*携帯電話イヤホンキットの効果


  トップの頁に戻る

 

このページでは、ハンズフリー、イヤホン-マイクセット、イヤホンキットという用語が使われていますが、すべて、イヤホンキットに統一しました。

1.MWN2000にあったイヤホンキット実験開始の情報 2000

Micro Wave News July/Aug 2000
にあった情報
******************************
The U.K. Consumers’ Association (CA) is doing new tests of radiation exposure from hands-free headsets.
In April the CA warned that headsets can triple the radiation exposure from mobile phones, a claim that was met with widespread skepticism.
This time the tests will include SAR measurements.

Antonia Chitty, a senior CA researcher in London, told Microwave News that the results should be available in the fall.
She declined to say who is doing the measurements.

英国の消費者協会は携帯電話のイヤホンキットによる電磁波曝露の新しいテストを行っている。
この4月、消費者協会は、イヤホンキットは携帯電話からの電磁波曝露を3倍にすると警告し、世界中に懐疑をもたらした。
今回のテストではSARの測定も含めている。

消費者協会の主任研究員Chittyはロンドンで、当紙に、結果は今秋に出ると、語った。
彼女は誰が試験を行っているかについては語らなかった。
**********************************


2.英国の消費者協会刊行「Which?」20004月号に掲載された報告

イヤホンセットの使用は頭部での曝露が3倍になるという記事。

2種のイヤホンセットでテスト
・テストは電波暗室で、一定の電波発信になる様に、送信タワーからの電波発信を模擬し、頭部のSARを測定している。
・詳細な携帯電話・イヤホンセット・SAR測定用頭部ファントムの配列条件はこの雑誌には記載されていない。

 

 

3.イヤホンセットで電磁波曝露増加、2000年の共同通信のニュース

題名   :時: ◎電磁波リスク3倍に=携帯電話のイヤホン使用時−英紙
登録日 :2000/04/04
時事通信ニュース速報

◎電磁波リスク3倍に=携帯電話のイヤホン使用時−英紙
【ロンドン4日時事】4日付の英各紙によると、携帯電話をイヤホンとつないで使うと、電話機を耳に直接当てた場合の3倍の電磁波が頭に伝わるとの調査結果が明らかになった。調査は英消費者組合が実施した。

携帯電話のイヤホンは、受話器を持たずに通話ができる便利さに加え、電磁波のリスクを軽減する目的で購入するユーザも多く、売れ行きを伸ばしている。
しかし、同組合が携帯電話の人気2機種を使って実験したところ、イヤホンのコードがアンテナの役割を果たし、電磁波が直接耳に伝わることがわかった。
携帯電話の電磁波の人体への影響については、脳腫瘍やアルツハイマー病などとの関連性を指摘する研究報告も一部で出ている。
******************    *************

この情報が多分、そのまま毎日新聞200045日朝刊にも掲載された。


4.ネットにあったイヤホンキット使用時の電磁波放射の簡単な実験報告
http://www.assist-pr.com/emf-test.html <リンク切れ>「携帯電話の電磁波測定」にあった情報
2013
年のログ 

耳に当てるイヤホンの先端部に携帯電話の電磁波がイヤホンを伝わって誘導されていることが判る。


5.英国、イヤホンキットは電磁波曝露低減効果があるとする報告 2000

掲載誌:BMJ VOLUME 321   19-26 AUGUST 2000  
タイトル:Hands-free” mobile phones may be safer than the rest
研究者:Roger Dobson

この論文の中に、以下の記述がある。

Using “hands-free” kits with mobile phones seems to be safer than holding these phones directly against the head, according to research commissioned by the Department of Trade and Industry.
英国貿易産業省の委託研究によれば、携帯電話をイヤホンキットと共に使用すると、頭部に直接近づけて使用するより安全であると見られる。

Tests showed that the kits offered “substantially” reduced exposure to radiation, and when ferrite suppressors were added to the earpiece cables, even lower levels of exposure were recorded.
実験によればイヤホンキットは電磁波曝露を実質的に低減でき、そして、イヤホンキットの線材にフェライトを取り付ければ更なる曝露低減となる。

BEMSJ
注:英国貿易産業省の報告書原文は読んでいません。


6.英国、ハンズフリーは携帯のSAR低減に効果があるとする2005年の研究

詳細は不詳。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/4187625.stm
にあった内容  2010-1-4のログ

****************   ****************
Last Updated: Wednesday, 19 January, 2005, 13:21 GMT 

Hands-free kits 'cut radiation'
イヤホンキットは曝露を低減する。

Radiation emissions absorbed by the head from using mobile phones are cut by using hands-free kits, a study says.
The University of York tested mobile phones which operated at two different frequencies and found using a hands-free kit cut emissions by 53%.
The team did not look at whether the phones were harmful but recommended using the kits as a precaution.

