第3回電磁界ワークショップにおいて、カロリンスカ研究所のオルボーンは、このDoll報告に言及している。 今までは磁界と小児ガンの関係を全く認めていなかったのが、この報告では、表現を工夫して、少なくとも可能性を示唆するところまで言及しているのは評価できる、と。)

*職業的な曝露
職業的な曝露は、住環境における曝露より強いと想定される。 最近の職業曝露とガンの研究は県連が見つからなかった。

*全体の結論
小児白血病のリスクを増発するという疫学調査は、現時点では最終的な結論を出すにはまだ十分ではない。 クラスターの問題、まだ認知されていない別の因子なども含めて更なる研究が必要である。


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10.英国NRPB報告に見る職業的な電磁界への暴露状況  

英国のNRPBでは、以下に示すように、職業的に電磁界に暴露する状況を調査し、20029月に報告書としてまとめました。

文書:NRPB-W24 
タイトル:Occupational Exposure to Electric and Magnetic Fields in the Context of the ICNIRP Guidelines 
著者:T G Cooper 

原文は英国NRPBWEBで、PDFファイルで公開されています。興味のあるからは、当該のWEBからダウンロードしてください。 

概要; 
ICNIRP
の電磁界ガイドラインを念頭に、職業的な電磁界への暴露の実態を調査した結果をまとめた報告書 

*発電所関連 
 機器に接近すれば、ICNIRPの限度値(基本制限)を超える恐れがある。 

*電気溶接 
 場合によっては磁界がICNIRPの限度値(基本制限)を超える恐れがある。 

*誘導加熱装置 
 通常の操作位置より機器に近接すれば、ICNIRPの参考レベルを超える恐れがある。 

*携帯型金属探知機 
 20kHzもしくは94kHz で動作するものを調査。 機器に2.5cmまで近接してもICNIRPの参考レベルを超えない。 

RFID  
ICNIRP
の基本制限値(誘導電流とSAR)は越えない。 

EAS(万引き防止) 
 時間平均値などを勘案する。ICNIRPの基本制限は越えていない。 

*アーク炉 
 機器に近接するとICNIRPの参考レベルを超える恐れがある。 

EASRFIDに関してはECの規定がある。 
 CENELEC2001年の規定で EN50357(評価方法の規定) EN50364(限度値) 

このように、職業的には強い電磁波(電磁界)に暴露する恐れはあります。

 

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11.国際がん研究機関の低周波磁界発がん性2B判定


国際がん研究機関IARCWEB http://www.iarc.fr/ にあった内容です。

IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans
Static and Extremely Low-Frequency Electric and Magnetic Fields
(Vol. 80)
 (196 June 2001)
直流電磁界・低周波電磁界に関する発がん性評価 2001

A working group of 21 scientific experts from 10 countries met in Lyon to evaluate possible carcinogenic hazards to human beings from exposures to static and extremely low frequency (ELF) electric and magnetic fields.
10
カ国21名の科学者による作業部会が、直流電磁界・低周波電磁界の発ガン性に関して評価を行った。

This volume is the first in a planned series of two IARC Monographs volumes on various kinds of non-ionizing radiation in the frequency range below that of visible light.
これは可視光線以下の非電離放射線に関するIARC文書として発行を予定している2冊の文書のうちの第1巻である。

ELF magnetic field exposures result from proximity to electric power transmission lines, household wiring, and electric appliances and are in addition to the exposure that results from the earth's magnetic field.
低周波電磁界曝露は高圧送電線、家庭内の配電線、電気機器からの曝露、地磁気による曝露がある。

Magnetic fields are measured in units of microTesla; the earth's static magnetic field varies from 25 microTesla at the equator to 65 microTesla at the poles.
磁界はマイクロテスラで測定され、地磁気の強さは赤道上で25マイクロテスラ、南北極では65マイクロテスラである。

Since the first report suggesting an association between residential electric and magnetic fields and childhood cancer, notably leukaemia, was published in 1979, dozens of studies have examined this association.
1979
年に住環境下における低周波電磁界と小児癌(小児白血病)の関係を示唆する研究が発表されてから、多数の研究が行われてきた。

Overall, for the vast majority of children who are exposed to residential ELF magnetic fields
less than 0.4 microTesla, there is little evidence of any increased risk for leukaemia.
全体を見れば、低周波磁界が0.4マイクロテスラ(4ミリガウス)以下であれば、白血病の増加はない。 

