主に産業衛生学会の総会での電磁波・VDT作業関連の発表内容を紹介します。
1. 産業衛生学会1999年総会
1A.産業衛生学会2000年総会 参加の記
2. 産業衛生学会2001年総会
3. 産業衛生学会2002年総会
4. 産業衛生学会2003年総会
5. 産業衛生学会2004年総会
6. 産衛学会2005年総会の概要
7. 2006年 産衛学会の概要
8. 2007年の産衛学会
9. 産業衛生学会2008年
10:2009年産業衛生学会
11.産業衛生学会2010年総会における研究発表から
12.産業衛生学会 英文誌 1999年7月号の論文から
1.産業衛生学会1999年総会
産業衛生学雑誌 第41巻 第72回日本産業衛生学会講演集 1999年東京開催 にあった電磁波の健康影響に関連する報告の概要です。
1)清水英佑 職域における電磁場のリスクと管理―始めに
Rapid計画の報告書で電磁界は発癌性2Bとなった。
そこで産業衛生学会としても検討すべく、このテーマでの企画を行なった。
2)伊藤勝生 職域における電磁場の曝露強度
我が国では職域における電磁場の実測結果が殆ど見当たらないので、諸外国の例を紹介。 職場における電磁界曝露を重視しなければならない。
溶接・誘導過熱・電解加工などの職域では、強い磁場が発生している。
3)多気昌生 電磁場暴露の許容基準
ICNIRPの電磁界・静電磁界のガイドラインの紹介。
現在行なわれている研究の多くは社会問題となっている弱い電磁界の健康影響である。
問題は重要であるが、仮にリスクがあったとしても小さい。
一方職場環境では曝露が大きい場合があり、データの蓄積が必要である。
4)中川正祥 電磁場の生体効果とリスク評価
電磁場のリスク評価に関しては、考え方として A:ガイドライン案の基本に従う B:疫学研究の結果の重視 C:実験室データの重視に分けることができる。
5)P139(Pはポスター展示)
東敏昭ら 職域における電磁場暴露の状況:サンプル調査
メモリー型低周波磁界曝露計を用いて、終業時間内の磁場曝露を、VDT作業の一般事務、鉄道乗務員、溶接工などを対象に測定。
(なぜ24時間測定を行なわない?これでは不十分である。)
結果 算術平均値で VDT作業者は0.17マイクロテスラ(1.7ミリガウス)、鉄道乗務員は0.56マイクロテスラ、溶接工は0.78マイクロテスラであった。
6)P140 黒河住香ら 超低周波電磁場のヒトへの急性影響に関する曝露実験 その1
ヒトに50Hz等の磁界を曝露して影響を調査。
0.2ガウスから1ガウスまでを曝露しても、ヒトは感知できなかった。
曝露中に作業を行わせて作業への影響を見たが、一貫性のある結果は見られなかった。
7)P141 鈴木勇司ら 電磁場が染色体異常に及ぼす影響
50Hz 7ガウス、14ガウスの磁場をマウスに曝露、7ガウスへの曝露では変化は無かった。
14ガウスへの曝露では48時間後に有意な変化が現れた。
8)P142 田代拓ら 某ワープロ入力作業場における電磁環境と作業者自覚症状について
CRTディスプレィでは磁場は0.07から0.30マイクロテスラ、電場は45.8から61.7V/m、液晶モニタは磁場0.02マイクロテスラ、電場は40.4V/mであった。
液晶は磁界が低いが電界はさほど小さくはない。
CRTモニタで磁界の多いモデルと少ないモデルの使用者間に自覚症状に差異は無かった。
9)K105 久保田均ら 建設労働者の新死因に関するコホート研究(3)
17666名を対象としたコホート研究。
電気工の脳血管疾患によって死亡した例は3、標準と比較すると0.58で増加傾向はない。
WEB公開;2010−6−1
2000年4月北九州市で開催された第73回日本産業衛生学会に、参加した。
第73回日本産業衛生学会の概要
会期:2000年4月23日から26日
会場:北九州市 北九州国際会議場および西日本総合展示場新館
VDTや電磁波に関連した発表
1)VDT作業研究会
・「モバイルワークについて」と題して、日本IBMの土屋氏がMobile PC(ノートタイプ)のハードウェア仕様の説明とwareble PC(head mount方式)のhead mount方式)の試作品のデモが行われた。
・名古屋大学 の宮尾先生の「携帯電話の問題点と対策」として表示の見やすさ、視覚負担、通信品質、電子商取引、犯罪とプライバシー、リサイクル、電磁波、誤動作・事故、迷惑などについての解説があった。
2)電磁波の生体影響に関する研究報告
以下の2件の報告があった。
H108 産業医科大学 櫻澤博文ら:職業性電磁場曝露と発がん性に関する疫学的研究
海外の諸研究における白血病と脳腫瘍と職業性電磁場曝露の疫学研究をレビューした。
アメリカのRAPID報告書の結果を裏付けることができた。
P162 国立環境研究所 黒河佳香ら:超低周波電磁場のヒトへの急性影響に関する曝露実験(その2)
50Hz磁界をヒト(20μTに高調波を重畳、さらに最大100μT過渡波形も重畳)に夜間連続的に曝露したが、メラトニンの変化は現れなかった。
3)その他のVDTに関する研究
ポスターセッションと口演6で、作業疲労や自覚症状、人間工 学的な研究、ノートパソコンの採用に伴う作業・人間工学的な研究が発表された。
4)筆者も関係した口演
*VDT作業に関連した電磁波の生体影響のレビュー 口演:三浦正悦
VDT作業に関連する健康問題は1980年代の初頭に発生し、VDT機器からの電磁波も疑われた。その後の経緯、最近のWHOや日本電子工業振興協会(JEIDA)の行ってきた活動等を含めて、レビューした。
結論としては、WHOの見解にあるように、VDT機器からの電磁波は気にする必要のないレベルである。
むしろ、視覚作業に伴う目の疲れ、作業に伴うストレスの問題等の解決が重要であり、また長時間の連続作業を行なわない様にVDT作業の自主管理を行なう必要がある。
*ELF/VLF帯域の磁界環境に関する調査 口演:横田 等
携帯型の低周波磁界計を用い、ELF帯域の磁界曝露に対して、VDT作業が支配的な要因であるか、また、職種または使用している電気機器と低周波磁界曝露との間に相関関係があるかを調査した。
結果としては、個人の低周磁界波曝露に関しては、VDTが主たる要因とは言えず、むしろ通勤手段や居住環境の影響が大きいことが判った。
このため、VDT作業者か否か、どのような電気機器を所有しているかといった事項からは個人の低周波磁界曝露量を予測することはできず、低周波磁界曝露量を特定するには各個人の24時間生活環境全体を確認する必要がある事が判った。
*CRTと液晶の電磁界 口演:山口 茂
17型CRTモニタと15型液晶モニタの実機を使って現状のモニタから漏洩している低周波電磁界の輻射パターンとレベルを比較測定し、その発生形態を調査すると同時に、業界としてのガイドライン(JEIDA-G-15-1996)とオフィスの環境ノイズレベル(バックグラウンド)との比較を検討した。
結論としては、一般のオフィス環境では、その低周波電磁界レベルが職場によりバラツイているが、ノイズの高い職場に比べると、業界ガイドラインのレベルの方が低い為、ガイドラインを満足しているCRTモニタと液晶モニタからの電磁界レベルは50歩100歩であることが理解できる。
また、低周波電磁界は、CRTモニタに限らず、電源回路を有する全ての電気製品から輻射されることがわかった。
*電磁波防護グッズの効果の検証結果 口演:滝田英徳
VDTからの漏洩電磁界による健康問題がマスコミ/雑誌等で話題になるに伴って、多種多様な電磁波防護グッズが市場に出回っている。
97年3月31日付け産経新聞で『電磁波用の防護グッズ、多い誇大表示、消費者団体が相次ぎテスト』、最近でも99年5月26日付け毎日新聞で『電磁波防護グッズ警告』等からも判るように、電磁波防護グッズには、その効果がまったく無い、または、表示に比べて低減効果の少ないグッズが多々ある。
JEIDAのVDT対策専門委員会ではOAエプロン、OAフィルタ等の代表商品をVDT作業時と同じ環境下で測定(VLF,ELF周波数帯)し、これらの電磁波防護グッズのカタログやパッケージに機能として表示されているセールストークとの比較を行った。
検証で判明したことをまとめると、
1)実使用状態にてカタログ記載内容の効果がないグッズがある(VLF/ELF周波数帯域)。
2)カタログ記載内容に下記の明示なきグッズがある。
(1)電界または磁界低減のいずれの効果かが明記されていない。
(2)効果のある周波数帯が明記されていない。
(3)グッズの素材としての効果か、それとも実使用状態での効果かが明記されていない。
関心のある方は、講演レジメ集を読んでください。
産業衛生学会 2001年総会における講演内容 作成:2001−6−3 追記:2010−3−1
