1.フィンランドの20kHz 磁界の影響に関する研究
2.高調波や過渡的な磁界がメラトニン量に影響しないという研究結果
3.マウスに20KHz鋸波状波磁界を曝露したときに、晩発性の影響が観察された という研究
4.20KHzなどの中間周波数磁界の発がん性評価結果
5.宮越らの2007年の研究
6.第209回鉄道総研月例発表会(2008年2月14日)に発表された内容
7.2012年の芳賀らの60kHzでのDNA損傷の研究
8.BEMS年次総会2012年での研究
9.BEMS 2012
ChristらのIH調理器に関する研究
10.100kHz電磁界のマウスへの影響 1996年冨岡の研究
10A.100KHz電界のマウスへの影響 1998年冨岡らの研究
11.2005年電中研の中間周波磁界の研究報告
11A.2006年電中研の中間周波磁界の研究報告
11B.2007年電中研の中間周波磁界の研究報告 小核形成
11C.2007年電中研の中間周波数の生殖への影響の研究
11D.2008年電中研の中間周波磁界の研究報告
11E.2008年電中研V08003西村らの中間周波磁界の研究報告
11F.2008年電中研V08011西村らの中間周波磁界の研究報告
11G.2009年電中研V09008西村の中間周波磁界の研究報告
11H.2009年電中研V09021中園の中間周波磁界の研究報告
11I.2012年の電力中研V04根岸らの中間周波磁界の研究報告
12.20KHz鋸歯状波磁界の影響に関する研究
13.電気学会技術報告書2006年にみる中間周波数電磁界の生体作用研究の動向
14.IH炊飯器による心臓ペースメーカの誤動作
15A.デルガドDelgadoらの低周波磁界への曝露実験1982年
15B.Ubedaの1983年デルガド継続研究
15C.Maffeoの研究1984年デルガドの実験は再現せず
15D.Maffeoの研究1988年デルガドの実験は再現せず
15E.デルガドの研究の追試プロジェクトの結果
15F.電中研2005年西村らの中間周波磁界レビュー
15G.電中研西村らの研究2005年
15H.電中研西村の研究2006年
15I.電中研西村の研究2007年
15J.電中研西村らの2008年研究
15J.電中研西村らの2010年研究
15K.電力研西村らの2011年研究
16.Aertsらの2017年 中間周波数曝露実測
17.IH調理器使用と妊娠影響Tokinobuのら2021年研究
情報コーナ
作成:2006−3−2
掲載誌:Teratology 1998 Nov;58(5):190-6.
タイトル:Effects of gestational exposure to a video display
terminal-like magnetic field (20-kHz) on CBA/S mice.
VDTに似た20kHz磁界をCBA/Sマウスに母体の胎児の段階で曝露した場合の影響
研究者:Huuskonen H, Juutilainen J, Julkunen
A,et al;
Laboratory of Toxicology, National Public Health Institute, Kuopio, Finland
概要:
磁界が生殖に与える影響に関して、関心が寄せられてきた。
CBA/Sマウスでこれまでに報告されたVDTから放射されるパルス性磁界による胎児の致死性に与える影響を確認するために、同じ腫の動物を用いて、発育に関連する毒性実験を行った。
つがいの一方(メス)のCBA/Sマウス(1群あたり80-86匹の妊娠したメス)に懐胎0-18日から連続して、20kHzの鋸歯状波磁界を曝露した。
磁界は15マイクロテスラp-pである。
この磁界強度は、これまでに、体内吸収(胎児の発育がうまくいかない場合は、体内にそれらを吸収してしまうこと)の増加が報告されている強度である。
懐妊18日目に母体を殺し、血液、骨髄サンプルは血液学的な解析、細胞核の解析のために蒐集した。
母体にあった胎児の数を数え、子宮の状態を調査した。
母親や胎児の体重、一匹の母体の中の胎児の数、移植性転移、体内吸収、死亡、生きて生まれた胎児、外部もしくは骨格系の異常に関しては、有意な差異はなかった。
磁界は、母体の骨髄の赤血球の細胞核や血液細胞の数に変化を与えなかった。
体内吸収の平均値は、対照群に比べて磁界曝露群では僅かに増加したが、統計的に有意な増加ではなかった。
この結果から、20kHzの磁界は生殖、血液学的、染色体異常誘発性に関する影響は見られない といえる。
作成:2006−3−5
掲載誌:Bioelectromagnetics. 2003 Jan;24(1):12-20
タイトル:Acute exposure to 50 Hz magnetic fields with
harmonics and transient components: lack of effects on nighttime hormonal
secretion in men.
高調波と過渡的な成分を含んだ50Hz磁界の急性曝露:人の夜間のホルモン分泌に影響せず
研究者:Kurokawa Y, Nitta H, Imai H, Kabuto M.
Regional Environment Division, National Institute for Environmental Studies,
Ibaraki, Japan
概要:
この研究の目的は、夜間のホルモン分泌、特にメラトニンに関して低周波磁界が影響しているかを調査することである。
10名の健常者が実験室に、一晩、間隔をおいて2回、滞在した。
一晩は、50Hz20μT(正弦波)に3次(30%)と4次(10%)の高調波を重畳させ、かつ過渡的なバースト波形も重畳した。他の一晩は盲検での対照試験とした。
一晩の間(20時から翌朝8時まで、23時から7時までの就寝時間を含む)、血液中のホルモン量(メラトニン、成長ホルモン、コルチゾール、プロラクチン)を測定するために、1時間おきに血液を採取した。また、22時から2時にかけては眠りに伴って発生する成長ホルモンの急激な変化を観察するために、10分おきに観察した。
二晩の観察の結果、4種のホルモンの分泌に関しては有意な差異は見られなかった。
この結果は、住環境下で曝露する低周波磁界もしくは中間周波数磁界は人の夜間におけるホルモン分泌、特にメラトニン分泌に関して急性影響はないといえる。
参考:
コルチゾール:副腎皮質によって産生・分泌されるステロイドホルモンの1つ
プロラクチン:下垂体前葉の催乳ホルモン
概要です。
掲載誌:Bioelectromagnetics 1995;16(4):263-7
タイトル:Neurochemical
effects of a 20 kHz magnetic field on the central nervous system in prenatally
exposed mice.
20kHz磁界を母体内で曝露した場合の、マウスの中枢神経系における脳神経化学的な影響
研究者:Dimberg
Y.
Department of Radioecology, Swedish University of Agricultural Sciences,
Uppsala, Sweden
概要:
C57/B1マウスを、妊娠中(懐妊0-19日)の間、20kHz磁界を曝露した。
曝露磁界は、対象形な鋸歯状波の磁界15μTp-pである。
19日後、磁界曝露は停止し、マウスは一匹ずつ、普通の実験室環境で飼育された。
生後1日目、21日目、308日目に、子鼠の脳における脳神経系指標を計測し、脳の重量も測定した。
対照群に比べて、磁界曝露の子鼠は生後1日目、21日目における脳の重量に差異はなかった。
しかし、生後308日目の脳の重量では、磁界曝露群で有意な減少が検出された。
各調査時点における大脳皮質、海馬、隔膜、小脳の重さ、たんぱく質、DNAレベル、神経発育因子、アセチルコリンエストラーゼ、小脳における生後21日目の希突起神経膠細胞の指標としてのCNF活性には、有意な差異はなかった。
大脳皮質における磁界への反応は複雑なパターンを示した。
磁界曝露は、DNAレベルを下げ、CNF活性、アセチルコリンエストラーゼ(AChE)を増加させた。
生後308日目では、対照群に比べて、磁界曝露群では、小脳におけるDNA量が有意に減少し、大脳皮質におけるCNP活性が増加していた。
母体内での磁界曝露の影響で、ほとんどの効果は、電離放射線を照射した場合に類似しているが、その影響度は弱い。
しかしながら、磁界に対するそれぞれ異なる因子への応答を明確にするためには、曝露期間は電離放射線での試験に比べると長期曝露を必要として、現れる反応も晩発性である。
作成:2006−4−18
以下は、第32回日本トキシコロジー学会学術年会 2005年で報告された研究結果です。
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タイトル:中間周波磁界曝露装置の開発と微生物復帰突然変異試験による磁界の変異原性評価
研究者:中園聡, 池畑政輝, 西村泉, 重光司, 根岸正
その概要です
[背景]近年、様々な電気機器の発達により、中間周波数帯の電磁界の利用が増加しており健康影響に関する関心が高まりつつある。しかし、中間周波電磁界(300Hz〜10MHz)の生物影響については、ほとんど研究されていない。
[目的]in vitro試験が可能な中間周波磁界曝露装置を開発し、微生物復帰変異試験により、2kHz、20kHz、60kHzの中間周波磁界の変異原性について検討する。
[方法]in vitro試験用の中間周波磁界曝露装置を開発した。
この装置を用い、6種類の試験菌株(サルモネラ菌4菌株(TA1535、TA1537、TA98、TA100)および大腸菌2菌株(WP2 uvrA、WP2 uvrA/pKM))に対し、2kHzで910μT、20kHzでは、270μTおよび1.1mT、60kHzでは110μTの磁界を、それぞれ48時間曝露した。
[結果]t-検定で復帰変異コロニー数を評価したところ、いずれの菌株でも再現性のある有意な復帰変異コロニー数の変化は見られなかった。
また、各試験結果の平均値を用いたプール解析でも有意な差は見られなかったことから、本研究で検討した高磁束密度の中間周波磁界には、変異原性がないことが明らかとなった。
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関心のある方は、全文原著を入手して、読んでください。
この結果によれば、IH調理器の動作周波数(20kHz、オールメタル対応の場合は60kHz程度)の磁界に270μT(ICNIRPの一般公衆に対する暴露基準値 参考値である6.25μTの50倍)では、細胞実験では変異原性はなく、発がん性は否定されます。
概要を仮訳しました。 作成:2007−6−21
掲載誌:Bioelectromagnetics Published Online: 9 May 2007
タイトル:Magnetic fields generated by an induction heating
(IH) cook top do not cause genotoxicity in vitro
IH調理器からの放射磁界はインビトロで遺伝子毒性を持たず
研究者:Junji Miyakoshi *, Emi Horiuchi, Takehisa Nakahara, Tomonori Sakurai
概要
家庭でのIH電磁調理器の使用の普及しており、特に日本では、この調理器に関する電磁界の安全性に不安が集まっている。
中間周波数磁界による細胞の遺伝子毒性に関して培養細胞を使って実験をした。23kHzで532-20μTの磁界装置をCO2培養器の中に取り付けた。
2時間532μTの磁界曝露では、CHO-KI細胞の成長に影響は無かった。突然変異も起こさなかった。
中間周波数磁界の2時間曝露では、DNAの1重連鎖と2重連鎖にも障害は発生しなかった。
擬似曝露に比較してHPRT軌跡における突然変異の頻度にも有意な差異は無かった。
今回の曝露レベルはICNIRPの推奨値より80倍も強い。
この実験から中間周波数磁界の2時間曝露はバクテリアと中国ハムスターの細胞における細胞毒性はないといえる。
しかし、細胞の他の機能への影響はあるかも知れないので、継続した研究は必要である。
興味のある方は、原文全文を入手して読んでください。
タイトル;中間周波帯磁場の生物作用評価
研究者:環境工学研究部(生物工学) 主任研究員 池畑 政輝
近年、世界保健機関(WHO)において電磁界の健康リスク評価が進められるなど、電磁界が生物に与える影響に対する社会の関心が高まっている。
鉄道総研では、鉄道車両などにおける電磁界環境の適切な評価を目的として、中間周波帯の電磁界が生物に与える影響を研究してきた。
これまでに、kHz帯の磁場を用いた実験から、車両等の実環境中で発生しうる強度の中間周波帯磁場は、発ガンなどの因子となる変異原性を示さないことを明らかにしてきた。
本発表では、これらの実験結果を報告するとともに、国内外における電磁界リスクの評価や規制の動向も紹介する。
まとめ から
2kHzで0 .91mT、20kHzで1.lmTの中間周波磁場について、細菌を用いた変異原性試験(エイムス試験)により変異原性を調査したが、変異原性は認められなかった。
更に、哺乳類培養細胞としてマウス由来細胞を用いた変異原性試験により2及び20kHz、0.8mTまでの生物作用を検討したが、変異原性ならびに急性毒性は認められなかった。
興味のある方は、原文全文を入手して読んでください。
記;2012−5−11
掲載誌:平成24年電気学会全国大会予稿集
タイトル:中間周波帯の磁界曝露による遺伝子の損傷評価
研究者:福井 健介,芳賀 昭ら(東北学院大学大学院)、
1.研究目的
本研究では細菌細胞に磁界を直接曝露し、DNA損傷を評価する。
3.DNA損傷の評価方法
オールメタル対応のインダクション調理器具と同様な60[kHz]、1500μTの磁界を直接培養液に対して曝露させ、0、0.5、1、2、3[h]毎に発光量と濁度を測定した。
同様に磁界に曝露させていない菌と比較し、発光量の相違からダメージの有意性を検証する。
4.実験結果
実験では0.5時間で標準偏差が大きく、正確な発光比率を測定出来なかった。
曝露時間1時間および2時間の標準偏差は小さく、安定して発光比率の変化を測定できることが確認できた。
図2に、上記の結果に基づいて曝露時間0、1、2時間の、磁界曝露を行った菌の発光比率を、曝露を行わなかった菌の発光強度を基準として求めた結果を示した。
5.考察
本実験の結果、2時間の曝露を行った場合に発光比率が上昇する傾向が見られた。
これは、磁界曝露による影響と考える事もできるが、使用した菌体の活性の変化による影響の可能性も考えられる。
また、このような発光比率の変化について、さらに曝露時間を延長して確認することが必要と考えられる。
図2
関心のある方は、この研究のレジメ全文を入手して、読んでください。
記:2012−11−17
以下の2研究が報告されている。
10. Session PA: Poster Session
A PA67
Effects of exposure to 21kHz magnetic fields on estrogen-regulated gene
expression in MCF-7 cells
21KHz磁界曝露によるMCF-7細胞におけるエストゲンが関与する遺伝子発現への影響
Yuki Ogasawara1, Masateru Ikehata2, Sachiko Yoshie2, Yukihisa Suzuki3, Satoshi Nakasono4, Chiyoji Ohkubo5 & Kazuyuki Ishii1
1:Meiji
Pharmaceutical University, Kiyose, Japan, 204-0004
To evaluate biological effects of intermediate frequency magnetic fields
(IF-MF), estrogen-regulated gene expression under magnetic fields were studied
using ERE-luc integrated MCF-7 cell.
