*レーダからの電磁界に関する特設ページ

 

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更新の履歴:最終更新2023年1月18


*工学・技術的な情報、一般情報

A1レーダの開発から実用化への概史
A2
レーダのパルスに関する解説
A3
青森に設置のXバンドレーダ関連の情報1
A4. 青森に設置のXバンドレーダ関連の情報−2
A5
青森に設置のXバンドレーダ関連の情報−3
A6
レーダからの電波測定の困難さ
A7
与那座のガメラレーダ
A8
佐渡のガメラレーダ
A9
京丹後Xバンドレーダ
A10
韓国レーダの電波強度測定結果2016
A1
1.韓国レーダの電波強度測定結果2017年

A12青森県大湊のガメラレーダ

A13
レーダの諸元の例
A13A
フェーズド・アレイ・アンテナを用いたレーダFPS117の性能
A13B早期警戒機ホークアイ搭載のレーダの仕様
A18
レーダハンドブックに見るレーダの諸元

A14GlobalSecurityというサイトにあったパトリオットミサイルとレーダの安全対応
A15WHOのファクトシートに見る軍用レーダ
A16
アメリカFCCのOETブレテンに記載されている注意事項から
A17
1962年アメリカ軍文書に見るレーダの立入禁止距離の例

192001年レーダ基地での被曝事故例
20艦船搭載レーダで鳥が落ちる
A21
イージス艦では、適切な管制を行うことで、レーダ電波発信中でも、甲板上で作業を行うことができるという情報
A22
イージス・ショアでは、230mといった安全距離の確保が必要という情報

A23Tokyo Expressのサイトにあったイージスレーダ解説
A24
レーダを搭載した軍用機におけるパイロットの電波曝露の事例
A25
港における船舶レーダからの曝露 英国2005

*レーダからの電磁界に関する学術研究情報
B1空港レーダからの電磁波:1992年徳重研究
B2
レーダ基地周辺の住民の発がん:レスター1984年研究
B3
艦載軍事レーダからの電波の直射を受けたノルウェー海軍の船舶事故の例
B4
自衛隊のレーダによる性比の影響に関する1996年研究
B5
パルス電磁波曝露の規定が、ICNIRPで見直し?
B6. Richerらの2000年レーダとガンの研究(イスラエル)
B7
Rejtの2007年レーダと鳥の研究(ポーランド)



*レーダからの電磁界に関連する裁判

C1ケープ・コッドのPAVE PAWSレーダ紛争
C2
ボーイング社でのパルス電磁界曝露による白血病に関する裁判結果
C3
沖縄の与那国でのXバンドレーダに関する裁判
C4
裁判にもなったアメリカ・カリフォルニア州Ojaiでの気象観測レーダからの電磁波紛争
C5
鹿児島・奄美での自衛隊レーダ基地に関する裁判


*レーダからの電磁界に関する裁判にはならないが、紛争の事例
D1イタリアで、米軍衛星通信用アンテナ建設で紛争 
D2. チェコ軍事レーダ紛争



*イージス・アショア関連
E1.イージス・アショア秋田に設置
E2.産経新聞 2018年2月1日の記事 
E3.秋田でのイージス電波測定実験に使用した測定器
E4.2019年の国会における論議から、イージス・アショアは、50m以内は危険と
E5.ルーマニアにあるイージス・アショアの基地

E6.ハワイのイージス・アショア基地
E7.ポーランドのイージス・アショア
E8.秋田市議会2019年の議事録から
E9.地上イージス配備を断念 国家安全保障会議で決定2020年6


*その他の関連する学術的な研究

F19.4GHzでの研究 BEMS誌1991年Veyretの研究
F2
EBM誌2003年Dabrowskiらの1300MHzパルス性電磁波に関する研究
F3
Manikowskaの1979年9.4GHzパルス電波による研究
F4
1979年Thomasらパルス電磁波の影響


*その他関連情報

G1ドクターヘリの運行に問題が出た事例2018


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A1.レーダの開発から実用化への概史


(1)
電離層の実証
マルコーニが大西洋横断無線通信に成功(1901年)した時、電波が直進するだけであれば到達できない距離に電波が届いたことから、電波伝播に関する研究が行われるようになりました。
1902
年には上空に電波を反射する鏡(電離層)があると予言されました。

この予言を確かめるために、1925年にワシントンのカーネギー研究所のブライト(Gregory Breit 1899-1981 ロシア生まれのアメリカの物理学者)とテゥーブ(Merle A. Tuve 1901-1982 アメリカの物理学者)がパルス電波(図1-22にあるように幅の極めて狭い、瞬間にだけ出す電波)を上空に向けて発射し、上空で何かに反射して地上にある一定の時間が経過してから弱くなって戻ってくる電波を受信しました。
この方法で上空に電波を反射する電離層があることが実証されました。

1-22a 1925年のブライトらが行った電離層の存在を実証した試験の原理

 

1-22b 受信機で受信した電波(パルスレーダの基本原理)

 

電波は光と同じ速度で伝播するので、何かに反射して戻ってくるまでの時間の半分が、電波の反射物体とアンテナのある場所との間を電波が走る時間となります。
光の速度は30km/秒ですから、電波を発信して2ミリ秒の時間遅れで電波が戻ってくるとすれば、電波が走る片道の時間は1ミリ秒となり、300km先に電波の反射物体があると計算できることになります。
こうしてブライトらは上空約100km300kmに電離層が在ることを実証しました。

使用したパルスの幅が0.5ミリ秒であったので、75kmより遠方にある反射物体しか検出できませんでした。
さらに近距離でも検出できるようにするためには、パルスの幅をもっともっと狭くする工夫が必要となりました。

電離層の状況はその後、今日でも継続して、研究されています。短波などの無線通信の礎となっています。

参考:レーダ(RADAR

Radio Detection and Rangingの略で、イギリスではRadio Locator、日本語では電波探知機とか略して電探(でんたん)と呼んでいました。
2次世界大戦後はレーダという言葉が一般に用いられるようになりました。

(2)
レーダの始まり
この電離層の存在を実証した手法は、レーダ技術の始まりとなりました。

電波を発射して何か電波を反射する金属で出来ている飛行機や船舶が離れたところにあれば、そうした物体の検出が可能となるからです。
この原理を用いてイギリスの物理学者ワトソンワット(Robert A. Watson-watt 1892-1973 イギリスの物理学者)は対空警戒用としてパルスレーダを防空科学委員会に提案し、1935年にはその開発に成功しています。

        

123 レーダの発明者ワトソンワットを称える郵便切手(イギリス1991年発行)

イギリスは風雲を告げる欧州で1938年までに25MHzの電波を利用した対空レーダ網を完成させました。
このレーダ網は対空警戒用としてはきわめて有効でした。
124には19399月にイギリス本土西岸に建設されていた20ヶ所のレーダ基地の場所とその探索可能範囲を示します。
この地図を見れば、ドイツからの爆撃機の侵攻をイギリスでは早期に検出できる体制が整っていたことがわかります。


図1-24 19399月にイギリス本土西岸に建設されていた20ヶ所のレーダ基地

(図では■で示す)とその探索可能範囲 「The Invention changed the world 1996」より

1939
年ヒットラー(Adolf Hitler 1889-1945 ドイツ ナチ党の総統)のドイツがポーランドに侵攻し、第2次世界大戦が起こりました。
レーダに関してはこのようにイギリスが一歩進んでいたのです。
ヒットラーが当初レーダは攻撃兵器ではないとして、認めなかったのでドイツでのレーダ開発は遅れました。

 125 ヒットラー


アメリカでもレーダの開発は行っていましたが、イギリスにはかないませんでした。
2次世界大戦の開戦後1940年に英米軍事協定が締結されて、レーダなどの電波兵器の開発に注力することにしました。

アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)に放射研究所(レーダ等の新規開発をカモフラージュするためにこういう研究所名にした)をつくり、軍事プロジェクトとして大規模な開発体制がとられました。
1940
11月の時点では年間予算額815,000ドルで人員規模30ないし40名が、1945年の夏の段階では年間予算43,200,000ドルと5倍に増加し、人員規模は3,897名という大所帯にまで膨れ上がっていました。

アメリカだけではなく、イギリスとオーストラリアにも研究所の支所を設けていたのです。
そうした結果、19411月には陸軍用に、同年春には海軍用にレーダを開発という形になって現れました。

オーストラリア空軍では1942年にレーダを採用し始めました。
このレーダは初めてオーストラリアで設計され、そして製造されたもので、1942322日にオーストラリア北部のダーウィン地区で運用が始められました。

最終的には140のレーダ基地がオーストラリアの海岸にそって設置され、4,000名に上る軍人が働きました。
1-26はその50年を記念して発行された郵便切手付き封筒で、郵便切手印面に当時のレーダ、左の絵の部分には暗い部屋の中でレーダを操作する軍人が描かれています。
レーダ開発に当たっては米国と英国が主導していましたが、開発研究所の分室がオーストラリアにも設置されており、太平洋領域での電波戦争の一端を担っていました。


126 1942年オーストラリア空軍でレーダ採用: 50周年記念郵便切手付き封筒(オーストラリア1992年発行)

レーダ用のアンテナには鋭い指向性が要求されます。
反射物体から戻ってきた電波を解析するときに、よりこまかく分解して判定する(この細かさを分解能という)必要があるからです。
遠方に飛行機が1機飛んでいるのか多数飛んでいるのか、小さい船なのか大型の軍艦なのかを判定しなければなりません。
物を検索するときに太い棒でつついて探すのと、針のような細い物でつついて探すのでは、検出精度が異なることから。
針までは細くないがアンテナとしては最も指向性を細く狭めることができるアンテナとして八木宇田アンテナが利用されることになりました。

併せて、波長の短いcm波という非常に周波数の高い電波を発生させるマグネトロン(マイクロ波という電波帯域のための真空管の一種で、円筒形の陽極とその中心軸に陰極を持ち、マイクロ波の発振ができる。レーダや家庭用電子レンジなどに用いられています。)というイギリスの技術も導入されました。

こうしたレーダによってドイツ軍は自国の軍事施設や潜水艦を連合国軍の思うままに爆撃されるようになってしまいました。
この事情は日本も同様でした。

(3) レーダの実戦応用
対空警戒用としてのレーダの効用が認められた空中戦があります。
1940
8月から9月にかけて行われたドイツ空軍のイギリス本土爆撃です。

この戦いをイギリスではbattle of Britainと呼びます(図127)。
8
13日ドイツ空軍は1,485機でイギリス本土を空襲しました。
レーダで事前にこの空襲を感知したイギリス空軍は対抗してドイツの攻撃機を47機も撃ち落しました。
ドイツ軍の空襲は続き、915日の空襲でもイギリス側はレーダで検知し、ドイツの攻撃機を56機も撃ち落しました。
こうした結果を受けて、これ以上ドイツの空軍機を失ってはまずいと考えて、ヒットラーは作戦を変更したのです。

最初レーダはこのように軍事目的に開発されました。
その後は気象観測用レーダやスピードを測定するスピードガンなどが開発され、現在も多方面に利用されています。


 図127 ドイツの空爆に対抗

 

 

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A2.レーダのパルスに関する解説

 

送信パルスと探知能力の関係

(1)レーダの送信波

レーダが発信するレーダ波は、CW(連続波)レーダなどの特殊なものを除き、基本的には次のように使用するレーダ周波数の電波で形作られるパルス波です。
τがパルス幅、Aの2倍が振幅、Tがパルス間隔(又は、パルス繰返周期)です。
パルス間隔の逆数、つまり1秒間に何回パルスを出すかをパルス繰返周波数(PPS)と言います。

また、パルス幅とパルス間隔との比率(=τ/T)をデューティ比(duty-cycle)と言います。

(2)パルス間隔

レーダでは、このパルスを送信し、目標に反射して再びアンテナに戻ってくるまでの時間を測定して距離を割り出します。
したがって、通常のレーダの最大探知距離はどんなに長くても、パルスを1回送信してから次に送信するまでの、このパルス間隔(T)からパルス幅(τ)を引いた残りの時間の1/2に相当する距離に限定されます。

例えば、パルス間隔を1ms(=パルス繰返周波数1000)の場合、3×10×0.001/2=150,000m(=150km)が物理的な最大探知距離になります。

(3) パルス幅と振幅

レーダパルスの強さはパルス幅と振幅の乗数(2A×τ)で表されます。
この値が大きければ大きいほど送信する電力の強いものになりますから、より遠距離で、より小さい目標を探知出来ることになります。

しかしながら、余りパルス幅が大きいとレーダエコー(受信信号)の解像度が悪くなります。
つまり、パルス幅の1/2以内の距離に2つ以上の目標が存在する場合には1つのエコーとしてしか受信できません。

したがって、目標が存在するのかしないのかを知ることが最も重要な捜索用や早期警戒用のレーダでは強いパルスを要求されますので、比較的このパルス幅が大きく、逆に目標の正確な距離や数の判別を要求される射撃用レーダでは、比較的このパルス幅が小さい、即ち鋭いパルスを使用することになります。

 

 

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A3青森に設置のXバンドレーダ関連の情報−1

記;2012−12−01

Xバンドレーダとは
波長2.53.75cm周波数では8GHz12GHz)の電波を用いるレーダの総称。
防空用レーダや戦闘機搭載用レーダの波長30100cmと比べ、高い分解能が得られ、目標を点としてではなく形として把握できる能力から、弾道ミサイル防衛システムの目標(ミサイルや弾頭)捕捉、弾頭とオトリとの識別、追尾、迎撃ミサイルの誘導に使用される。
波長が短いために大気による減衰が大きく、遠方に到達させるには大出力が必要となる。

米国が弾道ミサイル防衛(BMD)システム実験用にクエジェリン島に設置した型(地上配備型Xバンド・レーダ:GBR)123平方メートルのレーダ面に81000個のレーダ素子を並べたフェーズド・アレイ型で、平均出力は170kWもある。
4000km
の遠方で弾道ミサイルの弾頭の探知ができ、2000km以内なら実弾頭とオトリの識別が可能とされる一方、周辺環境への影響を懸念する声もある。

GBR
を石油リグ型のフロートに載せた洋上配備型SBR(Sea-Based Radar)はアラスカ沖に配備された。
THAAD
終端迎撃システム用レーダTPY-2Xバンドを使用し、北朝鮮からの弾道ミサイルの早期探知と精密追尾のために20066月に青森県の航空自衛隊車力分屯地に配備した。

同型のレーダは九州、沖縄、グアム島などへの追加配備も検討されている。
また欧州方面ではチェコへの配備が計画されている。
日本も防衛省技術研究本部がFPS-5と呼ぶXバンド早期警戒用レーダを開発し、2011年度までに4カ所のレーダサイトに配備する。


*衆議院質問主意書でのXバンドレーダからの健康影響に関する論議からの抜粋を以下に示す。

平成18228日提出
質問第116
航空自衛隊車力分屯基地への]バンドレーダ配備に関する質問主意書
提出者  高橋千鶴子

三 生活環境への影響について
1
 ]バンドレーダから生じる電磁波の影響について、例えば、米国防総省ミサイル防衛庁の情報資料(「FACT SheetX-Band Rader20006月公表)は、家庭のテレビやラジオへの影響が生じる可能性について指摘しているが、どのような被害が生じる可能性があるのか。
基地内及び周辺地域の人体・動植物への影響、テレビやラジオなどの家庭用電化製品、民間航空機の運航等への影響、大気汚染及び騒音発生の有無等について、具体的に示されたい。
また、その影響について、どのような対策をとるのか。

平成18310日受領
答弁第116
内閣衆質164116

  平成18310
衆議院議長 河野洋平殿
内閣総理大臣 小泉純一郎
衆議院議員高橋千鶴子君提出航空自衛隊車力分屯基地への]バンドレーダ配備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

三の1について
電磁波の影響としては、一般的には、電波干渉や発熱効果が考えられる。
]バンドレーダ・システムが我が国において展開される場合には、政府としては、他の無線局の運用を阻害するような混信を防止するとともに、人体に危害を及ぼすことのないよう、必要な措置をとる考えである。

 

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A. 青森に設置のXバンドレーダ関連の情報−2

 

Xバンドレーダの設置に関して、青森県では検討会を実施し、報告書をまとめている。
その中の一部を紹介する。

**************************
Xバンドレーダ検討結果報告書
平成18年3月
Xバンドレーダ検討会

はじめに
平成171029日に米国防総省で開かれた外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)において、在日米軍再編の中間報告が取りまとめられた。
その中間報告には、ミサイル防衛に関して、米軍の新たなXバンドレーダ・システムの日本における最適な展開地を検討することが盛り込まれた。
現在、日本における最適な展開地を検討するに当たり、青森県のつがる市に所在する航空自衛隊車力分屯基地が有力な候補地とされているところである。
これらの動きを受けて、青森県では、平成18年2月8日に、Xバンドレーダ配備と国民保護や被害対処との関連、Xバンドレーダ配備に係る技術的、設備的事項等に関する知見を得るために、県が委嘱した専門家によるXバンドレーダ検討会を設置した。
本報告書は、このXバンドレーダ検討会の検討結果報告書である。

D安全対策
Xバンドレーダの配備・運用に当たっては、電波照射における安全基準を守るため、レーダ周囲に立ち入り禁止区域等を設定する必要があるものの、その距離についてはレーダの性能に依存するところであり、正確な数値は把握し難いが、アンテナ前方で100m程度ではないかと推測される。
ただし、この立ち入り禁止区域等はその管理を徹底できるように基地の敷地内に収める条件で設定されるものと考えられる。

@立ち入り禁止区域
Xバンドレーダから照射する電波ビーム(電波を細く収束してエネルギを集中させたもの)の方向の周囲に弱いサイドローブ放射が起きて近くの人間に電波を放射する。
X帯電波の人体への照射によって起きる加熱作用に対する安全基準は、国際的に共通の医学的見地による基準である。
米軍の電波器材については、国防総省令により安全照射強度の基準値は10mW/cm2と定められており、この安全照射強度を超える範囲は立ち入り禁止区域を設定することが義務付けられている。

通常、立ち入り禁止区域は電波ビームとサイドローブ放射を受ける場合における人体の健康維持のために設けられたものであり、アンテナを回転させて全周に電波ビームを向けるレーダでは、送信出力によってアンテナの周囲の半径10m程度から50m〜100m程度と様々である。
Xバンドレーダの場合は、電波ビームが専ら日本海上空方向に向けて放射され、電波ビームの地上への直接の放射はないとみなされるので、近接する地上に対するアンテナからのサイドローブ放射について考慮すれば良いこととなる。

当該アンテナの構造から見てサイドローブ放射の影響はアンテナの前方で強まるため、立ち入り禁止区域は前方で広く設定され、アンテナの側方や後方は狭くなると予想される。
かような立ち入り禁止区域が基地内で十分収まるように、レーダのアンテナ・ユニットの位置が設定されると考える。

なお、ペトリオットレーダについても、操作する隊員の安全確保と周辺地域への影響を排除するとの基準や指令に従って設定されており、Xバンドレーダと同様の考えに基づいている。

******************************

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A5.青森に設置のXバンドレーダ関連の情報−3

 

*所在地
マーカの位置がXバンドレーダを運用している米軍通信所
周囲は何もなく、日本海に面している。

 

*京丹後市の調査報告書にあった車力Xバンドレーダ
https://www.city.kyotango.lg.jp/shigikai/xband/250411-12-sisatsuhoukoku.pdf
 

******一部 引用 ************
基地対策調査特別委員会視察報告書

視察目的:京丹後市の航空自衛隊経ケ岬分屯基地に設置が予定されている「Xバンドレーダ」について、国内に唯一配備されている青森県つがる市を視察する。
視察年月日:平成25411日(木)〜12日(金)

(4) 制限区域について
Xバンドレーダは、前方に信号を発信受信する固定式フェイズドアレイタイプで、後方に制限区域※を設ける必要は無い。
制限区域は国際的基準により設定され、人員をレーダの電磁波にさらされる可能性から保護するために必要な立入禁止区域と機材と航空機を保護するための区域がある。
Xバンド・レーダの出力は一定であるため、制限区域が変わるということも無い。
人員の立入禁止区域の125mは、Xバンドレーダの最も低い仰角2°から算定され、レーダから電磁波が放出される高さが4mの距離に設定されている。

※Xバンドレーダによる電磁波の影響を考慮して制限区域が設けられている。
レーダの前面に対して、水平方向に120°垂直方向に140°の範囲。
国際基準により、制限区域の半径は以下の通りとなる。
@ 軍用航空機:5500m  A 民間航空機 : 3400m
B 機材:500m  C 人員 : 125m
********************************


 

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A6レーダからの電波測定の困難さ

 

電波防護のための基準への適合確認の手引き 総 務 省
には以下のようなレーダ(パルス波電波)の適合確認法が規定されている。

レーダの性能指数を用いて計算を行う場合:
この計算は過剰なサイドに設定されているので、計算によって適合確認できれば、測定などは不要とされる。

********************
2)算出の基本式
電波の強度は最初に空中線入力電力P[W]、空中線からの距離R[m]、主輻射方向(指向方向)の利得G[]を用いて次式により電力密度S[mW/cm2]の値を算出することとします。

S=PGK
40πR2 

この場合の利得Gは、どの方向においても主輻射方向の利得を用います。
このため、算出結果は過大になることはあっても過小評価することはありません。
この算出結果で基準値を満たしている場合は、これ以上の評価は必要ありません。

3)指向性を考慮した基本算出式
基本算出式の算出結果は、指向性を考慮していないため指向性アンテナを用いている場合は算出結果が過大になる場合があります。
このため、基本算出式の算出結果が基準値を超えた場合は、指向性を考慮して算出します。

次式のように、(2)で求めた基本算出式の算出結果S0[mW/cm2]に、算出地点の方向に対する電力指向性係数D(θ)を乗じることにより算出します。
S = S0
D(θ) F [mW/cm2]

レーダ等、回転する空中線の場合は、補正係数Fに適切な係数を乗じます。



算出例3(レーダ
レーダ等に用いられる、パルス波や、回転するアンテナの場合の扱いについて、下記の諸元を用いて説明します。

無線設備の諸元
周波数        1300MHz
送信機出力    2000kW(尖頭値)
パルス幅      3μs
パルス繰り返し周波数 345pps
アンテナ利得  35dBi(絶対利得) 電力半値幅    1.3
アンテナ高    20m アンテナ長    長径 13.8m 短径   m
開口効率     0.15
アンテナは回転しているものとします。

この場合は、次の点に注意して算出します。
(1) 
空中線入力電力の算出
レーダ等のパルス波の場合は、時間平均値を求めます。
時間平均値は、尖頭値にパルス幅、パルス繰り返し周波数を乗じることにより求めます。

 

この場合は、
2x106   x 3x10-6    x  345         
   2070[W]
尖頭値   パルス幅  パルス繰り返し周波数   時間平均値
と計算されます。

(2) 空中線回転補正係数の算出
基本算出式による算出結果が基準値を超えた場合は、アンテナが回転している場合は、回転を考慮して算出を行います。
このとき用いる補正係数Fの求め方について、説明します。

@ 境界となる距離の算出
係数は、0.6D2/λ[m]を境にして変わります。まずこの距離を求めます。
Dは、アンテナの最大長です。この場合は、13.8mになります。
λは波長で、300/周波数[MHz]で求めます。この場合は、0.23mです。
以上より、0.6D2/λ=496.8[m]になります。

A 補正係数Fの算出
以上から、Fを次のように算出します
ア 距離Rが496.8mを超える場合
F=θBW/360(θBWは電力半値幅)ですから、θBW1.3[]を代入して、F=0.0036になります。

イ 距離Rが496.8m以下の場合F=φ/360(φ=2tan-1(D/2R))です。距離Rが式に含まれているので、算出地点により異なった値になります。
D=13.8
、算出地点の距離Rを代入にして、関数電卓等を用いてφを計算して下さい。

*********************

以上にあるように、計算で求めることはできるが、軍事レーダなどの場合は、性能指数が公開されない・軍事秘密となっていれば、部外者は計算ができない。
指向方向の適合確認法での計算結果として、適合する距離が公開されると、部会者は軍事秘密になっている指数としての「レーダのピーク電力値と指向方向の利得の積」が判明し、この積からレーダの探知可能距離などが想定されることにもなる。

指向方向外の方向に限定して適合する距離の計算結果を公表した場合は、この距離は「レーダのピーク電力値と指向方向の利得と指向方向外の利得減衰率の積」によって定まるので、部外者は軍事秘密である指数「レーダのピーク電力値と指向方向の利得の積」を推定することはできなくなる。

レーダからのパルス波電波の強さを測定する場合は、以下のことが肝要となる。

レーダからのパルス波電波は、非常に短い時間だけ電波を出すので、測定器が応答できない、針が振れる前に電波の発信が止まるので針が振れない、ということから、測定には格段の留意が肝要となる。

***********************
測定の注意
・パルス波の測定には、熱電対型の電磁界プローブ、周波数非同調型測定系又はパルスが占有する帯域幅に比べ広い周波数分解能帯域幅を持つ周波数同調型測定系を用いてください。

****************************

上記の測定では、電波強度の測定は、ピーク値での測定値となる。
電波防護指針に定める時間平均値を求めるのは、『レーダ等のパルス波の場合は、時間平均値を求めます。時間平均値は、ピーク値(尖頭値)にパルス幅、パルス繰り返し周波数を乗じることにより求めます。』とあるパルス幅とパルス繰り返し周波数の値が必要となる。

この2つの指数も軍事秘密とあれば、部外者は正確に測定することができたとし、ピーク値はわかっても、平均値を算出し、電波防護指針への適合性を厳密に評価することはできない。


 

 

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A7与那座のガメラレーダ

 

$1:琉球新報のサイトにあった与那岳レーダ
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-203942-storytopic-1.html
 にあった情報の抜粋

**********************************
電磁波「不安」7割 空自・与座岳新型レーダ2013314

与座岳に設置されている新型レーダ「FPS―5」。
国内に設置されているものでは住宅地から最も近い=2月21日、糸満市与座

$2:与那座分屯地のサイトにあったレーダ周辺の電波強度測定報告書
http://www.mod.go.jp/asdf/yoza/other.html
 にあった内容を抜粋

