予防原則やリスクコミュニケーションに関する解説・情報です。
リスクに関する解説・情報もこのページで取扱います。
0. リスクの定義
1. 欧州の予防原則
2. 一度決めた規制を撤廃
2A.IARCの発がん性が2Bから3にランクダウンした例
3. 予防原則が採用されなかった葉山町議会の例
3A.予防原則が採択されなかった2008年の国会請願
4. 何がリスクか? アメリカ1996年の研究
5. HarvardのRisk in Perspectiveから
5A.1999年Harvardの研究
5B.HarvardのRisk in Perspective1999年2月号から
6. リスクの評価尺度
7. 正確な、科学的な情報に基づく判断が肝要
8. 物理的な現象と、生体への影響を混同しないようにすべき
9. 放送メディアでも間違うことがある
9A.メディアの特質を考慮
10.間違いの多いWEB上の電磁波情報
11.京大の電磁波専門家といえども批判されている。
11A.識者の中でも電磁界のリスクに関する対応は分かれている。
12.「100%安全が確立されるまでは・・・・」は疑問!
13.WHOの予防原則に関する背景説明から
14.WHOの文書263から 予防方策を考える
15.WHOのリスク文書 2002年10月
21.Microwave News May/June
2003 に掲載されたWHOの予防原則の状況
24.WHOの予防原則の枠組み 2004年10月 ドラフトから
24A.WHOの環境保健基準 EHC238に見る予防原則の意味
16.英国における予防原則の行使は
16A.英国保健省の携帯電話の使用に関する予防原則
16B.オーストラリアにおける予防原則の適用
16C.スウェーデンにおける予防原則の例
17. 風力発電でも問題が、低周波騒音 ドイツ
17A.再び風力発電での問題 オーストラリア
18. ハロゲンランプも問題?
18A.日焼けマシンの発がん性2009年
19. リスクの考え方 高圧送電線下の例
20. リスクの考え方 IH電磁調理器の例
22.2004年北海道大学「予防原則のワークショップ」
23.コーヒーの発がん性2Bに関連する情報
23A:コーヒーの発がん性に関する追記
23B.コーヒーと肝細胞癌のリスク
23C.毎日コーヒーを飲んでいると、慢性C型肝炎の進行リスクが低減する
23D.コーヒーと肝癌のリスク 2005年の研究
23E.コーヒーと大腸がんの研究 2010年
23F.コーヒーとパーキソン病のリスク 2000年の研究
23G.コーヒーと癌 2013年の宮城県の研究
23H.コーヒーの発がん・がん抑制作用
23I.コーヒーが虫歯を予防
23J.コーヒーのカフェインによる中毒死
23K.コーヒーの発がん性判定変更 2016年
25.2004年3月発行のパンフレットにみる総務省の見解
26.IARCの発ガン判定で「発がん性あり」と認定されている飲酒による癌リスク
27.「スェーデンにおけるがん患者数の増加の原因」の研究からリスクを考える
28.身の回りのリスクを考える 木酢液
29.電磁波問題市民研究会も主張するリスクとべネフイットのバランス
30.疫学で原因を絞り込み、検査で原因を突き止めた例 2003年
31.「生活と自治」2003年3月号に記載「ゼロリスク」の記事
31A.「生活と自治」2007年5月号に掲載されたリスクに関する記事
32.「事実」と「真実」
33.Wiedemannらの予防原則に関する研究
34.見える小さいリスクと、見えないリスク 農薬・無農薬野菜
35.産経新聞2011年5月に掲載された「安心病の特効薬は」
36.Precaution と 「予防」原則という訳語
37.放射性セシウムは福島原発事故の前から、日本中に存在していた という事実を知って、どうすべきか?
38.放射線に関する防護にも「許容できる範囲」の考えが入っている
39.日刊SPA 学校給食の内部被爆2011年12月16日の記事から
41.チェルノブイリ原発事故に関連すること
59.放射能を恐れて外出を避け、太陽光に当らずに、ビタミンD欠乏症に
61.ゴフマン著「人間と放射線」を読んで
62.福島県の原発事故に関連する甲状腺、福島県以外での現状把握報告の例から
62A.産経新聞20016年記事にみる福島の被曝リスク
63.原発に関連するゼロリスク
40.20120321電磁界情報センター第6回フォーラム「電磁界と予防原則」参加の記
42.化学物質のリスク
43.絶対安全はない ダイヤモンド誌2012年7月
44.安全工学会2002年の絶対安全からリスク評価安全へ
45.BEMS会員ニュース2002年に掲載された予防原則
46.武田邦彦 (中部大学) のサイト にあった予防原則に関する論
47.「談」2011年にあったリスクコミュニケーションの例
48.「リスク の ものさし」を持ち、正しく怖れる
49.日本における予防原則の適用はなぜ難しいのか
50.延岡の携帯基地局建設反対に関する裁判(地裁)の判決で、予防原則採用せず
51.「環境活動家のウソ八百」の紹介
52.環境学会リスク論に関する研究会2012年の開催
53.2003年標論文に見る予防原則
54.城山英明論からゼロリスク
55.食品安全委員会のサイトにあったドイツでのミネラル水の課題
55A.天然水にもリスクがある。
55B.ビタミンAにもリスクがある。
56.日本における小児白血病の発症率
57.発がん性のリスク、動物実験の結果を人にあてはめるか?を考える
58.清潔すぎる生活環境は良くない という論証。
58A.ゼロリスクを求めてワクチンを接種せず、結果としてジフテリアで死亡したスペインの例
58B.ガスと電気調理器での発がん性2010年研究
58C.調理による油煙とガンの関係
60.産衛学会2003年今井ら飲酒の影響の研究
60A.アルコールでがん転移促進 免疫低下、マウスで確認 2003年の研究
64.ホルミシス効果を考える、2003年11月号日経エレクトロニクスの記事から
65.安井至著「環境と健康」よりリスク
65A.安井至「市民のための環境学ガイド」にあった「不安」に関する記述から
66.安心と安全の違い
67.中西準子講演にあったリスクの考え方:リスクの大きさと受ける人口の大きさで対策
68.リスクを考えようとする「考動記」のサイトにあった電磁波論評
69.環境省2004年予防原則報告書から
追記:2009−7−2
労働科学研究所の「労働の科学」2006年3月号に、「リスク」って? という記事が掲載されています。
その中に、リスクの定義の紹介があります。
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「リスク」を国語辞典では「危険」と記しています。
しかし元々の言葉である「risk」をみると、英和辞典では「恐れ」とも訳されています。
英英辞典には,「(instance of ) possibility or chance of meeting
danger, suffering loss, injury, etc」、「危険に遭遇したり、損失や障害を被ったりする可能性や機会(の例)」とあります。
つまりリスク=riskには、「危険」や「hazard」、「danger」と異なり,可能性や確率の概念が入っているのです。
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という解説があります。
ちなみにBEMSJの手持ちの英英辞典a Merriam-Websterの「Ninth New Collegiate Dictionary」では、Riskとは「possibility of loss or injury」即ち「損失や障害の可能性」となっています。
これらのことからも、リスクという用後の意味をきちんと理解すべきです。
電磁波の害に関して予防原則を適用すべきという意見があります。
予防原則をどのように政策決定に利用していくかに関する文書を紹介します。
Commission of the European Communities Burussels 02.02.2000 COM (2000)
Communication from the Commissions: on the precautionary principle
というA4で29ページもある文書です。
私はとあるルートから入手しましたが、多分EUのWEBあたりに公開されているのではないかと想像します。
機会をみて一度この文書を読んでください。
「科学的な論拠が明確になっていない段階でも、政策の決定権限を持つものはこの予防原則に基づいて、危険を予防する。」というものです。
但し、
「一度予防原則に基づいて決定した方針であっても、関連する科学の研究を常にチェックし、必要に応じて、決定した方針は見直すべき」という条件が付加されています。
私はこの見直しが極めて重要なことと感じます。
予防原則に関連した情報です。
三協化成のWEB http://www.sankyo-cup.com/ のWEBにあった「ダイオキシンと塩化ビニル」に関する情報です。
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外国政府・自治体の塩ビの使用規制と、規制撤回の状況
塩ビ使用規制 使用規制の撤回
1)ドイツ:Berlin市
1990年に環境団体の圧力により、公共施設建設での塩ビの使用を規制。
1995年10月、事実を調査した結果、ベルリン市では上院の投票により、再び塩ビが公共施設で使用できるようになる。
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といった内容です。 詳細は上記URLを参照してください。
塩ビに関してダイオキシンの恐れ有りとして、環境団体の意向で、塩ビを禁止したが、5年後にはそれを見直して、解除した という例です。
塩ビ工業・環境協会 (略称VEC)のWEBにあった内容
http://www.vec.gr.jp/fact/chapter4/head1-3.html(リンク切れ) 2004−9−17のログ
IARCで発がん性2Bと判定された可塑剤が、その後の研究の進展で、発がん性判定3に変更された例です。
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2)発がん性
発がん性については、1980年代、ラット・マウスにDEHPを高濃度で投与すると、肝臓に腫瘍が発生するという報告がありましたが、その後の研究で、そうした変化はラット・マウスなどのげっ歯類に特有の作用であり、霊長類であるサルでは起きないことが確認されています。
2000年には、国際がん研究機関(IARC:国連WHOの下部機関)が、DEHPの発がん性評価ランクをそれまでの「2B」から「3」へと改正し、ヒトに対して発がん性がないことを明確に示しました。
「3」のレベルはお茶や水道水(塩素滅菌処理した飲料水)と同レベルであり、コーヒーよりも低い発がんレベルを意味しています。
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*2009−12−14の確認
上記のサイトは更新などのためか開けない。
http://www.vec.gr.jp/anzen/anzen2_3.html#2に以下の情報があった。
**************** ****************
フタル酸エステルの安全性情報 −安全性は確認されています
発がん性
1982年、ラットやマウスにDEHPを高濃度で投与すると、肝臓に腫瘍が発生するという報告がありましたが、この現象はラット・マウスなどのげっ歯類に特有の作用メカニズム(肝臓中のペルオキシゾーム増殖)であり、霊長類であるサルでは起きないことが確認されました。
その結果を受け、国際がん研究機関(IARC:国連WHOの下部機関)は2000年、DEHPの発がん性評価ランクを「2B」から「3」へと改正し、人に対して発がん性がないことを明確に示しました。
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ラットでは発ガンしても、ヒトでは発ガンしないことがわかり、IARCの判定が変更になった例です。
上記の例に関して、関心のある方は、当該のサイトを覗いてください。
*2013−4−26の確認
http://www.vec.gr.jp/anzen/anzen2_3.html に以下の情報があった。
最新情報に更新されています。
*******************************
発がん性
1982年、ラットやマウスにDEHPを高濃度で投与すると、肝臓に腫瘍が発生するという報告がありましたが、この現象はラット・マウスなどのげっ歯類に特有の作用メカニズム(肝臓中のペルオキシゾーム増殖)であり、霊長類であるサルでは起きないことが確認されました。
その結果を受け、国際がん研究機関(IARC:国連WHOの下部機関)は2000年、DEHPの発がん性評価ランクを「2B」(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)から「3」(ヒトに対する発がん性を分類できない)へと改正しました。
2011年2月、 IARCはDEHPの発がん性評価ランクを「3」から「2B」に変更しました。
今回のIARCの発がん性再評価は、げっ歯類における発がんのメカニズムとヒトの疫学研究から得られる結果を解釈する上での疑問を解明するため、更なる調査研究を促すものであり、それらの観点からDEHPは優先度の高い20物質とともに見直されたものです。
DEHPが、ヒトに発がん性があるとの新たな証拠が見つかったからではありません。
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葉山の町議会の報告です。
http://www.geocities.co.jp/Natureland/7365にあった内容です。
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長柄小学校敷地内のJフォンアンテナ撤去を求める決議 否決される。
WHOが推奨している予防措置の必要から、撤去を求める決議を提出しました。
結果は否決。 議会としての意思表示は回避しました。
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とあり、なかなか議会の理解も得にくいようです。 詳細は上記URLを参照してください。
「電磁波から健康を守る百万人署名連絡会議」の国会請願がありました。
連絡会議は、電磁波市民研究会報No.58によれば、「平成20年5月30日に署名を衆参議員の紹介を得て、衆参議院に提出」とある。
衆議院のサイトで、請願情報を検索したら、以下の情報があった。
**************** ************
請願情報
請願名「電磁波から健康を守るための予防策及び法規制を求めることに関する請願」の情報 |
|
項目 |
内容 |
国会回次 |
169 |
新件番号 |
4147 |
請願件名 |
電磁波から健康を守るための予防策及び法規制を求めることに関する請願 |
受理件数(計) |
12件 |
署名者通数(計) |
55,201名 |
付託委員会 |
経済産業 |
結果/年月日 |
審査未了 |
紹介議員一覧 |
受理番号 4147号 阿部 知子君 |
平成20年6月19日の経済産業委員会の議事録によれば
・この請願は、本委員会に付託された。
・本委員会には147件の請願が付託された。委員会での採否は保留と決定。 とある。
50,000人を超える署名を集めた国会請願は、採択されずに終わっている。
面白い記事を紹介します。
「RISK IN PERSPECTIVE, AUGUST 1996」というパンフレットで、HARVARD CENTER FOR RISK ANALYSIS が発行しているものです。
色々な生活環境における健康に影響すると思われる因子を挙げて、電話アンケートで各人が、各因子をどの程度危険と感じているかを調査した結果です。
結果は
男女共に60%以上の人が危険と感じている因子は、喫煙と 周囲に撒き散らす煙草の煙の2因子。
男女共に40%以上の人が危険と感じている因子は、オゾン、残留農薬、空中に飛散している塵芥、環境変化に伴う気温の上昇、建物の中のラドン(放射性)の5因子。
男女共に30%を越えて危険と感じている因子は、 環境中の電磁波、医療用のX線の2因子。
参考用に、男女共に危険と感じないもの(5%以下)は リラックスする為の音楽。
殆ど全ての因子で、男に対して女は10%程度より危険と感じている。
この研究によれば、電磁波以外にもっともっと緊急的に解決しなければならない危険因子が多いと言えます。
こうしたこともアメリカでは研究されています。
こうした研究は色々な規格を策定する時に、規格が一般の人の不安を解消するか否かの検討の時に、利用されるようです。
この記事は1996年のものなので、5年を経過した現在は、変化しており、今調査を行えば、電磁波に関しては携帯電話の電磁波などが因子として上げられているかも知れません。
HarvardのRisk in
Perspectiveというニュースレター、この1999年9月号を読みました。
色々な問題に関してどのようにして予防原則を考えていくか、まだリスクなどの大きさが決定しない前に、安全策をとって事前に予報策を講じていくか、その方針に関して述べられています。
電磁波の健康影響に関して、
予防原則には、証拠の強さ、危険か安全かの確証がどこにあるか、どういう行動が望まれているかによって異なってくる。
電磁波の健康影響という時に、この予防原則は「慎重なる回避」と呼ばれることがある。
あまり大きくない費用でできる方策の実施ということである。
この考え方はいくつかの国では受け入れられているが、そうではない国もある。
根拠があいまいな為に慎重なる回避が受け入れられてはいない。
電磁波曝露を如何にして避けるか確定していないのが問題である。
となっています。
このページへの公開:2012−7−11
過去にNiftyに自然環境フォーラムに投稿した内容です。
*************************
情報提供者 : BEMSJの電磁波健康影響レポート
提供日付 : 1999/04/11 11:16
登録経由地 : 自然環境フォーラム 未来への海図 #21782
前にも一度紹介したかも知れませんが、アメリカのHarvard School of Public Healthでは、色々な危険因子と健康への影響を研究しています。
1999-2000 Bi-annual Reportが届きました。
色々な環境因子に対して、感じている危険の度合を一般の人と科学者に分けて10点満点でどの程度かを調査した結果が紹介されています。
それによると
環境因子 一般 男 一般 女 科学者 男 科学者 女
受動喫煙 7・20 8・01 7・00 7・98
オゾン層減少 6・40 7・69 6・94 6・79
X線 5・37* 6・00 6・85 6・17
地球温暖化 5・74 7・02 5・73 6・60
磁界 4・95* 6・06* 3・16 4・54
等となっています。
科学者と一般の人の認識は、受動喫煙、オゾン層破壊や地球温暖化ではあまり大きな差はありません。
X線に関しては科学者に比べて一般の男が、危険性を意識していないと言えます。
大きな特徴は、磁界すなわち電磁波に関しては、科学者に対して一般の人は男も女も、非常に過剰に危険であると感じている、と言えることです。
多分、電磁波の健康影響は、研究が現在も進行中で、結論が出ていないことから不安を感じる度合が強いのであろうと、思います。
アメリカのハーバード大学のSchool of Public Health から、「Risk in
Perspective」という小冊子が届きます。
その中で、Feb. 1999号には以下の記事がありました。
******************
リスク管理で昔は何名の命を救えるかが尺度であった。
しかし、この尺度は今では使用できない。
なぜならば、人は延命できてもいつか死ぬからである。
如何なる尺度を用いるべきか・・・・・・ 検討する必要がある。
***************
と述べています。
ちょっと考えさせられるポイントです。
アメリカから定期的に「ハーバードのリスク管理」の情報紙というかニュースレターが頼んだ覚えがないにも関わらず送られてきています。
必ずしも電磁波の影響の論議ではなく、全ての危険因子に関する情報が掲載されています。
Feb. 1999号には
「リスク管理で昔は何名の命を救えるかが尺度であった。
しかし、この尺度は今では使用できない。
なぜならば、人は延命できてもいつか死ぬからである。
如何なる尺度を用いるべきか・・・・ 」
という記事が紹介されていました。確かに、もっともな提言です。
電磁波の健康影響も、如何なる尺度で判断するか、この判断基準が問題になります。
以下は北海道のある大学のY教授のWEBにあった内容です。一部のみ引用します。
*************** ************
電磁波の人体への影響について
電磁波の人体への悪影響を否定する以上、その根拠となるものを明確に示すべきであろう。
下記の表にあるような科学的測定値などを使って、どの程度の電磁波でどの程度人体に影響を及ぼすのか、などを明確に示されなければ、携帯電話など電磁波が特に問題となっている機器を安心して使用することは出来ない。
EMF Exposure from Common
Appliances(一般家庭用器具による電磁波の人体への影響度)
機器 |
磁界 ミリガウス |
|||
距離[単位:cm] |
0 |
25 |
50 |
75 |
Hair dryer |
35 |
0.8 |
0.1 |
0.1 |
Cellular phone(携帯電話) |
190 |
25 |
12 |
2.5 |
Walkman |
0.8 |
0.4 |
0.1 |
0 |
引用文献: Bruce Allen et al. Environment and Health (成美堂,2000), p.60.
********* ************* **************
携帯電話からの電磁波(電波)、例えば900MHzを磁界として測定した時に、もし190ミリガウスという値が測定されたとすれば、これは大変なことです。
900MHzの磁界に対する一般公衆の電磁界暴露の最大値は、ICNIRPの場合を例に取れば、14ミリガウスです。
しかし、実際はそうした磁界になることはないでしょう。最も確率が高いのいは、Allen氏が携帯電話からの電磁波の測定に際して、900MHzは測定できない60hz等の低周波磁界測定器を用いて色々な機器を測定したのだと思います。そして900Mhzの電波で低周波磁界測定器が誤動作し、誤った数値が表示されたものを、電磁波の測定に十分な知識がないためか、その数字をそのまま測定値として論文に発表したのだと思います。
そして、その誤った数字を、Y大学教授がそのまま引用しているようです。
この種の誤りはよく見かけます。
電磁波の健康影響に関して、考える時に、正しい測定結果に基づいて考える必要があります。
測定値が正しいかの判断もある程度必要になります。
以下の条件で、EZNECを用いて数値解析を行なった。
*自由空間
*Z軸方向に7.7cm+7.7cmのダイポールアンテナを置く 直径は2mm
*素子の損失などはないと仮定
*周波数は900MHz
*電力は1Wと仮定
*X軸方向に距離をとり、磁界の強度を計算した。
結果は以下の表に磁界の強さを示す。
どのように考えても、200mGという値はありえない。 よって、それは測定の誤りか、測定器の誤動作と見ることが出来る。
距離 X (cm) |
磁界 H (A/m) |
磁界H (μT) |
磁界 H (mG) |
2 |
0.946 |
1.135 |
11.347 |
4 |
0.470 |
0.564 |
5.641 |
6 |
0.312 |
0.374 |
3.743 |
8 |
0.233 |
0.280 |
2.798 |
10 |
0.186 |
0.223 |
2.234 |
12 |
0.155 |
0.186 |
1.859 |
14 |
0.133 |
0.159 |
1.592 |
16 |
0.116 |
0.139 |
1.392 |
18 |
0.103 |
0.124 |
1.237 |
20 |
0.093 |
0.111 |
1.113 |
22 |
0.084 |
0.101 |
1.011 |
24 |
0.077 |
0.093 |
0.927 |
26 |
0.071 |
0.086 |
0.855 |
28 |
0.066 |
0.079 |
0.794 |
30 |
0.062 |
0.074 |
0.741 |
32 |
0.058 |
0.069 |
0.695 |
34 |
0.054 |
0.065 |
0.654 |
36 |
0.051 |
0.062 |
0.618 |
38 |
0.049 |
0.059 |
0.585 |
40 |
0.046 |
0.056 |
0.556 |
42 |
0.044 |
0.053 |
0.529 |
44 |
0.042 |
0.051 |
0.505 |
46 |
0.040 |
0.048 |
0.483 |
48 |
0.039 |
0.046 |
0.463 |
50 |
0.037 |
0.044 |
0.445 |
以下の写真は、最近の(2002年)ある雑誌に掲載された電磁波の健康影響に関する記事の冒頭にあったものです。
送電線の下で、蛍光灯をかざすと蛍光灯が点灯する。蛍光灯が点灯するくらいであるから、健康への影響がある という論法です。
蛍光灯の代わりに白熱電球を持って送電線の下に立てば、白熱電球は全く光りません。
そして「白熱電球が点灯しないから、送電線からの磁界は安全である」という論法も可能になります。
これらの論法は正しくありません。
なぜならば、なぜ送電線の下で蛍光灯が点灯して、白熱電球が点灯しないのか を考えればよいのです。
蛍光灯は、その構造、原理上、蛍光灯の中にある水銀の粒子が、送電線からの強い電界によって動くようになります。
そしてその動いた粒子が蛍光灯の蛍光塗料に衝突して光が出るのです。 蛍光灯だから送電線の下でも光るのです。
白熱電球は、磁界や電界の影響を受けないので、光りません。
送電線の下で、蛍光灯が光れば、さも恐ろしい現象のように見えますが、普通の物理現象です。
でも、こうした雑誌に掲載する時は、その恐ろしさを誇示している場合があり、好ましいとはいえません。
以下はちょっと古い記録で、1999年に某FM放送の「健康インフォメーション」という番組で放送された電磁波の健康影響に関する内容です。
**********************
登場したゲストは、人と環境にやさしい商品の開発と販売、年間200回を越える講演を行っている人
電化製品からの電磁波が最近話題になっている。今の環境破壊は全て眼に見えない、フロン、ダイオキシンしかり、電磁波も眼に見えない。
本当に健康に良いか悪いか良く判らないのが現状。
電磁波とは・・・・・磁場と電場が関連する波である。電気が流れるところに電磁波はある。
テレビとか 電子レンジとかを電源コンセントをつなぐ製品は全て電磁波を出す。
体に良くないのか? 自然にやさしか 否かで決まる。 石油でも使用方が誤ると健康に悪い。
電磁波も2種ある。 直流と交流である。
自然に存在する、昔から地上に存在するものはすべて直流である。
(ということから、自然界に存在する直流の電磁波である雷も安全である、と聴衆者は理解してしまう。)
人間の体には揺らぎがある 不規則の中のリズムがある。
心臓の鼓動も一定ではなく、不規則な中に一定のリズムがある。
交流には60Hzがある、60Hzの固定の振動である。これで 人間の揺らぎは 乱される。人工の固定周波数の振動は体に悪い。
カロリンスカの研究で体にわるいという報告も出ている。
********************
という内容で、直流は安全、交流は危険であるといっている。
これは、暴露する電磁界の強度によって生体への影響が異なること、自然界に存在する雷の直撃は死に至る危険があることなどを無視した、誤りであるといえる。
放送メディアでも、間違えることがある。
はい、私のWEBにもどこか誤りがあるかも知れません。
環境問題などでかなり辛口の本を書いたり、WEBで意見を公開したりしている東大の安井先生のWEBに、以下の含蓄のある言がありました。
マスコミ、メディアの問題を捉えています。
************ ***************
リスク報道を超えて 死亡数によるリスク表現 10.29.2006
最近になって、「環境リスクや健康リスクがメディアによって正しく報道されていない」、ということは識者の間ではかなり共通の認識になってきた。
メディアが、識者が考えるようなバランスの取れた方法で環境リスクや健康リスクを報道することはありえないのである。
しかも、この特性は決して変わることはない。
なぜならば、それは、メディアとしての本業に反する要素があるからである。
すなわち、メディアとは、安心情報を出しても、世の中から全く評価されないものだからである。
むしろ、当たらなくても良いから、危険情報を出すことが望まれているのである。
**************** *************
あるガス販売会社のWEBにあった電磁波に関するWEBの一部です。
>http://www.naXXXX.com/index.htm
>高圧送電線や家電製品からでる電磁波が多い環境で暮らす子供は、白血病の発症率が
>2倍以上になるそうです。
>やはり電磁波が人間の体に影響を与えていました。
という情報は、報告に基づくことですが
>子供に悪いものが大人にいいはずがありませんね。
これは 明らかな 誤りです。
過去の多くの送電線由来の磁界(電磁波)と発ガンの疫学研究では小児癌、それも小児白血病に限定されて、発ガンリスクの増加という報告はあります。
なぜか白血病以外のその他の小児癌の増発は検出されていません。
さらに、大人の癌の増発は、これは研究は少ないのですが、結果は発ガンのリスク増加はほとんど検出されていません。
従って、磁界が小児白血病の増加の可能性があるとしても、そのまま、それを大人に当てはめることはできません。
>見えないものが一番怖いんじゃないでしょうか!!
見えないもの全てが怖いものですか? 空気も見えません 空気を怖がりますか? 見えないから怖い という論法は ちょっと疑問です。
電磁波は危険と、がんばっている京大の荻野氏は、多くの電磁波の健康影響に関する啓蒙書を著しています。
彼の論法に真っ向から批判をしているサイトがありました。
匿名のサイトですが、かなりのレベルの人があえて匿名でサイトを構築しているようです。
2002−12−28に見つけました。 URLは以下です。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/4225/i_si/okaruto.html#atama
頁のタイトルは「オカルト・超科学批判のページ」
この中で、以下のような批判が行われています。
*********** 一部引用 ************* **********
「週刊金曜日」批判: 電磁波問題の旗頭・荻野氏ってこの程度か
週刊金曜日163号「地球環境をこわす最後の公害」について
荻野氏の使用している「シューマン共振」は「波長が地球半周に相当していることからもわかるように,この地球と共鳴しながら定在している」ものだという。
ところが「シューマン共振(共鳴)」というのは,科学大辞典(丸善)・理化学辞典(岩波)等によれば,地表面と電離層の間で起こる共鳴のことで,雷などにより発生し,周波数は10kHz程度,波長は数10kmとのことである。
前述の資料では,これ以外のシューマン共振/共鳴は発見できなかったのであるが,どうなっているのであろうか。
地球と電離層の間で反射した電磁波が共鳴現象をおこすのは理解できる気がするが,「この地球と共鳴しながら定在」というのはどうも理解できない。
*********** 引用 終わり *******************
以下は省略。
興味のある方は上記のURLで直接内容を読んでください。
一冊の本を読んだだけ、ある一人の学者の弁を聞いただけでは、この電磁波の健康影響に関しては、不十分といえます。
中災防のWEBにあった内容です。 2004−4−30のログ
http://www.jicosh.gr.jp/Japanese/country/usa/topics/AIHA_threshold.html
ACGIHの識者の中でも、電磁界のリスクに関する対応は分かれている、という内容です。
******** ******** *********
商用周波数(60Hz)電磁場のTLV(BEMSJ注:規制する値、これを超えてはならない値)は変えるべきか?
科学者・リスク専門家の見方
資料出所:AIHA Journal September/October 2002 Vol. 63, No.5 p.636-640
過去数年の間、小児がんと電磁場の問題がいくつかの研究で提起されている。
全国学術会議(National Academy of Sciences)と国立がん研究所(National Cancer Institute)が、送電線や電気製品に対する暴露が健康に対して脅威であるとする明確な証拠はないと結論づけたのに対し、環境健康科学国立研究所(National Institute of Environmental Health Science)は、電磁場への暴露が白血病に対する危険有害要因である可能性を示す弱い証拠があると結論している。
電磁場に関するこの相反する報告が存在する中で、生体電磁気学分野の専門家は、全米産業衛生専門家会議(American
Conference of Governmental Industrial Hygienists; ACGIH)のガイドラインの有効性についてどのように考えているのかアンケート調査を行った。
「電磁場に関するエネルギー契約者部会」の1997年年次会議の参加者163人に質問状が送付され、約半分(49%、n=81)から回答が得られた。
電力関係に従事するものは、政府、大学、他の民間部門で働く者に比べて、現在のTLV基準に合意する度合いが高かった。
然し、その人達の中で現在の仕事を10年以上行っている者は、労働者の健康を保護するための現在のACGIHガイドラインを受け入れられるかということについては否定的であった。
科学者・リスク専門家の間でも業種によってTLVの有効性に対する認識が影響されることに関する調査結果が本論文で紹介されている。
***************
毎日放送で2002年10月29日に放送されたテレビ番組(私はこの放送を見ることができない地域に住んでいるので見てはいません。
番組の内容が毎日放送のインターネットで紹介されているのが私の情報源です。)で、
人気急騰!「電磁調理器」を考える 〜電磁波との”上手なつきあい方”〜 という放送があり、
その中で
”電磁波に詳しい京都大学XXX部の AAAさんは、「電磁波が体に悪いという研究発表が増えてきた。
問題は100%安全性が確立されていない中で使われていること。
今、それに気づき始めた。電磁波が強いものは、しばらく避けておいた方がいい。
安全と判ってから使えばいいのではないか」と話す。”という紹介がありました。
電磁波が100%安全であるとは、証明されていません。このことは事実です。
多分、100%安全であると証明されることはないでしょう。
電磁波は、放射能やX線といった電離放射線も、目に見える光、マイクロ波などの非電離放射線等を包含する用語です。
X線などは強い強度では危険であることが既に判明しています。光であっても過度に明るければ目がやられてしまいます。
電磁波以外に、100%安全が保証されているものがあるでしょうか?
毎日食っている食料、水、空気これらは100%安全と保証されていますか?