携帯電話使用時の頭部が受ける電磁波曝露を、イヤホンキットを使うことによって低減するという研究があった。
ヨーク大学は2機の異なる周波数で動作する携帯電話を使って実験を行い、イヤホンキットは輻射を53%カットすることを見出した。
研究チームは、携帯電話が危険かどうかは見ていないが、予防的にイヤホンキットを使うことを推奨した。
(略)

The University of York researchers, funded by the government, used a model human head containing a liquid, which measured the specific absorption rate (SAR), and a wire-based hands-free kit.
ヨーク大学の研究者らは液体が満たされた人体頭部ファントムを使い、線材でできたイヤホンキットを使って、SARを測定した。

(略)
****************************

BEMSJ
注:ヨーク大学の研究とあるだけで、研究者の名前が判らず、その研究者が書いた論文を探し出すことはできません。


7.アメリカ BIT-BABIK Gらの2003年研究 
イヤホンキットは曝露低減に効果があるという研究

掲載誌::Radiat Res Vol.159, No.4, Page550-557 (2003.04 )
タイトル:Estimation of the SAR in the Human Head and Body due to Radiofrequency Radiation Exposure from Handheld Mobile Phones with Hands-Free Accessories
イヤホンキット付きの携帯移動電話の高周波数放射線曝露によるヒトの頭と身体のSAR評価
研究者:BIT-BABIK G, CHOU C K, (Motorola Florida Res. Lab., Florida)

概要
イヤホンキットが受話器のみの装置と比べてヒト頭部のRFエネルギー吸収を増加するとの報告がある。
しかし、今回の結果は逆である。
精確な評価をするためには国際的に推奨されている基準にしたがった適切な実験モデルと測定器を使用する必要がある。
測定にもちいるヒト・ファントムは頭部だけでなく胴体がなければならない。
イヤホンキットのリード線につながったRFエネルギーは身体で強く減衰する。
Finite-Difference Time-Domain(FDTD)法による数値シミュレーションと小型電場プローブをもちいた実験的測定結果とは一致して, イヤホンキットによるヒト頭部へのRFエネルギー被曝の減少をしめした。

BEMSJ:原書は読んでいません。
しかし、イヤホンキットに誘導する電波はイヤホンキットが人体に近接しているので、大幅にその効果は減衰するので、結果として頭部・耳での電磁波曝露は低減されるという解析結果であると思います。
ただし、この研究では、頭部から離して置かれた携帯電話による設置場所付近(胸、腰など)での電磁波曝露に関しては、たぶん論及していないでしょう。


8.電磁波曝露の低減効果があるとして、イヤホンキットの使用をすすめているイヤホンキットの製造元の報道発表  2011
財形新聞のサイトhttp://www.zaikei.co.jp/releases/11555/に残っていた情報

********************
2011-06-14 12:00:00

携帯電話に発がん性の疑いがあるとする研究を受け、Jabraからのご提案
発表:GN ネットコムジャパン株式会社

コペンハーゲン、デンマーク(201168日) − 世界保健機関(WHO)、国際がん研究機関(IRAC)は、531日に、携帯電話の使用に伴い悪性の脳腫瘍のリスクが高まる根拠として、携帯電話が発する電磁波に発がん性の疑いがあるという見解を示しました。
そのリスクを劇的に軽減する方法として、イヤホンキットを利用することは、実はあまり知られていません。

日焼けを恐れて外出しないのと同様に、電磁波を懸念して携帯電話を使用しないわけにもいきません。
全世界で契約件数が50億を超える今日、携帯電話はコミュニケーション手段として私たちの日常生活の一部となっています。
実は、携帯電話の使用時に、イヤホンキットを介することで、その電磁波照射を1/800に劇的に軽減することができます。

携帯電話から発せられる最大2ワットの照射をBluetooth™イヤホンキットであれば最大0.0025ワットに、有線タイプのヘッドセットであれば、0ワットに低減することが可能です。