Exposure to IF-MF (21 kHz, up to 3.9mT) for 24 hr did
not affect luciferase activity.
Also, no significant difference in luciferase activity was observed by IF-MF
exposure for 4 days although slight tendency of increase was observed.
These results suggest that IF-MF is unlikely to affect directly
estrogen-regulated gene expression.
中間周波数磁界の生体影響を研究するために、磁界曝露下におけるエストロゲン関連の遺伝子発現を、ERE-lucを埋め込んだMCF-7細胞を使って、調査した。
21KHzで、最大3.9mT、24時間の中間周波数磁界曝露ではluciferase活性は影響されなかった。
さらに4日の曝露では、少しの変化は観察されたが、有意な変化は観察されなかった。
この結果は、中間周波数磁界曝露はエストロゲンが関連する遺伝子発現に影響するとは言えない。
12. Session PB: Poster Session B PB46
Effects of abdominal local exposure of intermediate frequency (21kHz)
magnetic fields on fetal development in rats
中間周波数電磁波の腹部への局所曝露による胎児の発育への影響、ネズミでの実験
Akira Ushiyama1, Shin Ohtani2, Machiko Maeda2, Yuki Hirai3, Yukihisa Suzuki3, Keiji Wada3, Naoki Kunugita1 & Chiyoji Ohkubo4
1:Department of
Environmental Health, National Institute of Public Health, Wako, Japan,
351-0197
Due to the lack of science based evidences of exposure effects of intermediate
frequency magnetic fields (IF-MFs), we teratologically evaluated them by using
pregnant rats.
Using newly-devised in vivo exposure apparatus which can expose IF-MFs locally
to the abdomen of rats being similar exposure conditions with pregnant women
standing close to induction heating (IH) cooking hob.
Obtained data are currently under analysis.
中間周波数磁界の曝露による影響に関する科学的な確証が少ないので、妊娠ネズミを用いて、奇形学的に評価を行った。
妊娠女性がIH調理器の前に立った条件と類似の条件になるように、ネズミの腹部が局所的に磁界に曝露するような曝露装置を新規に作成した。
得られたデータに関しては現在、解析中である。
Long Abstractから一部抜粋
We set MFs intensity to 10.3 mT at the center of
abdominal surface. Exposure (or sham exposure) was done for 1hr/day from
gestation day 7 up to 17.
磁界は腹部の表面中央部で10.3mTの強度に設定した。
曝露・疑似曝露は懐妊7日目から17日目まで1日1時間の曝露とした。
We examined numeral dosimetry using a pregnant rat model of gestation day 16
rat. Under the exposure conditions described above, induced electric field of
each fetus ranged between 0.611 to 5.74 V/m (mean 3.01V/m) depending on the
relative position to the spiral coil.
The mean value is higher than the basic restriction to general public exposure
(2.83 V/m at 21 kHz) of ICNIRP Guidelines [3].
懐妊16日目の妊娠ネズミをモデルに数値解析で曝露を調べた。
この研究での曝露条件ではそれぞれの胎児に誘導される電界強度は磁界コイルとの相対的な位置によって0.611から5.74V/mの範囲にあり、平均値は3.01V/mであった。
この平均値はICNIRPガイドラインに規定する一般公衆への基礎指針値(21KHzでは2.83V/m)を超えている。
記:2012−11−27
掲載誌:Bioelectromagnetics Vol.33:p695-705 (2012)
タイトル:Exposure of the Human Body to Professional and
Domestic Induction Cooktops Compared to the Basic Restrictions
業務用と家庭用のIH調理器への人体曝露、基本制限との比較
研究者:Andreas Christ at al:
Foundation for Research on Information Technologies in Society (IT’IS), Zurich, Switzerland
概要
We investigated whether domestic and professional induction cooktops comply
with the basic restrictions defined by the International Commission on
Non-Ionizing Radiation Protection (ICNIRP).
家庭用と業務用のIH調理器がICNIRPガイドラインで定めた基本制限に合致しているか調査を行った。
Based on magnetic field measurements, a generic numerical model of an induction
cooktop was derived in order to model user exposure.
磁界測定に基づき、使用者の曝露モデルを得るために、IH調理器の一般的な数値モデルを導き出した。
The current density induced in the user was simulated for various models and
distances.
使用者の体内に誘導する電流を、様々なモデルや距離で数値解析を行った。
We also determined the exposure of the fetus and of young children.
また、胎児や幼児の曝露も検討した。
While most measured cooktops comply with the public exposure limits at the
distance specified by the International Electro-technical Commission (standard
IEC 62233), the majority exceeds them at closer distances, some of them even
the occupational limits.
殆どのIH調理器はIEC規定(IEC62233)で定める距離では一般公衆の曝露基準に適合していたが、大多数のIH調理器はより近接した距離では基準を越え、いくつかのIH調理器では職業的な曝露基準も超えていた。
The maximum current density in the tissue of the user significantly exceeds the
basic restrictions for the general public, reaching the occupational level.
体組織に流れる誘導電流の最大値は、一般公衆曝露の基本制限値を越え、職業的曝露の基本制限値に近い値となった。
The exposure of the brains of young children reaches the order of magnitude of
the limits for the general public.
幼児の脳の曝露では、誘導電流は一般公衆曝露の基本制限値のオーダーに達した。
For a generic worst-case cooktop compliant with the measurement standards, the
current density exceeds the 1998 ICNIRP basic restrictions by up to 24 dB or a
factor of 16.
測定規格に適合した一般的な最悪条件のIH調理器では、誘導電流はICNIRPの1998年ガイドラインに規定する基本制限値の24dB(実数では16倍)大きい。
The brain tissue of young children can be overexposed by 6 dB or a factor of 2.
幼児の脳での誘導電流は6dB(実数で2倍)と大きく、過剰な曝露になりえることが判った。
The exposure of the tissue of the central nervous system of the fetus can
exceed the limits for the general public if the mother is exposed at
occupational levels.
胎児の中枢神経の組織への曝露での誘導電流は、妊婦が職業的な曝露基準値並みの磁界曝露を受けているとすれば、一般公衆曝露の基本制限値を超えるといえる。
This demonstrates that the methodology for testing induction cooktops according
to IEC 62233 contradicts the basic restrictions.
今回のこの結果は、IEC62233に基づくIH調理器の試験方法が、基本制限と矛盾していることを示している。
This evaluation will be extended considering the redefined basic restrictions
proposed by the ICNIRP in 2010.
これらの評価は、ICNIRP2010年のガイドラインに提唱されている再定義された基本制限を念頭に、継続する予定である。
関心のある方は、全文を入手して読んでください。
記:2017−7−25
以下の研究がある。
掲載誌:北里医学 261429〜435,1996
タイトル:低周波電磁波のマウス水晶体への影響
研究者:冨岡 敏也
概要:
低周波電磁波の水晶体への影響をBALB/cマウスを用いて検討した。
マウスに100 kHzの電磁波を1, 2, 3,6ヵ月間曝露し,水晶体中のNa, K, Ca及び,還元型グルタチオンを測定した。
6ヵ月曝露群については組織学的にも検討した。
曝露1ヵ月では水晶体中のCa が有意に減少し,曝露2 ヵ月ではCaは対照群と比較して減少しているものの有意差はなかった。
しかし,Na の有意な増加が認められた。
曝露3, 6ヵ月には水晶体中のCaは有意に増加していた。
水晶体中のK は対照群と比較して有意な変動はなかった。
還元型グルタチオンは曝露6ヵ月で有意に減少していた、組織学的には赤道部でbow構築の配列の乱れと線維の膨化を認め,前皮質線維,後嚢下線維の膨化が明らかに認められた。
以上の結果から,100kHzの低周波電磁波の長期曝露では水晶体に影響を及ぼし,水晶体混濁現象を引き起こす可能性を指摘した。
以下は本文から、
・実験状態:
50p四方のコイルを用いている。
・実測した電場は300V/m,磁場は30nTであった。
BEMSJのコメント:
1.曝露強度は、ICNIRPの1998年ガイドラインに規定する一般公衆への曝露限度値と比較すると、磁界は低いが、電界は限度値の3倍を超える強度である。
強い電界によって体表面の毛や目の角膜などに影響が出たのかもしれない。
この実験が、100kHzの電界曝露に関するものとなれば、こうした周波数帯では電界の規制を考慮しなければならない、という意味になる。
電磁波の曝露規制に関して、こうした周波数帯の電磁波曝露規制は磁界に関して行い、電界規制は必要がないような雰囲気であるが、そうも言っておられないことになるかもしれない。
2.曝露コイルの電磁界強度分布
手持ちの電磁界解析ソフトで、この実験に用いられた曝露装置の電磁界強度を推定してみた。
50cm四方、1回巻のループアンテナ 直径0.5o 自由空間に配置
ループの中心から片方の素子までの電磁界の強度分布を計算
周波数は100kHzで行いたいが、EZNECの限度で、小さすぎるループで計算不可能、
よって計算が可能な2MHzまでアップさせた。 入力電力は10mW。
結果は、中心部の電界強度 300V/m程度となり、磁界強度は100μT程度、空間インピーダンスは約4オーム程度となった。
この計算から、冨岡の実測値は磁界の測定値がおかしいといえる。
もしかして30nTとあるが30μTの間違いかもしれない。
すくなくともこのEZNECでの推定では、電界が300V/mもあるループコイルの内部に発生する磁界は100μT程度になる。
空間インピーダンスもスモールループアンテナの理論通りに、4オーム程度と低インピーダンスになっている。
冨岡らの計測では、空間インピーダンスは30Kオームと大きくなり、ループコイルからの電磁界放射理論と乖離している。
3.これらのことから、冨岡らの研究は、測定を何らかの理由で間違え、低い電磁界強度と思いながら、実際は100kHzの電磁界で、ICNIRPの1998年ガイドラインに規定する一般公衆に対する曝露レベルを大幅に超える強度での実験結果と言えるかもしれない。
記:2013−4−16 修正:2017−7−31
アイピピの羽根邦夫のブログに以下の解説がある。
**************************
http://wavesafe-ipipi.blogspot.jp/
電磁波対策製品WAVESAFE & iPiPi開発日記
【電磁波による障害の医学的エビデンス】
(略)
ハツカネズミを使った動物実験では写真(この項への転載では割愛)の様に明らかに影響が有り、特に老化現象が顕著でした。
この写真は1998年に冨岡らがマウスを使って、毎日24時間を半年間、100kHz、300V/m、0.3μTのCRTによる被曝の条件で実験をした結果です。
マウスの目は全部が黒目ですが、水晶体がダメージを受け、白内障になって白くなっています。
電磁波の影響は目だけでなく、毛がボロボロになって老化も進んでいます。
実験条件等は拙著に有ります。
(略)
ちなみに、0.3μTと言う磁界強度はICNIRPの規制値以下で、ブラウン管を製造した企業に法的な落ち度はありません。<BEMSJ注:原論文では30nT =0.03μTであるが、ブログではなぜか10倍大きい値となっている。>
それでもこの様な障害を受けたのは、連続被曝条件だったから、と考えています。
*******************
紹介されている研究は以下である。
***************
掲載誌:臨床環境医学 第7巻2号 1998年
タイトル:低周波電磁波のマウスへの影響−水晶体を中心として−
研究者:冨岡敏也ら
要約
低周波電磁波の水晶体への影響をBALB/Cマウスを用いて検討した。
