A:変調電磁波が危険という説
A0.変調電磁波危険説の元ネタはベッカーかも
A1.パルス、パルス変調とデジタル変調を混同している過ちの例:2002年荻野晃也
A2.パルス・パルス変調とデジタル変調を混同している過ちの例:2004年荻野晃也
A3.電磁波防護グッズの販売サイトにあったパルス変調電磁波
A4.メディアコクショのサイトに荻野論を引用「自然界に存在しない変調電磁波だから怖い」
A5.荻野晃也著 プロブレムQ&A 危ない携帯電話 2002年緑風出版発行を読んで
A6.新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会のサイトにあった荻野論
A7.NPO法人 原子力資料情報室のサイトにあった荻野論
A8.「身の回りの電磁波被曝」2019年緑風出版にみる荻野晃也の変調電磁波説
B.変調に関する技術的な解説
B1.基本波と高調波
B2.パルス変調とデジタル変調の違い
B3.パルス波形の応用例:レーダー
C.変調電磁波に関連する研究
C1.2006年総務省の研究報告から
C2.「生体電磁環境研究推進委員会」報告書の公表 総務省 平成19年4月27日 にあった内容
C3.電波曝露露による生物学的影響に関する評価試験及び調査
編集中
記:2023−1−21
以下の情報がある。
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https://blog.goo.ne.jp/microglia_society/e/7d42ca946be2393b0b53756ed45d4b6c
「携帯電磁波とミクログリア
<携帯に依存する現代人の脳はその防人の働きに依存>携帯電話と電磁波について、市民の目で研究して行きたい」 というブログにあった情報。
携帯電話への不安はマイクロ波だけではないー変調電磁波
2009-02-02 19:14:55 | 電磁波に関する基礎知識
携帯電話にはマイクロ波だけが使われているだけでなく、マイクロ波に極低周波の信号を混ぜた「変調電磁波」が使われている。
携帯電話は、800−1500MHz(高周波)の搬送波に100Hzくらいの極低周波の信号を乗せて情報のやり取りをしている。
40Hz以上の電磁波は人類が経験したことのない極低周波であり、それが異常に増加することは人類の存続にかかわる問題である。(ロバート・ベッカー博士)
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ベッカーのどの論文・著作の中で、変調電磁波が危険と唱えているのかは、不祥。
以下の本に、その誤りの実例がある。
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荻野晃也著 プロブレムQ&A 危ない携帯電話 2002年緑風出版発行
P65 アナログ波形とデジタル波形
<正しい表記: アナログ(連続)波形とパルス波形>
「アナログ波形とデジタル<パルス>波形の相違を一番良く示しているのが、波形の変化率です。
波形の大きさは電流や電圧の大きさに対応しているのですが、その波形を数学で使う微分という方法で調べてみると変化率が良くわかります。
デジタル<パルス>波形では、波の「立上り」と「立下り」の所で急激な変化を示していることになります。
その変化が問題ではないか……とも考えられているのです。」
と。
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デジタル波形はパルス波形と同義語でない、 これを同一と混同しているのがそもそもの誤り。
アナログ電話とデジタル電話の影響度では、荻野はデジタル電話の方がより大きい影響があると主張しているが、デジタル変調方式とパルス変調方式の違いをきちんと理解せず、この両者を混同しているのは、明らかな誤りである。
パルスの場合は、平均電力に対してピーク電力が大きい。
また、パルスの波形によっては立上り時と立下り時の時間変化率が大きいので、また高い周波数成分を含むので、パルス・パルス変調では慎重に考えなければならないことは確かである。
以下の本にあった情報から
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掲載誌:物性研究 (2004), 82(1): 116-122
タイトル:電磁波問題と予防原則
筆者:電磁波環境研究所 荻野晃也
家電製品(電磁調理器、テレビ受像器、多くの家電製品、電力線など)は低周波で、電力線(送電線・配電線のこと)は50/60Hzが中心ですが、家電製品では高調波(50/60Hzの整数倍)が混在します 。
高周波の利用では、高周波に低周波が混ぜられた変調電磁波が多く、FM(周波数変調方式)、AM(振幅変調方式)や、携帯電話では時間変調、パルス変調などが行われ、高周波と低周波の両方の悪影響が予想されます。
デジタル(パルス)波はピーク電磁波が強いが、平均値では弱く、