There is inadequate evidence that electric fields are associated with childhood leukaemia, and there is no consistent relationship between childhood brain tumours or other childhood solid tumours and residential ELF electric and magnetic fields.
低周波電磁界による影響に関しては、子供の脳腫瘍とその他の子供の癌では、首尾一貫した関係は見つかっていない。

However, pooled analyses of data from a number of well-conducted studies show a fairly consistent statistical association between childhood leukaemia and power-frequency residential magnetic field strengths above 0.4 microTesla, with an approximately two-fold increase in risk.
しかし、幾多の疫学研究を纏めたプール分析によれば、0.4マイクロテスラ(4ミリガウス)以上の低周波磁界に曝露すると、小児白血病は約2倍のリスクとなっている。

This is unlikely
(注:ありそうもない) to be due to chance, but may be affected by selection bias. Therefore this association between childhood leukemia and high residential magnetic field strengths was judged limited evidence for excess cancer risk in exposed humans.
これは偶然の結果とは思えないが、選択バイアスの可能性もある。
よって、小児白血病と住環下の低周波磁界の関係は、人への発がん性は「限定された証拠がある」と判定した。

There is no consistent evidence that residential or occupational exposures of adults are related to excess risks of cancer at any site.
職業的な曝露、住環境下における大人の低周波電磁界への曝露は、首尾一貫した証拠はない。

Evidence for excess cancer risks of all other kinds, in children and in adults, as a result of exposure to ELF electric and magnetic fields was considered inadequate.
大人も、子供の、その他の癌の増加に関しては、十分な証拠はない。

Numerous studies to investigate carcinogenicity of magnetic fields have been conducted in experimental animals. These have included long-term bioassays of exposures to magnetic fields alone, and exposures of rats and mice to magnetic fields in combination with known carcinogens.
実験動物を使用した磁界曝露と発ガンに関する色々な研究が行われた。 この実験には長期にわたって磁界を曝露した研究もあり、また、既知の発癌物質との組み合わせた鼠を使用した研究もある。

Bioassays of magnetic fields alone generally were negative, although one study that was conducted in both mice and rats of both sexes showed non-exposure related increases in thyroid C-cell tumours in male rats only.
磁界だけ曝露した研究はほとんどが「磁界曝露は癌を増加させない」という結果である。 その中で、雄・雌の鼠を使用した実験で磁界に曝露しなかった雄にだけ、癌が増加した、という研究もある。

Multistage carcinogenesis studies showed no consistent enhancement of chemically initiated mammary tumours in rats or of skin tumours in mice.
鼠に既知の発癌物質(化学物資)で発ガンさせて。皮膚がんが増加するかを調べているが、首尾一貫した結果になっていない。

Magnetic fields had no effects on the incidence of chemically initiated liver tumours in rats or of leukaemia/lymphoma in mice or rats.
鼠に化学物質で既知の発ガン物質で肝がん・白血病・リンパ腫を誘発させて、低周波磁界が影響するか調べたが、影響はなかった。
Overall, evidence for carcinogenicity of ELF magnetic fields in experimental animals was judged inadequate.
全体を見て、低周波磁界と動物を対象にした研究では、発ガンに関する十分は証拠はない。

No data on carcinogenicity to animals of static magnetic fields, or of static or ELF electric fields, were available to the working group.
作業部会で判定するための直流磁界、直流電界、低周波電界に関する動物実験のデータは、ほとんどなかった、

Although many hypotheses have been put forward to explain possible carcinogenic effects of ELF electric or magnetic fields, no scientific explanation for carcinogenicity of these fields has been established.
低周波電磁界の発がん性に関する仮説が提案されているが、まだ発がん性を科学的に立証していない。

Overall, extremely low frequency magnetic fields were evaluated as possibly carcinogenic to humans (Group 2B), based on the statistical association of higher level residential ELF magnetic fields and increased risk for childhood leukaemia.
全体として、低周波磁界は、低周波磁界と小児白血病の研究から、「発ガンの可能性ありとしてグループ2B」に判定する。

Static magnetic fields and static and extremely low frequency electric fields could not be classified as to carcinogenicity to humans (Group 3).
直流磁界、直流電界、交流電界に関しては、「判定不可とし、グループ3に区分する」 。

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12発がん性グループ2Bにリストされている物質など

国際がん研究機関IARCWEB http://www.iarc.fr/ にあった内容です。 
上記IARC判定2Bということはどの程度の危険度であるか? 同じように2Bにリストされているもののリストの中から、比較的身の回りにあるもの・環境を拾い出して見ました。

