携帯電話の電磁波曝露は、子供の方が強く曝露を受ける・・・・・という情報がある。
これに関して、入手して、読むことができた範囲で、関連する研究の概要をこのコーナでまとめて行きます。
最初は1件、2件の研究紹介から始めます。
作成開始:2010-04-03 更新:2023−6−12
1.1996年のGandhiらの研究
2.2101年 久田らの研究
3.2004年 藤本らの研究
4.201103総務省「電波の安全性に関する説明会」の中の説明から
5.携帯電話の子供の使用による脳腫瘍リスクは増加せず 2011年の研究
6.藤原修らの携帯電話のSAR 成人と小児の違い 2004年
6A.藤原修らの2000年の研究
6B.藤原ら2003年子供のSARの研究
7.矢部武著「携帯電磁波の人体影響」集英社新書2010年発行 から
8.スイスの2010年 Kusterらの研究
9.2008年のフランスのWiartらの研究
10.2009年WHOのワークショップでのスイスの講演
11.BEMS年次総会2002年Guyらの研究
11A.BEMS年次総会2012年 上野らの研究
12.2004年のBurdaloらの研究
13.Nagaokaらの2019年子供のSAR研究
14.BEMS Rongenらの2004年研究:子供のSAR差異不要
***子供への影響に関する研究や規制等***
21.韓国放送通信委員会の勧告「子供のためのガイドライン」を予定
22.エール大2012年の母ネズミの携帯曝露による胎児の影響に関する研究
23.レパチョリらの2005年研究
24.トロント市の2008年子供の携帯使用
25.フランスにおける携帯電話の子供向け宣伝禁止
26.韓国では、学校内のスマホ禁止は人権侵害 2020年
27.Haaralaら2005年 子供携帯使用は認知機能に影響なし
28.Preeceら 2005年 子供の携帯使用で認知機能に影響なし
29.Ha Minaらの 2013年 韓国の子供携帯使用に関する研究
30.Loughranら 2013年 携帯と青少年の脳活動に影響なしの研究
31.2019年度総務省研究報告から
32.2023年 Minaら 子供の無線周波数電磁界曝露に関するレビュー
記:2012−5−5
たぶん、子供の脳の方が、携帯電話の電磁波の影響を受けやすい・・・・という報告を行ったのは、以下の研究が最初ではないかと、思われる。
タイトル:Electromagnetic absorption in the human head and
neck for mobile-telephones at 835 and 1900 MHz
研究者:Gandhi, O.P. Lazzi, G. Furse, C.M.
掲載誌:This paper appears in: Microwave Theory and
Techniques, IEEE Transactions on
Publication Date: Oct 1996 Volume: 44, Issue: 10, Part 2 On page(s): 1884-1897
この研究では、大人のモデルに対して、子供のモデルは、単純に比例で縮尺したモデルを想定している。
大人のモデルはサイズ1.974とし、10歳児の子供のサイズは1.51、5歳児の子供のサイズは1.2989としている。
すなわち、大人に対して、5歳児の子供の大きさは約6割の大きさに、縮小している。
原書の表9
原著の表9を示す。
出力600mWの4分の1波長のモノポールアンテナで、周波数を835MHzとした場合の、大人と10歳児、5歳児のSARの計算結果を示す。
赤で囲んであるように、1gあたりのピークSARでは、大人に対して10歳児、5歳児の値が大きく、1.5倍程度になっている。
原著の表10
原著の表10を示す。
出力125mWの4分の1波長のモノポールアンテナで、周波数を1900MHzとした場合の、大人と10歳児、5歳児のSARの計算結果を示す。
赤の下線で示すように、1gあたりのピークSARでは、頭部全体では大人に対して10歳児、5歳児の値が大差はなく、脳内でのピークSARでは大人に対して5歳児は約1.5倍程度になっている。
「矢部武」本では、赤い四角で囲んだ数字だけを、紹介している。
原著の図2
原著の図2を示す。
周波数835MHzの場合、大人(a)、10歳児(b)、5歳児(c)では、脳内のSARの分布状態が異なり、年齢が若いほど、脳の内部まで浸透している。
変化が大きい。
原著の図3
原著の図3を示す。
周波数1900MHzの場合、大人(a)、10歳児(b)、5歳児(c)では、脳内のSARの分布状態が異なり、年齢が若いほど、脳の内部まで浸透している。
835MHzの図2に比べると、変化は小さい。
関心のある方は、原著論文を入手して読んでください。
追記:2012−5−17
原著の図2のカラー表示のグラフを見つけました。以下に示します。
このGandhiらの1996年の研究では、大人と10歳児、5歳児の頭部は、単純に大きさが異なるとして、大人の大きさから縮小モデルで解析を行っています。
大人はボクセルサイズが1.974×1.974×3oに対して、5歳児のボクセルサイズは1.2989×1.2989×1.9048oです。
すなわち、大人に対して、5歳児は約66%の大きさ、大人の頭のサイズを直径20cmとすれば、5歳児の頭のサイズは13cmとして、計算をしています。
そこで、以下の図では、5歳児の計算結果の図を、66%に縮尺して、大人のSAR分布と同じ大きさで比較できるように付記してあります。
これをみると、同じ電力の携帯電話の電波を受けると、大人は大きな直径20cmの頭部に対して、比較的周辺部での吸収で収まっていることに対して、5歳児は単純に頭のサイズが小さいので、より脳の内部まで吸収の範囲が浸透している ということが判ります。
掲載誌:電子情報通信学会 信学技報EMCJ2001-81(2001-01)
タイトル;携帯電話の成人と幼児の頭部を対象とした局所SARの比較評価
研究者:久田智視・王建青・藤原修
あらまし
携帯電話の小児頭部に対する局所SARの評価は研究グループで大きく異なり、論争中である。
本文では、筆者らの開発になる成人頭部数値モデルから日本人頭部寸法の年齢別計測データにしたがって縮減・作成した小児モデルに対して、GandhiらとKusterらの計算条件下で局所ピークSARを解析した。
その結果、成人に対する小児頭部内の局所ピークSARは、モノポール型アンテナの出力電力を一定とするときはサイズ縮減と共に顕著な増加がみられるのに対し、ダイポール型アンテナの実効電流を一定とするときは、サイズ依存性はほとんどみられなかった。
前者はGandhiら、後者はKusterらの結果と同じであり、このことは両研究グループの結論の相違がアンテナの種類と出力電力または実効電流を一定とした条件下の数値解析でもたらされた可能性を思わせる。
以下に原文より図1:SAR計算のためのアンテナ配置 図2:携帯電話のアンテナ出力を0.6Wとした局所ピークSAR 図3:半波長アンテナの実効電流を100mAとした局所SARを転載します。
この研究では周波数は900MHzとし、Gandhiらの研究条件と一致させています。
図2
図3
図4
関心がある方は、原著全文を入手して読んでください。
BEMSJコメント:
図3と図4を比べてみれば、アンテナの条件によって子供の頭部では大人の頭部よりSARが大きくなったり、大きくならなかったりすることが判る。