<正しい表記:パルス波はピーク電磁波が強いが、平均値では弱く、>
また400MHz以上のマイクロ波では「ホットスポット効果」(レンズ効果で電磁波が集中して組織に熟を与えるような効果)が問題になります。
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「高周波に低周波が混ぜられた変調電磁波が多く、FM(周波数変調方式)、AM(振幅変調方式)や、携帯電話では時間変調、パルス変調などが行われ、高周波と低周波の両方の悪影響が」とあるが、
低周波で変調された高周波の電磁波は、例えば50Hzで振幅変調された900MHz電磁波は、900MHz、900.000050MHz、899.999950MHzの電磁波となって伝搬していく。
荻野の説にある様な900MHzの電磁波と50Hzの電磁波として伝搬していくのではない。
荻野の説は誤りである。
「デジタル(パルス)波はピーク電磁波が強いが、平均値では弱く、」とあるが、
デジタル波とパルス波は同義語ではない。
「パルス波はピーク電磁波が強いが、平均値では弱く、」は正しい。
「デジタル波はピーク電磁波が強いが、平均値では弱く、」は誤りである。
以下はhttps://www.ecologa.co.jp/person/3 グッズの販売サイトにあった情報です。
2021年7月のログ
このサイトでは「パルス変調電磁波」が危険と称している。
http://www.kokusyo.jp/phone/14027/ Media Kokushoのサイトから
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◇自然界に存在しない「変調電磁波」
ほとんど知られていないが、携帯電話・スマホで使われるマイクロ波は人工的に加工されている。
専門家の間では、「変調電磁波」と呼ばれている。
何が目的で、どのように変調されているか、荻野氏は次のように述べている。
なお、ここでいう「高周波」とはマイクロ波のことである。
高周波の電波を「搬送波」というのですが、基本となって運搬に使用される高周波・成分のことです。
その「搬送波」に色々な情報を載せるために「変調」という手法が使用されるわけです。
その「変調」には「周波数・変調」「振幅・変調」「位相変調」「パズル・変調」などが行われます。
「周波数・変調」は搬送波と異なる低い周波数・成分を混ぜる方法で、「振幅・変調」は低周波の振幅(つまり電波の強さ)を変化させて搬送波とともに情報を送る方法です。
「位相変調」は位相を、「パルス・変調」は周波数であれ振幅であれ、パルス状態の低周波範囲だけに限定して送信する方法です。
携帯電話の大普及によって初めて「変調・電磁波」が心配されるようになってきたといえるでしょう。
同じ高周波の電磁波とはいえ、たとえば電子レンジで使われているマイクロ波と、携帯電話・スマホで使われるマイクロ波では、危険の度合いが格段に異なるのだ。
これまで人類が被曝したことがない電磁波という意味において、リスクが高い。
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このコクショサイトでは、荻野の論を引用している。
P64 フライのアナログとパルスの差異の研究が紹介されている。
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デジタルの方が危険?
1975年に、フライ博士(米国)らのラットに照射した研究が発表されました。
12億サイクルという携帯電話領域のマイクロ波をラットに照射した所、アナログの連続波では、2μW/cm2でも逃げる行動を示さなかったのに、0.2μW/cm2のパルス(デジタル)波では避けるような行動を示したという内容でした。
この結果から考えると10倍以上の危険性があることになります。
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2)この1975年のフレイの研究は、以下の研究である。
掲載誌:Journal of Comparative and Physiological Psychology
1975, Vol. 89, No. 2, 183-188
タイトル:Avoidance by Rats of Illumination with Low Power
Nonionizing Electromagnetic Energy
低電力の非電離電磁波エネルギーを照射した時のネズミの忌避行動
研究者:Allan H. Frey and Sondra R. Feld
概要:
Rats spent more time in the halves of shuttle boxes that were shielded from
illumination by 1.2 GHz microwave energy than in the unshielded.