********************************
与座岳分屯基地周辺の電界強度測定結果説明
与座岳分屯基地
25.3.1(金)

測定用器材 東洋メディック株式会社製 電磁波強度測定器EMR−300

 

****************************

BEMSJ
のコメント:
1
.測定器について
「電磁波強度測定器EMR-300」という記述があるが、この測定器は様々な種類のプローブ(センサ:アンテナ)を選択できるので、この測定で、いかなるプローブを用いたかは、不詳。

熱電対式のプローブを用いる必要がある。

2.測定結果
上座原地区での測定を見ると最大値:0.0048 平均値0.0003とある。
この最大値/平均値の比は0.00480.000316である。
この比は、基本的にレーダから発信されるパルス波電波のDuty比と同じになるはずである。
与那座のレーダ波のDuty比は公開されていないが、16という数字は疑問である。

よって、最大値だけがおかしいのか、平均値だけがおかしいのか、それとも最大値と平均値がともにおかしいのか? いずれにしても、正確に測定されていない恐れがある


$3:糸満市与那座レーダ電波測定 

糸満市のサイトで、与那座の電波を主体に、周囲の電波を測定した結果が報告されている。
http://www.city.itoman.lg.jp/docs/2016063000015/

************一部 引用 **************

 

 

以下は部分拡大図


 

***********************

 

5の上与座での測定が最大で、時間平均値0.002365W/cm2 となっている。

上記のデータは使用した安立のスペアナ MS-8911Bでの測定結果である。
MS8911B
の仕様  周波数 7.1GHzまで  通過帯域幅 最大 3MHz とある。


与那座はガメラレーダで
L
バンド 12GHz Long wave
S
バンド 24GHz Short wave  を使用する。


J/FPS-5
は、日本の防衛省が主導して開発し、航空自衛隊のレーダーサイトで運用されている防空用の固定式警戒管制レーダ装置。
通称ガメラレーダ。
Wikipedia
では与那座のレーダが写真で紹介されている。

測定周波数としては、安立のスペアナは測定が可能である。

電波防護指針への適合確認の測定では、『パルス波の測定には、熱電対型の電磁界プローブ、周波数非同調型測定系又はパルスが占有する帯域幅に比べ広い周波数分解能帯域幅を持つ周波数同調型測定系を用いること。』となっている。
しかも、この測定ではピーク値の測定となり、時間平均値への計算にはレーダ波のDuty比がいくらであるかの情報が必要となる。

ガメラレーダのパルス幅は3μ秒程度と広いのであろうか?
そうであれば安立のスペアナで「帯域幅:3MHz」設定にすれば、電力密度のピーク値は測定可能となる。

この点を、測定調査を行った糸満市に問い合わせてみると
・測定は可能として行った。
Duty比はわからなかった。  
ということであった。

したがって、この糸満市の測定調査結果は、正確に測定されているとは言えない。


 

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A8佐渡のガメラレーダ

 

佐渡のガメラレーダからの電波強度に関する情報はほとんどなく、以下の「妙見山 森の「仲間たち」というブログに掲載されている程度である。
http://myokensan.jugem.jp/?month=200703
にあったブログから一部引用
このブログは20073月以降では全く更新されていない。

******************
妙見山森の仲間たち
妙見山は、毎年多くの観光客が訪れる大佐渡スカイライン中腹に位置し、可憐な高山植物も咲きます。佐渡島の豊かな自然と平和が保たれますように・・。

2007.03.22 Thursday
author : moriaogaeru
懇談会のご報告
10時から11時の予定が20分を超える盛会?でした。参加者28名で、内訳は、子ども1名、佐渡市からは市長、防災管財課課長、秘書課、防災管財課の方々で計5名、新聞記者2名、一般市民20名でした。
開始前に市長と最後の打ち合せをし、一般施政方針演説はなしとなり、始めの挨拶5分を抜かすと丸々1時間15分を高野市長ないしは防災管財課榎課長からの回答・説明と更なる質疑応答に費やすことができました。

内容のあるやりとりで、それなりの果実はありましたが、工事着手の延期にこぎ付けられそうな手応えはありませんでした。
今日、新潟日報と朝日に記事が載りましたが、電磁波に関しては、施設稼動後、佐渡市独自で測定をし、数値を公表すること、国が条件を守っていなければ、稼動を止めてもらうか出力を落としてもらう、との市長からの返答をもらいました。

(略)

森の仲間たち側で用意した資料のほかに、電磁波関係の説明のため佐渡市から航空幕僚監部による「電波に関する資料 H18.12.27」のコピーが配布されました。
この資料は、佐渡市が防衛庁(当時)にレーダの性能について詳しい情報が欲しいと再三言ってようやく出されたものだそうです。

本文は全6頁で、始めの3頁は一般的な説明、残りの3頁がFPS-5に関する情報。
・レーダの原理
・電波について
・電波の特徴および用途
FPS-5(FPS-XXを改称)の電波強度について (*)
・レーダの電波放射要領について
・朱鷺の放鳥区域の電波強度(概算)について (*)
(*)に関しては本文最後にご報告します。

(略)

(*)に載っていた数値の詳細は以下の通りです

FPS-5の電波強度について
アンテナからの距離 電力密度
40m
地点    0.62mW/cm2 
50m
地点   0.43mW/cm2 
100m
地点   0.2mW/cm2 


・朱鷺の放鳥区域の電波強度(概算)について
妙見山の標高1,042m地点から小佐渡丘陵の高度300m地点までの距離を約13Kmとした場合、FPS-5からの電力密度は0.00003mW/cm2
総務省の電波強度の基準値の上限は1mW/cm2ですから、以上の数値は安全であるという結果を導き出します。
ただし、海外の基準値に比べると、全く安全とは言いきれないことが分かります。
(略)

それから、FPS-5本体から40m周囲に柵をはって進入できないようにするとのことですが、100m地点でもまだ恐ろしい数値だと私は思っています。
近くの白雲荘までの距離も気になるところですが、なにもしらないサドノウサギちゃんたちの繁殖がもっと心配です。
総務省の基準値の甘さは大問題です。
*******************

以下は建設された佐渡のガメラレーダ

 

 

 

BEMSJ注:

「アンテナからの距離 電力密度 40m地点  0.62mW/cm2」とこれまでにBEMSJが知りえた最も大きい電波強度が、航空幕僚監部からの説明資料として、入っていることに注目。

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A9京丹後Xバンドレーダ

 

*京丹後市作成のXバンドレーダに関する資料から一部引用

 

 

BEMSJ注:ここで注目すべきは「青森の車力通信所においては、レーダ前面以外には、立入禁止区域を設置していない」という点である。
本当にレーダの横1mに近接しても大丈夫?

 

*防衛省のサイトにあった電波の測定報告書

http://www.mod.go.jp/rdb/kinchu/tpy-2/data/20150828-1.pdf

 

BEMSJ

1.測定器の条件が全く記述されていない。

2.この報告書では測定結果を有効数字小数点以下2桁で示している。このことは、小数点以下3桁目は四捨五入して小数点以下2桁目は0であること、小数点以下3桁目には0.000から0.004の値があるかもしれないことを意味する。
したがって、防護指針の100分の1以下であることは確かであるが、1000分の1以下であることを意味しない。
数μW/cm2の平均値を持つ電波が存在する可能性が高いと言える。

 

Xバンドレーダ基地の場所 

 

 

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A10.韓国レーダの電波強度測定結果2016

 

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/07/14/2016071401843.html
******************  一部 引用 ***********
Chosun online
朝鮮日報
2016/07/14
韓国国防部 PAC2配備基地で電磁波測定を公開

【ソウル聯合ニュース】
韓国国防部は14
、空軍が都圏地域で運するパトリオットミサイル(PAC2)の配備基地に記者団を招き、電磁波測定の様を公開した。
パトリオットミサイル砲台のレーダが安全基準に基づいて運されていることを強調し、国の最新鋭地上配備型迎撃システム「⾼⾼度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の韓国配備をめぐる電磁波などの健康被害や安全への懸念を払しょくする狙いがあるとみられる。

電磁波測定はパトリオットレーダの正
から20メートル離れた地点でわれた。
レーダビームの下部分は地とほぼ水平に発射される。
レーダが約3〜4メートルの台座にあることを踏まえると、間の頭上のさにレーダビームが発射されることになる。

電磁波測定はレーダビームが発射されている6分間、電
密度の最値と平均値を測定する法で実施された。

レーダ前20メートル地点の電密度の最値と平均値はそれぞれ0.2826ワット毎メートル(=0.02828mW/cm2)、0.0735ワット毎平メートル(=0.00735mW/cm2)だった。

韓国の電磁波法で定められた電磁波の体への許容基準は10ワット毎平メートル(=1mW/cm2)だ。
パト
リオットレーダの正で測定された電磁波の最値は許容値の2.8%準にとどまることになる。

パトリオットレーダがある場所は海抜400メートルの
頂だ。
レーダは北朝鮮のミサイ
ル攻撃に備え北側を向いており、の麓にはい建物が並んでいる。
レーダ正の電磁波が許容準の3%にも満たないため、の麓の住宅密集地域には電磁波による被害はないというのが軍当局の説明だ。

パトリオットレーダから40メートル離れた地点での電磁波最
値と平均値はそれぞれ0.0877ワット毎平メートル(=0.00877mW/cm2)0.0313ワット毎平メートル(=0.00312mW/cm2)だった。

パトリオットミサイルの場合、⽴⼊区域は前の半径120メートル内だ。

120メートル地点での電磁波最値と平均値はそれぞれ0.0336ワット毎平メートル、0.0065ワット毎平メートルだった。

韓国軍はTHAAD配備をめぐる懸念を取り除こうとパトリオットレーダの電磁波を韓国メディアに公開したが、懸念は簡単に払しょくできないとみられる。
THAAD
のレーダの安全距離はパトリオットレーダよりも短いが、出
はより強だとされる。

(略)
***********************

BEMSJ
のコメント:
この測定は正確とは思えない。測定器や測定条件が明確になっていないが、以下の点から信頼できるとは思えないデータである。
1.
「トリオットミサイルの場合、
⽴⼊区域は前の半径120メートル内だ。前120メートル地点での電磁波最値と平均値はそれぞれ0.0336ワット毎平メートル、0.0065ワット毎平メートルだった。」とある。

立入禁止区域は、基本的に曝露基準値と一致する時間平均値になる距離として定める。
距離が120mであるならば、その箇所における電力密度の時間平均値は1mW/cm2になるはずで、それが測定結果として0.00065mW/cm2に過ぎないとは、まったく信じられない。
1500
分の1の電波強度とは・・・・・・
したがって、この記事にある測定値は、すべて、信頼できないことになる。

2
.最大値と平均値の比は、レーダからのパルス電波のDuty比に同じになるはずである。
120m
地点での測定値の比は5.240m地点での測定値の比は2.820m地点での測定値の比は3.8とまちまちであるだけでなく、レーダのDuty比とは思えない低さである。

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A11.韓国レーダの電波強度測定結果2017

 

http://japanese.joins.com/article/278/232278.html?servcode=400 にあった情報

**********一部引用**********
中央日報/中央日報日本語版
韓国国防部「THAAD電磁波は基準値以下、騒音の影響もない」
2017
0813

慶尚北道星州郡(キョンサンブクド・ソンジュグン)の高高度防衛ミサイル(THAAD)レーダの電磁波は人体保護基準を大きく下回ることが明らかになった。
THAAD
による騒音もやはり専用住居地域の昼間騒音基準の50デシベル水準で、周辺の集落に及ぼす影響はほとんどないと調査された。
国防部は12日、慶尚北道星州郡のTHAAD敷地内で電磁波と騒音を測定したところ、こうした結果が現われたと明らかにした。

電磁波は基地内部で測定した6分連続平均値がレーダから100メートル地点で0.01659W/平方メートル、500メートル地点で0.004136W/平方メートルとなった。
700
メートル地点では0.000886W/平方メートル、管理棟周辺では0.002442W/平方メートルとなった。

電磁波瞬間最大値は0.04634W/平方メートルで、すべて関係法令で定めた基準値を下回った。
現行の電波法は電磁波人体保護基準を10W/平方メートルと定めている。
(略)
**********************

BEMSJ
注:測定器や測定条件が記載されていないので、何とも言えないが、これらの数値は低すぎないか?

 

 

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A12青森県大湊のガメラレーダ

 

青森県の下北半島を北上するにつれ、窓からはその名のとおり釜を伏せたような頂のえ始める。
下北半島の最峰、標879mの釜臥(かまふせやま)だ。
頂には異様なビルディングのようなものが建っている。
通称“ガ
メラレーダ”、航空衛隊の正式名称は、J/FPS-5.

 

 

大湊のガメラレーダからの電波強度測定に関する情報は未入手。

 

 

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A13.レーダの諸元の例

 

以下は、BEMSJがインターネットで検索して見つけた情報です。
Duty
比に関しては、得られたパルス幅と繰り返し周波数の情報から、BEMSJが計算した値です。

68ZPS3レーダ

68ZPS-3レーダは海上自衛隊の潜水艦に搭載し、海面上の目標に対する捜索および警戒を行ないまた航行にも使用するものである。
周波数:9.3459.045GHzの間
尖頭電力;40kW
指向方向の利得:不詳
パルス幅:0.5μS
パルス繰り返し周波数:600Hz
パルスのDuty比:3300


71式対空レーダ装置JTPS-P5
71
式対空レーダ装置JTPS-P5は主として陸上自衛隊において、対空監視に使用する。
周波数:Sバンド
尖頭電力;60kW
指向方向の利得:33dB
パルス幅:25μS パルス幅圧縮:1μS
パルス繰り返し周波数:400Hz
パルスのDuty比:2500


76式対砲レーダ装置
76
式対砲レーダ装置は陸上自衛隊において、主として野戦砲などの発射位置及び弾着位置の標定に使用する。
周波数:Xバンド
尖頭電力;250kW
指向方向の利得:46.5dB
パルス幅:2μS パルス幅圧縮:-0.17μS
パルス繰り返し周波数:3600Hz
パルスのDuty比:1600


65式艦船用レーダOPS-4D
65
式艦船用レーダOPS-4Dは海上自衛隊の艦船に搭載し、近距離水上測的用および航海用として使用する。
周波数:Xバンド
尖頭電力;30kW
指向方向の利得:不詳
パルス幅:0.1μS0.6μS
パルス繰り返し周波数:819.6Hz
パルスのDuty比:203512200


79式対空レーダ装置JTPS-P9
79
式対空レーダ装置JTPS-P9は主として陸上自衛隊の師団高射大隊に装備し、対空監視及び目標情報などの伝送に使用するものである。
周波数:Lバンド
尖頭電力;5kW
指向方向の利得:23dB
パルス幅:6.7μS
パルス繰り返し周波数:3125Hz/2500Hz
パルスのDuty比:4960


85式地上レーダ装置(JTPS-P11 JTPS-P12 )
85
式地上レーダ装置(JTPS-P11,JTPS-P12)は主として陸上自衛隊に装備し、車両に搭載して、地上における車両、人員などの移動目標及び海上における船舶を監視するために使用する。
周波数:Xバンド
尖頭電力;2kW
指向方向の利得:33dB
パルス幅:4μS  パルス幅圧縮:0.3μS
パルス繰り返し周波数:1875Hz
パルスのDuty比:1780


Xバンド可搬型気象レーダ 天頂観測用X-band レーダ
周波数:Xバンド
尖頭電力;20kW
指向方向の利得:38dB
パルス幅:0.21.0μS  
パルス繰り返し周波数:1200Hz
パルスのDuty比:4200840


*海上保安庁 海上交通センター用マグネトロンレーダ
周波数:13.65GHz
尖頭電力;40kW
指向方向の利得:36dBi
パルス幅:0.1μS  
パルス繰り返し周波数:3kHz
パルスのDuty比:3300


*島根大学のXバンドレーダによる降雨観測用
周波数:9.74GHz
尖頭電力;40kW
指向方向の利得:不詳
パルス幅:0.5μS  
パルス繰り返し周波数:750Hz
パルスのDuty比:2600


*羽田空港 気象観測用ドップラーレーダ
周波数:5.28GHz
尖頭電力;200kW
指向方向の利得:不詳
パルス幅:1μS  
パルス繰り返し周波数:1120/840Hz
パルスのDuty比:830


*羽田空港 航空路監視用レーダ
周波数:1.344GHz
尖頭電力;2000kW
指向方向の利得:35dBi
パルス幅:3μS  
パルス繰り返し周波数:345Hz
パルスのDuty比:970


*Haystack & HAX レーダ (アメリカの宇宙空間の宇宙ゴミの観測用レーダ)の仕様



Pave Pawsレーダの仕様 AN/FPS-115 PAVE PAWS Radarの仕様
フェーズド・アレイ・アンテナを用いたレーダ
Peak Power 1,792 active elements at 325 watts = 582.4kW
 ピーク送信電力:582.4kW
Average Power
 平均送信電力 145.6 kW 
BEMSJ注:この数値から発信パルス電波のDuty比は41と非常の小さい。>
Effective Transmit Gain 指向方向の送信利得:37.92 dB
Active Radar Diameter
レーダの大きさ: 22.1 m
Frequency
周波数: 420 MHz to 450 MHz
Radar Detection Range
検出可能距離:5,556 km
Sidelobes
サイドローブ:-20 dB (first), -30 dB (second), -38 dB (root mean square)
3 dB Beam Width
 ビーム幅: 2.2 degrees

 

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A13Aフェーズド・アレイ・アンテナを用いたレーダFPS117の性能

記:2020−1−8

Wikipedia
(日本語版と英語版)にあった情報 ザグレブ情報を合わせた。

ザグレブ情報:
掲載誌:Conference: Window of Science Program, EOARD At: Hanscom, MA, USAJune 2005
タイトル:Near Field Measurements of the FPS-117 Solid-State Phased Array Antenna
研究者:Juraj Bartolic  University of Zagreb

AN/FPS-117
は、アメリカ合衆国のロッキード マーティン社が開発した3次元レーダ。
原型であるAN/FPS-117は固定式であるが、可搬式のAN/TPS-117、可搬式改良型のAN/TPS-77が派生している。

本システムではフェーズド・アレイ・アンテナが採用されており、レーダアンテナ素子は半導体素子となっており、300個が配置される。
水平方向は機械回転式で、回転速度は6rpmとなっている。
使用周波数はLバンド、12151400MHzであり、3.4°×2.7°のペンシルビームが形成される。
18
個のチャンネルにおいてランダムに周波数ホッピングを行なうことができる。

*以下は性能指数などの情報
Wikipedia日本語版を基本とし、()内に示す数値はWikipedia英語版の情報、<>内はザグレブ情報にあった数値である。
長期にわたり、大量に生産されたので、もしかして、個々のレーダによって、性能指数は異なるのかもしれない。

開発・運用史
開発国アメリカ合衆国
就役年1983
製造数120基以上

送信機
周波数Lバンド
パルス幅100 / 800 マイクロ秒(Pulse-width 51.2 / 409.6μS) pulse length 51.2μs short range; 409.6μs long range
パルス繰返数400 / 800 Hz (PRF 241) 320-917Hz
送信尖頭電力25kW以上(Power 24.6 kW) <24.75kWpeak

<注:繰り返し400Hz、パルス幅100μSとすると、Duty比は251
<注:繰り返し241Hz、パルス幅51.2μSとすると、Duty比は801


アンテナ
形式フェーズド・アレイ・アンテナ
素子半導体素子×300
ビーム幅3.4°×2.7°
走査速度6 rpmRPM:5 - 6 RPMs
方位角全周旋回無制限
アンテナの指向方向の利得:<Antenna gain 39.48 dB
アンテナの大きさ:<5.89m ×7.26 m

探知性能
探知距離400 kmRange 470 km
探知高度30,480 mAltitude 30.5 km

*以下はザグレブ情報からの抜粋

 

 

フェーズド・アレイ・アンテナの場合、遠方界と近傍界の境界は、上の計算式にある様に、アンテナの大きさと発信する電波の周波数(波長)によって定まる。
このアンテナの場合は、使用する周波数によって異なり、1400MHzの場合は、822mである。
アンテナの指向方向で、822mまでは近傍界として扱い、822m以遠は遠方界として扱う。

 

上図は垂直面での指向特性
サイドローブの最も大きいものは、指向方向の利得に対して、約20dB小さいだけである。

上図は指向方向とサイドローブの電波の強さを示している。アンテナから100m程度の距離では、指向方向の電波は500V/m、サイドローブは50V/mとなり、電界の比では10分の1、電力密度比では100分の1と言える。

 

レーダの指向方向での電波の強さを上の図は示している。
距離約800mより以遠では電波の強さ(電力密度)は距離の2乗に反比例している。これは遠方界であるからである。

 

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A13B.早期警戒機ホークアイ搭載のレーダの仕様

記:2020−2−6

以下はWikipediaにあった情報
************************

E-2は、アメリカ合衆国のノースロップ・グラマン社が製造している早期警戒機である。
主にアメリカ海軍が航空母艦(空母)および地上基地で運用している。
愛称はホークアイ(hawkeye:鋭い視力・鷹の目、の意味)

 

 

E-2A
目的:捜索用
開発国:アメリカ合衆国

送信機
周波数:UHF400 - 450 MHz
パルス幅:13マイクロ秒 (0.2マイクロ秒にパルス圧縮)
パルス繰返数:300 pps
送信尖頭電力:1 MW
BEMSJ注:この情報からパルスのDuty比は約16001

アンテナ
形式:リニアアレイ
素子:八木アンテナ×8本×2
直径・寸法ロートドーム:直径7.3 m×高さ76.2 cm
アンテナ利得:21.5 dB
ビーム幅幅:7×高さ20
走査速度:6 rpm
方位角:全周無制限
*********************

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A14GlobalSecurityというサイトにあったパトリオットミサイルとレーダの安全対応

http://www.globalsecurity.org/space/library/policy/army/fm/3-01-85/appe.htm  にあった内容を一部和訳して、引用

ミサイルとレーダ装置の操作に関連する安全マニュアルである。


*******************************************
Appendix E
    補足E
Safety

This appendix describes the responsibilities of the commander and safety officer, and discusses procedures for identifying and assessing safety problems that may arise during training or operations.
It also describes general safety precautions that must be observed during Patriot operations as well as special hazards associated with Patriot system.

安全
この補足は訓練及び運用時に起こるかもしれない安全問題も抜き出しと評価の手順に関するもので、操作員と安全管理者の責任を記述する。
また、パトリオットシステムに関連する特異な危険性と同じく、パトリオットの運用時に観察されるべき一般的な安全に関する予防原則に関しても記述する。

Table E-1
Special Hazards 特異な障害

Hazard

RF Radiation

1)Rader site

2)AMG

障害

高周波電波曝露

1)レーダサイト

2)アンテナ群設置場所(訳者注;UHFアンテナ等)

Adverse Effects

RF radiation heats body tissues, and if sufficiently high will permanently damage tissues. Damage is NOT immediately apparent.

異常な影響

高周波電磁波は人の体を加熱する、もしその加熱が十分に大きい場合は、体組織に永久的な損傷を与える。この損傷は即座には現れない。

ActionsRemedial or Preventative

Rader Set:

Stay out of denied occupancy zone, the area is within 120m in front of the Rader set, and at least 2 m from sides and rear of Rader set. (See Fig. E1).

 

 

Observe safety precautions listed in RS operator manual (TM 9-1430-601-10-1).

 

 

Before placing RS in remote, conduct visual inspection of RS to ensure all crewmembers have vacated the area.

Post RF radiation warning signs at right/left side of limits of radar hazard area to warn personnel of required control measure.

 

AMG

Observe safety precaution listed in CRG operator manual (TM-9-1430-604-10)

If exposure occurred or is suspected evacuate affected personnel without delay to nearest medical facility for examination by physician. 

対応策(治療もしくは予防的に)

レーダ装置:

立入禁止区域に入るな。区域はレーダ装置の正面では120m以内の区域、レーダ装置の両サイドと裏側では少なくとも2m以内の区域である。(図E1参照)

 

レーダ装置の取り扱い説明書(TM9-1430-601-10-1)の中に記載されている安全のための予防措置の功を読むこと。

 

遠隔地でレーダ装置を設置する前に、すべての隊員が禁止区域にいないことを、目視でチェックすること。

対応策が要求されていることを人々に警告するために、レーダの危険区域の右・左の両側の境界に高周波暴露の注意を示す標識を立てること。

 

 

AMG:

CRG 取り扱い説明書(TM-9-1430-604-10)に記載されている安全に関する予防措置の項を読むこと。

もし曝露を浴びたり、疑いがある場合は、その区域から影響を受けた人を立ち退かせ、遅滞なく、最も近い医療設備で医師の診断を受けさせること。

 

AMD TASK FORCE SAFETY
The radar RF-radiation ground and "no-fly" danger zones are shown in Figure E-2.
Personnel should stay out of the ground danger zone, and friendly aircraft should be alerted to stay outside of the "no-fly" zone.
レーダの高周波電磁界暴露の地上と上空の飛行禁止空域を、E-2図に示す。
人々は地上における危険区域に立ち入ってはならない。
そして、友好的な航空機には、飛行禁止空域に入らないように警告を出すこと。

Figure E-2. THAAD Radar RF Hazard Distances
E-2 サーズレーダーの高周波危険区域

人が立ち入ってはならない区域は、レーダの電波が発信される正面の、左右65度の範囲で、レーダから100m以内の区域。
飛行禁止区域は、レーダの正面の左右65度で、レーダから4kmまで、上空は4kmまでの区域。


**********************************

BEMSJ
注:人の立ち入りを制限している区域は、アメリカの軍の電磁波曝露基準に従っていると思われる。
暴露基準値がいくらか?確認が必要である。
アメリカの軍での暴露規定としては、日本の電波防護指針値(一般公衆に対する規定値として1mW/cm2)ではなく、職業的な曝露基準値(一般公衆に対する基準値より大きな値)を採用しているかもしれない。


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A15WHOのファクトシートに見る軍用レーダ


以下の文書がある。
WHO
ファクトシート226
1999
6
電磁界と公衆衛生 レーダと人の健康

この中で、軍用レーダに関しては、以下の記述がある。

*******************
軍用レーダ は、数も多く、種類も豊富です。
大きなピーク電力(1 MW またはそれ以上)と平均電力(kW)をもつ大規模設備から、典型的には航空機に装備される小型の射撃統制レーダまで多様です。

大型レーダは、その周辺住民に関心を引き起こします。
しかし、広い表面から電力が放射されるため、レーダシステムに関連した電力密度は敷地の境界の内側で10 から100W/m2 間で変化します
境界の外側のRF 電磁界レベルは精巧な測定器以外では測定不能なほど低いものです。

しかし、航空機に装備されている小型の射撃統制レーダは地上の軍人にとって危険となるかもしれません。
これらの装置は比較的高い平均電力(kW)をもち、アンテナの面積も小さいので、最大10 kW/m2 の電力密度を有することが可能です。
このレーダの地上テスト中、全ての軍人はテスト区域への立入を禁止されるため、一般の人々がこのような放射にばく露されることはありません。
この他に以下に述べられる種類のレーダのほとんどを軍用としても使用します。
****************************

ここで注目すべきは、「レーダシステムに関連した電力密度は敷地の境界の内側で10 から100W/m2 間で変化します。」という点です。
レーダ基地の敷地では、電波防護指針値1mW/cm 2を超えるか、その10倍の強さの電波曝露がある、ということです。
基地内では、隊員のために、レーダ装置の周囲に立ち入り禁止区域を設定しなければならない、ということです。


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A16.アメリカFCCOETブレテンに記載されている注意事項から

 

Federal Communications Commission
Office of Engineering & Technology
アメリカ連邦通信委員会 技術部門

Evaluating Compliance with FCC
 Guidelines for Human Exposure to Radiofrequency Electromagnetic Fields
無線周波数電磁界への人の曝露のためにFCCガイドラインへの適合確認

OET Bulletin 65
Edition 97-01
August 1997
OET
ブレテン65   9701版  19978

この文書の中で、レーダやパルス性電波に関する記述は以下の通り。

Instrument

(16) The instrument should respond to the average (rms) values of modulated fields independent of modulation characteristics.
With respect to measurements of pulsed sources such as radar transmitters, many commercially-available survey instruments cannot measure high peak-power pulsed fields accurately.
In such cases, the instrument should be chosen carefully to enable fields close to the antenna to be accurately measured.

