電磁波防護グッズ(電磁波防止グッズ)関連の情報3) OA用電磁界防護用品の効果 


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 テーマ:OA用電磁界防護用品の効果

WEB
への公開:2013−7−3
このメモは、BEMSJ200011月にまとめたものです。
PC
に古いフィアルが残っていたので、編集して、WEBに公開します。

.目的
本稿ではVDT用に使用されているOAエプロンやOA画面フィルタ等の電磁界防護用品の電磁界遮断特性に関して調査を行った結果を述べる。
科学的に電磁界遮断効果があるのか、防護用品を使用する意味があるのかに力点をおいて調査を行った。
多くの電磁界防護用品のカタログでは「電磁波」という同義語が用いられている、本論では全て「電磁界」に言い換えた。

2.調査方法
次の要領で調査を行った。
1)市販されている電磁界防護用品の調査。
 
販売状況とカタログ等の表記の調査。
2)電磁界遮断効果測定法の吟味。
3)防護用品製造もしくは販売メーカの見解の調査。
  
アンケートによる調査
4)電磁界遮断特性の測定。

3
.調査結果

31.電磁界防護用品の販売状況

OA
作業に関連する電磁界防護用品として、女性用のみならず男性用のOAエプロン、VDT画面に取付けるOAフィルタ、その他に機器に貼り付けておくだけで電磁界防護効果のあるといわれる各種グッズがある。
それらのカタログに記載されている効能の例を表1に示す。

表1:OA用電磁界防護用品のカタログ記載例

1)OAエプロン
SS社:不安の主な対象となっている電磁界(電界)を9799%以上カット。KEC法によるデータ添付。
HK社:健康障害の原因とされる電磁界を99%カット。KECで測定。

2)OAフィルタ
TM社:妊娠異常等人体への影響が心配されている電磁界を99.9%カット。
TM社:電磁界カット(電界成分100 Hz400 KHzのみを99%以上カット)
TR社:電磁界防止(ELF,VLF):人体へ影響を及ぼす可能性があるといわれている電磁界を大幅カット、99.9
YS社:ELF/VLF電磁界の除去、95%カット
HK社;X線・電磁界をカット。健康に有害な電磁界を完全にカット。KEC法でのデータ添付。
NS社:フィルタを通過する電磁界を低減する。99.3
SS社:影響を与えるといわれる1MHz以下の電磁界(電界)をカット(アース処理時)

3)その他の電磁界防護用品
CH社 発生源から電界(ELF)カット、驚異の94%カット。


電磁界防護用品の販売状況を過去2年間に渡り、所用でパソコン販売店に立ち寄る都度に、販売状況を調査してきた。
多くは首都圏の店舗である。その結果を表2に示す。
同一の店にある程度の月をはさんで複数回立ち寄っている場合も含む。
多数販売していても1点でも展示して販売していても「販売あり」と判定してある。
定量的に調査はしていないので断定はできないが、販売点数などは減少している傾向にある。
しかし、表2に示すように非常の多くの店舗で販売されている。
OA
作業に関連する電磁界の健康影響に不安を感じている人が多く、防護用品が売れているということができる。

表2: OA用電磁界防護用品の販売状況

 

調査年

 

OAエプロン

OAフィルタ

その他

販売有

販売無

販売の

割合

販売有

販売無

販売の

割合

販売有

販売無

販売の

割合

1999

21

9

70.0%

27

3

90.0%

9

11

45.0%

2000

19

5

79.2%

24

0

100.0%

13

11

54.2%

 

32.防護用品の効果検証方法の吟味

表1に示すように多くの防護用品カタログでは、効果の検証に「KEC ( Kansai Electronic Industry Development Center )法」や「アドバンテスト法」を用いている。
一部では「ダブルTEM セル(Transverse Electromagnetic Modeセルという内部の電磁界の進行方向が一様にそろった箱を用いる)法」を用いている。
これらの検証方法の概要を以下に述べる。