マウス(10匹)に100kHz(300V/m、30nT)の電磁波を全身的に6ケ月間連続曝露し、水晶体を組織学的に検討し、水晶体中のNa、K,Ca及び、還元型グルタチオンを測定した。
発育体重曲線には有意差はなかったが、対照群と比べて曝露群では体毛の乱れと角膜反射の乱れが著明であった。
曝露群の水晶体は組織学的には水晶体赤道部でbow構築の著しい配列の乱れと線経の膨化が認められ、前皮質線維、後嚢下線維の膨化も認められた。
また生化学的にはNaとKは対照群と曝露群で有意差はなかったが、曝露群でCaが有意に増加し、還元型グルタチオンは有意に減少していた。
以上の結果から100kHz(300V/m、30nT)の低周波電磁波の長期曝露ではBALB/Cマウスの水晶体に混濁を引き起こすことが明かになり、立毛筋異常によると考えられる、体毛の乱れ、光沢の消失などから、電磁波は眼のみではなく全身的にも影響を与える可能性が強いと考えられた。
*********************
この論文は、前述の冨岡の1996年論文の内容と同じであるが、以下が追加されている。
*****************
成長曲線及び体毛の状態
曝露開始後から1か月ごとの両群の体重を測定し、比較した。2群間に有意差は認められなかった。
しかし、曝露3カ月過ぎより、曝露群では体毛の粗造なマウスが見られ、曝露6カ月には10匹中7匹の体毛が粗造で、2群間で体毛に明らかな差が見られた(写真)。
******************************
BEMSJの注1:
冨岡の実測値は磁界の測定値がおかしいといえる。
もしかして30nTとあるが30μTの間違いかもしれない。
すくなくともこのEZNECでの推定では、電界が300V/mもあるループコイルの内部に発生する磁界は100μT程度になる。
空間インピーダンスもスモールループアンテナの理論通りに、4オーム程度と低インピーダンスになっている。
冨岡らの計測では、空間インピーダンスは30Kオームと大きくなり、ループコイルからの電磁界放射理論と乖離している。
これらのことから、冨岡の研究は、100kHzの電磁界で、ICNIRPの1998年ガイドラインに規定する一般公衆に対する曝露レベルを大幅に超える強度での実験結果と言える。
BEMSJ注2:
曝露条件を見ると、100KHzでの電界曝露300V/mは、ICNIRPの1998年ガイドラインに規定する一般公衆への曝露限度値87V/m、同じく改訂された2010年のガイドラインに規定する曝露限度値83V/mに対して、3倍を超える曝露条件となっている。
体毛に影響が出ているという実験結果からも、これは電界の影響と考えられる。
記:2019−8−5
以下の研究報告がある。
概要を以下に示す。
関心のある方は、原書全文を入手して読んでください。
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電中研報告
報告書番号:V05002 2005年
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価 一徹生物変異原性試験による助変異原性の評価−
研究者 中園聡
目的
大腸菌およびサルモネラ菌を用いた微生物変異原性試験により、中間周波磁界の助変異原性の有無を明らかにする。
主な成果
化学物質に感受性の高いサルモネラ菌2菌株(TA98、TA100)および大腸菌2菌株(WP2uvrA、WP2uvrA/pKM)の計4株の試験菌株を用い、微生物変異原性試験により、各種変異原に対する中間周波磁界の助変異原性の有無を調べた。
磁界は、2kHzで0.91mTrms(ICNIRP参考レベルの146倍)、20kHzで1.1mTrms(同176倍)、60kHzで0.11mTrms(同18倍)で、37℃、48時間曝露し(試験菌株の100世代以上に相当する)、復帰変異コロニー数を無曝露のものと比較し、以下の結果を得た。
(1)ラジカル性変異原に対する助変異原性評価
ラジカル性変異原であるt-プチルハイドロペルオキシド(BH)添加による、試験菌株に対する変異原性(コロニー数の増加)が確認できた。
そこで、本変異原を添加し、上記の磁界を同時曝露したところ、再現性のある統計的に有意なコロニー数の変化はみられなかった。
(2)DNA反応性の変異原に対する助変異原性評価
DNA反応性の変異原、N・エチル-N”-ニトロ・N・ニトロソクアニジン(ENNG)および2-(2-フリル)-3-(5-ニトロ-2-フリル)アクリルアミド(AF2)による、試験菌株に対する変異原性が確認できた。
そこで、これらの変異原を添加し上記の磁界を同時曝露した結果、いずれの変異原に対しても、磁界曝露による、再現性のある統計的に有意なコロニー数の変化はみられなかった。
(3)代謝活性化によりDNA反応性になる変異原に対する助変異原性評価
代謝活性化によりDNA反応性になる変異原、ベンゾ〔a〕ビレン(BaP)および2アミノアントラセン(2AA)をS9mixにより代謝活性化したところ、試験菌株に対する変異原性が確認できた。
そこで、これらの変異原とS9mixを添加し、上記の磁界を同時曝露した結果、再現性のある統計的に有意なコロニー数の変化はみられなかった。
以上の結果から、本研究で検討した高いレベルの中間周波磁界(2kHz、20kHz、60kHz)は、ラジカルやDNA反応性物質の化学反応性、代謝活性化酵素における電子伝達反応へ影響せず、助変異原性を示さないことを、初めて明らかにした。
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記:2019−8−5
以下の研究報告がある。
概要を以下に示す。
関心のある方は、原書全文を入手して読んでください。
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電中研報告
報告書番号:V05013 2006年
中間周波磁界の生物影響評価 ;酵母細胞を用いた遺伝子変換への影響の評価
研究者:中園聡
目的
ヒトと同じ真核生物の酵母を用いた遺伝毒性試験により、中間周波磁界の遺伝子変換およびDNA損傷修復におよぼす影響の有無を明らかにする。
主な成果
試験菌株は、極めて強い静磁界曝露により遺伝子変換が誘発されることが報告されている酵母細胞(XD83)を用いた。
磁界曝露には当所で開発した細胞用中間周波磁界曝露装置を用いた。
本装置は、2kHzで0.91mTrms(ICNIRP参考レベル注2の146倍)、20kHzで1.1mTrms(同176借)、60kHzで0.11mTrms(同18倍)の正弦波磁界を垂直方向に出力できる。
曝露群と対照群との変異コロニー数の差は統計的に評価した。
同一実験条件で5回試験を行い再現性についても評価した。
(1)遺伝子変換へおよぼす影響
試験菌株に、上記条件の磁界を、30℃で48時間、それぞれ曝露し、遺伝子変換に対する磁界曝露の影響について評価した。
無曝露の対照群と磁界曝露群の変異コロニー数を比較した結果、いずれの場合も統計的に有意な差はみられなかった。
(2)DNA損傷修復へ与える影響
試験菌株に紫外線(UV)を照射し、DNA損傷による遺伝子変換を誘発したのち、上記の中間周波磁界をそれぞれ曝露し、DNA修復に対する磁界曝露の影響について評価した。
無曝露の対照群と磁界曝露群の変異コロニー数を比較した結果、いずれの場合も統計的に有意な差はみられなかつた。
以上の結果から、本研究で検討した高いレベルの中間周波磁界(2kHz、20kHz、60kHz)は、真核生物である酵母における遺伝子変換および遺伝子変換に係わるDNA損傷修復過程に影響しないことが明らかとなった。
記:2019−9−26
掲載誌:電中研報告 V06007 発行2007年5月
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価−哺乳類細胞を用いた小核試験による遺伝毒性評価−
研究者:中園聡
背景:
近年、中間周波数帯(300Hz〜10MHz)の磁界の利用が増加しているが、その生物影響については、ほとんど研究されておらず、科学的知見の蓄積が望まれている。
当所では、健康リスク評価において重要な指標となる遺伝毒性の一つである変異原性および化学変異原の変異原性を増強する助変異原性の有無を、細菌を用い検討してきた。
また、ヒトと同じ真核生物内で起きる遺伝子変換や、遺伝子変換に関連したDNA損傷修復に対する影響についても検討してきた。
その結果、2kHz、20kHz、60kHzの中間周波磁界には、変異原性、助変異原性、遺伝子変換および遺伝子変換におけるDNA損傷修復に対する影響がないことを明らかにしてきた。
一方、極低周波磁界では、小核形成などの染色体異常への影響の可能性が指摘されている。
そのため、中間周波磁界においても、哺乳類細胞で起きる小核形成に対する影響について調べる必要がある。
目的:
哺乳類細胞を用いた小核試験により、中間周波磁界による小核形成への影響の有無および遺伝毒性物質の作用を増強するか明らかにする。
主な成果:
試験には、放射線曝露で小核形成が確認されているチャイニーズハムスターの肺から樹立されたV79細胞株を用いた。
磁界曝露には当所で開発した細胞用中間周波磁界曝露装置を用いた。
本装置は、2kHzで0.91mTrms(ICNIRP 参考レベル の146倍)、20kHzで1.1mTrms(同176倍)、60kHzで 0.11mTrms(同18倍)の正弦波磁界を垂直方向に出力できる。
これらの磁界を上記細胞株に曝露後、対照群と曝露群との小核形成率の差を統計学的に評価した。実験は同一条件で5回以上行い、再現性についても評価した。
1)曝露環境の評価
本研究では、曝露群と対照群の間の比較を行うため、曝露環境が同一であるか、磁界無曝露試験により評価した。試験株をそれぞれの装置で37℃で、24時間培養し、小核形成率を比較した。
その結果、いずれの場合も再現性のある統計学的に有意な差はみられず、各装置の曝露環境に差異がないことが確認できた。
2)小核形成へおよぼす影響
試験株に、上記条件の中間周波磁界を、37℃で24時間、それぞれ曝露し、小核形成に対する影響について評価した。
その結果、無曝露の対照群と磁界曝露群の小核形成率には、いずれの周波数の磁界を曝露した場合も再現性のある統計学的に有意な差はみられなかった。
3)遺伝毒性物質との複合曝露影響
試験株に典型的な遺伝毒性物質であるマイトマイシンCを添加し、上記の中間周波磁界をそれぞれ同時に曝露した後、磁界曝露の影響について評価した。
その結果、無曝露の対照群と磁界曝露群の小核形成率には、いずれの周波数の磁界を曝露した場合も再現性のある統計学的に有意な差はみられなかった。
以上の結果から、本研究で検討した高いレベルの中間周波磁界(2kHz、20kHz、60kHz)は、哺乳類細胞における小核形成へ影響せず、また、遺伝毒性物質の作用を増強しないことが明らかとなった。
記:2020−2−25
以下の「電中研2007年西村による20kHz磁界の生殖への影響なしの研究」がある。
電力中央研究所報告
報告書:X07003
中間周波磁界の生物影響評価−20KHz磁界のラット胚・胎児の発生に関する生殖発生毒性評価−
研究者:西村 泉
背景
日常での中間周波(300Hz〜10MHz)磁界の利用が急増しているが、その健康リスクに関する科学的知見は不足している。
中間周波のうち100KHz以下の磁界の生体作用は、生体内に誘導される電流による非熱的な刺激作用と考えられており、生殖や発生への影響は生物影響評価の重要な指標のひとつである。
当所は、これまでに鶏胚を対象に強い強度の正弦波磁界(20KHz、1.1mTrms)を曝露し、その発生過程に影響しないことを明らかにした。
生殖発生への生物影響を明らかにするためには、鶏胚に加え、ヒトの健康リスク評価のための研究で多用されるラットなどの実験動物を用いて、生殖発生毒性試験を行う必要がある。
目的
胚および胎児の発生に対する中間周波磁界の影響を、ラットを用いた生殖発生毒性試験により評価する。
主な成果
本試験は、医薬品や化学物質などを対象とした生殖発生毒性試験ガイドラインのうち「胚・胎児発生に関する試験」ならびに「催奇形性試験」を参考に実施した。
1)磁界の曝露
1群25匹の10週齢雌Crl:CD(SD)雌ラットに、妊娠7−17日(着床から胎児の硬口蓋閉鎖)まで20KHz、0.2mTrmsの正弦波、垂直磁界を1日22時間、連続曝露した。
曝露室内は清浄空気を給気して温湿度を調節し、室内に設置したコイル内の曝露空間(一辺の立方体)には3段の木製飼育棚を設けた。ラットは、磁界による誘導電流が発生しないポリカーボネート製のケージで個飼いにして曝露した。
発生磁界の変動は±2%以内と少なく、動物実験に影響するようなコイルの振動、発熱、超音波の発生はなかった。曝露時の対照側コイル内での背景磁界は0.001μTrms以下であった。
曝露終了後、妊娠20日まで無曝露で飼育したのち雌親を解剖し、胎児を摘出して生殖発生への影響を検査した。
曝露実験は結果の信頼性を確保するため盲検法で行い、結果の再現性を確認するため2回繰り返して実施した。
2)雌親への影響
雌親については、曝露期間中の体重増加、着床数、内臓異常の出現率、血液学的検査9項目、血液生化学的検査21項目に、対照群と曝露群間で再現性のある統計学的有意差はなかった。
血液学的検査項目のうち曝露群の白血球数が2回目の実験でのみ対照群と比較して低下したが、白血球百分率には差がなく、繰り返し実験での再現性もないことから偶発的な変動と考えられた。
3)胎児への影響
胎児については、着床後の胚および胎児の死亡率、低体重児の出現率、雌親当りの胎児数や胎児の性比に、対照群と曝露群間で統計学的有意差はなかった。
胎児の外表異常、内臓異常、骨格異常の出現率にも、両群間で統計学的有意差はなかった。
骨格の検査項目のうち、曝露群の骨格変異のひとつの型が1回目の実験でのみ対照群と比較して高値を示したが、その変異型の出現率は低く、繰り返し実験での再現性もないことから自然発生変動内の変化と考えられた。
以上の結果から、20kHz、0.2mTrmsの正弦波、垂直磁界をラットの器官形成期に曝露しても生殖発生に関わる異常が再現性を持って発生することはなく、ラットの胚や胎児の正常な発生過程に影響を与えないことが示唆された。
記;2013−4−26
以下の研究報告がある。
概要を以下に示す。
関心のある方は、原書全文を入手して読んでください。
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報告書;中間周波磁界の生物影響評価 −マウスリンフォーマ試験による遺伝毒性評価一
研究報告:V07005 平成20年5月 財団法人電力中央研究所
研究者:中園 聡ら
主な成果
試験には、医薬品の安全性試験などでも用いられるマウスリンパ腫由来の細胞株L5178Y tk+/− −3,7,2cを用いた。
磁界曝露には当所で開発した細胞用中間周波磁界曝露装置を用いた。
本装置の最大出力である、2kHzで0.91mTrms(ICNIRP参考レベルの146倍)、20kHzで1.1mTrms(同176倍)、60kHzで0.11mTrms(同18倍)の正弦波垂直磁界を上記細胞株に曝露後、対照群と曝露群との遺伝子突然変異頻度の差を統計学的に評価した。
実験は同一条件で5回以上行い、再現性についても評価した。
1.曝露環境の評価
本研究では、曝露群と対照群の間の比較を行うため、曝露環境が同一であるか、磁界無曝露試験により評価した。
試験株を、それぞれの装置で、37℃で24時間培養し、点突然変異や欠失等に関連した遺伝子突然変異頻度を比較した。
その結果、再現性のある統計学的に有意な差はみられなかったことから、各装置の曝露環境に差異がないことが確認できた。
2.遺伝子突然変異頻度へおよぼす影響
試験株に、上記条件の中間周波磁界を、37℃で24時間、それぞれ曝露し、点突然変異や欠失等に関連した遺伝子突然変異頻度に対する影響について評価した。
その結果、無曝露の対照群と磁界曝露群の遺伝子突然変異頻度には、いずれの周波数の磁界を曝露した場合も再現性のある統計学的に有意な差はみられなかった。
3.遺伝毒性物質との複合曝露影響
試験棟に典型的な遺伝毒性物質であるメチルメタンスルフォネートを添加し、上記の中間周波磁界をそれぞれ曝露した後、磁界曝露の影響について評価した。
その結果、無曝露の対照群と磁界曝露群の点突然変異や欠失等に関連した遺伝子突然変異頻度には、いずれの周波数の磁界を曝露した場合も再現性のある統計学的に有意な差はみられなかった。