飛行機の事故は少ないけれども発生しています。100%安全ではありません。100%安全ではないからといって、飛行機を全面的に禁止しますか?
この様に考えると、100%安全か否か ということで、物事を判断することは出来ない、と考えます。
それでは、みなさんは、どうされますか?
WHOの文書で、気になる箇所を見つけました。
作成: 2002−12−25
*************** *************
WHOの文書 Backgrounder on Cautionary Policies より
背景説明資料 「電磁界と公衆衛生」用心政策 2000 年3月
ガイドラインにおける制限値との関係:
ここでの基本的な原則は、用心政策の採用により、リスクの科学的評価と科学に基づき設定された曝露制限が意味を持たなくなるようなことがあってはならないということが前提となります。
例えば、確立している危険に対して関係のないレベルにまで制限値を下げたり、科学的に不確実な部分を勘案して、制限値に対していたずらに不適切な調整を加えたりする場合に問題となります。
************ *************** ********
詳細はWHOのWEBで、ファイルをダウンロードしてください。
これらの文書は英語でも、日本語でも読むことができます。
WHOの国際電磁波プロジェクトの公開文書「資料NO.263」 2001 年10 月発行「電磁界と公衆衛生
超低周波電磁界とがん」 から 筆者が重要と感じた点を抜き出した。 作成: 2002−12−23
IAWCの発ガン判定2Bに関する補足的な説明:
2Bは「ヒトに対して発がん性がある可能性がある、Possibly
carcinogenic to humans」となっています。
(通常、ヒトに対する信頼し得る証拠に基づくが、他の説明を無視することができない場合に用いられる)
例:コーヒー スチレン とあります。
(筆者のコメント:「他の説明」すなわち「疫学での小児白血病の増発の可能性」を否定できないので、2Bに判定した と考えることができる。)
いくつかの予防方策を以下に解説します:
・政府と産業界:これらの組織は最新の科学の進展を認識すべきであり、潜在的な電磁界リスクに関するバランスのとれた明確で包括的な情報提供を一般の人々に行うべきです。
同時に、一般の人々に対して曝露を減らすような安全で低コストの方法を提供すべきです。これらの組織はまた、健康リスク評価を可能とする、よりよい情報を導く研究を推進すべきです。
・個人:一般の人々は特定の電気機器の使用を最小限にとどめたり、比較的高い電磁界をもたらす発生源との間の距離を増やすことにより、自らの電磁界曝露を減らす選択をすることもできます。
・新しい送電線設置の際の地方自治体、産業界、公衆の協議:送電線は消費者への電力供給のために立地しなければならないのは明白なことです。
設置の決定はしばしば、景観や公衆の感情を考慮することが要求されます。しかしながら、設置の決定の際には、人々の曝露を減らす方法も考慮すべきです。
・超低周波電磁界曝露に対する一般への認識を高め、不信や恐怖を減らすために、科学者、政府、産業界、公衆の間に、健康に関する情報とコミュニケーションの効果的システムが必要です。
(筆者のコメント: 予防方策として、低コストでの対策は必要であるが、現行の暴露限度値を闇雲に、低くすることは要求していない と見ることができる。)
詳細はWHOサイトにアクセスして、Fact Sheet 263を読んでください。
WHOの国際電磁界プロジェクトから、新しい文書が刊行されました。この中に、注意すべき文章があります。
WHOのWERBから、この文書の原文も入手しましたので、英文と和文対訳で以下に示します。
作成: 2002−12−20
************** ************
WHO
Establishing
a Dialogue on Risks from Electromagnetic Fields
電磁界のリスクに関する対話の確立 2002年10月発行
P57
If regulatory authorities react to public pressure by
introducing precautionary limits in addition to the already existing science
based limits, they should be aware that this undermines the credibility of the
science and the exposure limits.
仮の和訳:規制当局が公衆の圧力を受けて、科学の基づく現行の制限値に加えて、予防的な制限値を導入するならば、科学と曝露制限値の信頼性を不正な手段で傷つけることになる。
*************** ************
これは、現行のICNIRPのガイドラインは科学的な論拠に基づくものであり、これに加えて、予防的に、さらに低い値の規定をつくることは駄目という意味になると、わたしは考えます。
例えば、ICNIRPガイドラインでは50Hzなどの磁界への暴露限度値は1000ミリガウスですが
ミリガウス以上で小児白血病の増加の可能性があるとして、この4ミリガウス云々が科学的な論拠として認知され、ICNIRPのガイドラインが改正されない前に
独自に、先行して、厳しい規定を作ることは、科学という名誉を傷つけることになるので、好ましくない
という意味に取ることができます。
興味のある方は、WHOのサイトから原文をダウンロードしてください。
作成: 2003−1−4
英国のNRPB-23という報告書を読んでいる最中です。
46ページの報告書の11ページ目に、以下に示す興味深い文言がありました。
its Third Report of 1999(9) that the Government should
adopt the ICNIRP recommended guideline limits for microwave exposure "as a precautionary measure".
IEGMP has also recommended(6) that "as a precautionary approach,
the ICNIRP guidelines for public exposure be adopted for use in the UK rather
than the NRPB guidelines".
英国のNRPBの電磁界暴露規定は職業的な暴露と一般公衆の暴露に差異がなく、一本化されています。 それに対してICNIRPは2本に分かれています。
当然、一般公衆の暴露基準を見れば、ICNIRPの方が厳しくなっています。
そして、上記文言にあるように、1999年の議会の委員会報告書では、予防原則に基づいてICNIRPのガイドライン値を英国でも採用すべき、という勧告がなされている。
さらに、2000年のIEGMP(独立した専門家グループ)の報告でも、予防原則に基づいて、NRPBの値ではなく、ICNIRPの値を採用すべきという、勧告を出している。 ということで
ICNIRPのガイドラインに合わせる事が、予防原則の行使になるというものです。
ICNIRPのガイドラインでは、一般公衆の50Hz
磁界への暴露は最大で1000ミリガウスです。
1000ミリガウスに規制することが、予防原則の行使ということに、英国ではなります。
記:2011−12−28
英国保健省は携帯電話の使用に関するリーフレットを刊行しています。
最初は2000年、そして2005年に改訂、さらに2011年3月に改訂しています。
関心のある方はこのリーフレットを入手してください。
このリーフレットの中に、以下の予防原則を推奨しています。
「as a precaution, the UK Chief Medical Officers advise
that children and young people under 16 should be encouraged to use mobile
phones for essential purposes only, and to keep calls short.
If you are concerned, you can take steps to reduce your exposure such as
using hands free kits or texting.」
予防原則として、英国医学主官は16歳以下の子供もしくは若者は携帯電話の使用は必要不可欠な場合に限定して使用し、短時間で済ませることを推奨する。
もし気になるのであれば、ハンドフリーキットを用いたり、メールを利用したりして、曝露低減を行うことができる。 という意味になる。
しばしば、英国では子供の携帯電話の使用が禁止されている・・・・・という情報が流れている。 これは誤りである、上記のように使用を制限することが勧告されている に過ぎない。
記;2011−8−11
電磁界情報センターニュース第14号(2011年4月発行)にあった内容
******************* *************
オーストラリア放射線防護・原子力安全庁の活動紹介
電磁界情報センターでは、日頃、電磁界の最新情報やコミュニケーション事例の収集を行なっていますが、国内外の専門機関の活動にも注目しています。
その中から今回、新たな電磁界曝露基準の策定を鋭意進めており、また、政府機関としては珍しく磁界測定器貸出しサービスを行っている「オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)」の活動を紹介します。
(3)新たな低周波電磁界曝露基準定の動向詳細
英国での電磁界リスクに関する報告書(2002年)、スウェーデン他各国疫学調査結果、国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価など、電磁界リスク評価に関する新たな科学的知見を背景に、ARPANSAは2002年12月、1989年に作成された電磁界曝露制限ガイドライン(Interim
Guidelines on Limits of Exposure to 50/60Hz Electric and Magnetic Fields)の見直し作業に着手しました。
電磁放射線グループ責任者のLindsay Martin氏によれば、さまざまな周波数を使う技術が世の中に出てきているにも関わらず、1989年の暫定ガイドラインは、50Hzと60Hzだけしか曝露限度を定めていないという欠点があり、それも今回の見直しの動機の一因になっているそうです。
新たな曝露基準の検討は、ARPANSA職員の他、生物学や疫学専門家、医師、労働安全衛生の専門家、電気事業者などで構成されるワーキンググループを設置して行っています。
また、ワーキンググループの作成する案に、広い視点から意見を取り入れるため、国民代表、電磁界に懸念を持つ人、事業者代表など16名で構成される協議グループ(Consultative Group)も組織しています。
これまでの検討では、より科学的合理性の高い限度値を定めるとともに、不明確な健康影響については、プレコーション的な考え方で対応する方向が示されています。
具体的には、300マイクロT(50Hz・一般公衆の場合)の磁界限度を定める一方、小児白血病など長期曝露による影響の可能性に対しては、「曝露低減の可能性を検討し、経済的に許す範囲で実行する」という内容が提案されています。
今後、さらに検討が行われる予定です。
******************* ************
関心のある方は、当該のニュースの全文を読んでください。
ここで注目すべきは、予防原則(プレコーション的な考え方)です。
オーストラリアでは、予防原則の適用の中で、50Hzなどの磁界曝露限度値を300マイクロテスラ(3ガウス)に規定しようとしています。
記:2019−10−28
以下の報告書に、スウェーデンでの予防原則適用の事例が紹介されています。
電波ばく露による生物学的影響に関する評価試験及び調査 平成18年度 海外基準・規制動向調査報告書
平成19年3月
財団法人 テレコム先端技術研究支援センター
**********************
2005年にスウェーデン放射線防護機関(SSI) は、携帯電話の使用に関して予防原則を適用すると決めたと発表し、携帯電話を使うときには不必要なばく露を避けるようにと、次のように勧告している。
・ハンドフリー装置を使う。
・携帯電話端末機を身体から離す。
・アンテナの周りを遮蔽しない。
・電波の受信の良好な場所で通話する。
・乗用車では屋外アンテナを使用する。
・SAR 値の低い携帯電話端末機を選ぶ。
********************************
作成: 2003−3−10
エコの観点から推進されている風力発電ですが、以下の例にあるような問題点も出始めているようです。
低周波電磁界ならぬ低周波騒音の問題も指摘されています。
社団法人 原子燃料政策研究会 のWEB http://www.cnfc.or.jp/plutonium/pl31/report.htmlにあった内容
この記事は、Plutonium誌2000年No.31に掲載されたものです。
****************** 一部引用 ************
CNFCレポート ドイツの放射性廃棄物政策事情調査− 放射性廃棄物処分の具体化が課題
当原子燃料政策研究会では、去る10月にドイツに研究会理事の後藤茂元衆議院議員、江渡聡徳前衆議院議員をはじめとする調査団を派遣し、わが国での使用済燃料や高レベル放射性廃棄物処分のあり方の参考とするため調査を行いました。
訪問した施設は、アーハウス中間貯蔵施設とゴアレーベン高レベル放射性廃棄物処分サイトで、関係者の方々と両国における原子燃料サイクル・バックエンド政策など広い分野にわたって意見交換を行いました。
(編集部)
ドイツでは電力の35%が原子力
ドイツでは約8,000基の風力発電設備が運転されていますが、低周波騒音や、森の上に顔を出している羽根が景観を悪くするとか、ディスコ現象(羽が回転するごとに太陽を遮ったり、元に戻ったりと、羽の回転もあまり速くないことから、まるでディスコにいるときのように、光のフラッシュを浴びているようになる現象)が生じるなどにより、風力発電に対する反対運動が増加しているとのことです。
風力発電に反対運動が生じているなどは、ドイツの国民が自然を大切にするということが表れています。
それらを考えると今後のエネルギー源のバランスをどのように考えるかがドイツにとっては深刻です。
******** 引用の終わり **********
記:2011−9−15
Interference Technology日本語版 2011年9月号に掲載されていたニュースです。
******************** *********************
風力発電が健康問題の原因: オーストラリアの報告
オーストラリアの時事番組Four Corners は最近、風力発電所で副次的な被害があると訴えている人々に会うため数カ所のホットスポットを訪問した。
ホットスポットは、国が再生可能エネギーを大急ぎで採用していくにつれてオーストラリア各地に発生したものである。
風力発電所の近くで生活を強いられている人々は、タービンの雑音が彼らの健康に影響を及ぼしているという懸念を表明していた。
彼らは、風力発電機器が頭痛、高血圧、吐き気の原因だと言う。
風力発電機器の近くに住んでいる一人が頭痛に苦しみ、専門家を訪ねると、電磁波による頭のけいれんだと診断された。
ある専門家は、あまりにも周波数が低すぎて人の耳には聞こえないが、風力発電の翼によって発生する低い低周波の音が、健康に影響しうると確信している。
最近、オーストラリア連邦政府委員会は風力タービンに関する健康懸念を調査したが、健康被害と風力発電の翼との関係を明確にするには不十分な科学研究であること、更に多くの研究が必要だと判明した。
今現在、オーストラリアで風力発電から供給されているのは、必要なエネルギーのたった2パーセントである。
現在、連邦政府はオーストラリアで必要なエネルギーの20パーセントを再生可能なエネルギー源から作り出すよう要求しており、風力エネルギーの利用は、ビッグビジネスになっている。
すでにオーストラリア全域には、電気を発生している風力タービンが1100台近くある。
政府が再生可能エネルギー目標に到達するためには、風力タービンの台数を最高3,000台まで増す必要がある。
************************ ********************
古い産経新聞(1992−4−16)にあった記事です。
************** 一部 引用 *************
ハログンランプでがん ジェノバ大動物実験
家庭用の白熱灯や自動車のヘッドライトなどに使われているハロゲンランプが皮膚がんを引き起こす可能性があることが、イタリアのジェノバ大の研究者による動物実験で明らかになった。
最も早いケースでは、3一4カ月後に皮膚に病変が表れ始め、いずれのマウスも病変の数、面積が増加、1匹で15-20個となり、大きいものでは直径3センチの皮膚がんが認められた。
しかし、組織検査の結栗は比較的良性のものだったという。
この実験と並行して、自然光で飼育した4匹と、ハロゲンランプとの間に厚さ2ミリのガラスを置いて飼育した4匹の計8匹の対照群には、1年後も皮膚に変化は見られなかった。
******************* **************
詳細は産経新聞を読んでください。
記:2015−12−5
朝日新聞2009年7月30日の記事にあった内容です。
http://www.asahi.com/health/news/TKY200907300398.html
**************一部 引用 **************
「日焼けマシン、発がんリスク最高レベル」 WHO
2009年7月30日23時30分
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、日焼けサロンやスポーツジムで使われ、人工的に紫外線を出す「日焼けマシン」の使用は発がんリスクを確実に高めるとして、発がんリスク分類でもっとも危険性の高い「グループ1」に引き上げた。
IARCは、日焼けマシンと皮膚がん(メラノーマ)との関係を調べた19論文を分析。
30歳未満で日焼けマシンを使った経験のある人は、使ったことのない人より75%もリスクが高いことがわかった。
日焼けマシンの使用による、眼球の色素細胞にできるがんのリスクも高かった。
従来、紫外線のうちB紫外線(UVB)にだけ発がん性があると考えられていたが、A紫外線(UVA)もUVBと同じように発がん性があることもわかったという。
地上に降り注ぐ紫外線の95%がUVAだ。
日焼けマシンは5段階の発がんリスク分類で危険性が2番目に高いグループだった。
危険性が一番高いグループにはアスベストやたばこ、X線、太陽光などがある。
(略)
*********************
読売新聞のWEB 大手小町という読者の投稿欄にあった内容です。 非常に面白いというか、ちょっと考えさせられる事例です。
************ 引用 *****************
私の場合 02.11.16
14:11:06 高圧電線下の住人
今から5年ほど前になるでしょうか?電磁波の人体への影響が異常に騒がれた時期がありました。
まさにその頃、私たち夫婦は夫の両親の家を二世帯住宅風に改築し、両親と同居し始めたところでした。
いわゆる閑静な住宅地で、環境は抜群に良いのですが、ただ一つ、近くに小規模な鉄塔が建っており、我が家の屋根の一部真上にもその電線が走っています。
たぶん子供がいなかったら、あんなに悩むことはなかったのだと思いますが、その頃の私は異常に神経を尖らせ、それに関して書かれたものを読み漁ったりし、どんどん不安を募らせていきました。
そんな折、テレビで、大阪の門○市という超高圧電線群を取材した特集を見てしまったのが、最後の決め手になりました。
もう、私の中で抱え込めないほど不安が大きくなってしまい、私は子供を連れて家を出ました。
あれから数年、私たちは現在その二世帯住宅に戻っています。
当時の精神状態が嘘のように、ほとんど電線のことは気にせず生活しています。
高圧線と白血病などの病気との因果関係は何年経っても実証されず、もし仮に関係があったとしてもそれは何万人に1人だったものが2人になったということ、 それを発症率2倍という数字の罠に気づいたことや、家族分裂して避難所のようなアパートで暮らしていることの虚しさなどが、私を冷静にさせてくれました。
そして何よりも、この家に50年以上住んでいる夫の両親が、高齢にもかかわらず、今まで病気らしい病気もせず健康そのものだということや、この家で生まれ育った夫や兄弟も健康、お隣に長年住んでいる御夫婦も揃って90代だということ、
高圧線沿いにある近くのマンションに住む100世帯以上の家の子供たちもみんな元気で学校に通っている様子などを見るにつけ、ほとんどの人はあまり影響なく暮らしていることがわかります。
高圧線の電磁波による健康被害より、そのことを気にするあまりの精神的ダメージの方が深い問題だと言われたことがあります。
もし万が一、万が一、そのような病気に自分たちが罹ってしまったら、その時はその時だ!と開き直れたこともあります。
電磁波だけを避けて引っ越しても、そこには排気ガスがあったりダイオキシンがあったり、自然災害があったりするかもしれません。
長々と自分の経験だけ書いてすみません。あまり参考にならなかったですね。
**************** *****************
BEMSJより「高圧線下の住人」様へ: 読売新聞社のWEBで書き込みを拝見し、このWEBへの転載の許可を得ようと思いました。
しかし、電子メールなどが掲示板に掲載されておらず、連絡を取ることができませんでした。
このページをもし、見ることがありましたら、連絡をお願いします。
掲示板に書き込み、本人から転載の許可を得ました。
Yahoo! 掲示板
ホーム>家庭と住まい>家庭電化製品 > IHクッキングヒーター にあった書き込みです。
非常に有効な判断事例であると思います。 書き込んだ方の了解を得て、転載します。
************** 転載 *****************
なんで? 投稿者:
onegaidegozaimasu 2003/ 3/ 7
12:01
メッセージ: 258 / 258
いつも、こうややこしくなるんだろ?
なぜ電磁波云々言うのだろう?電磁波云々いうのであればガスのままでいいと思うが・・・
うちはボヤ騒ぎを起した経緯も有り、新築を機にIHを導入した。
操作感は大満足。導入者は大抵同意見(もちろん不満な人もいるでしょう) 操作性に付いても、使っていない人が案外火力がどうした中華がどうしたと不満を言っているケ−スが多い、操作性や安全性を使用者が伝えているのに、使っていない人が疑問を述べるとガス屋という言葉になる。
私は大満足でいい事を報告すると電気屋になった。
IHが欲しい人はなぜ欲しいのですか?
私は安全性経済性でした。 とくに火事に対する備えで言えば、電磁波がどうしたんだ!!って気持ちです。
30年後に白血病になるかも???しれません。
たまたま病気になったらIHのせいだと、突っ込まれるかもしれません。
そんな事を言っていては、それこそ現実問題携帯電話も使えないしディ−ゼルの排気ガスでガンになるといけないから外にも出られないってなってしまう。
経済性も安くなるとは聞いていたけど、オ−ル電化で月に11,000円程度で満足してる。
私が思うのは、電磁波云々言うなら止めなさい。
ガスにしなさい。
別に携帯電話も引き合いにしなくていいと思うし安全を強調もしません。
ガスでも注意を怠らなければ火事になる訳では無いし・・・。
ただ、うちみたいに歳を取って気を付けたくても、ついうっかりしてしまう事が多くなった家庭には本当に重宝しています。
仮訳をつけた。 作成: 2003−10−3
WHO Flip-Flops on EMFs, Precautionary Principle Now Revoked
WHO 行ったり来たりで電磁波に関して先に進めず 予防原則は今や取り消し
The World Health Organization (WHO) has decided not to invoke(発動する)the precautionary principle for electromagnetic fields (EMFS), Dr.
Michael Repacholi has told Microwave News.
WHOは電磁波について予防原則の発動しないことを決めた、とRepacholiは本誌に語った。
Less than three months after releasing a draft position paper(声明書) that called for applying the precautionary principle to both
extremely-low-frequency (ELF) and radio frequency (RF) EMFs, the WHO has backed
off(撤回する)from this recommendation (see MWN, M/A03).
低周波と高周波電磁界に予防原則を適用するために準備された声明書のドラフトが発行されてから3ヶ月も経ないで、WHOはこの推薦を撤回した.
The draft had been circulated at a WHO workshop held February 24 - 26 in
ドラフトは2月24−26日にルクセンブルグで開催されたWHOのワークショップで配布された。出席者は招待者であった。
"The draft we submitted to the Luxembourg workshop was purely a discussion
draft to provoke comment ....It was very successful at
that" Repacholi, the head of the WHO International EMF Project, wrote in a
May 22 e-mail.
「ルクセンブルグワークショップでのドラフトの配布は、コメントを引き出し、議論を行うためのドラフトに過ぎず・・・・・・これは成功裏に終わった」とWHOの国際EMFプロジェクトの長であるRepacholiは5月22日の電子メールに書いている。
The decision caught many of those who attended the meeting by surprise.
この決定は会議に出席した人に 驚きを与えている。
It "really does surprise me because in Luxembourg we
agreed, more or less, that the precautionary
principle should be invoked, especially for
ELF," Dr. Mirjana Moser of the Swiss Federal Office of Public Health in
Bern told Microwave News.
本誌にスイス・ベルンにある公衆衛生の連邦事務所のMoserは「本当に驚いている、ルクセンブルグの会議では、もう少しやるか、もう少し少なくするかは別として、予防原則は発動することに我々は合資したからである、少なくとも低周波電磁界に関しては」と語った。
"My understanding, based on the draft position paper and from what the
staff of the EMF project said in
マサチューセッツ大学のTicknerは「私の理解では、ドラフトとルクセンブルグでWHOのEMFプロジェクトのスタッフが説明したことによれば、WHOは電磁波に予防原則の発動を計画している」と語った。
"There was absolutely no
question about applying it to ELF EMFs; the case for RF was less sure," he
added.
「高周波に関しては定かではないにしても、低周波電磁界に関して適用されると、まったく疑いもしなかった」と付け加えた。
Prof. Mike O'Carroll of REVOLT, an advocacy group based in northern
北イングランドの支援運動グループREVOLTのO'Carrollも同様な記憶を持つ。「Repacholiの態度ははっきりとしていました。
彼が行なったワークショップでは、時間を無駄にしないために「取るか取らないか」ではなく、「どのようにして」予防原則を発動するかについて論議をするように指導した」と語った。
Others see things differently. Dr. Kenneth Foster of the
異なる見方をする人もいる。ペンシルベニア大学のFosterは、「私はまったく驚かない。これは新しい考えの最初のうわさでした。
何度も長い討論の中で、Repacholiが私を明確にしたのは、予防原則を採用するための全体にかかわる根本的な枠組みを構築することで、現時点では電磁波における予防原則を適用することではなかったのです。
それは後回しにされるのでしょう」と。
And Dr. Anders Ahlbom of the Karolinska Institute in
ストックホルムのカロリンスカ研究所のAhlbomは「私は正直に言って、彼らは今もなお検討中であって、まだ何も緒論はだしていないのです。
ドラフトではたしかに低周波電磁波については予防原則を採用するべきだと提案していたから」
The draft position paper, presented to the Luxembourg work-shop in February,
stated in bold type: in the EMF context there is sufficient evidence, judged
against these criteria, to invoke the Precautionary Principle both for
extremely low frequencies (ELF) and radio frequency (RF) electromagnetic
fields.
ルクセンブルグのワークショップで配布されたドラフトには太字で次のように書かれていた。
「電磁波に関しては、趨低周波と低周波の両方に予防原則を取り入れるべきだと判断する十分な根拠がある」
The draft, which was written by WHO's Dr. Leeka Kbeifets, Continued:
This conclusion is based on several factors:
・The classification by IARC in 2001 of ELF magnetic
fields as a possible carcinogen based on studies of childhood
leukemia;
・The comparable radiation levels of existing mobile
phones to established international guidelines;
・ The availability of some low-cost exposure reduction
options.
WHOのKbeifetsによって書かれたドラフトには、引き続いて
「この結論は次の多くの根拠に基づいている。
・2001年に国際ガン研究機関(IARC)が低周波磁界は、小児白血病の研究を基にして、低い(Possible)可能性の発が
ん性があると分類したこと」
・市場に出ている携帯電語の電磁波が既存の国際的な基準値に達するようなレベルになっていること。
・電磁波を低滅するような安価な方法が使えるということ」
When asked how their present view is consistent with the one they offered in
February, Repacholi and Kheifets responded in a joint e-mail: "We have not
changed our minds and have not made [a] 180 turn, but rather we have developed
a comprehensive risk management framework in which precaution plays a role at
every stage, thus there is no need to evoke it - it is always a consideration in the process. Once this framework is
finalized we plan to apply it to EMF and other case studies.” Repacholi said that he will address pesticides, mad cow disease and
SARS, among other agents.
RepacholiとKheifetsは、現在の見解が2月に出されたものと一致しているかどうかを尋ねられ、次のような共同電子メールで答えた「我々は心変わりをしたわけでも、180度の転換をしたわけでもない。
むしろ、どんな場面にも適用できる予防的な役割を果たす総合的なリスク管理の枠組みを構築しようとしている。
あらためて予防原則の発動を論じる必要はない。現在はそれにむかう途上にある。いったん枠組みが完成したら、電磁波においても、また他の場合に対しても、予防原則を採用するつもりだ」と。
「他の因子とともに、殺虫剤、狂牛病、SARSなどにも適用する」と。
"The case studies for EMF will be completed over the next couple of
months," he said. With respect to recommending policies for exposures to
EMFs, Repacholi said that they would be "worked up over time and be
presented to a WHO task group next year."
Repacholiは「電磁波曝露に関する推奨政策について、WHOは十分に検討した上で来年には発表する」と語った。
On May 2, Repacholi and Kheifets released a new draft position paper,
Precautionary Framework for Public Health Protection. It makes no specific
mention of EMFS or RF radiation.
5月2目、RepacholiとKheifetsは新たな声明書のドラフト「市民の健康保持のための予防的枠組み」を発表した。
それには電磁波に関しては特記されていない。
以下の案内の中に、極めて含蓄のある部分があります。 赤字にしてあります。
あるメーリングリストで流れたものの一部引用です。
「予防原則は、ある観点から見れば、取るに足りない原則」になっています。
************* 一部 引用 *********** *********
Date: Sun, 22 Aug 2004 03:00:26 +0900
Subject: [XXXX] 予防原則ワークショップのご案内
ワークショップ 「予防原則は〈使える〉か」
日時 9月12日(日) 10時〜17時
場所 北海道大学人文社会科学総合教育研究棟W409会議室
○発表者及びタイトル
*午前 10時〜12時
・柏葉武秀(北海道大学文学研究科助手) 「予防原則と政治」
・神崎宣次(京都大学COE研究員) 「予防原則の第二の側面」
*午後 13時〜17時
・屋良朝彦(大阪大学COE研究員) 「予防原則の可能性と限界」
・鬼頭秀一(恵泉女学園大学教授) 「科学技術の根源的不確実性と予防原則──戦略的予防原則の可能性」
・松田裕之(横浜国立大学教授) 「科学万能論の反省と生態リスクの順応的管理」
・鬼頭氏、松田氏の応答
・総合討論
昨今環境問題や、化学物質、BSE、遺伝子組換え作物などのリスクとの関連で言及されることの多い「予防原則」については、「非科学的な政治的レトリック、あるいは単なる〈哲学的〉主張であるにすぎず、実際のリスク評価や政策決定には使えない」という声もある。
しかし予防原則が実践に際してもつ、ある種の有効性を否定することはできないだろう。
今回のワークショップでは、予防原則の哲学的含意について検討するとともに、その具体的な応用について検討したい。
******** *******************
2002年丸善より出版された安井至・著「環境と健康 誤解・常識・非常識 信じ込んではいませんか?」(定価1700円)を読んでいます。
非常に辛口の環境問題の本です。 皆さんの通勤途中に読む本としてお勧めです。
作成: 2004−8−23
P77「食品添加物・残留農薬による発がんの危険性は極めて高い」という論の中で、低周波磁界の発がん性2Bと同じランクに入っているコーヒーの発がん性に論及している箇所があるので。その部分を抜き出しました。
コーヒーがどのような研究で発がん性2Bにランクされているのか、IARCの本を読めばわかるのですが、とりあえず以下の情報でも、おおよそのことが理解できるかとおもいます。
********** ***************
C先生「変異原テストで有名なAmes博士は、次のようなことを言っている。
「キャベツには49種類の毒物が含まれている。」
「普通の人は、一生に5000から1万種の天然殺虫成分を野菜・果物から摂取する。その量は、人工の殺虫剤からの摂取量の1万倍にも及ぶ。」
「コーヒーには1000種以上の化学物質が含まれるが、発がん性試験が行われているのは、そのうちの25種類だけ。そして、19種類がげっ歯類にがんを誘発した。」
「1杯のコーヒーに含まれる発がん物質の量は、普通の人が年間に摂取する発がん性のある人工的殺虫剤よりも多い。」
「焦げた蛋白質に含まれる発がん物質の摂取量は、大気汚染のひどいところに住んでいる場合の摂取量の数100倍。」
************** *************
記:2009−4−5
http://www.cafegoju.com/ のサイトにあった内容です。
コーヒーの発がん性に関して、わかりやすくまとめられています。
一部を引用しながら、BEMSJがまとめなおしました。
************** **********
厳密に言えば、コーヒーの成分の中には発ガン性の疑いのあるものが少なからず含まれています。
2002年末現在話題になったものではアクリルアミドという物質がその代表です。
アクリルアミドはアミノ酸の一つであるアスパラギンとブドウ糖が高温で反応することで生成され、加熱調理した食品の多くに含まれています。
ごはんやパンにも含まれますが、最も濃度が高いのはポテトチップスです。
国立医薬品食品衛生研究所によると467〜3,544μg/kg含まれているそうです。
コーヒー(液体)に関しては詳しい数値がちょっと分からないのですが、ごく微量含まれているようです。
国際ガン研究機関による発ガン性分類によると、アクリルアミドはディーゼルエンジンの排気ガス等と同類の『2A(人に対しておそらく発ガン性がある)』にランクされています。
なお、コーヒーは『2B(人に対して発ガン性を示す可能性がある)』に、カフェインは『3(人に対する発ガン性については分類できない)』にランクされます。
他にもコーヒーに含まれる成分にはカフェー酸と呼ばれるものがあります。
この物質は先程の分類によると「グループ2B(人に対して発ガン性を示す可能性がある)」にランクされています。
ところが、このカフェー酸は抗酸化作用をもつことから、活性酸素を除去するような働きもあります。
メリットもあればデメリットもあるということですが、実際にはコーヒーに含まれているカフェー酸の量で発ガン性を示すことはまずありえないようです。
************* **************
記;2009−6−29
以下の研究があります。
この研究では、コーヒーの飲用は肝癌のリスクを減らすことを見出しています。
掲載誌:British Journal of Cancer (2005) 93, 607-610.
