低周波電磁界に関するコーナー (2)

 

日本での電磁波に関して基礎的なことから電磁波の研究を行なっている研究所として、電力中央研究所があります。 
その研究論文などを紹介します。

          
研究のトップへ戻る

1.電力中研 1997年 研究報告から カルシウムへの影響

1A.研究年報 1998年版より
1B.電力中研での研究状況 1999年のサイトアクセスの結果
2. 電力中研2000年度研究年報より 磁界と免疫
3. 電力中研2000年研究年報より 遺伝子への影響

4. 電力中研2002年研究年報から 根岸正のメラトニンの研究

5. 経済産業省 原子力安全・保安院委託 電力設備電磁環境影響調査 生体影響調査 平成18年度調査報告書(その2総合報告書)


 

 

 

 

 

---

 

1.電力中研 1997年 研究報告から カルシウムへの影響

WEB公開:2013−1−4

財団法人電力中央研究所 研究報告:U96031
平成93
磁界曝露が細胞内カルシウムの変動に与える影響
研究者:西村泉 山崎健一 重光司 根岸正 笹野隆生

背景
細胞内の遊離カルシウムイオン濃度(細胞内カルシウム)の変動は細胞の増殖や活性化などの細胞機能の引き金であり,多くの細胞に普遍的な情報伝達機構である。
磁界の生物影響を解明する実験研究が各国で行われているなかで細胞内カルシウムの変化が報告されており,細胞レベルでの影響解明の手がかりとして重要である。一方では,磁界の影響がないとする研究もある。

目的
商用周波磁界曝露による細胞内カルシウムの変動の有無を解明する。
また,そのために必要な曝露・測定システム,ならびに細胞培養装置を開発する。

主な成果
細胞は影響を示唆した報告と同じ実験動物の細胞を用い,磁界曝露下で細胞内カルシウムの経時的変化を測定した。
測定には,従来の放射性同位元素などより精度良く多数の細胞を迅速に測定できる,フローサイトメトリー法を用いた。

1
.曝露・測定システムの開発
水平・垂直用コイルを組み合わせた状態でフローサイトメトリー法を適用するために,専用の細胞培養装置を開発した。
この培養装置は温水の外部循環装置により,培養容器に入れた細胞を正確に37℃に保ち,ネジ蓋と0リングで容器を密閉することで,サンプリング時に加圧を必要とするフローサイトメトリー法での測定を可能にした。
なお,垂直磁界用には,世界的に同じ曝露装置を使う構想で開発されたLBL型ソレノイドコイルを用いた。

2
.磁界曝露下での細胞内カルシウムの変化
曝露強度は,磁界影響を示唆した報告と同じ磁束密度(0.1mT1G))で実験を行った。
また,本装置の上限の強度(垂直磁界の5mT50G))でも実験した。

10.1mTの垂直,水平,および回転磁界曝露
ラットの胸腺細胞に,0.1mT50Hzの水平もしくは垂直磁界を30分間連続曝露した。
垂直と水平磁界を各20分間づつ連続して曝露する実験も行った。
垂直と水平磁界の位相を90度ずらして重複させた回転磁界(磁束密度実効値は0.14mTrms))についても,30分間の曝露実験を行った。
いずれの条件下でも磁界による細胞内カルシウムの変化はなかった。
実験に用いた細胞が正常に細胞内カルシウムを増加させることができ,それを当該装置で検出できることを検証する目的で,各実験において,磁界に引き続いて細胞内カルシウムを増加させる薬剤を細胞に作用させ,実際に増加することを確認した。

25mTの垂直磁界曝露
5mT
50Hz垂直磁界を胸腺細胞に30分間曝露したが,この条件下でも細胞内カルシウムの変化はなかった。
曝露前に薬剤によって細胞を刺激し,活性化しやすい状態にしてから同様の実験を行ったが,磁界の影響はなかった。
胸腺細胞の他に,牌臓細胞と末梢血リンパ球についても同様の条件下で実験したが,細胞内カルシウムの変化はなかった。

3
.まとめ
合計15回の曝露実験の結果から、細胞内カルシウムの変化は認められなかった。

 

頁トップへ戻る

 

---

 

1A.研究年報 1998年版より 
 1998年の研究年報には、電磁波の生体影響に関して2件の研究論文の概要が紹介されている。 ここではその概要の概要を紹介します。