ネズミは、シールドされていない居室よりも、1.2GHzマイクロ波でエネルギーの照射からシールドされた居室部分でより多くの時間を過ごす。
In Experiment 1, rats avoided the energy when it was presented as 30-micro sec
pulses with a pulse repetition rate of 100 pulses per second (pps).
The average power density was about 0.6mW/cm2, and the peak power density was
about 200mW/cm2.
実験1では、30μ秒のパルスを1秒間に100パルス照射した時、ネズミは忌避した。
この時の平均電力密度は約0.6mW/cm2で、ピーク電力密度は200mW/cm2であった。
In Experiment 2, the energy was presented both continuously and in
pulse-modulated form, i.e., 0.5msec exponentially decaying pulses at a rate of
1,000pps.
The average power density of the continuous energy was 2.4mW/cm2, and the
average power density of the pulse-modulated energy was 0.2mW/cm2.
The peak power density of the modulated energy was 2.1mW/cm2.
実験2では、連続波曝露と、パルス変調(1秒間に1000パルスの繰り返しで、0.5ミリ秒で指数関数的に減衰する)した場合で行った。
この時の電力密度は、連続曝露では平均電力密度2.4mW/cm2である。
パルス変調による曝露では平均の電力密度は0.2mW/cm2で、ピーク電力密度は2.1mW/cm2であった。
The rats avoided the pulsed energy, but not the continuous energy.
ネズミはパルス変調電磁波曝露に関しては忌避行動をとったが、連続波電磁波曝露に関しては忌避行動をとらなかった。
3)BEMSJのコメント
荻野論では
「12億サイクルという携帯電話領域のマイクロ波をラットに照射した所、アナログの連続波では、2μW/cm2でも逃げる行動を示さなかったのに、0.2μW/cm2のパルス(デジタル)波では避けるような行動を示したという内容でした。この結果から考えると10倍以上の危険性があることになります。」は
原著を見てから、正確に書き直すと
「12億サイクルという携帯電話領域のマイクロ波をラットに照射した所、アナログの連続波では、約2mW/cm2(平均電力密度もピーク電力密度も同じ)では逃げる行動を示さなかった。平均電力密度は0.2mW/cm2と10分の1であるが、ピーク電力密度は約2mW/cm2のパルス波では避けるような行動を示したという内容でした。
この結果から考えると一般公衆に対する電波防護指針(指針では平均電力密度でのみ規制)の平均電力密度0.8mW/cmを超える曝露の場合、ラットは連続した曝露には耐えられるが、断続した曝露は嫌うということが判り、パルス性電磁波の曝露は危険性がより高い、と言える。」
となる。
パルス性電磁波は危険性が高いが、荻野論にあるような「10倍以上の危険性」とまでは論ずることはできない。
http://sumidatower.org/061001.htm
にあった情報
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2006年10月28日開催の「本当に安全? 新東京タワーの電波!」での、荻野先生のご講演内容の概要について、掲載します。
高周波に、変調という技術でいろいろな情報を載せているのが、携帯電話やテレビ・ラジオの電波の特徴だ。
aがAM放送で、振幅を変えることによって、音声という低い周波数の成分を乗せている。