Group 2B: Possibly carcinogenic to humans (234)
Agents and groups of agents

 Carbon black  カーボンブラック、印刷などに用いられている
 Chloroform  クロロホルム 全身麻酔剤
 DDT [p,p'-DDT, 50-29-3]  農薬
 Glasswool  ガラス繊維 
 Lead [7439-92-1] and lead compounds, inorganic  鉛
 Magnetic fields (extremely low-frequency)  低周波磁界  (今回追加された)
 Nickel, metallic [7440-02-0] and alloys   ニッケルとその合金

Mixtures
 Coffee (urinary bladder)  コーヒー 
 Engine exhaust, gasoline  ガソリン車のエンジン排ガス

Gasoline   ガソリン 

Welding fumes   溶接時に発生する煙 
Pickled vegetables (traditional in Asia) アジアで食されている漬物 

Exposure circumstances
Carpentry and joinery  大工と建具屋さん 

Dry cleaning (occupational exposures in)  職業としてのドライクリーニング屋
Printing processes (occupational exposures in)
 職業としての印刷屋 
Textile manufacturing industry (work in)
  職業としての繊維製造産業

ということは、仮に2B判定となっても、規制を行うか否かは別の観点から決まる、ということができます。

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13.発がん性グループ1にリストされている物質など

Group 1: Carcinogenic to humans  グループ1 発がん性があるとされる物質などのリスト
IARC
のWEBにあったリストから   作成 ; 2002−5−18

Agents and groups of agents 
Aflatoxins, naturally occurring
   アフラトキシン: ピーナッツや大豆などに発生する自然に存在するカビの一種であるAspergillus flavusが作り出す毒素
Asbestos
  アスベスト 石綿 
Benzene
  ベンゼン コールタールから採る染料の原料
Cadmium  and cadmium compounds
   カドミウムとその合金 
Nickel compounds (Vol. 49; 1990)
   ニッケル合金
Mustard gas (Sulfur mustard)
  マスタードガス 毒ガス
Oral contraceptives, combined (Vol. 72; 1999)
  内服の避妊薬
Plutonium-239 and its decay products , as aerosols
  プルトニウム 
Solar radiation
   太陽からの放射線 
Gamma Radiation:
 ガンマー線 
X-Radiation
   X線 

Mixtures 
Alcoholic beverages
   アルコール飲料 
Coal-tars
  コールタール 
Salted fish (Chinese-style)
   中国風の塩漬けした魚 
Tobacco products, smokeless
  タバコの生成物 受動喫煙 
Tobacco smoke
  喫煙 
Wood dust
    木屑 

Exposure circumstances  環境として 
Aluminium production
  職業としてのアルミ製造
Boot and shoe manufacture and repair
  職業としての靴の製造と修理  
Coal gasification
   職業としての石炭のガス化 
Coke production 
 職業としての石炭からコークスの製造 
Furniture and cabinet making
  職業としての建具や家具の製造  
Painter (occupational exposure as a) 
  職業としての印刷業 
Rubber industry
  職業としてのゴム産業 

アルコール飲料が喫煙などとともに「発がん性あり」というグループに指定されている

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14.発がん性グループ2Aにリストされている物質など

Group 2A: Carcinogenic to humans  グループ2A 高い確率で発がん性がある物質などのリスト
IARC
のWEBにあったリストから   作成; 2002−5−18

Group 2A: Probably carcinogenic to humans

Agents and groups of agents

Ultraviolet radiation A (Vol. 55; 1992)   紫外線A
Ultraviolet radiation B (Vol. 55; 1992)
   紫外線B 
Ultraviolet radiation C (Vol. 55; 1992)
   紫外線C

Mixtures

Diesel engine exhaust (Vol. 46; 1989)   ディーゼルエンジン排ガス

Hot mate (Vol. 51; 1991)   熱いマテ茶
Polychlorinated biphenyls
   PCB

Exposure circumstances

Art glass, glass containers and pressed ware (manufacture of) (Vol. 58; 1993)   職業として工芸ガラスの製造

Hairdresser or barber (occupational exposure as a) (Vol. 57; 1993)   職業として理髪・美容業

Petroleum refining (occupational exposures in) (Vol. 45; 1989)   職業として石油精製業

Sunlamps and sunbeds (use of) (Vol. 55; 1992)   日焼けランプ

このリストに指定されている紫外線は、完全に浴びないようにした場合には、体内でビタミンDが生成されなくなってしまう。

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15.IARCによる「低周波磁界は発がん性2B」判定を受けてのICNIRPの見解

 以下はICNIRPWEBにあった内容です。
Icnirp's View on IARC's evaluation of carcinogenic risks to humans from exposure to electric and magnetic fields