以上の結果から、本研究で検討した高いレベルの中間周波磁界(2kHz、20kHz、60kHz)は、哺乳類細胞における点突然変異や欠失等に影響せず、また、遺伝毒性物質の作用を増強しないことが明らかとなった。
記:2020−2−26
以下の研究がある。
中間周波磁界の生物影響評価−ラットを用いた20KHzおよび60KHz磁界の急性毒性評価一
研究報告:V08003
西村 泉 ら
背景
日常での中間周波(300kHz〜10MHz)磁界の利用が急増しているが、その健康リスクに関する科学的知見は不足している。
当所は、健康リスクに関連する生物影響を評価するために、20kHz、0.20mT(rms)の正弦波磁界をラット胎児の器官形成期に曝露し、胚や胎児の発生過程に磁界が影響を与えないことを明らかにしてきた。
生殖発生毒性の評価に加え、健康状態全般に与える中間周波磁界の影響を明らかにするため、一般毒性の評価を行う必要がある。
一般毒性は、医薬品や化学物質などを対象としたガイドラインにおいて、高用量、短期曝露の急性毒性試験(14日間)から低用量、長期曝露の慢性毒性試験(6〜12ケ月)に至る段階的な評価方法が示されており、初めに急性毒性試験を行う必要がある。
目的
雌雄のラットを用いた急性毒性試験により、健康状態全般に対する20kHzおよび60kHz磁界の生物影響を評価する。
主な成果
1群12匹の7週齢、雌雄Crl:CD(SD)ラットに20kHz、0.20mT(rms)あるいは60KHz 0.10mT(rms)の正弦波、垂直磁界を1日22時間、14日間曝露した。
初めに、対照と曝露の曝露棟間の同等性を確認するため無曝露実験を実施した。
実験は結果の信頼性を確保するため盲検法で行い、再現性を確認するため2回繰り返して実施した。
1)無曝露実験
雌雄のラットにおいて、無曝露期間中の体重増加と一般状態の異常の出現頻度、剖検所見での内臓異常の発生、臓器重量および体重比で表わした臓器重量、さらに、剖検時の採血による血液学的検査8項目と血液生化学的検査17項目について評価した。
その結果、全評価項目に関し、ふたつの曝露棟間で2回の繰り返し実験において、統計学的に有意な差が再現性を持って現れることはなく、動物飼育における曝露設備の同等性を確認できた。
2)20kHz磁界曝露実験
無曝露実験と同様に、雌雄ラットにおいて曝露期間中の体重増加と一般状態の異常の出現頻度、剖検所見での内臓異常の発生、臓器重量および体重比で表わした臓器重量、血液学的検査8項目と血液生化学的検査17項目について評価した。
その結果、全評価項目に閲し、対照群と曝露群間で再現性のある統計学的有意差はなく20kHz磁界の影響は認められなかった。
3)60kHz磁界曝露実験
20KHz磁界曝露実験と同様に、雌雄ラットにおいて曝露期間中の体重増加と一般状態の異常の出現頻度、剖検所見での内臓異常の発生、臓器重量および体重比で表わした臓器重量、血液学的検査8項目と血液生化学的検査17項目について評価した。
その結果、全評価項目に関し、対照群と曝露群間で再現性のある統計学的有意差はなく、60kHz磁界の影響は認められなかった。
20kHz、0.20mT(rms)および60kHz、0.10mT(rms)の正弦波、垂直磁界を雌雄ラットに14日間曝露しても、健康に関わる異常が再現性を持って発生することはなく、本実験条件下での中間周波磁界は、ラットに急性毒性のないことが明らかとなった。
記:2020−2−26
以下の研究がある。
掲載誌:電力中研報告書:V08011
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価−20kHz磁界のラット受胎能及び初期胚の発生に関する生殖発生毒性評価−
研究者:西村泉ら
背景
日常での中間周波(300Hz〜10MHz)磁界の利用が急増しているが、その健康リスクに関する科学的知見は不足している。中間周波のうち100kHz以下の磁界の生体作用は、生体内に誘導される電流による非熱的な刺激作用と考えられており、生殖や発生への影響は生物影響評価の重要な指標のひとつである。
これまで当所は、胎児の器官が形成される時期にある妊娠ラットに20kHz、0.20mT(rms)の正弦波、垂直磁界を曝露しても、胚・胎児の奇形が増えることはなく正常な発生過程に影響しないことを明らかにした。
しかし、器官が形成される以前に起こる不妊や流産に対する磁界影響は未解明であることから、雌雄ラットを用いて交配前および受精卵の着床前期に磁界を曝露し、生殖機能(受胎能)や初期の胚発生に対する影響を調べる必要がある。
目的
ラットを用いた生殖発生毒性試験により、受胎能及び初期胚の発生に対する20kHz磁界の影響を評価する。
主な成果
本試験は、医薬品を対象とした厚生労働省の生殖発生毒性試験ガイドラインのうち「受胎能及び初期胚の発生に関する試験」を参考に実施した。
1)磁界の曝露
1群24匹の9週齢Crl:CD(SD)雌雄ラットに交配前2週間、交配期間中(最長2週間)、および交尾が成立した雌動物はさらに妊娠7日(着床)まで、20kHz、0.20mT(rms)の正弦波、垂直磁界を1日22時間曝露した。
雌親は曝露終了後、妊娠13日まで無曝露で飼育したのち解剖し、生殖発生への影響を評価した。
交配した雄動物も交尾成立後に解剖し、同様に生殖への影響を評価した。
曝露試験は結果の信頼性を確保するため盲検法で行い、結果の再現性を確認するため2回繰り返して実施した。
なお、1回目の実験では、膣垢中の精子数が極端に少なく交尾成立の判定が困難であった動物は、交配以降の評価から除外した。
2)雌動物への影響
雌動物では、曝露期間中の体重増加、性周期、交尾率、受胎率、黄体数、着床数、生存・死亡胚数、妊娠動物の卵巣、子宮重量およびその体重比は、曝露群と対照群間で2回の実験とも繰り返して統計学的有意差が生じた項目はなかった。
また、剖検や卵巣と子宮の病理組織学的検査による異常所見の発生は両群とも極めて低頻度で、有意差はみられなかった。
3)雄動物への影響
雄動物では、曝露期間中の体重増加、精子数、精子運動性、異常精子率、精巣と精巣上体の重量およびその体重比は、曝露群と対照群間で2回の実験とも繰り返して統計学的有意差が生じた項目はなかった。
また、剖検および精巣と精巣上体の病理組織学的検査による異常所見の発生は両群とも極めて低頻度で、有意差はみられなかった。
以上の結果から20kHz、0.20mT(rms)の正弦波、垂直磁界をラットの着床前期に曝露しても生殖発生に関わる異常が再現性を持って発生することはなく、ラットの受胎能及び初期胚の正常な発生過程に影響を与えないことが明らかとなった。
記:2020−2−26
以下の研究がある。
電力中央研究所報告書番号:V09008
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価—60KHz磁界のラット胚・胎児の発生に関する生殖発生毒性評価−
研究者:西村泉
背景
日常での中間周波(300Hz〜10MHz)磁界の利用が急増している。電磁誘導加熱
を利用した家電製品では主に20KHzや60KHzなどの磁界が用いられているが、その健康リスクに関する科学的知見は不足している。これまで当所は、健康リスク評価において重要な指標である生殖や発生への影響を評価するため、ラットや鶏胚を用いて20KHz磁界の曝露実験を実施してきた。
その結果、胚や胎児の器官が形成される時期にある妊娠ラットに20KHz 0.20mT(rms)の正弦波、垂直磁界を曝
露しても胚や胎児の奇形が増えることはなく、正常な発生過程に影響しないことを明らかにした。
しかし、60kHz磁界の影響は未解明である。
目的
胚や胎児の器官形成に対する60kHz磁界の影響を、ラットを用いた生殖発生毒性試験により評価する。
主な成果
本試験は、医薬品や化学物質などを対象とした生殖発生毒性試験ガイドラインのうち「胚・胎児発生に関する試験」ならびに「催奇形性試験」を参考に実施した。
1)磁界の曝露
1群25匹の10週齢Crl:CD(SD)雌ラットに、妊娠7〜17日(着床から胎児の硬口蓋閉鎖)まで60kHz、0.10mT(rms)の正弦波、垂直磁界を1日22
時間、連続曝露した。
曝露終了後、妊娠 20 日まで無曝露で飼育したのち雌親を解剖し、胎児を摘出して生殖発生への影響を検査した。
実験は結果の信頼性を確保するため、検査者に対して動物の曝露条件を伏せた盲検法で行い、結果の再現性を確認するため同一の実験を2回繰り返して実施した。
2)雌親への影響
雌親では、曝露期間中の体重増加、着床数、血液学的検査9項目、血液生化学的検査21項目において、対照群と曝露群間で2回の繰り返し実験で再現性のある統計学的有意差は認められなかった。
3)胎児への影響
胎児では、着床後の胚・胎児死亡率、低体重児(2.5g未満)出現率、雌親当りの胎児数と性比において、対照群と曝露群間で2回の繰り返し実験で再現性のある統計学的有意差は認められなかった。
また、胎児の外表異常、内臓異常、骨格異常の出現率は両群とも低頻度で、両群間で2回の繰り返し実験で再現性のある統計学的有意差は認められなかった。
以上の結果から、60kHz
0.10mT(rms)の正弦波、垂直磁界をラットの器官形成期に曝露しても、発生に関わる異常が引き起こされないことが明らかになった。
これまでの結果と総合すると、20kHzおよび60KHzの中間周波磁界の曝露はラットの胚や胎児の奇形を増加させることはなく、正常な胚や胎児の発生過程に影響を与え
ないことが示唆された。
記:2020−2−26
以下の研究がある。
電力中央研究所 報告:V09021
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価−形質転換試験によるプロモーター活性の評価−
研究者:中園聡
背景
近年、中間周波数帯(300Hz〜10MHz)の磁界の利用が増加しているが、その生物影響についての知見は乏しく、科学的知見の蓄積が望まれている。
当所では、発がんなど健康リスク評価において重要な指標となる遺伝毒性への中間周波磁界の影響を細胞を用いて検討してきた。
その結果、2kHz、20kHz、60kHz の中間周波磁界には、変異原性、助変異原性、遺伝子変換、哺乳類細胞における小核形成、点突然変異、染色体異常などの遺伝毒性がないことを明らかにしてきた。
一方、発がんに関連した作用として遺伝毒性以外に、プロモーター作用についても検討する必要がある。
目的
Bhas42細胞を用いた形質転換試験により、中間周波磁界にプロモーター作用およびそれを増強するコプロモーター作用があるか否かを明らかにする。
主な成果
試験には、ウイルス由来のがん原遺伝子が導入されているBhas42細胞を用いた。
磁界曝露には当所で開発した細胞用中間周波磁界曝露装置を用いた。
2kHzで0.91mT(rms)(国際ガイドラインの146倍)、20kHzで1.1mT(rms)(同176倍)もしくは60kHzで
0.11mT(rms)(同18倍)の垂直方向の正弦波磁界を上記細胞株に曝露後、対照群と曝露群との形質転換フォーカス数の差を統計学的に評価した。
実験は同一条件で5回行い、再現性についても評価した。
1)培養環境の評価
磁界曝露実験に先立ち、曝露群と対照群の培養環境が同一であるか、磁界を曝露しない擬似曝露試験により評価した。
試験株を、それぞれの装置で37℃、21日間培養し、形質転換フォーカス数の差を比較した。その結果、統計学的に有意な差はみられず、各装置の培養環境に差異がないことを確認した。
2)プロモーター作用の評価
試験株に、上記条件の中間周波磁界を、37℃で10日間(培養4日目から14日目まで)、それぞれ曝露した。
その結果、いずれの周波数の磁界を曝露した場合でも、対照群と曝露群の形質転換フォーカス数には統計学的に有意な差はみられなかった。
3)コプロモーター作用の評価
試験株に既知の発がんプロモーターであるTPAを添加し、上記の各中間周波磁界を同時に曝露した後、磁界曝露の影響を評価した。
その結果、いずれの周波数の磁界を曝露した場合も、対照群と曝露群の形質転換フォーカス数には統計学的に有意な差はみられなかった。
以上の結果から、本研究で検討した高いレベルの中間周波磁界(2kHz、20kHz、60kHz)は、プロモーター作用を持たず、また、既知のプロモーターの作用を増強するようなコプロモーター作用のないことが明らかとなった。
以下の研究がある。
掲載誌:電中研総合報告V04 2012年
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価
研究者:根岸 正ら
概要を以下に示す。
背景
中間周波磁界を利用した電磁誘導加熱器などの電気機器が一般家庭に普及するにつれ、その健康影響に関する社会的関心が高まっている。
しかし、中間周波磁界の健康リスク評価のための生物学的研究は極めて少ないことから、その科学的知見の蓄積が喫緊の課題である。
このため、健康リスク評価上重要な指標である発がん性と、主な利用者が女性であることから生殖発生毒性について、その影響を明らかにする必要がある。
目的
発がん性の初期スクリーニング試験として、遺伝毒性とプロモーション作用の有無を遺伝毒性試験および形質転換試験で明らかにする。
また、生殖発生毒性については、鶏胚あるいはげっ歯類(ラット)を用いた生殖発生毒性試験を行い、その影響を明らかにする。{
主な成果
1)細胞を用いた発がん性に関する初期スクリーニング試験
(1)遺伝毒性試験
2kHz(0.91mT:ICNIRPガイドラインの23倍)、20kHz(1.1mT:同41倍)あるいは60kHz(0.11mT:同4.1倍)の中間周波磁界の遺伝毒性は、点突然変異や組換え、欠失などの染色体異常について、微生物、ヒトを含む動物培養細胞を用いて評価した。
その結果、曝露した中間周波磁界に遺伝毒性はないことが明らかとなった。
(2)プロモーション作用に関する試験
がん遺伝子が導入されたマウス由来細胞を用いた形質転換試験により、上記中間周波磁界のプロモーション作用の有無を評価した。
その結果、曝露した中間周波磁界にプロモーション作用はないことが明らかとなった。
2)実験動物を用いた生殖発生毒性試験
(1)鶏胚を用いた発生毒性試験
20kHz(1.1mT)あるいは60kHz(0.11mT)の中間周波磁界を、鶏胚の発生開始から発生初期、器官形成期、器官成長期、および、ふ化前まで曝露した結果、発生への影響はないことが明らかとなった。
また、既知の催奇形性物質を投与後に磁界を曝露した試験から、磁界は催奇形性物質による発生異常を増強しないことが明らかとなった。
(2)ラットを用いた生殖発生毒性試験
ラットの胚および胎児の発生期間における器官形成期(妊娠7〜17日)に、20kHz(0.20mT)あるいは60kHz(0.10mT)の中間周波磁界を曝露したが、磁界はラットの発生過程に影響を与えないことが明らかとなった。
また、雌雄親ラットを交配前2週間、交配中および妊娠7日目までの着床前期に曝露した試験でも、磁界は親の受胎能および初期胚の発生に影響を与えないことが明らかとなった。
以上の結果から、本研究で用いた高い磁束密度の中間周波磁界は、細胞レベルでは発がんに至る遺伝毒性(イニシエーション作用)、プロモーション作用機構に寄与しないことが明らかとなった。
また、実験動物の正常な胚発生において奇形などの発生異常を増加させることはなく、不妊や流産などの生殖機能の異常も引き起こさないことが明らかとなった。
この報告書の原文は102頁の大作です。実験の詳細データなどが記載されています。
関心のある方は、原文を読んでください。
記:2014−1−8
労働の科学 第53巻第1号 1998年に冨永洋志夫著「電磁波・電磁場問題を考えるために<X>」が掲載され、その中に以下の解説がある。
*************************
トリビュカイトは,マウスを15μT(150mG)の三角波磁界に曝露し奇形仔が有意に多かったと報告した。
死産仔を含めると有意差はなくなる。
脊椎の顕微鏡的異常は対照群のほうに多いなどの批判があった。
ウォルシュらは,トリビュカイトの実験の追試として大規模で厳密な動物実験をマウスで行った。
20kHz,12〜700mGの三角波磁界に1日21時間,18日間曝露している。
血液成分,妊娠率,仔体重,死産,奇形,その他に磁界の影響はなかった。
*************************
トリビュカイトTribkaitの研究は
Tribukait, B and E Cekan.