*低周波磁界による人体内部誘導電流分布の予測評価―誘導電流計算コードの開発と臓器導電率を考慮した人体モデルの構築―

 電磁界に曝露した時に、どの程度の電磁界まで問題がないかを見極めるために、人体にどの程度の誘導電流(外部から印加された電磁界によって体内に誘導される電流)が流れるかを計算しなければならない。 そのための基礎的な研究。

人体が外部磁界にさらされたときの誘導電流は、体組織の導電率(電気の流れやすさ)に依存する。

この論文によれば、 導電率は研究者や研究組織によって異なり、またそれぞれの臓器によっても異なる。

従って、現状では導電率の考え方が一定していないので、誘導電流や健康影響の評価に限界がある。

 

    体組織の導電率 単位 S/m  Sはジーメンス 

 

一様媒質

モデルA

モデルB

モデルC

0.2

0.75

0.06

0.12

心臓

0.2

0.70

0.10

0.11

0.2

0.10

0.08

0.04

肝臓

0.2

0.10

0.07

0.13

0.2

0.03

0.5

0.14

他部位

0.2

0.11

0.35

0.52

導電率の出典: 
一様媒質:IRPA暫定ガイドライン
モデルA: IEC文書 フランスEDF

     モデルB: カナダ ビクトリア大学

     モデルC: アメリカ ユタ大学

 こうした導電率の違いによって、各臓器における誘導電流は、 

脳では IEC文書の一様媒質として計算した時は 1.8 A.U.  モデルAで計算した時は11.2 A.U.と大きく異なる。

(この単位AUとは何か?)

しかも、隣り合う臓器、特定の臓器の導電率が周囲の物質の導電率に比べて低い場合は、臓器の周辺部で大きな誘導電流が流れる。 人体の誘導電流分布はここの臓器自身の導電率の大小だけでは判断できない、

 

このように誘導電流の計算・評価は複雑です。

*磁界の大腸菌たんぱく質発現への影響―磁界は基本的な遺伝子発現機構には作用しないー

熱や紫外線などの外部刺激煮に対して生体が反応する(ストレス反応)。 磁界にこのような作用があるかを研究した。
最大10mT(100ガウス)までの交流磁界を大腸菌に曝露したが、再現性のある有意なストレス反応は見られなかった。また加熱との複合曝露でも、有意な変化は確認できなかった。
このことから、100Hz以下の周波数で、最大10mT(100ガウス)以下の磁界は遺伝子発現の変化(ストレス応答)「に対して、直接及び間接的に作用していないことがわかった。 

以下にこの年報に掲載された結果の表を引用する。

image010

 

 

 DNAK, CH60, RECA, USPA, K6P1, SODMはストレス応答たんぱく質として既知で、さまざまなストレスに対して応答することがわかっている。
S:
 再現性のある顕著な発現変化が確認できたもの 
NS:
 再現性のある顕著な発現変化が確認できなかったもの
ND:
 たんぱく質発現が見られなかったもpの。

 

加熱したり、換気をしなかったりすると、たんぱく質はそうした変化に応じて変化(応答)する。 しかし、いろいろな周波数の磁界を、

色々な強さで曝露しても、たんぱく質には有意な変化は見られなかった、 磁界に加えて加熱という複合条件でテストを行っても磁界曝露の有無での変化は見られなかった。 

これらの研究に興味のある方は、研究年報を読んでください。

 

頁トップへ戻る

 

---

 

1B.電力中研での研究状況 1999年のサイトアクセスの結果

記:1999−8−9  WEB公開:2009−10−24

インターネットで電力中研の研究報告をみました。
日本の電力会社が出資した研究所ということで、結果をうがった見方をする人もいる様ですが、低周波電磁界の生体影響の研究の状況を知る上では有効な情報源であると思います。

興味のある方は、直接http://denken.or.jp/RD/nenpo/index-j.htmlを覗いて下さい。
電磁波の生体影響は多数有る研究テーマの中に、年に1件程度の割合でしかありません。
それだけ電磁波以外の様々なテーマで研究を行っているのでしょう。

簡単に電磁波の生体影響の研究成果を。

1。1996年の研究 交流磁界が細胞組織に与える影響
磁界で細胞のカルシウム濃度が変化するという海外の研究がある。
そうした海外で行われた方法より精密な方法で(と、この報告書はいっています)、ラットの細胞に1ガウス 50Hzの正弦波磁界を曝露したが変化はない。

更に50ガウスまで強くしたが、影響はなかった。 合計15回繰り返したが変化は見られなかった。
BEMSJ注:海外でカルシウムイオンに影響が出たという実験方法とこの方法は如何に異なるのか? 方法が異なれば、電磁波の影響が出たり出なかったりするのか? これでは何を信じれば良いか?)