bがFM放送で、周波数を変調させることによって、音声などを乗せている。
そして、cがパルス変調で、携帯電話やデジタル放送の電波の変調方法だ。
人間の体や細胞は、あまりにも速いものには反応できないので、パルス変調された電波に対しては、言わば、パルスが一つずつ、ポン、ポンと来たように、体の側は反応する。
デジタル放送や携帯は、さらに圧縮という技術を使う。
圧縮によって、パルスをもっと強くする。
だから、強いパルスが、ポン、ポンと出ることになる。
このような電波の強度の測定は、平均値を測定することになってしまっている。
しかし、平均値の測定では、間隔が空いていても一つ一つが強いパルス波の危険性が大きいはずなのに、その効果を無視していると言われており、これも大きな問題だ。
携帯電話やデジタル放送では、さらに位相変調など、いろいろな技術を使っている。
AM電波は、自然界にもある。FMは、自然界にはない。パルス変調や位相変調となると、自然界の電波から、ますますかけ離れる。
自然界にない電磁波をどんどん浴びると、たとえ弱くても生物に影響があるのではないか。
そういう研究も、最近になって進められ始めている。
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BEMSJ注:
荻野論にある「このような電波の強度の測定は、平均値を測定することになってしまっている。しかし、平均値の測定では、間隔が空いていても一つ一つが強いパルス波の危険性が大きいはずなのに、その効果を無視していると言われており、これも大きな問題だ。」は
日本の電波防護指針では、確かに平均電力密度でのみ規制しているので、平均電力の測定しか行っていない。パルス性電波に関しては、そのピーク値の規制は皆無である。
ICNIRPの1998年ガイドラインには、パルス性に関して、ピーク電力密度は平均電力密度の1000倍を超えてはならない、という規定があった。
電波防護指針も、何らかの形で、ピーク電力も規制すべきかもしれない。
http://www.cnic.jp/files/20140222_resume.pdfにあった情報
***********一部引用 ***********
学習会『電磁波とリニア新幹線問題』
2014.2.22 日比谷図書文化館 荻野晃也(電磁波環境研究所)
携帯電話や基地局タワー、放送タワーのアンテナから放射される電磁波は、高周波と低周波が変調(混ぜ合わせ)されたり圧縮されたりした、アナログ波またはデジタル(パルス)波ですから高周波と低周波の双方の悪影響の可能性があります。
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BEMSJ注;ここでも、パルス波とデジタル波は全く異なるにも関わらず、同一視するという誤りを犯している、
記:2023−1−17
以下の記述がある。
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1990年代になってから、「変調電磁波がより重要だったのではないか」と反省をしていたと思います。
当時は問題にされることはなかったのですが、現在、特に問題になっているのが、携帯電話などで使用される低周波を含む様な「変調電磁波」なのです。
そのような言葉をあまり聞きなれてはいないでしょうから、ここで簡単に説明しておくことにします。
高周波の電波を「搬送波」というのですが、基本となって搬送に使用される高周波・成分のことです。
その「搬送波」に色々な情報を載せるために「変調」という手法が使用されるわけです。
その「変調」には「周波数変調」「振幅変調」「位相変調」「パルス変調」などが行われます。
「周波数変調」は搬送波と異なる低い周波数成分を混ぜる方法で、「振幅変調」は低周波の振幅(つまり電波の強さ)を変化させて搬送波とともに情報を送る方法です。
「位相変調」は位相を、「パルス変調」は周波数であれ振幅であれ、パルス状態の低周波範囲だけに限定して送信する方法です。
携帯電話の大普及によって始めて「変調電磁波」が心配されるようになってきたといえるでしょう。
その背景には、生物の体内と関係の深い電気ングナルなどの周波数は低周波成分が多いからです。