KEC
法とアドバンテスト法の1種類は近接電磁界に対するシールド素材の評価法である。
測定原理図を図1に示す。
2
つの金属製のチャンバにその間に窓を開けておく。
電磁界の送信アンテナを入れたチャンバ側から発信し、受信アンテナを入れたチャンバで受信をする。
間に設けられた窓に何も無い時には電磁界は筒抜ける。
窓に適当な大きさに切断した電磁界シールド素材の試験片を置く。
そうすると試験片で電磁界の直進は遮断される。

試験片を通過した電磁界の強さと、試験片の無い時の受信アンテナでの電磁界の比からシールド素材の電磁界遮断特性が得られる。
多くの電磁界シールド素材の特性はこの方法で測定される。
1に示した送信アンテナと受信アンテナの距離は1cm、2cmといった近距離である。

送受信アンテナの大きさも1cm、2cmといった微小アンテナである。
電界測定時にはダイポールアンテナが、磁界測定にはループアンテナが用いられる。
この方法は電磁界の発信源から1cm、2cmという近傍にシールド素材を置いた時の効果を示す指数が得られる。
言い換えると、これは電磁界シールド素材が電磁界の発信源に限りなく近接している時を模している測定法である。

これに対して、ダブルTEMセル法(アドバンテスト社も遠方界測定用にこの方法で測定できる装置を販売している。)の原理図を図2に示す。
TEM
セルと呼ばれる箱を2段に積み上げ片方のセルは送信部、間に試験片をはさみ、下部に受信用のセルを置くようにしたものである。
この方法で試験を行えば、電磁界の発生源から進行してくる電磁界に対する電磁界遮断性能の指数となる。

ところで、電磁界の特性を考えると回折という現象がある。
電磁界を透過できない素材があれば、その縁から電磁界は回り込む性質を持つ。
図1も図2も共にこの回折は起こらないという理想的な条件で試験を行っている。

従って、遠方界に対してでも、近傍界に対してでも、無限の大きさのシールド素材を用いるか、もしくは人体保護の場合には頭の天辺から足のつま先まで隙間無く電磁界シールド素材で蔽った時にのみ、図1・2の測定で得られた電磁界遮断性能が発揮できる。
実際のOAエプロンやOAフィルタは限られた大きさに素材を切断してある。
従って、KEC法等で素材として繊維などで電磁界シールド効果が得られたとしても、実際の製品に仕上げた時に電磁界遮断効果があるのかは別途再検証しなければならない。
この状態を図3に示す。一般に電磁界シールド材は有限の大きさであり、波源からある程度離れていれば、電磁界は波として伝わり、電磁界シールド材を突き抜けることは完全に近い形で阻止できたとしても、縁から大多数が回り込むことになる。 

さらに、図1に示すような近傍電磁界法による測定には問題がある。
これらの測定では1cm程度の長さのダイポールアンテナを用いる。
直径1mm、長さそれぞれ1cmのダイポールアンテナが、周囲に反射するものがないFree Spaceの場合と、近傍に電磁界を完全に反射する大地(等価的には無限大の大きさの金属や金属繊維がある時に等しい)があって大地との距離を変化させた時の、アンテナ特性の変化をアンテナインピーダンスの変化として、アンテナ解析ソフト(マックスウエルの電磁界方程式により計算する数値計算ソフトの一つであるEZNEC)を用いで計算した結果を表3に示す。

周波数によって異なるが、アンテナに1cmといった近距離に大きな面積をもつ金属を置けば、アンテナの電波放射能力を示すアンテナの放射抵抗R分が大きく低下していることが判る。
放射抵抗値が小さくなればアンテナ素子から電波は飛び出しにくくなる。
このことは他の数値解析、例えばFDTD (Finite Domain Time Domain)等で再確認を取る必要があるが、KEC法等の近傍電磁界遮断特性試験装置は、シールド素材を通り抜ける機能を評価しているのではなく、電磁界の波源に近接して金属を置くことによって、波源の電磁界輻射能力そのものを低下させている機能を評価している可能性がある。