測定器に関して、
測定器は変調の条件によらずに、平均値を測定できるものであること。
レーダのようなパルス性電波源の測定に関しては、多くの市販されている測定器は高いピーク電力のパルス性電波を正確に測定することはできない。
この場合、正確に測定できるように、アンテナの近傍の電波強度を測定できるように、注意深く測定器を選択しなければならない。

Measurement:
(5) For pulsed sources, such as radar, the pulse width and repetition rate and the antenna scanning rate.
測定に際して、レーダのようなパルス性電波源の場合、パルス幅、繰り返し周波数、アンテナの回転速度が重要となる。

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A171962年アメリカ軍文書に見るレーダの立入禁止距離の例


*軍文書からの抜粋

文書名:RM-TR-62- 1THE EFFECTS OF RADAR ON THE HUMAN BODY レーダの人への影響
発行年:21 March 1962  機密解除:1972
著者:John J. Turner
発行:U. S. ARMY ORDNANCE MISSILE COMMAND

この文書の中に、レーダから発信される電波曝露に対する立ち入り禁止距離の例が含まれている。

オリジナルの画像


TABLE I
DISTANCE IN FEET FROM RADAR ANTENNA TO BOUNDARY OF POTENTIALLY HAZARDOUS ZONE FOR SOME COMMON RADAR (ARRANGED IN DESCENDING ORDER OF DISTANCES)
1:幾多の一般的なレーダに関する障害可能性区域の境界距離(距離の大きい順に並べた)


1の数字を抜き出して、考察を加えた。

Radar type

Distance for

0.01 watt/cm2 ft

換算 0.01W/cm2

なる距離 m

0.001W/cm2になる
距離の想定 m

AN/FPS-16

 

 

 

Sig C Mod.

1020

310

980

Standard Mod.

590

180

570

AN/FPS-6

560

170

540

HERCULES Improved Acq.

 

 

 

HIPAR (Fixed)

550

168

530

AN/MPS-23

530

162

512

AN/MPS-14

472

144

455

HERCULES Imp TTR

400

122

385

AN/TPQ-5

350

107

338

AN/FPS-20

338

103

326

AN/MPQ-21 (10')

300

91

285

HERCULES MTR (AJAX)

270

82

259

AJAX Acq. (Fixed)

260

79

250

AN/CPS-9  

260

79

250

 

表では「フィート」で表記されているので、BEMSJは「m」に換算した数字付記した。
またこの危険区域は電波曝露限度値が0.01W/cm210W/cm2)という職業的な曝露での1962年段階での値に基づいて計算されているので、電力密度は距離の2乗で決まるという理論から、単純計算で一般公衆に対する電波防護指針値である1W/cm2の値に減衰する距離を、計算で求めた結果も付記した。

AN/FPS-16に関するBEMSJの検証
最も大きい禁止区域を持つレーダAN/FPS-16はどのようなレーダか?

Wikipedia

このAN/FPS−16は高精度の地上設置型、単一パルス単一追跡レーダ(SOTR)で、NASAの有人宇宙計画やアメリカ空軍、アメリカ陸軍で広範囲に使用された。

レーダの外観

 

AN/FPS-16 レーダ装置の技術データ
代表的な出力 ピーク値 1MW(固定周波数マグネトロン使用) 250W(周波数可変型マグネトロン使用)
周波数: 固定型: 5480MHz   可変型:5450−5825MHz
パルス繰り返し周波数(内部) ;341, 366, 394, 467, 569, 682, 732, 853, 1024, 1280, 1364 or 1707 PPS
パルス幅: 0.25, 0.50, 1.0 µs

注:Duty比を計算してみる。
最大値は11700、最小値は586 中間値(パルス幅0.50μs 繰り返し853Hz)は2100 

レーダ地上設備の特性: AN/FPS-16
周波数 (MHz) 5400-5900  
ピーク出力電力 (MW) :1.3
アンテナの大きさ(meters) 3.9   
アンテナの指向方向の利得 (dB) 47  

以上のWikipediaの情報から、
Peak
電力1.3MW、アンテナ利得47dBDuty586として計算を行うと、以下のグラフでもわかるように、電力密度1mW/cm2になるのは、アンテナの指向方向約1000mという結果が得られる。
この数字は、1962年のアメリカ軍の文書の中にあった数字と略一致する。

 

 

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A18.レーダハンドブックに見るレーダの諸元

 

Radar handbook
Editor in Chief
MERRILL I. SKOLNIK
Second Edition
 1990McGraw-Hill発行に以下のようなレーダの仕様例が紹介されている。

radar Parameters for Global Air Traffic Surveillance 一般的な航空管制用レーダ
Antenna Type: Corporate-fed active phased array
Diameter: 100m
Frequency: 2GHz
Directive gain: 66.42 dB
Peak power: 22.33 kW
Pulse width: 2000
μs
Maximum duty: 0.20

Cosmos 1500 Side-Looking Radar Parameters and Performance 人工衛星に搭載した地上観測用レーダ
Type
Real-beam side-looking radar (460-km swath)
Frequency/wavelength
9500 MHz/3. 15 cm
Antenna
Type
Slotted waveguide
Size
11.085m x 40mm
Gain
35 dB
Side lobes
-22 dB to -25 dB
Power: 100 kW peak, 30 W average
Pulse width: 3
μs
PRF: 100 pps
Duty: 3300

BEMSJ
注:ソ連のコスモス1500衛星は1983年に打ち上げ、搭載したレーダによって海面の状況を調べた。

SEASAT-Asynthetic aperture radar.  人工衛星に搭載した地上観測用レーダ
Antenna: Planar phased array (10.74 m x 2.16 m)
Gain: 34.7 dB
RF carrier: 1275 MHz
Peak power: 800 W (nominal), 1125 W (maximum)
Pulse length: 33.8
μs
PRF: 1463, 1540, 1645 pps
Duty cycle: 0.05 (maximum)
Average power: 44.5W (nominal), 62.6W (maximum)

BEMSJ
注:SEASATは以下に示すような人工衛星で、人工衛星に設置されたレーダからの電波で、海の状況などを観察する。

 

*その他に以下の紹介がある

 

BEMSJ注:
上記リストにあるレーダに関して調べる時間はないが、リストにあるMarconiMartelloには様々なタイプのレーダがあるようです。
S723
の場合は、移動型で、防空用3次元レーダとあり、周波数はLバンド、繰り返し周波数:255PPS、ピーク電力:132kW、平均電力5kWという情報がある。

 

MartelloS723レーダ

 

 

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192001年レーダ基地での被曝事故例

記:2017−10−28

いニュースであるが、以下に示す被曝事例がある。

*******************
基地従業員への電磁波問題で沖縄県が防衛施設局に申し入れ
登録日 :2001120

NHKニュース速報

去年5月、沖縄のアメリカ軍普天間基地のレーダ施設の周辺で作業をしていた日本人従業員が強い電磁波を浴びたとして、沖縄県は那覇防衛施設局に対し、日本人従業員の安全対策を徹底するよう申し入れました。

那覇防衛施設局などによりますと、去年5月、アメリカ軍普天間基地のレーダ施設の周辺で作業をしていた日本人従業員10人のうち2人が、この施設の屋上に上り、レーダ施設から出ている強い電磁波を浴びた可能性があるとして検査を受けました。

その結果、2人のうち1人は血液の血小板が正常の範囲よりも少なくなっていたため、その後再検査を受けたところ、血小板の数値は正常の範囲内だったということです。

2人が上がったレーダ施設には、「電磁波、高圧電流につき危険」と英語で書かれていましたが、日本語では表示されておらず、作業の前に特に注意は受けなかったということです。

これについて沖縄県は、こうした問題が二度と起きないよう日本人従業員の安全対策の徹底を、先月、那覇防衛施設局に申し入れました。

また、2人は検査にかかった費用およそ2万円について、それぞれ那覇労働基準監督署に労災申請をしましたが、労基署では症状が確認されていないことに加えて、電磁波による被害が科学的に立証されていないなどとして申請を退けています。
******************

同じ内容の状況が、ガウス通信 47号 2001220日にありました。
***************************
                      沖縄 基地のレーダで2従業員が被曝

米軍立ち入り調査を拒否 労災申請も却下

                               

 昨年5月米軍普天間基地で従業員2人が、飛行場内の電波発信施設の屋上で、高出力の電磁波を浴びた疑いがあるとして検診を受け、労災申請を出した。
2
人のうち1人は一時、血小板の数が正常値の範囲を下回ったが、その後数値は回復し、通常の勤務に就いている。


2
人は検査費用の代金を労災保険で請求したが、「発症がない」との理由で119日、却下された、県はこの事故を受け、昨年12月に県商工労働部長名で那覇防衛施設局に対し、「日本人従業員の安全対策に関する申し入れ」と題した文書を送り、「事故の再発防止と安全対策の徹底」を求めている。

作業員2人が上がった施設は−TACAN(タカン)と呼ばれ、上空の航空機に向けて電波を発して飛行場の位置を知らせており、民間空港も用いられている。
周波数は数ギガヘルツ帯で、出力は確認されていないが、国内の空港に設置されている同施設では3から5キロワットだとのこと。

2
人は他の従業員8人とタカンの周囲に塀を設置する工事のため現場へ来ていた。
ここには英文で「警告 放射線 高圧電流につき危険」との表示はあったが、2人は気づかずに、はしごを伝って屋根に上がった。
米軍タカンの危険性を事前に従業員に知らせていなかったという。

高出力の電磁波被曝が疑われたため2人は米海兵隊安全部から検査を勧められ、その日に県立中部病院で検査した。
1
人(40)は異常なしだったが、もう−人(47)は血小板の数が正常値を下回った。
1
週間おきに行われた2回目、3回目の検査では正常値の範囲内に戻った。

2
人は検査費用を8日後に労災保険で請求した。
那覇労働基準監督署は2人から電話で聞き取り調査した上で、労災適否の判断のため、現場への立ち入り調査を望んだが、米軍は立ち入りを拒否した。
同署は労災適用の可否を検討してきたが、119日になって申請を却下した。

米軍は昨年515日、この事故の報告書を那覇渉外労務管理事務所に提出した。
事故を受けて県が防衛施設局に出した文書は、事前に注意喚起がないなど「基地内の安全管理体制が十分といえない」と指摘し、「二度とこのようなことがないように」と安全対策の徹底を求めている。

10
人が命じられた作業は、施設の危険性を考慮して立ち入りを制限しようとした囲いを設置するのが任務だった。
皮肉にもその危険防止の工事をしようとした基地従業員がその危険にさらされてしまったのだ。


事故後、現場区域と施設の壁には書告文が日本語でも表示されるようになった。
施設はその後老朽化が進んだため撤去され、現在は新しい施設が整備されるまでの暫定的な設備が置かれているという。
  【琉球新報の120日、21日の記事よりまとめました。】
*****************************

 

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20.艦船搭載レーダで鳥が落ちる

記;2017−10−31

以下の古い情報が残っていた。
共同通信ニュース2003211

**********************
イージス艦従え洋上給油 対米支援オペを公開
2003/02/11
共同通信ニュース速報

【アラビア海洋上11日共同】
砂じんに曇るアラビア海上空。日の丸を付けた白いヘリが、並走する日米の艦上を舞うように警戒する。
海上自衛隊は11日、テロ対策特別措置法に基づくアラビア海での米大型補給艦への洋上給油を公開。
共同通信など取材団は、警護役のイージス護衛艦「きりしま」(7,250トン)から、対米支援のオペレーションを間近で見た。

「甲板への立ち入りを禁止する」。
イージス・システムの立ち上げとともに「きりしま」のハッチドアが次々と閉められ、艦内の赤色灯が点滅した。
500キロの探知範囲を誇る「きりしま」の全方位レーダが発する強い電磁波は、直接浴びれば人体に有害。
「艦に近づく鳥が衝撃で急に落ちることもある」と隊員。

(
)
***************************

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A21.イージス艦では、適切な管制を行うことで、レーダ電波発信中でも、甲板上で作業を行うことができるという情報

2018−11−16

以下は、秋田市に設置予定のイージス・アショアに関する秋田市での説明会の資料からの抜粋です。
元の資料は、秋田市のWEBに関係資料と共に、全文が公開されています。

***************

 

 

*********************************

 

この防衛省の説明は、A20の項で紹介した情報とは相反している。
以下のA22の項の情報が正しいと思われるので、このA21の項の説明は、誤りと言わざるを得ない。



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A22.イージス・ショアでは、230mといった安全距離の確保が必要という情報

記:2019−11−2

以下は2019527日に秋田市で行われた防衛省の説明会の資料の一部である。


この説明では、230m以遠は安全と言っている、すなわち、イージス・アショアのレーダ装置から230m以内の地上は「安全基準を超える=危険」な領域であると言っている。

 

このことは、A20の項で、「イージス艦ではレーダ照射中も、適切な管制により人に対する影響を避けることができ、上甲板上での作業を実施できる」とある説明と、一致しない。

イージス艦の場合、レーダの位置と上甲板の高低差は10mとかそれ以上あって、下方向への電波漏れが僅少なのか? イージス艦の大きさが、例:230mを超える長大なので、遠距離では作業ができる…とでも言っているのか? 

A20の項の説明が誤り と言ってしまえば、すっきりする。

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A23Tokyo Expressのサイトにあったイージスレーダ解説


http://tokyoexpress.info/2018/07/16/
・・・・にあった情報の一部 引用

*******************
Tokyo Express
のサイト
イージス艦用レーダ、日米が共同開発へ  —レーダ技術進歩の歴史—
by
松尾 芳郎 • 2018716

近着のロイター電は、「防衛省はイージス・アショア用レーダに、SPY-6ではなく、ロッキード マーチンが推す新レーダ[SSR = Solid States radar]の採用を内定」と報じた。
SSR
は、米ミサイル防衛局がアラスカ州に配備する弾道ミサイル迎撃システム「長距離識別レーダ」(LRDR=Long-Range Discrimination Radar)で、2020年にアラスカ中部のクリア(Clear)空軍基地に配備される。

現行イージス・システムより探知距離が長く、弾頭に伴われ飛来するデコイ等の識別能力が高い。
従来のレーダは単位相の波を使うのに対しLRDRでは”dual-polarized”と呼ぶ垂直/水平の2位相のビームを使うので、飛来する目標の識別が容易にできる。
これは民間の気象レーダで開発された技術で、雹や雨滴のサイズを識別し予報に役立てている。
送受信素子には富士通製Ga-N半導体を使っている。

レーダの原理

ここでレーダの基本を復習してみよう。
以前TokyoExpress(2011-01-29)に「レーダの基本」として掲載したが、その要点をまとめ、改訂して述べる。
レーダの基本はアンテナからマイクロ波ビームを発射し、目標からの反射ビームを受信して目標を捕捉する。
目標を探すには、あらかじめ設定したパターンでビームを繰り返し送信し、その反射ビームを受信する。
従ってアンテナには、単に送受信するだけでなく、ビームを正確に発射、かつ迅速にスキャンできることが求められる。
実際には、ビームはコーン状に広がると共に外側に漏れて、いわゆるサイドローブを生じる。

アンテナ性能の尺度には、メインローブに対するサイドローブの大きさが使われ、それが10分の1(10dB)100分の1(20dB)1000分の1(30dB)である、と云うように表される。
実用のレーダは20 30 dBのレベルにある。


半導体技術が十分でなかった頃は、レーダにはマイクロ波で最も波長の長いLバンド(0.5-1.5 GHz/波長20cm前後)が使われていた。
現在は、より小さな目標を探知できるXバンド(8-12 GHz/波長数cm級)が主流である。
しかしXバンドより波長がやや長いCバンド(4-8 GHz)Sバンド(2-4 GHz)、また、波長の短いKuバンド(12-18 GHz)も使われている。
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A24レーダを搭載した軍用機におけるパイロットの電波曝露の事例

記:2020−2−5

Military com
という軍人・退役軍人の会のサイト
https://www.military.com/daily-news/2019/12/02/if-jet-radars-dont-raise-cancer-risk-why-did-navy-coat-some-cockpits-gold.html
 にあった情報の一部引用

**************************
タイトル:If jet radars dont raise cancer risk, why did the Navy coat some cockpits in gold?
もしジェット機のレーダにガンのリスクがないならば、なぜ海軍はジェット機の操縦席に金箔をはったのか?
By TARA COPP | McClatchy Washington Bureau | Published: December 2, 2019

E-2D Hawkeye


WASHINGTON (Tribune News Service)
On night missions in the 1980s, when the beam from the E-2 Hawkeyes radar swept over the cockpit, pilots could generate electrical arcs by holding the metal base of their flashlights close to the metal paneling around them.
ワシントン発:1980年代の夜間飛行時、E-2 ホークアイのレーダのビームが操縦席の上を走査した時、パイロットは周囲の金属製パネルの近くに懐中電灯を近づけることによって、電気火花を飛ばすことができた。

The arcs
would kind of light up the cockpit at night every time the radar went by, said retired Hawkeye pilot Navy Capt. Ralph Ricardo.
火花はレーダが動くたびに夜の操縦席を明るくしてくれるようなものだった、と退役したホークアイのパイロットを務めた海軍のCapt. Ralph Ricardoは語った。

they decided to put the gold coating
 on all of the windows and the escape hatches, Ricardo said. After that, the pilots couldnt create the same electrical arcs, he said.
全ての窓と緊急脱出口に金箔をはることになった。Ricardoは「その後、パイロットは同じような電気火花を作り出すことができなくなった。」と語った。

***********************

関心のある方は、元ネタのサイトをアクセスしてください。

引用はしていないが、タイトルにもある様に、パイロットや退役したパイロットは、こうしたレーダ波の曝露による健康影響を危惧している・・・・という情報が含まれている。

早期警戒機ホークアイには大きなレーダドームがあり、そのレーダはどのような方向に電波を飛ばすのか定かではない。ホークアイの写真を見る限り、機上のレーダから下方に発信した場合や、水平に発信した時の下方へのサイドビームが、操縦席に入り込むことが予想される。レーダ波の強さがどの程度かは定かではないが、レーダと操縦席の距離は10mも無いかもしれず、それなりの強度であると思われる。

そうした問題を知って、レーダ波が操縦席に入り込まないように、窓などに金メッキ(金箔をはった)をしたのであろう。



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A25.港における船舶レーダからの曝露 英国2005


https://www.hse.gov.uk/pubns/dis5.pdf
にあった情報の一部紹介

2005年の刊行とおもわれる。

******************

Health and Safety Executive 英国政府の健康安全部門
Ships
radar in port  港における船舶レーダからの曝露

Measurements taken in a port, 10meter from the stationary scanner of a container ship fitted with both a 50kW set and a 60kW set, and tests carried out by a manufacturer of radar equipment 10meter from a 10kW set with a stationary scanner, have all shown power densities significantly less than 100
μWcm-2.

50kW
のレーダ装置と60kWのレーダ装置の両方を取り付けたコンテナ船のレーダを静止スキャナ方式(レーダ電波を一定の方向にだけ向けて発信させた場合)で動作時に、レーダから10メートルの位置で測定した場合も、そして静止スキャナ方式で動作時の10kWのレーダ装置から10mの位置でレーダ装置のメーカによって行われたテストでも、すべて100μWcm2未満の電力密度であった。
********************

注:これは曝露基準の10分の1を超えないという意味。
上記の英国政府の見解として、曝露基準の10分の1を超えない、という説明で、実測した場合の数字ではないとおもわれる。実際の曝露量は?

 

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B1.空港レーダからの電磁波1992年徳重研究

 

空港などのレーダは、普通の人でも曝露する恐れがあるので、報告します。

空港にある電波レーダからの電波(電磁波)の強さに関して:に 郵政省通信総合研究所の徳重寛吾さんが発表された航空監視レーダ局近傍地域の電界強度測定と推定」がありました。

掲載誌:電子情報通信学会論文誌1992年2月 Vol. J-76-B-U No.2 PP145-149
タイトル:航空監視レーダ局周辺の電磁環境の測定と推定

研究者:徳重寛吾ら

 

一部を紹介すると

『航空路監視レーダ局(Air Route Surveillance RadarARSR)は,航空路を飛行中の航空機の安全航行と効率的飛行を支援するために国内の10数箇所に設置されている。

これらは空中線電力(尖頭値)2MWのパルス電波を発射しており,免許されている無線局の中で最大である。

またこれらの局の中には周辺地域に住民が居住していたり,通行者,自動車等がごく近傍まで近づき得るものもあり.その影響が懸念される。』

ということで、測定を行った。

 

また、重要なことであるが、測定は

『測 定 法

調査対象波のパルス幅の逆数に比べ十分広い通過帯域の増幅系をもつスペクトルアナライザ(以下スペアナと言う)を用い,包路線検波の波形振幅から電界強度を測定する。

受信アンテナは小型で取扱いが容易なダブルリッジドガイド型を用い,給電線はレーダ電波が漏れ入るのを防ぐため外導体が金属パイプ構造の同軸線を用いている。

パーソナルコンピュータは各部の制御,電界強度・波形観測データの記録に用いる。

スペアナを同調周波数f:1345MHz,通過帯域幅:3MHz,ビデオフィルタ帯域幅:3MHz,周波数掃引:OHz,掃引速度:500m秒,最大レベル保持機能ありに設定し,管面表示受信電力を読み取り,電界強度測定値(尖頭値)Em(dBμX/m)は次式で求める。

<式は割愛>』

とある。

レーダの発信パルス幅の逆数に比べて十分広い通過帯域の増幅系を持つスペアナで、尖頭値(ピーク値)を測定で得ている、ということが肝要である。

 

そうして、

『尖頭値に対する平均値のレベル低下KdB)は、受信尖頭電力の平均電力換算値10LOG((パルス幅)・(パルス繰返し周波数))とレーダアンテナの回転に伴う電力減少値10LOG((水平ビーム幅/360)との合計となり、今回の場合K=−529dBとなる。』

とあり、スペアナでの測定値から、発信パルスのDuty比(パルス幅とパルス繰り返し周波数から決まる割合)を基にして、時間平均値を得ている。

 

この測定法は、電波防護指針の適合法に沿っている正しい方法である。

空港監視レーダの場合は、パルスのDuty比が公開されているので、ピーク値(尖頭値)で得られる実測した電波強度の値から、電波防護指針に定める平均値での規制値への適合評価を行うことができる。

逆に言えば、パルスのDuty比が不明であれば、ピーク値は測定できても、そのままでは電波防護指針への適合評価は不可能となる。

 


結果は

『レーダ局の構内(350m以内)と半径2km以内の道路で電界を測定したという内容です。
最も強かったのはピーク値で 距離580mの所で 676V/m。
離れた場所では 17V/mとなる。』

人が通常 近づくことができる場所の範囲での測定と思います。 

『レーダーの場合は パルス電界であり、またレーダの回転を考えるとピーク値で人体曝露影響を考えるのか、時間平均値を取るのか考えなければならない』としてあります。 

ここから私のコメント: 
郵政省の電波防護指針によれば、一般の住民の曝露限度はこの周波数帯では、61・4V/m。
単純にピーク値を比較すれば、曝露基準を超えます。 
防護指針では6分間の時間平均を取ることにしているので、レーダの電波は瞬間しか電波をださないし、回転していて常に放射する方向が変化しているので、仮にこうした電波を受ける場所に住んでいたとしても、測定された値の100分の1以下とか1000分の1程度の曝露になるのでしょう。 
そして結果としては、多分 問題ないレベルになっていると 思います。 
但し、レーダのアンテナの直前に長時間たっていたりすれば問題にはなるでしょう。

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B2:レーダ基地周辺の住民の発がん:レスター1984年研究

記:2018−1−19

*週刊金曜日 1997627日号に以下の記事があった。

*********************
電磁波は壮大な人体実験 荻野晃也
「空港レーダ周辺住民にガン多発(1984年レスター報告)」、「ホノルル放送電波タワー周辺にガン多発(1986年ヘンダーソン報告)」、「レーダ基地周辺に乳児突然死多い(1989年オルアリー報告)」がありますが、いずれも原因解明があいまいなままになってしまいました。
********************

ここに紹介されている研究は、その詳細は?その後どうなったか?
「空港レーダ周辺住民にガン多発(1984年レスター報告)」、で検索。また、3件のトピックスでは、和文・英文での検索で、何もヒットせず。日本語でのネット検索では何も関連する情報は見つからない。

レスターの報告に関しては、元ネタは以下の文献であることが判明した。
オルアリーの報告に関しては、オルアリーのスペルなどが判らない限り、情報は見つからない。

*レスターの研究概要
1)研究者:Lester, J.R. and Moore, D.F.
タイトル:Cancer incidence and electromagnetic radiation 癌罹患率と電磁波曝露
掲載誌: Journal of Bioelectricity, 1(1): 59-76. 1982

Abstract
 概要
A neighborhood pattern of cancer incidence was found in the city of Wichita, Kansas with the suggestion of a time element in its appearance.
カンサス州Wichita市内で、発生の時間を考慮に入れた癌罹患率の地域傾向を見つけた。

Cancer tended to occur on leading terrain crests relative to radar transmissions and was less frequent in the valleys.