IARCは低周波磁界が発がん性2Bと判定した。
この判定は、低周波磁界と小児白血病の疫学調査結果に基づいている。

しかし、小児白血病以外の子供の癌、大人の癌(住環境での磁界曝露、職業的な曝露)に関しては、まだ確定した証拠はない。
動物実験などによる検証がない限り、疫学研究成果だけでは、ICNIRPの現行ガイドラインの改訂を行うには不十分であると結論を出した。 

詳細はICNIRPWEBにある英文を参照してください。

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16.IARCによる「低周波磁界は発がん性2B」判定を受けてのICNIRP


低周波磁界0.4マイクロテスラ以上で小児白血病2倍ということに関するICNIRPの見解をまとめた長文の論文です。

掲載雑誌:
Environmental Health Perspectives Volume 109, Supplement 6, December 2001
論文名
Review of the Epidemiologic Literature on EMF and Health
著者: 
ICNIRP (International Commission for Non-Ionizing Radiation Protection) Standing Committee on Epidemiology: Anders Ahlbom, Elisabeth Cardis, Adele Green, Martha Linet, David Savitz, and Anthony Swerdlow

この論文で注目する点
The relative risk has been estimated at 2.0 (95% confidence limit: 1.27-3.13) in a large pooled analysis.

This is unlikely to be due to chance but, may be, in part, due to bias.

0.4マイクロテスラ以上の低周波磁界への暴露によって、小児白血病が2倍という値に関しては、偶然にそうなったということはいえそうもない、しかし、選択バイアスの可能性もある、という 結論です。

まだすっきりしません。 興味のある方は、原文の論文を読んでください。


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17.発がん性ありと判定されているアルコール飲料に関する研究  

 

IARCの発ガン判定で「発がん性あり、カテゴリー1」にリストされているアルコール飲料に関係する情報です。
作成:2003−1−8 
メーリングリストにあった情報を一部引用します。 詳しくは www.metamedica.com のサイトを見てください。 

************** 引用   ************ 
Global Risk Communications Newsletter
 2003/01/08 坪野吉孝 

中等量までの飲酒で、肺がんリスクの上昇なし。

米国の男女9000人を最大48年間追跡したところ、アルコール量で124g(日本酒約1合)以下の飲酒では、肺がんリスクの上昇はなかった。米国ボストン大学のグループによるこの研究は、米国立がん研究所ジャーナル20021218日号に報告された。 

飲酒や喫煙などの生活習慣について、最初の調査集団は2年に1回、その子供の集団は4年に1回の頻度で、くりかえし調査を行った。最初の集団は最大で48年間、子供の集団は最大で25年間の追跡調査を行ったところ、あわせて269人が肺がんになった。 

■明らかなリスク上昇なし 

その結果、お酒を飲まないグループと比べると、アルコール換算で1日平均0.112g飲むグループの肺がんの発生率は1.2倍、112.124g飲むグループの発生率は1.1倍だった。つまり、アルコールを飲む量が124g以下のグループの肺がん発生率は、アルコールを飲まないグループの発生率と差がなかった。 

いっぽう、アルコールを飲む量が1日平均24gを超えるグループの肺がん発生率は、飲まないグループの発生率よりも1.3倍高かったが、統計的に意味のある結果ではなかった。ちなみに、24gのアルコールは、日本酒約1合に含まれるアルコール量にだいたい等しい。 

********** 引用の終わり *************** 

このように、IARCで最もきびしく発がん性があると判定されているアルコール飲料ですら、規制はされておらず、以上のような研究も存在します。

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18.アルコールの飲酒と発ガンの研究 

 

2003年日本産業衛生学会総会の予稿集から
アルコールはIARCの発がん性評価ではグループ1(発がん性あり)となっている。 低周波磁界はぐループ2Bで、発がん性があるかもしれない というレベルである。飲酒の影響を調査した報告があった。  作成: 2003-5-15

BP042
 今井常彦 ら  東邦大学医学部衛生学 「飲酒の腫瘍増殖作用について」

はじめに: 飲酒は口腔、咽頭、食道、肝臓の癌の原因となることが知られている。我々はこれまで長期飲酒の生体影響についてヒトおよび動物実験により多面的に観察を続けている。
本研究では、加齢による精巣腫瘍である間細胞腫の自然発症の観察に適したフィッシャー系雄ラットを用い、長期飲酒と間細胞腫の発症との関連について観察したので報告する。