総会には参加しなかったが、予稿集を読み電磁波の、生体影響と、VDT作業に関連する演題から興味のあるものを拾い出した。
2001年4月4日から8日まで高知市で開催された。
1.概要
会期:2001年4月4日〜8日
会場:高知市 高知県立県民文化ホール等
参加者:約2000名、産業医、産業看護婦・保健婦、安全衛生担当者、大学医学部公衆衛生学教室・労働衛生研究機関の研究者、労働衛生コンサルタント等
2.VDTや電磁波に関連した発表:VDT作業研究会(4月7日開催)
*VDT作業者における視野測定の意義
東邦大学医学部衛生学教室 立道昌幸
VDT作業者と緑内障の関係については「関係はない」とは言い切れず、弱いながらも憎悪・危険因子となる可能性を否定できなかった。
*現行VDT作業指針の問題点と今後の方向 名古屋大学 宮尾 克
厚生労働省の「VDT作業に係る労働衛生管理に関する検討会」のメンバーとしての意見書と今後の予定について説明が有った。
3.電磁波の生体影響に関する演題は以下の1件だけである。
*櫻澤博文ら 職業性電磁場暴露の実態調査及び発がん性との関連評価
日常生活環境下より強い電磁波(電磁界、電磁場)を受けている職業性暴露を調査した。
また、それらの職業性電磁界暴露による癌の過剰死亡者数を算出した。
結果は
1)職業性暴露として低周波磁界(30Hzから2000Hz)に暴露している強度の測定結果の例、
電気炉作業者 幾何平均値 12.79マイクロテスラ(127.9ミリガウス)
最大値 15.0 マイクロテスラ
溶接工 幾何平均値 1.77マイクロテスラ
最大値 600 マイクロテスラ(6ガウス)
変電・送電工 幾何平均値 0.13マイクロテスラ(1.3 ミリガウス)
最大値 0.72マイクロテスラ(7.2
ミリガウス)
(コメント;送電線由来の磁界と発がん増加を示唆する疫学調査結果によれば、送電線由来の磁界を受けている住民は3ミリガウスを超える暴露は白血病を増加させるとある。これらの研究が正しいとして、住民より多く暴露すると思われる送電・変電工の暴露レベルがかなり低い様に思う。)
2)これらの暴露磁界の発がん増加への影響度
日本における平均的な20歳以上の男性の白血病による死亡者数は10万人あたりで7.0人である。 (コメント:言い換えると日本の人口を1億人とすれば年間7000人が色々な原因によって白血病で死亡していることになる) 職業的に強い磁界暴露を受けている人の数を推定し、毎年磁界暴露で白血病になる人の数を推定すると、20.6人から21.2人増加するという計算となる。
(コメント;これらのことから年間7000人の白血病死亡者がいて、職業的に強い磁界に暴露することによって白血病での死亡者数が増加して、その総数は7021人になる。 21人の増加が大きいか無視できるかの判断は別である。)
4、VDTに関する発表10件の口演
・学校におけるPCの使用状況と人間工学の実践、愁訴と検診結果・ライフスタイル、ドライアイ、負担軽減プログラム、アームレスト等の研究の発表があつた。
*梶原隆芳ら VDT作業者の特殊健康診断結果と職場分煙化の関係
職場で行われているVDT作業者に対する健康診断で、有所見(調節障害あり、肩こりをいつも自覚、目の疲れをいつも自覚 の何れかを訴えている人)となった割合を、喫煙者と非喫煙者で差異があるかを調査した。
1996年は 職場の分煙は未実施
1999年は 職場の分煙を実施
結果 有所見の割合(%)
1996年 喫煙あり 19.6%
喫煙なし 16.4%
1999年 喫煙あり 14.3%
喫煙なし 25.5% となっていた。
このことから、喫煙者は分煙化で喫煙室が与えられ、適当に疲れやストレスを発散できるが、非喫煙者はそうした疲れやストレスを発散できる場所が無く、有所見率が増加しているので、非喫煙者にも十分にリラックスできる休憩室が必要である。
(コメント:VDT作業は、適度に作業の休止や休憩などが必要といわれているので納得の出来る研究と思います。)
産業衛生学会(2002年4月9日から神戸で開催)の総会の講演予稿集が届きました。
ざっと、目次から、電磁波、VDT作業関連の発表予定を拾い出しました。
作成: 2002−3−27
*シンポジウム4 情報技術社会のエルゴノミクス 発表者: 城内博
IT社会でのリスクコミュニケーションの重要性の中で、電磁波に関しても論及している、IARCの判定2Bなど。
*VDT作業研究会 新しい情報化職場に関する調査研究プロジェクトについて 発表者: 外山みどり
アンケートの実施など
*一般講演から
C116 日常環境中の電磁場暴露評価 発表者: 鈴木勇次(慈恵医科大学)ら
学生が携帯型磁界測定器(FD3)を用いて、24時間低周波磁界暴露を測定した。
紹介されている実測例によれば、通学時の電車での磁界暴露が多い。
*C119 微細水クラスターマイナスイオン空気によるストレス軽減効果の検証 発表者: 堀越一昭(松下電器)ら
レオナード効果による微細水のマイナスイオンではストレス減少効果があった。
比較した電気放電によるマイナスイオンでは効果は無かった。
*C301−C306にVDT作業関連の口演がある。電磁波には直接関係がない。
*ポスター展示
P189 電磁場暴露の脳腫瘍誘発性の検討 発表者: 宮越雄一(慈恵医科大学)ら
50Hz10ミリテスラ(100ガウス)の磁界を細胞に暴露、染色体の異常は見られなかった。
このことから磁界の発がん性は否定。
第76回日本産業衛生学会の予稿集から
2003年4月23日から26日まで山口市で開催された、第76回日本産業衛生学会の予稿集の概要です。
電磁波とVDT作業に関連する情報のみ
*シンポジウムから
職場における物理的環境の健康問題
「電磁場の生体影響と労働現場における対策」 日本大学大学院教授 城内博)
3月24日の東京産業保健センタでの産業医学研修とほぼ同じ内容
*VDTや電磁波に関連した発表
特別報告 VDT作業研究会(自由集会共通)(4月24日)下記4題の発表があった。
@「欧州におけるコンピュータ利用者の近骨格系の障害予防のための研究状況」 垰田和史 滋賀医科大学予防医学講座
A「学校のIT環境を考える」/学校のIT化を巡る国際動向 斉藤 進 産業医学総合研究所
スウエーデンの国際プロジェクト、オレゴン州OHSA、などの教育環境におけるIT活用による人間工学的な課題や動きの紹介があった。
B「学校のIT環境調査」−児童・生徒のコンピュータ利用について 外山みどり 産業医学総合研究所
1997年に児童、生徒、先生を対象としたアンケートを実施しその結果をまとめた。
C「児童に優しいコンピュータ使用環境作りへの取り組み」−子供用パソコン机・椅子の開発 阿久津正大 玉川大学工学部
児童用の机、椅子の開発により、座面、背もたれ、足置きを調節可能とし、95%の児童が正しい姿勢でVDT作業が出来るようになった。
*電磁波の生体影響に関連した発表 下記の口演2件のみ
F015 東京慈恵会医科大学 宮越雄一 :電磁場暴露の脳腫瘍誘発性の検討
50Hz10mT(100ガウス)という強い磁界暴露では遺伝子の損傷が増大し、腫瘍増発の可能性があることがわかった。
F016 産業医科大学 川島正敏 :日常生活における電磁場暴露について
オフィスだけではなく、色々な場所で、磁界に曝露している。
*VDTに関する発表 6件の口演発表有
C−011:日本IBM 山室栄三 :緑内障とVDT作業および他の健康指標との相関関係の検討
C−012:川崎重工業 横田雅之:某製造業におけるパソコンの1人1台導入の視力、自覚症状への影響について
C−013:産業医学総合研究所 外山みどり:情報化職場の労働衛生に関する実態調査2002
−自宅でのコンピュータ利用の特徴−
C−014:産業医学総合研究所 岩切一幸:情報化職場の労働衛生に関する実態調査2002
−事務職、管理職について−
C−015:日立製作所 中谷敦 VDT作業者健康診断における中高年者に対する近見視力測定の必要性についての検討
H−011:医療法人香流会 深谷直子 VDT作業時における視覚負担が姿勢と僧帽筋活動へ与える影響
*VDTに関するポスター発表 4件の発表
BP−061:中災防 釈舎友美 VDT健康診断時アンケート調査結果−その1
BP−062:中災防 佐藤恭子 VDT健康診断時アンケート調査結果−その2
CP−011:日本鋼管病院 安永裕子 VDT作業における照度と自覚症状の関係
CP−012:滋賀医科大 辻村裕次 身体障害者のVDT作業改善による負担軽減
*電磁波に関するポスター発表 1件の発表のみ
FP018 鉄道総研 池端誠輝 酵母を用いた電磁場の変異原性および遺伝子発現に対する影響の評価
5Tの静磁場、40mTの交流磁場での試験を行った。
2004年4月名古屋で開催された産業衛生学会総会の予稿集にあったVDTと電磁波に関連する発表のまとめ