ほとんどの携帯電話の送受話器(ハンドセット)に採用されているアンテナは、モノポールアンテナであり、図4の条件に相当する。
記;2010−4−19
電子情報通信学会・環境電磁工学研究会(EMCJ)参加報告 から抜粋
2004年1月20日 東京都立大学にて開催。
講演を聴いたときの概要を以下に纏めた。
タイトル;ダイポールアンテナによる成人および乳幼児頭部内部温度上昇とSARの相関
研究者: 藤本正樹(大阪大学)ほか
・FCCは1997年に機器からの電波輻射による近傍電磁界暴露限度をSARで設定した。(FCC OETブリテン65)
・過去の研究では、頭部のSARの分布と、温度上昇の分布は一致しない。熱の拡散などがあるためである。
しかし、局所SARと最大温度上昇は比例関係にある。
・ダイポールアンテナを、耳を除く頭部から2.2cm離れた場所に置き、3才、7才、成人の局所SARと最大温度上昇を調査した。
結果は、20%程度の違いはあるが、ほぼ同じレベルであった。
従って、幼児であるからSARを厳しくしなければならないという必要はない。
・この研究で、職業曝露値の10W/kgというSARでは、温度上昇が2度であった。
・質疑応答:
もしこれが本当であれば、温度上昇1度から規定している職業曝露の限度値を10W/kgから半分にしなければならなくなる。確認が必要となる。
関心のある方は、原著全文を入手して読んでください。
記:2011−3−10
「電波の安全性に関する説明会 安全で安心な電波利用環境に向けて」が開催された。
1 日時 平成23年3月8日(火曜日)13時から16時30分まで
2 場所 日暮里サニーホール(東京都荒川区)
この講演の中で、
「電波防護指針の根拠と測り方」渡辺聡一氏は
国際共同研究(NICTを含む14研究機関)でSAMファントム、成人男性モデル、小児モデルで頭部SARの違いに関する研究を行った
結果は2006年にIEEEで発刊した論文にある。これによれば、SAM>成人>小児であり、現用のSAMファントムで評価を行えば、小児に対しても安全といえることが判った。
という説明があった。
以下にレジメのページを示す。
関心のある方は、このレジメに紹介されている英文の論文を読んでください。
記:2011−8−6
http://japan.cnet.com/news/service/35005689/ にあった内容 2011−7−29のログ
****************************** ***********
CNET Japan ニュース
携帯電話使用の子ども、脳腫瘍リスクは増加せず--疫学研究論文
2011/07/29
携帯電話を使用する子どもが脳腫瘍にかかるリスクは、使用しない子どもと比べて高くなるわけではないことを示唆する疫学研究論文が発表された。
この研究は、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、スイスで行われたもので、「Journal of the
National Cancer Institute」に論文が掲載された。
研究グループは、7歳から19歳までのおよそ1000人の子どもを調査し、2004年から2008年までに脳腫瘍と診断された子どもと、一般から無作為に選ばれたグループについて調べた。
研究グループは被験者に対し、携帯電話で音声通話をどの程度使っているかを尋ねた。
また、一部では無線プロバイダーから利用に関する情報が提供された。
その結果、携帯電話をいつも使っている子どもの脳腫瘍リスクは、携帯電話をあまり使っていない子どもに比べて高いというわけではなかった。
また、頭部の中で携帯電話からの電磁波により多くさらされる部位で脳腫瘍のリスクが高まることもなかった。
以下 略
*********************** *************
関心のある方は、当該のニュースを読んでください。
作成:2006−11−28
掲載誌:電気学会誌C 124巻12号 2004年
タイトル:成人と小児の頭部MRIモデルを対象とした携帯電語による局所SARの熱的尺度評価
研究者:藤原修ら
まえがき からその一部を紹介
******************** ****************
情報化杜会の到来で携帯電話が爆癸的に普及する一方、使用者の低年齢化が急遠に進んでいる。
それに伴い、小児頭部内でのドシメトリ(電磁波を浴びたときに生体組織に誘導される電磁吸収量を定量すること)に関心が高まっている。
Gandhiらは、小児頭部に対しては成人頭部よりも局所ビークSAR(Specific
Absorption Rate、即ち単位質量当たり吸収される電力)は著しく増加すると主張しているのに対して、Kusterらは、成人と小児のいずれの頭部モデルに対してもSARの空間分布は類似し、小児頭部での局所SAR値の増加はないとしている。
この論争について、2002年にGuyらは、Gandhiらの計算をフォローした上でKusterらの結果を支持する論文発表したが、奇しくも同年に筆者らは、日本人頭部磁気共鳴像(MRI: Magnetic Resonance Imaging)データに基づく成人数値モデル及びそれを下に日本人年齢別計測統計データを参考に成人頭部モデルを部位毎に異なる比率で縮減して作成した小児頭部モデルを対象として、GandhiらとKusterらと同じ計算条件の下で携帯電話による頭部内局所SARを計算し、両グループの結果が共に正しいこと、小児頭部内局所ピークSARの増減傾向は実はアンテナの入カインピーダンスに依存して異なることを明らかにした。
更に、児童に相当する12歳児・10歳児・7歳児・5歳児と幼児相当の3歳児の頭部モデルに対して、携帯電話の標準使用位置とされる「頬の位置」と「傾斜の位置」での頭部内局所SARを試算し、実使用状態での局所ピークSARの子供と成人との間での差異は小さく、成人と比べると子供のほうが逆に減少する傾向にあることも示した。
*********** ***********
関心のある方は、原著論文を入手して読んでください。
このページに公開:2012−7−12
電子情報通信学会のWEBに公開されていた論文の内容です、
http://search.ieijp.or.jp/jpa/2000/allsearch/j83-b1-81.htm<リンクが切れています>
結構 興味の深い研究成果です。
以下に概要を紹介しますが、興味のある方はWEBを覗いたり、原著論文を入手したりして読んでください。
携帯電話は頭部で使用するので、電磁波が頭部に影響する、特に頭の中央部などに集中して影響が現れるのではないか(これをホットスポットという)という観点もあります。
この研究は、その観点に答えてくれる研究です。
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ieicejps B 2000 1
携帯電話の電磁界による頭部内のホットスポット形成とSARのFDTD解析
藤原修
Osamu FUJIWARA Nagoya 王建青 Jianqing
WANG Nagoya
牛本卓二
Takuji USHIMOTO Nagoya 野島俊雄
Toshio NOJIMA NTT
本論文では,携帯電話によるホットスポット形成の有無を明らかにするために,筆者らの製作になる成人,小児,幼児サイズの3種類の実形状不均質頭部モデル(以下,リアルモデルと呼ぶ)と,
対照モデルとしてそれらの大きさに対応した均質球モデルを用い,携帯電話による頭部内SARを平面波曝露の場合と併せてFDTD解析した.