極低周波の影響問題の場合でもそうでしたが、まず携帯電話の高周波に関しても問題になって来たのは「発ガン」問題でした。
頭の横で使用するわけですから、まず「脳腫瘍」が心配されるようになるのは当然でした。
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色々な波形の電波(電圧でも、電流でも良い)は、その波形を分析すると多数の周波数成分によって構成されていることがわかる。
この解析は数学のフーリエ級数で考えることが出来る。
図3−1 パルス的な波形
図3−2 基本的な正弦波形
フーリエ級数で展開をすれば、図3-1のようなパルス的な波形は、図3-2に示す基本的な正弦波の波形の組み合わせであることがわかる。
逆に色々な周波数を組み合わせると任意の波形を作成することができる。
音楽のシンセサイザーと全く同じ原理である。
パルス波形を分解すると、最も低い基本となる周波数(これを基本波という、基本波周波数)と、基本波周波数の整数倍の周波数成分(これを高調波という、基本波の3倍の高調波を3次高調波、5倍を5次高調波と呼ぶ)からなることがわかる。
図4は基本波に対して、3次、5次、7次までの高調波の大きさをそれぞれ基本波の大きさより少し小さくして、重ね合わせていった場合の図である。
赤線で示したパルス(急峻な特性)に対して、基本波だけではなだらかな山で、パルス波形とはほど遠い。3次高調波を追加、さらに5次高調波まで追加、さらに7次高調波まで追加するにしたがって、徐々に頂上が平らになって、パルス特性に近くなってくる。
パルス波形は無限の周波数成分を含むことになる。
図4. フーリエ級数で計算した場合のパルス波形の復元
このようなパルスは、多くの周波数成分を持つことになります。
記;2017−1−4
$1.パルスと連続波、パルス変調
図1に示すように、電磁波の波の形には、様々なものがある。
Sine(正弦波)、Square(矩形波)、Triangle(三角波)、Sawtooth(鋸歯状波)などである。
波の形は、図1に示すものに限らず、様々なものがある。
これらはすべて、連続して電磁波が発生していることを示す。
ただし、プラス・マイナスに交互に転換するので、ある瞬間はゼロになる。
図1
図2に正弦波が連続している場合の形の実際の例を示す。
図2
図3にパルスの波形の例を示す。
急峻にゼロから最大値まで達し、ある時間(パルス幅)だけその最大値を維持し、急峻にゼロに戻り、しばらくはゼロが続き、再び急峻に立ち上がり・・・・を繰り返す。
この場合は、平均値は低いが、瞬間的な最大値は大きいという課題や、急峻に立上がり、また急峻に立下がることによる副次的な影響もあるので、電磁波の健康影響ではかなり慎重な対応が必要となる。
「パルス波形の電磁波を曝露した結果・・・・のことが判明した」という研究を見る時、平均値と最大値はどうか? 立上がりと立下りの時間はどの程度か・・・・を考慮しないと、研究結果の評価はできない。
電磁波の曝露限度値を提言しているICNIRPのガイドラインでは、パルス電磁波への曝露に関して、平均値の何倍の瞬間最大値まで許容するかに関する規定もある。
図3
図4にパルス変調の例を示す。
正弦波がある時間だけ発信され、ある時間は発信されず、これを繰り返している。
アナログ波形である正弦波が、パルス状に断続して発信されている。
この場合も、平均値は低いが、瞬間最大値は大きくなるので、電磁波の曝露に関してはそれなりに慎重な評価が必要である。
図4
図5は、もう一つのパルス変調の例である。
aに示すアナログ信号(例えば音声の信号)を、3種類のパルス変調した場合である。
いずれの場合も、アナログ信号は、パルスの並びに置き換えられている。
パルスの最大値が変化したり、パルスの幅が変化したり、パルスの位置が変化したりしている。
図5
参考までに、アナログの振幅変調(AMラジオの放送電波の形式と同じ)の例を図6に示す。
音声などの情報信号を、搬送波と呼ばれる情報信号より高い周波数の電波で、振幅を変調する。
図6
$2.デジタル変調
デジタル変調には様々な方式がある。
図7は、図6のアナログ振幅変調に類似のもので、振幅変調されたパルス波形の情報信号を、搬送波と呼ばれる高い周波数の電波の振幅を変調する形式である。