1987. Effects of pulsed magnetic fields on embryonic development in mice. In
Work With Display Units 86: Selected Papers from the International Scientific
Conference On Work With Display Units, May 1986, Stockholm, edited by B Knave
and PG Wideback. Amsterdam: North Holland.
である。
この論文は、PubMedには登録されていない。
ネットの検索で、この論文は紹介されているが、Abstractは見つからなかった。
ウォルシュらの研究は、以下である。
掲載誌:Teratology. 1992 Oct;46(4):391-8.
タイトル:The effects of continuous exposure to 20-kHz
sawtooth magnetic fields on the litters of D-1 mice
研究者:Wiley MJ, Corey P, Kavet R, Charry J, Harvey S,
Agnew D, Walsh M.
Abstract
Mated CD-1 mice were exposed to 20-kHz saw-tooth magnetic fields similar to
those associated with video display terminals (VDT).
Four groups of animals were continuously exposed from day 1 to day 18 of
pregnancy to field strengths of 0, 3.6, 17, or 200 microT.
There were no less than 185 mated dams in each exposure group.
On day 18, the dams were sacrificed and assessed for weight gain and pregnancy.
The litters were evaluated for numbers of implantations, fetal deaths and
resorptions, gross external, visceral and skeletal malformations, and fetal
weights.
There were no less than 140 pregnant females in each group, and there were no
significant differences between any of the exposure groups and the sham group
(0 microT) for any of the end points.
The results of this study do not support the hypothesis that the 20-kHz VLF
magnetic fields associated with video display terminals are teratogenic in
mammals.
VDTからの電磁界を模擬した20kHz鋸歯状波磁界をCD-1マウスに曝露した。
4つの群に妊娠初日から18日まで連続して曝露、曝露強度は0、3.6、17、200μTである。
其々の曝露群には185匹以上のメスマウスで実験を行った。
妊娠18日目に、メスマウスを屠殺し、体重増加と妊娠状況を調査した。
それぞれの腹ごとに、胎児の数、死産数、体内吸収、総重量、内臓と骨格の異常、胎児の重量を調査した。
各群には140匹以上の妊娠したマウスがおり、実験終了時点において、0μTの疑似曝露といずれの曝露群との間に、有意な差異はなかった。
本研究の結果は、VDTと関連する20kHzの磁界が哺乳類に催奇性の影響があるとする仮説を支持しない。
記:2014−1−10
電気学会技術報告第1067号「電磁界による体内誘導電界・電流の計算」2006年10月発行の中に、参考になる解説があるので、以下に転記します。
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(b)動物実験
動物実験では,発生への影響が最もよく研究されている。
ニワトリの受精卵への影響が初期に注目されたことと,VDT作業にともなう妊婦のリスクに大きな関心がもたれた時期があったためである。
中間周波数帯の成分を含むパルス磁界によるニワトリの雛の発生への影響を調べた一連の研究がある。
1982年にスペインのDelgadoらがニワトリの受精卵をパルス磁界に曝露した場合に雛の奇形が増加すると報告した。
この現象は論争となり,地磁気の向きや大きさも関係しているのではないか,あるいは胚の感受性が高い時期があるのではないかとの仮説に基づく研究などが行われたが,結論は得られなかった。
1985〜86年に米海軍研究所がこの間題についての国際会議を開き,国際共同研究が実施されることになった。
このプロジェクトは,米国環境保護庁(EPA)が製作した共通の曝露装置を米国,スペイン,スウェーデン,カナダの計6究機関で使用し,同時に同じ実験を行って結果を比較するものであった。
磁界のピーク値は1μTで,500μsのパルス幅のパルス磁界が毎秒100パルス曝露された。
この波形は数kHzの周波数成分を多く含む。
6研究機関中5つの機関で,曝露群の形態異常が多く見られたが,統計的に有意だったのは2機関のみであった。
また,データ全体では,曝露群の異常率が25%に対し対照群が19%で統計的に有意な差があった。
この研究の統計解析に対してHandcockらは統計学の立場から再検討し,曝露群と対照群の有意差は認めたものの,曝露による差より研究機関の間の変動のほうが大きいことを指摘した。
Frolenらは15μTp-p 20kHzの鋸歯状波に曝露されたCBA/Sマウスの吸収胎児が倍増することを報告した。
その後,吸収胎児の生じるクリティカルな曝露時期を調べる研究も行われた。
しかし,これらの現象の再現実験が行われた結果は,影響があるともないともいえない微妙な結果であった。
SvedenstalとHolmbergはマウスのリンパ腫に対する20kHzの磁界と]線の複合作用の有無を調べた。
CBA/Sマウスに5.24GyのX線と15μTp-p,20kHzの鋸歯状波磁界を曝露し、リンパ腫の発生に対する磁界の影響を見た。
X線+磁界はX線のみと差がなく,磁界のみは対照群と差がなかった。
Robertsonらは10kHzの正弦波磁界をマウス(B6C3Fl)に曝露したときの健康影響を調べた。
0.08mT、0.28mT、1mTで連続的に曝露し,14日間の急性曝露の影響と90日間の準慢性曝露の影響が調べられた。
その結果は,対照動物と比較して,実験動物の行動にも疾病率にも影響はなかった。
体重にも血液検査値にも影響がなかった。
最近,韓国の研究グループが,20kHzの三角波磁界(6.25〜6.5μT)を妊娠マウスに2.5〜15.5日間曝露したが,胎児に異状は見られなかった。
また、SDラットを同様の磁界に90日間曝露してさまざまな生理学的,生化学的指標を検索した結果,影響は見られなかった。
以下のニュースが流れていました。
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読売新聞ニュース速報
東日本在住の60歳代の女性が装着している植え込み型心臓ペースメーカーが、IH(電磁誘導加熱)式の電気炊飯器の発する電磁波の影響で、安全機能が作動する“事故”が起きていたことが分かり、厚生労働省は24日までに、国内のペースメーカー製造・輸入販売12社に自社製品を点検するよう指示した。
近く安全性情報も出し、医療機関やペースメーカー装着者に注意を呼びかけるが、専門家は「普段通りの生活なら問題ない」としている。
事故があったのは、「日本ビタトロン」(東京・港区)が輸入販売しているオランダ製ペースメーカー「トパーズ2」。
厚労省や日本ビ社によると、女性が昨年4月、医療機関で定期健診を受けた際、心臓に送る電気刺激のタイミングなどを調節するプログラムが「リセット」状態となっていることが分かった。
電磁波の影響で、安全機能が働いたためだった。ペースメーカーは、リセットされても必要最小限の機能が維持されるため、女性に健康被害はなかった。
女性のペースメーカーは、過去にも3回、リセットされる事故が起きており、日本ビ社が調べたところ、女性が家庭で使っていたIH炊飯器に近づいたのが原因だったことが判明した。
国内の心臓ペースメーカー装着者は推計20万―30万人。
電磁波とペースメーカーの関係に詳しい小坂井嘉夫・宝塚市立病院長の話「IH炊飯器から10センチ以上離れていれば、影響を受けないという実験結果もある。通常の使い方なら問題ない」
[2003-01-25-03:11]
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記:2019−5−18
以下の論文は、古典的な論文である。
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掲載誌;J Anat. 1982 May; 134(Pt 3): 533–551.
タイトル:Embryological changes induced by weak, extremely
low frequency electromagnetic fields.
研究者:J M Delgado, J Leal, J L Monteagudo,
and M G Gracia
Abstract 概要
Fertilized chicken eggs were incubated for 48 hours while exposed to extremely
low frequency magnetic fields (ELMF) of 10 Hz, 100 Hz and 1000 Hz with
intensities of 0.12, 1.2 and 12 micro T.
受精した鶏卵を、強度0.12、1.2、12μTで、低周波磁界(周波数は10、100、1000Hz)の曝露下で48時間培養した。
Gross morphological. and histological analysis of the exposed embryos revealed
the following effects:
曝露した胚の形態学的・組織学的な解析で、以下の結果を見出した。
(1) ELMF of 100 Hz/1.2 micro T had the most consistent and powerful inhibitory
effect on embryogenesis.
低周波磁界100Hz 1.2μTは胚に最も首尾一貫した強い抑制効果をもたらす。
Development of embryos was reduced to the formation of the three primitive
layers.
胚の発育では、3つの初期段階の形成が減少した。
Brain vesicles, auditory pit, neural tube, foregut, heart, vessels, and somites were not developed. Glycosaminoglycans were almost
absent.
脳の小嚢、耳の穴、神経管、前腸、心臓、血管、道節は未発達であった。グリコサミノグリカンはほとんど見られなかった。
<グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)は、長鎖の通常枝分れがみられない多糖。動物の結合組織を中心にあらゆる組織に普遍的に存在する。狭義のムコ多糖。GAGと略される。>
(2) The above results demonstrate a window effect because embryos exposed to
100 Hz/1.2 micro T were less developed than embryos exposed at lower and higher
intensities and frequencies.
上記の結果は窓効果を示している、なぜならば100Hz 1.2μTに暴露した胚は、より低い・高い周波数と強度に曝露した胚より、発育が悪かったからである。
(3) Developing organs reacted with different sensitivity to ELMF of specific
frequencies and intensities.
組織の発育は、低周波磁界の特定の周波数と強度に対して異なる反応を示している。
Somites were not disturbed by exposure to 10 Hz with
any of the intensities used.
道節は10Hzの低周波磁界に対していかなる強度の曝露でも影響を受けない。
Formation of blood vessels was completely blocked by ELMF of 1000 Hz/12 micro T
while traces of other organs were present.
他の組織の形跡はあるが、血管の形成は低周波磁界1000Hz 12マイクロTの曝露で完璧に阻害される。
(4) The drastic embryological disturbances described were obtained with much
lower intensities (1 micro T = 0.01 Gauss) than those used in studies by other
investigators.