その結果,
携帯電話の実使用状態ではリアルモデルでも均質球モデルでもサイズの大小にかかわらず局所ピークSARは表面上で生じ,内部にはホットスポットは形成されないことがわかった.
一方,携帯電話を頭部から9.75cm離した状態では幼児サイズのリアルモデル及び均質球の両モデルにおいてホットスポットが現れることが判明し,このことは平面波曝露で顕著に確認できた.
しかし,これらのホットスポット値は,携帯電話の実使用状態で頭部表面上に生ずるピークSAR値に比して十分小さく,
例えば幼児サイズの首まで含めたリアルモデルでのホットスポット値は
900 MHzでは1g平均で41, 10g平均では36,
1.5GHzでは1g平均で16, 10g平均では11であることがわかった.
****************
追記:BEMSJはこの論文のフルテキストを入手しました。
記:2023−1−17
以下の研究がある。
掲載誌:電子情報通信学会論文誌B Vol. J86–B No.
7 pp.1219–1224
2003 年7月
タイトル:携帯電話の成人と子供の頭部を対象とした局所SARの比較
研究者:藤原修、王建青、久田智視、渡辺聡一、山中幸雄
携帯電話による子供の頭部の局所ピークSAR(Specific
Absorption Rate)に関しては、成人頭部のそれとの大小関係において世界各国の研究グループで評価が異なり、論争が巻き起こっている。
本論文では、日本人年齢別計測データをもとに、筆者らの開発した成人頭部数値モデルを縮小することで、児童に相当する12歳・10歳・7歳・5歳と、幼児相当の3歳児の合計5種類の子供の頭部モデルを作成し、900MHz携帯電話による頭部内局所SARをアンテナの「垂直配置」と、実使用状態の「ほお頬の位置」並びに「傾斜の位置」に対して試算した。
その結果、携帯電話の「垂直配置」では、局所ピークSARはいずれの年齢の子供の頭部モデルにおいても成人より増加する傾向がみられたが、実使用状態においては局所ピークSARの子供と成人との差異は小さく、子供のほうが成人よりも減少の傾向にあることがわかった。
これらの子供対成人における局所ピークSARの大小関係は、アンテナ入力インピーダンス実部の頭部モデルに対する変化からおおむね説明できることを示した。
関心のある方は原著全文を読んでください。
記:2012−5−4
P122〜 ガンジーの研究の確認のことが紹介されている。
・「子供の脳は電磁波に対して脆弱だ」という1996年のガンジーの研究で、子供の脳のSARは大人と比較して大きいという発表がある。
・これに対して、子供と大人の吸収量は殆ど違いがない、という研究も発表された。
・フランスのヴィアール博士の研究(2008年の研究論文)や、ブラジルのデサレス博士の研究(2010年のマイクロウェーブニュースの記事)は、ガンジーの研究の確認を行っている。
<BEMSJ注:この二つの研究の詳細は調べる価値はある。フランスの研究は以下に結果を紹介>
関心のある方は、この集英社新書を読んでください。
記;2012−5−5
以下の研究があります。
掲載誌:Phys. Med. Biol. 55 (2010) 1767–1783
タイトル:Age-dependent tissue-specific exposure of cell
phone users
研究者:Andreas Christ, Marie-Christine Gosselin, Maria
Christopoulou, Sven Kuhn and Niels Kuster
成人、11歳児、6歳児、3歳児などの条件がことなる場合のSARの違いを研究しています。
以下に原著の図4と図5を紹介します。 周波数を900MHzとした場合と、1800MHzとした場合の解析結果です。
図4の900MHzの場合は、年齢によるSARの差異は殆どありません。
図5の1800MHzの場合は、3歳児のSARが、大人に比べて大きい場合(携帯電話のアンテナの条件によって異なる)があります。
ただし、この解析はSAMというICNIRPやIEEEで定めた携帯電話からのSAR測定法によるSAR値を基準にしているので、この基準値は超えてないことに注目する必要があります。
関心のある方は、上記の原著論文を読んでください。
記:2012−5−6
以下の研究があります。
この研究は、上記の矢部武著に紹介されている論文です。
掲載誌:Phys. Med. Biol. 53 (2008) 3681–3695
タイトル:Analysis of RF exposure in the head tissues of
children and adults
研究者:J. Wiart, A. Hadjem, M.
F. Wong and I. Bloch
原著の図10
原著の図10を上に示します。
10gあたりのSARの最大(MSAR)は、周波数を変えて、大人と子供の場合の比較を行っています。
結果は子供に対して、大人が20%程度大きくなる場合と、20%程度小さくなる場合もありますが、総じて大人と子供では大差はない、となっています。
原著の図11
原著の図11を上に示します。
1gあたりのSARで解析した結果では、子供の頭部の皮膚の厚さ、頭蓋骨、筋肉の厚さなどが薄いためでしょうか、局所的に大人と異なるSAR値が検出されています。
一番大きいSAR値となる皮膚では、子供は大人より小さいか同順です。
筋肉の部分では、SAR値は皮膚より小さくなっているが、子供は大人より大きい値となっています。脳みその部分でも子供は大人より大きな値となっています。
記;2012−5−7
以下のWHOのシンポジウムにおけるスイスのKusterの講演レジメが、比較的判り易い。
「2009年6月にイスタンブールで開催された電磁界に関する子供の感受性に関するWHOのワークショップ」の講演レジメです。
関心のある方は、このレジメ全体を入手して、見てください。
一部を、以下に転載します。
レジメの冒頭の頁
Schonbormらの1998年の研究の紹介・900MHzで3歳児・7歳児と大人(4モデル)で、ピークSARを日アックした場合、子供と大人では大きな差異はない。
Kusterらの研究結果 大人(4モデル)と、子供(3歳児、7歳児、日本の7歳児)で比較、 10gあたりのピークSARを比較した場合に子供だから大きいことはない。
Kusterらの研究結果 大人(4モデル)と、子供(3歳児、7歳児、日本の7歳児)で比較、 1gあたりのピークSARを比較した場合に子供だから大きいことはない。
以下の研究がある。
タイトル:7-3:FDTD DERIVED SAR
DISTRIBUTIONS IN VARIOUS SIZE HUMAN HEAD MODELS EXPOSED TO SIMULATED CELLULAR
TELEPHONE HANDSET TRANSMITTING 600mW AT 835MHz.
835MHzで600mWの携帯電話端末から輻射される電波を模擬した電磁界曝露に対する各種人体モデルにおけるSARの分布のFDTDによる解析
研究者:A.W. Guy, C.K. Chou, and G. Bit-Babik.
University of Washington (Emeritus), Seattle, WA 98195,
USA.
Motorola Florida Research Laboratories, Fort Lauderdale, Florida 33322, USA.
INTRODUCTION: Gandhi et al. (1996) have shown higher peak SARs and
deeper penetration in smaller head models exposed to cell phones.
Schönborn et al. (1998) found no significant
differences between adults and children.
Gandhi and Kang (2001) reconfirmed their 1996
observations.