電子機器から輻射する不要な電磁界を抑える為に、機器内の電磁界発生源に近接して設置することを目的とした電磁界シールド素材であれば、それで十分に効果を発揮する。
しかし、OAエプロンやOAフィルタはそうした波源に近接しているとはいえない。

従って、OAエプロンやOAフィルタの防護用品としての電磁界シールド特性の保証にあたっては、シールド素材を近傍界と遠方界としてのシールド機能をKEC法やアドバンテスト法で測定するだけではなく、実際の加工・仕上げられた製品の形で、実際の使用の局面を模した状態で、電磁界シールド機能の検証が必要となる。
そのような機能の保証が製造そして販売している会社の責務となる。
そこで、電磁界防護OAエプロン等の製造・販売メーカが如何にして効果の検証を行っているか、アンケートによって調査して見ることにした。
次項に記す。

 

 

 

 

 

 

 

 

表3 微小アンテナの近傍に大地や大きな金属がある時のアンテナ送信能力の変化

周波数

大地条件

大地との距離(cm

アンテナインピーダンス

MHz

Z=R-jXR分(Ohm

Z=R-jXX分(Ohm

R分の変化

900

Free Space

-

0.6819

-j1293

=100%

 

Perfect Ground

10

0.8889

-j 1293

130.4%

 

Perfect Ground

1

0.0194

-j 1280

2.8%

200

Free Space

-

0.033

j 5901

=100%

 

Perfect Ground

10

0.045

j 5901

136.4%

 

Perfect Ground

1

0.000047

j 5840

0.14%

100

Free Space

-

0.0083

j11810

=100%

 

Perfect Ground

10

0.000289

j11810

3.5%

 

Perfect Ground

1

0.00000077

j11690

0.009%

50

Free Space

-

0.0021

j23620

=100%

 

Perfect Ground

10

0.0000160

j23620

0.8%

 

Perfect Ground

5

0.0000025

j23620

0.1%

 

Perfect Ground

1

計算限界

 

 

 

33OAエプソンとOAフィルタ製造/販売会社の見解

前項に述べた趣旨からインターネットWEBで当該の防護用品を取り扱っている会社を選び出し、アンケートを送信した。
アンケートの質問表の概要を表4に示す。
2000
6月から8月に、合計26社に依頼し、何らかの回答があったのは18社で回答率は69%であった。

その回答の概要を表5に示す。
この回答から、OAエプロンに関して纏めると、防護繊維製造メーカ(素材メーカ)はKEC法等の測定で素材を提供しているのは当然としても、OAエプロンに加工し販売している会社では素材の特性がそのまま製品に適用できると考えている、そしてKEC法の測定データをOAエプロンの性能としてカタログ等に表記している、といえる。

OA
フィルタに関しては、KEC法での素材としての試験法で効果のあった範囲を、これもフィルタの特性としてカタログに記載しているといえる。
但し、フィルタの製造販売メーカの一部では実際のOA環境を模した試験で効果の検証を行っている。

一部のOAフィルタの製造販売会社を除けば、大多数のOAエプロン・OAフィルタの電磁波防護特性は、素材の特性を鵜呑みにするところで止まっており、実際の製品に仕上げた状態では科学的な検証を全くといっても良い位に行っていない。

4;電磁界防護用品取り扱い会社への質問の概要

OAエプロン( OAフィルタ)の電磁界防護効果に関する質問。
1.使用している電磁界防護繊維はアドバンテスト法やKEC法と呼ばれる方法で素材として電磁界防護効果検証を行っていると思いますが如何?
  
回答:YES
    
   NO (コメント記入      )

2.素材としてはアドバンテスト法等で電磁界カット効果が検証されている電磁界防護繊維を使用して、製品としてOAエプロンに加工された時どのようにして電磁界防護効果を検証されていますか?
 