革新的なハンズフリー製品で世界をリードするJabraが実施した新しい調査結果によると、潜在的リスクにもかかわらず、日常生活における電磁波を懸念する人はあまりいないことがわかりました。
25%
の回答者が全く気にしないと答え、61%は少し、もしくはある程度は気にすると答えました。
しかし、ワイヤレスのBluetooth™ヘッドセットを使用すれば携帯電話の電磁波照射を軽減できるという科学的事実を提示すると、53%がイヤホンキットを使いたいと回答しています。

Jabra
のモバイル部門上級副社長(SVPAnne Raaen Rasmussenは、「人々は、携帯電話が発する電磁波を気にはしても携帯電話の使用を控えるほどではなく、また、イヤホンキットが電磁波照射を軽減するということも知りません。
Jabra
が、携帯電話から受ける電磁波を軽減したい消費者やそのお子さん方にとって解決策となるイヤホンキットを数多く提供していることを是非とも、知っていただきたいです。」と話しました。

IARC
のプレスリリースによると、イヤホンキットを使用して電磁波照射を減らすよう勧めており、長期間に亘る携帯電話の頻繁な使用について、一段の調査が行われることが重要」と指摘しています。
また「さらなる調査結果が明らかになるまでの間は、携帯電話のイヤホンキットやメール機能を用いて(脳への電磁波の)照射を軽減するなど、実際的な取り組みを行うことが大事だ。」と述べています。
(リリース原文: http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2011/pdfs/pr208_E.pdf

Jabra
のハンズフリー製品に関する詳細は、弊社ウェブサイトをご覧ください:http://www.jabragn.jp/

調査方法:
Jabra
が出資しLindberg Internationalが実査を行った今回の調査結果は、18歳から55歳の合計2,518名を対象に5カ国(米国、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、日本)で実施されたオンライン調査に基づくものです。
質問内容は、電磁波と携帯電話の使用に関する懸念や反応についての認知、イヤホンキット使用による効果の知識で、20114月に実施されました。誤差は+/-1.95%です。
プレスリリース情報提供元:Digital PR Platform
**********************************


9.ZDニュースの記事  イヤホンキットの効果の有無を概説している。200412月のニュース

[ZDNN]
 携帯電話のイヤホンキットが電磁波を増幅する?
http://www.zdnet.co.jp/news/0004/12/b_0411_18.html<リンク切れ>

携帯電話が発する電磁波は脳腫瘍の原因になるとの説がある。
英国のWhich?誌のテスト結果によると,イヤホンキットは,ユーザが浴びる電磁波の量を数倍に増やしているという。
頭部から出来るだけ携帯電話を離して使用するということで、イヤホンキットをお勧めします。

2000
4月にイギリスで消費者協会がイヤホンキットを使うとコードがアンテナの役割をするため、逆に電磁波の影響が3倍に増えてしまうという実験結果を発表したことがありましたが、どうもそうでは無かったようで、貿易産業省が8月に追試を行ったところイヤホンキットを使った方が脳などへの影響が小さくなるという調査結果を発表しました。
電磁波の影響を少なくするためにはイヤホンキットは効果的なツールです。
**********************


10EDNニュース2000年 イヤホンキットは電磁波曝露の低減効果の有無の概説という情報

EDN
ニュース ( The Design Source for Engineers and Managers Worldwide)
2000
1221日号 
http://www.ednjapan.com/news/200012/20001221cellerphone_emwave.html
にあった内容 2002-5-8のログ

イヤホンキットでは携帯電話機の電磁波を防げない

携帯電話機が放射する電磁波を嫌うユーザは、イヤホンキットを使うことが少なくない。
電話機本体を頭部から離せば、電磁波の頭部への影響を避けられるとされているのだ。

ところが、イヤホンキットを使っても頭部における電磁波の強度はまったく変わらないどころか、場合によっては3倍以上も強く放射されているらしいことが分かってきた。

英国の消費者団体である英国消費者協会(U.K. Consumers' Association)は200043日に、イヤホンキットを使うと頭部内における電磁波の強度が約3倍に強まるという測定結果を傘下の出版社である「フイッチ?」社(Which? Ltd.)を通じて発表した。

その後さらに詳しい実験を重ね、電磁波の強度は最大で約3.5倍にもなるという測定結果を2000112日に改めて公表した。

測定対象には、エリクソン社、ノキア社、松下通信工業、フィリップス社といった大手携帯電話機メーカーの携帯電話機およびイヤホンキットを選んだ。

頭部内の電磁波強度は、測定系のレイアウトに大きく依存する。
イヤホンキットのケーブルの位置を変えると大きく変動した。
ユーザによる実際の使用状態に近い、ケーブルを垂直に垂らした状態で測ると強度が高くなる。
英国消費者協会はこのようなレイアウトで測定した。