レーダ送信に関連する地形的な峰に沿って癌が発生する傾向にあり、峡谷部では頻度は少ない。

A formula is presented that relates the incidence of cancer, terrain, and the presence of microwave radiation.
癌罹患、峰、そしてマイクロ波放射に関連した数式を提示する。

2)研究者:Lester, J.R. and Moore, D.F.
タイトル:Cancer mortality and air force base 癌による死亡率と空軍基地
掲載誌: Journal of Bioelectricity, 1(1): 77-82. 1982

Abstract
概要
Nationally, counties with an Air Force Base were found to have significantly higher incidences of cancer mortality during 1950-1969 compared to counties without an Air Force Base.
空軍基地のない郡に比べて、空軍基地のある郡では19501969年間の癌による死亡率が有意に高いことが判った。

上記の2文献はPubmedにはリストされていない。
もう少し詳細な内容を知りたいが、2文献共に54ドルと極めて高額な有料DLなので購入はあきらめた。
EMF-Portal
のサイトでも内容は開示されていない。

以下はレスターの報告 ニール・チェリーのサイトにあった。
Residential cancer radar-exposure studies:
住民の癌のレーダ電磁波曝露研究
In 1982 Lester and Moore published a study of radar related cancers in residential populations in Wichita, Kansas, based on a hypothesis that radar could produce cancer.
1982
年にレスターとモーレは、カンサス州ウィチタにおける住民の中の癌に関連するレーダの研究論文を刊行した。これはレーダが癌を引き起こしているという仮説に基づく。

This was based on the evidence of chromosome damage and the Zaret (1977) evidence of cancer rates in radar repairing workers.
レーダ保守要員の癌の発生率に関する1977年のザレーの研究と、染色体異常という確証に基づいている。

Because there were airport and air force base radars to the east and west of Wichita they used geographic distributions of total cancer incidence on ridges exposed to both radars, sides of hills exposed to only one radar and valleys sheltered from both radars.
なぜならば、両方のレーダ電波を受ける山の尾根における全癌罹患率の地域分布として考慮したウィチタの西と東に空港と空軍基地があり、丘の側面では片方のレーダ電波のみ受け、峡谷部では両方のレーダからは遮蔽されているからである。

Mortality data was obtained from the period 1975-1977. 
死亡率として、1975年から1977年の期間のデータが得られた。

A significant linear trend (p=0.034) was found with incident rates (/100,000 p-yrs) of 470, 429 and 303 respectively from high to low RF/MW exposures, Figure 2.
2に示す様に、高周波・マイクロ波電磁波曝露の強さに応じて、10万人年の罹患率として、470429303という数字が得られ、有意な線形傾向を示している。

They concluded that their results established a correlation between radar exposure and cancer incidence, but that more research was necessary for causation.
彼らは、彼らの研究結果は癌罹患とレータ曝露は相関があるとみなしているが、因果関係がある立証するためにさらなる研究が必要であると、言っている。

Figure 2: Cancer rates in Wichita, Kansas, for the population not exposed to a radar, exposed to one radar and exposed to two radars, at their residences, Lester and Moore (1982a), Trend p= 0.034.
2 ウィチタにおける癌罹患率:レーダ電波の照射を受けない人々、片方のレーダ電波の照射群、二つのレーダ電波の照射群、それぞれ住居にて、レスターとモーレの1982年研究より引用、傾向率P=0.034

They then carried out their own follow-up study to test the hypothesis that cancer mortality is associated, in part, with the possibility of chronic exposure to radar.
そこで彼らは、可能性として、もしくは一部を占めているかもしれない慢性的なレーダ電波への曝露が癌による死亡率に関連しているとする仮説をテストするために。継続した研究を行った。

They studied the cancer rates in 92 counties associated with US Air Force Bases (AFBs) with radars, over the period 1950-1969.
彼らは、1950から1969年の期間の、空軍基地のレーダに関連する92の郡における癌の率を調べた。

They found that counties with AFBs (and radars) had significantly higher cancer rates for males (p=0.04) and females (p=0.02).
彼らは、空軍基地のある郡では有意に高い癌の率(男性ではP=0.04、女性ではP=0.02)を見出した。

Thus the hypothesis is strongly supported by this study with significant and dose-response increases in All Cancer mortality.

これは、この仮説は彼らの研究によって、有意に、強く支持されることになり、そして、量反応関係も全癌による死亡率で増加した。

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3.艦載軍事レーダからの電波の直射を受けたノルウェー海軍の船舶事故の例

記:2018−3−9

以下の報告がある。
***************
掲載誌:Int Marit Health 2013; 64, 4: 177182

タイトル:Accidental exposure to electromagnetic fields from the radar of a naval ship: a descriptive study 海軍船舶のレーダからの電磁波を事故で曝露:記述的な報告
研究者:Bente E. Moen et al;

ABSTRACT
概要

Part of a crew on a Norwegian naval ship was exposed to the radar waves for approximately 7 min from an American destroyer during an incident at sea in August 2012.
Information about the exposure was not given by the navy.
ノルウェー海軍船舶の乗組員の一部は20128月に海上で起こった出来事で、アメリカの駆逐艦から7分間、レーダ電波の直射を受けた。暴露の詳細な情報は海軍からは得られていない。

This is a description of what happened with the crew on board after this event.
14 persons had been on the ship bridge or outside on the deck during the exposure and the rest of the crew had been inside the ship.
本論は、この出来事が起こった後に乗組員に何が起こったかを、記述する。
14
名の乗組員は曝露が発生した時に船の艦橋か甲板の外にいて、その他の乗組員は船内にいた。

27 persons were examined at a hospital 6
8 months after the event, as they had developed a large number of symptoms from different organ systems.
27
名は、様々な臓器から多種な症状が発生したので、この出来事から6−8か月後に病院で診察を受けた。

They were very worried about all types of possible adverse health effects due to the incident.
彼らは、この出来事による健康への様々な悪影響の可能性に心配している。

All were examined by an occupational physician and an ophthalmologist, by an interview, clinical examinations and blood tests at the hospital.
全員は、病院における問診と臨床試験と血液検査によって、産業医と眼科医による診察を受けた。

he interview of the personnel revealed that they had not experienced any major heating during the episode.
個人への問診で、この出来事の時に彼らはおもだつような熱を感じなかったことを確認した。

Their symptoms developed days or weeks after the radar exposure.
彼らの症状はレーダ電波への曝露の1日から1週間後に発現した。

They had no objective signs of adverse health effects at the examination related to the incident. Long-term health effect from the exposure is highly unlikely.
彼らには、この出来事に関連する診察で、健康への悪影響の客観的な兆候は見られなかった。

The development of different symptoms after the incident was probably due to the fear of possible health consequences.
この出来事の後に様々な症状の発現は、健康への影響の可能性に関する不安から来るものと思われる。

Better routines for such incidents at sea should be developed to avoid this type of anxiety.
洋上におけるこうした出来事に対するこの種の不安を避けるために、より良い定期検査方法を開発すべきであろう。

本文から
The American ship passed with a distance of about 70
100 m from the Norwegian ship, and several of the crew was standing outside on the deck to watch the event. By mistake, the radar on the American ship was not turned off during the event.
アメリカの駆逐艦はノルウェーの船の70100mの所を通過して、乗組員は甲板の外に立ってこの遭遇を見ていた。誤って、アメリカの船のレーダはこの遭遇の期間、停波にしなかった。

The time for the ships to pass each other, and thus the assumed exposure period, was about 7 min.
船舶がお互いにすれ違う時間、すなわちレーダ電波の照射を受けたとみられる時間は、約7分である。

No one in the navy had any information on the exposure from the radar, they only informed about the name of the radar.
海軍の誰もレーダからの曝露に関する情報を持っていない。彼らはただレーダの型式を知るのみ。

However, we have deduced the following information: the radar was a SPY-1D (V), an S-band radar using frequencies 3
4 GHz, wavelength 7.510cm [16].
しかし、我々は以下の情報を推定した。レーダはSPY-1D(V)で、34GHzの周波数で、波長は7.510cmのSバンドレーダである。

The peak output power of this radar is 6 MW and the average power is 58 kW, which gives a duty cycle of about 1/100.
このレーダのピーク電力は6MW、平均電力は58kWで、これらからパルス比は約100となる。

The antenna gain can be calculated from the handbook formula G = 27000//(square of lobe width) [17]. With the lobe width given as 1.7
°, the gain will be 9300.
アンテナ利得は、ハンドブックにある公式G=27000/ビーム幅の二乗より計算できる。ビーム幅は1.7°なので、利得は9300となる。

With an estimated distance between the ships of 90m, r, we will have an estimated peak power density (S) of 550 kW/m2, according to the formula: S = G
× P/4πr2, where P is the peak output power.
距離r90mと推定すると、公式S = G × P/4πr2 Pはピーク電力値 とすればピーク電力密度は550 kW/m2となる。

Calculating the peak electric (E) field in the pulse from the formula S = E2/377, this will be about 15 kV/m.

公式S = E2/377を用いてパルスのピーク電界強度を計算すると約15 kV/mとなる。

Since the SPY radar has a pencil beam form and has a random search pattern, it is not possible to calculate the exact exposure of the personnel on board the Norwegian ship.
SPY
レーダはペンシルのようなビームであり、無作為な方向に電波を出しているので、ノルウェーの船舶上で人が受けた曝露量を正確に計算することは不可能である。

If the beam was located at the same spot for some seconds, the mean power density then would be of the order of 5.5kW/m2.
仮にビームが数秒間、同一の点に放射しているとすれば、平均電力密度は5.5kW/m2のオーダとなる。

Five of the crew on the bridge and 2 of the crew standing outside on the deck on the same side of the ship where the American ship passed, felt a slight sensation of warmth on the face during the radar incident. This sensation lasted for a very short period, not more than seconds or minutes.
艦橋にいた5人の乗組員とアメリカの船がすれ違う時にすれ違う側の甲板の外に立っていた2名の乗組員は、レーダ波の照射を受けた時に、顔にちょっとしたほてりを感じた。この感覚は非常の短い時間で消え、1秒以下か1分以下であった。

HEALTH PROBLEMS SOME DAYS AFTER THE EVENT
出来事のあった同じ日の健康問題

曝露直後には問題は発生せず。


They were to sail in the ocean and perform their normal work.
However, the ship journey was interrupted, as the crew started to report many different health problems.
彼らは大洋の中で航海を続け、正常な業務を行った。
しかし、乗組員が多様な健康問題を提起し始めたので、この公開は中断することになった。

参考情報:
SPY-1D(V)
はフェーズドアレイレーダで、アンテナの大きさは3.7m

フェーズドアレイアンテナの場合は、遠方界とみなせる境界はアンテナからどの程度の距離か?
それが判らないと、この論文にある曝露レーダ波の電力密度の計算式が適用できるかできないかが判明しない。

通常のパラボラアンテナの場合と同じ公式で境界を求めてみる。
境界値はR=0.6D2/λ  
D=3.7m
   λ=0.10m  とすると R=82m  
D=3.7
m   λ=0.07m  とすると R=96m 
距離90mでのこの論文における曝露強度の推定は、ぎりぎりセーフと言えるのかもしれない。


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B4.自衛隊のレーダによる性比の影響に関する1996年研究

記:2018−12−2

*以下の情報があった。1996年の研究を2018年に紹介している。

https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20180928-00098564/
にあった情報
********************
衛隊の都市伝説「レーダ電波を浴び続けると女の子しか生まれなくなる」の調査結果
JSF 
軍事ブロガ
2018/9/28(
)

衛隊では以前から「戦闘機パイロットはレーダ電波の影響で男性の生殖機能に障害が生じて子供は女の子しか生まれてこなくなる」という都市伝説が流れていました。
しかし実際に衛隊のパイロットの子供を調べたところ、生まれて来た子供の性の差は全く見られなかったという報告があります。
航空衛隊がアンケート調査したもので、19969「宇宙航空環境医学」33巻第3号に収録されています。

この航空衛隊によってわれたアンケート調査はサンプル数が少なくてまだ証明にはならないのですが、戦闘機パイロットと戦闘機レーダ管制者の合計115の子供の内訳は男子58・女子57と全く性別に差が見られない結果となっています。

都市伝説が生まれてしまったきっかけは、海外の研究で戦闘機の機動によるG暴露とレーダによる電磁波暴露が子孫の性に影響を与えるかもしれないという報告が部にあり、医学的に証明されないまま噂話とし本にも持ち込まれて、衛隊では現象として起きていないにもかかわらず事実として広まってしまったというのが経緯のようです。
海外の研究では影響があったという報告と影響がなかったという報告がそれぞれ複数あり、はっきり分かっていません。

つまり
本の報告を含めて影響ある・なしがまだどちらともえないのが現状です。
このため現在でもはっきりと断定することは出来ないのですが、そもそも戦闘機の機動によるGの影響なのかレーダ電波の影響なのからも、これまでの研究では区別が付いていません。
激しい機動を行わず、強
なレーダも積んでいない輸送機のパイロットには影響が見られないという報告もあります。
今後の研究で早期警戒管制機や地上レーダ基地のレーダ管制者の子供を調査するなど、条件を絞って調査数を増やしていかないとレーダ電波の影響かどうかは、判断は出来ないでしょう。

ただし少なくとも
衛隊では「戦闘機パイロットやレーダ管制者は子供が女の子しか生まれなくなる」という現象はまだ度も報告されておらず、否定するアンケート調査しか存在しません。
まことしやかに「衛隊では〜」と唱える話を掛けたら、それは根拠のない都市伝説であるとえます。
********************

ということから、原著を入手して読んでみました。
以下がその概要です。

***********************
掲載誌:宇宙航空環境医学 33.137-142.1996
タイトル:戦闘機操縦および戦闘機レーダ整備員の子供の男女比に関する検討
研究者:藤田真敬 ら

.
はじめに
従来から若年の操縦者や整備員の間で「戦闘機操縦者(以下、操縦者)や戦闘機レーダ整備員(以下、整備員)の子供には女の子が多いのではないか。」ということが示唆されてきた。
実際、操縦者や宇宙飛行士の子供は有意に女の子が多いという報告を米空軍におい1961年にSnyderが、1987年にLittleらが行い、ドイツ空軍において1976年にGoerresらが行っている。

これらの断面調査書にもとづいた報告がこのような仮説の背景にあると考えられる。
これらの報告においては、電磁波や高加速度による影響が指摘されているが、日本においてはこの種の調査報告はなされていない。
今回われわれはこの問題に関する日本における現状を調査する第1段階として航空自衛隊・第5航空団(宮崎県児湯群新田原〉における操縦者を調査するとともに未だ国際的にも報告のない整備員の子供の男女比についても調査し統計学的な検討を行った。


調査対象
1
)航空自衛隊第5航空団飛行群所属の既婚操縦者53人のうち結婚後2年以上子供のいない者2人、結婚後1年子供のいない者1人を除いた子供を持つ者50人(内訳;主にF-15を操縦する者18人および主にF-4を操縦する者32人)
2
)航空自衛隊第5航空団整備補給群所属の既婚戦闘機レーダ整備員4人のうち結婚後2年以上子供のいない者1人、結婚後1ケ月子供のいない者1人を除いた子供を持つ者12

結果
既婚の操縦者および整備員全員の協力を得ることができ、調査の固答率は100%であった。
(略)
総飛行時間を6ヶ月毎に平均した時間(以下、6ヶ月飛行時間)と受精時6ヶ月飛行時間を機種ごとに比較しTable2に示した。
F-15
操縦者、F-4操縦者、操縦者全体のいずれについても、6ヶ月飛行時間、平均値(Table2においてFlying Hour1)と受精時6ヶ月飛行時間の平均値(Table2においてFlying Hour2)との間に有意差を認めなかった。
機種ごとの飛行時間の比較でも有意差を認めなかった。

子供の男女比については、男児の出現率の差の検定を行い操縦者と日本における標準値との間で比較した。
男児の出現率の日本の標準値は平成4年・日本人日動態統計による男622,136人、女586,853人から51.5%(男106対女100:男女比106%)とした。
操縦者の子供は男43人、女47人と女児が4人多いが男児の出現率は47.8%、日本の標準値との比率の差の検定で有意差を認めなかった。

同様に子供の男女比を整備員と日本の標準値との間で比較した。
整備員の子供は男15人、女10人、男児の出現率は60.0%(男女比150%)、日本の標準値との比率の差の検定で有意差を認めなかった。

Fig1
に操縦者の受精時総飛行時間および受精時6ヶ月飛行時間と子供の性別との関係を示した。
受精時総飛行時間および受精時6ヶ月飛行時間のそれぞれについて男児受精前と女児受精前の飛行時間とをt検定で比較した。
受精時総飛行時間については子供2人以上の場合について男児のみの場合、女児のみの場合、男児と女児の場合の3群の比較をScheffeの多重比較で行った。

受精時総飛行時間の比較では、男児受精前1.424+/-640時間、女児受精前1,331+/-790時間、受精時6ヶ月飛行時間の比較では男児受精前106+/-35時間、女児受精前98+/-34時間であった。
男児が生まれる場合と女児が生まれる場合とで飛行時間に有意差はなかった。
子供2人以上での受精時総飛行時間は男児のみの場合1.401+/-676時間、女児のみの場合1,401+/-868時間、男児と女児の場合1,507+/-727時間であった。
男児のみ、女児のみ、男児と女児の3群の比較において受精時総飛行時間に有意差はなかった。

まとめ
航空自衛隊・第5航空団において戦闘機操縦者および戦闘機レーダ整備員の子供の男女比について断面調査を行い統計学的な検討を行った。
調査対象の子供の男女比と日本の標準値との間に統計学的有意差を認めなかった。
この問題について医学的な結論を出すには基礎データが不足しており、より大きな集団を対象とした疫学的検討が必要と考える。

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関心のある方は、原著全文を入手して読んでください。


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B5.パルス電磁波曝露の規定が、ICNIRPで見直し?

記:2019−7−5

https//www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1907/03/news0l6.html にあった内容から、一部引用
***************************:
Computer Weekly
日本語版20190703
5G
と健康被害【2第回】:

2018
12月には、通信業界が一部資金を提供しているIT'IS Foundationが、熱損傷を防ぐためには電磁放射線への暴露に関するICNIRPの安全基準を見直す必要があると勧告した。

この研究によると、「従来のICNIRPガイドラインの勧告は、短パルスの出力密度を時間平均インシデン卜出力密度の1000倍に制限していた』。
しかし調査の結果1000倍というピーク対平均比では、「パルスにさらされた組織の恒な損傷を引き起こす可能性があることが分かり、既存の暴露ガイドラインを改定する必要性が裏付けられた。」

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この記事は5Gの通信方式に関して書かれているが、実は、レーダからの電磁波曝露を考える時に、より重要な情報である。
IT IS
の報告本文をBEMSJはまだ読んでいないので、後日、追加の解説を行うつもりである。


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B6. Richerらの2000年レーダとガンの研究(イスラエル)

記:2019−12−2

以下の研究がある、概要のみを紹介。

掲載誌:International Journal of Occupational and Environmental Health Volume 6, 2000 - Issue 3
タイトル:Cancer in Radar Technicians Exposed to Radiofrequency/Microwave Radiation: Sentinel Episodes 無線周波数・マイクロ波電磁波に暴露したレーダ作業従事者におけるガン:警戒すべき話
研究者:Elihu D. Richter, Tamar Berman, Eli Ben-Michael, Richard Laster & Jerome B. Westin

Abstract
 概要
Controversy exists concerning the health risks from exposures to radiofrequency/microwave irradiation (RF/MW).
無線周波数・マイクロ波電磁波への曝露による健康影響に関しては未確定である。

The authors report exposure-effect relationships in sentinel patients and their co-workers, who were technicians with high levels of exposure to RF/MW radiation.
筆者は、無線周波数・マイクロ波電磁波への曝露が伴う技術者である注目すべき症例(患者)とその共同作業者における曝露と影響の関係に関する報告を行う。

Information about exposures of patients with sentinel tumors was obtained from interviews, medical records, and technical sources.
注目するガンの患者の曝露に関する情報は、インタビュー、医療記録、技術的な情報源から得た。

One patient was a member of a cohort of 25 workers with six tumors.
1
名の症例は、6名のガン症例を含む25名の共同作業者の一人である。

The authors estimated relative risks for cancer in this group and latency periods for a larger group of self-reported individuals.
筆者は、個人個人の自己申告による大きなグループの潜伏期間と、グループのガンの相対リスクを見積もった。

Index patients with melanoma of the eye, testicular cancer, nasopharyngioma, non-Hodgkin's lymphoma, and breast cancer were in the 20
37-year age group.
目の黒色腫、睾丸ガン、鼻咽頭ガン、乳ガン、非ホジキンスリンパ腫の番号が振られた症例は、20-27年齢層のグループである。

Information about work conditions suggested prolonged exposures to high levels of RF/MW radiation that, produced risks for the entire body.
作業(職務内容)情報は、全身のリスクをもたらす長期の強い無線・マイクロ波電磁波曝露の状況を示す指標とした。

Clusters involved many different types of tumors.
クラスターは様々な種類のガンを含んでいる。

Latency periods were extremely brief in index patients and a larger self-reported group.
潜伏期間は番号が振られた症例と大きな自己申告グループの非常に簡潔な指標である。

The findings suggest that young persons exposed to high levels of RF/MW radiation for long periods in settings where preventive measures were lax were at increased risk for cancer.
防止策が手ぬるいとされるレベルにある長期にわたって強い無線・マイクロ波電磁界に暴露した若い人は、発がんリスクを増加していることが判った。

Very short latency periods suggest high risks from high-level exposures.
非常に短い潜伏機関における発病は、それだけ強い曝露による高いリスクがあることを示唆している。

Calculations derived from a linear model of dose-response suggest the need to prevent exposures in the range of 10-100
μw/cm2.
曝露-反応関係の線形モデルによる計算から、防御すべき曝露レベルは10-100μW/cm2の範囲にすべきという結果である。


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B7Rejt2007年レーダと鳥の研究(ポーランド)

記:2019−12−3

以下の研究がある。

掲載誌:Electromagn Biol Med. 2007;26(3):235-8.
タイトル:Influence of radar radiation on breeding biology of tits (Parus sp.).
シジュウカラ科の小鳥の飼育状況に与えるレーダ電波の影響
研究者:Rejt L, Mazgajski T, Kubacki R, Kieliszek J, Sobiczewska E, Szmigielski S.