 
回答1)素材としての防護効果がそのままOAエプロンにも当てはまると考えている。OAエプロンとしての電磁界防護効果の検証は行っていない。
 
回答2)実際のOA環境に即した形でOAエプロンとして電磁界防護効果を検証してある。
 
回答3)その他(自由にコメントを記入   )

 
回答2)を選ばれた時は、どのような方法で検証されたのか、教えてください。

3.電磁界は回折という効果があることはご存知と思います。
小片に切り取った金属を含む繊維は電磁界の直進は妨げることができるとしても、小片の縁から電磁界が回り込みます。
素材として防護効果があっても、OAエプロンの様に加工した時は電磁界防護効果が殆ど発揮できなくなると考えられますが、どう考えますか?
 
回答:自由にコメントを記入

 

 

表5:電磁界防護用品会社からの回答例

会社

形態

概要

CH

エプロンの

製販

販売会社で詳しい事は判らず、回答不可

BA

各種防護用品の製販

OAエプロンの効果はKEC法の測定がそのまま当てはまると考えている。エプロンの状態で測定は行っていない。

PS

各種防護用品の製販

エプロン:素材のKEC法でデータがエプロンに適用できると考える。

フィルタ:素材のKEC法でデータがフィルタに適用できると考えていない。素材のKECでのテスト範囲の周波数など効果の範囲をカタログに明記している。

JT

防護繊維の

製造

生地売りに徹している。KEC法の素材としての電磁波遮断測定だけではなく、ジャケットに加工した時の電磁波防護効果の測定も行い、効果の確認を行った。

KA

防護繊維の

製造

生地売りに徹している。エプロンに仕上げた時のことは客先の企業秘密に関わるので回答不可。

ST

防護繊維の

製造。

エプロンも製造

エプロンを過去に製造販売した。現在は行っていない。エプロンにアース線を取付け、パソコンにアースに接続することで、電磁波の遮断効果がでる。この旨を説明書に記載していた。

LS

各種防護用品の製販

フィルタ:エプロン:

企業秘密で回答不可

BA

各種防護用品の製販

フィルタ:電磁波防止機能フィルタは公正取引委員会の指導で「電磁波防護」から「電界防護」に表記を切替えた。

GN

フィルタの製販

KEC法での素材のデータをカタログに記している。実際のOA環境を模した状態でMPR2の試験で低周波電界の効果を確認。磁界は効果が無かった。このテストではフィルタのアース線は大地に接地してある。

TM

フィルタの製販

カタログに「アース接続時に電界カット」と明記してあり、このアース接続状態で、低周波電界のカット効果を確認。

ET

フィルタの製販

電磁波問題の本当のことが見えなくなり、電磁波の問題に十分に対応できないので、このビジネスから撤退の予定

UK

フィルタの製販

素材のテストはダブルTEMセル法やKEC法で電磁波遮断特性を測定。素材の特性がそのままフィルタに当てはまるとは考えていないが、素材として効果のあった範囲をカタログに記載している。

 

34.電磁界防護用品のシールド特性の測定

OAエプロンとOAフィルタの実際のOA環境下を模した状態での電磁界シールド効果の測定を、低周波電磁界に限定して行った。
なぜこの周波数帯に限定したかは考察で述べる。

OA
エプロンに関して、筆者も共同口演者となった報告7)から引用して紹介する。
測定は外来ノイズの入ってこない電波暗室で、17インチCRTタイプVDTを木製の台の上に置き、画面の前方40 cmの距離にOAエプロンを非金属の支持棒に吊り下げ、更に10 cmの距離にコンビノバ社製低周波電磁界測定器のプローブを設置して行った。
ELF (Extremely Low frequency)
VLF (Very Low Frequency)2バンドで電界と磁界を測定した。
結果は表6に示す。電界に関しては2%のカットから良くて22%のカットに過ぎない。
また磁界に関しては、ほとんど効果がない。

OA
フィルタの測定結果の例を図4に示す。
4ではVLF磁界に対するシールド効果を測定している。
測定は14インチCRTタイプVDTの全面に当該のOAフィルタを取付けた時と、ない時の画面の前方20 cmの所にループコイルを置いてスペクロアナライザで周波数分析を行いながら磁界を測定した結果である。
図から見て判るように、磁界に対するシールド効果は殆ど無い。