一方、机上に電話機を置いた測定レイアウトでは、ケーブルが水平に近くなり、頭部内の強度が低くなる。
たとえば英国貿易産業省が200087日に公表した、「イヤホンキットを使うと頭部内の電磁波強度は十分に抑えられる」という実験結果はこのレイアウトによるものだという。

一方、国内でもトーキンと青山学院大学が共同で、イヤホンキット付近の電界強度分布を測定した。
2000
11月に電子情報通信学会電磁環境工学研究会でその結果を発表した。
イヤホンキットを机上に水平に置いてケーブル付近の強度を測定したところ、携帯電話機とケーブルの接続部(携帯電話機のアンテナ近く)から離れるにしたがって、電界強度は周期的に大きく変動した。
距離によってはアンテナ近くと変わらない強度になった。

磁性体などを利用した電波吸収体は、電磁波強度の抑制にある程度の効果が見込めそうだ。
フイッチ?社の実験では、フェライトをケーブルに巻くと電磁波強度が抑えられたとしている。

トーキンと青山学院大の実験でも、磁性体のシートを巻き付けることによって5dBを超える抑制効果が得られた。(福田 昭)


11.小野らの研究2000

掲載誌:通信学会 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICEEMCJ200094200011
タイトル:携帯電話使用時にイヤホンケーブルに誘導される電磁波抑制法に関する実験的検討
研究者:小野裕司ら

あらまし:
本研究では携帯電話からイヤホンケーブルを通して、頭部に伝播する電磁波を抑制するために、イヤホンケーブルにノイズ抑制シートを配置し、その抑制効果を実験的に検証した。
実験においては、イヤホンケーブルの一端に頭部を模擬した頭部ファントムを配置し、他端を携帯端末のアンテナを想定したモノポールアンテナに近接させ、電磁結合によりケーブルに電磁波を導いた。

そして、ケーブル上に誘導された電磁波の電界強度分布を測定し、これらの電界強度分布の極大点や極小点に、複合磁性体から成るノイズ抑制シートを配置し、その配置寸法や配置箇所および配置個数を変化させ、抑制効果を測定した。

その結果、ノイズ抑制シートをイヤホンケーブル上に生じる電界強度分布の極小点に一致させて配置することにより効果的に誘導電磁波の抑制が可能であることや、ノイズ抑制シートの配置寸法や配置個数の増加に伴い、その抑制効果も大きく変化することを定畢的に確認した。

はじめに
近年、携帯電話やPHSが急速に普及し生活に欠かせないものになりつつあるが、一方では、これらから放射される電磁波の人体影響が懸念されている。
このような現状において、最近ではさらに自動車の運転中の安全性等を重視するために、マイクとイヤホンを一体化したハンズフリー通話用イヤホンも登場しますます大きく普及しようとしているが、この場合でも電磁波がイヤホンケーブルを介して頭部に伝搬、吸収することによる影響が懸念されている。

そこで、本研究では携帯電話からイヤホンケーブルを通して、頭部に伝播する電磁波を抑制するために、イヤホンケーブルにシート状のノイズ抑制体を配置した場合の抑制効果を実験的に検証した。
すなわち、実験においては、イヤホンケーブルの一端に頭部を模擬した頭部ファントムを配置し、他端には、携帯端末のアンテナを想定したモノポールアンテナと近接させ、電磁結合によりケーブルに電磁波を導き、ノイズ抑制シート(トーキン製バスタレイド)の配置位置や寸法を変化させて、その抑制効果を測定した。

この結果、ノイズ抑制シートの寸法や配置箇所を増やすとともに抑制効果も大きくなることを定量的に確認でき、簡易的にマイクとイヤホン間に1箇所に巻き付けた場合においても、最大5dB程度の抑制効果が確認できた。

以下は実験の方法から

 

むすび
人体頭部ファントムを用いて携帯端末からイヤホンケーブルを介し頭部に電磁波が誘導される実験モデルを考え、まず、ケーブル上の電界強度分布を測定し、次に、これらの電界強度分布の極大や極小点に、複合磁性体から成るノイズ抑制シートを配置した場合の誘導電磁波の抑制効果を実験的に検証した。