Gandhi’s
results have been widely cited by the media and used by many as one of the reasons that children should minimize using cell phones.
Gandhiらは1996年に、携帯電話端末機からの電波に小さい頭の頭部モデルにおいて、より高いSARと、より深い浸透深さを報告した。
Schönbornらは子供と大人の間に、有意な差異はないことを見出した。
Gandhi and Kangは1998年、1996年の彼らの観察の再確認をおこなった。
Gandhiの結果は、メディアに広く引用され、子供の携帯電話使用を制限すべきという主張の理由の一つにもなっている。
RESULTS: Main results are summarized in the
table (SAR in W/kg).
結果:主な結果を以下にまとめて示す、SARはW/kg
|
Adult |
10-year
old |
5-year
old |
Peak
SAR in a voxel |
7.66 |
9.78 |
7.97 |
1-g peak
SAR in head |
3.81 |
3.93 |
3.43 |
Penetration
depth (cm) |
4.58 |
5.14 |
4.77 |
CONCLUSIONS:
結論
There are small
differences in the peak 1-g SARs (used for compliance limit) or depths of
penetration for the three exposed heads.
3モデル間にピーク1gSARと浸透深さにわずかな差異はある。
From these results, we conclude that the 1-g peak SAR and penetration depth in
head models exposed to 835MHz cell phones do not significantly differ in adult
and child heads.
これらの結果から、頭部モデルに835MHzの携帯電話の電波に曝露した時、1gSARと浸透深さに、成人と子供の間に有意な差異はないと、結論付けた。
記;2012−11−17
4. Session PA: Poster Session A
Comparison of Specific
Absorption Rate (SAR) Induced In Brain Tissues of Child and Adult Using Mobile
Phone
携帯電話の使用による大人と子供の脳内組織に誘導されるSARの比較
Mai Lu1 & Shoogo Ueno2
1:Key
Lab. of Opt-Electronic Technology and Intelligent
Control of Ministry of Education, Lanzhou Jiaotong
University, Lanzhou, China, 730070
In this study, two children and one adult head models have been employed to
calculate the specific absorption rate (SAR) in brain tissues by
finite-difference time-domain method.
It was found that there is a deeper penetration of absorbed SAR in child head.
The induced SAR can be significantly higher in subregions of child brain.
この研究では、1つの大人の頭部と、二つの子供の頭部を用いて、脳内組織に誘導されるSARをFDTD法で解析した。
子供の脳では吸収されるSARは脳深部に達していることが判った。
誘導されるSARは子供の脳の局所において大きくなっている。
Long Abstractから一部引用
A generic handset (known as IEEE mobile phone) was modeled in this study.
The length of the monopole antenna is 38 cm at 1750 MHz.
The antenna is mounted on a conductive box with lateral dimensions 40 mm × 100 mm, and
thickness 20 mm.
IEEE携帯電話として知られている携帯端末を用いた。
モノポールアンテナは1750MHzで長さは38cm。40X100mmで深さ20mmの導電性の箱に取り付けた。
<BEMSJ注:38cmのモノポールとあるが、波長から考えて3.8cmの間違いであろう。どの程度の電力としたのか記述はない。>
SAR10g in child brains are higher than the corresponding values in adult brain.
However in both child and adult brains, SAR10g is well below 2 W/kg, the safety
level defined in IEEE standard.
大人の場合のSARに比べて、子供の10gあたりのSARは大きい。
しかし、IEEEの規定にある安全基準10gあたりのSAR 2W/kgに比べると十分に低い。
Figure 1:頭部モデル
(a) 6才男児
(b) 11才女子
(c) 34才男性
Figure 2:SARの分布の違い (a)
6才男児
(b) 11才女子
(c) 34才男性
Table 2:SAR10g (W/kg) の比較
記:2013−3−10
以下の研究がある。
>掲載誌:Phys.
Med. Biol. 49 (2004) 345–354
>タイトル:Comparison
of FDTD-calculated specific absorption rate in adults and children when using a
mobile phone at 900 and 1800 MHz
>研究者:M
Martinez-Burdalo et al;
成人と子供の頭部での携帯電話の電磁波の曝露(SAR:吸収エネルギー)の違いを解析した研究で、大人と、88%縮小モデル(9-10歳を想定)、78%縮小モデル(2-3歳を想定)での違いを検討した。
アンテナと耳との距離は2.2cm、アンテナは半波長ダイポールアンテナとした。
結果は以下の表に示す。
多少の変化があっても、成人と子供のSARに大差はない。
関心のある方は、原著全文を読んでください。
記;2020−11−7
以下はEMF Portalのサイトにあった情報
***************
掲載誌: IEEE Access 2019; 7: 135909 – 135916
タイトル:Development of voxel models adjusted to ICRP
reference children and their whole-body averaged SARs for whole-body exposure
to electromagnetic fields from 10 MHz to 6 GHz.
ICRP reference childrenと調整したボクセルモデルの開発ならびに10 MHz-6 GHzの電磁界への全身曝露に対するその全身平均SAR
研究者: Nagaoka T, Watanabe S
この研究で著者らは、国際放射線防護委員会(ICRP)の参照値(1歳児、5歳児、10歳児)にあわせた、新たな子どものボクセルモデルを開発し、10 MHzから6
GHzまでの電界偏波及び磁界偏波平面波入射の全身曝露条件で、これらの全身平均比吸収率(WBA-SAR)を計算した。
その結果、ICRPの参照値にあわせた成人のボクセルモデル(NORMAN及びNAOMI)と比較して、子どものモデルについてのWBA-SARは40%-60%高かった。
入射電力密度を国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の無線周波安全性ガイドラインにおける各周波数での参考レベルに設定した場合、子どものボクセルモデルのWBA-SARは一般公衆に対する基本制限0.08 W/kgを最大で20%越えることが示された。
****************
記;2024−11−29
以下の研究がある。
*************
掲載誌:Bioelectromagnetics Volume 25 Issue 2, Pages 142 – 144 2004
タイトル:Mobile phones and children: Is
precaution warranted?
携帯電話と子供:予防措置は必要ですか?
研究者:Eric van Rongen,
Eric W. Roubos, Lodewijk M. van Aernsbergen,
et al:;
Abstract 概要
Are there health related arguments
to recommend that children limit their use of mobile telephones? The
International Expert Group on Mobile Phones from the UK concluded so, but did
not come up with convincing scientific data to back this statement.
「子供の携帯電話使用を制限することを推奨する健康関連の論点はあるか?」英国の携帯電話に関する国際専門家グループはそう結論付けたが、その声明を裏付ける説得力のある科学的データを見出すことはできなかった。
The Health Council of the
Netherlands approached the problem by considering whether developmental
arguments might be found, i.e., asking if there reason to believe that the
heads of children are more susceptible to the electromagnetic fields emitted by
mobile telephones than those of adults.