OA
フィルタの電界シールド効果の測定例を表7に示す。
NR
社製で大地への接地線が取付けてあり、測定では接地して行った。
このフィルタのグランド端子とシールド面のどこを測定しても直流抵抗は1020オームであり、低インピーダンスであった。
シールド効果測定は低周波電磁界の規制以前の旧タイプVDTを用いて行った。
正面では確かに電界強度は半減している。その他の方向では効果が無いのはうなずける。

表6 OAエプロンの電磁界シールド効果の測定

 

電磁界の

種類

MPR-2

推奨値

エプロン無し

P社製

K社製

(Niメッキ)

K社製

(Cuメッキ)

VLF電界

2.5 V/m

1.96 V/m

22%カット

2%カット

9%カット

ELF電界

 25 V/m

2.12 V/m

22%カット

8%カット

10%カット

VLF磁界

25 nT

8.16 nT

2%カット

1%増加

変わらず

ELF磁界

250 nT

50.6 nT 

変わらず

変わらず

変わらず

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

表7: OAフィルタの電界シールド特性例   電界 V/m

 

ELF

VLF

フィルタ無し

フィルタ有り

減衰率

フィルタ無し

フィルタ有り

減衰率

正面

36.80

15.99

56.5%

5.30

1.92

63.8%

90

22.30

17.28

22.5%

7.02

6.20

11.7%

180

21.00

18.60

11.4%

6.51

6.31

3.1%

270

27.00

24.50

9.3%

3.98

3.20

19.6%

 

4

 

 

4.考察


電磁波防護繊維は比較的長い歴史を持っている。
多くの繊維メーカや繊維産業育成の為に地域の研究機関が製造方法や効果検証に関する研究を行っている。
例えば、高橋類子(1991年)はパソコンから漏洩する電磁界の防護を主眼にしてシールド服の研究8)を行っている。
アドバンテスト法等で電磁界がシールドできることから被服を試作している。
この研究では素材の特性の把握は行っても、被服の段階での電磁界防護効果の検証は行っていない。

また、平出真一郎ら(1995年)9)は地域産業振興を狙って電磁界シールド機能を持つニットを開発した。
アドバンテストの近傍電磁界シールド測定装置(図1参照)で効果のあるニットが完成した。
その素材でパソコン等から漏洩する300 MHz以下の電磁界をシールドできるベストを開発した。
この場合もベストという被服に仕上げた状態での電磁界シールド特性の検証は行われていない。

油上(1989)は、電磁界シールド素材の開発研究10-12)を行っている。
ここでは電磁界シールド特性に図1と図2に示す近傍界と遠方界の両方の試験を行いながら繊維の開発を行っている。
繊維開発の途上であり、OAエプロン等の製品での評価まで至っていない。

研究者にとっては素材としての繊維に電磁波シールド機能があれば、そのままOAエプロン等に加工しても機能が生かされていると誤解する向きが多い。
そうではない事は4−2項に述べた。

OA
エプロンではないが、電磁界シールド繊維を携帯電話ハンドセットから輻射される電波によるペースメーカの誤動作防止の研究も行われている。
垂澤らによる研究13)によれば、10cm X 10cmのサイズの金属繊維をファントムの上に置き、1cmの近距離に置いたダイポールアンテナから発射された1GHzの電磁界の減衰量を測定している。
KEC
法で48 dBの電磁波減衰効果のあった繊維でも、13 dBの効果しか得られていない。
さらにKEC法で51 dB の効果のあった繊維は実効的に8 dBの効果しか得られなかった。
報告では数値は記載されていないが、「アンテナと金属繊維の距離を大きくすると減衰度は低下した」とある。
これは、KEC法で測定しても、有限の大きさに切った時は、図3に示す回折効果で、電磁界シールド効果が発揮できなくなることと一致する。