Abstract
The aim of the present study is to observe the influence of long-term exposure to radar radiation on breeding biology of tits (Parus sp.), living and building nests around a military radar station, emitting pulse-modulated microwave radiation of 1,200-3,000MHz.
本研究の目的は、1200-3000MHzのパルス性マイクロ波電波を発信している軍用レーダ周辺の屋上にある巣に住むシジュウカラ科の小鳥の飼育状況に関するレーダ電波の長期曝露の影響を観察することである。

Two series of 36 nest-boxes each were located on the radar station area.
36
個の2連結の巣箱をレーダ基地周辺に設置した。

Measurements of exposure were performed separately for each nest-box.
それぞれの巣箱に位置で、個々に電波曝露レベルを測定した。

Average power density (P(av), W/m2) and dose of exposure (W/m2 x h) were recorded for each nest-box during 45 days.
45
日間のそれぞれの巣箱における平均電力密度と曝露量(電力×時間)を記録した。

Control nest-boxes (N = 42) were located in other part of the same forests, free from radar radiation.
対照とする巣箱(42個)は、レーダ波の届かない同じ森の中の別の所に設置した。

The assessment of effects of radar exposure on breeding biology of tits included number of inhabited nest-boxes, number of eggs, and nestlings in the nest (Why not chick mortality?).
小鳥の飼育状況におけるレーダ波の影響の評価は、飼育箱にいる小鳥の数、卵の数、巣立ち前の雛の数を含めた(なぜか卵の死亡率は行っていない)。

Experimental nest-boxes were either exposed to relatively high levels of radiation (2.0-5.0 W/m2, mean 3.41 +/- 1.38 W/m2) or an intermediate level of radiation that ranged from 0.1-2.0 W/m2 (mean 1.12 +/- 0.84 W/m2).
実験に使用した巣箱における曝露は、相対的に高い曝露レベル(2.0-5W/m2、平均3.41/m2+/-1.38W/m2)か、中間レベルの曝露(0.1-2.0W/m2、平均1.22/m2+/-0.84/m2)のいずれかであった。

For control nest-boxes the exposure ranged from 0.001-0.01 W/m2 (mean 0.0062 +/- 0.0007 W/m2).
Only blue or great tits occupied all nest-boxes, used in the experiment.
対照群の巣箱における曝露は0.001-0.01/m2(平均0.0062+/-0.0007W/m2)であった。
実験に使用したすべての巣箱には、アオガラかシジュウカラが宿った。

The number of nesting blue tits was higher in nest-boxes located on the radar station area than in the control boxes.
対照群の巣箱に対して、レーダ波曝露区域の巣箱には、アオガラが多かった。

In contrast, control nest-boxes were inhabited mainly by great tits.
対照的に、対照群の巣箱にはシジュカラが宿ることが多かった。

On the radar station area, blue tits nested in high exposed nest-boxes (67,0%) and great tit occupied mainly these boxes, which were exposed to low-level radiation (62,5%), the difference being statistically significant (p < 0.01).
レーダ波曝露地区では、高曝露の巣箱にはアオガラが宿り(67%)、シジュウカラは主に中間の曝露の巣箱に宿った(62.5%)。この差異は統計的に有意である。

No statistically significant differences in other parameters of breeding biology (number of eggs per box, number of nestling per box) were observed between tits occupying exposed and control nest boxes.
その他の飼育状況(巣箱の卵の数、巣立ち前の雛の数)は曝露群と対照群では統計的な差異はなかった。

Results of the present study show that radar radiation generally does not lead to decrease of number of nesting tits, but may cause shifts in tits species living around the radar station.
本研究の結果は、レーダ波曝露は宿る小鳥の数の減少をもたらさないと言えるが、しかし、レーダ基地の周辺に住む鳥の種類に変化をもたらしている、と言えるかもしれない。

(But is the microhabitat, apart from the radiation level, around each nest box more likely to attract one species of tit or another?).
(しかし、微生育地の問題で、電波曝露レベルからは離れて、それぞれの巣箱の周囲には一つの種の小鳥やその他が集まるのかもしれない。)

注:アオガラもシジュウカラも共にシジュウカラ科の小鳥

BEMSJ
のコメント:高い曝露レベル(2.0-5W/m2)とある、この値は電波曝露規定の10W/m2に近い曝露量で、レーダ装置との距離は不祥であるが、より近距離では曝露基準を超える値となってるのかもしれない。

ポーランドのどこにある軍用レーダ基地の周辺の森で実験を行ったのか・・・・・


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C1.ケープ・コッドのPAVE PAWSレーダ紛争

まとめ:2013−4−30  更新:2017−10−5

1
1989年のブローダー著「死の電流」に紹介された紛争
1976年、レイセオン社(PAVE PAWSシステム建設の主契約者)は、ケープ・コッドのレーダ建設を急いでいた。
その結果ケープ・コッドの人々が、PAVE PAWSの電磁波の健康被害についての情報を得るよりもはるか以前に、レーダの建物(強化コンクリート製の核爆発にも耐えるように設計された105フィート〔約32メートル〕の高さの巨大などラミッド型建造物)が、
交通量の多いミッド・ケープ高速道路からわずか3500フィート(約1キロメートル)しか離れていない所にでき上がった。

・1月の終わり、公開討論会を開いたいくつかの環境グループがケープ・コッド環境連合を結成し、弁護士を雇った。
3
月、同連合は空軍長官ジョーン・ステットソンと数人の空軍職貞をボストンの連邦地方裁判所に告訴した。
彼らは空軍がPAVE PAWSプロジェクトの環境影響報告書を提出しないのは、1969 年の連邦の環境政策条例に違反していると訴えたのである。
ケープ・コッドの人々の中には、空軍は低レベル電磁場の生物学的影響についての情報以外にも、何かを隠そうとしているのではないかと疑い始める人もいた。

それはカリフォルニアの情勢に影響されたからでもあった。
1977
8月、カリフオルニア州ユバ郡の住民は、ビール空軍基地のPAVE PAWSの建設差し止め訴訟を起こした。
サクラメントの連邦地方裁判所での審問の直前になって、空軍はレーダから放出される電磁場をあるレベル以下に抑えることを条件に和解しようとした(空軍が法廷闘争を避けようとしたのは、環境影響報告書作成を避けようとしたのと、同じ理由によることは明らかである(どちらでも、マイクロ波の危険性についての質問に答えねばならず、空軍にその答えがなかったからである)。

しかし、原告がカリフォルニアのPAVE PAWSの電磁場レベルを連続的にモニタすることを求め、空軍がこれに同意しなかったので和解交渉は決裂した。

・レーダに反対して闘う住民の意志も衰えていき、197811月には、ケープ・コッド環境連合は訴訟を保留することに同意した。

その代わり、PAVE PAWSの環境影響の研究に参加する機会を同連合は得たのである(空軍にとっては、ほとんど痛みのない譲歩である。空軍は既に研究を他に依頼していたし、環境研究は何十万ドルもの税金を使って行なわれていたのだから)。
この合意によって空軍はレーダ建設を続けることを許可された。
住民グループに対しては、空軍が環境保護庁に最終的な環境影響報告書を提出した時に、告訴を再考するための12日間の期間が与えられた。
もし、この期間内に同連合が、報告書に不満であるという申し立てをしなければ、訴訟は却下されることになる。

関心のある方は、「死の電流」を読んでください。
この著では地元の新聞「ケープ・コッド・タイムス」の記事が何回も引用されている。

2)英文のWikipediaにあったPAVE PAWSレーダに関する概説
一部を抜粋して、和訳します。

PAVE PAWSはミサイル初期警報と宇宙探査のためのアメリカ空軍のレーダ装置である。
・アメリカのマサチューセッツ州のケープ・コッドその他にある。


1986年撮影 Wikipediaから

 

・環境と健康に関する心配
マサチューセッツのPAVE PAWSレーダはケープ・コッドでの健康への不安から、調査が行われた。
アメリカ空軍は、ケープ・コッドでのPAVE PAWS運用に先立って、アメリカ合衆国地方裁判所に、政府の環境影響に関する研究が非常に不十分であるとして、訴えられた。
裁判は国の安全保障の観点から拒絶された。

包括的な研究ではレーダ局による癌リスクの増加は見られなかった。

しかし、
ケープ地区でのEWING‘s肉腫の増加の可能性のある要因として、挙げられた(2007年のCBSテレビ)。
アメリカ・アカデミーのナショナル研究機関によれば(20051月の発表)、入手可能なデータによれば、そうした可能性はないと。

地域のニュース報道によれば、「2005年一般公衆に癌増発の怖れはないと、結論付けた。しかし、その研究ではEwings肉腫には触れてはいなかった。」
「マサチューセッツ州公衆衛生部はケープ・コッドの癌発生率とPAVE PAWSレーダ基地との関連性の調査を行った。

州は、癌発生率と地域社会での電磁波のピーク強度との関連を見るために、ケープ・コッドの通りにおけるレーダ電波の強度を試験するために専門業者を雇った。

患者の一人の父親によれば、「全員とも、十分に長い時間をPAVE PAWSからの強い電磁波を受ける場所にいた」、現在ではこの苦情を立証する刊行された研究はなく、最終報告では曝露強度は強くないことが示されているけれども。

200712月に、マサチューセッツ州公衆衛生部は、ケープ・コッドのEwing腫瘍の主な原因には、PAVE PAWSは関与しているとは言えないように見られる、と発表した。

2005年のアメリカ空軍の研究には、この設備からの輻射強度の測定が含まれ、アンテナに近接を禁ずるロープが張られた15m地点の外側では、アメリカの職業的な曝露基準を超えていない。<すなわち、レーダの操作員であっても、15m以内に近接してはならない。


3)30年後の現地での状況
http://www.capecodonline.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20100516/NEWS/5160330
 
地元の新聞社のサイト
一部を抜粋して、和訳しました。
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PAVE PAWS30周年を迎える
By
George Brennan
May 16, 2010 2:00 AM

過去30年間、アメリカの東海岸を、海からと敵のミサイルによる陸の攻撃を守ってきた。
昨日、このアメリカ最初で全国では4局の一つであるPAVE PAWSレーダシステムは、30週年を迎えた。
この設備の使命は冷戦時代のミサイル監視に始まり、宇宙空間にある物体と人工衛星の追跡が含まれている。
毎日、21550の物体を追跡している。人工衛星やスペースシャトルや国際宇宙ステーションの安全性を維持している。

レーダ基地は論争に明け暮れた歴史を持つ。
1970
年代後半のレーダ基地反対の異常に大きいステッカーから、健康調査を要求する活動家まで、PAVE PAWSは非難の的であった。

元サンドイッチ運動の活動家で、若い家族の安全を気にして、レーダ設備は移動すべきと強調したS. Judgeは彼女と彼女の夫(元サンドイッチ運動の代表)はレーダ基地局に嫌気してケープから出て行った。彼女は「多数の人々が引っ越していった。」と語った。
Judge
らはPAVE PAWSの健康調査を「偽りだ」と叫んだ、なぜならば、それらは軍の費用で、軍によって動かされているからだと。百位万ドルの費用を費やしたとしても、安全であるという確証は得られていないからである、と。

2007
年に最後の研究を、州の公衆衛生部が発表した。
それは、レーダ基地局からの電磁波はEwings肉腫とケープの他の癌の高率発生の原因ではない、と結論付けた。
州による研究を働きかけた国会議員のM. PatrickD-Falmouthは、レーダ基地局のテスト結果に満足していると、語った。
「あなたはあなたの質問に完璧な答を得ることができない」、「常に幾らかの疑問は残るが、しかし、彼らは科学のレビューに十分な仕事をこなし、巨額の費用を費やした。」と語った。

レーダ基地の歴史から
19764月:Raytheon社はPAVE PAWSをケープ・コッドの2番目に海抜の高い地点であるFlat Rock Hillに建設することを受諾。
1979
1月レーダ基地建設差し止めを求める裁判は拒絶されたが、アメリカ空軍は環境評価研究に資金を出すことを要求された。
1980
4月  PAVE PAWSは運用開始

1998
10月 ケープ・コッド・シチズンと呼ばれるグループは健康不安の観点から設備の閉鎖を要求。
1999
2月 州政府はPAVE PAWSに関する研究を開始すると発表。 研究は199911月に専門家がレーダ基地からの電磁波が公衆の健康に害を与えるということを決定する十分な証拠はないと、結論付けた。

2005
10月 疫学研究結果として発表、レーダ基地と健康への悪影響を結びつける確定した論拠は無かったと。

200712月 州の公衆衛生部は1982年以来言われているEwings肉腫(珍しい骨の癌)になった14名とレーダ局は関連性がありそうもない、と結論付けた。
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4)PAVE PAWSレーダの仕様

*以下のブログにPAVE PAWSレーダの仕様が紹介されていた。

https://blogs.yahoo.co.jp/patentcom/10953289.html
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軍事レーダとマイクロ波;PAVE PAWS
2014/2/26(
) 午後 0:07

レーダハンドブック第2版は、第5章で、PAVE PAWSに使われている送信機の詳細について記載しています。
PAVE PAWS
は、420450メガヘルツの周波数のマイクロ波を使っています。
パルス幅は、0.2516マイクロ秒になります。
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BEMSJ
注:パルス幅の単位が間違っているようです。マイクロ秒ではなく、ミリ秒でしょう。

https://fas.org/spp/military/program/track/pavepaws.htmにあった情報から一部抜粋

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AN/FPS-115 PAVE PAWS Radar
This refers to scanning at elevations between 3 and 10 degrees above horizontal over 240 degrees (the azimuth) of a 360 degree circle with the radar at the center.
中心にあるレーダの360度円周のうち240度以上にわたって、水平面に対して3度から10度の角度の空域を走査することになる。

The beam is directed at elevations between 3 and 85 degrees from horizontal, covering an azimuth of 120 degrees per face, for total coverage of 240 degrees.
放射するビームは水平面に対して3度から85度に向けて、1面あたり120度の方位角で、計240度方位角に囲まれた空域に向けて発信される。

The far-field region begins at 439 meters (1,440 feet).
レーダから発信される電波が、遠方界とみなせるのは439m以上先の空域である。

The exclusion fence at Beale AFB and former exclusion fence at Cape Cod AFS are at approximately 305 meters (1,000 feet). Restricting the lowest elevation of the main beam to 3 degrees above horizontal prevents anyone on the ground or in buildings or residences from being exposed to RF from the main beam,
Beale
空軍基地とCape Cod AFSの以前の立入禁止を示す柵の位置は約305m地点にある。
この柵は、水平面から3度の角度で主ビームが放射された時に、主ビームからの高周波電磁波に暴露する地上のいる、建物や住居にいる人の保護のためである。

Peak Power 1,792 active elements at 325 watts = 582.4 kilowatts (kW)
Duty Factor 25% (11% search, 14% track)
Average Power 145.6 kW
Effective Transmit
 Gain 37.92 decibel (dB)
Active Radar Diameter 22.1 meters
Frequency 420 megahertz (MHz) to 450 MHz
Sidelobes -20 dB (first), -30 dB (second),-38 dB (root mean square)
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BEMSJ注:
「立入禁止を示す柵の位置は約305m地点にある。」とされる。
以下の航空地図で、レーダの周囲に半径約300mの円周状に、柵らしきものが見える。

 


http://www.radartutorial.eu/19.kartei/01.oth/karte004.en.html にあった情報から一部抜粋

AN/FPS-123at Clear Air Base, Alaska


Search pulse lengths are 0.3, 5 (typical) and 8 ms. Track pulse length are 0.25, 0.5, 1, 2, 4, 8, and 16ms.
探索モードでのパルス幅は0.30.5(代表例)、8ms
追跡管制モードではパルス幅は、0.250.5、1、2、4、8、16ms.

Specifications
Frequency: 420 to 450 MHz
Pulse repetition frequency (PRF): 0.02 to 20 Hz
Pulse width (
τ): 250 to 16 000 μs
Peak power: 600 kW (per face)
Average power: 150 kW

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5)2005年のアメリカ科学アカデミーの報告書から、曝露量に関する情報

アメリカ科学アカデミーの2005年報告書
An Assessment of Potential Health Effects from Exposure to PAVE
 PAWS Low-Level Phased-Array Radiofrequency Energy (2005)
Chapter: 4 Exposure Levels
低レベルのPAVE PAWSフェイズアレイ無線周波数電磁界エネルギへの曝露による健康影響の可能性に関する評価(2005) 
4章:曝露レベル

OVERVIEW
 まとめ
This chapter summarizes the current data on exposure levels produced by PAVE PAWS.
It begins with an overview of the operating characteristics of the radar and then discusses the existing exposure data measured in terms of peak and average power density (in
μW/cm2).
本章ではPAVE PAWSレーダによる電波曝露量の現行データをまとめる。
レーダの動作原理に関する概説をはじめに、存在するピークと平均値で示される測定データについて考察する。

Recent measurements of PAVE PAWS power density recorded by census tract obtained as part of the current initiative to re-examine the potential health effects of exposure to low-level phased-array RF energy are included.
低レベルなフェイズアレイ高周波電磁波エネルギへの曝露の健康影響の再検査に対する現在の論議の一つとして、地域調査によって記録された最新のPAVE PAWSレーダの電力密度の測定も本章の対象とした。

Discussion also considers exposure levels of the general population to other broadcast radiation sources of comparable spectral content.
考察では、匹敵する周波数スペクトラム成分の他の放送波等の放射源への一般公衆の曝露量も対象と考えた。

以下は各論からの抜粋

approximately 90% of the total transmitted power at the intended RF
 frequencies.
The remaining energy is distributed in side lobes.
全放射エネルギーのほぼ90%は目的とする高周波電波として使われる。
残りのエネルギーは、サイドローブとして、輻射される。

BEMSJ
注:放射エネルギーの約90%は本来の目的であるレーダ波として、指向方向に向けて発信される。
残りの10%のエネルギーが、サイドローブとして、指向方向外の、周辺に向けて漏れる電波のエネルギーとなる。

The peak transmitted power of PAVE PAWS is rated at 580 kW (320 W
×1792).
PAVE PAWS
レーダのピーク送信電力の定格は580kWである。

power is radiated does not exceed 25%, making the average transmitted power less than 145 kW (580 kW
×0.25).
放射される電力は定格値の25%を超えない。即ち、平均送信電力値は145kW以下である。

The maximum duty cycle does not exceed 25%.
Duty
比の最大は25%を超えない。

BEMSJ
注:PAVE PAWSレーダは遠距離まで探索するので、発信電波エネルギーが大きくなるように、パルス幅を広げ、その故にDuty比が1;425%といった値になっているのかもしれない。

Exposure levels on the ground from PAVE PAWS have been estimated and measured a number of times.
PAVE PAWS
レーダからの地上面での曝露レベルは、数多くの推定計算や実際の測定が行われてきた。

1979 NRC Engineering Panel Report
以下は1979年アメリカ国家研究会議の技術研究班の報告の部からの抜粋

resulted in average power densities of 0.38 to 3.26 mW/cm2, which when converted to equivalent 1 km, 25% duty cycle data, ranged from 0.64 to 0.98 mW/cm2 with an average (from the 4 locations) of 0.82 mW/cm2.
結果は、平均電力密度は0.38から3.26mW/cm2であり、これを距離1kmDuty25%の条件に当てはめて計算すると、4か所での平均は0.82mW/cm2で、0.64から0.98W/cm2となる。

BEMSJ
注:
指向方向外1q地点での平均電力密度が0.82mW/cm2=8.2W/m2)であるということは、指向方向外のアンテナ利得を1と仮定すれば、発信源のレーダの発信電力の平均値は 4×3.14×1000の二乗×8.2W/m2102MW となる。
レーダの平均発信電力は145kWであるというこれまでの記述と一致しない。
もしかして、この1km地点は指向方向内に含まれるのかもしれない。

the panel made its own estimation of nominal and worst-case estimates of average power density on the main axis of a secondary side lobe taking into account characteristics of the radar, and reported numbers of 8.2
μW/cm2 (nominal) and 11 mW/cm2 (worst-case) at 1 km.
研究班はレーダの特性を考慮して、指向方向の主ビームと、2番目のサイドローブ軸上での平均電力密度の推定を、典型例を最悪例で、行っている。
その結果として1km地点で8.2μW/cm2、最悪値で11mW/cm2と報告している。

BEMSJ
注:
主ビーム・指向方向のアンテナ利得37dB7000倍)、平均電力145kW、距離1kmとして計算すると電力密度は8.1mW/cm2となり、上記の最悪値と略一致する。
2
番目のサイドローブ方向のアンテナ利得を7dB(7)として、平均電力145kW、距離1kmとして電力密度を計算すると、8μW/cm2となり、上記の値と略一致する。

1979 NRC Exposure Level Report
以下は1979年アメリカ国家研究会議の曝露レベル報告の部からの抜粋

This report (NRC 1979a) reviewed similar data measured by the Air Force in 1978 (August and October).
この報告書では、1978810月のアメリカ空軍による類似の測定データの吟味を行っている。

The
 committee concluded that average power density outside the Air Force base was not likely to exceed 1 mW/cm2, the average power density at the exclusion fence surrounding PAVE PAWS was approximately 5 μW/cm2, while the average measured intensity at locations where the public would most likely be exposed was 0.06 mW/cm2 (Route 6, 1.0 km from the radar).
この委員会は、アメリカ空軍基地の外での平均電力密度は1W/cm2を超えることはありそうもないと、人が立ち入ることができる箇所での測定した平均電力密度は0.06mW/cm2(レーダから1km離れた国道6号線の位置)である恐れがあるが、PAVE PAWSレーダの周囲の立ち入り禁止区域の柵の所での平均電力密度は約5μW/cm2であると、結論づけた。

1839 EIG Engineering Report (#86-33)
以下は1839 EIG技術報告(#86-33)の報告の部にある情報の一部抜粋

In the fall (September 18-30) of 1986, time-averaged power-density measurements were recorded to document the RF exposures in the lighting and security camera areas within and around the security fence surrounding the PAVE PAWS radar facility on Cape Cod (EIG 1986).
1986
年秋(918-30日)に、Cape CodPAVE PAW レーダ基地の周囲の安全柵(立入禁止区域の柵)の周辺と照明及び監視カメラ設置個所における高周波電磁波曝露を文書化するために、時間平均電力密度の測定が記録された。

The results showed that the highest time averaged power-density at 6 feet above ground level was 1850
μW/cm2 with a minimum of 38μW/cm2.
結果は最大の時間平均電力密度は地面から6フィート(=1.8m)上で、1850μW/cm2、最少は38μW/cm2であった。

The average was 529
μW/cm2 at the 33 locations comprising the lighting poles, security cameras, and selected positions in and around the security fence.
照明塔、監視カメラ設置場所、その他立入禁止の柵の選択された場所の合計33か所の平均値は529μW/cm2であった。

Data at the elevation of the 7 security camera locations (20 feet above ground) had a maximum power density of 745
μW/cm2, a minimum of 100 μW/cm2, and a mean of 273μW/cm2.
7
か所の監視カメラ設置点(地上高20フィート=約6m)の高さでは、最大の電力密度は745μW/cm2、最小が100μW/cm2 そして平均は273μW/cm2 であった。

Data at the elevation of the 17 lighting poles (40 feet above ground) had a maximum power density of 3716
μW/cm2, a minimum of 127μW/cm2, and a mean of 1190 μW/cm2.
17か所の照明塔(地上高40フィート=約12m)の高さでは、最大の電力密度は3716μW/cm2、最小が17μW/cm2 そして平均は1190μW/cm2 であった。


6)PAVE PAWSレーダ2005年アメリカ空軍測定概要

以下の報告書がある。

DEPARTMENT OF THE AIR FORCE
AIR FORCE INSTITUTE FOR OPERATIONAL HEALTH (AFMC)
BROOKS CITY-BASE TEXAS
23 December 2005
発行:
空軍部
運用時の健康のための空軍研究所
テキサス州Brooks city空軍基地
2005
1223

SUBJECT: Consult Letter, IOH-SD-BR-CL-2005-0093, Radio Frequency Power Density Survey for the Precision Acquisition Vehicle Entry-Phased Array Warning System (PAVE PAWS), Cape Cod AFS, MA
課題:協議文書 IOH-SD-BR-CL-2005-0093、マサチューセッツ州Cape Cod空軍基地のPAVE PAWSレーダからの無線周波数電磁界の電力密度の調査

Ground-level power density measurements were taken at approximately three meters from (inside and outside) the 60meter security fence while PAVE PAWS operated in both manual and standard modes.
PAVE PAWS
レーダが手動モードと標準モードで運用されているときの、60mの安全柵の3m内側と外側のおける地上面での電力密度の測定を行った。

手動モードと標準モードの動作条件

 

Additional measurements were taken within the security fence and outside the 305 meter perimeter fence to ensure that PEL levels were not exceeded.
追加の測定を、安全区域(立入禁止区域)の柵の内と外、そして305mの基地境界線の柵の外側で行い、許容レベルを超えていないことを確認した。

420 MHz, with controlled and uncontrolled (whole-body) PELs of 1.40
 and 0.28 milliwatts per centimeter squared (mW/cm2),
周波数帯を最も厳しい420Hzとして、非管理区域(注;日本の電波防護指針でいう一般公衆を対象とした区域)では許容レベルは全身均等曝露で0.28mW/cm2、管理区域(注;同じく職業的な曝露を対象とした区域)では許容レベルは1.40mW/cm2を選択した。

The radar site is surrounded by a security fence (60-meter fence) and a perimeter fence (305-meter fence).
レーダ基地は、安全区域として60m地点と、基地境界線として305m地点に、それぞれ柵で囲まれている。

The one-minute, average power densities measured along the outside of the 15 meter rope and at the 305 meter fence during the two scenarios did not exceed the controlled and uncontrolled PELs, respectively.
結果は、1分間の平均電力密度は、レーダから15mBEMSJ注;60m?)のロープの外側では管理区域基準値を超えることはなく、305mの基地境界線の柵の外側では非管理区域の基準値を超えることはなかった。

使用した測定器:
Narda meter, Model 8718
Probes: Model 8721

BEMSJ
注:プローブ8721型は、カタログ仕様を見ると熱電対のプローブで、レーダのパルス波の測定には適しているものである。

レーダの周囲60m地点は立入禁止区域、監視カメラや照明塔も設置されている。


測定結果の代表例を以下に示す。

305m
の基地境界線の柵の外側、一般公衆への曝露基準値への適合確認 

BEMSJ注:
報告書のまとめでは基地境界線の柵の外では、一般公衆の曝露基準値に全て適合している、との記述であるが、この表9を見ると、Perimeter face down A Trail (レーダの照射面Aに面する山の中の小道)で基準値0.28を超える平均電力密度0.58mW/cm2というデータが含まれている。

レーダの立ち入り禁止区域(60m地点)内の測定結果

 

7)2019年の荻野晃也の講演から


http://ikki.jcp-web.net/?p=12960#comment-32685 <リンク切れ>にあった情報の一部転記です。

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「イージス・アショア」配備計画の撤回を求める緊急講演会[2018/01/28 AM 08:34]
昨日、萩市内で、「『イージス・アショア』配備計画の撤回を求める住民の会」と山口県平和運動フォーラムが主催する『『イージス・アショア』配備計画の撤回を求める緊急講演会」が行われました。
講師は、電磁波環境研究所所長の荻野晃也さん。「健康を脅かす電磁波とは何か―」というテーマで講演が行われました。

電磁波の人体への影響を話す荻野さん
「イージス・アショア」の最初の施設は、米国ボストン郊外・コッド岬に設置された「PAVEPAWS」です。
荻野さんは、「PAVEPAWS」の環境影響について「マサチューセッツ州の報告書によると『エウィング類(柔らかい組織)の小児ガン』がケープ・ゴッド郡で3.84倍に増加していますし、小児リンパ腫も異常な増加を示している。

このような現地の調査を、イージス・アショアを導入しようとする日本政府は本気で行うつもりなのか。
一度、建設されてしまうと危険性の証明はとても困難で、ゴッドミサキの多くの住民は今なお不安を持って暮らしているのではないか」と指摘しました。
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荻野晃也の講演は、ゴッド岬のレーダの件を十分に把握していないのか、意図的に過去の事象の一部だけを切り抜いて話をしているのかもしれない。
いずれにしても、情報の提供としては不十分と言える。

同じよう内容を、2019年緑風出版より発行された荻野晃也・著「身の回りの電磁波被曝」の中で、以下のように記述している。『コッド岬に設置された「Pave-Paws」です。1990年に稼働した施設ですが、今なお住民の反対運動が続いています。』と。
「今なお、2019年の時点でも反対運動が続いている」という荻野の論は、誤りと言える。

 

 

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C2.ボーイング社でのパルス電磁界曝露による白血病に関する裁判結果

記:2009−5−2

エレン・シュガーマン著「電磁場からどう身を守るか」に電磁波に関する訴訟の例として紹介されているケースに関して、永野秀雄著「電磁波訴訟の判例と理論」(2008年三和書房発行)に詳細が紹介されていたので、当該の部分を抜粋して紹介する。

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ストローム対ボーイング(Strom v . Boeing)事件
このStrom v . Boeing 事件は公刊されている判例ではないため,ここでは簡単な紹介にとどめる。