2。1997年の研究 交流磁界が実験動物の生殖に与える影響
ハムスターとラットに対して、繰り返して実験を行った。
70ミリガウス、700ミリガウス、3・5ガウスの磁界に曝露させた。
結果はいずれの曝露でも、胎児の異常発生率に統計的な有意差は認められなかった。
 (BEMSJ注;3ガウスでも問題がなかったというのは、面白い研究ではないか?)

3。1998年の研究 磁界の大腸菌タンパク質発現への影響ー磁界は基本的な遺伝子発現機構には作用しないー
生体は疾病が出なくても、熱や紫外線などの外部環境刺激に対する生体の普遍的な応答(ストレス応答)がある。
こうした時に現れる蛋白質の出現が、磁界の曝露で現れるか、テストした。
大腸菌に50度C 30分の熱ストレスを与えると、応答蛋白質の発現量の増加が確認され、この実験法が正しいことを確認した。

最大100ガウスの磁界で、周波数も変化させて、研究したが、磁界ではこうした応答蛋白質の発現が少ないことが判った。磁界の影響は少ないことが判った。
行った実験:5Hz 140ガウス、10Hz 140ガウス、50Hz 140ガウス60Hz 140ガウス、80Hz 112ガウス、100Hz 77ガウス、を6・5時間曝露。

頁トップへ戻る

 

---

 

2.電力中央研究所 2000年度研究年報より 磁界と免疫


研究テーマ:350μTrms回転円磁界の24週間曝露は自血病の進行と免疫系に影響を与えない
主担当者 我孫子研究所生物科学部主任研究員  西村 泉

背景 
ヒトを対象とした疫学調査の一部で磁界による自血病の促進が示唆されているため、ガンから体を守る免疫系の機能や白血病の進行に対する磁界影響の有無を明らかにする必要がある。
免疫反応は、免疫細胞で作られて分泌される各種サイトカイン(細胞間の免疫情報伝達を担う物質)の働きにより調節されている。
当研究所はこれまでの研究で、正常な動物では血清・脾臓中の主たるサイトカイン量には磁界影響のないことを明らかにしてきた。

目的
白血病を自然発症するマウス(AKR/Jマウス)に磁界を一定期間曝露して白血病の進行を調べるとともに、白血病に関連したサイトカイン量を測定し、磁界による免疫系への影響の有無を解明する。

主な成果
曝露期闘は、マウスが白血病を白然発症し、その進行を評価するのに適した30週齢近くまで実施するために、24週間とした。また、磁界強度は、曝露装置が発生できる最強の350μTrmsとした。

1
、実験方法
磁界条件:50Hz,350μTrms (送電線下の10100倍程度)の回転円磁界を24週間、違続曝露した。
供試動物:AKR/J 雌マウスを104匹用いた。曝露(磁界をあてた動物)群、対照(磁界をあてない動物)群、および、此較飼育(磁界設傭申の動物と比較するために別の施設で飼育した同じ動物)群を設定した。

測定項目:白血病に関違した脾臓・血清中サイトカインの量、ならびにタンパク質量を測定した(測定したサイトカインはIL-1β、IL-6TNF-α、脾臓では加えて、IL-3,IL-4IL-10,GM-CSF,IFN-γも測定した。)

また病理組織学的検査により、白血病の指標であるリンパ腫細胞がどの程度臓器中にあるかを検査し、緕果を動物ごとにスコア化して各群としての白血病進行度を評価した。

2.
実験結果 
2-1.
サイトカインとタンパク質量
曝露群では、対照群と此較すると騨臓と血清の幾つかのサイトカイン量、および騨臓のタンパク質量は、いずれも統討学的に有意な差はなかった。