タイトル:Coffee and risk of death from hepatocellular carcinoma
in a large cohort study in Japan
(日本の大規模コホート研究におけるコーヒーと肝細胞癌による死亡リスク)
研究者:Y Kurozawa ら
概要:
40歳から79歳の男女合計110688名を対象にしたコホート研究。
1日1杯かそれ以上のコーヒーを飲む人、1日1杯以下のコーヒーを飲む人、コーヒーを飲まない人の3郡に分けた。
性別、年齢、学歴、糖尿病や肝臓病の履歴、酒とたばこの影響は調整した。
コーヒーを飲まない郡に比べて、1日1杯以上飲む郡では肝細胞癌での死亡率は0.50(CI:0.31-0.79)となり、1日一杯以下の郡では死亡率は0.83(CI:0.54-1.25)であった。
この研究では、コーヒーの飲用と肝細胞癌での死亡とは逆の関係にあることが判った、即ち、コーヒーを飲む人は肝細胞癌での死亡リスクは低い。
記:2009−12−2
以下の研究が報告されています。
関心のある方は、原著全文を入手して読んでください・
掲載誌:Hepatology. 2009 Nov;50(5):1360-9.
タイトル:Coffee intake is associated with lower rates of liver disease progression
in chronic hepatitis C.
研究者:Freedman NDら
日常的なコーヒー摂取とC型肝炎関連の肝疾患進行率の低さとの間に関連があることが、大規模前向き試験で示された。
「この研究は、C型肝炎に関連する肝疾患の進行とコーヒー摂取量との関係を扱ったものとして初めてである」と筆頭著者である米国国立がん研究所(メリーランド州ロックヴィル)のNeal
Freedman, PhD, MPHが記者会見で語った。
コーヒー摂取なしの場合に比較したそれぞれの相対リスク(RR)は、1日に1杯未満の場合が1.11(95%信頼区間[CI]は0.76 - 1.61)、1日に1杯から3杯未満の場合が0.70(95%CIは0.48
- 1.02)、1日に3杯以上の場合が0.47(95%CIは0.27 - 0.85)であった(傾向のP値 = .0003)。
この研究の限界としては、デザインが観察的研究であること、健康な集団への一般化ができないこと、自己申告データに基づいていること、カフェイン抜きコーヒー・ソフトドリンク類・コーヒーを淹れる方法に関する情報が欠けていることが挙げられる。
「C型肝炎関連の進行肝疾患を有する被験者を対象にした大規模前向き研究において、日常的なコーヒー摂取と疾患進行率の低さとの間に関連があることが示された」と著者らは記している。
「本研究で観察されたコーヒーと肝疾患進行との関連性は、アルコール摂取と喫煙とは独立していた。」
記;2010−5−13
古い朝日新聞 2005/2/16にあったニュースです。
一部を抜粋して紹介します。
********** ***************
肝がんリスク、コーヒーで半減 国立がんセンター
コーヒーの愛飲者は肝臓がんのリスクが半減する――。
米国のがん専門誌JNCI16日号に、日本の国立がんセンターの研究チームによる大規模調査の結果が掲載された。飲む量が多いほど効果があるという。
研究チームは、9万人を超える男女を10年間にわたって追跡した。
計334人が肝細胞がんと診断され、コーヒーを飲む習慣と肝細胞がんになるリスクの関係を統計的に分析した。
その結果、日常的にコーヒーを飲む人が肝臓がんになる率は10万人当たり約214人で、ほとんど飲まない人の場合は約547人だった。
1日に1〜2杯の人よりも、3〜4杯の人の方がリスクが減っていたという。
(略)
ただ、同号に掲載された米国チームによる別の研究では、コーヒーや紅茶で大腸がんや直腸がんを予防する効果は確認されなかったという。
(略)
**************** *******************
関心のある方は、当該の新聞を読んでください。
記:2010−5−13
癌メールにあった内容です。 一部抜粋して紹介します。
********** ******************
◇ ◆ 癌めーる 551号 (2010年5月12日)ニュース版 ◆ ◇
●コーヒーやソフトドリンクは大腸がんリスクにほとんどあるいは全く関連しない
Journal of the National Cancer Instituteに5月7日にオンライン発表された研究によればコーヒーや砂糖入り飲料、炭酸飲料はたとえ大量に飲んでも大腸がんリスクには関連しない。
(略)
今回北米とヨーロッパで行われた731441人の参加者を含む13の研究のデータを解析した。
このうち大腸がんになったのは5604人だったが例え1日6カップの大量のコーヒーを飲む人でも発がんリスクに増減は観察されなかった。
砂糖入り炭酸飲料についても1日18オンス(500 mL程度)以上飲む群にリスクに差はなかった。
お茶に関しては弱い正の関連が あったがたくさん飲む人の数が少なかったため偶然の可能性があり、再検討が必要である。
******************* ***************
関心のある方は、当該の癌メールもしくは、原著論文を読んでください。
研究者:Ross G. W., et al.,
タイトル:Association of coffee and caffeine
intake with the risk of Parkinson’s Disease,
掲載誌:JAMA, Vol. 283, No. 20, pp2674-79. 2000年
米国ハワイ州ホノルル市の米退役軍人省(Department
of Veterans Affairs)の研究者達は、パーキソン病(PD)の際立って低い発症率がコーヒーとカフェインの多い摂取量と関係していることを発見した。
研究者達は、身体の評価、人口統計学的評価、食事の評価、健康状態の評価に関するデータを長期に及ぶホノルル心臓プログラムに1965年と1968年の間に登録した(年齢45-68歳の)8,004人の日系アメリカ人の男性から集めた。
そして研究者達はそれから30年間これらの人々を追跡調査した。
この間これらの人々に起きたPDの症例数が医療記録や死亡証明書などによって確認された。
集めたデータを統計学的に処理した結果次のことが判明した。
*.この30年間に、102人の人々がPDを発病した。PDと診断された中間年齢は73.6歳であった。
*コーヒーを飲む人は飲まない人より際立って低いPD発症率を示した。
*PDの発症率は、コーヒーを沢山飲むほど減少した。
例えば、PDの発症率はコーヒーを飲まなかった男性で10,000人年に10.4であるが、毎日少なくとも28オンス(約800mL)のコーヒーを飲んだ男性では10,000人年に1.9であった。
*コーヒーの他の栄養素はPD発症率と無関係であった。
*喫煙はPDの結果に影響を与えなかった。
*お茶とコカコーラ中のカフェインがコーヒーと同じような結果をもたらした。
以上の発見よりコーヒーあるいはカフェインが我々をPDから保護するように思われるけれども、そのメカニズムは不明である。そのことについてさらなる研究が必要とされている。
関心のある方は、原著論文を読んでください。
記:2013−7−10
http://apital.asahi.com/article/kiku/2013070200004.html にあった内容 2013−7−10のログ
************一部 引用***************:
《31》 コーヒーは前立腺癌のリスクを下げる?
大野智 (おおの・さとし)
2013年7月 3日
宮城県大崎市における前向きコホート研究で、コーヒーの摂取量が多いほど、前立腺癌の発症リスクが低下することが報告(Br J Cancer 2013 May 14)されました。
これまでの過去の報告よると、コーヒー摂取量と前立腺癌の関係は、「予防効果なし」とする論文と「予防効果あり」とする論文があり、結果は一致していませんでした。
しかし、いずれの報告も、海外のデータで、日本人を対象とする調査は、これまでおこなわれていませんでした。
そこで、今回、東北大学の研究グループが「大崎国保コホート研究」と呼ばれる調査で、日本人男性におけるコーヒー摂取量と前立腺癌発症リスクとの関係を検証しました。
本研究では、以下のことも明らかになっています。
・ミルクあるいはクリームなしのコーヒーを飲むと、前立腺癌発症リスクはさらに明らかな低下傾向を示す
・ミルクあるいはクリームを入れたコーヒーを飲むと、前立腺癌発症リスクへの影響はなくなる
・砂糖入りあるいは砂糖なしコーヒーの場合、前立腺癌発症リスクへの影響の違いは明確ではない
・緑茶、紅茶、ウーロン茶の摂取量と前立腺癌の発症リスクとの間に相関関係はなかった
・今回の研究は、コーヒー摂取量と前立腺癌発症リスクの相関関係を検証しただけで、因果関係を検証したわけではないこと
*****************
関心のあるからは、上記のサイトに直接アクセスしてください。
2000年頃に纏められた資料です。
*癌抑制
****************
1997.9.16 高知新聞
コーヒーが直腸がん抑制 1日3杯で危険度半減
コーヒーを1日に3杯以上飲む人は直腸がんになりにくいという調査結果を、し好品と発がんの関係を分析した愛知県がんセンター研究所(名古屋市)の井上真奈美研究員らがまとめた。
25日から京都市で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。
調査は1990年から95年までに同センターで受診した40歳以上のがん患者1706人と、がんでない2万1128人が対象。
コーヒーの効果は特に直腸がんに表れ、「ほとんど飲まない人」が直腸がんになる危険度を1とすると、「毎日3杯以上飲む人」は0.46で、危険度が半分以下になることが分かった。
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*癌抑制
**************
1998.09/17 毎日新聞: <特報・胃がん>非喫煙者ならコーヒーで発症率大幅低下
毎日新聞ニュース速報
コーヒーを毎日飲む人は、飲まない人に比べて胃がんにかかる率が3分の2程度と低く、特に日に3杯以上飲む人では約半分になっていることが、愛知県がんセンターの嶽崎(たけざき)俊郎主任研究員らの大規模な疫学調査で分かった。
ただしたばこを吸うと効果はなくなるという。
30日から横浜市内で開かれる日本癌(がん)学会で発表する。
嶽崎さんたちは、名古屋市に住む40〜79歳の男女2万1000人余を対象に、1985年にアンケートし、食生活や喫煙の有無など生活習慣を調べた。
回答した男女1万9463人を、96年まで11年間にわたって追跡調査し、胃がんにかかったかを確認した。
その結果、コーヒーを飲む量が一日一杯未満の人たちは8861人だったが、うち143人が胃がんにかかった。約62人に1人の割合になる。
これに対し、毎日1、2杯飲むグループでは胃がん患者は85人に1人、3杯以上だと同101人に1人だった。
嶽崎さんはさらに統計的な手法を使い、喫煙など胃がんに影響すると考えられる他の習慣の影響を取り除き、厳密な比較を試みた。すると差はもっと開き、1杯未満の人に比べて、1、2杯飲む人は胃がんにかかった率が約3分の2、3杯以上の人は約半分という結果が出た。
ただし、コーヒーを毎日飲んでも喫煙歴が1年以上ある人の場合、胃がんにかかる率は、どちらの習慣もない人と同程度だった。
たばこを吸ってコーヒーを飲まないと、胃がんの率は、両方やらない人の2.2倍も高かった。
(略)
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*癌抑制
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1999.09/27 朝日新聞
◇コーヒー1日1杯以上で肝臓がんの死亡リスク半分に◇
朝日新聞ニュース速報
コーヒーを1日に1杯以上飲む人は、肝臓がんで死ぬ危険が、飲まない人に比べて半分になるという調査結果を、産業医科大学の徳井教孝講師らの研究グループがまとめ、27日、東京都内で開かれた「コーヒー・サイエンス・セミナー」(全日本コーヒー協会主催)で発表した。
研究グループは、福岡県内の男女計7259人を11年間追跡調査し、「コーヒーを1日1杯以上飲む」「時々飲む」「飲まない」の3グループに分けて、摂取量と肝臓がんの死亡率との関係を探った。
年齢、喫煙や肝臓病の有無などは統計的に調整した。
その結果、コーヒーを「飲まない」グループが肝臓がんで死亡する危険を1とした場合、「時々飲む」は0.7、「1杯以上飲む」は0.5だった。
調査期間中に肝臓がんで死亡した人は76人だった。
徳井講師は「コーヒーには様々な成分が含まれており、どんな物質が効いているのかは今のところ不明だが(がんの引き金になる細胞膜や遺伝子の酸化を防ぐ)抗酸化物質が肝臓がんを抑制している可能性がある」と話している。
(略)
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*総説。
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1998.10.1 Medical Tribune
〜第2回コーヒー・サイエンス・セミナーより〜
見直されるコーヒー――癌,冠動脈疾患予防の可能性も
食品の疾患予防作用に関する研究がもてはやされるなか,コーヒーにはいまだに健康に対する負のイメージがつきまとう。かつての疫学研究で癌や冠動脈疾患の危険因子とされたことが原因だが,近年の研究では,むしろ発癌予防作用や,抗酸化作用を介した冠動脈疾患予防の可能性も指摘されている。
10月1日の「コーヒーの日」を前に,先ごろ東京都内で行われた(社)全日本コーヒー協会主催の「第2回コーヒー・サイエンス・セミナー」から最近の知見を整理した。
クロロゲン酸に発癌予防作用
1970年代に発表された疫学研究では,腎癌や膀胱癌の発生とコーヒー摂取の相関性が指摘されたが,80年代以降の疫学研究では,コーヒーが大腸癌,乳癌,膵癌などの発生を抑制する可能性が示唆されている。
岐阜大学病理学第一講座の森秀樹教授は,70年代の疫学研究を受けてコーヒーの発癌に及ぼす影響について基礎研究を始めたが,当初の予想とは逆に,これまでに得られた成績はいずれもコーヒーによる発癌予防作用を示唆している。
それらを要約すると次のようになる。
(1)ラットにアミノピリンと亜硝酸を摂取させ,胃内でニトロソアミンを発生,肝癌を誘発したモデルにおいて,コーヒー飲用(630日)の有無で肝癌発生率を比較したところ,非飲用群では78%に発生したが,投与群では22%と肝癌発生が有意に抑制された(p<0.03)
(2)コーヒー成分のなかで特に多いフェノール系物質のクロロゲン酸に着目。ハムスターに発癌物質methyl-azoxymethanol(MAM)acetateを投与したモデルにおいて,大腸癌発生に対する影響を検討したところ,クロロゲン酸投与群では大腸癌の発生を認めず,非投与群の40%に比べ有意に低値だった(p<0.001)。
また,同モデルにおいては,クロロゲン酸は肝における前癌病変(酵素変異増殖巣)の発生も有意に抑制した。
(3)ラットに発癌物質4-nitroquinol-ine 1-oxyde(4-NQO)を投与し舌癌を誘発した実験でも,コーヒー成分であるクロロゲン酸,カフェ酸などのフェノール系物質は,非投与群で60%に発生した舌癌をいずれも有意に抑制。粘膜上皮の細胞増殖に対しても抑制作用を示した。
(4)ラットに発癌物質azoxymethane(AOM)を投与した実験でも,クロロゲン酸を高濃度に含むコーヒー抽出物は大腸前癌病変aberrant crypt foci(ACF)の発生を有意に抑制。
また,クロロゲン酸はACFの自然退縮を促進する作用も示した。
森教授はこれらの成績は最近の疫学研究と一致し,発癌予防におけるコーヒーの有用性を示すが,その機序としては,クロロゲン酸などフェノール系物質による,(1)抗酸化作用(2)薬物代謝酵素に対する作用(発癌物質を代謝活性化する酵素を阻害し解毒化する酵素を活性化)(3)細胞増殖の抑制−などが推定されると述べた。
(略)
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*発癌
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癌:コーヒーと膵臓癌
BioNews 1999年12月22日
コーヒーを飲むことと癌との関連について、興味深い証拠が現れた。
コーヒーの成分であるカフェインか、あるいはコーヒーを飲むことに関連した何かが、膵臓癌患者の腫瘍のK-ras遺伝子の異常と、摂取量に依存した形で関連がある、と新しい研究が示したのだ。
しかし、この種の癌の発生とコーヒーの摂取の間に、直接的な因果関係の証拠はない。
ras遺伝子は、さまざまな癌で変異していたり、活性化している。
その一つ、K-ras遺伝子は、膵臓癌のおよそ4分の3で突然変異を起こしている。
実際、この突然変異の検査は、膵臓癌の診断によく使われる。
しかし、K-ras遺伝子が正常な悪性腫瘍もあり、二つのタイプの腫瘍が、異なった理由により起きているのかもしれないとも考えられている。
これまでは、K-rasの突然変異と、環境や生活習慣との関連は見つかっていなかった。
カフェインとコーヒーの効果については、齧歯類や細胞培養での研究によって、このところ、矛盾してはいるものの、興味をそそる結果が出てきている。
スペインのバルセロナ自治大学のMiquel Portaらは、スペインの5つの病院で新しい研究を行った。
彼らは、膵臓癌患者の中でK-rasの突然変異のある人は1週間に14杯半のコーヒーを飲んでいたこと、K-rasの突然変異のない患者はほぼ9杯で、突然変異のある人の方がはっきりと多いことを初めて示した。
研究対象となった121人の患者のうち9人は、1週間に21杯以上飲んでいて、その全員の腫瘍が突然変異していた。
研究チームは、この成果を疫学・公衆衛生誌(Journal of Epidemiology and
Community Health)1999年11月号に発表した。
彼らは、これは予備的な結果であり、ある患者の言う「1杯」が、他の人の一口であったりする以上、臨床に応用したり、癌予防策のもととなるような結論を下すには、この結果を確かめるか、間違いを証明するだけのさらなる研究が必要だと結論している。
しかし、コーヒーのある成分、または、コーヒー常飲者であることと関連している何らかの生活習慣が、前駆的な病変の進行に影響することを示唆している研究結果が、また増えたといえる。
(略)
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医療21 No.104【2003年8月13日】(3年目) のメーリングにあった内容
*******************
●コーヒーが虫歯を予防
イタリアの科学者達が行なった試験管中の実験によれば、コーヒーは虫歯を起こす細菌であるミュータンス連鎖球菌(Streptococcu
mutans)に対して抗菌性を持っているが明らかになった。
虫歯のようなバクテリア感染を防止するある一つの対策は、細菌が標的の表面に付着するのを阻止することだ。
以前ローストされたコーヒーには抗菌活性があると報告されていた。
それで、イタリアのPavia大学とAncona大学の研究者達は、コーヒーにだ液で覆われたヒドロキシアパタイト・ビードにミュータンス連鎖球菌が吸着するのを妨ぐ能力があるかどうか調べた(メモ:
ヒドロキシアパタイトは歯の骨の構成要素である)。
調べられたのはグリーンコヒー、ローストされた2種類のコーヒー(アラビカコーヒー とロブスタコーヒー )、いくつかのコマーシャルコーヒーサンプル、そして周知のコーヒー構成要素であった。
彼らの研究で、テストされたすべてのコーヒー溶液は抗接着性を持っていることが発見された。
また、すべてのコーヒー成分(クロロゲン酸やトリゴネリンやニコチン酸)はカフェイン以外同じ抑制活性を示したという。
正確な機構はまだ分らないが、コーヒーによって前処理されたヒドロキシアパタイト・ビードが ビードにミュータンス連鎖球菌が吸着するのを妨げたという証拠は、コーヒー中のある活性分子がホスト(歯の)表面に吸着して、歯の受容体がバクテリアと付着することを阻止したことを示唆している。
この研究では動物実験のデータが欠けているけれども、イタリアの研究者達は、ちょうどお茶やクランベリージュースが抗ミュータンス連鎖球菌作用をもっていると以前伝えられていたことから、コーヒーも歯のミュータンス連鎖球菌の増殖を最小限に抑えることができると確信している。
Reference; M. Daglia et al., Antiadhesive Effect of Green and Roasted Coffee on Streptococcus mutans' Adhesive Properties on Saliva-Coated
Hydroxyapatite Beads, J. Agric. Food Chem., 50 (5), 1225-9.
記:2016−1−4
産経新聞2015年12月23日の産経抄の記事から、一部を引用
***********************:
昨日に続いて、ベートーベンに登場してもらおう。
大のコーヒー好きで、毎朝手ずから入れて楽しんでいた。
豆をきっちり60粒数えて使うのが、いかにも凡帳面なベートーベンらしい。
(略)
▼音楽家に限らない。多くの作家も、コーヒーの力を借りて、名作を世に送り出してきた。
心と体に活力を与えてくれる秘密が、カフェインという物質にあると、ドイツの化学者が突き止めたのは、1920年である。
▼最近では、「エナジードリンク」と呼ばれる、カフェイン入りの清涼飲料水が、若者に人気を呼んでいる。
昨年、九州地方の自宅で意識を失い亡くなった20代の男性も、1年前からよく飲んでいた。
胃の中からは、カフェインの錠剤も見つかっている。
▼解剖した福岡大は、カフェインによる中毒死と断定した。国内で報告されたのは初めてだという。
男怪は24時間営業のガソリンスタンドで、深夜から早朝まで勤務していた。
眠気を覚ますために摂取を続けるうち、いつのまにか致死量を超えてしまったのか。
▼人に1日千ミリグラム以上のカフェインを投与した実験では、感覚障害や震えなどを訴える不安神経症候群が、確認できた。
もっとも、専門家によれば、ニコチンやアルコールに比べて、はるかに害は少ない。
当たり前のことながら、「ある物質が安全か危険かは、ひたすら『量・濃度』で決まる」(『からだと化学物質』J・エムズリー他著) 60粒くらいが、ちょうどいい。
記:2016−11−8
6月に以下のニュースが流れていました。
*****************************
Oddly
Enough
2016年06月17日 16:47 JST
「コーヒー発がん性」証拠なし、熱い飲み物には注意=WHO
[ロンドン 15日 ロイター]-世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)は15日、最新調査の結果、コーヒーの発がん性を示す決定的な証拠はないことが明らかになったと発表した。
IARCはこれまで、クロロホルムや鉛と同様、コーヒーを「ヒトに対する発がん性が疑われる」とされる「グループ2B」に分類していた。
同機関は、ヒトと動物を対象にした1000以上の研究を調査。
その結果、コーヒーを「発がん性がある」または「ない」と判断するに十分分な証拠はなかった。
また、コーヒーを飲むことで特定のがんの発症リスクが低下することを示唆する研究もあったという。
ただ、どんな飲み物でも、温度が約65度を超えるものであれば、食道がんを引き起こすリスクがあることが科学的に示されたと指摘。
IARCのクリストファー・ワイルド所長は「非常に熱い飲み物は食道がんの一因である可能性がある」とし、「飲み物の種類ではなく、温度に関係が
あるとみられる」と説明した。
全米コーヒー協会は、「コーヒーを飲む⼈たちに朗報だ」と最新結果を歓迎した。
(略)
****************************
WHO「科学的に不確実さを持つものに対する予防原則の立案のための枠組み」ドラフト報告書
Framework to Develop Precautionary Measures in Areas of Scientific Uncertainty
Draft
for Review
発行:The WHO EMF
Project October 2004
まとめ:2005−2−11
このドラフトを一読した。かなり難解な英文で、十分に理解できたとはいえないが、興味深い点を列挙する。
*これまでのやり方は、専門家がリスクを評価し(リスク評価)、その結果を政策決定者が判断して(リスク管理)、一般公衆に伝える(リスクコミュニケーション)、という一方通行のやり方であったが、この枠組みでは、それらをリスク評価→リスク管理→リスクコミュニケーション→リスク評価と廻すやり方とする。それらに利害関係者を関与させる。
*予防原則の適用に当たって、選択肢は、「何もしない」から「数値を定めて規制する」まで各種の段階がある。
(筆者注:予防原則は「厳しい数値規制を実行する」という意味は含むが、全てではない。)
*規制値を定める場合の注意
確立した科学に立脚した既存の暴露基準に対して、予防原則の名の下に、恣意的により低い値に設定すべきではない。科学の信頼性を損ねることになる。
原文:4.1 Quantitative limits and guidelines
Guidelines
setting quantitative limits on human exposures to environmental agents are
normally introduced only on the basis of consistent, reproducible data, confirmed by different laboratories
and clearly establishing the levels of exposure to physical, biological or
chemical agents thought to be harmful to humans.
In addition, exposure limits generally incorporate safety factors that allow
for uncertainty in any identified thresholds for established effects.
Such approaches remain central to the proposed WHO Precautionary Framework;
guidelines should not be undermined by
additional, arbitrary exposure reductions in the name of
"precaution", since this would devalue their scientific credibility.
*IARCの判定2B以上のものに対しては、予防原則を適用する。2B判定以下のものに対しては、低コストで可能なことのみを実施する。
すなわち、小児白血病と磁界曝露に関しては予防原則を適用する。小児のその他のガン・大人のガンや電界曝露などに関しては、低コストで可能なことのみを実施する。
*選択肢として、技術的な解決策の一つとして「家庭電気製品からの磁界の漏洩を少なくするための設計変更」が紹介されている。
「原文:Changes to design of domestic appliances to reduce magnetic fields」
*選択肢の一つとして暴露基準を定めるとき、暴露基準値は確立した効果に基づくべきで、予防原則の適用は適切ではない。小児白血病に基づく暴露基準は選択肢として推奨しない。
原文:Exposure limits WHO believes exposure limits should be
based on effects conventionally regarded as established, and are not an
appropriate mechanism for implementing precautionary approaches. Therefore WHO
does not recommend including exposure limits based on the childhood leukemia
data as an option.
*同じ内容が、別のページでも書かれている。
0.4μTもしくは類似の数値を設定する暴露基準は正当なものとはいえない。WHOは電磁界の暴露基準は確立されたとされる科学に基づくべきと考える。
原文:exposure limits set at 0.4 µT or similar levels seem unlikely to be
justifiable. WHO considers that exposure limits for EMF should continue to be
based on science conventionally regarded as Established.
記:2012−5−22
WHOの環境保健基準には予防原則(念のための措置と翻訳さえている)が記述されている。
このEHC No.238 では、政策決定者が「念のための措置(Precautionary
approach)」として取り得る政策として、「何もしない」、「研究」、「コミュニケーション」、「緩和措置」(磁界低減)の4つの選択肢が例示されている。
すなわち、予防原則という意味は、単に緩和措置(規制)を行うという意味だけではない ということが判る。
総務省発行「電波と安心な暮らし 知っておきたい身近な電波の知識」平成16年3月31日の中のQ&Aにあった見解です。
作成:2005−7−1
Q2:人体への影響がまだ完全には解明されていない現状では、電波の利用が進むことに不安を感じます。
特に、子どもはより大きな影響を受けるような気がして心配です。
電波の安全性が証明されるまで、より厳しい規制を導入するなどの対策をとるべきではないですか?
A:国際的なガイドラインには、わが国の電波防護指針と同様に公衆のばく露について、約50倍の安全率が適用されています。
この安全率には、正確に決定するための厳密な根拠はないとしながらも、虚弱者、高齢者、乳幼児、病人、熱への耐性が低下するような投薬を受けている人などが考慮されています。
WH0では、国際的なガイドラインはすべての人々を保護するためにつくられたことなどの見解を示すとともに、最終的な結論として環境保健基準が発表されるまでの問は、このような健康を基準としたガイドラインを遵守することを推奨し、さらに大きな安全係数を勝手に加えることで、ガイドラインの持つ科学的根拠を覆すべきでないことを指摘しています。
これらを考慮すると、電波防護指針に基づく規制を導入してしいるわが国では、より厳しい規制とすることは適当ではないと考えられます。
しかしもしそれでも心配なら、通信時問を抑えたり、八ンズフリー機器を使ったり、子どもの寝る場所を電波の届きにくい場所に移動したりするなど、各個人がそれぞれの事情に応じて適切と思う対策を選択することが適当と考えられます。
WHOでも、国の機関が行政的観点からこれらの予防的対策を推奨すべきではないが、各個人のリスク認知に応じて対策がとられるのならばそれは適切と考えられるという見解を示しています。
パンフレットの表紙を紹介
作成:2009−3−4
以下は、癌メールからの一部 引用です。
************ ************** *************
◇ ◆ 癌めーる 494号 (2009年3月4日)ニュース版 ◆ ◇
◆飲酒のがんリスク
Cancer risk of drinking
Wednesday February 25 2009
http://www.nhs.uk/news/2009/02February/Pages/Alcoholcancerrisk.aspx
「1日1杯の飲酒でがんリスクが増加する」とBBCニュースが伝えた。
他にいくつか1日たった1杯の飲酒で、ワインだろうとスピリッツだろうとビールだろうと−がんリスクが高くなることを示唆する大規模研究の知見について報道されている。
この研究は130万人の英国人女性の平均飲酒量と各種がんを追跡したもので、1日1杯の飲酒でがん全体のリスクと乳がんを含む特定のがんのリスクが高くなることが示された。
これらの知見の解釈にはいくつかの限界がある。
現在の英国ガイドラインは、女性に対しては1日に2-3ユニット以上の飲酒は避けるようにと薦めている。
この研究は人数が多くがんの症例に関しては信頼できる情報源に依っており完全なデータが得られた女性についてのみ解析しており強力なものである。
ただしいくつか注意すべき重要なポイントはある。
・ 3年間隔で2回、平均飲酒量を尋ねているため長期の飲酒パターンなのか生涯にわたる変動があるかはわからない。
・ 女性の不正確な報告によるエラーが含まれる
・ 53%の女性はほとんど飲まないあるいは全く飲まず、大量飲酒の女性が少ないため正確ながんリスク推定は困難である。
・ 喫煙や運動などの交絡因子については補正を行っているが全ての要因を補正するのは不可能である。
これはJNCIの論文の話。
これとは別にDaily mailより
1日グラス一杯のワインを飲むだけでがんのリスクが168%に増加する、とフランスが言っている!
Drinking just one glass of wine a day can INCREASE risk of cancer by 168%, say
the French!
23rd February 2009
http://www.dailymail.co.uk/news/worldnews/article-1148611/Drinking-just-glass-wine-day-INCREASE-risk-cancer-168--say-French.html
フランス国立がん研究所(INCA)の報告
アルコールはどんなに少量でも健康に宜しくない、とINCAの所長Dominique Maraninchiが言う。
(アルコールが煙草に次ぐ予防できるがんの主要原因であるという事実は特に新しいわけではないが、フランス政府がこれをきっかけにワインを飲まないように国民に助言する方針であると報道され話題になっている。
あのフランスがワインを!)