その結果、ノイズ抑制シートをイヤホンケーブル上に生じる電界強度分布の極小点に一致させて配置することにより効果的に誘導電磁波の抑制が可能であり、ノイズ抑制シートの寸法や配置箇所さらに配置個数の増加に伴い、その抑制効果も大きく変化することが分かった。

このように、本実験を通して、携帯端末からイヤホンケーブルを介して誘導される電磁波レベルを、ノイズ抑制シートを用いて効果的に抑制する方法について、基礎資料を提供できた。
本研究では1つのモデルとしてイヤホンケーブルを直線状に配置したが、実際の使用状況を考えて屈曲させた場合の検討や、ノイズ抑制シートの適用とSARとの関連性の調査、さらには種々のノイズ抑制シートに着目した抑制効果の検討などが今後の課題としてあげられる。

BEMSJ
注:この研究は、イヤホンケーブルからの電磁波抑制を狙ったもので、携帯電話にイヤホンを使った場合と、使わなかった場合の差異に関しては、何も論及していない。
携帯電話のような電波発信機にイヤホンなどの電線を近接させれば、その電線に電波が誘導して、電波の2次放射が起こる。
この研究は、2次放射を抑制するというものである。


12BEMSJの計算 その1 :イヤホンキットを垂直に配列

英国の電磁波防護グッズ効果検証報告にもあるが、イヤホンキットを使用した場合の電磁波曝露対策の効果に関して、EZNECという数値解析ソフトを用いたシミュレーション結果を紹介する。

大地(数値解析ソフトの条件;Perfect Ground)上1.5mの所に耳があると想定、1.5mから鉛直に大地上90cmのところまで長さ60cmのイヤホン線(数値解析上は直径1mmの1本の線と想定)が下がり、携帯電話に接続、携帯電話のアンテナは大地上85cmの地点から75cmの地点までの10cmの長さ(直径1mm)と想定した。

解析の簡便法として、携帯電話にイヤホンを取り付けて、下にぶら下げた形式とした。
周波数は900MHzで代表させた。 携帯電話の送信電力は0.8Wとした。 

電波の強さは、イヤホン線と携帯電話のアンテナだけがあるという条件で計算した。 
傍に人体があると大きくこれらの電波の強さは影響を受けるが、解析ソフトはそうした影響に対応できていないので、現実とは若干 乖離している可能性がある。
アンテナ線などから10cm水平に離れた地点の電界強度を計算した。

イヤホン線がなく、大地上1.5mのところに携帯電話がある時、10cm水平に離れた地点での電波の強さ(電界強度)は45V/mである。

計算結果を下図に示す。

この結果から、イヤホンで耳から離せば、耳の位置では電界強度は4.8V/mとなり、約10分の1に低減する。 
すなわち頭部の電磁波曝露は大幅に減衰する。 
しかし、携帯電話の位置付近では、通常と同等に、大きな電波が発生している。 
従って腰の位置や胃などの内臓に近いところに携帯電話とそのアンテナがあれば、頭部での曝露の代わりに、そこらが曝露することになる。 

結論は、イヤホンキットを使用しても、啓携帯電話とそのアンテナを、体から話さなければ、「頭を隠して尻を隠さず」の状況となる。

 

赤い四角の地点の説明:上から1.5mの地点:耳の位置を想定、イヤホンの上端、 
2
番目: 90cmの位置、 イヤホンの下端、
3
番目: 85cmの位置、 携帯電話のアンテナの付け根
4
番目: 75cmの位置、 携帯電話のアンテナの先端


13BEMSJの計算 その2:イヤホンキットを水平に配列

以下の条件で、電磁界解析ソフトEZNECを用いて解析を行った。
・大地はPerfect Ground(完全な反射面、金属などで覆われた面)
・周波数900MHz 出力0.8W  長さ10cmのモノポールアンテナを地上高1.5-1.6m地点に配置
・イヤホンキットは1本の1mm直径の線とし、地上高1.5mに水平に配置、イヤホンキットの長さを変えて解析を行った。
・イヤホンキットの片端は水平に5cm離して、モノポールアンテナの根元 地上高1.5mに配置
・イヤホンキットの他の端から、同じ地上高で、1cm6p離れた地点の電界強度を計算
・イヤホンキットのない場合のモノポールアンテナから水平に60cm離れた地点の電界強度は9.8V/mであることを算出した。
このことから、イヤホンキットの他端1cmにおける電界強度は、イヤホンキットが2次アンテナとなり、定在波が乗っていることに起因すると思われる。

解析条件

 

 

 

イヤホンキットの長さを少しだけ変えるだけで、イヤホンキットの先端における電界強度が大きく変わることから、イヤホンキットの線材に定在波が乗っていることが判る。
cmの長さが変わるだけで、電界強度が2倍以上変化する。


14WHOの推奨?