2.2.
病理組織学的検査
曝露群での白血病の進行は対照群よりやや遅い傾向にあったが、比較飼育群とは同程度であった。

3.
まとめ
得られた緒果を総合すると、本実験に用いた磁界の曝露条件は白血病を自然発症するマウスにおいて、免疫惰報の伝達を担うサイトカインの分泌量に影響を与えず、白血病の進行を早めるような影響もないと判断された

興味のある方は、原著を入手して読んでください。

 

頁トップへ戻る

 

---

 

3.電力中研2000年研究年報より 遺伝子への影響

 

研究タイトル:
真核細胞における遺伝子発現への磁界の影響一真核細胞の遺伝子発現機構には作用しない一
主担当者: 我孫子研究所 生物科学部 主任研究員 中園聡

背景:
一部の疫学調査で、居住環携の微弱な磁界と人間の健康との関連性が指摘されて以来、商用周波磁界の健康影響についての社会的関心が高まり、欧米を中心に活発な研究が行われている。

これまで、実験動物や培養細胞を用い、磁界に対する生体応答(特に遺伝子発現応答)に関する研究がなされているが、実験に用いている生物材料の不均一さから、応答あり、応答なし、の相矛盾する結果が報告されており、未だ明確な結論は出ていない。

一方、酵母細胞は、ヒトなど真核細胞のモデルとして用いられており(表一1)、全遺伝子の配列決定が行われていること、また、均質な実験材料が得られるという特徴を持っていることから、実験材料として極めて有用である。

目的 
真核モデル細胞である酵母細胞を用い、商用周波磁界に対するタンパク質含成、mRNA合成など遺伝子発現への影響の有無を全遺伝子レベルで明らかにする。

主な成果
対照として、通気なしで24蒔間培養した酵母細胞を用いた。陽性対照として12時間通気培養した細胸を用いた。
磁界曝露には、当所で開発したメリット型のワイドレンジ磁界発生装置(50Hzで最大10mTの水平および垂直磁界を発生可能、曝露空間(40cm40cm40cm)における±3%以下の磁界一様性)を用いた。

実験には、外径20cm、内径15cmの同心円状の培養装置を用い50Hz,10mT(100ガウス)の垂直磁界を24時間曝露した。

タンパク質合成は、二次元電気泳動法により、mRNA合成はDNAマイクロアレイ法により全遺伝子レベルで広範に検討した。

1.
磁界曝露のタンパク質合成への影響
二次元電気泳動法によりタンパク質の合成パターンを調べたところ、1,000前後(全タンパク質の約1/6)のタンパク質が一度に分離できた。

また、陽性対照においては、対照と比べ多くのタンパク質の含成量の増加および滅少がみられたが、磁界曝露では、タンパク質含成パターンに変化はみられなかった。

この緒果から、本磁界には、真核細胞の基本的な翻訳機構に対する影響がみられないことが分かった。


2.mRNA
合成への影響(DNAマイクロアレイ法))
DNA
マイクロアレイ法により、約5,800種類の遺伝子(全遺伝子の90%以上)の発現パターンを解析したところ、陽性対照においては、対照と此べ、多くのoRNAの合成量変化が確認できたが、磁界曝露では、いずれのmRNAに対しても再現性のある含成量変化はみられなかった。
これらの緒果から、本磁界には、真核細胞における基本的な転写機構に対する影響がないことが分かった。

3.まとめ
強磁界(屠住環携の数万借前後)の曝露によって、酵母細胞の遺伝子発現変化が見られなかったことから、居住環境レベルの磁界が、真核細胞における基本的な遺伝子発現機構に作用する可能性が低いことが示された。

図などは割愛。 興味のある方は原著を入手して読んでください。

 

頁トップへ戻る

 

---

 

4.電力中研 2002年年報から 根岸正のメラトニンの研究

 

商用周波磁界が雄性生殖機能、メラトニン分泌に及ぼす影響評価 

背 景: 
商用周波磁界曝露と生殖影響との関連性が一部の疫学調査において示唆されているが、当研究所ではこれまでにハムスターあるいはラットを用いた実験により、雌の生殖機能、胎児の発生や発育への影響がないことを明らかにしてきた。
一方、雄の生殖機能に関する研究は少なく、生殖との関わりが知られているホルモンであるメラトニン分泌については磁界により分泌が減少するという報告と変化しないという報告があり、一貫した結果が得られていない。