ASK(振幅シフトキーイング)と呼ばれ、振幅レベルに情報を与えて伝送する方式で、自動車の有料道路課金のETCなどに採用されているが、携帯電話や無線Lanには採用されていない。
図7
携帯電話、衛星通信などに使用されているデジタル変調方式は、PSK(位相シフトキーイング)と呼ばれ、位相に情報を与えて伝送する方式である。図8に示す。
デジタル情報信号10100をデジタル変調した場合の、搬送波、ASK(振幅シフトキーイング)変調、PSK変調(位相シフトキーイング)、FSK変調(周波数シフトキーイング)の波形を示す。
図8
図9は少し複雑になり、デジタル情報信号10100をBPSK変調した場合と、デジタル情報信号10110100101という同じ時間に2倍のデジタル情報を送る方式としてのQPSK変調の場合を示す。
図9
別の見方で、再度デジタル変調PSK変調を図で示す。
図10にあるようにデータ信号(デジタル情報信号)10101010をPSK変調した場合の波形を示す。
変調された波(電磁波:電波として発信される波形)は、周波数は常に同じで、振幅(電波の大きさ)も同じで、元のデジタル情報信号の様に断続はなく、連続している。
ただし、デジタル情報の切り替えのタイミングで、変調された波形には不連続点が存在する。
図10
$3.本日の結論
携帯電話や無線LANには、0101のデジタル信号が使用されている。
この0101という信号は断続があり、パルスの波形として説明される。
パルスの場合、電磁波の健康影響を考える時に、平均値は低いが瞬間最大値は大きい点に課題が集まる。
携帯電話などでは電波(電磁波)として発信されるときは、0101のデジタル信号が、QSKといったデジタル変調される。
QSKといったデジタル変調波は、前述のように、一定の周波数で、振幅も同じである。
パルス・パルス変調という意味と、携帯電話などで使用しているデジタル変調という意味は大きく異なり、似ているようで全く異なるものである。
荻野らは、「携帯電話は0101のデジタル信号を扱い、デジタル変調された電波が発信」されていることを、「パルス変調された電磁波であるから危険」と誤解というか混同していると思われる。
香川高専のサイトにあったレーダーの解説の図を引用します。
レーダーは電波を短い時間だけ強く発射して、その電波が金属部隊などに反射して戻ってくることを利用しています。
図にあるように、CW波(正弦波)をある期間だけ発射しています。
このようにレーダーが使用しているパルス波は、基本波といえるCW波(正弦波)を、ある時間だけ短く区切って、います
時間的に区切っているだけで、1つの正弦波の電波(電磁波)が出ています。
言い換えると、正弦波が断続しているだけです。
電波曝露による生物学的影響に関する評価試験及び調査
平成17年度 研究報告書
平成18年(2006年)3月 総務省 にあった研究
要旨から
本年度はISM周波数帯である2.45GHz連続波(CW)およびパルス変調波、900MHz連続波(CW)に加え、移動体通信に用いられる900MHz帯の変調信号を用いたマイクロ波照射実験系を構築する。
被照射試料として平成16年度で用いた繊維芽細胞は、比較的紫外線等の影響を受けやすいためラジカル反応の検出に適しているが、さらに影響の受けやすい細胞として血球細胞(白血球、赤血球、血小板、リンパ球等)がある。
例えば、骨髄やリンパ節は造血細胞と支持細胞から構成されているが、前者は放射線に非常に感受性が高く、後者は比較的抵抗性があるとされる。
これら血球細胞に関して、変調も含めたマイクロ波照射に起因するラジカル発生影響についての詳細な検討、実験調査例はこれまで明らかにされていなかった。
そこで、平成17年度は、繊維芽細胞に加え、新たに血球細胞についてラジカル発生にマイクロ波照射が及ぼす影響について調査を行い、さらに、各周波数帯において、変調信号の違いによる影響についても詳細な検討を行った。
調査に関しては、SAR(比吸収率)および温度との関係に着目して測定を行う。
本研究では、照射マイクロ波として、ISM帯の2.45GHzでは連続波(CW)およびパルス変調波(Pulse)、移動体通信に用いられる900MHz帯においては、連続波およびGSM、PDC、cdma2000、パルス変調波を用いる。