記:2009−6−3
以下の研究がある。
掲載誌:Lancet 1999; 354:pp 1093.
タイトル; Causes of increasing cancer prevalence in Sweden.
研究者:Stenbeck M, et al.
Stenbeckらは、スウェーデンのがん症例を全て登録する全国地域がん登録から、1961−95年に登録された100万例以上のがん患者のデータを分析し、5年間ごとのがん患者の人数(有病者数)の増加を調べた。
そしてがん患者数の増加の原因として、四つの要因(人口の増加、人口の高齢化、生存率の改善、罹患率の上昇)を想定し、それぞれの寄与程度を推計した。
がん患者数の増大の原因を要因ごとに推定すると、男性では、23%が人口の増加、17%が人口の高齢化、31%が生存率の改善、29%ががん罹患率自体の上昇によるものと推計された。
女性での各要因の寄与は、それぞれ、22%、25%、30%、23%と推定された。
つまり、がん患者数の増大は、人口の増加や高齢化による影響が大部分(40-47%)であって、がんのリスク(罹患率)自体の上昇による影響は小さかった(23-29%)。
関心のある方は、この研究の原書全文を読んでください。
記:2009−6−15
1)はじめに
「電磁波」をキーワードにネットで検索を行うと、「木炭」「備長炭」「竹炭」が電磁波防護効果のあるものとして販売されているサイトに出会う。
それらは、電磁波を発信する電子機器・電気機器の側に置くだけでは効果はない。こうしたサイトでは、炭のほかに、「木酢液」「竹酢液」なるものを販売している場合が多い。
木酢液とは・・・・?と調べてみると、とんでもないことがわかった。
電磁波の防護を目的に、発がん性が示唆されている電磁波の防護のために、木炭などを販売しながら、同時に、発がん性が確定している物質を「含む」、もしくは「含む恐れのある」(製造方法などによって異なると思われる)「木酢液」「竹酢液」を販売している、ということである。
これは、予防原則・・・・を考える前に、リスクとは何かを、また、身の回りには如何なるリスクが存在するかを、きちんと考える必要があると痛感した。
以下は、関連する情報を纏めた。
2)ブログにあったリスク その1
Macken Health Careという健康情報に関するサイトにあったものです。一部を引用します。
参照URL: http://www.rose-unet.ocn.ne.jp/macken/health/2006/0610/0610munoyaku.html <リンク切れ>
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無農薬栽培で使用されている発がん物質・無農薬という「農薬よりも危険な物質」を使った栽培・2006.10
無農薬栽培というのがブームになっています。
農薬を使いたくないけど、実際、農薬なしで栽培してみると、虫や病気がたくさんやってきて、ろくに栽培できないことにも気づいています。
その結果、無農薬を推奨する人たちは、農薬を使用せずに、農薬として登録されていない物質を野菜や植物に使用しています。
自然界の中には、発がん性リスクの高いものがたくさんあります。
そのことを考慮せずに無農薬崇拝者たちは、それらの物質を作物に使用し続けている場合も見られます。
そしてそれらを口にするのは無農薬栽培が安全と信じている消費者の人たちです。
【無農薬栽培で使用されている発がん物質】
木酢液(竹酢液)の発がん性リスクは1000倍から1万倍ある
(以下略)
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詳細に関しては、関心のある方は、上記の参照URLにアクセスしてください。
2)ブログにあったリスク その2:
建築関係の方のブログにあった内容です。
一部を引用します(ほんの1行だけ流れが良いように編集しました)。
参照URL: http://housingeyes.com/radioclub/mokusaku/index.htm
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木酢液は天然素材だからリスクなんてトンでもない!
木酢液・・・・何か自然由来の非常に安全で、しかも健康的なイメージばかりが取り上げられていますので、ここに一つ問題提起しておきます。
木酢液は、自然素材だから、農薬を使わない有機栽培や、果てはアトピーにも効いて美容にも良い?非化学的な事が大好きな建築業界に至っては、木材に塗れば安全で、しかも木材も長持ちする・・・・・
WHOの専門機関に、IARC(国際がん研究機構)と言う、癌研究に関し最も権威のある国際機関があります。
そこでは、化学物質などの発癌性を5グループに分類していて、その中で最も厳しいグループ1(ヒトに対して発癌性がある)に分類されている物質は極少ないのですが、そのグループ1の中にアスベスト等と並び、Wood
Dust=鋸屑(のこクズ)があります。
はい。木をノコギリで切ったりした時に出る、あのオガクズです。
鋸屑はヒトに癌を生じさせる事が確認されています。
え?木が発ガン物質?いぇいぇ、木を魔女化する気は全くありません。
発癌物質は鋸屑に含まれる揮発性成分由来のモノで、自然は無条件に安全では無いと言うことです。
木材を加熱すれば、水分と同時に樹脂や揮発性物質は蒸発します。
その蒸発・揮発成分を冷却すると、発癌物質などが凝縮し、発癌物質の固まりとも言うべき素晴らしき水溶液が得られる訳で、簡単に言うとこれが「木酢液の正体」。
どうしてこんな危険な化学物質が「安全な無農薬栽培」に使われているのだろうか。
さて、貴方ならどうお考えになりますか。
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詳細に関しては、関心のある方は、上記の参照URLにアクセスしてください。
3)ブログにあったリスク その3
一部を引用します。
参照URL: http://gio.geo.jp/diary/200802110037.html<リンク切れ>
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ぶろぐ銀座
木酢液を使用した鶏卵はどれくらいある?
「食の安全」を語る上で、しばしば取り沙汰されるのが食品添加物や農薬。
しかし「無農薬」というだけで喜んではならない。
むしろ、「農薬=危険」と単純に考えることで、農薬を効果的に使うメリットを見ることができなくなるし、農薬でない危険な物の使用も許してしまうことになるからだ。
「安心!?食べ物情報」(http://food.kenji.ne.jp/)という食品の安全性についてのQ&Aホームページを主宰する渡辺宏氏執筆の『「食の安全」心配御無用!』(朝日新聞社)や、ポータルサイトで食の安全についての寄稿などを行っている松永和紀氏執筆の『食卓の安全学』〈家の光協会〉には、農薬以外に使われている農薬よりも問題のあるものとして、揃って木酢液を挙げている。
木酢液とは、簡単に言えば炭焼きの煙を冷却してできる弱酸性の液体だ。
土壌改良用だけでなく、健康食品として飲料用まで売られている。
しかし、普通は「煙なんか飲んでも大丈夫なのか?」と考えるのではないか。
千葉大学・本山直樹教授(農薬毒性学)らは2004年、各種市販および自家製木酢液・竹酢液7種類について変異原性試験を行った。
論文によると、商品によってはホルムアルデヒドのような有害物質が含まれ品質のバラツキも大きく、農産物の病害虫防除効果は認められず、そればかりか市販の木酢液4種類と、自家製品1種類、つまり7種類中5種類に、変異原性が認められたという。
変異原性というのは、エームス・テストといわれるサルモネラ菌の突然変異を調べる試験である。
ここで突然変異を起こさせる物質は、遺伝子に障害を与える物質であり、強い変異原性の場合には発がん性もあり得る。即発がんということではないにしても、本山報告は忽せにできない。
しかも、それが消費者の知らないまま、日常的な食品に混入されている場合もある。
たとえば、採卵鶏の飼料に混ぜて使われているケースもあるのだ。
魚粉など動物性たんぱくの飼料にある臭みを消すためと、木酢液を飼料に混ぜるとビタミンの多い卵を生むという報告があるから、使用するケースが増えている。
(以下 略)
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詳細に関しては、関心のある方は、上記の参照URLにアクセスしてください。
サイトを検索すれば、同様な趣旨の主張が更に見られるかもしれない。
以降は、3)で紹介されている千葉大学・本山直樹教授(農薬毒性学)らの研究概要です。
関心のある方は、原著全文を入手して、読んでください。
4)研究報告 その1
掲載誌:環動昆 第15巻第2号: 83一94 (2004)
タイトル:各種市販および自家製木酢液・竹酢液の主要成分と抗菌活性
研究者:駒形修・本山直樹
概要:
市販されている木酢液,竹酢液および木炭生産現場より採取した自家製粗木酢液について,主要成分の分析と植物病原菌に対する抗菌活性の検定を行った。
含有成分とそれらの濃度は,市販品では製品によって大きな違いが見られた。
また自家製粗木酢液の品質は採取温度によって異なり,特に煙の採取温度が高いものについては大きな違いが見られた。
供試した木酢液からは,酢酸の他に,メタノールやホルムアルデヒド,およびフェノール類等の毒性物質も検出された。
木酢液一般としての安全性の評価は,資材によって品質に差があるために困難であると判断された。
培地上の灰色かび病については室内試験で抗菌活性を示すものも見られたが,いずれの資材についても実際の植物体上では,灰色かび病,べと病,うどんこ病に対する防除活性はほとんど認められなかった。
5)研究報告―2
掲載誌:環動昆 第15巻第2号:95一105(2004)
タイトル:各種市販および自家製木酢液・竹酢液の殺虫活性と水生生物に対する影響
研究者:駒形修・本山直樹
概要:
木酢液は高濃度でもイエバエ,モモアカアブラムシに対しては殺虫活性を示さなかった。
ホソへリカメムシに対しても殺虫活性は見られず木酢液には化学殺虫剤のような効力はないものと推察された。
イエバエに対する忌避効果を室内試験で検定したが,忌避効果は木酢液の種類によっては処理直後には観察されたが,短時間の風乾処理によってその効果は消失した。
木酢液の1つを実験池に投与し,水生生物に及ぼす影響を調査したが,ミジンコ、ユスリカ幼虫ともに相対密度に影響はなかった。
室内検定で求めた当該木酢液のヒメダカ,ウシガエルの幼生に対するLC50は各々0.27%と0.25%であり,これを酢酸濃度に換算し,純粋酢酸のLC50値と比較すると,木酢液の方が若干毒性が高い傾向が見られたので,酢酸以外の成分も少しは毒性に関与している可能性が推察された。
6) 研究報告-3
掲載誌:環動昆 第15巻第4号:23 1一238 (2004)
タイトル:各種市販および自家製木酢液・竹酢液の変異原性
研究者:駒形修・本山直樹
概要
市販木酢液12種と自家製木酢液7種の各々の原液についてumu試験により変異原性を検定したが,木酢液の検定菌に対する抗菌活性のために評価ができなかった。
そこで木酢液3種を選んで,検定菌に対する影響を軽減するために1〜106ppmに希釈し同様に変異原性を検定した。
検定菌への影響は減少し,S-9 Mix処理条件下で陽性反応を示したが,得られた吸光度は陽性対照と比較して低いレべルであり,変異原性は確認できなかった。
一方,数種木酢液をSep-pak tc18力ラムを用いて部分的に抗菌物質を除去した後で同様の検定を行った場合は,供試した木酢液全てがS-9 Mix処理によって明確な変異原性陽性反応<注:変異原性があること>を示した。
本研究で用いた部分精製方法は,木酢液のような混合成分からなる資材の変異原性を簡便に検定する方法として有用であると考えられる。
7) 研究報告―4
掲載誌:日本農薬学会 講演要旨集 29巻 pp.91 2004
タイトル:各種木酢液・竹酢液の成分と生物活性
研究者:駒形修,本山直樹
概要:
供試した木酢液からは,酢酸の他に,メタノールやホルムアルデヒド,およびフエノール類等が検出されたが,それらも含め含有成分とそれらの濃度は,木酢液によって大きな違いが見られた。
抗菌活性については,3種のどの病原菌に対しても植物体上では確認されなかったが,灰色カビ病を培地上で風乾なしで試験したときのみ抗菌活性を示した。
木酢液は高濃度でもイエバエ,モモアカアブラムシに対しては殺虫活性を示さなかった。
ホソへリカメムシに対しても殺虫活性は見られず、木酢液には化学殺虫剤のような効力はないものと推察された。
イエバエに対する忌避効果を室内試験で検定した結果,木酢液によっては活性が見られたが,短時間の風乾処理によってその効果は消失した。
従って,実際の圃場での害虫防除効果は期待できないことを暗示した。
8)研究報告−5
掲載誌:衞生動物 55(Supplement) pp.68 2004
タイトル:各種木酢液・竹酢液の水生生物に対する影響と変異原性
研究者:駒形修・本山直樹
概要:
特定農薬候補資材である木酢液・竹酢液のリスク評価として,水生動物に対する毒性と変異原性について検討した。
屋外の実験池に木酢液を施用し,ミジンコ,ユスリカ幼虫等の相対密度を調査したが影響は確認できなかった。
室内検定では当該木酢液のヒメダカ,ウシガエルの幼生に対するLC50は各々0.27%と0.25%であり,これを酢酸濃度に換算し,純粋酢酸のLC50値と比較すると,木酢液の毒性が若干高い傾向が見られ,酢酸以外の成分にも多少毒性があることが推察された。
市販木酢液12種と自家製木酢液7種の原液についてum編式験により変異原性を検定したが,抗菌活性のために評価ができなかった。
また含有されている成分を個別に試験した場合とは結果が異なり,混合物の変異原性試験が困難であることを暗示した。
9)以降は、農薬への認定をめぐって効能や安全性(発がん性:変異原性)に関連する農水省での委員会審議などからの抜粋です。
9)農水省での審議状況-1
第9回農業資材審議会農薬分科会の資料から抜粋
日時:平成17年1月18日
木酢液の検討状況について
1 特定防除資材の検討対象とする木酢液の定義・規格等について
木酢液は、原材料や製法により品質がまちまちであり、製法によってはベンツピレン等の有害物質が含まれる可能性があるとされることから、特定防除資材として指定の検討対象となる木酢液については、一定の定義・規格等が必要であると考えられたため、林野庁とも協議の上、以下の要件を満たす木酢液(竹酢液等の木質原料を原材料とするものを含む。以下同じ。)について、指定の可否を判断するための資料を収集している。
@原材料
建築資材、家具等の廃材を除く木質原料(木材、竹材、オガ粉、樹皮等)とする。
A製造方法
原料を炭化炉又は乾留炉により炭化する際に生じる煙を冷却して得られた液体であって次のいずれかに該当するもの
(a) 蒸留されたもの
(b) 炉の排煙口における温度が80 〜 150 ℃の排煙を冷却して得られた液体を3ヶ月以上静置し、上層の油分と下層の沈殿部分を除く中間部分を採取して得られたもの
2 木酢液の安全性に係る資料の収集・試験の実施状況
木酢液の安全性に係る既存の文献資料はあるが、上記1の定義・規格を満たす木酢液についての資料はほとんどないことから、この木酢液を用いた安全性試験(評価指針に規定されている急性経口毒性試験、変異原性試験及び90日反復経口毒性試験)を実施しているところであり、水産動植物に対する安全性試験も本年度中に実施予定。
3 木酢液の薬効・薬害に係る資料の収集・試験の実施状況上記1の定義・規格を満たす木酢液等の農薬としての効果
10)農水省 委員会審議状況-2
農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会及び中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会合同会合(第6回)議事概要からの抜粋
日時:平成17年8月31日
木酢液に関する薬効・安全性試験の結果とその取扱いについて
事務局から、審議に必要な資料が整ったとして検討対象資材の「木酢液」について説明がなされた。
委員からは、
○「木酢液」に含まれるホルムアルデヒドについては、IARC(国際ガン研究機関The International Agency for Research on Cancer)での評価が昨年、「グループ2A」から「グループ1」に上がっていることから、ホルムアルデヒドを含む物質の安全性については慎重に審議するべき、
○原材料や製造方法の違いにより、成分のバラツキが生じるので、指定する際の条件について次回までに事務局で整理すること、
○薬効については、実際に農家が現場で使用している状況に応じたより多くのデータを示すべき、
等の意見が出され、薬効・安全性について更なる検討が必要との結論に達したことから、継続審議となった。
同上 配布資料からの抜粋
サンプルの種類 |
変異原性試験(Ames試験) |
クヌギ木酢液 (排煙口温度指定) |
15年度実施し陰性 |
スギ木酢液 (排煙口温度指定) |
15年度は農薬登録ガイドラインに基づく方法で実施した結果陰性。 |
ベイツガ・スギ・ヒノキ木酢液 |
16年度に最高用量を原液として実施した結果、農薬登録ガイドラインに基づく方法での濃度でも陽性。 |
BEMSJ注: 陰性:変異原性なし 陽性:変異原性有り
11)農水省 委員会審議状況-3
農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会及び中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会第10 回合同会合 平成20年11月21日より抜粋
木酢液の薬効・薬害、安全性等に係る検討に関し、第6回及び第8回合同会合において、以下のとおり整理された。
安全性、薬効・薬害に係る試験の実施
(論点)
第6回合同会合において検討した結果、変異原性試験(復帰突然変異原性試験)の結果について指摘があった。
また、
1)「木酢液」に含まれるホルムアルデヒドについては、IARC(国際ガン研究機関The International Agency for
Research on Cancer)での評価が「グループ2A」から「グループ1」に上がっていることから、ホルムアルデヒドを含む物質の安全性については慎重に審議するべき、
2)原材料や製造方法の違いにより、成分のバラツキが生じるので、指定する際の条件について事務局で整理すること、
3)薬効については、実際に農家が現場で使用している状況に応じたより多くのデータを示すべき、等の意見が出され、薬効・安全性について更なる検討が必要との結論。
(対応)
1) 第6回合同会合での指摘を受け、その上位の試験であるマウスを用いた小核試験を実施した。その結果、ベイツガ・スギ・ヒノキ、蒸留木酢液のいずれも陰性であった。
2) 指定する際の原材料、製造方法等の条件については、1)の小核試験に関する合同会合の検討結果をもとに、今後評価すべき木酢液に関する製造方法等の条件等について関係団体が検討し、事務局がとりまとめた上で、合同会合に報告することとする。
12) BEMSJのまとめ
木酢液に関する研究報告や、特定農薬指定に関連する農水省の委員会審議の資料を読むと、木酢液はかなり製法などによって含まれる成分が異なり、一概に結論は出せない。
しかし、少なくとも発がん性物質が含まれる恐れがあるものであり、十分に注意しなければならない、リスクのあるものであるといえる。
記:2009−6−22
電磁波問題市民研究会の会報「電磁波研究報」No.58(2009年5月31日発行)に
「家庭内から発生する電磁波は低周波から高周波へ」という記事があった。
「電磁波問題市民研究会では各地からの依頼で高周波、低周波の測定を行っている。
ここ1〜2年はその依頼数が増加している。
そこで、これらの測定についての傾向と、それにどう対応すればよいか、また、測定から得られた発見などについて紹介する。」 という記事である。
その末尾のほうで
「ただ家の中のものは高周波であろうと、低周波であろうと、自分でコントロールできるものだ。
ただ、すべてをゼロにすることはもちろんできない、つまり、ただ闇雲に電磁波=悪と反対するのでは、現代の生活を否定することになる。
(略)
そのリスクとベネフィットのバランスをどう取るかを、今一人ひとりが試されているとも思う。
各地で依頼を受け、電磁波の測定をし、そこでいろいろな方とお話をし、リスクとベネフィットのバランスについて、改めて強く感じるようになった。」
ということが書かれている。
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リスクに関して、一人ひとり考える必要があることを、この記事では主張している。
労働の科学2003年12月号 労働科学研究所発行に掲載された「中島一敏 SARS事件に学ぶ新興感染症に対する危機管理」の中で紹介されていた事例を抜き出した。
これは疫学が有効に働いた例で、疫学で原因を絞り込み、検査で病原菌を突き止めている。
疫学の結果だけで、原因を確定させてはいない、ことに留意する必要がある。
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近年の日本における新しい感染症の発生
2001年5月、K市の動物園にて,従業員5名が次々と原因不明の呼吸器感染症に罹患した。
医療機関における検査では原因がわからず、プルセラ症疑いと報道されたその事例では、感染拡大防止の目的で施設が一時閉鎖された。
筆者はFETPの一員として疫学調査に加わった。
詳細な調査の結果、5人は従事した大型哺乳動物のヘラジカの出産介助によって感染したことが突き止められた。
病原体を突き止めるべく,国立感染症研究所を含む複数の研究室で検索した結果、ヘラジカの胎盤、胎仔、羊水がオウム病クラミジアに感染、汚染され、それらに接触したことによるオウム病だったことが判明した。
通常、オウム病は、烏類との接触によって感染する。
ヘラジカの出産によって起こったオウム病集団発生は世界初事例であった。
また、1996年の関西地域を中心とした腸管出血性大腸菌0157の集団発生は記憶に新しいところである。
前例のない感染症の発生は,決して対岸の出来事ではない。
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記事の概要です。
関心のある方は、原文を読んでください。
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食の安全を考える「ゼロリスク探求症候群」に陥らないために
「ゼロリスク探求症候群」の心理とは
-「ゼロリスク探求症候群」とは随分と刺激的です。
池田:非常に小さいリスクと現実をどう折り合いつけていくかという問題は、BSEが初めてではありません。
食に限っても、ダイオキシンの風評被害による埼玉県の野菜を拒否するということもありましたからね。
この言葉を思いついたのは一昨年のBSEパニックの真最中。
テレビ出演し、日本人がBSEを原因とする変異型クロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなる確率は0・1をはるかに下回る値だと説明しても、視聴者の代表である司会者が「理屈ではなく感情の間題」と発言したのがキッカケでした。
「リスクはゼロでなければダメ」というわけですね。
池田:そうです。理屈ではなく感情なら、その本質は何かを突きつめた緒果が「ゼロリスク探求症候群」。
それはゼロリスクを求めるあまり、リスクバランス感覚を失い、白分の行動が重大な社会問題を起こすことも理解できなくなる病的心理です。
その特徴は、自分白身に正義があり、自分が差別や風評被害の加害者であることを忘れることにあります。
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「BSEから学ぶリスク対策」という記事の冒頭にリスクに関する解説があります。
非常にわかりやすい解説なので、その部分だけを引用して紹介します。
関心のある方は、全文を読んでください。
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*アメリカ産牛肉の輸入が解禁になりましたね。思い起こせば、「エコ・エコで行こうー」で最初に取り上げた時事ネタがBSE問題でした。
有路:あのとき私は、日本政府が牛の全頭検査にかけた4000億円について、「日本人が食品安全に大金を支払った最初のケース」として評価しました。
今もその気持ちは変わっていません。
ただ、その後の推移や、世界標準となった対策、市民の皆さんの反応などを総合すると、そろそろBSEというリスクの大きさにふさわしい対策に移行させていくべきではないかと思うのです。
*BSEのリスクはそんなに高くない、ということですか。
有路:客観的に見て、人間社会に多数あるリスクの中でも、かなり低いリスクです。
BSE感染牛を食べて変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)にかかるリスクを1とすると、スズメバチに刺されて死ぬ確率は1000倍、お餅をのどに詰めて死ぬ確率は4万3000倍です。
さらに、タバコが原因で死亡する確率にいたっては、実に430万倍です。
vCJDにかかる人は全人口に対し、0.026人。1年に1人も出ない確率です。
数ある食品リスクの中では最も小さい部類に入るでしょう。
*そういうものに多額のお金をかけてはいけないと。
有路:いけないのではなく、それにお金をかけることで何が起こるかを、正確に理解する必要があるのです。
社会の中で人が死ぬリスクは、先にあげたスズメバチや餅以外にも、交通事故や病気など無数にあります。
その全体を足したものが社会全体の「死のリスク」ですが、リスクの全体量を減らすには、各リスクにふさわしい大きさの対策をとる必要があります。
あるリスクが怖いからと莫大な対策費を注ぎ込むと、そのほかのリスクに対策できなくなり、社会のリスクの全体量は増えてしまいます。
別な原因で、人がたくさん死ぬようになるわけです。
ですから、市民の皆さんは風評に惑わされず、「このリスクはほかのリスクと比べてどのくらい?」と問い直すことを習慣にするよう、ぜひお願いしたいと思います。
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事実と真実を見分ける必要がある。
たとえ話として、海岸の砂浜を歩いて、「砂浜で黒い砂(石)があることを見つけた」、「砂浜で白い砂(石)を見つけた」、「砂浜で貝殻を見つけた」は、いずれも事実である。
そこから「砂は黒い砂(石)でできている」、「砂は白い砂(石)でできている」、「砂は貝殻でできている」ということは、論理的には正しい。
これらから、「砂は白い砂(石)だけでできている」、「砂は黒い砂(石)だけでできている」、「砂は貝殻だけでできている」と飛躍することは、正しくない。
こうした飛躍は「砂浜の砂」を正確に把握しているとはいえなくなる。「真実」ではなくなる。
電磁波の健康影響を考えるときに、「ある研究で、健康影響が見つかった」ということは「事実」である。
しかし、それが「電磁波の健康影響の全体を正しく把握している」のか、「真実である」かは、冷静になって、考えなければならない。
記;2010−11−17
平成22年11月4日(木) 日本科学未来館 みらいCANホールで開催された電磁界情報センター特別講演(ICNIRP議長パオロ・ベッキア氏)の「超低周波電磁界に関するガイドラインの改定について」の講演から抜粋
以下の研究が紹介された。
**************** *************
Wiedemannらの予防原則に関する研究
【抄録】
本研究は、プレコーショナリ対策の実施に関する情報の開示、および携帯電話分野における科学的不確かさの開示が、リスク認知および公衆健康防護に対する信頼に与えた影響を評価した。
実験に基づき、本研究は我々の先の研究知見(Wiedemann and Schutz 2005)を裏付けた。
その内容は、プレコーショナリ対策は懸念の引き金になり、EMF関連のリスク認知を増大させる可能性があるというものである。
また、プレコーショナリな対策の実施に関する情報は、公衆健康防護に対する信頼に肯定的影響を何も与えないことを今回のデータは再び示した。
このような結果は通常の期待には反するものであるが、プレコーショナリ対策の決定に当たってはこのことを考慮すべきである。
単に公衆を安心させる手段としてプレコーショナリ対策を実施しようとするリスク管理者はおそらく失敗するであろう。
たとえ公衆衛生上の全体的観点からプレコーショナリ対策が正当であるとしても、公衆に反対の効果が生じる可能性を予想して、備えるのが思慮深いといえる。
これは、リスクコミュニケーションにとって重要な2つの課題につながる。
第1は、ハザードとリスクの違いを明示すること、第2は、プレコーショナリ対策に関して良好なコミュニケーションを計画することによって、望ましくない回避を援助することである。
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記:2011−2−3
以下のニュースがあった。
※女性セブン2011年2月10日号に掲載された記事です。
************ 一部 引用 ************
“有機”“無農薬”をうたった野菜の危険性を東大教授が指摘
2011年2月2日(水)17時0分
「農薬は怖い。使わずに栽培したほうが安全に決まっている」という農薬についての思い込みは、大きな勘違いであると、東京大学・農学生命科学研究科教授の眞鍋昇さんはいう。
「農薬は恐ろしい毒薬…というのは、40年以上前の時代のこと。確かに当時は、農作物の病気や害虫駆除効果のみを重視し、安全性の検証がおろそかだったため、農薬を散布する農家の人たちに健康被害が出ました。
それを受けて1970年ごろから、米国の環境保護庁が中心となり、特に発がん性、催奇形性について検証。日本でも1971年に農薬取締法が改正になり、多くの農薬の製造・販売・使用が中止されました」
その結果、農薬は農林水産省によって、製造販売が厳しく規制されることになった。
「現在は、ひとつの農薬について約100億円もの費用をかけ、あらゆる安全性が徹底的に確認されるシステムになっており、安易に農薬が認可されることはありません。
いま、日本で認可されている農薬で、人体に危険なものはあり得ないのです」(眞鍋さん)
一方で、気になるこんな指摘もある。
「一般の農作物は、このような厳しい認可制の農薬によって安全が確保されているといえますが、『認可・登録されている農薬を使わない』有機や無農薬栽培の野菜は、裏を返せば、認可されていない、つまり安全性が確認されていない化合物を使っている可能性もある。
(略)
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記:2011−5−28
非常に含蓄のある記事なので、一部を引用して紹介します。
関心のある方は、全文を入手して読んでください。
産経新聞 2011年5月27日の記事 スキャナーとOCRでテキスト化
******************** ***********
小さな親切、大きなお世話 「安心病」の特効薬は 作家 曽野綾子
(略)
何度も書いているのだが、安心して暮らせる生活などというものを、人生を知っている大の大人が言うものではない。
そんなものは、地震や津波が来なくても、もともとどこにもないのである。
(略)
安心して暮らせる生活を、約束する人は嘘つきか詐欺師。求める方は物知らずか、幼児性の持ち主である。
前者は選挙中の立候補者にたくさん発生し、後者は女性か老人に多い。
自分で働いてお金を得ている人は、現実を知っているから、なかなかそういう発想にならない。
しかしこれほど多くの人が「安心して暮らせる生活」なるものが現世にあるはずだ、と思い始めているとしたら、それは日本人全体の精神の異常事態だ。
ことに、これだけの天災と事故が起きた後で、まだ「安心して暮らせる状況」があると思うのは、不幸な事態から何も学ばなかったことになる。
(略)
一方、国民の方は昔から原発を「絶対に安全なのか」という言い方で追いつめてきた。
「いや、物事に絶対安全はありませんから、事故の場合を想定して避難訓練もいたします」と原発側が言ったとすると「事故が起きる想定の下で、原発建設をやるのか⊥とやられるから、「原発は絶対に安全です」という子供じみた応答になる。
しかし物事に「絶対安全」ということはないのである。
今後いかなるエネルギー政策をやろうと、絶対の安全はないという認識が国民の側にもないと、物事は動かない。
もちろん安全は必要だから、より安全を執拗に目指すことは当然だ。
「安心して暮らせる」とか「絶対安全でなければ」とかは、共に空虚な言葉だ。
それはこの世に、完全な善人も悪人もいないのに、幼稚な人道主義者が、自分は善人でそうでない人は悪人と分けることと似ていて、こんな子供じみたやり方では、政治はもちろん、経済も文学も成り立ち見ない。
国民全体が知らず知らずに感染している「安心病」をまともな感覚にまで引き戻す特効薬はないものか。 (その あやこ)
****************************** *******************
記:2011−8−31
これも英語の原文の意味と、翻訳した日本語の意味が異なる例です。
「予防」という用語の邦訳
リスク管理の用語として,英語ではprevention(ハザードが既知である場合に用いられる)とprecaution(ハザードが未知或いは因果関係の知見を欠いている場合に用いられる)の両者が区分けして用いられる.
一方,日本語ではprevention に「未然防止」の邦訳を充てる場合もあるが,往々にして,両者とも「予防」の邦訳があてられる(例:予防医学;preventive medicine)。
電磁界の慢性影響は科学的に不確実なため,precaution が相当することになり,prevention では無い.