この事件は,1988年にボーイング社の被用者であるRobert Stromが,MXミサイル製造業務に従事しているときに,同社がミサイルから生じる放射能(radiation)は安全であるという誤った情報を提供したことにより,電磁パルス放射(electromagnetic pulse radiation)に曝露した結果,白血病に羅患したとして,800万ドルの損害賠償を求める訴えを提起したものである。

1989
10月,裁判所は,業務の遂行上,電磁パルス放射にこれまで曝露してきた,あるいは今後曝露することが予想される約700名のボーイング社の被用者に対して,クラス・アクションにおけるクラスの認定を求める申立てを認めた。

しかし,事実審が開始される2日前に,ボーイング社は,@原告と50万ドルで和解するとともに,A会社から独立した地位にある医師により,他の700人の被用者の健康状態をモニタするために必要な費用をカバーするための20万ドルの基金を設立し,さらに,B今後約10年間にわたって当該被用者への特別健康診断プログラムの設立を約束して和解した。
また,同社は,その後,問題となったミサイル製造について,その業務遂行方法を変更しだ。

この事件は,電磁波による身体的損害賠償を請求する他の事件とは異なり,より強いレベルの電磁パルス放射が原因となった点で区別する必要がある。
しかしながら,そのような場合であっても,原告が,会社側から他の労働者に対するモニタリング等を含めた和解を勝ち取った意味は大きいと言える。

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BEMSJ
のコメント: このストロームが受けた電磁波パルスの強度などはどの程度なのか、知りたいものである。
ネットで検索して以下のサイトに関連する情報があった。
http://healthycitizens.googlepages.com/ENVIRONMENTALEXPOSURE1.pdf
これによれば、ストロームらは、ミサイルが強烈なパルス電磁界の影響の試験を担当した。
この強烈なパルス電磁界に曝露した模様。

どの程度の強さかは不詳であるが、生活環境では考えられない強烈な強度であったことは想像できる。


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C3.沖縄の与那国でのXバンドレーダに関する裁判

記:2016−2−26

*始まり 

205
2月 与那国にXバンドレーダの配備に関する住民投票で、配備に賛成と決定

****************************
<与那国住民投票>陸自配備賛成が多数
毎日新聞 2015222()2117分配信

沖縄県与那国町で22日、陸上自衛隊配備の賛否を問う住民投票があった。
即日開票の結果、「賛成」が632票で「反対」の445票を上回った。
法的拘束力はないが、住民投票条例は町長と町議会に「投票結果を尊重」するよう求めている。
政府は計画通り配備を進める方針で、外間守吉町長も受け入れる意向だ。
順調にいけば、日本最西端の町に2016年3月、初めて自衛隊が配備される。
(略)

住民投票で、配備賛成派は町の人口流出と経済衰退が著しいことから、自衛隊員と家族の移住による人口増加や経済効果を主にアピールした。
反対派は有事に駐屯地が攻撃目標にされる危険性や、監視レーダの電磁波による健康被害の恐れなどを訴えていた。
(略)
*****************************

*裁判の始まり 那覇地裁 20156

琉球新報の記事から
***********************

「陸自工事差し止めを」 与那国住民、仮処分申し立てへ
琉球新報 61()1033分配信

【与那国】与那国島への陸上自衛隊沿岸監視部隊の配備をめぐり、配備に反対する住民らは1日、駐屯地整備に向けた工事の差し止めを求める仮処分を那覇地裁石垣支部に申し立てる。
申し立てでは、尖閣諸島問題で(日中の)軍事的緊張が高まる中、最前線である与那国島への軍事施設の建設は武力攻撃に巻き込まれる危険性が生じると指摘。
憲法が定める住民の平和的生存権が侵害されるほか、監視施設のレーダが発する電磁波で健康被害が生じる恐れがあり人格権が侵害されるなどとして建設差し止めの必要性を訴える。
*************************

*地裁の判決 201512

沖縄タイムズ 2016111日の記事から
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与那国の陸上自衛隊施設 住民側の建設差し止め却下
2016
111

与那国町への陸上自衛隊沿岸監視部隊配備計画に反対する同町の住民30人が、建設計画中の施設によって憲法などが保障する平和的生存権や人格権が侵害されるとして、国に建設の差し止めを求めた仮処分申し立てについて、那覇地裁(森鍵一裁判長)10日までに、申し立てを却下した.決定は昨年1224日付。
住民側は決定を不服として、今月7日付で福岡高裁に即時抗告した。


(略)

平和的生存権は、国民が政府に対して平和主義を実現するよう、政治の過程で求めるものと指摘.私法上の行為の効力を争う具体的な判断基準となるものではないとした。
レーダが発する電磁波について「電波法や自衛隊法などが定める基準を下回る」と判断。人格権の侵害はないとした。
********************

*高裁での判決
記:2016−3−21

以下の情報がある。
沖縄タイムズ 319()の記事から

*****************  

与那国の陸自基地 建設差し止め即時抗告は棄却
与那国町の住民が同町への陸上自衛隊沿岸監視部隊配備計画に反対している問題で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)は18日までに、基地建設差し止めの仮処分申し立て却下を不服とした住民3人の即時抗告を棄却した。棄却決定は2月19日付。

住民側は憲法の保障する平和的生存権などが侵害されると主張したが、多見谷裁判長は「具体的権利の保護を訴えるものではなく、理由がない」と判断した。
(略)
レーダ装置の電磁波が人体に悪影響を及ぼすとの住民側主張は、明確な根拠に基づかないとした。
*****************************

なぜか219日の判決が、319日になって新聞の記事になっています。

関係者からの情報では、「最高裁への上告はしない」とのことで、これでこの裁判は住民側の敗訴で確定です。


*与那国Xバンドレーダ裁判での電波強度の測定値に関する検証
記:2016−3−20 編集:2016−3−27

BEMSJ
としてこの裁判の争点の中で、関心を持つのは、レーダの指向方向外に漏れる電波の強度に関する情報である。
入手した資料12には、与那国に設置される予定のXバンドレーダと同一のものとして、羅臼に設置されたXバンドレーダの近隣での測定結果が記載されていた。

即時抗告申立に対する意見書 平成28212日 作成:債務者側(国)(資料1
************ 一部 抜粋して引用 ************
このことに加えて、本件沿岸レーダ装置と電波の強度が同一である羅臼レーダ装置について実施した電波の測定緒果においても、羅臼レーダ装置から37.5メートル離れた測定点(羅臼レーダ装置との標高差: 6.3メートル)での電力密度の6分間平均値(平均電力密度)1平方センチメートル当たり0.0004ミリワットと、法基準値の2500分の1程度の値でしかなく、6分間の当該測定において観測した電力密度の最大値(最大電力密度)は、1平方センチメートル当たり0.0236ミリワット、法基準値の40分の1程度の値にとどまった(疎乙第33号証)

さらに、本件移動式警戒管制レーダ盤置及び本件補完用レーダ装置については、これらと同型のレーダについて、既に本件訓令1 01項に基づき、電波法令の要件適合性が審査された上、要件に適合するものとして防衛大臣の承認が得られている。(疎乙第28号証及び第29号証)

そして、電波法令の要件適合性に係る審査を担当する担当者も、本件移動式警戒管制レーダ装置及び本件補完用レーダ装置について、電波法令を遵守している旨述べている(疎乙第2 6号証)
*************************

即時抗告事件決定書 福岡高裁那覇支部 平成28219日(資料2
*************** 一部 抜粋して引用 ***************
証拠(112、乙1427)及び審尋の全趣旨によれば、一般競争入札により、陸上自衛隊与那国駐屯地に納入すべき沿岸レーダ装置の品名はJTPS-P8であり、第302沿岸監視隊において無線局として承認されたレーダと同一であり、本件各レーダ装置が羅臼レーダ装置と同一であると一応認められ、これに反する疎明はない。

また、相手方の測定結果(3 3)によれば、羅臼レーダ装置から37.5m離れた地点における、告示300号が定める測定方法及び算出方法に従った電力束密度の6分間平均値が0.0004mW/cm2であるとしているところ、抗告人田里千代基が行った羅臼レーダ装置から65m離れた地点における電力束密度の測定値は、0.00123mW/cm2であったものの、同抗告人が行った測定方法及び算出方法は明らかとされておらず(43)、相手方の測定結果の信用性が否定されるようなものではない。
**********************

抗告人(原告)田里千代基が行った羅臼レーダ装置から65m離れた地点での電力束密度に関しては、どのような測定器で測定したのか、平均値なのか瞬間最大値なのか定かではないので、論評は行わない。
多分、レーダからなどのパルス性電波を正確に測定できる機能はなく、簡易的な測定器での測定であり、正確な平均値でもなく、正確な瞬時最大値でもない、その間の中間的な値を示しているのではないかと、想像される。

上記の2つの書類(資料1と資料2)に書かれた債務者側(国)の測定では、平均値0.0004mW/cm2、最大値0.0236mW/cm2であるとされ、測定器に関する説明はない。(疎乙33号に記載されている?)
この平均値と最大値の割合から、Xバンドレーダの電波のDuty比は約80と計算できる。

本当にレーダからの電波のDuty比が80であるかは、不詳である。
多分、レーダの性能を示す軍事秘密として公開されることはないであろう。

X
バンドは8
12GHzの周波数帯を用いる。
この周波数帯に関する1989年の電波防護指針値(電波法の規制値)は、6分間平均値のみを規定している。ICNIRPの様に最大値の規制はない。

参考までに、ICNIRP1998年ガイドラインでは、パルス性の電波に関しては、平均値での規制に加えて、瞬間最大値は電力密度で平均値の1000倍を超えないこと、と規定している。
すなわち、ICNIRPではDuty1000までは許容している。

レーダからの電波のDuty比に関する情報は、ネットの検索でもなかなか見つからない。
見つけた範囲では:
参考:レーダのDuty
・島根大学にある降雨観測用Xバンドレーダの仕様
周波数:9.74GHz
パルス幅:0.5μS
繰り返し周波数:750Hz(周期:1.33mS)   
これからDuty比=1.33mS/0.5μS2600

・軍用 自衛隊のLバンドレーダ JTPS-P9の仕様
周波数:Lバンド 0.5
1.5GHz
送信機出力:尖頭値で5kW
パルス幅:6.7μS
繰り返し周波数 2500PPS(周期:0.4mS
これから Duty比=0.4mS/6.7μS60

数日経過して、以下の資料を入手できた。
資料3:疎乙33号証 羅臼レーダ装置の電波強度の測定結果報告書

この報告書には、きちんと使用した測定器が明記されている。

使用測定器:本体 Narda EMR-200  プローブ Narda Type:9.2 

手持ちのNARDAの測定器のカタログによれば、この組み合わせでは
測定周波数:3MHz ‐ 18GHz
検波器の形式:ダイオード
測定強度範囲:1.2V/m1000V/m  電力密度に換算すると0.0004mW/cm2以上

さて、レーダなどのパルス性電波強度の測定に関しては、電波防護指針(総務省の電波防護のための適合確認の手引き)によれば、
パルス波の測定には、熱電対型の電磁界プローブ、周波数非同調型測定系又はパルスが占有する帯域幅に比べ広い周波数分解能帯域幅を持つ周波数同調型測定系を用いること。」となっており、
上記の羅臼レーダの電波測定は、この規定に反することになる。

ダイオード検波の場合は、パルス性電波への応答性が悪いので、測定結果はたぶん、かなり低い値として表示されるのではないかと、想像する。
「羅臼レーダ装置から37.5メートル離れた測定点(羅臼レーダ装置との標高差: 6.3メートル)での電力密度の6分間平均値(平均電力密度)1平方センチメートル当たり0.0004ミリワットと、法基準値の2500分の1程度の値でしかなく、」は
正確な測定を行えば「2500分の1」ではなく、「250分の1」とか「25分の1」、場合によれば「2分の1」になるのかもしれない。


きちんとした測定器での再検証が肝要である。


*その後 20174月 レーダーサイトは完成し、公開
記:2021−4−8

ANNニュースにあった情報
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与那国駐屯地の内部を初公開 中国念頭に警戒監視
テレビ朝日系(ANN2017/4/24() 5:55配信

陸上自衛隊は海洋進出を強める中国を念頭に、警戒監視活動にあたる沖縄県にある与那国駐屯地の内部を初めて公開しました。
(略)

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*その後、5年後の現地の状況 20213

記:2021−3−3

20210328日 読売新聞の記事の一部引用

********************
中国大陸
に目を光らす、くすぶる懸念も…与那国島へ陸自配備5年
陸上自衛隊が日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)に配備されてから、28日で5年となる。

陸自の誘致を巡っては島内で賛否が割れたが、今では自衛隊員は地域に溶け込み、反対運動は収まっている。
(略)

与那国島は人口
約1700人で、そのうち約160人が「沿岸監視隊」に所属する自衛隊員だ。
島内2か所のレーダ塔から周辺海域や中国大陸
に目を光らせている。
陸自誘致の是非が問われた2015年の住民投票は、賛成632票で過半数を占めたものの、反対も445票に上った。
住民
がニ分され、その後のしこりが懸念されたが、自衛隊員と家族らは島内で盛んな陸上大会の会場設営や道路清掃などのボランティアに積極的に参加し、島民との交流に努めてきた。

陸自
誘致により、人口が増えたことで、町の財政は好転した。
町税収入の約2割
を隊員の住民税が占め、陸自が支払う年間1500万円の土地賃料も町の貴重な財源となっている。
住民
投票で反対派を主導した社会福祉法人理事長の上地国生さん(78)は「今でも陸自誘致には反対だが、現状では島内で目に見えた反対運動は起きていない」と話す
(略)
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C4.裁判にもなったアメリカ・カリフォルニア州Ojaiでの気象観測レーダからの電磁波紛争

記:2018−1−26

*紛争に関する情報
以下はすべて、Los Angeles Timesのサイトにあった情報です。

http://articles.latimes.com/1993-12-16/local/me-2455_1_weather-service
*******************
December 16, 1993
Neighbors Wary of Health Effects From New Radar Tower: Ojai Valley: Weather service calls system safe, but landowners say exposure to low-level radiation is too great a risk.
近隣の住民は新しいレーダ塔からの健康影響を危惧:Ojai Valley: 気象サービスは安全と言うが、土地の所有者は低レベルの電磁波曝露は大きなリスクであると言う。
*****************************

*アメリカの連邦議員が動き出している。
http://articles.latimes.com/1994-06-13/local/me-3699_1_ojai-valley

******************
June 13, 1994
OJAI VALLEY: Commerce Official to Discuss Radar Tower
 公の通商関係者がレーダ塔を論議
*********************

*住民らが闘争資金を集めている。
http://articles.latimes.com/1994-06-27/local/me-9185_1_radar-tower

********************
June 27, 1994
Group Raises Funds to Fight Radar Tower: Ojai: At a barbecue, people who want the weather-tracking station moved get together some cash and some ways to continue their campaign.
住民グループはレーダ塔闘争資金を集める:気象レーダ局の移動を求める人々は、バーベキュー会を開催し、彼らの運動を継続するための方法や資金を集める。
**********************

*反対運動は壁にぶち当たる
http://articles.latimes.com/1995-05-15/local/me-909_1_upper-ojai

****************************
May 15, 1995
Upper Ojai Residents Face the Nemesis Next Door: Dispute: They have banded-and bonded-in fight against tower.
But the couple who allowed it to be built say they feel surrounded by enemies.
Upper Ojai
の住民は突破できない壁にぶち当たる:彼らは結束し、結束し、塔の反対闘争を行った、しかし、レーダ塔の建設を受忍する組と言う敵に囲まれた。
*******************

http://articles.latimes.com/1999/sep/12/local/me-9297
***************************
September 12, 1999
Tower Upgrades Are Premature
塔の更新は早計
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*公聴会の開催 
http://articles.latimes.com/2004/oct/15/local/me-vnradar15

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March 30, 2004
Hearing May Decide Ojai Radar Tower's Fate
After an 11-year battle, residents will have their say about the 750,000 watt weather service facility before a national science panel today.
公聴会で、Ojaiレーダ塔の運命は決まるだろう。
11年間の闘争の後、本日、アメリカ科学パネルの会議の席で、750kWの気象観測設備に関して、住民らは発言する。
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*研究報告が塔の建設を受忍
http://articles.latimes.com/2004/oct/15/local/me-vnradar15

*******************
October 15, 2004
Study Hails Weather Tower
 研究報告は気象レーダ塔を認める

Ojai residents' efforts to remove a weather radar tower on Sulphur Mountain over health concerns was dealt another blow this week after an advisory group reported that the facility is properly located and is effective in forecasting flash floods.
健康への危惧からSulphur山の気象観測レーダの移設に努力してきたOjaiの住民は、施設は適切な場所に設置され、津波の予報に有効であるという勧告グループの報告を受けて、今週、もう一つの痛手を被った。

Since the tower's installation 11 years ago, neighbors have complained about the potential health effects of being exposed to the 750,000 watts of microwave energy emitted by the National Weather Service's giant golf ball-like equipment. They also consider it an eyesore that has driven down their property values.
11年前の塔の建設以来、近隣の住民は巨大なゴルフボールのような装置のアメリカ気象サービスにて放射される750kWのマイクロ波電力への曝露による健康影響の可能性を訴えてきた。
同時に、景観の劣化による不動産価値が低下することも念頭においてあった。

So when U.S. Sen. Barbara Boxer (D-Calif.) requested last year that the Research Council of the National Academy of Sciences study the tower's effectiveness, community activists were hopeful that it would be an opportunity to move the tower.
そこで、カリフォルニア州選出のBarbara Boxer上院議員は塔の有効性に関する科学的な研究をアメリカ科学アカデミーの研究委員会に、昨年、依頼した。地域の活動家は塔の移設のチャンスになることを願った。

But the study focused entirely on the tower's operations, rather than any health risks it might pose to residents of the sparsely populated mountain.
しかし、研究結果は、人口が希薄な山岳地帯の住民への健康リスクよりは、塔の運用に焦点をあてた。
*******************

以上のことから、11年継続した反対闘争は、アメリカ科学アカデミーの報告で、幕を閉じた、と言える。

*現地を確認

2018年の写真  直径10m程度のレーダドームが見える

 

2012年の写真 

 

9150 Sulphur Mountain Road, CA.にあるレーダ塔は、山の中にあり、Ojaiの街とは10km程度と、かなり離れている。

*この紛争では、1994年に裁判も起こされた。しかし住民側の敗訴で終わった。

MICROWAVE NEWS March /April 1994
にあった情報
ここを一部 翻訳して紹介

******************
Opposition to Weather Radar in California Stirs Controversy
カルフォルニアの気象レーダの反対運動は論争を引き起こす

Homeowners near new NEXRAD Doppler weather radar in Ojai, CA, are trying to persuade the National Weather Service (NWS) to move the facility.
カルフォルニア州Ojaiの新NEXRADドップラー気象レーダ周辺の土地所有者は、設備の移設をアメリカ気象サービスに確認することを試行している。

A lawsuit to force the government to reopen the environmental review process has failed, but in the process, the opponents have stirred controversy over possible health risks from powerful radars.
政府に環境アセスメントのやり直しを命じる裁判は、失敗に終わったが、反対運動は強力なレーダによる健康リスクの可能性に関する論議を引き起こした。

The lawsuit, filed in federal court in Los Angeles,
訴訟はロスアンゼルスの連邦裁判所に提訴していた。

NEXRAD or WSR-88D radars
which operate at 2.7-3.0 GHz, with 750 kW peak output powerhave been controversial in other areas as well.
NEXRAD
もしくはWSR-88Dレーダは2.73.0GHzで、ピーク電力750kWで動作し、他の地域でも論争となっている。

***********************

*参考情報:WSR-88Dレーダの仕様

Gain
45.8 dB at 2.85 GHz
Frequency range
2.73.0 GHz
Peak power output (nominal)
500 kW into antenna
Pulse width (nominal): 1.57 µs (short pulse); 4.5 µs (long pulse)
± 4%
RF duty cycle (maximum): 0.002 
First side-lobe level:-29 dB

以上の情報から、1km離れた地点で、レーダの主ビームから外れた方向での電波曝露値を計算する。
・電力密度はピーク値が約0.8W/m20.08mW/cm2)、平均値は0.0016W/m20.016μW/cm2)となり、規格値が平均値で1mW/cm2とすれば、規格値の5万分の1の電波曝露となる。
・アメリカの規定で、パルス波のようなピーク値の大きい場合の制限に関しては、不詳です。
ICNIRP1998年ガイドラインでは、ピークは平均値での規定値の1000倍を超えない電力密度であること、という規定がある。

以上の情報から、極端な例として、50mしか離れていない地点で、レーダの主ビームから外れた方向での電波曝露を計算する。
・電力密度はピーク値が320W/m232mW/cm2)、平均値は0.64W/m20.064mW/cm2)となる。
ICNIRP1998年ガイドラインではピーク値は規定値(1mW/cm2)の1000倍以下としてあるので、この場合でも「曝露規定の30分の1」以下となる。

以上の情報から、さらに極端な例として、10mしか離れていない地点で、レーダの主ビームから外れた方向(レーダ設備の横方向等)での電波曝露を計算する。
・電力密度は、平均値でも16W/m21.6mW/cm2)となり、曝露規定(平均値で1mW/cm2)を超える。
したがって、こうしたレーダ装置の場合、少なくとも装置の下や横方向に、10m以内に人が立ち入らないように柵などを設ける必要がある。


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C5.鹿児島・奄美での自衛隊レーダ基地に関する裁判

記:2018−4−30

1)以下の新聞にある様に、レーダ基地からの電磁波に関連する建設反対の裁判が始まった。

*************************
<奄美・陸自ミサイル基地>住民ら、差し止め申請

毎日新聞2017/4/24() 13:12配信


鹿児島・奄美大島に陸上自衛隊警備部隊とミサイル部隊が配備される計画を巡り、地元住民32人が24日、駐屯地関連施設の建設差し止めを求める仮処分を鹿児島地裁名瀬支部に申し立てた。

住民らは「島の貴重な自然が壊され、住民が戦争に巻き込まれる危機にさらされる」としている。
申立書によると、移動式警戒管制レーダが発する電磁波で健康が害されるなど、住民の人格権や環境権、平和的生存権が侵害されるとしている。

申し立てた住民団体「奄美・自衛隊ミサイル基地反対債権者の会」の城村典文共同代表は、配備地周辺にはアマミノクロウサギも生息しているとした上で「住民の意向も確認せずに配備ができるのか法に照らして明らかにしたい」と話した。

(略)
**********************

2)結果:地裁の判決

以下の新聞報道があった。

**********************
陸自施設差し止め却下 地裁 奄美で部隊配備計画

20180428

奄美大島で進む陸上自衛隊部隊配備計画を巡り、奄美市の住民らが国を相手取り施設の建設差し止めを求めた仮処分申請について、鹿児島地裁(上田洋幸裁判長)は27日、却下する決定を出した。
住民らは福岡高裁に即時抗告する方針。

申立人は市民ら32人で、「部隊に設置される移動式警戒管制レーダの電磁波が人体に悪影響を与える」「島の環境が破壊される」などと訴えていた。
防衛省は来年3月までに施設や宿舎の完工を目指している。

上田裁判長は〈1〉レーダ装置は長期間、継続的に電磁波を発射するものでなく、身体の安全が害される具体的危険性があるとは認められない 〈2〉奄美大島の自然環境に相応の配慮をして施設建設の工事が進められており、環境権が侵害される具体的危険性があるとは認められない 〈3〉施設の建設などで直ちに債権者らの居住地域が戦争により他国から攻撃の対象になるとは認められない――などとした。

申立人の1人で「奄美・自衛隊ミサイル基地反対債権者の会」の城村典文・共同代表(65)は「奄美の将来に対する権利保全が度外視された決定」と批判。即時抗告する考えを示した。
(略)
************************

その後の、高裁での裁判結果が判明した時に、その結果を紹介します。

 

 

3)高裁での判決
記:2018−12−13

南海日日新聞の記事です。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181212-00010004-nankainn-l46
***************************
レーダ危険性認めず 陸自配備差し止め抗告棄却
2018/12/12(
)

防衛省が鹿児島県奄美大島で計画している陸上自衛隊警備部隊の配備を巡り、奄美大島の住民が施設の建設差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は11日、申し立てを退けた鹿児島地裁の決定を支持し、住民側の抗告を棄却した。

鹿児島地裁は今年4月、住民側が訴えた平和的生存権や環境権を具体的権利として認めず、施設のレーダが発する電磁波は「具体的な危険まで認められない」と判断した。住民側が決定を不服とし、即時抗告していた。

時抗告審は電磁波の与える影響が主な争点となった。
高裁は奄美の部隊が運用する車載型移動式レーダの特性を示し、「抗告人らが長期間にわたり、常時継続的に電磁波に暴露することになると認められない」として危険性を訴える住民側の主張を退けた。

(略)
**********************

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D1イタリアで、米軍衛星通信用アンテナ建設で紛争 

記:2017−10−8

レーダ基地ではないが、大型のアンテナを設置し、衛星通信を行う基地の紛争の例として、ここに紹介する。

*最初に

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-31/2013033101_04_0.html
 にあった内容
2013−4−1のログ

**********一部 引用**************************
新聞赤旗   
2013331()
米国の軍事衛星施設建設 シチリアが許可撤回 イタリア 住民反発うけ
イタリア南部シチリア州のロサリオ・クロチェッタ知事は29日、米国が同州内に設置する予定だった軍事衛星施設の建設許可を撤回したことを明らかにしました。
前州知事がイタリア政府と合意して許可していたものですが、健康への被害を懸念する住民の反対に押されて撤回に追い込まれました。

問題になっているのはMUOSといわれる米海軍が開発中の衛星通信システムです。
米国は、米軍と同盟国軍の通信能力を高めるとして、同システムの施設をシチリア州南部ニシェミに設ける計画でした。
地元住民らは、同システムから発射される電磁波が健康に悪影響を与える恐れがあるとして反発。
計画が明らかになって以降、繰り返し住民集会などを開いて抗議の意思を示してきました。
ニシェミでは30日にも数千人による抗議行動が予定されていました。
(略)
************************

Wikipediaの情報から一部抜粋

ニシュミの無線基地には、それまでに多数の無線通信アンテナがあった。
ここに、MUOSといわれる米海軍が開発中の衛星通信システムの通信アンテナを設置することに「なった。