実験の結果は、いずれの測定においても紫外線の場合と比較して、マイクロ波を照射した場合では明確なラジカル発生は確認されなかった。
また、血球細胞におけるラジカル発生は、温度上昇が支配的であり、周波数帯および変調方式によらずマイクロ波照射による直接的な生体ラジカル発生影響は観測されなかった。
詳細から
照射するマイクロ波の周波数は、繊維芽細胞を用いた実験と同様に、2.45GHzおよび900MHzである。
また、2.45GHzについては、連続波およびDuty比10%のパルス変調波、900MHzについては、連続波、パルス変調波、GSM変調、PDC変調、cdma2000変調信号とした(表2)。
照射出力は、2.45GHzの場合に500W、900MHzの場合は25W、照射時間はいずれも300秒(5分間)である。
5分間のマイクロ波照射後、蛍光輝度値から評価した2.45GHzおよび900MHzのラジカル測定結果を非照射(control)の場合と比較して図21および22に示す。
なお、2.45GHzの場合は照射時の細胞温度は28度から33度の範囲、900MHzの場合は22度から25度の範囲であった。
周波数2.45GHzの場合、連続波、パルス変調いずれの場合もラジカル発生影響は観測されない。
また、900MHzの場合も変調の種類によらず明確なラジカル発生影響は観測されなかった。
実験結果の一例
X 結論
2.45GHzおよび900MHz帯のマイクロ波照射が細胞のラジカル発生に与える影響について実験調査を行った。
ヒト由来真皮繊維芽細胞および血球細胞を用いて、ラジカル発生影響について実験的調査を行った。
照射中の細胞温度上昇をコントロールしてマイクロ波照射を行い、蛍光観察およびESRでそれぞれラジカル測定を行った。
いずれの測定法においても、紫外線の場合と比較して、マイクロ波を照射した場合では明確なラジカル発生は確認されなかった。
また、血球細胞におけるラジカル発生においては、温度の上昇が支配的であり、周波数帯および変調方式に依らずマイクロ波照射による直接的な生体ラジカル発生影響は観測されなかった。
関心のある方は、報告書原文を読んでください。
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生体電磁環境研究推進委員会 報告書 概要
(9) ドシメトリ
(9)-1 人体全身平均SARの特性評価
(略)
(9)-2 パルス電波の生体安全評価に関する検討
パルス電波により生体に影響を与えるという証拠は認められなかった。
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BEMSJ注:
この報告書にある「パルス電波・・・・」に関する研究は、マイクロ波可聴効果に関連する研究であった。
平成19年度 海外研究動向調査報告書 総務省 にあった内容
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Krause 等[41]は、携帯電話端末の電波ばく露がヒトの認識作業中の脳活性に及ぼす影響を、左右の脳半球ごとに調べた。健康な男性被験者各36人の2群(A群、V群)を対象に、連続波またはパルス波(902MHz、平均出力0.25W、SAR最大値1.18W/kg、約54/80min(分))をばく露/偽曝露した。A群には聴覚作業記憶タスクを、V 群には視覚作業記憶タスクを実施させ、その間の脳波を測定した。
実験は二重盲検法で、各被験者に対して各条件でのばく露を無作為順に行った。
この結果、電波ばく露時には、脳波のα波領域(8‐12Hz)における控えめな反応が見られたが、この影響は変動幅が大きく、系統的でなく、従来の研究結果とは一致していない。
電波ばく露による行動学的な影響は認められなかった。
(2) Haarala 等[20]は、健康な男性被験者36人を対象に、携帯電話端末の電波ばく露(連続波またはパルス波、902MHz、平均出力 0.25W、SAR 最大値1.18W/kg、約90min)が視覚認識タスクの遂行能力に及ぼす影響を、左右の脳半球ごとに二重盲検法で調べた。この結果、ばく露条件やばく露した左右の脳半球による遂行能力への影響に有意差は認められなかった。