方法:生後5ヶ月齢時フィッシャー系雄ラット18例を実験に供した。1ヶ月間の予備飼育の後、
1)エタノール投与(Alc)群・7:
2)対照(C)群・11: 
観察時期は生後30ヶ月齢時。観察方法:精巣重量測定し、体重比算出、光顕による病理組織観察。 

結果および考察: 
1)
観察終了時体重=Alc群は271.1±51.3g, C群は303.9±35.0gで、2群問に有意差なし。
2)
精巣間細胞腫の出現頻度:Alc群は7例中7例で100%C群は11例中10例で91%2群問に有意差なし。
3)
精巣重量(両側合計):Alc群は5.82±3.44g, C群は2.61±1.58gで、ALc群が有意(p<0.05)に高値。 
4)
精巣重量(両側合計)/体重比:Alc群は2.06±1.11%C群は0.83±0.43%であり、Al1c群が有意(p<0.05)に高値。 
4)
病理組織所見:Alc群と対照群では所見に差異なし。 

以上、腫瘍発症頻度には、Alc群とC群の間に有意差が見られないこと。
腫瘍の大きさはAlc群が有意に大であることから、長期飲酒は腫瘍に増殖に促進的に作用することが示唆されたと考える。 

興味のある方は、写真などもあり、原著を見てください。

 

19.第1回労働衛生重点研究推進協議会シンポジウム 

「21世紀の労働衛生研究戦略」の実施と展望 参加報告 
作成: 2001ー11ー15  WEB公開:2010−6−3

2001年11月14日 東京・田町で開催。

概要
1。「21世紀の労働衛生戦略」の解説 中災防 櫻井

(旧)労働省は過去3年間に本省主管で、産業医学総合研究所が事務局となって21世紀の労働衛生に関する研究のコンセプトの作成を行ってきた。
2000年12月に最終報告書がでた。色々と研究すべき課題をリスとアップし、関係者の意見を聞いて纏めた。
最終的には研究すべき項目として3つの領域で、合計18テーマに絞りこんだ

VDT作業に関連する諸問題は「人間工学的因子と生体負担」という大きな括りの中に包含された。
電磁波の健康影響に関しては、最初に課題として提起はされたが、最終的に18テーマに絞りこんだ段階で、落とされた。

2。この18テーマの研究の推進の為に、今回のシンポジウムが開催された。
推進協議会が作られ、本年度からは、更生労働省の委託を受けて、産業医学総合研究所が運営にあたる。

以下は3領域18テーマの中から、代表的な分野として関係者が講演を行った。
(会場はスライド等の為に、暗くなり、ほとんどメモを取ることができなかった。)

3。産業ストレス 岡山大学 川上
*ILOは産業ストレスを現在もっとも重要な健康阻害要因の一つとして考えている。
*産業ストレスによって、従来の健康影響に加えて、癌や免疫機能への影響も研究すべき。

4。産業現場における人間工学応用の可能性 労働科学研究所 酒井
*VDTの健康リスクに関しては、従来とは異なり、移動しながら使用する、携帯端末の使用、ネットワーク環境での使用という新たな局面での研究が必要。

5。情報技術と労働衛生 日本IBM 浜口
パソコン等のIT機器から発する電磁波影響に関する不要な健康不安感の払拭にも努力すべきである。
 IBMの社内でも、8割がそうした機器からの電磁波漏洩は健康に悪いと感じている。
 1980年頃に発生したVDT作業に関する悪影響の情報が、今だに情報として刷り込まれている。
 従業員に「大丈夫」と保証するのも産業医の役割である。


6。化学物質曝露による健康影響の評価 北海道大学 岸
*生殖毒性に関する研究が必要。特に女性に関しては、妊娠が確認された後は母性として保護されるが、妊娠したことが確認されない妊娠初期にあっては、保護もされないので、そうした曝露を受けていることが問題となる。

7。産業保健マネジメントシステムの構築と課題 エクソンモービル 森
*2001年にILOによってガイドライン化された。
 かなり包括的なもので、これを中小企業にあてはめることは簡単ではない。

8。中小企業・自営業における労働衛生の研究  産業医学研究所 平田
*個別に、業種別にマニュアル等を作らないと中小企業には適用できない。

9。総合討論
*18テーマに絞った、研究に関するコンセンサスが得られたとはいえ、
 総花的な提言である。これを今後は目に見える形にしていく必要がある。
*従来の労働省にはほとんど研究費がなかった。
厚生労働省となり、厚生省の科研究費は厚生労働科研費と名前を変えた。
 労働衛生の研究にも、数億円の予算をつけたい(検討中)。


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