作成:2005−7−16
以下の報告があった。
1)VDT作業研究会
城内博「職場における電磁場曝露とリスクコミュニケーション」 レジメは予稿集にはない。
2)特別報告27
タイトル:放射線業務従事者における低線量被ばくの健康影響
発表者:中部電カ・浜岡原子力発電所・産業医 道家義和
文部科学省は平成2年から原子カ施設等の放射線業務従事者の疫学調査を放影協に委託して開始した。
事業所の協力を得て、作業者の住民票の写しを取り寄せ、死亡している場合は、厚生労働省の人口動態調査死亡票と照合することで個人の死亡原因を同定した。
こうして、作業者集団における死亡数、死亡原因、および被ばく線量などから、職業被ばくと悪性腫瘍による死亡の関連を調査した。
平成12年の第2期調査の結果報告書によれば、放射線業務従事者集団(解析対象者約12万 男性に限定)では、全死困の標準化死亡比(SMR)は0.94、悪性腫瘍以外の死亡は0.86と全国男性集団と比べて有意に低いことがわかった。
全部位の悪性腫瘍ではSMR0.98で、全国水準と変わらなかった。
部位別に見ても、原子力施設で特に増えている癌はみつからなかった。
}さらに累積被ばく線量で従事者を群別して、線量が増えると死亡が増えるかという内部比較を行っている。
線量が多い群では、全死因、外因死(交通事故などによる苑亡)が増えていることがわかった。
全悪性腫瘍では解析対象の選別条件などを変えると結果は一定しない。
部位別では食道癌で、線量との関連が疑われている。
しかし生活習慣(飲酒、喫煙などが)、低線量群と高線量群ではかなりの違いがあり、交絡因子として作用している可能性もある。
3)口演発表:F01
演題:VDT作棄後の眼周囲温熱による調節力および近方視力ヘの影響
発表者:東京慈恵会医科大学眼科学教室1、東京歯科大学眼科教室2、花王株式会杜3
高橋洋子1、坪田一男2、井垣通人3
目的:
技術革新に伴うOA化によって職場環境の変化、つまり様々な業種においてVDT作業が必須となってきているが、VDT作業後の眼精疲労や調節力障害に対する有益な改善方法は少ない。
今回我々は眼周囲を湿熱により温めることにより調節力および近方視力が改善するか否かについて検討し、眼周囲温熱療法の有用法について考察したので報告する。
4)口演発表F102
演題:VDT健診における有所見者の精密検査報告(第一報)
発表者:聖隷健康診断センタ1、藤田保健衛生大学医学部衛生学教室2
内野明日香1、武藤繁貴2、谷脇弘茂1
はじめに
当センタでは、新VDT作業ガイドラインを踏まえ、平成15年4月より新たな精密検査を導入した。今回は4月から9月までに行ったVDT精密対象者の傾向について報告する。
5)口演発表:F103
タイトル:近視眼を有する高度コンピュータ使用者と緑内障性視野障害の関連一G1aucoma Screening
Projectの結果より一
発表者:東邦大学医学部衛生学教室1、東京慈恵会医科大学眼科学教室2、北里大学医学部大学院産業精神保健3、目立健康管理センタ4、こうかん会つるみ保健センタ5、新日鐵君津6
立道昌幸1、中野匡2、田中克俊3、林剛司4、廣尚典5、宮本俊明6、杉岡稔1
目的
これまで、コンピュータ使用歴(VDT業務を含む)と視野障害について大規模に調査されたことはない。集団検診に使用できる精度の高い視野計がないのがその一因であった。
そこで、我々は、Frequency Doub1ing Technology (FDT) 視野計の精度分析を行うとともに、FDT視野計を用いた視野異常に対する集団検診への応用方法を考案し、有用であることを報告してきた (Glaucoma Screening Project) 。
今回は、FDT視野計を用いた大規模な疫学調査を実施し、充分なサンプルサイズでコンピュータ使用歴と視野障害の関係について検討した。また、コンピュータ使用歴に関連する視野障害の原因疾患についても検討した。
6)口演発表:F104
タイトル;交互視を伴うデータ入力型作業が視機能に及ぼす影響
発表者:産医大 生情研1、産医大 産生研 人問工学2、
橋本正浩1、泉博之2、笠松慶子2、鈴木秀樹2、草野華代2、神代雅晴2
はじめに
本研究は、大型スクリーン情報呈示に伴って交互視を要求されるデータ入力型作業が視機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
本報告では、特に、視機能への影響を瞬目、調節機能、ならびに自覚症状の観点から実験的に検討した。
7)口演発表:F104
タイトル:交互視を伴うデータ入力型作業が視機能に及ぼす影響
発表者:産医大 生情研1、産医大 産生研 人間工学2
橋本正浩1、泉博之2、笠松慶子2、鈴木秀樹2、草野華代2、神代雅晴2
はじめに
本研究は、大型スクリーン情報呈示に伴って交互視を要求されるデータ入力型作業が視機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
本報告では、特に、視機能への影響を瞬目、調節機能、ならびに自覚症状の観点から実験的に検討した。
8)口演発表:F105
タイトル:大画面ディスブレイと通常サイズディスプレイを併用したVDT作集における作業負担について
発表者:産業医科大学人間工学研究室1、産業医科大学生体情報研究センタ2
泉博之1、笠松慶子1、橋本正浩2、草野華代1、鈴木秀樹1、神代雅晴1
はじめに
交通機関の運行管制や警察の緊急指令センタなどにおける複数の作業者問で惰報共有をする必要がある協業作業においては、大画面ディスプレイの使用が有効である。
このような場合、個人作業用のディスプレイと大画面ディスプレイを併用するのが一般的であり、2つのディスプレイを交互視することによる作業負担の増加が懸念される。
本研究では、単画面使用作業を対照条件として、2画面併用作業時の作業負担について検討した。
9)口演発表:F106
タイトル:大型スクリーンを使用したVDT作業における脳活動の変化について
発表者:産業医科大学人間工学研究室1、産業医科大学生体情報研究センタ2
笠松慶子1、泉博之1、橋本正浩2、草野華代1、鈴木秀樹1、神代雅晴1
はじめに
交通,電力等の監視制御システムにおいて大型スクリーンが多く使用されている。
本研究では、大型スクリーンに呈示された情報に基づいたVDT作業が生体機能に及ぼす影響を検討することを目的とし、大型スクリーンと通常のディスプレイを用いた2画面併用条件と通常ディスプレイのみを用いた単画面条件とにおいて比較検討した。
本報告では、特に前頭部における大脳皮質活動水準の変動を実験的に調べた。
10)口演発表: F107
タイトル:VDT作集に伴う精神的疲労と電磁界との関連
発表者:産業医科大学産業保健学部1、産業医科大学産業病態研究所2、産業医科大学産業医実務研修センタ3
石原逸子1、真嶋由貴恵1、生嶋美春1、堀川淳子1、原賀美紀1、川本利恵子1、村瀬千春1、筒井保博2、川島正敏2、葛西宏2、田代拓3、山崎小由美1
【はじめに】
WHOや産業衛生学会勧告値では、VDT機器からの電磁場(50〜60Hz超低周波電磁場:extremely low Frequency magnetic Field 以下EMF)の健康影響は、間題のないレベルである。
しかし、EMF影響下での人体内部の誘導電流の発生とそれによる筋肉細胞や神経細胞への刺激作用は見逃せない現象である。そこで、本研究は、VDT作業に伴う精神的疲労とEMF影響について明らかにすることを目的とした。
【まとめ】
VDT作業中のEMFの生体影響は、1時問30分の入力作業前後でのPOMS、「自覚症状調べ」「生物学的指標」において有意な変化は認められなかった。
しかし、入力作業自体に伴う気分の変調,自覚症状得点及び尿中の8-OH-dG量の上昇を認めた。
これらにより、短時閻VDT作業による精神的疲労(感)には、入力作業自体の影響が強いことが示唆された。
11)口演発表:F108
タイトル:ノートパソコンの使い方に関する提案
発表者:日本大学院理工学研究科医療福祉工学専攻1、フィリピン労働安全衛生センタ2、産業医学総合研究所3
城内博1、Villanueva Maria Beatriz 2、外山みどり2、斉藤進3
表示画面とキーボードが一体である等のノートパソコンの特徴から来る人間工学的な間題については以前から指摘され、目本人間工学会では「ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン」を1998年に出している。
ここでは、ガイドラインに記載されているノートPCに関連した事項(作業に適した機器、外付け入力機器、マウスの使用、テンキー入カ機器の使用)以外で、事務所でノートバソコンを導入し、使用する場合に考慮すべき具体的な事項を提案する。