リスクコミュニケーションの際に両者を区分けすることの意義は,メッセージの正確性のほか,情報の受け手がpreventive
な意味での「予防」を想像することにより,偏った認知が形成される可能性を避けるということになる.
すなわち電磁界の健康影響でPreventiveの意味で「予防」という用語を使えば、電磁界の健康影響は「ハザードが既知」すなわち「電磁波に健康影響があると同定・評価された」という意味にとられてしまう。
「科学的な結論が出ない段階でも、結論を待たずに対処を検討する」ことがPrecautionの意味でありながら、このPrecautionを予防と翻訳し、この予防をPreventiveという意味の英語に再度翻訳した場合は、「電磁波の健康影響が確定した」という意味になってしまう。
「科学的な結論が出ない段階でも、結論を待たずに対処を検討する」ことがPrecautionの意味でありながら、和訳によって「予防」とされ、この予防はPreventiveの意味と解釈すると、「電磁波の健康影響が確定した」という意味になってしまう。
これは、誤った理解を与えることになる。
「予防」という言葉を使うたびに概念を定義するのはメッセージとして、煩雑になるため,precaution に相当する「予防」以外の適切な日本語訳を今後検討するという選択肢もあるであろう.
Precaution Princpleを「予防原則」と和訳せず、ある場合は「用心方策」と訳している文書もある。
とうことで、BEMSJはPrecautionという用語を 予防とは翻訳せず、プレコーションとカタカナ表記することにしています。
記:2011−9−3
以下はあるブログからの引用です。
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土壌のセシウムは原発からだけじゃない
日本のあちこちの土壌から放射性物質のセシウムが検出されたとの情報が多く目につきました。
じつは、これはある週刊誌に書く予定なので、詳細は書けませんが、この事象に関して気をつけねばならないのは、原因は2つあるということです。
1.周知のように、東京電力の福島第一原発の爆発事故。
そして
2.1950年代からの大気中核実験(アメリカ、旧ソ連、フランス、イギリスなど)。
今は、報道も市民団体もとにかく「原発が原因だ」と情報発信するだけです。
また、これを書いている。私も先月まではそう思っていました。
私は先月、福島第一原発の爆発事故により放射能汚染された汚泥から作られる「汚泥肥料」について取材していました。
その過程で、放射性物質と土壌との関係について長年調査をしている独立行政法人「農業環境技術研究所」に、汚泥肥料の使用での作物への危険性の有無を尋ねると、まず、返ってきたのが意外な回答でした。
「じつは、日本の土壌にはもう何十年もセシウムやストロンチウムが入り込んでいるんです」
どういうことでしょうかと尋ねると、
「大国の1950年代からの大気中核実験やチェルノブイリ事故などで、全世界に放射性物質が散らばっているんです。
日本の土壌には1キロ当たり、セシウム137は平均20ベクレル。
最大で140が蓄積しています。ストロンチウム90も最大40ベクレル。そこからの米も野菜も私たちは既に食べているんです」
これはある意味、衝撃の事実でした。
(略)
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この情報が解説される週刊誌の記事が いつ読めるのでしょうか?
詳細を読んでみたい ものです。
追記: 2011−9−26
上記の情報は 2011年10月3日号の週刊誌AERAに「汚染肥料 を 無償配布」という記事の中で、以下のように取り上げられています。
************** 一部 引用 ***********
「震災前の全国の農地のセシウム濃度は平均20ベクレル、最大値で140ベクレル。
米ソの核実験やチェルノブイリ事故などによるものです。
(略)
これに対し、放射性物質と土壌との関係について研究する独立行政法人・農業環境技術研究所の谷山一郎研究員は、
「かつての核実験で、ストロンチウム90は最大で40ベクレルが日本の土壌に蓄積しました。
その土壌でできた米も野菜も私たちはふだんから食べています」 と前置きしつつも、 (略)
***************** *************************
関心のある方は、当該のAERAを読んでください。
記;2011−12−29
福島原発事故(2011年3月)を受けて、放射線も問題に関してWEBで情報公開したり、全国各地で講演をしたりしている中部大学の武田邦彦教授のブログにあった内容です。
転載は自由に ということから、以下に転記します。
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2011現代被曝論1. 事故の頻度と被曝限度 (平成23年12月21日(水)) 武田 邦彦
安全委員会は、1)平時には1年1ミリが被曝限度、2)頻度の高い事故については1年1ミリ、3)炉心が損傷するような事故は1万年に1回だから1事故あたり5ミリ、4)格納容器が機能を喪失して放射性物質の閉じ込めができないような事故は10万年に1回だから、その時には1事故あたり5ミリをある程度超えても良い、というのが「事故前」の指針である。
この考え方を安全委員会は、「事故による線量と事故の発生頻度の兼ね合い」とし、その具体的な表現は 3)の場合「発生事故あたり実効線量5mSvを超えなければ、リスクは小さいと判断する」という表現を使っていて、4)の場合は「5mSvをある程度超えてもその「リスク」は小さい」としている。またこのような考え方は世界共通であり、イギリスの例を示す。
放射線曝露の許容値は以上の図に示すように、「容認できる範囲」すなわち「許容できる範囲」から安全指針値を定めている ことが判る。
記:2011−12−30
http://nikkan-spa.jp/95220 にあった内容です。 一部を引用します。
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日刊SPA
東大・早野龍五教授が考える「学校給食による内部被曝」
2011.12.16 ニュース
東大大学院の早野龍五教授がインターネットで、「給食から何Bq/kgが検出されたら弁当に切り替えるか」とアンケートをとったところ、2日間で7000件の回答があり、そのほとんどが「1、5、10Bq/kg」に集中した。
(略)
早野教授は「子供には1Bqでも内部被曝させたくない、というのは心情的には理解できます。
しかし、だからといってセシウムを全く取り込まずに生活するというのも無理な話。
大事なのは、長期的な内部被曝量の積算です。
現在、多くの自治体が導入している簡易検査機は検出限界値が高く、精度も低い。
例えば、検出限界値が30Bq/kgの場合、それ以上の数値が1回検出されるより、29Bq/kgを知らずに毎日摂取するといったケースのほうが深刻です」 と。
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この草野教授の最後の行に、リスクに関する考え方のヒントが隠れています。
とBEMSJは感じたので、この部分をこのページに紹介することにしました。
記:2012−3−22
1.以下のフォーラムが開催された。
開催案内から抜粋
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第6回電磁界フォーラム開催のご案内(3/21東京)
〜電磁界とプレコーショナリ原則(Precautionary
Principle)〜
電磁界情報センターでは、電力設備や家電製品などから発生する50/60Hzの電磁波(電磁界)に関して、さまざまな視点から議論する機会を設け、11回シリーズの電磁界フォーラムを開催しています。
第6回のテーマは「電磁界とプレコーショナリ原則(Precautionary
Principle)」です。
商用周波電磁界ばく露と小児白血病発症の可能性など不確実性のある電磁界リスクへの対応として、プレコーショナリ原則の適用が議論されてきました。
プレコーショナリ原則とは何か、プレコーショナリ政策とは何か、プレコーショナリ原則とプリベンティブ原則(Preventive
Principle)との違いは何か、プレコーショナリ原則を日本語で予防原則と訳す場合の問題点、更には電磁界問題への適用是非について、これまでの議論の経緯を振り返ります。
また、欧米や我が国で採用されているプレコーショナリ政策の事例を紹介しながら、電磁界リスク管理のあり方について理解を深めたいと思います。
このような趣旨から、下記のとおり電磁界フォーラムを開催いたしますので、多くの方のご参加をお待ちしております。
1.日 時:平成24年3月21日(水) 13:00〜16:30
2.場 所:日本科学未来館 みらいCANホール(住所:東京都江東区青海2-3-6)
4.プログラム
13:00−13:05 開会挨拶・事務連絡 電磁界情報センター 事務局
13:05−13:20 フォーラム開催の背景 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
13:20−14:00 電磁界とプレコーショナリ原則 株式会社野村総合研究所 長田 徹 氏
14:00−14:10 休憩
14:10−14:40 米国におけるプレコーショナリ政策の事例 電磁界情報センター 倉成 祐幸
14:40−15:10 欧州におけるプレコーショナリ政策の事例 株式会社野村総合研究所 長田 徹氏
15:10−15:30 日本におけるプレコーショナリ政策の事例 電磁界情報センター 小路 泰弘
15:30−15:45 休憩
15:45−16:25 質疑応答 司会 電磁界情報センター所長 大久保 千代次
16:25−16:30 閉会挨拶 電磁界情報センター 事務局
2.講演を聞いて気の付いた点
1)フォーラム開催の背景 電磁界情報センター所長 大久保千代次
・不確かな影響にどのように対処するか、低周波磁界曝露0.4μTでの小児白血病への対応 からプレコーションが浮かび上がってきた。
・用語の使い方、言葉の違いなどが大きい、これが本日のテーマである。
・その他はレジメを参照。
2)電磁界とプレコーショナリ原則 株式会社野村総合研究所 長田徹
・予防原則の定義は確定していない。同じ国でも時代によって定義が変わっている場合もある。
・予防原則とは何か、その定義を読むときに、1)どのような時に発動するか(発動条件)、2)どのように適用するか(適用条件)の二つを確認すれば良い。
・WHOの低周波電磁界に関するFact Sheet 322にはプレコーションという用語は使用されていない、しかし、「長期影響に関するガイダンス」の項に記述されていることは、プレコーションのことを記述していると解釈できる。
・欧州連合は2002年に「プレコーション原則は発動できない」とした。「プレコーション原則は環境、人、動物、植物の衛生に対して、生じうる影響が潜在的に危険であるとの示唆がある場合」に発動するとしているので、「電磁界が人の健康に対して潜在的に危険であろうとするはっきりした示唆がない」ためである。
・欧州連合は2009年の見解で、「一定レベルのプレコーションを含んだ曝露ガイドラインの防護の枠組み(理事会勧告1999/519/EC これはICNIRPのガイドラインを採用したもの)が労働者と一般公衆の双方に対して設定されている」と述べ、欧州連合としてプレコーションは適用していると、述べている。
(BEMSJ:ICNIRPのガイドライン採用がプレコーションであると述べていることになる。)
・「プレコーションを行うことが、かえって一般の人の不安を増加させる」というWiedemannの2005年の研究もある。プレコーションを実施すれば、「問題があるから実施したのだ」と解釈し、不安が増加する。
3)米国におけるプレコーショナリ政策の事例 電磁界情報センター 倉成祐幸
・アメリカの場合は、1999年のRAPID最終報告書の刊行で、低周波電磁界への関心は収まった、と言える。
・アメリカのPrudent
Avoidance(慎重なる回避と訳されるが、賢明なる回避の方が適切かもしれない)はMorgan氏らの提唱したもので、「それほど大きくないコストで、不都合を最小限に抑えて、実施できるのであれば、人々を電磁環境から遠ざけるべきである。しかし、電磁界を低コストで容易に回避する方法がない場合、躍起になって、無理なことを行うべきではない」という内容である。
<BEMSJ:この提唱の後半の部分は、紹介されたり、言及されたりすることは少ない。>
・アメリカ・アーバイン市の磁界規制の実情の紹介
アーバイン市の38区画を住宅地として開発しようとした時、この区画に隣接してサザン・カリフォルニア・エジソン社の高圧送電線があった。
住宅地としての開発に関する環境影響評価の中で、送電線からの電磁界の問題が提起された。
電磁界の健康影響ありとなしの意見があり、結論は出せなかった。
そこで、保守的に考えて、4mGまでは大丈夫として、4mG以内の場所の住所を送電線から離して建築することにした。
この規制で影響を受けたのは20件の住宅のみであった。
この規制は、この38区画に開発にのみ適用され、他の区画には適用されない。
アーバイン市で4mGの規制を市内全域に適用したとか、生活環境で4mGを超えてはならない という規制を行った などと言うことはない。
38地区の土地区画条例の中に記述されている。
・アーバイン市では携帯電話の基地局建設で、住居から150フィート(約50m)以内に建てる場合は、許可が必要である。
建てられないという情報は誤りである。
Q:カリフォルニア州の政策は今でも有効か?
A: そうです。
Q:カリフォルニア州教育局の政策で、2006年に例外規定を作ったとされるが、220kV以上の高圧送電線に関する例外規定はないのか?
A:カリフォルニア州では学校用地を確保しようとした場合、6万ボルトの送電線が多いので、これらを避けたいということで、除外規定を作ったというのが趣旨。
4)欧州におけるプレコーショナリ政策の事例 株式会社野村総合研究所 長田徹
・イタリアの例 予算規模の観点から磁界規制値を定めた。
・スイスの例 実行可能な値を規制値とした。
・オランダ:高圧送電線に対しては子供が滞在する場所では合理的に可能な範囲で避ける。その他については欧州勧告に同じ。
・スウェーデン:1996年政府5省庁の共同で、ガイダンスを発行。規制値はなし、費用対効果を考慮。
・イギリス:相最適化などを実施
・ドイツ:法令としては疫学の結果は規制値に引用できない。可能な限り曝露を低くする。
・フランス:2010年に長期の健康影響を示唆する科学的な証拠は不十分であり、曝露制限値の修正は正当化できない。当面の策として、高圧送電線の近くには新たな子供のケア施設は設置しない。
Q:スイスは送電線からの磁界規制だけか?
A:送電線のほかに対象として電力設備が含まれる。
Q:スウェーデンでは1996年の5省庁のガイダンスの前に、何か規制や予防原則に関連する動きがあったのではないか?
A:1996年以前に何か、コメントは出しているかもしれない。スウェーデンの電気安全委員会が電力会社宛に規制に関するコメントを出したという情報を聞いたので、そうした文書があるかと放射線防護庁に聞いたが、「そうしたものはない、コメントみたいなものは出しているが、公文書ではない」ということであった。
5)日本におけるプレコーショナリ政策の事例 電磁界情報センター 小路泰弘
・日本の電力設備電磁界対策WGでの健康内容を紹介
日本の場合のプレショーン政策は1)更なる研究 2)リスクコミュニケーション活動、3)曝露低減のための低費用の方策 である。
Q:日本における送電線の逆相配列の実施は92%となっているか、今は?
A:電力WGの報告書のデータを紹介したもの。
Q:日本における「さらに磁界の低減策」に関しては?
A:多くの電力会社は逆相化などを行っているが、これらをきちんと実施していくのではないか。
Q:日本のプレコーション政策としてリスクコミュニケーションとある。マスコミに対する指導と言うか教育も必要ではないか?
A:おかしければ報道機関に連絡をしたり、マスコミ向けのレクチャーを行ったりしている。
Q:日本における「更なる研究」とは?
A:電中研で新たな研究手法として白血病の研究が提案されている。研究者と共同で、「研究提案」をまとめようとしている。
6)全般的な質疑応答
司会:話題提供として、WHOの動きを紹介。WHOではプリコーションの枠組みをまとめようとしていた。2003年にはドラフトを作った。2006年には採択寸前までになっていた。しかし、WHOは「あくまでも科学の論拠で行うべし」となり、WHOのプレコーション政策は凍結された。
Q:本日は低周波の電磁界に関するプレコーション政策の話であった。高周波に関しては?
A:総務省の報告書に含まれているはず。
Q:総務省の報告書は目をとおしている。
A:検討してみる。
Q:疫学の結果に対する本日の講演は参考になった。韓国、台湾などでの動きは?
A:韓国にヘアリングをしたが、プレコーションは行っていない ということであった。
A:ソウルで講演を行ったことがある。市民グループも参加した論議で、プレコーションと言える。
Q:国が研究すべきと提言を行ったのか?
A:本日の講演では、電力WGが政策提言を行った内容を紹介している。
国に研究を進める具体的な動きはない。そこで何らかの研究提言を行いたい。
Q:予防原則という用語に関して、マスコミや地方議員、市民団体がどのように定義して使用しているのかを、調査しては? 海外でプレコーションを誤って使用した例があったか?
A:プレコーションは定義がない。BSEの問題ではプレコーションでイギリスは大損害、反面フランスとドイツは儲けた。こうしたことでは駄目であろう。違和感を持つ国が出てきた。
Q:アーバインの紹介があった。これはアメリカでは一般的な動向か?
A:アメリカは連邦法の磁界規制はない。州法の規定がある州もあり。今回紹介したアーバイン市は特殊な事例。アーバイン市の38区画という特定の区画での住宅開発に限定した動きである。アーバイン市は全市で4mGの磁界規制値を作ったとよく誤解されるが、そうではない。
A:高周波に関しては、アメリカではFCCが国レベル規制を行っている。低周波に関しては連邦による規制がなく、電力会社はコンプライアンス対応に苦慮している。
*関心のある方は、このフォーラムのレジメを入手して読んでください。
記;2012−5−9
以下はBEMSJの切手コレクションの中のチェルノブイリ原発事故の頁です。
チェルノブイユ原発では、事故を起こした4号機を除き、1号機から3号機まではその後も発電は行われ、全ての発電が終了したのは2000年12月15日であると、判っています。
事故を起こした原子力発電所の他の号機がその後も運転がなされていたことは、驚きでした。
その事情に関心を持っていました。
Wikipediaによれば、事故後の運転に関して
*********************
チェルノブイリプラントのトラブルそのものは4号炉の惨劇で終わったわけではなかった。
ウクライナ政府は、国内のエネルギー不足のため残った3つの原子炉を運転させ続けた。
この時のウクライナ政府は財政難で新規の発電所の建設が困難であったため、チェルノブイリ原子力発電所をそのまま使わざるを得なかった。
1991年に2号炉で火災が発生し、政府当局は炉が修復不能なレベルまで損傷していると宣言して、電源系統から切り離した。
1号炉は、ウクライナ政府とIAEAのような国際機関との間の取引の一部として、1996年11月に退役した。
2000年11月に当時のウクライナ大統領・レオニード・クチマ本人が公式式典で3号炉のスイッチを切り、こうして全プラントが運転停止した。
***********************
とある。
チェルノブイリ原子力発電所は
1号機 運転開始:1978年5月 終了:1996年11月
2号機 竣工:1978年 終了:1991年
3号機 竣工:1981年 終了:2000年11月
4号機 竣工:1983年 事故:1986年4月 という運転履歴がある。
関連する情報が、2012年5月6日の産経新聞に掲載されていた。
「国内全原発が停止」という見出しの中の記事の中で
*****************************
「このままではウクライナの二の舞になる」 そう指摘するのは北海道大の奈良林直教授(原子力工学)だ。
奈良林教授によると、ウクライナは、旧ソ連時代に起きたチュエルノブイリ原発事故を受け、1990年に国内の全原発を停止させた。
しかし、その結果、電力不足が慢性化。
計画停電が行われたほか停電も頻発した。
経済は低迷し、結局、93年には原発再稼働へと方針転換することになった。
*********************************
BEMSJ注: かなり複雑であるが、リスクを考える上での参考になる資料と思われる。
追記:2012−8−23 追記:2012−10−18
産経新聞 2012年8月14日に以下の記事がありました。 一部引用して紹介します。
*********************** *************
チェルノブイリの失敗と教訓
論説委員長 中静敬一郎
東京大学総長、文相などを歴任した原子核物理学者の有馬朗人さん(81)は、先月中旬、中学校の理科の教諭らとともに現地入りし、いまなお続くウクライナの苦闘と爪痕に改めて驚かされた。
1986年、チェルノブイリ原発が暴走の未、炉心溶融(メルトダウン)により爆発した。半径30キロ圏内の住民は強制移住させられた。
このとき、ソ連政府は退去基準を年間100ミリシーベルトにし、その後、段階的に20ミリシーベルトにした。
だが、ソ連崩壊に伴い、独立したウクライナ政府は一挙に5ミリシーベルトに下げた。
過度に厳しい基準と指摘されたが、「独立に際し、ソ連から少しでも多くの賠償金を引き出そうと思ったのです」 (政府関係者)との打算だった。
だが、その結果は、強制避難の対象区域や人口が極めて大きくなったうえ、避難した住民は新たな環境に適応できず、大きな負担を強いられた。
政府の補償や支援策は国家予算の1%を占め、さらに補償は既得権と化し、基準などの見直しは困難になっているのだという。
興味深いのはウクライナが原発を稼働させていることだ。
現在、15基が運転されており、エネルギー全体の原発依存率は47%で、世界第4位だ。
その理由も「エネルギー資源がないからです。
ロシアからの天然ガスは不安定さが残っている。
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関心のある方は、この新聞記事の全文を入手して読んでください。
記:2012−5−22
以下は化学物質に関するリスクの情報です。
科学的に考えるということで、電磁波のリスクを考える時に、参考になると思われる。
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/
食品安全情報blog からの引用です。
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[FSANZ]主任科学者のデスクから
From the desk of the Chief Scientist
May 2012
http://www.foodstandards.gov.au/scienceandeducation/scienceinfsanz/fromthedeskofthechiefscientist/
Dr. Paul Brentのコラム
化学物質の安全性についての恐怖は新しいものではない。
今日の世界ではこの恐怖は、しばしば化学物質のいろいろな病気との関連や動物実験からの推定をしている報告の発表により引き起こされる。
これらに報告にしばしば欠けていて、人々が認識していないことは毒性学の基本である「毒かどうかは量による」ということである。
大量に摂らなければヒトにとって有害影響はない物質がごく微量存在するというだけで心配だとされる。
さらに天然に同じ物質が存在していても合成物質の方が心配だとみなされる。
多くの化合物は合成でも天然でも有害影響をもたらし得る。
実際、多くの、少量なら健康に必要な天然物質は、例えばビタミンAは、大量に摂ると重大な有害影響をもたらす。
規制担当者が説明しなければならない最も重要な概念の1つは、ヒト健康リスクはハザードと暴露(食品の場合は食事からの暴露量)の積であるということである。
ハザードについてはWHOのような国際機関によりある物質が有害影響をもたらす可能性と定義されている。
例えば我々は鉛のような重金属は胎児に有害影響をもたらし、鉛への暴露はヒト健康や安全に大きなリスク(リスク=ハザード x 暴露)となることを知っている。
重金属などのような化学物質は天然に環境中に存在し、ごく微量の暴露は避けられない。
問題はこれらの物質を合理的に達成可能な限り低く(ALARA原則として知られる)維持するためのリスク管理戦略を開発してリスクを緩和することである。
たとえ重金属であっても、暴露量が少なければリスクは低い。つまりここでも問題は「有害かどうかは量による」。
暴露量が極めて少なくとも恐怖が惹起されている物質の例としてBPAがある。
BPAは食品や飲料の容器を含む多くの製品に長い間安全に使われてきた。
BPAは内分泌や生殖系(一部の科学者はBPAを「内分泌攪乱物質」とみなす)、心血管系疾患、糖尿病、がんなどの多くの有害影響と関連づけられそのリストはさらに拡大中である。
しかしながら最近の米国FDAや欧州EFSAなどによる包括的リスク評価ではBPAのハザードは小さく暴露量も少なくヒト健康や安全性にとってのリスクは極めて小さいと結論している。
食事からの暴露量の重要性を強調すると、食品中に存在するBPAの濃度はppbレベルであることが明確に示されている。
肝臓の酵素はBPAを極めて効率よく代謝し、99.9%を無害なものに変え尿中に排泄させるため、全ての年代の人々の暴露量は極めて少ない(ppbからpptレベル)。
そのような微量ではヒト健康や安全にリスクとなる可能性はほとんど無い。
世界中の規制機関の課題は、なんらかの報告が発表されたときの情報のギャップを埋めることである。
我々は人々が理解できる言葉で消費者の懸念に科学を伝えなければならない。
FSANZはBPAを含む一連の化合物について消費者向け情報を準備している。ファクトシートのページから見ることができる。
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記;2012−7−26
http://diamond.jp/articles/-/22018 にあった記事です。
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TOP 経済・時事
高橋洋一の俗論を撃つ!