目 的:
季節繁殖動物で、短日条件下で雄の生殖機能に対する磁界曝露の影響が示唆されているハムスターと、磁界の種類によりメラトニン分泌が抑制されることが示唆されているラットを用いて、商用周波磁界の影響を明らかにする。

主な成果: 
当研究所設置の動物用磁界曝露設備で発生可能な最大強度である水平および垂直磁界の強度が50Hz-250μT時の350μTの回転円磁界にゴールデン(シリアン)ハムスターを短日条件下(明期8時間:暗期16時間)で、12週間曝露した。
また、SD系およびWistar系ラットを用いて、通常の飼育照明条件下(明期12時間:暗期12時間)で50Hz-350μTの回転円磁界あるいは50Hz-250μTの水平磁界を12週間曝露した。

両実験とも雄の生殖機能に影響すると考えられる血清中テストステロンおよびメラトニン濃度を測定するとともに、雄性生殖機能の指標としてホルモン濃度と密接に関連している生殖器系器官重量を測定し、総合的に比較・検討した。
また、ハムスターの実験では生殖器系器官の組織学的検査および精子数などの測定も実施し、以下の結果を得た。

1.
ハムスターを用いた実験

一部の項目に磁界曝露群と対照群との間に若干の差異が見られた。しかし、ホルモン濃度に相互に関連する他の項目では変化が見られなかった。
本実験結果を、磁界曝露の有無、実験開始時週齢および実験期間を3要因として三元配置分散分析で解析したところ、磁界曝露の主効果は認められなかった。

 image011 

       

研究成果の図の一部から、 ハムスターを350μTの磁界に曝露したときの、メラトニン濃度の変化


2.
ラットを用いた実験

2系統のラットを用いた実験のうち、臓器重量ではWistar系ラットにおいて250μTで3週間・水平磁界曝露群で前立腺重量に高値がみられた。 しかし、影響を評価する上で、相互に関連性のある副生殖器・精巣重量には差異は認められなかった
また、テストステロン、メラトニン濃度については2系統のラットとも、どの測定時期においても曝露群と対照群との間に差異が認められなかった。

 

    image012

      研究成果の図の一部から、 SD系ラットを350μTの磁界に曝露したときの、メラトニン濃度の変化

 

以上のように、実験小動物の雄性生殖機能、メラトニン分泌に及ぼす影響には一貫性が見られなかったことから、商用周波磁界の影響は考えにくいことが明らかとなった。

この研究に興味のある方は、原著を読んでください。

 

頁トップへ戻る



5.経済産業省 原子力安全・保安院委託 電力設備電磁環境影響調査 生体影響調査 平成18年度調査報告書(その2総合報告書) 

平成193月 財団法人電力中央研究所    からの抜粋

電力設備電磁環境影響調査 生体影響調査事業全体の成果 概要

商用周波磁界とがん(腫瘍)についての疫学調査の一部に、弱い関連性がみられたという報告がある。
このため、商用周波微弱磁界の曝露による腫瘍との関連性について関心が高まっている。
商用周波磁界の曝露が直接遺伝子を損傷するとは考えられず、多くの実験結果もこの考え方を支持している。
このため、一部の疫学調査で影響が報告されている腫瘍の増加が真であると仮定すると、磁界の影響は腫瘍へのプロモータ(促進)作用ではないかと考えられている。
このため、本事業では一部の疫学調査で影響が報告されている腫瘍(脳腫瘍、造血器系腫瘍)や動物実験で磁界の影響が報告されている腫瘍(乳腺腫瘍、皮膚腫瘍)を対象に、商用周波磁界の腫瘍に対するプロモータ作用の有無を明らかにすることを主な目的として、平成9年度より平成18年度にかけて実施した。

1
)ラットを用いた50Hz回転円磁界の発がん性試験 (平成9年度から平成10年度まで実施)

一連のプロモータ作用の検索試験に先立ち、発がん物質を用いず、磁界のみを曝露する発がん性試験を行った。
1
60匹の7週齢SD系雌ラットに擬似曝露(0μTrms)、7μTrms70μTrmsあるいは350μTrmsの水平成分と垂直成分が等しい回転円磁界を26週間曝露後、速やかに剖検し、病理組織学的検査を主体とした各種の検査を実施したが、磁界の発がん性は認められなかった。