12)口演発表:F109
タイトル:生体情報によるVDT(Visual Disp1ayTerminals)作業時のストレス評価(第1報)一皮膚表面温度とストレスについて一
発表者:産業医科大学産業医実務研修センタ1、早稲田大学大学院情報生産システム研究科2、
八谷百合子1、藤崎丈詞1、内田和彦1、大貝晴俊2、織田進1、森晃爾1
はじめに
近年、IT技術の急速な進歩により職場におけるVDT作業が時間、量ともに増加し、それに伴う精神的・身体的な疲労を訴える作業者が増加している。
今回、VDT作業時における精神的・身体的なストレス評価の指標のひとつとして皮膚表面温度(額部・鼻部)を測定し、その評価を試みたので報告する。
13)口演発表:F110
タイトル:小・中・高等学校教員のコンピュータ便用状況
発表者:独立行政法人産業医学総合研究所1、目本大学大学院理工学研究科2
外山みどり1、岩切一幸1、城内博2、斉藤進1
【はじめに】
小、中、高等学校の教員のコンピュータ使用状況の把握を目的としたアンケート調査を筆者らが2000年に実施してから、既に3年が経過した。現在ではコンピュータは学校にひととおり行き渡り、「情報」に関する必須科目が新設され、授業が始まっている。
現時点でのコンピュータ使用状況およびこの3年問に生じた変化を把握することを目的として、再度アンケート調査を実施した。
14)口演発表:F111
タイトル:VDT健診について(第1報)〜ヤマハ(株)グループ会社全体での試みとヤマハグループ露連会社1社での健診結果の報告と解析〜
発表者:ヤマハ株式会杜 丸山道男
目的:
タッチパネルを用いた新しい方式のVDT健診の紹介およびヤマハグループ関連会社1社における健診結果についての簡単な報告・解析を行うことを目的とする。
15)口演発表:F112
タイトル:VDT作業従事者の作業時間と自覚症状の関連についての検討
発表者:杏林大学医学部衛生学公衆衛生学教室1、杏林大学保健学部養護教育2
照屋浩司1、武田伸郎1、岡本博照1、深澤進次1、市川佳居1、公井知子1、大嶺智子2、角田透1
はじめに
某職域を対象としてVDT作業従事者の作業時聞と自覚症状の関連についての調査を実施したので報告する。
16)口演:E304
タイトル:電磁場曝露の脳腫瘍誘発性の検討(第3報)一1nvivo新生仔ラットアストロサイト小核試験を用いて一
発表者:東京慈恵会医科大学環境保健医学講座 宮越雄一 鈴木勇司、清水英佑
方法
(1)電磁場曝露装置は、生物実験用電磁場コイル(東京電子)、バイポーラ電源(高砂製作所)及びfunction
generator(KENWOOD)を用いた。(2)小核試験3日齢のSD系雄性ラットにCDDP2.5mg/kgを1回腹腔内投与後、周波数50Hzの電磁場(0、1、5、7.5、10mT)を72時間連続曝露した。
電磁場曝露終了後、全脳を摘出し、トリプシン、DNaseにて処理後、5%FBS加MEM培養液中にて96時間培養した。標本作製方法は、細胞を固定後,抗glia1 fibrillary acid protein(GFAP)抗体とacridine orangeの二重染色を施行し,アストロサイトの同定と小核の確認を同時に行った。
標本観察には蛍光顕微鏡を用いて,小核を有するアストロサイトの頻度を%で表した。
結果および考察
Fig.1の電磁場のdose-response studyでは、7.5mT及び10mTの電磁場とCDDPの複合曝露では、CDDP単独曝露(0mT、sham
exposure)に比べて有意に小核頻度が増加した。
今後は、電磁場曝露条件(周波数、曝露時間、ラットの日齢等)や、電磁場曝露と脳腫瘍誘発物質等の複合曝露などについて検討していく予定である。
本研究の一部は文部科学省・科学研究費補助金によった。(注:図は割愛)
17)口演:E305
タイトル:定常磁場と変動磁場の複合曝露に関する変異原性の評価
発表者:財団法人鉄道総合技術研究所環境工学研究部生物工学研究室
池畑政輝、金原和秀
【はじめに】
本研究では、Ames Testおよび酵母を用いた変異原性検出系により、定常磁場5T(テスラ、lT=10,O00Gauss)と50Hz,1mTの磁場が複合する条件での変異原性を評価した。
【結果】
Ames Testにおいては、複合磁場曝露の変異原性は見出されなかった。
一方、酵母変異原性試験では、点突然変異の頻度には変化が無かったが、遺伝子変換頻度は、XD83株において曝露群で対照群の1.3倍程度わずかに増加した。
我々は、これまでに定常強磁場単独曝露により、今回の結果と同様に遺伝子変換や染色体組換え頻度が増加することを明らかにしている。
したがって、今回観察された複合磁場曝露による遺伝子変換頻度の上昇は、定常強磁場の影響であることが考えられる。
18)ポスター展示:P3062
テーマ:VDT作業とドライアイ
発表者:亀田総合病院眼科
渡邊夏那子、寺内直毅、曽我辺奈穂、佐生亜希子1、鎌田奏子、堀田一樹
【目的】
VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(厚生労働省発表平成14年4月)には照明及び採光、グレアの防止などの作業環境管理と眼疲労に主眼を置いた眼科的検査(視力検査、屈折検査、眼位検査、調節機能検査)について詳細な指標が示されている。
しかし、眼乾燥症(ドライアイ)については、「VDT作業により症状が発現する可能性があるため、問診において眼乾燥感を訴える場合は、必要に応じて、専門医の受診を指導する。」とするにとどまっている。
今回我々はVDT作業に伴う眼症状に対して眼科医による検査と管理のもとにドライアイ治療を行い、その自覚症状の変化について調査し、若干の知見を得たので報告する、
19)ポスター展示:P1064
タイトル:急性的VDT作業負荷の心身に及ぼす影暮
発表者:藤田保健衛生大学短期大学臨床化学
寺平良治1、川井薫1、石川浩章1、伊藤康宏1
【はじめに】
コンビュータ作業の心身に及ぼす影響を知ることを目的として、健常人にVDT(Visua1 Display Temina1)作業を負荷する実験的急性コンピュータ作業ストレスモデルを考案し、その精神・心理機能、免疫機能、内分泌機能に及ぼす影響を確認するために、ストレス負荷前後のPOMS試験スコア、血中NK細胞活性および血漿コルチゾール濃度の変動について検討した。
20)ポスター展示:P3045
タイトル:業務用及び家庭用電磁調理器の電磁場調査
発表者:産業医科大学産業医実務研修センタ1、小倉ターミナルビル(株)2
田代拓1、内海和久2、栗田昌子1、織田進1、森晃爾1
【はじめに】
近年、調理器具として電磁調理器の使用が急激に増加している。その理由の一つに電磁調理器の安全性があると思われるが、電磁調理器より発生する電磁場の危険性を報告する情報も多く見られ労働者にも不安が発生する。
それらの情報の発信源は電磁調理器普及に利害がからむ機関からの惰報が多く、学術的情報は少ない。
今回、業務用電磁調理器及び家庭用電磁調理器の電磁場を測定する機会を得たので、公平な立場より電磁調理器から発生する電磁場について調査することを目的とし調査を実施した。
【結果】
1.磁場および電場の測定値は、発生源からの距離に従い指数関数的に減少した (表1.単位作業場所1の距離の差による測定値)。
2.電磁調理器使用台数を1台から3台6台と増加しても磁場や電場の値は、和や積と いった上昇をしなかった。
3.電磁調理器を6台使用した場合の単位作業場所1の作業場の値及び場の平均値は 磁場0.14μT、電場5.46v/mであった(表2.)。
4.電磁調理器上で使用する鍋の直径を大きくすると、電磁場の測定値は比較的 小さくなった。
5.業務用電磁調理器の使用時間は、家庭用電磁調理器の使用時間の約2倍以上 であった。
6.電磁場の測定値を目本産業衛生学会の許容基準と比較すると、電磁調理器前面 0pの位置でも基準値より低い値であった。
【考察】業務用電磁調理器の電磁場測定値は、目本産業衛生学会の許容基準より低いものであり、労働者は安心して業務ができると思われた。
表1. 5kWを6台使用した場合の電磁場
|
0cm |
10cm |
30cm |
50cm |
μT |
6.75 |
2.05 |
0.57 |
0.26 |
v/m |
114 |
42.0 |
14.4 |
8.25 |
表2. 5kwを6台使用した場合の周辺電磁場
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
平均値 |
μT |
0.05 |
0.22 |
0.07 |
0.05 |
0.33 |
0.06 |
0.22 |
0.09 |
0.14 |
v/m |
3.22 |
9.10 |
4.80 |
2.34 |
6.89 |