オランダの健康評議会は、検討すべき論点が見つかるかどうか、つまり、子供の頭が大人の頭よりも携帯電話から放出される電磁界の影響を受けやすいと信じる知見があるかどうかの検討に取り組んだ。
It concluded that no major changes
in head development occur after the second year of life that might point at a
difference in electromagnetic susceptibility between children and adults.
The Health Council therefore sees no
reason to recommend limiting the use of mobile phones by children.
結果として、生後2年目以降は、子供と大人の間の電磁感受性の違いを示す可能性のある頭部の発達に大きな変化は起こらないと結論付けた。
したがって、保健評議会は、子供の帯電話使用を制限することを推奨する理由はないと考えてた。
********************
BEMSJ注:原文の英文の意味がうまく理解できず、和訳もおかしい。
できれば原著全文を読めば、理解が進むと思うが・・・・
記;2012−6−4
以下の報道がありました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120522-00000929-chosun-kにあった内容
************* 一部 引用 **********
朝鮮日報日本語版
韓国電子通信研、携帯電話の使用とADHDの相関関係を解明
2012年5月22日(火)10時36分配信
(略)
携帯電話の使用頻度とADHDの直接的な相関関係を明らかにしたのは、世界で初めてとなる。
ADHDを引き起こす環境要因としては、鉛が指摘されている。
ここ5年間、血中の鉛濃度が高い子どもほどADHD発症率が高いという研究結果が、世界中で相次ぎ発表されている。
檀国大の河美那(ハ・ミナ)教授(予防医学)は、血中の鉛濃度が平均に比べ約50%高い子どもが携帯電話を頻繁に使えば、ADHDを発症する可能性もより高まるとの研究結果を発表した。
鉛は食品包装紙に印刷されたインクなどに含まれ、ごく微量が子どもに吸収される。
河教授はしかし「鉛濃度が低い児童は、携帯電話を頻繁に使ってもADHDを発症する可能性は高くならず、携帯電話の電磁波だけでADHDの発症率が高まることはないようだ」としている。
先ごろ米エール大学医学部の研究陣が、胎児のときに携帯電話の電磁波にさらされると、成長期にADHDと類似の行動を取ることがあるという研究結果を発表したが、これは人間ではなくマウス実験に基づくものだった。
ETRIの調査を主管した放送通信委員会は「携帯電話の電磁波から子どもを守るため、年内に『携帯電話の利用ガイドライン』を策定する」としている。
(略)
**************** **************
BEMSJ注:
河美那(ハ・ミナ)教授(Ha Mi−na)の研究とあるが、本日のPubmed検索ではこの研究がヒットしない。
したがって、学術論文誌に掲載されたか否か、確認ができなかった。
エール大の研究に関しては、以下の22項で紹介する。
ETRIが今年度中に策定する「子供を守るための携帯電話利用ガイドライン」が如何なるものか、待ちましょう。
追記:2023−6−8
Ha Mi-naの研究論文を見つけた。 以下を参照
記:2012−6−5
21項の韓国の報道から、このエール大の研究はいかなるものか、確認をしてみました。
元ネタとなる論文は以下のものです。
掲載:Scientific Report 2: 312
Published 15 March 2012
タイトル:Fetal Radiofrequency Radiation Exposure From
800-1900 Mhz-Rated Cellular Telephones Affects
Neurodevelopment and Behavior in Mice
研究者:Tamir S. Aldadら
そして、以下のような、記憶機能に電波曝露の影響が見られた、というグラフなどが掲載されています。
関心のある方は、この論文の原文(英文)を入手して、読んでください。
JEICのサイトにこの論文に関する批判が公開されていました。
関心のある方は、以下のサイトにアクセスしてください。
http://www.jeic-emf.jp/research/thesis.html
*************************** ***********
論文解説
論文「800-1900MHz規格携帯電話機の無線周波電磁界への胎仔期曝露はマウスの神経発達と行動に影響する」に対するRRG評価
学術誌サイエンティフィック・レポーツに論文「800-1900MHz規格携帯電話機の無線周波電磁界への胎仔期曝露はマウスの神経発達と行動に影響する」が掲載されました(2012年3月)。
この論文では『マウスをモデルとして、子宮内での携帯電話機無線周波電磁界への曝露が成長後の行動に影響するか否かを検証し、子宮内曝露を受けたマウスは、物体認識試験、明暗箱試験、ステップダウン試験の結果、多動的で記憶障害が認められた。
妊娠中曝露のリスクを明らかにするためには、ヒトまたはヒト以外の霊長類での更なる研究が必要である。』(要約)と述べられています。
電磁界情報センターでは、学術専門家グループ(Rapid Response Group;RRG)から論文に関する評価を得ましたので、以下に紹介します。
【論文タイトル】
Fetal Radiofrequency Radiation Exposure From 800-1900 MHz-Rated Cellular
Telephones Affects Neurodevelopment and Behavior in
Mice
(800-1900MHz規格携帯電話機の無線周波電磁界への胎仔期曝露はマウスの神経発達と行動に影響する)
学術専門家 RRGの評価書の結論
この研究は、携帯電話からのRF電磁界への出生前曝露が、マウスの発達に対して長期に継続する有害な影響をもたらすことを、行動テストと電気生理学的測定で繰り返し、一貫して観察された変化をもって報告しています。
その上、電気生理学的測定における変化は、1日当たりの曝露時間数に依存したように見えました。
しかしながら、この研究の単純な曝露システムは携帯電話から成っており、これらの携帯電話からのRF電磁界は一定ではなく、かつそのレベルも未知でした。
論文に記述されたSAR 1.6 W/kgは、携帯電話を密着させたヒト頭部ファントムで測定される値です。
この研究では出力制御をしていないこと、携帯電話とマウスとの距離があったこと、マウスのRF吸収は周波数範囲900-1900 MHzで低いことを総合すると、曝露群の一部あるいは全体と対照群との間に、曝露の大きな差異はなかったかも知れないことが示唆されます。
各ケージに複数のマウスを入れたことが、実際の曝露の評価をさらに複雑にしています。
要約すると、携帯電話からのRF電磁界が報告されたような影響を引き起こしたかも知れないというのは、信じられないことだと思われます。
************************
BEMSJ注:
JEICの評価にもあるように、この研究では携帯電話の実機をマウスの飼育籠に括り付けています。
音声は出ないように設定していますが、携帯電話の場合、受話器から音声信号を入れないと、無音声では自動的に無線出力が小さくしたりする機能があるので、携帯電話のアンテナからは、ほとんど電波は出ない状況になります。
携帯電話の位置登録に電波は発信されるときもありますが、常時ではありません。
論文には、どのようにして通話状態を維持したのか、また電波が最大条件で発信続けるように何か工夫したのかも、何も記載されていません。
またマウスと携帯電話の間は、マウスが自由に飼育箱の中を動けるようにしているので、4.5cmから22.3cmの距離がありました。
これだけ離れると、マウスは小さいので、もしかして全身曝露になり、マウスのお腹にもそれなりの電波が照射されたかもしれませんが、曝露量の絶対値はかなり小さくなっていると想定できます。
すなわち、曝露しない対照群と、曝露した曝露郡の間に、大きな電磁波吸収に差異がなかったかもしれない、のです。
曝露に差異がなかったかもしれないのに、この研究で、曝露と対照群に行動などに差異があったことは、信じられない、ということになります。
記;2012−6−5
以下の見解が示されている。
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世界保健機関の会議は次のように結論しました。
「現在の知識から、ICNIRP[1998年]ガイドラインは子供を保護するのに十分な安全ファクターを一般公衆の制限の中に含むようだ、という大多数の意見はあった。
・・・しかし、子供での影響が不確定であることを考えると、国際基準の採用に加えて更に、子供の曝露を減らす対策を講じることが適切のようである」
- M Repacholi, R Saunders et al: Is EMF a potential
environmental risk for children? Bioelectromagnetics
Suppl7:S2-S4, 2005.