【第44回】 2012年7月26日
構図の似るオスプレイと原発問題をリスクとリターンの視点で考える
オスプレイの日本配備について自治体などから反対の声が上がっている。
岩国に陸揚げする様子もテレビ報道されるなど、全国的に過熱気味である。
実は、オスプレイと原発の構図はよく似ていて、人間の作る技術である以上、絶対の安全はあり得ず、リスクは常に存在し、それに対応するリターンとの関係で意思決定せざるをえない。
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以下、関心のある方は、ダイヤモンド誌を読んでください。
記;2012−7−26
http://www.jsse.or.jp/ 安全工学会のサイトにあった2002年とかなり古い記事です。
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セーフティー・はーと 2002/02/18 第15号
絶対安全からリスク評価安全へ
システム安全研究所 高木伸夫
絶対安全」は「リスクゼロ」と同義語であり、リスクがどんなに小さくても、また、社会にどんな便益をもたらしても許容されないことを意味している。
絶対に安全な世界は現実には存在しないし、また、科学的にも実現不可能である。
欧米においてはリスク概念に基づき社会的合意を形成することが古くからなされているが、日本においては絶対安全の考えが長い間浸透しており、リスク概念の取り込みが未成熟であった。
しかし近年、情緒的な「絶対安全」議論から抜け出すべきだという動きが進展しはじめている。
たとえば平成12年2月に日本学術会議から報告された「安全学の構築に向けて」において、“安全を議論し、それを有効なものとするためには、「絶対安全」から「リスクを基準とする安全の評価」への意識の転換が必要である。”としている。
この提言と平行するように官民においてリスク評価あるいはリスクアセスメントに対する関心が高まり種々の研究や検討会が開催され始めている。
ようやく山が動き出したという感がある。
(略)
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関心のある方は、安全工学会のサイトから、全文を読んでください。
記;2012−7−29
BEMS会員ニュース2002年Jan/Feb号に以下の予防原則に関する情報が記載されています。
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予防原則
*アメリカ政府は「予防原則」を支持する。しかし、「世界で統一的な予防原則」には賛成しない。
*ゼロリスクはありえない。
*予防原則をやりすぎると、技術の進展が不可能になる。1850年を思い出せば、リスクが皆無であることが判るまで何もしないというのであれば、今の技術の進歩(電気、内燃機関、医薬品など)はなかったであろう。
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関心のある方は、上記の会員ニュースの全文を読んでください。
記:2012−7−29
http://takedanet.com/2008/10/post_6ee2.html にあった内容
URLから2008年10月の投稿と推定できる。
一部を引用して紹介します。 関心のある方は、オリジナルのサイトを見てください。
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予防原則がもたらしたもの
はじめに
現代の日本の環境問題(リサイクル、ダイオキシン、環境ホルモン、温暖化など)のほとんどが幻想であることの原因の一つが、予防原則の存在であり、予防原則自体が環境破壊の原因となる可能性があり、また日本の誠実な文化を根底から崩壊させる可能性も含んでいる。
予防原則とはどういうものなのか、それは何をもたらしてきたのか、現状から簡単に振り返りたい。
1. 予防原則の成立
予防原則(Precautionary principle)は1992年にリオデジャネイロで宣言されたいわゆるリオ宣言第15原則に端を発する。
その内容は、「重大な、或いは不可逆的な損害の恐れがあるときには、完全な科学的確実性に欠けていることが、環境悪化を防ぐための費用効果的な対策を延期するための理由として用いられてはならない」というものである。
この予防原則に補完するものに「代替原則」(より有害性の低い代替物質への代替を検討する)や「未然防止」(因果関係が科学的に証明されるリスクに関して、被害を避けるために未然に規制を行うこと)などの用語がある。
予防原則はその定義から明らかなように科学的根拠が薄弱であり、従って誤りの頻度が高いと予想されるので、すでに2000年2月にはEUで予防原則のガイドラインが検討されている。それは、
1) 釣り合いが取れていること
2) 不公平な取り扱いをしないこと
3) 首尾一貫性
4) 対策の有無による便益と費用の検討
5) 科学的知見の発展についての検討
である。
つまり、予防原則を盾に、何でも規制強化を言うのは誤りであり、リスク、
代替リスク、便益、コストなど、様々な側面を吟味し、適切な管理をすべきであるとの内容を含んでいる。
日本では「学問の自由」などのように輸入された概念と同様に、予防原則だけが無批判に取り入れられたために、EUのガイドラインに相当するものはなく、かつその概念も無い。
2. 予防原則の実施
予防原則の普及と実質的な環境問題の終焉の時期が1990年付近と同一になったことが問題ではあったが、ともかく歴史的には1990年頃から予防原則に基づく「環境破壊の予防的規制」が盛んに行われるようになった。
日本におけるほぼ第1号と考えられるのは「リサイクル」で、このまま進むと8年後には廃棄物貯蔵庫が満杯になるとの予想から予防的な措置としてリサイクルが始まった。
第2号はダイオキシンであったが、日本には一人の患者も発生していなかったが、体内蓄積などによってほぼ20年後にガンが多発すると予想されて、予防的な措置を講ずるための法律が整備された。
第3号は、一時的な規制に留まったがオスがメスになるなどの影響があると考えられた環境ホルモン『内分泌攪乱物質』で次世代への影響、つまり30年後ぐらい将来の為に予防的な規制の必要性が強調された。
もともと科学的現象である環境ホルモンという名称自体がマスメディアによってつけられたことは、予防原則が「科学的根拠薄弱」ということを示している。
従って、データの一部に強い疑念が示され(たとえば男子精子数の減少など)、現在ではほとんど問題にはされていない。
そして4番目に100年後の気温上昇を予防的に低減するためにCO2の削減が実施されようとしている。
気温上昇による現実的な環境破壊は、現在、一部に見られるものの、世界全体で対策を講じるとか、人類の文化が滅びるというような大がかりなものではない。
しかし、予防原則に沿って100年後の環境破壊に備えようとする動きが見られる。
予防原則は「科学的根拠が薄弱で、真に環境破壊が来るかどうかは不明である」というのが前提であるが、このような予想された環境破壊は、それが社会問題になると、あたかも科学的根拠があるように報道され、認識されるということになった。
事実、家庭ゴミの体積の過半を占めるプラスチック類のリサイクルは現実に1から2%しかされていなかったが、それでも廃棄物貯蔵所が逼迫するという事態を招かなかった。
またダイオキシンでは患者は相変わらず0であり、将来も出ないと予想されている。
(略)
おわりに
予防原則の実施は、さまざまな問題を起こしてきた。
その評価を至急、冷静に行うことが環境を深く考える上で最重要課題であると考えられる。
特に、「予想」においてはどうしても厳密性は求められないことから、責任ある立場の人や、若い専門家が自らの目先の利益だけを考えて言動を替えることも、予防原則の登場とともに表面化してきたように感じられる。
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記:2012−10−16
たばこ総合研究センター 発行、「談」No.91 2011年7月 は「特集 理性の限界 今 科学を問うこと」の特集があり、
平川秀幸の「科学における公共性をいかにつくりだすか・・・・ 統治者視点/当事者視点の相克」という記事が掲載されています。
難解で、読むのは大変ですが、以下のリスクコミュニケーションの例は、参考になると思い、部分的に以下に引用します。
関心のある方は、この本を入手して、全文を読んでください。
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人々が何を不安に思い、何を求めているのか、声を聞かなければならない。
そのうえで、科学者、行政と市民が双方向の対話をしながら物事を決めていく。
結局、その後、そのような対話型のコミュニケーションやそれを通じての政策決定を重視する方向へ大きく転換していくことになります。
それをイギリスではpublic engagementという言葉で表しました。
publicというのはなかなか日本語になりにくい言葉で、単に市民と訳すと狭すぎるし、いろんな側面があるんですが、あえて訳せば「公共的関与」でしょうか。
社会と科学がよりインタラクティブに関与し合い、政策を動かしていこうと、イギリス政府、科学界自身が考え方を変えたのです。
遺伝子組み換え食品については、その後2000年代に入ってイギリス国内で商業栽培をするかどうか、いくつかの評価を行っています。
一つは科学的な評価で、食品としての安全性、それと栽培に伴う環境への影響。
環境への影響については、実物で実験してみないとわからないというので、実際に畑に植えてみて、生態系にどういう影響を与えるか3年程度フィールドスタディを行いました。
もう一つは、遺伝子組み換えを導入した場合にどんな経済効果があるかという経済評価。
それに加え、国民の意見収集・協議(public consultation)として、全国討論会も実施しました。
討論会は"GM Nation?“ (GM:遺伝子組み換え)と名付けられ、2万人ほどが参加しました。
この討論会を主催した政府の側には、それによって遺伝子組み換え作物に対する人々の態度が好転するのではないかという期待もありましたが、結果は逆でした。
国内での遺伝子組み換え作物の栽培については、否定的な意見の方が多かったのです。
つまり、正しい知識を学んでもらったり、対話を重ねていけば不安はなくなるだろうという期待は完全に裏切られてしまったのです。
参加者としては、”GM Nation?“に参加していろいろ勉強したら、むしろわからないことや不確実なことの方がたくさんあることがわかってしまった。
遺伝子組み換え作物に対して、否定的に見る人の方が多くなってしまったんです。
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記:2012−10−21
関西電力 発行「躍」2012年第14号に、東大の中川恵一准教授が「リスクのものさしを持ち、正しく怖れる」という記事を書いています。
福島原発に関連する放射線に関する解説であるが、その中に、リスクに関する面白い話が載っているので、一部を引用して、紹介します。
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さらに言えば、多くの人が「癌は怖い」と一括りに考えがちだが、癌にも「怖がるべき痛」と「知らぬが仏の癌」がある。
例えば甲状腺癌は、60歳以上の8〜10割が持っているが、一部の種類を除けば非常に進行が遅く、5年生存率は98%。
大半の人が気づかないまま一生を終えるほど「穏やかな」癌だ。
この甲状腺癌が今、韓国で急増している。
検診ブームで超音波検査を受ける人が増えたため、甲状腺癌の「発見」が増えたためだ。
日本も他人事ではない。今、福島で甲状腺癌の検査を行えば、韓国と同様、多くの人から癌が「発見」されるだろう。
もちろんそれは原発事故によって増えたわけではない。
しかし「もともとそういうものだ」と知らなければ、大パニックが起きてしまう。
放射線被ばくという目の前のリスクは確かに怖い。
だが、それを過大評価して無闇に避けようとすると、その背後に広がる膨大なリスクの山に踏み込んでしまいかねない。
9・11後、アメリカでは飛行機が敬遠され、確率的には飛行機よりはるかに危険な自動車を使う人が増えた結果、交通事故死が急増したという(直後の3カ月で前年同期比約1000人増)。
3・11後は安心のためにと見知らぬ土地に避難したことで、不慣れな環境で心身共に負担がかかるという別のリスクを背負い込んでしまったという話も聞く。
本当に怖れるべきものは何か、リスクが大きいのはどちらかという、冷静なリスク評価ができないと、結局自分が不幸になってしまう。
そんな悲劇を繰り返してはならない。
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関心のある方は、当該の雑誌を入手して、全文を読んでください。
記;2012−11−3
「ぷろどおむ えあらいん
元サッカー少年で今はしがない化学屋のぷろどおむが,某SNSなどで書き殴ったコメントをまとめています。」 というブログ
http://preudhomme.blog108.fc2.com/blog-entry-140.html
にあった内容をブログ管理者の了解を得て、以下に転載します。
非常に含蓄のある、私のこのページも利用して下さっている、論です。
関心のある方は、上記のサイトに直接アクセスしてください。
******引用 **********************************
日本における予防原則の適用はなぜ難しいのか
投稿日:2010-01-05
みなさんあけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
さて,sekaiさんから,かなり前に書いた電磁波関連のエントリについてコメントをいただきました。
どうもありがとうございます。
「市民がその安全性について判断するには、海外政府や自治体がどう動いているかということも参考にします。
基準がどうであれ、低減対策をまともにとっていない、とってこないのは日本だけです。
”因果関係が証明されるまで” 野放しですね
たとえば、携帯電話もヨーロッパでは子供の使用に脳腫瘍などの心配があるかもとして、すでに警告や勧告を出していますし、フランスでは法規制までしたそうですが、日本は「脳腫瘍や白血病にかかりやすいかをこれから疫学調査する」ということで実験台です。
アスベストにしろ、何にしろ、日本は国家をあげての実験が好きなんですね。
なんで世界がこれだけ利害関係があるものにもかかわらず規制してるか?それはそれなりの懸念や根拠があるからでしょう。」
個人的には、設定された基準には科学的に明確なエビデンスが存在し、そこからさらに安全係数をかけた値が設定されているわけですから、より明確なエビデンス無しに基準を厳しくする必要性を感じません。
もちろん基準をクリアしている事例にも規制をかけたい、と言うご意見にも同調できかねます。
とは言え,欧州に比べ,この手の話についての日本の対応は遅すぎる、という批判は電磁波に限らず非常に多いです。
これは、済性だけを重視しているとか大企業の陰謀だとか、本の政治家や官僚が腐っているとかそう言う話ではなく、わゆる「予防原則」というものをどの程度適用しようとするかどうか、言う点が異なっているだけなのだと思っています。
欧州は世界中のどの地域と比べても,この予防原則を徹底的に適用しようとする傾向が強い地域で、RoHSやREACH規制を上げるまでもなく、化学や環境関連の規制も非常に厳しいことはよく知られています。
もっとも、これらの規制が、おおっぴらに使える非関税障壁として機能している点も見逃せないわけですが、とにかくこの手の規制に欧州、というかEUが一番熱心なのは事実です。
先ほどあげた「電磁波の記事」にもコメントしてくださっているBEMSJさんは、ご自身の「Webページ」で、長年電磁波の健康影響についてくわしく解説されているのですが、その中で「予防原則」についても、具体的な例を挙げながら、非常に詳しく説明されています。
多少長いですが、非常に興味深い事例がたくさん紹介されており、このような話題に興味のある方であれば、必読だと思います。
また,他のページでは今回話題にしている高圧送電線などから発生する電磁波(非電離放射線)の健康影響についての「論文や報道に関する解説」が、これも細かく書かれています。ぜひ,ご一読ください。
さて,sekaiさんご指摘の通り、EUでは(法的拘束力がないとは言え)警告や勧告などが出されているような問題(電磁波に限らず)についても、日本では「予防原則」が採用されないようなケースが多いように見えます。
では、なぜ採用されないのでしょうか。やはり大企業の陰謀なのでしょうか。
結論から先に言います。
残念ながら、現在の我が国は「予防原則」を積極的に適用するような環境では無い、というのが一番の原因だと思います。
もちろん採用されにくい理由のひとつとして、経済的な影響を考えているという部分があるのは事実でしょうが、それは欧州でも同じはずです。
ですから、陰謀論を捨てて冷静に考えれば、日本だけ二の足を踏み続けている理由とは考えにくく、何か他に理由や事情があるのではないかと考えるのが普通だと思います。
私は、先ほど紹介した「予防原則」のページにおいて、一番最初に指摘されている「この部分」
「科学的な論拠が明確になっていない段階でも、政策の決定権限を持つものはこの予防原則に基づいて、危険を予防する。」というものです。
但し、「一度予防原則に基づいて決定した方針であっても、関連する科学の研究を常にチェックし、必要に応じて、決定した方針は見直すべき」という条件が付加されています。
つまり、状況の変化=新たな科学的エビデンスの登場に応じて「適宜見直しをする」と言う部分が非常に苦手であることが、日本が予防原則を適用することに二の足を踏む大きな理由なのではないかと思っています。
「予防原則」を「予防原則」としてきちんと適用するためには、その規制が「あくまでも予防的措置である」ことのコンセンサスが取れていなければなりません。
つまり、その規制は科学的なエビデンスがきちんと得られた時点で解除されるのが当然である、という理解です。
しかし、先日のエコナの事例を見るまでもなく、このようなコンセンサスは残念ながら今の日本の消費者には存在していないように感じます。
たとえばエコナ問題についても、ちょっと検索してみれば解ると思いますが「後ろめたいことがあるから販売停止したんだろう」「販売停止したと言うことは、エコナに発がん性がある動かぬ証拠だ!」と弾劾する声ばかりで、私が「以前のエントリ」で指摘したような「花王はリスクマネジメント的に安全側に振った=予防原則を適用しただけである」というような意見はほとんど見つけられません。
しかも、一番救いようがないと感じるのは、パニック状態にあった当時ならいざ知らず、十分にパニックが過ぎ去った現在においてすら、このような内容の報道も解説も、ほとんど無いということです。
花王が、エコナをトクホに申請する際に、二年間の長期発がん性試験を行い、それをクリアしているという事実を報道したマスコミがあったでしょうか。
ある程度冷静な解説が書かれたほとんど唯一と言って良い例である(すっかり紹介するタイミングを逸してしまいましたが)「遺伝子組換え食品の話」の時にも出てきた毎日新聞の小島記者の「コラム」ですら、この事実には全く触れていません。
しかも、私としてはまだまだ偏りが見えてしかたがないこのような記事ですら、「どうせ広告が欲しいだけだろ」と批難をする人は後を絶ちません(もっとも、毎日新聞の場合は、他の記者がアレ過ぎる記事を書きまくっていると言う点で、多少自業自得の部分があるように思います・・・・・小島記者には災難なことですが(^^;)。
このような現状で、それこそ企業の息の根を止めかねないような判断を行政側がするのは、非常に勇気のいることだと言わざるを得ません。
あまつさえ、今回話題としている高圧送電線や携帯電話から発生する電磁波(非電離放射線)が及ぼす健康影響などは、明確なエビデンスがほとんど存在していない上に、影響する範囲がとてつもなく広い問題です。
正直、このような事例に厳格な予防原則を適用するのは、ちょっと考えられないくらいの冒険です。
ろくなエビデンスもないのに、国や閣僚がうかつなことを言ったり規制したりするととんでもないことになるというのは、かの「O157 カイワレ事件」を思い出すまでもなく、多大な悪影響を社会に及ぼすのですから慎重になって当然だと思います。
また、本で予防原則を積極的に適用するのは無理ではないか、私が強く思わされる事例として一番わかりやすいのは、牛のBSE全頭検査に関する問題です。
肉牛に対する全頭検査も、ある意味予防原則に則って採用された対応策であったわけですが、この方策によりあり得ないレベルで起こっていたパニックが沈静化したのは事実です。
しかし、現在すでに数々の科学的なエビデンスが全頭検査の不要を証明しています。
それにもかかわらず、未だに各自治体では全頭検査が続けられ、貴重な税金が浪費されています。なぜでしょう。
それはもちろん「全頭検査が必要だ」と訴えている消費者が数多くいるからです。
一応、マスコミ報道でも全頭検査が意味のないことであるという意味の内容が解説される時もあります。
しかし、かつてBSEの危険性を訴え続けてきた時ほどの熱意はとても感じられません。
また、すでに発祥国であるイギリスですらBSE由来のCJD(=vCJD:変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)による死亡者の発生はほぼ終息していることなんて、「動物衛生研究所のWebページ」などにしか情報がありません。
これは、全頭検査などしなくても危険部位の除去だけでBSEの影響は抑えられるという事実を示す、大きなエビデンスです。
それなのに、どうしてどこのマスコミも報道しないのでしょう。
ここには、「騒ぎと不安を煽るだけであっても、とにかく大きな話題になればよい」としか考えないマスコミの体質と、根強く広がるゼロリスク信仰、そして科学的リテラシーの不足やリスクマネージメント的観点の欠如など、様々な問題がその理由としてあげられると思います。
しかし、このような問題点が列挙できたとしても、これらを克服するのは、一朝一夕で出来ることではありません。
「予防原則」の理念は、我々の健康や安全を守る上で非常に重要な理念であることに異論はありません。
しかし、強力であるが故に、使い方を間違えると痛い目に遭うどころか、害悪にしかならないこともあり得る諸刃の剣であることも事実です。
少なくとも、これほどまでに明確な事例であるBSE全頭検査の不要性ですら、社会一般からすんなりと受け入れてもらうことができず、またマスコミも積極的にその事実を広めようとしていないという状況を考えると、現在の我が国は「予防原則」を積極的に適用するような環境にないと判断せざるを得ないと思います。
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記;2012−11−3
地裁判決の要旨
地裁判決の要旨を入手しました。 OCRでテキスト化し、以下に紹介します。
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判決趣旨
(主文)
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
(理由の骨子)
1. 本件は、被告が宮崎県延岡市大貫町5丁目の土地に設置した携帯電話基地局の周辺住民である原告らが、被告に対し、本件基地局から放射される電磁波により健康被害が生じていること等を理由に、人格権に基づいて、本件基地局の操業の差止めを求めた事案である。
(略)
6 原告らは、過去の公害事件などを教訓に、人に対して重大かつ回避困難な被害が見込まれる場合には、被害の発生について科学的に相当な根拠が示された場合であれば、科学的なメカニズムが完全に解明されていなくても、司法は率先して予防原則による差止請求を認めるべきであると主張する。
しかしながら、立法がなされていない現時点において、そのような予防原則を差止請求の裁判上の判断基準として採用することはできない。
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記;2012−12−28
リッカルド・カショーリ/アントニオ・ガスパリ著 草皆伸子訳 洋泉社2008年発行
の本の中に、「予防原則の罠」という章がある。
一部を抜粋して紹介する。
関心のある方は、原著を読んでください。
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3、予防原則の罠
リスクを伴わない人間活動があるはずだという間違った確信
パンや野菜や肉、その他の生活必需品を買うために家を出て、道路を横断しなければならないと仮定しょう。
横断歩道のあるところまで行き、注意深く左右を確認し、道路を横断する。必要な買い物をすませたあとは、帰路も同様にする。このような行為が慎重であること、最近の用語を使えば「予防的」であることに同意をしない人はいないだろう。
さて、いっそうの安全を期すために、遭遇しうるリスクの特性と規模を、道路を横断する前に確認することにしたと仮定しよう。
というのも、道路の横断中に車に轢かれた歩行のニュースを見たことを思い出したからだ。
家に戻って、交通事故に関するデータベースを片端からインターネットで検索する。
インターネットの接続料もバカにならない。
それはともかく、イタリアでは毎年1万6000人の歩行者が車に轢かれていることを知り、愕然とする。
1日あたり45人だ。
1万6000人のうちの800人以上(6%)は死んでいる。
道路を横断することがわたしたちの個人的安全にとって危険な行為であることは間違いない。
ならば、事故に遭った時のことを考えると怖いから、道路を横断することは諦めて家にいることにしよう。
それに、調べるのに何時問もかかったからもう店も閉まっている−これが今日理論化され、適用されている「予防原則」の正体だ。
このような考え方がいかに馬鹿馬鹿しいものであるか、読者は直感的に理解できるだろう。
馬鹿馬鹿しさの理由はおもに二つある。
まず、リスクをまったく伴わない人間活動があるはずだという確信がこのような考え方の根底にある点だ。
そんなことはまったく非現実的で、どんな人問活動にもリスクはある。
二点目は、自動車に轢かれる潜在的リスクだけをもとに判断することは、それ以外のファクターを考慮に入れないことを意味する。
たとえば、食べたり、着たりすることの必要性。食べなければ餓死するリスクがあるし、着なければ凍死するリスクがある。
あるいは、運動することの必要性。
運動しなければ、筋肉が萎縮してしまうというリスクがある。
ことごとく外れた扇動的災害論者たちの予想
「予防原則」という考え方は、「未来に対する恐怖」と換言することができるだろう。
世界規模の環境・衛生政策の根拠として理論化され、適用されるずっと以前からこのような考え方があったことは、歴史上多くの例から確認することが可能だ。
たとえば、1825年にリヴアプールーマンチェスター間の鉄道開通を許可する法律が可決された時、イギリスの民衆は集団ヒステリーのような反応を示し、大規模な反対キャンペーンを行った。
大量のパンフレットがばらまかれ、新聞にも多くの記事が載った。
イギリスの鉄道の父、ジョージ・スティーブンソンの伝記を書いたサミュエル・スマイルズはこう書いている――「鉄道が開通したら牝牛は乳を出さなくなり、雌鳥は卵を産まなくなると言われていた。
蒸気機関車から出る毒を含んだ空気は上空を通過する鳥を殺し、キジやキッネを保護することは不可能になる。
馬にも乗れなくなるし、鉄道がどんどん延びていけば、多くの種が絶滅し、燕麦や馬草は売り物にならなくなるだろう、と」。
それだけではない。ジョージ・スティーブンソンが機関車を時速約20マイル(30キロ)で走らせるつもりだと言うと、鉄道法を通そうと尽力していた支援者たちは、「あまりやりすぎるな、スピードを抑えろ」と説得した。さもなければ、計画そのものが頓挫してしまうから、と。
幸い、予防原則という概念がまだ生まれていなかったので、それでも法案は二度目の提案で可決され、リヴァプールーマンチェスター間の鉄道は1830年に開通した。
その後どうなったかは、周知のとおりだ。当時の扇動的災害論者たちの予想はことごとく間違っていたわけだ。
ちなみに、その中には、チャールズ・ディケンズやウィリアム・ワーズワースなど著名な作家や詩人も大勢いた。
科学ではなく、政治
(略)
予防原則の危険性は「科学が残した疑問の余地の部分に恣意的な断定が入り込む可能性があり、孤立したデータにその場その場で都合のよい解釈を施す学者たちが、大多数の学者たちの意見とはまったく対立し、これまでの科学的な積み重ねから総合的に見て否定的評価が出ているにもかかわらず、自分たちの偏った学説を正当化し、利益を得るということだ。しかも、暫定的な断定はあっという間に(偽の)確実性に姿を変えてしまう」。
実際、当時ACSH(アメリカ保健科学協議会)の会長だったエリザベス・M・フエランも指摘しているように、予防原則は「科学的証拠がきわめて希薄であるいっぽうで、大きな潜在的恐怖がある場合にもちだされるパターンが多い」。
予防原則の推進者たちは、最悪のシナリオをいかにも現実に起きることのように喧伝するだけで、予防措置として行われる規制や規則が引き起しうるリスクについては一切口をつぐむことが多い。
予防原則が引き起した悲劇
いくつかの事例を見れば、状況が把振できるだろう。1980年代末、科学雑誌に載ったある記事がきっかけで、クロール浄水法が癌を誘発するのではないかという疑惑が高まり、反対運動が起きた。
クロール浄水法は周知のように、飲料水の浄水法としては最も効果的なものだ。
だから、WHO(世界保健機関)やIARC(国際癌研究機関)は、「警戒を促すに足る証拠はなく、たとえ発病リスクがあるとしても非クロール浄化水を飲むことによって起きうるリスクと対照評価しなければならない」という内容のレポートを1991年に発表した。
しかし、その後も、反対運動は沈静化しなかった。
そして、まさにこの年に、ペルー政府が飲料水のクロール浄化を中止するという決定をしてしまった。
その結果、コレラが発生し、その後の5年間に100万人が発症して、1万人が亡くなった。
もうひとつの事例はいわゆる電磁波の問題で、これは現在も進行中だ。
無線周波数帯の磁界について行われたすべての疫学的調査が危険性はないという結論を出しているにもかかわらず、イタリアでは電磁波に対して予防原則が適用された。
その結果、世界で唯一、イタリアでは保護法が制定されてしまい、これがリナーテ空港におけるレーダー設置の遅れの一因となった。
そして、2001年10月の航空機事故を引き起してしまったのだ。
それだけではない。保護法により電磁波の強度制限が設けられ、学校や病院など、保護対象建物の周辺ではとりわけ低く抑えなければならなくなったため、救助を呼ぶ際に携帯電話が通じず不幸な結果を招いた事故が何件も起きた。
たとえば、2002年7月、ペサロで、サマーキャンプをしていた子どもとその引率教員が溺れた時、海水浴場の電波が弱くて携帯電話が使えず、2人は亡くなった。
サレルノでも、身体障害者施設で火事が発生した際、看護士たちが消防への通報を試みるも通じず、19人が亡くなった。
レィチェル・カーソン『沈黙の春』が植えつけたDDTへの恐怖
予防原則の先駆的な適用例として忘れてならないのはDDTの使用禁止だ。
DDTは効果的な殺虫剤としてだけでなく、戦後のマラリア対策において大きな威力を発揮する武器としても利用された。
(略)
DDTの使用禁止とマラリアの猛威
直接的な影響、つまりマラリア感染者数の増加だけではなく、経済的な影響も大きい。
(略)
遺伝子組換えトウモロコシという理由で援助食糧を拒否したザンビア大統領
(略)
遺伝子組換え作物に対してとられる予防原則についても、議論が机上の空論と化し、ついにはイデオロギーの問題にまでなってしまった例として興味深い。
その最たるものが2002年にザンビアで起きたケースだ。
ザンビア大統領のレヴィー・ムワナワサはアメリカから送られてきた10万トンのトウモロコシを遺伝子組み換えトウモロコシだからという理由で拒否した。
しかし、そのトウモロコシはアメリカ人たちが食べているものと同じものだった。
しかも、ザンビアを襲った大旱魃のせいで餓死の危険に瀕していた130万人のザンビア人を助けるため、WFP(国連世界食糧計画)の後援のもとに送られた援助物質の大部分を占めていた。
つまり、健康な生活を送る権利を守るためには餓死させるほうがいい、というわけだ。
(略)
リスクと便益を天秤にかけて判断すべき
これまで見てきたいくつもの事例から、予防原則が現実には「阻止原則」になってしまっていることがわかる。
リスクがまったく存在しないなどというのは不可能なことなので、なにか新しい技術や製品を導入しようと思っても、ことごとく阻止されてしまうのだ。
原始以来いつもこのような判断基準が適用されてきたとしたら、人類はいまだに石器時代だ。
車輪も火も予防原則の審査には通らなかったことだろう。
では、新しいことに対して、どのような判断基準で臨むべきなのだろうか。
わたしたちが日常生活において、場合によっては無意識のうちに適用している判断基準を使えばいい。
つまり、「しないこと」が「すること」よりも危険なこともあるということを念頭においたうえで、リスクと便益を天秤にかけるのだ。
このような判断基準を適用してきたからこそ、わたしたちの文明は進歩することができた。
ワクチンや自動車など、身近なところに、いくらでも例はある。
そのような判断基準をもって、もっと現実に即した「予防原則」の再定義を試みる専門家も出てきた。
たとえば、フランコ・バッタリヤ教授はこう述べている――「『深刻な、あるいは不可逆的な被害が起きうるという、科学的に確認された脅威が存在する場合、リスクに応じてたとえある程度の費用がかかろうとも、環境破壊を防止するために政府は対策を講じる義務がある』――これを『(3つの)優先原則』と呼ぶことにする。
つまり、感情的な不安よりも科学的な分析を優先し(中略)、政治的な合理性よりも科学的な合理性を優先し、経済的利便性よりも環境保護を優先するのだ」。
記:2013−1−28
BEMSJは参加しなかったが、以下の研究会が開催された。
主催者の開催案内から抜粋
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≪予防原則・リスク論を考える≫第4 回研究会
予防原則・リスク論に関する研究会
日本環境学会/日本科学者会議公害環境問題研究委員会
今回の研究会では、この大震災復興の遅れに大きく関わっている放射能汚染問題、及び、私たちを取り巻く電磁波環境は日増しに厳しくなっていますが、対策はほとんど放置されている電磁波問題、これらの研究のそれぞれ第一人者でおられる沢田昭二先生、荻野晃也先生にお話し頂けることになりました。
また当研究会メンバーの近藤真先生には、予防原則と環境権について前回以後の論考をお話し頂きます。
いずれも関心の持たれるテーマであり、教えられることの多い興味深い研究会になると思います。
年末多忙な日曜日ですが、是非ご参加いただきたくご案内させていただきます。
開催要領
≪日時≫ 2012年12月2日(日)午後1時〜5時
≪場所≫ 大阪グリーン会館
≪参加費≫ 無料
≪プログラム≫(開会)13:00〜(閉会)1700
■研究報告(各報告;講演40分、質疑15分)
◇予防原則・リスク論と環境権の再定義(続報)<報告者> 近藤 真(岐阜大学)
◇電磁波問題と予防原則<報告者> 荻野晃也(電磁波環境研究所)
◇放射線低線量被曝問題と予防原則(仮題)<報告者> 沢田昭二(名古屋大学名誉教授)
休 憩 15 分
■報告者・参加者による総合討論(45分)
■「予防原則・リスク論研究会」の今後の活動方針など (15分)
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参加しなかったが、レジメは入手した。
電磁波に関する荻野晃也のレジメには、格別の記述はなかったが、電磁波の一般的な解説、WHOなどの動向、EUの動向などの解説があった。
記:2013−2−26
以下の論文には、含蓄を含むものがある。
一部を引用して紹介、関心のある方は、原著全文を読んでください。
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掲載誌:聖学院大学論叢 第15巻 第2号 2003年3月
タイトル:予防原則の現状とその問題点
研究者:標宣男
科学技術による製品の増大と共に、これらの物質あるいは装置が現在及び将来においてもつ、人間や生態系へ影響に関する科学的知識の不完全さは、従来のリスク管理手法が限界を持っていることを示している。
予防原則はこの様な事態に対応するために考え出された対策であるが、客観的かつ合理的な判断基準がない現在、その使用にはある危険性を伴う。
特に、予防原則のターゲットとなったハザードをもたらす生産物がその社会に必要とされる場合、代替物のもたらすハザードの評価は注意深くしなければならない。
例えば、電力エネルギー源としての原子力の利用に対し、通常原子力に変るものとして、自然エネルギーの限界から化石燃料を使わざるを得ないとの指摘がこれまでにあり、この場合温暖化のリスクにさらされることとなる。
一方次のような意見がある。
「原子力発電を推進するべきか否かについて、予防原則に照らせば、全く相反する2つの結論が導かれる。
少なくとも現時点では、原子力発電所を新増設しなくとも、世界の電力供給に『不足』の生じる可能性はまず無い。
だとすると、多少に拘わらず原子力発電所が事故リスクを伴うことは否定できないのだから、原子力発電所の新増設は慎むべきである。
これが予防原則の一つの結論である。