2.23 |
11.5 |
3.62 |
5.46 |
注)BEMSJのコメント:
周波数分析を行なっていないので、単純にこの結論を受け入れてよいか?疑問である。
興味のある方は、予稿集を入手し、全文を読んでください。
作成:2005−5−15
東京・芝の東京プリンスホテルで開催。 電磁波やVDT関連の口演などをリストした。
4月21日(木曜)H会場【VDT】関連のセッション
9:00〜9:48 座長:落合孝則 (富士通 健康管理センタ)
*H101 VDT関連用語の適切な使用 ―「眼精疲労」と「テクノストレス」― VDT健康影響関連情報の公開 (1)
山室栄三:(社)電子情報技術産業協会 EMF専門委員会
概要:今、職場ではほぼ全員がVDT 作業に従事している。VDT 作業者の中には健康への影響に関して漠然とした不安を抱いている人がいるため、適切な対応と正しい情報の開示が必要であるが、中には不適切なケースも見られる。VDT 作業に関連する健康影響等を検討している当委員会は、自他共に情報公開されている各種の解説や論文、またホーム頁上に記載されている関連用語の使用法に混同や誤りがあるケースが多いことに気がついた。そこで、以下の調査を行い、当委員会として使用方法の提案をすることとした。
*H102 VDT関連情報公開の推進―WHO201・ICNIRPなど文書の翻訳とウェブ公開― VDT健康影響関連情報の公開 (2)
横田 等:(社)電子情報技術産業協会 EMF専門委員会
概要:職場において表示装置(VDT)を使用した作業が普及しだした1970 年代、VDT 作業者の中に様々な愁訴があり、VDT から漏洩する電磁波が原因ではないかと疑われた。
その後の研究によって次第に明らかになってきており、VDT から漏洩する電磁波が健康に影響を与えないことが判明している。
しかし、極低周波の電磁界により小児白血病の発症リスクが2 倍になるという発表等を受けて、再びVDTから漏洩する電磁波による健康影響が話題になってきた。
これらの情報の中には公的な機関が作成したウェブサイトにもかかわらず、誤解を招く内容のものも散見され、正確な情報がVDT を利用するユーザに届いていないのが現状である。
当委員会では活動の一環として、影響力があり、有用な情報あるいは誤って引用されている情報などを調査し、正確に情報提供できるよう調査活動してきたのでその内容を報告する。
*H103 VDT機器の適切な使用―眼の疲労を少なくするためのフリッカ防止等― VDT健康影響関連情報の公開 (3)
山崎了司:(社)電子情報技術産業協会 EMF専門委員会
概要:パーソナルコンピュータの急速な普及にともない、多くの人が職場でVDT 作業に従事するようになってきており、厚生労働省や、当委員会参加の会員会社などの調査ではVDT 作業者に各種の自覚症状があることが報告されている。
これらの自覚症状を低減するために、VDT 作業時間の管理、VDT 機器周辺の作業環境の整備だけではなく、特に機器の諸設定が作業者に適切ではない状態もあるので、VDT 機器の適切な調節も必要となる。
より快適にVDT 作業を行なうために機器設定の各種項目等を調査し、その対策をまとめ、公開したので報告する。
*H104 適切な電磁界の測定・評価―不適切な測定による悪影響― VDT健康影響関連情報の公開(4)
三浦正悦:(社)電子情報技術産業協会 EMF専門委員会
概要:電磁界による健康影響の関心の高まりから市販されている簡易的な電磁界測定器でVDT 等からの漏洩電磁界を測定し、評価している場合がある。測定方法等が標準化されていないため、電磁界の測定・評価には不適切と思われる測定器(検出器)も存在することがわかり、その実情等を調査したので報告する。
9:48〜10:36 座長:山室栄三
(日本アイ・ビー・エム)
*H105 VDT作業の種類別作業時間と身体症状の関連 杉村久理:産業医科大学 産業生態科学研究所 人間工学研究室
*H106 ソフト開発企業のVDT作業者における自覚症状〜3年間の年次推移と関連要因〜 関口夏奈子:杏林大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室
*H107 若年女性のVDT使用者におけるドライアイとストレスの関係 鈴木
亮:産業医学総合研究所
*H108 事務系職員におけるVDT作業と不眠との関連−アテネ不眠尺度を用いて 吉岡英治:北海道大学大学院
医学研究科 予防医学講座 公衆衛生学分野
10:36〜11:24 座長:城内 博 (日本大学大学院 理工学研究科 医療・福祉工学専攻)
*H109 生体情報による VDT(Visual
Display Terminals)作業時の疲労評価(第2報) 宮地 卓:産業医科大学 産業医実務研修センター
*H110 急性的VDT作業負荷の心身に及ぼす影響2
―血管内皮機能(%FMD)による評価― 寺平良治:藤田保健衛生大学短期大学
%FMD用いた研究で、同じVDT作業でも、面白い画面を見ている場合は変化がなく、ワープロ作業を行なわせた場合には変化があるなど、心身への影響にはメンタル的な要素があることがわかった。
*H111 拘束型VDT作業者に対する肩こり体操の短期介入効果 筒井隆夫:産業医科大学
産業生態科学研究所 産業保健管理学研究室
*H112 AVタキストスコープを用いた大学生の視覚刺激呈示に対する反応について 鈴江 毅:香川大学医学部
人間社会環境医学講座 衛生・公衆衛生学
D会場 11:00−11:48
*D101 VDT健康診断問診票を活用した職場改善の取り組み 加藤京子:(財)東京都予防医学協会
C会場 15:00−16:00 産業衛生技術フォーラム メインテーマ「社会的責任と産業衛生技術者の役割」の中で
*坂清次「企業の社会的責任と技術者倫理」
安全とは「受け入れのできないリスクがないこと」である。
*山室栄三「社会的責任と産業衛生技術者の役割―外資系企業の立場からー」
「安全」から「安心」を与える方向に転換する必要がある。
*原田泰之「レスポンシブルケアとリスクアセスメント」
化学物質のリスクアセスメントのためのツール「Risk Manager」を作成し、販売中。これには620の物質のデータを含んでいる。
4月22日(金曜)
12:00−13:00 自由集会「VDT作業研究会」 I会場
内容は「個人情報の取り扱い」
F会場 「温熱・地場」に関するセッション
16:12〜16:48 座長:芳原達也(山口大学 医学部 人間環境予防医学)
*F216 異なる水温と手袋使用条件の冷水浸漬検査における手指皮膚温と疼痛について
水津久美子:Department of Hygiene, Yamaguchi University
School of Medicine, Ube 755-8505, Japan
*F217 複合的な電磁環境に関する生物影響の評価 池畑政輝:鉄道総研
環境工学研究部 生物工学研究室
・直流磁場と交流磁場の複合曝露に関する研究を行なった。直流5Tと交流1mTである。
5日間の曝露で影響が見られたが、これは交流磁場の影響ではなく、直流磁場の影響と考えられる。
研究に当たっては、日中の1/10の量の紫外線を陽性コントロールとして用いた。
Q1:曝露時間を長くし、曝露強度を低くした場合は、どうなるか?
A1:確率的に何かが発生しているような曝露では、時間が長ければ影響度の累積はあるかも知れない。今回の試験では直流5Tでは影響が有り、直流1Tでは影響が見られないという場合は、1Tでいくら長い時間の曝露を行なっても、影響の累積はないと考えられる。
Q2:なぜ直流と交流の複合曝露の試験を行なったのか?例えばリニアモータカーでの電磁界曝露を想定した試験なのか?
A2:高圧送電線の磁界と白血病の関係の研究などがあることから、鉄道関連としても研究を行なうことにした。
*F218 業務用及び家庭用電磁調理器の電磁場調査
第2報 ―周波数別電磁場測定及びアンケート結果について―
田代 拓:産業医科大学 産業医実務研修センタ
・周波数帯域ごとに電磁調理器からの磁界を測定した。
・業務用の5kWの電磁調理器では5Hz−2kHzでは0.242μT、5kHz−30kHzでは1.069μTであった。
・家庭用の3kWの電磁調理器では60Hzでは0.788μT、5Hz−2kHzでは0.847μT、5kHz−30kHzでは0.845μTであった。
Q1:測定は男性のみに対して行われているがなぜ?
A1:業務用の測定で、厨房には男性のみであった。
Q2:なぜ電磁調理器の電磁波を研究対象としたのか?
A2:インターネットなどで電磁調理器の電磁波・・・が話題になっており、自宅でも電磁調理器を使用しているので、研究した。
Q3:電磁調理器は学校給食などでも使用されている。曝露はもう少し強いのではないか?