WHO背景説明資料 20003月「電磁界と公衆衛生:コーショナリ政策」に以下の記述がある。

「プレコーショナリ政策に関係はありませんが、新規の電気事業施設が提案された時に典型的に起きる人々の懸念に対処するのに役立つ措置が他にもあります。そのなかには、電力線、変電 所、無線周波数送信機等の設置用地の決定に人々の意見の取り入れることや人々を参加させることが含まれます。
それに加えて、各個人は自分の状況や事情に適すると思う措置を何でも選ぶことができます。

例えば、ラジオ付き時計などベッド脇に置く電気機器の位置を変えること、子供のベッドを寝室内の磁界の低い所へ移動することなどが考えられます。
就寝前に電気毛布 のスイッチを切るのも一つの選択肢でしょう。
携帯電話で長話をする人は、イヤホンキット(ハンズフリー用具)を使用し、携帯電話機を身体から離しておくこともできるでしょう。
これらの行動を、国の組織が公衆衛生的理由で推奨することはありませんが、自分のリスク認知に依って個人的に行うことは適切と考えられます。


イヤホンキットを使うことを、「国の組織が公衆衛生的な理由で推奨することはありませんが」「個人的に行うことは適切」という表現である。
イヤホンキットの使用を、WHOが推奨しているとは言えない。
WHO
のこの文書ではイヤホンキットの使用による曝露低減効果に関して、論拠を示して、効果があると断言はしていない。


15BEMSJの中間のまとめ
以上の情報から、携帯電話にイヤホンキットを用いた場合の電磁波曝露に関しては、様々な条件によって異なることから、条件別に以下の様にまとめることができると思われる。

条件1 下図のように、携帯電話を体から離し(ほぼ水平に)、イヤホンキットで携帯電話と耳をつないだ場合。
この場合は、前述の「2.英国のWhich?の報告」、「4.ネットにあった簡単な実験報告」、「13BEMSJの計算 その2」と同じと思われる。
この条件では、イヤホンキットの電線は、携帯電話の送信アンテナと結合し、2次アンテナとなって電波を発信する。
しかもこの線材の長さは携帯電話の電波の波長に比べると十分に長いので、定在波が乗る。
線材の長さが数cm異なるだけで、イヤホンキットの先端(耳に当てる部分)の近傍には大きな電波強度(電界強度)となる。
したがって、携帯電話の周波数や、イヤホンキットの長さ、その他条件によって異なるが、場合によっては携帯電話の通常使用時より大きい電波曝露を頭部(耳の近く)で受けることになりかねない。

条件1

 

条件2:下図のように、携帯電話を体から離し(ほぼ水平に)、イヤホンキットで携帯電話と耳をつないだ場合
イヤホンキットにはフェライトなどが取り付けられ、イヤホンキットの線材に高周波電流が流れない世にしてある。
この場合は、前述の「11.小野らの研究2000年」と同じと思われる。
フェライトによってイヤホンキットの線材の2次アンテナとしての機能は低下するので、イヤホンキットの先端(頭部・耳の部分)に大きな電波が伝搬しなくなる。
したがって、イヤホンキットによる電磁波曝露も、携帯電話からの電磁波曝露も少なくなる。
但し、フェライトなどで電波対策が施されているイヤホンキットが販売されているようには見えない。



条件2

 

条件3:下図にある様に、携帯電話とイヤホンキットを体に近接させて、配置した場合
この条件は、前述の「7.アメリカ BIT-BABIK Gらの2003年研究 」と同じと思われる。

イヤホンキットの線材が体に近接しているので、線材による電波輻射の機能が低下し、よって頭部(耳など)での電波曝露が低くなる。
しかし、携帯電話は、体の頭部以外のどこかに近接して置かれるので、その置かれた身体部分での電波曝露は避けられない。
耳を含む頭部さえ電波曝露対策ができれば良いとするものではないと思われるが・・・・・・。
また、微弱と思われるが、身体に近接して置かれたイヤホンキットの線材から輻射する電波の曝露は、どうなるか、かなり低いと思われるが要確認であろう。


条件3

 

さて、この私の中間のまとめを読んで、皆さんはどう考えますか?