予防原則の導くもう一つの結論は、つぎのとおりである。
30年先、40年先に化石燃料が枯渇すると断言できないけれども、枯渇のリスクの存在はだれしも認めざるを得ない。
だとすれば、遠い将来における化石燃料の枯渇を確証する科学的根拠がたとえ不充分であっても、予防原則に従えば、原子力関連技術を維持すべきである。
そこで次に問わねばならないのは、原子力関連技術を維持する為に、原子力発電所の持続的な建設が必要なのか否かである。
仮に、その必要あるとするならば、原子力発電所の新増設を認めるべきだと言う殊になる。……という全く逆の結論が同じ予防原則から導かれることになる」。
この全く逆の2つの結論が同じ予防原則から導かれるのは、時間的視野の取り方に起因すると著者は言う。
いずれにせよ、原子力の廃止は、温暖化のリスクかエネルギー源の枯渇のリスクにさらされることとなる。
これらは、予防原則を用いる場合に生じたリスク対リスク問題である。
不確実性が大きく影響の大きい目標リスクに対し、同様に不確実性が大きく影響の大きい対抗リスクの発生、これをどのように処理するか。
これは予防原則の適応に際し、その性質上生じがちな問題であろう。
予防原則の使用に対し一層の注意が必要とされる理由である。
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記:2013−4−10
関西電力の広報誌「躍」2013年March号 第17号にゼロリスクに関する論が掲載されていたので、一部を紹介します。
関心のある方は、躍誌を読んでください。
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社会における技術の選択をどう考えるか
城山英明 東京大学 政策ビジョン研究センター長
東京電力福島第一原子力発電所事故以降、原子力に対し「ゼロリスク」を求める声がある。本当にそれを求めるなら止めるしかない。
他方、我々は今回の東日本大震災を通して「ゼロリスクはない」ことを学んだ面もある。
そもそも原子力に限らず、世の中に「ゼロリスク」の技術など存在しない。
例えばクルマは我々の生活の足として不可欠だが、日本国内だけで毎年数千人の事故死者を出している。
原子力代替として期待される再生可能エネルギーも、供給の不安定性や騒音、景観への影響や低周波といったリスクも孕んでいる。
経済性が賞賛されるシェールガスにしても採掘に伴う環境リスクが懸念されるなど、あらゆる科学技術には、必ずリスクとベネフィットがある。
だからリスクとベネフィットのバランスを考える必要があるが、種類の異なるリスクやベネフィットを一次元的に比較することは容易ではない。
しかも何を重視するかは個々人の価値観や生活体験とも深く絡む。
一体どのようなリスクとベネフィットを考えるか、どのようなリスクを重大と考えるかについて、社会全体で議論し判断しないといけない。
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記:2013−4−11
以下は食品安全委員会のサイトにあった情報です。
ミネラルウォータにも課題があるそうです。
関心のある方は、当該のサイトで全文を読んでください。
******************* 引用 ****************
食品安全関係情報詳細
資料管理ID:syu02850420314
タイトル:ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、PETボトル入りミネラルウォータ中のホルモン様物質に関するフランクフルト・ゲーテ大学の研究に対する暫定評価を公表
資料日付: 2009(平成21)年3月20日
概要(記事):
ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、最近公表されたPETボトル入りミネラルウォータ中のホルモン様物質に関するフランクフルト・ゲーテ大学の研究に対する暫定評価を公表した(2009年3月18日付/2ページ)。
当該研究では、メーカの異なる複数のミネラルウォータが調査され、in vitro試験でサンプルの一部にホルモン様物質(未特定)の存在が示唆された。
研究者らは、それは特にPETボトル入りサンプルで確認されたとしている。
BfRの暫定評価は以下のとおり。
当該研究でエストロゲン活性を持つ汚染物質の存在は示唆されるが、その原因となる物質は特定されなかった。
遺伝子組換え酵母を用いたin vitro試験 (YES-test)の結果から、著者らは当該物質がエストロゲン様に作用する濃度で含まれる可能性があると解釈している。
しかし当該試験における外来性エストロゲン類の活性は、(天然エストロゲン類に比べ)極めて低いため、そのように高濃度で含まれる可能性が示唆されたことは信じがたい。
ミネラルウォータの試験結果はメーカにより大いに異なっていたが、ボトルの素材(PETあるいはガラス)による差異はなかった。
又、特に産地による差異があった。
水源で直接採取したミネラルウォータと比較することが望ましい。
カタツムリの繁殖率を比較する試験では、PETボトル入り水(ミネラルウォータではない)とエストロゲン添加水との結果が類似していた。
ガラス瓶入り水の繁殖率はそれより低いと思われる。この試験から、消費者の健康リスクに関する見解を表明できるかどうか疑わしい。
PET製造に使われる物質で、ミネラルウォータに溶出し、PETボトル入りサンプルのエストロゲン活性の原因であるかもしれない物質をBfRは知らない。
ポリ塩化ビニル(PVC)などプラスチックに使用される特定の可塑剤は、内分泌かく乱物質モジュレータだと立証されているが、PET製造にそのような可塑剤は使われていない。
汚染原因を蓋のガスケットと考えることもできる。
過去にノニルフェノール(エストロゲン作用を持つ化学物質)が問題となったが、近年BfRに、蓋の検査でノニルフェノールが見つかったとの報告はない。
又、ガラス瓶にもPETボトルにも様々な蓋が使用されることを考慮すると、YES-testで見られたように、双方のボトルで同様に高いエストロゲン活性が示されるはずはない。
水源から直接採取した未処理のミネラルウォータがエストロゲン活性を示すことはこれまで知られていない。
製造や充填工程の部品から当該汚染物質がミネラルウォータ移行する可能性は排除できない。
ミネラルウォータ中のエストロゲン様物質は問題であるので、提出された試験結果の確認が必要である。
観察された作用を合理的に評価するためにはまず、原因物質の特定及び汚染濃度の分析・算定が最も重要である。
又汚染経路の解明も重要である。
消費者の健康リスクを評価するためには、エンドポイントがより明確なin
vivoの研究が必要であろう。
当該研究の結果から、消費者がPETボトル入りミネラルウォータの摂取をやめ、ガラスビン入り製品に切り替える必要はない。
なお、本暫定評価の概要部分の英訳は以下のURLから入手可能。
http://www.bfr.bund.de/cm/230/substances_with_hormone_like_activity_in_mineral_water_from_pet_bottles.pdf
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記:2019-3-3
天然水から発がん物質が検出されたというニュースがあった。
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無印良品の飲料水から発がん性物質 59万本自主回収
2019/2/22(金)
「無印良品」を展開している良品計画は22日、ペットボトル入りのミネラルウォータ「天然水」と「炭酸水」の計59万本ほどを自主回収すると発表した。その一部から、基準値を超える発がん性物質の臭素酸が検出された。
対象商品は330〜500ミリリットル。
無印良品の店やネットストアで昨年7月から販売してきた。
製造は富山県黒部市の「黒部名水」に委託した。
台湾への輸出に伴う検査で今月12日に判明。
国内販売分を自社で調べたところ食品衛生法で定める基準値の2〜4倍にあたる1リットル当たり0・02〜0・04ミリグラムの臭素酸が出た。
原因が特定できておらず、出荷した全商品を回収する。
問い合わせは土日祝日を含む午前10時〜午後6時、同社お客様室(0120・64・0858)。
朝日新聞社
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この新聞ニュースでは、原因が判らなかった。
以下の販売会社のWEBから、原因が分かった。
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ニュースリリース
2019.02.22
「天然水」「炭酸水」回収についてのお詫びとお知らせ
平素は、無印良品をご愛顧賜り誠にありがとうございます。
弊社が2018年7月4日から2019年2月21日まで販売いたしました「天然水」から、食品衛生法に定められたミネラルウォータ類の規格に対して、基準値を超える臭素酸※が検出されました。
つきましては、該当商品の自主回収をさせていただきます。
お客様のお手元に該当商品がございましたら、お召し上がりにならず、誠にお手数ですが、最寄りの無印良品店舗までお持ちいただくか、下記フリーダイヤルまでご連絡くださいますようお願いいたします。代金を返金させていただきます。
お客様には多大なご迷惑をおかけしますことを心からお詫び申し上げます。
今後一層の品質管理の徹底を行い、再発防止に向けて取り組んでまいります。
何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
※ 臭素酸は、原料となる水に含まれる臭素がオゾン等により酸化されて生成します。
発がん性が疑われているため規格が定められています。
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この社告にある様に、地下からくみ上げた水をペットボトルなどに詰めて「天然水」として出荷する前に、オゾンなどで殺菌を行ったのであろう。
このオゾンによる殺菌によって、地下水に含まれている臭素が臭素酸に変化したのであろう。
地下水を殺菌しなければならず、殺菌するために加熱する訳にはいかず、オゾンで殺菌しているのであろう。
殺菌によって、臭素酸発生が予測されるので、常に水質を検査・管理しなければならない。
天然水といえども、ミネラルウォータといえども、リスクがゼロではない、ということになる。
この話は、「ゼロリスクは存在しない」という一例となる。
記:2019-5-12
ビタミンAは少ないと欠傍症で問題を起こし、過剰に摂取することはまた健康に悪影響を及ぼす という事例です。
以下はWikipediaの解説からの抜粋
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ヒト血液中のビタミンAはほとんどがレチノールである。
血中濃度は通常0.5μg/ml程度で、0.3μg/mlを切るとビタミンA欠乏症状を呈する。
β-カロテンが体内で、小腸の吸収上皮細胞(あるいは肝臓、腎臓)において分解されてビタミンAになる。
レチノイドの名前が網膜(retina)に由来するように、網膜細胞の保護に用いられ、欠乏すると夜盲症などの症状を生じる。
また、DNAの遺伝子情報の制御にも用いられる。
日本の厚生労働省では妊婦のビタミンA摂取量は、上限許容量が5000
IUとされている。
ただし、ビタミンAが含まれている食品は意外と多く、トータルで見ると摂取過剰になると予想される。
ビタミンAは1日10000 IU以上を連日摂取してしまうと奇形発生が増加すると考えられる報告がある。
妊娠12週までにビタミンAを連日15000
IU以上摂取すると、水頭症や口蓋裂等、胎児奇形発生の危険度がビタミンA摂取量5000 IU未満の妊婦に比して、3.5倍高くなると報告されている。
一方で欠乏した場合は未分化性の胎児奇形(単眼症など)のリスクが生じる。
近代以前の日本では肉食文化が乏しくビタミンA欠乏が頻繁に見られる現象であったとも考えられており、ビタミンA過剰が過剰分化性の奇形(先述の口蓋裂等)を誘発することとは対照的な問題である。
ただし、ビタミンAの過剰摂取による催奇形性の報告は、主にサプリメント由来のビタミンA(レチノイン酸)であり、動物性由来のビタミンA(レチノール)は20000 IU以上摂取しても問題がなかったと言う報告もある。
現在日本では、通常の食生活を送る限り不足になることはあまりないが、授乳婦においては所要量が大幅に増える。
また、通常の食事で過剰になることも少ないが、外洋魚の肝臓による過剰摂取に注意すること。
過剰摂取によるビタミンA過剰症(軽度であれば下痢などの食中毒様症状、重篤であれば倦怠感・皮膚障害など)がある。
後述の医薬品を服用するなどで大量のビタミンAが体内に蓄積された場合、さらに催奇形性(奇形児が生まれる)のリスクが非常に高くなる。
食品安全委員会のファクトシート「ビタミンAの過剰摂取による影響」が詳しい。
なお、β-カロテンには過剰摂取による障害がない。
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記;2013−8−13
毎日新聞にあった記事の引用です。
http://mainichi.jp/select/news/20130802k0000m040085000c.html
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小児がん患者:3年で9千人、白血病が最多
毎日新聞 2013年08月01日 21時42分
国立がん研究センターは1日、全国395の「がん診療連携拠点病院」で2009〜11年に小児がんと診断された20歳未満の患者が約9千人に上り、うち白血病が最多の27.6%、脳腫瘍が22.8%だったとする集計結果を発表した。
がん対策の中でも小児がんへの対応は遅れているとされ、種類別に患者が何人いるか把握されていなかった。
拠点病院以外で診断されたり重複して集計されたりする患者もいるが、同センターは「今回の集計は日本の小児がん患者の現状にかなり近いのではないか」としている。(共同)
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この情報を基に、小児白血病の発症率を計算する。
3年間で9000人の患者から年間3000人の小児癌の患者となる。
27.6%が白血病とあるので、実数は年間で828名となる。
20歳までの日本の人口を単純計算で2000万人と仮定する。
小児白血病の年間10万人当たりの患者数は 828/200となり、年間10万人当たり4.1人となる。
一般的に、他の国もほとんど同じで、年間10万人当たり、4−5名であるので、今回の研究は、日本の小児白血病発生率は、他の国と同準であることが判った、と言える。
記:2013−9−15
*動物実験の結果から発がん性物質を問題視する論点
以下はマイニュースジャパンの記事
http://www.mynewsjapan.com/reports/1888にあった内容の一部紹介
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発がん物質入りワーストはノエビア、コーセー、カネボウ…中小のナチュラルシャンプー系に要注意 大手は資生堂『ツバキ』だけ
植田武智 15:31 09/15 2013
シャンプーに含まれる発がん成分「コカミドDEA」について、女性向けシャンプーで配合の有無を調べたところ、最も多く配合されていたのは、中小メーカの「自然派」をうたうシャンプーだった。
大手の花王やライオンでは代替化が密かに進められていたが、花王子会社・カネボウの商品には、3品中2品に含まれていた。
問合せに対し花王は「企業秘密だから」と回答拒否。
消費者に知られることなく密かに代替化を進めたいらしい。
消費者の疑問に説明責任を果たそうとしない姿勢が子会社・カネボウの白斑問題につながったが、反省している様子は全くなく、消費者は不買によって自衛するしかない。
中小ではノエビア(5品中4)やコーセー(16品中11)が多く使用。
シャンプーの主要メーカ別商品一覧表を付けたので、購入の際はチェックしていただきたい。
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*ラットとヒトの違いを主張・解説するサイトの論点
さて、以下の情報も存在する。
http://www.dr-recella.com/cms/?itemid=2989 にあった内容 2013−9−15のログ
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コカミドDEA・TEAでの発がん性があるのでは?
背景を説明しておくと、DEA(ジエタノールアミン)、TEA(トリエタノールアミン)をげっ歯類の皮膚に塗布すると、肝臓に発がんが見られた。
また、縮合物についても同様の結果が見られた。
たとえば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド=コカミドDEAなど。
これは、DEAから発がん物質であるニトロソアミンが生成しているせいではないかと疑われた。
(略)
ただ、海外ですでに人間に発がん性はないと実証されています。
マウスラットは人間に似ているところもあれば、似ていないところもあります。
げっ歯類で見られた、DEAやTEAによる発がんは人間では起こりません。
この発がんはニトロソアミンによるものではなくコリン欠乏によるものと考えられているですが、人とは代謝量が異なること(コリンオキダーゼの活性は数百倍異なる)、人間の皮膚は厚く皮膚透過率が低いこと、コリン欠乏の変化は可逆的であることなどから人間ではリスクになりそうにありません。
そのため、IARCでもGropu3(発がん性を分類できない)のままだし、NTPでもRoCのリストから外れました。
Wikipediaで書かれているようなマウスでの中枢神経発達阻害なども、コリン欠乏に由来するので人間では起こりえないものです。
**************************
BEMSJはこうした化学物質に関しては素人で、判断できないが、「発がん性物質」に関しては、慎重に、様々な情報を見ていく必要があると、感じた。
追記:2013-9-16
IARCの発がん性判定を確認してみました。
この物質は、IARC発がん判定モノグラム第101号(2012年)で、発がん性判定2B(人に対するデータは皆無、動物実験で十分な確証データがあることから、「発がんの可能性があるかもしれない」 という)という結果になっていました。
従って、dr-recellaのサイトは、この点では誤っている と言えます。
アメリカのNTPのRoCでは、1997年のNTPでの動物実験の結果の報告書が、もろもろの実験報告書の中に、リストされていました。
追記:2013−9−27
「http://www.dr-recella.com/cms/?itemid=2989」に書かれた内容「IARCでもGropu3(発がん性を分類できない)のままだし」は、最新の情報としては正しくないのではないかという旨のメッセージを当該のサイトに残しておきました。
本日、当該のサイトを見ると、画面は真っ白の状態で、開くことができませんでした。
このページは、削除されたのかもしれません。
「この発がんはニトロソアミンによるものではなくコリン欠乏によるものと考えられているですが、人とは代謝量が異なること(コリンオキダーゼの活性は数百倍異なる)、人間の皮膚は厚く皮膚透過率が低いこと、コリン欠乏の変化は可逆的であることなどから人間ではリスクになりそうにありません。」という記述に関しては、Pubmedで検索すると、この旨を唱える学術論文が書かれていることは、確認できました。
記:2013−9−17
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◆ 就学前に農村で暮らした子どもは学齢期のアレルギー性鼻炎が7割減
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_199022_9876_9
就学前に農村暮らしをしていた子どもは、学齢期のアレルギー鼻炎罹患率が約3分の1と大幅に低い。
こんな研究結果がスウェーデンから報告された。
清潔すぎない生活環境で暮らした子どもはアレルギー疾患にかかりにくいという「衛生仮説」を裏付ける成果の1つとして注目される。
スウェーデンのUniversity of Gothenburg小児科のBernt Alm氏らが発表した。
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http://d.hatena.ne.jp/uneyama/の食品安全情報Blogにあった内容です。
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2015-06-29
スペインで6才の少年が1987年以降初めてジフテリアで死亡
6-year-old dies in Spain's first diphtheria case since 1987 28 June 2015
http://www.thesundaily.my/news/1473344
6才の少年が1987年以降初めてジフテリアで死亡したと、土曜日に病院が言った。
この子どもは予防接種の副作用の可能性に関する議論によりワクチンを接種せず、5月に入院して1ヶ月の間細菌と戦っていた。
少年の治療は正しい抗毒素が欧州内にみつからなかったために遅れた。
最終的にロシアから提供された。
他に9人の子どもと成人が細菌に暴露されたが全員予防接種をしていたので発症していない。
この少年の両親の予防接種をしないという決定はスペインで予防接種に関する新たな議論を巻き起こした。
カタルーニャの保健担当官Boi Ruizは保護者に対し子ども達に予防接種をするよう呼びかけている。
「リスクはゼロではない。しかしリスクがゼロではないという事実を、保護者にワクチンへの恐怖を与えるために使うことはできない。
スペインではワクチン接種率は極めて高い」
記:2015−11−4
以下のちょっと興味深い研究がありました。
電気で加熱した場合よりも、ガスで調理した方が、発生する発煙・油煙に含まれる発がん性物質への曝露が増える、という研究です。
以下は概要だけを仮訳しました。
関心のある方は、原著論文を読んでください。
掲載誌:Occup Environ Med. 2010 Apr; 67(4):228-32. Epub
2010 Feb 17.
タイトル:Exposure to polycyclic aromatic hydrocarbons
(PAHs), mutagenic aldehydes and particulate matter during pan frying of
beefsteak.
ビフテキをフライパンで焼く時に発生する多環芳香族炭化水素、突然変異源となるアルデヒド、微粒子物質への曝露
研究者:Sjaastad AK 1, Jørgensen RB, Svendsen K.
OBJECTIVES: 目的
Cooking with gas or electric stoves produces fumes, especially during frying,
that contain a range of harmful and potentially mutagenic compounds as well as
high levels of fine and ultrafine particles.
The aim of this study was to see if polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) and
higher mutagenic aldehydes which were collected in the breathing zone of the
cook, could be detected in fumes from the frying of beefsteak.
ガスや電気で調理する時、特に加熱する時は、発煙・油煙を伴う。この発煙・油煙には、多くの微粒子や超微粒子の物質と共に、危険性や変異原性を持つかもしれない物質を含んでいる。
この研究の目的は、調理時に呼吸する区域で収集したビフテキを焼くときに発生する発煙・油煙の中から、多環芳香族炭化水素と変異原性を持つ恐れの高いアルデヒドを検出することができるかである。
METHODS: 方法
The frying was performed in a model kitchen in conditions similar to those in a
Western European restaurant kitchen.
The levels of PAHs (16 EPA standard) and higher aldehydes (trans, trans-2,
4-decadienal, 2,4-decadienal, trans-trans-2,4-nonadienal, trans-2-decenal,
cis-2-decenal, trans-2-undecenal, 2-undecenal) were measured during frying on
an electric or gas stove with margarine or soya bean oil as the frying fat.
The number concentration of particles <100 nm in size (ultrafine) was also
measured, as well as the mass concentration of total particulate matter.
フライパンでの加熱は、西欧レストランのキッチンの中にある状態を模擬したキッチンの中で、行った。
マーガリンか醤油を脂質の加熱として加えて、ガスか電気調理器で加熱調理する時に、多環芳香族炭化水素の量を測定した。
微粒子の全体の濃度と共に、100nm 以下の超微粒子の濃度も測定した。
RESULTS: 結果
Levels of naphthalene were in the range of 0.15-0.27 microg/m(3) air.
Measured levels of mutagenic aldehydes were between non-detectable and 61.80
microg/m(3) air.
The exposure level of total aerosol was between 1.6 and 7.2 mg/m(3) air.
Peak number concentrations of ultrafine particles were in the range of
6.0x10(4)-89.6x10(4) particles/cm(3) air.
ナフタリンの量は空気中1立法メーターで0.15-0.27μgの範囲であった。
変異原性をもつアルデヒドの量は、検出限界以下と空気中1立法メートル当たり61.80μgの範囲であった。
煙霧質の全量は空気中1立法メートル当たり、1.6から7.2mgであった。
超微粒子のピーク値は、空気中1cm立法あたり6×104から89.6×104個の範囲であった。
CONCLUSION: 結論
Naphthalene and mutagenic aldehydes were detected in most of the samples.
The levels were variable, and seemed to be dependent on many factors involved
in the frying process.
However, according to the present results, frying on a gas stove instead of an
electric stove causes increased occupational exposure to some of the components
in cooking fumes which may cause adverse health effects.
ナフタリンと変異原性をもつアルデヒドは殆どの実験で検出された。
それらの量は、加熱のやり方を含む様々な要素に依存しているように見えた。
しかしながら、今回の実験によれば、電気調理器に比べて、ガス調理器では、健康に悪影響を及ぼすかもしれない調理時の発煙・油煙の中のいくつかの物質に、職業的に曝露することが増えている。
58Bに調理法による油煙の違いを紹介した。
以下は、油煙がガンに関連しているという情報である。
http://www.recordchina.co.jp/b28762-s0-c00.htmlにあった情報
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女性の肺がんが増加の一途、受動喫煙と調理時の油煙などが主因―中国
Record china
配信日時:2009年2月20日(金)
2009年2月19日、新聞晩報によると、男性が肺がんにかかる割合が沈静傾向にあるのに対し、女性の肺がんは増加を続けている。
18日に開催された、肺がん治療薬である新型抗がん剤「タルセバ」(Tarceva)の専門家による研究会では、喫煙や受動喫煙、調理時の油煙が女性の肺がん増加の主な原因になっていると報告された。
現在、中国の女性が肺がんにかかる割合は、欧州各国と比べても明らかに高く、特に上海に住む女性の肺がん発病率は世界平均を大きく上回っており、上海都市部の女性が肺がんにかかる増加率は男性を上回っている。
ある専門医は、男性と比べて女性のほうが肺がんになるリスクが高く、同条件下で喫煙した場合、危険性は男性の3倍に上ると話し、今後も肺がんにかかる女性がさらに増える可能性があるという。
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記;2013−9−27
産経新聞2013年 9月25日の記事の一部引用
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放射能恐れ? 外遊び減り、乳幼児にビタミンD欠乏性くる病に
紫外線を浴びることで、皮膚でビタミンDを生成することができる。
健康な体づくりには適度な外遊びが不可欠だ。
◆紫外線不足
栃木県下野市の自治医科大付属病院とちぎ子ども医療センターには一昨年8月から昨年3月にかけて、日照不足とみられるビタミンD欠乏性くる病の乳幼児3人(1歳2カ月〜1歳9カ月)が来院した。
1人はカルシウム不足によるけいれん、2人はO脚。
3人のうち2人が1歳以降も母乳を続け、離乳食をほとんど食べていなかった。
(略)
同センターで診察にあたった八木正樹医師(31)が、ある家庭に保育状況を聞くと、平成23年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故による放射能漏れを恐れ、子供を屋外に出さない生活をしていたという。
八木医師は「乳幼児の保護者らは日照不足がくる病を起こすという認識が少なかったようだ」と振り返る。
(略)
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2003年日本産業衛生学会総会の予稿集からの抜粋です。
アルコールはIARCの発がん性評価ではグループ1(発がん性あり)となっている。
飲酒の影響を調際した報告があった。
タイトル:BP042 飲酒の腫瘍増殖作用について
研究者:今井常彦ら
【はじめに】
飲酒は口腔、咽頭、食道、肝臓の癌の原因となることが知られている。
我々はこれまで長期飲酒の生体影響についてヒトおよび動物実験により多面的に観察を続けている。
本研究では、加齢による精巣腫瘍である間細胞腫の自然発症の観察に適したフィッシャー系雄ラットを用い、長期飲酒と間細胞腫の発症との関連について観察したので報告する。
【方法】
生後5ヶ月齢時フィッシャー系雄ラット18例を実験に供した。
1ヶ月間の予備飼育の後、
1) エタノール投与(Alc)群・7例:
投与開始時期および投与期問は生後6ヶ月齢時から24ヶ月間。アルコール飲料として16%エタノール(日本酒)自由摂取。
飼育飼料は市販粉末飼料(CE-7・日本クレア)自由摂取。
2)対照(C)群・11例:
同生日数でAlc非摂取。Alc群の摂飼量と同量の飼料および、摂取エタノール量と等カロリーのグラニュー糖摂取。飲料は水道水の自由摂取。
観察時期は生後30ヶ月齢時。
観察方法:精巣重量測定し、体重比算出、光顕による病理組織観察。
【結果および考察】
1)観察終了時体重=Alc群は271.1±51.3g, C群は303.9±35.0gで、2群問に有意差なし。
2)精巣間細胞腫の出現頻度:Alc群は7例中7例で100%、C群は11例中10例で91%、2群問に有意差なし。
3)精巣重量(両側合計):Alc群は5.82±3.44g, C群は2.61±1.58gで、ALc群が有意(p<O.05)に高値。
4)精巣重量(両側合計)/体重比:Alc群は2.06±1.11%、C群はO.83±O.43%であり、Al1c群が有意(p<0.05)に高値。
4)病理組織所見:Alc群と対照群では所見に差異なし。
以上、腫瘍発症頻度には、Alc群とC群の間に有意差が見られないこと、腫瘍の大きさはAlc群が有意に大であることから、長期飲酒は腫瘍に増殖に促進的に作用することが示唆されたと考える。
写真などもあり、興味のある方は原著を読んでください。
癌めーる2003年11月10日(235号)にあった情報です。
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<10月23日>
●アルコールでがん転移促進 免疫低下、マウスで確認
アルコールによって免疫細胞の働きが弱まり、がん転移が促進されるとする動物実験の結果を、近畿大医学部(大阪狭山市)の犬房春彦教授らが22日、札幌市で始まった日本癌(がん)治療学会で発表した。
人間でビール大瓶3本半または日本酒3合半に相当する量で転移は促進され、量が増えるほど転移数が増えた。
犬房教授らは、マウスを16匹ずつ3群に分け
(1)人間ではビール3本半に相当する量
(2)その倍量
(3)4倍量
―のアルコールを腹に注射。尾に人間の大腸がん細胞を注射した。
4週間後、肺転移したがんの塊を数えたところ、アルコールを投与しなかったマウスは平均8個。
一方、最少量を投与したマウスは11個、倍量では19個、4倍量で25個だった。
がん細胞を壊すナチュラルキラー細胞の働きは、アルコール量が多くなるほど低下し、4倍量のマウスでは無投与の半分近くに落ちた。
犬房教授は「転移の経路となる血管へのアルコールの影響など他の要因についても研究を進めたい」と話している。
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記:2015−3−14
原著 John W. Gofman 著 Radiation
and Human Health 1981年発行
1991年日本語訳版が刊行
以下は2011年明石書店発行「新装版 人間と放射線 医療用X線から原発まで」今中哲二ら訳 本に中の一部を紹介
*生体内でのベータ線とアルファ線の飛程
]線やガソマ線の場合,進行方向のどこかで作用を及ぼすかどうかは偶発的事象である。
作用することもあるし,しないこともある。
そのため, ]線の一部は組織内のかなりの距離を何の変化も受けずに通り抜けることがある。
これが, ]線やガンマ線に対して「半減層」を定義する理由である。
しかしベータ線やアルファ線は,飛跡の最初から組織に作用し電離を起こす。
そして電離によってエネルギーを失い減速する。
このためアルファ線やベータ線が,組織内を透過できる距離は有限であり,それは「飛程」と呼ばれる。
飛程をこえてアルファ線やベータ線が透過することはない。
それらには半減層が定義できない。
アルファ線の飛程は,エネルギーが同じでも厳密には小さなバラツキがある。
飛跡1ミクロン当りのエネルギー損失が正確に一定ではないからである。
このことはベータ線に対してもあてはまる。
組織内でのアルファ線の飛程は一般に30-40ミクロン程度,つまり細胞の大きさの3-4倍である。
ここで問題にしているようなアルファ線では,組織中の飛程は100ミクロン以上にならない。
(もちろん,アルファ線の飛程はエネルギーによっていろいろの値をとる。)
ベータ線は単位飛跡当りのエネルギー損失が小さく,飛程はずっと長い。
ベータ線の飛程はミクロソではなく,ミリメートル程度である。
ただし初期エネルギーが非常に小さければ,飛程も非常に短くなる。
後に議論するが,トリチウムから放出されるベータ線のエネルギーは非常に小さい。
アルファ線について,とんでもない思い違いをしている人がいる。
一般の人々に原子力の安全性を説こうとする人が好んで使うちょっとした「手品」がある。
彼らは,放射線測定器のかたわらにアルファ放射線源を置き,測定器が激しく計数するところを見せる。
それから1枚の紙を放射線源と測定器の間に置く。
すると測定器の計数は止まり,アルファ線は紙すら透過できないことを見せる。
一般の人々がこの実演を見れば,アルファ線は生体組織に障害を引き起こす力が弱いと考えるだろう。
読者はすでにこの実演がいかに滑稽かおわかりだろう。
アルファ線が紙を透過できない理由は,アルファ線が紙の化学結合を効率よく破壊し,たった一枚の紙を透過するのにエネルギーのすべてを紙に与えてしまうためである。