A3:( ) メモ取れず。
これらの発表に関して興味のある方は、日本産業衛生学会 発行「第78回日本産業衛生学会講演集 2005年4月 東京」を読んでください。
参加しなかったのでレジメ集から概要を作成。 電磁波に関連する発表をリストします。
*E201 VDT作業におけるOAフィルタ使用効果 鈴木伸幸 ら 財団法人京都工場保健会、大日本スクリーン製造株式会社
VDT作業に伴う眼精疲労に対してOAフィルタの導入は有効な対策となりえることが示唆された。
ただし、頸肩腕や腰痛などの筋骨格系の訴えに対しての改善効果は期待できないと考えられる。
H304 電磁場曝露の脳腫瘍誘発性の検討(第4報)In vivo新生仔ラットアストロサイト小核試験を用いて 宮越雄一ら 東京慈恵会医科大学環境保健医学講座
今回は電磁場と変異原物質である5-fluorouracil(5FU)またはmitomycin C (MMC)との複合曝露による変異原性の変化を指標に検討した。
3日齢のSD系雄性ラットに被検物質(5FUまたはMMC)を投与後、50Hzの電磁場(10mT)に72時間連続曝露した。
結果:電磁場と5FUの複合曝露では、5FU単独曝露に比べて有意に小核頻度が増加した。
電磁場とMMCの複合曝露ではMMC単独曝露に比べて有意に小核頻度が減少した。
5FUの結果からは、電磁場による化学物質に対する変異原性の増幅作用あるいはpromotion作用が示唆された。
しかし、MMCの結果からは、電磁場による化学物質に対する変異原性の減少が観察された。
これらの結果から、化学物質の染色体異常誘発メカニズムの違いなどにより、電磁場と化学物質の複合曝露による変異原性の変化が異なることが考えられた。
P2101 磁場の染色体異常誘発亢進作用に及ぼすアスコルビン酸の役割 鈴木勇司 ら 東京慈恵会医科大学環境保健医学講座、
活性酸素誘導化学物質(ドキソルビシン;DOX、マイトマイシンC;MMCはO2―を誘導する)による小核形成が静磁場同時曝露により増強されるか、また抗酸化剤のアスコルビン酸(VC)投与により小核誘発が抑制されるかを検討した。
BALB/cマウスにVCを腹腔内投与後に、DOXまたはMMCを腹腔内投与した。
直ちに5T(5テスラ=5万ガウス)の静磁場に24時間曝露した。
結果:DOXおよびMMCによる小核誘発は、静磁場曝露により増強された。
P2102 複数の電磁場の同時曝露による生体影響の評価 池畑政輝ら 鉄道総研環境工学部生物工学
複合的な電磁場曝露のモデルとして、定常磁場5T(テスラ、1T=10,000Gauss)および50Hz、1mTの磁場が複合する条件について、細胞の増殖や分化への影響、ならびに変異原性の有無を検討した。
結果。細胞の増殖ならびにNeurite Outgrowth双方とも複合磁場曝露による影響は観察されなかった。
一方、変異原性に関しては、Ames Testなどにより検出する点突然変異の頻度には変化が無かったが、出芽酵母を用いて検出する遺伝子変換(組換え)頻度については、曝露群の頻度は対照群の1.3倍程度とわずかではあるが増加する傾向を示した。
これまでの我々の研究では、定常強磁場単独曝露により今回の結果と同様な遺伝子変換や染色体組換え頻度が増加することを出芽酵母ならびにショウジョウバエを用いて報告している。
したがって、今回観察された複合磁場曝露による遺伝子変換頻度の上昇は、定常強磁場の影響であることが考えられる。
作成:2007−4−28
2007年4月25日−27日に大阪で産業衛生学会が開催されました。
三浦は以下に記すVDT作業研究会に出席するために27日の午後だけ参加しましたので、電磁波やVDT作業に関連する口演・講演・ポスター展示にはほとんど参加していません。
レジメ集の中から、電磁波とVDTに関連しそうな内容をピックアップしました。
1)特別講演「原爆被爆者のコホート研究」 大久保利晃 (財団法人放射線影響研究所)
1947 年に設立されたABCC(Atomic Bomb
Casualty Commission)が作成した被爆者のコホートを引継ぎ、放射線影響研究所(以下単に放影研)は、1975 年以来追跡研究を続けている。
2)VDT作業研究会
メインテーマ「VDT作業をめぐる最近の話題」として以下の3件の発表があった。司会は落合さん
・コールセンターの労働とその健康への影響 - 内外の研究動向と今後の課題 -毛利 一平(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
・表示装置を含むパソコン機器からの電磁波の話題 三浦 正悦(電磁波バイオエフェクトコンサルタント)
・テレワークの問題 落合 孝則(東京工業大学イノベーションマネジメント研究科)
三浦の発表内容のレジメは、 こちらへ
3)シンポジウム8 「健康リスクとリスクコミュニケーション」
これは市民公開講座として開催、以下の3件の講演があった。
*「リスト社会に生きる知恵: 鈴木 晶子(京都大学大学院教育学研究科、日本学術会議連携会員)
リスクはマネジメントすべきもの:リスクは本来、自らの利益を得ることと引き換えに被る将来的な損害のことを意味していた。人間の生活、人生そのものは、常にこうした構造をもつという意味で、リスクはゼロにできるものではなく、マネジメントするべきものである。
*「リスクの実体とリスクの受容:放射線はどれほど危険か」 丹羽 太貫(京都大学放射線生物研究センター、日本学術会議連携会員)
この講演では、放射線によるリスク発症についての分子機構研究の成果を紹介し、つぎに放射線発がんなどのリスクの実体に触れ、ついで現行の放射線防護の考え方を説明したい。
*「曝露と健康リスク」 吉村 健清(福岡県保健環境研究所、日本学術会議連携会員)
曝露の測定でいろいろな要因の一つ一つについて、個人曝露量の測定は一般には困難である。
4)一般口演から、「人間工学・VDT・筋骨格系障害」に関するセッションでは以下のテーマで口演が行われた。
・「介護労働者の筋骨格系障害に関する実態調査 第1報 〜 安全衛生体制と福祉用具導入状況および筋骨格系自覚症状の訴え率
〜」 北原 照代(滋賀医科大学社会医学講座予防医学部門)
・「介護労働者の筋骨格系障害に関する実態調査 第2報 〜 事業所種類別、職種別の筋骨格系自覚症状および疾病休業
〜」 服部 真(城北病院・健康支援センター金沢)
・移乗介助におけるリフト使用の効果 - 介護者の習熟度を考慮したリフト移乗の有効性検証 - 」冨岡 公子(大阪府立公衆衛生研究所生活衛生課)
・長時間座作業時の自動座面傾動椅子の効果に関する検討 第1報 -
頚肩痛および腰痛に対する効果 - 」 宇土 博(広島文教女子大学人間科学部人間福祉学科)
・腰痛多発業種における作業姿勢特性と腰痛に関して - 製造業と運輸交通業について - 」 浅田 史成(独立行政法人労働者健康福祉機構大阪産業保健推進センタ)
・チームリフティングでの荷物取り扱い作業における荷物重心位置の影響」 瀬尾 明彦(首都大学東京大学院経営システムデザイン専修)
・「パートタイムの保育助手に発症した頸肩腕障害の一例」 中村 賢治(大阪社会医学研究所)
・「頸肩腕障害検診における症度判定と自覚症状、機能検査、筋触診所見との関係 垰田 和史(滋賀医科大学社会医学講座予防医学分野)
・「眼周囲湿熱の老視年齢および長期使用に対する効果」高橋 洋子(同志社大学工学部アンチエイジングリサーチセンタ)
眼周囲湿熱療法は、中高年だけでなく、老視年齢の近方視力障害に対しても効果があること、また就寝時に長期的に使用する事の調節力改善効果が確かめられた。
5)一般口演の「物理的環境と健康」セッションでは以下の1件の電磁波関連の口演があった。
*「電磁場曝露の脳腫瘍誘発性の検討(第5報)- In vivo新生仔ラットアストロサイト小核試験およびコメットアッセイ法を用いて - 」宮越 雄一(東京慈恵会医科大学環境保健医学講座)
50Hzの電磁場と化学物質(VCR,BLM またはDMBA)の複合曝露では、化学物質単独曝露に比べて小核頻度が増加した。
(BEMSJ注:レジメでは曝露磁界強度が記述されていない。レジメのグラフグラフには磁界10mTという記述がある。)
6)ポスター展示で「VDT」のセッションでは以下の発表があった。
P1027 「立位・座位選択可能型VDT作業方式の局所筋負担と作業パフォーマンス」
榎原 毅(名古屋市立大学・院・医 労働・生活・環境保健学)
VDT 作業は座位姿勢による作業方式が主流であるが、近年では北欧・北米を中心に立位・座位選択可能型VDT 作業方式(Sit-stand 方式) が普及しつつある。
P1028 「組版オペレーターの作業環境に関する調査」 米原 澄子(十一房印刷工業株式会社)
作業環境の整備として、座面の高低及び肘掛の高低が調節可能な椅子を設備した。また、モニタの高低調節・椅子の高低調節についての教育を行った。モニタについては19 インチのものを2 面並べて使用する必要があるため、設置位置については検討が必要である。
P1029 「学校給食調理員の頸肩腕障害に関する検討」 田中加奈子(千鳥橋病院)