**************** ********
関心のあるからは、レパチョリの論文を読んでください。
記:2021−7−2
トロント市の健康管理部の情報としてWEBに公開されていた内容
http://www.toronto.ca/health/hphe/pdf/boh_children_safecellphone.pdf にあったファイル
2008−8−1のログ 2021年7月リンク切れ
Medical Officer of Health (医学管理官) からBoard of Health(健康管理部)宛のStaff Report(担当者からの報告)、Information Only(情報としてのみの取り扱い), May 29, 2008
タイトル:Cell Phone Use by Children and Youth (子供と若者の携帯電話使用)」
結論の部分のみ仮訳して紹介
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Conclusions 結論
The existing evidence of RF exposure, absorption and impacts on children is
very limited and does not clearly confirm that children are more susceptible.
RF暴露、吸収、子供への影響に関する既知の確証は非常に限られており、子供の影響がより高いことを明確に確認はしていません。
However, in light of the limitations of the research, we cannot rule out the
possibility that children require greater protection
from RF exposure.
しかしながら、研究の限界を考慮に入れて、私たちは子供たちがRF暴露に対してより厳しい保護を必要とする可能性を排除することはできません。
In 2005, TPH began to promote parents’ awareness of the
need to minimize children’s use of cell phones among
other important practices, through the “Playing it Safe” resource, which was produced with partners in the Canadian
Partnership for Children’s Health and the Environment
(CPCHE).
2005年、TPHは「安全な遊び」という方策を通じて、その他の重要な事項と共に、子供の携帯電話の使用を最小限に抑える必要性に対する親の意識を促進し始めました。その方策は、カナダの子どもの健康と環境パートナーシップ(CPCHE)のパートナーと共に作成されたものです。
Given that cell phones are in increasingly common use by children and youth
ages 10 to 19 years, it is prudent to continue to direct messages to the public
so as to avoid unnecessary exposure to RFs among young people.
10歳から19歳の子供や若者に携帯電話が普及を続けていることを考えると、若者の間で不必要なRF曝露を避けるためには、今後も一般の人々にメッセージを送り続ける方が賢明です。
Toronto Public Health has since expanded its precautionary advice on cell phone
use that is geared to the public, with a focus on messages for parents and
teens.
トロント公衆衛生局は、親や十代の若者のためのメッセージに焦点を当てて、携帯電話の使用に関する予防的なアドバイスを、一般向けに方針を変えながら、拡大してきました。
Consistent with messages from the British Department of Health, Toronto Public
Health is recommending that children, especially pre-adolescent children, use
landlines whenever possible, keeping the use of cell phones for essential
purposes only, limiting the length of cell phone calls and using headsets or
hands-free options, whenever possible.
英国保健省からのメッセージと一致して、トロント公衆衛生局は、可能な限り、子供たち、特に思春期前の子供たちが固定電話を使用し、携帯電話は重要な目的のためにのみ使用することとし、携帯電話の通話の時間を短くし、ヘッドセットやハンズフリー装置を使用することをお勧めします。
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1)はじめに
化学物質問題市民研究会のサイトにあったフランスの携帯電話に関する翻訳
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 2009−1−20のロ
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The Independent 2009年1月11日 記事紹介
フランス政府 子どもへの携帯電話広告を禁止
携帯電話使用によるがんリスク増大の恐れが高まる中で放射レベルも制限か
情報源:The Independent January 11, 2009
French government bans advertising of mobiles to children
New limits will be placed on radiation
levels amid fears of increased risk of cancer from phone use
By Geoffrey Lean, Environment Editor
http://www.independent.co.uk/life-style/gadgets-and-tech/news/
french-government-bans-advertising-of-mobiles-to-children-1299673.html
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年1月13日
_______________________________________
携帯電話使用ががんやその他の疾病を引き起こすかもしれないという恐れが高まる中で、フランスでは子どもの携帯電話使用に厳しい措置をとる新たな法律が導入されることになった。
12歳以下の子ども向けの携帯電話の広告は法の下に全て禁止されることになると先週、フランス環境大臣ジーンルイス・ボルローは発表したが、彼はまた6歳以下の子どもの使用のために設計された携帯電話の販売を禁止するであろう。
フランス政府はまた携帯電話からの放射レベルの新たな制限を導入し、使用者が頭と脳に曝露するのを回避するためにハンドセットをイヤホーン付で販売することを義務付ける。
そして先月、フランスの最大都市のひとつで子どもの携帯電話使用をやめさせるキャンペーン広告が始まった。
世界中のどこの国の政府も今までにこのような包括的な強い措置をとったことがない。
それは、16歳以下の子どもには携帯電話の使用をやめさせ、産業側は携帯電話の子どもへの販売促進をやめるべきとする、9年前の公式報告書の勧告をほとんど無視しているイギリスの大臣らの見解と際立って対照的である。
それ以来、若者らの使用は倍増し、イギリスの16歳の若者10人のうち9人は携帯電話を持っている。
(略)
****************************
2)法は発効した
上記の情報から、本当にフランス政府が広告の禁止を法制化したか?チェックしてみた。
以下にある様に、法制化されていることが確認できた。