2
)ラットを用いた50Hz水平磁界の乳腺腫瘍に対するプロモータ作用検索試験 (平成10年度から平成11年度まで実施)

1
60匹の7週齢SD系雌ラットに7,12-dimethy1-benzeaanthraceneDMBA)を投与後、OμTrms5μTrms50μTrmsあるいは250μTrmsの水平磁界を26週間曝露した。
磁界曝露終了後、速やかに剖検し、病理組織学的検査を主体とした各種の検査を実施したが、磁界のラット乳腺腫瘍に対するプロモータ作用は認められなかった。

3
)ラットを用いた50Hz回転円磁界の乳腺腫瘍に対するプロモータ作用検索試験  (平成10年度から平成14年度まで実施)

1
60匹の7週齢SD系雌ラットにDMBAを投与後、OμTrms7μTrms70μTrmsあるいは350μTrmsの回転円磁界を26週間曝露した。
磁界曝露終了後、速やかに剖検し、病理組織学的検査を主体とした各種の検査を実施したが、磁界のラット乳腺腫瘍に対するプロモータ作用は認められなかった。

4.
マウスを用いた50Hz回転円磁界の皮膚腫瘍に対するコプロモータ(共促進)作用検索試験 (平成11年度から平成12年度まで実施)

1
100匹の67週齢SENCAR雌マウスの背部皮膚にDMBAを塗布し、その1週間後から週1回、同塗布部に既知のプロモータである12-O-tetradecanoylphorbo1-13-acetateTPA)を塗布しながら、OμTms,7μTrms,70μTmsあるいは350μTmsの回転円磁界を25週間曝露した。
磁界曝露終了後、速やかに剖検し、病理組織学的検査を主体とした各種の検査を実施したが、磁界のマウス皮膚腫瘍に対するコプロモータ作用は認められなかった。

5
.ラットを用いた50Hz回転円磁界の脳腫瘍に対するプロモータ作用検索試験 (平成13年度から平成15年度まで実施)

妊娠20目のF344雌親ラットに発がん物質としてN-ethy1-N-nitrosourreuENU)を静脈内投与し、生まれた児ラット1群雌雄各60匹を、OμTrms7μTrms70μTrmsあるいは350μTrmsの回転円磁界に生後4週齢から32週齢まで曝露した。
磁界曝露終了後、速やかに剖検し、病理組織学的検査を主体とした各種の検査を実施したが、磁界のラット脳腫瘍に対するプロモータ作用は認められなかった。

6
.マウスを用いた50Hz回転円磁界の悪性リンパ腫/リンパ性白血病に対するプロモータ作用検索試験 (平成15年度から平成17年度まで実施)

出生24時間以内のCD-1ICR)マウス新生児の皮下に発がん物質としてDMBAを投与し、1群雌雄50匹ずつを生後4週齢からOμTrms7μTrms群、70μTrms群あるいは350μTrms群の回転円磁界に30週間曝露した。
磁界曝露終了後、速やかに剖検し、病理組織学的検査を主体とした各種の検査を実施したが、磁界の悪性リンパ腫/リンパ性白血病に対するプロモータ作用は認められなかった。

7
.ラットを用いた50Hz回転円磁界の白血病に対するプロモータ作用検索試験  (平成16年度から平成18年度まで実施)

1
60匹の11週齢雌Donryuラットに週15週間連続でN-propy1-N-nitrosourreuPNU)を5回経口投与した後、17週齢からOμTrms7μTrms群、70μTrms群あるいは350μTrms群の回転円磁界に30週間曝露した。
磁界曝露終了後、速やかに剖検し、病理組織学的検査を主体とした各種の検査を実施したが、磁界のラット白血病に対するプロモータ作用は認められなかった。

以上のように、本事業では磁界の腫瘍誘発作用を検索する発がん性試験1件、磁界の腫瘍に対するプロモータ作用を検索する試験6件、計7つの動物曝露試験を実施した。
その結果、そのいずれにおいても対象とした発がん性、あるいは、腫瘍に対する磁界のプロモータ作用は認められなかった。
これらの結果から、一連の試験条件では商用周波磁界に腫瘍誘発作用はなく、また、腫瘍に対するプロモータ作用もないものと結論された。

関心のある方は、この報告書の原文全文を入手して、読んでください。

トップへ戻る