P1030 「中小規模事業場におけるVDT作業の実態と作業習熟度を考慮しての検討」 松下 哲大(産業医科大学産業生態科学研究所作業病態学研究室)
作業者は眼および筋骨格系などの何らかの自覚症状を有しているものがほとんどであり、今までの調査報告と同様の結果が示された。
P1031 「全社員を対象にイントラネットを用いて行った、VDT作業に関する労働衛生管理(1)」 難波 克行(富士ゼロックス株式会社)
当社ではイントラネットを用いたe ラーニング・システムを用いて、2004 年度より、全国の従業員に対して、VDT 作業に関する労働衛生管理を行っている。
P1032 「全社員を対象にイントラネットを用いて行った、VDT作業に関する労働衛生管理(2)」 尾崎 真一(富士ゼロックス株式会社)
自覚症状を持つ者の割合:何らかの症状を自覚している者は、2004 年度では83%、2005 年度では93%であった。
P1033 「全社員を対象にイントラネットを用いて行った、VDT作業に関する労働衛生管理(3)」 橋本 正敏(富士ゼロックス株式会社)
当社ではCRT から液晶ディスプレイへの置き換えがほぼ完了しており、作業姿勢の問題は大きく改善している。足下に荷物があるために、ねじれ姿勢で作業するケースが散見される。
P1034 「VDT作業におけるコントラスト感度と自覚症状・職業性ストレスに関する検討」 山田 美紀(金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻)
7)ポスター展示「その他の疾患」のセッションで以下の展示があった。
P2049 「Microchannel array flow analyzer(血液さらさら)の測定意義」
立道 昌幸(昭和大学医学部衛生学)
近年、生活習慣是正のきっかけとして、Microchannel array flow
analyzer(MC-FAN) での測定(別名:血液さらさら)値を用いる企業ならびに健保組合が増えている。しかし、この測定値のもつ臨床的意義については検討が不十分である。
結果、本測定法におけるMC-FAN値は喫煙と関連することが認められたが、他の動脈硬化に関係する指標には有意な関係を認めなかった。
8)ポスター展示「物理環境と健康」のセッションで電磁波と関連する3件の発表があった。
P2089 「酵母細胞を用いた電磁環境の生物影響の評価」 吉江 幸子(財団法人鉄道総合技術研究所環境工学研究部生物工学研究室)
周波数2.45GHzでの研究。本研究で曝露した電磁波のSAR 値は、電波防護指針の局所吸収指針の基準値の25 倍程度であることを考慮すると、一般環境で曝露する可能性のある強度での電磁波の影響は無いか、あるとしても大変弱いと考えられる。
P2090 「中間周波磁界の変異原性評価」 池畑 政輝(鉄道総研環境工学部生物工学)
中間周波帯(300Hz 〜 10MHz)の電磁界については、種々の機器・装置が社会に導入されているものの、依然として生物影響評価をおこなうのに十分な実験データは蓄積されていない。
本研究では、中間周波の健康影響に関する基礎的な知見を得るため、特に変異原性に着目して評価をおこなった。
周波数2および20kHz・磁界強度最大約800μT(ICNIRPガイドラインの一般公衆の参考レベル6.25μTに対して約120 倍)とした。
結果は対照群と磁界曝露群の間に差異がある傾向は見られず、統計的にも有意な差は認められなかった。
P2091 「磁場の染色体異常誘発亢進作用に及ぼすアスコルビン酸の役割(2)」 鈴木 勇司(慈恵医大環境保健医学)
静磁場曝露(5テスラ)が変異原物質由来活性酸素誘導の引き金となり、小核誘発を助長することを示唆する。
ASによる持続的な抗酸化作用により、磁場と変異原物質による小核誘発亢進作用を抑制すると考える。
記:2009−4−19
産衛学会が2008年6月24日から札幌で開催されました。
プログラム集から、電磁波、VDT作業に関連する事項を抜きましたた。
*.VDT作業研究会 6月25日(水) O会場 (106会議室) 18:00〜20:00
テーマ:眼周囲蒸気温熱療法について
演者
1)「調査報告:眼周囲蒸気温熱は効果的か?」
井垣 通人(花王株式会社パーソナルヘルスケア研究所)
2)「特別講演:T眼症の治療戦略‐視覚機能からみた予防法と補完代替療法」
原 直人(神奈川歯科大学眼科)
*一般口演
演題のリストからみて、関連する一般講演は見つからなかった。
*ポスター展示の中に関連する演題がある。
「磁場の染色体異常誘発亢進作用に及ぼすメカニズム(3)」
研究者:鈴木 勇司ら
静磁場曝露が変異原物質由来活性酸素誘導の引き金となり小核誘発を助長することを示唆する。
今年度は、磁場が8-OHdGを誘導するのかどうかを検討した。
結果1)5Tの静磁場曝露後24時間目に、骨髄細胞中8-OHdGが有意に上昇した。
2)X線曝露後24時間目に、骨髄細胞中8-OHdGが有意に上昇した。
「医療従事者に於ける電離放射線被ばくのリスク評価(第一報)」
研究者: 木村 真三ら
これまで、医療従事者の年間被ばく線量は2006年時点における長瀬ランダウアの調査では、測定人数89,232人中、平均線量当量0.4ll msV/y、千代田テクノルでは、測定人数143,464人中、平均線量当量0.27 msV/yとなっている。
今回、我々は病院に於ける電離放射線対策プログラムとして3年間に渡る調査を開始した。そこで得られた結果を随時報告する。
結果:関東地区のA病院と関西地区のB病院について得られたデータを解析すると、整形外科学、循環器内科学上の医療行為においては、高い被ばく線量が認められた。
また、これらの医療行為を受ける患者の体格等の違いによっても高い被ばく線量が認められた。
「定常強磁場曝露によるSOD欠損大腸菌の突然変異誘発への影響」
研究者:吉江 幸子
近年の研究により,磁場曝露の生体影響の機序のひとつとして,酸化ストレスの付与や活性酸素種の寿命への効果を示唆する報告等がなされている。
以上より,本研究では,Superoxide dismutase (SOD)遺伝子を欠損する大腸菌を用いて,磁場の変異原性を評価することを目的とした。
結果:5,10,13Tの定常磁場による変異原性について検討した結果,生菌数については,野性株に比ペ,QC77 株の方が磁場の強度に関わらず,若干低い傾向にあったものの,遺伝子変異頻度については,野生株とQC774株では,ほとんど差は見られなかった。
さらに,曝露した磁東密度の違いによる差も観察されなかった。
以上の結果より,本研究で用いた実験系では,SODの有無に関わらず,13Tまでの強磁場の変異原性はほとんど認められないことがわかった。
これらの結果は,ICNIRPの一般環境における静磁場ガイドライン値の数十倍高い磁東密度でも明らかな変異原性を示さないことを示唆する。
「静磁場と極低周波変動磁場の複合曝露による変異原性の評価」
研究者: 池畑 政輝
Ames Test および酵母を用いた変異原性検出系により静磁場5Tと変動磁場50Hz、1mTの磁場が複合する条件で変異原性を検討し,変異原性を示さないことを報告してきた。
本研究では,静磁場と変動磁場の強度ならびに強度比を変えた組み合わせによる変異原性について同様の検討を行った。
結果:複合磁場曝露の全ての条件において,曝露群の復帰変異コロニー数はそれぞれの試験対照群と有意な差を示さず,変異原性は認められなかった。
今回の実験結果から,環境中で見られる磁場強度の数倍〜10倍,また磁場強度の比が環境と同程度の複合磁場曝露も変異原性を示さないことが明らかになった。
記:2009−4−19
2009年5月20日から福岡で日本産業衛生学会が開催されます。
そのレジメが届いています。
私は参加する予定はありませんが、このレジメの中から、電磁波に関連する口演などを抜粋して紹介します。
*一般口演
以下の口演が予定されています。
O208「低周波音評価時に振動感覚を考慮すべき周波数・音圧レベルについて- 「頭部の振動感覚」閾値の測定結果から -」
研究者:高橋 幸雄
低周波音による心理的影響では、振動感覚が重要な因子となっていることが知られているが、その影響を考慮すべき周波数・音圧レベルについては、不明の点が残されている。
今回は、部位を頭部に限定して低周波音による「頭部の振動感覚」の閾値を測定するとともに、それに対する聴覚の影響も考察し、振動感覚の影響を考慮すべき周波数・音圧レベルについて検討した。
結果:「頭部の振動感覚」閾値は聴覚閾値よりも5〜15dB 程度高く、その差は周波数が高くなるにつれて大きくなる傾向があった。
これらの結果から、低周波音による振動感覚の影響は、周波数にも依存するが、聴覚閾値より5〜15dB 程度高い音圧レベルから考慮すれば十分と考えられた。
O213「医療従事者に於ける電離放射線被ばくのリスク評価(第二報)−Interventional Radiology
(IVR)治療時における被ばく線量推定−」
研究者:木村 真三ら
昨年に引き続き、我々は病院に於ける電離放射線対策プログラムを実行している。