驚くべき胚胎学的影響が他の研究者が用いたより非常に低い強度1μTで得られたということである。
(5) Embryological alterations induced by ELMF may depend on disturbances in the
presence and structure of glycosaminoglycans which are essential elements in
cellular activities, including cell migration.
低周波磁界による胚胎学的な変化は細胞の転移を含む細胞活性に大きな役割を果たすグリコサミノグリカンの構造と存在に与える妨害によるものかもしれない。
(6) The use of ELMF of low intensity may be a powerful method to investigate
embryogenetic mechanisms and may also be a useful technique for investigation
of other biological systems.
低強度の低周波磁界の利用は胚形成のメカニズムの研究の為の強力な手段かもしれない。同時に他の生物学的なシステムの研究にも利用できる技術かもしれない。
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BEMSJのコメント:
原著を読むと
・鶏卵の培養(孵化)は温度38度で行った、とだけの記述で、温度制御の範囲が書かれていない。
温度が高いと異常が発生する。
・パルス磁界の波形の詳細も、パルス幅0.5msとあるだけで、パルス波形の立上り・立下り時間の記述もない。
立上り・立下り時の磁界の時間変化に応じて、鶏卵に大きな誘導電流が流れる。この誘導電流の影響を加味しなければならない。
・鶏卵の培養時に、定期的に卵をひっくり返したという記述もない。
ひっくり返さないと異常が増える、とされる。
・曝露群と対照群の鶏卵を、ブラインドで行った という記述もない。
ブラインドで卵を観察しないと、公平な判定ができない。
ということが判る。
したがって、この論文を読む限り、この研究結果をそのまま受け入れることは困難と言える。
記:2019−5−20
以下の研究がある。
掲載誌:J Anat. 1983 Oct; 137(Pt 3): 513–536.
タイトル:Pulse shape of magnetic fields influences chick
embryogenesis.
研究者:A Ubeda, J Leal, M A
Trillo, M A Jimenez, and J M Delgado
Abstract 概要
A total of
295 chick embryos was exposed during the first 48 hours of development to
pulsed electromagnetic fields of 100 Hz and 0.4 to 104microT, and findings were
compared with those in 364 control embryos.
合計295個の鶏卵を48時間パルス磁界(繰り返し周波数100Hz、0.4から104μT)に曝露し、364個の対照群の鶏卵と比較した。
General morphology was analyzed and supplemented by light microscopy studies.
形態学的な解析をおこない、光学顕微鏡での研究で補足した。
Exposure to electromagnetic fields with a pulse rise time of 100 microseconds
produced teratogenic changes when intensities of 1.0 and 13.9 micro T were used
but not with lower or higher intensities, demonstrating a 'window' effect and
ruling out the possible influence of a rise in internal embryonic temperature.
10.0と13.9μTでパルスの立上り時間が100μsの時は電磁界への曝露は催奇形性の変化をもたらしたが、前述の強度より高くても、また低くても影響はなく、窓効果と思われ、鶏胚の内部温度の上昇の影響によるものかもしれない。
Exposure to an electromagnetic field of 1.0 micro T specifically altered
organogenesis of the truncal nervous system and drastically reduced the alcian blue-stained components(光学顕微鏡などで用いる染色法?), whereas with an intensity of 13.9 micro T, there were
abnormalities in the circulatory system and foregut, altering cell-to-cell
contacts in the walls of developing vessels.
1.0μTのパルス磁界曝露は特に、動脈幹の器官形成を変化させ、アラシアンブルーステイン染色を大幅に減少させた。一方、13.9μTのパルス磁界への曝露では、循環系と前腸に異常があり、発育中の血管の側壁内の細胞と細胞の結合に変化をもたらした。
When embryos were exposed to intensities of 0.4 and 1.0 micro T with 2.0 and 42
microseconds pulse rise times, teratogenic effects were greater and alterations
involved all developing systems.
0.4と1.0μTの強度で2μSと42μSの立上り時間のパルス磁界への曝露では、催奇変性は多く、すべての発育系に変化を与えた。
The most powerful effects were obtained with 1.0 micro T and 42 microseconds
rise time. The findings confirm the sensitivity of chick embryos to
electromagnetic fields of extremely low frequency and intensity and indicate
that pulse shape may be a decisive parameter determining strong, slight, or no
modification of embryonic development.
最も大きな影響は強度1.0μT、立上り時間42μSのパルス磁界下で起こった。この所見は、低周波電磁界の周波数と強度に対する鶏胚の感受性を確認し、パルスの波形が鶏胚の発育に変化を与えない・少し与える・強く与えるかを決定する重大な要素であるかもしれない。
Mechanisms of action of electromagnetic fields are still unclear, but induced
alterations in extracellular glycosaminoglycans could
be a causal factor in the observed malformations.
電磁界の活動メカニズムはいまだに未解明である。しかし、細胞外のグリコサミノグリカンの誘導による変化が観察された奇形の原因要件である可能性がある。
原著を読むと以下のことが判る。
・この研究は1982年のデルガドの研究の継続した研究であり、パルス波形に注目した。
・鶏卵の孵化は、温度:38℃とだけの記述で、許容範囲・制御範囲は記載なし
・以下の表3を引用する。対照群で最も低い正常率は65.6%、すなわち34.4%が自然発生的な異常が出ている。これは低いとは言えない。全体を対象に統計的に判定して有意差ありだろうが。
・以下の表5のデータを見ても対照群における異常発生率の実験毎の変動が大きい、最大で55.5%も自然発生的に異常が出ている。
・以下に実験に使用したパルス波形を示す(図1)。立上り時間A:100μs C/D: 42μs B: 2μs
同じ磁界強度であれば、鶏卵に誘導する電流は、立上り時間が短いほど大きくなる。
したがって、磁界の影響で鶏卵に大きな誘導電流が流れることによる胚の発育の変化であるとすれば、Bが最も影響をうけるはずである。Bより影響はすくなく、C/DとAは同じ程度か、Aがやや影響が少なくなるはずである。
・以下にしめす図8は、磁界強度とパルス波形の違いをまとめたものである。
誘導電流の点からいえば、Bに最も大きい異常があっても良いが、そうはなっていない。
Aの異常が少ないのは良いが。
ということで、このUbedaの研究も、疑問が多い。
記:2019−5−18
以下の研究がある。
掲載誌;J Anat. 1984 Dec; 139(Pt 4): 613–618.
タイトル:Lack of effect of weak low frequency
electromagnetic fields on chick embryogenesis.
研究者:S Maffeo, M W Miller, and
E L Carstensen
Abstract 概要
Fertilized chicken eggs were incubated for 48 hours while exposed to pulsed
trains of square wave magnetic fields having a duration of 0.5msec and pulse
repetition rates of 100 or 1000 Hz at magnetic field flux densities of 1.2 and
12μT.
受精した鶏卵を48時間、パルス磁界(パルス幅は0.5ms、繰り返し周波数は100もしくは1000Hz,磁界強度は1.2と12μT)の曝露下で、培養した。
After exposure the embryos were scored blind for eight different gross
structural features: primary vesicles, anterior neuropore, optic vesicles,
auditory pits, truncal nervous system, heart, somites
and blood vessels.
There were no differences between exposed, sham-exposed and control eggs.
曝露後に、鶏卵を、ブラインドで、8つの異なる組織的な機能(初期の小水泡、前期の神経孔、視覚の小水泡、耳の穴、樹幹的神経系、心臓、道節、血管)ごとに、評価を行った。
結果は、対照群と曝露群の間に差異はなかった。
原著を読むと以下がわかる。
・デルガドの1982年報告を受けて、再現実験を行うことにした。
・鶏卵は38℃で孵化された。 温度の制御範囲に関しては記述がない。
・パルス磁界の立上り時間は10μ秒。
・実験結果の一部を以下にしめす。
BEMSJ注:
・デルガドの実験は再現しなかったという報告であるが、実験結果を見ると、対照群・シャム曝露群での異常発生率が25%から60%と大きく、しかも実験の都度その割合が大きく変動していることに驚く。
これでは、磁界曝露の影響は見つけることができないのではないか。対照群・シャム曝露群での異常発生率を小さく、また変動しないような実験環境を作るのが先決かもしれない。
記:2019−5−19
以下の研究がある。
掲載誌:J Anat. 1988 Apr; 157: 101–104.
タイトル:Weak low frequency electromagnetic fields and
chick embryogenesis: failure to reproduce positive findings.
微弱な低周波電磁界と鶏卵の胚:陽性研究の再現実験に失敗
研究者:S Maffeo, A A Brayman, M W Miller, E L
Carstensen, V Ciaravino, and C Cox
Abstract 概要
Fertilized chicken eggs were incubated for 48 hours while exposed to pulsed
trains of magnetic fields having a duration of 0-5ms, a rise time of 42
microsecond, and a pulse repetition rate of 100 at a magnetic field flux
density of 1microT.
受精鶏卵を、パルス磁界(パルス幅:0.5ms、繰り返し周波数100Hz、立上り時間:42μs、強度:1μT)曝露下で48時間培養した。
Some eggs were exposed to 1,552 rad X-rays as a positive control.
陽性対照群には、1552ラドのX線を照射した。
After exposure the embryos were scored blind for a variety of morphological
features.
曝露の後に、鶏卵の様々な形態学的な機能に関して、ブラインドで評価をおこなった。
X-irradiated eggs displayed highly significant
and repeatable anatomical alterations.
X線照射群は統計的に高い有意性で再現性のある解剖学的な異常を呈した。
There were no differences between magnetic field-exposed, sham-exposed and
control eggs.
磁界曝露群、シャム曝露群、対照群の間で、差異はなかった。
原著を読んでみると
・温度は38℃で許容範囲・制御範囲の記載はない。
・1.14回転/分の回転台に鶏卵を載せて実験。
・表1に原著にあった実験結果を示す。
これを見ると、10回の実験の結果を見るとシャム曝露群と対照群における異常発生率が0%から50%までと大きく変動している。これだけ大きな変動があれば、磁界曝露の影響を検出しにくいと思われる。
記:2019−5−15
以下の論文がある。
********************
掲載誌:Bio electromagnetics 11 :169-187 (1990)
タイトル:Development of Chicken Embryos in a Pulsed
Magnetic Field パルス性磁界下における鶏胚の発育
研究者:E. Berman, L. Chacon, ら
ABSTRACT 概要
Six independent experiments of common design were performed in laboratories in
Canada, Spain, Sweden, and the United States of America.
アメリカ、スウェーデン、スペイン、カナダの試験機関で、6件の独立した実験が行なわれた。
Fertilized eggs of domestic chickens were incubated as controls or in a pulsed
magnetic field (PMF); embryos were then examined for developmental anomalies.
鶏の受精卵はパルス性磁界に曝露もしくはシャム曝露下で培養され、そして、胚に発育上に異常がないか調べられた。
Identical equipment in each laboratory consisted of two incubators, each
containing a Helmholtz coil and electronic devices to develop, control, and
monitor the pulsed field and to monitor temperature, relative humidity, and
vibrations.
同一でそれぞれの試験機関の為の装置は、2組の培養器、ヘルムホルツコイル、パルス磁界の発生・制御・監視のための電子装置、振動・相対湿度・温度の監視のための電子機器から構成されている。
A unipolar, pulsed, magnetic field (500μs pulse duration, 100 pulses per s, 1μT peak
density, and 2μs rise and fall time) was applied to experimental eggs
during 48 h of incubation.
単一方向のパルス磁界(500μ秒のパルス幅、1秒間に100パルス、1μTのピーク磁界強度、立ち上がりと立下り時間は2μ秒)を、培養中に48時間、実験用卵に印加した。
In each laboratory, ten eggs were simultaneously sham exposed in a control
incubator (pulse generator not activated) while the PMF was applied to ten eggs
in the other incubator.
それぞれの試験機関では、10個の卵を対照用培養器で疑似曝露(パルス発信機をオフにした)しながら、同時に、もう一つの培養器で10個の卵をパルス性磁界に曝露した。
The procedure was repeated ten times in each laboratory, and incubators were
alternately used as a control device or as an active source of the PMF.
このやり方はそれぞれの試験機関で10回繰り返して行われ、そして二つの培養器はパルス性磁界の実際の発生器として、またシャム曝露用として交互に用いられた。
After a 48-h exposure, the eggs were evaluated for fertility.
曝露の48時間後に卵の繁殖力を評価した。
All embryos were then assayed in the blind for development, morphology, and
stage of maturity.
全ての胚はその後、発育、形態学、そして発育の段階レベルを盲検法で分析された。
In five of six laboratories, more exposed embryos
exhibited structural anomalies than did controls, although putatively
significant differences were observed in only two laboratories (two-tailed Ps
of .03 and <.0001), and the significance of the difference in a third
laboratory was only marginal (two-tailed P = .08).
6試験機関の中の5機関で、対照に見られるより曝露胚に組織上の異常がより多く見られた。推定される統計的な有意差(P値0.03、0.0001以下)はわずか2試験機関でのみ見られた。3番目の試験機関では有意差はマージナル(P値0.08)であった。
When the data from all six
laboratories are pooled, the difference in incidence of abnormalities in
PMF-exposed embryos (~25 percent) and that of controls (~19 percent), although
small, is highly significant, as is the interaction between incidence of
abnormalities and laboratory site (both Ps <.001).
6試験機関でのデータを一括プール分析で解析を行うと、パルス性磁界曝露下の胚における異常発生率は25%以下で、対照群下での以上発生率は19%以下となる。
これは小さいが、異常発生と試験場所の相互作用(P値0.001以下)と結果として、統計的には有意である。
The factor or factors responsible for the marked variability of
inter-laboratory differences are unknown.