********************
平成26年度フランス・韓国における有害環境への法規制及び非行防止対策等に関する実態調査研究
平成27年2月 内閣府
5.広告
5.1 フランス
公衆衛生法典第L5231-3条は、「14歳未満の児童に対して、携帯電話の販売・提供、あるいはその使用・利用を促進する目的の広告はすべて、その方法、媒体の如何を問わず禁止」している。
これは、頭蓋骨が薄く、神経等脳機能も未発達なため、子供が携帯電話による電磁波の影響を受けやすいとの懸念から、通称「グルネル法2」、「環境に対する国家の取り組みに関する2010年7月12日の法律2010-788号」により制定された。
10.携帯電話・PHS
10.1 フランス
「環境のための国家的政策に関する2010年7月12日の法律第2010-788号」により、「教育法典(Code de l'éducation)」第L511-5条が制定され、幼稚園・小学校・中学校において、校則で定められた場所で授業中に児童・生徒が携帯電話を使用することは禁じられている。
記:2021−9−28
エキサイトニュースにあった情報
https://www.excite.co.jp/news/article/Global_news_asia_6790/
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【韓国】スマホ利用に寛大「学校内でのスマホ全面使用禁止は人権侵害」
GLOBAL NEWS ASIA 2020年11月11日 06:00
2020年11月、韓国の国家人権委員会が、学校内における携帯電話の全面使用の禁止は、「人権侵害」とした。
ポケベル、PHS、携帯電話、スマホ。これらの通信機器の目まぐるしい発達は、教育現場にも多大なる影響を及ぼしている。
授業中に、自由にそれらを使う児童生徒が多発したからである。
現在の対処法としては、朝礼の時に回収して、終礼の時に時に返却するということだ。
しかし、これに関しても、ダミーの通信機器を渡し、実際に日常使っているものは携帯し、授業中にも使うという現実がある。
だから、回収する際に、一度電源を入れて、普段使っているものかを毎日確認する。
その時間は本来、授業に使われるべき時間だ。
ダミーではなく渡したとしても、二台三台使いをしている児童生徒も少なからずいるわけであり、いたちごっこは治まるところを知らない。
しかし、この一度電源を入れさせる、初期画面なりを教師に見せるということが人権侵害だとして、韓国の高校三年生が国家人権委員会に陳情した。
特性化高校(特殊分野の職業教育)の在校生もそれに続いた。
人権委員会は、授業中であっても、一人の人間の通信の自由を奪ってはならないという見解だ。
(略)
******************************
記:2023−6−6
以下の研究がある。
掲載誌: Bioelectromagnetics
2005; 26 Suppl 7: S144-S150
タイトル:Electromagnetic field emitted by 902 MHz mobile
phones shows no effects on children's cognitive function
902MHz携帯電話による電磁界は小児の認知機能に影響しない
研究者:Haarala C, Bergman M, Laine M, Revonsuo
A, Koivisto M, Hämäläinen H
この研究は、10〜14歳の子供の認知機能に対するGSM携帯電話の902MHz電磁放射の潜在的な影響を調べた。
合計32人の子供(男児16人、女児16人)が、自身と親の同意を得て参加した。
年齢は10-14歳(平均12.1歳、SD 1.1歳)であった。
彼らは、一連の認知テストを、カウンターバランスさせて2回遂行した。
1回はアクティブな携帯電話、もう1回は非アクティブな電話からの曝露露を受けた状態でテストを遂行した。
テストは、成人を対象にした先行研究で使用したものから選択した。
その結果、すべてのテスト一括または個々のテスト単独での分析のどちらにおいても、反応時間および正確性は、携帯電話のオフ状態とオン状態の間で有意差を示さなかった、と報告している。
記:2023−6−7
以下の研究がある。
掲載誌: Bioelectromagnetics
2005; 26 Suppl 7: S138-S143
タイトル:Effect of 902 MHz mobile phone transmission on
cognitive function in children
小児の認知機能に対する902MHz携帯電話伝送の影響
研究者: Preece AW, Goodfellow S, Wright MG, Butler SR, et
al;
この研究は、902MHzの標準的携帯電話による電磁界曝露が小児の認知機能に有意な影響を与えるか否かを、18人(10〜12歳)のボランティア実験で調べた。
各被験者は、1回のトレーニングセッションを受けた後、無作為化されたクロスオーバーデザインで3回の曝露セッションを行った。
認知評価には、認知薬研究(CDR)に用いられる認知評価システムを使用した。
携帯電話(Nokia 3110携帯電話ハンドセット)は、プラスチック製のヘッドセットに取り付けられ、通常の使用位置に固定された。
3回の曝露セッションで、出力は実験計画に沿って0、0.025、または0.25Wにいずれかが設定された。
その結果、1)反応時間測定タスクのベースライン(0 W)成績は、成人の同等の測定よりもかなり遅いことが示された;2)曝露中の反応時間は、擬似曝露(ベースライン)条件より短くなる傾向があり、これは単純反応時間で最も顕著であった;3)ただし、ボンフェローニ補正後、統計的有意性には達しなかった;4)したがって、今回の小児での研究では、マイクロ波放射への曝露が反応時間の短縮と関連しているという成人での以前の知見は再現されなかった、と報告している。
記:2023−6−8
掲載誌: PLoS One 2013; 8 (3):
e59742
タイトル:Mobile phone use, blood lead levels, and attention
deficit hyperactivity symptoms in children: a longitudinal study
子どもの携帯電話使用、血中鉛レベル、及び注意欠陥多動性障害:縦断的研究
研究者: Byun YH, Ha M, Kwon HJ, Hong YC, et al;
この研究は、子供の携帯電話使用と注意欠陥・多動性障害(ADHD)の関連を、鉛曝露による修飾を考慮しつつ調べた。
韓国の10都市の27つの小学校の2422人の児童を調査し(2006年)、その2年後にフォローアップ調査した(2008年)。
両親または保護者に、ADHD評価スケール韓国版、携帯電話の使用および社会人口学的要因に関する質問票への記入をさせ、また児童の血中鉛レベルを調べた。
その結果、ADHDの症状と携帯電話の通話使用に関連がみられたが、その関連は比較的鉛曝露が高い児童に限って見られた、と報告している。
なお、この研究は、韓国の子供の健康と環境の調査(CHEER;2005-2010)の一環として実施された。
詳細情報
比較的低いレベルの鉛に曝露された子どもは不注意、認知喪失を有し、ADHDを発症することがあるため、共曝露として血中鉛レベルを調査した。
・子どもの症状を評価するため、2008年及び2010年に親または保護者にADHD評定尺度の韓国語版(K-ARS)を提供した。18の質問について0-3の評定(症状の重症度に依存)を用いて、結果を合計した。スコアの合計が
≥ 19を、ADHD症状が陽性と見なした。
曝露評価
質問票: 子どもの携帯電話所有、携帯電話のアクセシビリティ(携帯電話を所有または使用しない、携帯電話を所有しないが他者の携帯電話を使用する)、最初の携帯電話所有時の年齢、毎月の携帯電話請求額、1日当たり平均の携帯電話使用時間、1日当たりの着信(発信)通話件数、音声通話当たりの平均時間、1日当たりのテキストメッセージの着信(発信)件数、1日当たりの携帯電話のゲームで遊ぶ平均時間、携帯電話でのインターネット使用
計算: 音声通話に費やした累積時間(1日当たりの着信通話件数と1日当たりの発信通話件数の和を、通話1件当たりに費やす平均時間と携帯電話の所有期間で乗じた)
結論
携帯電話の所有は2年間で約3倍(2008年には22.7% vs. 2010年には64.5%)、音声通話のための累積使用時間は約2倍(2008年には1.36時間 vs.