循環器内科では、Interventional Radiology (IVR)と呼ばれる、X線透視下でのカテーテル挿入により病気を治す治療法が広く行われている。
その一方、IVRではX線透視下での術式のため、患者に急性放射線障害を引き起こす事例が報告されており、術者自身も被ばく線量が年間数十mSvを超えるなど放射線被ばくの問題が取りざたされている。
結果:床面から高さ124.4cm における線量がもっとも高く、その他の高さでは、ほぼ同程度であった。
実効線量率は、照射時間40 分で除することで、胸部に相当する124.4cm
表面で60μSv/min、それ以外の部位で45μSv/min 程度であった。
*ポスター展示の部
P1003「磁場の染色体異常誘発亢進作用に及ぼすメカニズム(4)」
研究者:鈴木 勇司ら
我々は職場環境や日常生活環境において磁場と種々の変異原物質に曝露する機会が多い。
これまでに強静磁場に弱いながら小核誘発が認められた。今回は、X線により誘発される小核誘発と8-OHdG をアスコルビン酸により低減できるかを検討した。
結果:1)1Gyのx線を照射後24時間目に、有意に小核誘発頻度と8-OHdG産生が高くなった。
2)1Gyのx線を照射後、直ちに強静磁場を曝露して24時間目の小核誘発頻度と8-OHdG産生は、x線単独照射時よりも高くなった。
3)アスコルビン酸前投与により、x線と強静磁場の複合曝露による小核誘発と8-OHdG産生は抑制された。
P1005「マウスリンフォーマアッセイによる静磁場と極低周波変動磁場の複合曝露の遺伝毒性評価」
研究者:池畑 政輝ら
これまでにAmes Testおよび酵母を用いた変異原性検出系により最大で静磁界5Tと変動磁界50Hz、1mTの磁界が複合して曝露する磁界による変異原性を検討し、磁界の複合に起因した影響は認められないことを報告してきた。
本研究では、マウスリンフォーマ由来の培養細胞を用いた遺伝毒性試験MLAアッセイにより、遺伝毒性についての検討を行うことを目的とした。
結果および考察:複合磁界の条件は、A)静磁界5Tと変動磁界50Hz、1mT、B)静磁界1mTと変動磁界50Hz、0.5mTとした。これまでの予備的な知見では、磁界曝露群と非曝露群の間に変異細胞出現頻度の差は認められていない。一方、陽性対照処理群では対照群と比較して有意に突然変異頻度の上昇と生存率の低下が観察された。
したがって、複合磁界曝露による有意な差は認められない傾向にあるが、現在、更に解析を進めている。
電磁波ではないが、以下の研究結果の発表もある。
P1006「風力発電設備に関する健康影響についての体系的文献レビュー」
研究者:内山鉄朗ら
風力発電が当該地域の環境に重大な影響を及ぼす可能性があるという指摘もあり、バードストライクや景観問題、騒音や低周波音といった人体への健康影響を示唆したものもある。
そこで本調査では、風力発電設備より発生する騒音や低周波音の健康影響について検討した文献の体系的レビューを行い、その関連について疫学的エビデンスを整理することを目的とした。
結果:Eja Pedersen らは、スウェーデンの7 地域の風力タービン近隣住人754 名を対象に、居住環境と騒音についての詳細な質問紙による調査と回答者宅での騒音測定を行いその関係を横断研究にて検討した。
タービンから500mも離れれば、騒音レベルは33-40dB(A)となり、高速道路や工場近辺の騒音レベルと大差ないことが分かった。
騒音の大きさよりも自宅からタービンの見える角度が大きくなるほど、不快感の訴えは増えるという結果もある。
そして、何よりも住人が風力発電設備そのものをどのようにとらえているか(好意的にとらえているのかどうか)ということが、イライラ感や睡眠の質の低下といったことに有意に相関する、と報告している。
一方VAD に関しては、その臨床的特徴(中枢神経障害、心膜肥厚、血管内膜肥厚、呼吸器の障害、消化器の障害など)やLFN;low frequency noise が細胞外マトリックス構造に影響することが発症に起因している、といった内容が記述された文献は複数ある。
考察:風力タービンの、特にLFNに起因する健康影響に明確なエビデンスはなく、今後さらに詳細に研究されることが期待される。
ただ、周辺住民の訴えの多くは、発電設備をどうとらえるかに大きく影響されることも事実であり、周辺住民に対する何らかの優遇措置などで状況が変化することも考えられる。
*シンポジウム・研究会の部
VDT作業研究会で「電磁界のリスク分析」に関する大久保千代次氏の特別講演が予定されている。
記:2010−5−6
2010年5月26日から福井市で開催される総会のプログラムから、電磁波に関する発表を抜粋しました。
以下の3件です。
関心のある方は、レジメ集を入手して読んでください。
P-1-073:中間周波磁界の生物影響評価
池畑 政輝、吉江 幸子、早川 敏雄: 鉄道総研 環境工学研究部 生物工学
【方法】中間周波磁界の変異原性に関する予備的な検討として、V79細胞を用いた小核試験を行った。
曝露には既設の平面型コイルを用いた曝露装置を用い、2、10、20kHzで最大1mTの磁界を曝露した。
【結果および考察】小核試験においては、各周波数における実験を6回以上繰り返し行い、対照群と磁界曝露群の間での小核出現頻度を比較したが、いずれの曝露条件であっても、磁界曝露群と対照群との間で統計学的に有意な差は見られなかった。
これらのことから、本研究で検討した1mT程度の中間周波磁界は、V79細胞において小核を誘導しないことが明らかとなった。
P-1-074:磁場の染色体異常誘発亢進作用に及ぼすメカニズム(5)
鈴木 勇司、池畑 政輝、柳澤 裕之:東京慈恵会医科大学環境保健医学講座
【目的】今回は、X線により誘発される小核誘発と8-OHdGを抗酸化剤により低減できるかを明らかにする。
【方法】
1)BALB/cマウスに1GyのX線を照射し、直ちに5Tの静磁場(東芝)を24時間曝露した。
大腿骨より骨髄細胞を得て、小核試験を実施すると共に、DNAを抽出してnuclease P1にて加水分解後、高感度8-OHdG Check(日本老化制御研究所)にて8-OHdGを測定した。
2)マウスに、アスコルビン酸を投与し、1GyのX線を照射し、直ちに5Tの静磁場を24時間曝露した。
小核誘発能と8-OHdG産生量を検討した。
【結果】
1)1GyのX線を照射後24時間目に、有意に小核誘発頻度と8-OHdG産生が高くなった。
2)1GyのX線を照射後、直ちに強静磁場を曝露して24時間目の小核誘発頻度と8-OHdG産生は、X線単独照射時よりも高くなった。
3)アスコルビン酸投与により、X線と強静磁場の複合曝露による小核誘発と8-OHdG産生を抑制した。
P-1-075:電磁場の変異原性の検討(第6 報)In vivoラット・アストロサイト染色体異常試験を用いて
宮越 雄一、柳澤 裕之:東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座
【目的】今回は電磁場とbleomycin(BLM)の複合曝露について、活性酸素の関与の有無を検討した。
【方法】3日齢のSD系雄性ラットに活性酸素消去剤のtempolをBLM投与前に腹腔内投与した。
BLMを投与後、50Hz・10mTの電磁場に曝露した。
曝露開始後、12時間毎にtempolを投与した。曝露終了後、全脳を摘出した。
小核試験ではtrypsin、DNaseにて処理した後、アストロサイトの同定と小核の確認を同時に行った。
【結果】
電磁場がBLMの小核誘発を有意に増加させた。
Tempol投与により、電磁場曝露群および擬似曝露群の両群とも、BLMによる小核誘発が同程度まで抑制された。
これらの結果から、tempolによりBLMの小核誘発が抑制されたことから、BLMの小核誘発のメカニズムの一部に活性酸素が関与されることが示唆された。
またtempol投与により、電磁場曝露群および擬似曝露群の両群とも、BLMの小核誘発が同程度まで抑制されたことから、電磁場によりBLMの小核誘発を増加させる傾向のメカニズムについても活性酸素が関与されることが考えられた。
作成:2000-4-19 WEB公開:2009−11−6
研究者:B. Kula et al:
タイトル:Effect of ElectroMagnetic Fields on Serum
Bloodchemical Parameters in Steelworkers.
鉄鋼所に働く人の電磁界によるリンパ液の生化学的指標への影響
この報告は、ポーランドの製鉄所で誘導加熱装置の近くで働く人(50Hz電界への曝露 20V/m、 50Hz磁界への曝露 2.4 マイクロテスラ)と事務職などのこうした曝露を受けない人(対照群)の血の成分を比較したものです。
曝露群は勤続年数によって3群に分けてあります。
結果は 勤務の長い人(その分加齢も進んでいる?)は 対照群に比べて 少し各種検査の値に差がある。
研究者はこの変化は電磁界の影響であると 結論を出しています。
BEMSJ注:この論文を読んで 何かすっきりしません。 この程度の電磁界で本当に生体に影響が出るのか、疑問に思います。