アルファ線は生本組織にとってきわめて有害であるというのが,正しい解釈である。
たとえば,もしアルファ放射体が気管支の上皮細胞(肺ガンの発生する場所)に付着すると,アアルファ線の粒子が通るごとに,そこにある3個ないし4個の敏感な細胞には莫大なエネルギーが加えられる。
ただし,体表面に付着したアルファ放射体が,深部の体内組織を傷つけることができないことも確かである。
*宇宙線を避けるため,デンバーから引っ越すべきか
自然放射線を避けるためにその地方の住民を移住させるべきだという議論を何度も聞いたことがある。
デンバーであれどこであれ,宇宙線の被害がどんなにあったとしても,強制的に誰かをどこかに移住させるなどと議論する権利は誰にもない。
個人は, どこに住むかを決める権利をもっている。
しかし,自発的な行動のために情報を提供することは,全く別の問題である。
宇宙線による被曝は,海抜ゼロメートルの地域に比べてデンバーでは,年間およそ22ミリラドだけ大きい。
また,この地域では地殻からの自然放射線も,土壌中の平均ウラン量が多いため,かなり大きめになる。
しかし,ここでは宇宙線の寄与について考察しよう。
年間22ミリラドの余分な被曝のあるデンバーのような地域に約100万の人口があると仮定しよう。
余分の被曝線量は, 1,000,000人×0.022ラド=22,000人・ラドである。
ガン線量は,男女平均の近似値として270人・ラドである。
従って,デノバーでの宇宙線による余分のガン死数をも年間22,000/270=81件となる。
平衡人口に関する以前の考察で, 2.5億の平衡人口を維持するには,毎年男女各々171万9000の出生と死とが必要である(第9章)。
従って,人口100万人を定常に保つためには(男女合わせて),
(1,719,000+1,719,000)/250=13,750の出生と死が必要である。
もし,死亡の18%がガンによる(表31,表32)という統計を使えば,年間0.18×13,750=2,475件のガン死が,余分な放射線がなくても,デンバーのような地域では発生する。
81件という余分なガン死は, (81/2,475) ×100=3.3%ガン死の危険度が増えることである。
*カラーテレビ問題
さらに一般的な問題の一つとして,カラーテレビがある。
第2葦で述べたように電位差によって電子が飛び,この電子が止まるとき、]線発生の問題が常につきまとう。
もちろん,これこそが]腺管で]線を発生させる原理である。
多くの電気機器には, 10, 20, 30, 40キロボルトのように電位差のある部分がいくつもある。
このような電位差のある部分を流れる電流に応じて, ]腺が発生する。
正常に動いているときには高い電圧はかかっていないけれども,修理や調整のたびに電圧がますます高くなっていく場合もある。
高電圧になればなるほど,発生した]線のエネルギーが高くなって,カバーケースを透過する割合も大きくなり,問題は一層深刻になる。
装置のどこかに怪しいと思うことがあれば,フイルム・バッジや]線用の測定器で調査すべきである。
装置からの被曝線量を決めるには,測定するのが最も確実な方法である。
メーカが電気回路のどこかに50キロボルトもの電位差をつけていることなどは簡単にはわからない。
高電圧のために意図しない]線を発生する例として,電子顕微鏡がある。
電子顕微鏡の操作員が知らずに]線被曝をしていた深刻な例に,私は個人的にかかわった経験がある。
UNSCEAR報告には次のように述べられている。「・・・・最近ではカラーテレビからの]線放出は,ふつうに使っている場合は無視できる」 (1977, p.99)。
国際原子力機関の安全性シリーズのNo.9 (1967)には,テレビの表面から5cm離れた所での線量率は,ふつうの受像条件で0.5ミリレントゲン/時間をこえるべきでないと勧告されている。
王(Wang, 1975)は, 1973年前後に台湾で一般に売られている家庭用カラーテレビの中から無作為に28機種を選び,発生している放射線(低エネルギー]線)を調査した。
ソニー,日立,ナショナル,サンヨー,シャープ,東芝,ビクター,アドミラルなどの銘柄機種があり,ブラウン管の大きさは12-25インチであった。
熱蛍光線量計をブラウソ管表面中央部とテレビの両側面に密着して,線量を測定した。
両側面の線量率は平均するとほぼ等しく,結果は以下のとおりである。
ブラウン管大きさ (インチ) |
検査数 |
ブラウン管前面平均 (ミリレントゲン/時間) |
両側面の平均 (ミリレントゲン/時間) |
12 |
2 |
0.024 |
0.016 |
14 |
3 |
0.015 |
0.008 |
16 |
4 |
0.020 |
0.003 |
17 |
4 |
0.013 |
0.006 |
18 |
4 |
0.017 |
0.004 |
19 |
5 |
0.010 |
0.006 |
20 |
5 |
0.042 |
0.006 |
25 |
1 |
0.035 |
0.002 |
|
|
平均:0.022 |
平均:0.0064 |
王は, 20イソチテレビの3枚種については,ケースの内側のブラウソ管周辺も測定し, 0.255, 0.224, 0.247ミリレントゲン/時間と報告している。
プラウソ管のガラスやケースのため,外側では]線がかなり少なくなっている。
ブラウソ管表面での年間線量は(8,760時間/年)×(0.022ミリレントゲン/時間)=193ミリレントゲン/年となり,側面では 3,760時間/年)×(0.0064ミリレントゲン/年)=-56ミリレソトゲソ/年となる。
しかし,テレビに1年間密着しているとは考えがたい。
線源から王の線量計までの実効距離は大きめに見積もっておよそ10cmであろう(テレビは完全な点線源とはみなせない)。
次にテレビを見る際,2 m (200cm)離れて見ると仮定しよう。
すると,線量はおよそ(200/10)×(200/10)=400分の1 (連二乗別に従う)になる。
従って, 1日24時間テレビを見続けるとして,年間の線量は, 193ミリレントゲン/400=0.48ミリレントゲンン/年となる。
1ミリレソトゲソは1ミリラドとほぼ同じだから,年間被爆線量は0.5ミリラドに近いと言える。
この値は1日24時間テレビを見た場合なので,実際は非常に小さい値になる。
ブラウン管電圧を上げれば,発生する]線の貰通力は増え,被曝も増えるので,電圧は上げるべきではない。
初期のテレビ修理では,ある種の故障に対して電圧を上げていた。
記:2015−3−16
以下は通常の生活環境におけるリスクの例として、2012年11月の兵庫県 六甲医療生活協同組合の調査報告から、一部のみを抜粋。
関心のある方は、この報告の全文を入手して、読んでください。
記:2016−2−14
2016年2月12日産経新聞に「福島から問う 被爆リスクの探求5年 上 10万人検査医師報告「命奪うのは放射線ではない」」という記事があった。関心のある方は、当該の新聞を読んでください。
リスクを考えるうえで、参考になるポイントだけを引用します。
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原発事故は福島の社会を大きく変化させた。
避難で長時間の移動に耐えられず亡くなった高齢者、体の異変を感じても受診せず末期がんになった女性、脳卒中でたびたび入院する除染作業員。住民は健康を害し、「弱者」があぶり出された。
坪倉さんはこうした実態を目の当たりにしてきた。
データも坪倉さんの見てきた現実を裏付ける。
原発事故後、南相馬市立総合病院では脳卒中で入院する患者が倍増した。
糖尿病や高脂血症などの生活習慣病が事故後に増加していたことも分かり、避難した人の方が避難しなかった人よりも病気の悪化率が大きいという結果も出ている。
住民の命を奪っているのは放射線ではない。
放射線をリスクの1つとしてとらえながら、本当に命を守りたければ、社会全体の問題として本気で取り組んでいかないといけない」。
坪倉さんはそう訴えた。
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記:2015−4−22
電磁波とは関係ないが、原発に関連して、ゼロリスクは・・・・に関連する情報として、紹介します。
毎日新聞201504の記事の一部引用
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福井・高浜原発:再稼働差し止め仮処分決定 和歌山知事が疑問 「原発だめなら車も差し止め」
毎日新聞 2015年04月21日 東京朝刊
福井地裁が関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働を差し止めた仮処分決定について、和歌山県の仁坂吉伸知事は20日、定例記者会見で「大飯も高浜も判断がおかしい」と疑問を呈した。
仁坂知事は「生存権のリスクをゼロにしろと言うのなら(より死亡事故の確率が高い)自動車の差し止め請求ができてしまう。
なぜ原発だけ絶対になるのか」と話し「電気代がかさんで企業が倒れたら誰が責任をとってくれるのか」と述べた。
(略)
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以下の記事は参考になる。
関心のある方は、全文を読んでください。
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少量の毒は薬にも
環境汚染物質は常に有害とは限らないようだ
「ホルミシス」と呼ぶ奇妙な現象の研究が進みつつある
ダイオキシンや放射線がガンを引き起こすのなら、曝露量を減らせば市民の健康状態は改善するはずだ。
水銀や鉛、PCBが知能の発達を妨げるなら、少なければ少ないほどよいだろう。
しかし、環境汚染物質が常に有害とは限らないことを示すデータが増えている。
少量なら、むしろ健康によい可能性がある。「ホルミシス」と呼ぶ現象だ。
ホルミシスは基本的にはストレスに対する適応反応だとマサチューセッツ大学アムハースト校の毒物学者カラブレーゼ(Edward
J. Calabrese)はいう。
ストレスがかかると、細胞の修復・維持システムが働き始める。
少量の汚染物質など弱いストレスが引き金となり、それを上回る過剰補償が生じると、生体に有益な効果をもたらす場合が多い。
この考え方は奇妙に思えるかもしれないが、デンマークにあるオーフス大学の生理学者ラッタン(Suresh
Rattan)はストレスヘのこうした適応はよく見られるという。
例えば、運動すると体内に生化学的な大混乱が生じる。
ある細胞では酸素とグルコースが欠乏し、別の細胞では酸化性物質が急増、免疫機能も弱まってしまう。
「一見すると、運動しても身体にいいことは何もない」。
しかし、適度の運動が健康によいことは、ごろ寝好きな人でも知っている。
運動によって細胞が傷つくと、防御システムがより効率的に働くようになるのだとラッタンは説明する。
カラブレーゼはこの10年間、過去の学術文献からホルミシスの例を数多く収集してきた。
その中には有害物質に関する確立された理論を疑問視する報告がたくさんあり、主流の考え方と真っ向からぶつかるものもあった。
過去10年でデータが蓄積いくつか例を挙げよう。
放射線被曝量が増えると発ガンリスクも高まるというのが主流の理論だが、カナダ原子力公社の生物学者ミッチェル(Ronald
Mitchel)は、マウスに低線量の電離放射線を1回照射するとDNAの修復が刺激され、ガンの発生が遅れることを示している(もちろん、強い放射線では逆効果になる)。
極端な温度に長時問さらされるのも有害だが、ラッタンはヒトの皮膚細胞を1時問にわたって41℃に加熱する処理を週に2回繰り返すと、細胞の老化が遅れることを突き止めた。
有害性がはっきりしている汚染物質にも、ある種のホルミシスが見られるようだ。
ダウ・ケミカルのコシバ(Richard
Kociba)らは1978年に発表した論文で、ダイオキシンがガンを引き起こすことをラットの実験によって実証したが、同じ研究の中で低濃度の場合にはガンの発生率が低下することも明らかにしている。
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2002年丸善より出版された安井至・著「環境と健康 誤解・常識・非常識 信じ込んではいませんか?」を読みました。
非常に辛口の環境問題の本です。
P77「食品添加物・残留農薬による発がんの危険性は極めて高い」という論の中で、低周波磁界の発がん性2Bと同じランクに入っているコーヒーの発がん性に論及している箇所があるので、その部分を抜き出しました。
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C先生「変異原テストで有名なAmes博士は、次のようなことを言っている。
「キャベツには49種類の毒物が含まれている。」
「普通の人は、一生に5000から1万種の天然殺虫成分を野菜・果物から摂取する。その量は、人工の殺虫剤からの摂取量の1万倍にも及ぶ。」
「コーヒーには1000種以上の化学物質が含まれるが、発がん性試験が行われているのは、そのうちの25種類だけ。そして、19種類がげっ歯類にがんを誘発した。」
「1杯のコーヒーに含まれる発がん物質の量は、普通の人が年間に摂取する発がん性のある人工的殺虫剤よりも多い。」
「焦げた蛋白質に含まれる発がん物質の摂取量は、大気汚染のひどいところに住んでいる場合の摂取量の数100倍。」
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以下の2点は参考になる意見ですので、抜粋して転載します。
関心のある方は、オリジナルサイトを覗いて下さい。
http://www.yasuienv.net/MindStatus.htm
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「不安」に関するFBでの応答の記録 06.12.2016
1.ヒトという生命が維持されることについて、絶対に大丈夫などということは何一つありません。
そもそも、毎日、ヒトにとって異物である他の生命を食料と呼んで食べ、特に、絶対的毒物であるアルコールを飲み、有害性があきらかな塩分を過剰摂取し、さらに発がん性のある太陽光を浴びて生活をしている、さらに、子供の健康にとって重要な腸内細菌を健全に保つ重要性をほとんど理解しないで、過度に清潔思考になってバランスを崩している。そんなものなのです。
もっとも重要な知恵は、過度な心配によるストレスがかなり重大な影響を与え、本来の原因が与える負の影響よりも大きくなる可能性があるということだけは、理解しておいて損はありません。
2.不思議なことに韓国には実例があります。
韓国では、健康診断のときに、甲状腺がんの超音波検診を追加しても、余り費用が変わらないという仕組みを導入したとたんに、甲状腺がん発生率が世界No.1の国になりました。
ちなみに、甲状腺がんによる死亡率では、世界で80番目ぐらいのようです。
発生数が増えた理由は、検査の受診者が増えたからです。
韓国の発生数の増大の理由は何でしょうか。
もっとも推測しやすい仮定は、超音波検査の機器が進化したことによって、発見数が増大したことだろうと考えられていますし、これ以外の答えがあるとは思えないのです。
そこで、韓国では、超音波検査の実施を減らすことにしました。
恐らく、これで問題は解決することでしょう。
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記:2015−12−3
関西電力発行 季刊「躍」2015年11月号 「安全・安心社会とエネルギーを考える」という鼎談の中に、以下の論がある。
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安心を得るため安全を犠牲にすることがある
小幡:ただ、安心は危険でもあります。
つまり安心を得るため安全を犠牲にすることがある。
例えば地震保険やがん保険に入って安心して、地震対策をせず、不摂生をして、死んでしまったら、保険がおりても意味がないどころか逆効果。
安心が安全対策への意欲を阻害して危険になる。
リスク量を増やすような安心の付与の仕方は良くない。
*******************************
記:2016−1−20
以下は、2003年2月新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO主催の「化学物質管理セミナー」における中西準子の講演「PRTRデータの信頼性確認」から、抜粋して引用。
この図を纏めると、10-4以上では「対策をとる」、10−4と10−5の間では「費用や人口を考えて、対策をとる(右の方が濃い色になっている
ことに注意!)」、10−5以下では「当面対策は取らない」と、リスクの大きさと、リスクを受ける人口を考慮して、対策をとるかを決める。
この頁は、アメリカの事例
リスクの大きさとリスクを受ける人口の大きさによって、規制を行うかなどを判断する。
1ページ目には大きな見出しで「どうしてわざわざ危険性があるかもしれないものを選ぶの?」と書かれてあります。
2ページ目には「検証!オール電化住宅」と称し、明らかにオール電化を叩くことが目的の、偏った視点から見たIHの問題点が書かれてあります。
久留米市で人に自然に優しい住宅(エコハウス)を提案されているNさんは、「IHクッキングヒーターの電磁波のことを考えると、私共は危険性があるかもしれないものを大切なお客様にお勧めするわけにはいきません。」と語っています。
それなら、ガスコンロやガス湯沸かし器をお勧めするわけにはいきませんよね?
最近、ガス湯沸かし器の事故が多発していたという事が発覚して問題になっています。
女優の故・浦辺粂子さんは、ガスコンロの火が着物に引火して焼死しました。
これらの事例は「危険“かもしれない”」というレベルではありません。
実際に人が死んでいるのですから、“明らかに危険”であり、このようなものは絶対にお勧めできないはずです。
では、昔ながらの「薪」や「炭」ならよいのでしょうか?
残念ながらそれも違います。
元プロ野球選手の張本勲さんは、子供の頃にたき火で負った火傷で右手の指がくっついているそうです。
たき火にあたっていた時に、近くにあった自動車が突然バックしてきたので、それを避けようとして手を火に突っ込んでしまったとのこと。
それから、薪に引火して燃え広がったという話は枚挙にいとまがありません。
そのような事故が起き得るのですから、やはり危険です。
電気こたつを点けっぱなしにして火事になるという事故は、多重化された保護機構により近年ではほとんど聞かれなくなりました(サーモスタットと温度ヒューズだけでも相当な効果が見込める)。
その為、今でこそめったに聞かれなくなりましたが、昔はこたつの事故というものが少なからずありました。
昔といっても電気ごたつの時代だけではなく、掘りごたつの時代からありました。
掘りこたつに入れる熱源は「煉炭」というものです。
粉末の炭に混ぜものをして固めて円筒形にしたもので、縦にいくつもの孔が開いているので黒いレンコンのようにも見えます。普通の木炭よりも火持ちが良く熱くなりすぎないので、こたつには最適です。
しかし、燃焼するからには酸素を消費しますし、炭酸ガス(二酸化炭素と一酸化炭素)も排出します。
その為、密閉した部屋で長時間こたつに火を入れていると、場合によっては酸欠や一酸化炭素中毒の事故に至ることがあります。
若い人はあまり知らないでしょうが、現在60歳以上の人なら、身近な人の知人がこたつの事故で亡くなったという話を一度や二度は聞いているはずです。私はまだ若いので知人の知人が死んだという話を又聞きしただけですが。
つまり、そのような事故はそれほど珍しい話ではなかったのです。
韓国では現在でも「オンドル」(一種のセントラルヒーティング)が暖房の定番ですが、それも毎年事故が起きています。
それらに比べると電気暖房は、こたつの安全性が高くなり、電気ストーブから電気ファンヒータやエアコンに移行したことも含めて、きわめて安全性が高いといえます。
「危険かも知れないが、心配するほどのレベルではないかも知れない」電気と、「炭酸ガスを排出し、火傷や中毒事故を起こすことも多い」炭素化合物。Nさんはどちらが安全だと思いますか?
関係ありませんが、この手の住宅って、建材費・デザイン費・工期分の人件費等が加味され、通常の数倍の建築費が掛かりますよね?
住宅販売では、薄利多売より1軒の単価を高くした方が儲かる仕組みになっています。
まあ、Nさんはあくまで顧客の安全のことを考えて言っているのであって、決して高い住宅を売ってボロ儲けしたいという卑しい意図があって言っているのではないのでしょうが。
3ページ目には「人間のガン細胞に送電線や電気器具から出る60ヘルツ電磁波を当てると、ガン細胞の増殖率は16倍にスピードアップされ、ガンを悪性化させることが確認された」と書かれてあり、その文章の見出しには「ガン細胞を16倍増殖させるIHクッキングヒーター」とあります。
その後に「ガン大国日本」ともあります。
私は言いたい。
「いや、その「りくつ」はおかしい。」
1点目。
実験に使った電磁波の出力や波形については言及されていません。
50/60Hz正弦波の大電力が供給される送電線の周囲では、渦電流かノイズか励起される磁気か何が影響しているのかは分かりませんが、他の場所に比べて癌患者が多いということは、確かにデータからも読み取れます。
しかし、IHクッキングヒーターの消費電力はそれよりもはるかに小さく、また不要輻射(電気機器から出るノイズ)の電力は更に小さく、ましてや50/60Hz正弦波が電磁波として空中に飛び出すわけではありません。
それに、ガン細胞に照射したということは、指向性を鋭くしたものでしょう。そうでなければ実験になりません。
指向性の鋭いアンテナから出された60Hz(電力・波形不明)の電磁波と、指向性皆無で、かつ家庭向け電気機器には厳しい規制により遮蔽されてほとんど漏れ出さない不要輻射ではまったく性質が違うのに、同じもののように考えるのは無理があります。
(ちなみに規制されているのは人体への悪影響ではなくラジオや無線の通信に影響を与えないようにする為)
「同じ電磁波じゃないか」と思っている人。
そもそも元素は、陽子と中性子が原子核を構成し、電子がその周りを回っている(+素粒子の類)という構造になっています。
酸素だろうが、窒素だろうが、アルゴンだろうが、鉄だろうが、金だろうが、ダイヤモンド(これは炭素ですが)だろうが、ウランだろうが、コバルトだろうが、ウンウンオクチウムだろうが、中身はどれも同じ陽子と中性子と電子なのです。
原料が同じでも、結合の仕方が違うだけで性質はまったく違うのです。
同じように電磁波でも、可視光と、赤外線と、紫外線と、X線とではまったく違う性質を持っています。
可視光の中でも、波長によって赤に見えたり青に見えたりするような違いはあります。
「同じ電磁波じゃないか」と言う人は、紫外線が色つきで見えるのですか?赤外線でレントゲン写真が撮れますか?
それを考えたら、波長も出力も違うものを一緒くたにして「同じ電磁波」として論じるナンセンスさが理解できると思います。
電磁波の影響を論じるなら、出力、周波数(波長は周波数から計算できる)、波形を一致させなければ無意味です。
IHヒーターは容器に渦電流を発生させて加熱するものであり、そこから漏れ出す電磁波は60Hz正弦波とはまったく違う性質を持っているはずです。
つまり、上の実験結果はIHクッキングヒーターとは何の関係もないのに、それを強引に結びつけているのです。
2点目。
培養基が活性化したのと、細胞が活性化したのと、どう区別したのでしょうか?(人体に残っているガン細胞を使ったわけではあるまい?)
ガン細胞が活性化したのなら、通常細胞は活性化しなかったのでしょうか?
ネタ元の研究者(テキサス衛生大学のウェンデル・ウィンター博士)がどんな論文を書いていたのかは知りませんが(少なくとも私が読んでも理解できないレベルでしょう)、実験の諸条件を一切無視して文脈だけ切り取って自説の宣伝に利用するという手法は、真面目に研究している者を貶める行為ですらあります。
また、論文ですらないのなら、研究成果として認められるものではありません。
論文で発表したものなら、同業者による追試を経て確からしさが高められます。
単一の研究機関による発表だけを鵜呑みにすると、測定方法が不適切だったとか、計測に誤りがあったとか、様々な問題が指摘されて否定されることも珍しくありません。
常温核融合は追試で否定的な結果が出るまでは誤りだったと証明できませんでしたし、ES細胞の捏造問題もありました。
好ましいデータを考察なしに無批判に受け入れるのは“トンデモ”といいます。
3点目。
日本は「ガン大国」だそうです。
しかし、日本の平均寿命は世界でもトップクラスの高さだというのは明白な事実です。
衛生状態が良いので感染症や食中毒で死ぬ人が少なく、脳卒中などの死亡原因上位の病気による死者が減っているのです。
他の病気で死ぬ人が少なければ、治療の難しい癌で死ぬ人は増えるに決まっています。
小型核ミサイルをぶち込まれてもビクともしなかった「ウルトラスーパーデラックスマン」ですら、ウルトラスーパーデラックスガン細胞の治療ができなくて死んだのです。(これはマンガですが)
それを「ガン大国」と称するのなら、このNPO法人のスタッフはみんな肥満になって心臓病で死んでください。
いや酒をしこたま飲んで脳卒中で死ぬべきだ。
2006-09-27(水) 「電磁波問題を考える会」について考える その2
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3ページ目の左端にはこうあります。
『「子供白書2003」には家電製品が増え始めた70年代から男子の死産率は、女子に比べ2.2倍と他国に比べ驚異的に高いことが分かりました。」
これは事実ですが、実はデータの解釈によりネガティブな結論を引き出すというからくりがあります。
男子の死産率が高くなったのではなく、女子の死産率が低くなったのです。
1961年(昭和36年)をピークに低下傾向にある中、男子の死亡率も下がっているのですが、それ以上に女子の死亡率が下がっているのです。
下記サイトのデータを見れば全体の死産率の低下傾向がはっきりと見て取れます。
人口動態統計100年の年次推移<リンク削除>
性別に関係なく起こり得る外的要因によるリスクが低くなれば、遺伝的に強い女子の方が胎内で生きられる可能性が高くなるのは当たり前です。
つまり、データの解釈を適切に表現するなら「男子の死産が2倍以上多い」というより、「女子の死産が半分以下」と言うべきなのです。
危険性をアピールする為にネガティブな表現を使っているのですが、データそのものは正しく、シンプルな論理のすり替えなのでかえって気づきにくいかも知れません。
かつて、甘味料「サッカリン」は発癌性があるとされ、法律で食品への使用が禁止されました。
しかし、追試により「発癌性はほとんど認められない」と、完全に否定されています。
「でもちょっとはあるかも知れないからやっぱり危険だ」と思ったあなたは、今から何も食べないでください。
白米でもジャガイモでも豚肉でも大豆でも大根でも、同じ結論しか出せないでしょう。
しかし、「人工甘味料」という響き、そして「かつて発癌性があると言われていた」というだけで、未だにサッカリンは危険だと思っている人もいます。
(大手小町で見たので若い主婦だと思う)
ある食材に「危険性がある」とされる場合、その他の食品に比べてどれだけリスクの差があるのか、逆にそれを使わないことのデメリットは何なのか、といった要素を多角的に分析しなければなりません。
近年「風邪薬は姑息的医療(対症療法)で、却って治りが遅くなるので使うべきではない」という主張が見られるのですが、これもデメリットだけを見て判断しているものです。
高熱で体の節々が痛くて寝ていられない時には解熱剤を使えばぐっすり寝られるのではないか。
鼻水が止まらなくて呼吸が苦しくて鼻をかみすぎて真っ赤になっている時には鼻水止めで気持ちが楽になるのではないか。
私の場合、風邪を引くとよく喉を痛めるのですが、咳がひどくなりつつある時に我慢していると、そのうち呼吸が苦しくなって胸の辺りが痛くなり、病院に行って「肺炎になりかかっています」と言われたことが三度くらいありました。
つまり、私のような体質には、咳止め薬は単なる対症療法に止まるものではないのです。
「買ってはいけない」論者は対症療法を全否定していますが、その一面的な見方を鵜呑みにして治療を拒んで重症化する人がいたら彼らは責任を取れるのでしょうか?
もっとも、風邪薬を飲めば風邪が治ると思っている人もいるので(抗生物質は二次的な細菌感染を防ぐ為に処方されるものであってウィルスには効かない)、その勘違いを是正することを否定するつもりはありませんし、むしろそのような啓蒙活動こそ本当に必要なことではないかと思います。
私が疑似科学を嫌うのは、ノイズに埋もれて真の問題から目を逸らしてしまう危険性があるからです。
危険でないものを危険だと喧伝して回ると、大抵「そんなに気にしたら何もできない」と考えるようになり、本当に問題のあるものが区別できなくなるのです。
要するに「オオカミ少年」。
不要輻射に害があるのかどうかは不明ですが、真の問題を見誤らせるノイズには明らかに害があります。
理屈に合わない強引な論理誘導に騙されてはいけません。
物事を多角的に見る姿勢を身につけ、真の問題を見極めることが必要です。
(私の知識は所詮素人レベルでまだまだ不充分ですが)
社会問題は黒か白かで割り切れるほど単純ではありません。
単純化された主張には何か裏がある。そう考えるところから始めましょう。
ところで、この会の人たちは電磁波が嫌いなのですから、出力の強い携帯電話はもちろん、出力の弱いPHSやポケベルすら使っていないのでしょうね?
コードレス電話も使っていないのでしょうね?
いや、黒電話や電話線からも電磁波が出ているのですから、固定電話すら持っていないのでしょうね?
遠距離通信には狼煙でも使っているのでしょうか?
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記:2019−10−13
報告書の一部を紹介します。
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環境政策における予防的方策・予防原則のあり方に関する研究会報告書
平成16年10月
環境省では、環境影響の発生の仕組みや影響の程度などについて科学的な不確実性が存在する場合に環境政策決定者はどのように取り組むべきかという問題に対し、近年国際的な議論の対象となっている予防的取組方法(precautionary approach)ないし予防原則(precautionary
principle)の考え方について、環境政策分野におけるあり方の検討に資するため、委託研究会において、内外の基本的な情報を収集・整理・検討し、研究会の成果を報告書として取りまとめました。
6.「予防」に関する課題(提言)
今後更に科学技術が進歩し、また、人間活動が量的に拡大するとともに質的にも多様化する中で、人間の行動が環境に様々な面で複雑で、ときに重大な影響を与えていくことが予想される。
このため、科学的不確実性のある状況下で適切に判断し行動するための「予防」の考え方は、今後ますます重要になっていくと考えられる。
このため、まずは、環境基本計画に基づき、様々な分野で予防的取組方法に基づいた取組を推進していくことが重要である。
また、今後予定される環境基本計画の見直し作業の中で、これまでの実施状況を踏まえ、「予防」の考え方を更に充実強化していくことが必要である。
本研究会では、「予防」に関して様々な見解が錯綜している状況に鑑み、基本的な情報の整理に重点を置いて検討を行ってきたが、今後は、この報告を活用し国民の各層の間で広く「予防」に関する理解を進めるとともに、我が国の環境政策における「予防」の適用のあり方や枠組みについての検討をさらに進めていくことが必要であると考えられる。
また、「予防」に関しては、今後とも先進国のみならず途上国も含め国際的に様々な議論が進められていくべきものであり、我が国としても、国際的な議論に参加・貢献するとともに、国際的な議論を推進していくための方策について検討していく必要がある。
なお、現在我が国では、precaution は一般的には「予防」と翻訳されているため、本報告書でも「予防」という用語を使用した。
しかし、先に述べたように現行法令の中には、本報告書とは異なる意味の『予防』が多数使用されていることを踏まえると、precautionの考え方を将来法律・政令に明記する必要性が生じたときのことを考えれば、『予防』という用語以外に、科学的不確実性のある状況下で適切に判断し行動するという意味での適切な用語についても検討しておく必要があると考えられる。
添付資料の中から、
Q7.予防原則を適用するにあたっての問題点は
A7.予防原則に関しては、未だ正式な定義、解釈が存在しないこと、科学的不確実性がある中で適用されるものであることなどから、次のような問題点が指摘されています。
(1)「極端な」解釈
予防原則の適用に関しては、正式な定義がないことから、政府、産業界、環境団体などの関係当事者が、それぞれの立場、姿勢に基づき、解釈し意見を表明してきたのが現状です。
したがって、それらの解釈、意見の中には、科学的なリスクアセスメントの実施やリスク削減策における費用対効果の検討などを考慮することなく、「予防原則適用=少しでも疑わしきものはすべて禁止」「不確実性に係る責任を一方的に製品開発側に負わせるべき」といった、極端と言わざるを得ない解釈も一部で主張されています。
(略)
Q8.予防原則を実際に適用した事例はありますか
A8.
(1)オゾン層保護に関する国際条約
予防原則を適用した初期の事例として、オゾン層破壊に関する国際条約が挙げられます。
地球を取り巻くオゾン層は、生物に有害な影響を与える紫外線の大部分を吸収していますが、冷蔵庫の冷媒、電子部品の洗浄剤等として使用されてきたクロロフルオロカーボン(CFC)や消火剤のハロンは、大気中に放出され成層圏に達すると塩素等を放出し、オゾン層を破壊すると考えられています。
オゾン層が破壊されると、地上に達する有害な紫外線の量が増加する結果、人体への被害(皮膚癌、視覚障害の増加等)や自然生態系に対する悪影響が生じることが恐れられています。
このようなオゾン層破壊のメカニズムとその悪影響は、1970年代中頃より指摘され始めました。
その後、国際的な議論が行われ、1985年に、オゾン層の保護を目的とする国際協力のための基本的枠組みを設定するウィーン条約が、1987年に、同条約の下で、オゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、当該物質の生産、消費及び貿易を規制して人の健康及び環境を保護するためのモントリオール議定書が、それぞれ採択されるに到っています。
モントリオール議定書の序文に、締約国は“precautionary measures”を採るとの記述があるように、議定書締約国は、同議定書採択の段階におけるオゾン層破壊のリスクについての科学的な解明が不完全であったにも拘わらず、オゾン層破壊物質の規制措置に合意しました。
その後、締約国間でオゾン層の破壊状況と規制措置につき、更に科学的知見が充実された結果、
物質の追加、規制スケジュールの前倒し等の規制措置の強化が行われてきています。
(2)狂牛病
次に、欧州において、予防原則を適用したと言われる比較的最近の事例として、1996年3月に欧州委員会が採った狂牛病(BSE、bovine spongiform
encephalopathy、牛海綿状脳症)に関連する英国からの牛肉輸出禁止措置を紹介します。
狂牛病は、プリオンと呼ばれる特殊な蛋白を病原体とした、牛の脳の病気です。狂牛病にかかった牛は、脳を冒され、歩くこともままならなくなり、死亡します。狂牛病にかかった牛の脳は、非常に細かい穴が沢山空いたスポンジのように見えることから、狂牛病は、牛海綿状脳症と呼ばれますが、人にもクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と呼ばれる海綿状脳症があります。
CJDの主な症状は、痴呆ですが、これもプリオンが原因で起こると言われています。
とはいえ、プリオンは、動物の種によって異なるため、人が狂牛病に感染した牛を食べてもCJDにはならない、と考えられてきました。
対策が採られる契機となったのは、1996年3月の英国政府の助言役を務める海綿状脳症諮問委員会(Spongiform
Encephalopathy Advisory Committee、SEAC)による発表でした。
SEACは、人に新しい型の非定型的CJDが発生しており、その原因が狂牛病にかかった牛を食べたことであることを否定できない、との見解を示したのです。
SEACの発表とほぼ同時期に、EU加盟国の多くは、英国からの牛肉の輸入禁止措置を採りました。そして、欧州委員会は、その1996年3月27日の決定で、狂牛病感染のリスクを減ずるため、英国からの牛肉の輸出を禁じたのです。
狂牛病の牛から人への感染についての科学的解明は、未だに不完全です。
しかし、1996年3月のSEACの発表等を受けて、欧州委員会は、予防的措置として、英国の牛肉の輸出を全面的に禁じたのです。その後、牛肉の全面輸出禁止措置が過剰であるなどとして、英国の畜産農家が欧州委員会の決定を基に輸出禁止措置をとった英国政府を相手取り訴訟を提起しましたが、裁判所は、1998年5月の判決でその訴えを退けました。
その判決の中で、裁判所は、予防原則を掲げているマーストリヒト条約の第130(r)条(現EC条約第174条)に言及した上で、欧州委員会がリスクの解明を待つことなく採った輸出禁止措置を支持しました。
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関心のある方は、環境省の報告書原文を読んでください。