2011
年から、地域の野生動物への影響と、電磁波の健康影響への懸念を表明して、ニシュミの無線基地の拡張に反対する住民運動が始まった。

2013
3月、地域行政府は、住民の反対運動を受けて、MOUSシステムの設置許可を取り消した。(赤旗に報道された記事)
地域行政はISSイタリア高級健康研究所に独立した研究を委託した。
2013
7ISSは「電磁波の健康影響があることを示す確証はない。しかし、継続した検証は必要」という報告を出したので、設置は再認可された。

ISS報告にあった情報から

1

 

イタリア語の説明の中から、MOUSシステムの送信アンテナの周波数は31GHz、送信出力1600W、アンテナの大きさは18.4mであることはわかる。

 

2


2の一部、イタリア語原文から機械英訳、そしてBEMSJによる和訳を以下に示す。

Tabella l.5 Valori della densita di potenza emessa dalle antenne MUOS in diverse Posizioni
 per una potenza di 1600 W.
Table l. 5 Values of power density emitted from antenna MUOS in various positions for an output of 1600 W.
1.5:出力1600W時のMOUSアンテナから発信される各区域における電力密度の値

Posizione  

Densita di Potenza

Position 

Power Density

位置   

電力密度

Di fronte allapertura della parabola   

24W/m2

 

In front of the opening of the parabola

パラボラアンテナの開口部の正面(指向方向)

Massimo valore in-asse in regione di Fresnel 

9.3W/m2

Maximum on-axis in Fresnel region

指向方向の近傍界における最大値

Massimo valore in campo vicino a 18.4m di distanza laterale dal fascio 

0.093W/m2

Maximum value in field near 18.4 m of lateral distance from the bundle

指向方向・主軸から側方に18.4mの距離での最大値

Massimo valore in campo vicino a 36.8m di distanza laterale dal fascio 

1mW/m2

Maximum value in field near 36.8 m of lateral distance from the bundle

指向方向・主軸から側方に36.8mの距離での最大値

 

このISSの報告書では、アンテナの主軸方向外に漏れる電波強度は、36.8m離れれば1W/cm2と明記している。

*結末

2017-9-21
の調査で、イタリアのニシュミNiscemiの近郊に、Googleの航空地図を見ると以下の軍用アンテナ直径20m程度のパラボラアンテナなどが見える。

2013
年の赤旗の記事に反して、いつ建設されたか、いつ運用が始まったかは定かではないが、建設されたとみることができる。


Naval radio transmitter facility (MOUS) Niscemi   2017年のグーグル航空地図

 

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D2. チェコ軍事レーダ紛争

記:2017−10−9

*初めに

産経新聞社のWEB 国際ニュースに以下の情報があった。
2007−3−24のログ

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国際 :米ミサイル防衛 建設予定のチェコ小村で住民投票

米国がポーランドとチェコに計画するミサイル防衛(MD)施設の建設にロシアが反発する中、チェコ西部のレーダ施設建設予定地に近い人口99人のトロカベツ村で17日、建設の是非を問う住民投票が同国で初めて実施された。

同村のネオラル村長(65)は同日午後、有権者89人の過半数が投票を終えた段階で「施設建設反対は確実になった」と述べた。
地方自治体レベルでの住民投票は国政に法的影響力を持たないが、小さな村の決定は、国民の間に広がっている反対の声をさらに後押しすることになりそうだ。
投票は同日夕に締め切られ、即日開票に入る。
村長は住民の反対理由について「レーダからの電磁波による健康被害と、施設が攻撃対象となることへの不安」を指摘した。

同村の周辺地域では今後、ほかの複数の自治体でも住民投票が計画されており、反対が相次ぎそうだ。
米国はポーランドに迎撃ミサイル基地、チェコにレーダ施設の建設を計画。チェコ政府は受け入れ方針を表明し、昨年末の世論調査で反対は3割強だけだった。

しかし、今年1月末の米国の正式要請を機にロシアが計画に強く反対。
冷戦のイメージとも重なる地域情勢不安定化への国民の懸念が高まり、3月上旬の世論調査では反対が7割まで拡大した。(共同)

BEMSJ
注:この住民投票は反対71、賛成1という結果であった。
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さて、「人口99人のトロカベツ村での住民投票」の結果、このレーダ建設はどうなったか?
人口わずか99人の村での住民投票が、国際的なニュースになるとは、驚きでもある。

日本語でのWEB検索では、その後の情報や、関連した情報は見つからない。
トロカベツとかな書きされているので、村の名前のスペルが不明で、検索もできない。
色々な関連用語で検索をして、以下の情報を得た。

*以下はWikipediaの「東欧ミサイル防衛構想」の解説

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東欧ミサイル防衛構想は、2000年代後半に推進されている東ヨーロッパでのミサイル防衛計画。
ジョージ・W・ブッシュ第43代アメリカ合衆国大統領は、イランと北朝鮮の脅威に対抗するため、東欧でのミサイル防衛の推進の必要性を唱えた。
そして、ポーランド、チェコと協定を結び、ミサイル防衛の設備を配備することとなった。

具体的には、チェコに大陸間弾道ミサイルの早期警戒レーダサイトを、ポーランドに迎撃ミサイル基地を建設しようとしている。

ロシアはこれに反発した。ロシアは東欧ミサイル防衛構想を「自国を対象としたもの」とし、「もし、ポーランド(もしくはリトアニア)にミサイル防衛設備が配備されれば、ミサイルの射程を欧州に向けざるを得ない」「脅威には脅威で応える」とアメリカに強く反発している(NATOの東方拡大もロシアの強硬な反発の一因になっている)。
ロシアは、アゼルバイジャンのレーダサイトの共同利用を代替案として提示したが拒否された。
以降、2008年のグルジア紛争もあり、米ロ関係は「新冷戦」と呼ばれるまでに悪化した。

2009
120日、「敵との対話」「国際協調」を掲げるバラク・オバマがアメリカ大統領に就任。
ロシア側はミサイル防衛計画の撤回を期待した。
しかし、オバマは「イランの脅威がなくなれば、ミサイル防衛を推進する必要はなくなる」と述べていたため、当初防衛計画の撤回は見送られるものと思われていたが、2009917日、オバマはイランの短・中距離ミサイルの脅威の方が高いとして防衛計画の見直しを決定。
ロシアはこれを歓迎する声明を発表した。
見直しによってポーランドに迎撃ミサイル、チェコにレーダ施設を配備する計画は中止された

新たな計画では2011年から2020年頃までの第4段階で構成される。
1段階でSM-3を搭載したイージス艦を配備し、第2段階では地上発射型SM-3をポーランドとチェコに配備、第3段階は日本とアメリカが共同開発しているSM-3 ブロックIIAを配備、最後の第4段階ではSM-3 ブロックIIBによって長距離ミサイル対処能力をもつ。
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BBCニュースのサイトに以下のニュースがあった。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/6720153.stm

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Sunday, 20 September 2009 16:52 UK
タイトル:US President Barack Obama has cancelled plans to station an anti-ballistic missile system in Poland and the Czech Republic.

迎撃ミサイル基地としては、隣国チェコCzech RepublicBrdyにレーダ基地(大陸間弾道ミサイルの早期警戒レーダであるXバンドレーダを設置する計画)も設けられ、これらはブッシュ政権時代に締結されていたが、2009年9月、オバマ大統領は計画見直しを公表した。
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ここでBRDYという地名が、スペルが判明した。

WikipediaにあったBrdyの解説

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Brdy
はチェコの中では軍事用専用区域として長く、扱われてきた。
Brdy
山は軍用区域の中に地上設置中距離ミサイル防衛レーダ装置の設置に関して、アメリカとチェコ政府が合意したことで、注目を浴びた。
しかし、このミサイル防衛計画は、オバマ政権下で見直され、取り消された。
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*チェコ語のWikipediaにあった情報から一部引用
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Radar in Brdy
  Brdyのレーダ

2006
年夏、レーダ建設の話が報道された。

レーダは、718.8m地点と言われるBřízkovec丘に建設される予定であった。
反対運動がおこり、20086月に軍事区域内から軍の憲兵によって排除されるまで、続いた。

2007
119日、チェコ政府とアメリカとが正式な協議を開始した。
チェコの首相は議会に、住民投票ではなく、レーダ建設の可否に関する提案を求めた。

2007
317日、Trokavec村で住民投票を行うと発表した。
この村は、当初から最も声高にレーダ建設に反対してきた。

レーダに関する地域住民投票を行ったその他の地域共同体は、Mirošov, Strašice, Hvožďany in Příbram (反対95%), Těna na Rokycansku (反対98%), Zaječov na Berounsku(反対98% ), Hits (人口30名全員反対であった。
Cinnamon in Rokycany
は投票を行い、すべての投票は反対であった。
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*トロカベツ村に関する情報
チェコ語のWikipediaから

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Trokavec
村はRokycany districtにある。
2007
年のレーダ建設に関する住民投票で、メディアに知られるようになった。
2017年現在での人口:98
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マーカがトロカベツ村 緑の森林の区域が軍用の地域でBrdy レーダ建設が計画された。

*まとめ:
ブッシュ大統領時代に進められたチェコに建設するミサイル防衛レーダ基地建設は、地域の反対があったが、結果として、オバマ大統領の時代になって、ミサイル防衛計画そのものが見直され、チェコのレーダ建設計画は撤廃となった。


 

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E1イージス・アショア秋田に設置

 

山口県にも設置の話がありますが、ここでは秋田市に設置の情報を主に、紹介していきます。

1)設置に向けての動き

秋田魁新報 20181022日の記事から一部抜粋
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地上イージス候補地、新屋演習場調査説明に市民から不満の声
適地調査の方法に市民から不満が相次いだ説明会

地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(地上イージス)の配備計画について、防衛省は22日、配備候補地の秋田市で4度目の住民説明会を開いた。
配備地としての適地調査を陸上自衛隊新屋演習場で近く始める予定を示したのに対し、反対する新屋勝平地区振興会の幹部は「説明会を重ねたというアリバイづくり。納得できない」と危機感を募らせた。

市文化会館で開かれた説明会は、入場対象を限定せずに実施。市民94人が出席した。
防衛省側は調査の方法やスケジュールの説明を一本調子で進めた。
住民からは「配備ありき」「私たちが知りたいことに答えていない」と不満の声が相次いだ。

電波環境の調査について、防衛省側は実際に電波を発せず、電波法の施行規則に基づく計算によって影響を確認すると説明。
出席者からは実物のレーダを使わないことに「机上の計算だけで影響が本当に分かるのか」「信用できない」との声が飛んだ。

調査の説明に先立ち、同省は初めて電磁波の専門家を招いた講話を開催。
大久保千代次・電磁界情報センター長が「電波防護指針を満たせば安全」と主張した一方、配備に伴う影響の有無は「指針に基づいて運用するのであれば、大丈夫と理解するしかない」と述べると、会場からはため息や失笑が漏れた。
(略)

2
)イージス・アショアの性能などの情報
細かい情報は不詳です。
しかし、以下の公開情報から、発信電波のおおよその周波数が判明しました。

以下は秋田市のWEBに公開されていた資料からの抜粋
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住民説明会資料(秋田県)
平成30年10月
防衛省

イージス・アショア Sバンド帯(2GHz〜4GHzの間)

 

Sバンド帯
図出典:周波数による電磁波の分類(参照:「電波と安心な暮らし知っておきたい身近な電波の知識」総務省 H285月改定)
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E2 産経新聞 201821日の記事 

記:2019−10−15

以下の記事がある、参考になると思われるので、引用する。

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オピニオン
宮家邦彦のWorld Watch
イージス地元に丁寧に説明を

「地元に説明しないまま導入を進めようとする政府の姿勢は言語道断である!」
山口と秋田で配備が検討される地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、某保守系元衆院議員がこう批判したそうだ。
確かに地元の関心は高い。

たまたま今年に入り、山口と秋田で何度か講演する機会に恵まれたが、この問題は質疑応答で必ず聞かれるテーマだった。地元の懸念はこうだ。
●そもそも、どんな施設ができるのか、不安である

●子供がいるので、目に見えない強力な電磁波が怖い
●同システム配備で地元が北朝鮮ミサイルの標的になる
●米国の兵器システムだから日本人は操作できない
●同システムは迎撃だけでなく攻撃もできると聞いた
●山口県萩市とは違い、秋田市は人口密集地である
●いずれにせよ、地元への事前の説明がなく遺憾だ

地元の懸念を過小評価するつもりはない。だが、これらの批判の多くは事実に基づかない誤解と思われる。軍事専門家ではない筆者が理解するイージス・アショアの実態とはおおよそ次の通りだ。

●イージスは迎撃システム
イージスとは、高度情報処理型誘導能力により日本を攻撃するミサイルを迎撃するシステムだ。
200
を超える目標ミサイルを同時に追尾、10個以上を迎撃できるという。
使用されるフェーズドアレイレーダーは、旧来の回転式ではなく、侵入するミサイルの方向のみにビーム走査が可能なため、迎撃精度が飛躍的に高まっているそうだ。

●電磁波は危険なのか 
イージスのレーダは前述の通り指向性が高く目標に照射するビームの量が少ないので、放出される電磁波も従来型よりはるかに少ない。
人体に悪影響があるなら、そもそも採用されなかっただろう。

●北は山口・秋田を狙うのか
可能性ゼロではないが最初に狙うだろうか、筆者はいつもこう答える。理由は簡単。
北朝鮮が日米韓に対し一発でもミサイルを発射すれば、その時点で第2次朝鮮戦争が始まり、総攻撃を受けて北朝鮮は崩壊する。
つまり北朝鮮はミサイルをそう何発も撃てないのだ。

されば北が最初の攻撃でイージス・アショアを狙うとは思えない。
他の目標を狙った方が効果は大きいのだ。
そもそも、イージス・アショアを狙って飛んでくるミサイルほど迎撃しやすいものはない。
山口や秋田が北の最初の攻撃目標になる可能性は低い。

●イージスは日本人が運用する 
米国の兵器システムであり米軍との緊密な連携が必要なことは事実だが、イージスの運用はあくまで自衛隊・日本政府の判断で行われる。

●イージスは攻撃できるのか
イージス艦には、さまざまな能力があり、ミサイル迎撃以外にも一定の攻撃は可能。
他方、イージス・アショアは目標捕捉・迎撃誘導能力の高いレーダと迎撃ミサイル左中心とする防衛システムだ。
それ自体に北朝鮮を攻撃する能力があるとは思えない。

●住宅地に近いから危険か
秋田市の候補地が住宅地に近いのは事実だが、前述の通り、同地が攻撃される可能性が低く、日本海側に照射されるビームが生む電磁波も少ないことも考慮すべきだろう。

やはり最大の問題は地元への説明だ。
内容はもちろんだが、重要なのはそのタイミングである。
国家安全保障事項だから、全て公開というわけにもいかない。

この種のシステム配備には予算、調達、部隊編成など多くの準備が必要だが、最初の公式説明先は通常、地方公共団体の首長だろう。
地元国会議員にもいずれ説明は必要だが、現職ならともかく元議員へ事前説明は難しい。

今後とも地元の懸念を払拭しっつ、国民が日本防衛のためこの種の防衛システムを受け入れてくれる「地元」を「日本の誇り」と思えるような丁寧な説明が望まれる。


 イージス・アショア配備の候補地に挙がっている陸上自衛隊新屋演習場=秋田市

 

〈みやけ・くにひこ〉昭和281953)年、神奈川県出身。栄光学園高、東京大学法学部卒。53年外務省入省。中東1課長、在中国大使館公使、中東アフリカ局参事官などを歴任し、平成17年退官。
1次安倍内閣では首相公邸連絡調整官を務めた。
現在、立命館大学客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

 

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E3.秋田でのイージス電波測定実験に使用した測定器


以下は放映されたテレビ画面のスクリーンショットである。

 

測定器としてはスペクトラムアナライザーが用いられ、報道陣に公開された測定画面では、測定器に表示された一部の条件(たぶん、設定周波数と設定した通過帯域幅)の箇所はテープで覆われている。

 

秋田で使用された測定器は、以下のものと同定できた。

Keysight社のN79010Bというスペクトラムアナライザーである。

このアナライザーは様々な機能を追加したりすることが可能なので、防衛省がどういう状態で購入したかは不明で、仕様は不祥となる。いずれにしても500万円以上の費用で購入したものと思われる。

この測定器であれば、たぶん、正確にレーダからのパルス性電波を測定できるであろう。

 

 

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E42019年の国会における論議から、イージス・アショアは、50m以内は危険と

記:2020−2−7

1)NHKのサイトにあったニュースから

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/18958.html から一部引用
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2019
618

イージス近接「体温上昇し身体に異変のおそれ」防衛相

新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備をめぐり、岩屋防衛大臣は、レーダに近接した場所では、電波によって体温が上がる症状が出る可能性があるものの、住民が立ち入れないよう安全対策を取る考えを示しました。

政府が、秋田市と山口県萩市に配備する方針の「イージス・アショア」をめぐっては、地元の住民から、レーダの電波による健康への影響を懸念する声が出ています。

これについて、参議院外交防衛委員会で、岩屋防衛大臣は、
出力を最大にしたレーダの周囲50メートルに10分間、妊婦や子どもがいた場合の影響を問われたのに対し、「体温が上がる症状が出る可能性があり、身体に異変を生じるおそれがある」と述べました。

そのうえで「レーダ周囲の防護壁に電波の吸収体を設置し、妊婦や子どもが立ち入ることができないよう、警備体制や施設をしっかり整えていかなければならない」と述べ、住民がレーダの周囲に立ち入れないよう、安全対策を取る考えを示しました。

(略)
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2)第98回国会 参議院 外交防衛委員会 第18号 令和元年618日議事録から抜粋

○白眞勲君 いや、今大臣おっしゃったとおり、仮に飛んできても、そこ、飛んできたときにはそうですよ、ブースト段階とか何かは。しかし、その後どういう軌跡を取るのかというのは当然レーダが追跡をしていくということになれば、これはやっぱり三百六十度とあるというのは当たり前であって、いや、私も素人だけれども、やっぱりそういう素人でも何か変だなというところがあるんですね。
やっぱり、そういったところをもうちょっとやっていただきたいな、話をちゃんときちっと次の説明からはやってもらいたいと思いますが。


次に、先日の本会議での私の質問に対して、岩屋大臣、米国政府から入手した出力などの数値を用いて算出した結果、二百三十メートル以遠離れていれば人体等に影響を及ぼすことはないとの答弁だったわけですが、これ、周辺住民にとってみて人体への影響って非常に重要ですね。

どうもこのイージス・アショアの発する電波の帯域というのは、これ、いわゆる電子レンジで使われるマイクロ波と同様の周波数であると聞いているんですけれども、これ、人体への影響、具体的に人体への影響というのはどんなものがあるんですか。

○国務大臣(岩屋毅君) 電波による人体への影響につきましては、総務省の電波防護指針等によりまして一ミリワット・パー・平方センチメートルの基準値を超えないこととされておりまして、基準値を上回る場所については人が立ち入れないように対策を講じることとされております。

なお、この基準値は、安全上の観点から、五十倍の安全率を掛けているところでございます。


そして、防衛省では、米国政府から入手したイージス・アショアのレーダの性能に係る情報を基に、総務省が定める電波法令に基づく計算を行いました結果、基準値を満たす保安距離は二百三十メートルとなり、演習場内に収まるということを、確認をしているところでございます。

いずれにしても、この運用に当たりましては、人体への影響を局限化することが必要だというふうに思っております。

○白眞勲君 六分間照射されたら一度体温が上がるということですけど、私はこれ質問通告しておりますけれども、
例えば妊婦さんやお子さんが、このレーダの出力が最大にされたときにレーダの位置から五十メートル離れた場所に間違って十分間いた場合、どうなるんですか

○政府参考人(鈴木敦夫君) お答え申し上げます。
今申し上げましたように、この安全基準、今回の保安距離というものは二百三十メートルということでございますので、五十メートルの場所では、これだけでは影響を与えるということではございますけれども、他方で、大臣からお話ございましたように、今回の場合、このレーダの周りに、レーダの周囲の防護壁に電波吸収体、これを設置します。そうしたことによりまして、電波が相当部分吸収されまして、影響がより局限化するということでございます。

いずれにいたしましても、この基準の中で人体への影響が生じるようにないよう、安全対策に万全を期してまいりたいというふうに考えてございます。


○国務大臣(岩屋毅君) 先ほど局長から説明いたさせましたように、総務省の指針をきちっと守れない場合には、体温が上がるという症状が出てくる可能性があるわけで、それは、ちょっと、それが医学的にどういうことになるのかというところまでちょっと承知をしておりませんが、まあ身体に異変を生じるおそれがあるということだと思います。

こういうことは決してあってはならないので、レーダ周囲の防護壁に電波吸収体を設置することはもとより、そもそも妊婦の方や子供が立ち入ることができないような警備体制、警備施設というものをしっかり整えていかなければならないというふうに思っております。


〇白眞勲君 六分間で一度上がるということは、例えばお子さんが間違って入っちゃって、その中で隠れんぼうか何かして三十分間いただけで大変なことになるということですよ。
そういうことですね。それ本当に、これ、私、こういったことをきちっと出してもらいたいということなんですね。
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BEMSJ
注:

そもそも50m以内は健康影響を勘案しなければならないことは自明で、一般公衆・基地の周辺の住民に対する以前に、基地の隊員に対しても立ち入りを制限しなければならない領域である。厳密には50m以内なのか、40m以内なのかは、・・・・か、別途精査する必要はあるが。

230m以内に一般の人が立ち入ることができないように管理を行う、50m以内に関しては基地の隊員も含めて立入などを管理する。間違っても子供が50m以内に立ち入ることはないように管理する。したがって、レーダからの電磁波の健康影響は、少なくとも電波防護指針に定める安全な範囲に管理する。」と明確に答弁をすれば、すっきりするはずであるが、そうした配慮がこうした国会の議論・答弁の中にはない。
それゆえにNHKニュースで「50m以内は危険」ということが抜き出されて報道され、一般の人は「イージス・アショアの電磁波は危険」と感じることになるのであろう。

 

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E5ルーマニアにあるイージス・アショアの基地

記:2020−2−19

1)秋田魁新報2018102日の記事から 一部引用

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東欧の地上イージス(7)ルーマニア 電波健康被害、報告なし
2018102日 掲載

世界で唯一、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(地上イージス)が実戦配備されているルーマニア・デベセル基地内にある米軍基地。
先月中旬、現地を訪れた際、地上イージスのアクセル・シュタイナー司令官がインタビューに応じた。

―地上イージス基地の概要を教えてほしい。
「イージス艦の上部に当たるデッキハウスに、レーダや指令システムがある。
デッキハウスの外にはミサイル発射装置が3基あり、24発装填(そうてん)されている。
発射装置は密着させることも可能だが、万が一の誘爆を防ぐため間隔を空けて配置している。
基地内には電源プラントもあり、外部からの供給が断たれても基地内で発電できる」

―イージス艦ではなく、陸上で弾道ミサイル防衛の任務を行う理由は。
「イージス・システム自体は潜水艦にも対応できる能力を有しているため、イージス艦は多様な使い方が可能だ。
陸上で弾道ミサイル防衛ができるようになれば、イージス艦を他の任務に従事させることができるようになる」

―レーダが発する電波の健康被害はないか。
「着任して3カ月になるが、そのような報告は届いていない。
電波に関しては、ルーマニア政府との協議に基づき、周囲の安全に配慮して運用している。
ただ、必要に応じ、迎撃ミサイルを発射する際は強い電波を出すことになる」

(略)
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2)地球探検の旅 のサイトから 場所の同定

サイト:44.07789450668673 , 24.41579109279121
ルーマニア
NATO
のミサイル防衛システムとして、アメリカ軍が中距離弾道ミサイル迎撃用に陸上配備型SM-3ブロック1Bを配備したデベセル空軍基地です。
イージス艦のレーダを含むシステム一式をそっくりそのまま陸上に配備した形で、陸上イージス「イージス・アショア」と呼ばれています。

3)グーグルマップでの確認

 

 

中央にあるレーダ装置の周辺50mとか100mには、レーダへの人(基地の隊員・従業員ら)の近接を禁止するための柵などは見えない。

4)20188月秋田での防衛省の説明会資料の中から



5)ヤフーのニュースにあった情報
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20180618-00086620/ にあった情報から一部引用

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市街地すぐ傍に置く必要性が低いイージス:アショア配備候補地問題
2018/6/18(
) 3:06

欧州イージス・アショアはルーマニアのデベセルに設置したものが運用されていますが、使わなくなった飛行場を丸ごと使用しているので敷地そのものが広大であり、周囲は農場でレーダ塔は近隣の市街地からは約3km離れた立地です。
間もなく完成予定のポーランドのレジコボに設置されたイージス・アショアも同様に飛行場の跡地を利用しており、周囲は森と農場や牧場で、レーダ塔から市街地までは23km離れています。
**********************

6)朝日新聞Globeにあった情報から

https://globe.asahi.com/article/11531967

ルーマニアのイージス・アショア施設(写真は米海軍提供)

 

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E6.ハワイのイージス・アショア基地

記:2020−2−20

1)ヤフーニュースにあった情報
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20180618-00086620/の一部引用

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市街地すぐ傍に置く必要性が低いイージス・アショア配備候補地問題
2018/6/18(
) 3:06

 

アメリカ軍よりカウアイ島イージス・アショア実験施設

アメリカ軍がハワイのカウアイ島に設置したイージス・アショア実験施設は市街地から遠く離れていますが、レーダ塔の500m先に小さな住宅地帯があります。
これは軍人や家族のための住宅ですが、レーダ波の人体への悪影響についてはアメリカ軍自身があまり気にしていないことが見て取れます。


一方で発射機はレーダ塔から6km先の周囲に住宅の無い場所に離して設置されてあります。
これは実験施設であり定期的に発射試験を行うためです。
日本配備のイージス・アショアは発射試験を行わないので、発射機に付いては直接比較はできません。


2)秋田での防衛省説明会20188月の説明資料にあった情報


 

 

3)ハワイの基地の状況 産経新聞のサイトにあった情報

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河野氏、地上イージス視察 米ハワイの実験施設
2020.1.14 14:34

 