これら電磁界防護用品には誇大表示が多いと、消費者団体もテスト結果を1997年に公表14)している。
「電磁波を防ぐとうたったさまざまな防護グッズが出回っている。ところが消費者団体等がテストしたところ、ほとんど効果がないものや、誇大表示の商品が少なくないことが明らかに」と。

新聞報道15)にあるように公正取引委員会もこの検証の不確実性に気が付き、19995月に「電磁波防護グッズに警告、科学的根拠ない.」という警告を発している。
これを受けて、電磁界防護用品メーカは「電磁界すなわち電界と磁界にシールド効果が無い時は、電磁界シールド効果とは謳わず、シールド効果がある電界か磁界かを明確にする」ようになってきている。
従って多くの金属繊維や金属を蒸着させた素材を基にしているOAエプロンやOAフィルタは、「電磁界(電界)をカット」という表現に変化している。
ニッケル、銅といった金属を利用したこれらの電磁界防護用品は、電界のシールド効果はあっても、磁界に対して効果が無いのは自明である。

X線防護を謳うOAフィルタもある。
VDT
からのX線漏洩は本誌への報告2)にあるように、防護などは不要なほど微小である。
OA
フィルタメーカによっては、VDTからのX線は防護すべきであるとして、「個々のVDTは性能などのばらつきもあり、微小で測定し難い」ので、「他のX線源を準備して、フィルタのX線防護特性を測定」してフィルタの機能保証している。
屋上屋を重ねる手法であり、フィルタ使用の意味はない。

また、CRTタイプVDTからの紫外線は防護の要は殆どないにも関わらず、「VDTからの有害な紫外線を防護」すべきとして紫外線防護を謳うOAフィルタがある。
4−3項のメーカからの回答に「VDTからの紫外線は通常の使用状態では微小で測定できないので、別の紫外線を出す物質を準備して、フィルタの紫外線除去機能の確認を行っている」とあり、微小であれば防護の必要も、防護機能を謳う必要が無いにも関わらず、カタログに機能を記述している。
この機能も不要である。

電磁界の一部であるマイクロ波電波の領域に対して、電磁界防護効果を謳うOAエプロンやOAフィルタがある。
この領域も1987年以降に生産されて国内で販売されている機器は、本誌3)に掲載したように防護の要がない。
300 MHz
を超える高い周波数では、人体にOAエプロンをつけた時に、電磁界シールド素材を大地にアース接続をしなくても遠方界電磁界に対する防護効果がある事が報告16-17)されている。
この報告では同時に、場合によってシールド材の着用は逆効果となる可能性があることも報告されている。
こうした高い周波数の電磁界防護の為に、OAフィルタやOAエプロンを使用する必要はない。

低周波電磁界に関しては、現在も色々と研究が行われていることもあって、気にする人も多い。
電界は過去の研究から殆ど問題はないとされている。磁界の影響が注目されている。
この低周波電界と磁界は、防護用品で防護する意味がある。
そこで、4−4項の調査ではこの帯域の測定を行っている。
OA
エプロンやOAフィルタでは、低周波磁界は減衰させる事はできない、電界はシールド素材を接地することで、減衰させることができる。

5ST社の様に、OAエプロンを接地して用いた事は正しい。しかし、実用的ではない。
接地しないOAエプロンは素材として電界の防護機能があっても、エプロンとしては実効性が無い。

OA
フィルタの低周波電界防護機能に関しては、フィルタを接地して使用することは可能である。
従って、低周波の電界のシールド効果は発揮できるといえる。
1に紹介したSS社のカタログ記載は正しい条件であり、電磁界防護効果を発揮する為に絶対に必要な条件である。

その他に多用な電磁界防護用品がある。
これらは個別の商品ごとの論議になるので、頁数の関係もあって割愛する。
これらの防護用品に関しても、安全性を含めて副作用が無いか(マイナスイオンを発生させる為に、微量であるが放射性物質が含まれていないか。またAC電源のアース側を検出して、機器の筐体を接地することで電界の輻射を抑える用品が、何らかの故障や誤操作でAC電源のホット側に接続となり、感電事故の発生に繋がらないか?など)、また電磁界の防護機能がきちんと科学的に検証されているか確認する必要がある。