試験機関相互間の差異の注目すべき偏差に関連する要素は不明である。
<なぜかように同じ装置を用いて実験したのに、試験機関によって大きく結果が異なるのか?その要因は判らない。>
以下 原著から関連する情報を抜粋して紹介する。
図2 へルムホルツコイルの磁界と電界の測定値 A;測定したパルス性磁界、変化の時間に注目
B:パルス電流の立上がり、立下り時間における誘導電圧降下による電界。培養器のコイルの中心点で測定
BEMSJ注:磁界の立上り・立下り時の磁界変化はかなり大きい。
時間変化率は0.67μT/2μ秒=0.33T/秒であり、パルス期間500μ秒のパルス磁界によるよりも大きな誘導電流が曝露対象となった鶏胚に流れているかもしれない。
図3 パルス性磁界の周波数分析(測定値)
BEMSJ注:かなり高い周波数まで磁界成分がある。
100Hzから1kHz, 20kHz以上までの周波数成分を含んでいる。
In all runs, temperature was maintained within a range between 37.6 and 38.0℃.
全ての実験は、培養器の温度を37.6から38.0℃の間になる様に維持した。
表8:ノーマルな胚の割合
試験機関4と試験機関6の結果はP値が0.03、0.001以下なので、曝露による影響を認める結果は統計的に有意である。
試験機関1の結果はP値が0.08と統計的に有意と言えるための0.05をわずかに超えており、マージナルと言える。
*BEMSJの中間のまとめ
以上の論文・原著を読んでみた。
結局実験場所によって影響が出たり、出なかったりで、これでは結論を出すことは困難と思われる。
この研究はHen House Projectとして行われたもの。
曝露磁界は、かなり高周波が含まれている。
同じ曝露装置、同じパルス発信機を使っているので曝露は同じ条件と思われるが、それでも、試験機関によって結果が異なっている。
温度管理は?獣医大の斎藤賢一の論文を見ると「温度管理37.5+/-0.5℃、温度が高いと異常発生が増える。卵は1時間に1回ひっくり返す、ひっくり返さないと異常発生が増える」とある。
この6か所の実験では温度管理は「37.6−38.0℃」となっており、鶏胚に異常が出る確率が高いと思われる。
またこの6か所の実験報告には「培養中に鶏卵を常にひっくり返した」という記述はないので、行っていないのかもしれない。
こうなると、この6か所の実験では、鶏卵の培養・孵化装置に問題があったのかもしれない。
記;2019−5−17
以下の研究がある。
掲載誌:電力中央研究所報告:調査報告 V04017 平成17年6 月
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価 −鶏胚による電磁界発生毒性研究の文献調査一
研究者:西村泉ら
背 景
中間周波(300Hz〜10MHz)磁界を用いた電化製品が急速に普及している。
しかし、その周波数帯における生物・健康影響評価研究は各機器に固有の磁界特性での曝露実験が散見される程度で、安全性を確認する観点から科学的知見の集積が望まれている。
中間周波磁界の生体作用は、商用周波磁界と同様に生体内に誘導される電流による非熱的な刺激作用と考えられている。
このため、外来の刺激に敏感な生物・健康影響の指標である発生・生殖に関する研究が重要である。
当所では早期にその影響評価を行うため、既開発の小型曝露装置を用いて鶏胚による研究を実施する予定であるが、鶏胚を用いた研究には結果の不一致がみられる場合が多い。
鶏胚による電磁界の影響評価研究を文献調査し、研究の特徴や結果の概要、研究の問題点を明らかにし、問題点を解決する適切な研究手法を提案する。
主な成果
1)鶏胚を用いた発生毒性研究の特徴
(1)鶏胚の特徴
鶏胚の発生は古くから研究されており、経時的な発生段階が明らかにされている。
また発生のほぼ全過程で雌親の関与が無く、雌親を介した影響を考えずに胚発生への影響のみを評価できるメリットがある。
しかし鶏胚は実験動物としての交配を重ねておらず、毒性背景データが不十分である。
(2)電磁界影響評価研究における鶏胚の有用性
鶏胚は過去の電磁界研究で多用されており、今後の中間周波磁界での研究結果と比故できるメリットがある。
また、毒性評価で一般に用いられるげっ歯類と比べて狭い空間で発生過程を観察できることから、小型の曝露装置を用いた強い磁界強度での発生毒性を動物個体レベルで評価可能であり、生物影響評価において重要なデータが得られる。
2)鶏胚を用いた電磁界影響評価研究の現状
1970年代以降、鶏胚を用いた商用・中間周波電磁界の全研究、29報を調査した。
既往の研究結果には磁界影響の有り無しが混在し、磁界強度や曝露時間の量反応関係もなく、明確な結論を導けないのが現状である。
その主な原因は、@自然発生の異常率が高い研究がある、A統計学的評価に必要十分な供試数が検討されていない、B結果の再現性を確諷していない、ことにあると考えられた。また、器官形成が未完了の2日目胚における影響評価研究が多いが、C発生段階が極めて初期の場合は統一された毒性評価基準がないことも、その一因であると考えられた。
3)科学的な影響評価を行うための実験条件の提案
@ 供試鶏胚の毒性背景データを集積し、自然発生異常率の少ない系統を用いる。
A 毒性背景データについて標本数解析を行い、必要十分な標本数を供試する。
B 最低3回の繰り返し実験を実施する。
C 既研究と比較可能な2日間の曝露実験を実施するとともに、器官形成期を包含した5日間以上の長期曝露も実施する。
関心のある方は、この論文の全文を入手して読んでください。
過去の様々な研究の結果が紹介されています。
記:2019−5−19
以下の研究がある。
掲載誌:財団法人電力中央研究所 研究報告:VO4018 平成17年6月
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価 一初期鶏胚を用いた発生毒性評価一
研究者:西村泉 根岸正
背 景
日常生活での利用が急増している中間周波数帯の磁界に関する生物・健康影響評価研究は極めて少なく、その科学的知見の蓄積が急務である。
中間周波磁界は商用周波磁界同様、生物に対して誘導電流による非熱的な刺激作用を持つと考えられている。
その生物影響評価においては、環境からの刺激に敏感な指標のひとつである発生・生殖に関する研究が重要である。
当所は鶏胚を用いた電磁界研究の文献調査において、発生毒性研究での鶏胚の有用性、およぴ、明確な結論を導けない既研究の問題点を解決するための実験条件を提案してきた。
主な成果
1)毒性評価のための背景データの収集
文献調査で提案した実験条件に沿い、当所で使用する鶏胚の毒性背景データを集めた。
実験動物業者から購入した有精卵を2日間ふ卵した初期胚の自然発生異常率は平均11%で、既往の研究と比較して低く、毒性評価研究に適していた。
標本数解析の結果、発生異常の生物学的に有意な増加を検出するのに必要十分な供試胚数は、50個であった。
2)無曝露実験
磁界曝露と対照用の実験室環境に違いがなく、胚発生経過が同等であることを確認するため、磁界を曝露せずに各室60個の有精卵を2日間ふ卵した。
実験後に毒性指標として胚の体節数、体長、発生段階、ならびに、実体顕微鏡下で観察した総異常(神経管欠損等の形態異常と死亡)の出現率を評価した。
全毒性指模で両室間に統計学的有意差は認められず、背景データとも同等で実験室環境に違いはなかった。
3)磁界曝露実験
磁界曝露実験には既開発の曝露装置を使用し、1群60個の有精卵を用いて、盲検法により3回繰り返して実験した。
磁界は、20kHz正弦波、1.1mTrmsの垂直磁界を、胚発生開始から2日間連続曝摩した。
曝露終了後に、無曝露実験と同じ毒性指標を評価した。3回の繰り返し実験のいずれにおいても、全毒性指標に関し対照群と曝露群間で統計学的有意差は認められず、磁界曝露の影響はなかった。
4)陽性対照群に対する磁界曝露実験
既知の催奇形性物質(レチノイン酸)で誘発させた発生異常を磁界曝露が増強するか否かを解明するために、陽性対照群に対する磁界曝露実験を実施した。
予めレチノイン酸を投与して40〜60%の異常を誘発させた陽性対照群に、同じ20kHz正弦波、1.1mTrmsの磁界を2日間曝露する実験を、盲検法で3回繰り返した。
全毒性指標において、陽性対照群とそれに対する磁界曝露群の間で3回の実験とも統計学的有意差は認められず、磁界曝露の影響はなかった。
20kHz 1.1mTrms 正弦波磁界の、ふ卵開始から2日間の曝露は鶏胚の発生異常を増加させず、既知の催奇形性物質による発生異常を増強しないことを解明した。
原著を読むと
・インキュベーター庫内の温度分布(加湿時)は目標値38℃に対して±0.4℃以内
・磁界曝露条件は実験作業者に対して盲検法で実施した。
とある。
記:2019−5−19
以下の研究がある、
掲載誌:電中研報告 報告書番号:V05010 2006年
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価 −器官形成期鶏胚を用いた発生毒性評価
研究者:西村泉
背景
日常での中間周波磁界の利用が急増しているが、その健康影響に関する科学的知は不足している。
中間周波磁界の生体作用は、商用周波磁界と同様、生体内に誘導される電流による熱的な刺激作用と考えられているため、外来の刺激に敏感な発生・生殖への影響が重要な評価指標である。
当所は小型の磁界曝露装置を開発し、商用周波での研究例が多い鶏胚を用いて、動物個体に対する高い強度の曝露試験を実施してきた。
発生毒性は発生過程に応じ、環境因子に対して高感受性な初期胚、奇形等の形態異常が明確になる器官形成期胚、器官や骨格の成長が進む器官成長期胚での評価が重要である。
これまでの研究では初期鶏胚を用い20kHz 1.1mTrmsの磁界影響が無いことを明らかにしてきた。
主な成果
1)毒性評価のための背景データの収集
実験動物業者から購入した有精卵を、鶏胚の器官形成期にあたる7日間ふ卵した場合の自然然発生異常率は14%で既往の研究と同程度に低く、毒性研究に適していた。
標本数解析の結果、生物学的に有意な異常の増加を検出するのに必要十分分な供試胚数は55個であった。
2)無曝露実験
磁界曝露と対照用の実験設備に違いはなく、胚発生経過が同等であることを確認するため、磁界を曝露せずに各室60個の有精卵を7日間ふ卵した。
実験後に毒性指標として胚の発生段階、翼長、脚長、ならびに実体顕微鏡下で観察した総異常(眼球欠損等の形態異常と死亡)の出現率を評価した。
その結果、全毒性指標で両室間に統計学的有意差は認められず、背景データとも同等で実験室間に違いはなかった。
3)磁界曝露実験
磁界曝露実験には既開発の曝露装置(20kHz背景磁界が0.001μTrms)を使用し、1群60個の有精卵を用いて、盲検法により3回繰り返して実験した。
磁界は、20KHz正弦波、1.1mTrmsの垂直磁界を、胚発生開始から7日間連続曝露した。
曝露終了後に、無曝露実験と同じ毒性指標を評価した。
3回の繰り返し実験のいずれにおいても、全毒性指標に関し対照群と曝露群間で統計学的有意差は認められず、磁界曝露の影響はなかった。
4)陽性対照群に対する磁界曝露実験
既知の催奇形成物質(レチノイン酸)で誘発させた発生異常を磁界曝露が増強するか否かを明らかにするために、陽性対照群に対する磁界曝露実験を実施した。
予めレチノイン酸を投与して40〜60%の総異常を誘発させた陽性対照群に、同じ20kHz正弦波、1.1mTrmsの垂直磁界を7日間曝露する実験を、盲検法で3回繰り返した。
全毒性指標において、陽性対照群とそれに対する磁界曝露群の間で3回の実験とも統計学的有意差は認められず、磁界曝露の影響はなかった。
以上の磁界曝露から20kHz 1.1mTrms正弦波垂直磁界の、鶏胚の器官形成期にあたるふ卵開始から7日間の曝露は鶏胚の発生異常を増加させず、また、既知の催奇形性物質による発生異常を増強しないことを明らかにした。
詳細報告書を読むと
・温度は38+/-0.4℃に管理
・曝露実験は冒険法で実施
となっている。
記:2019−5−21
以下の研究がある。
掲載誌:電中研報告 報告書番号:V06006
2007年
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価 −器官成長期鶏胚を用いた発生毒性評価−
研究者:西村泉
背景
日常での中間周波(300Hz 〜10MHz)磁界の利用が急増しているが、その健康影響に関する科学的知見は不足している。
100kHz以下の中間周波磁界の生体作用は、生体内に誘導される電流による非熱的な刺激作用と考えられている。
外来の刺激に対する生物影響評価として、発生や生殖への影響は重要な指標である。
当所は、商用周波での研究例が多く、生物影響評価において有用な動物個体に対する高い強度の曝露試験を行うために、鶏胚を用いている。
鶏胚の発生毒性は発生過程に応じて、環境因子に高感受性な初期胚、奇形等の形態異常が明確になる器官形成期胚、器官や骨格の成長が進む器官成長期胚での評価が重要である。
これまでの研究で、発生初期および器官形成期の鶏胚において、20kkHz 1.2mTrmsの磁界影響が無いことを明らかにしてきた。
目的
発生過程で重要な器官成長期(発生開始から11日目)の鶏胚を用い、中間周波磁界の発生毒性を評価する。
主な成果
曝露実験に先立ち、毒性評価のための背景データ収集を目的に有精卵を購入し、11日間ふ卵して自然発生の異常率を調べた。
頭蓋冠欠損などの異常率は15%で既往の研究と同程度に低く、毒性研究に適していた。
標本数解析の結果、生物学的に有意な発生異常の増加を検出するのに必要十分な供試胚数は56個であった。
1)無曝露実験
磁界曝露と対照用の実験室環境に違いがなく胚発生経過が同等であることを確認するため、磁界を曝露せずに各室60個の有精卵を11日間ふ卵した。
実験後に毒性指標として胚の発生段階、嘴長、翼指長、脚指長と、実体顕微鏡下で観察した総異常(骨格異常を含む形態異常と死亡)の出現率を評価した。