「イージス・アショア」の実験施設を視察後、記者団の質問に答える河野防衛相=13日、米ハワイ州カウアイ島(共同)

米ハワイ訪問中の河野太郎防衛相は13日午前(日本時間14日午前)、カウアイ島にある地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の米軍実験施設を視察した。

視察後、記者団に「イージス・アショアを活用して、北朝鮮のミサイルからしっかりと日本を守っていく。
なるべく早く整備したい」と強調した。

(略)
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BEMSJ注:河野大臣がレーダ装置に何メートル近接したかは定かではないが、写真を見る限り、レーダ装置に人(隊員や従業員、訪問者)の近接を禁止している様には見えない。


4)秋田魁新聞のサイトから

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「近くに保育施設」 ハワイ視察、防衛相発言は的外れ?
2020
116日 掲載

米ハワイにある地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の実験施設を視察した河野太郎防衛相が、「非常に近い所に保育施設も設けられている」と発言し、地上イージスの安全性を強調した。

現地の状況は、秋田市への配備を考える上でも判断材料になり得るのだろうか。
河野氏は13日(日本時間14日)、ハワイ・カウアイ島にある米海軍「太平洋ミサイル試射場」の地上イージス実験施設を視察。防衛省によると、視察後、報道陣への対応の中で次のように発言した。

―住宅地との距離の観点から、視察でどのように感じたか。
「非常に近い所に保育施設も設けられていて、安全的には何の問題もないということですので、住宅地との距離というのは重要な要素であると思いますが、安全性は高いと考えております」

ハワイ諸島の中で最も北にあるカウアイ島は、人口約7万人。
太平洋ミサイル試射場は島の西海岸にあり、カウアイ郡庁のある中心地リフエから約40キロ、最も近い町からでも約9キロ離れている。
試射場では、弾道ミサイルを模した標的を使った迎撃実験などが行われている。

米軍基地は、勤務する軍関係者の居住区域を完備しているのが通例で、太平洋ミサイル試射場も例外ではない。
米海軍のウェブサイトによると、南北に細長い9・7平方キロの試射場の一角に居住区域が設けられており、住宅のほか、コテージやガソリンスタンド、ショッピングモール、運動場、体育館などがそろう。
河野氏が言及した保育施設もその中にある。

地上イージスのレーダや指令システムを収める「デッキハウス」がある場所は、保育施設から約600メートル。この距離を捉えた発言が「非常に近い所に設けられていて、安全的には何の問題もない」だった。

この保育施設は、地上イージスの安全性を判断する材料になり得るのか。秋田市の陸上自衛隊新屋演習場への配備計画に照らすと、そもそもの前提が大きく異なる現地の状況が浮かんでくる。

まず、あくまでも実験施設である試射場は、実戦における防衛兵器ではないため、他国からの攻撃対象になるとは考えにくい。

次に、カウアイ島の地上イージス実験施設は、
デッキハウスこそ保育施設から約600メートルにあるが、ミサイル発射施設は5キロほど離れている。
秋田市への配備計画では、デッキハウスとミサイル発射施設は住宅街や学校から約700メートルの場所に一体的に置くことになっている。

そして、カウアイ島の保育施設は、試射場を運用する米軍の軍人や軍属の家族を対象としたものであり、地元住民向けではない。

2004〜09年に内閣官房副長官補として安全保障・危機管理を担当した国際地政学研究所(東京)の柳沢協二理事長は「ミサイル防衛の最前線に位置付けられる日本のイージス・アショアが有事の際に攻撃対象とみなされるのは当然。
ハワイの実験施設の近くに保育施設があるからといって、安全性の証明にはならない」と指摘する。

新屋演習場から約1・5キロにある認定こども園勝平幼稚園・ひよこ保育園の藤原はるみ園長(69)は「実験施設と新屋を同列に扱えるものではないだろう」、金義晃副園長(65)は「保育施設だけを取り上げて安全性を強調するのはどうかと思う」と疑問を呈する。
やはり演習場に近いやまばと保育園の大友潤一園長(51)も「調査報告書の問題であれだけ批判されたのに、納得できないような話ばかり出てくる」と話す。


(略)

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5)グーグルの地図での確認

右側にレーダ基地、直前に一般の道路、そしてビーチが広がる。 レーダ装置への人の近接を禁止するような柵などは、グーグルの地図・航空地図を見た範囲では、見えない。

レーダ装置の南側には住宅地があり、前面はビーチと、ちょっと北側にはビーチのコテージ(浜小屋・宿泊施設?)のような施設もある。

BEMSJ注:これらの画像・情報を見ると、アメリカのこのイージス・アショア関係者は、レーダ波による電磁波の影響を、ほとんど考慮していないようにも見受けられる。
電磁波の健康影響・その他への影響
を厳密に検証しての結果であれば良いが、・・・・・
そうした検証結果の開示があれば、安心できるが・・・・・・・


 

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E7.ポーランドのイージス・アショア

記;2020−2−21

1)地球探検の旅のサイトにあった情報から

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ポーランドにイージス・アショア配備 -
座標 (緯度・経度) :54.47789553976379 , 17.10706942280932

地上配備型イージス・システム、ヨーロッパではルーマニアに続いてポーランドに配備されます。
2016
年からポーランド空軍が使用していたレジコボ空軍基地にイージス・アショアを配備するため、2020年の運用開始に向け工事が進行しています。
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2)グーグルの地図での確認

マーカがレーダ装置とみられる装置の位置。
この基地は広く、レーダの位置から基地境界までは少なくとも300mはある。

中央部にレーダ装置

3)秋田魁新報の電子版にあった情報

https://www.sakigake.jp/news/photo/20190614AK0014/1/

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2019
614日 掲載

ポーランドのレジコボ基地内に建設されている地上イージス

BEMSJ
注:少なくとも基地との境界には柵が見える。


4)リテラのサイトから

https://lite-ra.com/2019/02/post-4523_3.html

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イージス・アショア配備でポーランドの経済損失は900億円!
2019.02.02 11:00

しかも、イージス・アショアの設置は、その土地の環境や価格等にも悪影響を及ぼす。
共産党の穀田恵二衆院議員が機関誌「前衛」20189月号で、秋田市と同じく市街地付近でのイージス・アショア配置計画が進んでいるポーランドの事例を報告している。

ポーランドでは2020年より、北部・スウプスク市の中心部から4kmに位置するレジコボ基地にて、アメリカ軍によるイージス・アショアの運用が始まる予定だ。

共産党は、イージス・アショア配備にあたって、米国とポーランドの両政府間で合意した「基地周辺の土地及び空域の使用に関する規則」と題する文書を入手。
そこには、レーダ等を妨げないために基地周辺に設けられた複数の制限が記載されていた。

〈例えば、「基地から35キロ圏内では、建物の高さを15.24メートル以内にする」、「基地周辺の空域は飛行を制限する」、「基地から4キロ以内では、風力発電施設の建設を禁止する」というものです。〉
(「前衛」より)
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E8.秋田市議会2019年の議事録から

記:2020−2−22

以下の記事録から、興味深い点だけを抜粋した。

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秋田市議会 会議録
会議区分 委員会・分科会
会議録名称 10全員協議会(イージス・アショア関係) 令和元年 第1日目
会議日:令和元年6月5日

3。出席議員
議長(岩谷政良)、副議長(小野寺誠)、
議員(奈良順子、佐藤広久、後藤良、
(略)

5.説明員
防衛省大臣官房審議官(深澤雅貴)、同東北防衛局長(伊藤茂樹)、同防衛政策局戦略企画課長(五味賢至)、同戦略企画課班長(加藤智史)、同整備計画局情報通信課長(加藤勝俊)、同防衛計画課企画調整官(川上直人)、同施設計画課長(江原康雄)、防衛装備庁統合装備計画官付事業計画調整官(米倉和也)、陸上幕僚監部防衛課A/A準備室長(比嘉隼人)、外関係職員

6.案件 防衛省からのイージス・アショアに関する説明について

(略)

○防衛省大臣官房審議官(深澤雅貴)
本日は大変忙しい中、岩谷市議会議長、小野寺副議長を初めといたしまして秋田市議会議員の皆様方におかれましては、貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。
(略)

また、イージス・アショアのレーダ施設及び垂直発射装置(VLS)と住宅地や学校との間に700メートルの緩衝地帯を設けることといたしました。
これに伴いまして、演習場の西側一帯の県有地を取得させていただきたいと考えています。
(略)

防衛省としましては、緩衝地帯700メートルを確保するためにも県有地を取得させていただきたいと考えています。
次に、風車の移転についてです。レーダの風車の安全な運用のため、レーダ施設のすぐ近傍に位置することとなる風車につきましては、移転させていただく方向で県や企業との調整を進めてまいります。

(略)

○議長(岩谷政良) それでは、質疑応答を行います。
(略)

○議員(倉田芳浩) 本当にコントロールできているのか不安なのですが、先ほど安井誠悦議員からも話が出ましたが、
この230メートル以内の中で、電波が照射されている状況で自衛官の方たちは作業をすることはありますでしょうか。

○防衛省整備計画局防衛計画課企画調整官(川上直人) 安全に留意しながら作業をすることは当然あると考えております。

○議員(倉田芳浩) その場合、先ほど0.08ワット・パー・キログラムということが安全であるということですが、230メートル以内で行った場合、
これの基準を超えるところは何メートルくらいから、いわゆる職業的曝露か一般曝露かですが、これはどういう感じの曝露になるのでしょうか。

○防衛省整備計画局情報通信課長(加藤勝俊) 一般曝露につきましては230メートルということになりますが、職業曝露については、安全率がもう少し下がるわけです。
ただ、何メートルとはなりませんで、実際に作業をする際に直接そのレーダの電波を浴びないように電波をとめるとか、電波が発射している方向には立ち入らないようにするというようなことに留意しながら活動することになると思います。

○議員(倉田芳浩) 電波が照射されているところでも作業はするというような答弁があったのですが、それこそ230メートルの範囲の中で自衛官が作業をするわけですから、その自衛官の安全を守るためには、そういう数値を知っておく必要があるのではないですか。

○防衛省整備計画局情報通信課長(加藤勝俊) その勤務している自衛官の安全に留意しながら運用することになるのは当然だと考えております。

○議員(倉田芳浩)
今、数値もわからなくて、どうやって安全を守るのかということは不安ですが、仮に直接照射をされた場合、0.08ワット・パー・キログラムを超える線量が当たるのは、これは何メートルくらいのところからですか。こういう基準をもう超えてしまうのでしょうか。

○議長(岩谷政良) 答弁いかがですか。

○議員(倉田芳浩) 議長、回答は後で結構ですので、次に移ってもよろしいですか。

○議長(岩谷政良) よろしいですか。回答は後ほどということで。

○防衛省整備計画局情報通信課長(加藤勝俊) 後ほど回答させていただきます。
(略)

○防衛省整備計画局情報通信課長(加藤勝俊) 先ほどの質問についてですが、計算をさせていただきましたが、約100メートルということです。

(略)

○議員(成沢淳子) 先ほど、西側一帯の県有地を取得をするといったような話がありましたが、
当然、県との協議がこの後あるわけです。議会の議決も必要な部分だと思いますが、この県有地が確保できないという結論に至った場合は、この新屋演習場は断念するといったような考え方になるのでしょうか。

○防衛省防衛政策局戦略企画課長(五味賢至) これまで説明していますとおり、住民の方々の不安や懸念をできる限り払拭するという観点から、緩衝地帯をできるだけとるといった中で、保安距離との関係などから西側の県有地を取得させていただきたいというのが、我々の今の考え方です。
仮に県との関係で、この県有地を取得できないといったような状況になった場合どうかという点につきましては、我々としては、できる限り取得する方向で考えていますので、なかなか現時点において、そういったような状況になった場合にどうなのかということはお答えすることは難しいと考えています。

ただ、他方で、我々としての考え方としては、もともとこの新屋演習場を配備候補地として選定して、今回その調査をした結果、これを見てみますと、必ずしもこの県有地を取得しなくても安心安全な形でイージス・アショアを、少なくとも物理的には配備をできるという点はあります。

ただ、繰り返しになりますが、いずれにしても、我々としては、現時点においてはその県有地を、取得をすることがベストだと考えていますので、そういった方向で話をさせていただきたいと考えています。

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BEMSJ
のコメント:
以上の議事録を読んで、2点ほど関心が深い点がある。
1
.新屋に設置する場合、現在の基地の西側、日本海に面した県有地を買い上げることを考えていると、防衛省は延べている。仮に買い上げができなくとも、「物理的にレーダ装置などを設置できる」とも述べている。
電波の人への影響の観点から、
この西側の県有地の取り扱いが、一つの鍵になっていると思われる
2.レーダ装置の近傍、100m以内は基地の隊員であっても、近接した場合は電波曝露の安全基準を順守できない、ということが明言されている。
これはある意味では当然のことで、BEMSJが入手した他の軍用レーダ基地における運用規制などの情報とも一致している。近接の禁止は必須と言える。
ハワイにあるイージス・アショア基地の訪問記などの情報・写真を見ると、ハワイではレーダ装置の100m以内とか、50m以内に人(隊員・訪問者など)近接を禁止する防護柵などが見えないのは、なぜか? ハワイの基地の運用が甘すぎるといえるのかもしれない。
「ハワイが・・・・・」なので、「秋田・山口の基地も同じで良い・・・・」と、安直に考えてはならないのかもしれない。

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E9.地上イージス配備を断念 国家安全保障会議で決定20206

記:2020626

秋田魁新聞にあった記事の一部引用
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地上イージス配備を断念 国家安全保障会議で決定

2020625

地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を巡り、河野太郎防衛相は25日、秋田、山口両県への配備を断念したと明らかにした。
24
日の国家安全保障会議(NSC)で決定したとし、「他の代替地を見つけることは極めて困難で、見通せない」と強調。

その上で「地元の皆さまには大変ご迷惑をお掛けした」と改めて陳謝し、配備断念に関する地元説明を検討する考えを示した。今後の閣議で配備断念を正式決定する見通しだ。

東京・市谷の防衛省で会見した河野氏は「山口県と秋田県で、これまでの配備候補地以外で候補地があるかどうか分析、検討したが、(見つけるのは)非常に困難」と説明。
「レーダと発射台を分けて配備する案も自民党内で出ている」との指摘に対しても、実現は難しいとの認識を重ねて示した。
(略)

政府が地上イージスの導入を閣議決定したのは201712月。
防衛省は195月、秋田市の陸上自衛隊新屋演習場と陸自むつみ演習場(山口県萩市、阿武町)を、配備の「適地」とする調査報告書を公表した。

地元には「ブースタを確実に安全な場所へ落とす」と説明してきたが、その通りに落とせない技術的問題が判明し、改修に10年以上の期間と2千億円以上の追加負担が見込まれるとして、河野氏が今月15日に計画停止を表明した。
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電磁波の問題とは別の案件で、この建設計画は中止となった様です。


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*その他の関連する学術的な研究

 

F19.4GHzでの研究 BEMS1991Veretの研究

記:2020−2−27

以下の研究がある。
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掲載誌:Bioelectromagnetlcs 12:47-56 (1991)
タイトル:Antibody Responses of Mice Exposed to Low-Power Microwaves Under Combined, Pulse-and-Amplitude Modulation
パルス変調と振幅変調を組み合わせた低電力密度のマイクロ波に暴露したマウスの抗体反応
研究者:B. Veyret et al;

Abstract:
概要
Irradiation by pulsed microwaves (9.4 GHz, 1
μs pulses at 1,000/s), both with and without concurrent amplitude modulation (AM) by a sinusoid at discrete frequencies between 14 and 41 MHz, was assessed for effects on the immune system of Balb/C mice.
同時に1441MHzの正弦波で振幅変調したものと、しない場合のパルス性マイクロ波(搬送波9.4GHz、パルス幅1μS、繰り返し周波数1kHz)曝露をマウスの免疫機能への影響から、評価した。

The mice were immunized either by sheep red blood cells (SRBC) or by glutaric-anhydride conjugated bovine serum albumin (GA-BSA), then exposed to the microwaves at a low rms power density (30µW/cm2; whole-body-averaged SAR
0.015W/kg).
マウスはSRBC赤血球かGA-BSAアルミノンによって免疫が行われており、マウスは低電力密度のマイクロ波(時間平均値:30μW/cm2、全身平均SAR0.015W/kg)に暴露した。

Sham exposure or microwave irradiation took place during each of five contiguous days, 10 h/day.
疑似曝露・マイクロ波曝露期間ははそれぞれ連続して5日間、110時間であった。

The antibody response was evaluated by the plaque-forming cell assay (SRBC experiment) or by the titration of IgM and IgG antibodies (GA-BSA experiment).
抗体反応は、SRBC実験では装飾形成細胞分析、GA-BSA実験ではIgMIgG抗体の滴定によって評価した。

In the absence of AM, the pulsed field did not greatly alter immune responsiveness.
振幅変調の行わない実験では、パルス変調したマイクロ波は、抗体反応に大きな変化は与えなかった。

In contrast, exposure to the field under the combined-modulation condition resulted in significant, AM-frequency-dependent augmentation or weakening of immune responses.
一方で、同時に振幅変調を行ったパルス変調のマイクロ波曝露は、有意な変化をもたらし、振幅変調の周波数によって、抗体反応が弱くなったり、強くなったりした。

本文、Full Textを読むとマイクロ波の曝露強度は、測定器での測定結果で、時間平均値である。
したがって、この実験では時間平均値は0.03mW/cm2と曝露基準値(1W/cm2)の基準値以下であるが、パルスのピーク値は振幅変調なしの場合では、約1000倍の30mW/cm2(電力:300/m2  電界強度:340V/m)とかなり強い曝露となる。

この研究は、もしかして、高いピーク電力によるものかもしれない。

この研究から、レーダからの電磁波曝露に関して、日本の電波防護指針では時間平均値でのみ規定しているが、瞬間的なピーク値も考慮する必要があるかもしれない。
ちなみにICNIRPの電磁波曝露ガイドライン(1998)では、平均値だけではなく、ピーク値も規定されており、1000倍を超えないことになっている。



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F2.EBM2003Dabrowskiらの1300MHzパルス性電磁波に関する研究

記:2020−5−10

以下の研究がある。
EMF Portalからの一部引用

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掲載誌: Electromagn Biol Med 2003; 22 (1): 1-13
Immunotropic effects in cultured human blood mononuclear cells pre-exposed to low-level 1300 MHz pulse-modulated microwave Field
低レベル1300 MHzパルス変調マイクロ波へあらかじめばく露されたヒト単核球細胞での免疫効果
研究者: Dabrowski MP, Stankiewicz W, Kubacki R, Sobiczewska E, Smigielski S

この研究は、健康な提供者(N = 16)の末梢血から分離された単核細胞試料に対する1300 MHzパルス変調マイクロ波(パルス幅5μs、パルス繰り返し330pps)の影響を調べた。
ばく露には無響チャンバ(電波暗室)を用い、平均電
密度10W/m21mW/cm2)で行われ、そのSARは電力の測定値から0.18W/kgと推定された。

影響は、増殖および免疫調節特性を特徴付けるいくつかのパラメータで評価した。
その結果、パルス化マイクロ波照射によりリンパ球での3H-チミジンの自
発的取り込み減少、フィトヘマグルチニン(PHA)およびcon Aに対する増殖反応、T細胞抑制活性(SAT指数)およびンターロイキン(IL-2受容体の飽和は変化しなかった;一方、リンパ球でのIL-10産生は有意に増加し、培養上清のIFNγ濃度は変化しないか、わずかに減少した;同時に、マイクロ波照射は、単球でのモノカイン産生を変化させた;IL-1βの産生は有意に増加し、そのアンタゴニスト(IL-1ra)の濃度は半分に低下し、腫瘍壊死因子TNF-α)濃度は変化しなかった;モノカイン比率(IL-1β対IL-1ra)のこのような変化は、単球免疫原性機能の活性化を反映するLM指数の値を有意に上昇させた、と報告している。

 

Full Textを読むと
・この研究は、1300Hzマイクロ波のレーダなどのパルス性電磁波に関する研究である。
・マイクロ波の発信機は軍用レーダ装置である。
・曝露強度は、供試サンプルがない状態で、NARDA meter (Model 8718)で測定した。
<測定器は40GHzまでのもの、様々なプローブがあるので、いかなるプローブを使ったかが肝心、プローブの型名の記載はない。>
・曝露強度SARは供試サンプルに吸収された電力と、供試サンプルの重さから計算した。
ということが判った。

BEMSJ
注:
この研究では曝露限度値とされる平均電力密度1mW/cm2のマイクロ波を細胞に印加している
平均電力に対して、パルス性なので、ピーク電力密度は600倍の600mW/cm2になる。日本の電波防護指針ではピーク電力に関する正制限はないが、ICNIRP1998年ガイドラインでは1000倍までに制限されていた。研究条件は、このICNIRP1998年ガイドラインにも合致する条件である。
しかし、この研究結果は、その適合範囲であっても、細胞に影響を与えた、ということを見出している。



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F3.Manikowska19799.4GHzパルス電波による研究

記:2020−5−30

以下の研究がEMF Portalのサイトにある。
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掲載誌: Experientia 1979; 35 (3): 388-390
タイトル:Effects of 9.4 GHz microwave exposure on meiosis in mice.
マウスの減数分裂に対する9.4 GHzマイクロ波曝露の影響
著者: Manikowska E, Luciani JM, Servantie B, Czerski P, Obrenovitch J, Stahl A

この研究は、典型的なレーダ発生器からの反復的マイクロ波の全身曝露を受けた成獣オスのBalb/cマウスの生殖細胞の減数分裂への影響を調べた。
ばく露には無響チャンバを用い、パルス化マイクロ波(搬送周波数9.4GHz、パルス幅0.5μs、パルス繰返し周波数1000Hz)を平均電力密度0.10.5110mW/cm2で、11時間の曝露を、5日/週で2週間継続した。

その結果、曝露により、1)減数分裂の通常の推移に影響が生じた、2)転座の増加、染色体ペアが一価の細胞の出現などが見られた、と報告している。
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BEMSJ
注:
この研究では「0.1mW/cm2という小さな平均電力の曝露でも、陽性効果が得られた」、となっている。
しかし、この研究の曝露条件は、パルス波形であり、そのDuty比は2000、すなわち平均曝露強度が0.1mW/cm2であっても、パルスのピーク電力値は2000倍の200mW/cm2となる。
この研究は、再現実験が必要と思われるが、強いパルス性の電磁波曝露の影響と言えるかもしれない。

この研究も、平均電力値でのみ規制している日本の電波防護指針に、課題があることを示す論文と言える。



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F4.1979Thomasらパルス電磁波の影響

記:2020−6−9

以下の研究がEMF Portalのサイトにある。

掲載誌: Radio Sci 1979; 14 (6) Suppl: 253-258
タイトル:Microwave radiation and dextroamphetamine: Evidence of combined effects on behavior of rats.
マイクロ波照射とデキストロアンフェタミン:ラットの行動
に対する組合せ影響の証拠
研究者: Thomas JR, Maitland G

この研究は、マイクロ波照射とデキストロアンフェタミンの併用効果を、6匹のオスのアルビノラットにおける低頻度行動
分化強化(DRL)スケジュールの成績によって評価した。
ここでのDRLは、1時間のセッション中、前の自発
反応(例えばレバー押し)から18秒以上経過した後のレバー押しにのみ食餌報酬を与えることで、一定の間隔をあけたレバー押し行動を強化するもの。
18秒以内にレバー押しでは食餌は与えられず、タイマーはリセットされる。
強化スケジュールを13週間訓練した結果、ラットの反応は、要求された間隔をとった反応(低頻度行動)が大部分を占めるようになった。

最初に、マイクロ波曝露なしで、0.255.0 mg/kgの範囲のデキストロアンフェタミンについて、用量 - 効果関数を求めた。
用量が少ない方
が、反応率は増加した。
最大の反応率は1.02.0mg/kgで見られ、用量の増加とともに反応率は低下し、ついには反応が停止した。

次に、1回または複数回のマイクロ波曝露と薬剤(上記と同じ用量)の併用における、用量 - 効果関数を求めた。
1
回曝露条件では、薬剤投与後に、平均電力
密度1mW/cm2のパルス性2.45GHzマイクロ波(パルス幅2μs、パルス繰返し数 500パルス/s)に30分間曝露した(全身平均SAR200μW/g)。
複数回曝露条件では、薬剤投与と行動
テストの実施日を除き毎日、1回曝露と同じ条件で曝露を繰り返した。
その結果、どちらのマイクロ波曝露条件下でも、曝露無しの場合に比べ、少ない薬剤用量において、行動への影響は最大となった、と報告している。

BEMSJ注:
・時間平均電力密度は1mW/cm2と一般的な曝露限度値と同じであるが、パルス性ということで、ピーク値は1000倍の1W/cm2となる。
・この実験が他の研究者によって追試が行われ、同様な結果が得られているかは定かではないが、この陽性効果は、パルス性、平均値の1000倍も強いパルス性電磁波を浴びると出てくるものかもしれない。

 


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*その他関連情報

 

G1.ドクターヘリの運行に問題が出た事例2018

記:2020−1−11

以下は産経新聞の記事から
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レーダ停波要請に米軍「NO」 ドクターヘリ、搬送17分遅れ
2018.6.1
京都府は1日、同府宮津与謝消防本部が5月に交通事故の負傷者をドクターヘリで搬送するため、ミサイル防衛用レーダ「Xバンドレーダ」を配備する米軍に電波の送信停止を要請したところ、すぐに実施されずに搬送が17分遅れたと発表した。
負傷者の命に別条はなかったが、府は国に対し、早急に再発防止策を講じるよう申し入れた。

府や消防によると、5月15日午前、同府伊根町で起きた交通事故で重傷を負った70代男性を兵庫県豊岡市の病院にドクターヘリで搬送するため、京都府京丹後市の米軍経ケ岬通信所に電波の停止を要請。
ところが米軍から停波できない旨の回答があったことから、西へ約4キロ離れた同市の航空自衛隊基地に着陸することになり、病院への到着が遅れたという。

Xバンドレーダは電磁波が航空機の機器に影響を与える恐れがあり、地元消防と米軍などは平成26年、ヘリが半径6キロ圏内を飛行する場合は電波を停止することで合意していた。

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