冨永(1995)の報告18)によれば、「VDT電磁波環境やオフィス内の電磁波環境が健康に悪影響を生じる可能性はきわめて小さい。電磁界防止エプロンの使用、配付の妥当性について質問がしばしば寄せられるが、その必要性がない。必要もなく、効果もないものを使用することは無意味であろう。必要なのは時間規制、作業量規制や一般的環境対策であり、電磁波防止エプロンの使用で、VDT作業の精神的な負担やストレスから注意がそれるようならばむしろ逆効果である。」となっており、今回の調査結果と一致する。

5
.結論

OA
環境に使用される電磁界防護用品の防護効果の検証を行った。
過去長い間OAエプロンやOAフィルタは電磁界防護用品の代表として、その効果に疑いも無く使用されてきた。
しかし、今回の検証でOAエプロンは殆ど実効的に電磁界防護効果がない、OAフィルタは電界抑制に効果があるがそれは必ず接地して使用しなければならない、ということが判った。

OA
フィルタは電磁界防護以外にコントラスト改善や反射防止機能があるので、電磁界防止機能よりはこれらを優先させるべきであろう。
その他の防護用品に関しては、個別に防護効果を確認すべきである。

こうした考えは、世界保健機構WHOの国際電磁界プロジェクトの公開見解Fact Sheet 201 19)に記載されている「電磁界防護用品は不要である」という見解に一致するし、また、日本電子工業振興協会のVDTからの電磁界に関する見解20-21)にある「電磁界防護用品の製造・販売・使用にあたっては、きちんとその効果を検証する。」という見解とも一致する。

文献
7)滝田正徳ら.電磁波防護グッズの効果の検証結果.産業衛生学雑誌.第73回日本産業衛生学会講演集.2000P638
8)
高橋類子.電磁波シールド衣服の設計と効果.新潟大学教育学部紀要Vol.33. No. 1. 1991
9)
平出真一郎ら:電磁界シールドニットウエアの開発. EMC. No. 81. 1995

10
)油上保ら.金属繊維を使ったシールド繊維とシールド効果の評価.静岡県浜松繊維工業試験場報告.第29号.1989P2530
11
)油上保ら.メッキ繊維におけるシールド効果の評価.静岡県浜松繊維工業試験場報告.第29号.1989P3135
12)
油上保ら.金属溶着織物おけるシールド効果の評価.静岡県浜松繊維工業試験場報告.第29号.1989P3639
13)
垂澤芳明ら.ペースメーカにおけるシールド繊維の効果に関する実験的検討.第2回医療電磁環境研究会資料.1997P8-9

14)
産経新聞.「電磁波用の防護グッズ、多い誇大表示の商品、消費者団体が相次ぎテスト」 1997331
15)
毎日新聞.公取委「電磁波防護グッズ警告 科学的根拠ない」.1999526
16)
犬丸忠義ら.FDTD法による抵抗皮膜を用いた人体防護に関する検討.信学技報.MW97-1231997

17)
西沢振一郎ら.誘電損失シールドを用いただ円筒3層人体モデルのSAR低減に関する検討.電子情報通信学会論文誌B-U,Vol. J80, No.11. P1000-1004, 1997
18)
冨永洋志夫:生体と電磁環境(8) VDTの電磁界−オフィスの電磁環境の諸問題『後編』.EMC.199565日号No.86
19) International EMF Project. Fact Sheet 201 Video Display units (VDUs) and Human HealthWorld Health Organization. 1998.
20) VDT
対策専門委員会.VDTからの電磁波は健康に影響を及ぼすのだろうか.電子工業月報、19996月号,東京:日本電子工業振興協会.P2-12
21)
VDT(表示装置)セミナ(VDTからの電磁波を主とした健康影響に関する最新情報)予稿集.東京:日本電子工業振興協会・VDT対策専門委員会, 1999.



 

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