全毒性指標で両室間に統計学的有意差は認められず、背景データとも同等で実験室間に違いはなかった。
2)磁界曝露実験
磁界曝露実験には既開発の曝露装置(20kHz 背景磁界が0.001μTrms)を使用し、1群60個の有精卵を用いて、盲検法により3回繰り返して実験した。
磁界は20kHz、1.1mTrmsの正弦波垂直磁界を、胚発生開始から11日間連続して曝露した。
曝露終了後に、無曝露実験と同じ毒性指標を評価した。
3回の繰り返し実験のいずれにおいても、全毒性指標に関し対照群と曝露群間で統計学的有意差は認められず、磁界曝露の影響はなかった。
3)陽性対照群に対する磁界曝露実験
既知の催奇形性物質(レチノイン酸)で誘発させた眼球欠損などの発生異常を磁界曝露が増強するか否かを明らかにするために、陽性対照群に対する磁界曝露実験を実施した。
予めレチノイン酸を投与して40〜60%の総異常を誘発させた陽性対照群に、同じの正弦波垂直磁界を11日間曝露する実験を、盲検法で3回繰り返した。
全毒性指標において、陽性対照群とそれに対する磁界曝露群での3回の実験とも統計学的有意差は認められず、磁界曝露の影響はなかった。
以上の結果から、20kHz 1.1mTrms正弦波垂直磁界を、ふ卵開始から鶏胚の器官成長期の11日目まで曝露しても発生の異常は増加せず、また、既知の催奇形性物質による発生異常も増強しないことが明らかになった。
原著を読むと以下のことが判る。
・この実験は盲検法で行った。
・温度は38+/-0.4℃である。
・『鶏胚研究の難しさのひとつは、鶏胚の性質上、一定割合の自然発生異常が避けられない点にある。対照群での自然発生の異常率と1群あたりの供試数は、その研究の統計学的検出力を決定する重要な要素である。対照群の異常発生率が高いと、曝露による異常増加を統計学的に評価する際に多数の個体数が必要となる。本研究では必要最低限の個体数で十分な統計学的検出力を確保するために当所の背景データに基づいて標本解析を行い、1群60個の有精卵を用いた。
実際の曝露実験では対照群の異常発生率は平均6.7%であったため、本研究では、対照群と比較して20%の発生異常増加を91%の確率で有意に検出できると考えられた。』
記:2019−5−21
以下の研究がある。
掲載誌:電中研 報告書番号 V08002 2008年
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価−発生初期から器官成長期の鶏胚による60kHz磁界の発生毒性評価−
研究者:西村泉、根岸正
概要
中間周波磁界の生物研究が少ないため、動物個体レベルで強い磁界を曝露できる鶏胚を用いて磁界の発生毒性を評価した。
1群60個の有精卵に60kHz、0.11mT(rms)(ICNIRP公衆ガイドラインの17.6倍)の正弦波、垂直磁界をふ卵開始から2日、7日および11日間曝露する実験を、盲検法により各3回繰り返して実施した。
2日間曝露(初期胚)では、胚の発生段階、体節数、体長、総異常(形態異常と死亡)出現率、7日間曝露(器官形成期)では、胚の発生段階、翼長、脚長、総異常出現率、11日間曝露(器官成長期)では胚の発生段階、嘴長、翼指長、脚指長と骨格異常を含む総異常の出現率を評価した。
全ての評価項目に関し、繰り返し実験で対照群と曝露群間に統計学的な有意差は認められず、磁界影響は無かった。
原著を読むと
・温度管理は38+/-0.4℃
・実験は盲検法 であることが判る。
・以下に図2として、60kHz
0.11mTrms磁界に発生開始から7日間曝露した器官形成期鶏胚における発生毒性試験結果の一部を示す。対照群の異常率は、3回の実験とも15%以下と低く、安定していることが判る。
記:2019−5−21
以下の研究がある。
報告書番号 V09007 発行年月2010/04
タイトル:中間周波磁界の生物影響評価 −発生初期から器官成長期の鶏胚による60 kHz磁界の発生毒性評価(その2)−
研究者:西村泉、根岸正
概要
中間周波磁界の生物研究が少ないため、動物個体レベルで強い磁界を曝露できる鶏胚を用いて、最近利用が広がっている60kHz磁界の発生毒性を評価した。
1群60個の有精卵に化学物質を投与してある程度の奇形を誘発させ、60kHz、0.11mTrms(ICNIRP公衆ガイドラインの17.6倍)の正弦波、垂直磁界をふ卵開始から2日、7日および11日間重畳曝露する実験を、盲検法により各3回繰り返して実施した。
2日間曝露(初期胚)では、胚の発生段階、体節数、体長、総異常(形態異常と死亡)出現率、7日間曝露(器官形成期)では、胚の発生段階、翼長、脚長、総異常出現率、11日間曝露(器官成長期)では胚の発生段階、嘴長、翼指長、脚指長と骨格異常を含む総異常の出現率を評価した。
全ての評価項目に関し、繰り返し実験で対照群と曝露群間に統計学的な有意差は認められず、磁界は予め誘発した異常の発生を増強しなかった。
原著を読むと、この研究でも
・温度は38+/-0.4℃に管理
・実験は盲検法 ということが判る。
記:2019−5−21
以下の研究がある。
掲載誌;電力中央研究所 報告書番号 V11005 2011年
タイトル中間周波磁界の生物影響評価 −発生段階の進んだ鶏胚による20kHzまたは60kHz磁界の発生毒性評価−
研究者 :西村 泉、根岸 正
概要
中間周波磁界の生物研究が少ないため、動物個体レベルで強い磁界を曝露できる鶏胚を用いて発生毒性を評価した。
1群60個の有精卵に20kHz、1.1mT(ICNIRP公衆ガイドラインの40.7倍)、または60kHz、0.11mTの正弦波、垂直磁界を曝露した。
胚発生への最終的な影響を明らかにするには、げっ歯類での研究と同様に発生が十分進んだ胚を用いて評価すべき、という指摘があるため、ふ卵開始からふ化2日前の19日目まで磁界を連続曝露した。
曝露終了後に胚の生死、発生段階、嘴長、脚指長と形態学的な異常(外表異常と骨格異常)の出現率を評価した。
発生毒性の評価は、結果の信頼性を確保するため盲検法下で行った。
実験は結果の再現性を確認するため、周波数ごとに3回繰り返した。
その結果、いずれの繰り返し実験においても全ての評価項目に関し対照群と曝露群間に統計学的な有意差は認められず、磁界影響は無かった。
原著を読むと
・『温度制御や実験方法は他の研究と同じ』とある。
・『無曝露実験:自然発生率を確認するために、磁界を曝露しないで、実験を行った。対照室群と曝露室群の形態異常率は8.6%、10.0%、総異常率は53.4%、60.0%、死亡率は44.8%、50.0%であった。死亡個体のうち早期死亡は5.2%、中期死亡は15.5%、16.7%、後期死亡は24.1%、25.0%であった。』とあり、19日間という長期孵卵実験では、この実験手法の結果では、何も曝露しない自然のままでもふ卵期間が長くなるにつれて異常の発生が多くなっている。
表1をみると、20kHz曝露実験の1回目では胚の異常率は対照:17.2%曝露群:13.3%と曝露で異常率が低下、2回目は6.7%と13.9%になっており曝露で2倍に異常率が上昇、3回目は22.9%と21.9%で曝露による異常率の変化は僅少、と実験の都度、その異常率の変化が大きく変動している。60kHzでの曝露実験も同様な傾向にある。合算して統計的な処理で結論を出しているが、個々の実験データの変動が大きいのが気になる。
記:2023−1−15
以下の研究がある。
掲載誌: Environ Res 2017; 154: 160-170
タイトル:Measurements of intermediate-frequency electric
and magnetic fields in households
家庭における中間周波の電界および磁界の測定
研究者: Aerts S, Calderon C, Valič B, Maslanyj M, Addison D,
Mee T, Goiceanu C, Verloock
L, Van Den Bossche M, Gajšek
P, Vermeulen R, Röösli M, Cardis E, Martens L, Joseph
W
この研究では、中間周波帯(IF:300Hz - 1MHz)で動作する電気的構成要素を有する家電製品(IH調理器、コンパクト蛍光照明器具など)の急速な普及を考慮して、IF範囲の電界および磁界の住宅内レベルおよび広範な家電製品からの放射レベルに関する実際の生活環境下での測定調査を行った。
その結果、スポット測定の場合、住宅内IF電磁界レベルは全般的に低い;ただし、ある種の機器の接近距離20cmでの使用は相対的に高い曝露をもたらす可能性がある(20cmの距離でのIH調理器からの電界および磁界強度の最大値は41.5V/mおよび2.7A/mであった);距離20cm以遠において、ICNIRPおよびIEC(IEC 62233)の曝露総和ルールに基づいて超過となるIF範囲の機器放射レベルは一つもなかった(最大曝露比は電界が1.0、磁界が0.13であった)、と報告している。
BEMSJ注:原著全文は未入手で読んでいないが、上記概要に「最大曝露比は電界が1.0」とあるのは気にかかる。曝露限度値ぎりぎりであるという意味であるから。
追記:2023−1−28 原著全文を入手して、読んだ。
測定結果の一覧を以下に示す。
測定値:概要では最大値はIH調理器からで41.5V/mおよび2.7A/mとあるが、上の表では41.8V/m 3.71A/m(4.45μT)と微妙に異なっている。表が細かい字で書かれており、見にくいので、関心のある方は原著Full Textを参照して下さい。
ICNIRPガイドライン値への適合比:
The ICNIRP exposure quotients at 20 cm are illustrated in Fig. 6. The highest median EQE (0.53) was found for induction cookers, although the maximum EQE (1.00) was measured
for a CFL (median: 0.22).
20cmでのICNIRP曝露適合比EQEを図6に示します。
最大EQE(0.53)の中央値は電磁調理器で見つかりましたが、最大EQE(1.00)はCFL(中央値:0.22)で測定されました。
<IH調理器とコンパクト蛍光灯からの曝露では、電界放射が大きく、電界曝露限度値ぎりぎりであると言える。>
記:2023−5−28
掲載誌: Bioelectromagnetics
2021; 42 (4): 329-335
タイトル:Maternal Use of Induction Heating Cookers During
Pregnancy and Birth Outcomes: The Kyushu Okinawa Maternal and Child Health
Study
妊娠中の母親の誘導加熱式調理器の使用と出生結果:九州沖縄母子衛生研究
研究者: Tokinobu A, Tanaka K,
Arakawa M, et al;
妊娠中の中間周波(IF)電磁界への曝露が出生結果に及ぼす影響は不明である。
この研究は、IF電磁界の主な発生源である誘導加熱式(IH)調理器[電磁調理器]の妊娠中の使用と、早産(PTB)、低出生体重(LBW)、胎内発育遅延(SGA)、出生体重との関連を、日本における出生前コホート研究からのデータを用いて調べた。
単胎妊娠した母親1565人とその妊娠から生まれた新生児を参加者とした。
自記式の質問表を用いてデータを取得した。
母親の年齢、居住地域、子どもの数、家族構成、母親の学歴、母親の雇用状態、母親の妊娠中の飲酒および喫煙、母親の体格指数、子どもの性別、出生時の在胎週数で調整を行った。
その結果、1)妊娠中のIH調理器の使用は独立して早産(PTB)のリスク低下と関連しており、調整後のオッズ比は0.28(95%信頼区間 = 0.07-0.78)であった。2)妊娠中のIH調理器の使用はLBW、SGA、または出生体重と関連していなかった、と報告している。
この研究は、妊娠中のIH調理器使用が早産を少なくしているという関連性を示した最初のものと、研究者は述べている。
記:2017−7−20
中部経済新聞社のサイトにあった情報
http://www.chukei-news.co.jp/news/201302/15/articles_19914.php
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PPL NEXTがIH温風機を開発
更新日:2013年 2月15日 (金)
農業用機材の開発を手掛けるPPL NEXT(本社名古屋市中区栄3の2の3日興ビル4階、玉置訓央社長、電話052・269・8275)は、IH(誘導加熱)を利用してビニールハウス内を温風で暖める誘導加熱温風機「KPW5」を開発した。
従来、ビニールハウスで暖房用として使用されている重油ボイラーと比べ、燃料費を約60%抑えられる。
IHを利用した温風機の開発は「世界初」(同社)という。ハウス栽培農家や畜産業者、工場などへ導入を提案し、月間100台の受注を目指す。
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PPL社のサイトにある当該のIH温風器の仕様:
なぜか、IH出力は規定されていない。
*BEMSJの疑問
電波法による規制がある。
電磁調理器は電子レンジと同様、高周波利用設備に該当し、放送や無線通信に影響を与えるため、電波法により規制されている。
総務省による型式認定がなされた製品(定格出力3kW以下かつ最大値が定格値の120%以下)は設置許可が不要だが、型式認定の対象とならない業務用の大出力のものは所轄の総合通信局の設置許可が必要である。
さて、当該のIH温風機のIH出力はいくらか?3KW以下で型式認定を得ているのか?
それともIH出力が3KWを超えているので、総務省の設置許可を得て、農業用に設置されているのか?
どなたか情報があれば、教えて下さい。