2010年には2.33時間)に増加した。
血中鉛レベルの幾何平均は2年間で僅かに減少した(2008年には1.64 µg/dl vs. 2010年には1.60 µg/dl)。
本研究におけるADHDの症状の有病率は、2008年には10.4%、2010年には8.4%であった。
ADHDの症状のリスクは音声通話のための携帯電話使用と関連していたが、この関連は比較的高い鉛に曝露された子どもに限定された。
著者らは、鉛と携帯電話使用からのRFへの同時曝露が、ADHDの症状のリスク上昇と関連している、と結論付けたが、逆因果関係の可能性も排除できなかった。
記:2023−6−9
以下の研究がある。
掲載誌: Clin Neurophysiol 2013;
124 (7): 1303-1308
タイトル:No increased sensitivity in brain activity of
adolescents exposed to mobile phone-like emissions
携帯電話様の放射曝露を受けた青少年の脳活動に感受性上昇は見られず
研究者: Loughran SP, Benz DC, Schmid MR, Murbach M, Kuster
N, Achermann P
この研究は、ボランティア誘発実験を行い、携帯電話様の無線周波電磁界(RF EMF)曝露に対する思春期層の潜在的な感受性を調べた。
二重盲検化、無作為化、クロスオーバーデザインで、11 - 13歳の22人の被験者(うち、男性は12人)は各人3回の実験セッション(各30分間)に、1週間に1回の間隔で参加した。
そのうちの2つセッションでは異なる強度(低SAR (0.35W/kg)、高SAR (1.4W/kg)で携帯電話様のRF EMF信号への曝露を受けた。
残りの一つは擬似曝露セッションであった。
各セッション中に認知タスクを遂行させた。
また覚醒EEGを、セッション開始前(ベースライン)およびセッション終了の直後、30分後、および60分後に記録した。
その結果、覚醒EEGまたは認知タスク遂行成績に、RF EMF曝露の明確で有意な影響は見られなかった、と報告している。
記;2023-6-9
以下の報告がある。
令和元年度(2019年度)研究報告書
新しい無線通信等による小児への影響に関する疫学研究
総務省 令和2年3月 2020年
一部のみを転載、関心のある方は、全文を入手して下さい。
1-2.子どもの電波曝露と健康についての疫学研究
最新のレビューでは、電波による影響として、精神神経疾患、認知、睡眠、行動の問題などが重要であると指摘されている(Hardell,
2017)。
電波と学童の行動・認知等との関連については、スイスの12-17歳の青少年(n=439)が参加した前向きコーホート研究で検討されている(Roser, Schoeni, & Roosli, 2016)。
結果として、横断的な解析では無線機器使用の自己申告値のいくつかと、問題行動スコアや集中力との関連がみられたが、縦断的解析では影響が認められなかった。
一方、RF-EMF(radiofrequency
electromagnetic fields)推定曝露量が、1年間の記憶タスク成績の変化と負の関連を示したとの報告もある(Schoeni, Roser, & Roosli, 2015)。
同じ集団で、健康状態(頭痛、気分の落ち込み、睡眠障害、耳鳴りなどの自覚症状)が携帯電話の使用用途(メッセージなど)と関連したが、RF-EMFとの関連は「強くはない」あるいは「ない」という報告もされている(Schoeni,
Roser, & Roosli, 2017)。
以上の先行研究から、電波による小児の高次精神機能を中心とした健康への影響について一貫した結論は得られていない。
1-3.胎児期の電波曝露と子どもの健康についての疫学研究
胎児期の曝露による児への影響としては、デンマークの出生コーホートDNBCにおいて、妊娠中の母親の携帯電話及びコードレス電話使用と生後5歳児の問題行動とに関連は認められなかったが(Guxens
et al., 2013)、7歳児の行動の問題とに関連がみられDivan
(Divan, Kheifets, Obel, & Olsen, 2008, 2012)、また片頭痛および頭痛関連症状のオッズ比が高かった(Sudan, Kheifets, Arah, Olsen, &
Zeltzer, 2012)。
しかし、これらの研究の対象者は出生コーホート研究の集団であるものの、妊娠中の携帯電話使用は生後に遡って「後ろ向き」に後から聞いており、因果関係の説明が難しい。
そのほか、世界の5つの出生コーホート研究(デンマーク、韓国、オランダ、ノルウェー、スペイン)のメタアナリシスでは、妊娠中の携帯電話使用が子どもの多動性/注意欠陥の問題のリスク上昇と関連しているかもしれないと述べているが、著者自身が交絡因子による結果への影響がありうることを指摘している(L. Birks et al., 2017)。
1-4.先行研究のまとめ
このように、電波曝露と子どもの神経発達への影響は十分に検討されたとはいえず、さらに日本では精神神経発達への影響についてはこれまで全く調査が行われていない。
子どもの頭蓋骨は大人よりも小さく薄く、脳は発達段階にあり、大人よりも脆弱である。
したがって子ども自身の携帯電話の利用による電波曝露をはじめ、母体が利用する無線機器による胎児期曝露により、記憶、学習、言語や行動などについて、その後の長い生涯にわたる影響を受ける可能性があり(Hardell, 2017)、これらを検討する必要がある。
記:2023−6−12
以下の研究がある。
掲載誌:Current Opinion in Environmental Science &
Health 2023, 32:100456
タイトル:Exposures to radio-frequency electromagnetic
fields and their impacts on children’s health – What the science knows?
無線周波電磁界への曝露と子供の健康への影響–科学は何を知っているか?
研究者:Hyungryul Lim, Jonghyuk Choi, Hyunjoo
Joo and Mina Ha
Abstract 概要
The possible health effects of radiofrequency electromagnetic radiation on
children have become a public concern due to biological vulnerability of
developing children.
小児に対する無線周波電磁放射の健康への影響の可能性は、発達中の子どもの生物学的脆弱性のために公衆の懸念となっている。
To evaluate the evidence for possible adverse health effects on children, we
systematically reviewed epidemiological studies, and briefly reviewed the
experimental animal or mechanistic studies.
小児への健康への悪影響の可能性に関するエビデンスを評価するために、疫学研究を系統的にレビューし、また実験動物または機序研究についても簡単にレビューした。
Using a search strategy and risk-of-bias assessment, we summarized the existing
data on cancer, birth outcome, neurocognitive development, and behavioral
problems.
検索戦略とバイアスリスク評価法を用いて、がん、出産状況、神経認知度の発達、行動上の問題に関する既存のデータを要約した。
There was no sufficient evidence to determine the adverse effects.
有害作用があると判定するのに十分な確証はなかった。
Recent large-scale animal studies have shown carcinogenic findings, but the
biological mechanism has not yet been elucidated.
近年の大規模な動物実験では発がん性の知見が示されているがが、その生物学的メカニズムはまだ解明されていません。
A well-designed future study is needed to produce high-quality scientific
evidence of the possible harmful effects of radiofrequency electromagnetic
radiation exposure in children.
小児における無線周波電磁放射曝露の有害な影響の可能性に関する質の高い科学的証拠を生み出すためには、適切に設計された将来の研究が必要である。