(4) Terao等[71]は、10人の健康な被験者を対象に、携帯電話端末の電波ばく露(800MHz、パルス波、30min、最大出力0.8W、SAR平均値0.054W/kg)が眼球の断続性運動(saccade)の遂行能力に及ぼす短期的な影響を生じるかどうかを、二重盲検法で調べた。この結果、電波ばく露時の遂行能力に偽ばく露時との有意差は認められなかった。
(5) Regel等[57]は、24人の健康な被験者を対象に、携帯電話端末の電波ばく露(連続波またはパルス波、900MHz、30min、SAR 最大値1W/kg)が認識遂行能力および覚醒時の脳電図に及ぼす影響について調べた。この結果、パルス波ばく露時には反応時間の短縮と作業記憶タスクの精度向上が認められた。また、ばく露の 30 分後のα波(10.5‐11Hz)の増強が認められた。連続波ばく露時には影響は認めらなかった。Regel 等はこの結果について、パルス波の非熱的な生物学的影響の証拠を示すものであるが、その根底にある生理学的メカニズムは不明であり、健康への影響との関連性については特に慎重に解釈すべきだとしている。
(6) Cinel等[10]は、168人の健康な被験者を対象に、電波ばく露(連続波またはパルス波、888MHz、40min、SAR 平均値
1.4W/kg、パルス波の SAR 最大値11.2W/kg)が左右一方からの聴覚刺激に対する認識能力に及ぼす影響について調べた。この結果、電波ばく露による有意な影響は認められなかった。
(7) Inomata‐Terada 等[31]は、携帯電話端末の電波ばく露(800MHz、パルス波、30min、最大出力 800mW、SAR 平均値 0.054±0.02W/kg)による脳の運動皮質への短期的な影響を調べるため、10人の健康な被験者および高温に対して神経症状を呈する多発性硬化症の患者 2名を対象に、経頭蓋磁気刺激(TMS)に対する運動誘発電位を、電波ばく露の前後で比較した。多発性硬化症の患者については、42℃の温水浴の前後での運動誘発電位も調べた。この結果、電波ばく露による影響は認められなかった。
(1) Fritzer等[18]は、20人の健康な男性被験者を対象に、GSM携帯電話端末の電波ばく露(900MHz、パルス波、7‐9hr(時間)、1/6d(日)、最大出力28.5W、SAR最大値1W/kg)が、認識機能や睡眠(脳電図、就眠までに要する時間、REM(rapid eye movement)睡眠(眠りは深いが脳波は覚醒時のような型を示す状態)の特徴等)に及ぼす影響を調べた。この結果、電波ばく露による有意な影響は認められなかった。
(1) Tillmann [72]は、携帯電話端末による電波の慢性的な全身ばく露(GSM:900MHz、DCS:(Digital Communication System、GSM(900MHz)を1800MHz 化した携帯電話)1747MHz、パルス波、全身SAR最大値:33.2/11.1/3.7mW/kg、2hr/d、5d/wk(日/週)、2yr)による、B6C3F1 マウス(合計 1170匹)の内分泌系、生殖系、免疫系、呼吸器系、下垂体、ハルダー腺、肺、肝臓、副腎、子宮での発がんへの影響を調べた。この結果、電波ばく露による腫瘍発生率の有意な上昇は認められなかった。
Hoyto 等[27]は、携帯電話端末の電波ばく露(835MHz 連続波/835MHzパルス波/872MHzパルス波、2/8/24hr、SAR2.5/6W/kg)が、マウス線維芽細胞L929 におけるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)酵素活性に及ぼす影響を調べた。この結果、SAR6W/kgでのばく露時に、ODC活性の上昇が認められた。
培地の温度は偽ばく露群と同一であった。いずれの場合も連続波とパルス波との間に差はなく、変調による影響は認められなかった。
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これらの研究は、携帯電話の電波がパルス変調であることを念頭においた研究で、パルス波と連続波による影響の違いを見ている訳ではない。